JP2002322008A - 植物生長調節剤 - Google Patents

植物生長調節剤

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JP2002322008A
JP2002322008A JP2001127929A JP2001127929A JP2002322008A JP 2002322008 A JP2002322008 A JP 2002322008A JP 2001127929 A JP2001127929 A JP 2001127929A JP 2001127929 A JP2001127929 A JP 2001127929A JP 2002322008 A JP2002322008 A JP 2002322008A
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iodine
cyclodextrin
plant growth
plant
growth regulator
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JP2001127929A
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Hisashi Suzuki
久之 鈴木
Iwao Tate
巌 舘
Keiji Terao
啓二 寺尾
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Nippoh Chemicals Co Ltd
Original Assignee
Nippoh Chemicals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 入手性が容易で、施用方法も簡便で、かつ植
物に対して広い作用スペクトルを有する植物生長調節
剤、ならびにこのような植物生長調節剤を用いた植物の
生長促進方法、植物の病気の予防方法および果実の糖度
の増加方法を提供する。 【解決手段】 ヨウ素−シクロデキストリン包接化物全
質量に対して、5〜35質量%のヨウ素を含有するヨウ
素−シクロデキストリン包接化物を含む植物生長調節
剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物生長調節剤、
ならびにそれを用いた植物の生長促進方法、植物の病気
の予防方法および果実の糖度の増加方法に関するもので
ある。詳しくは、本発明は、ヨウ素−シクロデキストリ
ン包接化物を有効成分として含有する植物生長調節剤、
具体的には植物生長促進剤、種子処理剤、種子コート
剤、発芽促進剤、生長補助剤、収穫向上剤、光合成促進
剤、病原菌抑制剤、糖度向上剤、茎葉処理剤、灌注処理
剤および肥料組成物等、ならびにそれを用いた植物の生
長促進方法、植物の病気の予防方法および果実の糖度の
増加方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】植物の様々な生理現象に影響を与える物
質を総称して、植物生長調節物質と呼んでおり、例え
ば、植物の生長を促進させる植物生長促進剤、種子処理
剤、種子コート剤、発芽促進剤、生長補助剤、収穫向上
剤、光合成促進剤、病原菌抑制剤、糖度向上剤、茎葉処
理剤などがこれに含まれる。また、これらの中には、高
等植物に広く分布し、それらの基本的な生理現象を微量
で制御している植物ホルモンをはじめ、植物ホルモンと
して認められていないが自然界に存在し植物に対して種
々の生理活性を示す物質や、農業生産面で作物などの生
理現象の制御に用いられている植物化学調節剤など、応
用面で重要な物質群も含まれている。
【0003】人類は、その生存を維持するために必要な
食料を確保するために、意識的に高等植物を栽培するよ
うになり、今日に至るまで農業が盛んに行なわれてい
る。この過程で、人類は高等植物の示す生理現象を巧み
に利用し、その生産性を高めてきたが、この農業生産の
場で見出された知識や技術が、生物学、植物生理学、植
物病理学などの研究分野に、重大なかつ示唆に富んだ問
題を提起してきた。例えば、かつて稲作の重要な病害で
あったイネ馬鹿苗病の病原性を追究していく過程で、植
物ホルモンの一種であるジベレリンが発見され、また、
生長抑制型の植物ホルモンであるアブシジン酸はワタの
幼果の落果を促進する物質として単離されたものであ
る。さらに、最も構造の簡単な植物ホルモンであるエチ
レンは、果実の登・成熟という問題のなかからその重要
性が認められたものである。
【0004】このように、多種多様の植物生長調節物質
が農業生産の場から見出されたばかりでなく、植物の生
理現象に関与する物質についての知識の蓄積はそれらの
農業面への応用へと発展してきている。
【0005】しかしながら、上記したように植物ホルモ
ンを植物生長調節剤として用いる場合には、植物ホルモ
ンを植物を抽出・単離・精製することによって一般的に
得るが、このような方法では植物ホルモンは微量でしか
得られない。また、このような問題を克服するために、
植物ホルモンを化学的合成方法によって製造することが
考えられるが、この場合でも化学的合成方法は多工程を
要するものが多く、副生成物によっては安全性などに問
題が生じる。このような欠点に加えて、植物ホルモン
は、植物の一部にのみ特異的に発現して作用したり、施
用する時期、量及び方法等により植物ホルモンの作用機
序が異なる場合があり、実用性に欠けるという問題もあ
った。例えば、アブシジン酸は、冬芽等の植物の休眠現
象の誘導、葉や果実の脱離、気孔の開閉の制御、離層形
成に関与しており、この他に、細胞***の誘起、細胞増
殖の促進及び不定芽形成の促進等が知られているが、特
定の植物種でのみ見られる効果も多い。不定芽形成にお
いては、形態異常の抑制や休眠の誘起が知られており、
人工種子の作製時において有益であると考えられてい
る。また、アブシジン酸で処理された培養細胞は、耐凍
性を示すことが報告されており、細胞、組織、種子、球
根および幼苗等の長期保存への利用が考えられている。
しかしながら、アブシジン酸の化学合成が困難であり高
価なため、一般的に利用されるには至っていない。
【0006】したがって、このような経緯から、入手性
が容易で、施用方法も簡便で、かつ植物に対して広い作
用スペクトルを有する植物生長調節剤の開発は、長く植
物関係者から強く望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、入手性が容易で、施用方法も簡便で、かつ植物
に対して広い作用スペクトルを有する植物生長調節剤を
提供することである。
【0008】本発明の他の目的は、このような植物生長
調節剤を用いた植物の生長促進方法、植物の病気の予防
方法および果実の糖度の増加方法を提供することであ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ヨウ素に
対するシクロデキストリン量を適宜調整してシクロデキ
ストリン中にヨウ素を包接したヨウ素−シクロデキスト
リン包接化物について詳細に検討した結果、ヨウ素−シ
クロデキストリン包接化物は、特異の臭気や刺激性を持
たず、またこのようなヨウ素−シクロデキストリン包接
化物を含む溶液中に予め浸漬した植物の種子は無処理の
ものに比して、発芽は抑制されるものの、発芽後はより
迅速にかつより多くの収穫量で生育すること、およびヨ
ウ素−シクロデキストリン包接化物を含む溶液を噴霧し
ながら生育させた植物は噴霧されないものに比して良好
に生育することを見出した。
【0010】本発明者らはまた、ヨウ素−シクロデキス
トリン包接化物は水などに溶解されると中に包接された
ヨウ素と水分子とが置換して、ヨウ素が水中に遊離し、
これにより細菌等に対して強い殺菌・抗菌特性を発揮で
き、これにより子嚢菌類ウドンコカビ科の病原菌による
うどんこ病が有効に予防できることをも知得した。
【0011】本発明者らはさらに、このようなヨウ素−
シクロデキストリン包接化物は、不安定で長期保存に適
さないヨウ素が長期間安定した形態で包接している上、
極めて広範囲に異なるヨウ素量を含有しているため、ヨ
ウ素の本来の機能である抗菌・防黴効果に加えてシクロ
デキストリンの本来の機能である消臭効果をヨウ素とシ
クロデキストリンの混合比率によって適宜調節できるた
め、重炭酸カリウムなどと組合わせて土壌に混合するこ
とにより、シクロデキストリンにより土壌に何等異臭を
はなたずに、重炭酸カリウムが本来有している光合成促
進効果や病原菌抑制効果を相乗的に合わせ持った植物の
生長補助作用を発揮できることをも見出した。
【0012】本発明者らは、上記知見に加えて、ヨウ素
−シクロデキストリン包接化物を含む溶液を花やその周
辺の葉に噴霧しながら生育させると、その果実の甘味
(糖度)や甘味比が有意に増すことを見出した。
【0013】上記知見に基づいて、本発明は完成される
に至った。
【0014】すなわち、上記諸目的は、下記(1)〜
(14)によって達成される。
【0015】(1) ヨウ素−シクロデキストリン包接
化物全質量に対して、5〜35質量%のヨウ素を含有す
るヨウ素−シクロデキストリン包接化物を含む植物生長
調節剤。
【0016】(2) ヨウ素−シクロデキストリン包接
化物におけるヨウ素の含有量が、ヨウ素−シクロデキス
トリン包接化物全質量に対して、19〜25質量%であ
る、前記(1)記載の植物生長調節剤。
【0017】(3) 前記シクロデキストリンは、α−
シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シ
クロデキストリン及びこれらの化学修飾体からなる群よ
り選ばれる少なくとも1種である、前記(1)または
(2)記載の植物生長調節剤。
【0018】(4) 前記シクロデキストリンは、β−
シクロデキストリン及びこれらの化学修飾体からなる群
より選ばれる少なくとも1種である、前記(3)記載の
植物生長調節剤。
【0019】(5) 前記ヨウ素−シクロデキストリン
包接化物は、ヨウ素をヨウ素溶解助剤含有溶液中に、ヨ
ウ素1モル:ヨウ素溶解助剤1.5〜5モルの割合で溶
解した後、これにヨウ素1モルに対して0.42〜4.
2モルのシクロデキストリンを添加してヨウ素−デキス
トリン包接化合物を析出させることによって製造され
る、前記(1)〜(4)のいずれか一に記載の植物生長
調節剤。
【0020】(6) 前記ヨウ素−シクロデキストリン
包接化物は、シクロデキストリンを添加して得たスラリ
ーを温度80〜100℃に加熱した後に冷却して前記ヨ
ウ素−デキストリン包接化合物を析出させることによっ
て製造される、前記(1)〜(5)のいずれか一に記載
の植物生長調節剤。
【0021】(7) 前記ヨウ素溶解助剤は、水素原子
またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属とハロゲン
原子とのハロゲン化物である、前記(5)または(6)
に記載の植物生長調節剤。
【0022】(8) 前記ハロゲン原子は、塩素、臭素
またはヨウ素である、前記(7)に記載の植物生長調節
剤。
【0023】(9) 前記ハロゲン化物は、ヨウ化ナト
リウムまたはヨウ化カリウムである、前記(7)に記載
の植物生長調節剤。
【0024】(10) 前記(1)〜(9)のいずれか
一に記載の植物生長調節剤を含む溶液中に植物の種子を
予め浸漬することからなる、植物の生長促進方法。
【0025】(11) 前記(1)〜(9)のいずれか
一に記載の植物生長調節剤を含む溶液を、植物を生育さ
せる土壌または植物の茎、葉若しくは根元に噴霧するこ
とからなる、植物の生長促進方法。
【0026】(12) 前記(1)〜(9)のいずれか
一に記載の植物生長調節剤を含む溶液を、植物を生育さ
せる土壌または植物の茎、葉若しくは根元に噴霧するこ
とからなる、果実の糖度の増加方法。
【0027】(13) ヨウ素−シクロデキストリン包
接化物全質量に対して、5〜35質量%のヨウ素を含有
するヨウ素−シクロデキストリン包接化物を含む収穫向
上剤。
【0028】(14) 穀物類の収穫の向上に使用され
る、前記(13)に記載の収穫向上剤。
【0029】
【発明の実施の形態】本発明の第一は、ヨウ素−シクロ
デキストリン包接化物全質量に対して、5〜35質量
%、特に好ましくは19〜25質量%のヨウ素を含有す
るヨウ素−シクロデキストリン包接化物を含む植物生長
調節剤である。
【0030】本発明の第一の植物生長調節剤は、ヨウ素
の包接量の保持および放出の制御が容易であり、用途に
応じてヨウ素及びシクロデキストリンの存在比を適宜調
節して、所望とする効果、例えば、植物の生長促進効
果、病気の予防効果や果実の糖度の増加効果を調整する
ことができる。なお、本発明によるヨウ素−シクロデキ
ストリン包接化物は、シクロデキストリンの添加量を調
整することで所望の包接量のヨウ素−シクロデキストリ
ン包接化物が得られ、ヨウ素の包接量によって着色の程
度には若干の相違があるもの、いずれもヨウ素特有の臭
気はほとんど持たないので、土壌などに混合されてもヨ
ウ素特有の臭気は発生しない。
【0031】また、本発明の第一の植物生長調節剤は、
哺乳動物においては必須栄養素の一つであるヨウ素及び
食品添加物として認可されているシクロデキストリンか
らなるヨウ素−シクロデキストリン包接化物を含むた
め、ヨウ素−シクロデキストリン包接化物は高い安全性
を有するものである。したがって、本発明によるヨウ素
−シクロデキストリン包接化物、水などとの接触により
これから放出されたヨウ素またはシクロデキストリンが
植物中に吸収されたとしても、その植物はヒトやウシ、
ブタ、ヒツジ等の哺乳動物やニワトリ等の家畜により安
全に食されることができ、さらにこのような植物を食し
た家畜(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリなど)
の肉も安全に食することができる。
【0032】本明細書において、「植物生長調節剤」と
は、上記したように、植物の様々な生理現象に影響を与
える物質を意味し、例えば、植物生長促進剤、種子処理
剤、種子コート剤、発芽促進剤、生長補助剤、収穫向上
剤、光合成促進剤、病原菌抑制剤、糖度向上剤、茎葉処
理剤、灌注処理剤および肥料組成物などを包含する。
【0033】本発明によるヨウ素−シクロデキストリン
包接化物は、特定の割合のヨウ素及びシクロデキストリ
ンからなるものである。この際、ヨウ素は、特に制限さ
れるものではなく、市販品をそのまま使用しても;ヨウ
化カリウムと重クロム酸カリウムとを加熱蒸留する若し
くはヨウ化カリウム溶液を硫酸銅溶液で酸化することに
よる等の合成によって得ても;海藻を焼いた灰の中に存
在するヨウ化物を電解する、酸化マンガン(IV)と硫
酸とを加えて酸化する若しくは塩素を通じて酸化するこ
とによって得ても;またはチリ硝石若しくは鉱泉中に含
まれるヨウ素酸塩を亜硫酸水素ナトリウムで還元する、
若しくは亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸銅を用いてヨウ
化銅(I)の形態として沈殿させ、これを酸化マンガン
(IV)及び硫酸、若しくは酸化鉄(III)及び硫酸
を用いて酸化するなどの公知の方法によって製造しても
よい。
【0034】また、本発明によるヨウ素−シクロデキス
トリン包接化物において、シクロデキストリンもまた、
特に制限されるものではなく、市販品をそのまま使用し
ても、またはデンプンにBacillus macerans由来のアミ
ラーゼを作用させることなどの公知の方法によって製造
してもよい。なお、本明細書において、「シクロデキス
トリン」は、それぞれ6、7及び8個の環状α−(1→
4)結合したD−グルコピラノース単位から構成される
α−、β−及びγ−シクロデキストリンを包含するのみ
ならず、例えば、メチル体、プロピル体、モノアセチル
体、トリアセチル体及びモノクロロトリアジニル体等
の、これらの化学修飾体をも包含するものである。本発
明において使用されるシクロデキストリンの市販品の具
体例としては、CAVAMAX W6及びCAVAMAX W6 Pharma(い
ずれも、ワッカーケミカルズ イーストアジア株式会社
製)として市販されるα−シクロデキストリン;CAVAMA
X W7及びCAVAMAX W7 PHARMA(いずれも、ワッカーケミ
カルズ イーストアジア株式会社製)として市販される
β−シクロデキストリン;CAVAMAX W8、CAVAMAX W8 Foo
d及びCAVAMAX W8 Pharma(いずれも、ワッカーケミカル
ズ イーストアジア株式会社製)として市販されるγ−
シクロデキストリン;CAVASOL W7 M、CAVASOLW7 M Phar
ma及びCAVASOL W7 M TL(いずれも、ワッカーケミカル
ズ イーストアジア株式会社製)として市販されるメチ
ル−β−シクロデキストリン;CAVASOLW7 HP及びCAVASO
L W7 HP Pharma(いずれも、ワッカーケミカルズ イー
ストアジア株式会社製)として市販されるヒドロキシプ
ロピル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 A(いず
れも、ワッカーケミカルズ イーストアジア株式会社
製)として市販されるモノアセチル−β−シクロデキス
トリン;CAVASOL W7 TA(いずれも、ワッカーケミカル
ズ イーストアジア株式会社製)として市販されるトリ
アセチル−β−シクロデキストリン;ならびにCAVASOL
W7 MCT(いずれも、ワッカーケミカルズ イーストアジ
ア株式会社製)として市販されるモノクロロトリアジニ
ル−β−シクロデキストリンなどが挙げられる。これら
のうち、安全性などを考慮すると、食品添加物として認
可されるβ−シクロデキストリン及びγ−シクロデキス
トリンならびにこれらの化学修飾体が好ましく使用さ
れ、特にヨウ素−シクロデキストリン包接化物内へのヨ
ウ素の包接量の調整が容易である点を考慮すると、β−
シクロデキストリン及びこの化学修飾体がシクロデキス
トリンとして最も好ましく使用される。
【0035】また、本発明の第一において、ヨウ素−シ
クロデキストリン包接化物は、ヨウ素−シクロデキスト
リン包接化物全質量に対して、5〜35質量%のヨウ素
を含有するものであるが、好ましくはヨウ素の含有量
は、ヨウ素−シクロデキストリン包接化物全質量に対し
て、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは19
〜25質量%である。なお、「ヨウ素−シクロデキスト
リン包接化物全質量に対して、19〜25質量%のヨウ
素を含有するヨウ素−シクロデキストリン包接化物」と
は、ヨウ素をシクロデキストリン中に、ヨウ素1モル:
シクロデキストリン0.67〜1モルの割合で包接され
るヨウ素−シクロデキストリン包接化物に相当する。
【0036】本発明において、ヨウ素−シクロデキスト
リン包接化物の製造方法は、本発明の第一の植物生長調
節剤で好適に使用されるヨウ素−シクロデキストリン包
接化物が製造できる方法であれば特に制限されるもので
はなく、公知の方法またはこれらの組合わせが同様にし
て使用できる。以下、本発明によるヨウ素−シクロデキ
ストリン包接化物の製造方法の好ましい一実施態様を説
明するが、本発明は下記実施態様に限定されるものでは
ないことはいうまでもない。
【0037】すなわち、ヨウ素をヨウ素溶解助剤含有溶
液中に、ヨウ素1モル:ヨウ素溶解助剤1.5〜5モル
の割合で溶解した後、これにヨウ素1モルに対して0.
42〜4.2モルのシクロデキストリンを添加してヨウ
素−デキストリン包接化合物を析出させることによっ
て、ヨウ素−シクロデキストリン包接化物を製造する。
【0038】上記実施態様では、ヨウ素(I2)1モル
に対してヨウ素溶解助剤を1.5〜5モル使用してヨウ
素を溶解させる。このように、ヨウ素溶解助剤の使用量
をヨウ素の1.5モル比以上5モル比以下という一定範
囲内に調節することによって、従来(例えば、ヨウ素溶
解助剤1モルに対して1モルのヨウ素を溶解した場合、
常温で2日以上)に比して、短時間で(例えば、常温で
30〜60分)ヨウ素を全て溶解することができる。
【0039】また、従来では、例えば、ヨウ素溶解助剤
1モルに対して1モルのヨウ素を溶解した溶液にシクロ
デキストリンを添加した場合のヨウ素の包接量も不明で
あったため、例えば、ヨウ素溶解助剤としてヨウ化カリ
ウムを使用した場合には、KIとI2によってKI3が形
成され、これがそのままシクロデキストリン内に包接さ
れると考えることもできた。これに対して、ヨウ素とヨ
ウ素溶解助剤量を上記範囲に調整して溶解し、これにシ
クロデキストリンを添加すると、結果的にI2がシクロ
デキストリンに包接されることが判明した。しかも、ヨ
ウ素とシクロデキストリンの包接量は等モルに限られ
ず、シクロデキストリン量を調整することによって、ヨ
ウ素をシクロデキストリン内に包接される量を制御でき
ることが判明したのである。すなわち、ヨウ素とβ−シ
クロデキストリンとが等モル比である場合には、ヨウ素
の最高濃度が、約18.3質量%[I2/(シクロデキ
ストリン+I2)]となるはずであるが、上記実施態様
によれば、19質量%を超えるヨウ素含量のヨウ素−シ
クロデキストリン包接化物が得られるのである。しかも
該ヨウ素−シクロデキストリン包接化物は、ヨウ素特有
の臭気を持たないものである。このようなことは従来全
く知られていなかったことである。この理由については
明確でないが、従来と異なり、シクロデキストリン1モ
ルに対して1モルのヨウ素がそのまま包接される場合に
限られず、例えば2モルのシクロデキストリンが互いに
向き合ってより大きな籠状体を形成し、この中にヨウ素
が3モル包接される場合が考えられる。
【0040】このようなヨウ素溶解助剤としては、水素
原子、またはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアル
カリ金属、またはマグネシウム、カルシウム、バリウム
などのアルカリ土類金属と、フッ素、塩素、臭素、ヨウ
素などのハロゲン原子とのハロゲン化物が好ましく、該
ハロゲン原子が塩素、臭素またはヨウ素であることがよ
り好ましい。このようなヨウ素溶解助剤としては、塩
酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ヨウ化ナトリウム、ヨ
ウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウ
ム、ヨウ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、
塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、臭
化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化
カルシウム、臭化バリウム等が挙げられる。これらのう
ち、ヨウ素の溶解性に優れる点で、ヨウ化ナトリウムま
たはヨウ化カリウムを使用することが好ましい。上記ヨ
ウ素溶解助剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上
の混合物の形態で使用されてもよいが、好ましくは単独
で使用される。
【0041】上記実施態様では、ヨウ素溶解助剤をヨウ
素の1.5〜5モル倍、より好ましくは1.5〜3.0
モル倍、特に好ましくは1.8〜2.2モル倍の量で使
用される。この際、ヨウ素溶解助剤の使用量がヨウ素の
1.5モル倍を下回ると、ヨウ素の溶解性に劣り、その
一方、ヨウ素の5モル倍を超えてもヨウ素の溶解性に変
化が少なく経済的に好ましくない。
【0042】上記実施態様では、上記範囲でヨウ素を溶
解したヨウ素溶解助剤含有溶液に、ヨウ素1モルに対し
て0.42〜4.2モルのシクロデキストリンを添加す
る。従来ではシクロデキストリンに対するヨウ素の包接
量は等モルと考えられていたが、上記実施態様によるよ
うにシクロデキストリンの添加量を調整することによっ
て、ヨウ素の包接量を広範囲に制御できることが判明し
た。シクロデキストリンの添加量は、ヨウ素1モルに対
して、より好ましくは0.5〜2モル、特に好ましくは
0.67〜1モルである。この際、シクロデキストリン
の添加量が4.2モルを超えても、得られたヨウ素−シ
クロデキストリン包接化物内のヨウ素の包接量が少なく
なり、その一方、0.42モルを下回っても包接量を更
に増加させることが困難だからである。なお、シクロデ
キストリンを添加すると目的物たるヨウ素−シクロデキ
ストリン包接化物がスラリー中に析出するが、溶解を促
進するために撹拌することが好ましい。なお、溶液中に
析出したヨウ素−シクロデキストリン包接化物は沈殿す
るため、これを瀘別し、または遠心分離などによって分
取し、乾燥するとヨウ素−シクロデキストリン包接化物
を結晶又は粉末状で得ることができる。
【0043】この遠心分離は、目的物を分離できればよ
く、一般には400〜900Gで、10〜40分、より
好ましくは500〜800Gで、20〜50分、特に好
ましくは600〜700Gで、30〜60分である。
【0044】一方、上記実施態様では、シクロデキスト
リンを添加した溶液を80〜100℃の温度に加温する
と、その後の沈殿物のダイラタンシーを極めて効果的に
抑制できることが判明した。シクロデキストリンを添加
した溶液を、より好ましくは85〜95℃、特に好まし
くは88〜92℃の温度に加温する。該温度が80℃未
満の場合には、加熱による効果が十分でなく、ダイラタ
ンシーの抑制が不十分である。その一方、該温度が10
0℃より高い場合には、蒸発したヨウ素蒸気が器壁にふ
れて冷却されヨウ素が析出固着し操作に支障をきたす。
ダイラタンシーは、比較的大きい粒子のペーストが、急
激な強い外力の作用で液体を内部に吸い込んで膨脹し固
化する現象であり、外力を除けば再び流動性を回復す
る。すなわち、粒子のパッキング状態が急激な外力によ
って一時的に変わることから起こる現象である。上記加
温処理を怠ると、ヨウ素−シクロデキストリン包接化物
を分離する際にヨウ素−シクロデキストリン包接化物の
湿ケーキのダイラタンシーを起こし容易にサラサラの湿
結晶を得ることができないばかりか、このまま乾燥機で
乾燥すると大きなインゴットとなり多大な手間が必要と
なる。このため、単に加熱処理を行うだけで次工程の操
作が簡便になることは、生産効率の向上に対する貢献度
が高い処理といえる。
【0045】このような加熱は、反応器外周を加熱ジャ
ケットで被覆し、これに上記液温となるように熱媒を循
環させるなどの方法で容易に行うことができる。この加
熱時間は、該高温になってから0〜3時間、より好まし
くは0〜2時間、特には、0〜1時間である。3時間を
超えてもダイラタンシー抑制効果に変化が少なく、生産
効率をおとす。
【0046】また、加熱後の析出物を含むスラリーは、
沈殿物を析出させるために、0〜40℃、より好ましく
は5〜30℃、特に好ましくは10〜20℃の温度にま
で冷却する。冷却後に得た析出物は、上記と同様に遠心
分離によって分取することができる。また、分取後の析
出物を水洗してもよく、付着するヨウ素やヨウ素溶解助
剤を除去することができる。
【0047】上記実施態様では、更に、該ヨウ素−デキ
ストリン包接化合物を析出させて得た分離液を、ヨウ素
溶解助剤含有溶液として再使用することができ、これは
環境上及び経済上の観点から好ましいことである。上記
のように、上記実施態様ではヨウ素とヨウ素溶解助剤と
を特定範囲で溶解し、これにシクロデキストリンを所望
量添加することによって、所望の包接量のヨウ素を包接
するヨウ素−シクロデキストリン包接化物を得ることが
できる。この際重要なことは、該ヨウ素−シクロデキス
トリン包接化物は、シクロデキストリン内にヨウ素のみ
を包接するものであることが明確となり、これはヨウ素
の包接量やヨウ素溶解助剤の使用量によっても変化しな
いのである。このことによって、上記析出物を分取した
後の分離液には、ヨウ素−シクロデキストリン包接化物
の製造工程の当初に添加したのと同量のヨウ素溶解助剤
が含まれることが判明し、よってこれを連続的な製造工
程で再利用すると、新たにヨウ素とシクロデキストリン
とを供給するだけで、極めて生産性の高いヨウ素−シク
ロデキストリン包接化物を製造できるのである。しか
も、上記のように、シクロデキストリンに対するヨウ素
の包接量は、ヨウ素溶解助剤の使用量には何ら影響を生
じないため、同一ラインで、添加するシクロデキストリ
ン量を変化させるだけで、異なる包接量のヨウ素−シク
ロデキストリン包接化物を製造することができるのであ
る。
【0048】本発明の第一の植物生長調節剤は、上記し
たようにしてヨウ素−シクロデキストリン包接化物全質
量に対して、5〜35質量%のヨウ素を含有するように
して製造されるヨウ素−シクロデキストリン包接化物を
必須成分として含むものである。この際、本発明の第一
の植物生長調節剤は、ヨウ素−シクロデキストリン包接
化物のみからなるものであってもあるいは他の成分をさ
らに含むものであってもよい。後者の場合、ヨウ素−シ
クロデキストリン包接化物の含有量は、植物生長調節剤
の全質量に対して、10〜90質量%、好ましくは50
〜80質量%である。この際、ヨウ素−シクロデキスト
リン包接化物の含有量が10質量%未満であると、本発
明によるヨウ素−シクロデキストリン包接化物による植
物の生長促進効果、病気の予防効果や果実の糖度の増加
効果が十分発揮されず、好ましくない。
【0049】また、本発明の植物生長調節剤中に添加さ
れてもよい他の成分としては、ビタミンA、B、C、
D、E、K等のビタミン類;セルロース、デンプン、イ
ヌリン等の糖類;ロイシン、イソロイシン、バリン、ス
レオニン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、ト
リプトファン、ヒスチジン等のアミノ酸類;DNA、R
NA等の核酸類;有機酸類;アルコール;窒素、リン、
リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオ
ウ、鉄、銅、マンガン、亜鉛、塩素、ホウ素、モリブデ
ン、モリブデン酸、珪素、コバルト、ナトリウム等の他
の肥料成分;ラクトース、デキストロース、スクロー
ス、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシア
ゴム、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビ
ニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセ
ルロースなどの賦形剤;希釈剤、充填剤、担体、タル
ク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油等の潤滑剤、湿
潤剤、乳化剤、懸濁剤、ヒドロキシ安息香酸メチル及び
ヒドロキシ安息香酸プロピル等の防腐剤、甘味剤ならび
に着香料などが挙げられる。また、本発明の植物生長調
節剤は、例えば、うどんこ病等の植物の病気の予防を目
的として使用される場合には、必要であれば、ペニシリ
ン系、セフェム系、カルバペネム系及びモノバクタム系
抗生物質等のβ−ラクタム系抗生物質、アミノグリコシ
ド系抗生物質、マクロライド系抗生物質、テトラサイク
リン系抗生物質、クロラムフェニコール、リンコマイシ
ン、ホスホマイシンならびにペプチド系抗生物質など
の、他の公知の抗生物質を含んでいてもよい。これらの
他の成分は、単独で添加されてもあるいは2種以上の混
合物の形態で添加されてもよい。
【0050】また、本発明の植物生長調節剤は、植物ホ
ルモン、殺菌剤、殺虫剤、殺鼠、除草剤、誘引剤、忌避
剤、化学不妊剤、補助剤などの農薬や堆肥、厩肥、下
肥、緑肥など有機質の自給肥料、無機質の化学肥料、金
肥、窒素肥料、燐酸肥料、カリ肥料、珪酸肥料、石灰肥
料、複合肥料、アルカリ性肥料、酸性肥料等の肥料と併
用されてもよい。
【0051】本発明の植物生長調節剤は、特に限定する
ものではないが、葉面散布処理、根元散布処理、土壌混
合処理、土壌潅注処理、種子への処理、水耕栽培、組織
培養用の培養液への添加処理等により植物に適用でき
る。
【0052】本発明の植物生長調節剤の使用形態は、植
物の種類、適用する目的(例えば、発芽促進作用、生長
促進作用、生長補助作用、収穫向上作用、光合成促進作
用、病原菌抑制作用、糖度向上作用など)などによって
異なり、固形物であってもあるいは水溶液などの溶液の
形態であってもよい。より具体的には、乳剤(有機溶媒
に溶かし、界面活性剤を加えた液状の製剤で水で希釈す
ると乳濁液になる)、水和剤(粘土鉱物や界面活性剤と混
合した粉末状の製剤。懸濁液となる)、水溶剤(水溶性の
有効成分を増量剤と界面活性剤に混合した粉末状の製
剤。水溶液になる)、溶剤(油溶性の有効成分を増量剤と
界面活性剤に混合した粉末状の製剤。溶液になる)、粉
剤(粘土鉱物と混合した製剤)、粒剤(粘土鉱物と混合し
て粒状に成形した製剤)、錠剤、及び油剤などが挙げら
れる。
【0053】また、本発明において、植物生長調節剤の
使用量は、植物の種類、使用形態(例えば、塗布、噴
霧、葉面散布、土壌散布など)、適用する目的(例え
ば、発芽促進作用、生長促進作用、生長補助作用、収穫
向上作用、光合成促進作用、病原菌抑制作用、糖度向上
作用など)などによって異なり、例えば、本発明の植物
生長調節剤を水溶液の形態で使用する場合には、植物生
長調節剤は、0.1〜20mg/ml、好ましくは5〜
10mg/mlの濃度で使用される。また、本発明の植
物生長調節剤を土壌中に使用する場合には、ヨウ素−シ
クロデキストリン包接化物が0.1〜2kg/反、好ま
しくは0.5〜1kg/反、土壌に混合される(固形物
を土壌に混合する場合に加えて、茎葉に散布したり、こ
の水溶液などを土壌に灌注する場合などを含む)ような
量で適用できる。
【0054】本発明の植物生長調節剤の適用対象となる
植物は、特に限定するものではなく、草または木のいず
れであってもよく、すべての植物に適用できるが、例え
ば、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバク、ヒ
エ、アワ、トウモロコシ、モロコシ、ダイズ、アズキ、
エンドウ、ラッカセイ、インゲン、ソラマメ、ナタマ
メ、ササゲ、フジマメ、エダマメ等の穀物類;タケノ
コ、大根、牛蒡、人参、しょうが等の根菜類;ほうれん
草、レタス、キャベツ、ネギ、白菜、セロリ、パセリ、
おおば、ミョウガ、シュンギク、小松菜等の葉菜類;
桃、イチゴ、レモン、夏甘、青ウメ、ビワ、リンゴ、
梨、スイカ、メロン、柿、無花果、葡萄、グレープフル
ーツ、マンゴー、みかん等の果樹類;パンジー、ユリ、
チューリップ、花菖蒲、ボタン、シクラメン、バラ等の
花卉類;コウライシバ、ベントシバ、オニシバ等の芝
類;インドゴムノキ、クロトン、ドラセナ、アナナス
類、ヤシ、モンステラ、ヤシ、ベンジャミン、フェニッ
クス、ベゴニア、ポインセチア、アンスリウム等の観葉
植物;トマト、キュウリ、ヘチマ、ウリ、ムキインド
ウ、ピーマン、オクラ、ナス、カボチャ、インゲン、ア
スパラガス、ブロッコリー、カリフラワー、モロヘイ
ヤ、枝豆などが挙げられる。特に植物生長調節剤が収穫
向上剤である場合には、穀物類、特に好ましくはイネ、
コムギやオオムギの収穫を向上するのに好ましく使用さ
れる。
【0055】本発明において、植物生長調節剤の施用時
期は、播種前、播種時、苗、成長期、開花期および成熟
期等、特に限定されるものではない。
【0056】本発明の植物生長調節剤はまた、加熱(加
温)などによりヨウ素−シクロデキストリン包接化物中
に含まれるヨウ素の残存量を制御することができる。こ
れは、土壌中などに本発明の植物生長調節剤/その溶液
を予め混合/噴霧した後、太陽熱などで土壌の温度が上
昇すると、植物生長調節剤におけるヨウ素−シクロデキ
ストリン包接化物からのヨウ素の放出量を増す。このよ
うな現象を利用して、土壌の温度を適宜制御することに
よって、植物の生長がより効率良く促進されたり、果実
の糖度を改善したり、さらにはヨウ素による優れた殺菌
・防黴効果を発揮させて、細菌や黴などによる植物の病
気が有効に防止できるものである。上記利点に加えて、
ヨウ素−シクロデキストリン包接化物の他方の成分であ
るシクロデキストリンによる消臭効果により、長期間貯
蔵された後であっても土壌や植物の茎、葉若しくは根元
には異臭が少ないまたは全くしない。
【0057】このように、温度制御によりヨウ素−シク
ロデキストリン包接化物中からのヨウ素の放出量(即
ち、ヨウ素−シクロデキストリン包接化物中のヨウ素の
残存量)を制御してもよい。この場合の土壌の温度は、
ヨウ素が土壌に所望の特性、例えば、殺菌・防黴腐特性
を付与できる程度には放出されるが土壌の臭いには影響
を与えない程度であるような条件であれば、特に制限さ
れるものではない。具体的には、土壌温度は、20〜7
0℃、特に好ましくは40〜60℃である。このような
土壌温度を達成する手段としては、特に制限されない
が、例えば、夏場であれば圃場表面をマルチフィルム等
のフィルムで覆い太陽熱を利用して土壌温度を上昇させ
る方法;予め土壌中に埋設した配管にスチームまたは加
熱ガスを導入することにより土壌温度を上昇させる方
法;および土壌に石灰窒素と有機物を添加して発酵熱や
水分との接触による発熱作用を利用して土壌温度を上昇
させる方法などが挙げられる。
【0058】本発明の植物生長調節剤、特に必須成分と
して含まれるヨウ素−シクロデキストリン包接化物に
は、下記実施例でより詳細に述べるように、種子からの
植物の生長を促進する効果があることが判明した。した
がって、本発明の第二は、本発明の第一の植物生長調節
剤を含む溶液中に植物の種子を予め浸漬することからな
る、および/または本発明の第一の植物生長調節剤を含
む溶液を、植物を生育させる土壌または植物の茎、葉若
しくは根元に噴霧することからなる、植物の生長促進方
法である。本発明においては、上記種子の浸漬及び溶液
の噴霧は双方とも、植物の生長を効率良く促進できるた
め、上記2工程を単独で使用してもあるいは上記2工程
を組合わせて使用してもよい。
【0059】本発明において、植物生長調節剤は、溶剤
中に溶解、分散または懸濁されて、植物生長調節剤を含
む溶液(分散液、懸濁液を含む)が調製されるが、ヨウ
素−シクロデキストリン包接化物が種子と均一にかつ最
大限に接触できることを考慮すると、植物生長調節剤を
溶剤中に溶解することが好ましい。この際使用できる溶
剤としては、植物生長調節剤を溶解できるものであれば
特に制限されないが、水;メタノール、エタノール、イ
ソプロピルアルコール等のアルコールなどが挙げられ
る。これらのうち、水が特に好ましい。これは、水が存
在すると、ヨウ素−シクロデキストリン包接化物から一
部のヨウ素が放出して土壌中に遊離し、または茎、葉若
しくは根表面に吸収されて、その結果、土壌へは臭い等
の影響を与えずに微量のヨウ素が水分子と置換されて放
出され、これにより、植物の生長促進効果、抗菌・防黴
特性(病気の予防効果)や糖度の向上効果が発揮される
からである。この際、水分は、土壌中に本来含まれるあ
るいは一般的に植物の育種を目的として添加される水分
で十分であり、特にこれを目的として外部より別途添加
する必要はないが、必要であれば、適宜水を加えてもよ
い。なお、上記したように土壌の加温中には水が存在し
ない場合であっても、微量ではあるが、加温処理などに
より、ヨウ素が当該包接物から適宜放出されて、これに
よりやはり植物の生長促進効果、抗菌・防黴特性(病気
の予防効果)や糖度の向上効果が発揮される。
【0060】本発明において、溶液における植物生長調
節剤の濃度は、対象となる植物の生長を有効に促進でき
る濃度であればよく特に制限されないが、好ましくは
0.1〜20mg/ml、より好ましくは5〜10mg
/mlである。
【0061】また、植物生長調節剤の使用量は、対象と
なる植物の生長を有効に促進できる濃度であればよく特
に制限されないが、好ましくは、1日に0.5〜100
mg、好ましくは10〜20mgの量のヨウ素−シクロ
デキストリン包接化物が添加されるような量である。こ
の際、植物生長調節剤の使用量が0.5mg未満である
と、植物生長調節剤の量が少なすぎて効率良く種子ある
いは茎、葉、根などと接触できず、ゆえに植物の生長促
進効果が十分得られない。逆に、100mgを超えて
も、添加に見合う効果が得られず、経済的でない上、溶
剤に溶けきらずに沈殿物が生じてしまう恐れもある。な
お、ヨウ素は加熱によりヨウ素の蒸気圧の上昇に伴って
当該包接化物から放出されるため、ヨウ素−シクロデキ
ストリン包接化物の添加量は、必ずしも上記した範囲と
はならず、当該ヨウ素の放出量などを考慮して決定され
る必要がある。
【0062】本発明の生長促進方法の一態様としては、
植物生長調節剤を含む溶液中に植物の種子を予め浸漬す
る工程を含む。この場合の種子処理方法の具体例として
は、植物生長調節剤を水中に上記所定の濃度で溶かして
水溶液を調製し、この水溶液中に、種子を数分〜数日間
浸漬する方法;植物生長調節剤の水溶液中に、種子を数
分〜数日間浸漬した後、種子を乾燥して、さらに樹脂等
により種子を被覆して、本発明の植物生長調節剤にヨウ
素−シクロデキストリン包接化物の徐放性を付与しても
よい。後者の方法で使用される樹脂としては、本発明の
目的を阻害しないものであれば、特に限定されるもので
はなく、より効果を促進するために、本発明の植物生長
調節剤を含ませてもよい。例えば、珪藻土、炭酸カルシ
ウムおよびタルク等の無機物と植物生長調節剤を混合し
てなる混合物で種子を、デンプン、ゼラチンおよびポリ
ビニールアルコール等の結合剤を用いて被覆することが
できる。
【0063】本発明の生長促進方法の他の態様として
は、植物生長調節剤を含む溶液を、植物を生育させる土
壌または植物の茎、葉若しくは根元に噴霧する工程を含
む。この場合の具体例としては、植物生長調節剤を水中
に上記所定の濃度で溶かして水溶液を調製し、この水溶
液を土壌または植物の茎、葉若しくは根元に、1日に
0.1〜20mg/cm2表面積、好ましくは5〜10
mg/cm2表面積の量のヨウ素−シクロデキストリン
包接化物が添加されるように、噴霧する。この際、噴霧
は、上記所定量の水溶液を一度に噴霧してもあるいは数
回(例えば、2、3または4回)に分けて噴霧してもよ
い。この際、必要であれば、水溶液中に、上記したよう
な他の成分を含ませてもよい。なお、ヨウ素は加熱によ
りヨウ素の蒸気圧の上昇に伴って当該包接化物から放出
されるため、ヨウ素−シクロデキストリン包接化物の添
加量は、必ずしも上記した範囲とはならず、当該ヨウ素
の放出量などを考慮して決定される必要がある。
【0064】このように、植物生長調節剤を含む溶液中
に植物の種子を予め浸漬するまたは植物生長調節剤を含
む溶液を植物を生育させる土壌または植物の茎、葉若し
くは根元に噴霧するという簡単な処理方法によって、植
物の生長が有意に促進できる。この際の植物の種類は、
特に限定するものではなく、草または木のいずれであっ
てもよく、具体的には上記列挙した例が挙げられる。
【0065】本発明の植物生長調節剤、特に必須成分と
して含まれるヨウ素−シクロデキストリン包接化物に
は、下記実施例でより詳細に述べるように、うどんこ病
等の植物の病気を予防する作用があることとも判明し
た。したがって、本発明の第三は、本発明の第一の植物
生長調節剤を含む溶液を、植物を生育させる土壌または
植物の茎、葉若しくは根元に噴霧することからなる、植
物の病気の予防方法である。なお、以下の説明におい
て、本発明の第一または第二における説明、定義と同様
である箇所については、ここでは記載を省略する。
【0066】本発明の第二の方法の正確なメカニズムは
不明であり、以下により本発明が制限されるものではな
いが、本発明の植物生長調節剤を水などの水性媒体中に
導入すると、植物生長調節剤中に含まれるヨウ素−シク
ロデキストリン包接化物に包接されたヨウ素と水分子と
が置換し、その結果、臭いなどには影響を与えない程度
の微量のヨウ素が土壌中に、または植物の茎、葉若しく
は根元表面に放出・吸収され、これによりヨウ素による
抗菌特性が発揮されて、細菌によって引き起こされる植
物の病気を有意に予防(抑制)できると考えられる。ま
た、本発明の植物生長調節剤が乾燥状態で使用される場
合であっても、上記したように加温等により、ヨウ素が
望ましくない細菌や黴などの有機生物体の混入を防ぐ程
度であって土壌に臭いなどを付加しない程度の量のヨウ
素が当該包接物から放出され、これによりやはり抗菌特
性が発揮されて、その結果、細菌によって引き起こされ
る植物の病気を有意に予防(抑制)できると考えられ
る。
【0067】本発明の植物の病気の予防方法の具体例と
しては、植物生長調節剤を水中に0.1〜20mg/m
l、好ましくは5〜10mg/mlの濃度で溶かして水
溶液を調製し、この水溶液を土壌または植物の茎、葉若
しくは根元に、1日に0.1〜20mg/cm2表面
積、好ましくは5〜10mg/cm2表面積の量のヨウ
素−シクロデキストリン包接化物が添加されるように、
噴霧する。この際、噴霧は、上記所定量の水溶液を一度
に噴霧してもあるいは数回(例えば、2、3または4
回)に分けて噴霧してもよい。この際、必要であれば、
水溶液中に、上記したような他の成分を含ませてもよ
い。なお、ヨウ素は加熱によりヨウ素の蒸気圧の上昇に
伴って当該包接化物から放出されるため、ヨウ素−シク
ロデキストリン包接化物の添加量は、必ずしも上記した
範囲とはならず、当該ヨウ素の放出量などを考慮して決
定される必要がある。
【0068】本発明において、特に植物の病気がうどん
こ病である場合には、植物生長調節剤を含む溶液に重炭
酸カリウムをさらに含ませることが好ましい。重炭酸カ
リウムは、乳化剤との組合わせによって、葉などのカビ
に侵されるうどんこ病に効果があることが既知であり、
重炭酸カリウム自体に病原菌や害虫を駆除する殺菌力は
ないものの、病原菌の細胞にカリウムを過剰に入れるこ
とによって結果的には病気を抑制する効果が発揮される
が、この際、本発明によるヨウ素−シクロデキストリン
包接化物が乳化剤の代わりに機能すると考えられるため
である。この際、重炭酸カリウムの添加量は、ヨウ素−
シクロデキストリン包接化物との相乗効果が有意に得ら
れる量であれば制限されないが、植物生長調節剤中に含
まれるヨウ素−シクロデキストリン包接化物に対して、
好ましくは10〜90質量%、より好ましくは50〜8
0質量%である。
【0069】このように、植物生長調節剤を含む溶液を
植物を生育させる土壌または植物の茎、葉若しくは根元
に噴霧するという簡単な処理方法によって、植物の病気
を有意に予防することができるが、この際の植物の病気
としては、萎縮病(イネ、ムギ類)、縞葉枯病(イ
ネ)、天狗巣病(ジャガイモ)、モザイク病(ジャガイ
モ、タバコ、トマト、ダイコン)等の植物ウィルス病;
メイチュウ、ヨコバイ等のような、農作物に直接・間接
の害を及ぼす農業害虫による病気;ならびに立枯れ病
(サツマイモ、ホウレンソウ、タバコ、カーネーショ
ン)、つる割れ病(サツマイモ、ウリ類)、紫紋羽病
(サツマイモ)、黒あざ病(サツマイモ、ジャガイ
モ)、そうか病(ジャガイモ)、苗立枯れ病(ウリ
類)、疫病(ウリ類、イチゴ、タバコ)、黒点根腐れ病
(メロン)、半身萎凋病(ナス、トマト)、青枯れ病
(ナス)、白絹病(トマト、インゲン)、萎凋病(トマ
ト、ホウレンソウ、パセリ、カーネーション)、青枯れ
病(トマト)、萎黄病(イチゴ、アブラナ科野菜、セル
リー)、根腐れ病(ホウレンソウ、ニンジン、エンド
ウ)、根こぶ病(アブラナ科野菜)、根くびれ病(アブ
ラナ科野菜)、黄化病(アブラナ科野菜、セルリー)、
乾腐病(ニンジン)、黒根病(タバコ)、矮化病(タバ
コ)、うどんこ病(ムギ類、ウリ類、アズキ、ソバ、タ
バコ、モモ、ブドウ)、いもち病(イネ)等の糸状菌、
子嚢菌等の細菌によって起こる病気などが挙げられる。
これらのうち、本発明の植物生長調節剤は、多くの植物
に害を与え、葉や幼い枝の表面に、うどん粉をまき散ら
したような病変を生じるうどんこ病や不完全菌類ビリク
ラリア・オリザエの寄生によるいもち病に特に有効であ
る。
【0070】本発明の植物生長調節剤、特に必須成分と
して含まれるヨウ素−シクロデキストリン包接化物に
は、下記実施例でより詳細に述べるように、スイカ、イ
チゴやレモン等の果実の糖度を増加する作用があること
とも判明した。したがって、本発明の第三は、本発明の
第一の植物生長調節剤を含む溶液を、植物を生育させる
土壌または植物の茎、葉若しくは根元に噴霧することか
らなる、果実の糖度の増加方法である。
【0071】本発明の果実の糖度の増加方法の具体例と
しては、植物生長調節剤を水中に0.1〜20mg/m
l、好ましくは5〜10mg/mlの濃度で溶かして水
溶液を調製し、この水溶液を土壌または植物の茎、葉若
しくは根元に、1日に0.1〜20mg/cm2表面
積、好ましくは5〜10mg/cm2表面積の量のヨウ
素−シクロデキストリン包接化物が添加されるように、
噴霧する。この際、噴霧は、上記所定量の水溶液を一度
に噴霧してもあるいは数回(例えば、2、3または4
回)に分けて噴霧してもよい。この際、必要であれば、
水溶液中に、上記したような他の成分を含ませてもよ
い。なお、ヨウ素は加熱によりヨウ素の蒸気圧の上昇に
伴って当該包接化物から放出されるため、ヨウ素−シク
ロデキストリン包接化物の添加量は、必ずしも上記した
範囲とはならず、当該ヨウ素の放出量などを考慮して決
定される必要がある。
【0072】このように、植物生長調節剤を含む溶液を
植物を生育させる土壌または植物の茎、葉若しくは根元
に噴霧するという簡単な処理方法によって、果実の糖度
を有意に増加できるが、この際糖度が増すことのできる
果実としては、スイカ、イチゴ、レモン、モモ、夏甘、
青ウメ、ビワ、リンゴ、ナシ、メロン、カキ、イチジ
ク、ブドウ、グレープフルーツ、マンゴー、ミカンなど
が挙げられる。
【0073】
【実施例】以下に、実施例により本発明を詳細に説明す
る。
【0074】実施例1 200lGL反応機に水100リットル及びヨウ化カリ
ウム9.88kg(59.5モル)を仕込み常温で溶解
した。次いで粉末ヨウ素7.56kg(29.8モル)
を仕込み60分間撹拌して溶解した。
【0075】これにβ−シクロデキストリン22.68
kg(20モル)を仕込み、常温で30分間撹拌した後
90℃まで加温し直ちに冷却して20℃とした。
【0076】析出したヨウ素−β−シクロデキストリン
包接化物を遠心分離し付着している分離液を水洗し得ら
れた湿結晶ヨウ素−β−シクロデキストリン包接化物を
200lGLコニカルドライヤー中、4.7kPa、7
5℃、2時間乾燥した。これによって乾品ヨウ素−β−
シクロデキストリン包接化物(以下、「CDI」と称す
る)28.92kg(収率95.6質量%)を得た。こ
のもののヨウ素量は、22.4質量%であり、ヨウ素特
有の臭気は感じられなかった。
【0077】実施例2 実施例1で得られたCDIを、10mg/mlの濃度に
なるように水に溶解した(以下、「CDI水溶液」と称
する)。下記表1に示されるように、このCDI水溶液
または蒸留水中に、小麦及び大麦の種子を、それぞれ、
計72時間浸漬して、72時間後の茎及び根の長さを測
定した。同様の実験を数ヶ月の間隔をおいて、計3回繰
り返し、茎及び根の平均長さを下記表1に示す。なお、
下記表1中、「−」は、種子を蒸留水中に浸漬したこと
を示し、「○」は、種子をCDI水溶液中に浸漬したこ
とを示す。
【0078】
【表1】
【0079】上記表1に示される結果から、、小麦及び
大麦の種子共に、CDI水溶液中に浸漬すると、種子の
発育が抑制されることが分かる。
【0080】実施例3 実施例1で得られたCDIを、10mg/mlの濃度に
なるように水に溶解した(以下、「CDI水溶液
(1)」と称する)。このCDI水溶液(1)中に、小
麦及びライ麦の種子を、それぞれ、72時間浸漬した。
次に、これらの種子を土壌に蒔き、グリーンハウス内で
21日間発育させた。この際、1日に1回、水を撒い
た。21日間後、発育した小麦及びライ麦を、それぞ
れ、抜き、茎及び根の重量を測定した。なお、CDI水
溶液(1)の代わりに蒸留水を用いたものを比較対照と
した。結果を下記表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】上記表1及び表2に示される結果から、C
DI水溶液中に浸漬された種子は、CDI水溶液に浸漬
されている間はその発育が抑制されるが、土壌に撒かれ
た後は、コントロールの植物の生長を超えて生長し、短
期間で高率で生長することが示される。
【0083】実施例4 実施例3と同様にして、小麦の種子をCDI水溶液
(1)中に72時間浸漬した後、4週間グリーンハウス
内で生育させ、小麦の茎及び根の長さ及び乾燥重量を測
定した。なお、乾燥重量は、小麦の茎及び根の長さを計
った後、茎及び根をそれぞれ90℃で15時間、減圧で
加熱・乾燥した際の重量として表わす。結果を下記表3
に示す。
【0084】
【表3】
【0085】実施例5 実施例3と同様にして、春麦の種子をCDI水溶液
(1)中に72時間浸漬した後、4週間グリーンハウス
内で生育させ、各春麦について、葉数の枚数を数え、穂
の重量を測定した。なお、上記実験は4回行ない、その
平均値を結果とした。結果を下記表4に示す。
【0086】
【表4】
【0087】これから、CDI水溶液で処理された春麦
は、CDI水溶液で処理されないコントロールに比し
て、葉数及び穂の重量の増加が認められることから、C
DIには収穫量を向上する作用があると考察される。
【0088】実施例6 実施例1で得られたCDIを、2g/100mlの濃度
になるように水に溶解した(以下、「CDI水溶液
(2)」と称する)。このCDI水溶液(2)中に、オ
ートムギ及び大麦の種子を72時間浸漬した。次に、こ
のようにして処理したオートムギ及び大麦の種子を、そ
れぞれ、1haの土地に蒔き、通常と同様にして、10
週間生育させた。このようにして生育させたオートムギ
及び大麦の収穫量を測定した。この結果、オートムギ及
び大麦の収穫量は、それぞれ、1ha当たり、約1.2
%及び約2.4%の増加が認められた。
【0089】実施例7 ヘルシーアース(株)製の花と野菜の土(これには、初
期の発育に最低限必要な栄養素は含まれている)50リ
ットル及び赤玉土50リットルを混合して、これをベー
ス土とした。このベース土を約8リットルずつ、プラン
ター12個に入れた。これらのうち、4個のプランター
に、カルシウム配合有機質肥料(商品名:プロユース、
製造元:KYOKUTO(有)、販売元:フジ有機
(株))200gずつ加え、このプランターを「プロユ
ース」と称した。また、別の4個のプランターには、フ
ミン酸配合有機質肥料(商品名:アースセイバア、製造
元:KYOKUTO(有)、販売元:フジ有機(株))
200gずつを加え、このプランターを「アースセイバ
ア」と称した。さらに、これらのプランターを、それぞ
れ、有機質肥料の種類の違う3種のプランターを1組と
して、4組に分けた。このうち、2組のプランターに
は、それぞれ、キスミー二十日大根の種子を100粒を
適宜間隔をあけて撒いた。また、残りの2組のプランタ
ーには、それぞれ、ホワイトチェリッシュ(二十日大
根)の種子を100粒を適宜間隔をあけて撒いた。
【0090】別途、実施例1で得られたCDIを、1g
/100mlの濃度になるように水に溶解した(以下、
「CDI水溶液(3)」と称する)。
【0091】各組のプランター1個ずつに、このように
して調製されたCDI水溶液(3)を20mlずつ、毎
週、上記プランターに噴霧した。また、比較対照とし
て、CDI水溶液(3)の代わりに水を使用した。4週
間後、各プランターに発芽した二十日大根の芽の数を数
えて、発芽率を算出した。結果を下記表5に示す。
【0092】
【表5】
【0093】これから、キスミー二十日大根及びホワイ
トチェリッシュは、双方とも、CDI水溶液で処理され
ることによって、発芽率の向上が認められた。
【0094】また、発芽したキスミー二十日大根5本に
ついて、それぞれ、重量及び直径を測定したところ、1
%CDI水溶液を噴霧したプランターから抜いた大根5
本の重量の平均は20.9gであり、直径の平均は1.
55cmであった。これに対して、水のみを噴霧したプ
ランターから抜いた大根5本の重量の平均は11.89
gであり、直径の平均は0.57cmであり、CDI水
溶液で処理することによって、大根の重量及び直径が有
意に増加していることが示された。
【0095】実施例8 実施例7と同様にして、ベース土のみの入ったプランタ
ー、プロユースのプランター及びアースセイバアのプラ
ンターを、それぞれ、2個ずつ調製した。
【0096】これらのプランター6個に、山城黒三度菜
豆の種及び三尺ささげの種(いずれも、(株)トーホク
製)を、それぞれ、14粒及び10粒を蒔いた。これら
のうち、各種1個のプランターに、別途、実施例1で得
られたCDIを、1g/100mlの濃度になるように
水に溶解したCDI水溶液(4)を20mlずつ、毎
週、上記プランターに噴霧した。また、比較対照とし
て、CDI水溶液(4)の代わりに水を使用した。2週
間後には、すべての種が発芽していたので、これらの地
上にでている茎の長さを測定した。
【0097】その結果、ベース土による生長にはCDI
による生長促進効果は認められなかったものの、有機質
肥料が添加されたプロユースのプランター及びアースセ
イバアのプランターでは、CDIによる茎の生長促進効
果が認められた。
【0098】実施例9 実施例7と同様にして、ベース土のみの入ったプランタ
ー、プロユースのプランター及びアースセイバアのプラ
ンターを、それぞれ、2個ずつ調製した。
【0099】これらのプランター6個に、大葉春菊の種
を、100粒を蒔いた。これらのうち、各種1個のプラ
ンターに、別途、実施例1で得られたCDIを、1g/
100mlの濃度になるように水に溶解したCDI水溶
液(5)を20mlずつ、毎週、上記プランターに噴霧
した。また、比較対照として、CDI水溶液(5)の代
わりに水を使用した。2週間後には、各プランターに発
芽した大葉春菊の芽の数を数えて、発芽率を算出した。
結果を下記表6に示す。
【0100】
【表6】
【0101】表6の結果から、CDIを添加しない条件
下に比べて、CDIを添加した条件の方が、すべての条
件において、大葉春菊の発芽率の向上が認められた。
【0102】実施例10 実施例7と同様にして、プロユースのプランターを3個
調製した。
【0103】別途、実施例1で得られたCDIを、1g
/100mlの濃度になるように水に溶解したCDI水
溶液(6)を調製した。
【0104】これに、それぞれ、1)CDI水溶液
(6)20ml;2)重炭酸カリウム及びCDI水溶液
(6)をそれぞれ10mlずつ;ならびに3)コントロ
ールとして水20mlを、スレンダー子葱の種蒔き直後
から、週に一度の割合で4週間(4回、計80ml)を
植物全体に(根元を含む)噴霧した。なお、本実施例に
おいて、水は、毎日すべてのプランターの十分量与え
た。スレンダー子葱を、30日ごとに無作為に20本ず
つ抜き、それぞれの総乾燥質量を測定した。その結果を
下記表7に示す。
【0105】
【表7】
【0106】表7から、CDIと重炭酸カリウムを組合
わせることによって、スレンダー子葱の収穫量が向上で
きることが分かった。
【0107】実施例11 実施例10において、九条太葱の種子をスレンダー子葱
の種子の代わりに使用して、5ヶ月間生育させ、1ヶ月
後及び5ヶ月後の葱本体及び根部分の総乾燥重量及び平
均長さをそれぞれ測定した。結果を下記表8に示す。
【0108】
【表8】
【0109】表8から、CDIと重炭酸カリウムを組合
わせることによって、九条太葱の重量及び長さが有意に
向上できることが分かった。
【0110】実施例12 スイカとイチゴの種を、それぞれ5粒ずつ、畑(2坪)
2箇所ずつに蒔き、一方の畑には、別途、実施例1で得
られたCDIを、1g/100mlの濃度になるように
水に溶解したCDI水溶液(7)を固形分換算で125
g量を毎週均一に噴霧し、他方の畑には同量の水を同様
にして毎週噴霧した。スイカ及びイチゴがなったら、こ
れらの糖度を測定したところ、平均で、スイカの糖度
は、CDIで処理することによって、10Brix%か
ら14Brix%に増加し、また、イチゴの糖度は、C
DIで処理することによって、8Brix%から11B
rix%に増加したことから、CDIには果実の糖度を
増加させる作用があると考えられる。
【0111】実施例13 実施例1で得られたCDIの0.1質量%水溶液を50
0リットル/アール、レモンの開花時から15日間隔
で、計5回、花に噴霧した。このようにしてなったレモ
ンのCDI処理及び無処理の群について、それぞれ10
個ずつ、糖度及び酸度を測定したところ、レモンの酸度
は、CDIの処理の有無にかかわらずほぼ同じ値を示し
たが、レモンの糖度は、平均で約7(Brix%)から
約10.5(Brix%)に増加した。これから、CD
Iにはレモンの酸度は変えずに糖度を増加させる、即
ち、甘味比(=糖度/酸度)を向上する作用があると考
えられる。
【0112】
【発明の効果】本発明は、ヨウ素−シクロデキストリン
包接化物全質量に対して、5〜35質量%のヨウ素を含
有するヨウ素−シクロデキストリン包接化物を含む植物
生長調節剤;当該植物生長調節剤を含む溶液中に植物の
種子を予め浸漬することからなる、および/または当該
植物生長調節剤を含む溶液を、植物を生育させる土壌ま
たは植物の茎、葉若しくは根元に噴霧することからな
る、植物の生長促進方法;当該植物生長調節剤を含む溶
液を、植物を生育させる土壌または植物の茎、葉若しく
は根元に噴霧することからなる、植物の病気の予防方
法;ならびに当該植物生長調節剤を含む溶液を、植物を
生育させる土壌または植物の茎、葉若しくは根元に噴霧
することからなる、果実の糖度の増加方法に関するもの
である。
【0113】本発明の植物生長調節剤は、ヨウ素に対す
るシクロデキストリン量が適宜調整されてシクロデキス
トリン中にヨウ素が包接されたヨウ素−シクロデキスト
リン包接化物を含むので、不安定で長期保存に適さない
ヨウ素が長期間安定した形態で存在できる上、ヨウ素と
シクロデキストリンの混合比率によって、ヨウ素の本来
の機能である植物の生長促進効果、抗菌・防黴特性(病
気の予防効果)や糖度の向上効果、ならびにシクロデキ
ストリンの本来の機能である消臭効果を適宜調節して同
時に発揮させることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2B022 EA01 4H011 AB03 BA01 BB18 BC18 BC19 DA14 DD03 DH10

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヨウ素−シクロデキストリン包接化物全
    質量に対して、5〜35質量%のヨウ素を含有するヨウ
    素−シクロデキストリン包接化物を含む植物生長調節
    剤。
  2. 【請求項2】 ヨウ素−シクロデキストリン包接化物に
    おけるヨウ素の含有量が、ヨウ素−シクロデキストリン
    包接化物全質量に対して、19〜25質量%である、請
    求項1記載の植物生長調節剤。
  3. 【請求項3】 該シクロデキストリンはβ−シクロデキ
    ストリン及びこれらの化学修飾体からなる群より選ばれ
    る少なくとも1種である、請求項1または2記載の植物
    生長調節剤。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一項に記載の植
    物生長調節剤を含む溶液中に植物の種子を予め浸漬する
    ことからなる、植物の生長促進方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれか一項に記載の植
    物生長調節剤を含む溶液を、植物を生育させる土壌また
    は植物の茎、葉若しくは根元に噴霧することからなる、
    植物の生長促進方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜3のいずれか一項に記載の植
    物生長調節剤を含む溶液を、植物を生育させる土壌また
    は植物の茎、葉若しくは根元に噴霧することからなる、
    果実の糖度の増加方法。
  7. 【請求項7】 ヨウ素−シクロデキストリン包接化物全
    質量に対して、5〜35質量%のヨウ素を含有するヨウ
    素−シクロデキストリン包接化物を含む収穫向上剤。
  8. 【請求項8】 穀物類の収穫の向上に使用される、請求
    項7に記載の収穫向上剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008538696A (ja) * 2005-04-25 2008-11-06 シンジェンタ リミテッド 緑色葉物野菜の品質を向上するための方法
JP2012514975A (ja) * 2009-01-13 2012-07-05 プロセデ ローラン ピジョン 環境条件の変化に対する植物の適応反応を改善するための液体無機組成物の使用
WO2013141381A1 (ja) 2012-03-22 2013-09-26 独立行政法人理化学研究所 果実糖度上昇剤

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