JP2002323769A - 平版印刷版原版 - Google Patents

平版印刷版原版

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JP2002323769A
JP2002323769A JP2001125982A JP2001125982A JP2002323769A JP 2002323769 A JP2002323769 A JP 2002323769A JP 2001125982 A JP2001125982 A JP 2001125982A JP 2001125982 A JP2001125982 A JP 2001125982A JP 2002323769 A JP2002323769 A JP 2002323769A
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JP
Japan
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acid
lithographic printing
alkali
printing plate
mass
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JP2001125982A
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English (en)
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Akihisa Oda
晃央 小田
Tadashi Endo
正 遠藤
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Fujifilm Holdings Corp
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】傷付きにくく、通常作業での取り扱いが容易で
あり、かつ、耐刷性に優れるサーマルタイプのポジ型平
版印刷版原版の提供。 【解決手段】アルミニウム板に粗面化処理、アルカリエ
ッチング処理および陽極酸化処理を施して得られ、表面
の見掛け面積に対する実面積の割合が1.3〜1.8倍
であり、平均直径が0.3〜1.0μmのピットを表面
に有し、表面の見掛け面積に対する該ピットの見掛け面
積の割合が90%以上である平版印刷版用支持体上に、
水不溶性かつアルカリ可溶性の樹脂を含有する下層と、
水不溶性かつアルカリ可溶性の樹脂と光熱変換材料とを
含有し、加熱によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が
増大する感熱層とを順次積層してなる平版印刷版原版。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、平版印刷版原版に
関し、特に、レーザ光の光熱変換によってアルカリ可溶
化する下層と感熱層とを有するポジ型平版印刷版原版に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年、画像形成技術の発展に伴い、細く
ビームを絞ったレーザ光をその版面上に走査させ、文字
原稿、画像原稿等を直接版面上に形成させ、フィルム原
稿を用いず直接製版することが可能となりつつある。 レーザ光照射により感熱層(感光層)中で光熱変換を起
こすことによって感熱層のアルカリ可溶化を引き起こし
ポジ画像を形成する、いわゆるサーマルポジタイプの平
版印刷版原版においては、画像形成原理としてレーザ露
光による感熱層中のバインダーの分子間相互作用の微妙
な変化を利用しているために、露光/未露光部分のアル
カリ可溶化のオン/オフの程度の差が小さくなってい
る。このため、実用に耐える明確なディスクリミネーシ
ョンを得る目的で、現像液に対する表面難溶化層を感熱
層の最上層として設けて未露光部の現像溶解性を抑えた
感熱層構造を形成するという手段が用いられている。
【0003】しかしながら、表面難溶化層が何らかの原
因で損傷すると、本来画像部となる部分でも、現像液に
溶解しやすくなってしまう。つまり、実用上非常に傷付
きやすい印刷版になってしまっている。このため、印刷
版のハンドリング時のぶつかり、合紙での微妙な擦れ、
版面への指の接触等の些細な接触によってもキズ状の画
像抜けが発生してしまうので、刷版作業時の取り扱いが
難しいのが現状である。この傷付きやすさを改善する目
的で、感熱層表面にフッ素系の界面活性剤やワックス剤
の層を設けて摩擦係数を下げることが試みられている
が、未だ十分な対策とはなっていない。
【0004】また、上述したような、接触等によるキズ
状の画像抜けは、感熱層が表面難溶化層を有しない平版
印刷版原版においても問題となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、傷付きにく
く、通常作業での取り扱いが容易であり、かつ、耐刷性
に優れるサーマルタイプのポジ型平版印刷版原版を提供
することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記目的を
達成すべく鋭意研究した結果、本発明を完成した。即
ち、本発明は、アルミニウム板に粗面化処理、アルカリ
エッチング処理および陽極酸化処理を施して得られ、表
面の見掛け面積に対する実面積の割合が1.3〜1.8
倍であり、平均直径が0.3〜1.0μmのピットを表
面に有し、表面の見掛け面積に対する該ピットの見掛け
面積の割合が90%以上である平版印刷版用支持体上
に、水不溶性かつアルカリ可溶性の樹脂を含有する下層
と、水不溶性かつアルカリ可溶性の樹脂と光熱変換材料
とを含有し、加熱によりアルカリ性水溶液に対する溶解
性が増大する感熱層とを順次積層してなる平版印刷版原
版を提供する。
【0007】ここで、「表面の見掛け面積に対する実面
積の割合」とは、ピットの表面積を含み、かつ、ピット
内部の微細凹凸構造の表面積を含まない、平版印刷版用
支持体の表面の実面積を、平版印刷版用支持体の表面を
支持体に平行な面へ投影した図の面積で表される見掛け
面積で除した値をいう。具体的には、平版印刷版用支持
体の表面形状を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、水
平(X,Y)方向の分解能0.1μm、測定範囲100
μm角という条件で測定を行った場合において、近似三
点法により求めた表面積を実面積とし、上部投影面積を
見掛け面積としたときに、実面積を見掛け面積で除して
求めることができる。また、「表面の見掛け面積に対す
るピットの見掛け面積の割合」とは、平版印刷版用支持
体の表面のピットを支持体に平行な面へ投影した図の面
積で表されるピットの見掛け面積を、平版印刷版用支持
体の表面の見掛け面積で除した値をいう。
【0008】サーマルタイプのポジ型平版印刷版原版の
感熱層表面には、支持体表面の凹凸に起因する微細な凹
凸が存在する。感熱層に物体等が接触した場合、その物
体等によって感熱層表面が擦られると、微細な凸部の頂
上部分がわずかに擦り取られ、表面難溶化層が破壊さ
れ、ときには支持体が部分的に露出する。現像時には、
この表面難溶化層が破壊された部分から、支持体と感熱
層との界面に現像液が浸透していきやすいため、感熱層
が支持体との界面付近から溶解し始める。即ち、擦られ
た場所から優先的に現像されるのである。したがって、
マクロ的に見ると、キズ部分が白い線となって観察され
る。
【0009】本発明者は、鋭意研究の結果、上記知見を
得た。そして、更に、感熱層表面の微細な凹凸の程度を
少なくする方策について鋭意研究した結果、支持体自体
の表面の凹凸の形状が、感熱層表面の微細な凹凸の形状
を決定することを見出し、表面の見掛け面積に対する実
面積の割合を特定の範囲にし、ピットの構造を特定のも
のとし、表面の見掛け面積に対するピットの見掛け面積
の割合を特定の範囲にすることにより、耐刷性等を低下
させずに感熱層表面の微細な凹凸の程度を少なくするこ
とができることを見出し、これにより傷付きにくい感熱
層を形成しうる平版印刷版用支持体を実現したのであ
る。
【0010】即ち、平坦な感熱層表面を実現するために
は、支持体の表面形状をできるだけ平坦にすることが有
効であるが、単純に支持体の表面形状を平坦にすると、
感熱層と支持体との密着性が低下するので、平版印刷版
の耐刷性が低下し、また、感熱層と支持体との間ではく
離を起こしやすく、刷版作業時においても傷付きやすく
なる。一方、感熱層と支持体との密着性を高くするため
に、単に機械的粗面化処理等の方法により感熱層と支持
体との接触面積を増やすだけでは、感熱層表面に凹凸が
形成されてしまい、感熱層が傷付きやすくなってしま
う。本発明においては、支持体の表面の見掛け面積に対
する実面積の割合を1.3〜1.8倍とすることにより
感熱層と支持体との密着性を確保し、更に、上記割合を
保ちつつ感熱層の表面を滑らかな形状にするために、平
均直径が0.3〜1.0μmのピットを表面に設け、表
面の見掛け面積に対するピットの見掛け面積の割合を9
0%以上とし、これにより、平版印刷版の耐刷性等と傷
付きにくさとを両立することができたのである。
【0011】前記平版印刷版用支持体が、表面が少なく
とも大中の二重の凹凸構造を有し、大凹凸構造の波長が
3〜10μmであり、中凹凸構造が前記ピットであるの
が好ましい。このような構造を有すると、平版印刷版の
耐刷性や保水性がより好ましいものとなる。
【0012】そして、本発明者は、上記平版印刷版用支
持体に、水不溶性かつアルカリ可溶性の樹脂を含有する
下層と、水不溶性かつアルカリ可溶性の樹脂と光熱変換
材料とを含有し、加熱によりアルカリ性水溶液に対する
溶解性が増大する感熱層とを順次積層したポジ型平版印
刷版原版が、耐キズ性(傷付きにくさ)や現像時の画像
形成性に優れていることを見出した。これは、上記平版
印刷版用支持体上に、まず下層を設けることにより、下
層により支持体の凹凸形状が吸収されて比較的平坦な表
面が形成され、この上に更に感熱層を積層することで、
より平坦な感熱層表面が形成されるためである。
【0013】以上のように、本発明の平版印刷版原版
は、従来のサーマルタイプのポジ型平版印刷版原版に比
べ、耐キズ性、耐刷性、保水性および画像形成性におい
て、優れている。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。 <アルミニウム板(圧延アルミ)>本発明の平版印刷版
原版に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なア
ルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムま
たはアルミニウム合金からなる。 純アルミニウム板のほ
か、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金
板や、アルミニウムまたはアルミニウム合金がラミネー
トされまたは蒸着されたプラスチックフィルムまたは紙
を用いることもできる。更に、特公昭48−18327
号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレ
ートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合
体シートを用いることもできる。
【0015】以下の説明において、上記に挙げたアルミ
ニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をア
ルミニウム板と総称して用いる。 前記アルミニウム合金
に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、
銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケ
ル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質
量%以下である。
【0016】本発明においては、純アルミニウム板を用
いるのが好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精
錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有
するものでもよい。このように本発明に用いられるアル
ミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従
来より公知公用の素材のもの、例えば、JIS A10
50、JIS A1100、JIS A3005、JI
S A3004、国際登録合金 3103A等のアルミ
ニウム合金板を適宜利用することができる。 また、アル
ミニウム板の製造方法は、連続鋳造方式およびDC鋳造
方式のいずれでもよく、DC鋳造方式の中間焼鈍や、均
熱処理を省略したアルミニウム板も用いることができ
る。最終圧延においては、積層圧延や転写等により凹凸
を付けたアルミニウム板を用いることもできる。また、
本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、0. 1m
m〜0. 6mm程度である。 この厚みは印刷機の大き
さ、印刷版の大きさおよびユーザーの希望により適宜変
更することができる。
【0017】本発明に用いられる平版印刷版用支持体
は、上記アルミニウム板に粗面化処理、アルカリエッチ
ング処理および陽極酸化処理を行って得られるが、この
アルミニウム支持体の製造工程には、粗面化処理、アル
カリエッチング処理および陽極酸化処理以外の各種の工
程が含まれていてもよい。
【0018】<粗面化処理(砂目立て処理)>上記アル
ミニウム板は、より好ましい形状に砂目立て処理され
る。砂目立て処理方法は、特開昭56−28893号公
報に開示されているような機械的砂目立て(機械的粗面
化処理)、化学的エッチング、電解グレイン等がある。
更に、塩酸電解液中または硝酸電解液中で電気化学的に
砂目立てする電気化学的砂目立て法(電気化学的粗面化
処理、電解粗面化処理)や、アルミニウム表面を金属ワ
イヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と
研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイ
ン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブ
ラシグレイン法等の機械的砂目立て法(機械的粗面化処
理)を用いることができる。これらの砂目立て法は、単
独でまたは組み合わせて用いることができる。例えば、
ナイロンブラシと研磨剤とによる機械的粗面化処理と、
塩酸電解液または硝酸電解液による電解粗面化処理との
組み合わせや、複数の電解粗面化処理の組み合わせが挙
げられる。特に、機械的粗面化処理を行った後に電解粗
面化処理を行うと、得られる平版印刷版用支持体の表面
を、後述する大中の二重凹凸構造としやすいので好まし
い。
【0019】ブラシグレイン法の場合、研磨剤として使
用される粒子の平均粒径、最大粒径、使用するブラシの
毛径、密度、押し込み圧力等の条件を適宜選択すること
によって、アルミニウム支持体表面の長い波長成分の凹
部の平均深さを制御することができる。ブラシグレイン
法により得られる凹部は、平均波長が3〜10μmであ
るのが好ましく、平均深さが0.3〜1μmであるのが
好ましい。
【0020】電気化学的粗面化方法としては、塩酸電解
液中または硝酸電解液中で化学的に砂目立てする電気化
学的方法が好ましい。好ましい電流密度は、陽極時電気
量50〜400C/dm2 である。更に具体的には、例
えば、0.1〜50質量%の塩酸または硝酸を含む電解
液中で、温度20〜100℃、時間1秒〜30分、電流
密度100〜400C/dm2 の条件で直流または交流
を用いて行われる。電解粗面化処理によれば、表面にピ
ットを付与することが容易である。
【0021】機械的粗面化処理の後の電解粗面化処理に
より、平均直径約0.3〜1.0μm、平均深さ0.0
5〜0.4μmのクレーター状またはハニカム状のピッ
トをアルミニウム板の表面に90〜100%の面積率で
生成し、大中の二重凹凸構造を形成することができる。
即ち、機械的粗面化処理により平均波長3〜10μmの
大凹凸構造が形成され、電解粗面化処理によりピットつ
まり中凹凸構造が形成される。なお、機械的粗面化処理
を行わずに、電解粗面化処理のみを行う場合には、ピッ
トの平均深さを0.3μm未満とするのが好ましい。例
えば、機械的粗面化処理を行わずに、電解粗面化処理を
好ましくは条件を変えて二回以上行うことにより、平均
波長3〜10μmの大凹凸構造およびピットの中凹凸構
造からなる大中の二重凹凸構造を形成することもでき
る。設けられたピットは、印刷版の非画像部の汚れにく
さおよび耐刷性を向上する作用を有する。電解粗面化処
理では、十分なピットを表面に設けるために必要なだけ
の電気量、即ち、電流と電流を流した時間との積が、重
要な条件となる。より少ない電気量で十分なピットを形
成できることは、省エネの観点からも望ましい。粗面化
処理後の表面粗さは、JIS B0601−1994に
準拠してカットオフ値0.8mm、評価長さ3.0mm
で測定した算術平均粗さ(Ra )が、0.2〜0.5μ
mであるのが好ましい。
【0022】このように粗面化処理されたアルミニウム
板は、表面の見掛け面積に対する実面積の割合が1.3
〜1.8倍である。この割合は、アルカリエッチング処
理および陽極酸化処理を行った後においても変化しな
い。
【0023】<アルカリエッチング処理>このように砂
目立て処理されたアルミニウム板は、アルカリにより化
学的にエッチングされる。本発明において好適に用いら
れるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、カセ
イソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸
ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウ
ムが挙げられる。アルカリエッチング処理の条件は、A
lの溶解量が0.05〜30g/m2 となるような条件
であれば、特に限定されないが、アルカリの濃度は1〜
50質量%であるのが好ましく、5〜30質量%である
のがより好ましく、また、アルカリの温度は20〜10
0℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより
好ましい。アルカリエッチング処理は、1種の方法に限
らず、複数の工程を組み合わせることができる。
【0024】このアルカリエッチング処理により、ピッ
トの平均直径を0.3〜1.0μmに制御すると同時
に、ピットの内部に微細凹凸構造を形成することができ
る。微細凹凸構造の波長は、例えば、0.005〜0.
1μmとすることができる。したがって、粗面化処理に
より中凹凸構造が形成されている場合は、このアルカリ
エッチング処理によるピット内部の微細凹凸構造の形成
により中小の二重凹凸構造が形成される。そして、粗面
化処理により大中の二重凹凸構造が形成されている場合
は、このアルカリエッチング処理によるピット内部の微
細凹凸構造の形成により大中小の三重凹凸構造が形成さ
れることになる。
【0025】アルカリエッチング処理を行った後、表面
に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが
行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫
酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸が挙
げられる。特に、電解粗面化処理後のスマット除去処理
方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公
報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜
65質量%の硫酸と接触させる方法が挙げられる。
【0026】<陽極酸化処理>以上のように処理された
アルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施される。
陽極酸化処理はこの分野で従来より行われている方法で
行うことができる。具体的には、硫酸、リン酸、クロム
酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等
の単独のまたは2種以上を組み合わせた水溶液または非
水溶液の中で、アルミニウム板に直流または交流を流す
とアルミニウム板の表面に陽極酸化皮膜を形成すること
ができる。
【0027】この際、少なくともAl合金板、電極、水
道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれ
ていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加さ
れていても構わない。ここでいう第2、第3の成分とし
ては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、A
l、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等
の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝
酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、
フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ
酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜
10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
【0028】陽極酸化処理の条件は、使用される電解液
によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一
般的には電解液濃度1〜80質量%、液温−5〜70
℃、電流密度0.5〜60A/dm2 、電圧1〜100
V、電解時間10〜200秒であるのが適当である。こ
れらの陽極酸化処理の中でも、英国特許第1,412,
768号明細書に記載されている、硫酸電解液中で高電
流密度で陽極酸化処理する方法が特に好ましい。
【0029】本発明においては、陽極酸化皮膜の量は1
〜10g/m2 であるのが好ましい。1g/m2 未満で
あると版に傷が入りやすくなり、一方、10g/m2
超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利
となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜7g/m2 であ
るのがより好ましく、2〜5g/m2 であるのが特に好
ましい。
【0030】<アルカリ金属ケイ酸塩処理>上記のよう
に処理して得られる陽極酸化皮膜が形成されたアルミニ
ウム支持体を、必要に応じて、アルカリ金属ケイ酸塩の
水溶液を用いて浸せき処理する。処理条件は、特に限定
されないが、例えば、濃度0.01〜5.0質量%の水
溶液を用いて、温度5〜40℃で、1〜60秒間浸せき
し、その後、流水により洗浄する。より好ましい浸せき
処理温度は10〜40℃であり、より好ましい浸せき時
間は2〜20秒間である。
【0031】本発明に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩
は、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ
酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶
液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチ
ウム等を適当量含有してもよい。また、アルカリ金属ケ
イ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第
IVB族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属
塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチ
ウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫
酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸
塩が挙げられる。4族(第IVB族)金属塩としては、
例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカ
リウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ
化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウ
ム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙
げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第
IVB族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせ
て用いられる。
【0032】アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着す
るSi量は蛍光X線分析装置により測定され、その吸着
量は約1.0〜15.0mg/m2 であるのが好まし
い。このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、アルミニウ
ム支持体表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上効
果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑
制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低
減することができる。
【0033】上述のようにして得られる平版印刷版用支
持体は、表面の見掛け面積に対する実面積の割合が1.
3〜1.8倍、好ましくは1.3〜1.7倍、より好ま
しくは1.3〜1.6倍である。本発明においては、支
持体の表面の見掛け面積に対する実面積の割合が1.3
〜1.8倍であるので、感熱層と支持体との密着性に優
れ、ひいては平版印刷版の耐刷性等に優れる。また、上
記平版印刷版用支持体は、平均直径が0.3〜1.0μ
m、好ましくは0.3〜0.8μmで、平均深さが好ま
しくは0.05〜0.4μm、より好ましくは0.05
〜0.3μmのピット、好ましくは、更に内部に好まし
くは波長0.005〜0.1μm、より好ましくは0.
05〜0.1μmの微細凹凸構造を有するピットを表面
に有する。これにより、上記平版印刷版用支持体は、平
版印刷版原版としたときに感熱層の表面の形状が滑らか
なものとなる。更に、本発明に用いられる平版印刷版用
支持体は、表面の見掛け面積に対するピットの見掛け面
積の割合が90%以上、好ましくは95%以上である。
これにより、平版印刷版原版としたときの感熱層と支持
体との密着性に優れ、ひいては平版印刷版の耐刷性等に
優れる。
【0034】更に、本発明に用いられる平版印刷版用支
持体は、表面が大中小の三重凹凸構造を有し、大凹凸構
造の波長が3〜10μmであり、中凹凸構造がピットで
あり、小凹凸構造がピット内部の微細凹凸構造であるの
が好ましい。このような構造を有すると、平版印刷版の
耐刷性や保水性がより好ましいものとなる。
【0035】本発明の平版印刷版原版は、上記のように
して得られた平版印刷版用支持体上に、水不溶性かつア
ルカリ可溶性の樹脂を含有する下層と、水不溶性かつア
ルカリ可溶性の樹脂と光熱変換材料とを含有し、加熱に
よりアルカリ性水溶液に対する溶解性が増大する感熱層
とを順次積層してなる。以下、本発明の平版印刷版原版
に用いられる下層および感熱層について説明する。
【0036】下層および感熱層は、いずれも水不溶性か
つアルカリ可溶性の樹脂を含有し、また、下層の上部に
位置する感熱層は更に光熱変換材料を含有する。
【0037】<水不溶性かつアルカリ可溶性の樹脂(ア
ルカリ可溶性高分子化合物)>本発明において、下層お
よび感熱層に用いられる水不溶性かつアルカリ水溶性の
樹脂(以下「アルカリ可溶性高分子化合物」ともい
う。)は、水に不溶であり、かつ、アルカリ水溶液に可
溶である高分子化合物であれば特に限定されず、従来公
知のものを用いることができる。本発明に用いられる下
層および感熱層は、アルカリ可溶性高分子化合物を含有
するため、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性
を有する。
【0038】このようなアルカリ可溶性高分子化合物と
しては、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を
含有するモノマーの単独重合体、共重合体またはこれら
の混合物を用いることが好ましい。本発明においては、
アルカリ可溶性高分子化合物は、(1)フェノール性水
酸基、(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)お
よび(3)置換スルホンアミド系酸基(−SO2 NHC
OR、−SO2 NHSO2 R、−CONHSO2 R)
(以下「活性イミド基」という。)のいずれかの官能基
を分子内に有する高分子化合物であるのが好ましい。中
でも、(1)フェノール性水酸基を分子内に有するアル
カリ可溶性高分子化合物が、赤外線レーザー等による露
光での画像形成性に優れる点で、好ましい。
【0039】(1)フェノール性水酸基を有する高分子
化合物としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド
樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレ
ゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾー
ルホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m
−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい。)混
合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロ
ールアセトン樹脂が挙げられる。フェノール性水酸基を
有する高分子化合物としてはこのほかに、側鎖にフェノ
ール性水酸基を有する高分子化合物を用いるのが好まし
い。側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物と
しては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合を
それぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モ
ノマーを単独重合させ、または、該モノマーに他の重合
性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げ
られる。
【0040】フェノール性水酸基を有する重合性モノマ
ーとしては、例えば、フェノール性水酸基を有するアク
リルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、
メタクリル酸エステル;ヒドロキシスチレンが挙げられ
る。具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アク
リルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリル
アミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミ
ド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミ
ド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミ
ド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミ
ド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロ
キシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルア
クリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、
m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキ
シフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、
m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2
−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2
−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2
−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2
−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、
2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレー
ト、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレ
ート等を好適に使用することができる。
【0041】かかるフェノール性水酸基を有する高分子
化合物は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。更
に、米国特許第4,123,279号明細書に記載され
ているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド
樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のよう
な、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフ
ェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用しても
よい。
【0042】(2)スルホンアミド基を有するアルカリ
可溶性高分子化合物としては、例えば、スルホンアミド
基を有する重合性モノマーを単独重合させ、または、該
モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる
高分子化合物が挙げられる。スルホンアミド基を有する
重合性モノマーとしては、例えば、1分子中に、窒素原
子上に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンア
ミド基−NH−SO2−と、重合可能な不飽和結合をそ
れぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノ
マーが挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基
またはビニロキシ基と、モノ置換アミノスルホニル基ま
たは置換スルホニルイミノ基とを有する低分子化合物が
好ましい。具体的には、m−アミノスルホニルフェニル
メタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニ
ル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフ
ェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができ
る。
【0043】(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶
性高分子化合物は、活性イミド基を分子内に有するもの
が好ましく、この高分子化合物としては、例えば、1分
子中に、活性イミド基と、重合可能な不飽和結合とをそ
れぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノ
マーを単独重合させ、または、該モノマーに他の重合性
モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げら
れる。
【0044】このような化合物としては、具体的には、
N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N
−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適
に使用することができる。
【0045】更に、本発明に用いられるアルカリ可溶性
高分子化合物としては、前記フェノール性水酸基を有す
る重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モ
ノマー、および活性イミド基を有する重合性モノマーの
うちの2種以上を重合させた高分子化合物、またはこれ
ら2種以上の重合性モノマーに他の重合性モノマーを共
重合させて得られる高分子化合物が好適に挙げられる。
アルカリ水可溶性高分子化合物の共重合の方法として
は、従来知られている、グラフト共重合法、ブロック共
重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。フ
ェノール性水酸基を有する重合性モノマーに、スルホン
アミド基を有する重合性モノマーおよび/または活性イ
ミド基を有する重合性モノマーを共重合させる場合に
は、これら成分の配合質量比は50:50から5:95
の範囲にあるのが好ましく、40:60から10:90
の範囲にあるのがより好ましい。
【0046】アルカリ可溶性高分子化合物が前記フェノ
ール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド
基を有する重合性モノマー、活性イミド基を有する重合
性モノマー等のアルカリ可溶性を付与するモノマーと、
他の重合性モノマーとの共重合体である場合には、アル
カリ可溶性を付与するモノマーを10モル%以上含むも
のが好ましく、20モル%以上含むものがより好まし
い。共重合成分が10モル%より少ないと、アルカリ可
溶性が不十分となりやすく、現像ラチチュードの向上効
果が十分達成されないことがある。
【0047】前記フェノール性水酸基を有する重合性モ
ノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、ま
たは活性イミド基を有する重合性モノマーと共重合させ
るモノマー成分としては、例えば、下記(1)〜(1
2)に挙げるモノマーを用いることができるが、これら
に限定されるものではない。 (1)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロ
キシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するア
クリル酸エステル類およびメタクリル酸エステル類。 (2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル
酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、ア
クリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベ
ンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルア
クリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等
のアルキルアクリレート。 (3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタ
クリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸
アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘ
キシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−ク
ロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチル
アミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレー
ト。
【0048】(4)アクリルアミド、メタクリルアミ
ド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリ
ルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロ
ヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリ
ルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフ
ェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアク
リルアミド等のアクリルアミドおよびメタクリルアミ
ド。 (5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニル
エーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピル
ビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニ
ルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテ
ル類。 (6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビ
ニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル
類。
【0049】(7)スチレン、α−メチルスチレン、メ
チルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。 (8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロ
ピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケ
トン類。 (9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエ
ン、イソプレン等のオレフィン類。 (10)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾー
ル、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリ
ロニトリル等。 (11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミ
ド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニル
メタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタ
クリルアミド等の不飽和イミド。 (12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、
イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0050】本発明においてアルカリ可溶性高分子化合
物が、前記フェノール性水酸基を有する重合性モノマ
ー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、または
活性イミド基を有する重合性モノマーの単独重合体また
は共重合体である場合、重量平均分子量が2,000以
上であり、数平均分子量が500以上であるものが好ま
しい。より好ましくは、重量平均分子量が5,000〜
300,000であり、数平均分子量が800〜25
0,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分
子量)が1.1〜10であるものである。また、本発明
においてアルカリ可溶性高分子化合物がフェノールホル
ムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等の樹脂
である場合には、重量平均分子量が500〜20,00
0であり、数平均分子量が200〜10,000である
ものが好ましい。
【0051】下層に用いられるアルカリ可溶性高分子化
合物としては、アクリル樹脂が好ましい。下層がアルカ
リ可溶性高分子化合物としてアクリル樹脂を含有する
と、緩衝作用を有する有機化合物と塩基とを主成分とす
るアルカリ現像液に対して下層の溶解性を良好に保持し
うるため、現像時の画像形成性が優れたものとなる。中
でも、スルホンアミド基を有するアクリル樹脂が特に好
ましい。
【0052】また、感熱層に用いられるアルカリ可溶性
高分子化合物としては、フェノール性水酸基を有する高
分子化合物が好ましい。感熱層がアルカリ可溶性高分子
化合物としてフェノール性水酸基を有する高分子化合物
を含有すると、未露光部において強い水素結合性を生起
させる一方、露光部において一部の水素結合が容易に解
除されるため、また、非シリケート現像液に対して、未
露光部と露光部との現像性の差が大きいため、現像時の
画像形成性が優れたものとなる。中でも、ノボラック樹
脂が特に好ましい。
【0053】これらアルカリ可溶性高分子化合物は、そ
れぞれ単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用い
てもよい。アルカリ可溶性高分子化合物は、感熱層の全
固形分に対して、好ましくは30〜99質量%、より好
ましくは40〜95質量%、特に好ましくは50〜90
質量%の添加量で用いられる。アルカリ可溶性高分子化
合物の添加量が30質量%未満であると感熱層の耐久性
が悪化し、また、99質量%を超えると感度および耐久
性の両面で好ましくない。また、アルカリ可溶性高分子
化合物は、下層の全固形分に対して、好ましくは50〜
99質量%、より好ましくは60〜95質量%、特に好
ましくは70〜95質量%の添加量で用いられる。アル
カリ可溶性高分子化合物の添加量が50質量%未満であ
ると下層の耐久性が悪化し、また、99質量%を超える
と感度および耐久性の両面で好ましくない。
【0054】<光熱変換材料>本発明において、感熱層
に用いられる光熱変換材料は、赤外光を吸収し熱を発生
する材料であれば特に限定されず、種々の顔料、染料お
よび金属微粒子を用いることができる。
【0055】本発明に用いられる光熱変換材料として
は、例えば、市販の染料および文献(例えば、「染料便
覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載され
ている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染
料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキ
ノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、
カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シ
アニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属
チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等
の染料を用いることができる。
【0056】本発明においては、これらの染料の中で
も、赤外光または近赤外光を吸収するものが、赤外光ま
たは近赤外光を発光するレーザの利用に適する点で特に
好ましい。
【0057】そのような赤外光または近赤外光を吸収す
る染料としては、例えば、特開昭58−125246号
公報、特開昭59−84356号公報、特開昭59−2
02829号公報、特開昭60−78787号公報等に
記載されているシアニン染料、特開昭58−17369
6号公報、特開昭58−181690号公報、特開昭5
8−194595号公報等に記載されているメチン染
料、特開昭58−112793号公報、特開昭58−2
24793号公報、特開昭59−48187号公報、特
開昭59−73996号公報、特開昭60−52940
号公報、特開昭60−63744号公報等に記載されて
いるナフトキノン染料、特開昭58−112792号公
報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第
434,875号明細書に記載のシアニン染料、米国特
許第5,380,635号明細書に記載のジヒドロペリ
ミジンスクアリリウム染料を挙げることができる。
【0058】また、前記染料として米国特許第5,15
6,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に
用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細
書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウ
ム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第
4,327,169号明細書)に記載のトリメチンチア
ピリリウム塩、特開昭58−181051号公報、特開
昭58−220143号公報、特開昭59−41363
号公報、特開昭59−84248号公報、特開昭59−
84249号公報、特開昭59−146063号公報、
特開昭59−146061号公報に記載されているピリ
リウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記
載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明
細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平
5−13514号公報、特公平5−19702号公報に
開示されているピリリウム化合物;エポリン社製の市販
品であるEpolight III−178、Epol
ight III−130、Epolight III
−125、Epolight IV−62A等は特に好
ましく用いられる。
【0059】また、前記染料として特に好ましい別の例
として、米国特許第4,756,993号明細書中に式
(I)または(II)として記載されている近赤外吸収
染料を挙げることができる。
【0060】これらの光熱変換材料は、感熱層のみなら
ず、下層にも含有させることができる。下層に光熱変換
材料を添加することにより、下層も感熱層として機能さ
せることができる。下層に含有される光熱変換材料は、
感熱層に含有される光熱変換材料と同じであってもよ
く、異なっていてもよい。また、これらの光熱変換材料
は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設
け、そこへ添加してもよい。別の層とする場合、感熱層
に隣接する層へ添加するのが好ましい。また、光熱変換
材料とアルカリ可溶性高分子化合物とは同一の層に含ま
れるのが好ましいが、別の層でも構わない。
【0061】これらの光熱変換材料は、感熱層の全固形
分に対して、好ましくは0.01〜50質量%、より好
ましくは0.1〜10質量%、更に好ましくは0.5〜
10質量%の割合で添加することができる。光熱変換材
料の添加量が0.01質量%未満であると感度が低くな
り、また、50質量%を超えると感熱層の均一性が失わ
れ、感熱層の耐久性が悪くなる。また、下層が光熱変換
材料を含有する場合、その添加量は、下層の全固形分に
対して、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましく
は1〜10質量%である。
【0062】<その他の成分>下層および感熱層は、上
記の必須成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲
で、必要に応じて、種々の添加剤を含有することができ
る。添加剤は下層のみに含有させてもよく、感熱層のみ
に含有させてもよく、両方の層に含有させてもよい。以
下、添加剤の例を挙げて説明する。
【0063】例えば、熱分解性であり、分解しない状態
ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に
低下させる物質を併用すると、画像部の現像液への溶解
阻止性の向上を図ることができるので、好ましい。その
ような物質としては、例えば、オニウム塩、キノンジア
ジド類、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エス
テル化合物が挙げられる。
【0064】オニウム塩としては、例えば、ジアゾニウ
ム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム
塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩
が挙げられる。
【0065】中でも、好適なものとしては、例えば、
S.I.Schlesinger,Photogr.S
ci.Eng.,18,387(1974)、T.S.
Balet al,Polymer,21,423(1
980)および特開平5−158230号公報に記載さ
れているジアゾニウム塩、米国特許第4,069,05
5号明細書、同4,069,056号明細書および特開
平3−140140号公報に記載されているアンモニウ
ム塩、D.C.Necker et al,Macro
molecules,17,2468(1984)、
C.S.Wenet al,Teh,Proc.Con
f.Rad.Curing ASIA,p.478,T
okyo,Oct(1988)、米国特許第4,06
9,055号明細書および同4,069,056号明細
書に記載されているホスホニウム塩、J.V.Criv
ello et al,Macromorecule
s,10(6),1307(1977)、Chem.&
amp、Eng.News,Nov.28,p31
(1988)、欧州特許第104,143号明細書、米
国特許第339,049号明細書、同第410,201
号明細書、特開平2−150848号公報および特開平
2−296514号公報に記載されているヨードニウム
塩、J.V.Crivello et al,Poly
mer J.17,73(1985)、J.V.Cri
vello et al.J.Org.Chem.,4
3,3055(1978)、W.R.Watt et
al,J.Polymer Sci.,Polymer
Chem.Ed.,22,1789(1984)、
J.V.Crivello et al,Polyme
r Bull.,14,279(1985)、J.V.
Crivello et al,Macromorec
ules,14(5),1141(1981)、J.
V.Crivello et al,J.Polyme
r Sci.,Polymer Chem.Ed.,1
7,2877(1979)、欧州特許第370,693
号明細書、同233,567号明細書、同297,44
3号明細書、同297,442号明細書、米国特許第
4,933,377号明細書、同3,902,114号
明細書、同410,201号明細書、同339,049
号明細書、同4,760,013号明細書、同4,73
4,444号明細書、同2,833,827号明細書、
独国特許第2,904,626号明細書、同3,60
4,580号明細書および同3,604,581号明細
書に記載されているスルホニウム塩、J.V.Criv
ello et al,Macromorecule
s,10(6),1307(1977)およびJ.V.
Crivello et al,J.Polymer
Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,
1047(1979)に記載されているセレノニウム
塩、C.S.Wen etal,Teh,Proc.C
onf.Rad.Curing ASIA,p478,
Tokyo,Oct(1988)に記載されているアル
ソニウム塩が挙げられる。
【0066】オニウム塩のなかでも、ジアゾニウム塩が
特に好ましい。また、特に好適なジアゾニウム塩として
は特開平5−158230号公報に記載されているもの
があげられる。
【0067】オニウム塩の対イオンとしては、例えば、
四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナ
フタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホ
ン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼ
ンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホ
ン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベン
ゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−
フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベン
ゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2
−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼ
ンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸が挙げられる。
中でも、六フッ化リン酸;トリイソプロピルナフタレン
スルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸等の
アルキル芳香族スルホン酸が好ましい。
【0068】キノンジアジド類としては、o−キノンジ
アジド化合物が好ましい。本発明に用いられるo−キノ
ンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジア
ジド基を有し、熱分解によりアルカリ可溶性を増す化合
物であり、種々の構造の化合物を用いることができる。
o−キノンジアジド化合物は、熱分解により結着剤の溶
解抑制能を失わせること、および、o−キノンジアジド
化合物自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両
方の効果により、感材系の溶解性を向上させる。
【0069】本発明に用いられるo−キノンジアジド化
合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−セン
シティブ・システムズ」(John Wiley &
amp;Sons.Inc.)p.339〜352に記
載されている化合物が使用できるが、特に、種々の芳香
族ポリヒドロキシ化合物または芳香族アミノ化合物と反
応させたo−キノンジアジド化合物のスルホン酸エステ
ルまたはスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭
43−28403号公報に記載されているようなベンゾ
キノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまた
はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン
酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステ
ル、米国特許第3,046,120号明細書および同第
3,188,210号明細書に記載されているベンゾキ
ノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまた
はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン
酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂との
エステルも好適に用いられる。
【0070】更に、ナフトキノン−(1,2)−ジアジ
ド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアル
デヒド樹脂またはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂と
のエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4
−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂
とのエステルも同様に好適に用いられる。そのほかに
も、有用なo−キノンジアジド化合物が、数多くの特許
に報告され、知られている。例えば、特開昭47−53
03号公報、特開昭48−63802号公報、特開昭4
8−63803号公報、特開昭48−96575号公
報、特開昭49−38701号公報、特開昭48−13
354号公報、特公昭41−11222号公報、特公昭
45−9610号公報、特公昭49−17481号公
報、米国特許第2,797,213号明細書、同第3,
454,400号明細書、同第3,544,323号明
細書、同第3,573,917号明細書、同第3,67
4,495号明細書、同第3,785,825号明細
書、英国特許第1,227,602号明細書、同第1,
251,345号明細書、同第1,267,005号明
細書、同第1,329,888号明細書、同第1,33
0,932号明細書および独国特許第854,890号
明細書に記載されているものが挙げられる。
【0071】オニウム塩およびo−キノンジアジド化合
物のそれぞれの添加量は、添加される層の全固形分に対
して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜
30質量%、特に好ましくは10〜30質量%である。
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上の混合
物として用いてもよい。
【0072】オニウム塩およびo−キノンジアジド化合
物以外の添加剤の添加量は、添加される層の全固形分に
対して、好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは5
〜30質量%、特に好ましくは10〜30質量%であ
る。本発明において、添加剤とアルカリ可溶性高分子化
合物とは、同一層へ含有させるのが好ましい。
【0073】また、下層および感熱層は、画像のディス
クリミネーションや表面のキズに対する抵抗力を強化す
る目的で、特開2000−187318号公報に記載さ
れているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオ
ロアルキル基を2または3個有する(メタ)アクリレー
ト単量体を重合成分とする重合体を含有するのが好まし
い。このような重合体は、下層および感熱層のいずれに
含有させてもよいが、上部に位置する感熱層に含有させ
ると、より効果的である。このような重合体の添加量
は、添加される層の全固形分に対して、0.1〜10質
量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのが
より好ましい。
【0074】また、下層および感熱層は、キズに対する
抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させ
る化合物を含有することもできる。そのような化合物と
しては、例えば、米国特許第6,117,913号明細
書に記載されているような、長鎖アルキルカルボン酸の
エステルが挙げられる。このような化合物は、下層およ
び感熱層のいずれに含有させてもよいが、上部に位置す
る感熱層に含有させると、より効果的である。このよう
な化合物の添加量は、添加される層の全固形分に対し
て、0.1〜10質量%であるのが好ましく、0.5〜
5質量%であるのがより好ましい。
【0075】また、下層および感熱層は、必要に応じ
て、低分子量の酸性基を有する化合物を含有していても
よい。酸性基としては、例えば、スルホン酸基、カルボ
キシ基、リン酸基が挙げられる。中でも、スルホン酸基
を有する化合物が好ましい。具体的には、p−トルエン
スルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の芳香族スルホン
酸類や、脂肪族スルホン酸類が挙げられる。このような
化合物は、下層および感熱層のいずれに含有させてもよ
い。このような化合物の添加量は、添加される層の全固
形分に対して、0.05〜5質量%であるのが好まし
く、0.1〜3質量%であるのがより好ましい。5質量
%より多いと、各層の現像液に対する溶解性が増加して
しまう場合があるので、好ましくない。
【0076】また、下層および感熱層は、各層の溶解性
を調節する目的で種々の溶解抑制剤を含有していてもよ
い。溶解抑制剤としては、特開平11−119418号
公報に記載されているようなジスルホン化合物またはス
ルホン化合物が好適に用いられる。具体的には、4,4
´−ビスヒドロキシフェニルスルホンが好適に例示され
る。溶解抑制剤は、下層および感熱層のいずれに含有さ
せてもよい。溶解抑制剤の添加量は、添加される層の全
固形分に対して、0.05〜20質量%であるのが好ま
しく、0.5〜10質量%であるのがより好ましい。
【0077】また、下層および感熱層は、更に感度を向
上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機
酸類を含有することもできる。環状酸無水物類として
は、例えば、米国特許第4,115,128号明細書に
記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル
酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ
−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水
フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α
−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメ
リット酸が挙げられる。
【0078】フェノール類としては、例えば、ビスフェ
ノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノ
ール、2,4,4´−トリヒドロキシベンゾフェノン、
2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒド
ロキシベンゾフェノン、4,4´,4”−トリヒドロキ
シトリフェニルメタン、4,4´,3”,4”−テトラ
ヒドロキシ−3,5,3´,5´−テトラメチルトリフ
ェニルメタンが挙げられる。
【0079】有機酸類としては、例えば、特開昭60−
88942号、特開平2−96755号公報等に記載さ
れている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫
酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類、カルボン酸類
が挙げられる。具体的には、例えば、p−トルエンスル
ホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンス
ルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニ
ルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、
安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル
酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタ
ル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エ
ルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン
酸が挙げられる。
【0080】上記の環状酸無水物類、フェノール類およ
び有機酸類の添加量は、添加される層の全固形分に対し
て、0.05〜20質量%であるのが好ましく、0.1
〜15質量%であるのがより好ましく、0.1〜10質
量%であるのが特に好ましい。
【0081】また、下層および感熱層は、現像条件の変
化に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−2
51740号公報および特開平3−208514号公報
に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭5
9−121044号公報および特開平4−13149号
公報に記載されているような両性界面活性剤、欧州特許
出願公開第950,517号明細書に記載されているよ
うなシロキサン系化合物、特開平11−288093号
公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重
合体を含有することができる。
【0082】非イオン界面活性剤の具体例としては、ソ
ルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテー
ト、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセ
リド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが挙
げられる。両性界面活性剤の具体例としては、アルキル
ジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチ
ルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチ
ル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、
N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品
名「アモーゲンK」、第一工業社製)が挙げられる。シ
ロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリ
アルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具
体例として、チッソ社製のDBE−224、DBE−6
21、DBE−712、DBP−732、DBP−53
4、独Tego社製のTego Glide100等の
ポリアルキレンオキシド変性シリコーンが挙げられる。
上記非イオン界面活性剤、両性界面活性剤およびシロキ
サン系化合物の添加量は、それぞれ、添加される層の全
固形分に対して、0.05〜15質量%であるのが好ま
しく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
【0083】また、下層および感熱層は、露光による加
熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色
剤としての染料や顔料を含有することができる。焼き出
し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化
合物(光酸放出剤)と塩を形成しうる有機染料との組み
合わせが例示される。具体的には、特開昭50−362
09号公報、特開昭53−8128号公報に記載されて
いるo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲ
ニドと塩形成性有機染料の組み合わせや、特開昭53−
36223号公報、特開昭54−74728号公報、特
開昭60−3626号公報、特開昭61−143748
号公報、特開昭61−151644号公報および特開昭
63−58440号公報に記載されているトリハロメチ
ル化合物と塩形成性有機染料との組み合わせが挙げられ
る。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾー
ル系化合物とトリアジン系化合物とがあり、いずれも経
時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0084】画像着色剤としては、前述の塩形成性有機
染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有
機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性
染料が挙げられる。具体的には、例えば、オイルイエロ
ー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#
312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オ
イルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラ
ックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント
化学工業社製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタル
バイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレ
ット(C.I.42535)、エチルバイオレット、ロ
ーダミンB(C.I.145170B)、マラカイトグ
リーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.
I.52015)が挙げられる。また、特開昭62−2
93247号公報および特開平5−313359号公報
に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料の
添加量は、添加される層の全固形分に対して、0.01
〜10質量%であるのが好ましく、0.1〜3質量%で
あるのがより好ましい。
【0085】また、下層および感熱層は、塗膜の柔軟性
等を付与するために、必要に応じ、可塑剤を含有するこ
とができる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレング
リコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フ
タル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオク
チル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸
トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、ア
クリル酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマ
ーが用いられる。
【0086】下層および感熱層は、通常上記各成分を溶
媒に溶かして、上記平版印刷版用支持体上に塗布するこ
とにより製造することができる。ここで使用する溶媒と
しては、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサ
ノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、
プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテ
ル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエ
チルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテー
ト、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,
N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムア
ミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジ
メチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクト
ン、トルエンを挙げることができるが、これらに限定さ
れるものではない。これらの溶媒は単独でまたは混合し
て使用される。
【0087】溶剤は、感熱層に用いられるアルカリ可溶
性高分子化合物と下層に用いられるアルカリ可溶性高分
子化合物に対して、溶解性の異なるものであるのが好ま
しい。下層を塗布した後、それに隣接して、上層である
感熱層を塗布する際、上層の塗布溶剤として下層のアル
カリ可溶性高分子化合物を溶解させうる溶剤を用いる
と、層界面での混合が無視できなくなり、極端な場合、
重層にならず均一な単一層になってしまうことがある。
このように、隣接する二つの層の界面で混合が生じた
り、互いに相溶したりして均一層のような挙動を示す場
合、二層を有することによる本発明の平版印刷版原版の
効果が損なわれるおそれがあり、好ましくない。このた
め、感熱層を塗布するのに用いる溶剤は、下層に含まれ
るアルカリ可溶性高分子化合物に対する貧溶剤であるこ
とが好ましい。
【0088】各層を塗布する場合の溶媒中の上記成分
(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜5
0質量%である。
【0089】また、塗布乾燥後に得られる支持体上の下
層および感熱層の塗布量(固形分)は、用途によって異
なるが、感熱層は0.05〜1.0g/m2 であるのが
好ましく、また、下層は0.3〜3.0g/m2 である
のが好ましい。感熱層の塗布量が0.05g/m2 未満
である場合には、画像形成性が低下する場合があり、ま
た、1.0g/m2 を超えると感度が低下する可能性が
ある。また、下層の塗布量が0.3g/m2 未満である
場合、および、3.0g/m2 を超える場合には、いず
れも画像形成性が低下する傾向がある。また、下層およ
び感熱層の塗布量は、二層の合計で0.5〜3.0g/
2 であるのが好ましい。二層の合計の塗布量が0.5
g/m2 未満であると皮膜特性が低下する場合があり、
3.0g/m2 を超えると感度が低下する傾向にある。
塗布量が少なくなるにつれて、見掛けの感度は大きくな
るが、感光膜の皮膜特性は低下する。
【0090】塗布する方法としては、種々の方法を用い
ることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗
布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エア
ーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布が挙げられ
る。
【0091】また、下層および感熱層は、塗布性を向上
させるための界面活性剤、例えば、特開昭62−170
950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性
剤を含有することができる。塗布性を向上させるための
界面活性剤の添加量は、添加される層の全固形分に対し
て、0.01〜1質量%であるのが好ましく、0.05
〜0.5質量%であるのがより好ましい。
【0092】<下塗層>本発明の平版印刷版原版は、上
記平版印刷版用支持体上に、少なくとも下層と感熱層と
の二層からなる重層型感熱層を積層して設けたものであ
るが、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設け
ることができる。下塗層の成分としては、種々の有機化
合物を用いることができる。例えば、カルボキシメチル
セルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノ
エチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類;
置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホ
スホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、
メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等の有機
ホスホン酸;置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナ
フチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸等の有
機リン酸;置換基を有してもよいフェニルホスフィン
酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸、グ
リセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸;グリシン、
β−アラニン等のアミノ酸類;トリエタノールアミンの
塩酸塩等のヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩が挙げ
られる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合
して用いてもよい。
【0093】下塗層は以下のような方法で設けることが
できる。例えば、メタノール、エタノール、メチルエチ
ルケトン等の有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤または
これらの有機溶剤と水との混合溶剤に上記の有機化合物
を溶解させた溶液を、上記平版印刷版用支持体上に塗布
し乾燥して設ける方法、メタノール、エタノール、メチ
ルエチルケトン等の有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤
またはこれらの有機溶剤と水との混合溶剤に上記の有機
化合物を溶解させた溶液に、上記平版印刷版用支持体を
浸せきして有機化合物を吸着させ、その後、水洗または
空気等による洗浄を行い、更に乾燥して設ける方法を挙
げることができる。
【0094】前者の方法では、上記有機化合物の合計で
0.005〜10wt%の濃度の溶液を種々の方法で塗
布できる。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.0
1〜20wt%、好ましくは0.05%〜5wt%であ
り、浸せき温度は20℃〜90℃、好ましくは25〜5
0℃であり、浸せき時間は0.1秒〜20分、好ましく
は2秒〜1分である。
【0095】上記の溶液は、アンモニア、トリエチルア
ミン、水酸化カリウム等の塩基性物質や、塩酸、リン
酸、硫酸、硝酸等の無機酸、ニトロベンゼンスルホン
酸、ナフタレンスルホン酸等の有機スルホン酸、フェニ
ルホスホン酸等の有機ホスホン酸、安息香酸、クマル
酸、リンゴ酸等の有機カルボン酸等種々有機酸性物質、
ナフタレンスルホニルクロライド、ベンゼンスルホニル
クロライド等の有機クロライド等によりpHを調整し、
pH1〜12の範囲で使用することもできる。また、平
版印刷版原版の調子再現性改良のために黄色染料を添加
することもできる。
【0096】下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2
が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2 であ
る。上記被覆量が2mg/m2 よりも少ないと十分な耐
刷性が得られない場合がある。また、200mg/m2
より多い場合も同様である。
【0097】上記のようにして、上記平版印刷版用支持
体上に、所望により下塗層を設けた後、特定の下層と感
熱層とを順次積層して得られる本発明の平版印刷版原版
は、下記のようにして画像様に露光され、その後、現像
処理を施され、平版印刷版とされる。像露光に用いられ
る活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハ
ライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カー
ボンアーク灯が挙げられる。放射線としては、例えば、
電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線が挙げられる。
また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギ
ービーム(レーザービーム)を用いることもできる。レ
ーザービームとしては、例えば、ヘリウム・ネオンレー
ザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウ
ム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザーが挙
げられる。中でも、近赤外から赤外までの領域に発光波
長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが
特に好ましい。
【0098】本発明の平版印刷版原版の現像工程におい
て好適に用いられるアルカリ現像処理液について説明す
る。好ましいアルカリ現像処理液は、ノニオン性界面活
性剤と塩基とを含有し、必要に応じて、その他の成分を
含有してなる。
【0099】<ノニオン性界面活性剤>本発明の平版印
刷版原版は、ノニオン性界面活性剤を含有するアルカリ
現像処理液で現像処理すると、アルカリ濃度を上げた現
像能力の高い液で現像処理した場合であっても、即ち、
オーバー条件で現像処理した場合であっても、画像部の
アルカリ現像処理液に対する耐溶解性が維持され、外傷
に対する現像安定性が向上するという利点が得られる。
これは、アルカリ可溶性高分子化合物とノニオン性界面
活性剤との相互作用に起因するものと推測される。この
相互作用は、ノニオン性界面活性剤がエチレンオキシド
鎖またはプロピレンオキシド鎖を含んでいる場合に強く
働き、エチレンオキシド鎖を含んでいる場合に特に強く
働く。これは、アルカリ可溶性基、特にフェノール性水
酸基と、エチレンオキシド鎖とが強く相互作用するため
であると推測される。
【0100】アルカリ現像処理液に用いられるノニオン
性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用
いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキ
ルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ
ーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエ
ーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンア
ルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、
ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトー
ル脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂
肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオ
キシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオ
キシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリ
エチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン
脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油
類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル
類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−
ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアル
キルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、ト
リアルキルアミンオキシドが挙げられる。
【0101】具体的には、例えば、ポリエチレングリコ
ール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキ
シエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンセチル
エーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポ
リオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレ
ンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプ
ロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキ
シプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンフ
ェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニル
エーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリ
オキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンス
テアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミ
ド、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン
エチレンアビエチルエーテル、ポリオキシエチレンノニ
ンエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリ
オキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレン
グリセリルモノオレート、ポリオキシエチレングリセリ
ルモノステアレート、ポリオキシエチレンプロピレング
リコールモノステアレート、オキシエチレンオキシプロ
ピレンブロックポリマー、ジスチレン化フェノールポリ
エチレンオキシド付加物、トリベンジルフェノールポリ
エチレンオキシド付加物、オクチルフェノールポリオキ
シエチレンポリオキシプロピレン付加物、グリセロール
モノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオ
キシエチレンソルビタンモノラウレートが挙げられる。
また、上記のうち、名称に「ポリオキシエチレン」を含
むノニオン性界面活性剤において、「ポリオキシエチレ
ン」を、「ポリオキシメチレン」、「ポリオキシプロピ
レン」、「ポリオキシブチレン」等の「ポリオキシアル
キレン」に読み替えたものも、ノニオン性界面活性剤の
具体例として挙げられる。
【0102】これらのノニオン性界面活性剤のアルカリ
現像処理液における含有量は、好ましくは0.001〜
5質量%であり、より好ましくは0.01〜3質量%で
あり、特に好ましくは0.1〜3質量%である。含有量
が0.001質量%より少ないと、ノニオン性界面活性
剤が有効に作用しなくなる場合があり、5質量%よりも
多いと、相互作用が強すぎ、現像されなくなる場合があ
る。また、これらのノニオン性界面活性剤の重量平均分
子量は、300〜50,000であるのが好ましく、5
00〜5,000であるのがより好ましい。これらのノ
ニオン性界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上を
併用してもよい。
【0103】ノニオン性界面活性剤は、下記一般式
(I)で表される化合物であるのが好ましい。
【0104】
【化1】
【0105】一般式(I)中、R1 〜R5 は、それぞれ
水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル
基、アルキニル基、アリール基、カルボニル基、カルボ
キシレート基、スルホニル基またはスルホネート基を表
す。R1 〜R5 は同一であっても、異なっていてもよ
い。また、p、qおよびrは、それぞれ0以上の整数を
表す。ただし、p、qおよびrのすべてが0であること
はない。
【0106】炭素数1〜18のアルキル基の具体例とし
ては、メチル基、エチル基、ヘキシル基が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、プロペニル
基が挙げられる。アルキニル基の具体例としては、アセ
チル基、プロピニル基が挙げられる。アリール基の具体
例としては、フェニル基、4−ヒドロキシフェニル基が
挙げられる。
【0107】一般式(I)で表される化合物の具体例と
しては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリ
コール等のホモポリマー;エチレングリコールとプロピ
レングリコールとの共重合体が挙げられる。前記共重合
体のモノマー比率は、10/90〜90/10であるの
が、現像液への溶解性と塗布溶媒への溶解性との両立の
点から好ましい。また、前記共重合体の中でも、グラフ
トポリマー、ブロックポリマーが、非画像部のアルカリ
現像液に対する溶解性と画像部のアルカリ現像液に対す
る耐溶解性との両立の点から好ましい。
【0108】一般式(I)で表される化合物のうち、画
像部のアルカリ現像液に対する耐溶解性の点から、特に
下記一般式(II)で表されるポリオキシエチレン・ポ
リオキシプロピレンブロック共重合体が好ましい。
【0109】
【化2】
【0110】一般式(II)式中、a、bおよびcは、
それぞれ独立に1〜10,000の整数を表す。
【0111】本発明の平版印刷版原版の現像処理に好適
に用いられる重合体は、総分子に対するオキシエチレン
の割合が40〜80質量%、好ましくは40〜60質量
%であり、ポリオキシプロピレンの分子量が1,000
〜4,000、好ましくは2,000〜3,500であ
る。
【0112】<塩基>アルカリ現像処理液に用いられる
塩基としては、従来公知のアルカリ剤、例えば、無機ア
ルカリ剤、有機アルカリ剤が挙げられる。無機アルカリ
剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カ
リウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、
リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリ
ウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナト
リウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホ
ウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム
が挙げられる。
【0113】有機アルカリ剤としては、例えば、モノメ
チルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノ
エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モ
ノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイ
ソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノール
アミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、
モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミ
ン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンが挙
げられる。
【0114】塩基は、一種単独で用いてもよく、二種以
上を併用してもよい。これらの塩基の中でも、水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウムが好ましい。その理由は、こ
れらの量を調整することにより広いpH領域でのpH調
整が可能となるためである。また、リン酸三ナトリウ
ム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム
等もそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
【0115】本発明の平版印刷版原版の現像処理におい
ては、現像性向上のため、アルカリ現像処理液のアルカ
リ濃度を上げること、即ち、オーバー条件とすることが
好ましいが、このためには、塩基の添加量を調整すれば
よい。即ち、塩基を、アルカリ現像処理液が強アルカリ
性、例えば、pH12.5〜13.5、好ましくはpH
12.8〜13.3となるように、アルカリ現像処理液
に添加すればよい。
【0116】<その他の成分>アルカリ現像処理液は、
塩基としてケイ酸アルカリを含有し、または、塩基にケ
イ素化合物を混ぜ、系中でケイ酸アルカリとしたものを
含有する、いわゆる「シリケート現像液」としてもよ
い。また、ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖と塩基
とを含有する、いわゆる「ノンシリケート現像液」とし
てもよい。
【0117】<ケイ酸アルカリ>ケイ酸アルカリとして
は、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ
酸リチウム、ケイ酸アンモニウムが挙げられる。これら
は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることがで
きる。ケイ酸アルカリのSiO2 /M2 Oモル比(Mは
アルカリ金属を表す。)は、0.5〜3.0であるのが
好ましく、1.0〜2.0であるのがより好ましい。上
記モル比が3.0より大きくなるにつれて現像性が低下
する傾向がある。また、上記モル比が0.5より小さく
なるにつれてアルカリ強度が高くなる傾向があり、支持
体に用いられているアルミニウム板をエッチングする弊
害が出てくるようになる。シリケート現像液中のケイ酸
アルカリの濃度は、1〜10質量%であるのが好まし
く、1.5〜7質量%であるのがより好ましい。10質
量%を超えると、沈殿や結晶が生成しやすくなり、ま
た、廃液時の中和に際してゲル化しやすくなり廃液処理
が煩雑になる。また、1質量%未満であると、現像力お
よび処理能力が低くなる。
【0118】<非還元糖>ケイ酸アルカリを含有せず、
非還元糖と塩基とを含有するいわゆる「ノンシリケート
現像液」を用いて、本発明の平版印刷版原版に現像処理
を行うと、感熱層の表面を劣化させることがなく、感熱
層の着肉性を良好な状態に維持することができる。ま
た、ノンシリケート現像液にはpHの変動を抑える緩衝
性を有する非還元糖が含まれているため、シリケート現
像液を用いる場合に比べて有利である。更に、非還元糖
は、シリケートに比べて液活性度を制御するための電導
度センサ−、pHセンサ−等を汚染しにくいため、この
点でも、ノンシリケート現像液は有利である。
【0119】非還元糖とは、遊離のアルデヒド基やケト
ン基を持たず、還元性を示さない糖類であり、還元基同
士の結合したトレハロース型少糖類、糖類の還元基と非
糖類が結合した配糖体、および糖類に水素添加して還元
した糖アルコールに分類される。本発明の平版印刷版原
版の現像処理においては、いずれも好適に用いられる。
なお、本発明の平版印刷版原版の現像処理においては、
特開平8−305039号公報に記載されている非還元
糖を好適に使用することができる。
【0120】トレハロース型少糖類としては、例えば、
サッカロース、トレハロースが挙げられる。配糖体とし
ては、例えば、アルキル配糖体、フェノール配糖体、カ
ラシ油配糖体が挙げられる。糖アルコールとしては、例
えば、D,L−アラビット、リビット、キシリット、
D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イ
ジット、D,L−タリット、ズリシット、アロズルシッ
トが挙げられる。更に、二糖類のマルトースに水素添加
したマルチトール、オリゴ糖の水素添加で得られる還元
体(還元水あめ)等が好適に挙げられる。これらの非還
元糖の中でも、トレハロース型少糖類、糖アルコールが
好ましく、特に、D−ソルビット、サッカロース、還元
水あめが、適度なpH領域に緩衝作用を有し、低価格で
ある点で好ましい。
【0121】これらの非還元糖は、一種単独で用いても
よく、二種以上を併用してもよい。非還元糖のノンシリ
ケート現像液における含有量は、0.1〜30質量%で
あるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ま
しい。含有量が0.1質量%未満であると十分な緩衝作
用が得られない場合がある。含有量が30質量%を超え
ると高濃縮化しにくくなり、また、コストが高くなる。
【0122】また、ノンシリケート現像液において、非
還元糖と組み合わせて用いられる塩基としては、上記に
列挙した塩基が好適に挙げられる。塩基のノンシリケー
ト現像液における含有量は、所望のpH、非還元糖の種
類、添加量等に応じて適宜決定される。なお、還元糖
は、塩基と併用すると、褐変し、pHも徐々に低下し、
現像性が低下するため、好ましくない。
【0123】また、ノンシリケート現像液として、非還
元糖と塩基との組み合わせに代えて、非還元糖のアルカ
リ金属塩を主成分として用いることもできる。非還元糖
のアルカリ金属塩は、上述した非還元糖と、アルカリ金
属水酸化物とを混合し、該非還元糖の融点以上に加熱し
脱水すること、または、該非還元糖とアルカリ金属水酸
化物との混合水溶液を乾燥することによって得られる。
【0124】また、ノンシリケート現像液に、前記非還
元糖以外の弱酸と強塩基とからなるアルカリ性緩衝液を
併用することができる。弱酸としては、解離定数(pK
a )が10.0〜13.2のものが好ましく、例えば、
Pergamon Press社発行のIONISAT
ION CONSTANTS OF ORGANICA
CIDS IN AQUEOUS SOLUTIONに
記載されているものから選択できる。
【0125】具体的には、例えば、2,2,3,3−テ
トラフルオロプロパノ−ル−1(pKa 12.74)、
トリフルオロエタノール(同12.37)、トリクロロ
エタノール(同12.24)等のアルコール類、ピリジ
ン−2−アルデヒド(同12.68)、ピリジン−4−
アルデヒド(同12.05)等のアルデヒド類、サリチ
ル酸(同13.0)、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
(同12.84)、カテコール(同12.6)、没食子
酸(同12.4)、スルホサリチル酸(同11.7)、
3,4−ジヒドロキシスルホン酸(同12.2)、3,
4−ジヒドロキシ安息香酸(同11.94)、1,2,
4−トリヒドロキシベンゼン(同11.82)、ハイド
ロキノン(同11.56)、ピロガロール(同11.3
4)、o−クレゾール(同10.33)、レゾルシノー
ル(同11.27)、p−クレゾール(同10.2
7)、m−クレゾール(同10.09)等のフェノール
性水酸基を有する化合物、
【0126】2−ブタノンオキシム(同12.45)、
アセトキシム(同12.42)、1,2−シクロヘプタ
ンジオンジオキシム(同12.3)、2−ヒドロキシベ
ンズアルデヒドオキシム(同12.10)、ジメチルグ
リオキシム(同11.9)、エタンジアミドジオキシム
(同11.37)、アセトフェノンオキシム(同11.
35)等のオキシム類、アデノシン(同12.56)、
イノシン(同12.5)、グアニン(同12.3)、シ
トシン(同12.2)、ヒポキサンチン(同12.
1)、キサンチン(同11.9)等の核酸関連物質、
【0127】ジエチルアミノメチルホスホン酸(同1
2.32)、1−アミノ−3,3,3−トリフルオロ安
息香酸(同12.29)、イソプロピリデンジホスホン
酸(同12.10)、1,1−エチリデンジホスホン酸
(同11.54)、1,1−エチリデンジホスホン酸−
1−ヒドロキシ(同11.52)、ベンズイミダゾール
(同12.86)、チオベンズアミド(同12.8)、
ピコリンチオアミド(同12.55)、バルビツル酸
(同12.5)が好適に挙げられる。中でも、スルホサ
リチル酸、サリチル酸が好ましい。
【0128】これらの弱酸に組み合わせる強塩基として
は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、
水酸化カリウム、水酸化リチウムが好適に挙げられる。
これらは、一種単独で用いてもよく、二種以上を併用し
てもよい。強塩基は、適宜選択した濃度および組み合わ
せにより、pHを好ましい範囲内に調整して使用され
る。
【0129】また、現像性の促進、現像カスの分散、本
発明の平版印刷版原版の画像部の親インキ性の向上等の
目的で、必要に応じて、現像安定剤、有機溶剤、還元
剤、有機カルボン酸、硬水軟化剤、ノニオン性界面活性
剤以外の界面活性剤、防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤
等をその他の成分としてアルカリ現像処理液に添加して
もよい。
【0130】<現像安定化剤>現像安定化剤としては、
例えば、特開平6−282079号公報に記載されてい
る糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テト
ラブチルアンモニウムヒドロキシド等のテトラアルキル
アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロマイド
等のホスホニウム塩、ジフェニルヨードニウムクロライ
ド等のヨードニウム塩が好適に挙げられる。また、特開
昭50−51324号公報に記載されているアニオン界
面活性剤、両性界面活性剤、特開昭55−95946号
公報に記載されている水溶性カチオニックポリマー、特
開昭56−142528号公報に記載されている水溶性
の両性高分子電解質が挙げられる。
【0131】更に、特開昭59−84241号公報に記
載されているアルキレングリコールが付加された有機ホ
ウ素化合物、特開昭60−111246号公報に記載さ
れているポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブ
ロック重合型の水溶性界面活性剤、特開昭60−129
750号公報に記載されているポリオキシエチレン・ポ
リオキシプロピレンを置換したアルキレンジアミン化合
物、特開昭61−215554号公報に記載されている
重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、
特開昭63−175858号公報に記載されているカチ
オン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39
157号公報に記載されている酸またはアルコールに4
モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性
エチレンオキシド付加化合物と、水溶性ポリアルキレン
化合物が挙げられる。
【0132】<有機溶剤>有機溶剤としては、例えば、
水に対する溶解度が約10質量%以下のものが好まし
く、5質量%以下のものがより好ましい。有機溶剤の具
体例としては、1−フェニルエタノール、2−フェニル
エタノール、3−フェニル−1−プロパノール、4−フ
ェニル−1−ブタノール、4−フェニル−2−ブタノー
ル、2−フェニル−1−ブタノール、2−フェノキシエ
タノール、2−ベンジルオキシエタノール、o−メトキ
シベンジルアルコール、m−メトキシベンジルアルコー
ル、p−メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコ
ール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノ
ール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシク
ロヘキサノール、N−フェニルエタノールアミン、N−
フェニルジエタノールアミンが挙げられる。
【0133】有機溶剤のアルカリ現像処理液における含
有量は、該アルカリ現像処理液の総質量に対して0.1
〜5質量%程度である。有機溶剤の含有量は、ノニオン
性界面活性剤のアルカリ現像処理液における含有量と密
接な関係があり、有機溶剤の量が増すにつれ、ノニオン
性界面活性剤の量は増加させることが好ましい。これ
は、ノニオン性界面活性剤の量を少なくし、有機溶剤の
量を多くすると、該有機溶剤が完全に溶解せず、良好な
現像性の確保が期待できなくなるからである。
【0134】<還元剤>還元剤としては、有機還元剤、
無機還元剤等が挙げられる。これらの還元剤は、印刷版
の汚れを防止するのに役立つ。有機還元剤の好ましい具
体例としては、チオサリチル酸、ハイドロキノン、メト
ール、メトキシキノン、レゾルシン、2−メチルレゾル
シン等のフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェ
ニルヒドラジン等のアミン化合物が挙げられる。無機還
元剤の好ましい具体例としては、亜硫酸、亜硫酸水素
酸、亜リン酸、亜リン酸水素酸、亜リン酸二水素酸、チ
オ硫酸、亜ジチオン酸等の無機酸のナトリウム塩、カリ
ウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。中でも、汚れ防
止効果が特に優れている点で、亜硫酸塩が好ましい。還
元剤のアルカリ現像処理液における含有量は、該アルカ
リ現像処理液の総質量に対して0.05〜5質量%程度
である。
【0135】<有機カルボン酸>有機カルボン酸として
は、例えば、炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸お
よび芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0136】炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸の
具体例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル
酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステア
リン酸が挙げられる。中でも、炭素数8〜12のアルカ
ン酸が特に好ましい。また、これらは、炭素鎖中に二重
結合を有する不飽和脂肪酸でもよいし、枝分かれした炭
素鎖のものでもよい。
【0137】炭素原子数6〜20の芳香族カルボン酸の
具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラ
セン環等にカルボキシル基が置換された化合物が挙げら
れ、より具体的には、例えば、o−クロロ安息香酸、p
−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒド
ロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息
香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒド
ロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、2,
3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息
香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3
−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−
ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸が挙げら
れる。中でも、各種のヒドロキシナフトエ酸が特に好ま
しい。
【0138】脂肪族カルボン酸および芳香族カルボン酸
は、水溶性を高める点で、ナトリウム塩、カリウム塩、
アンモニウム塩等として用いるのが好ましい。有機カル
ボン酸のアルカリ現像処理液における含有量は、特に限
定されないが、通常0.1〜10質量%程度であり、
0.5〜4質量%であるのが好ましい。含有量が0.1
質量%未満であると、その添加効果が十分でない場合が
あり、10質量%を超えると、それに見合う効果が得ら
れない場合があり、また、併用する別の添加剤のアルカ
リ現像処理液への溶解を妨げることがある。
【0139】<硬水軟化剤>硬水軟化剤としては、例え
ば、ポリリン酸ならびにそのナトリウム塩、カリウム塩
およびアンモニウム塩;エチレンジアミンテトラ酢酸、
ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラ
ミンヘキサ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミント
リ酢酸、ニトリロトリ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘ
キサンテトラ酢酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノー
ルテトラ酢酸等のアミノポリカルボン酸ならびにそれら
のナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩;ア
ミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテ
トラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペ
ンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミン
ヘキサ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチルエチ
レンジアミントリ(メチレンホスホン酸)および1−ヒ
ドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸ならびにそれら
のナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩が挙
げられる。
【0140】硬水軟化剤は、そのキレート化力と使用さ
れる硬水の硬度および量とによってアルカリ現像処理液
における最適含有量が変化するが、一般的には0.01
〜5質量%程度であり、0.01〜0.5質量%である
のが好ましい。含有量が0.01質量%未満であると、
その添加効果が十分でないことがあり、5質量%を超え
ると、色抜け等画像部への悪影響が生じることがある。
【0141】<ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤
>アルカリ現像処理液には、上述したノニオン性界面活
性剤以外に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性
剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を更に添加
してもよい。
【0142】アニオン界面活性剤としては、例えば、脂
肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスル
ホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスル
ホコハク酸エステル塩類、α−オレフィンスルホン酸塩
類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アル
キルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスル
ホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプ
ロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルス
ルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイル
タウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モ
ノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化
牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、
アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキ
ルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫
酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニル
エーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリ
ルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸
エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリ
ン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニ
ルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイ
ン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレ
イン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン
酸塩ホルマリン縮合物類が好適に挙げられる。
【0143】カチオン界面活性剤としては、例えば、ア
ルキルアミン塩類、テトラブチルアンモニウムブロミド
等の第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアル
キルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げ
られる。両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシ
ベタイン類、アルキルアミノカルボン酸類、スルホベタ
イン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類が挙げ
られる。
【0144】フッ素系界面活性剤は、分子内にパーフル
オロアルキル基を含有する。このようなフッ素系界面活
性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン
酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオ
ロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオ
ロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキル
トリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオ
ロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエ
チレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および
親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基およ
び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、
親水性基および親油性基含有オリゴマー、パーフルオロ
アルキル基および親油性基含有ウレタン等の非イオン型
が挙げられる。
【0145】また、上記のうち、名称に「ポリオキシエ
チレン」を含む界面活性剤において、「ポリオキシエチ
レン」を、「ポリオキシメチレン」、「ポリオキシプロ
ピレン」、「ポリオキシブチレン」等の「ポリオキシア
ルキレン」に読み替えたものも、ノニオン性界面活性剤
以外の界面活性剤の具体例として挙げられる。
【0146】ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤
は、一種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよ
い。界面活性剤のアルカリ現像処理液における含有量
は、通常0.001〜10質量%であり、0.01〜5
質量%であるのが好ましい。
【0147】アルカリ現像処理液は、以上に説明した各
成分のほか、水を含有する。アルカリ現像処理液は、未
使用時(保管時)には水の含有量を少なくした濃縮液と
しておき、使用時に水で希釈するようにしておくと、運
搬上有利である。この場合、アルカリ現像処理液の濃縮
度は、前記各成分が分離や析出を起こさない程度が適当
である。
【0148】本発明の平版印刷版原版を上記アルカリ現
像処理液と補充液とを用いて現像処理して得られる平版
印刷版は、通常、水洗水、界面活性剤等を含有するリン
ス液や、アラビアガム、デンプン誘導体を含む不感脂化
液で後処理される。後処理は、これらの処理を種々組み
合わせて用いることができる。
【0149】近年、製版・印刷業界では製版作業の合理
化および標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用
いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処
理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽およ
びスプレー装置とを備え、露光済みの印刷版を水平に搬
送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノ
ズルから吹き付けて現像処理する。また、最近は、処理
液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によっ
て印刷版を浸せき搬送させて処理する方法も知られてい
る。このような自動処理においては、各処理液に処理
量、稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理する
ことができる。また、実質的に未使用の処理液で処理す
るいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0150】本発明の平版印刷版原版を、画像露光し、
現像し、水洗、リンス、ガム引き等を行って得られる平
版印刷版に不必要な画像部(例えば、原画フィルムのフ
ィルムエッジ跡)がある場合には、その不必要な画像部
の消去が行われる。このような消去は、例えば、特公平
2−13293号公報に記載されているような消去液を
不必要な画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置した
後に水洗することにより消去する方法が好ましいが、特
開平59−174842号公報に記載されているような
オプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要な
画像部に照射した後に現像して消去する方法も利用でき
る。
【0151】以上のようにして得られた平版印刷版は、
所望により不感脂化ガムを塗布した後、印刷工程に供す
ることができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版と
したい場合にはバーニング処理が施される。
【0152】平版印刷版をバーニング処理する場合に
は、該バーニング処理前に、特公昭61−2518号公
報、同55−28062号公報、特開昭62−3185
9号公報および同61−159655号公報に記載され
ているような整面液で処理するのが好ましい。その方法
としては、整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿で、
平版印刷版上に塗布する方法、整面液を満たしたバット
中に印刷版を浸せきさせて塗布する方法や、自動コータ
ーにより塗布する方法等が挙げられる。また、塗布後
に、スキージまたはスキージローラーで、その塗布量を
均一にするのが好ましい。整面液の塗布量は、一般に
0.03〜0.8g/m2 (乾燥質量)が適当である。
【0153】整面液が塗布された平版印刷版は、必要に
応じて乾燥された後、バーニングプロセッサー(例え
ば、富士写真フイルム(株)製のBP−1300)等で
高温に加熱される。この場合の加熱温度および時間は、
画像を形成している成分の種類にもよるが、それぞれ1
80〜300℃、1〜20分とするのが好ましい。
【0154】バーニング処理された平版印刷版は、必要
に応じて適宜、水洗、ガム引き等の従来より行われてい
る処理を施すことができるが、水溶性高分子化合物等を
含有する整面液が使用された場合には、ガム引き等のい
わゆる不感脂化処理を省略することができる。このよう
な処理によって得られる平版印刷版はオフセット印刷機
等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0155】
【実施例】以下に実施例を示して本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらに限られるものではない。 1.平版印刷版原版の作成 (実施例1)Si:0. 06質量%、Fe:0.30質
量%、Cu:0. 014質量%、Mn:0.001質量
%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量
%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可
避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶
湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1
200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均
10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃
で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったとこ
ろで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とし
た。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行っ
た後、冷間圧延で、厚さ0.24mmのアルミニウム板
に仕上げた。このアルミニウム板を幅1030mmにし
た後、以下に示す表面処理を連続的に行った。
【0156】(a)機械的粗面化処理 図1に示したような装置を使って、比重1.12の研磨
剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてア
ルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状
ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。図1に
おいて、1はアルミニウム板、2および4はローラ状ブ
ラシ、3は研磨スラリー液、5、6、7および8は支持
ローラである。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は
50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナ
イロン、毛長は50mm、毛の直径は0.3mmであっ
た。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒
に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3
本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200
mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブ
ラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラを
アルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kW
プラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はア
ルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転
数は200rpmであった。
【0157】(b)アルカリ剤によるエッチング処理 上記で得られた機械的粗面化処理後のアルミニウム板を
カセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃
度6.5質量%、温度70℃でスプレーによるエッチン
グ処理を行い、アルミニウム板を6g/m2 溶解した。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0158】(c)デスマット処理 温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイ
オンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマ
ット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デ
スマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を
用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0159】(d)電気化学的粗面化処理 60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面
化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10g/L
水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウム
イオンを0.007質量%含む。)、温度80℃であっ
た。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値が
ゼロからピークに達するまでの時間TPが0msec、
DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボ
ン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。
補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽
は図3に示すものを使用した。図3において、11はア
ルミニウム板、12はラジアルドラムローラ、13aお
よび13bは主極、14は電解処理液、15は電解液供
給口、16はスリット、17は電解液通路、18は補助
陽極、19aおよび19bはサイリスタ、20は交流電
源である。電流密度は電流のピーク値で30A/d
2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和
で130C/dm2 であった。補助陽極には電源から流
れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる
水洗を行った。
【0160】(e)アルカリエッチング処理 アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミ
ニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチ
ング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g
/m2 溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化
を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とす
るスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッ
ジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、
スプレーによる水洗を行った。
【0161】(f)デスマット処理 温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウム
イオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデス
マット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行っ
た。
【0162】(g)陽極酸化処理 図4に示す構造の二段給電電解処理法の陽極酸化装置
(第一および第二電解部長各6m、第一および第二給電
部長各3m、第一および第二給電電極長各2.4m)を
用いて陽極酸化処理を行った。第一および第二電解部に
供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、い
ずれも、硫酸濃度170g/L(アルミニウムイオンを
0.5質量%含む。)、温度43℃であった。その後、
スプレーによる水洗を行った。
【0163】前記陽極酸化装置においては、電源67a
および67bからの電流は、第一給電部62aに設けら
れた第一給電電極65aに流れ、電解液を介してアルミ
ニウム板11に流れ、第一電解部63aでアルミニウム
板11の表面に酸化皮膜を生成させ、第一電解部63a
に設けられた電解電極66aおよび66bを通り、電源
67aおよび67bに戻る。一方、電源67cおよび6
7dからの電流は、第二給電部62bに設けられた第二
給電電極65bに流れ、前記と同様に電解液を介してア
ルミニウム板11に流れ、第二電解部63bでアルミニ
ウム板11の表面に酸化皮膜を生成させ、第二電解部6
3bに設けられた電解電極66cおよび66dを通り、
電源67cおよび67dに戻る。
【0164】電源67aおよび67bから第一給電部6
2aに給電される電気量と、電源67cおよび67dか
ら第二給電部62bに給電される電気量とは等しく、ま
た、第一電解部63aおよび第二電解部63bにおける
電流密度はともに約25A/dm2 であった。第二給電
部62bでは、第一電解部63aで生成した1.35g
/m2 の酸化皮膜面を通じて給電したことになる。最終
的な酸化皮膜量は2.7g/m2 であった。
【0165】(h)アルカリ金属ケイ酸塩処理 陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度
30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中
へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩
処理(シリケート処理)を行った。その後、スプレーに
よる水洗を行った。
【0166】(i)下塗層の形成 上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後
のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗液を塗布
し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥
後の塗膜の被覆量は15mg/m2 であった。
【0167】<下塗液組成> ・下記高分子化合物 0.3g ・メタノール 100 g ・水 1 g
【0168】
【化3】
【0169】(j)下層および感熱層の形成 ついで、下塗層を設けた平版印刷版用支持体に、下記組
成の下層用塗布液を乾燥後の塗布量が0.85g/m2
となるように塗布した後、TABAI社製のPERFE
CT OVEN PH200をWind Contro
lを7に設定して用い、140度で50秒間乾燥させ
た。その後、下記組成の感熱層用塗布液を塗布量が0.
15g/m2 となるように塗布した後、120度で1分
間乾燥し、平版印刷版原版1を得た。
【0170】 <下層用塗布液> ・N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリ ル/メタクリル酸メチル共重合体(モノマー比=36/34/30、重量平均分 子量50,000) 1.896g ・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量4,5 00、未反応クレゾール0.8質量%含有) 0.237g ・下記構造式で表されるシアニン染料A 0.109g
【0171】
【化4】
【0172】 ・4,4´−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.063g ・テトラヒドロ無水フタル酸 0.190g ・p−トルエンスルホン酸 0.008g ・2−メトキシ−4−(N−フェニルアミノ)ベンゼンジアゾニウム・ヘキサ フルオロホスフェート 0.03 g ・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン に変えたもの 0.05 g ・フッ素系界面活性剤(メガファックF−176、大日本インキ化学工業社製 ) 0.035g ・メチルエチルケトン 26.6 g ・1−メトキシ−2−プロパノール 13.6 g ・γ−ブチロラクトン 13.8 g
【0173】 <感熱層用塗布液> ・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量4,5 00、未反応クレゾール0.8質量%含有) 0.237g ・上記構造式で表されるシアニン染料A 0.047g ・ステアリン酸ドデシル 0.060g ・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミンヘキサフルオロホスフェート 0.030g ・フッ素系界面活性剤(メガファックF−176、大日本インキ化学工業社製 ) 0.110g ・フッ素系界面活性剤(メガファックMCF−312(固形分30質量%)、 大日本インキ化学工業社製) 0.120g ・メチルエチルケトン 15.1 g ・1−メトキシ−2−プロパノール 7.7 g
【0174】(実施例2)上記(a)機械的粗面化処理
を行わず、かつ、上記(d)電気化学的粗面化処理にお
ける電気量をアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で
100C/dm2とした以外は、実施例1と同様の方法
により、平版印刷版原版2を得た。
【0175】(実施例3)上記(a)機械的粗面化処理
において、研磨剤として、平均粒径5μm、最大粒径5
0μmのケイ砂を用い、かつ、上記(d)電気化学的粗
面化処理において、電解液温度を50℃とし、電気量を
アルミニウム板が陽極時の電気量の総和で145C/d
2 とした以外は、実施例1と同様の方法により、平版
印刷版原版3を得た。
【0176】(実施例4)上記(a)機械的粗面化処理
を行わず、かつ、上記(d)電気化学的粗面化処理およ
び(e)アルカリエッチング処理の工程を後述するよう
に異なる条件で二回繰り返した以外は、実施例1と同様
の方法により、平版印刷版原版4を得た。一回目の電気
化学的粗面化処理は、電解液温度を50℃、TPを0.
8msec、交流電圧の周波数を0.3Hz、電流密度
を電流のピーク値で25A/dm 2 とした以外は、上記
実施例1(d)と同様の方法により行った。その後、7
0℃で行った以外は、上記実施例1(e)と同様の方法
により一回目のアルカリエッチング処理を行った。引き
続き、上記実施例1(d)と同様の方法により、二回目
の電気化学的粗面化処理を行い、更に、上記実施例1
(e)と同様の方法により、二回目のアルカリエッチン
グ処理を行った。
【0177】(比較例1)上記(d)電気化学的粗面化
処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法によ
り、平版印刷版原版5を得た。
【0178】(比較例2)上記(d)電気化学的粗面化
処理において、電解液温度を40℃とし、電気量をアル
ミニウム板が陽極時の電気量の総和で270C/dm2
とした以外は、実施例1と同様の方法により、平版印刷
版原版6を得た。
【0179】(比較例3)上記(d)電気化学的粗面化
処理において、電解液温度を40℃とし、電気量をアル
ミニウム板が陽極時の電気量の総和で270C/dm2
とした以外は、実施例2と同様の方法により、平版印刷
版原版7を得た。
【0180】(比較例4)上記(a)機械的粗面化処理
において、研磨剤として、平均粒径40μm、最大粒径
200μmの火山灰からなるパミスを用い、かつ、上記
(d)電気化学的粗面化処理において、電気量をアルミ
ニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2 とし
た以外は、実施例1と同様の方法により、平版印刷版原
版8を得た。
【0181】(比較例5)上記(j)下層および感熱層
の形成を行わず、代わりに下記のようにして単層の感熱
層を設けた以外は、実施例1と同様の方法により、平版
印刷版原版9を得た。下記組成の単層用感熱層塗布液を
塗布量が1.0g/m2 となるように塗布した後、TA
BAI社製のPERFECT OVEN PH200を
Wind Controlを7に設定して用い、140
度で50秒間乾燥し、平版印刷版原版9を得た。
【0182】 <単層用感熱層塗布液> ・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量4,5 00、未反応クレゾール0.8質量%含有) 0.474g ・N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリ ル/メタクリル酸メチル共重合体(モノマー比=36/34/30、重量平均分 子量50,000) 2.37g ・上記構造式で表されるシアニン染料A 0.155g ・2−メトキシ−4−(N−フェニルアミノ)ベンゼンジアゾニウム・ヘキサ フルオロホスフェート 0.03 g ・テトラヒドロ無水フタル酸 0.19 g ・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン に変えたもの 0.05 g ・フッ素系界面活性剤(メガファックF−176、大日本インキ化学工業社製 ) 0.07 g ・フッ素系界面活性剤(メガファックMCF−312(固形分30質量%)、 大日本インキ化学工業社製) 0.12 g ・p−トルエンスルホン酸 0.008g ・4,4´−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.063g ・ステアリン酸n−ドデシル 0.06 g ・γ−ブチロラクトン 13 g ・メチルエチルケトン 24 g ・1−メトキシ−2−プロパノール 11 g
【0183】2.平版印刷版用支持体の表面の見掛け面
積に対する実面積の割合 上記平版印刷版原版の作成の過程において得られたアル
カリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体(平版印
刷版用支持体)について、以下のようにして、表面の見
掛け面積に対する実面積の割合を測定した。平版印刷版
用支持体の表面形状を原子間力顕微鏡(AFM)を用い
て、水平(X,Y)方向の分解能0.1μm、測定範囲
100μm角という条件で測定を行った。近似三点法に
より求めた表面積を実面積とし、上部投影面積を見掛け
面積としたときに、実面積を見掛け面積で除して、表面
の見掛け面積に対する実面積の割合を求めた。結果を第
1表に示す。第1表においては、表面の見掛け面積に対
する実面積の割合を「表面の実面積/表面の見掛け面
積」とした。
【0184】3.平版印刷版用支持体のピットの平均直
径および表面の見掛け面積に対するピットの見掛け面積
の割合の測定 平版印刷版用支持体の表面を、支持体に垂直な方向か
ら、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率1000
0倍のSEM写真を撮影した。SEM写真において、3
0個のピットについて直径を測定し、ピットの平均直径
を求めた。また、SEM写真の上に透明フィルムを重
ね、ピットが形成されていない平坦な部分を透明フィル
ム上にペンで写し取り、画像解析装置により透明フィル
ム上に写し取られた部分の面積率を求め、表面の見掛け
面積に対するピットの見掛け面積の割合を算出した。結
果を第1表に示す。第1表においては、表面の見掛け面
積に対するピットの見掛け面積の割合を「ピットの見掛
け面積/表面の見掛け面積」とした。なお、SEM写真
において、各平版印刷版用支持体の表面のピットの内部
には、微細凹凸構造が形成されていることが確認され
た。
【0185】4.平版印刷版用支持体の表面の大凹凸構
造の波長の測定 平版印刷版原版を180゜に曲げて露出させた陽極酸化
皮膜と感熱層の破断面を、日本電子社製のT−20型走
査型電子顕微鏡を用いて、倍率5000倍で観察し、支
持体表面における開口径2μm以上の凹部について、そ
の両端の距離を測定して大凹凸構造の波長とし、20箇
所の凹部についての平均波長を求めた。結果を第1表に
示す。なお、第1表中、「−」は、該当する波長の凹部
がなかったことを示す。
【0186】5.平版印刷版原版の傷付きにくさの評価 上記のようにして得られた平版印刷版原版について、傷
付きにくさの評価を行った。平版印刷版原版の感熱層表
面に合紙を置き、その上下を段ボール紙で挟み、25
℃、50%RHの環境下で3日間放置した。その後、平
版印刷版原版の感熱層表面を木綿製の手袋で5往復擦
り、富士写真フイルム(株)製のPS版用現像液DT−
1を標準使用条件で用いて、自動現像機900NPによ
り現像した。擦った部分が傷付いて白く抜けている程度
を目視で観察して評価した。現像前と全く変化なかった
ものを○、ほぼ支持体が見えてしまい感熱層の色がほと
んど見えなかったものを×、その中間レベルを○△、
△、△×で表した。結果を第1表に示す。
【0187】6.平版印刷版の耐刷性の評価 平版印刷版原版をCREO社製のTrendSette
r3244を用いて版面エネルギー量が141mJ/c
2 となるように像様露光した後、富士写真フイルム
(株)製のPS版用現像液DT−1を標準使用条件で用
いて、自動現像機900NPにより現像した。そうして
得られた平版印刷版を、小森コーポレーション社製のリ
スロン印刷機で、大日本インキ社製のDIC−GEOS
(N)墨のインキと富士写真フイルム(株)社製のエッ
チ液EU−3を1%およびIPAを10%含有する湿し
水とを用いて上質紙に印刷し、ベタ画像の濃度が薄くな
り始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐
刷性を評価した。結果を第1表に示す。
【0188】本発明の平版印刷版原版は、傷付きにく
く、かつ、耐刷性に優れることが分かる(実施例1〜
4)。特に、支持体の表面が少なくとも大中の二重の凹
凸構造を有し、大凹凸構造の波長が3〜10μmであ
り、中凹凸構造がピットである場合(実施例1、3およ
び4)は、傷付きにくさおよび耐刷性のバランスに優れ
ることが分かる。これに対して、平版印刷版用支持体の
表面の見掛け面積に対する実面積の割合が低すぎる場合
(比較例1)は、耐刷性に劣り、かつ、感熱層と支持体
との間ではく離を起こし、傷付きやすい。平版印刷版用
支持体の表面の見掛け面積に対する実面積の割合が高す
ぎる場合(比較例2)は、感熱層が傷付きやすい。ま
た、ピットの平均直径が大きすぎる場合(比較例3)お
よび表面の見掛け面積に対するピットの見掛け面積の割
合が小さすぎる場合(比較例4)は、傷付きやすい。な
お、特定の平版印刷版用支持体上に特定の下層と感熱層
とを順次積層してなる本発明の平版印刷版原版(実施例
1)は、同一の平版印刷版用支持体上に単層の感熱層を
設けてなる平版印刷版原版(比較例5)に比べて、傷付
きにくさの点で大きく優れることが分かる。
【0189】
【表1】
【0190】
【発明の効果】本発明の平版印刷版原版は、傷付きにく
く、通常作業での取り扱いが容易であり、かつ、耐刷性
に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いられる平版印刷版用支持体の作
成における機械粗面化処理に用いられるブラシグレイニ
ングの工程の概念を示す側面図である。
【図2】 本発明に用いられる平版印刷版用支持体の作
成における電気化学的な粗面化処理に用いられる交番波
形電流波形図の一例を示すグラフである。
【図3】 本発明に用いられる平版印刷版用支持体の作
成における電気化学的な粗面化処理に用いられる二つ以
上のラジアルドラムローラを連結した装置の概略構成図
である。
【図4】 本発明に用いられる平版印刷版用支持体の作
成における陽極酸化処理に用いられる二段給電電解法の
陽極酸化処理装置の概略図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム板 2、4 ローラ状ブラシ 3 研磨スラリー液 5、6、7、8 支持ローラ 11 アルミニウム板 12 ラジアルドラムローラ 13a、13b 主極 14 電解処理液 15 電解液供給口 16 スリット 17 電解液通路 18 補助陽極 19a、19b サイリスタ 20 交流電源 40、41 主電解槽 50、51 補助陽極槽 62a 第一給電部 62b 第二給電部 63a 第一電解部 63b 第二電解部 64a、64b ニップローラ 65a 第一給電電極 65b 第二給電電極 66a、66b、66c、66d 電解電極 67a、67b、67c、67d 電源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C25D 11/04 C25D 11/04 E 11/16 301 11/16 301 11/18 312 11/18 312 G03F 7/00 503 G03F 7/00 503 7/004 505 7/004 505 7/032 7/032 7/11 503 7/11 503 Fターム(参考) 2H025 AA12 AA13 AB03 AC08 AD03 CB13 CB14 DA23 DA40 FA03 FA17 2H096 AA00 AA07 AA08 BA11 BA16 BA20 CA03 CA05 EA04 GA08 2H114 AA04 AA10 AA14 AA24 AA30 BA01 BA10 DA04 DA34 DA52 DA53 DA59 EA01 EA02 EA03 FA01 FA06 GA03 GA05 GA08 GA09

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルミニウム板に粗面化処理、アルカリエ
    ッチング処理および陽極酸化処理を施して得られ、表面
    の見掛け面積に対する実面積の割合が1.3〜1.8倍
    であり、平均直径が0.3〜1.0μmのピットを表面
    に有し、表面の見掛け面積に対する該ピットの見掛け面
    積の割合が90%以上である平版印刷版用支持体上に、
    水不溶性かつアルカリ可溶性の樹脂を含有する下層と、
    水不溶性かつアルカリ可溶性の樹脂と光熱変換材料とを
    含有し、加熱によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が
    増大する感熱層とを順次積層してなる平版印刷版原版。
  2. 【請求項2】前記平版印刷版用支持体が、表面が少なく
    とも大中の二重の凹凸構造を有し、大凹凸構造の波長が
    3〜10μmであり、中凹凸構造が前記ピットであるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
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