JP2003013710A - 摺動装置及び内燃機関の動弁機構 - Google Patents

摺動装置及び内燃機関の動弁機構

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JP2003013710A
JP2003013710A JP2001200819A JP2001200819A JP2003013710A JP 2003013710 A JP2003013710 A JP 2003013710A JP 2001200819 A JP2001200819 A JP 2001200819A JP 2001200819 A JP2001200819 A JP 2001200819A JP 2003013710 A JP2003013710 A JP 2003013710A
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JP2001200819A
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English (en)
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Yoshiteru Yasuda
芳輝 保田
Kenji Ushijima
研史 牛島
Yutaka Mabuchi
豊 馬渕
Shinji Asano
晋司 浅野
Makoto Kano
眞 加納
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 摺動部材の摺動面及び相手部材の摺動面に対
する処理方法と表面形状に工夫を凝らすことによって、
摺動装置の摺動部位の摺動損失を大幅に低減することの
できる摺動部材及び内燃機関動弁機構を提供すること。 【解決手段】 金属部材同士が摺動する摺動装置におい
て、少なくとも一方の摺動部材表面にディンプルを設
け、他方の摺動部材の表面硬度を前記摺動部材の表面高
度よりも大きく設定した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、所定の回転運動
を行うカムに追従してバルブを開閉作動する内燃機関動
弁装置のカム及びシム等の金属部材同士が摺動する摺動
装置に関わる。さらに詳しくは該摺動装置の摺動部材の
表面形状及び表面処理方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】従来一般に内燃機関に使用されている動
弁装置では、吸気バルブあるいは排気バルブがカムシャ
フトに設けられたカムよって駆動される。その際、カム
はバルブの上端部に設置されたリフターもしくはそのリ
フターに装着されたアジャスティングシム,あるいはロ
ッカーアームと摺動する。動弁装置における摩擦損失の
大部分は、カムと摺動するリフター,アジャスティング
シムあるいはロッカーアームなどのカムフォロワーとカ
ムとの間の摩擦損失に起因している。この摩擦損失の低
減を図り、効率的な動力伝達により内燃機関の低燃費の
達成に寄与できる技術が排出ガス抑制を狙う環境保全対
策上からも強く希求されている。
【0003】従来のカム/フォロワーの表面粗さは各々
Ra0.2〜0.5μmに研削加工され、フォロワーには焼き付
き防止のためのリン酸マンガン塩被膜処理が施されてい
る。カム/フォロワー間の油膜厚さは計算によると最小
0.1μm程度、もしくはそれ以下であり、表面粗さに対
して非常に小さく金属同志の接触が避けられない状況で
ある。従ってこれらの摺動面をできるだけ平滑化して摺
動摩擦損失を低減させることが望まれている。
【0004】そこで例えば特開平7-118832号に示されて
いるように、カムと摺接する摺動部材の摺動面を、その
表面粗さが0.3μmRz以下になるように仕上げ加工すると
共に、その摺動面に硬さがHv1000以上である窒化チタン
をアーク式イオンプレーティング法によりコーティング
することが提案されている。この方法によれば摺動面に
ドロップレットといわれる粒状の突起が存在し、この突
起により摺動初期において相手摺動部材であるカムの摺
動面が鏡面化されると共に、摺動部材の摺動面もドロッ
プレットが脱落し鏡面化することで摩擦損失の低減を図
っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしこれ以上に摩擦
損失を大幅に低減するために、更に鏡面化を図る事が考
えられるが、更に鏡面化させるにはドロップレットの生
成をコントロールすることや、カム及びフォロワー表面
にさらに超仕上げ加工を加えること等が必要で、コスト
高であり、製造上のばらつきを抑制することが必要とな
る。また固体潤滑性に優れたダイヤモンドライクカーボ
ンや二硫化モリブデン等の被膜をフォロワー摺動面にコ
ーティングしたものもあるが、高価であり、フォロワー
母材の表面粗さや、表面硬さ、被膜厚さ及び中間層の選
定を慎重に実施しないと摺動によって付着力不足で剥離
してしまい、耐久性が十分確保できないという問題点が
あった。
【0006】また、鏡面化等の表面処理を行ったとして
も、摺動抵抗の低減には限界がある。すなわち、摺動部
はオイルによって潤滑されているが、表面粗さが低減す
ると、金属同士の接触は減少するものの、摺動部材同士
の間に形成される潤滑用のオイルにより形成される油膜
が薄いため、オイルの剪断力が大きく、摺動抵抗が発生
しているからである。すなわち、一般に板に接している
液体は、その板にくっついて動くと考えて良く、流速は
油膜厚さ方向に分布していると考えられる。ここで、オ
イルの剪断力をτ,油膜厚さに対する流速分布を∂u/
∂rとすると、τ=η(∂u/∂r)(ηは定数)とい
う関係式が成立し、油膜が薄ければ、剪断力τは大きく
なる。よって、表面の平滑性を確保しつつ、オイルの剪
断力を低下させるためには、表面にディンプルを設け、
ディンプル部分によって油膜厚さを確保することで、オ
イルの剪断力低下を図ることが考えられる。しかしなが
ら、表面にディンプルを設ける際、例えば、ショットピ
ーニング法等により表面にディンプルを設けると、ディ
ンプル周辺が盛り上がってしまい、表面の平滑性を保ち
つつディンプルを設けることが困難であった(図1
(a)参照)。
【0007】本発明は上記問題点に鑑みてなされたもの
であり、上記カム及びフォロワー等の摺動部材の摺動面
及び相手部材の摺動面に対する処理方法と表面形状に工
夫を凝らすことによって、摺動装置の摺動部位の摺動損
失を大幅に低減することのできる摺動部材及び内燃機関
動弁機構を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1記載の発明では、金属部材同士が摺動する
摺動装置において、少なくとも一方の摺動部材表面にデ
ィンプルを設け、他方の摺動部材の表面硬度を前記ディ
ンプルを設けた摺動部材の表面高度よりも大きく設定し
たことを特徴とする。
【0009】また、他方の摺動部材の表面に硬度Hv1000
以上のコーティングを被覆した摺動部材とすることが好
ましい。
【0010】また、前記ディンプルを設けた摺動部材の
表面粗さをRa0.20μm以下とし、前記コーティングを被
覆した摺動部材の表面粗さをRa0.10μm以下とすること
が好ましい。
【0011】ここで、表面粗さRaについて説明する。図
4は、表面粗さを演算するための考え方を表す図であ
る。ある表面の断面形状を表すために抽出した抽出曲線
f(x)から、その平均線の方向に基準長さLだけ抜き
取り、この抜き取り部分の平均線をX軸、縦倍率の方向
をY軸として抽出曲線をy=f(x)で表したときに、
次の式で求めることができる。
【数式1】 すなわち、Raは抽出曲線と平均線とによって囲まれる部
分の面積を、基準長さで割ったものであり、統計学で言
うと平均偏差を表すものである。よって、部分的に大き
な傷などがあっても影響を受けない数値である。
【0012】また、前記ディンプルを設けた摺動部材の
ディンプルの面積率を5-60%とすることが好ましい。
【0013】また、前記ディンプルを設けた部材のディ
ンプルの形状を、等価円直径φ5〜100μmであって、深
さ0.3〜5.0μmとすることが好ましい。
【0014】また、前記コーティングを被覆した摺動部
材のコーティングを、イオンプレーティング法による窒
化チタン(TiN)膜,窒化クロム(CrN)膜あるいはダイヤモ
ンドライクカーボン(DLC)膜としてもよい。
【0015】また、短時間摺動後の前記ディンプルを設
けた摺動部材の表面粗さをRa0.15μm以下とし、前記コ
ーティングを被覆した摺動部材の表面粗さをRa0.10μm
以下とすることが好ましい。
【0016】また、前記ディンプルを設けた摺動部材の
製造方法を、φ10〜100μmの鋼球、あるいはセラミッ
クス球を表面に照射するショットピーニング法によって
ディンプルを形成する方法としても良い。
【0017】また、前記摺動装置を内燃機関用動弁機構
とし、前記ディンプルを設けた摺動部材をカムシャフト
のカムとし、前記コーティングを被覆した摺動部材をア
ジャスティングシムあるいはリフターとしてもよい。
【0018】
【発明の作用および効果】本願発明にあっては、上述の
手段を用いることにより、摺動することでディンプルを
設けた摺動表面の凹み部以外の摺動表面は、硬度の高い
摺動部材により研磨されて初期摺動後に平滑化すると同
時に、ディンプルを設ける加工時に生じたディンプル周
辺の盛り上がりを除去し、平滑な平面にディンプルが存
在する表面となる。この結果、平滑化されたことに加
え、ディンプルがあることで、表面の粗さ突起同志の接
触が減少し、かつ、ディンプルの存在によりオイルのせ
ん断抵抗が減少し、比較的油膜厚さが大きい状況におい
ては、単純な平滑面よりも摺動抵抗を大幅に低減させる
ことができる。また油膜厚さが小さい状況でも凹み部が
油だまりとなり、低摩擦が実現でき、更に耐摩耗性も向
上する。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図2は本発明の実施形態に係る
摺動装置が適用されるアジャスティングシム3及びカム
1を有する自動車用内燃機関の直動式動弁装置の断面図
を示す。
【0020】バルブ6はバルブガイド9に挿通され、バ
ルブ6の軸端6aの上方に、バルブリフター4が設置さ
れている。シリンダヘッド7とバルブリフター4の間に
はバルブスプリング5がリテーナ10とコッタ11によ
りバルブ6に固定され、バルブ6を閉じる方向に荷重を
負荷している。
【0021】バルブリフター4の上方には、図に示すよ
うに、アジャスティングシム3が嵌合され、カム1との
クリアランスが0.3mm程度になるようにアジャスティ
ングシム3の厚さにより調整されている。
【0022】カムシャフト軸2は、図示されていないク
ランクシャフトの駆動によりタイミングベルトを介して
駆動される。カムシャフト軸2が駆動することにより、
カム1が回転し、アジャスティングシム3と摺接し、バ
ルブ6を往復運動させる機構となっている。
【0023】まず、クロムモリブデン鋼を用いて製造し
たアジャスティングシム3にはイオンプレーティング法
により窒化チタン(TiN)等がコーティングされており、
その表面粗さはRa0.10μm以下である。アジャスティン
グシム3の表面粗さはRa0.10μm以下であることが望ま
しく、Ra0.10μmを越えると、相手カム1表面を攻撃
し、摺動面の平滑化が十分進行しない場合がある。表面
硬度は相手を研磨し平滑化を進行させるために硬度Hv10
00以上必要で、特に窒化チタンコーティングでなくと
も、他の窒化クロム(CrN)や、ダイヤモンドライクカー
ボンコーティング(DLC)及び他の高硬度表面処理でもよ
い。
【0024】カム1はチルド鋳鉄からなり、カム1表面
を研削加工後Ra0.01〜0.08μmに超仕上げ加工した後、
ショットブラスト処理により約φ100μm程度の鋼球粒子
を摺動表面に吹き付け、カム1摺動面の表面粗さをRa0.
20μmとなるように処理した。処理は鋼球の他、高硬度
の粒子を空気や流体の圧力を利用して吹き付ける処理、
エッチング処理やレーザ加工であってもよく、摺動表面
にディンプルを設けることのできる処理であれば他の方
法であってもよい。このような処理を行うとカム1表面
にはディンプルが形成され、図1のカム1及びアジャス
ティングシム3の拡大断面図に示すような表面粗さ形状
となる。
【0025】ショットブラスト処理等のディンプル形成
処理後の表面粗さがRa0.20μmを越えると、十分になじ
みが進行せず、カム1摺動表面が平滑化せず摺動摩擦抵
抗は小さくできない。またディンプルの面積率は1〜60%
が好ましく、更に好ましくは15%〜50%の面積率が好まし
い。面積率が1%以下であるとその効果は無く、ディン
プルを設けないものとほぼ等しく、60%を越えると実際
の接触面圧が大きくなり、摩耗が進行し平滑化が進まず
摺動摩擦抵抗が逆に大きくなってしまう。
【0026】またディンプルの平均径はφ1μm〜φ100
μm,深さ0.5〜5.0μmになるように処理を施す。平均径
は5μm以下となるとその効果が小さく、100μmを越える
とカム1とアジャスティングシム3の接触面積に対して
径が大きくなりすぎ効果が小さい。さらにφ5〜φ50μm
に設定することが好ましい。ディンプルの深さも0.5μm
以下ではその効果は小さく、ディンプル深さが5.0μmを
越えても効果はそれ以上大きくならない。
【0027】次に上記のようなカム1とアジャスティン
グシム3を自動車用内燃機関の直動式動弁装置に組み込
み、カム1とアジャスティングシム3を初期摺動させ
る。一般にブラスト処理された表面は、図1(a)に示
すように、ディンプルの周辺が盛り上がることが多く、
ブラスト処理以外の処理によってディンプルを形成した
場合にもこの作用は同様に起こる。そこで、初期摺動に
より平滑化と共にこの盛り上がりも除去され、平滑化さ
れた表面にディンプルが周辺の盛り上がり無く形成され
ることとなる。アジャスティングシム3の硬度はカム1
表面より大きくしているため、カム1表面のディンプル
以外の表面は、図1(b)に示すように平滑化が進行
し、またアジャスティングシム3の相手を研磨すると同
時に表面の微細な突起が脱落し、平滑化する。
【0028】またこの初期摺動後のカム1及びアジャス
ティングシム3の表面粗さはRa0.15μm以下,Ra0.10μm
以下であることが望ましい。
【0029】従って上記実施形態では、カム1表面にデ
ィンプルを設け、アジャスティングシム3の表面に窒化
チタンコーティングを施すことでアジャスティングシム
3の硬度をカム1表面よりも大きく設定したので、その
カム1とアジャスティングシム3を初期摺動させれば、
両摺動表面が平滑化し、さらにディンプル周辺の盛り上
がりを除去できるので、平滑化と油膜剪断力の低下を同
時に達成することで、摺動摩擦抵抗を大幅に低減するこ
とができる。
【0030】また実施の形態では、自動車用内燃機関の
直動式動弁系のカム1とアジャスティングシム3とが摺
動する構成としたが、ロッカーアーム式動弁系の場合に
は、ロッカーアームがアジャスティングシム相当とな
り、カムに摺接する部材として本発明が適用できる。ま
たこのような自動車用内燃機関の動弁系のカムとカムと
を摺接する部材でなくとも、他の摺動部材を組み合わせ
た摺動装置にも適用することができる。
【0031】(実施例)次に具体的に実施した実施例に
ついて説明する。まず上記実施の形態と同様の窒化チタ
ンコーティングを施したクロムモリブデン鋼を用いて製
造されたアジャスティングシムを作製した。初期摺動前
の表面粗さはRa0.02〜0.05μmで、硬度はHv1200〜2500
であった。
【0032】次いで、チルド鋳鉄からなるカム表面を研
削加工後、Ra0.01〜0.08μmに超仕上げ加工した後、約
φ100μmの鋼球粒子を摺動表面に吹き付けるショットブ
ラスト処理の粒子吹き付け条件を変えて、表1に示すよ
うな摺動面の表面粗さ、ディンプルの直径、深さ、面積
率を有するカムを製作した(実施例1〜6及び比較例1
〜8)。
【表1】 実施例1〜5では、アジャスティングシムに窒化チタン
コーティングを施し、実施例6では、更に硬度の高いDL
Cコーティングを施し、アジャスティングシムの表面硬
さをHv1000以上としている。カムには所定のプロフィー
ルに研削加工後超仕上げ加工を施し、その後ブラスト処
理により表面にディンプルを設け、表面粗さをRa0.2μm
以下となるよう処理した。
【0033】実施例1〜3では、ブラスト処理の空気圧
0.2MPaと粒子ノズル投入重量0.2kg/min一定にして、カ
ムの照射面の回転速度と照射回数を変えて面積率を変化
させた。
【0034】実施例4及び5では、照射圧を変更してデ
ィンプルの深さを変化させた。
【0035】また比較例1は、従来の内燃機関用エンジ
ンの動弁系のアジャスティングシムとカムに適用されて
いる組み合わせで、アジャスティングシムを研磨仕上げ
し、カムを研削加工後超仕上げ加工した組み合わせであ
る。
【0036】比較例2は、窒化チタンコーティングを施
したアジャスティングシムとディンプルを設け無いカム
とを組み合わせた比較例である。
【0037】比較例3は、コーティングを施さないアジ
ャスティングシムとを組み合わせた。この時のアジャス
ティングシムの硬度はHv700である。
【0038】比較例4では、アジャスティングシムの粗
さが大きくなるように研削後コーティングを施し、表面
粗さRa0.15μmとした。
【0039】比較例5〜8では、上記実施例と同様ブラ
スト処理条件を変えて表面粗さ、面積率、ディンプル深
さを変化させた。なお表面粗さが大きくなるような処理
条件では、ディンプルがつながってしまい比較例7及び
8では面積率の測定ができなかった。
【0040】次に上記実施例及び比較例を1.8リットル4
気筒16弁のガソリンエンジンに組み込み、モータリング
運転によりカム軸トルクを計測し、摩擦損失の大きさを
測定した。潤滑油は5W-30SJを用い、油温80℃,カム回
転数300rpmの条件で行った。焼付きや摩耗も同時に評価
するため、スプリング荷重は従来用いられているものよ
り約2倍程度高荷重のものを使用した。
【0041】上記測定の結果及び摺動後の表面粗さの測
定結果を図2及び表2に示す。
【表2】 この結果、実施例1〜6のカム及びアジャスティングシ
ムの表面粗さは、比較例1,3,4,5,7,8よりも
低下し、平滑化していることがわかる。またこの時、デ
ィンプル周辺の盛り上がりは、初期の摺動により図1
(b)に示したように平滑化とともに除去されている。
【0042】図2はカムとシムの粗さを合成した合成粗
さとカム軸トルクの関係をプロットしたグラフである。
ここで、合成粗さについて説明する。合成粗さとは、2
つの平面の二乗平均粗さRqにより計算した値である。こ
こで、二乗平均粗さRqとは、ある表面の断面形状を表す
ために抽出した抽出曲線から、その平均線の方向に基準
長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線をX
軸、縦倍率の方向をY軸として抽出曲線をy=f(x)
で表したときに、次の式で求めることができる。
【数式2】 すなわち、Rqは抽出曲線と平均線との距離を二乗した曲
線と、平均線により挟まれる部分の面積を、測定長さで
割った後に平方根を求めた二乗平均平方根偏差を表して
いる。これは、統計学で言う標準偏差σに相当するもの
である。一方の平面の粗さをRq1,他方をRq2とすると、
【数式3】 となり、合成粗さを表現できる。2平面の合成粗さを考
える場合、課題を解決するための手段で説明したような
表面粗さRaの算術和では、うまく整理できないことが判
っており、摩擦摩耗の分野では2平面の合成粗さは標準
偏差を用いて整理するのが一般的であるため上述の計算
式により整理した。
【0043】図2に示すように、カムとシムの粗さを合
成した合成表面粗さが小さくなるとカム軸トルクも小さ
くなる傾向にあり、従来ガソリンエンジンで一般に使用
されている比較例1に対して摺動抵抗をかなり低レベル
に抑え得ることができる。
【0044】カムやシムの表面粗さが大きすぎる比較例
3,4,7,8やディンプルの面積率の大きい比較例5
は、ディンプルの無いカムと組み合わせた比較例2より
も高い摺動抵抗となっている。
【0045】また、本発明における実施例は、カム摺動
面にディンプルを設け無い比較例2や、面積率の小さす
ぎる比較例6は、合成粗さは本実施例よりも小さいもの
がある。しかしながら、ディンプル効果を得ることがで
きないため、カム軸トルクが本願発明の各実施例よりも
大きくなっている。このことからも、平滑化を更に勧め
るだけでは限界があり、ディンプルを設けることで油膜
の剪断力を低下させることが効果的であることが判る。
【0046】また表2より、初期摺動後の合成表面粗さ
がRq0.2μm以下であれば、すなわちアジャスティングシ
ムがRa0.1μm以下、カムがRa0.15μm以下〔数式3に基
づいて計算すると0.2>(0.12+0.1521/2〕となれ
ば、ディンプルの無い比較例2よりも摺動抵抗を低くす
ることが可能となる。また摩耗についても、ほとんど問
題となるレベルの摩耗は発生していなかった。
【0047】以上説明したように摺動する部材の少なく
とも一方の部材表面にディンプルを設けると共に、相手
材の摺動表面の硬度を上記部材の硬度より大きく設定す
ることにより、硬度の高い摺動部材により研磨されて初
期摺動後に平滑化すると同時に、ディンプルを設ける加
工時に生じたディンプル周辺の盛り上がりを除去し、平
滑な平面にディンプル状の凹みが存在する表面となる。
この結果、平滑化されたこととディンプルがあること
で、表面の粗さ突起どうしの接触が減少し、かつ、ディ
ンプルの存在によりオイルのせん断抵抗が減少し、比較
的油膜厚さが大きい状況においては単純な平滑面よりも
摺動抵抗を大幅に低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態のカム及びアジャスティングシムの
拡大断面図である。
【図2】実施例の初期摺動後のカム/アジャスティング
シム合成粗さとカム軸トルクの関係を表す図である。
【図3】実施の形態の内燃機関の動弁装置を表す断面図
である。
【図4】表面粗さを演算するための考え方を表す図であ
る。
【符号の説明】 1 カム 2 カムシャフト軸 3 アジャスティングシム 4 バルブリフター 5 バルブスプリング 6 バルブ 6a 軸端 7 シリンダヘッド 9 バルブガイド 10 リテーナ 11 コッタ
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G12B 3/06 G12B 3/06 (72)発明者 馬渕 豊 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内 (72)発明者 浅野 晋司 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内 (72)発明者 加納 眞 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内 Fターム(参考) 2F078 BA17 3G016 AA05 AA06 AA19 BA19 BB05 BB06 CA04 EA02 FA19 FA20 FA21 GA00 GA02 3J011 CA05 KA07 PA02 QA03 SB12 SB13 SE02 4K029 AA02 BA34 BA58 BA60 BD04 CA03

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属部材同士が摺動する摺動装置におい
    て、 少なくとも一方の摺動部材表面にディンプルを設け、他
    方の摺動部材の表面硬度を前記ディンプルを設けた摺動
    部材の表面硬度よりも大きく設定したことを特徴とする
    摺動装置。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の摺動装置において、 少なくとも一方の摺動部材表面にディンプルを設け、他
    方の摺動部材の表面に硬度Hv1000以上のコーティングを
    被覆した摺動部材としたことを特徴とする摺動装置
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の摺動装置にお
    いて、 前記ディンプルを設けた摺動部材の表面粗さをRa0.20μ
    m以下とし、前記コーティングを被覆した摺動部材の表
    面粗さをRa0.10μm以下としたことを特徴とする摺動装
    置。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3に記載の摺動装置にお
    いて、 前記ディンプルを設けた摺動部材のディンプルの面積率
    を5-60%としたことを特徴とする摺動装置。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の摺動装置において、 前記ディンプルを設けた部材のディンプルの形状を、等
    価円直径φ5〜100μmであって、深さ0.3〜5.0μmとし
    たことを特徴とする摺動装置。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5に記載の摺動装置にお
    いて、 前記コーティングを被覆した摺動部材のコーティング
    を、イオンプレーティング法による窒化チタン(TiN)
    膜,窒化クロム(CrN)膜あるいはダイヤモンドライクカ
    ーボン(DLC)膜としたことを特徴とする摺動装置。
  7. 【請求項7】 請求項3または4に記載の摺動装置にお
    いて、 短時間摺動後の前記ディンプルを設けた摺動部材の表面
    粗さをRa0.15μm以下とし、前記コーティングを被覆し
    た摺動部材の表面粗さをRa0.10μm以下としたことを特
    徴とする摺動装置。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7に記載の摺動装置にお
    いて、 前記ディンプルを設けた摺動部材の製造方法を、φ10〜
    100μmの鋼球、あるいはセラミックス球を表面に照射
    するショットピーニング法によってディンプルを形成す
    る方法としたことを特徴とする摺動装置。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし8に記載の摺動装置にお
    いて、 前記摺動装置を内燃機関用動弁機構とし、前記ディンプ
    ルを設けた摺動部材をカムシャフトのカムとし、前記コ
    ーティングを被覆した摺動部材をアジャスティングシム
    あるいはリフターとしたことを特徴とする内燃機関の動
    弁機構。
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