JP2003073755A - 軽合金部材補強用多孔質金属焼結体およびその製造方法 - Google Patents

軽合金部材補強用多孔質金属焼結体およびその製造方法

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JP2003073755A JP2001264749A JP2001264749A JP2003073755A JP 2003073755 A JP2003073755 A JP 2003073755A JP 2001264749 A JP2001264749 A JP 2001264749A JP 2001264749 A JP2001264749 A JP 2001264749A JP 2003073755 A JP2003073755 A JP 2003073755A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 接合性に優れた軽合金部材補強用多孔質金属
焼結体およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 60メッシュの篩を通過し350 メッシュの
篩を通過しない粒度分布を有する合金粉に、黒鉛粉、あ
るいはさらに被削性性改善用微細粒子粉を混合して、混
合粉となし、ついで、この混合粉を金型に装入し、圧縮
成形して圧粉体としたのち、焼結して、面積率で15〜50
%の空孔を有し、かつ該空孔のうち直径5μm を超える
空孔を、全空孔面積に対し面積率で80%以上有し、圧環
強度が200MPa以上を有する多孔質金属焼結体とする。こ
の多孔質金属焼結体を軽合金に鋳包むことにより、接合
強度、複合化部材強度に優れた軽合金部材補強用多孔質
金属焼結体及びこれを用いた軽合金複合化部材が得られ
る。合金粉として、ステンレス鋼粉、鉄粉および銅粉、
あるいはFe-Cu 合金粉としてもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム合金
等の軽合金を充填して複合材料として使用される多孔質
金属焼結体、あるいはアルミニウム合金等の軽合金部材
に鋳包まれて使用される軽合金部材補強用多孔質金属焼
結体に係り、とくに、内燃機関に用いられるアルミニウ
ム合金等の軽合金部材の一部または全体補強用として好
適な多孔質金属焼結体及び多孔質金属焼結体を用いた軽
合金複合化部材に関する。
【0002】
【従来の技術】近年のエンジンの軽量化および放熱性を
高める目的から、アルミニウム合金製のエンジンが一般
化しつつある。しかし、アルミニウム合金は従来の鋳鉄
にくらべ強度が低く、近年の高負荷エンジンにおける、
高温で高荷重が負荷される部材、例えば、ピストンのリ
ング溝部、ピン穴部、リップ部等では、強度が不足する
という問題が発生していた。
【0003】このような問題に対し、例えば、ピストン
リング溝部にピストン材料より高強度の材料からなる耐
摩環を鋳包み、この耐摩環でピストンリングを支持する
構造が提案されている。例えば、ディーゼルエンジンで
は、トップリング溝にニレジスト鋳鉄製の耐摩環を鋳包
んだピストンが提案されている。しかしながら、ニレジ
スト鋳鉄製の耐摩環は、鋳造品であるため、歩留が低
く、材料費が高くなり、また加工性も悪いため、総合的
にコスト高となるという問題があった。さらに、ニレジ
スト鋳鉄製耐摩環では、アルミニウム合金への鋳包み性
を向上させるためにアルフィン処理が必要不可欠であ
り、また鉄合金であるため密度が高くなり、エンジン性
能の低下を招くという問題があった。
【0004】一方、アルミニウム合金等の軽合金をウィ
スカー、繊維等の強化材で強化した軽合金複合化部材が
注目されている。これらの軽合金複合化部材は、高温環
境下で使用すると、必ずしも満足できる特性が得られな
い場合があり、最近では、軽合金複合化部材の強化材と
して、多孔質金属焼結体を使用することが行われてい
る。
【0005】しかし、軽合金の強化材として多孔質金属
焼結体を使用した軽合金複合化部材を、軽合金の強度が
著しく低下する高温下で使用すると、複合化部材の強度
は多孔質金属焼結体の特性に大きく依存することにな
る。しかしながら、従来では、多孔質金属焼結体の体積
率、合金元素、気孔の大きさ等についての検討はなされ
ているが、複合化部材の強化材としての多孔質金属焼結
体の強度についてはほとんど検討されていなかった。
【0006】また、特開平8−319504号公報には、Cr、
Mo、V、W、Mn、Siのうち少なくとも1種が2〜70%、
炭素が0.07〜8.2 %、不可避の不純物の組成をもつ鉄系
原料粉末を用いて焼結体とし、気体中で冷却し気体焼入
れして構成する金属の硬さをマイクロビッカース硬さで
Hv200 〜800 に設定した多孔質金属焼結体と、気孔に含
浸し固化した軽金属とを備え、摺動時の焼付き性を確保
した金属焼結体複合材料が提案されている。しかしなが
ら、特開平8−319504号公報に記載された多孔質金属焼
結体では、気体焼入れが可能となるようにCr、Mo、V等
の合金元素を多量に添加しており、軽合金中に鋳包まれ
て使用する補強部材用としては、経済的に不利となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】さらに、特開平8−31
9504号公報に記載された多孔質強化焼結体を、軽合金に
鋳包んで使用する場合には、接合強度がばらつき、境界
剥離を生じる場合があり、必ずしも高い接合強度(密着
性)が安定して得られないという問題があった。本発明
は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、軽合金を
充填し複合材料となす軽合金複合化部材として、軽合金
の軟化が著しい高温環境下でも高い複合化部材強度を確
保することが可能な、軽合金の含浸性に優れた軽合金複
合化部材の補強用多孔質金属焼結体を提案することを目
的とする。また、本発明は、軽合金製部材の補強用とし
て、アルミニウム合金等の軽合金製部材に鋳包まれ、部
材の強度を向上させる軽合金複合化部材として好適な、
所望の接合強度を安定して確保できるように、軽合金の
含浸性に優れ、軽合金部材との接合性に優れた多孔質金
属焼結体及び多孔質金属焼結体を用いた軽合金複合化部
材並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
課題を達成するために、多孔質金属 (鉄系)焼結体を、
軽合金の1種である、アルミニウム合金製部材に鋳包ん
だ際の、多孔質金属 (鉄系)焼結体とアルミニウム合金
製部材との接合強度および多孔質金属 (鉄系)焼結体に
アルミニウム合金を充填 (含浸)させた複合化部材の引
張強さにおよぼす各種要因について鋭意検討した。その
結果、アルミニウム合金を充填 (含浸)させる、あるい
はアルミニウム合金製部材に鋳包む、多孔質金属焼結体
を、15〜50%の空孔率を有し、かつ該空孔のうち直径5
μm を超える空孔を、全空孔率に対し80%以上有し、JI
S Z 2507に規定される圧環強さ試験に準拠して得られる
圧環強さが200MPa以上である多孔質金属焼結体とするこ
とにより、高い引張強さ、さらには高い高温硬さを有す
る軽合金複合化部材および、接合強度の高い軽合金複合
化部材が得られることを知見した。
【0009】まず、本発明者が行った基礎的実験につい
て説明する。まず、多孔質金属 (鉄系)焼結体をアルミ
ニウム合金製部材にて鋳包んだのち、接合境界を含む引
張試験片を採取した。これら引張試験片を用いて引張試
験を行い接合強度を求めた。なお、各多孔質金属(鉄
系)焼結体の空孔率は、密度測定により求めた。接合強
度と空孔率の関係を図3に示す。なお、境界強度(σ)
は、所望の境界強度(σE )に対する比、境界強度比σ
/σE として表示した。境界強度比1以上で、境界強度
σが所望の境界強度σE 以上の値となることを意味す
る。
【0010】図3から、同一空孔率でも境界強度比には
大きなばらつきが見られる。これは、空孔率を密度測定
で代用したためと考えられ、密度測定により得られる空
孔率の管理だけでは、多孔質金属 (鉄系)焼結体の接合
強度に影響する因子を代表していないことになる。そこ
で、本発明者は、図3の結果をさらに詳細に検討し、同
一の空孔率でも、空孔の分布、 形態に大きな相違がある
場合があり、それが、軽合金部材と多孔質金属焼結体と
の接合強度に大きく影響していることに想到した。空孔
率が同一でも、空孔の大きさ、数が相違する、例えば、
図2(a)、(b)に模式的に示す、断面での空孔分布
を有する多孔質金属焼結体では、(b)の空孔分布を有
する焼結体の方が、軽合金部材との接合強度が大きいこ
とを見いだした。さらに、軽合金を鋳込む際、多孔質金
属焼結体の空孔が微細な場合には、軽合金が空孔に含浸
されにくく、とくに焼結時に発生した独立空孔には軽合
金が含浸せず、接合強度低下に顕著に影響することを見
いだした。
【0011】そこで、本発明者は、多孔質金属 (鉄系)
焼結体の微細空孔の生成原因についてさらに研究した。
その結果、接合強度比は、多孔質金属 (鉄系)焼結体中
に存在する微細空孔、とくに直径5μm 以下の微細空孔
の存在比率に大きく影響されることを見いだした。多孔
質金属焼結体中に存在する直径5μm 以下の微細空孔率
と全空孔率との比、{(直径5μm 以下の微細空孔率)
/(全空孔率)}×100 (%)、と接合強度比との関係
を図1に示す。図1から、多孔質金属焼結体中に存在す
る直径5μm 以下の微細空孔を、全空孔率に対して、20
%未満とすることにより、 接合強度比が1以上となる。
なお、接合強度比は、溶製材(鋳鉄)にアルフィン処理
を施した場合の強度(境界強度σE )を基準として示し
ている。ここで、直径5μm以下の微細空孔率、全空孔
率は、多孔質金属焼結体の断面を研磨して、画像解析装
置で断面における空孔の面積を測定し、それぞれの面積
率を算出し、その値を空孔率とした。
【0012】また、多孔質金属焼結体中の微細空孔の形
成には、使用する合金粉末の粒度分布が大きく影響し、
とくに直径5μm 以下の微細空孔率を20%未満とするた
めには、使用する合金粉末に、#350 の篩を通過する
(−350 メッシュ)微細粉末の混合を防止する必要があ
ることを知見した。また、本発明者は、多孔質金属焼結
体にアルミニウム合金が充填した状態の引張試験片を採
取して引張試験を実施し、多孔質金属焼結体にアルミニ
ウム合金が充填した状態の複合化部材の引張強さを求め
た。さらに、JIS Z 2507の規定に準拠して、多孔質金属
焼結体の圧環強さをもとめ、複合化部材の引張強さと多
孔質金属焼結体の圧環強さとの関係を求めた。その結
果、15〜50%の空孔率を有し、かつ該空孔のうち直径5
μm を超える空孔を、全空孔率に対し80%以上有し、JI
S Z 2507に規定される圧環強さ試験に準拠して得られる
圧環強さを200MPa以上とすることにより、高強度の複合
化部材が得られ、さらに高温硬さが高くなることを見い
だした。
【0013】本発明は、上記した知見に基づき、さらに
検討を加えて完成されたものである。すなわち、 第1の
本発明は、合金粉末を含む混合粉を圧粉、焼結してなる
多孔質金属焼結体であって、前記多孔質金属焼結体が、
15〜50%の空孔率を有し、かつ該空孔のうち直径5μm
を超える空孔を、全空孔率に対し80%以上有し、圧環強
さが200MPa以上であることを特徴とする軽合金の含浸性
に優れた軽合金部材補強用多孔質金属焼結体である。な
お、本発明でいう圧環強さとは、JIS Z 2507に規定され
る圧環強さ試験に準拠して得られる値をいうものとす
る。
【0014】また、第1の本発明では、前記多孔質金属
焼結体が、粒径:150 μm 以下のMnS 、CaF 、BNおよび
エンスタタイトのうちから選ばれた1種または2種以上
からなる被削性改善用微細粒子を0.1 〜5質量%含有す
ることが好ましい。また、第1の本発明では、前記多孔
質金属焼結体が、前記多孔質ステンレス鋼焼結体である
ことが好ましい。
【0015】また、第1の本発明では前記多孔質ステン
レス鋼焼結体に代えて、多孔質Fe-Cu-C系焼結体とする
ことが好ましい。また、第2の本発明は、合金粉末を含
む混合粉を圧粉、焼結してなる多孔質金属焼結体に、軽
合金を含浸させた軽合金複合化部材であって、前記多孔
質金属焼結体が、15〜50%の空孔率を有し、かつ該空孔
のうち直径5μm を超える空孔が、全空孔率に対し80%
以上含まれ、圧環強さが200MPa以上であることを特徴と
する軽合金複合化部材であり、また、第2の本発明で
は、前記多孔質金属焼結体が、さらに粒径:150 μm 以
下のMnS 、CaF 、BNおよびエンスタタイトのうちから選
ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微細粒
子を0.1 〜5質量%含有することが好ましい。また、第
2の本発明では、前記多孔質金属焼結体を多孔質ステン
レス鋼焼結体とすることが好ましい。また第2の本発明
では前記多孔質ステンレス鋼焼結体を多孔質フェライト
系ステンレス鋼焼結体、多孔質マルテンサイト系ステン
レス鋼焼結体、または多孔質オーステナイト系ステンレ
ス鋼焼結体とすることが好ましい。
【0016】また、第2の本発明では、前記多孔質ステ
ンレス鋼焼結体に代えて、多孔質Fe−Cu−C系焼結体と
することが好ましく、また、第2の本発明では、多孔質
Fe−Cu−C系焼結体が、2〜6質量%のCuを含有するこ
とが好ましい。また、第3の本発明は、合金粉末に、黒
鉛粉と、潤滑剤粉末とを混合して混合粉としたのち、該
混合粉を成形して圧粉体となし、ついで該圧粉体を焼結
して多孔質金属焼結体とする多孔質金属焼結体の製造方
法において、前記合金粉末を−60メッシュ〜+350 メッ
シュの粒度分布を有する合金粉とし、前記焼結の焼結条
件を調整して、前記多孔質金属焼結体の空孔率を15〜50
%とし、圧環強さを200MPa以上とすることを特徴とする
軽合金の含浸性に優れた軽合金部材補強用多孔質金属焼
結体の製造方法であり、また、第3の本発明では、前記
混合粉がさらに、粒径:150 μm 以下のMnS 、CaF 、BN
およびエンスタタイトのうちから選ばれた1種または2
種以上からなる被削性改善用微細粒子を、混合粉全量に
対し、0.1〜5質量%含有することが好ましい。
【0017】また、第4の本発明は、合金粉末に、黒鉛
粉と、潤滑剤粉末とを混合して混合粉としたのち、該混
合粉を成形して所定形状の圧粉体となし、ついで該圧粉
体を焼結して所定形状の多孔質金属焼結体とし、ついで
軽合金を含浸させて複合化部材とする多孔質金属焼結体
を用いた軽合金複合化部材の製造方法において、前記合
金粉末を−60メッシュ〜+350 メッシュの粒度分布を有
し、見かけ密度が2.6以下となるような合金粉とし、前
記焼結の焼結条件を調整して、前記多孔質焼結体の空孔
率を15〜50%とし、圧環強さを200MPa以上とすることを
特徴とする軽合金の含浸性に優れた多孔質金属焼結体を
用いた軽合金複合化部材の製造方法であり、また、第4
の本発明では、前記混合粉がさらに、粒径:150 μm 以
下のMnS、CaF 、BNおよびエンスタタイトのうちから選
ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微細粒
子を、混合粉全量に対し、0.1 〜5質量%含有すること
が好ましい。
【0018】また、第4の本発明では、前記合金粉末
が、フェライト系ステンレス鋼粉、マルテンサイト系ス
テンレス鋼粉またはオーステナイト系ステンレス鋼粉で
あることが好ましく、またこの場合、前記混合粉が、前
記黒鉛粉を、混合粉全量に対し1.0 質量%以下含有する
ことが好ましい。また、第4の本発明では、前記合金粉
末が、鉄粉およびCu粉、またはFe-Cu 合金粉であること
が好ましく、また第4の本発明では、前記Cu粉、または
Fe-Cu 合金粉を、混合粉中のCu含有量が2〜6質量%と
なるように配合することが好ましく、また第4の本発明
では、前記混合粉が、前記黒鉛粉を、混合粉全量に対
し、0.8 〜1.5 質量%含有することが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の多孔質金属焼結体は、軽
合金部材補強用として、アルミニウム合金等の軽合金を
充填して複合化部材として使用に供されるか、あるい
は、アルミニウム合金等の軽合金部材に鋳包まれて使用
に供されることが好ましい。本発明の多孔質金属焼結体
は、合金粉、黒鉛粉等を混合した混合粉を所定の形状に
成形し圧粉体としたのち、焼結して、製品とされる。
【0020】本発明の軽合金部材補強用多孔質金属焼結
体では、特に材質を限定する必要はなく、使用環境に合
致した強度等の特性を有する材質を適宜選択できる。本
発明の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体は、面積率で
15〜50%の空孔を有する。空孔率が15%未満では、アル
ミニウム合金等の軽合金部材に鋳包むとき、あるいは軽
合金を充填させるときに、軽合金の溶湯が焼結体の空孔
内に含浸せず、接合強度が低下する。一方、空孔率が50
%を超えると、空孔が多すぎて強度が低下して、稼動時
に変形する。このため、軽合金部材補強用多孔質金属焼
結体の空孔率は、15〜50%の範囲に限定した。
【0021】また、本発明の軽合金部材補強用多孔質金
属焼結体は、空孔のうち直径5μmを超える空孔を、全
空孔率に対して80%以上有する。直径5μm を超える空
孔率が全空孔率に対し80%未満では、すなわち、直径5
μm 以下の空孔率が全空孔率に対し20%を超えると微細
空孔が増加し、図1に示すように、接合強度比が1未満
と接合強度が低下する。このため、直径5μm を超える
空孔を、全空孔率に対し80%以上に限定した。
【0022】また、本発明の軽合金部材補強用多孔質金
属焼結体は、所望の複合化部材強度を確保し、軽合金部
材を補強する観点から、JIS Z 2507に規定される圧環試
験により得られる圧環強さで200MPa以上の強度を保有す
るものとする。圧環強さが200MPa未満では、軽合金部材
補強用として強度が不足し、軽合金部材が変形したり、
割れる等の不具合を生じる。また、高圧ダイキャストあ
るいは溶湯鍛造の場合には、圧力に耐えられず含浸前に
クラックが発生する等の不具合が生じる。なお、本発明
では、多孔質金属焼結体の強度の指標として、圧環強さ
を用いているが、強度の指標として引張強さを使用する
場合には、焼結体の材質、 空孔率に応じた寸法の引張用
治具を準備しなくてはならず、評価の簡便性から本発明
では単純治具で評価が可能な圧環強さを採用した。
【0023】また、本発明の軽合金部材補強用多孔質金
属焼結体は、基地中に、被削性改善のため、被削性改善
用微細粒子を分散させることが好ましい。分散させる被
削性改善用微細粒子としては、MnS 、CaF2、BN、および
エンスタタイトのうちから選ばれた1種または2種以上
とすることが好ましい。MnS 、CaF2、BN、およびエンス
タタイトはいずれも、被削性を改善する粒子であり、必
要に応じて選択して含有できる。
【0024】このような被削性改善用微細粒子を基地中
に均一分散させることにより、切削中の切粉は, これら
の微細粒子と微細粒子間の距離で決定される大きさに分
断されるため、切削抵抗は低く維持される。また、基地
中に分散させる被削性改善用微細粒子は、粒径:150 μ
m 以下の微細粒子とすることが好ましい。微細粒子の粒
径が150 μm を超えると、接合強度が低下する。なお、
好ましくは5〜100 μmである。
【0025】また、多孔質金属焼結体の基地中に分散さ
せる被削性改善用微細粒子の含有量は、0.1 〜5質量%
とすることが好ましい。被削性改善用微細粒子の含有量
が、0.1 質量%未満では被削性改善の効果が認められな
い。一方、5質量%を越えて含有すると、基地との密着
強度が低下する。このため、粒径:150 μm 以下の被削
性改善用微細粒子は、0.1 〜5質量%の範囲で含有する
ことが好ましい。
【0026】また、軽合金部材補強用多孔質金属焼結体
は、多孔質ステンレス鋼焼結体とすることが好ましい。
焼結体を耐酸化性に富むステンレス鋼製とすることによ
り、鋳包み時の焼結体の酸化を抑制できる。ステンレス
鋼のなかでも、強度が高いマルテンサイト系ステンレス
鋼製とすることが補強材という観点からより好ましい。
【0027】ステンレス鋼のなかでも好ましいマルテン
サイト系ステンレス鋼としては、SUS 403 ,SUS 410 ,SU
S 410S, SUS 420J1,SUS 420J2 ,SUS 431,SUS 440A ,SUS
440B,SUS 440Cが例示される。また、フェライト系ステ
ンレス鋼としては、SUS 405,SUS 410L ,SUS 409, SUS 4
09S,SUS 429 ,SUS 430,SUS 434 ,SUS 436L が例示され
る。
【0028】多孔質マルテンサイト系 (フェライト系)
ステンレス鋼焼結体は、例えば、質量%で、C:0.1 〜
0.8 %、Si:1.0 %以下、Mn:2.0 %以下、P:0.1 %
以下、S:0.03%以下、Cr:11.0〜13.5%を含み、残部
実質的にFeである組成を有することが好ましい。つぎ
に、多孔質マルテンサイト系 (フェライト系)ステンレ
ス鋼焼結体の組成限定理由について説明する。
【0029】C:0.1 〜0.8 % Cは、焼結体の強度、硬さを増加させ、寸法精度の調整
を容易とする元素であり、 本発明では精度確保のため0.
1 %以上の含有を必要とする。なお、0.8 %を超えて含
有すると炭化物が生成し、硬さが増大し圧環強さが低下
する。このため、Cは0.1 〜0.8 %に限定することが好
ましい。
【0030】Si:1.0 %以下 Siは、焼結体の強度を増加させる元素であり、0.3 %以
上含有することが好ましいが、1.0%を超えて含有する
と、焼結体が脆化する傾向となる。このため、Siは1.0
%以下とすることが好ましい。 Mn:2.0 %以下 Mnは、焼結体の強度を増加させる元素であり、 本発明で
は0.05%以上含有することが好ましいが、2.0%を超えて
含有すると、焼結体が脆化する傾向となる。このため、
Mnは2.0 %以下とすることが好ましい。
【0031】P:0.1 %以下、 Pは、0.1 %を超えて含有すると、ステダイト炭化物が
増加し鋼が脆化するため、Pは0.1 %以下に限定するこ
とが好ましい。なお、 より好ましくは0.05%以下であ
る。 S:0.03%以下 Sは、硫化物を形成し、材料の延性、 靭性を低下させる
ためできるだけ低減することが好ましい。このようなこ
とから、本発明では、Sは0.03%以下とすることが好ま
しい。
【0032】Cr:11.0〜13.5% Crは、固溶強化元素であり、所望の強度を確保するため
に11.0%以上含有することが好ましい。一方、13.5%を
超えて含有すると、Cr炭化物の粒界上への析出が顕著と
なり強度が低下する。このため、Crは11.0〜13.5%の範
囲に限定することが好ましい。
【0033】上記した成分以外の残部は、実質的Feであ
る。なお、不可避的不純物として、N:0.1 %以下、S
e:0.15%以下が許容できる。また、好ましいオーステ
ナイト系ステンレス鋼としては、SUS 302,SUS 303,SUS
304,SUS 304 L,SUS 316,SUS 317 ,SUS 310S が例示され
る。多孔質オーステナイト系ステンレス鋼焼結体は、例
えば、質量%で、C:0.1〜1.0 %、Si:1.0 %以下、M
n:2.0 %以下、P:0.1 %以下、S:0.03%以下、N
i:5.0 〜15.0、Cr:15.0 〜25.0%を含み、残部実質
的にFeである組成を有することが好ましい。
【0034】つぎに、多孔質オーステナイト系ステンレ
ス鋼焼結体の組成限定理由について説明する。 C:0.1 〜1.0 % Cは、焼結体の強度、硬さを増加させ、寸法精度の調整
を容易とする元素であり、 本発明では精度確保のため0.
1 %以上の含有を必要とする。なお、1.0 %を超えて含
有すると炭化物が生成し、硬さが増大し圧環強さが低下
する。このため、Cは0.1 〜1.0 %に限定することが好
ましい。
【0035】Si:1.0 %以下 Siは、焼結体の強度を増加させる元素であり、0.3 %以
上含有することが好ましいが、1.0%を超えて含有する
と、焼結体が脆化する傾向となる。このため、Siは1.0
%以下とすることが好ましい。 Mn:2.0 %以下 Mnは、焼結体の強度を増加させる元素であり、 本発明で
は0.05%以上含有することが好ましいが、2.0%を超えて
含有すると、焼結体が脆化する傾向となる。このため、
Mnは2.0 %以下とすることが好ましい。
【0036】P:0.1 %以下、 Pは、0.1 %を超えて含有すると、ステダイト炭化物が
増加し鋼が脆化するため、Pは0.1 %以下に限定するこ
とが好ましい。なお、 より好ましくは0.05%以下であ
る。 S:0.03%以下 Sは、硫化物を形成し、材料の延性、 靭性を低下させる
ためできるだけ低減することが好ましい。このようなこ
とから、本発明では、Sは0.03%以下とすることが好ま
しい。
【0037】Ni:5.0 〜15.0% Niは、オーステナイト化元素であり、本発明では5.0 %
以上含有することが好ましい。一方、15.0%を超えて含
有すると、硬さが低下する。このため、Niは5.0 〜15.0
%の範囲に限定することが好ましい。 Cr:15.0〜25.0% Crは、固溶強化元素であり、所望の強度を確保するため
に15.0%以上含有することが好ましい。一方、25.0%を
超えて含有すると、Cr炭化物の粒界上への析出が顕著と
なり耐摩耗性が低下する。このため、Crは15.0〜25.0%
の範囲に限定することが好ましい。
【0038】上記した成分以外に、Mo,Ti,Nbの1種また
は2種以上を合計で1%以下含有しても何ら問題はな
い。上記した成分以外の残部は、実質的Feである。な
お、不可避的不純物として、N:0.1 %以下、Se:0.15
%以下が許容できる。また、本発明では、上記した多孔
質ステンレス鋼焼結体に代えて、多孔質FeーCuーC系焼
結体とすることができる。多孔質Fe−Cu−C系焼結体で
は、2〜6質量%のCuを含有することが好ましい。焼結
体中のCu含有量が、2質量%未満ではアルミニウム合金
等の軽合金部材に鋳包まれた場合に接合強度が低下す
る。一方、6%を超えて含有すると、単独空孔が形成さ
れやすくなり、軽合金の含浸性が低下する。このため、
本発明では多孔質Fe−Cu−C系焼結体中のCu含有量を、
2〜6質量%に限定することが好ましい。
【0039】上記した多孔質金属焼結体のうちのいずれ
かに、アルミニウム合金等の軽合金を充填し軽合金複合
化部材とするか、あるいは上記した多孔質金属焼結体の
うちのいずれかを、アルミニウム合金等の軽合金にて鋳
包み軽合金部材補強用多孔質金属焼結体として使用に供
することができる。ついで、本発明の軽合金部材補強用
多孔質金属焼結体の製造方法について、説明する。
【0040】原料とする合金粉末と、黒鉛粉末と、潤滑
剤粉末とを混合して混合粉としたのち、これら混合粉を
金型に装入して加圧成形し圧粉体とし、該圧粉体を焼結
して多孔質金属焼結体とする。原料粉として、 使用する
合金粉末を、60メッシュの篩を通過し(以下、60メッシ
ュアンダー、あるいは−60メッシュともいう)、350メ
ッシュの篩を通過しない(以下、350 メッシュオーバ
ー、あるいは+350 メッシュともいう)粒度分布に調整
した合金粉とすることが好ましい。
【0041】+100 メッシュ(#100 メッシュの篩を通
過しない)の粒子が存在すると、混合粉の圧粉性が低下
し、所望の密度の圧粉体とすることが難しくなる場合が
あるが、−60〜+100 メッシュの粒子が、全体の粉末の
40%未満であれば、成形可能であり、所望の空孔率を有
する圧粉体とするためには有利となる。一方、−350メ
ッシュ(#350 メッシュの篩を通過する)の粒子が存在
すると、直径5μm 未満の微細空孔の存在量が増加し、
境界強度比が低下する傾向となる。
【0042】なお、軽合金部材補強用多孔質金属焼結体
の製造において使用する合金粉末については、その種類
は特に限定されない。軽合金部材の用途に応じて、適
宜、最適材質の合金粉を使用することができる。なお、
軽合金にて充填又は鋳包む場合の耐酸化性の観点から
は、ステンレス鋼粉とすることが好ましい。ステンレス
鋼としては、マルテンサイト系、フェライト系、オース
テナイト系がいずれも好適である。また、ステンレス鋼
粉に代えて、鉄粉およびCu粉、またはFe-Cu 合金粉とし
てもよい。
【0043】また、各軽合金部材の補強用としては、焼
結条件を適宜調整して、多孔質金属焼結体の空孔率を15
〜50%とし、JIS Z 2507に規定される圧環強さ試験によ
り得られる圧環強さで200MPa以上の強度を有するように
することが好ましい。上記した多孔質金属焼結体に、ア
ルミニウム合金等の軽合金を充填し, 軽合金複合化部材
として使用に供することができる。
【0044】つぎに、本発明の多孔質金属焼結体を用い
た軽合金複合化部材の製造方法について、説明する。本
発明では、合金粉末に、黒鉛粉と、潤滑剤粉末とを混合
して混合粉としたのち、該混合粉を成形して、所定形状
の圧粉体となし、ついで該圧粉体を焼結して、所定の形
状を有する多孔質金属焼結体とする。
【0045】本発明では、原料粉として使用する合金粉
末を、上記した組成の、マルテンサイト系ステンレス鋼
粉、フェライト系ステンレス鋼粉あるいはオーステナイ
ト系ステンレス鋼粉、または鉄粉およびCu粉、あるいは
Fe-Cu 合金粉とすることが好ましい。なお、合金粉とし
ての、Cu粉、またはFe-Cu 合金粉は、混合粉中のCu含有
量が2〜6質量%となるように配合することが好まし
い。
【0046】使用する合金粉は、上記したように、60メ
ッシュの篩を通過し(以下、60メッシュアンダー、ある
いは−60メッシュともいう)、350 メッシュの篩を通過
しない(以下、350 メッシュオーバー、あるいは+350
メッシュともいう)粒度分布に調整した鋼粉とすること
が好ましい。+100 メッシュ(#100 メッシュの篩を通
過しない)の粒子が存在すると、混合粉の圧粉性が低下
し、所望の密度の圧粉体とすることが難しくなり、金型
寿命が低下する場合があるが、−60〜+100 メッシュの
粒子が、全体の粉末の40%未満であれば、成形可能であ
り、所望の空孔率を有する圧粉体とするためには有利と
なる。一方、−350 メッシュ(#350 メッシュの篩を通
過する)の粒子が存在すると、直径5μm 未満の微細空
孔の存在量が増加し、接合強度比が低下する傾向とな
る。
【0047】上記したような粒度分布を有する合金粉
を、さらに黒鉛粉末と、ステアリン酸亜鉛等の潤滑剤粉
末、ワックス系造粒剤粉末とともに混合し混合粉とす
る。黒鉛粉は、多孔質焼結体の強度を増加させる合金元
素として添加する。合金粉がステンレス鋼粉の場合に
は、黒鉛粉の配合比率は、混合粉全量に対し、1.0 質量
%とすることが好ましい。混合粉中の黒鉛粉の配合量が
1.0 質量%を超えると、炭化物が増加し、ステンレス鋼
の特性を阻害し、被削性を劣化させ、さらに焼結時に液
相が生じ、独立空孔が多く発生して、接合強度が低下す
る。
【0048】なお、合金粉が鉄粉およびCu粉、またはFe
-Cu 合金粉の場合には、黒鉛粉の配合比率は、混合粉全
量に対し、0.8 〜1.5 質量%とすることが好ましい。混
合粉中の黒鉛粉の配合量が0.8 質量%未満では、所望の
強度確保が困難となり、一方、1.5 質量%を超えると、
炭化物が増加し、焼結体の特性を劣化させるとともに、
焼結時に液相が生じ、独立空孔が多く発生して、接合強
度が低下する。
【0049】また、黒鉛粉の粒径は、0.1 〜10μm とす
ることが好ましい。0.1 μm 未満では取り扱いが困難と
なり、10μm を超えると、均一分散が困難となる。上記
した混合粉を、金型に装入し加圧成形して、所定の形状
に略等しい所定形状の圧粉体とする。圧粉体の成形方法
は、特に限定されないが、成形プレス等を用いることが
好ましい。所定形状に成形された圧粉体は、ついで、焼
結され、所定の形状を有する多孔質金属焼結体とされ
る。なお、焼結条件を調整して、多孔質金属焼結体の空
孔率が15〜50%となるように、さらにJIS Z 2507に規定
される圧環強さ試験により求められる圧環強さで200MPa
以上の強度を有するようにすることが好ましい。
【0050】このようにして得られた所定形状の多孔質
焼結体を、軽合金部材を形成する鋳型の対応部位に装着
し、その鋳型内に溶融アルミニウム合金等の軽合金溶湯
を注入し、高圧ダイキャストしてあるいは溶湯鍛造して
焼結体を鋳包んだ軽合金複合化部材を製造する。これに
より、焼結体の空孔に溶湯が侵入し軽合金部材との接合
が完了する。その後、軽合金複合化部材は、切削加工さ
れ所定の寸法の部材とされる。
【0051】
【実施例】(実施例1)表1に示す合金粉に、黒鉛粉、
潤滑剤粉を添加し混合、 混練して混合粉としたのち、金
型に充填し成形プレスにより加圧成形して、略所定寸法
の圧粉体とした。なお、合金粉は、表1に示すように、
予め分級し、粒度分布を調整した。表1には、見かけ密
度を参考までに併記する。なお、表1には、使用した鋼
粉A,Dの粒度分布の一例を参考までに示す。
【0052】ついで、これら圧粉体を1100〜1200℃で焼
結し、表2に示す空孔を含む多孔質金属焼結体とした。
なお、全空孔率は、密度測定により空孔率を求めた。密
度測定方法は、アルキメデス法によった。また、全空孔
に対する微細空孔の比率は、多孔質金属焼結体のプレス
方向断面について、金属顕微鏡により組織を撮像し、画
像解析により直径5μm 以下の微細空孔の全面積と全空
孔の面積をもとめ、(直径5μm 以下の微細空孔の全面
積)/(全空孔の面積)により求めた. なお、 測定個所
は円周上3個所とした。
【0053】また、これら多孔質金属焼結体から試験片
を採取し、JIS Z 2507の規定に準拠した圧環強さ試験を
実施し、圧環強さを求めた。ついで、これら多孔質金属
焼結体を、軽合金部材を形成する鋳型の補強材装入位置
に装着した。ついで鋳型内に、アルミニウム合金溶湯
(JIS AC8A)を注入したのち、溶湯鍛造を施し、補
強用多孔質金属焼結体を鋳包んだ所定の寸法の複合化部
材とした。
【0054】これら複合化部材から、接合境界を含む引
張試験片を採取し引張試験を行い接合強度を求め、アル
ミニウム合金 (軽合金)の含浸性を評価した。なお、引
張試験片の採取方向は、試験片の軸に対し垂直に境界面
を含む方向とした。なお、接合強度σは、所望の接合強
度σE (溶製材にアルフィン処理を施したものの接合強
度)に対する比、接合強度比σ/ σE で評価した。
【0055】また、これら複合化部材から、引張試験片
および高温硬さ試験片を採取し、引張試験および300 ℃
における高温硬さ試験を実施し、引張強さσTSおよび高
温硬さHv300 を求めた。これら引張強さおよび高温硬さ
は、これら引張強さσTSおよび高温硬さHv300 のアルミ
ニウム合金(AC8A)の引張強さ(σTS) Alおよび30
0 ℃における硬さ(Hv300) Alに対する比、引張強さ比σ
TS/(σTS) Al、高温硬さ比Hv300 / (Hv300) Alで評価し
た。
【0056】得られた結果を表2に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】本発明例は、いずれも200MPa以上の高い圧
環強さと、1.0 以上の高い接合強度比を有する軽合金部
材補強用多孔質金属焼結体及びこれを用いた軽合金複合
化部材となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較
例は、圧環強度が低いか、あるいは接合強度比が低く、
本発明例と同一空孔率にもかかわらず、接合性に劣る複
合化部材となっていた。
【0060】また、本発明例はいずれも、引張強さ比σ
TS/(σTS) Al、および高温硬さ比Hv 300 / (Hv300) Al
1以上となっており、アルミニウム合金単体にくらべ、
高い強度、高温硬さを有する軽合金複合化部材となって
いることがわかる。一方、圧環強さが200MPa未満と本発
明の範囲を外れる比較例は、いずれも引張強さ比σTS/
TS) Alが1未満と、低い複合化部材強度しか示さな
い。
【0061】なお、試料No.24,No.25 は、焼結体中のCu
含有量が6%を超えており、微細空孔量が本発明の範囲
を外れるため、接合強度比が低下している。また、試料
No.8は面圧が過大となり、金型が割れたり、金型寿命の
低下を招くため成形困難とした。 (実施例2)表1に示す合金粉末A(SUS 304)に、表3
に示す含有量の黒鉛粉と、表3に示す種類、粒径, 含有
量の被削性改善用微細粒子粉と、さらに潤滑剤粉を添加
し混合、 混練して混合粉としたのち、金型に充填し成形
プレスにより加圧成形して、略所定寸法の圧粉体とし
た。
【0062】ついで、これら圧粉体を1000〜1200℃で焼
結し、表3に示す空孔を含む多孔質オーステナイト系ス
テンレス鋼焼結体とした。なお、焼結体の全空孔率は、
実施例1と同様に、密度測定により空孔率を求めた。ま
た、これら焼結体(多孔質オーステナイト系ステンレス
鋼焼結体)から, 試験片を採取して、実施例1と同様
に、全空孔に対する微細空孔の比率、および圧環強さを
求めた。
【0063】ついで、これら焼結体を、軽合金部材を形
成する鋳型の補強材装入位置に装着した。ついで鋳型内
に、アルミニウム合金溶湯(JIS AC8A)を注入した
のち、溶湯鍛造を施し、補強用多孔質金属焼結体を鋳包
んだ所定の寸法の複合化部材とした。これら複合化部材
から、実施例と同様に、接合境界を含む引張試験片を採
取し引張試験を行い接合強度を求め、アルミニウム合金
(軽合金)の含浸性を評価した。なお、引張試験片の採
取方向は、実施例1と同様に、試験片の軸に対し垂直に
境界面を含む方向とした。なお、接合強度σは、実施例
1と同様に、接合強度比σ/ σE で評価した。
【0064】
【表3】
【0065】本発明例は、被削性改善用微細粒子を含有
していても、いずれも200MPa以上の高い圧環強さと、1.
0 以上の高い接合強度比を有する軽合金部材補強用多孔
質金属焼結体及びこれを用いた軽合金複合化部材となっ
ている。
【0066】
【発明の効果】本発明によれば、圧環強度に優れかつ鋳
包み後の優れた接合性を有する軽合金部材補強用多孔質
金属焼結体を安定して製造でき、産業上格段の効果を奏
する。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳包み後の接合強度比に及ぼす微細空孔比率の
影響を示すグラフである。
【図2】焼結体中の空孔の分布状況の一例を模式的に示
す説明図である。
【図3】従来の鋳包み後の多孔質金属焼結体とアルミニ
ウム合金材との接合強度比と空孔率との関係を示すグラ
フである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02F 3/00 302 F02F 3/00 302Z

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合金粉末を含む混合粉を圧粉、焼結して
    なる多孔質金属焼結体であって、前記多孔質金属焼結体
    が、15〜50%の空孔率を有し、かつ該空孔のうち直径5
    μm を超える空孔を、全空孔率に対し80%以上有し、圧
    環強さが200MPa以上であることを特徴とする軽合金の含
    浸性に優れた軽合金部材補強用多孔質金属焼結体。
  2. 【請求項2】 前記多孔質金属焼結体が、粒径:150 μ
    m 以下のMnS 、CaF2、BNおよびエンスタタイトのうちか
    ら選ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微
    細粒子を0.1 〜5質量%含有することを特徴とする請求
    項1に記載の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体。
  3. 【請求項3】 前記多孔質金属焼結体が多孔質ステンレ
    ス鋼焼結体であることを特徴とする請求項1または2に
    記載の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体。
  4. 【請求項4】 前記多孔質ステンレス鋼焼結体に代え
    て、多孔質FeーCuーC系焼結体とすることを特徴とする
    請求項3に記載の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体。
  5. 【請求項5】 合金粉末を含む混合粉を圧粉、焼結して
    なる多孔質金属焼結体に、軽合金を含浸させた複合化部
    材であって、前記多孔質金属焼結体が、15〜50%の空孔
    率を有し、かつ該空孔のうち直径5μm を超える空孔
    が、全空孔率に対し80%以上含まれ、圧環強さが200MPa
    以上であることを特徴とする軽合金複合化部材。
  6. 【請求項6】 合金粉末に、黒鉛粉と、潤滑剤粉末とを
    混合して混合粉としたのち、該混合粉を成形して圧粉体
    となし、ついで該圧粉体を焼結して多孔質金属焼結体と
    する多孔質金属焼結体の製造方法において、前記合金粉
    末を−60メッシュ〜+350 メッシュの粒度分布を有する
    合金粉とし、前記焼結の焼結条件を調整して、前記多孔
    質金属焼結体の空孔率を15〜50%とし、圧環強さを200M
    Pa以上とすることを特徴とする軽合金の含浸性に優れた
    軽合金部材補強用多孔質焼結体の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記混合粉がさらに、粒径:150 μm 以
    下のMnS 、CaF2、BNおよびエンスタタイトのうちから選
    ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微細粒
    子を、混合粉全量に対し、0.1 〜5質量%含有すること
    を特徴とする請求項6に記載の軽合金部材補強用多孔質
    金属焼結体の製造方法。
  8. 【請求項8】 合金粉末に、黒鉛粉と、潤滑剤粉末とを
    混合して混合粉としたのち、該混合粉を成形して所定形
    状の圧粉体となし、ついで該圧粉体を焼結して所定形状
    の多孔質金属焼結体とし、ついで軽合金を含浸させて複
    合化部材とする軽合金複合化部材の製造方法において、
    前記合金粉末を−60メッシュ〜+350メッシュの粒度分
    布を有する合金粉とし、前記焼結の焼結条件を調整し
    て、前記多孔質金属焼結体の空孔率を15〜50%とし、圧
    環強さを200MPa以上とすることを特徴とする軽合金複合
    化部材の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記混合粉がさらに、粒径:150 μm 以
    下のMnS 、CaF2、BNおよびエンスタタイトのうちから選
    ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微細粒
    子を、混合粉全量に対し、0.1 〜5質量%含有すること
    を特徴とする請求項8に記載の軽合金複合化部材の製造
    方法。
  10. 【請求項10】 前記合金粉末が、フェライト系ステン
    レス鋼粉またはマルテンサイト系ステンレス鋼粉または
    オーステナイト系ステンレス鋼粉であることを特徴とす
    る請求項8または9に記載の軽合金複合化部材の製造方
    法。
  11. 【請求項11】 前記混合粉が、前記黒鉛粉を、混合粉
    全量に対し1.0 質量%以下含有することを特徴とする請
    求項10に記載の軽合金複合化部材の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記合金粉末が、鉄粉およびCu粉、ま
    たはFe-Cu 合金粉であることを特徴とする請求項8また
    は9に記載の軽合金複合化部材の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記Cu粉、またはFe-Cu 合金粉を、混
    合粉中のCu含有量が2〜6質量%となるように配合する
    ことを特徴とする請求項12に記載の軽合金複合化部材の
    製造方法。
  14. 【請求項14】 前記混合粉が、前記黒鉛粉を、混合粉
    全量に対し、0.8 〜1.5 質量%含有することを特徴とす
    る請求項12または13に記載の軽合金複合化部材の製造方
    法。
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