JP2003138302A - 焼結部材及び切削工具 - Google Patents

焼結部材及び切削工具

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JP2003138302A
JP2003138302A JP2001335693A JP2001335693A JP2003138302A JP 2003138302 A JP2003138302 A JP 2003138302A JP 2001335693 A JP2001335693 A JP 2001335693A JP 2001335693 A JP2001335693 A JP 2001335693A JP 2003138302 A JP2003138302 A JP 2003138302A
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hard particles
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sintered
cutting tool
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JP2001335693A
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Atsushi Komura
篤史 小村
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Niterra Co Ltd
Original Assignee
NGK Spark Plug Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 耐磨耗性が大きく、長寿命であ
り、また低コストで製造することのできる焼結部材及び
切削工具を提供すること。 【解決手段】 断面組織において、小さくとも
1.5のアスペクト比を有する硬質粒子2の占める面積
が、その断面に含有される全硬質粒子の占める面積の5
0%以上であり、且つ小さくとも1.5のアスペクト比
を有する硬質粒子のうちの50%以上が、その長軸が表
面に直交する方向に対して±30°以内の角度をなすよ
うに配向した粒子配向表面層5を有することを特徴とす
る焼結部材1及びこれを使用した切削工具。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、焼結部材及び切
削工具に関し、さらに詳しくは、耐磨耗性能が大きく、
低コストで製造することのできる焼結部材及びこの焼結
部材を使用した切削工具に関する。
【0002】
【従来の技術】切削工具等のように材料を加工する部
材、又は他の部材と摺動運動をする部材等においては、
その耐磨耗性を増大させることが性能の向上及び長寿命
化にとって重要である。
【0003】このような耐磨耗性が要求される部材とし
ては、サーメット製又は超硬合金製等の焼結部材が使用
されることが多い。これらの焼結部材に対しては、その
耐磨耗性等を向上させることを目的として、従来様々な
改良がなされている。
【0004】特開平6−81071号公報には、サーメ
ットの炭窒化チタン硬質相の形状に関する技術が開示さ
れている。同公報によると、このサーメットにおいて
は、硬質分散層を形成しているTiCN粒の50%以上
をアスペクト比1.4以下とすることにより、耐摩耗性
を維持したまま高靱性化が図られる、とされている。
【0005】また特開平11−131170号公報で
は、炭窒化チタン系相粒子のアスペクト比を1.5以上
とすることによりサーメットの耐摩耗性を維持したまま
耐熱クラッチ性の改善を行うことができると主張する発
明が開示されている。
【0006】上記とは別の技術として、耐摩耗性能の向
上を図るために、硬質層を硬質材料でコーティングする
方法が公知となっている。
【0007】しかしながら、高速及び高精度化が要求さ
れる近年の切削加工等においては、さらなる耐摩耗性及
び切削性等の性能の向上が求められている。このため前
記のような硬質粒子の形状を制御しただけの方法では、
このような性能の向上に対する要求を満足させることが
できなくなってきた。また前記の硬質層をコーティング
する方法では、耐摩耗性能を向上させることはできる
が、コーティング工程が必要になるので、製造工程が増
えて、コストが高くなる欠点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、前記従来
技術の有する欠点を解消することを目的とする。すなわ
ちこの発明は、耐磨耗性が大きく、長寿命であり、また
低コストで製造することのできる焼結部材及び切削工具
を提供することを目的とする。この発明の他の目的は、
従来技術におけるようにコーティングを特にしなくても
耐摩耗性に優れた焼結部材及び切削工具を提供すること
にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
のこの発明は、表面層断面組織において、小さくとも
1.5のアスペクト比を有する硬質粒子の占める面積
が、その表面層断面に含有される全硬質粒子の占める面
積の50%以上であり、且つ小さくとも1.5のアスペ
クト比を有する硬質粒子のうちの50%以上が、その長
軸が表面に直交する方向に対して±30°以内の角度を
なすように配向した粒子配向表面層を有することを特徴
とする焼結部材であり、前記焼結部材の好適な態様とし
て、前記粒子配向表面層は、その厚みが小さくとも2μ
mであり、前記焼結部材は、サーメット又は超硬合金に
より形成されていおり、前記焼結部材は、インサート又
はエンジン部品であり、前記焼結部材は、インサートで
あって、前記粒子配向表面層の表面がその逃げ面を形成
する。
【0010】また他の発明は、前記インサートとその焼
結部材を装着可能とする工具本体部とを有して成ること
を特徴とする切削工具である。
【0011】
【発明の実施の形態】この発明に係る焼結部材を、図1
を用いて説明する。図1は、この発明に係る焼結部材の
一具体例である焼結部材1の一部の表面層断面組織を模
擬的に示した概略説明図である。
【0012】焼結部材1は、その表面部の硬質相組織を
制御することにより耐摩耗性能の更なる向上を実現した
部材である。磨耗には、硬質粒子の摩滅による磨耗と、
粒子の脱粒による磨耗とがある。焼結部材1は、粒子の
脱粒、つまり粒子が部材表面から離脱することによる磨
耗を抑制することにより耐摩耗性能が大きい。
【0013】焼結部材1は、サーメット等により形成さ
れることができる。このサーメットは、結合相と炭窒化
金属相を主体とする硬質相とにより組織が主に形成され
ている。前記結合相を形成する物質としては、例えばN
i及びCoを挙げることができる。前記炭窒化金属相を
形成する金属としては、例えばTi、V、Cr、Zr、
Nb、Mo、Hf、Ta及びWを挙げることができる。
前記炭窒化金属としては、TiC及びTiNが、耐磨耗
性、耐溶着性、耐酸化性、耐塑性変形性及び耐熱性が高
い点で特に好適である。前記サーメットとしては、例え
ばTiC−Ni−Mo(MoC)系サーメット、及びT
iC−TiN−Ni−Mo(MoC)系サーメット等の
チタン系サーメット、並びにCr−Ni系サーメ
ットを挙げることができる。これらの中でもチタン系サ
ーメットが好ましく、特にTiC−TiN−Ni−Mo
(MoC)系サーメットが好適である。このチタン系サ
ーメット例えばTiC−TiN−Ni−Mo(MoC)
系サーメットは、WC及びCoを含有していても良い。
このようなチタン系サーメット例えばTiC−TiN−
Ni−Mo(MoC)系サーメットは、TiC基の持つ
耐摩耗性、耐溶着性を活かした上で、更に耐酸化性、耐
組成変形性、耐熱性が向上されている。
【0014】前記硬質相は、多数の硬質粒子から形成さ
れている。図1に示されるように、前記サーメットの組
織つまり焼結部材1の組織においては、多数の硬質粒子
2が集合して硬質相3が形成され、硬質粒子2相互間に
結合相4が存在している。
【0015】前記硬質粒子は、様々な形状を取り得る。
それぞれの前記硬質粒子に対しては、その最大径及び最
小径からアスペクト比を決定することができる。例えば
表面層断面に現れる形状が図2に示したような形状であ
る硬質粒子については、その硬質粒子の外形線に対し
て、その外形線に接しかつその硬質粒子を横切らないよ
うに引いた2本の平行線間の距離の最大値を最大径Dma
xとし、その最小値を最小径Dminとして、Dmax/Dmin
をアスペクト比とする。
【0016】焼結部材1は、図1に示したように、粒子
配向表面層5及び本体部6を有して成る。粒子配向表面
層5は、焼結部材1の高耐摩耗性を実現させる部分であ
る。粒子配向表面層5は、その表面層断面組織におい
て、小さくとも1.5のアスペクト比を有する硬質粒子
の占める面積が、その表面層断面に含有される全硬質粒
子の占める面積の50%以上である部分である。
【0017】つまり粒子配向表面層5は、図1に示され
たその表面層断面の組織に現れる小さくとも1.5のア
スペクト比を有する硬質粒子である長硬質粒子7を有す
る。その粒子配向表面層5の断面に現れる長硬質粒子7
の総面積は、その表面層断面に現れる全硬質粒子の面
積、すなわち長硬質粒子7の総面積と1.5未満のアス
ペクト比を有する硬質粒子である短硬質粒子8の総面積
との合計の50%以上である。
【0018】また粒子配向表面層5は、その表面層断面
組織において、小さくとも1.5のアスペクト比を有す
る硬質粒子のうちの50%以上が、その長軸が表面に直
交する方向に対して±30°以内の角度をなすように配
向した部分である。
【0019】つまり図1に示された粒子配向表面層5の
断面において、その表面層断面に現れる長硬質粒子7の
総数の50%以上の個数の長硬質粒子7は、図3に示し
たように、その長軸11の、焼結部材1の表面9に直交
する方向を示す仮想的な線10に対してなす角度が±3
0°以内である。ここで「長軸」とは、図2においてD
maxを与える2本の平行線に直交する直線のうち、その
硬質粒子を通過する長さが最も大きい直線をいう。
【0020】焼結部材1において、長硬質粒子が小さく
とも1.5のアスペクト比を有すると、このような長尺
の硬質粒子は、結合相4及び他の硬質粒子間に保持され
る表面積が大きいので、脱粒しにくいからであり、アス
ペクト比が1.5未満である短尺の硬質粒子は、前記表
面積が小さく、その脱粒の防止を図ることが困難だから
である。
【0021】焼結部材1で、粒子配向表面層5の断面に
おいて長硬質粒子7の占める面積の、全表面層硬質粒子
の占める面積に対する割合が50%以上であることを要
するのは、前記割合が50%未満では、所望の前記脱粒
抑制の効果が小さいからである。粒子配向表面層5の断
面において前記長硬質粒子の占める面積の、全表面層硬
質粒子の占める面積に対する割合として特に好ましいの
は、55〜70%である。
【0022】焼結部材1において、長軸が表面9に直交
する方向に対して±30°以内の角度をなすように、小
さくとも1.5のアスペクト比を有する長硬質粒子7が
配向していると、このような長硬質粒子7が、結合相4
及び他の硬質粒子間に深く埋め込まれるので、脱粒しに
くくなる。また、このような長硬質粒子7が粒子配向表
面層5から脱粒するには、その長硬質粒子7に対して、
表面9に対し直角に近い角度で上方に力が作用する必要
があるが、磨耗が生ずるときにはこのような方向に作用
する力は通常小さいので、このような長硬質粒子7は脱
粒しにくくなる。前記角度が±30°を越えると、前記
効果が減少し、硬質粒子の脱粒が容易になる。
【0023】焼結部材1において、粒子配向表面層5に
含有される長硬質粒子7のうちの50%以上が、その長
軸が、表面9に直交する方向に対して±30°以内の角
度をなすように配向していることを要するのは、そのよ
うに配向した前記長硬質粒子が50%未満では、所望の
前記脱粒抑制の効果が得られないからである。
【0024】硬質粒子2のアスペクト比、粒子配向表面
層5の断面において長硬質粒子7の占める面積の、全表
面層硬質粒子の占める面積に対する割合、表面9に直交
する方向に対して長硬質粒子7の長軸がなす角度、及び
前記のように配向した長硬質粒子7の割合は、粒子配向
表面層5の断面の電子顕微鏡撮影により得られるところ
の、例えば図12に示されるような組織画像から求める
ことができる。
【0025】粒子配向表面層5の厚みとしては、粒子配
向表面層5が前記条件を満たす限り特に制限はないが、
少なくとも2μmであることが好ましく、さらに好まし
くは3〜6μmである。前記厚みが2μm未満である
と、粒子配向表面層5に含有される前記条件を満たす長
硬質粒子が少なく、充分な前記脱粒抑制の効果が得られ
ない場合がある。粒子配向表面層5の厚みは一様である
必要はなく、上述の条件が満たされる限り、部位により
異なっていてもよい。
【0026】焼結部材1は、粒子配向表面層5を有する
が、その表面層のすべてが粒子配向表面層5である必要
はなく、その表面層の所定部分が粒子配向表面層5であ
ればよい。また、焼結部材1において耐摩耗性が要求さ
れる表面が粒子配向表面層となっていればよい。
【0027】本体部6は、粒子配向表面層5を保持する
部分であり、焼結部材1全体の強度を保証する部分であ
る。また、本体部6は、焼結部材1において粒子配向表
面層5以外の部分でもある。したがって焼結部材1にお
いて粒子配向表面層5以外の表面層がある場合には、そ
の粒子配向表面層5以外の表面層は本体部6の一部であ
る。
【0028】本体部6の組織については、本体部6がサ
ーメットとしての通常の性質を有していれば特に制限は
ない。本体部6の組織においては、例えば前記長硬質粒
子と短硬質粒子との存在比、及び前記長硬質粒子の長軸
の向きについては任意である。
【0029】焼結部材1の大きさ及び形状については、
焼結部材1の機能を確保することができる限り特に制限
はなく、焼結部材1の種類及び使用目的等に応じて適宜
決定することができる。
【0030】焼結部材1は、サーメットにより形成され
ているが、この発明に係る焼結部材は、サーメット以外
の焼結材料、例えば超硬合金により形成されていてもよ
い。この発明に係る焼結部材に超硬合金を使用する場合
には、結合相を形成する物質として、例えばFe、Co
及びNiを挙げることができ、炭化金属相を形成する金
属としては、例えばW、Ti、Ta及びNbを挙げるこ
とができる。前記炭化金属としては、WCが、硬さが大
きく、強じん性である点で特に好適である。前記超硬合
金としては、例えばWC−Co系、WC−TiC−Co
系、WC−TaC−Co系及びWC−TiC−Ta(N
b)C−Co系を挙げることができる。
【0031】焼結部材1は、次のように作用する。焼結
部材1は、粒子配向表面層5において耐磨耗性が大きい
ので、粒子配向表面層5の表面において他の部材と接触
するように使用される。例えば焼結部材1が切削部材で
あれば、その逃げ面が粒子配向表面層5の表面で形成さ
れるように使用され、焼結部材1が軸受けであれば、摺
動部材が摺動する面が粒子配向表面層5の表面で形成さ
れるように使用される。
【0032】焼結部材1がその粒子配向表面層5の表面
において他の部材と接触した状態で、焼結部材1とその
他の部材とが相互に摺動し合うと、粒子配向表面層5の
表面はその部材から摩擦力をうける。
【0033】粒子配向表面層5は、その表面層断面組織
において、長硬質粒子7の占める面積が、その表面層断
面に含有される全表面層硬質粒子の占める面積の50%
以上である。つまり粒子配向表面層5を形成する硬質粒
子の中には、小さくとも1.5のアスペクト比を有する
長尺の硬質粒子が高割合で存在する。このような長尺の
硬質粒子は、短尺の硬質粒子に比較して、結合相4及び
他の硬質粒子間に保持される表面積が大きいので、粒子
配向表面層5から離脱しにくい。したがって焼結部材1
においては、前述のように他の部材との間で相互の摺動
が起きても、粒子配向表面層5からの長硬質粒子7の離
脱が生じにくいので、硬質粒子の脱粒による磨耗が小さ
い。
【0034】粒子配向表面層5は、その表面層断面組織
において、長硬質粒子7のうちの50%以上が、その長
軸が表面に直交する方向に対して±30°以内の角度を
なすように配向している。つまり粒子配向表面層5に含
有される長硬質粒子7の約半数以上は、その長軸が粒子
配向表面層5の表面9に対して直角に近い角度を有する
ように存在しているので、その長硬質粒子7における表
面9から遠い部分は、粒子配向表面層5の深部にまで達
している。したがって焼結部材1においては、前述のよ
うに他の部材との間で相互の摺動が起きても、粒子配向
表面層5からの長硬質粒子7の離脱が生じにくいので、
硬質粒子の脱粒による磨耗が小さい。
【0035】また、長軸が粒子配向表面層5の表面9に
対して直角に近い角度を有するように存在している長硬
質粒子7が粒子配向表面層5から脱粒するには、その長
硬質粒子7に対して、表面9に対し直角に近い角度で上
方に力が作用する必要がある。焼結部材1と他の部材と
の摺動により焼結部材1に磨耗が生ずるときには、焼結
部材1に含有される硬質粒子に対して、そのような方向
に作用する力は通常小さいので、長硬質粒子7は、焼結
部材1の表面9に対して直角に近い角度で焼結部材1中
に存在しているほど、その表面から離脱しにくい。した
がって焼結部材1においては、前述のように他の部材と
の間で相互の摺動が起きても、粒子配向表面層5からの
長硬質粒子7の離脱が生じにくいので、硬質粒子の脱粒
による磨耗が小さい。
【0036】以上のように焼結部材1は、硬質粒子の脱
粒に基づく磨耗が小さいので、耐磨耗性が大きい。
【0037】焼結部材1は、サーメットの公知の製造方
法において、焼成温度、冷却速度並びに製造雰囲気中に
含まれる気体の種類及びその圧力等を適宜設定すること
によって製造することができる。
【0038】焼結部材1を形成するための原料として
は、サーメット及び超硬合金を形成するのに使用される
通常の原料を採用することができる。通常の場合、この
焼結部材は、原料粉末を焼結することにより得ることが
できる。原料粉末としては、サーメット及び超硬合金を
形成するための通常の原料が使用される。前記焼成温度
は、例えば1400〜1650℃とすることができ、好
ましくは1500〜1600℃である。
【0039】前記冷却速度は、例えば−2.5〜−0.
5℃/minとすることができ、好ましくは−2〜−1℃
/minである。
【0040】前記製造雰囲気中に含まれる気体の種類と
しては、例えば窒素及びアルゴンを挙げることができ、
好ましいのは窒素である。
【0041】前記気体の圧力は、例えば1.0〜6.0
kPaとすることができ、好ましくは1.5〜4kPaで
ある。この発明に係る焼結部材の表面に存在する特異な
粒子配向表面層は、原料粒子がほぼ球状の粒子であって
も上記焼結条件下に焼結及び冷却を行うことにより焼結
部材における表面近くの球状の粒子が一方向に成長し、
その結果として形成されるものと、考えられる。
【0042】この発明に係る焼結部材は、土木建設機
械、鉄道車両、自動車、航空機、船舶、工作機械等の耐
磨耗性が要求される用途に幅広く使用することができ
る。そのような用途としては、例えばインサート、切削
工具、エンジン部品例えばシリンダー及びピストン等を
挙げることができる。
【0043】この発明に係る焼結部材であるインサート
は、目的に応じて種々の形状に成形することが可能であ
る。図4に、この発明に係る焼結部材であるインサート
の一具体例であるインサート12を示す。
【0044】図4に示されたインサート12は、その形
状が直方体である。その一頂点がコーナー13である。
コーナー13を形成する3辺のうち、最も長い辺14が
切れ刃17であり、2番目に長い辺15が切れ刃18を
形成している。前記直方体が有する面のうち、辺14及
び辺15を2辺として有する面がすくい面19であり、
辺14及び前記3辺の中で最も短い辺16を2辺として
有する面が逃げ面20であり、辺15及び辺16を2辺
として有する面が逃げ面21である。
【0045】インサート12においては、逃げ面20及
び逃げ面21が前記粒子配向表面層の表面により形成さ
れている。
【0046】インサート12の使用方法は、通常のイン
サートと同様である。インサート12は、従来のインサ
ートと同様にして製造することができる。インサート
は、その逃げ面が切削時に被削材により強い力を受けて
磨耗する。インサート12においては、逃げ面20及び
逃げ面21が前記粒子配向表面層の表面により形成され
ているので、焼結部材1の作用における説明で示したよ
うに、被削材から強い力を受けても、磨耗が小さい。こ
のためインサート12は長寿命である。
【0047】この発明に係る焼結部材は、それ自体で切
削工具とすることもできるが、この焼結部材をインサー
トとすることもできる。このインサートを工具本体部に
装着することによって切削工具を製造することができ
る。前記切削工具としては、例えばバイト、ドリル、フ
ライス及びブローチを挙げることができる。この発明に
係るインサートは、従来のインサートと同様にして工具
本体部に装着することができる。
【0048】図5に前記切削工具の例を示した。図5
は、バイト22の斜視図である。バイト22は、この発
明に係るインサート23と工具本体部であるホルダ24
とを有して成る。
【0049】上記切削工具の例において使用されるこの
発明に係るインサートにおいては、逃げ面となる面が前
記粒子配向表面層の表面によって形成されている。上記
切削工具の作用は、前記焼結部材1及びインサート12
において示した作用と同様である。
【0050】
【実施例】以下、この発明に係る焼結部材を実施例によ
り具体的に説明する。
【0051】(1)焼結体の作成 表1に示された配合組成に従って、平均粒径:1μmの
炭化チタン粉末及び窒化チタン粉末(炭化チタン/窒化
チタン=1/1(重量比))、平均粒径1.5μmの炭
化タングステン粉末、平均粒径3μmの炭化モリブデン
(MoC)粉末、平均粒径1μmの炭化ニオブ粉末、
平均粒径3μmのNi粉末、並びに平均粒径3μmのC
o粉末を配合し、又は前記炭化チタン粉末及び窒化チタ
ン粉末、前記炭化タングステン粉末、前記炭化ニオブ粉
末、前記Ni粉末、前記Co粉末並びに平均粒径1.5
μmの炭化タンタル粉末を配合して、アセトンを溶媒と
してボールミルにより18時間混合した。混合後の粉末
は乾燥後、マイクロワックス系バインダーを添加して混
練した。次いで、その混練物を200MPaの圧力でプ
レス成形して所定の形状に成形した後、脱ワックスを行
った。
【0052】得られた成形体を、窒素雰囲気中で145
0〜1650℃にて60分間保持することにより焼成し
た。その後(最高キープ温度−100)℃まで表1に示
された冷却速度及び窒素圧にて冷却した。以上によりサ
ーメット製の焼結体A〜Hが得られた。
【0053】(2)電子顕微鏡による断面観察 焼結体A〜Hを切断し、その断面を鏡面研磨した後、走
査型電子顕微鏡によりその断面の組織写真を得た。この
組織写真から、表面層に含まれる硬質相全体の面積に対
する、その表面層に存在するアスペクト比が1.5以上
である硬質粒子の面積の割合を測定し、その値を長硬質
粒子存在割合とした。
【0054】またこの組織写真から、その表面層に存在
するアスペクト比が1.5以上である硬質粒子の総数に
対する、表面に直交する方向に対して長軸が±30°以
内の角度をなすように配向した前記硬質粒子の個数を測
定し、この値を配向硬質粒子割合とした。
【0055】以上の測定から得られた結果を表2に示し
た。表2に示された長硬質粒子存在割合及び配向硬質粒
子割合から、焼結体A、B及びGは、前記粒子配向表面
層を有しており、焼結体C〜F及びHは、前記粒子配向
表面層を有していないことが確認された。また焼結体E
について、前記組織写真から、表面層に含まれる硬質相
全体の面積に対する、その表面層に存在するアスペクト
比が1.4以上である硬質粒子の面積の割合を測定し、
その値を1.4-長硬質粒子存在割合とした。焼結体Eにつ
いて、前記組織写真から、その表面層に存在するアスペ
クト比が1.4以上である硬質粒子の総数に対する、表
面に直交する方向に対して長軸が±30°以内の角度を
なすように配向した前記硬質粒子の個数を測定し、この
値を1.4-配向硬質粒子割合とした。これらの結果も併せ
て表2に示した。
【0056】(3)切削試験 焼結体A〜Fを研磨加工して、lSO規格でSNMN1
20308として規定された形状を有する切削工具を作
成した。焼結体G及びHを研磨加工して、lSO規格で
SNGN120308として規定された形状を有する切
削工具を作成した。これらの切削工具の形状を図6〜図
8に示した。図6は、切削工具28の斜視図である。図
7は、切削工具28の側面部分断面模式図である。図8
は、図6において点線で囲んだ部分の部分拡大斜視図で
ある。切削工具28は、厚さ約3.18mm、一辺が約1
2.7mmの略正方形断面の偏平角柱形状を有し、そのコ
ーナー部29に施されたアールの大きさは約0.8mmで
ある。エッジ部30に施された面取り部(チャンファ)
は、図7に示されるように、主面31側の幅tが約0.
1mm、主面31に対する傾斜角度θが約25°となるよ
うに形成した。
【0057】焼結体A、B及びGから、この発明に係る
切削工具が得られ、焼結体C〜F及びHから、この発明
に係る切削工具でない切削工具が得られた。焼結体A、
B及びGにおいては、逃げ面が前記粒子配向表面層の表
面により形成されるように切削工具を作成した。
【0058】これらの切削工具を用いて切削試験を実施
した。図9に示す形状の棒状の被削材35を軸線周りに
回転させ、その外周面に対し切削工具28を、図10に
示すように当接させ、主面31の一方をすくい面、側面
32を逃げ面として用いることにより、焼結体A〜Fか
ら得られた切削工具については下記切削条件1にて、焼
結体G〜Hから得られた切削工具については下記切削条
件2にて被削材の外周面を湿式で連続切削した。図10
において、33は横逃げ面、34は前逃げ面を示す。
【0059】(切削条件1) 被削材 ; SNCM439H 切削速度 ; 250m/min 切込み ; 1.5mm 送り ; 0.15mm/rev 切削時間 ; 8min 切削方式 ; 湿式 工具形状 ; SNMN120308(チャンファー;
0.1×25°) (切削条件2) 被削材 ; SNCM439H 切削速度 ; 180m/min 切込み ; 1.5mm 送り ; 0.2mm/rev 切削時間 ; 8min 切削方式 ; 湿式 工具形状 ; SNMN120308(チャンファー;
0.1×25°) 切削終了後、工具の刃先の逃げ面摩耗量 Vn(横逃げ
面33側の旋削方向の摩耗高さ:図11参照)を測定し
た。その結果を表2に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【発明の効果】この発明に係る焼結部材は、粒子配向表
面層を有するので、硬質粒子の脱粒が抑制され、耐磨耗
性が大きい。この焼結部材をインサート又は切削工具に
用いれば、低炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等広範囲の
被削材に対して、優れた耐摩耗性が発揮される。
【0063】この発明に係る焼結部材は、その製造過程
においてコーティング工程を必要としないので、製造工
程数が少なく、低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、焼結部材1の一部の表面層断面組織を
示した概略説明図である。
【図2】図2は、アスペクト比を求めるための粒子の最
大径及び最小径を定義するための説明図である。
【図3】図3は、長硬質粒子7の長軸11の、焼結部材
1の表面9に直交する方向を示す線10に対してなす角
度を示す説明図である。
【図4】図4は、インサート12の斜視図である。
【図5】図5は、バイト22の斜視図である。
【図6】図6は、切削工具28の斜視図である。
【図7】図7は、切削工具28の側面部分断面模式図で
ある。
【図8】図8は、切削工具28の部分拡大斜視図であ
る。
【図9】図9は、切削試験の概要を示す説明図である。
【図10】図10は、切削試験の概要を示す説明図であ
る。
【図11】図11は、逃げ面摩耗量の求め方を示す説明
図である。
【図12】図12は、粒子配向表面層を有する焼結部材
の表面層断面を示す、図面代用写真である電子顕微鏡写
真である。
【符号の説明】
1・・焼結部材、2・・硬質粒子、3・・硬質相、4・
・結合相、5・・粒子配向表面層、6・・本体部、7・
・長粒子配向表面層、8・・短粒子配向表面層、9・・
表面、10・・線、11・・長軸、12・・インサー
ト、13・・コーナー、14・・辺、15・・辺、16
・・辺、17・・切れ刃、18・・切れ刃、19・・す
くい面、20・・逃げ面、21・・逃げ面、22・・バ
イト、23・・インサート、24・・ホルダ、28・・
切削工具、29・・コーナー部、30・・エッジ部、3
1・・主面、32・・側面、33・・横逃げ面、34・
・前逃げ面、35・・被削材、Dmax・・最大径、Dmin
・・最小径、t・・幅、θ・・傾斜角度、Vn・・逃げ
面摩耗量

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面層断面組織において、小さくとも
    1.5のアスペクト比を有する硬質粒子の占める面積
    が、その表面層断面に含有される全硬質粒子の占める面
    積の50%以上であり、且つ小さくとも1.5のアスペ
    クト比を有する硬質粒子のうちの50%以上が、その長
    軸が表面に直交する方向に対して±30°以内の角度を
    なすように配向した粒子配向表面層を有することを特徴
    とする焼結部材。
  2. 【請求項2】 前記粒子配向表面層は、その厚みが小さ
    くとも2μmである請求項1に記載の焼結部材。
  3. 【請求項3】 サーメット又は超硬合金により形成され
    ている請求項1又は2に記載の焼結部材。
  4. 【請求項4】 インサート又はエンジン部品である請求
    項1〜3のいずれか1項に記載の焼結部材。
  5. 【請求項5】 インサートであって、前記粒子配向表面
    層の表面がその逃げ面を形成する請求項1〜4のいずれ
    か1項に記載の焼結部材。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の焼結部材とその焼結部
    材を装着可能とする工具本体部とを有して成ることを特
    徴とする切削工具。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007532320A (ja) * 2004-04-13 2007-11-15 アキュメント インテレクチュアル プロパティーズ エルエルシー 粉末状金属のマルチローブ状工具及び作成の方法
WO2018181036A1 (ja) * 2017-03-29 2018-10-04 京セラ株式会社 切削インサート及びこれを備えた切削工具

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