JP2003137917A - ビニルエステル系重合体の製造方法 - Google Patents

ビニルエステル系重合体の製造方法

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JP2003137917A
JP2003137917A JP2001340151A JP2001340151A JP2003137917A JP 2003137917 A JP2003137917 A JP 2003137917A JP 2001340151 A JP2001340151 A JP 2001340151A JP 2001340151 A JP2001340151 A JP 2001340151A JP 2003137917 A JP2003137917 A JP 2003137917A
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vinyl
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Mitsuo Sawamoto
光男 澤本
Masami Uegakito
正己 上垣外
Takeshi Ando
剛 安藤
Kyoretsu Haku
京烈 白
Masayuki Wakioka
正幸 脇岡
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Daicel Corp
Kuraray Co Ltd
Unitika Ltd
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Kuraray Co Ltd
Unitika Ltd
Daicel Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ビニルエステル系重合体の一次構造を精密に
制御しながら、即ち、その分子量及び分子量分布を精密
に制御しながら工業的に容易にビニルエステル系重合体
を製造する方法を提供する。 【解決手段】 遷移金属錯体、有機ハロゲン化物及びル
イス酸からなるリビングラジカル重合開始剤系の存在下
でビニルエステル系単量体を重合させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一次構造を精密に
制御しながらビニルエステル系重合体を製造する方法に
関する。より詳しくは、本発明は、特定のリビングラジ
カル重合開始剤系の存在下で、分子量及び分子量分布を
精密に制御しながらビニルエステル系重合体を製造する
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ラジカル重合を利用したビニル系重合体
の製造は、ポリ酢酸ビニル等の各種重合体の製造方法と
して、古くから工業的規模で実施されている。従来の製
造方法による場合、一連のラジカル重合反応における生
長ラジカルは、再結合、不均化等の停止反応や連鎖移動
などの副反応により不活性化してしまうため、得られる
ビニル系重合体はその分子量分布が広く、また、重合体
の分子量制御、重合体の分子末端の制御やブロックポリ
マーの合成は困難であった。
【0003】これら従来の製造方法における技術的課題
を解決する方策として、リビングラジカル重合法が注目
されている。リビングラジカル重合を用いれば、分子
量、分子量分布及び分子末端の制御等が可能になり、ブ
ロックポリマーを得ることも可能になる。特にスチレ
ン、メタクリレート及びアクリレート等の単量体につい
ては多くの研究がなされており、そのポリマーの一次構
造をある程度精密に制御できることが知られている。
【0004】しかしながら、酢酸ビニル等のビニルエス
テル系単量体は連鎖移動定数が非常に大きいため、スチ
レンやメタクリレートに比較して連鎖移動が起こりやす
く、さらには電子の共鳴安定化効果が低く生長ラジカル
が非常に不安定であるため、副反応が起こりやすく、こ
れまでビニルエステル系単量体のリビングラジカル重合
に成功した例は極めて少ない。
【0005】ラジカル重合における重合体の一次構造の
精密制御に関して、スチレン単量体については文献Macr
omolecules, 33, 3543 (2000)に、アクリル系単量体に
ついては文献Polymer Preprints, Japan, 50, 106 (200
1)に、炭素−ヨウ素結合を有する有機ハロゲン化物及び
鉄を中心金属とする遷移金属錯体からなるラジカル重合
開始剤系を用いることで、分子量分布の狭い重合体を得
ることができるとの記載がある。しかし、これらの文献
において、ビニルエステル系単量体についての報告はな
されていない。
【0006】これまでにビニルエステル系単量体のリビ
ングラジカル重合に関しては、トリイソブチルアルミニ
ウム、2,2′−ジピリジル及び2,2,6,6−テト
ラメチル−1−ピペリジニルオキシ化合物(TEMP
O)の3成分系からなる開始剤系を用いたものが提案さ
れている(Macromolecules, 27, 645 (1994))。しかし
ながら本開始剤系は水、酸素に非常に不安定であるた
め、微量の水分、酸素の存在によって重合の再現性が損
なわれ、工業的な製造方法には適さない。
【0007】2,2′−アゾビス(イソブチロニトリ
ル)、N,N−ジエチルジチオカルバメートの2成分か
らなる開始剤系を用いる方法も提案されている(Macrom
ol. Rapid. Commun., 21, 1035 (1994))。しかしなが
ら、ビニルエステル系単量体の場合、アクリレートやメ
タクリレートに比べて2,2′−アゾビス(イソブチロ
ニトリル)を多量に使用する必要があり、本開始剤系を
用いた重合も工業的に好ましい方法とはいえない。
【0008】また、2,2′−アゾビス(イソブチロニ
トリル)、ヨウ素化合物の2成分からなる開始剤系を用
いる方法も提案されている(特開平10−60221号
公報)。しかしながら、重合開始末端になるヨウ素化合
物に対して多量の2,2′−アゾビス(イソブチロニト
リル)が必要であり、本開始剤系を用いた重合も工業的
に好ましい方法とはいえない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
の技術的課題を解決し、ビニルエステル系重合体の一次
構造を精密に制御しながら、即ち、その分子量及び分子
量分布を精密に制御しながら工業的に容易にビニルエス
テル系重合体を製造する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の遷移金属錯
体、有機ハロゲン化物及びルイス酸からなる開始剤系の
存在下で、ビニルエステル系単量体を重合させることに
より、分子量分布の狭いビニルエステル系重合体が得ら
れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】即ち、本発明は、以下の成分(A)、
(B)及び(C): (A)遷移金属錯体; (B)有機ハロゲン化物; 及び (C)ルイス酸 からなるリビングラジカル重合開始剤系の存在下で、炭
素数3〜20のビニルエステル系単量体(D)を重合さ
せ、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw
/Mnが1.1〜2.0の範囲内にあるビニルエステル
系重合体を得ることを特徴とするビニルエステル系重合
体の製造方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】本発明のビニルエステル系重合体の製造方
法においては、遷移金属錯体(成分(A))、重合開始
剤として有機ハロゲン化物(成分(B))及び活性化剤
としてルイス酸(成分(C))からなるリビングラジカ
ル重合開始剤系を用いて、ビニルエステル単量体を重合
する。
【0014】本発明において、リビングラジカル重合開
始剤系を構成する成分(A)の遷移金属錯体を構成する
中心金属としては、鉄、モリブデン、ルテニウム、ロジ
ウム、ニッケル、銅等の周期律表第6〜11族元素(日
本化学会編「化学便覧基礎編I改訂第4版」(1993
年)記載の周期律表による)が好ましく、中でも鉄、モ
リブデンが好ましい。
【0015】鉄を中心金属とする遷移金属錯体の具体例
としては、アイロン(II)アセテート、ジカルボニルシ
クロペンタジエニルヨードアイロン、アイロン(II)ア
セチルアセトナート、アイロン(II)フタロシアニン、
1,1′−ジアセチルフェロセン、1,1′−ジメチル
フェロセン、ジカルボニルシクロペンタジエニルアイロ
ンダイマー、ジシクロペンタジエニルアイロン、トリカ
ルボニル(シクロオクタテトラエン)アイロン等が挙げ
られ、中でもジカルボニルシクロペンタジエニルアイロ
ンダイマーが好ましい。
【0016】モリブデンを中心金属とする遷移金属錯体
の具体例としては、モリブデンヘキサカルボニル、モリ
ブデン(II)アセテートダイマー、[1,1′−ビス
(ジフェニルフォスフィノ)フェロセン]テトラカルボ
ニルモリブデン、[1,2−ビス(ジフェニルフォスフ
ィノ)エタン]テトラカルボニルモリブデン、(ビシク
ロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)テトラカル
ボニルモリブデン、(プロピルシクロペンタジエニル)
モリブデントリカルボニルダイマー、cis−テトラカ
ルボニルビス(ピペリジン)モリブデン、シクロペンタ
ジエニルモリブデントリカルボニルハライド、シクロペ
ンタジエニルモリブデントリカルボニルダイマー、ジカ
ルボニル(ペンタメチルシクロペンタジエニル)モリブ
デンダイマー、メチルシクロペンタジエニルモリブデン
トリカルボニルダイマー、トリアミンモリブデントリカ
ルボニル、トリカルボニル(シクロヘプタトリエン)モ
リブデン等が挙げられ、中でもシクロペンタジエニルモ
リブデントリカルボニルダイマーが好ましい。
【0017】本発明において、リビングラジカル重合開
始剤系を構成する成分(B)の有機ハロゲン化物は重合
開始剤として機能する。このような有機ハロゲン化物と
しては、ヨウ化水素とアルケンとの付加反応による生成
物、ヨードメタン、ヨードエタン、ヨードプロパン、ヨ
ードブタン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタ
ン、ヨードホルム、クロロヨードメタン、ヨードアセト
ニトリル、ヨード酢酸、1,6−ジヨードヘキサン、ヨ
ードアセトアミド等が挙げられ、中でもヨウ化水素とア
ルケンとの付加反応による生成物が好ましい。
【0018】上記アルケンの具体例としては、酢酸ビニ
ル等のビニルエステル系単量体;メタクリル酸メチル、
メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル系単量
体;アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル系単量体
等が挙げられる。
【0019】上記成分(B)の有機ハロゲン化物の量
は、目的物である重合体の分子量に応じて適宜決定され
るが、有機ハロゲン化物の量が少なすぎると重合体の一
次構造の制御が難しくなり、多すぎると重合体が得られ
にくくなるため、ビニルエステル系単量体1モルに対し
て0.00015〜0.2モルの割合で添加することが
好ましく、0.0005〜0.1モルの割合で添加する
ことがより好ましい。
【0020】本発明において、リビングラジカル重合開
始剤系を構成する成分(C)のルイス酸は活性化剤とし
て機能する。このようなルイス酸としては、例えばアル
ミニウムトリイソプロポキサイドやアルミニウムトリ
(t−ブトキシド)等のアルミニウムトリアルコキシ
ド;ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)メチル
アルミニウム、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフ
ェノキシ)メチルアルミニウム等のビス(置換アリール
オキシ)アルキルアルミニウム;トリス(2,6−ジフ
ェニルフェノキシ)アルミニウムなどのトリス(置換ア
リールオキシ)アルミニウム;チタンテトライソプロポ
キサイド等のチタンテトラアルコキサイド;トリイソブ
チルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム等が挙
げられ、中でも、アルミニウムトリイソプロポキサイ
ド、チタンテトライソプロポキサイド、トリイソブチル
アルミニウムが好ましい。これらは単独で又は2種以上
を併用することもできる。
【0021】本発明において、リビングラジカル重合開
始剤系における各成分の含有割合については、必ずしも
限定されるわけではないが、成分(B)に対する成分
(A)の割合が少なすぎると重合が遅くなる傾向があ
り、逆に多すぎると得られる重合体の分子量分布が広く
なる傾向があるので、成分(A)/成分(B)のモル比
は0.05/1〜3/1の範囲内であることが好まし
い。また、成分(B)に対する成分(C)の割合が少な
すぎると重合が遅くなる傾向にあり、逆に多すぎると得
られる重合体の分子量分布が広くなる傾向にあるので、
成分(B)/成分(C)のモル比は1/0.05〜1/
5の範囲内であることが好ましい。
【0022】本発明において使用するリビングラジカル
重合開始剤系は、通常、使用直前に成分(A)の遷移金
属錯体、成分(B)の有機ハロゲン化物及び成分(C)
のルイス酸を混合することにより調製することができ
る。また、成分(A)の遷移金属錯体、成分(B)の有
機ハロゲン化物及び成分(C)のルイス酸をそれぞれ別
々に保管しておき、重合反応系中にそれぞれ別々に添加
し、重合反応系中で混合してリビングラジカル重合開始
剤系として機能するようにしてもよい。
【0023】また、本発明において、重合に用いられる
炭素数3〜20のビニルエステル系単量体(D)として
は、例えば、酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、蟻酸ビニ
ル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、n−カプロン酸
ビニル、イソカプロン酸ビニル、オクタン酸ビニル、ラ
ウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビ
ニル、トリメチル酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、トリ
クロロ酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、安息香酸
ビニル等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよ
く、2種以上が併用されても良い。これらの中でも、酢
酸ビニル、ピバル酸ビニルが好ましい。
【0024】なお、本発明の効果を損なわない範囲で、
ビニルエステル系単量体(D)以外の単量体、例えば、
(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メ
タ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピ
ル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリ
ル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メ
タ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t
ert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル
酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、
(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アク
リル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)
アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジ
ル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸
ステアリル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル
等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;スチレ
ン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メ
チルスチレン、o−メチルスチレン、2,4−ジメチル
スチレン、2,5−ジメチルスチレン、p−エチルスチ
レン、p−イソプロピルスチレン、p−クロロメチルス
チレン、p−(2−クロロエチル)スチレン等のスチレ
ン系モノマーなどと、ビニルエステル系単量体(D)と
を併用し、それらを共重合させることも可能である。
【0025】本発明においては、遷移金属錯体(成分
(A))、重合開始剤として有機ハロゲン化物(成分
(B))及び活性化剤としてルイス酸(成分(C))か
らなるリビングラジカル重合開始剤系の存在下で、上記
ビニルエステル系単量体(D)をラジカル重合させるこ
とにより、ビニルエステル系重合体が得られる。上記ビ
ニルエステル系単量体(D)は、重合溶液に最初から全
量添加しても良く、重合の進行に伴い逐次添加してもよ
い。
【0026】本発明の製造方法により得られるビニルエ
ステル系重合体の分子量は、小さすぎると重合体として
の機能が発現しにくく、大きすぎると取扱いが困難にな
るので、500〜500000(数平均分子量)である
ことが好ましく、1000〜200000(数平均分子
量)であることがより好ましい。ここで、ビニルエステ
ル系重合体の分子量の調整は、上記リビングラジカル重
合開始剤系に含有される成分(B)の有機ハロゲン化物
の濃度を調整することにより行うことができる。具体的
には、有機ハロゲン化物の濃度を増大させることによ
り、ビニルエステル系重合体の分子量を小さくすること
ができ、逆に、有機ハロゲン化物の濃度を低減させるこ
とにより、ビニルエステル系重合体の分子量を大きくす
ることができる。
【0027】本発明の製造方法で利用する重合方法とし
ては、従来公知の方法が使用可能であり、例えば、塊状
重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が挙げ
られる。中でも、連鎖移動を少なくし、重合をより精密
に制御するという観点から、ビニルエステル系単量体濃
度の非常に高い溶液重合法、もしくは塊状重合法が好適
に用いられる。溶液重合法においては、ビニルエステル
系単量体(D)の濃度が20重量%以上であることが好
ましく、30重量%以上であることがより好ましい。ま
た、押出機を用いて連続的に重合を行っても良い。
【0028】なお、溶液重合法を採用した場合、その溶
媒として、アルコール、トルエン、ベンゼン、アニソー
ル、酢酸エチル等が挙げられるが、特にビニルエステル
系単量体の重合時に連鎖移動定数が比較的小さく、重合
体の溶解性にも優れるアニソール、ベンゼン、酢酸エチ
ルが好ましい。
【0029】本発明の製造方法において、重合反応開始
に際しては、窒素のような不活性気体の雰囲気下、反応
容器内で単量体(D)、溶媒、ルイス酸(成分
(C))、遷移金属錯体(成分(A))及びガスクロマ
トグラフィー測定用の内部標準物質からなる混合物を調
製し、これに重合開始剤(成分(B))を加えることが
好ましい。そして、このようにして得られた混合物を、
通常10〜120℃、好ましくは25〜100℃の範囲
内の温度に加温することにより重合を開始させることが
できる。
【0030】重合終了後、例えば、重合反応系を0℃以
下、好ましくは−78℃程度に冷却して反応を停止さ
せ、ついでトルエン、アニソール等の溶媒で希釈した
後、n−ヘキサン中に投入し、沈殿物を数回洗浄して室
温で減圧乾燥させることにより、目的物であるビニルエ
ステル系重合体を得ることができる。
【0031】本発明におけるリビングラジカル重合にお
いて、成分(B)の有機ハロゲン化物中の炭素−ハロゲ
ン結合が、成分(A)の遷移金属錯体及び成分(C)の
ルイス酸により活性化され、該結合中にビニルエステル
系単量体が挿入される形で重合が進行する。このような
重合の進行形式は、得られたビニルエステル系重合体の
生長末端の多くがハロゲン元素であるという事実からも
支持されている。よって、成分(B)の有機ハロゲン化
物として官能基を有するものを用いることにより、目的
物であるビニルエステル系重合体の開始末端に官能基を
導入することが可能である。また、生長末端のハロゲン
元素の反応性を利用して、生長末端のハロゲン元素を他
の官能基へ変換することも可能である。
【0032】このように目的物であるビニルエステル系
重合体に導入された末端官能基は、マクロモノマーの合
成、ブロック共重合体の合成及び架橋点等に利用するこ
とができる。また、このようにして得られるブロック共
重合体は、単独重合体では得られないような新規な物性
を示す。例えば、ジブロック共重合体は相溶化剤等に有
用であり、ABA型等のトリブロック共重合体は熱可塑
性エラストマー等に有用である。
【0033】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定
されるものではない。
【0034】なお、以下の実施例及び比較例において、
特に断りのない限り、操作は全て乾燥窒素ガス雰囲気下
で行い、試薬類は容器から注射器により採取し、反応系
に添加した。また、溶媒及び単量体は、蒸留により精製
し、更に乾燥窒素ガスを吹き込んだものを用いた。
【0035】重合体の重合率は、反応混合液中の単量体
の濃度をガスクロマトグラフイー(内部標準物質:n−
オクタン)にて分析し、その分析値に基づき算出した。
得られた重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子
量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の値は、ゲル
・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を
用いて次の条件にて測定し、ポリメタクリル酸メチル換
算にて算出した。
【0036】カラム: 昭和電工社製 ショーデックス
K−805L(3本直列) 溶媒: クロロホルム 温度: 40℃ 検出器: RI及びUV 流速: lml/分
【0037】参考例(エチルメタクリレートのヨウ化水
素付加体の製造) アルゴン置換した三口フラスコに、ヨウ化ナトリウム
(和光純薬工業社製)122gを秤量して投入し、十分
に乾燥させた後、500mlのアセトンを投入してヨウ
化ナトリウムを溶解させ、得られた溶液に、2−ブロモ
イソ酪酸エチル(東京化成工業社製)25mlを添加
し、65℃で24時間反応させた。
【0038】得られた反応物を濾過した後、濾液に蒸留
水及びジエチルエーテルを添加し、分液ロートを用いて
有機層のみ抽出した。得られた有機層を、チオ硫酸ナト
リウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、蒸留水にて順次
洗浄した後、有機層のみを抽出し、減圧乾燥した。得ら
れた反応物を更に減圧蒸留にて精製した後、60℃、
1.33×103Paの条件下で減圧乾燥を行い、目的
のエチルメタクリレートのヨウ化水素付加体を得た。
【0039】実施例1 溶媒にアニソールを用い、エチルメタクリレートのヨウ
化水素付加体が40mmol/l、ジカルボニルシクロ
ペンタジエニルアイロンダイマー(Aldrich社製)が2
0mmol/l、アルミニウムトリイソプロポキサイド
(Aldrich社製)が20mmol/l、酢酸ビニルモノ
マー(和光純薬工業社製)が8mol/l、n−オクタ
ン(和光純薬工業社製)が0.31mol/lになるよ
うに均一に混合して重合反応液を調製し、その重合反応
溶液を0.6mlずつ試験管に分注・溶封し、60℃に
加温して重合を開始させた。27時間反応させた後、重
合溶液を−78℃に冷却して重合を停止させた。
【0040】得られた反応液中の酢酸ビニルモノマー
を、n−オクタンを内部標準としてガスクロマトグラフ
ィーにて分析したところ、酢酸ビニルの重合率は56%
であった。また、得られた反応溶液をアニソールで希釈
した後、n−へキサン中に投入して重合体を沈殿させ、
n−へキサンで数回洗浄した後、室温で減圧乾燥するこ
とによりポリ酢酸ビニルを得た。得られたポリ酢酸ビニ
ルの分子量及び分子量分布をゲル・パーミエーション・
クロマトグラフィーにて測定したところ、Mn=108
00、Mw=20200、Mw/Mn=1.87であっ
た。
【0041】実施例2〜15、比較例1〜3 表1及び表2に示す所定量のモノマー、ヨウ素化合物、
遷移金属錯体、ルイス酸、溶媒、内部標準物質等を用
い、実施例1と同様の操作に従って重合反応溶液を調製
し、表1及び表2に示す温度及び反応時間で重合を行っ
た。得られた重合溶液は、実施例1と同様にガスクロマ
トグラフィーにて重合率を測定した後、実施例1と同様
に処理して、重合体を得、更に、得られた重合体の分子
量及び分子量分布を測定した。これらの測定結果を表1
及び表2に示す。
【0042】表1及び表2から分かるように、リビング
ラジカル重合開始剤系のうち、成分(A)の遷移金属錯
体を欠いている比較例1の場合には、全く重合反応が起
こらなかった。また、リビングラジカル重合開始剤系の
うち、成分(B)の有機ハロゲン化物を欠いている比較
例2の場合にも、全く重合反応が起こらなかった。リビ
ングラジカル重合開始剤系のうち、成分(C)のルイス
酸を欠いている比較例3の場合には、重合反応速度が非
常に遅くなり、分子量分布も広く、重合反応をを意図し
たように制御することは不可能であった。
【0043】それに対し、実施例1〜15の場合には、
成分(A)、(B)及び(C)からリビングラジカル重
合開始剤系が構成されているので、重合した比較例3の
場合に比べて重合率が非常に高く、しかも得られた重合
体の分子量分布もいずれも2以下と非常に狭い範囲であ
った。更に、分子量の制御も、成分(B)の有機ハロゲ
ン化物の配合量をコントロールすること等により可能で
あることがわかる。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、ビニルエス
テル系重合体を、その一次構造を精密に制御しながら、
即ち、その分子量及び分子量分布を精密に制御しながら
工業的に容易に製造できる。
フロントページの続き (72)発明者 澤本 光男 京都府京都市左京区静市市原町920−23 (72)発明者 上垣外 正己 京都府京都市左京区修学院登り内町11−50 フレグランスヒエイビューB棟203号 (72)発明者 安藤 剛 京都府京都市左京区聖護院蓮華蔵町26 八 星マンション31号 (72)発明者 白 京烈 京都府京都市左京区一乗寺築田町71 ルネ 白川101 (72)発明者 脇岡 正幸 京都府京都市左京区北白川山ノ元町14−3 ラフィネ北白川A棟101号 Fターム(参考) 4J015 CA00

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の成分(A)、(B)及び(C): (A)遷移金属錯体; (B)有機ハロゲン化物; 及び (C)ルイス酸 からなるリビングラジカル重合開始剤系の存在下で、炭
    素数3〜20のビニルエステル系単量体(D)を重合さ
    せ、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw
    /Mnが1.1〜2.0の範囲内にあるビニルエステル
    系重合体を得ることを特徴とするビニルエステル系重合
    体の製造方法。
  2. 【請求項2】 成分(A)の遷移金属錯体が、鉄又はモ
    リブデンを中心金属とする遷移金属錯体である請求項1
    記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 成分(A)の遷移金属錯体が、鉄を中心
    金属とするジカルボニルシクロペンタジエニルアイロン
    ダイマーである請求項2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 成分(A)の遷移金属錯体が、モリブデ
    ンを中心金属とするトリカルボニルシクロペンタジエニ
    ルモリブデンダイマーである請求項2記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 成分(B)の有機ハロゲン化物中のハロ
    ゲンがヨウ素である請求項1記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 成分(C)のルイス酸が、アルミニウム
    トリアルコキサイド、チタンテトラアルコキサイド及び
    トリアルキルアルミニウムから選択される少なくとも一
    種である請求項1記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 ビニルエステル系単量体(D)が、酢酸
    ビニル及び/又はピバル酸ビニルである請求項1記載の
    製造方法。
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