JP2002525577A - 被検体検出のためのシグナル検出法 - Google Patents

被検体検出のためのシグナル検出法

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JP2002525577A JP2000570575A JP2000570575A JP2002525577A JP 2002525577 A JP2002525577 A JP 2002525577A JP 2000570575 A JP2000570575 A JP 2000570575A JP 2000570575 A JP2000570575 A JP 2000570575A JP 2002525577 A JP2002525577 A JP 2002525577A
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、対ノイズ比がより高度なシグナルを達成して標的被検体の検出限界を向上することを目的とする、シグナルプロセス化方法の使用に関する。これらの技術は、より高度な高調波振動数(harmonic frequencies)での出力シグナルをモニターすることを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本願は、1998年9月17日に出願されたU.S.S.N. 60/100,730の継続出願である
【0002】 発明の分野 本発明は、対ノイズ比がより高度なシグナルを達成して標的被検体の検出限界
を向上することを目的とする、シグナルプロセス化方法の使用に関する。これら
の技術は、より高度な高調波振動数(harmonic frequencies)での出力シグナルを
モニターすることを含む。
【0003】 発明の背景 液体または気体中の特異的な物質の存在および/または濃度を検出することに
ついては、多くのアッセイまたはセンサーがある。これらの多くは、検出のため
のメカニズムとして特異的なリガンド/抗リガンド(リガンド/抗リガンド)の反
応によっている。すなわち、対の物質(即ち、結合対やリガンド/抗リガンド)
は、互いには結合するが、他の物質とはほとんどまたはまったく結合しないこと
が分かっている。多くの技術において複合体の検出にこれらの結合対が使用され
てきた。一般的にこれらの方法は、複合体の1つの成分をなんらかの方法、例え
ば、放射性同位体、蛍光物質および他の光学活性分子、酵素などを用いて標識し
、複合体全体を検出可能にして実施される。
【0004】 他のアッセイは検出に電子的シグナルを用いる。とくに興味深いのはバイオセ
ンサーである。少なくとも2種のバイオセンサーが知られている。それらは酵素
をベースとするかまたは代謝性のバイオセンサー、および結合性またはバイオ親
和性センサーである。例えば、米国特許4,713,347; 5,192,507; 4,920,047; 3,8
73,267およびこれらの特許に開示の文献参照。これらの既知センサーのいくつか
は交流電流(AC)技術を利用しているが、この技法は、バルク(または誘導)イ
ンピーダンスの相違を検出することに限定される。
【0005】 同様に、電極を使用する核酸の電子検出も既知である;例えば、USP5,5
91,578;5,824,473;5,705,348;5,780,234
および5,770,369;USSN08/911,589;およびWO98/
20162;PCT/US98/12430;PCT/US98/12082;
PCT/US99/10104;PCT/US99/01705;およびPCT
/US99/01703参照。
【0006】 電気化学検出の領域には、採用されている多くの電気化学的技法がある。伝統
的に、電気化学的方法ではパルス波形、すなわち、一般に示差パルスポーラログ
ラフィーおよび方形波ボルタンメトリーなどを適用することによって時間領域に
おけるファラデー(誘導)電流シグナルをバックグラウンド成分から識別するこ
とにより、そのシグナル−ノイズ比を改善する。パルス法では時間領域での変化
する電流からファラデー電流を識別することができる。変化する電流はファラデ
ー電流よりもかなり急速に減衰する;すなわち、逆平方根と比較すると指数関数
的である。同様に、シグナル−ノイズ比を改善するために変調技法も使用されて
いる;これらの方法ではシグナル上変調した搬送波(正弦波)の負荷を利用する
【0007】 周波数領域はシグナル−ノイズ比を高めるために二三の電気化学的技法に使用
されているのみである。ACボルタンメトリーでは、電位ランプが電極に適用さ
れ、小さな振幅正弦波が線型ランプに重ねられる。しかし、大きな振幅正弦波ボ
ルタンメトリーの使用は、フーリエ変換を用いるより高度な調和振動数での検出
と併用するとき、有用な方法であると証明されている。参照:U.S. Patent No.
5,650,061; Singhai et al., Anal. Chem. 69:1552 (1997); Singhal and Kuhr,
Anal. Chem. 69:4828 (1997); Singhal et al., Anal. Chem. 69:3553 (1997);
and Dontha et al., Anal. Chem. 69:2619 (1997)(これらすべての文献は出典
明示により本明細書の一部とする)。
【0008】 しかし、標的被検体などの生物分子を検出する際のシグナル処理をさらに有利
にするには、さらなる方法がなお必要である。 従って、本発明の目的はAC技法を使用して、被検体を検出するための新規な
方法と組成物を提供することにある。これらの技法では、アレイ方式での特定の
使用と、核酸およびタンパク質などの生物分子を検出するための特定の使用を見
出す。
【0009】 (発明の要約) 上に概説した目的に従い、本発明はサンプル中の標的被検体検出において有用
な組成物と方法を提供する。本方法は複数の電極を含むアレイを提供することを
含み、該電極の少なくとも一つはアッセイ複合体を含んでなる。該アッセイ複合
体は電極に共有結合により付着した捕捉結合リガンド、標的被検体、および電子
伝達部分を含む。少なくとも最初の入力シグナルはアッセイ複合体に印加され、
出力シグナルが受信される。次いで、出力シグナルは当該標的被検体の存在を検
出するために処理される。好適な態様ではそれぞれがアレイの異なるセルまたは
電極端子に付着した複数のアッセイ複合体を利用する。
【0010】 (図面の簡単な説明) 図1A、1Bおよび1CはDNAチップからの実際の結果を示す。図2Aは陽
性および陰性例を一緒にプロットする;図2Bは陽性例であり、図2Cは陰性例
である。実験は実施例1に示したとおりに実施した。 図2A、2B、2Cおよび2Dは異なるAC振幅を使用したことと関連する資
料を描出する。図2Aはセルが小さなAC振幅により励起された場合に、システ
ムの応答が相対的に直線となり、小さな高調波成分のみを生ずることを示す。図
2Bはセルが大きなAC振幅により励起された場合に、システムの応答が高次に
非直線性となり、シグナルの周波数スペクトルで観察されるように強い高調波成
分のみを生ずることを示す。図2CはVAac=100mVにより励起された表
面結合DNAシステムの周波数スペクトルと第4高調波ACボルタンモグラムを
示す。図2DはVAac=100mVにより励起されたDNAシステムの応答が
、VAdc=150mVでE以下であることを示す。 図3は方形波ACVの高調波を示す;図3Aは第2高調波であり、図3Bは第
4高調波であり、3Cは第6高調波であり、3Dは第8高調波であり、3Eは第
10高調波であり、3Fは第1、3、5および9高調波であり、そして図3Gは
高調波と対する電流のグラフを示す。 図4は実施例2の結果を示す;(A)の周波数スペクトルはチップのバッファ
ー液による測定値、(B)のスペクトルは同じチップの1μM相補性DNAによ
る測定値を示す。高調波ピークの傾斜は、(A)は(B)に比較してより急峻で
ある。 図5は図4に示したスペクトルのピーク振幅である。n≧2に対する振幅の差
の大きいことに注目されたい。 図6は周波数スペクトルの最初の4つのピークの細部を描出し、(A)はバッ
ファー中での測定値、および(B)は1μM−DNAでの測定値である。 図7は検出レベルの研究からの結果を示す。y軸は異なるDNA濃度(1μM
〜1nM)での高調波(n≧2)のピーク振幅であり、x軸は周波数と調波数で
ある。また、バッファー溶液測定値からのデータを示す。 図8はSTFTアルゴリズムを用いるJTFTスペクトル写真の等高線プロッ
トを示す。等高線の強度はシグナルの振幅に対応する。下部スペクトル写真はA
CV走査の未加工のシグナルである。上部右隅の周波数スペクトルはFFTから
得られる。 図9はチップのACV走査の三次元スペクトル写真を示す。セル電流の振幅は
log目盛りでプロットし、より高い調波を強調する。このスペクトル写真は同
調またはロックイン増幅器なしの、ごく普通の第1および第4高調波ボルタンモ
グラムを明瞭に示す。他の高調波も存在する。 図10はFFTを用いる基本波、第2、第3および第4高調波でのACボルタ
ンモグラム応答を示す。
【0011】 (発明の詳細な説明) 本発明は標的被検体の電気化学的検出において使用するシグナル処理方法の使
用を目的とする。一般に、いずれのシステムにおいても、観察されるシグナルは
標的被検体からのシグナル(サンプルシグナル)とバックグラウンドからのシグ
ナル(またはノイズ)との組合わせである。例えば、ACボルタンメトリーにお
いては、2つのタイプの電流が生じる:即ちファラデー電流およびバックグラウ
ンド電流である。バックグラウンド電流はシステムそれ自体の結果であり得る;
例えば、容量性バックグラウンド電流が発生するが、これは本発明システムの出
力シグナルの主成分であり得る;これは一般に二重層容量の産物である。
【0012】 本発明はシグナルを増大させるか、ノイズを減少させるか、またはノイズのバ
ックグラウンドにおいてよりシグナルを明瞭にするかもしくは検出可能とするた
めに使用し得る技法を目的とする。すなわち、バックグラウンド・ノイズ内のシ
グナルをより良好に同定するのに役立ち得る技法はいずれも本発明での使用が可
能である。これらの技法は、一般に3つの方法に分類される:(1)開始シグナ
ルを適用するタイプまたは方法の変法(すなわち、“入力”を変化させてサンプ
ルシグナルを最大化するかまたは同定し得るようにする);(2)データ処理、
すなわち、サンプルシグナルを最大化するかまたは同定し得るようにするための
“出力”シグナルに使用する技法;および(3)アッセイそれ自体の変法、すな
わち、電極表面またはシステムの成分を、サンプルシグナルの良好な同定を可能
とするようにする。このように、例えば、適切な“入力”方法とは、多重周波数
を使用すること;AC振幅を増大させること;方形波ACVの使用;特別のまた
は複雑な波形の使用、などであるが、これらに限定されるものではない。同様に
、適切な“出力”AC技法とは、より高い調和振動数をモニターすること;位相
分析またはフィルタ;バックグラウンド引き算技法(インピーダンス分析および
シグナル認識またはピーク認識技法の使用などであるが、これらに限定されるも
のではない);デジタルフィルタ技法;バンド幅狭隘化技法(ロックイン検出機
構、高速フーリエ変換(FFT)法を含む);相関および/またはコンボリュー
ション技法;シグナル平均化;スペクトル分析、などであるが、これらに限定さ
れるものではない。さらに、アッセイ成分の変更は、サンプルシグナルとノイズ
シグナルが非平行様式で変化するように実施し得る;すなわち、2つのシグナル
が互いに非直線的に応答する。
【0013】 一般に、電気化学的検出に依存するアッセイ方法は本発明の技法から利益を得
ることができる。例えば、本発明の方法は単層を利用しないシステム、並びに外
因性ETMを使用しないシステム、およびAC以外の技法に依存するシステムに
使用し得る。しかし、本発明は一般的に以下の特許に記載されたようなシステム
において特に使用し得る:U.S. Patent Nos. 5,591,578; 5,824,473; 5,705,348
; 5,780,234 and 5,770,369; U.S.S.N.s 08/873,598 08/911,589; and WO 98/20
162; PCT/US98/12430; PCT/US98/12082; PCT/US99/10104; PCT/US99/01705, and
PCT/US99/01703。これらのシステムは、電極表面に標的被検体を固定し、アッ
セイ複合体を形成するために、捕捉結合リガンド(標的被検体が核酸である場合
は捕捉プローブと呼称する)の使用に依存する。該アッセイ複合体はさらに電子
伝達部分(ETM)を含んでなり、それが直接または間接的に標的被検体に付着
する。すなわち、電極表面近傍でのETMの存在は標的被検体の存在に左右され
る。ETMと電極間の電子伝達は以下に概説する様々な技法を用い開始されるが
、さらに以下に概説するように出力シグナルを受信し、任意に処理する。このよ
うに、電子伝達を検出することにより、標的被検体の存在または不存在が測定さ
れる。
【0014】 一般的には、使用し得る2つの基本的メカニズムがある。好適な態様において
、ETMの検出は二本鎖核酸の積層したπ−軌道を介しての電子伝達に基づく。
この基本的メカニズムは、U.S. Patent Nos. 5,591,578, 5,770,369, 5,705,348
,およびPCT US97/20014に記載されており、本明細書では“メカニズム−1”と
呼ぶ。簡単に説明すると、以前の研究では、電子伝達は二本鎖核酸の積層したπ
−軌道を介して急速に進むが、一本鎖核酸ではそれが有意に遅い。従って、これ
はアッセイのバイアスとして働く。このように、検出電極に導電性オリゴマーを
介して付着する核酸にETMを(下記のように、鎖の一方に共有結合によりまた
はハイブリダイゼーション指標の使用を介してハイブリダイゼーション複合体に
非共有結合により)付加することによって、ETMと電極間の電子伝達は、核酸
と導電性オリゴマーを介して検出し得る。
【0015】 これは標的被検体が核酸である場合に実施し得る;あるいは、非核酸標的被検
体は(標的被検体を検出電極に付着させるための)任意の捕捉結合リガンドおよ
び核酸“尾部”を有する可溶性結合リガンドと共に使用するが、それが次いで検
出を実施する表面上の検出プローブに直接または間接的に結合し得る。 別法として、ETMの存在または不存在は単層の表面上で直接的に検出するこ
とができる。すなわち、ETMからの電子はシグナルを発生させるために積層し
たπ軌道を経て移動する必要がない。上記のように、この態様において、検出電
極は、好ましくは、サンプル中の酸化還元活性種から電極を遮蔽するように働く
自己集合単層(SAM)を含んでなる。この態様において、僅かな“欠陥”(場
合により、“ミクロ管路”、“ナノ管路”または“電気管路”という)を含んで
構成されたSAM表面上にETMの存在することは、直接に検出することができ
る。この基本的考え方を本明細書では“メカニズム−2”という。本質的に、電
気管路は特定のETMが表面に接近するのを可能とする。理論に囚われずに銘記
すべきことは、電気管路の形状は選定したETMに一部左右されることである。
例えば、比較的疎水性のETMを使用すると、疎水性の電気管路形成種を使用す
ることが可能であり、それが親水性または荷電ETMを効果的に排除する。同様
に、SAMに親水性または荷電種を使用すると、疎水性のETMを排除するよう
に作用する。
【0016】 留意すべきは、これらの欠陥は、サンプル成分が検出電極と直接接触するのを
可能とする“穴(holes)”とは区別すべきことである。以下により詳細に説明す
るように、電気管路は幾つかの一般的方法で生成させることが可能であり、例え
ば、これらに限定されるものではないが、PC回路板上に形成させた金電極など
の粗電極表面の使用;または単層に少なくとも2つの異なる種を包含させること
、すなわち、“混合単層”を使用することであり、少なくともその一つは電気管
路形成種(EFS)である。このように、標的被検体の結合に基づき、ETMを
含んでなる可溶性結合リガンドは表面に搬送され、推定ではあるが電極へつなが
る“電気管路”を経てETMの検出が進行する。本質的には、欠陥を含んでなる
SAMの役割はETMが電極の電子表面と接触させ得ることであり、一方で溶液
成分から電極を遮蔽し、電極に対し非特異結合量を低減する利益を提供すること
である。異なる観点では、結合リガンドの役割はETMを表面に取り込むための
特異性を提供することであり、その場合は直接検出することができる。 このように、いずれかの態様において、以下により詳細に説明するように、ア
ッセイ複合体はETMを含むように形成し、次いで本明細書に概説する検出電極
とシグナル処理技法を用いて、それを検出する。
【0017】 従って、本発明はサンプル溶液中の標的被検体を検出する方法を提供する。当
業者が認めるように、サンプル溶液は以下の相当数の対象物を含んでなるがこれ
らに限定されるものではない:体液(例えば、血液、尿、血清、リンパ液、唾液
、肛門および膣分泌液、汗および***などであるが、これらに限定されるもので
はなく、実質的に生体からのもの、好ましくは哺乳動物のサンプル、特にヒトの
サンプルであることが好ましい);環境サンプル(例えば、空気、農業、水およ
び土壌の各サンプルなどであるが、これらに限定されるものではない);生物学
的戦闘剤サンプル;研究サンプル(すなわち、核酸の場合、サンプルは増幅反応
の産物であってもよく、例えば、PCR増幅反応など、PCT/US99/01
705に一般的に記載されているような標的およびシグナル増幅のサンプルを含
む);精製したサンプル、例えば、精製したゲノムDNA、RNA、タンパク質
など;粗製サンプル(バクテリア、ウイルス、ゲノムDNAなど)。当業者が認
めるように、サンプルについては実質的にどのような実験的取扱いもなし得る。
【0018】 本方法は標的被検体の検出を目的とする。本明細書での“標的被検体”または
その文法的等価物とは、検出すべき分子または化合物を意味する。以下に概説す
るように、標的被検体は、好ましくは、結合リガンドに結合するが、それについ
ては以下により詳細に説明する。当業者が認めるように、大多数の被検体は本方
法により検出することが可能である;基本的に、対応する下記の結合リガンドが
作製し得る標的被検体は本発明方法によって検出することができる。
【0019】 適切な被検体は有機および無機分子であり、生体分子を包含する。好適な態様
において、被検体は以下のとおりである:環境汚染物(害虫駆除剤、殺虫剤、毒
素などを含む);化学物質(溶媒、有機材料などを含む);治療剤分子(治療お
よび誤用薬物、抗生物質などを含む);生物分子(ホルモン、サイトカイン、タ
ンパク質、脂質、炭化水素、細胞膜抗原およびレセプター(中性、ホルモン性、
栄養性、および細胞表面レセプター)またはそれらのリガンドなどを含む);全
細胞(原核細胞(病原性バクテリアなど)および哺乳動物腫瘍細胞を含む真核細
胞などを含む);ウイルス(レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイル
ス、レンチウイルスなどを含む);および胞子など。特に好適な被検体は環境汚
染物、核酸、タンパク質(酵素、抗生物質、抗原、成長因子、サイトカインなど
を含む)、治療および誤用薬物、細胞、およびウイルスなどである。
【0020】 特に好適な標的被検体はタンパク質および核酸である。本明細書にて使用する
際の“タンパク質”とはタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドである。該タ
ンパク質は天然産アミノ酸とペプチド結合から造られているか、または合成ペプ
チド模倣構造であってもよい。その側鎖は(R)または(S)いずれの立体配置
であってもよい。好適な態様において、アミノ酸は(S)またはL−配置である
。非天然の側鎖を用いる場合、非アミノ酸置換基を用い、例えば、生体内での分
解を防止または遅延させることができる。
【0021】 適切な標的被検体は、これらに限定されるものではないが、以下のとおりであ
る:(1)免疫グロブリン、特に、IgE、IgGおよびIgM、および治療上ま
たは診断学的に関連する抗体、例えば、これらに限定されるものではないが、ヒ
トアルブミン、アポリポタンパク質(アポリポタンパク質Eを含む)、絨毛性性
腺刺激ホルモン、コルチゾール、α−フェトプロテイン、チロキシン、甲状腺刺
激ホルモン(TSH)、抗トロンビンなどに対する抗体、薬物に対する抗体(例
えば、抗てんかん剤(フェニトイン、プリミドン、カルバリエゼピン、エトスク
シイミド、バルプロン酸、およびフェノバルビトール)、心臓作用性剤(ジゴキ
シン、リドカイン、プロカインアミド、およびジソピラミド)、気管支拡張剤(
テオフィリン)、抗生物質(クロラムフェニコール、スルホンアミド類)、抗う
つ剤、免疫抑制剤、濫用薬物(アンフェタミン、メタアンフェタミン、カンナビ
ノイド、コカインおよびアヘン製剤)などに対する抗体)、および多くのウイル
スに対する抗体(例えば、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイ
ルス)、パラミクソウイルス(例えば、呼吸器合胞体ウイルス、流行性耳下腺炎
ウイルス、麻疹ウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス
、レオウイルス、トガウイルス(例えば、風疹ウイルス)、パルボウイルス、ポ
ックスウイルス(例えば、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス)、エンテロウイ
ルス(例えば、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス)、肝炎ウイルス(A型
、B型およびC型を含む)、ヘルペスウイルス(例えば、単純疱疹ウイルス、水
痘・帯状ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイル
ス)、ロタウイルス、ノーウォークウイルス、ハンタウイルス、アレナウイルス
、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス)、レトロウイルス(HIV、HT
LV−Iおよび−IIを含む)、パポバウイルス(例えば、パピローマウイルス)
、ポリオーマウイルス、およびピコルナウイルスなどに対する抗体)、および細
菌に対する抗体(例えば、多様な病原性および非病原性対象原核生物、例えば、
バシラス;ビブリオ、例えば、ビブリオ・コレレ(V. cholerae);エシェリキ
ア、例えば、腸毒素産生性大腸菌;赤痢菌(Shigella)、例えば、志賀赤痢菌(
S. dysenteriae);サルモネラ、例えば、サルモネラ・ティフィ(S. typhi);
マイコバクテリウム(Mycobacterium)、例えば、結核菌(M. tuberculosis)、
癩菌(M. leprae);クロストリジウム(Clostridium)、例えば、ボツリヌス菌
(C. botulinum)、破傷風菌(C. tetani)、クロストリジウム・ディフィシレ
(C. difficile)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(C.perfringens)
;コリネバクテリウム(Cornyebacterium)、例えば、ジフテリア菌(C. diphth
eriae);ストレプトコッカス(Streptococcus)、例えば、化膿連鎖球菌(S. p
yogenes)、肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae);スタヒロコッカス(Staphylococc
us)、例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus);ヘモフィルス(Haemophilus)、
例えば、ヘモフィルス・インフルエンザ(H. influenzae);ナイセリア(Neiss
eria)、例えば、髄膜炎菌(N. meningitidis)、淋菌(N. gonorrhoeae);エ
ルシニア(Yersinia)、例えば、エルシニア・ランブリア(Y. lamblia)、ペス
ト菌(Y. pestis);シュードモナス(Pseudomonas)、例えば、緑膿菌(P. aer
uginosa)、シュードモナス・プチダ(P. putida);クラミジア(Chlamydia)
、例えば、クラミジア・トラコマチス(C. trachomatis);ボルデテラ(Bordet
ella)、例えば、百日咳菌(B. pertussis);トレポネーマ(Treponema)、例
えば、梅毒トレポネーマ(T. palladium)、など;(2)酵素(およびその他
のタンパク質)、例えば、これらに限定されるものではないが、心臓疾患の指標
として、または治療に使用される酵素、例えば、クレアチンキナーゼ、乳酸脱水
素酵素、アスパラギン酸アミノ転移酵素、トロポニンT、ミオグロビン、フィブ
リノーゲン、コレステロール、トリグリセリド、トロンビン、組織プラスミノー
ゲン活性化因子(tPA);膵臓疾患指標、例えば、アミラーゼ、リパーゼ、キ
モトリプシンおよびトリプシン;肝臓機能酵素およびタンパク質、例えば、コリ
ンエステラーゼ、ビリルビン、およびアルカリホスファターゼ;アルドース、プ
ロスタン酸ホスファターゼ、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、
および細菌性およびウイルス性酵素、例えば、HIVプロテアーゼなど;(3)
ホルモンおよびサイトカイン(これらの多くは細胞レセプターのリガンドとして
働く)、例えば、エリスロオポイエチン(EPO)、トロンボポイエチン(TP
O)、インターロイキン(IL−1ないしIL−7を含む)、インシュリン、イ
ンシュリン様成長因子(IGF−1および−2)、表皮成長因子(EGF)、形
質転換成長因子(TGF−αおよびTGF−βを含む)、ヒト成長ホルモン、ト
ランスフェリン、表皮成長因子(EGF)、低密度リポタンパク質、高密度リポ
タンパク質、レプチン、VEGF、PDGF、毛様神経栄養因子、プロラクチン
、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、カルシトニン、ヒト絨毛性ゴナドトロピ
ン、コトリソール、エストラジオール、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺
激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロゲステロンおよびテス
トステロンなど;および(4)その他のタンパク質(α−フェトプロテイン、癌
胎児性抗原CEA、癌マーカー、などを含む)。
【0022】 さらに、抗体の検出され得る生物分子が同様に直接検出し得る;すなわち、ウ
イルスまたは細菌細胞、治療薬物および濫用薬物などの検出が直接になし得る。 適切な標的被検体は、炭水化物類、例えば、これらに限定されるものではない
が、乳癌(CA15−3、CA549、CA27.29)、ムチン様癌関連抗原
(MCA)、卵巣癌(CA125)、膵臓癌(DE−PAN−2)、前立腺癌(
PSA)、CEA、および結腸直腸および膵臓癌(CA19、CA50、CA2
42)などのマーカー類を包含する。
【0023】 適切な標的被検体は、金属イオン、特に重金属および/または毒性金属であり
、これらに限定されるものではないが、アルミニウム、砒素、カドミウム、セレ
ン、コバルト、銅、クロム、鉛、銀およびニッケルなどを包含する。 特に好適な標的被検体は核酸である。好適な態様において、標的被検体は核酸
であり、標的配列が検出される。本明細書における“標的配列”または“標的核
酸”という用語、またはその文法的等価物は一本鎖核酸上の核酸配列を意味する
。標的配列とは遺伝子、調節配列、ゲノムDNA、cDNA、mRNAとrRN
Aを含むRNAの一部分、またはその他の一部分である。配列はどのような長さ
であってもよいが、より長い配列がより特異的であると理解されている。当業者
が認めるように、相補的標的配列は多くの形を採ることできる。例えば、配列は
より大きな核酸配列、すなわち、遺伝子またはmRNAの全部または一部、取分
けプラスミドまたはゲノムDNAの制限フラグメント内に含まれていてもよい。
以下により詳しく説明するように、プローブは、サンプル中の標的配列の存在ま
たは不存在を測定するために、標的配列にハイブリダイズするように調製する。
一般的に言って、当業者はこの用語を理解している。標的配列はまた異なる標的
ドメインからなっていてもよい;例えば、サンプル標的配列の第一標的ドメイン
は捕捉プローブまたは捕捉エクステンダー・プローブにハイブリダイズし、第二
標的ドメインが増幅プローブの一部分、標識プローブ、または異なる捕捉プロー
ブまたは捕捉エクステンダー・プローブなどにハイブリダイズすることが可能で
ある。標的ドメインは隣接していてもよく、または離れていてもよい。“第一”
および“第二”という用語は標的配列の5’−3’方向に関して該配列の方向を
付与することを意味しない。例えば、相補性標的配列の5'−3’方向を仮定す
ると、第一標的ドメインは第二ドメインに対し5’に位置するか、あるいは第二
ドメインに対し3’に位置する。
【0024】 本明細書で「核酸」または「オリゴヌクレオチド」またはそれらと均等内容の
語は、一緒に共有結合されている少なくとも2個のヌクレオチドを意味する。本
発明の核酸は一般にホスホジエステル結合を含むが、場合によっては、下記で概
説されている通り、交互のバックボーンを有し得る核酸類似体が含まれ、例えば
ホスホルアミド(Beaucageら、Tetrahedoron 49(10):1925(199
3)およびそれに記載された参考文献、Letsinger, J. Org. Chem. 35:38
00(1970)、Sprinzlら、Eur. J. Biochem. 81:579(1977)、
Letsingerら、Nucl. Acids Res. 14:3487(1986)、Sawaiら、Chem.
Lett. 805(1984)、Letsingerら、J. Am. Chem. Soc. 110:44
70(1988)、およびPauwelsら、Chemica Scripta 26:141 9198
6))、ホスホロチオエート(Magら、Nucleic Acids Res. 19:1437(1
991)、および米国特許第5644048号)、ホスホロジチオエート(Briu
ら、J. Am. Chem. Soc. 111:2321(1989)、O−メチルホスホルア
ミダイト連鎖(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Appr
oach、オクスフォード・ユニバーシティー・プレス参照)、およびペプチド核酸
バックボーンおよび連鎖(Egholm、J. Am. Chem. Soc. 114:1895(19
92)、Meierら、Chem. Int. Ed. Engl.、31:1008(1992)、Niels
en、Nature、365:566(1993)、Carissonら、Nature 380:20
7(1996)参照、これら全てを引用して説明の一部とする)が含まれる。他
の類似核酸には、正のバックボーン(Denpcyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、
92:6097(1995))、非イオン性バックボーン(米国特許第5386
023,5637684,5602240,5216141および4469863
号、Kiedrowshiら、Angew. Chem. Intl. Ed. English、30:423(1991
)、Letsingerら、J. Am. Chem. Soc.、110:4470(1988)、Letsin
gerら、Nucleoside & Nucleotide、13:1597(1994)、2および3章
、ASCシンポジウムシリーズ580、“Carbohydrate Modifications in Anti
sense Research”、Y.S. SanghuiおよびP. Dan Cook編、Mesmaekerら、Bioorgan
ic & Medicinal Chem. Lett.、4:395(1994)、Jeffsら、J. Biomolec
ular NMR、34:17(1994)、Tetrahedron Lett.37:743(199
6))および非リボースバックボーンを伴うもの、例えば米国特許第52350
33および5034506号、および6および7章、ASCシンポジウムシリー
ズ580、“Carbohydrate Modifications in Antisense Research”、Y.S. San
ghuiおよびP. Dan Cook編記載のものがある。また、1個またはそれ以上の炭素
環状糖類を含む核酸も核酸の定義内に含まれる(Jenkinsら、Chem. Soc. Rev.(
1995)169−176頁参照)。幾つかの核酸類似体は、Rawls、C & E New
s 1997年6月2日号、35頁に報告されている。これらの参考文献は全て特
に引用して説明の一部とする。リボース−リン酸バックボーンにこれらの修飾を
加えることにより、ETMの付加が簡易化され、または生理学的環境における上
記分子の安定性および半減期が増加され得る。
【0025】 当業界の技術者が認めるように、これらの核酸類似体は全て本発明で使用され
得る。さらに、天然に存する核酸および類似体の混合物が製造され得る。例えば
、伝達性オリゴマーまたはETM結合部位では、類似構造が使用され得る。別法
として、異なる核酸類似体の混合物、および天然核酸および類似体の混合物も製
造され得る。
【0026】 特に好ましいのは、ペプチド核酸類似体を含むペプチド核酸(PNA)である
。天然に存する核酸の高荷電ホスホジエステルバックボーンとは対照的に、これ
らのバックボーンは中性条件下では実質的に非イオン性である。これによって、
2つの利点が得られる。まず、PNAバックボーンは、改善されたハイブリダイ
ゼーション速度論を呈する。PNAは、誤対合対完全適合塩基対において融解温
度(Tm)のより大きな変化を有する。DNAおよびRNAは、内部誤対合の場
合典型的にはTmの2−4℃降下を呈する。非イオン性PNAバックボーンの場
合、降下は7−9℃に近い。これは不一致をよりよく検出することを可能とする
。同様に、それらの非イオン的性質故に、これらのバックボーンに結合された塩
基のハイブリダイゼーションは、塩濃度に対して比較的非感受性である。
【0027】 核酸は、明記されている通り1本または2本鎖であるか、または2本鎖または
1本鎖の両配列の一部を含み得る。核酸は、DNA、ゲノム性およびcDNAの
両方、RNAまたはハイブリッドであり得、その場合核酸はデオキシリボ−およ
びリボ−ヌクレオチドの任意の組み合わせ、並びにウラシル、アデニン、チミン
、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン
、イソグアニンなどを含む塩基の任意の組み合わせを含む。好ましい態様は、米
国特許第5681702号で総括的に記載されている通り、非特異的ハイブリダ
イゼーションを低減化するために、標的配列ではなく、他のプローブと相補的に
なるように設計された核酸においてイソシトシンおよびイソグアニンを用いる。
ここで使用されている、「ヌクレオシド」の語は、ヌクレオチド並びにヌクレオ
シドおよびヌクレオチド類似体、および修飾ヌクレオシド、例えばアミノ修飾ヌ
クレオシドを包含する。さらに、「ヌクレオシド」は、非天然的類似構造を包含
する。すなわち、例えば各々塩基を含む、ペプチド核酸の個々の単位は、ここで
はヌクレオシドと称される。
【0028】 従って、好ましい実施態様として、本発明の構成物は電極を含む。本明細書で
の“電極”は、電子装置に接続したとき、電流または荷電を感知し、それをシグ
ナルに変換し得る構成物を意味する。あるいは、電極を、電位を電子に適用し得
る、および/または、溶液中の種へまたは種から電子を移し得る構成物として定
義することができる。このように、電極とは本明細書中のETMである。好適な
電極は技術上既知であり、これらに限定されるものではないが、ある種の金属お
よびその酸化物、例えば、金、白金、パラジウム、シリコン、アルミニウム;金
属酸化物電極、例えば、酸化白金、酸化チタン、酸化スズ、酸化スズインジウム
、酸化パラジウム、酸化けい素、酸化アルミニウム、酸化モリブデン(Mo )、酸化タングステン(WO)および酸化ルテニウム;および炭素(ガラス
状電極、黒鉛およびカーボンペースト)などを包含する。好適な電極は金、白金
、けい素、炭素および金属酸化物電極などであり、金が特に好ましい。
【0029】 本明細書に記載の電極は平らな表面として図示しているが、これは電極の可能
な一形状であって、図式化を目的とするのみのものである。電極の形状は使用さ
れる検出法により変わる。例えば、平面状の電極は光検出法に好適であり、ある
いは合成および検出のために処理可能な位置を必要として連なった核酸を調製す
る場合に好適である。あるいは、伝導性オリゴマーと内部表面に結合した核酸を
含んでなるSAMの場合には、単一プローブ分析のために、電極をチューブの形
状とすることができる。電極コイルも、幾つかの実施態様では同様に好ましい。
これは少容量のサンプルに露出すべき核酸の表面積を最大とするのを可能にする
【0030】 好適な態様において、検出電極は基板上に形成する。さらに、本明細書におけ
る検討は一般的に金電極の形成に向けられているが、当業者も認めるように、他
の電極も同様に使用し得る。基板は、当業者も認めるように、多様な材料を含む
が、プリント回路基板(PCB)材料がとりわけ好ましい。このように、一般的
に、適切な基板はこれらに限定されるものではないが、ファイバーグラス、テフ
ロン、セラミック、ガラス、シリコン、雲母、プラスティック(アクリル、スチ
レンと他の物質とのポリスチレンおよびコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチ
レン、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、テフロン(商標)、お
よびその誘導体など)、ゲテック(GETEK)(プロピレンオキシドとファイ
バーグラスの混合物)などである。ある実施態様では、ガラスは基板として適切
ではない。
【0031】 一般に、好適な材料はプリント回路基板材料である。プリント回路基板材料は
電導層で被覆されている絶縁基板を含んでなる材料であり、リトグラフィー技法
、特に露光リトグラフィーにより処理加工して、電極と相互接続体の型を形成す
る(場合により技術上、相互接続またはリード線という)。絶縁基板はすべてと
いうわけではないが、一般にポリマーである。技術上知られているように、1層
または複数層を使用し、“二次元”基板(例えば、すべての電極および相互接続
体が同一平面にある)または“三次元”基板(この場合、電極は1方の表面にあ
り、相互接続体が基板を貫通して他側へ出てもよい)を作製する。三次元系は多
くの場合、穿孔またはエッチングを使用し、次いで、銅などの金属で電気メッキ
し、“貫通基板”相互接続を作製するようにする。回路基板材料はしばしば基板
にすでに付着した銅箔などの箔を備えており、必要により(例えば、相互接続の
ために)、例えば、電気メッキによりさらに銅が加えられる。銅の表面は、次い
で、粘着層の付着を可能とするために、例えば、エッチングによりざらつかせる
必要がある。
【0032】 従って、好適な態様において、本発明は複数の電極、好ましくは金電極を含ん
でなる基板を含むバイオチップ(場合により本明細書では“チップ”という)を
提供する。電極数はアレイについて概説したとおりとする。各電極は、好ましく
は、本明細書に概説したように自己集合した単層を含んでなる。好適な態様にお
いて、単層形成種の1つは本明細書に概説したように捕獲リガンドを含んでなる
。さらに、各電極は相互接続をもち、それが一端で電極に付着し、最終的に電極
を制御し得る装置に付着している。すなわち、各電極は独立してアドレス参照可
能である。
【0033】 該基板はより大きな装置の部分であってもよく、該装置は検出電極に一定容量
のサンプルを暴露する検出チャンバーを含む。一般に、検出チャンバーは約1n
Lないし1mlの範囲であり、好ましくは約10μLないし500μLである。
当業者が認めるように、実験条件およびアッセイによっては、より少量またはよ
り大量を用いてもよい。
【0034】 一部の態様において、検出チャンバーと電極は電極構成要素(AC/DC電圧
源、電流計、プロセッサ、読み出しディスプレー、温度制御器、光源など)を含
む装置内に配設し得るカートリッジの部分である。この態様において、各電極か
らの相互接続は、装置内にカートリッジを挿入することにより、電極と電子組成
間の接続が確立するような位置に配置する。
【0035】 回路基板材料(または他の基板)上の検出電極は一般に多様な方法で調製され
る。一般に、高純度の金を用い、真空蒸着法(スパッタリングおよび蒸発)また
は溶液析出(電気メッキまたは無電解方法)により被覆してもよい。電気メッキ
を実施する場合には、基板は先ず電導性物質を含まねばならない;ファイバーグ
ラスの回路基板は多くの場合銅箔を備えている。多くの場合、基板によっては、
良好な機械的安定性を保証するために、基板と金の間に粘着層が用いられる。こ
のように、好適な態様では、粘着金属、例えば、クロム、チタン、チタン/タン
グステン、タンタル、ニッケルまたはパラジウムなどの析出層を利用するが、こ
れらの金属は上記金同様に析出させ得る。電気メッキ金属(粘着金属または電極
金属)を使用する場合、粒状精製添加物(多くの場合、業界では光沢剤という)
を任意に加えて、表面析出性を変化させる。好適な光沢剤は有機物および無機物
の混合物であり、コバルトとニッケルが好ましい。
【0036】 一般に、粘着層は約100Åから約25ミクロン(1,000マイクロインチ
)の厚さである。もし粘着金属が電気化学的に活性であるならば、電極金属は“
染み出し”を防止する厚さで被覆しなければならない;もし粘着金属が電気化学
的に不活性であるならば、電極金属は薄くてもよい。一般に、電極金属(好まし
くは金)は約500Åから約5ミクロン(200マイクロインチ)の範囲の厚さ
で、好ましくは約30マイクロインチないし約50マイクロインチの厚さで析出
させる。一般には、金を析出させて、直径約5ミクロンないし約5mmの範囲、
好ましくは約100ないし250ミクロンのサイズの電極とする。このようにし
て形成される検出電極は、好ましくは、清浄とし、以下に検討するようにSAM
を付加する。
【0037】 このように、本発明は複数の金電極を含んでなる基板の作製法を提供する。こ
の方法は先ず基板上に、ニッケルまたはパラジウムなどの粘着金属を(選択肢と
して光沢剤と共に)被覆することを含む。電気メッキが好ましい。次いで、電極
金属、好ましくは金を粘着金属上に(好ましくは再度電気メッキにより)被覆す
る。次いで、電極とそれに繋がる相互接続を含む装置の型をリトグラフ技法、特
に技術上既知の露光リトグラフィー技法、および湿式化学エッチングにより作製
する。多くの場合、非電導性化学抵抗性絶縁材料、例えば、蝋マスクまたはプラ
スティックを露光リトグラフィー技法により敷き、露光した電極とリード線への
接続点のみを残す;リード線はそれ自体一般に被覆されている。
【0038】 本方法ではSAMの付加が続く。好適な態様においては、点滴析出技法を用い
、必要な化学物質、すなわち、単層形成種であって、その一つは、好ましくは捕
獲リガンド構成種、などを付加する。点滴析出技法は“スポット”アレイ作製に
ついて周知である。これは各電極に異なる構成物を付加するために実施する、す
なわち、異なる捕獲リガンドを含む配列を作製する。あるいは、SAM種は各電
極について同一であってもよく、この場合は点滴析出技法またはその溶液に基板
全体もしくは基板表面を浸漬する方法により実施してもよい。
【0039】 この系はアレイ方式での特定用途が明らかになっている;すなわち、アドレス
参照可能な検出電極のマトリックスがある場合である(本明細書では“パッド”
、“アドレス”または“ミクロ領域”と一般的にいう)。本明細書において、“
アレイ”とは複数の捕獲リガンドがアレイ方式にあることを意味する;アレイの
サイズはアレイの構成物および最終用途に左右される。約2つの異なる捕獲リガ
ンドから数千ものリガンドを含むアレイを作製し得る。一般に、該アレイは電極
のサイズ並びにアレイの最終用途によって、2個から100,000以上にも及
んで構成される。好適な範囲は約2個から約10,000個であり、好ましくは
約5個から約1000個であり、特に好ましいのは約10個ないし約100個で
ある。一部の態様において、本発明の構成物はアレイ方式でない場合もある;す
なわち、一部の態様では単一の捕獲リガンドを含んでなる構成物が同様に作製し
得る。さらに、一部のアレイにおいて、異なる構成物または同一の構成物を含む
複数の基板を用い得る。このように、例えば、大型のアレイは複数の小型基板か
ら構成されてもよい。
【0040】 多くのシステムでは必要ではないが、好ましい態様では、検出電極は自己集合
単層(SAM)を含む。本明細書に概説するように、検体が電極から少し離れてい
るとき、標的被検体結合の有効性(例えば、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼ
ーション)は増加し得る。同様に、単層が存在すると、生体分子(標的被検体を含
む)の電極への非特定結合は、一般に減少する。このように、単層は電極表面か
ら離れている被検体の維持を容易にする。さらに、単層は荷電種を電極表面から
離れているようにするのに役立つ。このように、この層は、溶媒内で各電極と溶
媒内で各ETM間または電極と他種電気活性種間の電気的接触を防止するのに役
立つ。かかる接触は、直接の“短絡”またはサンプル内に存在する可能性のある
荷電種を介した間接の短絡となり得る。したがって、この単層は、好ましくは電
極表面上の均一層にきっちりと詰込まれ、“孔”が存在するのを最少にする。単
層は電極への溶媒接近をブロックする物理的障壁として作用する。
【0041】 本明細書における“単層”または“自己集合単層”または“SAM”とは、表
面に自然発生的に化学吸着した分子の比較的規則的な集合を意味し、そこでの分
子は互いに略平行に、平面に対しては大まかに垂直に方向づけられている。それ
ぞれの分子は表面に付着する官能基と、単層の近傍分子と相互作用する部分を有
し、比較的規則正しいアレイを形成する。“混合”単層は異質の単層を含んでな
るものであり、すなわち、そこでは少なくとも2種の異なる分子が単層を作り上
げている。
【0042】 一般に、本発明のSAMは多くの方法で生成させ得るものであり、使用する電
極表面とシステムにより、多くの異なる成分を含んでなる。“メカニズム−1”
の態様では、2種類の単層形成種、すなわち、単層形成種(絶縁体または導電性
オリゴマーを含む)および捕捉結合リガンドを含んでなる導電性オリゴマー種を
利用するが、当業者が認めるように、さらなる単層形成種をさらに含んでもよい
。“メカニズム−2”の態様では、SAMの組成物は検出電極表面に左右される
。一般に、2つの基本的な“メカニズム−2”システムが記載されている;金ボ
ール電極などの“滑らかな”表面を含んでなる検出電極、およびPC回路板上に
工業用工程を用いて調製される電極などの“粗い”表面を含んでなる電極である
。一般に、理論に囚われなければ、不完全な表面、すなわち、“粗い”表面とし
た単層は電気管路形成種(EFS)の不存在下でも充分な電気管路を含む単層を
自然発生的に形成すると思われるが、多分粗い表面上に均一な単層を形成するの
が難しいという事実による。しかし、均一な表面はより均一な単層の形成を可能
とするので、“より滑らかな”表面は電気管路を生成させるための十分な数のE
FSを包含している必要がある。再び、理論に囚われなければ、単層の均一性を
損なう種を包含させること、例えば、より柔軟性の種の背面に硬い分子を包含さ
せると、電気管路を形成させることになる。かくして、“滑らかな”表面は3種
の成分、すなわち、絶縁体種、EFS、および捕捉リガンドを含む種を含んでな
る単層を含むが、場合によっては、例えば、捕捉リガンド種が高密度で含まれる
場合、捕捉リガンド種がEFSとして作用し得る。これに関連する“滑らかさ”
は物理的に測定されないが、EFSを含む場合は、測定したシグナルの増加の関
数として測定される。すなわち、単層形成種を被覆した検出電極からのシグナル
を、EFSを含む単層形成種で被覆した検出電極からのシグナルと比較する。そ
の増加は表面が比較的滑らかであることを示しているが、その理由はEFSの包
含が電極に対するETMの接近を容易にするように作用するからである。留意す
べきことは、ここでの考察は主に金電極とチオール含有単層形成種に向けられて
いるが、他のタイプの電極と単層形成種も使用し得ることである。
【0043】 留意すべきことは、メカニズム−2システムの“電気管路”は電極表面とサン
プル成分の直接接触には至らしめないこと、すなわち、電気管路は電極に物理的
な接近を可能とする大きなポア(pores)または穴ではないことである。むしろ理
論に囚われなければ、電気管路はある種の型のETM、特に疎水性のETMが十
分な単層への貫入を許し、検出を可能とすると思われる。しかし、ある種の疎水
性種を含む他の型の酸化還元活性種は、電気管路が存在していても、単層へ貫入
しない。このように、一般に、サンプル中に存在する可能性のある酸化還元活性
種は、電気管路の結果としての実質的なシグナルを与えない。確実なシステムは
SAMの組成とETMの選択により変化するが、一般に、ETM検出用の十分な
電気管路をもつ非特異結合を減少させる適切なSAMについて試験するには、フ
ェロセンかまたはフェロシアニドをSAMに添加することである;前者はシグナ
ルを生じ、後者は生じないはずである。
【0044】 従って、メカニズム−1のシステムにおいて、単層は第一の種として以下に詳
しく説明するように捕捉結合リガンドを含む導電性オリゴマーを含んでなる種、
および第二の種として絶縁体または導電性オリゴマーのいずれかまたは双方を包
含する単層形成種を含む種を含んでなる。 好適な態様において、単層は電気管路形成種を含んでなる。本明細書において
“電気管路形成種”または“EFS”とは、一般にアルキル基などの絶縁体の単
層に十分な電気管路を生成させ、表面でETMの検出を可能とし得る分子である
。一般に、EFSは一つ以上の以下の特質を有する:それらは、例えば、アルキ
ル鎖に比べた場合、比較的硬い分子であってもよい;それらは他の単層形成種と
異なる形状をもつ電極表面に付着し得る(例えば、チオール基をもつ金表面に付
着したアルキル鎖は大よそ45°の角度で付着すると考えられ、チオールを介し
て金に付着したフェニル−アセチレン鎖は90°の角度で降下すると考えられる
);それらは、例えば、アルキル基などの分枝基を包含すること、またはポリエ
チレングリコール単位などの高度に柔軟性の種を包含することを介して、きっち
りと詰込まれた単層の形成を立体的に阻害または阻止する構造を有していてもよ
い;またはそれらは電気管路を形成するように活性化され得るものでもよい;例
えば、光活性化可能種は光活性化により表面から選択的に除去され、電気管路を
残す。 好適なEFSは下記定義の導電性オリゴマー、およびフェニルアセチレン−ポ
リエチレングリコール種を含む。しかし、一部態様において、EFSは導電性オ
リゴマーではない。
【0045】 好適な態様において、単層は伝導性オリゴマー(conductive oligomer)を含ん
でなる。本明細書において“伝導性オリゴマー”は実質的に伝導性のオリゴマー
を意味し、好ましくは線状であり、そのある態様では文献上“分子線”という。
本明細書において“実質的に伝導性”とは該オリゴマーが100Hzで電子を移
動し得ることを意味する。一般に、伝導性オリゴマーは、伝導性オリゴマーの単
量体単位間のように、実質的に重なり合うπ−軌道、すなわち、共役π−軌道を
有するが、伝導性オリゴマーは1つ以上のシグマ(σ)結合をも含んでいる。さ
らに、伝導性オリゴマーは会合したETMへの電子の注入またはETMからの受
け入れ能力によって機能的に定義することもできる。さらに、伝導性オリゴマー
は本明細書に定義した絶縁体よりもより伝導性である。さらに、本発明の伝導性
オリゴマーは電気活性ポリマーとは区別すべきもので、これはそれ自体で電子を
供与または受容できるものである。
【0046】 好適な態様において、伝導性オリゴマーは約10−6ないし10Ω−1cm −1 の伝導性Sを有し、好ましくは約10−5ないし10Ω−1cm−1であ
って、これらのS値は約20Åないし約200Åの範囲の分子から計算される。
以下に記載するように、絶縁体は約10−7Ω−1cm−1以下の伝導性S、好
ましくは10−8Ω−1cm−1より低い値を有する。一般的には、Gardner et
al., Sensors and Actuators A51 (1995) 57-66 (参照により本明細書に取込む
) を参照されたい。
【0047】 伝導性オリゴマーの所望の性質は、高い伝導性、本発明の構成物の合成と使用
のために有機溶媒および/または水への十分な溶解性、および反応に対する好適
な化学的抵抗などであるが、該反応が起こるのは、1)結合リガンド合成の際(
すなわち核酸合成であり、本発明の構成物合成に際し、伝導性オリゴマーを含む
ヌクレオシドを核酸シンセサイザーに加えることができる)、2)伝導性オリゴ
マーが電極に付着する際、または3)結合アッセイの際、である。さらに、自己
集合単層の形成を促進する伝導性オリゴマーが好ましい。
【0048】 本発明のオリゴマーは、本明細書に記載のように、少なくとも2つの単量体サ
ブユニットを含む。下記に詳しく説明するが、オリゴマーには、ホモおよびヘテ
ロオリゴマーがあり、ポリマーも含む。
【0049】 好ましい実施態様では、伝導性オリゴマーは、構造1に示した構造を持つ: 構造1
【化1】 当業者には理解されるとおり、ここに示した構造は全て、更なる原子または構
造を有し得る。即ち、構造1の伝導性オリゴマーは、電極、遷移金属錯体、有機
ETM、およびメタロセンなどのETMに、および核酸などの結合リガンドに、
またはこれら数種に結合させることができる。特記しない限り、ここに示した伝
導性オリゴマーは、その左側で電極に結合させる。つまり、構造13の場合は、
左側の“Y”を本明細書に記載の電極につなげる。伝導性オリゴマーを結合リガ
ンドに結合させるとき、右側の“Y”は、存在するならば、直接的にまたは本発
明に記載のリンカーを用いて、核酸などの結合リガンドに結合させる。
【0050】 本実施態様では、Yは芳香族基であり、nは1から50の整数であり、gは1
または0のいずれかであり、eは0から10の整数であり、mは0または1であ
る。gが1のとき、B−Dは隣接した結合と共有し得る結合であり(本明細書中で
A共役結合@とよぶ)、好ましくは、アセチレン(B−Dは、好ましくはアセチ
レンから選択される共有結合である)、アルケン、置換アルケン、アミド、アゾ
、−C=N−(−N=C−、−CR=N−および−N=CR−を含む)、−Si=
Si−および−Si=C−(−C=Si−、−Si=CR−および−CR=Si−を含
む)から選択される。gが0のとき、eは好ましくは1であり、Dは好ましくはカ
ルボニルまたはヘテロ原子部であり、このヘテロ原子は、酸素、硫黄、窒素、ケ
イ素またはリンから選択される。そのため、適切なヘテロ原子部には、−NHお
よび−NR、式中、Rは本明細書に定義のとおりである;置換硫黄;スルホニル
(−SO−)スルホキシド(−SO−);酸化ホスフィン(−PO−および−RP
O−);およびチオホスフィン(−PS−および−RPS−)があるが、これらに
限定されない。しかしながら、下記に概略説明するとおり、伝導性オリゴマーを
金電極に結合させるような場合、硫黄誘導体は好ましくない。
【0051】 “芳香族基”またはその均等物とは、本書では、一般に5から14の炭素原子
を含む芳香族単環式または多環式炭化水素部(より大きい多環式環構造を作るこ
ともできるが)およびそれらの炭素環式ケトンまたはチオケトン誘導体で、その
遊離の原子価を持つ炭素原子が芳香族環の一員であるものを意味する。芳香族環
には、アリーレン基および2つ以上の原子を除いた芳香族基がある。本願の目的
には、芳香族は複素環を含む。“複素環”または“ヘテロアリール”とは、1か
ら5個の指定炭素原子を、窒素、酸素、硫黄、リン、ホウ素およびケイ素から選
択されるヘテロ原子で置換した、そしてその遊離の原子価を持つ原子が芳香族環
の一員である芳香族基、およびそれらの複素環式ケトンおよびチオケトン誘導体
を意味する。従って、複素環には、チエニル、フリル、ピロリル、ピリミジニル
、オキサリル、インドリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、チアゾリル、
イミドジル等がある。
【0052】 重要なのは、伝導性オリゴマーのY芳香族基が異なっていてもよいこと、即ち
、伝導性オリゴマーがヘテロオリゴマーであり得ることである。つまり、伝導性
オリゴマーは、単一型のY基または複数型のY基のオリゴマーを含むことができ
る。
【0053】 芳香族基は、本書中で一般にRで表す置換基で置換できる。R基は、必要に応
じて加え、伝導性オリゴマーのパッキングに影響を及ぼすことができる、即ち、
R基を用いて単層におけるオリゴマーの会合を変化させることができる。R基を
加えて、1)オリゴマーまたはオリゴマーを含む組成物の溶解度を変える;2)シ
ステムの共役または電子化学電位を変える;および3)単層表面の電荷または特
性を変えることもできる。
【0054】 好ましい実施態様では、伝導性オリゴマーが3つのサブユニットより大きいと
き、R基は、溶液合成を行う場合の溶解度を高めるのに好ましい。しかしながら
、R基およびその位置は、下記のように、表面上、特に単層内での伝導性オリゴ
マーのパッキングへの影響を最小限にするよう選択される。一般に、単層内では
小さいR基のみが使用され、大きいR基は一般に単層表面上にある。そのため、
例えば、単層内の伝導性オリゴマー部分にメチル基を付けて溶解度を高めるのが
好ましく、例えば、C3からC10のより長いアルコキシ基を単層表面上に付け
るのが好ましい。一般に、本明細書に記載のシステムでは、このことは、一般に
、立体的に重要なR基は、単層を形成する分子の平均長さによるが、最初の2つ
または3つのオリゴマーサブユニットのいずれにも結合させないことを意味する
【0055】 適切なR基には、水素、アルキル、アルコール、芳香族、アミノ、アミド、ニ
トロ、エーテル、エステル、アルデヒド、スルホニル、ケイ素部、ハロゲン、硫
黄含有部、リン含有部、およびエチレングリコールがあるが、これらに限定され
ない。本明細書に示した構造では、Rは、その位置が置換されていない場合は水
素である。ある位置では、2つの置換基、RおよびR'が可能であり、その場合
、RおよびR'基は同一であるかまたは異なっているかのいずれかでよい。
【0056】 “アルキル基”またはその均等物とは、直鎖状または分枝状アルキル基を意味
し、直鎖アルキル基が好ましい。分枝状ならば、1箇所以上の、特記しなければ
任意の位置で枝分かれしている。このアルキル基は、約1から約30の炭素原子
(C1−C30)の範囲であり得、好ましい実施態様では、約1から約20の炭素
原子(C1−C20)を利用し、約C1から約C12ないしC15が好ましく、C
1ないしC5が特に好ましいが、ある実施態様では、アルキル基は、もっと大き
くてもよい。アルキル基の定義の中に含まれるものには、C5およびC6環など
のシクロアルキル基や、窒素、酸素、硫黄、またはリンを持つ複素環式環もある
。アルキルはまた、好ましくは硫黄、酸素、窒素およびケイ素のヘテロ原子を持
つヘテロアルキルも含む。アルキルは、置換アルキル基も含む。“置換アルキル
基”とは、更に上記定義の1以上の置換基部“R”を含むアルキル基を意味する
【0057】 “アミノ基”またはその均等物とは、−NH、−NHRおよび−NR基を
意味し、Rは本明細書に定義のとおりである。
【0058】 “ニトロ基”とは、−NO基を意味する。
【0059】 “硫黄含有部”とは、硫黄原子を含有する化合物を意味し、チア−、チオ−お
よびスルホ−化合物、チオール(−SHおよび−SR)、スルフィド(−RSR−)
、スルホキシド(−R−SO−R−)、スルフォン(−R−SO2−R−)、ジスル
フィド(−R−S−S−R−)およびスルフォニルエステル(−R−SO2−O−R
−)、があるが、これらに限定されない。“リン含有部”は、リンを含有する化
合物を意味し、ホスフィンおよびホスフェートがあるが、これらに限定されない
。“シリコン含有部”とは、シリコン含有化合物を意味する。
【0060】 “エーテル”とは、−O−R−基を意味する。好ましいエーテルはアルコキシ
基であり、−O−(CH2) 2CH3および−O−(CH2)4CH3が好ましい。
【0061】 “エステル”とは、−COOR基を意味する。
【0062】 “ハロゲン”とは、臭素、ヨウ素、塩素またはフッ素を意味する。好ましい置
換アルキルは、部分的にまたは全体的にハロゲン化したアルキル、例えばCF 等である。
【0063】 “アルデヒド”とは、−RCOH基を意味する。
【0064】 “アルコール”とは、−OH基およびアルキルアルコール−ROHを意味する
【0065】 “アミド”とは、−RCONH−またはRCONR−基を意味する。
【0066】 “エチレングリコール”または“(ポリ)エチレングリコール”とは、−(O−
CH−CH)−基を意味するが、エチレン基の各炭素原子は、一重にまた
は二重に置換されていてもよく、即ち、−(O−CR−CR)−、但しRは
上記定義のとおりである、であってよい。酸素の位置に他のヘテロ原子を持つエ
チレングリコール誘導体(即ち、−(N−CH−CH)−または−(S−CH −CH)−または置換基を持つ)も好ましい。
【0067】 好ましい置換基には、メチル、エチル、プロピル、−O−(CH)CH
よび−O−(CH)CHなどのアルコキシ基およびエチレングリコールおよ
びそれらの誘導体があるが、これらに限定されない。
【0068】 好ましい芳香族基には、フェニル、ナフチル、ナフタレン、アントラセン、フ
ェナントロリン、ピロール、ピリジン、チオフェン、ポルフィリンおよび縮合環
誘導体を含むこれらそれぞれの誘導体があるが、これらに限定されない。
【0069】 本明細書に示した伝導性オリゴマーでは、gが1のとき、B−Dは2つの原子
または化学部分をつなげる結合である。好ましい実施態様では、B−Dは、重複
または共役π軌道を含有する共役結合である。
【0070】 好ましいB−D結合は、アセチレン(−C≡C−、アルキンまたはエチンとも
呼ばれる)、アルケン(−CH=CH−、エチレンとも呼ばれる)、置換アルケン(
−CR=CR−、−CH=CR−および−CR=CH−)、アミド(−NH−CO
−および−NR−CO−または−CO−NH−および−CO−NR−)、アゾ(−
N=N−)、エステルおよびチオエステル(−CO−O−、−O−CO−、CS−
O−および−O−CS−)および他の共役結合(−CH=N−、−CR=N−、−
N=CH−および−N=CR−)、(−SiH=SiH−、−SiR=SiH−、−S
iH=SiR−、およびSiR=SiR−)、(−SiH=CH−、−SiR=CH−、
−SiH=CR−、−SiR=CR−、−CH=SiH−、−CR=SiH−、−C
H=SiR−および−CR=SiR−)などから選択される。特に好ましいB−D
結合は、アセチレン、アルケン、アミドおよびこれら3種の置換誘導体およびア
ゾである。とりわけ好ましいB−D結合は、アセチレン、アルケンおよびアミド
である。二重結合に結合させたオリゴマー成分は、トランスまたはシス配置、ま
たは混合型であってよい。そのため、BまたはDのいずれかは、炭素、窒素また
はケイ素を含むことができる。置換基は、上記Rのところで定義したとおりであ
る。
【0071】 構造1伝導性オリゴマーのg=0のとき、eは好ましくは1であり、D部分は
上記定義のカルボニルまたはヘテロ原子部分であり得る。
【0072】 上記Y環のように、どの単一伝導性オリゴマー内でも、B−D結合(またはg=
0のときD部分)は、全て同じでもよく、または少なくとも1つが異なっていて
もよい。例えば、mが0のとき、末端B−D結合は、アミド結合であることがで
き、残りのB−D結合はアセチレン結合であることができる。一般に、アミド結
合が存在するとき、アミド結合はできるだけ少ない方が好ましいが、ある実施態
様では、全てのB−D結合がアミド結合である。よって、上記Y環のところで概
略説明したとおり、単層内ではある一つの型のB−D結合が伝導性オリゴマー中
に下記のように存在でき、そして、単層レベル上に別の型のB−D結合、例えば
核酸が伝導性オリゴマーを介して結合している場合核酸ハイブリダイゼーション
により大きな柔軟性を与えるために存在できる。
【0073】 本明細書に示した構造中、nは1から50の整数であるが、より長いオリゴマ
ーもまた使用できる(例えば、Schumm et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 19
94 33(13): 1360参照)。理論に縛られることなく、表面上での効率のよい核酸ハ
イブリダイゼーションのためには、ハイブリダイゼーションが表面から少し離れ
て起こるべきであり、ハイブリダイゼーション速度は、特に200から300塩
基対の長いオリゴヌクレオチドの場合、表面からの距離の関数として上昇すると
思われる。従って、核酸が伝導性オリゴマーを介して結合しているとき、以下で
より詳しく記すように、伝導性オリゴマーの長さは、その核酸の最も近いヌクレ
オチドが電極表面から約6Åから約100Å(但し、500Åまでの距離が使用
できる)に位置するような長さであり、約15Åから約60Åが好ましく、約2
5Åから約60Åも好ましい。従って、nは芳香族基のサイズ応じて変わるが、
一般に、約1から約20であって、約2から約15が好ましく、約3から約10
が特に好ましい。
【0074】 本明細書に示した構造中、mは0または1のいずれかである。つまり、mが0
のとき、伝導性オリゴマーの末端には、B−D結合またはD部分があり、即ち、
D原子が直接的かまたはリンカーを介するかのいずれかで核酸に結合している。
ある実施態様では、例えば、伝導性オリゴマーを核酸のリボース−ホスフェート
主鎖のホスフェートに結合させるとき、伝導性オリゴマーと核酸の間に結合させ
たリンカーなどの別の原子があってもよい。更に、下記に概略説明するとおり、
D原子は、アミノ修飾リボースの窒素原子であり得る。あるいは、mが1のとき
、伝導性オリゴマーの末端にはY、芳香族基があり、即ち、その芳香族基は、核
酸またはリンカーに結合している。
【0075】 当業者には明らかなように、多数の伝導性オリゴマーが利用できる。これらは
、例えば、縮合芳香族環または、−(CF)−、−(CHF)−および−(C
FR)−などのテフロン(登録商標)様オリゴマーを含む化合物などの当分野で
知られている他の伝導性オリゴマーと同じく、構造1や構造8式の範囲内にある
伝導性オリゴマーを含む。例えば、Schumm et al., Angew. Chem. Int. Ed. Eng
l. 33: 1361 (1994); Grosshenny et al., Platinum Metals Rev. 40 (1): 26-3
5 (1996); Tour, Chem. Rev. 96: 537-553 (1996); Hsung et al., Organometal
lics 14: 4808-4815 (1995);およびここに引用されている文献参照、これらは全
てはっきりと出典明示により本明細書に組込まれている。
【0076】 本実施態様の特に好ましい伝導性オリゴマーは、下記である: 構造2
【化2】 構造2は、gが1のときの構造1である。構造2の好ましい実施態様には、e
が0であり、Yがピロールまたは置換ピロールであるもの;eが0であり、Yが
チオフェンまたは置換チオフェンであるもの;eが0であり、Yがフランまたは
置換フランであるもの;eが0であり、Yがフェニルまたは置換フェニルである
もの;eが0であり、Yがピリジンまたは置換ピリジンであるもの;eが1であ
り、B−Dがアセチレンであり、Yがフェニルまたは置換フェニルであるもの(
例えば、下記構造4参照)がある。構造2の好ましい実施態様はまた、下記構造
3に示した、eが1である場合のものである:
【0077】 構造3
【化3】 構造3の好ましい実施態様は、Yがフェニルまたは置換フェニルであり、B−
Dがアゾであるもの;Yがフェニルまたは置換フェニルであり、B−Dがアセチ
レンであるもの;Yがフェニルまたは置換フェニルであり、B−Dがアルケンで
あるもの;Yがピリジンまたは置換ピリジンであり、B−Dがアセチレンである
もの;Yがチオフェンまたは置換チオフェンであり、B−Dがアセチレンである
もの;Yがフランまたは置換フランであり、B−Dがアセチレンであるもの;Y
がチオフェンまたはフラン(または置換チオフェンまたはフラン)であり、B−D
がアルケンおよびアセチレン交互の結合であるものである。
【0078】 本明細書に示した構造の殆どが構造3の伝導性オリゴマーを利用している。し
かしながら、どの構造3オリゴマーも、本明細書中の他の構造、即ち構造1また
は8オリゴマー、または他の伝導性オリゴマーで置換でき、かかる構造3の使用
は、本発明の範囲を限定する意味を持たない。
【0079】 構造3の特に好ましい実施態様は、下記の構造4、5、6および7を含む: 構造4
【化4】 構造4の特に好ましい実施態様には、nが2であり、mが1であり、Rが水素
であるもの;nが3であり、mが0であり、Rが水素であるもの、および溶解度
を高めるためのR基の使用がある。
【0080】 構造5
【化5】 構造5のようにB−D結合がアミド結合であるとき、伝導性オリゴマーは、擬
似ペプチドオリゴマーである。構造5中のアミド結合は、カルボニルを左側にし
て、即ち、CONH−で示すが、逆、即ち−NHCO−も使用できる。構造17
の特に好ましい実施態様には、nが2であり、mが1であり、Rが水素であるも
の;nが3であり、mが0であり、Rが水素であるもの(この実施態様では、末
端窒素(D原子)はアミノ修飾リボースの窒素であり得る)、および溶解度を高め
るためのR基の使用がある。
【0081】 構造6
【化6】 構造6の好ましい実施態様には、第一のnが2であり、第二のnが1であり、
mが0であり、全てのR基が水素であるもの、または溶解度を高めるためのR基
の使用がある。
【0082】 構造7
【化7】 構造7の好ましい実施態様には、第一のnが3であり、第二のnが1−3であ
り、mが0または1のいずれかであるもの、および溶解度を高めるためのR基の
使用がある。
【0083】 好ましい実施態様では、伝導性オリゴマーは、構造8で示した構造を持つ: 構造8
【化8】 この実施態様では、Cは炭素原子であり、nは1から50の整数であり、mは
0または1であり、Jは酸素、窒素、ケイ素、リン、硫黄、カルボニルまたはス
ルホキシドからなる群から選択されるヘテロ原子であり、Gはアルカン、アルケ
ンまたはアセチレンから選択される結合であって、2つの炭素原子と一緒になっ
てC−G−C基がアルケン(−CH=CH−)、置換アルケン(−CR=CR−)ま
たはそれらの混合物(−CH=CRまたは−CR=CH−)、アセチレン(−C≡
C−)またはアルカン(−CR−CR−、Rは水素または本明細書に記載の置
換基のいずれかである)であるようにする。各サブユニットのG結合は、他のサ
ブユニットのG結合と同一かまたは異なっていてもよく、つまり、アルケンとア
セチレン結合が交互にあるオリゴマーが使用できる。しかしながら、Gがアルカ
ン結合であるとき、オリゴマー中のアルカン結合数は最小に維持すべきであり、
伝導性オリゴマー当りシグマ結合約6以下が好ましい。アルケン結合が好ましく
、本明細書に総括的に示しているが、アルカンおよびアセチレン結合は、当業者
には明らかなように、本明細書に記載したどの構造または実施態様でも置換でき
る。
【0084】 ある実施態様では、例えば、ETMが存在しないとき、m=0ならば少なくと
も1つのG結合はアルカン結合である。
【0085】 好ましい実施態様では、構造8のmは0である。特に好ましい実施態様では、
構造9に示したように、mは0であり、Gはアルケン結合である: 構造9
【化9】 構造9のアルケンオリゴマーおよび本明細書に示した別のものは、一般に、好
ましいトランス配置で示しているが、シスまたはトランスとシスの混合したオリ
ゴマーも使用できる。上記のように、R基を加えて、電極上での組成物のパッキ
ング、オリゴマーの親水性または疎水性、およびオリゴマーの柔軟性、即ち、回
転、ねじれ、または縦の柔軟性を変えることができる。nは上記定義のとおりで
ある。
【0086】 好ましい実施態様では、Rは水素であるが、Rはアルキル基およびポリエチレ
ングリコールまたは誘導体であってもよい。
【0087】 別の実施態様では、伝導性オリゴマーは、異なる型のオリゴマー、例えば、構
造1や8の混合物であってもよい。
【0088】 伝導性オリゴマーは末端基を有していても有していなくてもよい。従って、好
ましい実施態様では、余分な末端基がなく、伝導性オリゴマーはその末端が、例
えばアセチレン結合などのB−D結合のような基の1つで終る構造1から9を示
す。あるいは、好ましい実施態様では、本明細書中でしばしば“Q”として示す
末端基を加える。末端基はいくつかの理由、例えば、ETMの検出用の伝導性オ
リゴマーの電子的利用可能性を改善するために、またはSAMの表面を例えば非
特異的結合を防ぐなどの他の事由によって変えるために、使用することができる
。例えば、標的被検体が核酸である場合、ハイブリダイゼーションを促進するた
めに、末端で陰性に荷電した基として陰性荷電表面を形成させ、核酸がDNAま
たはRNAである場合、核酸が表面上に着地するのに反発するか、妨げるように
し得る。好ましい不動態化剤末端基は、−NH、−OH、−COOH、−CH 等のアルキル基、および、(ポリ)エチレングリコールのような(ポリ)アルキル
オキサイドを含み、−OCHCHOH、−(OCHCHO)H、−(O
CHCHO)H、および−(OCHCHO)Hが好ましい。
【0089】 一実施態様において、異なるタイプの末端基を有する伝導性オリゴマーの混合
物を使用することが可能である。従って、例えば、いくつかの末端基は検出を容
易にし、いくつかは非特異的結合を防止し得る。
【0090】 単層は異なる伝導性オリゴマー種を含み得るが、適度に同一なSAMが形成さ
れ得るように、異なる種を選択するのが好ましいことが、理解されるであろう。
従って、例えば、核酸などの捕獲結合リガンドを伝導性オリゴマーを用いて電極
に共有結合させるとき、1つのタイプの伝導性オリゴマーを使用して核酸を結合
させ、別のタイプをSAM中で用いることは可能である。同様に、異なる長さの
伝導性オリゴマーの混合物を単層に有して、非特異的シグナルの減少を促進する
のが望ましい。従って、例えば、好ましい実施態様は、単層の残部の表面下、つ
まり使用されているなら、絶縁層の下で、または他の伝導性オリゴマーの特定の
フラクション下で終わる伝導性オリゴマーを利用する。同様に、異なる伝導性オ
リゴマーを使用して、単層の形成を容易にしたり、別の特性を持つ単層をつくる
こともできる。
【0091】 好ましい実施態様において、単層はさらに絶縁部を含み得る。本明細書におけ
る“絶縁体”とは、実質的に非伝導性オリゴマーを意味し、好ましくは線状であ
る。本明細書において、“実質的に非伝導性”とは、絶縁体が100Hzで電子
を伝達しないことを意味する。絶縁体を介した電子伝達の比率は、好ましくは本
明細書に記載の伝導性オリゴマーを介した比率よりも遅い。
【0092】 好ましい実施態様において、絶縁体は、約10−7Ω−1cm−1以下の導電率
Sを有し、約10−8Ω−1cm−1より低いのが好ましい。一般にGardner et a
l.前掲を参照。
【0093】 通常、絶縁体はシグマ結合を有する、アルキルまたはヘテロアルキルオリゴマ
ーまたは部分であるが、いずれの具体的な絶縁体分子も芳香族基または1以上の
共役結合を含み得る。本明細書において“ヘテロアルキル”とは、少なくとも1
つのヘテロ原子、つまり鎖に含まれた窒素、酸素、硫黄、リン、シリコンまたは
ホウ素を有するアルキル基を意味する。あるいは、絶縁体は、好ましくは電子伝
達を実質的に阻害するかまたは遅らせる1以上のヘテロ原子または結合を添加し
た伝導性オリゴマーと非常に類似であり得る。
【0094】 適切な絶縁体は当業者に既知であり、−(CH)n−、−(CRH)n−および
−(CR2)n−、エチレングリコールまたは酸素の代わりの他のヘテロ原子、つ
まり窒素または硫黄(電極が金のとき、硫黄誘導体は好ましくない)を用いる誘導
体を含むが、これらに限定しない。
【0095】 伝導性オリゴマーについて、絶縁体は本明細書に定義のR基で置換され得、電
極でのその部分または伝導性オリゴマーのパッキング、絶縁体の親水性または疎
水性、および絶縁体の柔軟性、すなわち回転の、捩れのまたは縦の柔軟性を変え
る。例えば、分枝アルキル基を使用し得る。同様に、上記概説のように絶縁体は
特に単層の表面に作用する末端基を含み得る。
【0096】 単層をつくる種の長さは必要に応じて変化する。上記に概説のように、標的被
検体の結合(例えば核酸のハイブリダイゼーション)は、表面から離れてより有効
であるように見える。核酸が結合する種(下記に概説のように、これらは絶縁体
または伝導性オリゴマーのいずれかであり得る)は、基本的に単層を形成する種
と同じ長さかそれらより長く、捕獲結合リガンドがハイブリダイゼーションのた
めの溶媒により接近可能となる。いくつかの実施態様において、捕獲結合リガン
ドが結合する伝導性オリゴマーは単層より短い。
【0097】 当業者には明らかなように、単層をつくる異なる種の、実際の組合せと比率は
、そしてメカニズム−1またはメカニズム−2の何れが使用されている。一般に
、メカニズム−2システムでは3成分システムが好ましく、第一の種は、種を含
有する捕獲プローブを含み、絶縁体または伝導性オリゴマーのいずれかを介して
電極に結合している。第二の種はFES、好ましくは伝導性オリゴマー、であり
、第三の種は絶縁体である。この実施態様において、第一の種は約90%から約
1%を含み得、約20%から約40%が好ましい。約30%から約40%が短い
オリゴヌクレオチド標的に特に好ましく、約10%から約20%が長い標的に好
ましい。第二の種は約1%から約90%を含み得、約20%から約90%が好ま
しく、約40%から約60%が特に好ましい。第三の種は約1%から約90%を
含み得、約20%から約40%が好ましく、約15%から約30%が特に好まし
い。これらの近似比率を達成するための、SAM構成溶媒中の第一:第二:第三
の種の好ましい比率は、短い標的については2:2:1、長い標的については1
:3:1であり、全チオール濃度(これらの種との結合に使用する場合、以下で
詳記)は、500μMから1mMの範囲および833μMが好ましい。
【0098】 あるいは、第一種および第二種を含む2成分システムを使用することができる
。ある実施態様では、メカニズム−1またはメカニズム−2のシステムの何れか
での使用する、2成分は第一および第二の種である。この実施態様において、第
一の種は約1%から約90%を含み得、約10%から約40%が好ましく、約1
0%から約40%が特に好ましい。第二の種は約1%から約90%を含み得、約
10%から約60%が好ましく、約20%から約40%が特に好ましい。 あるいは、メカニズム−1システムでは、2成分は第一および第三の種である
。この実施態様において、第一の種は約1%から約90%を含み得、約10%か
ら約40%が好ましく、約10%から約40%が特に好ましい。第二の種は約1
%から約90%を含み得、約10%から約60%が好ましく、約20%から約4
0%が特に好ましい。
【0099】 好ましい実施態様として、水性溶液中でSAMの析出を行なう。Steel et al.
, Anal. Chem. 70: 4670 (1998), Herne et al., J. Am. Chem. Soc. 119:8916
(1997)およびA. J. Bard, Electroanalytical Chemistry: A Series of Advance
s, Vol. 20. Dekker N.Y. 1996-のFinklea, Electrochemistry of Organized mo
nolayers of Thiols and Related molecules on Electrodesに概略説明されてい
るように、SAM形成種の析出を水性溶液(しばしば塩を含む)から行なうことが
できる(これらすべては出典明示により本明細書に組込む)。
【0100】 伝導性オリゴマーと絶縁体の電極への共有結合は、様々な方法で達成され、使
用する電極、および絶縁体と伝導性オリゴマーの組成に依存する。好ましい実施
態様として、本明細書に記載のヌクレオシドまたは核酸と共有結合した結合リン
カーは、電極に共有結合している。従って、結合リンカーの一方の端または末端
がヌクレオシドまたは核酸に結合しており、もう一方が電極に結合している。あ
る実施態様において、結合リンカーが末端以外の位置で結合するか、またはさら
に、分枝結合リンカーが一方の末端で電極に結合し、他の末端で2またはそれ以
上のヌクレオシドに結合するのが望ましいことであるが、これは好ましくない。
同様に、一般に構造11−13に記載されるように、結合リンカーは2つの部位
で電極に結合し得る。一般に構造10でAとして下記に示すように、あるタイプ
のリンカーが使用される。構造10において、“X”は伝導性オリゴマー、“I
”は絶縁体であり、斜線の表面は電極である:
【0101】
【化10】
【0102】 本実施態様において、Aはリンカーまたは原子である。“A”の選択は、電極
の特徴に一部依存する。従って、例えば、Aは、金電極を使用する場合、硫黄部
である。あるいは、酸化金属電極を使用するとき、Aはオキサイドの酸素に結合
したシリコン(シラン)部である(例えば、Chen et al., Langmuir 10: 3332-3337
(1994); Lenhard et al., J. Electroanal. Chem. 78: 195-201 (1977)参照、
両方とも出典明示により本明細書の一部とする)。炭素ベースの電極を使用する
とき、Aはアミノ部である(好ましくは、1級アミン;例えば、Deinhammer et a
l., Langmuir 10: 1306-1313 (1994)参照)。従って、好ましいA部は、シラン部
、硫黄部(アルキル硫黄部を含む)およびアミノ部を含むが、これらに限定されな
い。好ましい実施態様において、当分野で既知のようなレドックスポリマーとの
エポキシドタイプ結合は使用しない。
【0103】 本明細書には一つの部分としてしか記載していないが、絶縁体および伝導性オ
リゴマーは、1個以上の“A”部で電極と結合し得る;“A”部は同一または異
なり得る。従って、例えば、電極が金電極であり、“A”が硫黄原子または部分
であるとき、一般に下記構造11、12および13に記載のように、複数の硫黄
原子が、電極に伝導性オリゴマーを結合させるのに使用し得る。当業者に認めら
れるように、このような他の構造が製造できる。構造11、12および13にお
いて、A部は硫黄原子だけであるが、置換硫黄部も使用し得る。
【0104】
【化11】
【0105】
【化12】
【0106】
【化13】
【0107】 構造13と同様に、3つの硫黄部が電極に結合している一つの炭素原子で終了
する伝導性オリゴマーを有することが可能であることも留意すべきである。さら
に本明細書に必ずしも記載されていないが、伝導性オリゴマーと絶縁体はまた“
Q”末端基を含み得る。
【0108】 好ましい実施態様において、電極は金電極であり、結合は当分野で既知のよう
に硫黄結合を介しており、すなわち、A部は硫黄原子または部分である。金−硫
黄結合の正確な特徴は知られていないが、この結合は本発明の目的で、共有結合
と考える。代表的な構造は構造3の伝導性オリゴマーを用いて構造14に記載す
るが、本明細書に記載のすべての構造について、いずれの伝導性オリゴマーまた
は伝導性オリゴマーの組合せも使用し得る。同様にいずれの伝導性オリゴマーま
たは絶縁体も本明細書に記載の末端基を含み得る。構造14は、“A”リンカー
が硫黄原子のみを含むように記載しているが、他の原子も存在し得る(すなわち
、硫黄から伝導性オリゴマーへのまたは置換基へのリンカー)。 さらに、構造14は、Y芳香族基に結合した硫黄原子を表わしているが、当業
者に明らかであろうように、B−D基(すなわち、アセチレン)と同様に結合した
ものであってもよい。
【0109】
【化14】
【0110】 一般的には、チオール結合が好ましい。
【0111】 好ましい実施態様において、電極は炭素電極、すなわち、ガラス状炭素電極で
あり、結合はアミン基の窒素原子を介している。代表的な構造を構造15に示す
。また別の原子が存在し得、すなわち、ZタイプリンカーおよびXまたは末端基
であり得る。
【0112】
【化15】
【0113】
【化16】
【0114】 構造16において、酸素原子は金属酸化物電極の酸化物からのものである。S
i原子は他の原子を含んでもよく、すなわち、置換基含有の珪素部分であっても
よい。他の電極に対するSAMの他の付着は技術上既知である;例えば、インジ
ウム酸化スズ電極に対する付着、およびインジウム酸化スズ電極に対するリン酸
エステルの化学吸着についてはナピエールら(Napier et al., Langmuir, 1997)
の文献参照(CHI会議(1998年5月4〜5日)でのホールデン・ソープ(
H. Holden Thorpe)の講演)。
【0115】 本発明のSAMは種々の方法、例えば、有機溶液からの析出および水性溶液か
らの析出などにより作製し得る。本明細書にて概説した方法では、例として金電
極を使用するが、当業者が認めるように、他の金属および方法も同様に使用し得
る。好適な一態様においては、インジウム−スズ−酸化物(ITO)が電極とし
て用いられる。
【0116】 好適な態様において、金表面は先ず洗浄する。様々な洗浄手法が採用可能であ
り、例えば、これらに限定されるものではないが、化学的洗浄またはエッチング
用試薬(ピランハ(Piranha)溶液(過酸化水素/硫酸)または王水(塩酸/硝
酸))、電気化学的方法、火炎処理、プラズマ処理またはそれらの併用などであ
る。
【0117】 洗浄に続いて、金基板はSAM種に露呈する。電極がITOである場合、SA
M種はリン酸エステル含有種である。この処理も様々な方法で実施し得るもので
あり、例えば、溶液析出、気相析出、微小接触プリンティング、スプレー析出、
ニート成分を用いる析出などであるが、これらに限定されるものではない。好適
な態様では、溶液中で種々のSAM種、一般にはチオール含有種の混合物を含む
析出溶液を利用する。標的被検体、特にDNAを含む混合単層は通常2工程手法
を用い調製する。チオール化DNAは(一般に少なくとも1種の他の単層形成種
の存在下)最初の析出工程に際し析出し、混合単層形成はDNAを含まない第二
チオール溶液を加える第二工程の間に完結する。第二工程は多くの場合、単層再
構成を促進するための緩和な加熱を含む。
【0118】 好適な態様において、析出溶液は有機析出溶液である。この態様において、清
浄金表面は清浄バイアル中に入れる。有機溶媒中の結合リガンド析出溶液は、総
チオール濃度がマイクロモルと飽和の間にあるように調製する;好適な範囲は約
1μMないし10mMであり、特に好ましくは約400μMないし1.0mMで
ある。好適な態様において、析出溶液はチオール修飾DNA(すなわち、付着リ
ンカーに付着した核酸)およびチオール希釈分子(電導性オリゴマーまたは絶縁
体であるが、後者が好ましい)を含有する。DNAと希釈剤(もしあるとすれば
)との比は通常1000:1と1:1000との間であり、好ましくは約10:
1ないし約1:10であり、特に好ましいのは1:1である。好適な溶媒はテト
ラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)
、エタノール、またはその混合物である;一般に、捕獲リガンドを溶解するのに
十分な極性の溶媒であれば、その溶媒が表面と反応するような官能基をもたない
限り、使用可能である。十分なDNA析出溶液をバイアルに加えて電極の表面を
完全に蔽うようにする。この金基板は外界温度または外界温度より少し高い温度
で、数秒ないし数時間、好ましくは5分ないし30分間インキュベートする。最
初のインキュベーション後、析出溶液を取出し、希釈分子のみの有機溶媒溶液(
約1μMないし10mM,好ましくは約100μMないし約1.0mM)を添加す
る。金基板は室温または室温以上の温度で所定時間(数秒ないし数日、好ましく
は約10分ないし約24時間)インキュベートする。金サンプルを溶液から取出
し、清浄な溶媒にすすいで使用する。
【0119】 好適な態様においては、水性析出溶液を用いる。上記のように、清浄金表面を
清浄バイアル内に入れる。DNAの析出水性溶液は総チオール濃度が約1μMと
10mMの間、好ましくは約1μMないし200μMであるように調製する。水
性溶液は多くの場合、塩を存在させている(飽和まで、好ましくは約1Mである
)が、精製水が使用し得る。析出溶液はチオール修飾DNAおよびしばしばチオ
ール希釈分子を含有する。DNAと希釈剤との比は通常1000:1と1:10
00との間であり、好ましくは約10:1ないし約1:10であり、特に好まし
いのは1:1である。DNA析出溶液は電極の表面を完全に蔽うような容量でバ
イアルに加える。この金基板を外界温度または外界温度より少し高い温度で1〜
30分間インキュベートするが、通常5分で十分である。最初のインキュベーシ
ョン後、析出溶液を取出し、希釈分子のみ(10μMないし1.0mM)の水性
溶液または有機溶媒溶液を添加する。金基板は室温または室温以上の温度で、完
全な単層が形成されるまで(10分〜24時間)インキュベートする。金サンプ
ルを溶液から取出し、清浄な溶媒にすすいで使用する。
【0120】 好適な態様においては、本明細書に説明するように、回路基板が金電極用の基
板として使用される。金表面上SAMの形成は、先ず基板を、本明細書に記載の
ように、例えば、10%硫酸溶液中30秒間、デタージェント溶液、王水、プラ
ズマなどで清浄とすることにより一般に実施する。硫酸処理に続いて、基板は、
例えば、2個のミリ−Q水浴にそれぞれ1分間浸漬することにより洗浄する。こ
の基板を次いで、例えば、窒素気流下に乾燥する。基板上に析出溶液をスポット
するには、相当数の既知スポット・システムを用い、一般には基板をX−Yテー
ブル上に置き、調湿チャンバー中で実施する。スポット滴のサイズは基板上の電
極サイズと溶液送達に使用する器具により変わる;例えば、250μMサイズの
電極では、30ナノリットルの液滴が用いられる。この容量は電極表面を完全に
蔽うのに十分でなければならない。液滴は室温で所定時間(秒ないし一夜である
が、5分間が好適)インキュベートし、次いでミリ−Q水浴中ですすぐことによ
り液滴を除去する。基板は次いで、好ましくは、第二析出溶液、一般に有機溶媒
、好ましくはアセトニトリル中に絶縁体を含んでなる溶液により、45℃の浴に
浸漬することによって処理する。30分後、基板を取出し、アセトニトリル浴に
30秒間浸漬し、次いでミリ−Q水浴中30秒間浸漬する。基板を窒素気流下に
乾燥する。
【0121】 好適な態様においては、検出電極はさらに捕獲結合リガンド、好ましくは共有
結合付着したリガンドを含む。本明細書において“結合リガンド”または“結合
種”とは、標的被検体の存在を探査するために用いる化合物であって、標的被検
体に結合する化合物を意味する。一般に、本明細書に記載された態様の殆どにつ
いて、標的被検体1分子当たり少なくとも2つの結合リガンドが存在する;すな
わち、本明細書に記載の検出電極に付着する“捕獲”または“アンカー”結合リ
ガンド(本明細書では、特に核酸結合リガンドに関して“捕獲プローブ”という
)および可溶性結合リガンドであって、標的被検体に独立に結合し、直接または
間接に少なくとも1個のETMを含んでなるリガンドである。
【0122】 一般に、捕獲結合リガンドは検出を目的として、検出電極に標的被検体が付着
するのを可能とする。以下により詳細に説明するように、標的被検体が捕獲結合
リガンドに付着するのは直接的(すなわち、標的被検体が捕獲結合リガンドに付
着する)または間接的(1種以上の捕獲エクステンダーリガンドを使用し得る)
であってもよい。
【0123】 好適な態様において、結合は特異的であり、結合リガンドは結合対の部分であ
る。本明細書において“特異的に結合”とは、該リガンドが、試験サンプルの被
検体と他の成分または混入物とを識別するのに十分な特異性もって被検体に結合
することを意味する。しかし、当業者には明らかなように、それ程特異的ではな
い結合を用いても被検体を検出することが可能である;例えば、このシステムに
は異なる結合リガンド、例えば、異なるリガンドのアレイを使用でき、特定のど
の被検体の検出も、結合リガンドのパネルへの結合の“サイン”を介するが、こ
れは“電子の鼻”が作用する様式に類似している。この結合は、被検体が非特異
結合を除去するための洗浄工程を含むアッセイの条件下でも結合したままである
ために十分なものでなければならない。ある態様においては、例えば、ある生体
分子の検出では、結合リガンドに対する被検体の結合定数は少なくとも約10 〜10−1であり、好ましくは約10ないし10−1であり、そして
特に好ましいのは約10〜10−1である。
【0124】 当業者には明らかなように、結合リガンドの組成は標的被検体の組成に依存す
る。広範な被検体に対する結合リガンドが既知であるか、または既知技法を用い
て容易に見出すことができる。例えば、被検体が一本鎖核酸である場合、結合リ
ガンドは、一般に、実質上相補性核酸であろう。あるいは、米国特許第5,270,16
3、5,475,096、5,567,588、5,595,877、5,637,459、5,683,867、5,705,337、お
よび出典明示により明細書に組込まれている関連特許に概略説明されている通り
、核酸 “アプトマー(aptomer)”を、任意の標的被検体と実質的に結合させるた
めに発生させることができる。同様に、被検体は核酸結合タンパク質であっても
よく、捕獲結合リガンドは一本鎖または二本鎖核酸である;あるいは、結合リガ
ンドは、被検体が一本鎖または二本鎖核酸である場合、核酸結合タンパク質であ
ろう。被検体がタンパク質である場合、結合リガンドは、タンパク質(とりわけ
、それらの抗体またはフラグメント(FAbsなど)を含む)、小分子、または上
記したアプトマーを含む。好適な結合リガンドタンパク質はペプチドを包含する
。例えば、被検体が酵素である場合、適切な結合リガンドは基質、阻害剤、およ
び酵素と結合する他のタンパク質(すなわち、多重酵素(またはタンパク質)複合
体の成分)を包含する。当業者には明らかなように、会合する任意の2つの分子
を、被検体としてかまたは結合リガンドとして、好ましくは特異的に、使用し得
る。適切な被検体/結合リガンド対は、抗体/抗原、受容体/リガンド、タンパ
ク質/核酸;核酸/核酸、酵素/基質および/または阻害剤、炭水化物(糖タン
パク質および糖脂質を含む)/レクチン、炭水化物と他の結合パートナー、タン
パク質/タンパク質;およびタンパク質/小分子などを含むが、これらに限定さ
れるものではない。これらは野生型または誘導配列であってもよい。好適な態様
において、結合リガンドは多量化することの知られる細胞表面受容体、例えば、
成長ホルモン受容体、グルコース輸送体(特にGLUT4受容体)、トランスフ
ェリン受容体、表皮成長因子受容体、低密度リポタンパク質受容体、高密度リポ
タンパク質受容体、レプチン受容体、インターロイキン受容体(IL−1、IL
−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−
9、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、およびIL−17受容
体を含む)、VEGF受容体、PDGF受容体、EPO受容体、TPO受容体、
毛様神経栄養因子受容体、プロラクチン受容体、およびT細胞受容体などの部分
である。同様に、結合化学方法に基づく、結合パートナーの発展に関係する多く
の文献がある。
【0125】 本実施態様において、結合リガンドが核酸である場合、好ましい組成と技術は
WO98/20162;PCT/US98/12430;PCT/US98/12082;PCT/US99/01705;PCT/US99/0
1703;およびU.S.S.N.s 09/135,183;60/105,875および09/295,691に概略説明さ
れており、これらすべては出典明示により本明細書の一部とする。
【0126】 捕獲結合リガンドを付着リンカー(絶縁体または伝導性オリゴマーの何れか)に
付着させる方法は、一般に当該技術分野で知られているように実施されるが、付
着リンカーの組成と捕獲結合リガンドの両方に左右される。一般に、捕獲結合リ
ガンドは官能基の使用を経て付着リンカーに付着させるが、各官能基は次いで付
着に用い得るものである。付着に好適な官能基は、アミノ基、カルボキシ基、オ
キソ基およびチオール基である。これらの官能基は次いで直接または間接的に本
明細書では“Z”で表すリンカーの使用を経て付着させ得る。リンカーは当技術
分野でよく知られている;例えば、ホモ−またはヘテロ−二官能性リンカーがよ
く知られたものである(参照:1994ピアース・ケミカル・カンパニーカタロ
グ、架橋に関する技術の項、155〜200頁;出典明示により本明細書の一部
とする)。好適なZリンカーは、アルキル基(置換アルキル基およびヘテロ原子
部分を含むアルキル基)、短鎖アルキル基を有するエステル、アミド、アミン、
エポキシ基およびエチレングリコール、および好ましい誘導体などであり、プロ
ピル、アセチレン、およびCアルケンがとりわけ好ましいが、これらに限定さ
れるものではない。Zはスルホンアミドを形成するスルホン基であってもよい。
【0127】 この様式で、タンパク質、レクチン、核酸、小型有機分子、炭水化物などを含
む捕獲結合リガンドを付加し得る。
【0128】 好適な態様ではタンパク質性の捕獲結合リガンドを利用する。当技術分野で知
られているように、相当数の技法がタンパク質性の捕獲結合リガンドを付着リン
カーに付着させるのに使用し得る。ある部分をタンパク質に付加させるための広
範な技術が知られている。
【0129】 好適な態様では核酸を捕獲結合リガンドとして利用する。当業者には明らかな
ように、下記概説の幾つかの方法を、同様の方法で非核酸システムに同じように
適用することができる。
【0130】 核酸捕獲結合リガンドは、伝導性オリゴマー(メカニズム−1システム)である
か、または絶縁体を介している“付着リンカー”を介して電極に共有結合により
付着している。本明細書において“共有結合により付着した”とは、2つの部分
が少なくとも1つの結合により付着していることを意味し、該結合はシグマ結合
、パイ結合および配位結合を包含する。
【0131】 このようにして、付着リンカーの一端を核酸(あるいは他の結合リガンド)に付
着させ、他端(当業者が認めるところであるが、いずれの場合にも正確な末端で
ある必要はない)を電極に付着させる。このように、本明細書中に描出した構造
のいずれもさらに末端基として有効な核酸を含み得る。このように、本発明は、
下記構造17に一般的に描出したように、電極に共有結合により付着した核酸を
含む組成物を提供する。
【0132】
【化17】
【0133】 構造17において、左側の斜線記号は、電極を表す。本明細書に定義するよう
に、Xは伝導性オリゴマーであり、Iは絶縁体である。Fは、電極および伝導
性オリゴマーまたは絶縁体の共有結合をもたらす結合であり、本明細書に記載さ
れ、例えば下記に“A”と定義されるように、結合、原子またはリンカーを含む
。Fは、核酸に伝導性オリゴマーまたは絶縁体を共有結合させる結合であり、
本明細書に記載のように結合、原子または結合であり得る。Fは伝導性オリゴ
マーの一部、絶縁体の一部、核酸の一部であり得、または例えば本明細書で“Z
”について定義するように両方に外因性であり得る。
【0134】 好適な態様において、捕獲プローブ核酸は伝導性オリゴマーを介して電極に共
有結合により付着している。核酸と伝導性オリゴマーの共有結合付着は、幾つか
の方法で達成することができる。好適な態様において、その付着は下記説明のよ
うに、ヌクレオシド塩基への付着によるか、核酸のバックボーン(リボース、リ
ン酸エステル、または核酸類似体バックボーンの類似基)への付着によるか、ま
たは遷移金属リガンドへの付着による。下に概説する技法は一般に天然に存在す
る核酸について説明しているが、当業者も認めるように、同様の技法は核酸類似
体にも使用し得、そして幾つかの場合では他の結合リガンドを使用することがで
きる。
【0135】 好適な態様において、伝導性オリゴマーは核酸のヌクレオシド塩基に付着させ
る。これは下記説明のように、オリゴマーの種類に応じて幾つかの方法で実施し
得る。一態様において、オリゴマーは末端のヌクレオシド、すなわち、核酸の3
’または5’ヌクレオシドに付着させる。あるいは、伝導性オリゴマーを内部ヌ
クレオシドに付着させる。
【0136】 塩基への付着点は塩基により異なる。一般に、いずれの位置での付着も可能で
ある。一部の態様では、例えば、ETMを含むプローブがハイブリダイゼーショ
ン(すなわち、メカニズム−1システム)に使用される場合、相補塩基の水素結合
に関与しない位置に付着させるのが好ましい。このように、例えば、一般に付着
はウリジン、シトシンおよびチミンなどのピリミジン類の5または6位置に対す
るものである。アデニンおよびグアニンなどのプリン類については、結合は、好
ましくは8位置を介する。非標準の塩基に対する付着は、相当する位置で好適に
なされる。
【0137】 一態様において、付着は直接的である;すなわち、伝導性オリゴマーと塩基の
間に介在する原子はない。この態様において、例えば、末端アセチレン結合を有
する伝導性オリゴマーを塩基に直接付着させる。構造18はこの結合の一例であ
り、ここでは構造3の伝導性オリゴマーと塩基としてウリジンを使用しているが
、当業者も認めるように、他の塩基と伝導性オリゴマーを使用することもできる
【0138】
【化18】
【0139】 本明細書に示したペントース構造には、水素、ヒドロキシ、ホスフェートまた
はアミノ基などの他の基が結合していることに留意すべきである。更に、本明細
書に示したこのペントースおよびヌクレオシド構造は、通常表現の鏡像として非
慣用的に示す。更に、ペントースおよびヌクレオシド構造はまた、任意の位置に
、例えば、合成中に必要に応じて、保護基などの新たな基を含有できる。
【0140】 加えて、塩基は、必要に応じて更なる修飾を含むこともあり、即ち、カルボニ
ルまたはアミン基を変更したり、保護することもできる。
【0141】 別の実施態様では、結合は、一般に、塩基としてウリジンおよび構造3のオリ
ゴマーを用いる構造19に示したように、アミドおよびアミン結合を含む、多く
の異なるZ−リンカーを介する:
【0142】
【化19】
【0143】 この実施態様では、Zはリンカーである。好ましくは、Zは約1から約10原
子の短いリンカーであり、1から5原子が好ましく、アルケン、アルキニル、ア
ミン、アミド、アゾ、イミンなどの結合を含有してもよく、含有しなくてもよい
。リンカーは当分野では知られており、例えば、よく知られているとおり、ホモ
またはヘテロ二官能性リンカーである(1994 Pierce Chemical Company catalog,
technical section on cross-linker, pages 155-200参照、出典明示により本
明細書の一部とする)。好ましいZリンカーには、アルキル基(置換アルキル基
およびヘテロ原子部分を含有するアルキル基を含む)があるが、これらに限定さ
れず、好ましいのは、短いアルキル基、エステル、アミド、アミン、エポキシ基
およびエチレングリコールおよび誘導体であり、特に好ましいのは、プロピル、
アセチレンおよびC2アルケンである。Zはまた、スルホン基であってもよく、
下記のようにスルホンアミド結合を形成する。
【0144】 好ましい実施態様では、核酸と伝導性オリゴマーの結合は、核酸主鎖への結合
を介して行う。これは、リボース−ホスフェート主鎖のリボースへの結合または
主鎖のホスフェートへの結合、または類似主鎖の他の基への結合を含む多くの方
法で実施できる。
【0145】 予備事項として、下記に十分説明するように、本実施態様における結合部位は
、3'または5'末端ヌクレオチド、または内部ヌクレオチドであると理解される
べきである。
【0146】 好ましい実施態様では、伝導性オリゴマーをリボース−ホスフェート主鎖のリ
ボースへ結合させる。これは、幾つかの方法で実施できる。当分野では知られて
いるように、リボースの2'または3'位のいずれかにアミノ基、硫黄基、ケイ素
基、リン基またはオキソ基で修飾したヌクレオシドを作成できる(Imazawa et al
., J. Org. Chem., 44: 2039 (1979); Hobbs et al., J. Org. Chem. 42 (4): 7
14 (1977); Verheyden et al., J. Org. Chem. 36 (2): 250 (1971); McGee et
al., J. Org. Chem. 61: 781-785 (199); Mikhailopulo et al., Liebigs. Ann.
Chem. 513-519 (1993); McGee et al., Nucleosides & Nucleotides 14 (6): 1
329 (1995)、全て出典明示により本明細書の一部とする)。次いで、伝導性オリ
ゴマーを加えるためにこれらの修飾ヌクレオシドを用いる。
【0147】 好ましい実施態様は、アミノ修飾ヌクレオシドを利用する。このとき、これら
のアミノ修飾リボースを用いて、伝導性オリゴマーに対してアミドまたはアミン
結合を形成できる。好ましい実施態様では、アミノ基を直接リボースに結合させ
るが、当業者には明らかであるように、“Z”について記載したような短いリン
カーをアミノ基とリボースとの間に与えることができる。
【0148】 好ましい実施態様では、リボースに結合させるためにアミド結合を使用する。
好ましくは、構造1〜3の伝導性オリゴマーを用いるならば、mが0であるので
、伝導性オリゴマーの末端はアミド結合である。この実施態様では、アミノ修飾
リボースのアミノ基の窒素は、伝導性オリゴマーの“D”原子である。よって、
本実施態様の好ましい結合を、構造20に示す(構造3の伝導性オリゴマーを用
いる)。
【0149】
【化20】
【0150】 当業者には明らかなように、構造20は、アミド結合として固定された末端結
合を有する。
【0151】 好ましい実施態様では、ヘテロ原子結合、即ち、オキソ、アミン、硫黄等を用
いる。好ましい実施態様はアミン結合を利用する。また、アミド結合について上
記で概説したとおり、アミン結合の場合も構造3の伝導性オリゴマーを用いると
、アミノ修飾リボースの窒素が伝導性オリゴマーの“D”原子であり得る。よっ
て、例えば、構造21および22は、それぞれ構造3および9の伝導性オリゴマ
ーを持つヌクレオシドを示し、ヘテロ原子として窒素を用いているが、他のヘテ
ロ原子を使用することもできる:
【0152】
【化21】
【0153】 構造21では、好ましくは、mもtも0ではない。ここで好ましいZはメチレ
ン基またはその他の脂肪族アルキルリンカーである。この位置にある1、2また
は3つの炭素は特に合成の際に有用である。
【0154】
【化22】
【0155】 構造22では、Zは上記定義のとおりである。適切なリンカーには、メチレン
およびエチレンがある。
【0156】 別の実施態様では、伝導性オリゴマーを、核酸のリボース−ホスフェート主鎖
(または類似体)のホスフェートを介して核酸に共有結合させる。この実施態様で
は、結合は直接的か、またはリンカーまたはアミド結合を利用する。構造23は
、直接結合を示しており、構造24は、アミド結合を介した結合を示している(
両方とも、構造3の伝導性オリゴマーを利用しているが、構造8の伝導性オリゴ
マーも可能である)。構造23および24は、3'位の伝導性オリゴマーを示して
いるが、5'位も可能である。更に、構造23および24とも、天然のホスホジ
エステル結合を示しているが、当業者には明らかなように、ホスホジエステル結
合の非標準類似体も使用できる。
【0157】
【化23】
【0158】 構造23中、末端にYが存在する(即ちm=1)場合、Zは存在しない(即ち、
t=0)のが好ましい。末端にYが存在しない場合、Zは存在するのが好ましい
【0159】 構造24は、末端B−D結合がアミド結合であり、末端にYが存在せず、Zが
上記定義のリンカーである好ましい実施態様を示す。
【0160】
【化24】
【0161】 好ましい実施態様では、伝導性オリゴマーは、遷移金属リガンドを介して核酸
に共有結合する。本実施態様では、伝導性オリゴマーを遷移金属に1以上の配位
原子を提供するリガンドに共有結合させる。一実施態様では、下記構造25に総
括的に示したように、伝導性オリゴマーが結合するリガンドには、核酸も結合し
ている。あるいは、下記構造26に総括的に示したように、伝導性オリゴマーは
1つのリガンドに結合しており、核酸は別のリガンドに結合している。よって、
遷移金属の存在下で伝導性オリゴマーは核酸に共有結合する。これらの構造はい
ずれも構造3の伝導性オリゴマーを示しているが、その他のオリゴマーを利用す
る こともできる。構造25および26は、核酸用の2つの代表的な構造を示す:
【0162】
【化25】
【0163】
【化26】
【0164】 本明細書記載の構造中、Mは金属原子であり、遷移金属が好ましい。本発明に
使用するのに適した遷移金属はカドミウム(Cd)、銅(Cu)、コバルト(C
o)、パラジウム(Pd)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、
ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、白金(Pt)、ス
カンジウム(Sc)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)
、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(
Tc)、タングステン(W)、およびイリジウム(Ir)などであるが、これら
に限定されるものではない。すなわち、遷移金属の第一シリーズ、白金族(Ru
、Rh、Pd、Os、IrおよびPt)並びにFe、Re、W、MoおよびTc
が好ましい。特に好ましいのはルテニウム、レニウム、オスミウム、白金、コバ
ルトおよび鉄である。
【0165】 Lは補助リガンドであり、金属イオン結合のための配位原子を提供する。当業
者が認識するように、補助リガンドの数と性質は金属イオンの配位数に依存する
。単座、二座または多座補助リガンドはどの位置で使用してもよい。従って、例
えば、金属が6の配位数を有する場合、伝導性オリゴマーの末端からのL、核酸
から与えられるL、およびrを6まで加える。従って、金属が六配位数の場合、
rは0(全配位原子が他の2つのリガンドによって与えられる場合)から4(全て
の補助リガンドが一座配位の場合)の範囲であろう。従って、一般に、金属イオ
ンの配位数および他のリガンドの選択に依存してrは0ないし8であるであろう
【0166】 ある実施態様において、金属イオンは6の配位数を有し、そして伝導性オリゴ
マーに付着したリガンドおよび核酸に付着したリガンドは、両方共、少なくとも
2量体である;すなわち、rは、好ましくは、0、1(すなわち残った補助リガ
ンドは2量体である)または2(2つの一座配位補助リガンドが使用される)であ
る。
【0167】 技術的に認識されるように、補助リガンドは同一であっても異なってもよい。
適切なリガンドは2つの範疇に入る:配位原子(一般的には文献上、シグマ(σ
)供与体という)として(金属イオンに依存して)、窒素、酸素、イオウ、炭素
またはリン原子を用いるリガンド、およびメタロセンリガンドなどの有機金属リ
ガンド(一般的には文献上、パイ(π)供与体といい、本明細書ではLで図示
する)である。適切な窒素供与リガンドは技術上周知であり、以下のものを包含
するがこれらに限定されるものではない:NH;NHR;NRR';ピリジン
;ピラジン;イソニコチンアミド;イミダゾール;ビピリジンおよびビピリジン
の置換誘導体;テルピリジンおよび置換誘導体;フェナントロリン、特に1,1
0−フェナントロリン(phenと略記)およびフェナントロリンの置換誘導体
、例えば、4,7−ジメチルフェナントロリンおよびジピリド[3,2−a:2
',3'−c]フェナジン(dppzと略記);ジピリドフェナジン;1,4,5
,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(hatと略記);9,10−フェ
ナントレンキノン・ジイミン(phiと略記);1,4,5,8−テトラアザフ
ェナントレン(tapと略記);1,4,8,11−テトラ−アザシクロテトラ
デカン(cyclamと略記)、EDTA、EGTAおよびイソシアニド。融合
した誘導体を包含する置換誘導体も使用することができる。ある態様においては
、ポルフィリンおよびポルフィリンファミリーの置換誘導体を使用してもよい。
例えば、Comprehensive Coordination Chemistry, Ed. Wilkinson et al., Perg
ammon Press, 1987, Chapters 13.2 (pp 73-98), 21.1 (pp 813-898) and 21.3
(pp 915-957)参照。この文献の全部を特に参照により本明細書に取込む。
【0168】 炭素、酸素、イオウおよびリンを用いる適切なシグマ供与リガンドは技術上既
知である。例えば、適切なシグマ炭素供与体はCotton and Wilkenson, Advanced
Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, 1988に見出されるが、
この文献を参照により本明細書に取込む;例えば、38ページ参照。同様に、適
切な酸素リガンドは、クラウンエーテル、水、および技術上既知の他のものを包
含する。ホスフィンおよび置換ホスフィンも適切である;Cotton and Wilkenson
の38ページ参照。
【0169】 酸素、イオウ、リンおよび窒素−供与リガンドは、ヘテロ原子が配位原子とし
て作動するような様式で付着する。
【0170】 好適な態様においては、有機金属リガンドを用いる。レドックス部分として使
用する純有機化合物、およびヘテロ環状またはエキソ環状置換基として供与原子
をもつδ−結合有機リガンドとの種々の遷移金属配位複合体に加えて、π−結合
有機リガンドをもつ多様な遷移金属有機金属化合物が入手可能である(Advanced
Inorganic Chemistry, 5th Ed., Cotton & Wilkinson, John Wiley & Sons, 19
88, Chapter 26; Organometallics, A Concise Introduction, Elschenbroich e
t al., 2nd Ed., 1992, VCH; およびComprehensive Organometallic Chemistry
II, A Review of the Literature 1982-1994, Abel et al. Ed., Vol. 7, Chapt
ers 7, 8, 10 & 11, Pergamon Press, 特に参照により本明細書に取込む)。か
かる有機金属リガンドは、シクロペンタジエニド・イオン[C(−1)]
などの環状芳香族化合物および種々の環置換および環融合誘導体、例えば、イン
デニリド(−1)イオンなどであって、一群のビス(シクロペンタジエニル)金
属化合物(すなわち、メタロセン)を産生する;例えば、Robins et al., J. Am
. Chem. Soc., 104: 1882-1893 (1982); およびGassman et al., J. Am. Chem.
Soc., 108: 4228-4229 (1986)参照;これらを出典明示により本明細書に組込ま
れている。これらの内、フェロセン[(CFe]およびその誘導体が
多様な化学的(Connelly e al., Chem. Rev. 96: 877-910 (1996), 出典明示に
より本明細書に組込まれている)および電子化学的(Geiger et al., Advances
in Organometallic Chemistry 23: 1-93; およびGeiger et al., Advances in O
rganometallic Chemistry 24: 87, 出典明示により本明細書に組込まれている)
電子移動または“レドックス”反応に使用されているプロトタイプの例である。
様々な第一、第二および第三列遷移金属のメタロセン誘導体は、核酸のリボース
環またはヌクレオシド塩基の何れかに共有結合により付着しているレドックス部
分としての有力な候補である。他の潜在的に適切な有機金属リガンドは、ベンゼ
ンなどの環状アレンなどを包含し、ビス(アレン)金属化合物とその環置換およ
び環融合誘導体を産生するが、そのビス(ベンゼン)クロミウムはプロトタイプ
の例である。アリル(−1)イオンなどの他の非環状π−結合リガンドまたはブ
タジエンは潜在的に適切な有機金属化合物を産生し、かかるリガンドはすべて他
のπ−結合およびδ−結合リガンドと連携して、金属−炭素結合をもつ一般クラ
スの有機金属化合物を構成する。架橋有機リガンドおよびさらなる非架橋リガン
ドを有し、同様に金属−金属結合を有し、また有さない、かかる化合物の種々の
ダイマーおよびオリゴマーの電気化学的研究は、核酸分析における有力な候補レ
ドックス部分である。
【0171】 1種以上の補助リガンドが有機金属リガンドである場合、該リガンドは一般に
有機金属リガンドの炭素原子の一つを介して付着するが、ただし付着はヘテロ環
状リガンドに対し他の原子を介してであってもよい。好適な有機金属リガンドは
、置換誘導体およびメタロセンオファンを含むメタロセンリガンドを包含する(
上記Cotton and Wilkensonの1174ページ参照)。例えば、メチルシクロペン
タジエニルなどのメタロセンリガンドの誘導体、好ましくは複数のメチル基を有
する例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルなどを用い、メタロセンの安定
性を増大させることができる。好適な態様において、メタロセンの2つのメタロ
センリガンドの1つのみが誘導化される。
【0172】 本明細書に記載のように、リガンドの任意の組み合わせを使用し得る。好まし
い組み合わせは:a)全リガンドが窒素供与リガンドである;b)全リガンドが有
機金属リガンドである;そしてc)伝導性オリゴマーの末端のリガンドがメタロ
センリガンドであり、核酸により提供されるリガンドは窒素投与リガンドである
ことを含み、必要により、他のリガンドと一緒であり、それは窒素供与リガンド
またはメタロセンリガンドまたはその混合物である。これらの組み合わせは、構
造3の伝導性オリゴマーを使用した代表例に記載され、構造27(フェナンスロ
リンおよびアミノを代表的リガンドとして使用して)、28(フェロッセンを金属
−リガンド組み合わせとして使用して)および29(シクロペンタジエニルおよび
アミノを代表的リガンドとして使用して)に記載する。 構造27
【化27】 構造28
【化28】 構造29
【化29】
【0173】 導電性オリゴマーおよび電極の付着に作用することに加え、上記の組成物はE
TM標識としても使用し得る。すなわち、図19および20に概説するように、
導電性オリゴマーに付着した遷移金属(または他のETM)は検出用の核酸に加
えることができる。この態様において、理論に囚われなければ、導電性オリゴマ
ー、好ましくはF1結合(表面に対する導電性オリゴマーの付着を可能とする結
合)はSAMを貫入させ、ETMと電極間の電子伝達を容易にする。理論に囚わ
れなければ、これは“メカニズム−1”システム同様に、電子の直接経路を提供
することにより、急速な電子伝達を可能とすると思われる;本明細書ではこれを
場合により“配線化”という。
【0174】 驚くべきことに、実施例3に概括するように、このシステムはF1部分が保護
されるか否かで作用すると思われる;すなわち、直接の付着はETMの周波数応
答を増大させるためには必要ない。このように、導電性オリゴマーはF1部分、
保護基により保護されたF1部分(上記Greene参照)で終結し得るか、あるいは
F1部分でまったく終結する必要がない;SAMの表面に使用されるような末端
基を使用してもよい。あるいは、導電性オリゴマーのむき出しの末端で十分であ
る。
【0175】 この態様においては、“分枝”当たり複数のETMを使用してもよい。それら
は導電性オリゴマーで終結する基として、例えば、メタロセンポリマーとして付
着させるか、または導電性オリゴマーから置換基を除かれていてもよい。一般に
、好適な態様ではETMと導電性オリゴマー間の電子共役を利用し、電子伝達を
容易にするか、または少なくとも非共役結合の数を最少化する。 一般に、この態様における導電性オリゴマーの長さは電極上のSAMの長さと
共に変わり、好適な態様では2単位または3単位のオリゴマーを利用する。この
態様における好適な導電性オリゴマーは、核酸が電極に付着するについて上記し
たと同じであり、フェニル−アセチレン・オリゴマーが最も好適である。 この態様においては、付着した導電性オリゴマーをもつETMを一般的に合成
し、次いで、図20に一般的に描出したようにホスファーアミダイト部分を調製
する。
【0176】 好適な態様において、本発明に使用するリガンドは、キレート化した金属イオ
ンの酸化還元状態に左右されて変化した蛍光性を示す。以下に説明するように、
これは結果としてETMと電極間の電子伝達のさらなる検出モードとして作用す
る。 好適な態様において、以下により詳しく説明するように、核酸に付着したリガ
ンドはリボース−リン酸バックボーンのリボース2’または3’位に付着したア
ミノ基である。このリガンドは金属イオンに結合するポリデンテート・リガンド
を形成するような多様なアミノ基を含んでもよい。他の好適なリガンドはシクロ
ペンタジエンおよびフェナンスロリンを包含する。
【0177】 核酸に連結する金属イオンの使用は、表面上の利用可能な核酸数を評価する際
に、システムの内部調整または校正として役立ち得る。しかし、当業者が認める
ように、もし金属イオンを用いて核酸が導電性オリゴマーに連結するようにする
ならば、以下に説明するように、この金属イオンはシステムの残りに使用される
ETMとは異なる酸化還元力をもつようにすることが一般に望ましい。これは一
般に捕捉プローブの存在と標的配列の存在を識別するようにする上で正しい。こ
れは同定、校正および/または定量にとって有用である。このように、電極上の
捕捉プローブの量をハイブリダイズした二本鎖核酸の量に比較し、サンプル中の
標的配列の量を定量することができる。これはセンサまたはシステムの内部調整
として作用するためにきわめて意味がある。これは、同様ではあるが異なる制御
システムに依存するよりもむしろ、検出に使用する同じ分子に関しては、標的の
添加に先立つまたはその後の測定を可能とする。このように、検出に使用する実
際の分子は何らかの実験に先立ち定量することが可能である。これが先行方法に
まさる有意な利点である。 好適な態様において、捕捉プローブ核酸は絶縁体を介して共有結合により電極
に結合する。アルキル基などの絶縁体に核酸が付着することは周知であり、これ
らの部分を含むバックボーンとしてのリボースまたはリン酸エステルを包含する
基礎またはバックボーンに対して、または核酸類似体の代替バックボーンに対し
て実施し得る。
【0178】 好適な態様においては、図中に一般的に描出するように、表面上に1つ以上の
異なる捕捉プローブ種が存在してもよい。ある態様では、以下により詳しく説明
するように、1つの型の捕捉プローブまたは1つの型の捕捉プローブエクステン
ダーが存在してもよい。あるいは、異なる複数の捕捉プローブ、または多様な異
なる捕捉エクステンダープローブと共に一個のプローブを使用することもできる
。同様に、比較的短いプローブ配列を含む補助的補足プローブであって、表面で
のETM濃度を上昇せしめるこのシステムの“タックダウン”(張付け)成分、
例えば、リクルート・リンカーに対して使用し得るプローブを使用することが望
ましい。
【0179】 このように、本発明は導電性オリゴマーと捕捉プローブを含む単層を含んでな
る、核酸の検出システムに有用な電極を提供する。好適な態様において、該組成
物はさらに標識プローブを含んでなる。標識プローブは核酸であり、一般に一本
鎖であるが、以下により詳しく説明するように、二本鎖部分を含んでいてもよい
。標識プローブは下記定義のアッセイ複合体成分にハイブリダイズし得る第一部
分と、アッセイ複合体成分にハイブリダイズしない第二成分を含んでなり、少な
くとも1つの共有結合により付着したETMを含んでなる。 このように、共有結合により付着したETMを有する標識プローブが提供され
る。本明細書において“電子供与部分”、“電子受容部分”、および“ETM”
(ETM)という用語またはその文法的等価物は一定条件下において電子伝達し
得る分子をいう。理解すべきことは、電子供与および受容能力は相対的であると
いうことである;すなわち、一定の実験条件下で電子を失い得る分子が異なる実
験条件下で電子を受け入れることができるということである。理解すべきことは
、可能な電子供与部分および電子受容部分の数が非常に多いということ、また、
電子伝達化合物の当業者は本発明において多数の化合物を利用し得るということ
である。好適なETMは、これらに限定されるものではないが、遷移金属複合体
、有機ETM、および電極などである。
【0180】 好適な態様において、ETMは遷移金属複合体である。遷移金属とはその原子
が部分的なまたは完全な電子のd殻をもつものである。本発明に適切な遷移金属
は上に掲載した。 遷移金属は上記定義の様々なリガンドLと複合体を形成し、技術上周知の適切
な遷移金属複合体となる。 遷移金属複合体に加えて、他の有機電子供与体および受容体が本発明に使用す
る核酸に共有結合により付着し得る。これらの有機分子は、これらに限定される
ものではないが、リボフラビン、キサンテン染料、アジン染料、アクリジンオレ
ンジ、二塩化N,N’−ジメチル−2,7−ジアザピレニウム(DAP2+)、
メチルビオロゲン、臭化エチジウム、二塩化N,N’−ジメチルアントラ(2,
1,9−def:6,5,10−d’e’f’)ジイソキノリン(ADIQ2+
)などのキノン類;ポルフィリン類(四塩化[メゾ−テトラキス(N−メチル−
x−ピリジニウム)ポルフィリン])、塩酸バルラミン・ブルーB、ビンドシェ
ドラー・グリーン(Bindschedler's green);2,6−ジクロロインドフェノー
ル、2,6−ジブロモフェノールインドフェノール;ブリリアント・クレスト・
ブルー(塩化3−アミノ−9−ジメチル−アミノ−10−メチルフェノキシアジ
ン)、メチレン・ブルー;ナイル・ブルーA(硫酸アミノナフトジエチルアミノ
フェノキサジン)、インジゴ−5,5’,7,7’−テトラスルホン酸、インジ
ゴ−5,5’,7−トリスルホン酸;フェノサフラニン、インジゴ−5−モノス
ルホン酸;サフラニンT;塩化ビス(ジメチルグリオキシマト)鉄(II);イン
ズリン・スカーレット、ニュートラル・レッド、アントラセン、コロネン、ピレ
ン、9−フェニレンアントラセン、ルブレン、ビナフチル、DPA、フェノチア
ジン、フルオランテン、フェナントレン、クリセン、1,8−ジフェニル−1,
3,5,7−オクタテトラセン、ナフタレン、アセナフタレン、ペリレン、TM
PDおよびその類似体、およびこれら化合物の置換誘導体などである。
【0181】 好適な態様において、ETMは標的被検体または標的被検体に結合するアッセ
イ複合体の他の成分に固有のものであってもよい。例えば、(標的配列および第
二プローブを含む)核酸のグアニン塩基は酸化可能であって、ETMで作用し得
る;参照:PCT WO97/01646 and U.S. Patent No. 5,871,918(これらはすべて出
典明示により本明細書の一部とする)。同様に、本明細書に概説した電気化学技
法の多くは他のシステムにおいて有用である;参照:U.S. Patent No. 5,650,06
1; Singhai et al., Anal. Chem. 69:1552 (1997); Singhal and Kuhr, Anal. C
hem. 69:4828 (1997); Singhal et al., Anal. Chem. 69:3553 (1997); and Don
tha et al., Anal. Chem. 69:2619 (1997)(これらはすべて出典明示により本明
細書の一部とする)。このシステムにおいて、核酸のリボース部分は酸化され、
アッセイ用のETMとして作用する。本明細書に概説した電気化学技法は特にこ
れらのシステムにおいて有用である。同様に、酸化還元活性アミノ酸はタンパク
質の検出においてETMとして作用し得る。 一態様において、電子供与体および受容体は技術上知られるように酸化還元タ
ンパク質である。しかし、多くの態様において酸化還元タンパク質は好ましくな
い。
【0182】 特異的ETMの選択は以下に一般的に概説するように、使用される電子伝達検
出のタイプにより影響を受ける。好適なETMはメタロセンであり、特にフェロ
センが好適である。 理論に囚われなければ、“メカニズム−2”のシステムにおいて、電子伝達は
ETMがある程度単層に貫入する(“寄り付く”)ことができる場合に容易とな
ると思われる。すなわち、一般に、疎水性SAMと共に用いる疎水性ETMは、
荷電しているかまたはより親水性であるETMより、より良好な(より大きな)
シグナルを生じる。このように、例えば、溶液中のフェロセンは実施例の単層に
貫入することが可能であり、電気管路が存在する場合にシグナルを生じる一方、
溶液中のフェロシアニドのシグナルは僅かであるか、まったく生じない。このよ
うに、一般に、疎水性のETMはメカニズム−2のシステムにおいて好適である
;しかし、RuおよびOs複合体などの遷移金属複合体は、荷電を有しはするが、
ビピリジンまたはフェナンスロリンなど、1つ以上の疎水性リガンドをもち、好
適なシグナルをも生じる。同様に、ETMと電極間の電子伝達は、ETMにある
程度の柔軟性を可能とするリンカーまたはスペーサーの使用により容易となり、
単層に貫入する;かくして、本発明のN6組成物はETMを核酸に付着させる炭
素4個のリンカーを有する。
【0183】 好適な態様においては、複数のETMが使用される。実施例に示すように、多
数のETMの使用はシグナルの増幅を可能とし、かくして、より高感度の検出限
界を可能とする。以下に考察するように、相補性鎖にハイブリダイズする核酸上
に多数のETMを使用すると、その数、付着部位および多数のETM間の空間に
依存して、ハイブリダイゼーション複合体のTsに減少を引起すが、一方、こ
れは相補性配列にハイブリダイズしないので、ETMがリクルート・リンカー上
にある場合、因子とはならない。従って、複数のETMが好ましく、リクルート
・リンカー当たり少なくとも約2個のETMが好ましく、特に少なくとも約10
個が好ましく、取分け少なくとも約20ないし50個が好ましい。ある場合には
、非常に大量のETM(100〜1,000)が使用し得る。
【0184】 当業者が認めるように、ETMを含んでなる標識プローブ(またはある態様に
おいては標的)の部分(本明細書では“リクルート・リンカー”または“シグナ
ル搬送体”という)は核酸であるか、あるいはETMに標識プローブの第一ハイ
ブリッド形成性部分を連結する非核酸リンカーであり得る。すなわち、この標識
プローブ部分は容易に合成し得るが、ハイブリダイゼーションを必要としないの
で、核酸である必要はない。ある態様においては、以下に詳しく説明するように
、リクルート・リンカーは二本鎖部分を含んでいてもよい。このようにして、当
業者が認めるように、使用し得る様々な形状が存在する。好適な態様において、
リクルート・リンカーは核酸(類似体も含む)であり、ETMの付着は以下のも
のを経由し得る:(1)塩基;(2)バックボーン、例えば、リボース、リン酸
エステル、または核酸類似体の相当する構造;(3)下記のヌクレオシド置換;
または(4)下記のごときメタロセン・ポリマー。好適な態様においては、リク
ルート・リンカーは非核酸であり、ETM置換基を含むメタロセン・ポリマーま
たはアルキル型ポリマー(以下により詳しく説明するように、ヘテロアルキルを
包含する)であり得る。これらの選択を一般的に図に示す。
【0185】 好適な態様において、リクルートリンカーは核酸であり、共有結合により付着
したETMを含んでいる。ETMは様々な位置で核酸内のヌクレオシドに付着し
ていてもよい。好適な態様は、(1)ヌクレオシド塩基への付着、(2)塩基置
換体としてのETMの付着、(3)リボース−リン酸バックボーンのリボースま
たはリン酸部分への、または核酸類似体の類似構造へなどの核酸バックボーンへ
の付着、および(4)メタロセンポリマーを介しての付着、などであるが、これ
らに限定されるものではないが、後者が好ましい。
【0186】 さらに、下記のように、リクルートリンカーが核酸である場合、第二のラベル
プローブを用いることが望ましく、該プローブは本明細書に定義のように第一ラ
ベルプローブの一部にハイブリッド形成する第一部分とリクルートリンカーを含
んでなる第二部分を有する。これは一般的に図16Hに図示される;これはアン
プリファイアープローブの使用に似ているが、第一および第二ラベルプローブ両
者がETMを含んでなる場合は例外である。
【0187】 好適な態様において、伝導性オリゴマーの付着のために、既に一般的に概説さ
れているようにヌクレオシドの塩基に付着する。付着は内部ヌクレオシドまたは
末端ヌクレオシドに対してなされる。
【0188】 共有結合による塩基への付着は選定されたETM上の部分に依存するが、一般
には上記されているように、伝導性オリゴマーが塩基に付着するのに似ている。
付着は、一般には、塩基のどの部位になされてもよい。好適な態様において、E
TMは遷移金属複合体であり、かくして、適切な金属リガンドの塩基への付着が
ETMの共有結合による付着に導く。あるいは、当業者が認識するように、同様
のタイプの結合を有機ETMの付着に使用してもよい。
【0189】 一態様において、シトシンのC4付着アミノ基、アデニンのC6付着アミノ基
、またはグアニンのC2付着アミノ基が遷移金属リガンドとして使用し得る。
【0190】 芳香族基を含むリガンドは技術上既知のようにアセチレン結合を介して付着す
ることができる(Comprehensive Organic Synthesis, Trost et al., Ed., Perg
amon Press, Chapter 2.4; Coupling Reactions Between sp2 and sp Carbon Ce
nters, Sonogashira, pp 521-549, and pp 950-953参照; 出典明示により本明細
書に組込まれている)。構造30は金属イオンと他の必要なリガンド存在下での
代表的な構造を図示する;構造30ではウリジンを図示しているが、本明細書全
体について、他の塩基を使用することも可能である。
【0191】
【化30】 はリガンドであり、窒素、酸素、イオウまたはリン供与リガンドまたはメ
タロセンリガンドなどの有機金属リガンドを包含する。適切なリガンドLはフ
ェナントロリン、イミダゾール、bpyおよびterpyなどであるが、これら
に限定されるものではない。LおよびMは上記定義のとおりである。再度、当
業者が認識するように、リンカー(“Z”)はヌクレオシドとETMの間に含ま
れる。
【0192】 同様に、伝導性オリゴマーとしては、その結合がリンカーを用いてなされるが
、リンカーはアミド結合を利用することができる(一般的に、Telser et al., J
. Am. Chem. Soc. 111: 7221-7226 (1989); Telser et al., J. Am. Chem. Soc.
111: 7226-7232 (1989)参照;両文献を特に出典明示により本明細書に組込まれ
ている)。これらの構造は下記構造31に一般的に図示する。再度ここではウリ
ジンを塩基として使用しているが、上記同様、他の塩基も使用し得る。
【化31】
【0193】 この態様において、Lは上記定義のリガンドであり、LrおよびMも上記定義
のとおりである。好ましくは、Lはアミノ、phen、bypおよびterpy
である。
【0194】 好適な態様において、ヌクレオシドに付着したETMはメタロセンである;す
なわち、構造31のLおよびLrは両者ともメタロセンリガンドであり、上記の
m'である。構造32は好適な態様を図示するものであり、この場合メタロセ
ンはフェロセン、塩基はウリジンであるが、他の塩基も使用可能である。
【化32】
【0195】 予備データが示唆するところでは、構造32は環化可能であって、第二アセチ
レン炭素原子がカルボニル酸素を攻撃し、フラン様構造を形成する。好適なメタ
ロセンはフェロセン、コバルトセンおよびオスミウムオセンなどである。
【0196】 好適な態様において、ETMは核酸のリボース−リン酸バックボーンのいずれ
かの位置、すなわち、5'または3'末端またはいずれかの内部ヌクレオシドでリ
ボースに付着している。この場合のリボースはリボース類似体を包含する。技術
的に知られているように、リボースの2'または3'位置のいずれかで修飾されて
いるヌクレオシドは、窒素、酸素、イオウおよびリン−含有修飾により可能とな
し得る。アミノ−修飾および酸素−修飾リボースが好ましい。一般的には、PC
T公開WO95/15971(出典明示により本明細書に組込まれている)を参
照されたい。これらの修飾基は遷移金属リガンドとして、または他の遷移金属リ
ガンドおよび有機金属リガンド付着のための化学的に官能性の部分、または当業
者認知の有機電子供与体部分として使用することができる。この態様において、
本明細書において“Z”として図示したようなリンカーも同様に、またはリボー
スとETM間の伝導性オリゴマーも使用可能である。好適な態様では、リボース
の2'または3'位での付着を利用するが、2'位置が好ましい。このように例え
ば、構造13、14および15に図示された伝導性オリゴマーはETMに置換え
ることができる;あるいは、ETMは伝導性オリゴマーの遊離末端に加えてもよ
い。
【0197】 好適な態様において、メタロセンはETMとして作動し、下記構造33に図示
するようにアミド結合を介して付着する。例示ではメタロセンがフェロセンであ
る場合の好適な化合物につきその合成を概説する。
【化33】
【0198】 好適な態様においては、アミンの結合が構造34に一般的に図示するように使
用される。
【化34】 Zは本明細書に定義のごときリンカーであり、1〜16原子のものが好ましく、
2〜4原子がとりわけ好ましい。tは1または0である。
【0199】 好適な態様においては、オキソ結合が構造35に一般的に図示するように使用
される。
【化35】 構造35において、Zは本明細書に定義のとおりのリンカーであり、tは1ま
たは0である。好適なZリンカーは、(CHおよび(CHCHO) などのヘテロアルキル基を含むアルキル基を包含し、nは1ないし10が好まし
く、n=1ないし4がとりわけ好ましく、n=4が特に好ましい。
【0200】 他のヘテロ原子を利用する結合も可能である。
【0201】 好適な態様において、ETMは核酸のリボース−リン酸バックボーンのいずれ
かの位置でリン酸エステルに付着する。これは様々な様式でなされる。一態様に
おいて、ホスホジエステル結合類似体、例えば、ホスホラミドまたはホスホルア
ミダイト結合は核酸中に取込まれていてもよく、その場合、ヘテロ原子(すなわ
ち、窒素)が遷移金属リガンドとして作動する(PCT公開WO95/1597
1参照;出典明示により本明細書に組込まれている)。あるいは、構造23およ
び24に図示されている伝導性オリゴマーをETMに置換えてもよい。好適な態
様において、組成物は構造36に示した構造を有する。
【化36】
【0202】 構造36において、ETMはリン酸エステル結合を介して、一般にはリンカー
Zを使用することにより付着する。好適なZリンカーは、(CH、(CH CHO)などのヘテロアルキル基を含むアルキル基を包含し、nは1ない
し10が好ましく、n=1ないし4がとりわけ好ましく、n=4が特に好ましい
【0203】 ETMがヌクレオシドの塩基またはバックボーンに付着している場合、より詳
しく下に概説するように、“樹枝状”構造を介してETMを付着させることが可
能である。図に一般的に示すように、アルキルベースのリンカーを用い、各枝の
末端に1個またはそれ以上のETMを含む複数の分枝構造を創り出すことができ
る(内部ETMを同様に使用することもできるが)。一般に、これは多数のヒドロ
キシ基を含む分枝点を創り出すことにより実施されるが、このヒドロキシ基を用
いてさらなる分枝点を加えることができる。末端のヒドロキシ基は次いでホスホ
ルアミダイト反応に用い、一般的にはヌクレオシド置換およびメタロセンポリマ
ー反応のために以下に実施するように、ETMに加えることができる。分枝点は
内部にあっても末端にあってもよく、化学的分枝点であってもヌクレオシド分枝
点であってもよい。
【0204】 好適な態様において、メタロセンなどのETMは、ETMとして作動するよう
に“ヌクレオシド置換体”として使用する。例えば、フェロセンの2つのシクロ
ペンタジエン環の間の距離は、二本鎖核酸中の2つの塩基間の直交距離に類似し
ている。フェロセンに加え、他のメタロセン、例えば、コバルトまたはルテニウ
ムなどを含むメタロセンなどの空気安定性メタロセンを使用することができる。
このように、メタロセン部分は、構造37(リボース−リン酸バックボーンを有
する核酸)および構造38(ペプチド核酸バックボーン)に一般的に図示するよ
うに、核酸のバックボーンに取込んでもよい。構造37および38ではフェロセ
ンを図示しているが、当業者が認識するように、他のメタロセンも同様に使用し
得る。一般に、空気に安定なメタロセンが好ましく、金属としてルテニウムおよ
びコバルトを利用するメタロセンが包含される。
【0205】
【化37】 構造37において、Zは上記定義のリンカーであり、一般的には短いアルキル
基をもち、酸素などのヘテロ原子を含むものが好ましい。一般に、重要なことは
リンカーの長さであり、より詳しく以下に説明するように、二本鎖核酸の最少の
摂動がもたらされるようにする。このように、メチレン、エチレン、エチレング
リコール、プロピレンおよびブチレンがすべて好適であり、エチレンおよびエチ
レングリコールが特に好ましい。さらに、各Zリンカーは同一であっても、異な
ってもよい。構造37はリボース−リン酸バックボーンを表示しているが、当業
者が認識するように、リボース類似体およびリン酸エステル結合類似体などの核
酸類似体を使用してもよい。
【0206】
【化38】 構造38において、好適なZ基は上記掲載のとおりであるが、再度、各Zリン
カーは同一または異なってもよい。上述のように、他の核酸類似体も同様に使用
し得る。
【0207】 さらに、上記の構造と検討ではメタロセン、特にフェロセンを描出しているが
、同じ一般的な着想を用い、下記のように、メタロセンに加えヌクレオシドの置
換体として、またはポリマーの態様において、ETMを付加することができる。
このように、例えば、1、2または3個(またはそれ以上)のリガンドを含んで
なる、メタロセン以外の遷移金属複合体である場合、該リガンドをフェロセンに
ついて表現したように機能化し、ホスホルアミダイト基の付加を可能とすること
ができる。特に、この態様において好ましいのは、少なくとも2つの環(例えば
、アリールおよび置換アリール)リガンドを含んでなる複合体であり、その場合
、各リガンドはホスホルアミダイト化学による付着のための官能基を含んでなる
。当業者が認識するように、このタイプの反応は、ここで生じるシグナルの増幅
を可能とするために、核酸バックボーンの一部としてまたは核酸の“側鎖基”と
してETMのポリマーを創出するが、正しい化学基を含むように官能化し得る実
質的にいずれのETMによっても実施することができる。
【0208】 このように、フェロセンなどのメタロセン(または他のETM)を核酸のバッ
クボーンに挿入することにより、核酸類似体が調製される;すなわち、本発明は
少なくとも1個のメタロセンを含んでなるバックボーンをもつ核酸を提供する。
このことはバックボーンに付着した、すなわち、リボース、リン酸エステルなど
を介して、メタロセンを有する核酸から識別される。すなわち、伝統的な核酸ま
たは類似体から造られた2つの核酸(この場合の核酸は単一のヌクレオシドを包
含する)それぞれは、メタロセンを介して互いに共有結合により付着することが
できる。異なる観点で、メタロセン誘導体または置換メタロセンが提供されるが
、その場合は、メタロセンの2つの芳香環それぞれが核酸置換基を有する。
【0209】 さらに、より詳しく以下に説明するように、間にヌクレオチドをもつか、およ
び/または隣接するメタロセンをもつ1個より多いメタロセンをバックボーンに
取込ませることが可能である。隣接するメタロセンをバックボーンに付加する場
合、これは“メタロセンポリマー”としての下記の工程と同じである;すなわち
、バックボーン内にメタロセンポリマーの領域が存在する。
【0210】 核酸置換基に加え、ある場合には、メタロセン(またはETM)の芳香環の一
方または双方にさらなる置換基を付加することが望ましい。例えば、これらのヌ
クレオシド置換体は一般に実質的に相補的な核酸、例えば、標的配列またはもう
一つのプローブ配列とハイブリッド形成すべきプローブ配列の部分なので、置換
基をメタロセン環に付加して、反対鎖上の1個または複数個の塩基に水素結合形
成するのを容易にすることが可能である。これらはメタロセン環上のどの位置に
付加してもよい。適切な置換基は、アミド基、アミン基、カルボン酸、および置
換アルコールを含むアルコール類であるが、これらに限定されるものではない。
さらに、これらの置換基は同様にリンカーを介して付着させることができるが、
一般的には好ましくない。
【0211】 さらに、ETM、特にフェロセンなどのメタロセン上に置換基を付加してET
Mのレドックス性を変化させてもよい。このように、例えばある態様では、より
詳しく以下に記載するように、異なる様式で(すなわち、塩基またはリボース付
着)、異なるプローブ上、または異なる目的で(例えば、校正または内部基準と
して)付着した異なるETMを有することが望ましい。このように、メタロセン
上に置換基を付加することは、2つの異なるETMの識別を可能とする。
【0212】 これらのメタロセン−バックボーン核酸類似体を生成させるために、中間成分
も提供される。このように、好適な態様において、本発明は構造39に一般的に
表示するように、ホスホルアミダイト・メタロセンを提供する。
【化39】
【0213】 構造39において、PGは保護基であり、一般に核酸の合成に適した基であっ
て、DMT、MMTおよびTMTなどがすべて好適である。芳香環はメタロセン
の環であるか、または遷移金属複合体もしくは他の有機ETM用リガンドの芳香
環であることができる。芳香環は同一または異なってもよく、また、本明細書に
検討するように置換されていてもよい。
【0214】 構造40はフェロセン誘導体を図示する:
【化40】
【0215】 これらのホスホルアミダイト類似体は技術上既知の標準的オリゴヌクレオチド
合成に追加することができる。
【0216】 構造41はフェロセンペプチド核酸(PNA)モノマーを図示し、技術上既知
であり、各図および各実施例中に示しているようにPNAの合成に追加すること
ができる:
【化41】 構造41において、PG保護基はペプチド核酸合成に使用するのに適しており
、MMT、boc、およびFmocなどが好ましい。
【0217】 これら同一の中間化合物を用いてETMまたはメタロセンポリマーを形成する
ことが可能であり、これらは、より詳しく以下に説明するように、バックボーン
置換体としてよりもむしろ核酸に付加される。
【0218】 好適な態様において、ETMはポリマーとして、例えば、メタロセンポリマー
として、本明細書およびUS特許番号5,124,246に概説されているよう
に、“分枝したDNA”態様と同様の“分枝した”構成で、修飾した機能化ヌク
レオチドを用い付着させる。一般的な着想は以下のとおりである。修飾されたホ
スホルアミダイトヌクレオチドが生成されるが、それはメタロセンなどのホスホ
ルアミダイトETMの付着に使用し得る遊離のヒドロキシ基を最終的に含むこと
ができる。この遊離のヒドロキシ基は塩基またはリボースもしくはリン酸エステ
ルなどのバックボーン上に存在し得る(当業者も認識するであろうが、他の構造
を含む核酸類似体も使用し得る)。修飾されたヌクレオチドを核酸に取込み、ヒ
ドロキシ保護基を除去し、遊離のヒドロキシを生じる。構造39および40にお
いて上述したように、メタロセンなどのホスホルアミダイトETMの付加により
、メタロセンETMなどのETMを付加する。別のメタロセン類などのホスホル
アミダイトETM類の付加により、本明細書中で特にフェロセンについて示した
ような“メタロセンポリマー群”を含む“ETMポリマー群”を形成することが
できる。さらに、ある態様においては、図12に一般的に描出したように、“キ
ャッピング”基をポリマー中の末端ETMに、例えば、最終リン酸エステル基を
メタロセンに付加することによりポリマーの溶解性を上昇させることが望ましい
。他の適切な溶解度上昇性“キャッピング”基は当業者が認識するであろう。留
意すべきことは、これらの溶解度上昇性基は、リガンド環、例えば、本明細書で
検討したメタロセンの他の位置でポリマーに付加させることができることである
【0219】 この一般的な着想の好適な態様を図面に概説する。この態様において、ホスホ
ルアミダイトヌクレオチドのリボースの2'位置は、この場合はオキソ結合を介
して保護されたヒドロキシ基を含むように先ず官能化するが、リンカーの数につ
いては、Zリンカーについて本明細書で一般的に記載するようにいずれの数も使
用し得る。保護修飾されたヌクレオチドは、次いで標準的なホスホルアミダイト
の化学により伸長する核酸中に取込む。保護基を除去し、遊離のヒドロキシ基を
用い、再び標準的なホスホルアミダイトの化学を用い、フェロセンなどのホスホ
ルアミダイトメタロセンを付加させる。同様の反応は核酸の類似体についても可
能である。例えば、構造41に示したペプチド核酸とメタロセンモノマーを用い
、メタロセンポリマーを含むペプチド核酸構造を生成させることができた。
【0220】 このように、本発明は、メタロセンポリマーの“分枝”を含む核酸のリクルー
トリンカーを提供する。好適な態様ではメタロセンの長さが1ないし約50個、
好ましくは約5ないし約20個、とりわけ好ましくは約5ないし約10個のメタ
ロセンポリマーを利用する。
【0221】 好適な態様においては、ETMは核酸の合成後に付着させる。“櫛状”構造ま
たは“樹木状”構造のETMを含んでなるヌクレオシドの付着が上手く作用する
一方で、この方式により付着させ得るETMの数には制限があるが、それは合成
に際しての固相支持体のポアサイズの制限によるものであり;大きな核酸は大き
なポアサイズを必要とすること、その結果、この方式で付着させ得るETM、特
にフェロセンの数に制限があることである。このように、核酸当たりのETMが
大量に必要な場合には、合成後のETM添加を実施してもよい。以下に概説する
ように、これはアッセイに先立ち、またはアッセイの最中に実施してもよい。さ
らに、本説明はETMの付着に関するものであるが、この合成後添加は発蛍光団
など他の検出可能な標識物の付着に使用してもよい。
【0222】 好適な態様において、標識物の付加はアッセイに先立って起こる。図18に概
説するように、核酸は付加位置において1個以上の官能基を含むように調製され
る。付着に好適な官能基はアミノ基、カルボキシ基、マレイミド基、オキソ基お
よびチオール基であり、アミノ基とチオール基が特に好ましい。付加位置は所望
の反応と使用する核酸によって異なり、核酸の合成には使用しない位置であるの
がよい。例えば、核酸がリボース−リン酸エステルバックボーンを含む場合、付
加位置はリボースの2’位であるのがよい。あるいは、ETMの付着について本
明細書に概説したように、塩基から離れた位置を使用し得る。 一般に、付加位置での官能基は、図18に一般的に描出するように、第一官能
基と核酸との間に、アルキル基などのリンカーをも含むことができる。
【0223】 標識を含む部分、例えばETMは、官能基をも含む。当業者が認めるように、
多種の配置を使用し得る。一態様においては、ETMそれ自体が第二の官能基を
含む。あるいは、そして好適には、大量のETMを加えるとき、複数のETMを
含むリンカーまたはポリマーが存在し、そのリンカーまたはポリマーが官能基を
含む。例えば、図18に描出するように、第二官能基を含むアルキルリンカーに
付着したフェロセンポリマーが使用し得る。 次いで、2つの官能基を直接またはリンカーを用いて結合させる。リンカーは
技術上既知である;例えば、周知のように同種の−または異種の−二官能性リン
カー(参照:ピアス・ケミカル・カンパニー(Pierce Chemical Company)19
94年カタログ、架橋剤に関するテクニカルセクション、155〜200頁;出
典明示により本明細書の一部とする)。リンカーの選択は結合する官能基に左右
される。例えば、アミノ基とスルフヒドリル基を結合させる場合、好適なリンカ
ーは、N−(γ−マレイミドブチリルオキシ)スルホスクシンイミド・エステル
(上記ピアス)を含む。さらなる好適なリンカーは、これらに限定されるもので
はないが、短鎖アルキル基、エステル、アミド、マレイミド基、エポキシ基およ
びエチレングリコールをもつアルキル基(置換アルキル基およびヘテロ原子部分
を含むアルキル基を包含する)およびその好適な誘導体である。 当業者が認めるように、付加の順序は変え得る。例えば、第一の官能基を核酸
に付加させ、次いでリンカーを付加し、次いでETM種を付加することができる
。あるいは、リンカーをETM種に付加させ、次いで核酸に付加させることもで
きる。あるいは、2つの官能基を直接付着させる。他の組合わせもさらに可能で
ある。 この方式で、大量のETMをリクルート・リンカーに付加させ得る。
【0224】 好適な態様において、標識物、例えば、ETMの付加は実際にハイブリダイゼ
ーション後にさらに起こり得る。図21AおよびBに示すように、官能基は合成
に際し、直接または少なくとも1個の、好ましくは複数の官能基を含むリンカー
の使用を介して核酸内に取込ませ得る。次いで、核酸は、例えば、標識プローブ
としてハイブリダイゼーション・アッセイに使用し、捕捉プローブにハイブリダ
イゼーションした後、標識物を加える。再び、上記のように、官能基は直接また
は官能基と標識物両方を含むリンカーとして標識物に取込まれる。この方式で、
大量の標識物、特にETMをアッセイ複合体に加えることができる。 さらに、リクルート・リンカーが核酸である場合、ETM付着を任意の組合わ
せをなし得る。
【0225】 好適な態様において、リクルートリンカーは核酸ではなく、代りに如何なる種
類のリンカーまたはポリマーであってもよい。当業者が認識するように、ETM
を含むように修飾し得る一般的なリンカーまたはポリマーを用いることができる
。一般に、ポリマーまたはリンカーは適度に溶解すべきであり、ETM付加のた
めの適切な官能基を含むべきである。
【0226】 本明細書にて用いる場合、“リクルートポリマー”とは少なくとも2または3
個のサブユニットを含んでなり、共有結合により付着している。モノマーサブユ
ニットの少なくともある部分はETMの共有結合による付着のための官能基を含
む。ある態様において、カップリング部分はサブユニットとETMとを共有結合
させるために用いる。付着のための好適な官能基は、アミノ基、カルボキシ基、
オキソ基およびチオール基などであって、アミノ基が特に好ましい。当業者が認
識するように、多様なリクルートポリマーが可能である。
【0227】 適切なリンカーとしては、アルキルリンカー(ヘテロアルキル((ポリ)エチ
レングリコール型構造を含む)、置換アルキル、アリールアルキルリンカーを含
む)を包含するが、これらに限定されるものではない。ポリマーについては上記
のごとく、リンカーはETM付着のための1個以上の官能基を含んでなり、付着
は当業者認識のとおりに、例えば、周知のホモ−またはヘテロ−二官能性リンカ
ーを使用することによって実施される(1994年Pierce Chemical Companyの
カタログ、架橋剤に関する技術のセクション、155〜200ページ参照。出典
明示により本明細書の一部とする)。
【0228】 適切なリクルートポリマーは、機能化したスチレン、例えば、アミノスチレン
、機能化したデキストラン、およびポリアミノ酸などを包含するが、これらに限
定されるものではない。好適なポリマーは、ポリリジンなどのポリアミノ酸(ポ
リ−D−アミノ酸およびポリ−L−アミノ酸両方)、およびリジンと特に好適な
他のアミノ酸を含むポリマーなどである。他の適切なポリアミノ酸は、ポリグル
タミン酸、ポリアスパラギン酸、リジンとグルタミン酸またはアスパラギン酸と
の共重合体、リジンとアラニン、チロシン、フェニルアラニン、セリン、トリプ
トファン、および/またはプロリンとの共重合体などである。
【0229】 好適な態様において、リクルートリンカーは上記のようにメタロセンポリマー
が含まれる。
【0230】 ラベルプローブ第一部分へのリクルートリンカーの付着は、当業者が認識する
ように、リクルートリンカーの組成に依存する。リクルートリンカーが核酸であ
る場合、これは、一般に、要求されるETM含有ヌクレオシドの取込みとともに
、標識プローブの第一部分の合成の際に形成される。あるいは、ラベルプローブ
の第一部分とリクルートリンカーが別個に造られ、次いで付着してもよい。例え
ば、相補性の重なり合う区分があって、例えば、技術的に既知のプソラレンを使
用することにより、化学的に架橋し得る二本鎖核酸の区分を形成させてもよい。
【0231】 非核酸リクルートリンカーを使用する場合、リクルートリンカーのリンカー/
ポリマー付着は一般に、当業者が認識するような標準的化学技法を用いて実施さ
れる。例えば、アルキル−ベースのリンカーを使用する場合、付着は核酸への絶
縁体付着と同様である。
【0232】 さらに、核酸と非核酸の混合物であるリクルートリンカーを、線状形態(すな
わち、核酸セグメントがアルキルリンカーとともに結合している)または分枝形
態(ETMを含み、かつ、さらに分枝していてもよいアルキル“分枝”をもつ核
酸)で入手することが可能である。
【0233】 好適な態様において、ETMを担持するのは、標識プローブのリクルートリン
カーよりもむしろ標的配列それ自体である。例えば、以下により詳しく説明する
ように、本発明の各ETMを含むヌクレオチド三リン酸を、例えば、ポリメラー
ゼ連鎖反応(PCR)に際し、増殖する核酸に酵素的に加えることが可能である
。当業者が認めるであろうように、幾つかの酵素は修飾したヌクレオチドに対し
一般に寛容(tolerate)であることが示されているが、本発明の修飾ヌクレオチド
の一部、例えば、“ヌクレオシド置換”の態様および恐らく一部リン酸エステル
の付着は、増殖する核酸への取込みを可能とする酵素により認識されることもあ
り、されないこともある。したがって、この態様での好適な付着はヌクレオチド
の塩基またはリボースに対するものである。
【0234】 このように、例えば、当業者周知のように、標的配列のPCR増幅は、その配
列に一般にランダムに取込まれたETMを含んでいる標的配列を与えることとな
る。本発明のシステムは、図16A、16Bおよび16Dに一般的に描出したよ
うに、これらのETMを用いて検出可能となるように構成することができる。
【0235】 別法として、より詳細に以下に説明するように、ETMを含んでなるヌクレオ
チドを核酸の末端、例えば、標的核酸に酵素的に付加することが可能である。こ
の態様においては、有効な“リクルートリンカー”を標的配列の末端に付加させ
、それを検出に使用することができる。このように、本発明は、伝導性オリゴマ
ーの単層と捕獲プローブを含んでなる電極を利用する組成物、およびアッセイ複
合体の成分にハイブリッド形成することの可能な第一部分と、アッセイ複合体の
成分にハイブリッド形成せず、少なくとも1つの共有結合により付着した電子移
動部分を含んでなる第二部分とを含んでなる標的配列を提供する。同様に、これ
らの組成物を利用する方法も提供する。
【0236】 プローブ配列、すなわち、相補性配列にハイブリッド形成するように設計され
た配列にETMを連接させることも可能である。このように、ETMは非リクル
ートリンカーにも同様に付加させることができる。例えば、アッセイ複合体の成
分にハイブリッド形成するラベルプローブ断片、例えば、第一部分に、または上
記に記載の標的配列に付加したETMが存在してもよい。これらのETMは一部
の態様において電子移動検出に使用してもよく、あるいはその位置とシステムに
よっては使用することができない。例えば、ある態様において、例えば、図16
Aに図示したように、無作為に取込ませたETMを含有する標的配列が捕獲プロ
ーブに直接ハイブリッド形成する場合には、捕獲プローブにハイブリッド形成す
る部分にETMが存在する。もし捕獲プローブが伝導性オリゴマーを用いる電極
に付着するならば、これらのETMはすでに説明したように電子移動を検出する
のに使用することができる。あるいは、これらのETMは特異的に検出し得ない
可能性もある。
【0237】 同様に、ある態様においては、リクルートリンカーが核酸である場合、リクル
ートリンカーの一部またはすべてが二本鎖であることが望ましい。一態様におい
ては、第二リクルートリンカーが存在し、それが実質的に第一リクルートリンカ
ーに相補的であり、第一リクルートリンカーにハイブリッド形成し得ることがあ
る。好適な態様において、第一リクルートリンカーは共有結合により付着したE
TMを含んでなる。別の態様において、第二リクルートリンカーはETMを含み
、第一リクルートリンカーは含まず、ETMは第二リクルートリンカーが第一に
対してハイブリッド形成することによりその表面に集められる。さらにもう一つ
の態様においては、第一および第二リクルートリンカー双方がETMを含んでな
る。留意すべきことは、上記のように、大量数のETMを含んでなる核酸は、同
様にはハイブリッド形成しない、すなわち、ETMの付着部位と特性に依存して
が低下することがある。かくして、一般に、多数のETMが鎖のハイブリッ
ド形成に用いられるとき、一般には約5より小さく、好ましくは約3より小さく
する。あるいはETMは、介在するヌクレオチドが充分にハイブリッド形成して
良好な反応速度が可能となるように十分な空間距離をとるべきである。
【0238】 一態様において、非共有結合により付着させたETMを使用し得る。一態様に
おいて、ETMはハイブリダイゼーションの指標である。ハイブリダイゼーショ
ンの指標は、二本鎖核酸と優先的に会合するETMがミランらの方法と同様に、
通常とは逆に加えられるときに機能する(Millan et al., Anal. Chem. 65:2317
-2323 (1993); Millan et al., Anal. Chem. 662943-2948 (1994);両文献を出
典明示により本明細書の一部とする)。この態様においては、表面でETMハイ
ブリダイゼーション指標と二本鎖核酸との会合により、ETMの局部濃度が増大
するなら、導電性オリゴマーを含む単層を用い、それをモニターすることができ
る。ハイブリダイゼーション指標はインターカレーターおよび小溝および/また
は主溝結合部分を包含する。好適な態様においては、インターカレーターを用い
てもよい;インターカレーション(挿入)は一般に二本鎖核酸の存在下にのみ起
こるので、二本鎖核酸の存在下においてのみETMは濃縮される。遷移金属複合
体ETMのインターカレーションは技術上既知である。同様に、小溝および主溝
結合部分、例えばメチレンブルーなどは本態様においても使用し得る。
【0239】 同様に、本発明のシステムは、ナピアーらが一般的に記載しているように、非
共有結合により付着させたETMを利用し得る(Napier et al., Bioconj. Chem
. 8:906 (1997);出典明示により本明細書の一部とする)。この態様においては
、DNA存在の結果としての一定分子の酸化還元状態の変化(すなわち、ルテニ
ウム複合体によるグアニン酸化)が、同様に導電性オリゴマーを含んでなるSA
Mを用い、検出することができる。 このように、本発明は導電性オリゴマーを含む単層を含んでなる電極であって
、一般に、捕捉プローブ、および標的配列またはETM含有のリクルート・リン
カーを含む標識プローブを包含する電極を提供する。
【0240】 核酸システム用に、本発明のプローブは標的配列に相補性(下に説明するよう
に、サンプルの標的配列または他のプローブ配列に対し)となるように設計し、
標的配列と本発明プローブのハイブリダイゼーションが起こるようにする。下に
概説するように、この相補性は完全である必要はない;標的配列と本発明の一本
鎖核酸間のハイブリダイゼーションを阻害するような、相当数の塩基対ミスマッ
チがあってもよい。しかし、もし突然変異の数が多すぎて、最少の緊縮ハイブリ
ダイゼーション条件下でもハイブリダイゼーションが起こらないならば、その配
列は相補的標的配列ではない。このように、本明細書において“実質的に相補的
”とは、プローブが正常の反応条件下でハイブリダイズするために標的配列に十
分に相補的であることを意味する。
【0241】 一般に、本発明の核酸組成物はオリゴヌクレオチドプローブとして有用である
。当業者には明らかなように、プローブの長さは、標的配列の長さおよびハイブ
リダイゼーションと洗浄条件により変わる。一般に、オリゴヌクレオチドプロー
ブは約8ないし約50ヌクレオチドの範囲であり、好ましくは約10ないし約3
0であり、特に好ましいのは約12ないし約25である。ある場合には、非常に
長いプローブ、例えば、50ないし200〜300ヌクレオチドの長さのものを
用いてもよい。このように、本明細書に描出した構造において、ヌクレオシドは
核酸と置換え得る。
【0242】 多様なハイブリダイゼーション条件が本発明において使用し得るが、高度、中
程度および低度の緊縮条件などである;例えば、Maniatis et al., Molecular C
loning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, 1989, and Short Protocols in M
olecular Biology, ed. Ausubel, et al.(出典明示により本明細書の一部とす
る)参照。
【0243】 ハイブリダイゼーション条件は技術上知られるように、非イオン性バックボー
ン、すなわちPNAを用いても変わり得る。さらに、架橋剤が標的結合に続いて
二本鎖のハイブリダイゼーション複合体を架橋する、すなわち、共有結合により
付着させるために加えられてもよい。
【0244】 当業者には明らかなように、本発明のシステムは、図に一般的に描出したよう
に、多数の異なる形状の上に取り得る。一般に、使用し得るシステムには3つの
タイプがある:(1)標的配列それ自体がETMで標識されるシステム(図16
A、図16B、および図16D参照);(2)標識プローブが直接標的配列にハ
イブリダイズするシステム(図16Cおよび図16H参照);および(3)標識
プローブが間接的に標的配列に、例えば、増幅プローブの使用を介してハイブリ
ダイズするシステム(図16E、図16Fおよび図16G参照)。
【0245】 これら3つのシステムすべてにおいて、要求されるというわけではないが、電
極表面に標的配列を固定するのが好ましい。これは捕獲結合リガンドと所望によ
り1つまたはそれ以上の捕獲伸長プローブを用いて好適に実施される。捕獲プロ
ーブのみを利用する場合には、各標的配列に対しユニークな捕獲プローブをもつ
ことが必要である;すなわち、表面はユニークな捕獲プローブを含むように設計
しなければならない。あるいは、捕獲伸長プローブを使用することが可能であり
、それが“普遍的”表面、すなわち、全ての標的配列を検出するのに使用し得る
単一タイプの捕獲プローブを含む表面を可能とする。“捕獲伸長”プローブは一
般的に図14などに描出され、捕獲プローブの全部または一部にハイブリダイズ
する第一部分と、標的配列の一部分にハイブリダイズする第二部分とをもつ。こ
れが次いで設計された可溶性プローブの生成を可能とするが、当業者も認めるよ
うに、一般により簡単でコストも掛らない。本明細書(例えば図14C)に示すよ
うに、2つの捕獲伸長プローブを使用し得る。これは一般にアッセイ複合体を安
定化するためになされる(例えば、標的配列が大きい場合、または大きな増幅プ
ローブ(特に、分枝または樹枝状増幅プローブ)が使用される場合)。
【0246】 好適な態様において、核酸は以下に検討するSAMの形成後に加えられる(上
記(4))。これは、当業者が認識するように種々の方法で実施し得る。一態様に
おいて、末端官能基を有する伝導性オリゴマーは、活性化させたカルボン酸エス
テルとイソチオシアン酸エステルを利用する好適な態様により調製されるが、そ
れは、図6に一般的に示すように、活性化させたカルボン酸エステルを用いて、
核酸に取付けた一級アミンと反応しうる。これら二種類の試薬は水溶液中で安定
であるという利点をもち、さらに一級アルキルアミンと反応する。しかし、塩基
のうち、一級芳香族アミンおよび二級および三級アミンは反応してはならず、そ
のようにして、表面への、核酸の部位特異的付加が可能となるようにしなければ
ならない。これがその表面上に既知方法(インクジェット、スポッティングなど
)によるプローブ(捕獲プローブまたは検出プローブのいずれか、または両方)
のスポッティングを可能とする。
【0247】 さらに、核酸を表面上に固定化するために用い得る多くの非核酸方法がある。
例えば、結合パートナー対が利用し得る;すなわち、一方の結合パートナーは伝
導性オリゴマーの末端に付着させ、他方は核酸の末端に付着させる。これはまた
核酸捕獲プローブを使用せずに実施し得る;すなわち、一方の結合パートナーは
捕獲プローブとして作用し、他方は標的配列または捕獲伸長プローブのいずれか
に付着する。すなわち、標的配列が結合パートナーを含むか、または標的配列に
ハイブリッド形成する捕獲伸長プローブが結合パートナーを含むかのいずれかで
ある。適切な結合パートナー対は、ビオチン/ストレプトアビジンなどのハプテ
ン対、抗原/抗体、NTA/ヒスチジンタグなどであるが、これらに限定される
ものではない。一般に、より小型の結合パートナーが好ましく、そのようにして
電子は核酸から伝導性オリゴマー中へ移動し、検出を可能とする。
【0248】 好適な態様において、標的配列それ自体が修飾され結合パートナーを含む場合
、結合パートナーは標的配列に酵素的に付着し得る修飾ヌクレオチドを介して、
例えば、PCR標的増幅工程に際して付着する。あるいは、結合パートナーは標
的配列に容易に付着する。
【0249】 あるいは、標的にハイブリッド形成するための核酸部分並びに結合パートナー
を有する捕獲伸長プローブを利用してもよい(例えば、捕獲伸長プローブは結合
パートナーに付着するのに使用されるアルキルリンカーなどの非核酸部分を含ん
でいてもよい)。この態様においては、安定のために標的の二本鎖核酸と捕獲伸
長プローブとを、例えば、技術上既知のプソラレンを用い架橋することが望まし
い。
【0250】 一態様において、該標的は捕獲プローブを用いる電極表面に結合しない。この
態様において重要なことは、本明細書のすべてのアッセイについて、過剰のラベ
ルプローブは検出前に除去すべきであり、アッセイ複合体(リクルートリンカー)
は表面に接近させるべきことである。当業者が認識するように、これは他の方法
で実施するのがよい。例えば、アッセイ複合体は、単層を含んでなる電極に付加
されるビーズ上に存在してもよい。ETMを含むリクルートリンカーは、表面上
へのビーズの重力沈降、ビーズ成分と表面間の静電気的または磁気的相互作用な
どの当技術分野で周知の技法を用い、上述の結合パートナー付着を用いて伝導性
オリゴマー表面に近接して設置することができる。あるいは、過剰のラベルプロ
ーブなどの過剰の試薬を除去した後、アッセイ複合体を、例えば、アッセイ複合
体を表面に移動させるのに十分な電圧でシステムにパルスを与えて、表面に移着
させることが可能である。
【0251】 しかし、好適な態様では、核酸捕獲プローブを介して付着させたアッセイ複合
体を利用する。
【0252】 好ましい実施態様として、標的配列自体がETMを含む。上記に検討したよう
に、このことは相当数の位置に取込まれたETMをもつ標的配列により実施し得
ることであり、上記概説のとおりである。代表的な例を図16A、図16Bおよ
び図16Dに示す。この態様においては、このシステムのその他について、プロ
ーブと標的の3’−5’配向が、ETM含有構造(すなわち、リクルートリンカ
ーまたは標的配列)が可能な限り単層の表面に接近するように、また、正しい配
向となるように選択される。これは図面に一般的に示したように、絶縁体または
伝導性オリゴマーを介する付着により実施することができる。さらに、当業者が
認めるであろうように、複数の捕獲プローブは、捕獲プローブの5’−3’配向
が異なる場合である図5Dに描出したような形状で、または複数の捕獲プローブ
を用いた場合に標的の“ループ”が生成する場所で利用することができる。
【0253】 好ましい実施態様として、図16Cに一般的に描出したように、標識プローブ
が標的配列に直接ハイブリダイズする。これらの態様において、標的配列は、好
ましくは、捕獲伸長プローブを含む捕獲プローブにより表面に固定するが、必ず
しも必要ではない。次いで、標識プローブを用い、伝導性オリゴマーからなる単
層の表面近傍にETMをもってくる。好適な態様においては、複数の標識プロー
ブを用いる;すなわち、標識プローブは標的配列(図中の標識化した141)にハ
イブリダイズする部分が多数の異なる標識プローブに対して異なり得るように設
計し、その結果、シグナルの増幅が起こるが、その理由は複数の標識プローブが
それぞれの標識配列に結合し得るからである。このように、図に描出したように
、nは少なくとも1の整数である。所望の感度、標的配列の長さ、標識プローブ
当たりのETM数により、nの好適な範囲は1〜50、特に好ましくは約1ない
し約20、そしてとりわけ好ましいのは約2ないし約5である。さらに、もし“
一般の”標識プローブが望ましいのであれば、増幅プローブの使用について一般
的に下に説明したように、標識伸長プローブを用いることができる。
【0254】 上記のように、この態様においては一般に、システムの形状と標識プローブの
配置は単層表面に可能な限り近接してETMが集まるように設計する。 好適な態様において、標識プローブは間接的に標的配列にハイブリダイズさせ
る。すなわち、本発明はシグナル増幅技術と電極上での電子伝達検出との新規な
組合わせに用途を見出だすが、これは核酸実施態様について図16に一般的に描
出したように、サンドイッチハイブリダイゼーションアッセイにとりわけ有用で
ある。これらの態様において、本発明の増幅プローブはサンプル中の標的配列に
直接または間接的に結合する。増幅プローブは、好ましくは標識プローブの結合
に利用し得る比較的多数の増幅配列を含むので、検出可能なシグナルが有意に増
加し、標的の検出限界が有意に改善され得る。これらの標識と増幅プローブ、お
よび本明細書に記載の検出方法は、本質的に既知の核酸ハイブリダイゼーション
によるいずれかの方式、例えば、標的を直接固相に結合する方式で、または標的
が1つ以上の核酸に結合し、それが次いで固相に結合するサンドイッチハイブリ
ダイゼーションアッセイにて、使用可能である。
【0255】 一般に、これらの態様は、以下のように説明し得る。増幅プローブは標的配列
に直接(例えば、図16E)または標識伸長プローブの使用を介して(例えば、
図16Fおよび図16G)ハイブリダイズするが、これは“一般的な”増幅プロ
ーブの調製を可能とする。標的配列は、好ましくは捕獲プローブを使用して電極
上に固定するが、必ずしも必要ではない。好ましくは、増幅プローブは多様な増
幅配列を含むが、ある態様においては、下記説明のように、増幅プローブは唯1
つの増幅配列を含む。増幅プローブは多くの異なる形状をとることができる;例
えば、分枝立体配座、樹枝状立体配座、または増幅配列の線状“ひも”などであ
る。これらの増幅配列を使用して標識プローブとのハイブリダイゼーション複合
体を形成し、電極を用いてETMを検出することができる。
【0256】 したがって、本発明は少なくとも1つの増幅プローブからなるアッセイ複合体
を提供する。本明細書において“増幅プローブ”または“核酸多量体”または“
増幅多量体”または文法上の等価物とはシグナル増幅を容易にするために用いる
核酸プローブを意味する。増幅プローブは以下に定義するように、少なくとも1
つの一本鎖核酸プローブ配列、および少なくとも1つの一本鎖核酸増幅配列、好
ましくは多様な増幅配列を含んでいる。
【0257】 増幅プローブは標識配列にハイブリダイズするために、直接または間接に使用
する第一プローブ配列を含む。すなわち、増幅プローブ自体が標的配列に実質的
に相補的である第一プローブ配列をもち得るか(例えば、図16E)、またはそ
れが追加のプローブの一部に実質的に相補的である第一プローブ配列をもち、そ
の追加のプローブはこの場合標識伸長プローブと呼ばれるものであって、標的配
列に実質的に相補的である第一部分を有する(例えば、図16F)。好適な態様
において、増幅プローブの第一プローブ配列は標的配列に実質的に相補的であり
、それを図16Eに一般的に描出してある。
【0258】 一般に、本明細書のプローブすべてについて、第一プローブ配列は特異性と安
定性を与えるに十分な長さのものである。このように一般に、もう一つの核酸に
ハイブリダイズするように設計された本発明のプローブ配列(すなわち、プロー
ブ配列、増幅配列、より大きなプローブの部分またはドメイン)は少なくとも約
5個のヌクレオシドの長さであり、好ましくは少なくとも約10個であり、そし
て特に好ましくは少なくとも約15個である。
【0259】 好適な態様において、図14に示すように、増幅プローブまたは本発明の他の
プローブのいずれかは、それら標的の不存在下でヘアピン基部−ループ構造を形
成することがある。基部二本鎖配列の長さは、ヘアピン構造が標的の存在下で有
利とならないように選択する。本発明のシステムにおいて、またはいずれかの核
酸検出システムにおいて、これらの型のプローブを使用すると非特異結合が有意
に減少し、結果としてシグナル−ノイズ比が増大するに至る。
【0260】 一般に、これらのヘアピン構造は4つの成分を含む。その第一成分は標的結合
配列、すなわち、標的に相補的領域(サンプル標的配列であるか、または結合が
要望どおりである他のプローブ配列であってもよい)であって、約10個のヌク
レオチドの長さがあり、好ましくは約15個である。第二成分はループ配列であ
り、核酸ループの形成を容易にし得るものである。この観点で特に好ましいのは
GTCの反復であり、脆弱X症候群において屈曲部を形成するものとして同定さ
れている。(PNA類似体を使用する場合、屈曲部はプロリン残基を含むものが
好ましい)。一般に、3ないし5つの反復が用いられるが、4ないし5が好まし
い。第三の成分は自己相補性領域であり、これは標的配列領域の一部に相補的な
第一部分と標識プローブ結合配列の第一部分を含む第二部分を有する。第四の成
分は標識プローブ(または場合によっては他のプローブ)に実質的に相補的であ
る。第四の成分はさらに“付着末端”、すなわち、プローブの他の部分にハイブ
リダイズしない部分を含み、好ましくは、すべてではないが、ETMの殆どを含
む。図14に一般構造を示す。当業者が認めるであろうように、本明細書に記載
したプローブのいずれかまたはすべてが、増幅、捕獲、捕獲伸長、標識、および
標識伸長プローブを含め、それらの標的不存在下でヘアピンを形成するように配
列することができる。
【0261】 好適な態様においては、数種の異なる増殖プローブを用いるが、そのそれぞれ
が標的配列の異なる部分にハイブリダイズする第一プローブ配列をもつ。すなわ
ち、1以上の増幅レベルがある;増幅プローブは多数の標識事象によりシグナル
を増幅し、また、それぞれ多様な標識をもつ数種の異なる増幅プローブが各標的
配列に対して使用される。このように、好適な態様では少なくとも2種類の異な
る増幅プローブのプールを利用するが、それぞれのプールは標的配列の異なる部
分に対しハイブリダイズするための異なるプローブ配列をもつ;異なる増幅プロ
ーブの数に関して唯一実際の制限は、当初標的配列の長さであろう。さらに、一
般に好ましいことではないが、異なる増幅プローブが異なる増幅配列を含むこと
も可能である。
【0262】 好適な態様において、増幅プローブはサンプルの標的配列と直接ハイブリダイ
ズしないが、代りに、図16Fに一般的に描出したように、標識伸長プローブの
第一部分にハイブリダイズする。これは“一般的な”増幅プローブ、すなわち、
様々な異なる標的と共に使用し得る増幅プローブの使用を可能とするためにとり
わけ有用である。これは増幅プローブの幾つかが特別の合成技術を必要とすると
いう理由で望ましいことである。このように、標識伸長プローブとして比較的短
いプローブを加えることが好ましい。このように、増幅プローブの第一プローブ
配列は、第一標識伸長一本鎖核酸プローブの第一部分またはドメインに実質的に
相補性である。標識伸長プローブはまた、標識配列の一部に実質的に相補性であ
る第二部分またはドメインをも含む。これらの部分双方が、好ましくは少なくと
も約10ないし約50ヌクレオシドの長さであり、好ましくは約15ないし約3
0の範囲である。“第一”および“第二”という用語は標的またはプローブ配列
の5’−3’配向に関して、配列の配向を付与することを意味するものではない
。例えば、相補標的配列の5’−3’配向を仮定すると、第一部分は第二部分に
対して5’に位置してもよく、あるいは第二部分に対して3’に位置してもよい
。本明細書では便宜上、プローブ配列の順序を一般に左から右に示すこととする
【0263】 好適な態様において、1つ以上の標識伸長プローブ増幅プローブ対が使用され
る、すなわち、nは1以上である。すなわち、複数の標識伸長プローブを用い、
その各々が標的配列の異なる部分に実質的に相補性である部分をもつ;これはも
う一つの増幅レベルとして役立ち得る。このように、好適な態様では少なくとも
2つの標識伸長プローブのプールを利用するが、その上限は標的配列の長さによ
り決まる。
【0264】 好適な態様においては、図5Gに描出し、またUSP5,681,697(出典
明示により本明細書の一部とする)に一般的に概説されているように、1つ以上
の標識伸長プローブを単一の増幅プローブと共に用い、非特異結合を減少させる
。この態様において、第一標識伸長プローブの第一部分は標的配列の第一部分に
ハイブリダイズし、第一標識伸長プローブの第二部分は増幅プローブの第一プロ
ーブ配列にハイブリダイズする。第二標識伸長プローブの第一部分は標的配列の
第二部分にハイブリダイズし、第二標識伸長プローブの第二部分は増幅プローブ
の第二プローブ配列にハイブリダイズする。これらの形状構造は、ある場合に“
十字型”構造または形状といい、一般に、大型の分枝または樹枝状増幅プローブ
を用いる場合には、安定性を付与するために実施される。
【0265】 さらに、当業者が認めるであろうように、標識伸長プローブは下記のように、
直接増幅プローブとよりもむしろプレ増幅プローブと相互作用する可能性がある
。 同様に、上記に概説したように、好適な態様では数種の異なる増幅プローブを
利用するが、それぞれが標識伸長プローブの異なる部分にハイブリダイズする第
一プローブ配列をもつ。さらに、上に概説したように、これは一般に好ましいこ
とではないが、異なる増幅プローブが異なる増幅配列を含むことも可能である。
【0266】 第一プローブ配列に加えて、増幅プローブはまた、少なくとも1つの増幅配列
を含んでいる。本明細書において“増幅配列”または“増幅セグメント”または
文法上の等価物とは、下記により詳しく説明するように、標識プローブの第一部
分に結合させるために、直接または間接に使用する配列を意味する。好ましくは
、増幅プローブは多様な増幅配列を含んでおり、好ましくは約3ないし約100
0からなり、特に好ましくは約10ないし約100からなり、そしてとりわけ好
ましいのは約50である。ある場合には、例えば、線状の増幅プローブを使用す
る場合、1ないし約20が好ましく、特に、約5ないし約10が好ましい。
【0267】 増幅配列は当業者が認めるであろうように、様々な様式で互いに結合すること
ができる。これらは互いに共有結合により直接結合するか、またはリン酸ジエス
テル結合、PNA結合などの核酸結合を介して、またはアミノ酸、炭水化物また
はポリオールブリッジなどの挿入結合剤を介して、または他の架橋剤または結合
パートナーを介して、介在配列もしくは化学的部分に結合してもよい。結合部位
はセグメントの末端であっても、および/または1つ以上の鎖内の内部ヌクレオ
チドであってもよい。好適な態様において、増幅配列は核酸結合を介して付着す
る。
【0268】 好適な態様においては、USP5,124,246(出典明示により本明細書の
一部とする)に一般的に説明されているように、分枝状の増幅配列を使用する。
分枝状の増幅配列は“フォーク様”または“櫛様”の立体配座を採ることが可能
である。“フォーク様”分枝状増幅配列は一般に分枝状構造を形成する起点から
発生する3つ以上のオリゴヌクレオチドセグメントをもつ。起点とは、少なくと
も3つのセグメントが共有結合によりまたは堅固に結合し得るもう一つのヌクレ
オチドセグメントまたは多機能分子である。“櫛様”分枝状増幅配列とは、線状
の背骨をもち、その背骨から多数の側鎖オリゴヌクレオチドが伸び出しているも
のである。いずれの立体配座においても、張り出したセグメントは、通常、修飾
したヌクレオチドに、またはオリゴヌクレオチド付着用の適切な官能基をもつ他
の有機部分に左右される。さらに、いずれの立体配座においても、多数の増幅配
列が、検出プローブに直接もしくは間接に結合させるために利用し得る。一般に
、これらの構造は修飾した多機能ヌクレオチドを用い、とりわけUSP5,63
5,352および5,124,246に記載されているように、技術上既知として
調製される。
【0269】 好適な態様において、樹枝状増幅プローブは、USP5,175,270(出典
明示により本明細書の一部とする)に記載されているように使用する。樹枝状増
幅プローブはハイブリダイゼーションを介して付着する増幅配列をもち、その結
果、それらの構造の成分として二本鎖核酸の部分をもつ。樹枝状増幅プローブの
外表面は多様な増幅配列をもつ。
【0270】 好適な態様においては、線状の増幅プローブを用いるが、これは個々の増幅配
列が末端−末端で直接結合するか、または短い介在配列と結合してポリマーを形
成する配列をもつ。他の増幅形状でのように、増幅配列間に追加の配列または部
分があってもよい。さらに、本明細書に概説するように、線状の増幅プローブは
図14に描出したように、ヘアピン基部−ループ構造を形成してもよい。
【0271】 一態様において、線状の増幅プローブは単一の増幅配列をもつ。これは、ハイ
ブリダイゼーション/解離のサイクルが起こって増幅プローブのプールを形成し
、それが標的にハイブリダイズして、次いで除去されてさらにプローブが結合す
るのを可能とする場合、または大量のETMを各プローブに対し使用する場合に
有用である。しかし、好適な態様においては、線状の増幅プローブは多様な増幅
配列を含む。
【0272】 さらに、増幅プローブは全体が線状であるか、全体が分枝であるか、全体が樹
枝状であるか、またはその組合わせであってもよい。 増幅プローブの増幅配列を直接または間接に用い、検出を可能とする標識プロ
ーブに結合させる。好適な態様において、増幅プローブの増幅配列は実質的に標
識プローブの第一部分に相補的である。あるいは、増幅伸長プローブを用いるが
、これは増幅配列に結合する第一部分と、標識プローブの第一部分に結合する第
二部分をもつ。
【0273】 さらに、本発明の組成物は“プレ増幅”分子を含んでもよいが、これは標識伸
長分子と増幅プローブ間の架橋部分としての役割をもつ。この方法で、さらに多
くの増幅因子と、したがて、さらに多くのETMが最終的に検出プローブに結合
される。プレ増幅分子は線状であっても分枝状であってもよく、典型的には約3
0〜3000個の範囲でヌクレオチドを含む。
【0274】 以下に概括する反応は、当業者が認めるであろうように様々な方法で実施する
ことができる。反応成分は同時に加えてもよいし、何らかの順序で順番に加えて
もよいが、好適な態様は以下に概括するとおりである。さらに、この反応はアッ
セイに含まれてもよい種々の他の試薬を含んでもよい。これらは塩、バッファー
、中性タンパク質、例えば、アルブミン、洗剤などの試薬類を含み、最適なハイ
ブリダイゼーションと検出を容易にし、および/または非特異もしくはバックグ
ランド相互作用を減少させるために使用することができる。他の条件でアッセイ
効率を改善する試薬として、例えば、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤
、抗微生物剤などを、サンプル調製方法および標的の純度に応じて使用してもよ
い。
【0275】 本方法を以下に概説する。好適な態様においては、最初に、標的を電極に固定
化または付着させる。一態様において、これは捕獲プローブと標的配列の一部と
の間にハイブリダイゼーション複合体を形成させることにより実施する。好適な
態様では捕獲エクステンダープローブを利用する;この態様においては、ハイブ
リダイゼーション複合体を標的配列の一部と捕獲エクステンダー・プローブの第
一部分との間に形成させ、さらなるハイブリダイゼーション複合体を捕獲エクス
テンダー・プローブの第二部分と捕獲プローブの一部との間に形成させる。別の
好適な態様では、別の捕獲プローブを利用し、標的配列の一部と第二捕獲エクス
テンダー・プローブの第一部分との間にハイブリダイゼーション複合体を形成さ
せ、第二捕獲エクステンダー・プローブの第二部分と捕獲プローブの第二部分と
の間に別のハイブリダイゼーション複合体を形成させる。
【0276】 別法として、電極に対する標的配列の付着は他の反応と同時に実施する。 この方法は、もし利用するのであれば、増幅プローブの導入で始める。好適な
態様においては、増幅プローブは標的配列の一部分に実質的に相補的な第一プロ
ーブ配列と、少なくとも1つの増幅配列を含む。
【0277】 一態様において、増幅プローブの第一プローブ配列は標的配列にハイブリダイ
ズし、ハイブリッド未形成の増幅プローブは除かれる。これは技術上既知のとお
りに実施されるが、アッセイのタイプに依存する。標的配列が電極などの表面に
固定化されると、過剰の試薬の除去は一般に、当業者が認めるであろうように、
1回以上の洗浄工程により実施される。この態様において、標的は固形支持体上
に固定される可能性がある。標的配列が表面に固定されない場合、本発明プロー
ブなど、過剰の試薬の除去は、該プローブに相補的な配列を含むビーズ(すなわ
ち、固形の支持体粒子)を添加することにより実施することができるが、その場
合、過剰のプローブはビーズに結合する。次いで、ビーズは、例えば、遠心分離
、濾過、磁場または静電場の適用などにより除去し得る。
【0278】 次いで、反応混合物は、増幅プローブが標的配列から解離する条件(温度、高
濃度塩、pH変化など)に付し、増幅プローブを取得する。次いで、増幅プロー
ブは増幅プローブ用の捕獲プローブからなる電極に加え、標識プローブを添加し
、次いで検出を実施する。
【0279】 好適な態様においては、標的配列にさらに増幅プローブを添加することにより
、より大きなプローブ・プールが生成し、ハイブリダイゼーション/解離反応が
繰返され、増幅プローブのより大きなプールを生成する。この増幅プローブのプ
ールは、次いで、増幅捕獲プローブからなる電極に添加し、標識プローブを添加
し、次いで検出を始める。
【0280】 この態様においては、本明細書に記載の方法を用い、電極を含む固形支持体上
に標的配列を固定化するのが好ましい;当業者が認めるところであるが、代りの
固形支持体付着技術、例えば、ガラス、ポリマーなどへの付着技術を用いてもよ
い。1つの固形支持体上で反応を行い、次いでプールした増幅プローブを検出用
の電極に加えることも可能である。
【0281】 好適な態様において、増幅プローブは多様な増幅配列を含む。 一態様において、増幅プローブの第一プローブ配列は標的配列にハイブリダイ
ズし、ハイブリッド非形成増幅プローブを除去する。再度、好適な態様では固定
化した標的配列を利用するが、ここでは電極に付着した捕獲プローブとのハイブ
リダイゼーションにより固定化するか、または捕獲伸長プローブにハイブリッド
形成し、それを次いで本明細書に記載のように固定化した捕獲プローブとハイブ
リダイズさせることにより固定化する。一般に、これらの態様においては、捕獲
プローブと検出プローブを電極上、一般には同一の“アドレス”に固定する。
【0282】 好適な態様において、増幅プローブの第一プローブ配列は少なくとも一つの標
識伸長プローブの第一部分にハイブリダイズし、標識伸長プローブの第二部分は
標的配列の一部分にハイブリダイズする。他の好適な態様では、1を超える標識
伸長プローブを利用する。 好適な態様において、増幅プローブの増幅配列は、少なくとも1つの標識プロ
ーブ配列にハイブリダイズさせることにより、直接検出に使用する。
【0283】 本発明はこのように、標的配列と標識プローブとを最小限に含んでいるアッセ
イ複合体を提供する。本明細書で“アッセイ複合体”とは、核酸を含むハイブリ
ダイゼーション複合体の集合体を意味し、少なくとも1つのETMを含み、それ
故に検出を可能とするプローブおよび標的を含む。アッセイ複合体の組成物は本
明細書に概説した異なるプローブ成分の用途に依存するものである。このように
、アッセイ複合体は捕獲プローブと標的配列を含む。アッセイ複合体はまた、標
識プローブ、捕獲伸長プローブ、標識伸長プローブ、および増幅プローブを包含
するが、本明細書に概説するように、使用する形状に依る。
【0284】 このアッセイは、標的の存在下にのみ標識プローブハイブリダイゼーション複
合体の形成を可能とするストリンジェンシー条件下に一般に実施する。ストリン
ジェンシーは熱力学的変動である工程パラメーターを変えることにより制御し得
る。パラメーターは温度、ホルムアミド濃度、塩濃度、カオトロピック塩濃度p
H、有機溶媒濃度などであるが、これらに限定されるものではない。ストリンジ
ェンシーには、非特異的(すなわち低ストリンジェンシー)物質を駆動して検出電
極から離すために電気泳動工程の使用を含めてもよい。(U,S,S,N,09,1
34,058に記載のように、標的被検体を、電気泳動を用いてそれらの結合リ
ガンドに結合させることができるのと同様に(出典明示により本明細書の一部と
する)。)
【0285】 これらのパラメーターは、USP5,681,697に一般的に概説されている
ように、核酸における非特異結合を制御するためにも使用することができる。こ
のように、一定の工程は高い緊縮条件で実施するのが望ましい;例えば、最初の
ハイブリダイゼーション工程が標的配列と標識エクステンダーと捕獲伸長プロー
ブの間で実施される場合である。特定の結合を優先させる条件でこの工程を実施
すると、非特異結合の減少が可能となる。
【0286】 好適な態様において、本明細書に概括した成分のすべてを使用する場合、好適
な方法は以下のとおりである。一本鎖標的配列はハイブリダイゼーション条件下
で捕獲伸長プローブおよび標識伸長プローブと培養する。好適な態様ではこの反
応を電極の存在下に固定化捕獲プローブとで行うが、この反応は最初のインキュ
ベーションと引続く電極への付加による2工程で実施してもよい。過剰の試薬は
洗浄除去し、次いで増幅プローブを添加する。もしプレ増幅プローブを用いるな
らば、それらは増幅プローブの前に、または増幅プローブと同時に加えるとよい
。過剰の試薬は洗浄除去し、次いで標識プローブを添加する。過剰の試薬は洗浄
除去し、下に概説するように検出を始める。
【0287】 一態様においては、標的配列の異なる部分にそれぞれ実質的に相補性である多
くの捕獲プローブ(または捕獲プローブと捕獲伸長プローブ)が使用される。 再度、本明細書に概説するように、増幅プローブを用いる場合、このシステム
は、一般に、標識プローブ結合に際し、ETMを含んでいるリクルートリンカー
が、単層表面の近接位に配置される。このように、本明細書に概説するように、
ETMが“樹枝状”型構造を介して付着する場合、核酸の付着点からETMまで
のリンカーの長さは、特に、捕獲伸長プローブを用いる場合に捕獲プローブの長
さと共に変わり得る。すなわち、より長い捕獲プローブは、捕獲エクステンダー
をもち、より短い捕獲プローブにおいてよりも、表面からさらに離れて“保持”
された標的配列となる。プローブ核酸とETMの間に余分の連結配列を加えると
、ETMが表面に空間的に近接することとなり、より良好な結果を与える。
【0288】 さらに、所望により、本発明に利用される核酸は検出に先立ち、もし適用可能
であれば、リガーゼ使用などの標準的分子生物学技法を用いることにより結合さ
せることもできる。同様に、安定性を望むのであれば、架橋剤を加え、構造を安
定させることが可能である。
【0289】 本発明の組成物は、一般に、下記のように、一般に当分野で既知の方法を使用
して合成する。当業者に認められるように、下記に概説の多くの方法は、リボー
ス−ホスフェート主鎖を含む核酸に関する。しかしながら、上記に概説のように
、多くの別の核酸類似体を使用し得、そのいくつかは主鎖にリボースまたはホス
フェートを含まない。これらの実施態様において、塩基以外の位置での結合に関
して、結合は、主鎖に依存して、当業者に認められるように行う。従って、例え
ば、結合はPNA主鎖の炭素原子で、下記に記載のように、またはPNAのいず
れかの末端で行うことができる。
【0290】 本組成物はいくつかの方法で製造し得る。好ましい方法は最初にヌクレオシド
に結合した伝導性オリゴマーを、更にヌクレオシドを添加して捕獲プローブを形
成し、続いて電極へ結合させて、合成する。あるいは、全捕獲プローブを製造し
、次いで、完全な伝導性オリゴマーを添加し、続いて電極に結合する。あるいは
、伝導性オリゴマーの単層(そのいくつかは、捕獲プローブの結合のための官能
基を有する)を最初に電極に結合し、続いて捕獲プローブを結合する。後者の二
つの方法は、使用する伝導性オリゴマーが、溶媒中でおよび慣用的核酸合成の条
件下で安定でないとき、好ましいことがある。
【0291】 好ましい実施態様において、本発明の組成物は、最初に、ヌクレオシドに共有
結合した伝導性オリゴマーを形成し、続いて、さらにヌクレオシドを添加して捕
獲プローブ核酸を形成し、伝導性オリゴマーを電極へ添加することを含む最後の
工程により製造される。
【0292】 伝導性オリゴマーのヌクレオシドへの結合はいくつかの方法で行い得る。好ま
しい実施態様において、全てまたは一部の伝導性オリゴマーを、最初に合成し(
一般に、電極への結合のために官能基を末端に有する)、これを次いでヌクレオ
シドに結合させる。次いで、さらにヌクレオシドを必要に応じて添加し、最後の
工程で一般に電極へ結合させる。あるいは、オリゴマー単位を一度にヌクレオシ
ドに添加し、さらにヌクレオシドを添加し電極へ結合させる。多くの代表的な合
成をPCT US97/20014の図面に示し、出典明示により本明細書の一
部とする。
【0293】 次いで、伝導性オリゴマーを、本明細書に記載のように結合した、1個(また
はそれ以上の)オリゴマー単位を含み得るヌクレオシドに結合させる。
【0294】 好ましい実施態様において、結合はリボース−ホスフェート主鎖のリボースに
対してである。従って、アミドおよびアミン結合を介した付着が可能である(P
CT US97/20014の図1および図2を参照)。好ましい実施態様にお
いて、リボースに結合した窒素と伝導性オリゴマーの芳香族環の間に、少なくと
も一つのメチレン基または他の短い脂肪族アルキル基(Z基として)が存在する。
代表的な合成がPCT US97/20014の図16に示されている。
【0295】 あるいは、結合はリボース−ホスフェート主鎖のホスフェートを介している2
種の合成スキームの例がPCT US97/20014の図4および図5に示さ
れている。両図はリボースの3'位での結合を示しているが、2'位を介して結合
することもできる。図5、Zでは、エチレンリンカーであるが、当業者に分かる
ように、他のリンカーを同様に使用して得る。
【0296】 好ましい実施態様において、結合は塩基を介している。一般的なスキームはP
CT US97/20014の図3に示されており、ヌクレオシドとしてウリジ
ンを使用し、フェニレン-アセチレン伝導性オリゴマーを使用している。当業者
に認められ得るように、当業者に一般的に知られている技術を使用してアミド結
合も可能である。好ましい実施態様において、保護基を、PCT US97/2
0014の図10および図11に一般的に概説されているように、伝導性オリゴ
マーの付加の前に塩基に添加してもよい。加えて、パラジウム交差結合反応を変
えて、二量体化問題;すなわち、二つの伝導性オリゴマーが塩基に結合せずむし
ろ二量体化するのを防止することもできる。
【0297】 あるいは、塩基への結合を、一単位のオリゴマーを有するヌクレオシドを製造
し、続いて他を添加することによりなし得る。
【0298】 修飾ヌクレオシドを製造し、保護して活性化したら、電極への結合の前に、標
準合成法(Gait, Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Pres
s, Oxford, UK 1984; Eckstein)により、成長しているオリゴヌクレオチドに、
幾通りかの方法でそれらを包含させ得る。
【0299】 好ましい実施態様において、1またはそれ以上の修飾ヌクレオシドを三ホスフ
ェート形態に変形させ、成長しているオリゴヌクレオチド鎖に、酵素DNAポリ
メラーゼI、T4DNAポリメラーゼ、T7DNAポリメラーゼ、Taq DNA
ポリメラーゼ、逆転写酵素およびRNAポリメラーゼを用いるなど、標準分子生
物学手法を用いて包含させる。3'修飾ヌクレオシドの核酸への包含には、末端
デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼを使用し得る。(Ratliff, Terminal
deoxynucleotidyltransferase.In The Enzymes, Vol. 14A. P. D. Boyer ed. p
p 105-118. Academic Press, San Diego, CA 1981)。従って、本発明は、共有結
合したETMを含むデオキシリボヌクレオシド三ホスフェートを提供する。好ま
しい実施態様は、一般に下記構造42および43に示すように、リボース(好ま
しくは2'位で)などの塩基または主鎖へのETM結合を利用する。
【0300】
【化42】
【0301】
【化43】
【0302】 従って、いくつかの実施態様において、ETMを含む核酸をその場で産生させ
ることができる。例えば、標的配列の末端をさらす、すなわち非ハイブリダイズ
するように、標的配列は捕獲プローブ(例えば、表面上の)にハイブリダイズし得
る。酵素とETMで標識した三ホスフェートヌクレオチドの添加により、その場
での標識の製造が可能となる。同様にポリメラーゼにより認識される標識ヌクレ
オチドを用いると、PCRと検出とを同時に行い得る;つまりその場で標的配列
が生成する。
【0303】 好ましい実施態様において、修飾ヌクレオシドをホスホルアミデイトまたはH
−ホスホネート形に変換し、これを次いでオリゴヌクレオチド合成の固相または
溶液合成に使用する。この方法で、リボースでの(すなわち、アミノ−またはチ
オール−修飾ヌクレオシド)または塩基での結合用の、修飾ヌクレオチドをオリ
ゴヌクレオチドに内部位置または5'末端で包含させる。これは、一般に、二つ
の方法の一つで行う。第一に、リボースの5'位を4',4−ジメトキシトリチル(
DMT)で保護し、続いて2−シアノエトキシ−ビス−ジイソプロピルアミノホ
スフィンとジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド存在下で反応させるか、ま
たは2'−シアノエトキシホスフィンクロロジイソプロピルアミノと反応させ、
当分野で既知のようにホスホルアミデイトを得る;しかしながら、他の方法を当
業者に認められるように使用し得る。Gait 前掲; Caruthers, Science 230: 281
(1985)参照、両方とも出典明示により本明細書の一部とする。
【0304】 基の3'末端への結合のために、好ましい方法は制御孔ガラス(CPG)または
他のオリゴマー支持体への修飾ヌクレオシド(またはヌクレオシド代替物)の結
合を使用する。この実施態様において、修飾ヌクレオシドを5'末端でDMTで
保護し、次いで、無水コハク酸と活性化しながら反応させる。得られるスクシニ
ル化合物をCPGまたは当分野で既知の他のオリゴマー支持体に結合させる。更
に、修飾しているか、またはしていないホスホルアミデイトヌクレオシドを、脱
保護後に5'末端に結合させる。従って、本発明はCPGのような固体オリゴマ
ー支持体に結合したヌクレオシドに共有結合した伝導性オリゴマーまたは絶縁体
、および本発明のヌクレオシドのホスホルアミデイト誘導体を提供する。
【0305】 本発明はさらにETMを含むリクルートリンカーを有する標識プローブの製造
方法を提供する。当業者には明らかなように、これらの合成反応はリクルートリ
ンカーの特徴とETMの結合方法に依存する。核酸リクルートリンカーについて
、標識プローブは、本明細書で概説したように、1以上の位置でETMを包含さ
せて一般につくられる。遷移金属錯体をETMとして使用する場合、合成はいく
つかの方法で行われる。好ましい実施態様において、リガンド、続いて遷移金属
イオンをヌクレオシドに添加し、次いで、遷移金属錯体が結合しているヌクレオ
シドをオリゴヌクレオチドに添加する、つまり、核酸合成機に添加する。あるい
は、リガンドを結合させ、続いて成長しているオリゴヌクレオチド鎖に包含させ
、金属イオンを添加する。
【0306】 好ましい実施態様において、ETMをリボース−ホスフェート主鎖のリボース
に結合させる。これは、伝導性オリゴマーについて本明細書に概説したように通
常行われ、本明細書およびPCT公開WO95/15971に記載のように、ア
ミノ−修飾またはオキソ−修飾ヌクレオシドを使用して、リボースの2'または
3'位に行う。次いで、リガンドとして、例えば金属イオンの結合のための遷移
金属リガンドとして、または、例えばアミド結合を介した、他のリガンドまたは
有機ETMの結合に使用できる化学的官能基として、当分野で認められるように
、アミノ基を使用し得る。例えば、例として、リボースを介して結合した種々の
ETMを有するヌクレオシドの合成を記載する。
【0307】 好ましい実施態様において、ETMはリボース−ホスフェート主鎖のホスフェ
ートに結合する。本明細書に概説のように、これは、ホスホルアミデイト結合の
ようなホスホジエステル類似体を使用して行われてもよく(一般に、PCT公開
WO95/15971参照)、またはPCT US97/20014の図4およ
び図5に記載のものと同様の方法を使用し、但し、実施例の概説と同様に、伝導
性オリゴマーを遷移金属リガンドまたは錯体または有機ETMと置きかえて行な
うこともできる。
【0308】 別の主鎖、例えば、ペプチド核酸または別のホスフェート結合への結合は、当
業者に認められるように行う。
【0309】 好ましい実施態様において、ETMはヌクレオシドの塩基に結合する。これは
、種々の方法でなし得る。一実施態様において、天然に存在するか、または本明
細書に記載ように添加した(例えば、図参照)塩基のアミノ基を、遷移金属錯体の
リガンドとして、または例えば、アミド結合を介して他のリガンドをまたは有機
ETMを添加するのに使用できる化学的官能基として使用する。これは、当業者
に認められるように行う。あるいは、ヘテロ環式環に結合したハロゲン原子を含
むヌクレオシドは商品として入手可能である。アセチレン結合リガンドは、一般
的に既知のように、ハロゲン化塩基を使用して添加し得る;例えば、Tzalis et
al., Tetrahedron Lett. 36(34): 6017-6020 (1995); Tzalis et al., Tetrahed
ron Lett. 36(2): 3489-3490 (1995); およびTzalis et al., Chem. Communicat
ions (投稿中) 1996参照、全て出典明示により本明細書の一部とする。また、塩
基へのアセチレン結合を介して結合したメタロセン(この場合では、フェロセン
)の合成を記載した図面および実施例も参照。
【0310】 一実施態様において、ヌクレオシドを、核酸に包含させた遷移金属リガンドを
有して製造し、次いで、遷移金属イオンおよび残りの必要なリガンドを当分野で
既知のように添加する。別の実施態様において、遷移金属イオンおよび付加的リ
ガンドを、核酸への包含前に添加する。
【0311】 本発明の核酸を、共有結合した結合リンカー(つまり、絶縁体または伝導性オ
リゴマーのいずれか)を有して製造し、結合リンカーを電極に結合させる。本方
法は、使用する電極のタイプによって変化する。本明細書に記載のように、結合
リンカーは一般に末端“A”リンカーを有して製造され、電極への結合を促進す
る。本適用の目的のために、硫黄−金結合は共有結合とみなす。
【0312】 好ましい実施態様において、伝導性オリゴマー、絶縁体および結合リンカーは
硫黄結合を介して電極に共有結合する。しかしながら、驚くべきことに、分子の
金電極への結合に使用する慣用的保護基は、一般に、本明細書に記載の組成物の
合成およびオリゴヌクレオチド合成反応への包含の両方への使用に理想的でない
。従って、本発明は、図に記載のようなエチルピリジンおよびトリメチルシリル
エチルを含む、普通でない保護保護基を使用した、伝導性オリゴマーの金電極へ
の結合の新規方法を提供する。しかしながら、当業者が理解するように、伝導性
オリゴマーが核酸を含まないとき、アセチル基などの慣用的保護基を使用し得る
。参照、Greene et al.、前掲。
【0313】 これは、いくつかの方法でなし得る。好ましい実施態様において、電極への結
合のために硫黄原子を含む伝導性オリゴマーのサブユニットをエチル−ピリジン
またはトリメチルシリルエチル基で保護する。前者に関して、これは一般に硫黄
原子(好ましくはスルフヒドリルの形で)を含むサブユニットをビニルピリジン基
またはビニルトリメチルシリルエチル基と、エチルピリジン基またはトリメチル
シリルエチル基が硫黄原子に添加されるような条件下で接触させることにより行
う。
【0314】 このサブユニットはまた、一般に、付加的サブユニットの結合のために官能部
を含み、従って、付加的サブユニットが結合して伝導性オリゴマーを形成する。
次いで、伝導性オリゴマーをヌクレオシドに結合させ、付加的ヌクレオシドが結
合する。保護基を次いで除去し、硫黄−金共有結合を行う。あるいは、伝導性オ
リゴマーの全てまたは一部を製造し、次いで、保護硫黄原子を含むサブユニット
を添加するか、硫黄原子を添加して、保護する。伝導性オリゴマーを次いでヌク
レオシドに結合させ、付加的ヌクレオチドを結合させる。あるいは、核酸に結合
した伝導性オリゴマーを製造し、次いで保護硫黄原子を含むサブユニットを添加
するか、硫黄原子を添加して、保護する。あるいは、エチルピリジン保護基を上
記のように使用してもよいが、1以上の工程の後に除去し、ジスルフィドのよう
な標準的な保護基に置き換える。このように、エチルピリジンまたはトリメチル
シリルエチル基は、合成反応のいくつかで保護基として作用し得、次いで、除去
して慣用的保護基に置き換えられる。
【0315】 本明細書の伝導性ポリマーの“サブユニット”は、硫黄原子が結合する伝導性
オリゴマーの少なくとも一部を意味するが、伝導性オリゴマーの付加的成分の添
加を可能にする官能基、または伝導性オリゴマーの付加的成分を含む付加的原子
も存在し得る。従って、例えば、構造1のオリゴマーを使用するとき、サブユニ
ットは少なくとも第一Y基を含む。
【0316】 好ましい方法は、1)一般に、ビニルピリジンまたはトリメチルシリルエチル
基をスルフヒドリルに添加して行う、伝導性オリゴマーの第一サブユニットに結
合した硫黄原子への、エチルピリジンまたはトリメチルシリルエチル保護基の添
加;2)伝導性オリゴマーの形成のための付加的サブユニットの添加;3)少なく
とも第一ヌクレオシドの伝導性オリゴマーへの添加;4)核酸を形成するための
付加的ヌクレオシドの第一ヌクレオシドへの添加;4)伝導性オリゴマーの金電
極への結合を含む。これはまた実施例に記載のように、ヌクレオシドの不存在下
でも行い得る。
【0317】 上記の方法は、金電極への絶縁分子の結合にも使用し得る。
【0318】 好ましい実施態様において、伝導性オリゴマー(および所望により絶縁体)を
含む単層を電極に添加する。一般に、添加の化学は、伝導性オリゴマーの電極へ
の添加と類似か同じであり、即ち、金電極への結合に硫黄原子を使用するなどで
ある。核酸に共有結合した伝導性オリゴマーに加えて、単層を含む組成物を、少
なくとも5つの方法の一つでなし得る:(1)単層の添加、続く結合リンカー−核
酸錯体の連続的添加;(2)結合リンカー−核酸錯体の添加、続く単層の添加;(
3)単層と結合リンカー−核酸錯体の同時添加;(4)完全な核酸の結合に適した
官能部で終了している結合リンカーを含む単層の形成(1,2または3のいずれか
を使用した);または(5)核酸合成に適した官能部で終了している結合リンカー
を含む単層の形成、即ち、核酸を当分野で既知のように単層表面で合成する。こ
のような適当な官能部は、ホスホルアミデイト添加のためのヌクレオシド、アミ
ノ基、カルボキシル基、保護硫黄部、またはヒドロキシル基を含むが、これらに
限定されない。例としては、好ましい方法(1)を用いた金電極上の単層の形成を
記載する。
【0319】 好ましい実施態様において、核酸はペプチド核酸または類似体である。この実
施態様において、本発明は、少なくとも一つの共有結合したETMまたは結合リ
ンカーを有するペプチド核酸を提供する。好ましい実施態様において、これらの
部分はPNAの単量体サブユニットに共有結合する。本明細書の“PNAの単量
体サブユニット”は、−NH−CHCH−N(COCH−塩基)−CH
CO−単量体またはPNAの誘導体(ここでは“ヌクレオシド”の定義内に含ま
れる)を意味する。例えば、PNA主鎖の炭素原子の数を変え得る;一般に、P
NA誘導体の数を記載したNielsen et al., Chem. Soc. Rev. 1997, 73頁参照、
出典明示により本明細書の一部とする。同様に、塩基を主鎖に結合させるアミド
結合を変え得る;ホスホロアミドおよびスルファーアミド結合を使用し得る。あ
るいは部分を内部単量体サブユニットに結合する。本明細書で“内部”は、単量
体サブユニットがN−末端単量体サブユニットまたはC−末端単量体サブユニッ
トでないことを意味する。本実施態様において、部分を単量体サブユニットの塩
基または主鎖に結合できる。塩基の結合は、本明細書に概説のように、または文
献から既知のように行う。一般に、部分を塩基に添加し、これを次いで本明細書
に概説のようにPNAに包含させる。塩基は、化学置換基の添加前またはその後
に、PNA合成反応に加入させるために必要となるように保護されているか、加
入が可能となるように誘導体化されていることができる。塩基の保護および誘導
体化をPCT US97/20014の図24〜図27に示す。PCT US9
7/20014の図28に示すように、塩基を次いで単量体サブユニットに加入
させ得る。PCT US97/20014の図29および図30は、2種の異な
る化学的置換基、1種の塩基と結合した1種のETMおよび1種の伝導性オリゴ
マー、を示している。図29は、ウラシル塩基に結合したフェロセンを有する、
PNA単量体サブユニットの代表的な合成を示す。図30は、ウラシル塩基と結
合した3ユニットの伝導性オリゴマーの合成を示す。
【0320】 好ましい実施態様において、部分はPNA単量体の主鎖に共有結合する。結合
は、一般に、単量体サブユニットの非置換炭素原子の一つ、好ましくは図31お
よび図32に示すように主鎖のα−炭素に行われるが、1または2位の炭素、ま
たは塩基を主鎖に結合させるアミド結合のα−炭素での結合もなし得る。PNA
類似体の場合、他の炭素または原子も同様に置換し得る。好ましい実施態様にお
いて、部分を、α−炭素原子に末端単量体サブユニットまたは内部の末端単量体
サブユニットへ添加する。
【0321】 この実施態様において、修飾単量体サブユニットを、ETM、結合リンカーま
たはその結合のための官能基で合成し、次いで塩基を添加し、修飾単量体を成長
しているPNA鎖に加入させ得る。PCT US97/20014の図31は、
PNA単量体サブユニットの骨格と共有結合する伝導性オリゴマーの合成を示し
ており、PCT US97/20014の図32は、単量体サブユニットの骨格
と結合するフェロセンの合成を示している。
【0322】 製造した共有結合部分を有する単量体サブユニットを、Will et al., Tetrahe
dron 51(44): 12069-12082 (1995)およびVanderlaan et al., Tett. Let. 38: 2
249-2252 (1997)(両方ともその全体を出典明示により本明細書の一部とする)
に概説のような方法を使用して、PNAに包含させる。これらの方法は、ペプチ
ド核酸への化学置換基の添加を、化学置換基を破壊させることなく可能にする。
【0323】 当業者に認められるように、電極は、核酸、伝導性オリゴマーおよび絶縁体の
任意の組み合わせを有するように製造し得る。
【0324】 本発明の組成物は、更に、一個以上の標識を任意の位置で含み得る。本明細書
での“標識”は、化合物の検出を可能にするために結合した元素(例えば、アイ
ソトープ)または化学化合物を意味する。好ましい標識は放射活性同位体標識、
着色または蛍光色素である。標識は、任意の位置で化合物に包含し得る。加えて
、本発明の組成物は、架橋剤のような他の部分も含み得、標的−プローブ錯体の
架橋を促進する。例えば、Lukhtanov et al., Nucl. Acids. Res. 24(4): 683 (
1996)およびTabone et al., Biochem. 33: 375 (1994)参照、両方とも出典明示
により本明細書の一部とする。
【0325】 理論に囚われなければ、電極上のSAMの存在が、非特異結合、特にアッセイ
を妨げる電気活性種の低減を大きく促進する一方、上記考察のように、ETMが
単層に貫入して電極へより好適に接近し得るか、または単層が存在しない場合は
、電子伝達を促進すると思われる。すなわち、単層が“短い程”より良好なシグ
ナルを生じ得る。 このように、好適な態様において、本発明方法は、第一単層を形成させ、標的
被検体を捕捉し、次いで該単層を除去するか、またはETMが電極により好適に
接近させ得るような他のタイプの単層と置換えることを含む。これがSAMを有
することの利益(非特異結合の減少)を効果的に生じ、さらに電極に対するET
Mの良好な接近を可能とし、シグナル送達を容易にする。
【0326】 従って、この態様において、本方法は捕捉結合リガンドを含む第一SAM形成
種と少なくとも第二SAM形成種を有する電極に標的被検体を添加することを含
む。第二SAM形成種は、例えば、粗い表面上に絶縁体を、または絶縁体とEF
Sの混合物を含み得る。捕捉結合リガンドと標的被検体は結合複合体を形成する
(捕捉結合リガンドと標的被検体が核酸である場合、ハイブリダイゼーション複
合体という;本明細書に概説するように、このハイブリダイゼーション複合体は
捕捉エクステンダー・プローブなどの追加の核酸を含んでもよい)。この結合複
合体はETMを含んでいてもよく、その場合にはそれがアッセイ複合体であるか
、またはETMを溶液結合リガンド(核酸の場合には標識プローブという)の形
状で置換工程の後に加えてもよい。
【0327】 次いで、第三のSAM形成種を加え、第二SAM形成種を置換える。興味深い
ことに、“不足している”単層形成種、例えば、C2ないしC6のアルキルチオ
ール種などは非捕捉結合リガンド単層形成種に置換わると思われる;すなわち、
捕捉結合リガンド種は優先的に維持され、一方で他のSAM形成種が置換わる。
このように、この置換工程は表面から結合複合体を有意に除去するとは思われな
い。しかし、ETMからの有意なシグナル増大が見られる。さらに、特にC2種
との置換後、なお荷電した親水性ETMがシグナル送達を可能とするが、これは
電極が有意に保護されないことを結論として意味する。
【0328】 次いで、アッセイ複合体が形成される;すなわち、もし未だ存在しないならば
、溶液結合リガンドの形状でETMを添加し、アッセイ複合体が標的被検体、捕
捉結合リガンド、および少なくとも1つの電子伝達部分(ETM)を含むように
する。次いで、下記のように検出を進行させる。 核酸に加えて、他の型の標的被検体を検出することが可能である。好適な態様
において、本システムは下記システム1に描出するように、有機汚染物質などの
汚染物質を検出するために使用する:
【0329】
【化44】 システム1では下記するように、斜線部分が電極を表し、好ましくは表面上に
単層が存在する。Fは、電極と導電性オリゴマーまたは絶縁体との共有結合を
可能にする連結であって、本明細書に記載のような結合、原子またはリンカーな
どを含み、例えば、“A”として下記に定義している。Fは、導電性オリゴマ
ーまたは絶縁体の共有結合を可能にする連結であり、本明細書に記載するような
結合、原子、または連結であり得る。Fは、導電性オリゴマーの部分、絶縁体
の部分、末端基の部分、またはレドックス活性複合体または成分の部分であり得
る。また、両方とは異なるもの、例えば、“Z”で定義したようなものでもあり
得る。Xはスペーサー(導電性オリゴマー、不動態化剤または絶縁体、必要に応
じて)である。RAMはレドックス活性分子であり、本明細書中ではときにET
Mとして言及している。TGは末端基であり、有機汚染物などの標的汚染物の結
合に影響を及ぼすように選択される。例えば、この実施態様ではTGは疎水性で
ある。表面の汚染物の結合がRAMの局所的環境に影響を与える。例えば、RA
MのEすなわち溶媒再編成エネルギーの変化によるものであり、分析物の存在
においてシステムのファラデーインピーダンスが変化する。この場合の結合は特
定の分析物に特異的でない。
【0330】 システム2、3、4および5は、特異的な相互作用が起きる点を除き、同様の
状態を表す。標的分析物は、結合リガンドに特異的に結合し、結合リガンドおよ
びRAMに比べて一般的に大きい。結合に際してRAMの局所的環境が影響を受
ける。例えば、RAMのEすなわち溶媒再編成エネルギーの変化によるもので
あり、分析物の存在においてシステムのファラデーインピーダンスが変化する。
この場合における標的分析物はタンパク質、細胞などであり得る。さらに、これ
らのシステムのいずれかまたはすべてにおいて、同時還元剤を用い得る。標的分
析物が結合すると、同時還元剤のRAMへの接近が制限され、相違のシグナルま
たはシグナルの喪失のいずれかまたは両方をもたらす。さらに、ここに記載のす
べてのシステムについて、単層の個々の分子についての順序や近接は決定的なも
のでない。
【化45】 システム2では、1つの結合リガンド(BL)につき2以上のRAMが存在し
得る。すなわち、表面におけるBLに対するRAMの比率(標的分析物の相対的
な大きさに依存的)は1:1から100:1以上である。シグナルの増幅が可能
であり、1を越えるRAMが単一の標的分析物の検出に使用できる。
【0331】
【化46】
【化47】
【化48】
【0332】 システム6は、標的分析物の結合がRAMと電極との間のHABに理論的に影
響を及ぼすシステムを表す。
【化49】
【0333】 システム7は同様の状態を表すが、結合リガンドがRAMの電極との連結に固
有である点が相違する。例えば、ペプチドまたは核酸に分析物が結合する。
【化50】
【0334】 システム8は、分析物がレドックス活性分子としても働く状態を表す。これは
、毒性のある重金属などの金属のイオンの検出に特に有用である。システム8は
金属イオンMおよび金属リガンドMLを表すが、当業者はわかるように、この場
合、分析物がメタロ酵素、BLなどであることも可能である。当業者はわかるよ
うに、システム8は、相違のリガンドの配置を用いて、相違の金属イオンの検出
に特に有用である。1つの金属が他の金属に優先して結合することが金属リガン
ド結合に相関し得る評価判定結果をもたらす。さらに、相違の金属は、相違する
を有し、相違するシグナルを与える。
【化51】
【0335】 システム9は、検出用のシグナルの低下に基づく競合型アッセイを表す。この
場合、標的分析物は、一酸化炭素(CO)などのリガンドであり、システムの弱
い金属リガンド(WML)より特定の金属にさらに強いリガンド(SML、高い
結合定数を有す)である。
【化52】
【0336】 システム10は、同様のアッセイ型を表し、シグナルの低下よりもシグナルの
変化が起きる。例えば、Eおよびλの両方が新しいリガンド結合の結果として
変化する。
【化53】
【0337】 システム11は、ファラデーインピーダンスおよびマス伝達の変化についての
分析物の結合に対する拡散係数の変化を利用する。この実施態様において、リガ
ンドが電極に共有結合していないときは、拡散係数の変化がマス伝達インピーダ
ンスを変え、さらに全ファラデーインピーダンスを変える。すなわち、ある状態
において、レドックス活性複合体の周波数応答がその拡散係数によって制限され
る。また、伝達インピーダンスの変化が分析物の結合によっても変化し得る。高
い周波数において、レドックス活性複合体が十分迅速に拡散しないので、強い出
力シグナルを生み出すのに十分な速度で、その電子を電極に可逆的に伝達する。
低い周波数では、分子が拡散するのに十分な時間があり、出力シグナルを検出で
きる。この実施態様において単層の使用は一般的に好ましくない。 アッセイ複合体を形成する結合がレドックス活性分子の拡散係数を一般的に変
える。結果として、ファラデーインピーダンスが変化する。この作用が最大にな
るのは、結合相手がレドックス活性部分に比して大きいときである。レドックス
活性部分が複合体への結合に際し比較的小さいと迅速に拡散し、比較的大きいと
緩やかに拡散する。このことが最大の変化をもたらすので好ましい。同様に、ほ
ぼ同じ大きさの結合相手であると、検出可能なシグナルが得られる。 あるいは、レドックス活性部分の結合相手との結合が大きさの低下を起こすこ
ともある。例えば、抗体などのある種のタンパク質構造は立体的にかさばった配
座を“緩め”、その相手(すなわち抗原)との結合の結果として“締め上げる”
【化54】
【0338】 システム12は、システム10および11に類似しており、相違するリガンド
のセンサーであるが、リガンドの変化によってシステムのEに変化が起きる。
同様のシステムが2種の金属とともに使用される。すなわち、強い金属リガンド
を加える代わりにリガンドについての異なる親和性を有する相違の金属を加えて
、電気化学的変化を得る。
【化55】
【0339】 システム13は前述のシステムの変形であり、RAMおよびBLが密接に結合
またはリンクしている。
【化56】
【0340】 システム14は、EまたはHABの変化の結果としてファラデーインピーダ
ンスに変化がある。この場合、結合リガンドはなんらかの方法で自己結合し、R
AMを電極に非常に近接せしめる。例えば、結合リガンドは核酸(例えば、核酸
結合タンパク質の検出のために)またはタンパク質(例えば、結合リガンドタン
パク質を阻害または結合するタンパク質の検出のために)であり得る。タンパク
質などの標的が結合すると、RAMの立体配座および局所的環境が変化し、検出
可能なシグナルをつくる。システム15は“可逆的”にすることもでき、分析物
が結合するとRAMを表面に近接せしめる。
【化57】
【0341】 システム15は、同一または異なる2つの結合リガンド、BL1とBL2を利
用して、RAMの環境を変える。望ましくは、結合リガンドの一つがなんらかの
“一般的”結合リガンドであることである。Eおよび/またはインピーダンス
の変化が検出可能なシグナルをもたらす。
【化58】
【0342】 システム16もシグナルの低下に基づく。この実施態様で、使用の標的分析物
が金属イオン結合リガンド複合体を結合して、利用できない金属をレドックス活
性分子として働かす。
【化59】
【0343】 システム17は、特定の結合リガンドに対する金属イオン親和性の変化を利用
し、存在する相違の金属を基にしたシグナルの変化(相違のEを生じる)を検
出する。
【化60】
【0344】 システム18はシステム9に類似し、標的分析物を検出するための競合型アッ
セイを表す。システム15において、共有結合した標的分析物または標的類似体
(TA)が標的分析物の添加によって結合リガンドから競合的に外れて、シグナ
ルの低下をもたらす。
【化61】
【0345】 システム19は,システム2および18の混合であって、かさばる類似体(T
A)を小さい標的分析物(T)で置換すると、相違するシグナルをもたらす。例
えば、同時レドックス反応が起こり得る。他方、“ホール”を有する単層が類似
体の不存在で電流を生じ、類似体の存在で電流を生じないので、これも使用でき
る。
【化62】
【0346】 システム20は競合型アッセイにおける2電極システムを表す。この有用な点
は、第2電極上のシグナルの増加を検出し得ることにある。シグナルの増加はそ
の消失よりも一般的に好ましい。
【化63】
【0347】 当業者は分かるように、システム20もいくつかのやり方で配置し得る。BL
1とBL2とは、標的分析物または類似体に対し同じ部位での異なる親和性を有
する。すなわち、異なる部位に結合する。同様に他のシステムも2電極システム
で用い得る。 さらに、他の実施態様において上記したシステムを用いることが可能である。
例えば、熱がファラデーインピーダンスを変えるので、上記システムを熱センサ
ーとして用いることができる。同様に、反応活性または開裂性の結合を使用して
電極にRAMを連結すると、シグナルの低下に基づく開裂剤のセンサーが可能と
なる。例えば、光線遊離結合が光線の検出に用いられ,基質が酵素(プロテアー
ゼ、ヌクレアーゼ、カルボヒドラーゼ、リパーゼなど)のセンサーとして用いら
れ、核酸を切断する薬剤などの開裂剤が用いられる。
【0348】 上記のシステムにおいて、レドックス活性複合体が電極に共有結合している。
当業者は分かるように、このことは多くの方法でなし得る。好ましい実施態様に
おいて、レドックス活性分子および結合リガンドの一つまたは両方がスペーサー
を介して電極に連結する。下記に概説する技術および組成物が使用される。“ス
ペーサー”とは、電極の表面から離れたレドックス活性複合体を保持する部分を
意味する。好ましい実施態様において、レドックス活性分子と連結するのに使用
されるスペーサーは、概説するように導電性オリゴマーであり、適当なスペーサ
ー部は下記するように不動態化剤および絶縁体を含む。スペーサー部は実質的に
非導電性であり得る。一般的に、スペーサーの長さは導電性ポリマーおよび不動
態化剤について述べた通りである。当業者は分かるように、スペーサーが長すぎ
ると、レドックス活性分子と電極との電子的カプリングが急速に低下する。 好ましい実施態様において、レドックス活性分子が導電性オリゴマーを介して
連結し、レドックス活性分子と電極との間のファラデーインピーダンスの変化が
検出される。システムの他の成分が他のスペーサーを用いて連結される。例えば
、システム2に一般的に表すように、結合リガンドとレドックス活性分子が別個
に連結されると、結合リガンドは非導電性オリゴマー・スペーサーを介して連結
される。
【0349】 少なくとも1つの標的被検体と1つのETM、好ましくは1つの捕獲結合リガ
ンド、を含む本発明のアッセイ複合体が形成されると、検出が電子的イニシエー
ションにより進行する。メカニズムまたは理論に制限されなければ、検出は、E
TMから電極への電子伝達に基づいており、π軌道の介在を含んでいる。
【0350】 上記概略のように、本発明は、シグナルの増加、ノイズの減少、またはノイズ
のバックグラウンドからシグナルをより明瞭化するかまたは検出可能にする、技
術を教示する。すなわち、バックグラウンドノイズ中のシグナルの同定をよりよ
くするために機能し得る何の技術も、本発明で使用することができる。これらの
技術は一般的に3つの方法に分類される:(1)イニシエーションシグナルを適用
するタイプまたは方法での変更(すなわち、"入力"を変更して最大にするまたは
サンプルシグナルを同定する);(2)データ処理、すなわち"出力"シグナルに使
用して、サンプルシグナルを最大化または同定する技術;および(3)アッセイ自
体の変更、すなわち、サンプルシグナルのよりよい同定を可能にする、電極表面
またはシステムの成分の変更。
【0351】 電子伝達の検出、すなわち、ETMの存在は一般に好適な電圧により電子的に
開始される。電位はアッセイ複合体に加える。加えられる電位の正確な制御と変
化はポテンショスタットおよび3つの電極システム(1つは参照用、1つはサン
プル用(または作業用)、1つは対向電極用)または2つの電極システム(1つ
はサンプル用、1つは対向電極用)による。これは一部ETMの選択に左右され
るシステム、また一部使用した伝導性オリゴマー、単層の組成と整合性、および
どのタイプの参照電極を使用したかに左右されるシステムのピーク電位に、印加
した電位がマッチすることを可能とする。
【0352】 好適な態様においては、交流電流(AC)入力シグナルを使用する。上記のよう
に、広範囲の異なるACシグナルを使用することができる。例えば、入力シグナ
ルは、AC成分のみまたはAC成分とDC成分の両方、特にDCスウィープ、を
含み得る。基本振動数f0のAC電圧を電極に適用し、DC電圧をETMのレド
ックス電位を介してスキャンする。
【0353】 理論に拘束されることなく、電極に連結したETMは、つながっている抵抗と
コンデンサーを流れる交流電圧に同様に反応する。基本的に、これらの抵抗とコ
ンデンサーとして働く複合体の性質を測定し得る方法は、検出の基本とすること
ができる。驚くべきことに、従来からの電気化学理論、例えば、Laviron et al.
, J. Electroanal. Chem. 97:135(1979) および Laviron et al., J. Electroan
al. Chem. 105:35(1979)(出典明示により本明細書の一部とする)は、非常に小
さいEAC(10mV以下)および比較的多数の分子を除き、本明細書に記載のシ
ステムのモデルとはならない。すなわち、交流電流(I)は、Lavironの式に正
確には記載されていない。このことは、この理論が電子の限界のない源とシンク
を想定していることに部分的には由来するものであり、これは本発明のシステム
には当てはまらない。
【0354】 これらのシステムのよいモデルとなるAC電圧理論は、O' Connor et al., J.
Electroanal. Chem. 466(2):197-202 (1999)(出典明示により本明細書の一部と
する)に概略説明されている。これらのシステムを予測する式を、式1として下
に示す: 式1
【数1】 式1中で、nはレドックス分子毎の酸化または還元電子数、fは適用振動数、
Fはファラデー定数、Nはレドックス分子の総数、Eはレドックス分子の形
式的電位、Rはガス定数、TはKelvin度数での温度、そしてEDcは電極電位で
ある。このモデルは実験データと非常によく適合している。ある場合に、電流が
予測より小さくなるが、これは、フェロセンの減少によるものであり、多くの方
法で回復させ得る。
【0355】 加えて、ファラデー電流も、式2に示すとおり、時間の関数として表わすこと
ができる: 式2
【数2】 Fはファラデー電流であり、qeは電気素量である。
【0356】 。しかし、電子伝達速度の影響も機器による因子も、式1に組み入れられてない
。電子伝達速度は、応用周波数に近いか、それより低いと、重要である。このよ
うに真のiACは下記の式12に示すような3因子の関数である。 式3 iAC=f(Nernst因子)f(kET)f(機器因子)
【0357】 これらの式は、交流素子および直流素子を含む入力シグナルを利用するシステ
ムにおける期待交流電流をモデル化し、予測できる。上記したように、驚くべき
ことに従来の理論は、非常に低電圧の場合以外は、これらのシステムをまったく
モデル化しない。
【0358】 一般に、非特異的結合標識プローブ/ETMは、ETMを含む標識プローブが
正確な方向に特異的に結合したときよりも、インピーダンスに相違を示す(すな
わち、高いインピーダンス)。好ましい実施態様において、非特異的結合物質を
洗い落とすと、無限大の効果的なインピーダンスをもたらす。このように、一般
的に下記するように交流検出はいくつかの利点があり、それには、感受性の増加
およびバックグラウンドのノイズを拙除する能力が含まれる。特に、インピーダ
ンスの変化(例えばバルクインピーダンスを含む)を、ETM含有プローブの非
特異的結合と標的特異的アッセイ複合体形成の差として監視できる。
【0359】 従って、AC開始および検出方法を用いると、システムの周波数応答がETM
存在の結果として変化する。“周波数応答”は、電極とETMとの間の電子伝達
の結果としてのシグナル修飾を意味する。この修飾はシグナル周波数に従って相
違する。周波数応答には、1以上の周波数での交流電流、位相シフト、直流オフ
セット電圧、ファラデーインピーダンス等が含まれる。
【0360】 標的配列および標識プローブを含むアッセイ複合体がつくられると、第一入力
電子シグナルはシステムに用いられ、好ましくは少なくともサンプル電極(本発
明の複合体を含む)および逆電極を介してシステムに用いられ、電極とETMと
の電子伝達が開始される。電極システムも対照および実施電極に適用される電圧
で用いられる。第一入力シグナルは少なくとも1つの交流素子を含む。交流素子
は変化し得る振幅と周波数である。一般的に、本発明方法での使用において、交
流振幅は約1mV−1.1Vであり、約10mV−800mVが好ましく、特に
約10−500mVが好ましい。交流周波数は約0.01Hz−100KHzで
あり、約10Hz−10MHzが好ましく、約100Hz−20MHzが特に好
ましい。
【0361】 交流と直流シグナルとの組み合わせ使用は、驚くべき感受性とシグナル最大化
を含む種々の利点がある。
【0362】 好ましい実施態様において第一入力シグナルは交流素子および直流素子を含む
。すなわち、作動電極と逆電極直流オフセット電圧は、ETM(例えば、フェロ
センを用いると、掃引は一般に0から500mV)(あるいは、作動電極をグラ
ウンドすると、逆電極は0から−500mVで掃引される)の電子化学的電位を
介して掃引される。この掃引はシステムの最大応答が見られる直流電圧を同定す
るのに用いられる。これは一般にETMの電子化学的電位かその周辺である。こ
の電圧が測定されると、掃引または1以上のユニホーム直流オンセット電圧が用
いられる。直流オンセット電圧は約−1Vから+1.1Vであり、約−500m
Vから+800mVが望ましく、約−300から500mVが特に望ましい。好
ましい実施態様において直流オンセット電圧はゼロではない。直流オンセット電
圧のトップで、変化し得る振幅および周波数のシグナル交流素子が適用される。
もしETMが存在して交流摂動に応答し得ると、電極とETMとの間の電子伝達
によって、交流電流が生じる。
【0363】 確立したシステムにおいて、ETM(即ち標的配列の存在する)核酸の有無を
識別するのに、単一の入力シグナルを用いて十分である。他方、複数の入力シグ
ナルも適応される。これには、多くの種類があり、多重周波数、、多重交流振幅
あるいはこれらの組合せが用いられる。
【0364】 このように好ましい実施態様において、多重直流オンセット電圧を用いると、
直流電圧掃引が好ましい。これは単一の周波数または2以上の周波数で行われる
【0365】 好ましい実施態様において、交流周波数は変更することができる。異なる周波
数においては、異なる分子が異なる方法で応答する。当業者には明らかなように
、周波数を上げると、一般に出力電流が増す。しかし、周波数が、電子が電極と
ETMの間を移動する速度より大きい場合は、高い周波数は出力シグナルの減少
または損失を招くこととなる。ある場合は、周波数はETMと電極の間の電子伝
達速度より速くなり得、そうすると出力シグナルも落ちるであろう。
【0366】 好適な態様において、小AC電圧による多重周波数を印加し、それぞれの基本
波を評価する。あるいは、好適な態様では大ACVでの幾つかの周波数を利用し
、それぞれの高調波を評価する。同様に、好適な態様では大ACVでの幾つかの
周波数を利用し、その場合システム上の異なる周波数の作用が個々の周波数での
出力合計と異なる出力となし得る。 一態様において、検出には単一周波数での出力シグナルの単一測定値を利用す
る。すなわち、標的配列不存在下でのシステムの周波数応答、および従ってET
M含有標識プローブの不在が特定の高周波数で非常に低い値として予め測定する
ことが可能である。この情報を使用すると、特定周波数での如何なる応答もアッ
セイ複合体の存在を示すものとなる。すなわち、特定周波数での如何なる応答も
アッセイ複合体の特性である。このように、必要なのは単一入力周波数を使用す
ることのみであり、周波数応答の何らかの変化はETMの存在すること、従って
標的配列の存在することの表示である。
【0367】 好適な態様において、入力シグナルとデータ処理工程はシステムの非直線性を
増大させるために実施する。すなわち、例えば、フェロセン応答は非直線的に反
応し、バックグラウンドの応答を越えたシグナルの高調波応答を生じる;このA
Cボルタンメトリーからの調波シグナルは恐らく電気化学セルの非直線的応答に
よる高調波ひずみの結果である;参照:Yap, J. of Electroanalytical Chem. 4
54:33 (1998)(出典明示により本明細書の一部とする)。このように、この非直
線性を増大させる何らかの技法が望まれる。好適な態様において、技法はより高
い調波シグナルを増大させるために使用する;このように、周波数と位相感受性
ロックイン検出が適用した波形の基本周波数で実施され、また多重基本周波数(
すなわち、より高い調波)でも実施される。バックグラウンド静電容量は比較的
直線的にACシグナルに応答する(正弦波入力AC電圧は比較的ひずみのない正
弦波出力に結果として帰着する)ので、非常に小さな上部高調波電流がバックグ
ラウンドに生じる。これはシグナル−ノイズ比に劇的な増大をもたらす。このよ
うに、より高い調和振動数、特に第3、第4および第5高調波(第2または第1
0以上の高調波も使用し得るが)は、標的分子からのシグナルを圧倒し得る非フ
ァラデー過程(二重層荷電のように)と関連するバックグラウンド電流の劇的な
抑制に帰着することが示される。この方式において、より高い調和振動数と位相
でのシステムの評価は、検出限界とシグナルの明瞭さに有意な改善をもたらす。
しかし、ある態様においては、より高い調波の分析は望ましくない。
【0368】 このように、好適な態様において、非直線性調波応答を増大させる一つの方法
は、AC摂動の振幅を増加または変化させることであるが、これはさらに基本周
波数をモニターするのにも使用し得る。理論に囚われなければ、振幅を増加させ
ることは駆動力を非直線的に増加させることと思われる。このように、一般に、
単一の周波数で、その周波数ではより高い超過電位を使用することで、同じシス
テムが改善された応答(すなわち、より高い出力シグナル)を与える。このよう
に、振幅は高い周波数で増大し、システムを介して電子伝達率を増大させ、結果
としてより高い感度を与える。さらに、これは、例えば、最適な空間的形状を持
たないシステムなど低速システムでの応答を誘発するのに使用することができる
【0369】 好適な態様において、システムの測定値は少なくとも2つの別個の振幅または
過電圧で測定されるが、好ましくは複数振幅での測定値である。上記のように、
振幅変化の結果としての応答における変化は、システムの同定、校正および数量
化の基礎をなす。さらに、1つ以上のAC周波数が同様に使用し得る。等式4は
任意の駆動電位Vに対する可逆的表面酸化還元反応の電流出力を説明する。
【0370】 等式4
【数3】 これはネルンストの分散を(電流)=(電気素量)(酸化された分子数の変化
w.r.t.時間)に置換する;参照:O'Connor et al, J. Electroanal. Chem. 4
66:197 (1999)(出典明示により本明細書の一部とする)。ACボルタンメトリ
ーにおいては、等式5に示すように、駆動電圧がDCランプ上に重ね合わされた
ACシグナルである: 等式5
【数4】 これはI(t)に対し次の式(等式6)に導く: 等式6:
【数5】
【0371】 上の式から計算すると、100mV/sDCランプおよび100Hz25mV
のAC振動で走査したとき、295Kでの10表面酸化還元分子の系に対しE =200mV近辺でのファラデー電流は図2Aに示される。この系の出力は極
めて直線性であり、そのファラデー応答は殆ど正弦波的である(そして駆動力に
より位相から90°)。これはE±25mVで利用し得る電子数に僅か21%
の変動があることによる(ネルンスト分散のFWHMはn=1、295Kで90
mVである)。もし代りに100mVのAC振幅を用いるならば、等式は図2B
に示した走査を生じるが、そのデータはVac=100mVで励起した表面結合D
NA系の周波数スペクトルと第4高調波ACボルタンモグラムについて図2Cに
示す。観察される非直線性はネルンスト分散の大きなフラクションが掃引されて
いるという事実を原因とするが、振動の極値で利用し得る酸化還元電子数はE で利用し得る電子数の7.5%にすぎない。応答は、純粋に正弦波的ではないた
めに、駆動周波数よりも高い周波数に固定することにより測定される調和成分を
もつ。さらに、シグナルの対称性はDC電位の関数として変化する。図2Dは図
2Cと同一のシグナルを描出するが、VDCでは大まかに150mV、Eより
下である。対称性のこれら変動は、本発明において調波走査を測定する際に観察
されるピーク・パターンと節点を生じるDC電圧の関数として表される。
【0372】 好適な態様においては、調和方形波ACVが用いられる;参照:Baranski et
al., J. Electroanal. Chem. 373:157 (1994)(出典明示により本明細書の一部
とする);しかし、ある態様では、これは好ましくない。これは幾つもの潜在的
な利点を提供する。例えば、方形波は数値化して表すのが容易であり、方形波の
パルス形状は充電容量に対しより良好な識別を可能とする。正弦調波ACボルタ
ンメトリーにおいて、高調波シグナルは、ファラデー応答が充電容量よりもより
非線形であり得るため、バックグラウンドに対してより良好なシグナルを提供す
る。同じ概念はSW調波ACVに当てはまる。2つの技法間の重要な相違はAC
波形の周波数スペクトルである。単一の周波数正弦波波形は正しく基本周波数を
含み、その場合単一の方形波は基本周波数並びにすべての奇数高調波を含む。こ
の技法は容量電流に対するファラデー電流の比が強調される場合、偶数の高調波
を検査する。奇数高調波はすべて単一のACVピークをもち、一方偶数の高調波
は二重のACVピークをもつ。これは非可逆的酸化還元対を有する系の正弦調波
ACVの場合と反対である。図3参照。
【0373】 好適な態様においては、多重周波数ACVが使用される。この考えは同じ振幅
または異なる振幅をもつ多くの周波数からなる波形を創造し、ACV様式で電気
化学セルを励起することである。本方法はセル応答を分析するために高速フーリ
エ変換または同時時間−周波数変換から利益を得る。多重周波数ACVのJTF
Tスペクトル写真は励振(または基本)周波数並びにその調和成分に関する情報
を提供する。幾つかの可能なデータ分析は以下のとおりである:1)基本周波数
の応答比較;2)調和振動数すべての比較;3)すべての励起周波数の1つの特
定調和振動数の応答比較;および4)標準単一周波数ACVによる可能なすべて
の分析。
【0374】 従って、好適な態様においては、実施例に一般的に概説するように、高速フー
リエ変換を実施する。フーリエ変換分析はノイズに対するシグナルを改善し、正
弦波電気化学を実施する場合に所望のシグナルを単離するための好適な方法であ
る。典型的なAC技法は一次周波数のみの測定値に依存する。正弦波ボルタンメ
トリー(および他の入力)により、より高い周波での観察が主として速度論に基
づくシグナルの識別を可能とする。例えば、急速および遅速酸化還元事象両方が
一次周波数において同様のピーク(AC周波数が高すぎなければ)を与える。し
かし、より高い周波では、一部の酸化還元分子がシグナルを生成し、他は生成し
ない。FFT分析を用いると、正弦波入力に対する応答の様々な周波数成分がす
べて一度に観察し得る。
【0375】 同様に、好適な態様においては、実施例に一般的に概説するように、同時時間
−周波数変換(JTFT)を実施する。 多重周波数AC励起波形の使用は個々周波数の慎重な選択を必要とする。電気
化学セルの応答は高度に非直線性であり得るので、基礎周波数とその高調波の変
調から生じる“非励起”周波数は、もしそれらの非励起周波数が基礎周波数と同
時に生じるならば、間違ったフーリエ変換データを生じる可能性がある。さらに
、多重周波数をもつ波形によると、個々の周波数の振幅は個々の正弦波の位相関
連性によって、大きく異なり得る。その秘訣は最も小さな総励起振幅をもつ波形
を作ることであり、一方で個々の振幅はできる限り大きく、かつ互いに近接させ
て維持することである。その一例は(構築と破壊の干渉並びに変調を最少化する
ことにより)最適化した位相をもつ多重周波数正弦波波形を作り、総計した正弦
波の総振幅を最少化することである。モンテカルロ法に類似の技法を用い、ラン
ダム生成演算子を使用して位相最適化を実施することができる。n周波数をもつ
波形については、相互変調の最低確立をもつn−1高調波を選択する。次いで、
ランダム生成演算子を用いて、各周波数に対するn−1ランダム位相を生成させ
る。3つの波形はこれらのランダム位相を用いて計算するが、その一つは生成し
た位相θに、他の一つはθ+π/2をもち、そして他の一つはθ+π/2をもつ
。次いで、反復ルーチンを用いてこれら波形からの振幅の最小絶対値をもつ波形
を同定、選択する。この手法はπ/4、π/8、1/4π/360または1次数
に達するまで繰返す。留意しなければならないのは、この特定の方法は局所最小
値を定めるのみで、必ずしも大局的最小値を定めるものではないということであ
る。
【0376】 好適な態様において、インピーダンスの分析は多重周波数ACVからのデータ
を用い実施する。この概念は様々な周波数にて交流(AC)シグナルを用い、電
気化学セルを励起することである;参照:Hazi et al., J. Electroanal. Chem.
437:1 (1997)(出典明示により本明細書の一部とする)。多重周波数ACシグ
ナルはDC階段の最上段に印加する。高速フーリエ変換を用い、セルの応答を各
DC電位で半波長値を介して記録する。バックグラウンドの引き算はセル応答の
インピーダンス分析により実施する。この技法は充電電流と未補償の溶液抵抗に
対する良好な識別を可能とする;参照:Baranski et al., J. Electrochemistry
453:29 (1998)(出典明示により本明細書の一部とする)。 理論的には、CMS電気化学セルのバックグラウンド電流は、等式7に示すよ
うに印加した電位dE/dtの電荷率に比例して充電電流(Ic)による荷電電
気二重層から生じる:
【0377】 等式7
【数6】 この“一定”の比例定数はよく知られた二重層静電容量である。しかい、ファ
ラデー電流は等式8に示すように、濃度cと印加した電位の変化率の平方根に比
例する(参照:Laviron et al., J. Electroanal. Chem. 101:19 (1979);出典
明示により本明細書の一部とする): 等式8
【数7】 これら2つの単純な関連は、cが低下するか、またはAC励起の周波数が上昇
するにつれて、バックグラウンド電流はファラデーシグナルを越え得ることを示
す。
【0378】 理想限度において、充電電流とファラデー電流は印加した励起電位に関して異
なる位相関係をもつ(それぞれ−π/2および−π/4)。従って、セル出力E
FTの同相成分(実部分)のみをプロットすることにより、充電電流が排除され
得る一方で、ファラデーシグナルは僅かに減少するのみである(これは本質的に
何がロックイン増幅器となっているかということである)。しかし、充電電流に
対する識別効率は“未補償”溶液抵抗Ruの値に強く影響を受ける。未補償溶液
抵抗は充電電流とファラデー電流両方の位相関係を周波数依存性様式で変化させ
得る。シーベら(Schiewe at al. J. Electroanal. Chem. 451:129 (1998);出
典明示により本明細書の一部とする)は、励起周波数が増大するに従い、充電電
流はセル出力の実部分に益々寄与する。同様の減少が本システムにおいて見られ
るが、ACV周波数が増大するに従い、バックグラウンド・インピーダンスがそ
れに応じて増大し、位相情報は劇的に変化する(すなわち、励起周波数とサイク
ルが比較的低い場合、何故充電電流を識別するために位相を使用するのが好まし
いかの理由である)。その結果、単一周波数情報のみをもつRuを評価、訂正す
るのが困難である。インピーダンス分析を介して、またランドレス曲線を使用す
ることによりRuを引き出すことができる(インピーダンスの実部分と虚部分、
対するω−1/2)。
【0379】 充電電流と未補償抵抗を補正するには一般に2つの方法がある。二重層静電容
量と未補正抵抗両方が陰性の対照実験から評価し得るが、その場合、僅かしかま
たはまったくファラデー反応が起こらない。この場合には、Ruはセルインピー
ダンスの実部分(Z’)であり、Cdlはプロット1/Z”対ωの勾配であるが、
その場合、Z”はセルインピーダンスの虚部分である。このシナリオは、セルの
対応が電極ごとに変化するので、本システムには恐らく適応できない。より魅惑
的な方法は電位領域を用いる“バックグラウンド”の差引きからなり、その場合
ファラデー過程は走査内で起こらない;すなわち、CdlおよびRuはガウスの状
態電子分布のピーク電位よりもより陰性であり、またより陽性である電位にて測
定された測定値から得られる。理論的には、Ruはいずれかの電位において実成
分の測定インピーダンスの外挿高周波数切片から評価可能であり、Cdlはファラ
デー過程の存在下、高周波数アドミッタンスの大きさから評価し得る。
【0380】 単層表面にETMが存在することは様々な方法で検出し得る。様々な検出方法
を使用し得るが、例えば、これらに限定されるものではないが、(酸化還元状態
の変化に基づくスペクトル変化の結果としての)光学的検出、例えば、蛍光、燐
光、発光、化学発光、電気化学発光、および屈折率など、および電子検出、例え
ば、これらに限定されるものではないが、アンペロメトリー、ボルタンメトリー
、静電容量およびインピーダンスなどを使用し得る。これらの方法は、ACまた
はDC電流、パルス法、ロックイン技法、フィルター(高域、低域、および帯域
)、および時間分解蛍光法などの時間分解技法などに基づく時間または周波数依
存方法を包含する。
【0381】 一態様において、ETMから電極への効率的な電子伝達はETMの酸化還元状
態に変化をもたらす。ビピリジン、ピリジンおよびイミダゾール環を含むルテニ
ウム複合体からなる多くのETMにより、酸化還元状態におけるこれらの変化は
スペクトルの性質の変化と関連する。吸光度の有意な相違がこれらの分子での還
元状態および酸化状態間で観察される。参照:例えば、Fabbrizzi et al., Chem
. Soc. Rev. 1995 pp197-202。これらの相違は分光光度計または簡単な光電子増
幅管装置を使用してモニターし得る。 この態様において、可能な電子供与体および受容体は光活性化または開始につ
いて上掲した誘導体すべてを包含する。好適な電子供与体および受容体は特徴と
して酸化および還元による大きなスペクトル変化をもち、その結果、高感度の電
子伝達モニターを可能とする。かかる実例は好適な例示として、Ru(NH3)4Pyお
よびRu(bpy)imである。理解すべきことは、吸光度によりモニターされる供与
体および受容体のみが理想的なスペクトル特性をもつ必要のあることである。
【0382】 好適な態様において、電子伝達は蛍光測定により検出する。多くの遷移金属複
合体、例えば、ルテニウム複合体は蛍光特性を有する。それ故に、核酸に付着し
た電子供与体および電子受容体の酸化還元状態における変化は、例えば、Ru(
4,7−ビフェニル−フェナンスロリン) 2+による蛍光を使用し、高感度
でモニターすることができる。本化合物の産生は標準的蛍光アッセイ技法を用い
容易に測定し得る。例えば、レーザー誘発蛍光は、標準的な単一セル蛍光光度計
、フロースルー“オンライン” 蛍光光度計(クロマトグラフィー・システムに
連結した光度計など)、または96穴免疫アッセイ用に市販されているものに類
似の多重サンプル“プレート・リーダー”に記録し得る。
【0383】 別法として、蛍光は溶液中核酸プローブをもつ、または光ファイバーに接続し
た光ファイバーセンサを用いて測定することができる。蛍光は光ファイバーに接
続した光電子増幅管または他の光検出装置を用いモニターする。このシステムの
利点はアッセイ可能な極端に少ないサンプル容量にある。 さらに、モレキュラー・ダイナミックス(Molecular Dynamics)が販売するフ
ルオルイメージャー(FluorImager)などの走査蛍光検出計が固形表面上に整列
させた修飾核酸分子の蛍光をモニターするのに理想的であり適している。このシ
ステムの利点は多数の別個の核酸プローブで蔽われたチップを使用し、一度に大
量の電子伝達プローブを走査し得ることにある。
【0384】 多くの遷移金属複合体は大きなストークスシフトをもつ蛍光を示す。適切な例
は、ルテニウムなど遷移金属のビス−およびトリスフェナンスロリン複合体およ
びビス−およびトリスビピリジル複合体などである(参照:Juris, A., Balzani
, V., et. al. Coord. Chem. Rev., V. 84, p. 85-277, 1988)。好適な例は効率
的な蛍光(合理的な高量子収率)並びに低再組織化エネルギーを示す。これらは
Ru(4,7−ビフェニルフェナンスロリン) 2+、Ru(4,4’−ジフェ
ニル−2,2’−ビピリジン) 2+および白金複合体などである(参照:Cumm
ings et al., J. Am. Chem. Soc. 118:1949-1960 (1996);出典明示により本明
細書の一部とする)。あるいは、ハイブリダイゼーションと関連する蛍光の減少
はこれらのシステムを用いて測定し得る。
【0385】 さらなる態様において、電気化学発光は電子伝達検出を基礎として使用される
。Ru2+(bpy)などの一部のETMにより、直接発光は励起状態の減衰を伴う
。この性質の変化は核酸ハイブリダイゼーションと関連し、簡単な光電子増幅管
装置によりモニターし得る(参照:Blackburn, G. F. Clin. Chem. 37: 1534-
1539 (1991); and Juris et al.、上記)。 好適な態様において、電子検出にはアンペロメトリー、ボルタンメトリー、静
電容量、およびインピーダンスなどが使用される。適切な技法は、これらに限定
されるものではないが、電解重量分析、クーロメトリー(定電位電量分析および
定電流クーロメトリー);ボルタンメトリー(サイクリックボルタンメトリー、
パルスボルタンメトリー(正常パルスボルタンメトリー、方形波ボルタンメトリ
ー、示差パルスボルタンメトリー、オスターヤング方形波ボルタンメトリー、お
よびクーロスタット・パルス技法);ストリッピング分析(陰イオンストリッピ
ング分析、陽イオンストリッピング分析、方形波ストリッピングボルタンメトリ
ー));電気伝導度測定(電解コンダクタンス、直接分析);時間依存電気化学
分析(クロノアンペロメトリー、クロノポテンショメトリー、サイクリック・ク
ロノポテンショメトリーおよびアンペロメトリー、ACポログラフィー、クロノ
ガルバメトリー、およびクロノクーロメトリー);ACインピーダンス測定;静
電容量測定;ACボルタンメトリー;および光電気化学などである。
【0386】 好適な態様において、電子伝達のモニターはアンペロメトリー検出による。こ
の検出方法は対象の標的遺伝子を含むサンプル中で、核酸共役電極と参照電極(
または対極)との間に電位を印加することからなる。異なる効率の電子伝達がサ
ンプル中で標的核酸の存在または不存在下に誘導される;すなわち、標的核酸の
存在または不存在、およびその結果の標識プローブの有無は、異なる電流に帰着
し得る。 アンペロメトリーによる電子伝達の測定装置は鋭敏な電流検出器からなり、電
圧電位を調節する手段、通常は定電位装置を含む。この電圧は標識プローブ上の
電子供与複合体の電位に関連して最適化する。可能な電子供与複合体は以前に考
察した鉄、オスミウム、白金、コバルト、レニウムおよびルテニウムとの複合体
が好ましく、鉄の複合体が最も好ましい。
【0387】 好適な態様においては、代わり得る電子検出方式を利用する。例えば、電位差
測定(またはボルタンメトリー)法は非ファラデー(正味の電流のない)過程を
含み、伝統的にpHおよび他のイオン検出計に利用されている。同様のセンサが
ETMと電極の間での電子伝達をモニターするために使用される。さらに、絶縁
体(抵抗など)および導電体(導電性、インピーダンスおよび静電容量)の他の
性質を使用し、ETMと電極の間での電子伝達をモニターすることが可能である
。最終的に、電流を発生するいずれのシステム(電子伝達など)も小さな磁場を
発生させ、それをある種の態様によりモニターすることが可能である。 本発明の組成物に観察される電子伝達の迅速性の一利益は、時間分解が吸光度
、蛍光および電子流に基づくモニターのシグナル対ノイズの結果を高め得るとい
うことであるということを理解すべである。本発明の電子伝達の迅速性は高いシ
グナルを与え、電子伝達開始と完結との間に定型化した遅延を生じる。特定の遅
延シグナルを増幅することとは、電子伝達のパルス開始と検出の“ロックイン”
増幅器の使用、およびフーリエ変換などである。
【0388】 好適な態様において、電流ベクトルと位相最適化のバックグラウンド引き算が
実施される。電気化学的セルからの出力は本質的に電流である。電流増幅のバッ
クグラウンド引き算のみでは幾分不正確であるということになり、そのために、
振幅そのものではなく、総電流から静電容量電流ベクトルを差引くのがよい。バ
ックグラウンド引き算の図式はベクトルを含むので、これらのベクトルの位相を
走査し、バックグラウンドに対するシグナルを高めることが有用である。例示の
アルゴリズムは以下のとおりである。多項式曲線は同時にバックグラウンド静電
容量電流ベクトルに適合し、検索はファラデー電流ベクトルが最大となる位相を
見出すためにバイナリー様式で実施する。全体の位相空間を試すためには、πま
で走査する必要のあるだけで、0、8π/45、16π/45、24π/45、
32π/45、および8π/9にて8π/45ごとにデータを分析する。シグナ
ルが最大となる位相は次の反復での新たな開始点である。次いで、アルゴリズム
では最終最良位相θlastと2つの新たな位相とをθlast±4π/45で比較する
。シーケンスはθlast±2π/45、θlast±π/45、θlast±π/90、お
よびθlast±π/180に対し繰返す。この方法はバックグラウンドに対するシ
グナルが小さい場合、良好なピーク検出を可能とする。さらに、該方法は、位相
変化がより高い調波においてより大きいので、基本波よりも大きな調波において
より有効である。
【0389】 好適な態様において、相関および/またはたたみ込み技法が用いられる。この
態様において、多くの場合同じ電極で走査する。一回の走査で一つのピークを探
すよりも、走査を繰返して、走査間の共通する相関性を見る。例えば、フェロセ
ンが存在しなくても、陰性については180mV近辺にノイズのこぶが現われる
可能性がある。しかし、複数周波数を走査するならば、同じこぶが同じ場所に現
われることはありそうにない。このように、好適な態様では多くの周波数で走査
し、もしそのすべてでピークが現われるならば、その場合のみ陽性とみなす。こ
れは非常に簡単な相関である;より複雑な相関をさらに実施してもよい。 例えば、好適な態様では電圧V(t)を利用し、それをセル(電極)に印加す
る。出力シグナルi(t)はフィルタ(filter)し、データに帰着する:V(t)
×セル=i(t)×フィルタ=データ(t)。増幅器のロックを用い、簡単なノ
ッチフィルタを行ってもよい;同様に、数学的フィルタをFFTなどに使用して
もよい。
【0390】 しかし、より複雑な分析がなし得る。以下の表に示すように、様々なフィルタ
を使用しうる。 V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) データセットはすべて他の数学的フィルタに付してもよい: データ*データ*データ*データ*データ*データ*データ =データ最終
【0391】 個々のデータファイルはなおピークのように見えないかも知れない。しかし、
共に相関させると、データ最終は標的被検体シグナルに特異的な特徴的応答を示
し得る。最も単純な例ではすべてのフィルタが同じであり、最終の相関が単純に
平均となる。あるいは適用した波形を変化させ得る: V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) V(t)×セル=i(t)×フィルタ=データ(t) 再度、データに関する相関がデータ最終を得るために実施し得る。 ここでの例は周波数応答曲線である;100Hzの適用は100Hzフィルタ
により、1kHzは1kHzフィルタなどとし、次いでピーク情報をプロットす
る。ピーク情報の特徴的曲線は陽性を意味する。 本明細書に概説するように、各セルの電極シグナルは実際に、セル=iフェロ セン +i静電容量+iノイズに分解される。これはiフェロセンがE1/2周辺
を常に中心とするネルンスト分布をもつ唯一の部分であるべきであるという理由
で使用され得る。数学的に好適な態様ではV(t)など、およびフィルタ
どの最適値を決定し、データに関する数学的相関を実施する。フェロセンはET
Mの一例としてのみ用いられる。
【0392】 好適な態様において、シグナル再生はシグナルの認識とバックグラウンド引き
算を用いて実施する。この態様において、このアイデアはセル応答を2つの関数
、すなわち、一方はシグナルを描写し、他方はバックグラウンドを形成させる関
数に適合することである。一旦、関数が構築されると、シグナルはバックグラウ
ンドを差引くことで応答から容易に再生される。このシグナル認識の機構は、シ
グナルが比較的よく知られた挙動をもつシステムに適用し得る。以下の例はどの
ようにかかる機構が本発明のシステムに適用し得るかを説明する。
【0393】 電気化学セルからの応答はロックイン増幅器により加工処理し得る。これはバ
ンド幅狭窄技法のある形式を用い、バックグラウンドに対するシグナルを増大さ
せる多くの方法の一つである。セル応答の第4の調和成分は2つの電流ベクトル
X(vdc)およびY(vdc)により表される。電流の第4の高調波X(vdc
)およびY(vdc)成分は2つの曲線により近似するが、各曲線は2つの関数
から構成される(等式9および10)
【数8】 曲線(F1i(Vdc))の第一部分はファラデーシグナルの第4高調波に近
似する改良ガウス分布の第3導関数である。第2成分(F2i(V))はバック
グラウンドに近似する第5次多項式である。
【0394】 アルゴリズムに使用される改良ガウス分布の分析的式を等式に示す: 等式11
【数9】 従って、等式11の第3導関数は等式12により与えられる: 等式12
【数10】 改良ガウス(12)の第3導関数は3つのパラメーターに左右される:A
シグナルの振幅を制御する;Aは曲線の幅ならびに振幅を決定する;また、A はシグナルの中心または中間である。改良ガウス第3導関数の中心ピークの最
大振幅は関係式(等式13)に従うAおよびAの関数である: 等式13
【数11】
【0395】 等式13における値は、改良ガウスの第4導関数のゼロ時、改良ガウスの第3
導関数を評価することにより得られる。改良ガウスの第4導関数のゼロは式(等
式14)により与えられる: 等式14
【数12】 等式14はAおよびAがどのように第4高調波においてシグナルの振幅を
決めるかを説明せる。
【0396】 曲線適合およびピーク認識は、最小二乗法(Lawson et al., Solving Least S
quares Problems, N.J. Prentice Hall (1974))およびカイ二乗フィッティング
(Bevington et al., Data Reduction and Error Analysis for the Physical S
ciences, N.Y. McGraw Hill (1969); von Mises Mathematical Theory of Proba
bility and Statistics, NY Academic Press (1964))などの直線性モデルまた
はレーベンベルグ−マルクアルト法(Marquardt, J. of the Society for Indus
trial and Applied Mathematics vol. 11, pp431-441)および他の非直線性最小
二乗法(More, Numerical Analysis, Lecture Notes in Mathematics, vol. 630
Watson, Berlin: Springer-Verlag)などの非直線性モデルを用いてデータを合
わせることにより達成し得る(参照:Press et al., Numerical Recipes in C,
The Art of Scientific Computing, 2d Ed., N.Y. Cambridge University Press
(1996); Forsyth et al, Computer Methods for Mathematical Computations (
1977))。我々の例で、我々はレーベンベルグ−マルクアルト・アルゴリズムを
用い、等式9を電流ベクトルX(vdc)およびY(vdc)に最もよく適合させ
るAxおよびAyの最適セットを見出した。我々はX(vdc)およびY(vdc )と等式9および10について等式15および16として2つの誤差係数を定義
する。
【数13】 標準偏差はデータ・セットの各点に重みをつけ、通常は1とする。パラメータ
ー(A)の最適セットは誤差係数を最小化するようなものである。これは誤差係
数の導関数がゼロに等しい場合に起きる。 等式17および18
【数14】 第2項を省略した後の誤差係数の第2導関数が等式19および20である:
【数15】
【0397】 等式19および20をテイラー級数に拡張することで、我々は以下のマトリッ
クスを得る: 等式21および22:
【数16】 これは等式23として表される:
【数17】
【0398】 レーベンベルグ−マルクアルト法は無次元数λをマトリックスαの対角線に取
込み、収束性を速める。新たなマトリックスを次いで等式24により定義する: α'jj=αjj(1+λ) α'kj=αkj k≠jに対して このシステムの等式はニュートン−ラフソン(アクトン(Acton)、適合する
数値法、ワシントン:アメリカ数学学会、1990年;Press、上記)インタラ
クティブ式により解答を得る。Aの良好な最初の推測により、この方法はデータ
を最良に表すAの最適セットに集める。
【0399】 シグナル認識アルゴリズムの例は以下のとおりである。データを読み込んだ後
、この適用ではXに対する“良好な適合”を見出すことを先ず試みる。“良好な
適合”は多くのパラメーター、例えば、“真の”走査と“最良の適合”間の最小
平均二乗誤差(MSE)などにより決定されるが(下記識別手法参照)、これら
に限定されるものではない。現在この適用では先ずXを0度で適合させようとす
る。もしこれが余りに“不適切な”適合であるならば、この適用ではXにおける
シグナル(ピーク)を見出すことができず、現時点ではIpまたはEについて
の解答を得ることができない。これらの条件下、この適用では誤りコード(−9
99)を生じ、さらなる分析を遂行しなくなる。
【0400】 もしXについて“良好な適合”が見出されるならば、その場合、この適用では
Yについて“良好な適合”を見出そうとする。もし(まさしく‘もし’であるが
)この適用において同じ角度でXとYについて“良好な適合”を見出し得るなら
ば、それは続いてIpとEを解くことになる。現時点で、この適用では同じ角
度でXとYについて“良好な適合”を見出し得ないならば、それは誤りコード(
−999)を生じ、さらなる分析を遂行しなくなる。まさに一つの電流ベクトル
に適合させることも可能であが、この特定のアルゴリズムは現在分析のために2
つのベクトルを必要とする。この2つのベクトルの拘束を除くことにより、シグ
ナル−バックグラウンド比が非常に小さい場合の認識を可能とする。
【0401】 XまたはYのいずれかについて“良好な適合”を決定するためには、この適用
では適合するアルゴリズムに使用する9つの係数について最初の“推測”を先ず
規定しなければならない。この最初の推測は各角度においてXおよびY両方につ
いてなされなければならない。さらに、最初の“推測”は当初データおよびガウ
スの第3導関数のすでに記載された特徴に基づかねばならない。 最初の推測は以下のとおりである。最初の第5次数多項式は特異値分解法(Pr
ess、上記)を用いてデータに適合させる。この多項式は“当初の”データ(X
またはY)から差引かれる。もし我々がこの曲線の最大値および最小値がガウス
の中心ピークに対応し、また中心ピークの位置が等式14のvおよびvによ
り与えられるとすれば、その場合、我々は等式24による改良ガウスの第3導関
数適合化のために、良好な最初の推測を得ることができる:
【0402】 等式24
【数18】
【0403】 多くの場合、シグナルの衛星ピークは中心ピークと間違え、そのためにアルゴ
リズムはデータに適合させ得ない。この“失敗”は等式25をチェックすること
により検出される: 等式25:
【数19】 等式25が適正であるとすれば、これは適合の衛星ピークがガウス適合増幅の
1/4以上により真のデータから分離されることを示している。これらの条件下
で、我々は2つのパラメーターを規定した(等式26および27): 等式26および27
【数20】 ただし、式中、Dは等式14から得られたものであり、改良ガウスの第3導関数
の2つのピーク間距離である。次いで、我々は同じ最初の条件下で等式28およ
び29により新たな適合を試みた: 等式28および29 A new=−A old new=A old+Dζ
【0404】 この二番目の適合に失敗するか、または等式25が真正でなかった場合は、当
初条件の3番目のセットをデータのフィットのために送り出した。当初条件の3
番目のセットはA=−1であること以外、最初のものと同じであった。 計算された係数のセットがXまたはYのいずれかについて“良好な適合”を与
えるかどうかを決定するためには多くの基準が使用される。XおよびY両方に対
し特定次数に適用されるこれらの基準は以下のとおりである(適用の順に)。基
準1は、良好な適合に対して“真の”データと適合間の差が最小でなければなら
ないことを要する。それによって、我々は加重平均二乗誤差の項をコンピュータ
処理し、一方、MSEは等式30および31におけるデータのガウス成分振幅に
より加重する(この値は予備的な第5次多項式適合を差引いたデータの最大値と
最小値の差を取ることにより得られる): 等式30および31
【数21】 この加重MSE誤差は1×10−3未満であるべきである。もしそうでなけれ
ば、我々は上記のように係数の幾つかを再規定し、データを再適合させる。
【0405】 第二の基準は、“良好な適合”に対してガウス項(A)の幅が典型的に12
と14の間であるということである。このアルゴリズムは良好な適合として分類
されるための適合として10<A<20とする。 この適合が最初の2つの基準を通過したならば、加重MSEは1×10−2
満でなければならない。条件2または3のいずれかが失敗であるならば、この適
用では角度を変え、もう一度3つの基準(1〜3)すべてを満足するように試行
する。上記のように、もしこの適用がXまたはYに対する0度と45度での3つ
の基準すべてを満足し得ないならば、IpおよびEに対する解答を得ることが
できない(誤りコード=−999)。 XおよびY両方に対して“良好な適合”が見出されたならば(すなわち、Xお
よびYに対する適合が基準1〜3を通過したならば)、この適用は2つの最終基
準に適用させる;一つはXに対する適合をYに対する適合と比較すること、今一
つはRに対する適合を“真の”Rに比較すること(走査)である。Xに対する適
合をYに対する適合と比較するためには、この適用ではXおよびYについての計
算された(A2およびA2)E位置間の差を検討する。これら2つの値間
の絶対差は50mVより大きくてはならない。この値は、適合アルゴリズムがX
またはYいずれかのデータの衛星ピークに中心ピークを適合させていないという
ことを確証する。ピーク間の距離は改良ガウスの第3導関数極値の位置によって
与えられる。
【0406】 XまたはYいずれかにおいて“間違った”ピークに“ロックイン”することが
可能である。例えば、もしXが180mVでのピークと250mVでのピークを
有するならば、この適用は225mVでのピークを適合(見出)し得るが、もし
Yに対するEが180mVに見出されるならば、両Eにおける絶対差は50
mVを越える原因となる。この場合を説明するために、もしE間の絶対差が5
0mVを越えるならば、コードはシフトし(A経由)、反転し(A=−A )、ユーザーの規定した予測Eから最も遠いシグナル(XまたはY)を再適合
させる。このシフトは予測したEの方向にある。もしシフトしたことと反転し
たことが適合を改善(<加重MSE)するならば、我々は新たに見出した係数を
使用する;さもなければ、コードは以前の係数に戻り、E分離誤差(誤りコー
ド=−777)を報告する。 Rに対する適合を真のR(走査)に比較するために、我々は等式32の適合R
MSにより分割したIをコンピュータ処理する: 等式32
【数22】 等式32の値は経験的に決定された。もしI/RMSが3.70未満である
ならば、この適用は−888の誤りコードを与える。
【0407】 好適な態様において、この適用はIおよびEに答えを与える。この適用の
変形において、XおよびYは共にIおよびEに解答(陽性結果)を与えるた
めに適合させねばならない。その理由はRの振幅が等式33として定義されるか
らである: 等式33
【数23】 等式34の関係を用い、唯一の成分(XまたはYいずれか単独)からRの振幅
を引き出すことが可能である: 等式34
【数24】 しかし、もし位相の情報が乏しいならば、等式34を再構築するのは難しい。
一旦XおよびYについての適合が得られるならば、ピークの高さ(IまたはG
'''max)およびシグナルの中心(EまたはA)は以下の等式35および
36により与えられる: 等式35および36
【数25】 もしこの適用により誤差なしにIおよびEを計算し得るならば、陽性の指
標が示されるであろう(緑色光)。もし他方でこの適用によりユーザー定義の“
設定”(定数を介して緑色/黄色または黄色/赤色を制御)内でこれらの値を計
算し得ないならば、指標は黄色(限界陽性)または赤色(陰性結果)となるだろ
う。
【0408】 好適な態様においては、シグナルのスペクトル分析がなされる。この態様にお
いて、周波数領域におけるフィルタ技法は平均、分散、密度、自己相関関数、お
よびシグナルのパワースペクトル密度を使用し、それを本システムに適用し、シ
グナル−ノイズ比を高める(参照:Schwartz et al., Signal Processing: Disc
rete Spectral Analysis, Detection, and Estimation, N.Y. McGraw HIll, 197
5;出典明示により本明細書の一部とする)。 好適な態様においては、デジタル・フィルタ技法を用いる。これらは整合フィ
ルタ、ワイナー(Weiner)フィルタ、カルマン(Kalman)フィルタ、有限インパ
ルス応答、有限インパルス応答、狭帯域フィルタなどを包含するが、これらに限
定されるものではない。
【0409】 好適な態様においては、整合フィルタが使用される;整合フィルタはシグナル
の処理技法であり、測定された応答(シグナルおよびノイズ)に“重みを加え”
、ある種の対応する既知シグナル振幅により標本抽出し、それらを一緒に加えて
ノイズに対するシグナルを高める。 好適な態様においては、ワイナーフィルタが使用される(参照:Press上記;
およびElliot et al., Fast Transforms: Algorithm, Analysis, Applications
N.Y. Academic Press (1982);両文献を出典明示により本明細書の一部とする)
。ワイナーフィルタは“原形の損なわれた”シグナルからノイズまたはバックグ
ラウンドを除去する最適なフィルタを見出すものである。このシグナル処理方法
はフーリエ変換技法と関連して働く。この考えは以下のとおりである。ノイズま
たは大きなバックグラウンドに対する乏しいシグナルにより、機器からの出力は
“原形の損なわれた”シグナルである: c(t)=s(t)+n(t) ただし、式中、s(t)はシグナルであり、n(t)はノイズである。s(t)は
我々が追跡するシグナルではなく、それはある既知応答関数r(t)により巻き
込まれている真の原形の損なわれていないシグナルu(t)から構成されている
ということに注目されたい(酸化還元対をもつCMSシステムの場合には、r(
t)はネルンスト関数である)。換言すると、
【数26】 である。 周波数空間において、その関係は以下のとおりである:
【数27】 (ただし、式中、S、R、およびUはそれぞれs、r、およびuのフーリエ変換
である)
【0410】 原形の損なわれていないシグナルは最適フィルタΦ(t)またはそのフーリエ
カウンターパートΦ(ω)を見出すことにより回収し得るが、Φ(ω)は測定したシ
グナルc(t)またはC(ω)に適用され、次いでr(t)またはR(ω)により解き
放たれた場合に、原形の損なわれていないシグナルu(t)または
【数28】 をもつU(ω)に近似するシグナルを生じる。 一般に、最適フィルタは
【数29】 と定義される。 好適な態様においては、カルマンフィルタが使用されるが、これは変化するシ
グナルの電流値を追跡する再帰的評価フィルタ技法である。
【0411】 好適な態様において、非直線性調波応答は非対称応答を誘発することにより増
大する。好適な態様において、これは非可逆的酸化還元対をもつシステムを使用
することにより実施する。例えば、フェロセンは極めて可逆的な酸化還元対であ
る。このように、所定のポイントでac電圧により対となったフェロセンは、a
c電圧の上昇により酸化され、下降により還元される。しかし、もし半可逆的ま
たは非可逆的酸化還元対が使用されるなら、例えば、その分子は上昇により酸化
され、下降により還元(または部分的)されない;またはその逆である。これが
一定の周波数にてさらにより大きな非直線性を生じる。 これを実施する方法について3つの例を掲げる:ルミノールなど酸化型に分解
されたETM分子を用いる;同時還元または酸化還元の媒介を用いる;および酵
素結合媒介を用いる。
【0412】 好適な態様においては、分解可能なETMが使用される。基本的に、この考え
は以下のとおりである:もしシステムに使用されるETMがほんの僅かずつ各サ
イクルごとに劣化するならば、ETMによるシグナルは経時的に劣化するが、バ
ックグラウンドのシグナルは劣化しない;経時的に変化するシグナルはバックグ
ラウンドのノイズに対して一般に容易に検出し得る。一例がルミノールである;
ルミノールは上昇時に酸化され、分子の一部分が化学反応を受けて(すなわち、
が触媒となって)、その結果、新しい分子に変換される。ac電圧の下
降前に変換される分子は最早ac電流に寄与することはない。ac周波数と振幅
を注意深く制御すると、この様式で挙動する分子の数を調整することができる。
本発明のシステムに使用し得る可逆的酸化還元挙動を受けない分子の他の多くの
例がある。DNAのグアニンそれ自体が一例である。
【0413】 好適な態様において、非直線性は同時還元的または同時酸化的システムを介し
て達成される。従って、同時還元剤または同時酸化剤(集約して同時酸化還元剤
)がさらなる電子供給源または貯留体として使用される。一般的に参照:Sato e
t al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 66: 1032 (1993); Uosaki et al., Electrochim
ica Acta 36: 1799 (1991); and Alleman et al., J. Phys. Chem. 100: 17050
(1996);これらの文献すべてを出典明示により本明細書の一部とする。 好適な態様において、溶液中の入力電子供給源は、電子伝達の開始に際し、好
ましくは、拡散に制限のないDC電流を用いるかまたはAC周波数にて開始と検
出を実施する場合に使用する。一般に、当業者が認めるように、好適な態様では
最少の“穿孔”を含む単層、例えば、システムのショート(短絡)を回避するよ
うな単層を利用する。これは幾つかの一般的方法で実施し得る。好適な態様にお
いて、入力電子供給源は標識プローブのETMより低いまたは同等の酸化還元能
力をもつものが使用される。このように、入力電子供給源の酸化還元能力を越え
た電圧では、ETMと入力電子供給源双方が酸化され、その結果として電子を供
与する;ETMは電極に電子を供与し、入力供給源がETMに供与する。例えば
、実施例に記載したように、本発明の組成物に付着したETMとしてのフェロセ
ンは、水溶液中において大よそ200mVの酸化還元能力をもつ(この能力は、
フェロセンが何に結合しているか、その結合の様式、および何らかの置換基の存
在に影響を受けて有意に変化し得る)。フェロシアニドも電子供給源であり、同
様に(水溶液中において)大よそ200mVの酸化還元能力をもつ。従って、大
よそ200mVの電圧で、またはそれ以上で、フェロセンはフェリセニウムに変
換され、それが次いで電子を電極に伝達する。フェリシアニドも酸化されて、E
TMに電子を伝達し得る。この様式において、電子供給源(または同時還元剤)
は、電子供給源分子が核酸に付着したETMに迅速に繰返し電子を供与するにつ
れて、システム内に発生するシグナルを増幅するように作用する。電子の供与ま
たは受容の速度は、同時還元剤の拡散速度、同時還元剤とETM間の電子伝達(
濃度とサイズにより影響される)などにより制限される。 別法として、ETMよりも低い酸化還元能力をもつ入力電子供給源が使用され
る。ETMの酸化還元能力未満の電圧ではあるが、電子供給源の酸化還元能力よ
りも高い電圧では、フェロシアニドなどの入力供給源は酸化され得ず、その結果
ETMに電子を供与し得ない;すなわち、電子伝達は起こらない。フェロセンは
酸化されると、そこには電子伝達用の経路が存在する。
【0414】 代わり得る好適な態様において、入力電子供給源は標識プローブのETMより
も高い酸化還元能力を有するものが使用される。例えば、電子供給源であるルミ
ノールは大まかに720mVの酸化還元能力を有する。ETMの酸化還元能力よ
りも高いが、電子供給源の酸化還元能力よりも低い電圧、すなわち、200〜7
20mVでフェロセンが酸化され、導電性オリゴマーを介して電極に1個の電子
を伝達する。しかし、ETMはルミノール電子供給源からの如何なる電子も受容
し得ない;その理由は電圧がルミノールの酸化還元能力よりも低いからである。
しかし、ルミノールの酸化還元能力で、またはそれ以上では、ルミノールがET
Mに電子を伝達し、迅速な繰返し電子伝達を可能にする。この様式で、電子供給
源(または同時還元剤)は、電子供給源分子が標識プローブのETMに電子を迅
速に繰返し供与するにつれて、システム内に発生したシグナルを増幅するのに役
立つ。
【0415】 ルミノールは酸化により化学発光種になるというさらなる利点を有し(参照:
Jirka et al., Analytica Chimica Acta 284: 345 (1993))、それによってET
Mから電極へ向かう電子伝達の光検出を可能とする。このように、ルミノールが
直接電極と接触し得ない限り、すなわち、電極への有効な電子伝達経路が存在し
ないようなSAMの存在下で、ルミノールは標識プローブ上のETMに電子伝達
することによりのみ酸化され得る。ETMが存在しない場合、すなわち、標的配
列が本発明の組成物にハイブリダイズしない場合、ルミノールは有意に酸化され
ず、光子放出が低く、その結果ルミノールからのシグナルは(存在するとしても
)低いものとなる。標的の存在下では、相当に大きなシグナルが生成する。この
ように、光子放出によるルミノール酸化を測定することは、ETMが電極に電子
を供与する能力を間接的に測定することである。さらに、光子検出は一般に電子
検出よりもより感度が高いので、システムの感度が向上し得る。当初の結果は、
発光が過酸化水素濃度、pH、およびルミノール濃度に左右され、その後者は非
直線性であると思われることを示唆した。 適切な電子供給源分子は技術上周知であり、フェリシアニドおよびルミノール
などを包含するが、これらに限定されるものではない。
【0416】 別法として、出力電子受容体または貯留体が使用し得る;すなわち、上記の反
応が逆に進行し、メタロセンなどのETMが電極から電子を受容し、メタロセン
をメタリセニウムに変換し、出力電子受容体が次いで迅速に繰返し電子を受容す
る。この態様においては、コバルチセニウムが好適なETMである。 この態様において、非直線性は、同時還元剤が電流に寄与はするが、酸化電流
に対してのみであって、還元側には寄与しない(同時酸化剤ではこの逆)という
理由で達成される。 好適な態様において、非直線性はグルコースペルオキシダーゼ・バイオセンサ
ーなどの酵素結合反応の使用を介して達成される。これらのセンサは我々の同時
還元センサと同様の挙動を示す。しかし、応答の非直線性を観察するのが有利で
ある。
【0417】 好適なシステムでは、奇数の高調波が全時間二重のピークを生じるように見え
ると思われる。偶数の高調波は常に1つのピークを与える。また、偶数ピークは
奇数よりも約10倍大きい。思い起こしてもらいたいのは、可逆性対では、ピー
クの3個が高調波の数であり、2は2、3は3、等々ということである。
【0418】 好ましい実施態様において、交流電流(AC)方法を使用して電子伝達を開始す
る。さらに交流技法を用いると、ETM以外の物質によるすべての単一周波数で
のバックグラウンドシグナルの顕著な低下をもたらす。すなわち、望まないシグ
ナルの“閉め出し”または“濾去”である。溶液中の電荷キャリヤーすなわちレ
ドックス活性分子の周波数応答が、その拡散係数および電荷伝達係数によって制
限される。従って、高周波数では、電荷キャリヤーはその電荷を電極に伝達する
のに十分速く拡散し得ず、および/または電荷伝達速度が十分に速くない。この
ことは、適切な単層を用いない場合あるいは部分的または不完全な単層を用いる
場合、すなわち溶媒が電極に到達し得ない場合に著しい。すでに概記したように
、直流技法において、電極に溶媒が到達し得る“ホール”の存在は、システムの
“短絡”溶媒電荷キャリヤーをもたらすことがある。すなわち、電極への到達お
よびバックグラウンドシグナルの生成である。しかし、現在の交流技法を利用す
ると、1以上の周波数が選ばれて、単層の存在・不存在にかかわらず溶液中の1
以上の電荷キャリアーの周波数応答を防ぐ。このことは血液などの多くの生物体
液が、アンペロメトリー検出を妨害し得るレドックス活性分子を顕著な量で含有
しているので、特に意味がある。
【0419】 好ましい実施態様において、システムの測定は少なくとも2つの単離された周
波数で行われ、複数の周波数の測定が好ましい。複数の周波数には走査がある。
例えば交流電流は、1−20Hzなどの低い入力周波数で、10−100kHz
などの高い周波数での出力シグナルに対する応答と比較すると、ETMの存在の
有無による周波数応答の相違を示す。好ましい実施態様において、周波数は少な
くとも2、好ましくは約5、さらに好ましくは少なくとも約10周波数で測定さ
れる。
【0420】 電子伝達を開始するために入力シグナルを伝導した後に、出力シグナルが受け
られ、すなわち検出される。出力シグナルの存在および増大は多くの因子に依存
する。すなわち、入力シグナルの過電位/振幅;入力交流シグナルの周波数;介
在媒体の組成物;直流オンセット;システムの環境;ETMの性質;溶媒;塩の
種類と濃度である。1つの与えられた入力シグナルにおいて、出力シグナルの存
在および増大は、一般的にETMの存在の有無、単層表面からのETMの位置と
距離および入力シグナルの性質に依存する。いくつかの実施態様において、標識
プローブの非特異的結合と標識プローブを含む標的特異的アッセイ複合体の形成
との相違をインピーダンスに基づき識別することは、可能である。
【0421】 好ましい実施態様において、出力シグナルは交流電流を含む。上記したように
、出力電流の大きさはパラメーターの数に依存する。これらのパラメーターを変
えると、数においてシステムが最適化される。
【0422】 本発明で生じる交流電流は一般的に、約1femptoamp−約1milliampにあり、
約50femptoamp−約100microampが好ましく、約1picoamp−約1microampが
特に好ましい。
【0423】 好ましい実施態様において、出力シグナルは入力シグナルに比較すると交流素
子でシフトする位相である。理論にとらわれることなしに、本発明のシステムを
充分にユニホームにすると、位相シフトの検出が可能となるようである。すなわ
ち、本発明の電子伝達が起きるバイオ複合体は、均質に交流入力と反応し、これ
は標準の電子素子と同じであり、位相シフトが測定できる。このことは、ETM
の存在の有無の検出の基礎として、および/または標識プローブを含む標的特異
的アッセイ複合体の存在とシステム成分に対する物質の非特異的結合との差異と
して働く。
【0424】 出力シグナルはETMの存在を特徴とする。すなわち出力シグナルは、標識プ
ローブとETMを含む標的特異的アッセイ複合体の存在を特徴とする。好ましい
実施態様において、検出の基礎は、アッセイ複合体の形成の結果としてのシステ
ムのファラデーインピーダンスの相違にある。ファラデーインピーデンスは、電
極とETMの系のインピーデンスである。ファラデーインピーデンスはバルクす
なわち2電子インピーデンスとまったく異なり、バルクインピーデンスは電極間
のバルク溶液のインピーデンスである。多くの因子がバルクインピーデンスに作
用しないファラデーインピーデンスを変えることができ、その逆も可能である。
このように核酸を含む本系のアッセイ複合体は一定のファラデーインピーデンス
を有し、これはETMと電極の距離、その電子的性質、介在媒体の組成物などに
依存している。本発明方法で重要なことは、ETMと電極との間のファラデーイ
ンピーダンスが、ETMを含む標識プローブが電極に特異的または非特異的に結
合するかどうかにより非常に異なることである。
【0425】 従って、本発明はさらに、本発明の組成物を用いて被検体を検出するための電
子器具または装置を提供する。この装置は、少なくとも第一測定すなわちサンプ
ル電極および第二測定または逆電極を有する、サンプル溶液受取用の試験室を含
む。3電極系も用いられる。第一および第二測定電極は試験サンプル受け領域に
接触し、液体試験サンプルの存在下で、2つの電気泳動電極は電子的に接触して
いてもよい。
【0426】 好ましい実施態様において、第一測定電極は、取付リンカー、および上述の伝
導性オリゴマーを含む単層を介して共有結合した一本鎖核酸捕獲プローブを含む
【0427】 装置は、試験室すなわち測定電極に電気的に連結した交流電圧源を含む。好ま
しくは、交流電圧源はオフセット電圧も同様に放出し得る。
【0428】 好ましい実施態様において、装置はさらに、入力シグナルと出力シグナルとを
比較し得るプロセッサーを含む。プロセッサーは電極に結合しており、出力シグ
ナルを受けるように配置され、表面ヌクレオシドの存在を検出する。 従って本発明の組成物は、種々の研究、臨床、品質管理、野外試験などに用い
られる。
【0429】 好ましい実施態様において、これらのプローブは遺伝子診断に使用される。例
えば、本明細書中に開示した技術を使用して、プローブを、例えば、非茸腫結腸
癌遺伝子、BRCA1胸部癌遺伝子、各種の癌関連遺伝子であるP53、アルツ
ハイマー病の最大リスク指標であるアポE4遺伝子、などの標的配列を検出する
ために調製し、患者の前駆症状スクリーニング、全身性繊維症遺伝子変異、ある
いはその他の当技術分野で周知のすべてを容易にすることができる。
【0430】 別の実施態様では、ウイルスおよびバクテリアの検出は、本発明の複合体を使
用して実施できる。この実施態様では、プローブは、各種ウイルスおよびバクテ
リアから標的配列を検出するためにデザインされる。例えば、現今の血液スクリ
ーニングは坑HIV抗体の検出に依存している。本明細書中に開示した方法は、
臨床サンプルのHIV核酸配列、殊に高度に保存性のHIV配列を検出する直接
スクリーニングを可能とする。さらにこれは、坑ウイルス治療の効果を評価する
改良方法として、患者の体内を循環しているウイルスを直接モニターすることを
可能とする。同様に、リューケミア関連ウイルス、HLTV−IやHLTV−II
をこの方法で検出することができる。バクテリア感染症、例えば、結核、クリミ
ディアおよび他の性的伝染症も検出できる。
【0431】 好ましいある実施態様では、本発明の各核酸は、水あるいは食品サンプルのス
クリーニングにおいて毒性バクテリアのプローブとしても使用される。例えば、
各サンプルは、バクテリアを溶解処理してその核酸を遊離させ、次いでバクテリ
ア株を認識するようにプローブをデザインする。但し、該バクテリアは、Salmon
ella, Campylobacter, Vibrio cholerae, Leishmania, 腸毒性のE. Coli株、お
よびレジオネア病バクテリア、などの病原性株を含むがそれらに限定はされない
。同様にして、本発明の組成物を使用して生体治癒戦術を、評価できる。
【0432】 さらなる実施態様では、犠牲者や容疑者から採取したサンプルについて、犯罪
−現場を一致させる法医学的「DNA指紋鑑定」に使用される。
【0433】 さらなる実施態様では、あるアレイ配列のプローブは、ハイブリダイゼーショ
ンによる配列決定に使用される。
【0434】 このように、本発明は、ある実施態様においては、ハイブリダイズしていない
プローブを除去することなく標的配列を検出し得る、極めて特異的で感受性の高
いプローブを提供するものである。これは、自動化遺伝子プローブアッセイの形
成に有用である。
【0435】 あるいは、本発明の組成物は、PCRにおける成功した遺伝子増幅を検出する
のに有用であり、かくして成功したPCR反応を標的配列の存在または不存在の
指標とすることができる。PCRはこのような手法で数種の方法に使用される。
例えば、ある実施態様では、このPCR反応は当技術分野で知られているように
して実施され、次いで、標的核酸とETMとを含む本発明の組成物に加え、伝導
性オリゴマーを介して電極に共有結合させ、続いて標的配列を検出する。あるい
は、ETMで標識化したヌクレオチドを用い、電極の存在下にまたは続いて電極
を加えるかのいずれかで、伝導性オリゴマー及び標的核酸とともにPCRを実施
する。ETMを含有するPCR生成物の電極組成物との結合は、電子移動により
検出される。最終的に、伝導性ポリマーを介して電極に結合した核酸は、ETM
で標識化した第二プライマーの添加により、PCRプライマーの1種となるだろ
う。伸長させると、ETMおよび共有結合した電極を有する2本鎖核酸を生じる
。このような方法で、本発明は各標的配列のPCR検出に使用される。
【0436】 好ましいある実施態様では、これらの配列はmRNA検出に使用される。好ま
しいある実施態様は、これらのmRNAの3’ポリアデニル化末端近くにハイブ
リダイズする捕獲プローブまたは捕獲伸長プローブのいずれかを利用するもので
ある。これにより、標的結合プローブの1種、即ち、mRNA標的のポリ−A末
端と結合するポリ−T部分を含有するプローブ、を標的に使用することが可能と
なる。一般的に、このプローブは、好ましくは非ポリ−Tであり、検出プローブ
(または他のプローブ)と結合する第二部分、を含有する。これにより、1種標
的結合プローブの調製、および、異種プローブ合成実施量の減少が可能となる。
【0437】 好ましいある実施態様では、制限酵素およびライゲーション手法を使用するこ
とにより、「ユニバーサル」アレイ配列の創製が可能となる。この実施態様では
、図6に一般的に示した、制限エンドヌクレアーゼ末端を含む捕獲プローブを含
む単層である。核酸の相補的部分を利用することにより、「粘着性末端」を残し
つつ、制限エンドヌクレアーゼ部位のすべてを含むアレイ配列が調製される。こ
れらの制限エンドヌクレアーゼの1種またはそれ以上で標的サンプルを処理する
ことにより、それらの標的をアレイ配列に結合させることが可能となる。これは
、標的の配列を知らなくても実施できる。それらの標的は、所望により、標準的
手法例えばリガーゼを用いてライゲートされ得、そして標準的標識または本発明
方法のいずれかを使用して標的配列を検出できる。
【0438】 本発明は、核酸類を感受性よく検出し得る方法を提供するものである。好まし
い実施態様では、約10×10以下、好ましくは約10×10以下、より好
ましくは約10×10以下、特に好ましくは約10×10以下、最も好まし
くは約10×10以下の分子が検出される。これは標的配列とレポーター分子
との1:1相関を推認するものであり、もし各標的配列に対して1以上のレポー
ター分子(即ち、電子伝達分子)を使用すれば、感受性がより高くなるはずであ
ることは、当業者には明かであろう。
【0439】 現今、検出限界は刊行物発表されたDNAを介しての電子伝達率に基づいて評
価されており、それは大まかに言って、8ベースペア分離につき1×10電子
/秒/デュープレックスであり(Meade et al., Angw. Chem. Eng. Ed., 34:352
(1995)参照) 、高い推進力、約100kHzのAC振動数を可能とするもので
ある。予試験結果が示しているように、これらのシステムを介しての電子伝達は
、極めて効率的であり、ほぼ100×10電子/秒に達し、非常に僅かの分子
に対しても有力でフェムトアンプな感受性をもたらす。
【0440】 本明細書中に引用したすべての参照文献は、参照によりそれらの全部を本書中
の記載として導入する。
【0441】 実施例 実施例1 基板および単層の一般的作製法 基板上のSAM形成−一般手法 自己集合単層は清浄金表面に形成した。金表面は様々な異なる方法で調製する
ことができる;溶融または研磨金線;ガラスまたは雲母またはシリコン・ウエハ
ーまたはある種の他の基板にスパッタもしくは蒸着した金;回路基板材料または
ガラスまたはシリコンまたはある種の他の基板に電気メッキもしくは無電解メッ
キした金。真空蒸着金サンプル(減圧およびスパッタ)および溶液析出金サンプ
ル(無電解および電気メッキ)双方について、好適な機械的安定性を保証するた
めに、基板と金との間に粘着層を使用しなければならない。クロム、チタン、チ
タン/タングステンまたはタンタルが多くの場合スパッタおよび蒸着金と共に採
用される。電気メッキしたニッケルは通常電気メッキおよび無電解メッキした金
と共に採用され、他の粘着材料が使用し得る。 金基板は単層を形成する前に清浄にする。様々な異なる手法が採用されている
。化学溶液による浄化が最も一般的である。ピランハ溶液(過酸化水素/硫酸)
または王水(塩酸/硝酸)清浄化が最も一般的であるが、電気化学的方法、火炎
処理、プラズマ処理法なども採用されている。
【0442】 清浄化に続いて、金基板は析出溶液中でインキュベートする。析出溶液は溶媒
中種々チオールの混合物を含む。エタノールなどの有機溶媒中アルカンチオール
の混合物が最も一般的な手法であるが、様々な変法も開発されている。替わり得
る手法としてはアルカンチオールの気相析出、微小接触プリンティング、ニート
・チオールを使用する析出、水性溶媒からの析出などであるが、2工程手法が開
発されている。析出溶液におけるアルカンチオールの濃度はモルないしサブミク
ロモルの範囲であり、0.5〜2.0ミリモルの範囲が最も一般的である。金基板
はその手法に応じて1秒以下ないし数日間、析出溶液と接触させ、インキュベー
ト/静置する。最も一般的な時間は1時間ないし一夜のインキュベーションであ
る。インキュベーションは通常室温で実施するが、50℃までの温度が一般的で
ある。
【0443】 DNAを含む混合単層は通常2工程手法により調製する。チオール化DNAは
第一析出工程に際して析出し、混合単層形成はDNAを含まない第二チオール溶
液を加える第二工程で完了する。第二工程は多くの場合緩和な加熱であり、単層
の再構成を促進する。
【0444】 SAM形成の一般手法−有機溶液からの析出 浄化金表面を浄化バイアルに入れた。DNA析出有機溶媒溶液を調製し、総チ
オール濃度を400μMと1.0mMの間とした。析出溶液はチオール修飾DN
Aとチオール希釈分子とを含んでいた。DNAと希釈剤との比は通常10:1と
1:10の間にあり、好ましくは1:1であった。好適な溶媒は、テトラヒドロ
フラン(THF)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)またはそ
の混合物である。十分な量のDNA析出溶液をバイアルに加え、電極表面が完全
に蔽われるようにする。金基板は外界温度または僅かに高い温度で5〜30分間
インキュベートする。最初のインキュベーションの後、析出溶液を除き、希釈分
子のみの有機溶媒溶液(100μM〜1.0mM)を加える。金基板は室温また
は室温より高い温度で完全な単層が形成されるまで(10分ないし24時間)イ
ンキュベートする。金サンプルを溶液から取出し、浄化溶媒中ですすぎ、使用す
る。
【0445】 SAM形成の一般手法−水性溶液からの析出 浄化金表面を浄化バイアルに入れる。DNA析出水性溶液を調製し、総チオー
ル濃度を1μMと200μMの間とする。この水性溶液は多くの場合、塩を含む
(約1M)が、精製水を使用してもよい。析出溶液はチオール修飾DNAとしば
しばチオール希釈分子とを含んでいる。DNAと希釈剤との比は通常10:1と
1:10の間にあり、好ましくは1:1である。電極表面が完全に蔽われる容量
のDNA析出溶液をバイアルに加える。金基板は外界温度または僅かに高い温度
で1〜30分間インキュベートするが、通常5分で十分である。最初のインキュ
ベーションの後、析出溶液を除き、希釈分子のみの水性溶液または有機溶媒溶液
(10μM〜1.0mM)を加える。金基板は室温または室温より高い温度で完
全な単層が形成されるまで(10分ないし24時間)インキュベートする。金サ
ンプルを溶液から取出し、浄化溶媒中ですすぎ、使用する。
【0446】 Auボール電極上の単層 Auボール電極の創製:かみそりの刃を使用し、金線(直径127μm、99
.99%純度、アルドリッチから)を10cmの長さに切断する。16ゲージの
針を使用し、金線を#4天然ゴム隔壁(1/2mLのPCRエッペンドルフ・チ
ューブに適合するサイズ)を通す(これは金線を支持し、析出に際しチューブを
密封する。下記参照)。浄化焼成火炎(メタンまたはプロパン)を使用し、金線
の1センチメートルを溶融して金線末端に付着した球体を形成する。金線の長さ
を調整し、PCRチューブに封入したときに、金ボールが底部近傍に位置して2
0μLの液体に没入し得るようにする。使用当日に、電極を王水(4:3:1の
O:HCl:HNO)に20秒間浸け、次いで水で十分にすすぐ。
【0447】 誘導化:PCRチューブ中、析出溶液(DMF中833μM総量で2:2:1
DNA/H6/M44)20μL量をPCRブロック上で50℃に5分間加熱す
る。次いで、各電極を析出溶液に浸け(金ボールが沈む程度−金線の“柄”はで
きるだけ少なくする)、室温に移す。電極をPCRチューブに移す前に、DMF
中200μLの400μM−M44で15分間インキュベートする(金線の多く
を同様に沈める)。M44中に室温で5分間放置し、次いで、PCRブロック上
に載せ、HCLONGを実施する。電極をM44溶液から取出し、6×SSCに
浸け、ハイブリダイゼーション溶液20μLを容れたPCRチューブに入れる。
ACV測定に先立ち電極を6×SSCに浸ける。 HCLONG:65℃2’、−0.3℃/s〜40℃、40℃2’、+0.3℃/
s〜55℃、55℃2’、−0.3℃/s〜30℃、30℃2’、+0.3℃/s
〜35℃、35℃2’、−0.3℃/s〜22℃。
【0448】 回路基板の製造 両側に半オンスの銅箔をもつFR−4の18”×24”×0.047”パネル
(ジェネラル・エレクトリック)に明細どおりに穿孔した(ガーバー・ファイル
)。FR−4パネルは無電解銅でメッキ(500マイクロインチ)して特定の穿
孔を電導性とし、次いでパネルにはさらに500マイクロインチの電気メッキ銅
を貼り付ける。銅メッキに続いて、パネルは塩化第二銅エッチング(酸エッチン
グ)により明細どおりにエッチングする。次いで、エッチングしたパネルに光沢
剤を有する400マイクロインチの電気メッキニッケルを張付け、次いで50マ
イクロインチの軟質金(99.99%純度)を貼り付ける。金パネルにはその両
側に液状光画像形成蝋マスク(プロビマー52、チバ−ガイギー社)を被覆する
。画像形成を明細どおりに実施する。直径250ミクロンの14個のセンサー電
極と2個のより大きい電極(直径500ミクロン)を、基板の縁に金貼付け接点
につながる絶縁リード線と共に創製する。次いで、蝋マスク化パネルに明細どお
りに刻み目を入れ、1”×1”の個々のウエアーを創製する。銀/塩化銀のペー
ストを2個の大きい方の電極(ERCON R−414)の一方に塗付する。次
いで、パネルをアルゴン/酸素プラズマ混合物でプラズマ浄化する。浄化に続い
て、パネルは箔を内張りしたバッグに入れ用時まで保存する。
【0449】 回路基板上の単層析出 回路基板を箔内張りバッグから取出し、10%硫酸溶液中に30秒間浸漬する
。硫酸処理に続き、基板をミリ−Q水に2回それぞれ1分間浸漬する。基板は次
いで窒素気流下で乾燥する。基板を調湿チャンバー内のX−Yテーブルに置き、
DNA析出溶液の30ナノリットル液滴を14個の電極それぞれに載せる。DN
A析出溶液は、33μMチオール化DNA、33μM2ユニットのフェニルアセ
チレンワイヤ(H6)、および6×SSC(900mM塩化ナトリウム、90m
Mクエン酸ナトリウム、pH7)w/1%トリエチルアミン中の16μM−M4
4を含む。液滴を室温で5分間インキュベートし、次いで、液滴はミリQ水浴中
ですすぎ取除く。基板をアセトニトリル中M44の45℃浴に浸漬する。30分
後、基板を取出し、アセトニトリル浴に30秒、次いでミリQ水浴に30秒間浸
漬する。基板を窒素気流下に乾燥する。
【0450】 実施例2 標的配列の検出 回路基板上の単層析出 上記のように、回路基板を箔内張りバッグから取出し、10%硫酸溶液中に3
0秒間浸漬する。硫酸処理に続き、基板をミリ−Q水に2回それぞれ1分間浸漬
する。基板は次いで窒素気流下で乾燥する。基板を調湿チャンバー内のX−Yテ
ーブルに置き、DNA析出溶液の30ナノリットル液滴を14個の電極それぞれ
に載せる。DNA析出溶液は、33μMチオール化DNA、33μM2ユニット
のフェニルアセチレンワイヤ(H6)、および6×SSC(900mM塩化ナト
リウム、90mMクエン酸ナトリウム、pH7)w/1%トリエチルアミン中の
16μMウンデセン−1−エン−11−イルトリ(エチレングリコール)((H
S−CH)11−(OCHCH)−OH)を含む。3個の電極にDNA1
(5’−ACCATGGACACAGAT(CH)16SH−3’)含有溶液を
スポットした。4個の電極にはDNA2(5’TCATTGATGGTCTCT
TTTAACA(CH)16SH−3’)含有溶液をスポットした。4個の電
極にはDNA3(5’CACAGTGGGGGGACATCAAGCAGCCA
TGCAAA(CH)16SH−3’)をスポットした。3個の電極にはDNA
4(5’−TGTGCAGTTGACGTGGAT(CH)16SH−3’)を
スポットした。析出溶液を室温で5分間インキュベートし、次いで、液滴はミリ
Q水浴中ですすぎ取除く。基板をアセトニトリル中M44の45℃浴に浸漬する
。30分後、基板を取出し、アセトニトリル浴に30秒、次いでミリQ水浴に3
0秒間浸漬する。基板を窒素気流下に乾燥し、窒素ガスを吹き込んだ箔内張りバ
ッグに使用時まで保存する。
【0451】 ハイブリダイゼーションおよび測定 修飾した基板を箔内張りバッグから取出し、射出成形サンプル・チャンバー(
カートリッジ)を取付けた。チャンバーは両面粘着テープで基板に接着したが、
その総容量は250マイクロリットルであった。ハイブリダイゼーション溶液を
調製した。この溶液は10nMのDNA標的(5’−TGTGCAGTTGAC
GTGGATTGTTAAAAGAGACCATCAATGAGGAAGCTG
CAGAATGGGATAGAGTCATCCAGT−3’)(D−998)、
30nMシグナル・プローブ(D−1055)および10nm 5’−TCTAC
AG(N6)C(N6)ATCTGTGTCCATGGT−3’(N6はPCT/U
S99/01705の図1Dに示されている;ヌクレオシドのリボース2’酸素
に4炭素鎖により連結したフェロセンを含む)を含む。
【0452】 シグナリング・プローブは以下のとおりである: 5'-(C23)4-N87-N87-N87-N87-ATC CAC GTC AAC TGC ACA-3'(D- 1055) I I I I C23 C23 C23 C23 C23 C23 C23 C23 C23 C23 C23 C23 C23 C23 C23 C23 N87はリング構造を含んでなる分岐点である。C23はPCT/US99/0
1705の図1Fに示されている。25%キアゲン(Qiagen)溶解バッファーA
L、455mM−NaClO、195mM−NaCl、1.0mMメルカプト
ヘキサノールおよび10%仔ウシ血清を含む溶液中、250マイクロリットルの
混成溶液をカートリッジに注入し、12時間ハイブリダイズさせた。12時間後
、ハイブリダイズしたチップは切換え回路構成をもつ自家製相互コンダクタンス
・アンプに挿し込んだ。相互コンダクタンス増幅器はコンピューターDAQから
のDCランプおよびロックイン増幅器(SR830スタンフォード・インストル
ーメント)からのAC正弦波を組合わせる加算回路構成を備えていた。各電極は
連続的に走査し、データをセーブし、ラブビュー(Labview)(ナショナル・イン
ストルーメント)を用い設計した自家製プログラムにより操作した。チップはD
C−100mVと500mV(疑似Ag/Ag/Cl参照電極)間で、25mV
(50mVピーク対ピーク)、1000Hz重畳正弦波により走査した。出力電
流はロックイン増幅器に供給し、1000Hzシグナルを記録した(ACV技法
)。パッド各セットのデータを蓄積し、平均した。
【表1】
【0453】 実施例3 シグナル処理に対するFFTの使用 ロックイン増幅器を除いて、FFTシステムの前後エレクトロニクスはアナロ
グ機器と本質的に同じである。DC電位ランプ上に載せたAC電圧がバイオチッ
プを掃引する。チップの出力電流はトランスインピーダンス増幅器を通過し、そ
こでシグナルは増幅され、ボルトに変換される。この時点で、ロックイン増幅器
に向かう替りに、シグナルは直接デジタル化され、分析される。最近、我々はデ
ジタル化の前に抗エイリアスフィルタを加えた。この抗エイリアスフィルタはデ
ジタル化に先立ち対象周波数上の白色雑音を削減するのに使用する。デジタル化
前に高周波数を濾過することが必要であるが、その理由はアナログ−デジタル変
換(ADC)後のフィルタは、もし我々が我々のシグナル帯域幅を制限しないな
らば、エイリアス効果を受けるからである。アナログ抗エイリアスフィルタは実
質的に高極または順位低域フィルタである。
【0454】 シグナルはアナログ−デジタル変換器(例えば、12ビット、1.25MS/
sデータ捕捉カード、ナショナル・インストルーメント(NI−DAQモデルP
CI−MIO−16E−1)を用いてデジタル化する。注文作製によりラボビュ
ウ(Labview)プログラムを開発し、データを分析した。代表的には、1.25×
10サンプルはウインドウなしに12.5秒間100kHzで捕捉した。これ
らの値は以下のファクターに基づき選択した:1)我々が分析しようとするサン
プル数を制限する計算時間を急速化することへの要望、および2)エイリアス効
果を最小とすること。そこで、我々は一回当たりのサンプル数を1.25×10
とし、fサンプルリング=100kHzとすることを最適とした。サンプリン
グ速度がアナログ−デジタル変換(ADC)の発生回数を決めることを思い起こ
されたい。急速なサンプリング速度がサンプリング時間内により多くのポイント
を捕捉し、従って、遅速サンプリング速度よりも最初のシグナル提示をよりよく
形成し得る。遅すぎるサンプリングはアナログシグナルの提示が貧弱なものとな
る。劣ったサンプリングの影響は、シグナルが真の周波数とは異なる周波数を有
するかのように現われることである。シグナルの誤った提示をエイリアスと呼ぶ
。低域フィルタの使用および高速サンプリングは我々のデータにおいてエイリア
スを最小化する。
【0455】 結 果 バッファー溶液対相補性DNA 正弦波ACボルタンメトリー技法はDCランプの上に正弦波、典型的には10
〜1000Hzを加えることからなる。この報告に示されたデータはすべて1k
Hzで取得した。固定した周波数での正弦波の周波数スペクトルはその周波数で
の単純な単一ピークであり、ピークの高さは波の振幅である。例えば、10V ms での1000Hz正弦波は周波数領域において1000Hzで10Vrms ピークとして顕著に表れる。しかし、バイオチップは非線形デバイスであるため
、正弦波の高調波ひずみが現われ、チップの応答は高調波を含むこととなる。
【0456】 図4Aはバッファー溶液(700mM−NaClO:300mM−NaC1)
のみによるバイオチップの周波数スペクトルである。1000Hzピークはスペ
クトルの優性ピークである。また、そこには1kHzの高調波があるが、直ぐに
落ち込む。事実、基礎の周波数と第二高調波間の差は略2桁の大きさである。こ
のことはむしろ高調波のひずみが弱く、弱いが測定可能であることを示唆する。
高調波の振幅(基礎の周波数は除く)は指数的に低下する。この場合、指数的減
衰はlog目盛りでk=2.15の傾斜をもつ(我々はk値について本報告の残
りの部分で調波減衰という)。
【0457】 図4Bは1μMの相補正DNAとハイブリダイゼーションした後のバイオチッ
プの周波数スペクトルである。この測定ではバッファー溶液測定と同じチップを
対照の目的で使用した。同一のチップを使用したので、2つの測定値のバックグ
ラウンド符号定数は本質的に同じである。図4bと図4aの明らかな差は高調波
、特により高い調波の振幅である。このことは有意なファラデーインピーダンス
成分を有する酸化還元化学系の存在下で高調波ひずみが強いことを示唆する。図
6は2つの測定値間の2つの重要な差、すなわち、シグナルサイズと形状を強調
したものである。上に、k=1.25の調波減衰値をバッファー溶液測定につい
て報告した。1μMの相補正DNA測定の場合には、k=−0.83であり、高
調波シグナルが極めて大きいことを示している。相補正DNA測定のもう一つの
顕著な特徴は調波ピークの構造である。図7はその結果を描出する。我々の観察
するところ、電子のネルンスト分布存在下に多重ピーク構造が存在し、典型的に
はそれが対となって調波ピークに存在している。多重ピーク構造は結合した分子
をもつすべてのサンプル中に、すべての高n(n≧2)調波数で観察される。シ
グナルのピークは調和振動数にはなく、v±Δvに存在することに注意された
い。
【0458】 検出レベル 図7に、1μM、100nM、10nM、および1nMのDNA測定値につい
て、FFTスペクトルのピーク振幅を異なる周波数でプロットする。また、我々
は比較と基準化のためにバッファー溶液測定からのデータをも含めた。幾つかの
明らかな結論は図7からなし得る。その第一はピークの振幅である。予測される
ように、高濃度での測定は大きなシグナルを生じる。しかし、驚くべきことに、
その振幅は濃度により直線的に目盛り得ない(すなわち、1μMのシグナルは1
00nMの値の10倍とはならない)。恐らくこれは各濃度についての正確なT 1/2 が分かっていないためである。図6のデータは我々が1μMの濃度を測定
したのが早すぎた(1μMのt<T1/2)か、または100nMでの測定が遅
すぎた(100nMのt>T1/2)ことを示唆する。測定値の共通する傾向は
調波ピークの傾斜にあり(n≧2)、傾斜は高調波ひずみの強さおよび/または
系の非直線性の表示である。傾斜が緩いほど、調波ピークは大きくなり、系はよ
り非直線性である。1μM、100nM、および10nMの場合には、その場合
我々は良好なシグナルを得たが、その傾斜は比較的にk=−1と同じである。我
々は濃度が下がるにつれて傾斜はより急峻となり、ノイズに対するシグナル(S
/N)が劣化するのを見る。1μM、100nM、および10nMのDNAシグ
ナルのもう一つの共通性は調波ピークの極く普通の構造である(ピークの***、
図6参照)。1nMでの測定は良好なデータを生じなかった。我々は調波ピーク
のいずれにも構造を見ず、また、調波の傾斜は高濃度の測定値に比べてさらに急
峻である。事実、1nM調波シグナルの傾斜はk=2に近接し、バッファー溶液
での測定値と略同じレベルにある。
【0459】 実施例4 JTFTの使用 FFTと同様に、生データi(t)を記録し、デジタル処理した。未処理デー
タは記録されているので、より完全な解析は処理工程後に実験者の都合のよいと
きに実施し得る。このシステムは即データ解析のために走査後(2〜3分以内)
に迅速に周波数スペクトルを得るために使用することができる。あるいはJTF
Tアルゴリズム(シグナル・プロセシング・ツールセット、ナショナル・インス
ツルーメント・コープ(Signal Processing Toolset, National Instrumentatio
n Corp.))を使用することにより、データを後処理し、スペクトル写真が時間波
形(または電流対DC電位波形)を与える場合には、アナログ機により得られる
のと同様ではあるが、全高調波に対し一回の走査で完全なスペクトル写真を得る
ことができる。従って、時間依存性周波数スペクトルは時間波形または時間非依
存性スペクトルにおける他の方法では観察し得ないシグナルのパターンを明らか
にし得る。JTFTにより提供される他の利点はノイズ改変シグナルの検出であ
る。ランダムまたは白色雑音は典型的に時間または周波数依存性をもち、一方で
シグナルは通常時間と周波数空間に濃縮されるので、もしJTFTを用いるなら
ばシグナル−ノイズ比が上昇するであろう。
【0460】 同時時間−周波数変換 同時時間−周波数変換スペクトル写真を評価する最速で最も簡単な方法は短時
間フーリエ変換であり、それによって時間依存性シグナルは重なり合う時間ビン
に分割される(参照:Qian et al., Joint time frequency analysis; Englewoo
d Cliffs, N.J. Prentice Hall 1996; Wexler et al., Signal Processing 21.3
: 207 (1990); Qian et al., Signal Processing 25.2125 (1992); Cohen et al
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ech, Signal Processing 37.6: 862 (1989); and Zhao et al., IEEE Trans. Ac
oustics, Speech, Signal Processing 38.7: 1084 (1990);これらの文献すべて
を出典明示により本明細書の一部とする)。各時間ビンにフーリエ変換を適用し
、大まかな同時時間−周波数スペクトル写真を得る。他の同時時間−周波数アル
ゴリズムはガボル(Gabor)変換、およびウイグナー−ビレ(Wigner-Ville)、
疑似ウイグナー−ビレ(Wigner-Ville)、コーエン(Cohen's)クラス、コイ−
ウイリアムス(Choi-Williams)、および円錐形分布を用いる変換などである。
それぞれのアルゴリズムには利点と欠点がある。例えば、STFTスペクトル写
真は迅速で堅固であるが、分解能が劣り、非負の結果を生じる。適応性のあるス
ペクトル写真はシグナルが直線性チャープからなり、人工的交差項を生じない場
合に非常に高い分解能を与える;しかし、アルゴリズムは遅くなり、また負の結
果を与えない。
【0461】 図8は処理後ルーチンを用いるバイオチップからのスペクトル写真を説明する
。下のグラフはセルが生み出す総電流の時間波形である。このシグナルは本質的
に交流ボルタンメトリー(ACV)走査からの生の出力である。標準高速フーリ
エ変換(FFT)右上に周波数スペクトルを生じた。この走査はデータ記録後直
ちに実施し得る。一般に、走査は15秒以内であり、FFTは約30秒であり、
ペンチアム(Pentium)IIPCを要する。ラボビュウ(Labview)の現行版は三次
元のプロットを維持せず、そのため我々は現在ラボビュウによる輪郭スポットに
限定している。スペクトル写真調製に使用する処理後ルーチンはJTFAアルゴ
リズムに依存して2〜3分(5分以内)を要する。
【0462】 図9はACV走査からのスペクトル写真の3−Dプロットである。図9から我
々は基本波(1kHz)と第4調和(4kHz)振動数に極く普通の電流対DC
電位ボルタンモグラムを見る。さらに、第2および第3の調和ボルタンモグラム
がまったく同じ走査で得られる。我々が同じ走査ですべての高調波を取得し得る
という事実は、我々に我々のシステムのより良好な研究を可能とする。 JTFTデータからのバックグラウンドに対するシグナルの挙動に注目された
い。図10は基本波と最初の3つの調和振動数でのACVボルタンモグラムを説
明する。これらのプロットで示されるデータは図10のスペクトル写真から由来
する。明らかに、バックグラウンド静電容量は基本調波で最大である。高調波で
は、静電容量が劇的に降下する(2桁以上の大きさ)。このことは二重層と単層
の静電容量が略直線性であり、強い調波シグナルを生じないという概念と矛盾が
ない。しかし、ファラデー成分は非直線性であり、強い高調波を生じる。従って
、我々のシグナル−バックグラウンド比は高調波数で上昇する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1A、1Bおよび1CはDNAチップからの実際の結果を示す
【図2】 図2Aは陽性および陰性例を一緒にプロットする;図2Bは陽性
例であり、図2Cは陰性例である。
【図3】 図3は方形波ACVの高調波を示す;図3Aは第2高調波であり
、図3Bは第4高調波であり、3Cは第6高調波であり、3Dは第8高調波であ
り、3Eは第10高調波であり、3Fは第1、3、5および9高調波であり、そ
して図3Gは高調波と対する電流のグラフを示す。
【図4】 図4は実施例2の結果を示す;(A)の周波数スペクトルはチッ
プのバッファー液による測定値、(B)のスペクトルは同じチップの1μM相補
性DNAによる測定値を示す。高調波ピークの傾斜は、(A)は(B)に比較し
てより急峻である。
【図5】 図5は図4に示したスペクトルのピーク振幅である。n≧2に対
する振幅の差の大きいことに注目されたい。
【図6】 図6は周波数スペクトルの最初の4つのピークの細部を描出し、
(A)はバッファー中での測定値、および(B)は1μM−DNAでの測定値で
ある。
【図7】 図7は検出レベルの研究からの結果を示す。y軸は異なるDNA
濃度(1μM〜1nM)での高調波(n≧2)のピーク振幅であり、x軸は周波
数と調波数である。また、バッファー溶液測定値からのデータを示す。
【図8】 図8はSTFTアルゴリズムを用いるJTFTスペクトル写真の
等高線プロットを示す。等高線の強度はシグナルの振幅に対応する。下部スペク
トル写真はACV走査の未加工のシグナルである。上部右隅の周波数スペクトル
はFFTから得られる。
【図9】 図9はチップのACV走査の三次元スペクトル写真を示す。セル
電流の振幅はlog目盛りでプロットし、より高い調波を強調する。このスペク
トル写真は同調またはロックイン増幅器なしの、ごく普通の第1および第4高調
波ボルタンモグラムを明瞭に示す。他の高調波も存在する。
【図10】 図10はFFTを用いる基本波、第2、第3および第4高調波
でのACボルタンモグラム応答を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C U,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GD ,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN, IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,L K,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK ,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO, RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,T M,TR,TT,TZ,UA,UG,UZ,VN,YU ,ZA,ZW Fターム(参考) 2G045 BB48 BB51 DA13 FA34 FB02 2G054 CA22 CE03 EA03 4B024 AA11 AA19 AA20 CA01 HA12 HA19

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 サンプル中の標的被検体を検出する方法であって、 a)電極の少なくとも1つが i)当該電極に共有結合により付着した捕捉結合リガンド; ii)標的被検体;および iii)電子伝達部分; を含むアッセイ複合体を含む電極である、複数の電極を含んでなるアレイを
    提供すること; b)当該アッセイ複合体に最初の入力シグナルを印加すること; c)出力シグナルを受容すること; d)当該出力シグナルを処理し、当該標的被検体の存在を検出すること、 を含んでなる方法。
  2. 【請求項2】 当該処理が、高度な高調波分析を含んでなる、請求項1記載
    の方法。
  3. 【請求項3】 当該処理が、急速フーリエ変換(FFT)分析を含んでなる
    、請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 当該処理が、JTFTを含んでなる、請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】 当該処理が、ピーク認識機構を含んでなる、請求項1記載の
    方法。
  6. 【請求項6】 当該処理が、デジタルフィルタを含んでなる、請求項1記載
    の方法。
  7. 【請求項7】 当該処理が、シグナル平均化を含んでなる、請求項1記載の
    方法。
  8. 【請求項8】 当該処理が、スペクトル分析を含んでなる、請求項1記載の
    方法。
  9. 【請求項9】 当該処理が、ピーク認識を含んでなる、請求項1記載の方法
  10. 【請求項10】 サンプル中の標的被検体を検出する方法であって、 a)電極の少なくとも1つが i)当該電極に共有結合により付着した捕捉結合リガンド; ii)標的被検体;および iii)電子伝達部分; を含むアッセイ複合体を含む電極である、複数の電極を含んでなるアレイを
    提供すること; b)当該アッセイ複合体に最初の入力シグナル、但し、当該入力シグナルが複
    数の振幅における多重周波数の総計を含むものである、を印加すること; c)出力シグナルを受容すること; d)当該出力シグナルを処理し、当該標的被検体の存在を検出すること、 を含んでなる方法。
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