JP2003105517A - コンクリートの保護および補修工法 - Google Patents

コンクリートの保護および補修工法

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JP2003105517A
JP2003105517A JP2001302846A JP2001302846A JP2003105517A JP 2003105517 A JP2003105517 A JP 2003105517A JP 2001302846 A JP2001302846 A JP 2001302846A JP 2001302846 A JP2001302846 A JP 2001302846A JP 2003105517 A JP2003105517 A JP 2003105517A
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concrete
spraying
thermal spraying
wear
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JP2001302846A
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English (en)
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Takeshi Itsukaichi
剛 五日市
Satoru Osawa
悟 大澤
Osamu Kawakami
修 川上
Takahiro Sakazaki
孝浩 坂崎
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Fujimi Inc
Morimoto Corp
Original Assignee
Fujimi Inc
Morimoto Gumi Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コンクリート面の保護およびコンクリート面
に発生した浸食の補修が簡単に短期間で行え、産業廃棄
物の発生を軽減し、しかも、耐久性を向上させることで
補修の繰り返し頻度を低減できるコンクリート摩耗対策
工法を提供する。 【解決手段】 硬質基板2の表面に、サーメット粉末
と、NiあるいはNiとCrを含んだ金属粉末とを混合
した溶射用粉末を溶射して溶射皮膜層3を形成した耐摩
耗プレート1を、コンクリート面に浸食が生じる可能性
がある。または生じた部分に接着部材を用いて取り付け
ることにより、コンクリート面を保護・補修する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、砂礫を含む流水
により浸食を受けるコンクリート面を保護し、または浸
食を受けた部分を補修するためのコンクリートの保護お
よび補修工法に関する。
【0002】
【従来の技術】ダムエプロンや排砂路のコンクリート面
は、洪水時等の砂礫を含む流水による衝撃作用や摩耗作
用により大きく浸食されるため、浸食が発生すると補修
の必要性が生じる。
【0003】従来、コンクリート面に発生した浸食を補
修する方法は、浸食が発生した部分のコンクリートをハ
ツリによって除去し、この除去した部分に新たなコンク
リートを打設して打ち替えるようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、コンクリート
の打ち替えによる補修方法は、施工に手間と時間がかか
って効率が悪いと共に、産業廃棄物としてのコンクリー
トガラが大量に発生し、その処理に経費がかかるだけで
なく、打ち替えたコンクリート面は、当然ながら、新規
作成のコンクリート面に比べ砂礫を含む流水に対する衝
撃や浸食に弱く、このため、補修の繰り返し頻度が多く
なり、補修経費が嵩むという問題がある。
【0005】そこで、この発明の課題は、新規製作の流
水路において浸食を受けるコンクリート面を保護すると
共に、浸食された流水路ではコンクリート面に発生した
浸食の補修が簡単に短期間で行え、産業廃棄物の発生を
軽減し、しかも、耐久性を向上させることで補修の繰り
返し頻度を低減できる、コンクリートの保護および補修
工法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記のような課題を解決
するため、この発明は、硬質基板の表面に、サーメット
粉末と、NiあるいはNiとCrを含んだ金属粉末とを
混合した溶射用粉末を溶射して溶射皮膜層を形成した耐
摩耗プレートまたは耐摩耗と弾性シートを、コンクリー
ト面に接着および/または接合部材を用いて取り付ける
構成を採用したものである。
【0007】上記硬質基板としては、炭素鋼(例えばS
45C)やステンレス鋼等の鋼板を用い、浸食を受ける
または浸食が発生したコンクリート面の清掃をした後、
その部分を覆うように溶射皮膜層を形成した面を外にし
て耐摩耗プレートを取り付けるようにする。コンクリー
トと耐摩耗プレートの間に隙間が生じている場合は、無
収縮モルタル等を充填して埋めるようにする。
【0008】また、上記溶射皮膜層は、タングステンカ
ーバイド、クロムカーバイドおよびNi、またはタング
ステンカーバイド、CoおよびCrを主成分とするサー
メット粉末と、CrとNiの合計が金属粉末全体の重量
に対して90%以上を占め、かつ、Crの含有量が金属
粉末全体の重量に対して0〜55%である金属粉末を、
溶射用粉末全体の重量に対し各々80〜97%、3〜2
0%の含有量となるよう添加、混合した溶射用粉末を溶
射して形成することができる。
【0009】上記耐摩耗プレートの溶射皮膜層は、耐衝
撃性、耐摩耗性および耐食性に優れており、この耐摩耗
プレートで砂礫を含む流水により浸食を受けるコンクリ
ートの面を覆うことで、その部分の耐久性が向上し、補
修の繰り返し頻度を低減できる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
示例と共に説明する。
【0011】この発明の保護および補修工法に用いる耐
摩耗プレート1は、図1(A)および(B)のように、
適宜厚みを有する薄板鋼板2の表面に、サーメット粉末
と、NiあるいはNiとCrを含んだ金属粉末とを混合
した溶射用粉末を溶射して溶射皮膜層3を形成した構造
になっている。
【0012】上記溶射皮膜層3によって、耐摩耗プレー
ト1の表面は、耐衝撃性、耐摩耗性および耐食性が著し
く向上し、砂礫を含む流水により浸食を受けるコンクリ
ート面の耐久性が優れたものとなる。
【0013】この溶射皮膜層3を形成するための溶射用
粉末について説明する。
【0014】なお、通常、「溶射」と同様の意味で、
「肉盛り」や「スプレー」といった言葉が使用されるこ
とがある。これらの言葉に明確な定義の差はなく、ま
た、これらに使用される粉末に関しても区別して用いら
れておらず、溶射皮膜形成用の粉末であっても溶射用に
限定されるわけではない。つまり、溶射用の粉末が肉盛
りやスプレーに用いられたり、逆に肉盛りやスプレー用
の粉末が溶射に用いられている。従って、本明細書中の
「溶射用粉末」は「肉盛り」や「スプレー」などの用途
にも供されるものであることは言うまでもない。
【0015】本実施形態に使用される溶射用粉末は、サ
ーメット粉末と、NiあるいはNiとCrを含んだ金属
粉末とを混合して形成される。具体的には、タングステ
ンカーバイド、クロムカーバイドおよびNi、またはタ
ングステンカーバイド、CoおよびCrを主成分とする
サーメット粉末と、CrとNiの合計が金属粉末全体の
重量に対して90%以上を占め、かつ、Crの含有量が
金属粉末全体の重量に対して0〜55%である金属粉末
を、溶射用粉末全体の重量に対し各々80〜90%、3
〜20%の含有量となるよう添加、混合したものであ
る。
【0016】ここで、サーメット(Cermet)と
は、Ceramics(セラミックス)とMeta1
(金属)の各々はじめの三文字をつなぎ合わせた造語で
あり、具体的には硬質のセラミックス粒子を金属マトリ
ックスで結合させたもので、高硬度および高勒性を有し
た複合材料である。工具材料の分野において、サーメツ
トはTiC系およびTi(C,N)系の材料を示すが、
広義にはセラミックスと金属の複合材料全般が含まれ
る。
【0017】本実施形態に用いられるサーメット粉末
は、WC(タングステンカーバイド)、CrC(クロム
カーバイド)およびNi(ニッケル)、またはタングス
テンカーバイド、Co(コバルト)およびCr(クロ
ム)を主成分としている。
【0018】このうち、タングステンカーバイド、クロ
ムカーバイドおよびNiを主成分とするサーメット粉末
において、タングステンカーバイドは耐摩耗性を向上さ
せる役割を果たしJ またNiは結合材としての役割の他
に、靱性および耐食性を向上させるものである。そして
クロムカーバイドは、タングステンカーバイドとNiの
耐食性をさらに向上させるものである。特に、耐摩耗プ
レートは水中で用いられるので湿式環境下における耐摩
耗性および耐食性の向上を図る観点より、サーメット粉
末全体の重量に対するタングステンカーバイド、クロム
カーバイドおよびNiの含有量は、各々60〜85%、
10〜30%、および4〜15%が好ましく、より好ま
しくは各々65〜80%、15〜25%、および5〜1
2%である。
【0019】また、タングステンカーバイド、Coおよ
びCrを主成分とするサーメット粉未において、タング
ステンカーバイドとCoを含むサーメット粉末は、優れ
た靱性、耐摩耗性および耐衝撃性を有するものとして、
一般に広く知られている溶射用粉末である。そしてCr
は、タングステンカーバイドとCoからなるサーメット
の耐食性を向上させるものである。Crを含むことによ
り、前記タングステンカーバイド、クロムカーバイドお
よびNiを主成分とするサーメットに匹敵する耐食性を
有し、他のサーメットに対しては大きな優位性を示す。
特に、耐摩耗プレートは水中で用いられるので、耐衝撃
性、ならびに湿式環境下における耐食性および耐摩耗性
の向上を図る観点より、サーメット粉末全体の重量に対
するタングステンカーバイド、CoおよびCrの含有量
は、各々80〜92%、4〜20%、および2〜15%
が好ましく、より好ましくは各々84〜90%、6〜1
2%、および2〜10%である。
【0020】タングステンカーバイドには、WC、W2
Cがあるが、WCを使用することが好ましい。W2Cを
使用した場合、焼結工程や溶射時等のような高温下にさ
らされた際、脱炭反応によりWが生成し、溶射皮膜層の
特性を低下させるおそれがあるためである。WCを使用
すれば、前記のような脱炭反応は起こりにくくなり、も
しこの反応が起こっても、Wの生成および溶射皮膜層の
特性の変化を抑制することができる。
【0021】同様に、クロムカーバイドには、Cr3C
2、Cr7C3、Cr23C6があるが、クロムカーバ
イドは脱炭反応によりCr3C2からCr7C3へ、C
r7C3からCr23C6へ、Cr23C6からCrへ
と結晶相が変化すると言われており、溶射皮膜層の特性
の大きな変化を抑制する必要があるため、Cr3C2ま
たはCr7C3を使用することが好ましく、Cr3C2
を使用することがより好ましい。
【0022】また、サーメット粉末を構成するタングス
テンカーバイドおよびクロムカーバイドは、その平均粒
子径が小さすぎると、溶射皮膜層が大きな外力(衝撃)
を受けた場合、亀裂を生じやすくなり耐衝撃性が低くな
る傾向がある。逆に、タングステンカーバイド、クロム
カーバイドの平均粒子径が大きすぎると、造粒工程にお
いて原料成分が均一に分散した顆粒、球状の顆粒を得る
ことが困難になり、またその顆粒を使用して調製した溶
射用粉末を用いて溶射を行った場合、溶射効率が非常に
低くなる。従って、タングステンカーバイドの平均粒子
径は、一般に2〜20μm、好ましくは5〜12μmで
あり、クロムカーバイドの平均粒子径は一般に1〜10
μm、好ましくは3〜7μmである。
【0023】さらに、サーメット粉末に使用されるタン
グステンカーバイド、クロムカーバイドに遊離炭素が含
まれたものを使用した場合、溶射皮膜内部の結合力が低
下し、耐衝撃性が著しく低下する恐れがある。従って、
サーメツト粉末に使用される夕ングステンカーバイドお
よびクロムカーバイド中の遊離炭素の含有量は、各々
0.05重量%以下、0.1%重量以下であることが好
ましい。
【0024】一方、サーメツト粉末を構成するNi、C
o、Cr等を主成分とする金属粉末は、均一に微粉末化
されたものが好ましく、造粒工程において、使用する金
属粉末の平均粒子径が小さいほど、より球状で、機械的
強度の高いサーメット粉末を作製することができ、目的
の粒度分布の粉末を作製しやすくなり、製品収率が高く
なる。従って、これら金属粉末の平均粒子径は、一般に
5μm以下であり、好ましくは3μm以下である。アト
マイズ法で作製した合金粉末を用いた場合の平均粒子径
は、一般に10μm以下であり、好ましくは5μm以下
である。
【0025】次に、このようなサーメット粉末と混合さ
れる金属粉末は、造粒一焼結法、焼結一粉砕法、あるい
は溶融一粉砕法によって得られるサーメツト粉末と同等
の粒度分布に調整されたものを用いることが好ましい。
このような金属粉末としては、アトマイズ法により調製
された球状度の高い金属粉末が代表的である。アトマイ
ズ法には、水アトマイズ法やガスアトマイズ法などがあ
り、その違いにより金属粉末中の溶存酸素量や粉末形状
が若干異なるが、溶射皮膜層の特性に与える影響は小さ
く、アトマイズ法による金属粉末であれば、いずれを用
いることも可能である。
【0026】なお、本実施形態に使用されるサーメット
粉末と混合される金属粉末中に含まれるCrは、その含
有量が多いほど溶射皮膜層の耐摩耗性および耐食性は向
上するが、耐衝撃性は低下し、逆にその含有量が少ない
ほど溶射皮膜層の耐衝撃性は向上するが耐摩耗性および
耐食性は低下する傾向がある。例えば、金属粉末中にお
けるCrの含有量は、金属粉末全体の重量に対して55
%以上になると、溶射皮膜層の耐衝撃性は大きく低下
し、皮膜は亀裂を生じやすくなる。従って、本実施形態
において金属粉末中におけるCrの含有量は、金属粉末
全体の重量に対して、一般に0〜55%であり、好まし
くは5〜30%である。
【0027】また、サーメット粉末と混合される金属粉
末の調製工程において、金属粉末中のCは不純物として
混入したり、アトマイズ時の微粉末化、およびその他の
目的で添加されることがあり、また金属地金中にもCが
含まれることがあるが、Cの含有量が金属粉末全体の重
量に対して多すぎると皮膜の耐衝撃性は大きく低下する
傾向にある。従って、前記金属粉末におけるCの含有量
は、金属粉末全体の重量に対して、一般に0.4%以下
であり、好ましくは0.2%以下である。
【0028】更に、サーメツト粉末と混合される金属粉
末には、Ni、Cr以外にも、Si、B、A1、Mn、
Ti、Fe、S、Mo等に代表される成分が不純物とし
て混入したり、アトマイズ時の微粉末化およびその他の
目的で添加されることがあり、金属地金中にもこれら成
分が含まれる可能性があるが、金属粉末全体の重量に対
してこれらの成分が多すぎると溶射皮膜の耐衝撃性は大
きく低下する傾向にある。従って、金属粉末におけるS
i、B、A1、Mn、Ti、Fe、S、Moの含有量の
合計は、金属粉末全体の重量に対し、一般に10%以下
であり、好ましくは3%以下である。
【0029】このような溶射用粉末は、前記の各成分を
用い、以下の手段により製造される。
【0030】まず、サーメット粉末全体の重量に対し、
60〜80%のタングステンカーバイド、10〜30%
のクロムカーバイド、および5〜15%のNiが含まれ
るように原料粉末を混合し、一般的な造粒−焼結法、焼
結−粉砕法、または溶融−粉砕法によりWC/CrC/
Ni系サーメットを調製する。
【0031】サーメット粉末の調製方法の内、造粒−焼
結法においては、顆粒は5〜75μmの粒度分布となる
ように造粒し、900°C以上で、5時間以上、焼結を
行うことが好ましい。焼結条件は、溶射用粉末の組成お
よび求められる特性により最適化する必要があるが、一
定温度で5時間以上焼結することにより、均一で硬質な
球状粒子を得ることができる。また、サーメット原料と
して、Ni、Co、Crまたはそれらの合金などの金属
粉末や、クロムカーバイド、および/またはタングステ
ンカーバイドなどの炭化物セラミックスを使用する場
合、脱脂・焼結の際に、これらの原料が酸化しないよう
にする必要があり、一般に真空または不活性ガス雰囲気
下で処理されている。
【0032】一例として、粒度分布5〜75μmの顆粒
粉末を焼結し、解砕、分級することにより、高速フレー
ム溶射に適した、粒度分布が6〜63μmのサーメツト
を得ることができる。また、必要に応じて、造粒、解
砕、または分級条件を変更することにより、粒度分布6
〜38μm、10〜45μm、15〜45μm、15〜
53μm、20〜63μmのサーメット粉末を調製し、
溶射装置の種類や溶射条件に応じて使い分けることがで
きる。
【0033】尚、本明細書中において「粒度分布」と
は、粒度分布の下限に関しては、レーザ回折式粒度測定
機LA−300(堀場製作所製)を用いて求められる値
で記載した粒度より、小さい粒子の割合が5%以下であ
ることを示し、粒度分布の上限に関してはロータップ法
(JIS R6002)を用いて求められる値で記載し
た粒度より大きな粒子の割合が5%以下であることを示
す。例えば、粒度分布が15〜45μmであれば、LA
−300を用いて求められた15μm以下の粒子の割合
が5%以下であり、ロータップ法を用いて求められた4
5μm以上の粒子の割合が5%以下であることを示す。
一方、「平均粒子径」とは、同LA−300を用いて求
められたD50の値を示す。
【0034】本実施形態に使用される溶射用粉末は、こ
のようにして調製されたサーメットと、別途、金属粉末
を混合することにより製造される。
【0035】金属粉末は、金属粉末全体の重量に対し、
0〜55%のCrを含み、Crとの合計が90%以上の
含有量となるようにNiを混合し金属粉末を調製する。
【0036】そして、溶射用粉末全体の重量に対し、金
属粉末の含有量が3〜20%、好ましくは7〜16%と
なるよう、前記サーメット粉末と金属粉末とを均一に混
合することにより溶射用粉末を製造する。
【0037】溶射用粉末中におけるサーメットの含有量
が97%を越え、金属粉末の含有量が3%未満である
と、溶射皮膜層中に点在する金属相の占める割合が低下
するため、皮膜の耐衝撃性は低くなる。逆に、サーメッ
トの含有量が80%未満で、金属粉末の含有量が20%
を越えると、耐摩耗性および耐食性に優れたセラミック
ス成分の占める割合が低下するため、溶射皮膜層の耐食
性および耐摩耗性は低下してしまう。
【0038】この溶射用粉末を溶射することにより形成
される溶射皮膜層が、極めて高い耐衝撃性、優れた耐摩
耗性、ならびに水中環境下における優れた耐食性および
耐磨耗性を有する理由は、以下のように推測される。
【0039】本実施形態の溶射用粉末を溶射して形成さ
れた溶射皮膜層の構造を観察すると、金属粉末成分が適
度な厚みを有した状態で積層し、比較的大きな金属相と
して点在していることが確認される。溶射皮膜層に大き
な外力がかかると、この金属相が緩衝材の役割を果た
し、外力を吸収分散することで、溶射皮膜層の耐衝撃性
は大きく向上するものと推察される。
【0040】一方、従来の一般的な溶射用サーメット粉
末であるWC/Co系サーメット溶射用粉末を溶射して
形成された溶射皮膜層の構造を観察すると、溶射用粉末
を構成する材料が溶融し他の材料と混ざり合うか、薄い
金属相しか観察されず、本実施形態の溶射用粉末で観察
されたような、適度な厚みを有した状態で積層した比較
的大きな金属相は確認されない。このため、溶射皮膜層
に大きな外力がかかると、十分な緩衝材の役割を果たす
ことができる金属相が存在しないため、外力が吸収分散
されず皮膜破壊が生じ、溶射皮膜層の耐衝撃性は本実施
形態のものと比較すると低くなるものと推察される。
【0041】また、上述した本実施形態における溶射用
粉末の製造方法のように、サーメット粉末と金属粉末を
別々に調製し、これらを適切な割合で混合するといった
製法によらず、溶射用粉末中のサーメット粉末および金
属粉末の全成分を最初から複合し、造粒−焼結法、焼結
−粉砕法、または溶融−粉砕法により製造した溶射用粉
末を用いて溶射を行った場合の溶射皮膜層の構造を観察
すると、金属粉末分が皮膜中で他の材料と混ざり合う
か、薄い金属相しか形成されないため、本実施形態のよ
うに高い耐衝撃性を得ることはできないものと推察され
る。
【0042】本実施形態の溶射用粉末は、PRAXAI
R/TAFA製JP−5000、UNIQUE COA
T TECHNOLOGIES製INTELLI−JE
THVAF、あるいはスルザーメテコ製ダイヤモンドジ
ェットといった装置に代表される高速フレーム溶射や、
スルザーメテコ製6Pといった装置に代表されるフレー
ム溶射、スルザーメテコ製9MB、PRAXAIR製S
G−100といった装置に代表されるプラズマ溶射等の
公知の溶射方法に適用可能である。
【0043】フレーム溶射とは、酸素と燃料(例えばア
セチレン)を燃焼させた燃焼炎中に溶射用粉末を送り、
粉末を溶融ないし半溶融の状態で基板に衝突させて積層
させ皮膜層を形成する溶射法である。高速フレーム溶射
は、フレーム溶射の一種であるが、燃焼室の圧力を高
め、燃焼炎の速度を非常に大きくすることにより、溶射
飛行粒子を大きく加速して強い衝突力を発生させ、緻密
で密着力の高い皮膜を形成することのできる溶射法であ
る。プラズマ溶射は、高温のプラズマにより溶射用粉末
を加熱し、溶射用粉末を溶融させて基材に吹き付けて皮
膜を形成する溶射法である。
【0044】本実施形態の溶射用粉末を使用して得られ
る溶射皮膜層は、金属粉末成分が適度な厚みを有した状
態で積層し、皮膜中で比較的大きな金属相として点在し
ていることが好ましいが、このような皮膜を形成するに
は、溶射用粉末、特に金属粉末成分をあまり加熱せず、
大きく加速し、基材に対し大きな衝突力により皮膜を積
層させることが必要となる。高速フレーム溶射は、フレ
ーム溶射やプラズマ溶射に比べ、溶射粒子を大きく加速
することができ、また、燃焼炎中の滞留時間が短いこと
により、溶射用粉末があまり高温にさらされないため、
本実施形態の溶射用粉末に好適である。高速フレーム溶
射の中でもJP−5000やINTELLI−JET
HVAFは、溶射用粉末を大きく加速でき、溶射用粉末
が更に高温にさらされないため、特に好適である。
【0045】以上説明してきたような本実施形態の溶射
用粉末を、図1(B)に示すように、薄板鋼板2やステ
ンレス板の外面に溶射して溶射皮膜層3を形成すること
によって耐摩耗プレート1を形成する。この耐摩耗プレ
ート1を、砂礫を含む流水に接するコンクリート面を保
護または補修する目的でそのコンクリート面に取り付け
ることにより、十分な耐衝撃性、耐摩耗性および耐食性
を得ることができる。
【0046】図1(C)は、コンクリート製の流水路4
に浸食部分5が発生した状態を示し、図1(A)と
(B)及び(D)は、耐摩耗プレート1を用いて浸食部
分5を補修した状態を示している。
【0047】上記のようにして製作した耐摩耗プレート
を用いて、砂礫を含む流水より浸食を受けるコンクリー
ト面を保護する、または浸食を受けた部分を補修するに
は、図2(A)の施工順序に示すように、耐摩耗プレー
ト1を現場に搬入し、現場において、コンクリート面の
清掃をした後、このコンクリート面に耐摩耗プレート1
を溶射皮膜層3が外側になるようにして取り付ける。コ
ンクリート面が浸食を受けていた場合には、図1(A)
と(B)及び(D)のように、浸食部分5のコンクリー
ト面に耐摩耗プレート1を溶射皮膜層3が外側になるよ
うにして取り付け、残りの空洞部分に充填材7を充填し
て埋める。
【0048】なお、耐摩耗プレート1は、コンクリート
面に対して直接取り付ける以外に、耐摩耗プレート1と
コンクリート面の間にウレタンや硬質ゴム等の弾性シー
トを挿入してもよく、このような弾性シートを介在させ
ることにより、耐摩耗プレート1の耐衝撃性を一段と向
上させることができる。
【0049】上記、充填材7としては、無収縮モルタ
ル、エポキシ樹脂モルタルや、ポリマーセメントモルタ
ル等を使用することができる。
【0050】このように、砂礫を含む流水より浸食を受
けるコンクリート面に耐摩耗性プレート1を取り付ける
だけで、その部分を保護することができ、また浸食を受
けた部分のコンクリート面に耐摩耗プレート1を取り付
け、浸食を受けた部分に充填材7を充填するだけで、浸
食部分5の補修が行える。従って、施工が簡単で短時間
に行え、しかも、産業廃棄物となるコンクリートガラの
発生を極端に減少させることができる。また、耐衝撃
性、耐摩耗性および耐食性に優れた溶射皮膜層3が砂礫
を含む流水により浸食を受けるコンクリート面を覆って
いるので、耐摩耗プレート1により保護または補修する
ことによって、その部分の耐久性は大幅に向上し、補修
の繰り返し頻度を低減できることになる。
【0051】本発明者らは、表1に示すように、本発明
において条件を種々変えて実施例1〜3の試験片を作製
すると共に、比較例1〜9の試験片を作製して各種評価
試験を行った。
【表1】
【0052】まず、実施例1〜3および比較例4〜9の
各試験片について説明する。
【0053】<実施例1〜3と比較例4に使用する溶射
用粉末の調製>まず、サーメット粉末全体の重量に対
し、70%のWC粉末(平均粒子径10μm)、20%
のCrC粉末(平均粒子径5μm)、および10%のN
i粉末(平均粒子径3μm)を混合し、これに3.6%
のPVA水溶液を加え、十分に攪拌してスラリーを調製
した。このスラリーを、噴霧造粒機等を用いて粒度分布
が5〜75μmとなるように球状の顆粒粉末を調製し、
真空焼結炉においてアルゴン雰囲気下で脱脂した後、1
250°Cで5時間、焼結した。焼結後の粉末は、ボー
ルミルを用いて解砕し、次いで振動篩機および気流式分
級機を用いて分級を行い、粒度分布が15〜45μmの
サーメット粉末WC/20CrC/10Ni粉末を調製
した。
【0054】また、前記サーメットとは別に、Ni粉末
を、サーメット粉末と同様の方法で分級し、粒度分布が
15〜45μmの金属粉末を調整した。
【0055】上記方法により得られた各粉末について、
溶射用粉末全体の重量に対し、90%のWC/20Cr
C/10Ni粉末と、10%のNi粉末を、V型混合装
置にて混合し、以下の溶射用粉末を調製した。
【0056】溶射用粉末A:WC/20CrC/10N
i + 10%Ni
【0057】<比較例6〜9に使用する溶射用粉末>比
較例6の溶射用粉末Bはアルミナ、比較例7の溶射用粉
末CはNi−20Cr、比較例8の溶射用粉末DはWC
/Co、比較例9の溶射用粉末EはWC/20Cr/7
Niを使用している。
【0058】<試験片内容>実施例1〜3、比較例1 〜
9の試験片を作製した。試験片の内容および溶射条件は
以下の通り。なお、各例において、試験片基材としては
JIS A 5308『レディーミクストコンクリー
ト』に定められた品質のコンクリートを、また鋼板とし
てはSS400(t=10mm)、ウレタンとしてはコ
ンピュア(t=6mm)、硬質ゴムとしてはエプロンラ
バー(t=20mm)をそれぞれ使用した。
【0059】・試験片の内容
【0060】実施例1:鋼板の表面に溶射条件αにより
溶射用粉末Aを溶射した耐摩耗プレートを、試験片基材
の表面に取り付けたもの。
【0061】実施例2:試験片基材の表面にウレタンを
貼り付け、鋼板の表面に溶射条件αにより溶射用粉末A
を溶射した耐摩耗プレートを、ウレタンの表面に取り付
けたもの。
【0062】実施例3: 試験片基材の表面に硬質ゴム
を貼り付け、鋼板の表面に溶射条件αにより溶射用粉末
Aを溶射した耐摩耗プレートを、硬質ゴムの表面に取り
付けたもの。
【0063】比較例1:試験片基材そのままのもの
【0064】比較例2:試験片基材の表面にウレタンを
貼り付けたもの。
【0065】比較例3:試験片基材の表面に鋼板を取り
付けたもの。
【0066】比較例4:試験片基材の表面に、溶射条件
αにより直接溶射用粉末を溶射したもの。
【0067】比較例5:試験片基材の表面に鋼板を取り
付け、その上にウレタンを貼り付けたもの。
【0068】比較例6:鋼板の表面に、溶射条件βによ
り溶射用粉末Bを溶射したプレートを試験片基材の表面
に取り付けたもの。
【0069】比較例7:鋼板の表面に溶射条件γにより
溶射用粉末Cを溶射したプレートを試験片基材の表面に
取り付けたもの。
【0070】比較例8:鋼板の表面に、溶射条件θによ
り溶射用粉末Dを溶射したプレートを試験片基材の表面
に取り付けたもの。
【0071】比較例9:鋼板の表面に、溶射条件θによ
り溶射用粉末Eを溶射したプレートを試験片基材の表面
に取り付けたもの。
【0072】溶射条件αは以下の通りである。 溶射装置:高速フレーム溶射機(HVOF) PRAXAIR/TAFA社製JP−5000 溶射用粉末供給量:50g/min 酸素供給量:1500scfh 灯油供給量:6.0gph 使用バレル:4インチ 溶射距離:380mm 溶射皮膜厚み:500μm
【0073】また、溶射条件βは以下の通りである。 溶射装置:プラズマ溶射機 PRAXAIR社製SG−
100 溶射用粉末供給量:20g/min 電流:800A Arガス供給量:65psi Heガス供給量:50psi 溶射距離:100mm 溶射皮膜厚み:500μm
【0074】溶射条件γは以下の通りである。 溶射装置:高速フレーム溶射機(HVOF) PRAXAIR/TAFA社製JP−5000 溶射用粉末供給量:5.75g/min 酸素供給量:2025scfh 灯油供給量:5.75gph 使用バレル:8インチ 溶射距離:380mm 溶射皮膜厚み:500μm
【0075】溶射条件θは以下の通りである。 溶射装置:高速フレーム溶射機(HVOF) PRAXAIR/TAFA社製JP−5000 溶射用粉末供給量:50g/min 酸素供給量:1900scfh 灯油供給量:5.1gph 使用バレル:8インチ 溶射距離:380mm 溶射皮膜厚み:500μm
【0076】これら試験片の評価方法は以下の通りであ
る。
【0077】<湿式環境下における耐摩耗性試験>
【0078】円柱状(φ25mm×70mm)の試験片
基材を使用して、実施例1〜3、比較例1〜9の試験片
を作製し、特開2000−180331号公報に記載の
湿式摩耗試験機を用いて、湿式環境下における耐摩耗性
試験を行った。基準試験片である炭素鋼STKM12C
の摩耗量(mm3 )に対する各試験片の摩耗量(mm
3 )の割合を算出し、3回行った試験結果を平均化する
ことにより、湿式環境下における各試験片の耐摩耗性を
評価した。試験条件および判定基準は以下の通り。
【0079】・試験条件 研磨材:A#8(商品名、サンゴバンセラミックスマテ
リアルズ株式会社製) スラリー中の研磨材濃度:80重量% 試験時間:200時間 揺動距離:5.67×105 mm
【0080】・判定基準 ◎:0.10未満 ○:0.10以上0.30未満 △:0.30以上0.80未満 ×:0.80以上1.50未満 ××:1.50以上
【0081】・結果 実施例1〜3はいずれも良好(◎)な結果が得られてお
り、比較例1〜3および5〜9と比較して、湿式環境下
における耐摩耗性が優れていることがわかる。なお、比
較例4の試験片については、溶射皮膜が形成できなかっ
たため湿式環境下における耐摩耗性試験については評価
できなかった。
【0082】<乾式環境下における耐摩耗性試験>□5
0mmの試験片基材を使用して、実施例1〜3、比較例
1〜9の試験片を作製し、JIS H 8682−1に
規定されたスガ式摩耗試験機X(図3)を用い、乾式環
境下における耐摩耗性試験を行った。研磨紙を取り付け
た摩擦輪8に対して試料押さえ板9に取り付けた試験片
を押し当て、モータ10の起動により摩擦輪8に往復運
動を与え、これによって発生する各試験片の摩耗量(m
3)を算出し、3回行った試験結果を平均化すること
により、乾式環境下における各試験片の耐摩耗性を評価
した。試験条件および判定基準は以下の通り。
【0083】・試験条件 研磨紙 :SiC#180 荷 重 :3.15Kgf 揺動回数:400回
【0084】・判定基準 ◎:0.05mm3 未満 ○:0.5mm3 以上0.20mm3 未満 △:0.20mm3 以上0.80mm3 未満 ×:0.80mm3 以上1.50mm3 未満 ××:1.50mm3 以上
【0085】・結果 実施例1〜3はいずれも良好(◎)な結果が得られてお
り、比較例1〜3および5〜9と比較して、乾式環境下
における耐摩耗性が優れていることがわかる。なお、比
較例4の試験片については、溶射皮膜が形成できなかっ
たため乾式環境下における耐摩耗性試験については評価
できなかった。
【0086】<耐久性試験>□50mmの試験片基材を
使用して、実施例1〜3および比較例1〜9の試験片を
作製し、図2(B)に示す落球試験機Yと図2(C)の
落球試験機Zを用いて、耐久試験を行った。
【0087】落球試験機Yは、小荷重の落球体を連続的
に衝突させることにより、連続した小さな衝撃に対する
耐久性を測定するものである。高さ(L)1mより、内
径(d)29.3mmのガイドパイプ11を通して、設
置した各試験片12に対して、衝突角度(θ)60°の
角度で、1回の試験において落下数(n)500個の鋼
球13(直径D:9.5mm、重量3.32g)を連続
的に落下、衝突させ、試験片表面の溶射皮膜に亀裂や剥
離を生じるまでの耐久回数をカウントした。4回の試験
結果を平均化することで、耐久性を評価した。判定基準
は以下の通り。
【0088】・判定基準 ◎:300回以上 ○:50回以上299回以下 △:10回以上49回以下 ×:2回以上9回以下 ××:1回
【0089】・結果 実施例1〜3はいずれも良好(◎)な結果が得られてお
り、比較例1〜3および5〜9と比較して、連続的な小
さな衝撃に対し優れた耐久性を有していることがわか
る。なお、比較例4の試験片については、溶射皮膜が形
成できなかったため落球試験機Yによる皮膜耐久性試験
については評価できなかった。
【0090】落球試験機Zは、大荷重の落球体によって
一度に大きな衝撃を与えることにより、大きな衝撃に対
する皮膜の耐久性を測定するものである。高さ(L)
1.5mより、3kgの荷重をかけた直径120mmの
球体14を衝突角度(θ)90°の角度で試験片に落
下、衝突させ、各試験片12の表面に亀裂や剥離を生じ
るまでの耐久回数をカウントした。4回の試験結果を平
均化することで、耐久性を評価した。
【0091】・判定基準 ◎:50回試験後、亀裂、剥離なし。衝突部の陥没小 ○:50回試験後、亀裂、剥離なし。衝突部の陥没大 △:20〜50回試験後、亀裂、剥離などの破損発生 ×:2〜10回試験後、亀裂、剥離などの破損発生 ××:1回試験後衝突部破損
【0092】・結果 実施例1〜3はいずれも良好(◎)な結果が得られてお
り、比較例1〜3および5〜9と比較して、大きな衝撃
に対し優れた耐久性を有していることが分かる。なお、
比較例4の試験片については、溶射皮膜が形成できなか
ったため落球試験機Zによる皮膜耐久性試験については
評価できなかった。
【0093】<基材の耐食性試験>□50mmの試験片
基材を使用して、実施例1〜3および比較例1〜9の試
験片を作製し、塩水噴霧試験(JIS Z 2371)
による溶射皮膜の耐食性を評価した。 ・判定基準 ◎:120時間試験後変化なし ○:95〜120時間試験後に若干変色 △:48〜96時間試験後に赤錆発生 ×:24〜48時間試験後に赤錆発生 ××:24時間以内に赤錆発生
【0094】・結果 実施例1〜3はいずれも良好(◎)な結果が得られてお
り、比較例1〜3および5〜9と比較して、優れた耐久
性を有していることがわかる。なお、比較例4の試験片
については、溶射皮膜が形成できなかったため落球試験
機Yによる皮膜耐久性試験については評価できなかっ
た。
【0095】<総合評価>上述した全ての試験結果に、
加工性、コストを考慮して総合評価を行った。表1に示
すように、実施例1〜3はいずれの試験においても優れ
た(◎または○)結果が得られており、耐衝撃性、耐摩
耗性および耐食性が向上していることがわかる。また、
総合評価においても良好(◎)な結果が得られており、
砂礫を含む流水に面したコンクリート面の保護および補
修用として適していることが分かる。
【0096】一方、比較例1〜9は、判定基準を満たし
ていない項目があり、実施例1〜3に比べて性能的に劣
っていることがわかる。
【0097】なお、耐摩耗プレートの使用は、コンクリ
ート面の浸食を受けた部分の補修だけでなく、新規製作
の水路における補強対策として、流水面に敷設して使用
してもよく、また、溶射用粉末を製造するのに使用され
るサーメット粉末は、WC、CrC及びNiを主成分と
するものを用いると説明したが、WC、Co及びCrを
主成分とするサーメット粉末を代わりに使用しても同様
の効果を得ることができる。
【0098】
【発明の効果】以上のように、この発明によると、硬質
基板の表面に、サーメット粉末と、NiあるいはNiと
Crを含んだ金属粉末とを混合した溶射用粉末を溶射し
て溶射皮膜層を形成した耐摩耗プレートを、コンクリー
ト面に取り付けるようにしたので、コンクリート面の保
護およびコンクリート面に発生した浸食の補修が簡単に
短期間で行え、浸食が生じた部分のコンクリートをハツ
ル必要がないので、産業廃棄物の発生を軽減することが
できる。
【0099】また、溶射皮膜層は、耐衝撃性、耐摩耗性
および耐食性に優れているため、砂礫を含む流水により
浸食を受けるコンクリート面の耐久性を向上させること
で、補修の繰り返し頻度を低減でき、補修経費の節減が
可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は浸食を補修した水路の縦断正面図、
(B)は浸食を補修した部分の拡大断面図、(C)は浸
食が発生した水路の縦断側面図、(D)は浸食を補修し
た水路の縦断側面図
【図2】(A)は浸食を補修する施工概要の工程図、
(B)は溶射皮膜の剥離耐久試験に使用した落球試験機
Yの概略図、(C)は耐衝撃性試験に使用した落球試験
機Zの概略図
【図3】乾式環境下における耐摩耗性試験を実施するス
ガ式摩耗試験機Xの概略図
【符号の説明】
1 耐摩耗プレート 2 薄板鋼板 3 溶射皮膜層 4 流水路 5 浸食部分 7 充填材
フロントページの続き (72)発明者 五日市 剛 愛知県西春日井郡西枇杷島町地領2丁目1 番地の1 株式会社フジミインコーポレー テッド内 (72)発明者 大澤 悟 愛知県西春日井郡西枇杷島町地領2丁目1 番地の1 株式会社フジミインコーポレー テッド内 (72)発明者 川上 修 大阪府大阪市天王寺区夕陽丘町4番11号 株式会社森本組内 (72)発明者 坂崎 孝浩 大阪府大阪市天王寺区夕陽丘町4番11号 株式会社森本組内 Fターム(参考) 2D018 DA00 4K031 AA05 AB02 AB08 CB10 CB21 CB22 CB45 DA01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 硬質基板の表面に、サーメット粉末と、
    NiあるいはNiとCrを含んだ金属粉末とを混合した
    溶射用粉末を溶射して溶射皮膜層を形成した耐摩耗プレ
    ートを、コンクリート面に取り付けることを特徴とする
    コンクリートの保護および補修工法。
  2. 【請求項2】 耐摩耗プレートとコンクリート面の間
    に、少なくとも1種類の弾性シートを介在させることを
    特徴とする請求項1に記載のコンクリートの保護および
    補修工法。
  3. 【請求項3】 タングステンカーバイト、クロムカーバ
    イトおよびNi、またはタングステンカーバイト、Co
    およびCrを主成分とするサーメット粉末と、CrとN
    iの合計が金属粉末全体の重量に対して90%以上を占
    め、かつ、Crの含有量が金属粉末全体の重量に対して
    0〜55%である金属粉末を、溶射用粉末全体の重量に
    対し各々80〜97%、3〜20%の含有量となるよう
    添加、混合した溶射用粉末を溶射して上記溶射皮膜層を
    形成したことを特徴とする請求項1または2のいずれか
    に記載のコンクリートの保護および補修工法。
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