JP2003168565A - 有機el素子 - Google Patents

有機el素子

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JP2003168565A JP2001369031A JP2001369031A JP2003168565A JP 2003168565 A JP2003168565 A JP 2003168565A JP 2001369031 A JP2001369031 A JP 2001369031A JP 2001369031 A JP2001369031 A JP 2001369031A JP 2003168565 A JP2003168565 A JP 2003168565A
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Tetsuya Kato
哲弥 加藤
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Denso Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 一対の電極の間に発光層を含む有機薄膜を有
する有機EL素子において、電流のリークやショートの
発生を適切に防止する。 【解決手段】 一対の電極20、80の間に発光層50
を含む有機薄膜40、50、60を有する有機EL素子
において、これら有機薄膜40〜60を構成する全ての
有機材料が、真空蒸着法による成膜時において蒸発性を
有するものからなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一対の電極の間に
発光層を含む有機薄膜を有する有機EL(エレクトロル
ミネッセンス)素子に関し、特に高温環境にさらされる
車載用のディスプレイ等に適用して好適である。
【0002】
【従来の技術】有機EL素子は、自己発光のため、視認
性に優れ、かつ数V〜数十Vの低電圧駆動が可能なため
駆動回路を含めた軽量化が可能である。そこで、薄膜型
ディスプレイ、照明、バックライト等としての活用が期
待できる。また、有機EL素子は、色バリエーションが
豊富であることも特徴である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】基本的な有機EL素子
の構造は、基板上に形成された電極上に複数の有機薄膜
積層体を形成した後、その有機薄膜積層体の上に電極を
形成するものである。この有機薄膜に用いられる材料に
ついては、主に真空蒸着法を用いる低分子系と基板上に
塗布する高分子系が挙げられる。
【0004】この中で低分子系で主に用いられる材料
は、真空蒸着法において成膜する場合、大きくは液体状
体で気化が行われる蒸発性材料と固体状態で気化が行わ
れる昇華性材料とに分類できる。
【0005】一般的には、正孔輸送層に用いられる三級
アミン化合物は蒸発性を示すものが多く、発光層、電子
輸送および注入層に用いられる8−ヒドロキシキノリン
アルミニウム錯体(以下Alq3とする)は昇華性材料
である。すなわち、一般的な有機EL素子は、蒸発性材
料と昇華性材料とが混在した構造を採っていることにな
る。
【0006】このような有機EL素子は、高温での輝度
低下が著しく、一般民生品に比べて高温環境下で使用さ
れることが多い車載ディスプレイとしては耐久性が不十
分である。
【0007】このため、材料メーカでは耐熱性の高い材
料、すなわち高ガラス転移点材料の開発を行い、デバイ
スメーカでは素子がさらされる温度よりも高いガラス転
移点温度(以下、Tgという)を有する材料で膜を構成
する方法が一般的である。例えば、特開平11−378
2号公報においては、環境温度が構成材料のTgを超え
ると、構成材料の結晶化が進行し、電流のリークやショ
ートが発生するとしている。
【0008】しかしながら、本発明者の実験検討によれ
ば、有機EL素子がさらされる温度よりも高いTgを有
する材料によって素子の有機薄膜を構成したとしても、
リークやショートの問題が解決されないことを実験で確
認した。
【0009】本発明は上記問題に鑑み、一対の電極の間
に発光層を含む有機薄膜を有する有機EL素子におい
て、電流のリークやショートの発生を適切に防止するこ
とを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、以下に示すような実験検討を行った。
【0011】具体的には、ガラス基板上に、陽極として
のITO膜(透明電極)を形成し、アルゴンと酸素混合
のプラズマによる表面処理を施した後、正孔注入層とし
てCuPcを膜厚50nmにて成膜した後、正孔輸送層
にトリフェニルアミン4量体、発光層としてジメチルキ
ナクリドンが添加されたAlq3、電子輸送層にAlq
3、電子注入層にLiF、陰極にAlを順次成膜し、こ
れを封止缶で密封して有機EL素子を試作した。以下、
これを試作品という。
【0012】この試作品の構成材料中で正孔輸送層であ
るトリフェニルアミン4量体のTgが140℃であり、
最もTgが低い。この試作品を様々な試験温度条件で作
動させたところ、90℃以上で素子のショートによる非
発光を確認し、また、この非発光については、温度上昇
により発生時間および発生個数ともに加速されることが
わかった。すなわち、トリフェニルアミン4量体のTg
140℃よりも50℃も低い温度でショートやリークが
発生することがわかった。
【0013】このことから、高温環境にさらされた際に
発生するショートやリークの発生原因が、Tgを有する
アモルファス材料の結晶化に起因するものではなく、主
として昇華性材料からなる有機薄膜、すなわち上記試作
品におけるジメチルキナクリドンが添加されたAlq3
からなる発光層の形態変化に起因することを実験的に見
出した。
【0014】この発生原因についての実験検討について
具体的に述べる。短時間で実験するため、加速条件とし
て120℃の温度中に上記試作品を2hr放置した。以
下、この放置試験を加速高温放置という。試作品におい
て、加速高温放置の前と後とで、電圧−輝度特性(V−
I特性)を調べた。
【0015】その結果を図10に示す。図10では、横
軸に印加電圧、縦軸に電流密度をとり、加速高温放置の
前を初期、加速高温放置の後を120℃、2hrとして
示してある。
【0016】図10において、加速高温放置前では、印
加電圧4Vをしきい値として印加電圧の上昇と共に電流
密度が上昇するという正常なV−I特性を示している。
しかし、加速高温放置後では、リークやショートが発生
して、しきい値よりも低い印加電圧にて多大な電流が流
れるといった異常が見られた。
【0017】この現象をさらに追求すべく、試作品にお
ける昇華性材料からなる有機薄膜すなわち電子輸送層で
あるAlq3を観察した。顕微鏡写真による観察結果を
模式的断面図として図11に示す。
【0018】図11では、ITO膜20の上に、CuP
c膜30、トリフェニルアミン4量体膜40、Alq3
からなるAlq膜50が順次積層されており、(a)は
85℃放置後、(b)は100℃放置後、(c)は12
0℃放置後の状態を示す。図11に示すように、放置温
度が上昇するほど、Alq3の表面に多数のボイドBが
観察され、このボイドBの形成がリークに関係があると
推定した。
【0019】このボイドBの大きさを、図11中に示す
ボイド深さDとして示し、このボイド深さDの温度依存
性を示すグラフを、図12に示す。ボイドBの大きさに
は温度依存性が見られ、グラフの外挿値からボイドBの
形成のしきい温度は70℃と判断した。
【0020】以上のことから、例えば70℃以上の高温
環境に有機EL素子をさらした場合、素子中の昇華性材
料からなる有機薄膜の表面にボイドが発生し、このボイ
ド発生に伴う有機薄膜の凹凸の発生によって、電極間の
ショートやリークが発生すると考えられる。
【0021】そして、このボイドがAlq3の部分で発
生していることから、ボイドの発生については、昇華性
材料であるAlq3の材料特性によって、膜中に隙間の
多いすなわち低密度な膜が形成されることに原因がある
と推定し、昇華性材料と蒸発性材料の成膜性の違いに着
目した。
【0022】次に、本発明者が行った実験のデータを基
に、昇華性材料と蒸発性材料の成膜性の違いについて説
明する。
【0023】ガラス基板上に形成されたITO(透明電
極)表面を、アルゴンと酸素混合のプラズマによる表面
処理を施した後、CuPcを膜厚50nmにて成膜し、
その上に、正孔輸送層としてのトリフェニルアミン4量
体を膜厚40nmにて成膜した。
【0024】次に、この正孔輸送層の上に、昇華性材料
の発光層としてAlq3を膜厚40nmにて成膜した。
これを昇華性素子ということにする。また、一方では、
正孔輸送層の上に、蒸発性材料の発光層として図13に
示す化学構造式を有するアダマンタン誘導体を膜厚40
nmにて成膜した。これを蒸発性素子ということにす
る。
【0025】そして、ITO上のCuPc膜の表面と、
上記昇華性素子および蒸発性素子における発光層の表面
とを顕微鏡観察した。その結果を、図14に示す。図1
4において、(a)はITO上のCuPc膜の表面、
(b)は上記蒸発性素子における蒸発性材料の発光層の
表面、(c)は上記昇華性素子における昇華性材料の発
光層の表面をそれぞれ示すもので、顕微鏡写真をもとに
模式的に表したものである。
【0026】図14に示すように、蒸発性材料のアダマ
ンタン誘導体からなる発光層では、下地のCuPc膜の
凹凸を非常に良く反映しているのに対し、昇華性材料の
Alq3からなる発光層では、下地の凹凸が全く観察さ
れなかった。
【0027】すなわち、蒸発性材料が下地の凹凸形状を
追随しながら被覆するため、凹凸形状が残留するのに対
し、昇華性材料は下地の凹凸に追随しないため下地の形
状が残留しないと考えられる。
【0028】この理由は、次のように推定される。蒸発
性材料は材料が溶融しており、分子間相互作用が切断さ
れているために非常に小さい粒子で基板に付着する。一
方、昇華性材料は分子間相互作用が切断されていないた
めに比較的大きなクラスター状で基板に付着する。この
ため、昇華性材料は膜中にボイドが形成されたり、低密
度領域が形成されやすい。
【0029】そして、このような膜中にボイドや低密度
領域が形成された素子を加熱すると、熱的な活性化エネ
ルギーにより緻密化が進行する。その結果、上記図11
に示したような形態変化すなわちボイド形成が発生し、
膜中のボイド発生部分にて電極間距離が短くなったり、
ボイドにより生じる膜の凹凸部分に電界が集中したりす
ることにより、リークやショートに至ると考えられる。
【0030】そして、このような昇華性材料の成膜にお
ける下地の凹凸への不追随といった現象は、CuPc膜
の凹凸のみならず、パーティクルやITO膜による凹凸
においても同様に発生すると考えられる。特に、パーテ
ィクルについては、製造工程上必ず存在する問題であ
る。
【0031】そこで、本発明者は、こうした素子を高温
にさらすことにより発生するリークやショートを防止す
るためには、一対の電極の間に発光層を含む有機薄膜を
有する有機EL素子において、蒸発性材料のみを用い、
被覆性が高く緻密な膜によって有機薄膜を形成すること
が必要であると考えた。本発明はこの考えに基づいてな
されたものである。
【0032】すなわち、請求項1に記載の発明では、一
対の電極の間に発光層を含む有機薄膜を有する有機EL
素子において、有機薄膜を構成する全ての有機材料が、
真空蒸着法による成膜時において蒸発性を有するもので
あることを特徴とする。
【0033】本発明によれば、有機薄膜を構成する全て
の有機材料が、真空蒸着法による成膜時において蒸発性
を有する蒸発性材料からなるため、上記したような高温
環境下におけるボイド発生を防止することができ、電流
のリークやショートの発生を適切に防止することができ
る。
【0034】さらに検討を進めたところ、請求項1の発
明では、上記加速高温放置を行った場合に、電流のリー
クやショートの発生を適切に防止できるものの、図2に
示すように、上記加速高温放置のような高温環境下にお
いて素子の電圧−電流特性(V−I特性)が高電圧側へ
シフトしてしまう現象が現れた。このことは、同じ電圧
で駆動している場合は、輝度低下したのと同じことであ
る。また、素子内に部分的に発生する場合もあり、この
場合は輝度ムラとして認識されることになる。
【0035】このシフト現象の原因としては、次のよう
に推定した。低密度領域を有するような昇華性材料の膜
は、加熱時に発生する熱応力に対して緩衝性を有する、
すなわち熱応力を吸収しやすいのに対し、緻密性の高い
蒸発性材料からなる膜は、上記緩衝性が低く熱応力を伝
播しやすくなる。
【0036】言い換えれば、昇華性材料の膜は比較的柔
らかく熱応力によって変形しにくいのに対し、蒸発性材
料の膜は比較的固く熱応力によって変形しやすいと考え
られる。そのため、素子全体に熱応力が伝播され、各構
成膜の変形を生じるなどにより、正孔や電子の輸送特性
や注入特性が低下し、上記シフト現象が起こると考えら
れる。
【0037】また、有機EL素子における有機薄膜を全
て蒸発性材料で成膜した場合であっても、陽極の上の正
孔輸送層としては蒸発性材料であるアミン系材料等が使
用される。このような正孔輸送層は一般にアモルファス
性が高いので、下地のITO膜からなる電極との間には
化学的結合が形成されないため、互いの密着性は低く、
ITO膜と正孔輸送層との界面が上記熱応力によって剥
離する。その結果、電荷が注入されにくくなり、上記シ
フト現象が起こると考えられる。
【0038】出荷後にこのようなシフト現象が発生する
と、輝度低下や輝度ムラ等の不具合として認識されるた
め、一つの手段としては、出荷前に加熱処理を行って予
めシフトさせておくことも効果的ではある。
【0039】本発明者は、このシフト現象に対する別の
対策として、ITO膜と正孔輸送層との界面の密着性を
向上させることを検討した。請求項2に記載の発明は、
上記した本発明の目的を達成しつつ、上記シフト現象を
抑制することを目的として創出されたものである。
【0040】すなわち、請求項2に記載の発明では、一
対の電極の間に発光層を含む有機薄膜を有する有機EL
素子において、一対の電極の一方が透明電極としてのイ
ンジウム−錫の酸化物からなるITO膜であり、このI
TO膜の上に結晶性を有する有機金属錯体膜が形成され
ており、有機薄膜は、有機金属錯体膜の上に形成されて
いるものであり、有機薄膜を構成する全ての有機材料
が、真空蒸着法による成膜時において蒸発性を有するも
のであることを特徴とする。
【0041】それによれば、上記請求項1の発明と同
様、有機薄膜を構成する全ての有機材料を蒸発性材料か
ら構成しているため、電流のリークやショートの発生を
適切に防止することができる。
【0042】また、有機金属錯体膜をITO膜の上に形
成し、その上に有機薄膜を形成するが、この場合、IT
O膜側の有機薄膜は正孔輸送層である。そのため、IT
O膜と正孔輸送層との間に有機金属錯体膜が挿入された
形となる。
【0043】ここで、有機金属錯体膜は、ITO膜の上
に形成する場合、真空蒸着法等によってエピタキシャル
的に成膜されるため、ITO膜との間において高い密着
性を有する。また、有機金属錯体膜は結晶性すなわち分
子極性が高く、同様に分子極性を有する正孔輸送材料と
も密着性が高い。
【0044】そのため、ITO膜と正孔輸送層との間に
有機金属錯体膜を挿入することは、ITO膜と正孔輸送
層との間の密着性を向上させることに対して非常に効果
的である。それにより、加熱によるITO膜と正孔輸送
層との間の剥離を抑制して、両者間の電荷注入特性を維
持することができる。
【0045】このようなことから、本発明によれば、高
温環境下において素子のV−I特性の高電圧側へのシフ
トを抑制しつつ、電流のリークやショートの発生を適切
に防止することができる。
【0046】さらに、上記の有機金属錯体膜としては、
高温環境下において結晶性の変化を小さくすることが好
ましい。それにより、高温環境下における結晶性変化に
よって有機金属錯体膜に発生する凹凸を、小さくするこ
とができるため、ITO膜から有機金属錯体膜を介した
正孔輸送層への正孔注入特性の変化を極力抑制すること
ができる。
【0047】このことから、ITO膜から有機金属錯体
膜を介した正孔輸送層への正孔注入特性の変化を極力抑
制し、高温環境下における素子のV−I特性の高電圧側
へのシフトを最小限に抑制するために、実験検討を行
い、有機金属錯体膜の結晶性の変化がどの程度であれば
好ましいかを求めた。
【0048】請求項3に記載の発明は、この有機金属錯
体膜の結晶性の変化に対する検討結果に基づいてなされ
たものであり、有機金属錯体膜のX線回折法により現れ
る回折ピークの値において、有機EL素子の使用温度内
の加熱による回折ピーク値の変化量が当該加熱前の当該
回折ピーク値の±25%以内となっていることを特徴と
する。
【0049】本発明のように、結晶性を示す有機金属錯
体膜のX線回折法により現れる回折ピークの値におい
て、有機EL素子の使用温度内の加熱による回折ピーク
値の変化量が、加熱前の回折ピーク値の±25%以内と
小さくすれば、請求項2の発明の効果に加えて、高温環
境下において素子のV−I特性の高電圧側へのシフトを
より高レベルにて抑制することができる。
【0050】ここで、請求項4に記載の発明のように、
有機錯体膜としては銅フタロシアニンを採用することが
できる。
【0051】また、請求項5に記載の発明のように、上
記各手段に記載の有機EL素子は、70℃以上の高温環
境にさらされるものに適用した場合でも、その効果を十
分に発揮することができる。
【0052】なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述
する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一
例である。
【0053】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)以下、本発明を
図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の第
1実施形態に係る有機EL素子S1の概略断面構成を示
す図である。
【0054】透明なガラスからなる基板10の上に、イ
ンジウム−錫の酸化物(以下、ITOという)からなる
陽極20が形成されている。陽極20の上には、トリフ
ェニルアミン4量体からなる正孔輸送層40が形成され
ている。
【0055】正孔輸送層40の上には、ジメチルキナク
リドンが添加された上記アダマンタン誘導体(図13参
照)からなる発光層50が形成され、発光層50の上に
は、このアダマンタン誘導体からなる電子輸送層60が
形成されている。さらに、電子輸送層60の上には、L
iFからなる電子注入層70が形成され、その上には、
Alからなる陰極80が形成されている。
【0056】この有機EL素子S1においては、陽極2
0と陰極80との間に電界を印加し、陽極20から正孔
が、一方、陰極80から電子がそれぞれ発光層50へ注
入、輸送され、発光層50にて電子と正孔とが再結合
し、そのときのエネルギーによって発光層50が発光す
るものである。そして、その発光は例えば、基板10側
から取り出され視認されるようになっている。
【0057】ところで、本第1実施形態の有機EL素子
S1は、例えば、車載用のディスプレイ等に採用される
ものであり、その使用温度は−40℃〜120℃程度の
ものである。
【0058】ここで、有機EL素子S1において、一対
の電極20、80の間に形成された有機薄膜40〜60
は、当該有機薄膜40〜60を構成する全ての有機材料
が真空蒸着法による成膜時において蒸発性を有するも
の、すなわち蒸発性材料である。
【0059】本有機EL素子S1によれば、有機薄膜を
構成する全ての有機材料が、真空蒸着法による成膜時に
おいて蒸発性を有する蒸発性材料からなるため、上記の
「解決手段」の欄に示したような昇華性材料を用いた従
来の有機EL素子において生じる高温環境下でのボイド
発生の問題を防止することができ、電流のリークやショ
ートの発生を適切に防止することができる。
【0060】この有機EL素子S1の製造方法について
述べる。ガラス基板10の上に、陽極としてのITO膜
20をスパッタ等により成膜し、ITO膜20の表面に
アルゴンと酸素混合のプラズマによる表面処理を施した
後、トリフェニルアミン4量体膜からなる正孔輸送層4
0を真空蒸着法により膜厚40nmにて成膜する。
【0061】次に、上記アダマンタン誘導体にジメチル
キナクリドンが1%添加されたものからなる発光層50
を真空蒸着法により膜厚20nmにて成膜する。その上
に、アダマンタン誘導体からなる電子輸送層60、Li
Fからなる電子注入層70を真空蒸着法により成膜し、
Alからなる陰極80を成膜する。こうして上記図1に
示す有機EL素子S1ができあがる。この有機EL素子
S1は図示しない封止缶にて密封する。
【0062】このできあがった有機EL素子S1を、上
記加速高温放置すなわち120℃の温度中に2hr放置
したところ、有機薄膜40〜60においてボイド発生を
防止することができ、素子S1における電流のリークや
ショートの発生を適切に防止することができた。
【0063】(第2実施形態)ところで、上記第1実施
形態の有機EL素子S1について検討したところ、上記
の「解決手段」の欄でも述べたように、図2に示すよう
に、上記加速高温放置によって、当該素子S1の電圧−
電流特性(V−I特性)が高電圧側へシフトしてしまう
現象が現れた。図2では、2V程度高電圧側へシフトし
ている。
【0064】このシフト現象を解決するものとして、本
発明の第2実施形態に係る有機EL素子S2の概略断面
構成を図3に示す。図3は、上記図1に示す有機EL素
子S1において、陽極であるITO膜20と正孔輸送層
40との間に、結晶性を有する有機金属錯体膜としての
CuPc(銅フタロシアニン)膜30を挿入したもので
ある。このCuPc膜30は正孔注入層として機能す
る。
【0065】その製法は、上記図1に示す素子S1と同
様に、基板10の上にITO膜20を形成し、ITO膜
20の表面にアルゴンと酸素混合のプラズマによる表面
処理を施した後、真空蒸着法により正孔注入層としての
CuPc膜30を膜厚50nmにて成膜し、その上に、
上記同様、正孔輸送層40、発光層50、電子輸送層6
0、電子注入層70、陰極80を順次成膜すれば良い。
【0066】この本第2実施形態に係る有機EL素子S
2について、上記加速高温放置を行ったところ、上記図
1に示す有機EL素子S1と同様、有機薄膜40〜60
においてボイド発生を防止することができ、当該素子S
2における電流のリークやショートの発生は無かった。
また、加速高温放置によっても、本実施形態の有機EL
素子S2においては、V−I特性の高電圧側へのシフト
を大幅に低減することができた。
【0067】[有機金属錯体膜のX線回折ピークの検
討]さらに、図3に示す本第2実施形態の有機EL素子
S2においては、好ましい形態として、有機金属錯体膜
であるCuPc膜30のX線回折法により現れる回折ピ
ークの値において、有機EL素子S2の使用温度(例え
ば−40℃〜120℃)内の加熱による回折ピーク値の
変化量が当該加熱前の当該回折ピーク値の±25%以内
となっていることが望ましい。
【0068】このように、結晶性を示す有機金属錯体膜
としてのCuPc膜20のX線回折法により現れる回折
ピークの値において、有機EL素子S2の使用温度内の
加熱による回折ピーク値の変化量を、加熱前の回折ピー
ク値の±25%以内と小さくすれば、上記した本実施形
態の効果に加えて、高温環境下において素子のV−I特
性の高電圧側へのシフトをより高レベルにて抑制するこ
とができる。
【0069】この本第2実施形態の有機EL素子S2に
おける好ましい形態の根拠について、以下に述べる。
【0070】本有機EL素子S2においては、ガラス基
板10の上にITO膜20を形成し、ITO膜20の表
面にアルゴンと酸素混合のプラズマによる表面処理を施
した後、真空蒸着法により正孔注入層としてのCuPc
膜30を膜厚50nmにて成膜する。
【0071】このような製法により成膜されたCuPc
膜30に対して、上記加速高温放置(120℃、2h
r)を行った。そして、加速高温放置の前と後とで、C
uPc膜30の結晶性の状態をX線回折によって分析し
た。その結果を図4に示す。
【0072】図4に示すように、回折ピークにおいて、
2θ=6.68°に発生しているピークはCuPc膜3
0の基板10に平行な(200)面の結晶構造に由来し
ており、以下、この回折ピークをCuPc結晶性ピーク
という。図4では、このCuPc結晶性ピークにおいて
実線で図示するものが加速高温放置の前のピークすなわ
ち初期のピーク、破線で図示するものが加速高温放置の
後のピークすなわち120℃、2Hr後のピークであ
る。
【0073】そして、このCuPc結晶性ピーク値の積
分値が大きい、すなわちピーク値が高いほど、CuPc
膜30の結晶性が高いことを示している。つまり、12
0℃、2Hrの加速高温放置によって、当該ピーク値
(積分値)が加速高温放置前の1.5倍に変化してい
る。
【0074】このことから、本発明者は、本第2実施形
態の有機EL素子S2において、正孔注入層であるCu
Pc膜30上に正孔輸送層40、発光層50、電子輸送
層60、電子注入層70、陰極80等が成膜された後、
つまり、発光素子形態になってから、CuPc膜30が
このような結晶状態の変化を起こすことが、高温環境下
でのV−I特性シフトを誘発し、輝度低下や輝度ムラを
引き起こす大きな原因であると考えた。
【0075】そこで、上記の有機金属錯体膜30として
は、もともと結晶性の高いものを形成し、高温環境下に
おいて結晶性の変化を小さくすることが好ましい。それ
によって、高温環境下において有機金属錯体膜30に発
生する凹凸を小さくすることができるため、ITO膜2
0から有機金属錯体膜30を介した正孔輸送層40への
正孔注入特性の変化を極力抑制することができることか
ら、結果、V−I特性のシフトを最小限に抑制できると
考えた。
【0076】[ITO膜の加熱処理による高結晶性Cu
Pc膜の実現]そのような結晶性の高いCuPc膜30
は、上記図3に示す有機EL素子S2において、ガラス
基板10の上にITO膜20を成膜した後、ITO膜2
0の表面を300℃に加熱しながら紫外線照射し、その
後、CuPc膜30以降の形成を行うことで実現でき
る。以下、このITO膜20に対する処理をUV−30
0℃処理という。
【0077】このUV−300℃処理を行ったITO膜
20の上にCuPc膜30を成膜したものについて、上
記した加速高温放置(120℃、2hr)を行う前と後
とで、X線回折分析を行った。その結果、2θ=6.6
8°に発生しているCuPc結晶性ピークは、放置処理
前の値に比べて放置処理後の値の比は1.02と非常に
小さいことが確認された。言い換えれば、UV−300
℃処理を行った場合における成膜時のCuPc膜30の
結晶性が非常に高く安定であったことを示す。
【0078】さらに、図3に示す有機EL素子S2をU
V−300℃処理を行って製造した場合に、その素子S
2を封止缶で密封したものについて、120℃、2hr
の上記加速高温放置の条件で確認した結果、V−I特性
のシフトはほとんど無く、輝度低下や輝度ムラは見られ
なかった。もちろん、電流のショートやリークも発生し
なかった。
【0079】つまり、図3に示す本第2実施形態の有機
EL素子S2を、UV−300℃処理を行って製造した
場合には、上記した好ましい形態を実現できる。すなわ
ち、有機金属錯体膜であるCuPc膜30のCuPc結
晶性ピークにおいて、有機EL素子S2の使用温度(例
えば−40℃〜120℃)内の加熱によるCuPc結晶
性ピーク値の変化量を、当該加熱前のCuPc結晶性ピ
ーク値の±25%以内とすることができる。
【0080】そして、それによって製造された有機EL
素子S2は、使用温度内において電流のショートおよび
リークを防止し良好な輝度特性を実現することができ
る。このような効果は、上記製造方法におけるUV−3
00℃処理によるものであるが、当該処理による効果の
実現メカニズムについて、次に、より詳細に説明する。
【0081】[高結晶性CuPc膜の実現メカニズムの
検討]陽極としてのITO膜20から、正孔注入層とし
てのCuPc膜30に効率良く正孔が注入されるために
は、ITO膜表面の洗浄処理は重要であることは以前か
ら公知である。
【0082】しかし、一般的には洗浄後のITO膜表面
のイオン化ポテンシャル(Ip)で評価されており、本
発明者は、正孔注入特性等を鑑みてITO膜20の洗浄
処理直後にITO膜20のIpが5.5eV以下であれ
ば問題無しという判断をしていた。
【0083】しかし、本発明者の検討では、アルゴンと
酸素(比率1:1)のプラズマ洗浄処理を5分間行った
時のIpは5.45eV、UV処理のみを20分間行っ
た時のIpは5.5ev、上記UV−300℃処理を2
0分間行った時のIpは5.46evと大きな差は見ら
れなかった。
【0084】それにもかかわらず、UV−300℃処理
を行った素子の方が、高温放置後のV−I特性シフトを
最小限に抑制することができ、輝度低下や輝度ムラが発
生しないという結果を得た。つまり、ITO上に成膜さ
れる有機金属錯体膜30の結晶性はIpのみによって決
定されるのではなく、他の要因にも存在することを示し
ている。
【0085】そこで、UV−300℃処理では、加熱処
理が関係していることから、ITO表面の水分に着目
し、昇温脱離法(thermal desorptio
n method、以下、TDS法という)により、各
温度での水分発生量すなわちITO膜20の表面からの
水分離脱量を測定した。
【0086】図5は、ガラス基板10の上にITO膜2
0を成膜した直後のTDS法による測定結果である。こ
のTDSスペクトルは、分子量つまりTDS法で言うM
/zが18であるH2Oまたは17であるOHのスペク
トルを測定したものである。
【0087】図5に示す結果より、70℃と330℃に
水分離脱のピークがあることがわかる。前者はITO膜
20に表面に物理的に吸着している吸着水として存在す
る分であり、後者はITO膜20の表面にてITOと化
学的に結合している結合水として存在する水分であると
考えられる。従って、ITO膜20の表面の結合水がC
uPc膜30の成膜時における結晶性を決める一要因で
はないかと考えられる。
【0088】実際に、ガラス基板10の上にITO膜2
0を成膜したものを、窒素雰囲気中で300℃の温度に
て加熱処理した場合のTDSスペクトルを図6に示す。
この加熱処理を行わない場合すなわち上記図5に示すT
DSスペクトルと比較して、330℃のピーク値が50
%程度まで低減している。さらに、この300℃の加熱
処理を真空中で行った場合のTDSスペクトルを図7に
示す。この場合には、330℃のピークはほとんど認め
られない。
【0089】これら窒素雰囲気中または真空中での30
0℃での加熱処理を行って作成した本第2実施形態の有
機EL素子S2を、封止缶で密封した密封素子を、12
0℃、2hrの上記加速高温放置の条件で確認した結
果、V−I特性のシフトはほとんど無く、輝度低下や輝
度ムラは見られなかった。また、電流のショートやリー
クも発生しなかった。
【0090】以上のことから、基板10上にITO膜2
0を形成し、CuPc膜30等の結晶性を示す有機金属
錯体膜をITO膜20の上に成膜してなる有機EL素子
の製造方法の製造方法においては、有機金属錯体膜30
を成膜する前に、ITO膜20の表面の結合水を脱離処
理することが有効である。
【0091】それによって、結晶性を有する有機金属錯
体膜30の下地となるITO膜20の表面において、吸
着水とともに結合水を低減することができる。そのた
め、成膜された有機金属錯体膜30の結晶性を高いもの
にすることができ、使用温度内において電流のショート
およびリークを防止できるとともにV−I特性のシフト
を抑え、輝度低下や輝度ムラを無くすことができる。
【0092】ここで、上記図6に示したように、脱離処
理後のITO膜20の表面における水分起因のTDSス
ペクトルにおいて、330℃付近の結合水ピーク値が、
脱離処理前のITO膜20の表面における結合水ピーク
値と比較して50%以内となるようにすることが好まし
い。
【0093】さらには、上記図7に示したように、脱離
処理後のITO膜20の表面における水分起因のTDS
スペクトルにおいて、330℃付近の結合水ピークが無
くなるようにすれば、いっそう好ましい。
【0094】なお、ITO膜20の表面に存在する結合
水を50%以内程度にまで低減するには、CuPc膜3
0等の結晶性の有機材料をITO膜20の上に成膜する
前に、ITO膜20の加熱処理温度を250℃以上とす
ることが好ましい。
【0095】[CuPc膜の成膜温度制御による高結晶
性CuPc膜の実現]また、図3に示す本第2実施形態
の有機EL素子S2において、上記した好ましい形態を
実現するには、ITO膜20に対してUV−300℃処
理や250℃以上の加熱処理を行って製造する場合以外
にも、CuPc膜30の成膜時の材料温度を高くするこ
とで実現可能である。
【0096】その根拠について具体例を挙げて説明す
る。ガラス基板10の上に、陽極としてのITO膜20
を成膜する。このITO膜付きガラス基板において、I
TO膜20の上に、正孔注入層であり有機金属錯体膜と
してのCuPc膜30を真空蒸着法により材料加熱温度
420℃で成膜する。これを、420℃成膜品というこ
とにする。
【0097】一方、ITO膜付きガラス基板において、
ITO膜20の上に、CuPc膜30を真空蒸着法によ
り材料加熱温度520℃で成膜する。これを、520℃
成膜品ということにする。
【0098】その後、420℃成膜品および520℃成
膜品それぞれにおいて、CuPc膜30の上に、上記同
様、正孔輸送層40、発光層50、電子輸送層60、電
子注入層70、陰極80を順次成膜し、本第2実施形態
の有機EL素子S2を製造する。
【0099】ここで、420℃成膜品および520℃成
膜品それぞれについて、上記した加速高温放置(120
℃、2hr)を行う前と後とで、X線回折分析によるC
uPc結晶ピーク値の比を調べた。また、封止缶で密封
して上記した加速高温放置の前後におけるV−I特性の
シフトを調べた。
【0100】420℃成膜品の場合、CuPc結晶性ピ
ークの比は約1.5(上記図4参照)でシフト量は約2
V(上記図2参照)であったのに対し、520℃成膜品
の場合、CuPc結晶性ピークの比が約1.15でシフ
ト量は約1Vと良好であった。
【0101】つまり、本製造方法によっても、CuPc
膜30の結晶性が非常に高く安定であり、それにより製
造された本第2実施形態の有機EL素子S2は、使用温
度内において電流のショートおよびリークを防止できる
とともにV−I特性のシフトを抑え、輝度低下や輝度ム
ラを無くすことができる。
【0102】[CuPc結晶性ピークの比とV−I特性
シフト量との関係]ここで、上記加速高温放置(120
℃、2hr)の前と後でのCuPc結晶性ピークの比と
V−I特性シフト量との関係についてまとめておく。同
関係を図8にグラフとして示し、図8の基となるデータ
を図9に示す。なお、図8、図9ではCuPc結晶性ピ
ーク値の比は「X線回折ピーク比」、V−I特性シフト
量は「V−Iシフト」として記載してある。
【0103】上述したが、CuPc結晶性ピーク値の比
は、加速高温放置の前のCuPc結晶性ピークの積分値
に対する加速高温放置の後のCuPc結晶性ピークの積
分値の比であり、当該比が1より大ならば加速高温放置
によってCuPc膜の結晶性が高くなり、1未満ならば
低くなったことを示す。
【0104】また、V−I特性シフト量は、加速高温放
置の前のV−I特性を基準として加速高温放置の後のV
−I特性が何ボルト、シフトしたかを見たものである。
具体的には、上記図4において、CuPc結晶性ピーク
の比が1.5と結晶性が大幅に高く変化したため、上記
図2に示したように、V−I特性シフト量が約2Vと大
きくなっていた。
【0105】また、図9において、「洗浄前処理条件」
は、ガラス基板10の上に成膜したITO膜20をCu
Pc膜30の成膜前に洗浄する条件であり、「プラズ
マ」は上記アルゴンと酸素のプラズマ洗浄処理、「UV
300℃」、「UV250℃」、「UV150℃」はそ
れぞれの温度で紫外線照射を行った処理を意味する。ま
た、図9において「材料加熱温度」はCuPc膜30の
成膜時の材料温度である。
【0106】図8のグラフに示されている、X線回折ピ
ーク比が約1.22、V−Iシフトが1.6Vの有機E
L素子においては輝度ムラが明確に認識されなかった。
しかし、X線回折ピーク比が約1.5、V−Iシフトが
約2.0Vの有機EL素子では輝度ムラが明確に認識さ
れた。
【0107】このことにより、商品性から考えるとX線
回折ピーク比のしきい値は約1.3で、V−Iシフトの
しきい値は約1.6Vにあると言える。
【0108】つまり、上述したように、CuPc結晶性
ピークにおいて、図3に示す本第2実施形態の有機EL
素子S2の使用温度(例えば−40℃〜120℃)内の
加熱による当該CuPc結晶性ピーク値の変化量を、加
熱前の当該CuPc結晶性ピークの±25%以内に小さ
く抑えることにより、使用温度内においてV−I特性の
シフトを最小限に抑えることができ、輝度低下や輝度ム
ラを無くすことができる。
【0109】また、図9から、ITO膜20の加熱処理
温度は300℃でなくても、250℃以上とすれば、有
機金属錯体膜であるCuPc膜30の下地となるITO
膜20の表面において、吸着水とともに結合水を効果的
に低減することができ、結晶性を高めた有機金属錯体膜
を成膜できることがわかる。
【0110】また、加熱によるCuPc結晶性ピーク値
の変化は、増加する方向でなくても減少する方向であっ
ても良い。つまり、当該変化量が、加熱前のCuPc結
晶性ピークの+25%以下かもしくは−25%以上であ
ればよく、図8に示すように、X線回折ピーク比は0.
75以上でも良い。例えば、X線回折ピーク比が0.6
8の場合、V−Iシフトは2.8Vであり、輝度ムラが
認識された。
【0111】なお、本発明においては、一対の電極の間
に発光層を含む有機薄膜を有する有機EL素子におい
て、有機薄膜とは、有機材料からなる正孔注入層、正孔
輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層および電子ブ
ロック層等であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL素子の概
略断面図である。
【図2】上記第1実施形態に係る有機EL素子の高温環
境下における電圧−電流特性のシフト現象を示す図であ
る。
【図3】上記図3に示される電圧−電流特性のシフト現
象を解決するための本発明の第2実施形態に係る有機E
L素子の概略断面図である。
【図4】図3に示す有機EL素子における有機金属錯体
膜について、120℃、2hrで高温放置する前後での
X線回折スペクトルを示す図である。
【図5】ガラス基板の上にITO膜を成膜した直後のT
DSスペクトルを示す図である。
【図6】窒素雰囲気中で300℃の温度にて加熱処理し
た場合のITO膜の表面のTDSスペクトルを示す図で
ある。
【図7】真空雰囲気中で300℃の温度にて加熱処理し
た場合のITO膜の表面のTDSスペクトルを示す図で
ある。
【図8】120℃、2hrで高温処理放置する前と後で
のCuPc結晶性ピークの比とV−I特性シフト量との
関係を示す図である。
【図9】図8の基となるデータを示す図表である。
【図10】本発明者の試作品における100℃、12h
rで高温放置する前と後でのV−I特性を示す図であ
る。
【図11】上記試作品における昇華性材料としてのAl
q3からなる有機薄膜についての観察結果に基づく模式
的な断面図である。
【図12】上記図11に示すボイドの深さの温度依存性
を示すグラフである。
【図13】蒸発性材料であるアダマンタン誘導体の化学
構造式を示す図である。
【図14】ITO上のCuPc膜の表面、昇華性材料か
らなる発光層の表面および蒸発性材料からなる発光層の
表面を顕微鏡観察した結果に基づいて表した図である。
【符号の説明】
10…基板、20…陽極(ITO膜)、30…有機金属
錯体膜(CuPc膜)、40…正孔輸送層、50…発光
層、60…電子輸送層、70…電子注入層、80…陰
極。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の電極の間に発光層を含む有機薄膜
    を有する有機EL素子において、 前記有機薄膜を構成する全ての有機材料が、真空蒸着法
    による成膜時において蒸発性を有するものであることを
    特徴とする有機EL素子。
  2. 【請求項2】 一対の電極の間に発光層を含む有機薄膜
    を有する有機EL素子において、 前記一対の電極の一方が透明電極としてのインジウム−
    錫の酸化物からなるITO膜であり、 このITO膜の上に結晶性を有する有機金属錯体膜が形
    成されており、 前記有機薄膜は、前記有機金属錯体膜の上に形成されて
    いるものであり、 前記有機薄膜を構成する全ての有機材料が、真空蒸着法
    による成膜時において蒸発性を有するものであることを
    特徴とする有機EL素子。
  3. 【請求項3】 前記有機金属錯体膜のX線回折法により
    現れる回折ピークの値において、前記有機EL素子の使
    用温度内の加熱による前記回折ピーク値の変化量が前記
    加熱前の前記回折ピーク値の±25%以内となっている
    ことを特徴とする請求項2に記載の有機EL素子。
  4. 【請求項4】 前記有機錯体膜は銅フタロシアニンから
    なることを特徴とする請求項2または3に記載の有機E
    L素子。
  5. 【請求項5】 70℃以上の環境にさらされることを特
    徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の有機
    EL素子。
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