JP2002364653A - 転がり軸受 - Google Patents

転がり軸受

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JP2002364653A
JP2002364653A JP2001239723A JP2001239723A JP2002364653A JP 2002364653 A JP2002364653 A JP 2002364653A JP 2001239723 A JP2001239723 A JP 2001239723A JP 2001239723 A JP2001239723 A JP 2001239723A JP 2002364653 A JP2002364653 A JP 2002364653A
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conductive grease
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oil
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Koutetsu Denpo
功哲 傳寳
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NSK Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 導電性グリースの導電性を確保して静電気に
よる影響を長期にわたり確実に除去することができ、信
頼性の向上を図ることのできる転がり軸受を提供する。 【解決手段】 転がり軸受11内に封入される導電性グ
リース21はカーボンブラック等の導電性微粉末を含ん
でいる。そして、その離油度は2%以下となっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、玉軸受等の転がり
軸受に係り、特に、潤滑剤として導電性を有するグリー
スを用いた転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】一般情報機器、例えば複写機においては
その可動部に多数の転がり軸受を用いているが、その回
転に伴い静電気が軸受に発生するため、これによる不都
合を回避するために潤滑剤として導電性グリースを用
い、軸受の内輪と外輪のどちらか一方をアースすること
で静電気を逃がすようにしている。
【0003】転がり軸受に用いられる導電性グリースと
しては、従来、増ちょう剤や導電性付与剤としてカーボ
ンブラックを使用したものがほとんどである(例えば特
公昭63−24038号公報)。このような導電性グリ
ースにあっては、使用当初は優れた導電性を示すもの
の、経時的に導電性が低下していく。これは、使用当初
は軌道輪と転動体との間にカーボンブラックが十分に存
在し、軌道輪と転動体との導電性が確保されるものの、
時間の経過と共にカーボンブラックが軌道輪と転動体と
の間から排除されたり、あるいはカーボンブラック粒子
のチェーンストラクチャーが破壊されたりするためであ
る。
【0004】このような導電性グリースの経時的な導電
性低下を防止する方策として、グリースのちょう度を制
限し、導電性グリースを軟らかくしてグリースの硬化を
防止したものが特開平1−307516号公報に開示さ
れている。また、カーボンブラックなどの導電性微粉末
は、それ単独では一般に知られている金属石けんやウレ
ア化合物等の増ちょう剤よりも増ちょう剤としての能力
が乏しく、離油度は2%を超えてしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、増ちょ
う剤や導電性付与剤としてカーボンブラックを使用した
従来の導電性グリースにおいては、使用当初は優れた導
電性を示すものの、転動体の転がり運動によりカーボン
ブラックが軸受の軌道面から排除されたり、カーボンブ
ラックのチェーンストラクチャーが破壊されたりするこ
とによって導電性が経時的に低下していくという問題が
あった。
【0006】本発明は上述した問題点に着目してなされ
たもので、その目的とするところは、導電性グリースの
導電性を確保して静電気による影響を長期にわたり確実
に除去することのできる転がり軸受を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明に係る転がり軸受は、支持すべき軸に外嵌
する内輪と、この内輪の外周に同軸に設けられた外輪
と、この外輪と前記内輪との間に転動自在に配設された
複数の転動体と、前記内輪の外周面及び前記外輪の内周
面に導電性微粉末を含む潤滑油膜を形成する導電性グリ
ースとを備えた転がり軸受において、前記導電性グリー
スの離油度を0.1%以上で2%以下としたことを特徴
とする。
【0008】このような構成であると、無駄な油膜が最
小限に抑えられ、かつ導電性グリースの導電性を長期間
にわたり安定に保つことが可能となるので、導電性グリ
ースの導電性を確保して静電気による影響を長期にわた
り確実に除去することができ、信頼性の向上を図ること
ができる。ここで、導電性グリースの離油度が2%を超
えると、内輪の回転時における基油の分離が多くなり、
内外両輪の軌道面や溝の基油分が豊富になってくる。そ
の結果、油分中のカーボンブラックが局在化し、チェー
ンストラクチャの破壊が促進されるため、導電性の低下
を早めることになる。また、導電性グリースの離油度が
0.1%未満の場合は、潤滑不良が激しくなり、軸受寿
命が短くなる。従って、導電性グリースの離油度として
は、2%以下で0.1%以上、好ましくは2%以下で
0.5%以上であることが望ましい。
【0009】また、導電性グリースの離油度を比較的低
く抑えることは、グリース漏れや油の飛散等を抑制する
ことができるため、事務機器などの情報機器の軸受周辺
に使用される樹脂材料に悪影響を与えることもない。さ
らに、従来の導電性グリースのように、カーボンブラッ
クのみを増ちょう剤として使用してもよいが、本来の増
ちょう剤であるリチウム石けんもしくはウレア化合物
(フッ素油を使用の場合は、ポリテトラフルオロエチレ
ン等)とカーボンブラックとを共存させることにより、
カーボンブラックの分散状態を経時的に良好に保つこと
ができ、基油の油分離を抑制することができる。
【0010】導電性グリースの基油としては、鉱油、ポ
リ−α−オレフィン油(PAO)等の合成炭化水素油、
エステル油、フッ素油、エーテル油、ポリグリコール
油、シリコン油等の単体のもの或いはこれらを組み合わ
せたものを用いることができる。この場合、基油の粘度
に特別な制約はないが、基油の粘度が200mm2/s
を超えると比較的油膜が厚くなって内輪と外輪間の電気
抵抗を適当な値に保てなくなる。また、基油の粘度が5
mm2/s以下になると蒸発損失や潤滑性の点から適当
でないので、基油の粘度を5〜200m2/s、好まし
くは15〜100m2/sとすることが望ましい。
【0011】また、導電性グリースに摩耗防止効果のあ
る摩耗防止添加剤、極圧添加剤、油性剤のうち少なくと
も1つを加えると、軸受損傷を抑え、安定した導電性寿
命をグリースに付与することができる。そして、導電性
の経時的な低下をさらに長期間にわたって抑えるために
は、摩耗防止添加剤と油性剤とを併用することが好まし
い。例えば、摩耗防止添加剤として亜リン酸エステル、
油性剤としてカルボン酸無水物を用いた場合は、導電性
の経時的な低下を抑える効果が特に優れている。ここ
で、摩耗防止添加剤としては、有機リン系化合物等があ
げられる。有機リン系化合物としては、例えば、一般式
(RO)3POで示される正リン酸エステル(TCP,
TOP等)、一般式(RO)2P(O)Hで示される亜
リン酸ジエステルや一般式(RO)3Pで示される亜リ
ン酸トリエステルのような亜リン酸エステル等があげら
れる。なお、上記のRはアルキル基、アリール基、アル
キルアリール基を示す。
【0012】また、極圧添加剤としては、Zn−DTP
(ジチオリン酸亜鉛)、Mo−DTP(ジチオリン酸モ
リブデン)等のDTP金属化合物、Ni−DTC、Mo
−DTC等のDTC金属化合物、イオウ、リン、塩素等
を含む有機金属化合物などがあげられる。さらに、油性
剤としては、アミン系化合物、オレイン酸、コハク酸エ
ステル等の有機脂肪酸化合物、アルケニルコハク酸無水
物等のカルボン酸無水物などがあげられる。
【0013】導電性微粉末としては、導電性を備えた粉
末が好適に使用され、例としてはカーボンブラック等が
あげられる。カーボンブラックに代わるものとしては、
アセチレンブラックなどの繊維状カーボンを主成分とす
る粒子、金、銀、銅、スズ亜鉛、アルミニウムなどの金
属粒子、酸化銀、硫化ニオブ、硝酸銀などの金属化合物
粒子等があげられる。比表面積が800cm2/gの導
電性微粉末の含有量が0.1wt%未満であると、導電
性グリースの導電性が不足する。また、この導電性微粉
末の比表面積が大きい場合、含有量が少量でも吸着能力
が大きいため、親油性にも優れ、増ちょう性能が大き
い。また、比表面積が小さいと増ちょう性が乏しいの
で、グリース中に分散させたとき体積電気抵抗値が大き
い。このため、添加量を大きくさせる必要がある。よっ
て、導電性微粉末の比表面積(m2/g)とグリース中
の導電性微粉末の含有量(wt%)とを掛け合わせた値
が80以上8000以下であることが望ましい。比表面
積が800cm2/gの導電性微粉末の含有量が0.1
wt%未満であると、導電性グリースの導電性が不足す
る。含有量が10wt%を超えるとグリースの性能低下
(基油と増ちょう剤との分離など潤滑不良)が生じるお
それがあり、さらに、ちょう度が小さくなって導電性グ
リースが硬くなり、軸受などに封入し使用する場合に軸
受トルクが大きくなったりする。従って、導電性微粉末
の含有量としては、導電性微粉末と増ちょう剤の総量を
1としたとき、その比率が0.2〜0.9であることが
望ましい。
【0014】なお、導電性グリースにおける基油の含有
量は、導電性グリース全量から導電性微粉末、摩耗防止
添加剤、極圧添加剤、油性剤、増ちょう剤などを差し引
いた部分が基油となるから、64〜90wt%とするこ
とが好ましい。また、軸受内に導電性グリースを封入す
る際、導電性ゴムなどで形成される導電性シール板を併
用することができ、シール板に導電性を付与すれば導電
性の経時的な低下をより抑制することができる。
【0015】また、導電性グリースの基油と増ちょう剤
の配合比率は、適用する用途に適したちょう度あるいは
その使用温度に適合した組み合せとなるものであればよ
く、格別限定されるものではないが、通常はJIS K
2220のちょう度番号が1番〜3番の範囲が選択され
る。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係
る転がり軸受の構造を示す断面図である。同図におい
て、転がり軸受11は、支持すべき軸(例えば転写ドラ
ムのドラム軸等)に外嵌して固定される内輪12と、こ
の内輪12の外周に設けられた外輪13とを備えてい
る。これらの内外両輪12,13は軸受鋼等の金属材料
から形成され、その一方はアースされている。
【0017】また、転がり軸受11は内輪12と外輪1
3との間に転動自在に配設された複数の球状転動体14
と、これらの転動体14を保持する保持器15とを備え
ており、内輪12の外周面中央部と外輪13の内周面中
央部には、転動体14の軌道面を形成する転動体転動溝
16が内外両輪12,13の全周にわたってそれぞれ形
成されている。さらに、転がり軸受11は内輪12と外
輪13との間隙をシーするリング状のシール板17,1
8を備えている。
【0018】シール板17,18は導電性ゴムなどの導
電性材料で形成されており、これらシール板17,18
の外周部には、外輪13の内周面に形成されたシール板
保持溝19,20に着脱自在に嵌合する嵌合部17a,
18aが形成されている。シール板19,20と転動体
14および内外両輪12,13とで画成された密閉空間
には、導電性グリース21が封入されている。この導電
性グリース21は、基油としてポリ−α−オレフィン油
(40℃における動粘度は30.0mm2/sec)を
用い、これに増ちょう剤としてリチウム石けん(7wt
%)を、また導電性微粉末としてカーボンブラック(5
wt%)をそれぞれ添加し、かつJIS K2200
5.7で規定される離油度(100℃、24h)を2%
以下としたものである。
【0019】このように、転がり軸受11内に封入され
る導電性グリース21の離油度を2%以下にすると、無
駄な油膜を最小限に抑えられるので、導電性グリース2
1の導電性を長期間にわたり安定に保つことができる。
また、導電性グリース21の離油度を比較的低く抑える
ことにより、グリース漏れや油の飛散等を抑制すること
ができ、事務機器などの情報機器の軸受周辺に使用され
る樹脂材料に悪影響を与えることもない。
【0020】次に、図1に示した転がり軸受11とほぼ
同様な数種の転がり軸受について、回転中の内外輪の抵
抗値を測定して、導電性グリースの導電性が経時変化す
る程度を評価した結果について説明する。まず、抵抗値
を測定する装置について、図2の概略構成図を参照しな
がら説明する。図2において、符号31は測定対象の転
がり軸受を示し、その内輪12に取付けられた軸部材3
2をモータ33によって回転駆動することによって、軸
受31を回転するように構成されている。そして、内輪
12と一体となっている軸部材32と外輪13との間
に、定電圧電源34によって、所定の定電圧が印加され
るとともに、定電圧電源34と並列に抵抗測定装置35
が接続されている。
【0021】抵抗測定装置35は、測定した電圧値(ア
ナログ値)を、A/D変換回路36に出力する。A/D
変換回路36は、抵抗測定装置35からの電圧値を予め
設定されたサンプリング周期でデジタル値に変換し、変
換したデジタル信号を演算処理装置37に出力する。こ
の装置では、A/D変換回路36のサンプリング周期を
50kHz(サンプリング時間間隔=0.02ms)に
設定してある。
【0022】演算処理装置37は、最大抵抗値演算部3
7Aと、閾値処理部37Bと、波数カウント部37Cと
を備える。最大抵抗値演算部37Aは、入力したデジタ
ル信号に基づき最大抵抗値を演算する。閾値処理部37
Bは、入力したデジタル信号について所定閾値で閾値処
理を行い、雑音を除去する。波数カウント部37Cは、
閾値処理部37Bからのパルスカウントについて、経時
的なパルス値の増減変化によって、所定時間単位毎の変
動回数つまり波山の波数をカウントし、その単位時間当
たりの波数の平均値を求める。また演算処理装置37
は、求めた最大抵抗値及び単位時間当たりの波数の平均
値を表示装置38に出力する。この演算処理装置37で
は、上記波数をカウントする単位時間を0.328秒に
設定してある。
【0023】表示装置38は、ディスプレイなどから構
成され、演算処理装置37が求めた最大抵抗値及び単位
時間当たりの波数の平均値を表示する。次に、上記構成
の装置を使用して転がり軸受31の内輪と外輪間の抵抗
値を測定評価する方法について説明する。モータ33を
駆動して軸部材32つまり内輪12を所定回転速度で回
転させた状態で、定電圧電源34から軸受31の内輪1
2と外輪13間に所定の定電圧を印加する。このとき、
内外両輪12,13間に電流が流れるが、スパーク等に
よって、電圧が変動する。その電圧が抵抗測定装置35
で測定され、続いてA/D変換回路36によってデジタ
ル値に変換され、そのデジタル信号に基づいて、演算処
理装置37が、最大抵抗値および所定単位時間当たりの
波数を求め、その値が表示装置38に表示される。
【0024】軸受内に封入される導電性グリースの離油
度を軸受毎に変えて、図2に示した装置により各軸受に
ついて内輪12と外輪13間の回転時の抵抗値(最大
値)を測定した。ここで、各軸受は共に内径8mm、外
径22mm、幅7mmの玉軸受である。また、グリース
の成分は表1に示す通りであり、その封入量は155〜
165mgである。
【0025】
【表1】
【0026】また、このときの測定条件は 軸部材32の回転数:150rpm 軸受31に与えるラジアル荷重(Fr):19.6N 印加電圧 :6.2V 最大電流 :100μA 雰囲気温度:25℃ 雰囲気湿度:50%RH である。
【0027】上記の測定結果を図3に示す。同図におい
て、横軸は導電性グリースの離油度(%)を表し、縦軸
は内輪と外輪間の電気抵抗値(kΩ)を表している。図
3に示されるように、離油度が2%を超える導電性グリ
ースを用いた軸受については、内輪と外輪間の抵抗値が
使用当初と300時間経過後とで大きな差があり、この
ことから導電性グリースの離油度が2%を超えると、導
電性グリースの導電性が経時的に低下することがわか
る。これに対し、離油度が2%以下の導電性グリースを
用いた軸受については、使用時間が300時間を経過し
ても内輪と外輪間の抵抗値が使用当初と比較してそれほ
ど上昇しないことがわかり、このことから導電性グリー
スの離油度を2%以下にすることにより、導電性グリー
スの導電性が経時的に低下することを抑制できることが
わかる。
【0028】また、図3の測定結果から、使用当初はカ
ーボンブラックが軸受内部に均一に分散しており、固形
粒子のチェーンストラクチャーの破壊もなされていない
ため、内外両輪間の抵抗値が導電性グリースの離油度に
左右されることはないが、使用時間が300時間を経過
すると内外両輪と転動体との接触面からカーボンブラッ
クが排除されたり、離油した基油が接触部などに溜るこ
とによって、内外両輪間の抵抗値が急激に上昇すること
がわかる。従って、導電性グリースの導電性を長期にわ
たり安定に保つためには、導電性グリースの離油度を2
%以下、好ましくは2%以下で0.5%以上とするのが
よい。
【0029】次に、使用開始から300時間を経過した
軸受を図2の試験装置から取り外して200時間静置し
た後、再び図2の試験装置に装着して試験を行い、30
0時間経過した時の内外両輪間の抵抗値を測定した結果
を図4に示す。同図において、◆は離油度が1%の導電
性グリースを用いた転がり軸受の内外両輪間の抵抗値を
示し、■は離油度が3%の導電性グリースを用いた転が
り軸受の内外両輪間の抵抗値を示している。
【0030】図4に示されるように、図2の試験装置に
再装着した直後の各軸受の抵抗値は、離油度が1%の導
電性グリースと3%の導電性グリースのいずれもが低い
値を示している。これは、転動体の走行軌道がわずかに
違うことや、静置している間にカーボンブラックのチェ
ーンストラクチャーが回復するなどの理由であると考え
られる。しかし、再試験後、しばらく経過すると、すぐ
に軸受の抵抗値が上昇し、離油度が3%の導電性グリー
スを用いた軸受は離油度が1%のものに比べて抵抗値が
急激に上昇する。従って、このことからも軸受に封入さ
れる導電性グリースの離油度を2%、好ましくは2%以
下で0.5%以上とすることにより、導電性グリースの
導電性が経時的に低下することを抑制できる。
【0031】導電性グリースの40℃での基油粘度と軸
受抵抗値との関係を調べた実験結果を図5に示す。同図
において、◆は離油度が1%の導電性グリースを、■は
離油度が1%の導電性グリースに油性剤としてコハク酸
無水物を2.5wt%添加したものを、▲は離油度が3
%の導電性グリースをそれぞれ示している。図5に示さ
れるように、導電性グリースの基油粘度を高くすると軸
受抵抗値が上昇し、離油度も高くするとその傾向が顕著
となる。これは、グリース中のカーボンブラックが導電
物質として影響しているためであると考えられる。
【0032】グリースに使用される基油は体積固有抵抗
率が1010Ω・cmを超える場合が多く、滲み出た基
油接触分に多く溜まることにより急激な抵抗値上昇を招
く。基油の粘度を低くした場合は、潤滑の面から好まし
くない。内外輪と転動体が金属接触している場合は軸受
抵抗値が低くなるが、軸受の損傷が激しく、表面荒れを
引き起こす。損傷した微小な新生面は活性が高いため、
空気中の酸素などと反応して酸化膜を形成し、その結
果、抵抗値の増加に至る。従って、基油の粘度としては
5〜200m2/s、好ましくは15〜100m2/sで
あることが望ましい。
【0033】また、導電性グリースに摩耗防止効果のあ
る添加剤を加えることにより、表面損傷を抑制し、導電
性の寿命向上を図れる。添加剤の添加量は特に制約しな
いが、腐食性や周辺樹脂などの相性問題から、10wt
%までが適当である。導電性グリースのカーボンブラッ
ク量と増ちょう剤(リチウム石けん)量および添加剤
(コハク酸無水物)量を調整し、混和ちょう度を245
に合わせたグリースについて、カーボンブラック量/カ
ーボンブラック量+増ちょう剤量の比を基に300時間
経過後の最大抵抗値および体積固有抵抗率について比較
した結果を図6に示す。同図において、▲は離油度が1
%の導電性グリース、×は離油度が3%の導電性グリー
ス、◆は離油度が1%の導電性グリース、■は離油度が
3%の導電性グリースをそれぞれ示している。
【0034】図6に示されるように、離油度が低いもの
については、ある程度体積固有抵抗率に幅があるにも拘
わらず、カーボンブラックの接触面に接する割合が高い
ため、低い抵抗値を維持することができる。また、導電
性グリースの離油度を2%以下とし、かつカーボンブラ
ック量/カーボンブラック量+増ちょう剤量の比を0.
2〜1.0、好ましくは0.2〜0.9とすることによ
り、内外両輪間の抵抗値を長期にわたり低い値に維持す
ることができる。
【0035】図7に、本発明の第2の実施形態に係る転
がり軸受の断面図を示す。同図に示されるように、転が
り軸受25は内輪12、外輪13、転動体14および保
持器15を備えており、非接触シールド26,27で閉
塞された軸受内部には、導電性グリース21が封入され
ている。導電性グリースの実施例と比較例を表2に示
す。
【0036】
【表2】
【0037】表2において、「導電性微粉末比率」は 導電性微粉末比率=導電性微粉末量/(導電性微粉末量
+増ちょう剤量) で定義される比率であり、No.1〜10の導電性グリ
ースは導電性微粉末比率の値が0.5〜0.9となって
いる。また、No.8〜10の導電性グリースは繊維長
さが3μm以上のLi石けんを増ちょう剤として用いた
ものである。さらに、No.10の軸受は非接触シール
ドの他に、導電性ゴムシールを併用した軸受である。
【0038】表2に示した各導電性グリースの潤滑性を
調べるために、本発明者は、No.1〜13の各導電性
グリースを図7に示した軸受内に封入して試験用の軸受
を作製し、作製した各試験軸受を回転速度:1800m
in-1、ラジアル荷重(Fr):19.6Nの条件で回
転させたときの軸受振動をアンデロメータで測定した。
そして、アンデロメータのハイバンドとミディアムバン
ドの平均値を求め、300時間経過後の平均値の増加量
が3未満のものを「○」、3〜4未満のものを「△」、
4以上のものを「×」として評価した。その評価結果を
表2に併記する。
【0039】また、作製した各試験軸受を回転速度:1
50rpm、ラジアル荷重(Fr):19.6N、印加
電圧:6.2V、最大電流:100μA、雰囲気温度:
25℃、雰囲気湿度:50%RHの条件で回転させ、回
転開始時と300時間経過後の軌道輪間の最大抵抗値を
測定し、両者の比を最大抵抗値増加量として求めた。そ
の結果を表2に併記する。
【0040】表2において、No.1〜10の軸受とN
o.12の軸受とを比較すると、No.1〜10の軸受の
ほうが300時間後の最大抵抗値増加量が低い値を示
し、導電性に優れている。このとき、No.12の軸受
は導電性グリースの離油度が2.1であるのに対し、N
o.1〜10の軸受は導電性グリースの離油度が0.1
以上で2.0以下となっている。このことから、図3の
離油度0.5%以上で2%以下の範囲に、表2の実施例
1,2,3,6の離油度0.1%以上の場合を加え、離
油度0.1%以上0.2%以下の範囲で導電性が優れて
いることがわかる。
【0041】また、No.1〜10の軸受とNo.11〜
13の軸受とを比較すると、No.1〜10の軸受のほ
うが300時間後の軸受音響増加量が4未満の値を示
し、静穏性に優れていることがわかる。これは、No.
11〜13の軸受は導電性グリースに増ちょう剤が添加
されていないのに対し、No.1〜10の軸受は導電性
グリースに増ちょう剤が添加されているためである。
【0042】表2の試験結果からわかるように、カーボ
ンブラックの比表面積が小さい場合、油の増ちょう性が
乏しいため、カーボンブラック量が10%を超える。カ
ーボンブラックの比表面積が小さいと粒子径が大きくな
り、軸受音響にも影響するので、増ちょう剤との混合が
望ましい。一般に増ちょう剤の量が増えるとグリースが
硬くなるほか、グリース中の基油量が少なくなるため、
離油度は小さくなる。グリース中にカーボンブラックを
含む場合も同様に離油度が小さくなる傾向がある。さら
に、摩耗防止剤、極圧剤、油性剤をすくなくとも1種加
えると表面摩耗損傷を抑え、潤滑性能を高めることがで
きる。増ちょう剤の量が同じである場合は、増ちょう剤
(Li石けん)の繊維が大きいと離油度が大きくなる傾
向にあるが、離油度が大きいほど表面摩耗が抑えられ
る。
【0043】以上のことから、軸受に封入される導電性
グリースの離油度を0.1%以上2%以下にすることに
より、導電性グリースの導電性が経時的に低下すること
を抑制でき、これにより導電性グリースの導電性が長期
にわたり安定に保たれるので、静電気による影響を長期
にわたり確実に除去することができ、信頼性の向上を図
ることができる。
【0044】上述した実施例(表1)では増ちょう剤と
してリチウム石けんを添加したものを例示したが、カー
ボンブラックを増ちょう剤として用いたものについても
離油度が2%以下であれば同様の効果が得られる。な
お、導電性グリースの離油度を変化させる方法としては
種々の方法があるが、たとえばリチウム石けんを増ちょ
う剤として用いる場合は、ベースオイル(基油)にステ
アリン酸リチウムを所定の温度(例えば120℃)で約
1時間よく攪拌して十分脱水した後、さらに攪拌しなが
ら230℃付近までゆっくり昇温させ(例えば1〜3℃
/min)、石けんを基油中に溶解させる。昇温後、冷
却させる。このとき、増ちょう剤が形成され、グリース
ができる。その後、各種添加剤と混練し、ロールにか
け、さらにニーダにかけられ、グリースが完成する。
【0045】素グリースを作成する際、温度制御(特に
冷却速度の温度制御)や攪拌状態によりリチウム石けん
の石けん成分は冷却速度が遅いと長繊維状に撚れあがっ
たり、冷却速度が速いと短繊維状になったりするので、
増ちょう剤の添加量が同じでもグリースのちょう度をあ
る程度調整でき、離油度も多少調整できる。また、長繊
維グリースは比較的離油度が大きい傾向があるが、基本
的に増ちょう剤量が大きいとグリース中の基油の割合が
小さくなる他、グリースが固くなる等の理由から離油度
は小さくなる。
【0046】導電性微粉末(カーボンブラック)の入っ
ている場合は、カーボンブラックのみが増ちょう剤の場
合、ベースオイルにそのまま混練させればよい。たとえ
ば、230℃まで温度を上げる必要はなく、適当な温度
(例えば100℃程度)で攪拌させている中にカーボン
ブラックを少量ずつ加え、素グリースとすればよい。ま
た、リチウム石けんとカーボンブラックの両方を添加す
る場合は、たとえば 素グリース工程中の昇温過程時にカーボンブラックを少
量ずつ加える 昇温後、熱いうちに(冷却前に)カーボンブラックを少
量ずつ加える 冷却後、カーボンブラックを添加剤と同時に加える のいずれかを用いることができる。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の転がり軸
受は、導電性グリースの離油度を2%以下としたので、
導電性グリースの導電性を確保して静電気による影響を
長期にわたり確実に除去することができ、信頼性の向上
を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る転がり軸受の断
面図である。
【図2】転がり軸受に封入された導電性グリースの導電
性変化を調べるために用いられる抵抗値測定装置の構成
を示す図である。
【図3】図2に示される装置により転がり軸受の内輪と
外輪間の抵抗値を測定した結果を示す線図である。
【図4】図2に示される装置を用いて導電性グリースの
離油度と導電性との関係を調べた実験結果を示す図であ
る。
【図5】図2に示される装置を用いて導電性グリースの
基油粘度と導電性との関係を調べた実験結果を示す図で
ある。
【図6】図2に示される装置を用いて導電性グリースに
添加された導電性微粉末量と導電性との関係を調べた実
験結果を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る転がり軸受の断
面図である。
【符号の説明】
12 内輪 13 外輪 14 転動体 15 保持器 17,18 シール板 21 導電性グリース

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持すべき軸に外嵌する内輪と、この内
    輪の外周に同軸に設けられた外輪と、この外輪と前記内
    輪との間に転動自在に配設された複数の転動体と、前記
    内輪の外周面及び前記外輪の内周面に導電性微粉末を含
    む潤滑油膜を形成する導電性グリースとを備えた転がり
    軸受において、 前記導電性グリースの離油度を0.1%以上で2%以下
    としたことを特徴とする転がり軸受。
  2. 【請求項2】 前記導電性グリースの離油度を0.5%
    以上で2%以下としたことを特徴とする請求項1記載の
    転がり軸受。
  3. 【請求項3】 前記導電性グリースに増ちょう剤を添加
    したことを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
  4. 【請求項4】 前記導電性グリースに摩耗防止添加剤、
    極圧添加剤及び油性剤のうち少なくとも1つを添加した
    ことを特徴とする請求項3記載の転がり軸受。
  5. 【請求項5】 前記導電性微粉末と前記増ちょう剤との
    総量に対する前記導電性微粉末の含有量比を0.2〜
    0.9としたことを特徴とする請求項3又は4記載の転
    がり軸受。
  6. 【請求項6】 前記導電性グリースの基油の粘度を5〜
    200m2/sとしたことを特徴とする請求項1乃至5
    のいずれか1項に記載の転がり軸受。
  7. 【請求項7】 前記導電性微粉末の比表面積と前記導電
    性微粉末の重量%とを掛け合わせた値が80〜8000
    の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の転がり
    軸受。
  8. 【請求項8】 前記内輪と前記外輪との間隙をシールす
    るシール板を導電性材料で形成したことを特徴とする請
    求項1乃至7のいずれか1項に記載の転がり軸受。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007040484A (ja) * 2005-08-04 2007-02-15 Nsk Ltd 軟質ゴム巻き軸受

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