JP2003067181A - 量子コンピュータおよびこの制御方法 - Google Patents
量子コンピュータおよびこの制御方法Info
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Abstract
間の相互作用を、任意に制御できるようにする。 【解決手段】 超伝導体から構成された磁束転送器10
1に、超伝導電流が流れうる状態と流れない状態とを切
り換える(超伝導電流をオンオフする)、切り換え手段
として、ジョセフソン接合電界効果トランジスタ(JO
FET)102を用い、磁束量子ビット104a,10
4b間の相互作用を、任意に制御し、量子もつれ合い状
態を実現する。
Description
た量子コンピュータおよびこの制御方法に関する。
に、大きな数の因数分解が、量子計算を使うと古典計算
機に比べて圧倒的な速さで計算できることを示して以
来、量子計算機の研究は理論,実験ともに急激に進んで
来ている。量子コンピュータでは,量子ビットが古典的
なコンピュータのビットに対応する。また、古典的なコ
ンピュータにおける入力,演算,出力は、量子コンピュ
ータにおける系の、初期状態の準備、系の時間発展、系
の読み出しに対応する。量子コンピュータの一般的な解
説は、文献1「細谷暁夫著、『量子コンピュータの基
礎』、サイエンス社(1999年)」に述べられている。
量子ビットは、量子力学的な|0>状態と|1>状態の
重ね合わせ状態で表される。この状態は、実験的には、
量子的な二準位系にあたり、様々な量子的な二準位系を
使った量子コンピュータが提案されている。これらの提
案は、固体素子を用いたものと固体素子を用いないもの
とに分けることができる。固体素子は集積化が容易な点
で有利であるが、素子周辺の環境による影響のため、量
子的な状態を保つことが難しい。逆に、固体素子でない
ものは、集積化は難しいが周辺の環境の影響を受けにく
い。
ビットの一種ではあるが、素子に超伝導体を使ってお
り、超伝導ギャップの存在のため環境の影響を受けにく
いと考えられている。また、同じく超伝導体を使った電
荷量子ビットも提案されているが、磁束のノイズは電荷
のノイズに比べて少ないので、この点においても磁束量
子ビットは有利である。このため、磁束量子ビットは、
集積化に有利でかつ環境の影響も受けにくい理想的な量
子ビットであると考えられる。
の時間発展になる。1つの量子ビットの演算である位相
シフタと呼ばれる演算と、2つの量子ビットの演算であ
る制御NOTと呼ばれる演算ができれば、原理的にすべ
て演算が可能であることが示されている。2つの量子ビ
ットの演算のためには、2つの量子ビットが量子もつれ
合い状態(entangled state)にある必要がある。このた
めには、2つの量子ビット間に相互作用が必要となる。
提案されている量子コンピュータでは、通常この相互作
用を随意に切ったり入れたりすることができない。例え
ば、現在最も多くの量子ビット数で実現されているNM
R量子コンピュータにおいては、量子ビットは核スピン
であり、量子ビット間の相互作用は核スピン同士の相互
作用である。この相互作用は、素子としてどのような分
子を選んだかによって決定されてしまい、核スピン同士
の相互作用は常に存在している。
おいて、量子ビット間は常に相互作用がある状態にあ
る。量子コンピュータにおける演算がその系の時間発展
であることを考えれば、常に相互作用が存在すること
は、常にビット間で演算を行っていることになる。これ
は任意の演算をさせるには好ましいことではなく、任意
の演算を行うためには、常に行われている量子ビット間
での相互作用を打ち消す別の操作が必要となる(文献1
第5章参照)。
ためになされたものであり、量子コンピュータの演算に
おける量子ビット間の相互作用を、任意に制御できるよ
うにすることを目的とする。
量子コンピュータは、2つの磁束量子ビットと、この2
つの磁束量子ビット間に相互作用を作用させる磁束転送
器とを備え、加えて、磁束転送器に流れる超伝導電流を
オンオフする切り換え手段を備えるようにしたものであ
る。この量子コンピュータによれば、切り換え手段によ
る磁束転送器のオンオフにより、超伝導電流が流れるこ
とにより相互作用を持つ2つの磁束量子ビット間の相互
作用が制御される。
手段は、ジョセフソン接合電界効果トランジスタ、また
は磁束転送器の一部を加熱する加熱手段、または磁束転
送器の一部に設けられた超伝導体から構成された機械ス
イッチのいずれかであればよい。
ュータの制御方法は、2つの磁束量子ビットと、この2
つの磁束量子ビット間に相互作用を作用させる磁束転送
器とを備えた量子コンピュータの演算を、磁束転送器に
流れる超伝導電流をオンオフすることにより制御するよ
うにしたものである。この制御方法によれば、磁束転送
器のオンオフにより、超伝導電流が流れることにより相
互作用を持つ2つの磁束量子ビット間の相互作用が制御
される。
て、磁束転送器に流れる超伝導電流のオンオフは、例え
ば、ジョセフソン接合電界効果トランジスタ、または磁
束転送器の一部を加熱すること、または、磁束転送器の
一部に設けた機械スイッチのいずれかにより行うように
すればよい。
て図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態
における量子コンピュータの一部構成の例を示す平面図
である。図1中に付けた符号について説明すると、ま
ず、101は超伝導体から構成された磁束転送器(フラ
ックストランスフォーマー)、102はジョセフソン接
合電界効果トランジスタ(JOFET:切り換え手段)
であり、磁束転送器101の電極部101a,101b
に接続している。
トランジスタ(JOFET)のゲート電極に接続するゲ
ート配線、104a,104bは磁束量子ビット、10
5は磁束量子ビットの状態を読み出すSQUID(Super
conducting Quantum Interference Device:読み出し手
段)、106a,106bは、磁場を作り出すことで各
々の磁束量子ビットの状態を制御する制御ラインであ
る。
からなるジョセフソン接合である。これらは、図示して
いない半導体基板上に絶縁膜を介して形成され、磁束量
子ビット104a,104bおよびSQUID105
は、例えばアルミニウムやニオブなどの、低温にするこ
とで超伝導製を示す材料から構成すればよい。。同様
に、磁束転送器101も、ニオブから構成すればよい。
また、磁束量子ビット104a,104bは、例えば、
約5μm角に形成されている
ト104a,104bが作り出す磁束をSQUID10
5で読み出し、磁束量子ビット104a,104bの状
態が、|0>状態と|1>状態とのどちらの状態となっ
ているかを検出することができる。
つの磁束量子ビットについては、文献2「J.E.Mooij,T.
P.Orlando,L.Levitov,Lin Tian,Caspar H.van der Wal,
SethLIoyd,“Josephson Persistent-Current Qubit",Sc
ience 285(1999)1036」、文献3「T.P.Orlando,J.E.Moo
ij,Lin Tian,Caspar H.van der Wal,L.S.Levitov,Seth
Lloyd,J.J.Mazo,“Superconducting persistent-curren
t qubit",Physical Review B60(1999)15398」、文献4
「Caspar H.van der Wal,A.C.J.ter Haar,F.K.Wilhelm,
R.N.Schouten,C.J.P.M.Hrmans,T.P.Orlando,Seth Lloy
d,J.E.Mooij,"Quantum Superposition of Macroscopic
Persistent-Current States",Science 290(2000)773」
に記載されている。
は、磁場依存性を示す(文献4のFig.1参照)。このた
め、外から加える磁場により、1つの磁束量子ビットの
状態を、|0>状態と、|1>状態と、またはこれらの
量子力学的な重ね合わせ状態とに制御できる。磁束量子
ビット104a,104bの状態に対する制御は、制御
ライン106a,106bに電流を流し、この周りに磁
場を発生させるにより行うことができる。
6bの周りに発生する磁場は、制御ライン106aおよ
び制御ライン106bに流れる電流に比例し、かつ制御
ライン106aおよび制御ライン106bからの距離に
反比例するので、磁束量子ビット104aおよび磁束量
子ビット104bの状態を個別に操作性良く制御でき
る。
4bとして3つのジョセフソン接合を用いたもので示し
ているが、本発明におけるJOFETを使用した磁束転
送器101の作用は、他の磁束量子ビット場合でも同様
である。他の磁束量子ビットに関しての一例として、1
つのジョセフソン接合を用いた磁束量子ビットがある。
これは文献5「JonathAN R.Fried-man,Vijay Patel,W.C
hen,S.K,Tolpygo,J.E.Lukens,“Quantum superposition
macro-scopic states",Nature406(2000)43」に詳しく
述べられている。
は、磁束転送器101を流れる電流を通じて磁気的な相
互作用を持ち、2つの磁束量子ビット104a,104
bの量子もつれ合い状態(entangled state)を実現する
ことができる。図2は、この磁気的な相互作用を模式的
に説明するものである。図2では、超伝導体から構成さ
れた磁束転送器101を、2つの磁束量子ビット104
a,104bで挾んだ状態を、等価的に示している。
104b、磁束転送器101の自己インダクタンスを各
々L1,L2,LTとする。また、磁束量子ビット104
aと磁束転送器101との相互インダクタンスをM1と
し、磁束量子ビット104bと磁束転送器101との相
互インダクタンスをM2とする。
子ビット104bとの磁気的な相互作用について考察す
る。いま、磁束量子ビット104aでの磁束がΔΦ1変
化したとすると、この磁束の変化は、磁束量子ビット1
04aの自己インダクタンスL1により、磁束量子ビッ
ト104aに電流の変化ΔI1=ΔΦ1/L1を引き起こ
す。
の変化ΔI1は、磁束量子ビット104aと磁束転送器
101との相互インダクタンスM1により、磁束転送器
101に磁束の変化ΔΦT=M1ΔI1を引き起こす。こ
の磁束転送器101での磁束の変化ΔΦTは、磁束転送
器101の自己インダクタンスLTにより、磁束転送器
101に電流の変化ΔIT=ΔΦT/LTを引き起こす。
ΔITは、磁束転送器101と磁束量子ビット104b
の相互インダクタンスM2により、磁束量子ビット10
4bに磁束の変化ΔΦ2=M2ΔITを引き起こす。従っ
て、磁束量子ビット104aでの磁束の変化ΔΦTは、
磁束転送器101に電流が流れることにより、磁束量子
ビット104bにおいて、磁束の変化ΔΦ2=M1M2Δ
Φ1/L1LTを引き起こすことになる。
依存性を示すことを考えると、磁束量子ビット104a
の状態は、磁束量子ビット104bの状態に変化を与
え、相互作用を持つことを意味する。すなわち、磁束量
子ビット104aの状態が、|0>状態か|1>状態に
よって、磁束量子ビット104bの状態も影響を受け
る。この逆も同様であり、2つの磁束量子ビット104
a,104bは、相互作用を持つことになる。
子ビット104bの直接の相互インダクタンスは、考慮
する必要はない。なぜなら、この直接の相互インダクタ
ンスの大きさは、磁束量子ビット104aと磁束量子ビ
ット104bとを充分遠くに離せば、小さな値となるか
らである。この時、直接の相互作用は、磁束転送器10
1を通した相互作用の大きさに比べて小さく無視でき
る。
の磁束量子ビット104a,104bを囲むように配置
している。しかし、図2の模式図からも分かるように、
磁束転送器101と各々の磁束量子ビットとの相互イン
ダクタンスを通し、磁束量子ビット104aと磁束量子
ビット104bとが磁気的に相互作用していれば、磁束
転送器は、どのような配置,形状であろうと、同様の相
互作用の効果が得られる。
転送器101を使った磁束量子ビット104a,104
bの系においては、相互作用のエネルギーは、磁束転送
器101の自己インダクタンスLTと、磁束量子ビット
104a,104bとの相互インダクタンスM1,M2の
大きさと、磁束量子ビット104a,104bを流れる
電流I1,I2により決まる。
Φは、磁束量子ビット104bにおける磁束の変化ΔΦ
2=M1M2ΔΦ1/L1LTを引き起こす。よって、磁束量
子ビット104bが受けた仕事(エネルギー)は、 I2ΔΦ2=M1M2I2ΔΦ1/L1LT=M1M2I2ΔI1/L
T,ΔΦ1=L1ΔI1 である。また、磁束量子ビット104bが受けた仕事
(エネルギー)は、相互作用のエネルギーと考えられ、相
互作用のエネルギーをJとおくと、J=M1M2I2I1/L
Tで表される。
合い状態(entangled state)が必要になる。本実施の形
態の磁束量子ビット104a,104bにおいては、上
述した磁気的な相互作用により、量子もつれ合い状態が
実現できる。相互作用で結ばれた磁束量子ビット104
a,104bが、時間発展することにより、量子もつれ
合い状態になる。いまz軸方向のパウリのスピン行列を
σzとし、相互作用のハミルトニアンをHintとすると、
相互作用のエネルギーJを使って、
04aの磁束のz成分,σ2zは磁束量子ビット104b
の磁束のz成分であり、Hintは、σ1zとσ2zの直積に、
相互作用のエネルギーJを乗じたものである。この相互
作用で結ばれた2つの磁束量子ビットが、時間発展す
る。
し、磁束量子ビット104bの状態を|b>とする。ま
ずはじめに、磁束転送器101が超伝導電流を流さない
状態にあり、磁束量子ビット104aと磁束量子ビット
104bとの間には相互作用がないとする。磁束量子ビ
ット104aと磁束量子ビット104bの初期状態を、
|0>状態と|1>状態とが等しく存在する状態とし、
各々の状態を、 |I>=(|0>+|1>)/√2,|II>=(|0
>+|1>)/√2 とする。これらは、X軸方向のパウリのスピン行列σx
の固有ベクトルである。
>|1>)/2 となる。時刻t=0に磁束転送器101が、超伝導電流
を流せる状態に変わり、2つの磁束量子ビット104
a,104bの状態が、相互作用を持つ状態に変わり、
これらによる系が時間発展していく。
104a,104bの状態を|Ψ(t)>とする。状態
|Ψ(t)>は、相互作用の影響を受けて時間発展して
いき、この時間依存性は、 |Ψ(t)>=exp(−2πiHintt/h)|Ψ
(0)>,|Ψ(0)>=|I>|II> となる。
ニアンを代入すると、 |Ψ(t)>={exp(−2πiJt/h)|0>|
0>+exp(2πiJt/h)|0>|1>+exp
(2πiJt/h)|1>|0>+exp(−2πiJ
t/h)|1>|1>}/2 となる。いま、時刻t=h/(8J)を考える。この時
刻の系の状態は、 |Ψ(t)>={(1−i)|0>|0>+(1+i)
|0>|1>十(1+i)|1>|0>+(1−i)|
1>|1>}/2√2 となる。
は分からない。このため、初期状態に使ったx軸方向の
パウリのスピン行列σxの固有ベクトルで、この系を書
き直してみる。x軸方向のパウリのスピン行列σxの固
有ベクトルは、 |x+>=(|0>+|1>)/√2,|x−>=(|
0>−|1>)/√2 である。これを用いて|Ψ(t)>を書き直すと、 |Ψ(t)>=(|x+>|x+>−i|x−>|x−
>}/√2 となる。
量子ビットの状態からだけでは、2つの量子ビットの系
全体を表すことができない。これは、系の状態が各々の
量子ビットの状態で分離して表示することができず、古
典的な状態ではあり得ない量子力学的な状態である。こ
の状態が、前述した、量子がもつれ合いした状態(entan
gled state)である。2つの磁束量子ビット104a,
104bの間に、磁束転送器101によって相互作用を
与えることで、上述した量子コンピュータの演算に必要
な量子もつれ合い状態が実現できる。
実際の試料の形状や配置から、この相互作用の大きさを
見積もると、J=0.34[GHz]=1.41[μe
V]程度になる。このときの2つの磁束量子ビット系
が、量子もつれ合い状態になる時間は、0.37[n
S]程度である。これは、1秒間に最大27億回(2.7
GHz)の演算ができることに対応する。
る電流を通し、磁束量子ビット104aと磁束量子ビッ
ト104bは、相互作用する。ここで、磁束転送器10
1に流れる電流のオンオフを制御できれば、2つの磁束
量子ビット104aと磁束量子ビット104bとの間の
相互作用の発生を制御できる。これらの制御が可能にな
れば、任意の時刻に磁束量子ビット間で相互作用させる
ことができる。
に磁束量子ビット104a,104bの状態を制御ライ
ン106a,106bにより制御することもできる。こ
のように任意に磁束量子ビット間の相互作用を制御でき
る点は、他の量子ビット系と異なり、制御可能な磁束転
送器101を利用した、磁束量子ビット104a,10
4b系における大きな利点である。
た磁束転送器101に、超伝導電流が流れうる状態と流
れない状態とを切り換える(超伝導電流をオンオフす
る)、切り換え手段を設けるようにした。この切り換え
手段としては、例えば、上述したジョセフソン接合電界
効果トランジスタ(JOFET)102または以降に示
す熱ヒータ(加熱手段)または超伝導から構成された機
械スイッチのいずれかを用いるようにすればよい。はじ
めに、JOFET102により磁束転送器101を制御
する手法について説明する。
伝導体から構成された磁束転送器101に超伝導電流が
流れうる状態と流れない状態と(オンオフ)を、JOF
ET102により作り出すことについて説明する。JO
FET102のゲート電極にかかる電圧を変化させれ
ば、超伝導電流のオンオフ制御ができる。JOFET1
02の具体的な構造やゲート電圧操作については、文献
6「Tatsushi Akazaki,Hideaki Takayanagi,Junsaku Ni
tta,Takatomo Enoki,“A Josehson field effect trans
istor using an InAs-inserted-channel In0.52Al0.48A
s/In0.53Ga0.47As inverted modulation-doped structr
e",Appl.Phys.Lett,68(1996)418」に述べられている。
例を概略的に示す斜視図である。図3に示す符号につい
て説明すると、まず、307はニオブからなる超伝導体
から構成されたソース電極、308はニオブからなる超
伝導体から構成されたドレイン電極である。ソース電極
307は、図1に示す電極部101aに対応し、ドレイ
ン電極308は、図1に示す電極部101bに対応して
いる。
ャネル層であり、チャネル層309に二次元電子ガスが
形成される。310は、ゲート電極であり、図1のゲー
ト配線103に接続している。また、311はn形不純
物が導入されたInAlAsからなるキャリヤ供給層、
312はノンドープInA1As層、313はノンドー
プInGaAs層、314はノンドープInAlAs
層、315はInPからなる半導体基板である。
11から、ノンドープInA1As層312,ノンドー
プInGaAs層313を介して電子が供給され、供給
された電子により二次元電子ガスが形成される。ゲート
電極310にゲート電圧をかけると、チャネル層309
に形成されている二次元電子ガスのキャリヤー濃度が変
化する。このキャリヤー濃度の変化が、二次元電子ガス
層に流れる超伝導電流を変化させる。図4は、JOFE
T102のゲート電圧特性を示す。グラフの横軸は電圧
であり、縦軸は電流である。ゲート電圧Vgが0Vの時
は、電圧が0mVの状態で超伝導電流が約5.5μA流
れている。
していくと、流れうる超伝導電流は少なくなり、Vg=
−1.1Vまで印加すると、JOFET102のソース
・ドレイン間には電流がまったく流れなくなる。このよ
うにJOFET102の簡便なゲート電圧操作だけで、
磁束転送器101に流れる超伝導電流を操作でき、磁束
量子ビット104a,104b間の相互作用を簡便に制
御することが可能である。また、JOFET102の二
次元電子ガスが形成されるチャネル層309にはInA
sを使っているため、ゲート電圧操作によるJOFET
102の応答速度は早く、高速での相互作用の切り換え
が可能である。
1のオンオフ制御を、磁束転送器101を加熱すること
で制御する場合について説明する。図5は、本発明の他
の形態における量子コンピュータの一部構成を示す平面
図である。ここでは、磁束転送器101のオンオフ制御
を、熱ヒータ(加熱手段)502により行うようにし
た。他の部分は、図1の量子コンピュータと同様であ
る。
した状態では、磁束転送器101はすべて超伝導状態と
なり、超伝導電流が流れうる状態となる。これに対し、
熱ヒータ502に通電して過熱状態として磁束転送器1
01の一部を超伝導転移温度以上に加温し超伝導状態を
壊せば、超伝導電流が流れない状態となる。このよう
に、熱ヒータ502の非加熱/加熱切り換え動作によ
り、磁束転送器101のオンオフ制御が可能となり、磁
束量子ビット104a,104b間の相互作用を簡便に
制御することが可能となる。
1のオンオフ制御を、機械的な動作により行う機械スイ
ッチにより作り出す場合について説明する。図6は、本
発明の他の形態における量子コンピュータの一部構成を
示す平面図である。ここでは、磁束転送器101のオン
オフ制御を、超伝導体から構成された機械スイッチ60
2により行うようにした。他の部分は、図1の量子コン
ピュータと同様である。機械スイッチ602は、例え
ば、ピエゾ素子などにより動作させればよい。
101の回路が閉じている時には、機械スイッチ602
が超伝導体であるため、超伝導電流が流れうる状態を作
り出せる。機械スイッチ602をOFFにし、磁束転送
器101の回路を切断すると、超伝導電流が流れない状
態を作り出せる。このように、機械スイッチ602の動
作により、磁束量子ビット104a,104b間の相互
作用を簡便に制御することが可能である。
べたように量子ビットから構成された系の時間発展であ
る。通常の量子コンピュータでは、量子ビット間の相互
作用は切ることができず、この相互作用も各々の量子ビ
ットとともに常に時間発展をする。従って、量子ビット
間での演算が、好むと好まざるとによらず常に行われて
しまう。このため、通常の相互作用を切れない量子ビッ
トの系では、相互作用を打ち消すための別の操作を必要
とする。
量子コンピュータでは、オンオフ制御を可能とした磁束
転送器101を利用し、磁束量子ビット104aと磁束
量子ビット104b間の相互作用を随意の時間で切れる
ようにした。このため、相互作用を打ち消すための他の
操作は必要なく、磁束転送器101をオンオフする各々
の切り換え手段の簡便な動作を行うのみでよい。このた
め、本実施の形態によれば、量子コンピュータの演算に
おいて、より簡便で柔軟な演算が可能となる。
換え手段による磁束転送器のオンオフにより、超伝導電
流が流れることにより相互作用を持つ2つの磁束量子ビ
ット間の相互作用を制御するようにした。この結果、本
発明によれば、量子コンピュータの演算における量子ビ
ット間の相互作用を、任意に制御できるようになるとい
う優れた効果が得られる。
タの一部構成の例を示す平面図である。
路を示す構成図である。
に示す斜視図である。
性図である。
の一部構成を示す平面図である。
の一部構成を示す平面図である。
102…ジョセフソン接合電界効果トランジスタ(JO
FET:切り換え手段)、103…ゲート配線、104
a,104b…磁束量子ビット、105…SQUID(S
uperconductingQuantum Interference Device)、10
6a,106b…制御ライン。
Claims (8)
- 【請求項1】 2つの磁束量子ビットと、この2つの磁
束量子ビット間に相互作用を作用させる磁束転送器とを
備えた量子コンピュータにおいて、 前記磁束転送器に流れる超伝導電流をオンオフする切り
換え手段を備えたことを特徴とする量子コンピュータ。 - 【請求項2】 請求項1記載の量子コンピュータにおい
て、 前記切り換え手段は、ジョセフソン接合電界効果トラン
ジスタであることを特徴とする量子コンピュータ。 - 【請求項3】 請求項1記載の量子コンピュータにおい
て、 前記切り換え手段は、前記磁束転送器の一部を加熱する
加熱手段であることを特徴とする量子コンピュータ。 - 【請求項4】 請求項1記載の量子コンピュータにおい
て、 前記切り換え手段は、前記磁束転送器の一部に設けられ
た超伝導体から構成された機械スイッチであることを特
徴とする量子コンピュータ。 - 【請求項5】 2つの磁束量子ビットと、この2つの磁
束量子ビット間に相互作用を作用させる磁束転送器とを
備えた量子コンピュータにおいて、 前記磁束転送器に流れる超伝導電流をオンオフすること
により前記量子コンピュータの演算を制御することを特
徴とする量子コンピュータの制御方法。 - 【請求項6】 請求項5記載の量子コンピュータの制御
方法において、 前記磁束転送器に流れる超伝導電流のオンオフは、ジョ
セフソン接合電界効果トランジスタにより行うことを特
徴とする量子コンピュータの制御方法。 - 【請求項7】 請求項5記載の量子コンピュータの制御
方法において、 前記磁束転送器に流れる超伝導電流のオンオフは、前記
磁束転送器の一部を加熱することにより行うことを特徴
とする量子コンピュータの制御方法。 - 【請求項8】 請求項5記載の量子コンピュータの制御
方法において、 前記磁束転送器に流れる超伝導電流のオンオフは、前記
磁束転送器の一部に設けた機械スイッチにより行うこと
を特徴とする量子コンピュータの制御方法。
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