JP2002263876A - レーザ加工装置及びレーザ加工方法 - Google Patents

レーザ加工装置及びレーザ加工方法

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JP2002263876A
JP2002263876A JP2002006735A JP2002006735A JP2002263876A JP 2002263876 A JP2002263876 A JP 2002263876A JP 2002006735 A JP2002006735 A JP 2002006735A JP 2002006735 A JP2002006735 A JP 2002006735A JP 2002263876 A JP2002263876 A JP 2002263876A
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beams
phase
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Atsushi Amako
淳 尼子
Masami Murai
正己 村井
Tomio Sonehara
富雄 曽根原
Tsutomu Ota
勉 太田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】加工品質に優れ、かつ加工能力の高いレーザ加
工装置および加工方法を提供すること。 【解決手段】複数のパルスレーザ発振器1101a,1101b
と、それぞれの発振位相をずらして前記パルスレーザ発
振器を順次駆動する手段1102a,1102bと、前記パルスレ
ーザ発振器から出射されるビーム1104a,1104bのそれぞ
れを複数のビームに分岐する手段1109を備え、前記分岐
する手段により得られた複数のビームを被加工物1111に
照射することを特徴とするレーザ加工装置および加工方
法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、加工品質が高く微
細加工も可能で量産性に優れたレーザ加工装置及び前記
レーザ加工方法に関する。
【背景技術】レーザ加工装置としては、CO2レーザを使
った金属板の切断・穴あけ加工や、YAGレーザによる金
属薄板の精密加工が広く知られている。とくに、小型で
メンテナンス性が良く、直径数10μmの集光スポットが
容易に得られるという理由から、YAGレーザは各種の精
密加工に通している。さらに、YAGレーザでは第2高調波
(波長532nm)が得られるので、アブレーション効果を
利用した微細な薄膜加工へも応用できる。レーザアブレ
ーションとは、高分子材料にエキシマレーザやYAG高調
波なとの短波長・短パルスレーザを照射した時に、瞬時
に分解・気化・飛散が起こり、局所的に材料が除去され
る現象のことである。事実、半導体製造用マスクの欠陥
修正、薄膜センサの検出部のパターンニング、液晶パネ
ルの電極パターンニング等に、QスイッチYAGレーザが利
用され始めた。Qスイッチを用いる理由は、パルス幅が
短くピークパワーが大きいビームを利用することによ
り、被加工部材への熱的損傷がない高品質な加工が実現
できるからである。なお、アブレーション加工について
は、“短波長・短パルスレーザによる除去加工に関する
研究“(精密工学会誌、Vol.3,473−478(1993))に
詳しい。
【0002】薄膜加工における最近の大きなニーズのひ
とつに、液晶パネルの透明電極のパターンニングがあ
り、加工品質かつ加工能力に優れた加工技術に対する期
待が高まっている。液晶パネルの電極のパターンニング
は、一般には、透光性導伝膜が被着した基板をレーザビ
ームに対して移動させながら、導電膜を所定の間隔で切
断することにより行う。この時の加工品質すなわち導電
膜の電気特性は、QスイッチYAGレーザの特性(主にピー
クパワー)から決まる。そして、レーザの特性はQスイ
ッチ周波数に左右される。すなわち、Qスイッチ周波数
を低くすると、パルス幅が狭くなり、ピークパワーは大
きくなる。逆に、Qスイッチ周波数を高くすると、パル
ス幅が広がり、ピークパワーは小さくなる。
【0003】加工品質の観点からは、Qスイッチ周波数
を低くして、ビームのピーク強度を高めることが望まし
い。こうすると、アブレーション効果を介して、瞬間的
に加工部位を除去することができ、加工部近傍や膜基板
へ熱的損傷を与えることがない。このような加工方法
が、特開昭60−261142、特開平2−259727に開示されて
いる。しかし、これらの加工方法には、生産性の点に問
題がある。なぜならば、Qスイッチ周波数を下げること
は、そのぶんだけ、ステージの送り速度を遅らせること
につながり、その結果として、加工速度が著しく低下す
るからである。
【0004】他方、加工速度の観点からは、Qスイッチ
周波数を高くして、ステージをすばやく移動させること
が望ましい。しかし、Qスイッチ周波数を高くすると、
ピークパワーが低下し、パルス幅が広がる。このため
に、液晶パネルの電極をパターンニングする時に、電極
基板であるガラスに熱的損傷を与え、微小なクラックや
くぼみを発生させる。このクラックやくぼみは、液晶パ
ネルの表示品質を揖ねる要因となる。また、ガラスに微
小量含まれているアルカリ金属イオンがクラック及びく
ぼみから液晶中に溶出し、このことが液晶パネルの表示
不良の原因となる。
【0005】本発明の目的は上記の問題を解決し、加工
品質に優れかつ加工能力の高いレーザ加工装置および加
工方法を提供することにある。 (発明の開示)本発明のレーザ加工装置は、複数のパル
スレーザ発振器を発振サイクルの位相をずらして順次駆
動することと、前記複数のレーザ発振器からのビームの
品質を同じにすることと、前記複数のレーザ発振器から
のビームを楕円偏光にすることにより、(1)実効均な
発振周波数を低下させることなく、個々の発振器の発振
周波数を下げることが可能になり、(2)この結果、所
要のピークパワーとパルス幅を得て、被加工物に熱的損
傷を与えずに高品質の加工を行うことができ、(3)ビ
ームを楕円偏光にすることにより、被加工物が有する異
方性や被加工物上の付着物に左右されることなく、所要
の加工品質を恒常的に維持することができる。
【0006】さらに、位相変調作用を有する回折素子を
使い、前記レーザ発振器からのビームを複数本に分岐す
ることにより、被加工物表面の複数部位を同時に加工す
ることで、加工能力を大きく向上させることができる。
すなわち、ビーム分岐数をNとすると、1本のビームで
加工した時の加工能力のN倍の加工能力を達成できる。
【0007】本発明のレーザ加工法方により、上記の加
工装置を使い、基板上に被着された透光性導電膜に複数
のビームを選択的に照射し、前記基板あるいは前記複数
のビームを移動することにより、前記透光性導電膜に複
数の開溝を同時に形成することができる。分岐後の複数
ビームが等強度になるように設計された表面凹凸型2値
位相格子をビーム分岐手段に用いることにより、加工形
状ならびに加工品質が均一な開溝を形成できる。
【0008】本発明の液晶パネルは、上記のレーザ加工
装置及び加工方法により加工されたストライプ状の電極
構造を有する液晶パネルである。電極間に存在する切断
溝(ギャップ)の幅が10μm以下であり、かつ、前記ギ
ャップが所定の間隔で表示エリア内に一様に形成されて
いるので、液晶パネルの表示品質を左右する主要因であ
るところの、コントラスト比ならびに視認性が大きく向
上している。また、フォトリソングラヒィにより電極を
パターニングする従来のやり方と比べても、本発明の電
極加工方法は、工程数が少なくかつウエット処理工程を
要しないという点で優れている。したがって、生産設備
が簡素になり、工程管理も容易にかつ確実になることか
ら、液晶パネルの生産コストの削減に大きく貢献するこ
とができる。
【0009】
【発明の実施の形態】ここでは、単純マトリクス駆動方
式の液晶パネルに使用きれるストライフ電極を加工する
事例の中で、本発振明の構成及び特徴について詳しく説
明する。
【0010】(実施例1)本発明のレーザ加工装置の構
成を図1に示す。レーザ発振器1101a、1101bはQスイッチ
YAGレーザであり、直線偏光のTEM00モードを出射する。
レーザ発振器のQスイッチ周波数は、Qスイッチドライバ
1102a、1102bにより制御される。1103はQスイッチコン
トローラであり、Qスイッチドライバが与える騒動信号
の位相を制御する。発振器内のブリュースター素子の設
置形態を工夫して、あるいは、発振器の外に波長板を配
置して、発振器から出射される2本のビーム1104a、1104
bが互いに直交する直線偏光となるようにする。エクス
パンダコリメータ1105a及び1105bにより、それそれのビ
ームを拡大し、さらに、偏光合成素子1107を用いて、2
本のビームの光路を共通にする。そして、波長板1108に
よりビームの偏光を楕円偏光にした後に、ビームを位相
格子1109へ入射させる。位相格子1109は、1本の入射ビ
ームを32本の回折ビームに分岐する作用を有する。位相
格子1109から出射された32本のと−ムは、集光レンズ11
10を介して、精密ステージ1112の上に保持された透光性
導電膜(ITO膜)基板1111の表面に、32個の集光スポッ
ト1113を等しい間隔で形成する。そして、精密ステージ
1112を移動することにより、直線状あるいは曲線状にIT
O膜を切断する。図中、1106は光路折り曲げミラーであ
る。
【0011】2本のビーム1104aと1104bを、それそれ、
倍率可変なエクスパンダコリメータ1105aと1105bに通す
ことにより、発振器の個体差に起因するビーム品質(広
がり声、ビーム径)を等しくする。こうすることによ
り、後で詳しく述べるように、均一な溝幅で電極膜を切
断することができる。また、波長板を用いてビームを楕
円偏光にすることにより、ITO膜が有する異方性、不均
一性や、ITO膜上の付着物に左右されることなく、均一
な幅と探さでITO膜を切断できるので、所要の加工品質
を恒常的に維持することが可能となる。
【0012】本実施例の構成に用いる位相格子は、1次
元の表面凹凸型位相格子である。断面形状はほぼ矩形で
あり、学問的には、2値位相格子として分類されるもの
である。本実施例の位相格子の位相分布(1周期分)を
図8に模式的に示す。図中、白部分の位相値がπrad、斜
線部分の位相値が0radである。
【0013】位相格子の主要な設計事項は、1周期の
長さ、全体の大きさ、1周期内の位相分布の3つであ
る。1周期の長さはITO膜上に形成する開溝の間隔から決
まり、全体の大きさは入射ビーム径から決まる。そし
て、1周期内の位相分布は、所要のビーム分岐数及び所
要のビーム強度の均一性から決まる。
【0014】回折理論から、位相格子の周期は次式で与
えられる。
【0015】 p=mλf/△x; m=1(ビーム分岐数が奇数の時) ・・・・(1) m=2(ビーム分岐数が偶数の時) ただし、λはレーザ波長(532nm)、fは集光レンズの焦
点距離、△xは開溝の間隔である。例えば、分岐数を偶
数として、f=100mm、△x=200μmとすると、p=532
μmとなる。
【0016】位相格子の全体の大ききDは、波動光学の
理論から、次式のように決まる。
【0017】 D>d=2f・tan[sin−1(2λ/πw)]・・・・(2) ただし、dは入射ビーム径(1/e2)、wは所要の集光ス
ポット径(1/e2)である。例えば、f=100mm、w=10
μmとすると、D>d=4mmとなる。位相格子の位相分布の
計算には、シミュレーテッドアニーリング法(Science2
20,671−680(1983)、以後、SA法と略す)を用いた。
これまでにも、SA法を用いて位相格子を設計した事例が
いくつか報告されている(Appl.Opt.32,2512−2518
(1993)、Appl.Opt.31,3320−3336(1992)、App
l.Opt.31,27−37(1992)、)。しかし、SA法の運用
に必要なルールの構築には経験が必要であり、このルー
ルの出来不出来が、”良い解”が得られるかどうかを大
きく左右する。”良い解”とは位相格子に要求される光
学性能を満足する解のことであり、前記の光学性能は位
相格子の使用目的から決まる。
【0018】SA法を用いて位相格子を設計するには、少
なくとも、評価関数の定義と重みの設定、温度スケ
ジューリング、平衡状態の判定について、運用のルー
ルを定めなければならない。なお、評価関数とは位相格
子の性能に関する推定値と目標値の差に対応する量であ
り、この関数値が最も小さくなる時の解が最適解であ
る。
【0019】本実施例で用いる位相格子に要求される光
学性能を以下にあげる。 (1)光利用効率が80%以上であること。 (2)分岐級のビーム強度均一性が0.90以上であるこ
と。 ここで、光利用効率とは、所要の回折次数のビームに供
給し得る光エネルギーの割合を意味する。ビーム強度均
一性とは、分岐された複数の回折ビームにおける強度の
最小と最大の比を意味する。上記(1)と(2)の条件
は、後で述べるように、レーザ発振器出カと、加工閾値
と、要求される加工均一性から決まる。
【0020】実際の計算では、(1)と(2)の条件を評
価関数の中に取り入れて、(1)と(2)の条件を満足す
る解の中から、さらに、位相格子の作製誤差を考慮し
て、以下の(3)と(4)の条件を満足する解を選択し
た。(3)位相格子の最小線幅ができるだけ太いこと。
(4)位相格子の性能が作製誤差に大きく左右されない
こと。上記(3)と(4)の条件は、位相格子の作製に使
用するフォトマスク描画装置、露光・現像装置、及びエ
ッチング装置の各装置のパターン転写能力から決まる。
以上のことからも理解できるように、SA法により求めた
位相格子の位相分布データには、設計者の創造性が反映
されていると言える。この状況は、レンズ設計における
レンズデータの立場とよく似ている。このような観点か
ら、本出願においては、発明の実施に際して用いた位相
格子の位相分布データを全て開示することにした。
【0021】以下、表1、表2、表3においては、位相値
が0radからπrad(この逆でもよい)に変化する位置の
座標を1周期分について示した。表4、表5、表6において
は、1周期を256または128の区間に等分割して、各区間
の位相値を0と1で示した。0が0rad、1がπradに対応す
る(この逆でもよい)。 (位相格子1) ・分岐数:32 表1・位相格子1の位相分布データ (位相格子2) ・分岐数:16 表2.位相格子2の位相分布データ (位相格子3) ・分岐数:2 表3.位相格子3の位相分布データ (位相格子4) ・分岐数:16 表4・位相格子4の位相分布データ (位相格子5) ・分岐数:8 表5.位相格子5の位相分布データ (位相格子6) ・分岐数:5 表6.位相格子6の位相分布データ 表1から表6に示したデータを使い、以下の工程にし左が
って、高品質な石英基板へ表面凹凸型位相格子を形成し
た。 (1)フォトマスクデータ作成 (2)フォトマスク作製 (3)レジスト露光及び現像 (4)反応性イオンエッチング及びレジスト除去 作製した回折格子は、とれも、光利用効率80%以上、ビ
ーム強度均一性0.90以上であり、所要の光学性能を満
足した。さらに、偏光依存性は存在しなかった。偏光依
存性がないということは入射光の偏光状態に関係なく、
所要の光利用効率及びビーム強度均一性が得られるとい
うことであり、楕円偏光ビームを用いる薄膜加工には欠
かせない性質である。
【0022】以上のようにして作製した位相格子を図1
のレーザ加工装置へ搭載し、ガラス基板上のITO膜を間
隔200μm、幅10μmで切断することにより、液晶パネル
のストライプ電極を形成した。図7に、ITO膜及びガラス
基板の断面を示す。ガラス基板1403の材質はソーダガラ
スであり、このガラス基板上に、SiO2の緩衝膜1402を介
して、ITO膜1401を1500オングストロームだけ堆積させ
てある。
【0023】ビーム分岐に用いた位相格子は、先に示し
た位相格子1のデータから作製したものである。10μmの
幅の開溝を200μmの間隔でITO膜上に形成するために、
集光レンズの焦点距離を100mm位相格子の1周期の長さを
532μmと定め、集光レンズの収差を考慮して、ビーム径
を12mm、位相格子の大きさを15mmと定めた。この時の位
相格子における最小線幅は6.4μmであり、先に述べた
作製工程にしたがい、設計寸法に忠実に、位相格子の凹
凸構造を石英基板へ形成できることを確認している。
【0024】使用したレーザ発振器はQuantronix社製の
ランプ励起型QスイッチYAGレーザであり、発振波長532n
m、定格平均出力8Wである。加工条件とガラス基板への
損傷について調べるために、位相格子を使用せずに、Q
スイッチ周波数を変えて1本の閑溝を加工する実験を繰
り返した。その結果、Qスイッチ周波数を10KHz以下に設
定すれば、ITO膜及び下地のガラス基板にダメージを与
えることなく、開溝を形成できることが判明した。ま
た、加工できるかどうかは、Qスイッチ周波数に依らず
に、ピークパワーの大小から決まることが判明した。
【0025】図5(a)(b)に、それそれ、Qスイッチ周
波数が10KHzと30KHzの時のレーザ出力と時間の関係を示
した。加工時のピークパワーを150Wとすると、Qスイッ
チ周波数が10KHzの時のパルス幅とパルスエネルギー
は、それぞれ、150nsec、23μJである。他方、Qスイッ
チ周波数が30KHzの時のパルス幅とパルスエネルギー
は、それそれ、300nsec、45μJである。これらのレーザ
発振条件でガラス基板上のITO膜を加工すると、Qスイッ
チ周波数が10KHzの条件では損傷は生じなかったが、30K
Hzの条件では溝周縁部ならびにガラス基板表面に微細な
損傷が発生した。30KHzの時に損傷か発振生した理由
は、パルス幅が広がり、過剰のエネルギーが投入された
からである。すなわち、ピークパワーが加工閾値に達し
ている場合でも、Qスイッチ周波数から決まるパルス幅
が許容値以上に広がっていると、加工時の損傷が避けら
れないのである。このような場合には、損傷を避けるこ
とを目的として、パルスエネルギーを小さくすることは
効果がない。なぜならば、ピークパワーが加工閾値を超
えなくなり、加工できなくなるからである。
【0026】以上の結果をふまえ、ビームの分岐数及び
加工速度に配慮して、2台のレーザ発振器のQスイッチ周
波数を10KHz、定格平均出力を8Kに定めた。この時のパ
ルス幅は150nsec、ピークパワーは定格出力時の5.3KV
である。そして、Qスイッチコントローラ1103から制御
信号を送り、それそれのQスイッチドライバを50μsecづ
つ位相をすらして駆動することにした。図2は、本案施
例におけるレーザ出力と時間の関係を示す図である。2
台の発振器を位相をずらして交互に駆動することによ
り、個々の発振器は10KHzで発振しながら、実効的に
は、20KHzで駆動した時と同じ加工速度が得られること
になる。
【0027】厚み1500オングストロームのITO膜に1本の
開溝を形成するには、110W以上のピークパワーを要す
る。そこで、先に述べた位相格子1109を使い、ピークパ
ワー5.3KWのビームを32本のビームに分岐することにし
た。そして、集光レンズで32本のビームを光学的にフー
リエ変換して、ITO膜の表面に間隔が200μmの32個の集
光スポットを照射した。この時の集光スポット径は18μ
mであり、ITO膜上に形成された加工痕の径は10μmであ
る。こうして、1発のパルスにより、直径10μmの加工痕
を32個同時に形成することができた。集光スポット径と
加工径の関係を図6に示した。ITO膜が有する閾値特性の
ために、集光スポット径よりも小さい加工痕が得られる
点に注目されたい。
【0028】次のパルスが発振するまでの50μsecの間
欠時間に、精密ステージを使い、加工痕の直径の半分に
相当する5μmに等しい距離だけ基板を移動させる。こう
して2台の発振器からのパルスビームで、交互に、直径1
0μmの加工痕を32個同時に形成することを続けると、図
3に示すように、間隔200μm、幅10μmの溝を間欠部分な
く加工することができた。この間のステージの移動速度
は毎秒100mmであり、常に一定である。加工速度を、
(加工速度)=(ビーム分岐数)×(ステージ移動速
度)と定義すると、同時に32本の溝を加工することによ
り、毎秒3200mmの加工速度を達成したことになる。図4
に、以上のようにして得た電極パターンを示した。
【0029】32個の集光スポットの並びの方向をステー
ジ移動方向に対して傾けることにより、スポットの間隔
すなわち加工溝の間隔を調節することができる。スポッ
トの並び方向を傾けるには、回転ステージを使い、位相
格子をその面内で回転させればよい。この時の回転角度
をθとすると、加工溝の間隔△x’は次式で与えられ
る。
【0030】 △x’=mλf COS(θ)/p; m=1(ビーム分岐数が奇数の時)・・・・(3 ) m=2(ビーム分岐数が偶数の時) このような調節機構を備えることにより、液晶パネルの
仕様に合わせて、高精度に電極パターニングを行うこと
が可能になり、さらに、電極間隔が異なる液晶パネルの
試作へも容易に対応できる。したがって、商品開発のリ
ードタイムを大幅に短縮できることになる。
【0031】本実施例の加工装置ならびに加工方法によ
れば、ITO膜を10μm以下の切断幅でパターニングするこ
とができる。このことにより、液晶パネルの表示品質を
支配する主要因であるところの開口率ならびにコントラ
スト比が大きく向上する。他方、従来のフォトリソグラ
フイによる電極加工で得られる電極ギャップは30μmで
あり、液晶パネルの開口率ならびにコントラスト比を低
下させる大きな原因となっていた。
【0032】本実施例では、ランプ励起型QスイッチYAG
レーザを用いたが、半導体レーザ励起型QスイッチYAGレ
ーザを用いてもよい。また、YAGレーザの代わりにYLFレ
ーザを使用した場合でも、同等の効果が得られる。さら
に、固体レーザに限らずに、パルス発振が可能な気体レ
ーザを用いることもできる。また、加工に適したQスイ
ッチ周波数はレーザ発振器の特性に依存し、本実施例に
おいて引用した10KHzに限るものではない。使用するレ
ーザ発振器の特性ならびに被加工物の特性に合わせて、
最適なQスイッチ周波数を決定しなければならない。
【0033】上記の実施例では、間隔200μm、幅10μm
の溝加工について発明の効果を説明したが、これらの条
件が異なる溝加工についても、位相格子の周期を変え
ることにより、あるいは、集光レンズの焦点距離を変
えることにより、容易に対応することができる。ビーム
分岐数も、32本に限るものではなく、レーザ加工装置の
仕様に合わせて決定すればよい。例えば、表2あるいは
表4のデータを使い、16分岐用の位相格子を作製して用
いることもできる。被加工物の物性、使用するレー
ザ発振器の出力及び台数を考慮し、加工能力の観点から
最適な分岐数を定め、所要の位相格子を設計、製作する
ことにより、多くの加工用途へ容易に対応することがで
きる。
【0034】(実施例2)本実施例のレーザ加工装置の
構成を図9に示す。実施例1に対する構成上の違いは、空
間フィルタを光路上に配置した点にある。空間フィルタ
でビーム波面に変調を加えることにより、集光スポット
の形状を制御する。
【0035】空間フィルタを使用する目的は、開溝の幅
を狭くして、液晶パネルの表示品質をさらに高めること
にある。開溝の幅を狭くするには、他に、集光レンズ
の焦点距離を短くする、あるいは、集光レンズヘの入
射ビーム径を太くする、という方法もある。しかし、
の方法には、最小線幅が著しく細い(2μm以下)位相格
子が必要になり、所要の性能を満足する位相格子を作製
することが難しいという欠点がある。また、について
も、大口径かつ無収差の集光レンズの設計ならびに作製
が困難になり、レンズコストが大きく膨らむことにつな
がる。
【0036】本実施例では、空間フィルタとして、図11
に示す振幅透過率分布を有する振幅フィルタを用いた。
振幅フィルタとは、このフィルタを透過するビームの位
相を変化させず振幅のみを変調する素子である。この振
幅フィルタ2101を位相格子1109の直前に配置して、ビー
ム波面に振幅変調を加えた。振幅フィルタを使用した時
と使用しない時の集光スポットの形状を、それぞれ、図
12(a)、(b)に示す。ビームの外側の強度を相対的に
高めることにより、図12(a)に示すように、集光後の
スポット径を細くすることができた。
【0037】振幅フィルタを使用した時に得られた開溝
の平面図を図10に示す。溝の幅はおよそ6μmであり、実
施例1と比べて、より一層、液晶パネルの開口率とコン
トラスト比を高めることができた。
【0038】なお、上記の振幅フィルタの他にも、透過
率分布が異なるいくつもの振幅フィルタを用意してお
き、要求に合わせて交換して使用することにより、加工
溝の幅を太くしたり細くしたりすることができる。ま
た、蒸着等の手段により所要の透過率分布を位相格子基
板の裏面(格子が形成されていない面)に形成した場合
でも、同様の効果が得られる。
【0039】(実施例3)本実施例のレーザ加工装置の
構成を図13に示す。実施例1に対する構成上の違いは、
非点収差を有する集光レンズを備えている点にある。非
点収差を有する集光レンズを使い、ステージ移動方向に
長い楕円状の集光スポットを発生させる。集光レンズ31
01はアナモルフィックであり、直交する2方向(x、y)
における波面変換作用が異なる。例えば、x方向には位
相格子の透過波面をフーリエ変換する作用を有し、y方
向には透過波面の強度分布を制御する作用を有する。こ
のようなアナモルフィック集光レンズは、非球面レン
ズにより、あるいは、球面レンズと円筒レンズの組み
合わせにより実現できる。アナモルフィック集光レンズ
により、ステージ移動方向に長い楕円状の集光スポット
を得て、ステージ移動速度を速めることにより、加工速
度を向上させることができる。
【0040】図15に、非球面アナモルフィック集光レン
ズを用いて集光スポットを発生させた時の様子を示す。
図15(a)で、1109は位相格子、3301は非球面アナモル
フィック集光レンズ、3302はレーザビーム、3303は32個
の集光スポットの並びである。位相格子はx方向にだけ
周期構造を有する1次元格子であり、実施例1で使用した
位相格子と同じものである。非球面アナモルフィック集
光レンズは、x方向には波面のフーリエ変換作用を有
し、y方向には波面の強度分布をガウス分布から矩形分
布へ変換する作用を有する。図15(b)に、得られた集
光スポットのy軸方向の光強度分布を示す。集光スポッ
トの幅は18μm、長さは28μmである。ただし、ピーク強
度の1/e2以上を与える部分の幅であり、長さである。
この集光スポットをITO膜上へ照射することにより、幅1
0μm、長さ20μmにわたり、ITO膜を除去することができ
た。
【0041】本実施例では、アナモルフィック集光レン
ズで32本の回折ビームを光学的にフーリエ変換して、IT
O膜の表面に幅10μm、長き20μmの32個の加工痕を200μ
mの間隔で形成した。そして、50μsecのパルス間欠時間
に、加工痕の長さの半分に相当する10μmに等しい距離
だけステージを移動させた。こうして2台の発振器から
のパルスビームで、交互に、幅10μmで長さ20μmの加工
痕を32個同時に形成することを続けると、図14に示すよ
うに、間隔200μm、幅10μmの溝を間欠部分なく加工す
ることができた。この間のステージの移動速度は毎秒20
0mmであり、毎秒6400mmの加工速度を達成したことにな
る。
【0042】なお、個々の加工痕が分離しない程度まで
ステージ移動量を大きくすることは可能であり、こうす
ることにより加工速度を最大限大きくできる。
【0043】(実施例4)本発明のレーザ加工装置の構
成を図16に示す。実施例1に対する構成上の相違は、1次
元格子の代わりに2次元位相格子を用いる点にある。2次
元位相格子4101を使うことにより、2列以上のスポット
並びを同時に発生させることができる。
【0044】2次元格子の位相分布を決定するには、2つ
の1次元格子を直交させて重ねればよい。1次元格子の位
相値は0またはπであるから、以下の規則にしたがい、2
次元格子の位相分布も0またはπとなる。
【0045】 0+0=0、0+π=π、π+π=2π(=0) ・・・・(4) 本実施例では、実施例1において示した位相格子1と位相
格子3のデータを用いて、32×2個の集光スポットを同時
に発生させ得る2次元格子を設計、作製した。位相格子
の位相分布の平面図を図18に示した。
【0046】1列目と2列日の集光スポットの間隔を(2k
+1)△y、パルス間欠時間におけるステージ移動量を2
△yとする。集光スポット間隔とステージ移動量との関
係を詳細に調べると、加工を始めた初期の部分に円形の
加工部分がつながらない箇所が生じる。これを考慮する
と、1列で加工した時の加工速度に対する加工速度比β
は次式で与えられる。
【0047】 β=2{1−k/n} (kは自然数) ・・・・(5) ただし、△yは集光スポット径を考慮して決める畳、nは
照射したレーザパルスの数である。1列目と2列目の集光
スポットの間には位相差があるので、この位相差に起因
する集光スポット形状の変化が加工に悪影響を与えない
程度に、集光スポットの間隔(2k+1)△yを広げる必要
がある。
【0048】式(5)の関係を図19に示した。液晶パネ
ルの画素部を縦断するために要するステージ移動距離
(レーザパルス照射数nとステージ移動量2△yの積に等
しい)と比べると、集光スポット並びの間隔(2k+1)
△yは無視し得るくらいに短いので、加工速度比βは実
効的に2に等しくなる。すなわち、1次元格子の場合の2
倍の加工速度が得られることになる。
【0049】本実施例では、ステージ移動方向のスポッ
ト間隔を15μmに定め、50μsecのパルス間欠時間に、10
μmだけステージを移動させた(k=1,△y=5μmに相当
する)。こうして2台の発振器からのパルスビームで、
交互に、直径10μmの加工痕を32×2個同時に形成するこ
とを続けると、図17に示すように、間隔200μm、幅10μ
mの溝を間欠部分なく加工することができた。この間の
ステージの移動速度は毎秒200mmであり、毎秒6400mmの
加工速度を達成したことになる。図17の左端において加
工されていない部分が残っているが、ステージ移動速度
と2列のスポット間隔との関係で生じるものであり、無
視し得る程度のものである。
【0050】さらに、ステージ移動方向のビーム分岐数
を増やし、集光スポットの並びの数をm、それぞれの間
隔を(mk+1)△yとすると、加工速度比βは次式で与え
られる。
【0051】 β=m{1−(m−1)k/n} (kは自然数)・・・・(6) すなわち、集光スポットを1列だけ並べて加工する時と
比べて、加工速度比βはm倍となり、加工速度を大きく
向上させることができる。
【0052】(実施例5)本発明のレーザ加工装置の構
成を図20に示す。実施例1に対する構成上の相違は、1次
元格子と偏光分離素子を組み合わせることにより、複数
列のスポット並びを同時に発生させる点にある。
【0053】レーザ発振機1101a、1101bはQスイッチYAG
レーザであり、直線偏光のTEM00モードを出射する。発
振器の内のブリュースター素子の姿勢を違えて、あるい
は、発振器の外に波長板を配置して、発振器から出射さ
れる2本のビーム1104a、1104bが互いに直交する直線偏
光となるようにする。2本のビーム1104aと1104bは、そ
れぞれ、エクスパンダコリメータ1105aと1105bで拡大さ
れる。偏光合成素子1107を通過した後に、ビームは共通
の光路を進み、偏光分離素子5101へ入射する。
【0054】偏光分離素子5101の進相軸(あるいは遅相
軸)の方位を、ビームの偏光方位に対して45°になるよ
うに定める。ビームの直交する2つの偏光成分は、所定
の角度だけ分離された後に、波長板1108により楕円偏光
になり、位相格子1109へ入射する。位相格子1109は、実
施例1で使用した位相格子と同じものであり、1本のビー
ムを32本のビームに分岐する作用を有する。この後で、
集光レンズ110を介して、ステージ移動方向に所定の間
隔だけ離して、32個の集光スポットの並びを2列、ITO膜
上に形成する。1列目と2列目の集光スポットの間には位
相差があるので、この位相差に起因する集光スポット形
状の変化が加工に悪影響を与えない程度に、集光スポッ
トの間隔を広げる必要がある。こうして、2次元格子の
場合と同じく(実施例4)、加工速度比を2倍に向上させ
ることができる。
【0055】本実施例に用いた偏光分離素子の構成を図
22に示す。この素子は、屈折率が異なる2つのくさび(5
301、5302)が張り合わされて成る。一方のくさびの屈
折率をn1e、n1o、もう片方の屈折率をn2e、n2oとおい
て、n1e=n1o、n2e≠n2o=n1eなる関係を満足するよう
に、くさび材料を選ぶ。ただし、添字のe、oは異常光
線、常光線を表す。このようにすると、S偏光成分から
得た32本の回折ビームは直進し、P偏光成分から得た32
本の回折ビームは所定の角度だけ偏向される。なお、屈
折率の組み合わせを違えることにより、2本のビームを
ともに互いに反対方向へ所定の角度だけ偏向させること
もできる。
【0056】1列目と2列目のスポット並びの間隔(2k+
1)△yと、偏光分離素子が与える分離角度θ、の間には
次の関係がある。
【0057】(2k+1)△y=f・θ ・・・・(7) 式(7)から、分離角度θは、 θ=(2k+1)△y/f ・・・・(8) となる。例えば、f=100mm、(2k+1)△y=15μm、と
すると、θ=0.15radとなる。
【0058】偏光分離素子のくさびの角度をφ、偏向に
要する屈折率差を△nとすると、 φ・△n≒θ ・・・・(9) であるから、φ=150mradとすると△n≒0.001となる。
△nとしては、十分に実現できる値である。
【0059】本実施例では、ステージ移動方向のスポッ
ト間隔を15μmに定め、50μsecのパルス間欠時間に、10
μmだけステージを移動させた。こうして2台の発振器か
らのパルスビームで、交互に、直径10μmの加工痕を32
×2個同時に形成することを続けると、図17に示すよう
に、間隔200μm、幅10μmの溝を間欠部分なく加工する
ことができた。この間のステージの移動速度は毎秒200m
mであり、毎秒6400mmの加工速度を達成したことにな
る。
【0060】なお、本実施例では、1枚の偏光分離素子
を使い、32×2個の集光スポットを同時に発生させた
が、複数の偏光分離素子を波長板を挟んで重ねることに
より、32個の集光スポットの並びを2列以上同時に発生
させることもできる。
【0061】(実施例6)本発明のレーザ加工装置の構
成を図23に示す。実施例1に対する構成上の相違は、1次
元格子と偏向分離素子を組み合わせることにより、集光
スポットの並びを2列同時に発振生させる点にある。
【0062】レーザ発振器1101a、1101bはQスイッチYAG
レーザであり、直線偏光のTEM00モードを出射する。レ
ーザ発振器内のブリュースター偏光素子の姿勢を違え
て、あるいは、波長板を用いて、レーザ発振器から出射
される2本のビーム1104a、1104bが互いに直交する直線
偏光となるようにする。2本のビームはエクスパンダコ
リメータ1105aと1105bで拡大される。偏光合成素子1107
により合成され、先のふたつのビームは共通の光路を進
む。波長板6101を用いて、ビームの偏光方位を、偏光分
離素子6102の進相軸(あるいは違相軸)の方位に対して
45°に定める。こうすることにより、偏光分離素子6102
へ入射したビームは、等しく振幅分割される。分割され
たそれぞれの成分は、波長板1108により楕円偏光にな
り、偏向分離素子6104へ入射する。
【0063】偏向分離素子6104の構造を図25に示した。
偏向分離素子6104の表面には位相格子が形成されてい
て、裏面にはウエッジが形成されている。位相格子6301
は2つの領域(図中のA、B)を有し、領域Aは偏向分離素
子により分割された半分の振幅成分を、領域Bは残りの
半分の振幅成分を受ける。領域A、Bに形成した位相格子
はどちらも、実施例1に示した位相データ1から作製した
位相格子であり、等しく振幅分割された2つの成分のそ
れぞれを32本のビームに分岐する作用を有する。ウエッ
ジ6304のウエッジ法線6305は、位相格子の格子ベクトル
6302と基板法線6303がつくる平面内にある。
【0064】偏向分離素子6104の裏面に形成されたウッ
ジ6304により、位相格子を透過した2つの振幅成分の間
には所定の角度が与えられる。この結果、半分の振幅成
分から得た32本のビームと残りの半分の振幅成分から得
た32本のビームは、それぞれ、集光レンズ1110を介し
て、ステージ移動方向に所定の間隔だけ離れた位置に、
32個の集光スポットの並びをITO膜上に形成する。
【0065】本実施例では、スポット間隔を15μmに定
め、50μsecのパルス間欠時間に、10μmだけステージを
移動させた。この結果、図24に示すように、幅10μmの
溝を間欠部分なく加工することができた。この間のステ
ージの移動速度は毎秒200mmであり、毎秒6400mmの加工
速度を達成したことになる。こうして、2次元格子の場
合と同じく、加工速度比を2倍に向上させることができ
た。
【0066】(実施例7)本発明のレーザ加工装置の構
成を図26に示す。実施例1に対する構成上の相違は、複
数の開溝を同時に形成する代わりに、ステージ移動方向
に長い棒状の集光強度分布をつくり、ステージをより速
く移動させることで、加工速度を高める点にある。
【0067】レーザ発振器1101a、1101bはQスイッチYAG
レーザであり、直線偏光のTEM00モードを出射する。発
振器の内のブリュースター素子の姿勢を違えて、あるい
は、発振器の外に波長板を配置して、それぞれの発振器
から出射される2本のビーム1104a、1104bが互いに直交
する直線偏光となるようにする。2本のビーム1104aと11
04bは、それぞれ、エクスパンダコリメータ1105aと1105
bで拡大される。この後で、ビームは、偏光合成素子110
7により合成され、共通の光路を進み、偏光分離素子710
1へ入射する。本実施例で用いた偏光分離素子の構造
は、基本的には、先に図22に示したものと同じである。
なお、図26の構成には、ビームを楕円偏光化するための
波長板は使用しない。
【0068】各々のビームの直交するふたつの偏光成分
は、所定の角度だけ分離された後に、位相格子7102へ入
射する。位相格子7102は、実施例1に示した位相格子6の
データから作製した位相格子であり、1本のビームを5本
のビームに分岐する作用を有する。そして、一方の偏光
成分から得た5本の回折ビームと、もう一方の偏光成分
から得た5本の回折ビームに集光レンズ1110を作用させ
ることにより、ITO膜の表面に、スポット間隔の半分だ
け互いにずれたスポット列を、ステージ移動方向と平行
な同一直線上に形成する。
【0069】図28に、集光スポットが照射されるITO膜
の表面における光強度分布を示す。図28(a)は、一方
の偏光成分がつくる光強度分布、図28(b)は、もう一
方の偏光成分がつくる光強度分布である。それぞれの光
強度分布は互いに、スポット間隔の半分だけ位置がずれ
ている。これらの光強度分布をコヒーレントに足し合わ
せると(振幅と位相を配慮して足し合わせる)、図28
(c)のようになる。すなわち、幅がスポット径にほぼ
等しく、長さがスポット径のおよそ5.5倍の光強度分布
をつくることができる。図28(a)(b)に示した光強度
分布は、偏光方向が互いに直交するので、干渉すること
がない。したがって、隣接する集光スポット間の位相差
の影響を受けることがないので、ほぼ均一な光強度分布
が得られる。均一な幅と深さの溝を形成するには、ITO
膜上での光強度分布を均一にする必要がある。ITO膜上
での光強度分布の均一性は、位相格子とビームの相対的
な大きさから決まる。本実施例では、位相格子へ入射す
るビーム径を格子周期の長さのほぼ2倍に等しくし、エ
クスパンダコリメータを用いてビーム径を調節すること
により、スポットの並びの複素振幅分布の形状を最適化
した。ビーム径を12mm(1/e2)とすると、位相格子の
周期pは、p=6.5mmとなる。
【0070】集光スポットのずらし量△sと偏光分離素
子が与える分離角度θの間には、つぎの関係がある。 △s=f・θ ・・・・(10) これから、スポット径の半分だけスポットの並びをステ
ージ移動方向へずらすには、△s=w/2から、w=10μ
m、f=100mmとすると、θ=50μradとなる。
【0071】偏光分離素子のくさびの角度をφ、偏向に
要する屈折率差を△nとすると、 φ・△n≒θ ・・・・(11) であるから、φ=50mradとすると△n≒0.001となる。
△nとしては、十分に実現できる値である。
【0072】本実施例では、ピークパワー5.3xWのビー
ム1本を偏光分離素子で2本に分岐して、それそれの偏光
成分から、位相格子7102により5本の回折ビームを得
た。そして、集光レンズ1110により、合計10本の回折ビ
ームを光学的にフーリエ変換し、ITO膜の表面に、幅18
μmで長さ99μmの集光強度分布を形成した。この集光強
度分布により、幅10μm、長さ91μmにわたり、ITO膜を
除去することができた。
【0073】本実施例では、50μsecのパルス間欠時間
にステージを45μmだけ移動させた。こうして、図27に
示すように、幅10μmの溝を間欠部分なく、ITO膜の表面
に加工することができた。この時の加工速度は、ステー
ジの移動速度に等しく、毎秒90mmである。
【0074】本実施例では5分岐用の位相格子を用いた
が、ステージ制御系からの要求に合わせて、分岐数を増
減することは可能である。 被加工物の閾値特性、使用するレーザ発振器の出力
及び台数、ステージ制御系への負荷を考慮してビーム
径と位相格子の大きさを決めることにより、集光スポッ
トの並びの複素振幅分布を最適化して均一な加工溝を得
ることができる。
【0075】(実施例8)本実施例のレーザ加工装置の
構成を図29に示す。実施例1に対する構成上の相違は、
複数の開溝を同時に形成する代わりに、ステージ移動方
向に長い棒状の集光強度分布をつくり、ステージ移動速
度を速くすることにより加工速度を高める点にある。
【0076】レーザ発振器1101a、1101bはQスイヅチYAG
レーザであり、直線偏光のTEM00モードを出射する。レ
ーザ発振器内のブリュースター偏光素子の姿勢を違え
て、あるいは、発振器の外に波長板を配置して、それそ
れの発振器から出射されるビームが互いに直交する直線
偏光となるようにする。2本のビーム1104aと1104bは、
エクスパンダコリメータ1105aと1105bで拡大される。こ
の後で、偏光合成素子1107により合成され、先のふたつ
のビームは共通の光路を進む。波長板8101を用いて、ビ
ームの偏光方位を、偏光分離素子8102の進相軸(あるい
は遅相軸)の方位に対して45°に定める。こうすること
により、偏光分離素子8102へ入射したビームは、等しく
振幅分割される。分割されたそれぞれの成分は、偏向分
離素子8104へ入射する。
【0077】本実施例で用いた偏向分離素子の構造は、
基本時には、先に図25に示したものと同じである。位相
格子が形成されていて、裏面にはウエッジが形成されて
いる。位相格子は2つの領域を有し、一方の領域は偏光
分離された半分の振幅成分を、もう一方の領域は残りの
半分の振幅成分を受ける。ふたつの領域に形成した位相
格子はどちらも、実施例1に示した位相格子4のデータか
ら作製した位相格子である。
【0078】偏向分離素子8103の裏面に形成されたウエ
ッジにより、位相格子を透過した2つの振幅成分の間に
は所定の角度が与えられるので、半分の振幅成分から得
た8本のビームと、残りの半分の振幅成分から得た8本の
ビームに集光レンズ1110を作用させることにより、ITO
膜の表面に、スポット間隔の半分だけ互いにずれたスポ
ット列を、ステージ移動方向と平行な同一直線上に形成
する。
【0079】図31に、集光スポットが照射されるITO膜
の表面における照射強度分布を示す。図31(a)は、一
方の偏光成分がつくる光強度分布、図31(b)は、もう
一方の偏光成分がつくる光強度分布である。それぞれの
光強度分布は互いに、スポット間隔の半分だけ位置がず
れている。これらの照射強度分布を足し合わせると、図
31(c)のにようになる。すなわち、幅がスポット径に
ほぼ等しく、長さがスポット径のおよそ8.5倍の光強度
分布をつくることができる。図31(a)(b)に示した光
強度分布は、偏光方向が互いに直交するので、干渉する
ことがない。したがって、隣接する集光スポット間の位
相差の影響を安けることがないので、ほぼ均一な光強度
分布が得られる。なお、図29の構成には、ビーム1113を
楕円偏光化するための波長板は使用しない。
【0080】均一な幅と深さの溝を形成するには、ITO
膜上での光強度分布を均一にする必要がある。ITO膜上
での光強度分布の均一性は、位相格子とビームの相対的
な大きさから決まる。本実施例では、位相格子へ入射す
るビ−ム径を格子周期の長さと等しくし、エクスパンダ
コリメータを用いてビーム径を調節することにより、ス
ポットの並びの複素振幅分布の形状を最適化した。ビー
ム径を12mm(1/e2)とすると、位相格子の周期pは、p
=12mmとなる。
【0081】集光スポットのずらし量△sと偏光分離素
子が与える分離角度θの間には、つぎの関係がある。 △s=f・θ ・・・・(12) これから、スポット径の半分だけスポットの並びをステ
ージ移動方向へずらすには、△s=w/2から、w=10μ
m、f=100mmとすると、θ=50μradとなる。
【0082】偏光分離素子のくさびの角度をφ、偏向に
要する屈折率差を△nとすると、 φ・△n≒θ ・・・・(13) であるから)φ=50mradとすると△≒0.001となる。△
nとしては、十分に実現できる値である。
【0083】本実施例では、ピークパワー5.3xWのビー
ム1本を偏向分離素子で2本に分岐して、それぞれの振幅
成分から、位相格子8104で8本の回折ビームを得た。そ
して、集光レンズにより、合計16本の回折ビームを光学
的にフーリエ変換し、ITO膜の表面に、幅18μmで長さ15
3μmの集光強度分布を形成した。この集光強度分布によ
り、幅10μm、長さ145μmにわたり、ITO膜膿を除去する
ことができた。
【0084】本実施例では、50μsecのパルス間欠時間
にステージを70μmだけ移動させた。こうして、図31に
示すように、幅10μmの溝を間欠部分なく、ITO膜の表面
に加工することができた。この時の加工速度は、ステー
ジの移動速度に等しく、毎秒1400mmである。
【0085】本実施例では8分岐用の位相格子を用いた
が、ステージ制御系からの要求に合わせて、分岐数を増
減することは可能である。被加工物の閾値特性、使
用するレーザ発振器の出力及び台数、ステージ制御系
への負荷を考慮してビーム径と位相格子の大きさを決め
ることにより、集光スポットの並びの複素振幅分布を最
適化して均一な加工溝を得ることができる。
【0086】(実施例9)本発明のレーザ加工装置の構成
を図32に示す。実施例1ないし8に対する構成上の相違点
は、レーザ発振器を1台だけ備えている点にある。
【0087】レーザ発振器9101はQスイッチYAGレーザで
あり、直線偏光のTEM00モードを出射する。レーザ発振
器のQスイッチ周波数は、Qスイッチドライバ9102により
制御される。エクスパンダコリメータ9104により、発振
器から出射されるビーム9103を拡大する。波長板9106に
よりビームの偏光を楕円偏光にした後に、位相格子9107
へ入射させる。位相格子9107は、1本の入射ビームを32
本の回折ビームに分岐する作用を有する。位相格子9107
から出射された32本のビームは、集光レンズ9108を介し
て、精密ステージ9110の上に保持きれたITO膜9109の表
面に、32個の集光スポット9111を所定の間隔で形成す
る。そして、精密ステージ9110を移動することにより、
直線状あるいは曲線状にITO膜を切断する。図中、9105
は光路折り曲げミラーである。
【0088】波長板を用いてビームを楕円偏光にするこ
とにより、ITO膜が有する異方性、不均一性や、ITO膜上
の付着物に左右されることなく、均一な幅と深さでITO
膜を切断できるので、所要の加工品質を恒常均に維持す
ることが可能となる。
【0089】使用したレーザ発振器はQuantronix社製の
ランプ励定型QスイッチYAGレーザであり、発振波長532n
m、定格平均出力8Wである。加工条件とガラス基板への
損傷について調べるために、位相格子を使用せずに、Q
スイッチ周波準を変えて1本の開溝を加工する実験を繰
り返した。その結果、Qスイッチ周波数を10KHz以下に設
定すれば、ITO膜及び下地のガラス基板にダメージを与
えることなく、開溝を形成できることが判明した。ま
た、加工できるかどうかは、Qスイッチ周波数に依らす
に、ピークパワーの大小から決まることが判明した。
【0090】図5(a)(b)に、それぞれ、Qスイッチ周
波数が10KHzと30KHzの時のレーザ出力と時間の関係を示
した。加工時のピークパワーを150Wとすると、Qスイッ
チ周波数が10KHzの時のパルス幅とパルスエネルギー
は、それぞれ、150nsec、23μJである。他方、Qスイッ
チ周波数が30KHzの時のパルス幅とパルスエネルギー
は、それぞれ、300nsec、45μJであるこれらのレーザ発
振条件でガラス基板上のITO膜を加工すると、Qスイッチ
周波数が10KHzの条件では損傷は生じなかったが、30KHz
の条件では溝周縁部ならびにガラス基板表面に微細な損
傷が発生した。30KHzの時に損傷が発生した理由は、パ
ルス幅が広がり、過剰のエネルギーが投入されたからで
ある。すなわち、ピークパワーが加工閾値に達している
場合でも、Qスイッチ周波数から決まるパルス幅が許容
値以上に広がっていると、加工時の損傷が避けられない
のである。このような場合には、損傷を避けることを目
的に、パルスエネルギーを小さくすることは効果がな
い。なぜならば、ピークパワーが加工閾値を超えなくな
り、加工できなくなるからである。
【0091】以上の結果をふまえ、ビームの分岐数及び
加工速度に配慮して、レーザ発振器のQスイッチ周波数
を10KHz、定格平均出力を8Wに定めた。この時のパルス
幅は150nsec、ピークパワーは定格出力時の5.3KWであ
る。図33は、本実施例におけるレーザ出力と時間の関係
を示す図である。
【0092】厚み1500オングストロームのITO膜に1本の
開溝を形成するには、110W以上のピークパワーを要す
る。そこで、先に述べた位相格子1109を使い、ピークパ
ワー5.3KWのビームを32本のビームに分岐することにし
た。そして、集光レンズで32本のビームを光学的にフー
リエ変換して、ITO膜の表面に間隔が200μmの32個の集
光スポットを照射した。この時の集光スポット径は18μ
mであり、ITO膜上に形成された加工痕の径は10μmであ
る。こうして、1発のパルスにより、直径10μmの加工痕
を32個同時に形成することができるのである。集光スポ
ット径と加工径の閑孫を図6に示した。ITO膜が有する閾
値特性のために、集光スポット径よりも小さい加工痕が
得られる点に注目されたい。
【0093】次のパルスが発振するまでの100μsecの間
欠時間に、精密ステージを使い、加工痕の直径の半分に
相当する5μmに等しい距離だけ基板を移動させる。こう
して2台の発振器からのパルスビームで、交互に、直径1
0μmの加工痕を32個同時に形成することを続けると、図
34に示すように、間隔200μm、幅10μmの溝を間欠部分
なく加工することができた。この間のステージの移動速
度は毎秒50mmであり、常に一定である。同時に32本の溝
を加工することにより、毎秒1600mmの加工速度を達成し
たことになる。
【0094】32個の集光スポットの並び方向をステージ
移動方向に対して傾けることにより、スポットの間隔す
なわち加工溝の間隔を自由に調節することもできる。ス
ポットの並び方向を傾けるには、回転ステージを使い、
位相格子をその面内で回転させればよい。このような調
節機構を備えることにより、液晶パネルの仕様に合わせ
て、高精度に電極パターニングを行うことが可能にな
り、さらに、電極間隔が異なる液晶パネルの試作へも容
易に対応できる。したがって、商品開発のリードタイム
を大幅に短縮できることになる。
【0095】本実施例の加工装置ならびに加工方法によ
れば、ITO膜を10μm以下の切断幅でパターニングするこ
とができる。このことにより、液晶パネルの表示品質を
支配する主要因であるところの開口率ならびにコントラ
スト比が大きく向上する。他方、従来のフォトリソグラ
フィによる電極加工で得られる電極ギャップは30μmで
あり、液晶パネルの開口率ならびにコントラスト比を低
下させる大きな原因となっていた。
【0096】本実施例では、ランプ励定型QスイッチYAG
レーザを用いたが、半導体レーザ励定型QスイッチYAGレ
ーザを用いてもよい。また、YAGレーザの代わりにYLFレ
ーザを使用した場合でも、同等の効果が得られる。さら
に、固体レーザに限らすに、パルス発振が可能な気体レ
ーザを用いることもできる。また、加工に適したQスイ
ッチ周波数はレーザ発振器の特性に依存し、本実施例に
おいて引用した10KHzに限るものではない。使用するレ
ーザ発振器の特性ならびに被加工物の特性に合わせて、
最適なQスイッチ周波数を決定しなければならない。
【0097】上記の実施例では、間隔200μm、幅10μm
の溝加工について発明の効果を鋭明したが、これらの条
件が異なる溝加工についても、位相格子の周期を変え
ることにより、あるいは、集光レンズの焦点距離を変
えることにより、容易に対応することができる。ビーム
分岐数も、32本に限るものではなく、レーザ加工装置の
仕様に合わせて決定すればよい。例えば、表2あるいは
表4のデータを使い、16分岐用の位相格子を作製して用
いることもできる。被加工物の物性、使用するレー
ザ発振器の出力及び台数を考慮し、加工能力の観点から
最適な分岐数を定め、所要の位相格子を設計、製作する
ことにより、多くの加工用途へ容易に対応することがで
きる。
【0098】(実施例10)実施例1ないし9の加工装置に
より加工されたITO膜基板上に配向膜を形成し、この配
向膜に対して所要の配向処理(例えば、ラビング処理)
を加える。配向処理を終えた、電極パターンが直交する
2枚のITO膜基板の間に液晶を封入し、液晶パネルを組み
立てる。組み上げた液晶パネルに駆動回路を実装するに
は、図35に示すように、3つの方法がある。なお、以下
の説明で用いるTABなる語は、TapeAutomated Bonding
の略称であり、一般には、駆動回路をテープ上に形成す
ることを意味する。ここでは、駆動回路が形成されたテ
ープという意味で、TABテープなる語を用いる。 (1)TABテープをパネルの片側だけに実装する方法 TABテープ10102における配線間隔は、液晶パネルの画素
電極10101の間隔に等しい。の実装方法によれば、液晶
パネルとTABテープをつなぐ中間領域(例えば、図36に
おいて開溝が傾斜している領域)が不要になり、液晶パ
ネルの上下の一方ならびに左右の一方だけにTABテープ
を配置すれば足りるので、液晶パネルの収納スペースを
大幅に節約できる。液晶パネルの収納スペースを節約す
ることにより、表示装置を小さくかつ軽くできる、多彩
なオプション機能を付加できる、といった効果が生まれ
る(図35(a)参照) (2)TABテープをパネルの両側に千鳥状に実装する方法 TABテープには熱収縮があるので、液晶パネルの一辺の
長さにわたり、TABテープの配線間隔の精度を確保する
ことが難しい場合がある。この点に、上記(1)の実装
方法の技術的困難さがある。そこで、適当な長さのTAB
テープ10202を複数用意して、液晶パネルの上下及び左
右に千鳥状に配置することにより、TABテープの配線精
度を確保することができる。このような実装方法でも、
画素電極10201とTABテープ10202をつなぐ中間領域が不
要になるので、液晶パネルの収納スペースを節約する効
果は大きい。(図35(b)参照) (3)TABテープを中間領域を介して実装する方法 例えばガルバノミラーを使い、ステージ移動方向と直交
する方向にビームをふることにより、図36に示すような
電極パターンを形成する。このような電極パターンを中
間領域10303として設けて、画素電極10301とTABテープ1
0302を接続する。この方法は、液晶パネルの収納スペー
スを節約する効果は小さいが、従来の実装部品をそのま
ま使用できるので、上記(1)(2)の方法に比べて、実
装コストを低く抑える効果は格段に大きい。(図35
(c)参照) 実施例1ないし9の加工装置により加工された、単純マト
リクス駆動型液晶パネルのストライプ電極の平面図を図
37(a)に示した。電極ピッチは200μm、電極ギャップ
は10μmである。図中、11101は上側基板の電極ギャップ
であり、11102は下側基板の電極ギャップである。上側
と下側の区別は、液晶パネルの前に立った視認者から見
た時に、手前が上側、奥が下側というふうに定めた。
【0099】他方、従来のやり方にしたがい、フォトマ
スク露光によりパターニングされたストライプ電極の拡
大図を図37(b)に示す。図中、11201は上側基板の電極
ギャップであり、11202は下側基板の電極ギャップであ
る。電極ピッチは200μm、電極ギャップは30μmであ
る。
【0100】液晶パネルの表示品質を決定する主たる要
因は、電極開口率と、コントラスト比である。電極開口
率とは、光の透過率(あるいは反射率)を制御すること
が可能な有効電極面積のことである。電極開口率を次式
により定義する。 α=(P−g)2/P2=(1−g/P)2・・・・(14) ただし、Pは電極ピッチ、gは電極ギャップである。当
然、α<1である。
【0101】他方、コントラスト比とは、光の透過率
(あるいは反射率)の最大値と最小値の比のことであ
り、次式により定義できる。 C=χ・P2〔P2−(P−g)2〕=χ/(1−α)・・・・(15) ただし、χは、主に、液晶の配向条件、液晶層の厚さ、
駆動条件から決まる変数である。式(14)と式(15)か
ら、電極開口率とコントラスト比の間には、大きな相関
があることが理解できる。
【0102】式(14)と式(15)を使い、図37に示した
2種瀬の液晶パネルの電極開口率とコントラスト比を計
算した。本発明の液晶パネルについては、電極開口率
0.90、コントラスト比20を得た。他方、従来の液晶パ
ネルでは、電極開口率0.72、コントラスト比3.6を得
た。これらの計算値に対して、実測値は、本発明の液晶
パネルが、電極開口率0.90、コントラスト比45であ
り、従来の液晶パネルが、電極開ロ率0.70、コントラ
スト比30であった。
【0103】本発明のレーザ加工装置及び加工方法を用
いて液晶パネルの電極パターニングを行うことにより、
電極ギャップを従来の3分の1以下(10μm以下)狭め、
電極開口率を1.3倍に、コントラスト比を1.5倍にでき
た。この結果、本発明の液晶パネルの視認性は、従来の
液晶パネルと比ベて、格段に向上した。産業上の利用可
能性以上のように、本発明のレーザ加工装置は、微細切
断加工や微細穴開け加工へ幅広く利用できる。本発明の
レーザ加工方法は、とくに、液晶パネルの電極パターニ
ングに適している。本発明の液晶パネルは、開口率およ
びコントラスト比が高く、従来の液晶パネルよりも表示
品質において格段に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のレーザ加工装置の構成を示す図であ
る。
【図2】2台のレーザ発振器が交互に駆動されることを
説明する図である。
【図3】加工溝の形状を示す平面図である。
【図4】加工されたITO膜の平面図である。
【図5】Qスイッチ周波数とビーム特性の関係を示す図
である。 (a)Qスイッチ周波数が10KHz (b)Qスイッチ周波数が30KHz
【図6】集光スポット径と加工径の関係を説明する図で
ある。
【図7】ITO膜及びガラス基板の断面図である。
【図8】1次元位相格子の概観を示す図である。
【図9】実施例2のレーザ加工装置の構成を示す図であ
る。
【図10】加工溝の形状を示す平面図である。
【図11】空間フィルタの振幅透過率分布を示す図であ
る。
【図12】集光スポットの形状を示す断面図である。 (a)空間フィルタあり (b)空間フィルタなし
【図13】実施例3のレーザ加工装置の構成を示す図で
ある。
【図14】加工溝の形状を示す平面図である。
【図15】アナモルフイツク集光レンズを説明する図で
ある。 (a)アナモルフイツク集光レンズの作用 (b)光強度分布
【図16】実施例4のレーザ加工装置の構成を示す図で
ある。
【図17】加工溝の形状を示す平面図である。
【図18】2次元位相格子の平面図である。
【図19】加工速度比が向上することを説明する図であ
る。
【図20】実施例5のレーザ加工装置の構成を示す図で
ある。
【図21】加工溝の形状を示す平面図である。
【図22】偏光分離素子の構成を示す断面図である。
【図23】実施例6のレーザ加工装置の構成を示す図で
ある。
【図24】加工溝の形状を示す平面図である。
【図25】偏向分離素子の構成を示す図である。 (a)は偏光分離素子の平面図。 (b)は偏光分離素子の断面図。
【図26】実施例7のレーザ加工装置の構成を示す図で
ある。
【図27】加工溝の形状を示す平面図である。
【図28】スリット状の光強度分布をつくる方法を説明
する図である。 (a)ビームのS偏向成分がつくる光強度分布。 (b)ビームのP偏向成分がつくる光強度分布。 (c)(a)と(b)のコヒーレント和
【図29】実施例8のレーザ加工装置の構成を示す図で
ある。
【図30】加工溝の形状を示す平面図である。
【図31】スリット状の光強度分布をつくる方法を説明
する図である。 (a)ビームのS偏向成分がつくる光強度分布。 (b)ビームのP偏向成分がつくる光強度分布。 (c)(a)と(b)のコヒーレント和
【図32】実施例9のレーザ加工装置の構成を示す図で
ある。
【図33】レーザ出力と時間の関係を説明する図であ
る。
【図34】加工溝の形状を示す平面図である。
【図35】液晶パネルの実装方法を説明する図である。 (a)TABテープをパネルの片側だけに実装する場合 (b)TABテープをパネルの両側に千鳥状に実装する場合 (c)TABテープを中間領域を介して実装する場合
【図36】ストライプ電極とTABテープを接続する中間
領域の平面図である。
【図37】液晶パネルの電極パターンの平面図である。 (a)本発振明の加工装置及び加工方法により加工した
電極パターン (b)従来の加工方法により加工した電極パターン
【符号の説明】
1101a レーザ発振器 1101b レーザ発振器 1102a Qスイッチドライバ 1102b Qスイッチドライバ 1103 コントローラ 1104a レーザビーム 1104b レーザビーム 1105a エクスパンダコリメータ 1105b エクスパンダコリメータ 1106 光路折り曲げミラー 1107 偏光合成素子 1108 波長板 1109 1次元位相格子 1110 集光レンズ 1111 ITO膜基板 1112 精密ステージ 1113 集光スポット 1201 加工溝 1202 ITO膜 1301 加工溝 1302 ITO膜 1401 ITO膜 1402 SiO2緩衝膜 1403 ガラス基板 2101 空間フィルタ 2201 加工溝 2202 ITO膜 3101 アナモルフイツク集光レンズ 3201 加工溝 3202 ITO膜 3301 非球面アナモルフイツク集光レンズ 3302 レーザビーム 3303 楕円形状の集光スポットの並び 4101 2次元位相格子 4201 加工溝 4202 ITO膜 5101 偏光分離素子 5201 加工溝 5202 ITO 5301 くさび 5302 くさび 6101 波長板 6102 偏光分離素子 6103 光路折り曲げミラー 6104 偏向分離素子 6201 加工溝 6202 ITO膜 6301 位相格子 6302 格子ベクトル 6303 基板法線 6304 ウエッジ 6305 ウエッジ法線 7101 偏光分離素子 7102 1次元位相格子 7201 加工溝 7202 ITO膜 8101 波長板 8102 偏光分離素子 8103 光路折り曲げミラー 8104 偏光分離素子 8201 加工溝 8202 ITO膜 9101 レーザ発振器 9102 Qスイッチドライバ 9103 レーザビーム 9104 エクスパンダコリメータ 9105 光路折り曲げミラー 9106 波長板 9107 位相格子 9108 集光レンズ 9109 ITO膜基板 9110 精密ステージ 9111 集光スポット 10101 画素電極 10102 TABテープ 10201 画素電極 10202 TABテープ 10301 画素電極 10302 TABテープ 10303 中間領域 10401 加工溝 10402 ITO膜 11101 上側電極ギャップ 11102 下側電極ギャップ 11201 上側電極ギャップ 11202 下側電極ギャップ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平5−186442 (32)優先日 平成5年7月28日(1993.7.28) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平5−240090 (32)優先日 平成5年9月27日(1993.9.27) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平6−4244 (32)優先日 平成6年1月19日(1994.1.19) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 曽根原 富雄 長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコ ーエプソン株式会社内 (72)発明者 太田 勉 長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコ ーエプソン株式会社内 Fターム(参考) 4E068 CA01 CD02 CD04 CD08 DA11

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】レーザ発振器と、前記レーザ発振器から出
    射されるビームを分岐する位相格子と、分岐されたビー
    ムを集光し被加工物に照射する集光レンズと、を有する
    レーザ加工装置において、前記位相格子により分岐され
    た複数のビームを前記被加工物の複数箇所に同時に照射
    し加工することを特徴とするレーザ加工装置。
  2. 【請求項2】 レーザ発振器と、前記レーザ発振器から
    出射されるビームを分離する偏光分離素子と、前記ビー
    ムを分岐する位相格子と、ビームを集光し被加工物に照
    射する集光レンズと、を有するレーザ加工装置におい
    て、前記ビームを複数列の集光スポットの並びに分ける
    ことを特徴とするレーザ加工装置。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載のレーザ
    加工装置において、前記被加工物が導電性膜であること
    を特徴とするレーザ加工装置。
  4. 【請求項4】 請求項1または請求項2に記載のレーザ
    加工装置において、前記レーザ発振器から出射されるビ
    ームがYAGレーザであることを特徴とするレーザ加工装
    置。
  5. 【請求項5】 レーザ発振器から出射されるビームを位
    相格子に入射させ、前記位相格子により前記ビームを複
    数に分岐し、分岐された複数のビームを集光レンズによ
    り被加工物に照射して被加工物を加工するレーザ加工方
    法において、前記位相格子により分岐された複数のビー
    ムを前記被加工物の複数箇所に同時に照射させ加工する
    ことを特徴とするレーザ加工方法。
  6. 【請求項6】 レーザ発振器から出射されるビームを偏
    光分離素子および位相格子に入射させ、前記ビームを複
    数に分岐し、分岐された複数のビームを集光レンズによ
    り被加工物に照射して被加工物を加工するレーザ加工方
    法において、前記ビームを複数列の集光スポットの並び
    に分けることを特徴とするレーザ加工方法。
  7. 【請求項7】 請求項5または請求項6に記載のレーザ
    加工方法において、前記被加工物が導電性膜であること
    を特徴とするレーザ加工方法。
  8. 【請求項8】 請求項5または請求項6に記載のレーザ
    加工方法において、前記レーザ発振器から出射されるビ
    ームがYAGレーザであることを特徴とするレーザ加工方
    法。
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