JP2002238577A - 脳動脈瘤感受性遺伝子 - Google Patents

脳動脈瘤感受性遺伝子

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Otsuka Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 脳動脈瘤の発症リスク遺伝子をクローニング
する。 【解決手段】ヒト・エラスチン遺伝子のイントロンの部
分の遺伝子多型を同定することにより、脳動脈瘤の発症
のリスクの存在を判定する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脳動脈瘤(クモ膜
下出血)に関与する遺伝子、および該遺伝子の利用に関
する。
【0002】
【従来の技術】「国民衛生の動向」によると、脳血管疾
患(脳卒中)の死亡率は、高血圧症管理の徹底、生活環境
の改善などにより昭和40年代以降順調に低下し、昭和
60年には第三位となった。しかし脳卒中死亡率は低下
したものの、治療方法の進歩、軽症例の増加によりその
患者総数は、著しく増加し、いわゆる「寝たきり」の最
大の原因となっている。脳卒中の中でもクモ膜下出血の
死亡率は昭和26年より一貫して漸増している。手術療
法の目覚しい進歩があるものの手術対象となるのはクモ
膜下出血患者の一部で、約半数の患者は初回出血で、死
亡するためである。特に高齢者でのくも膜下出血は重症
例が多く、手術成績も不良で、「寝たきり」にいたるケ
ースが多い。そのため、早期発見、早期治療(出血前に
発見し治療する)を行なう二次予防が、是非必要とされ
ている。しかしながら、早期発見、早期治療のために、
例えば高血圧症の管理の他に何を指標するかについて、
未だ定かではない現状にある。
【0003】一方、これまでの疫学調査により、脳動脈
瘤の発生には、比較的強い遺伝背景があることが知られ
ている。全国1100ヶ所の脳神経外科関連施設の協力
により、104対の罹患同胞対(脳動脈瘤患者同胞)を集
めることが出来た。85家系収集され、その内訳は77
組の2人兄弟、7組の3人兄弟、1組の4人兄弟で、7
3家系では発端者がクモ膜下出血であり(脳動脈瘤破裂
確認済み)、12家系で発端者が、未破裂脳動脈瘤のみ
を認めている(Kasuya, H., et al., Neurosurgery, 46
(6) 1301-1306(2000))。遺伝要因の強さの指標である、
兄弟での相対危険率(λs)は6とされている。
【0004】とはいえ脳動脈瘤は遺伝的要因と環境的要
因が複雑に関与して、発症に至ると考えられるが、脳動
脈瘤の責任遺伝子は未だ知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、脳動脈瘤
の責任遺伝子を明らかにすべく、連鎖解析による遺伝子
座の同定をおこない、その結果、脳動脈瘤の発生との関
連性の高い責任遺伝子を見出した。
【0006】本発明の目的は、脳動脈瘤(クモ膜下出
血)と関連性の高い責任遺伝子の同定にあり、該遺伝子
の同定により、脳動脈瘤の遺伝的リスクを有するヒトを
同定し、脳出血を起こす前に診断する二次予防の体制の
確立することが可能となる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決するために鋭意研究を重ねた結果、脳動脈瘤罹患同
胞対連鎖解析により脳動脈瘤遺伝子座のひとつを7q1
1.23の領域に特定し、有力な候補遺伝子として、エ
ラスチン遺伝子を見出した。エラスチン遺伝子のエキソ
ン20(Nucleic Acids Research 19, 4314. 1991)及
び3UTR1(Human Gent., 104, 135-142)に遺伝子
多型が存在することは知られていたが、本発明者が更に
研究を重ね、エラスチン遺伝子の遺伝子多型と脳動脈瘤
との関連性をハプロタイプ解析により検討した結果、該
エラスチン遺伝子のイントロン部分、具体的にはイント
ロン20とイントロン23ハプロタイプが患者において
有意に頻度が高いことが判明し、このイントロン20と
イントロン23の組み合わせの遺伝子タイピングによ
り、脳動脈瘤の早期発見、早期治療に結びつく、クモ膜
下出血の罹患予防予測の診断ができることを見出した。
【0008】即ち、本発明によれば、ヒト・エラスチン
遺伝子の20番目のイントロン部位DNA配列の17番
目のDNAの遺伝子多型(野生型:T、変異型:C)、
且つ23番目のイントロン部位DNA配列の24番目の
DNAの遺伝子多型(野生型:T、変異型:C)を有す
る遺伝子が提供され、イントロン20中の該多型が野生
型(T)でイントロン23の遺伝子多型がCに変異した
ハプロタイプが提供される。
【0009】本発明によれば、検体から得られたDNA
において、前記ハプロタイプを検出することによって脳
動脈瘤のリスクの存在を判定する方法が提供される。具
体的には、本発明は、ヒト・エラスチン遺伝子の20番
目のイントロン部位DNA配列の17番目のDNAの遺
伝子多型及び且つ23番目のイントロン部位DNA配列
の24番目のDNAの遺伝子多型を同定することによ
り、脳動脈瘤の発症のリスクの存在を判定する方法を提
供するものである。
【0010】さらに本発明によれば、該前記方法のため
に、ヌクレオチド直接配列決定法、対立遺伝子特異的オ
リゴヌクレオチド(ASO)−ドットブロット分析、一塩基
プライマー伸長法、PCR−単鎖高次構造多型(SSCP)分
析、PCR−制限酵素断片長多型(RFLP)分析、インベー
ダー法および定量的リアルタイムPCR検出法のいずれ
かの方法を用いることを特徴とする前記ハプロタイプの
存在を検出することによって脳動脈瘤のリスクの存在を
判定する方法が提供される。好ましくは、例えば、一塩
基プライマー伸長法、具体的には、スナップショット(S
NaPshot)法またはピロシーケンス(Pyrosequencing)法を
用いることを特徴とする脳動脈瘤のリスクの存在を判定
する方法が提供される。
【0011】また、本発明によれば、少なくともヒト・
エラスチン遺伝子の部分配列であって、20番目のイン
トロン部位DNA配列が野生型および23番目のイント
ロン部位DNA配列が変異型であるオリゴDNAを提供
することができる。
【0012】さらに本発明によれば、ヒト・エラスチン
遺伝子のイントロン23の24番目の核酸配列を野生型
に変換するためのオリゴDNAを有効成分とする遺伝子
治療剤および該遺伝子治療剤を用いる遺伝子治療法が提
供できる。
【0013】また、本発明によれば前記・エラスチン遺
伝子のハプロタイプに影響を与える候補化合物のスクリ
ーニング方法が提供される。
【0014】本発明は、以下の発明を提供するものであ
る。
【0015】項1. ヒト・エラスチン遺伝子のイント
ロンの部分の遺伝子多型を同定することにより、脳動脈
瘤の発症のリスクの存在を判定する方法。
【0016】項2. ヒト・エラスチン遺伝子のイント
ロンの部分の遺伝子多型が、20番目のイントロン部位
DNA配列の17番目のDNAが野生型(T)であっ
て、且つ23番目のイントロン部位DNA配列の24番
目のDNAが野生型(T)からCに変異した変異型から
なるハプロタイプ(およびその相補鎖)の場合に脳動脈
瘤の発症のリスクが高いと判定する、項1に記載の方
法。
【0017】項3. 遺伝子多型を、ヌクレオチド直接
配列決定法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(AS
O)−ドットブロット分析、一塩基プライマー伸長法、P
CR−単鎖高次構造多型(SSCP)分析、PCR−制限酵素
断片長多型(RFLP)分析、インベーダー法および定量的リ
アルタイムPCR検出法からなる群から選ばれる少なく
とも一つを含む方法を用いて同定する、項1又は2に記
載の方法。
【0018】項4. 一塩基プライマー伸長法を用いて
同定する、項3に記載の方法。
【0019】項5. 以下の(a)及び(b)からなる
オリゴヌクレオチド (a)ヒト・エラスチン遺伝子にハイブリダイズするこ
とができる遺伝子多型検出用プライマー又はプローブと
してのオリゴヌクレオチドであって、該オリゴヌクレオ
チドが、ヒトエラスチン遺伝子の20番目のイントロン
部位DNA配列の17番目のDNAの遺伝子多型部位を
含む配列または該オリゴヌクレオチドの3’末端が該遺
伝子多型部位よりも1塩基から数塩基上流に位置するも
のであるオリゴヌクレオチド、(b)ヒト・エラスチン
遺伝子にハイブリダイズすることができる遺伝子多型検
出用プライマー又はプローブとしてのオリゴヌクレオチ
ドであって、該オリゴヌクレオチドが、ヒトエラスチン
遺伝子の23番目のイントロン部位DNA配列の24番
目のDNAの遺伝子多型部位を含む配列または該オリゴ
ヌクレオチドの3’末端が該遺伝子多型部位よりも1塩
基から数塩基上流に位置するものであるオリゴヌクレオ
チド。
【0020】項6. ヒト・エラスチン遺伝子の20番
目のイントロン部位DNA配列の17番目のDNAの遺
伝子多型検出用プライマー、ヒト・エラスチン遺伝子の
23番目のイントロン部位DNA配列の24番目のDN
Aの遺伝子多型検出用プライマー、を含む脳動脈瘤の発
症のリスク検出用診断キット。
【0021】項7. ヒト・エラスチン遺伝子の20番
目のイントロン部位DNA配列の17番目のDNAが野
生型(T)であって、且つ23番目のイントロン部位D
NA配列の24番目のDNAがTからCに変異した変異
型である、脳動脈瘤の発症のリスク検出のためのDNA
配列からなるハプロタイプ(およびその相補鎖)。
【0022】以下、本明細書におけるアミノ酸、ペプチ
ド、塩基配列、核酸等の略号による表示は、IUPAC
−IUBの規定〔IUPAc-IUB communication on Biologi
calNomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (198
4)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作
成のためのガイドライン」(特許庁編)及び当該分野に
おける慣用記号に従うものとする。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明において、「遺伝子多型」
とは、遺伝子中のある部位において、ヒトによって2種
以上の塩基が存在することをいい、ここでは一般集団で
頻度の高い型を野生型,それとは異なる頻度の低い型塩
基を有するものを変異型という。
【0024】また、ハプロタイプとは、一つのアレル
(ハプロイド)に存在する遺伝子変異の組み合わせをい
う。
【0025】本発明遺伝子の一具体例としては、後述す
る実施例に示されるイントロン20/イントロン23ハ
プロタイプと名づけられたヒト・エラスチン遺伝子の2
0番目のイントロン部位DNA配列の17番目のDNA
が野生型であって、且つ23番目のイントロン部位DN
A配列の24番目のDNAがTからCに変異した変異型
からなるハプロタイプを挙げることができる。
【0026】図4に示すように、ヒト・エラスチン遺伝
子の全長配列は、インデック(Indik)らが全長55kb
の34個のエキソンからなる遺伝子であると報告してい
る(Bashir, M., et al., J. Biol. Chem., 264, 8887-8
891(1989)。
【0027】本発明者は、104対の脳動脈瘤の罹患同
胞対(脳動脈瘤患者同胞)において、遺伝要因の強さ
(λs=6)を考慮したシュミレーションにより、この同
胞対数で十分遺伝子座を特定でき得ると予想し、罹患同
胞対連鎖解析法により、連鎖検定を行なった。ゲノム全
域での連鎖解析の結果、7番染色体のマーカーD7S2
472が最も強い連鎖結果を得た。多点連鎖解析の結
果、この領域で最大lod=3.22を得た。即ち、脳
動脈瘤遺伝子座のひとつを7q11.23に特定でき、
この領域に疾患遺伝子が存在することが強く示唆され
た。
【0028】本発明者は、最も強い連鎖を認めた7q1
1.23領域の遺伝マーカーに隣接してエラスチン遺伝
子が存在していることを見出し、該遺伝子について、遺
伝子変異のスクリーニングを直接シーケンス解析(実施
例3参照)にて行なった結果、13ヶ所で一塩基多型を
検出した。さらに本発明者は、エラスチン遺伝子多型と
脳動脈瘤との関連性をすべての多型についてアレル頻度
の比較をケースコントロールスタディで行ったが、個々
の変異では有意な差を得るにいたらなかった。しかしな
がら、2つの多型を組み合わせてハプロタイプ解析をお
こなった結果、ヒト・エラスチン遺伝子のイントロン2
0の17番目のDNAが野生型T(チミン)でイントロ
ン23の24番目のDNAがC(シトシン)とに変異した
ハプロタイプでもっとも強い有意差を得、本発明者はこ
の両者の変異が組み合わされることにより、脳動脈瘤疾
患に関与していることを見出した。
【0029】本発明において遺伝子は、2本鎖DNAの
みならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス
鎖といった各1本鎖DNAを包含する趣旨であり、また
その長さに何ら制限されるものではない。従って、本発
明の遺伝子(DNA)には、特に言及しない限り、ヒト
ゲノムDNAを含む2本鎖DNA、および1本鎖DNA
(センス鎖)、並びに該センス鎖と相補的な配列を有す
る1本鎖DNA、およびそれらの断片のいずれもが含ま
れる。
【0030】また、本発明中、遺伝子(DNA)とは、
調節領域、コード領域、エキソン、イントロンを含む。
ポリヌクレオチドは、RNA、DNAを例示でき、ゲノ
ムDNA、合成DNAを含む。
【0031】以上のとおり、本発明遺伝子のハプロタイ
プおよびその検出方法の提供は、脳動脈瘤のリスクの解
明、把握、診断、予防および治療等に極めて有用な情報
乃至手段を与える。また、本発明遺伝子のハプロタイプ
は、上記脳動脈瘤の処置に利用される本発明遺伝子のハ
プロタイプを、例えば、野生型に改変する新規薬剤の開
発の上でも好適に利用できる。更に、個体或は組織にお
ける本発明遺伝子のハプロタイプの検出は、上記脳動脈
瘤の解明や診断において好適に利用できる。
【0032】本発明の遺伝子(乃至DNA)の合成は、
ホスホルアミダイト法またはトリエステル法による化学
合成によることもでき、市販されている自動オリゴヌク
レオチド合成装置上で行うこともできる。二本鎖断片
は、相補鎖を合成し、適当な条件下で該鎖を共にアニー
リングさせるか、または適当なプライマー配列と共にD
NAポリメラーゼを用い相補鎖を付加するかによって、
化学合成した一本鎖生成物から得ることもできる。
【0033】本発明のハプロタイプ 本発明遺伝子の具体的態様としては、例えば、上記ヒト
・エラスチン遺伝子の配列番号1に示される20番目の
イントロン部位DNA配列の17番目のDNAがTであ
って、且つ配列番号2に示される23番目のイントロン
部位DNA配列の24番目のDNAがTからCに変異し
たDNA配列からなるハプロタイプが例示される。
【0034】また、本発明のハプロタイプは、上記ヒト
・エラスチン遺伝子の20番目のイントロン部位DNA
配列の17番目のDNAがTであって、且つ23番目の
イントロン部位DNA配列の24番目のDNAがTから
Cに変異したDNA配列からなる配列のハプロタイプの
相補鎖を有するDNA配列からなるものも包含する。
【0035】本発明の上記ハプロタイプを含む遺伝子と
しては、全長遺伝子であってもよいし、そのハプロタイ
プを含む部分遺伝子であってもよい。
【0036】本発明遺伝子は、本発明により開示された
本発明遺伝子の具体例についての配列情報に基づいて、
一般的遺伝子工学的手法により容易に製造・取得するこ
とができる〔Molecular Cloning 2d Ed, Cold Spring H
arbor Lab. Press (1989);続生化学実験講座「遺伝子
研究法I、II、III」、日本生化学会編(1986)など参
照〕。
【0037】具体的には、本発明遺伝子のハプロタイプ
を有する、例えば、配列番号1及び2の部分を含む、適
当な起源より、常法に従ってゲノムDNAライブラリー
を調製し、該ライブラリーから、本発明遺伝子に特有の
変異を含む適当なプローブを用いて所望クローンを選択
することにより実施できる。
【0038】上記において、ゲノムDNAの起源として
は、本発明の遺伝子を有する各種の細胞、組織やこれら
に由来する培養細胞などが例示される。具体的には、血
清または血漿のごとき血液、唾液、リンパ液、気道粘
液、尿、***などの体液を例示することができる。
【0039】本発明の遺伝子をゲノムDNAライブラリ
ーからスクリーニングする方法も、特に制限されず、通
常の方法に従うことができる。例えば、目的のDNA配
列に選択的に結合するプローブを用いたプラークハイブ
リダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等
やこれらの組合せ等を例示できる。
【0040】さらに、抽出した遺伝子を遺伝子増幅法に
よって増幅することにより、スクリーニングをより容易
にかつ精度の高いものにすることができる。遺伝子増幅
法の例としては、PCR法(Saiki,R.K.,Bugawan,T.L.,
et al., Nature, 324, 163-166 (1986))、NASBA法
(Comptom,J.,Nature,650,91-92(1991))、TMA法(K
acian,D.L.,and Fultz,T.J. ,米国特許番号5,399,491
(1995))およびSDA法(Walker, G.T., Little, M.
C., et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 392-396
(1992))が挙げられる。
【0041】本発明の遺伝子ハプロタイプの取得に際し
ては、PCR法〔Science, 230, 1350 (1985)〕による
DNA増幅法が好適に利用できる(Saiki, R. K., Buga
wan,T. L., et al., Nature, 324, 163-166 (1986))。
【0042】かかる遺伝子増幅法の採用に際して使用さ
れるプライマーは、本発明によって明らかにされた本発
明の遺伝子の配列情報に基づいて適宜設定でき、これは
常法に従って合成できる。尚、増幅させたDNA断片の
単離精製は、前記の通り常法に従うことができ、例えば
ゲル電気泳動法などによればよいし、カラムにて精製し
てもよい。あるいはマススペクトルで観察することもで
きる。
【0043】上記で得られる本発明遺伝子ハプロタイプ
は、以下に示すような一塩基プライマー伸長法を用い
て、或いはそのDNA断片は、常法、例えばジデオキシ
法〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA., 74, 5463 (197
7)〕やマキサム−ギルバート法〔Methods in Enzymolog
y, 65, 499 (1980)〕などに従って、また簡便には市販
のシークエンスキットなどを用いて、その塩基配列を決
定することができる。
【0044】このようにして得られる本発明の遺伝子
(ハプロタイプ)によれば、例えば、該遺伝子の一部ま
たは全部の塩基配列を利用することにより、個体もしく
は各種組織における本発明遺伝子の有無を特異的に検出
することができる。
【0045】本発明の判定方法 本発明は、ヒト・エラスチン遺伝子の遺伝子多型を同定
することにより、脳動脈瘤の発症のリスクの存在を判定
する方法に関する。具体的には、本発明の方法は、該遺
伝子のイントロン部分の遺伝子多型を同定することによ
って判定するものである。詳しくは、上述のごとく、2
0番目のイントロン部位(以下、「イントロン20」と
いう場合がある。)の17番目の遺伝子多型及び23番
目のイントロン部位(以下、「イントロン23」という
場合がある。)の24番目の遺伝子多型を同定すること
によって、脳動脈瘤の発症リスクの存在を判定する。
【0046】該2カ所の遺伝子多型を同定することによ
って脳動脈瘤の発症リスクの存在を判定する方法として
は、検出すべき遺伝子の遺伝子型が同定される方法であ
れば、特に限定されないが,例えば、以下の方法が挙げ
られる。
【0047】(1)検体からヒト・エラスチンをコード
する遺伝子(ヒト・エラスチン遺伝子)を含む核酸(D
NA)を得る。該DNAは、ヒトDNAの全長DNAで
あってもよいが、ヒトDNAの少なくとも上記本発明の
かかる遺伝子の遺伝子多型位置を含む部分DNAであれ
ばよい。
【0048】また、該DNAは、ヒトに由来するもので
あれば、特に制限されず、ヒトDNAを含む血液、生体
材料組織等の生体試料から採取することができる。これ
ら試料からDNAを抽出する方法は、常法に従って行え
ばよく、例えば、市販のキットや装置を使用することが
できる(QIAGEN Blood & Cell Culture DNA kit (QI
AGEN社製))。
【0049】(2)本発明の同定方法 上記(1)で得られたDNAの量が微量の場合には、以
下に示す検出方法の前に、上記に記載したような遺伝子
増幅法によって増幅することにより、同定をより容易に
かつ精度の高いものにすることができる。上記方法およ
び以下に示す各方法において、検体としての遺伝子増幅
法で増幅させるDNA断片は、前述した変異の存在が想
定される特定部位の少なくとも1つを含む限り特に限定
されるものではないが、通常、約50から数千塩基の長
さ、好ましくは50から数百塩基の長さを有するもので
あるのがよく、特に少なくとも遺伝子多型部位の全てを
含むものであるのが好ましい。
【0050】以下の検出方法で用いられるプローブまた
はプライマーとしては、本発明の遺伝子ハプロタイプの
DNA塩基配列に関する情報をもとにして変異を含む部
分を化学合成されたDNAなどが一般的に使用できる
が、既に取得された本発明遺伝子ハプロタイプやその変
異塩基を含むDNA断片も良好に利用できる。また、本
発明遺伝子ハプロタイプの塩基配列情報に基づき設定し
たプライマーをスクリーニング用プローブとして用いる
こともできる。又は、遺伝子多型部位を含まなくとも、
ヒトエラスチン遺伝子のセンス鎖又はアンチセンス鎖に
ハイブリダイズでき、以下の方法に利用できるものであ
れば特に限定されない。
【0051】より具体的には、前記プローブまたはプラ
イマーとして用いられるヌクレオチド配列は、ヒト・エ
ラスチン遺伝子のイントロン20のDNA配列の17番
目の核酸、イントロン23のDNA配列の24番目の核
酸を検出できるように設定された配列に対応する部分ヌ
クレオチド配列であって、少なくとも15個の連続した
塩基、好ましくは少なくとも20個の連続した塩基、よ
り好ましくは30個の連続した塩基、最も好ましくは5
0個の連続した塩基を有するものも含まれる、或いは前
記配列を有する陽性クローンそれ自体をプローブとして
用いることも出来る。
【0052】1) ヌクレオチド直接塩基決定法 まず第一に、本発明に係る遺伝子の検出は、この種の遺
伝子の塩基配列決定に慣用されている、例えばダイデオ
キシ法(Sanger, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA,
74, 5463-5467 (1977))、マキサム−ギルバート法〔Me
thods in Enzymology, 65, 499 (1980)〕などの直接塩
基配列決定法に従って実施することができる。
【0053】また、これらの方法と上述のPCR法など
のDNA増幅法を組合せた方法に従って実施することも
できる。特に、少量のDNA試料を用いて簡便かつ容易
にしかも感度および精度の高い検出が可能である観点か
らは、PCR法もしくはそれに準じたDNA増幅法を組
合せた方法が好ましい。
【0054】この好ましい方法は、最も基本的には、例
えばPCR法で増幅させた遺伝子断片(検体)をプラス
ミドにクローニングし、次いでダイデオキシ法、マキサ
ム−ギルバート法などに従って、直接塩基配列をシーケ
ンスすることにより、また簡便には市販のシークエンス
キットなどを用いてヌクレオチド配列を決定することに
より実施できる。かくして、ヒトエラスチン遺伝子のイ
ントロン20および23における特定の遺伝子多型部位
の変異の存在を決定でき、またそのハプロタイプを決定
できる。
【0055】2) 対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド
−ドットプロット分析 本発明に係る検出方法の別法としては、対立遺伝子特異
的オリゴヌクレオチド(ASO)ドットブロット法(Conner,
B.J., et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 80,278-282(1
983))に従う方法を挙げることができる。該方法は、例
えば目的とする一塩基多型部位を挟むように設計したフ
ォワード・プライマーおよびリバース・プライマーを利
用して、PCR増幅した遺伝子断片に対する対立遺伝子
特異的オリゴヌクレオチド・プローブにハイブリダイズ
するDNA断片を、ドット・ブロット分析することによ
り実施できる。かくして、該DNA断片中に一塩基多型
が存在するか否かを決定することができる。
【0056】3) 一塩基プライマー伸長法 本発明エラスチン遺伝子多型(ハプロタイプ)の検出
は、また、スナップショット法(Kuppuswamy, M. N., e
t al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 1143-1147 (19
91))、ピロシーケンス法(Ronaghi, M., et al., Scie
nce, 281, 363-365(1998))、特開平2000-279197号に開
示の点変異検出法のような一塩基プライマー伸長法を用
いて実施することもできる。これらの場合、目的の遺伝
子多型部位の直前の塩基または数塩基前の塩基に対応す
るように設定したプライマー、即ち、その3’末端を検
出目的である変異の1塩基上流または近傍に設定したプ
ライマーをDNA検体にアニーリングさせることができ
る。上記各方法は、市販のSNPs(一塩基多型)検出
用キットおよび該キットに添付のソフトウエアを利用し
て実施することができる。
【0057】例えばスナップショット法は、ABI P
RISM SNaPshot ddNTP Primer
Extension Kit(ABIバイオシステムズ
社製)を用いて実施できる。一塩基多型は、反応後に生
成した蛍光フラグメントを、ABI PRISM310
/337/3100/3700DNA Analyze
r(いずれもABIバイオシステムズ社製)とGeneS
canソフトウエアを用いて検出・解析できる。
【0058】ピロシーケンス法は、例えば、以下のごと
くして実施できる。即ち、血液サンプルなどから常法に
よりゲノムDNAを単離し、ビオチン標識したプライマ
ーを用いて遺伝子多型部位を含む数十から数百塩基をP
CR増幅させ、マグネットビーズを用いて一本鎖DNA
を精製し、この精製DNAを検体とする。該検体に、所
望の変異の数塩基上流からシーケンスするように設定し
たプライマーをアニーリングさせ、次いでソフトウェア
に入力された変異付近のシーケンスに従って装置に1種
類ずつdNTPを添加する。DNAポリメラーゼが塩基
伸長するとピロリン酸(PPi)を生成するので、該PP
iをスルフリラーゼ(Sulfurylase)によりATPに返還
させ、これをルシフェラーゼの基質として発光検出器、
CCDカメラなどを用いて化学発光を検出する。かくし
て、添加したdNTPに応じて得られる発光のピークを
解析することによって遺伝子のタイピングが可能とな
る。該方法を用いれば、96サンプルを15分ほどでタ
イピングすることができる。
【0059】上記方法において試薬および装置として
は、通常のもの、例えばDNAポリメラーゼ、ATP-
スルフリラーゼ、ルシフェラーゼおよびアピラーゼ(apy
rase)の4種の酵素混合液、ルシフェリンおよびAPS
(アデノシン5’硫酸リン酸)からなる基質液、dAT
P(デオキシアデノシンα−チオ・3リン酸)、dCT
P、dGTPおよびdTTPからなるdNTPを構成要
素とする市販のSNP Reagent Kits(Pyros
equencing AB社製)などの試薬、並びに自動DNA配列
分析のためのPSQ96システム(Pyrosequencing AB社
製)およびその使用のためのSNPソフトウェア(Pyrose
quencing AB社製)を用いることができる。
【0060】また、上記ピロシーケンス法は、例えば米
国特許第6,159,693号の記載に従って、核酸を
単離後、増幅し、増幅したPCR産物を精製後、REA
DITTM System(プロメガ・コーポレーション社
製)を用いて、これにピロリン酸を反応させ、得られた
データを分析することによっても実施できる。このデー
タ分析には、例えば市販のREADIT技術(プロメガ
・コーポレーション社製)を利用したExcel分析を
採用できる。
【0061】4) PCR−単鎖高次構造多型(SSCP)分析
法 更に、本発明に係る検出法には、前述したPCR増幅産
物(一本鎖DNA)を非変性ポリアクリルアミドゲル電
気泳動して、その移動度の差異により一塩基変異の有無
を識別するPCR−SSCP法(Orita, M., Iwahara,
H., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 2776-2
770(1989),Orita, et al.,Genomics, 5, 874-879 (198
9))を採用することもできる。
【0062】5) PCR−制限酵素断片長多型(RFLP)
分析法 本発明のエラスチン遺伝子の遺伝子多型またはハプロタ
イプの検出にあたり、検出目的とする変異を含む核酸配
列が制限酵素認識部位を含んでいる場合には、該検出
は、制限酵素断片長多型分析法(RFLP法: Botstein, D.
R. , et al., Am. J. Hum. Gen., 32, 314-331(198
0))によることもできる。
【0063】具体的には、エラスチン遺伝子のイントロ
ン20の17番目の核酸配列が野生型(T)か変異型
(C)であるかどうか、17番目の核酸が野生型(T)
であるか変異型(C)であるかを検出するため,若しく
はイントロン23の24番目の核酸配列が野生型か変異
型であるかどうか、24番目の核酸がTであるかCであ
るかを認識するためのそれぞれの変異箇所の前後配列を
認識し得る制限酵素を用いればよい。
【0064】かかるRFLP法に用いられる酵素は、目
的とするそれぞれの変異箇所の前後配列を認識し得る各
種公知の制限酵素であればよい。
【0065】該RFLP法は、より好適には、PCR−
RFLP法、即ち、予めPCR法またはその変法などに
よって検体DNAを増幅・調製後、多量に調製され且つ
濃縮された検体DNAについてRFLP法を実施する方
法によることができる。かくして、特異的切断サイトの
存在の有無を検出することができる。
【0066】PCR−RFLP法による本発明エラスチ
ン遺伝子のハプロタイプの検出は、より具体的には例え
ば次の方法に従って行われる。即ち、まず、ヒト生体試
料からエラスチン遺伝子のDNAを抽出し、該遺伝子の
イントロン20及び/または23の遺伝子多型部位を含
む領域のDNA断片を増幅し、多量に且つ濃縮された検
体サンプルを得る。次いで、増幅DNA検体を特定の制
限酵素(即ち、野生型又は変異型のいずれか一方のみを
消化できる酵素)を用いて消化し、DNAの切断様式
(切断の有無、切断フラグメントの塩基長など)を常法
に従って確認する。
【0067】本発明エラスチン遺伝子の遺伝子多型また
はハプロタイプの検出は、また以下に示すインベーダー
(Invader)法および定量的リアルタイムPCR検出法(Ta
qMan法)により実施することもできる。
【0068】6) インベーダー法 インベーダー法の実施には、以下の文献が参照できる。 ・Lyamichev, V., et al., Nat. Bioltechnol., 17(3)2
92-296(1999)および ・国際特許公開WO9823774号(98/6/4)。
【0069】該方法は、ゲノムDNAの一塩基多型を分
析するのに予め標的DNAを増幅する必要がない方法で
あって、以下のごとくして実施される。
【0070】目的とするエラスチン遺伝子のイントロン
20及び23の特定部位に多型が存在するかどうかを検
出するために、先ずゲノムDNAを単離した後、15か
ら50塩基長からなる5’フラップと、検出したい核酸
を5’フラップの3’端に配し、標的ゲノムDNAに相
補するように合成された30から数百塩基のオリゴヌク
レオチドからなる第一の標的プローブと、検出したい核
酸に相補的な核酸を3’端に配する以外は、標的ゲノム
DNAに相補するように合成された15から数十塩基長
のオリゴヌクレオチドからなるインベーダー・オリゴヌ
クレオチド・プローブとを、例えば自動合成機により合
成する。これらのプローブと単離したゲノムDNAを適
当な反応液中で反応させた後、変異核酸を含むインベー
ダー構造を認識し、第一のプローブの5’フラップを切
断する酵素を添加する。
【0071】これによって,もし検体中のゲノムDNA
が所望の検出目的の核酸を有している場合は、検出目的
の核酸に相補的な核酸を5’フラップの3’末端に配し
た第一の標的プローブを用いた場合には、検出目的の核
酸を3’端に有する5’フラップを遊離する第一の反応
が終了する。もし、検体中のゲノムDNAが検出目的の
配列を有していない場合は、前記制限酵素による切断が
生じない。
【0072】制限酵素で切断された第一のプローブから
遊離した5’フラップは、標的として蛍光共鳴エネルギ
ー移転(FRET)プローブを使用する第二の侵入の切断反応
において、インベーダーオリゴとして作用することによ
って反応配列を続ける。
【0073】かくして、第一のプローブ上の5’フラッ
プは、3’末端の塩基を除いて、第二の反応に用いられ
るFRETプローブに相補的である。
【0074】次いで第二の反応に用いられる各FRET
プローブは、検出される標的にもかかわらず、同一の配
列を含んでいて、本質的に2つのエレメントからなるよ
うに構築される:(1)第一の反応から割裂した産物に相
補する3’領域、(2)一本鎖プローブを模倣するために
複式を形成し、そして標的が共にハイブリダイズして、
それらがレポーター蛍光色素とクエンチャー蛍光色素を
含んでいる自家相補的領域。
【0075】前記レポーター蛍光色素は、該レポーター
蛍光色素が前記クエンチャー蛍光色素と同一のプローブ
に結合されている場合には蛍光共鳴エネルギー転移によ
りその蛍光強度が抑制され、前記クエンチャー蛍光色素
と同一のプローブに結合されていない状態では蛍光強度
が抑制されないものである。したがって、切断された第
一のプローブ・オリゴからの遊離した5’フラップが、
FRETプローブにハイブリダイズしたとき、それは第
二の反応においてインベーダー・オリゴとして作用し、
制限酵素によって認識された侵入複合物を産生する。か
くして、FRETプローブの制限酵素による切断が、二
つの蛍光色素を分離し、検出可能な蛍光シグナルを産生
する。このようにして標準蛍光マイクロタイタープレー
ト読み取り機器が産物を読み取り検出することができる
第一と第二の反応の組み合わせにより、シグナルを1か
ら1×106倍まで増幅することができる。本発明にお
いては所望の野生型又は変異型の核酸の有無についてあ
るいはハプロタイプについて、インベーダー・アッセイ
法を用いることによっても検出することが可能である。
【0076】7) 定量的リアルタイムPCR検出法 本発明エラスチン遺伝子の遺伝子多型の検出は、また定
量的リアルタイムPCR検出法(TaqMan法)によっても簡
便に実施することができる。
【0077】該方法は、以下のごとくして実施できる。
即ち、まず、目的とする変異の有無を検出する核酸部位
を含むDNA断片を増幅するために、約15塩基ないし
約30塩基からなるフォワード側プライマーとリバース
側プライマーを作成する。但し、フォワード側プライマ
ーとリバース側プライマーとも目的とする変異の有無を
検出する核酸部位を含まないように作成する。次いで、
検出用蛍光プローブとして、15塩基ないし50塩基か
らなる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドにレポータ
ー蛍光色素とクエンチャー蛍光色素とが結合されており
且つフォワード側プライマーがハイブリダイズする領域
とプローブがハイブリダイズする領域が互いに重複する
ことがない組み合わせを選択したプローブを作成する。
該プローブは、目的とする一塩基の核酸変異の有無を検
出するための対立遺伝子特異的配列に相補的な配列を有
するように作成する。該プライマー及びプローブを用い
て、検体中の測定すべきエラスチン遺伝子の所望のDN
A断片領域を鋳型としてPCRを行い、反応液からの蛍
光をリアルタイムに測定する。かくして、変異の有無を
検出することができる。
【0078】上記インベーダーアッセイやTaqMan
法に用いられるレポーター蛍光色素としては、FAM(6
-カルボキシ-フルオレッセイン)のようなフルオレッセ
イン系蛍光色素が好ましく、クエンチャー蛍光色素とし
ては、TAMRA(6-カルボキシ-テトラメチル-ローダ
ミン)のようなローダミン系蛍光色素が好ましい。これ
らの蛍光色素は公知であり、市販のリアルタイム検出P
CR用キットに含まれているのでそれを用いることがで
きる。レポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素の
結合位置は特に限定されないが、通常、プローブのオリ
ゴヌクレオチド部の一端(好ましくは5’末端)にレポ
ーター蛍光色素が、他端にクエンチャー蛍光色素が結合
される。なお、オリゴヌクレオチドに蛍光色素を結合す
る方法は公知であり、例えばNoble et al., Nuc. Acids
Res. 12:3387-3403 (1984)及びIyer et al., J. Am. C
hem. Soc. 112:1253-1254 (1990)に記載されている。
【0079】リアルタイム検出PCR法自体は公知であ
り、そのための装置及びキットも市販されているので、
本発明ではこのような市販の装置及びキットを用いるこ
ともできる。例えば特許第2825976号に記載の方
法に従うか、PEバイオシステムズ社製のABI PR
ISM 7700配列決定システム・ユーザーマニュア
ルに従い実施できる。
【0080】8) その他の検出法 本発明エラスチン遺伝子のSNPsまたはハプロタイプ
の検出は、更に従来より一般にDNAについてその塩基
配列の決定法として、また変異の検出法として知られて
いる、以下に挙げる如き各種の方法によって実施するこ
ともできる。
【0081】(a) 配列特異的オリゴヌクレオチドを用
いるPCR−SSO法;各変異に対するプローブを担体
に固相化し、これに検体(遺伝子増幅産物)をハイブリダ
イズさせ、ミスマッチの有無によるハイブリダゼーショ
ンの効率の差を判定するもの。
【0082】(b) 点変異を検出するPCR−SSP
法;点変異に対応する塩基を3’末端に設定した遺伝子
増幅用配列特異的プライマーを用いて、プライマーの
3’末端が相補的であるか否かによってPCRによる増
幅効率に著しい差が生じることを利用したもの。
【0083】(c) PCR−DGGE(変性剤濃度勾配ゲ
ル電気泳動)法;変異DNA断片と正常DNA断片とを
混合してハイブリッド結合させた後、尿素、ホルムアミ
ドなどの変性剤の濃度が徐々に高くなっているポリアク
リルアミドゲル中で電気泳動すると、ミスマッチのない
ホモ2本鎖に比べて、より低い濃度の変性剤の位置で1
本鎖に解離する。1本鎖DNAは、2本鎖DNAに比べ
て泳動速度が速いため、移動度の差を比較することで1
塩基の変異を検出することができる。
【0084】(d) PCR−DGGE/GCクランプ法(S
hefield,V.C.,et al., Proc. Natl.Acad. Sci. USA,86,
232-236(1989));上記PCR−DGGE法に加えて、G
C含量の高い領域を変異核酸の検出対象であるDNA断
片につなげることにより複数の塩基置換、欠失、付加お
よび挿入がある場合の検出の欠点を補った方法である。
該方法は特に変異検出の対象DNA断片にGCクランプ
を付加する工程を必要とする。
【0085】(e) PCR−DGGE法に加えて、T4
エンドヌクレアーゼを用いる核酸ミスマッチ検出 (米
国特許第6,183,958号) T4エンドヌクレアーゼの欠失および挿入などの一塩基
ミスマッチを含んでいるヘテロ二本鎖DNAを認識し、
切断する特性を利用した方法であって、被検サンプル中
の変異を含むDNA断片と標識した配列特異的プローブ
との混合液をPCR増幅した後、T4エンドヌクレアー
ゼによって、変異部位でDNA断片を切断後、更に別の
配列特異的プローブと切断されたDNAとを反応させた
後、再度T4エンドヌクレアーゼによって、変異部位で
DNA断片を切断し、各々の切断によって分離され切断
産物をポリアクリルアミドゲル中で電気泳動し、生成し
た泳動パターンを比較することによって、被検サンプル
中の2つの変異が存在するかどうかを検出することがで
きる。
【0086】該方法によれば、多型遺伝子のハプロタイ
プを決定できるだけでなく、DNAサン プルからの父
方のハプロタイプと母方のハプロタイプを特定すること
も可能である。
【0087】(f) RNase保護アッセイ法(Finkelst
ein,J., et al., Genomics, 7, 167-172(1990)) (g) in situ RT-PCR(Nucl. Acids Res., 2
1, 3159-3166 (1993)) (h) サザンブロッティング(Sambrook, J., et al., Mo
lecular Cloning a Laboratory Manual. Cold Spring H
arbor Laboratory Press:NY.(1989)) (i)ドットハイブリダイゼーション法(Southern, E. M.
, J. Mol. Biol., 98:503-517 (1975)など参照)、 (j) 蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FIS
H:Takahashi E., et al., Hum. Genet., 86, 1416 (199
0)) (k) 競合的ゲノミック・ハイブリダイゼーション(Comp
arative Genomic Hybridization:CGH: Kallioneimi,
A.,et al., Science, 258,818-821(1992))、(Spectral
karyotyping: SKY: Rowley,J.D., et al.,Blood, 93, 2
038-2042(1999)) (l) 酵母人工染色体(YAC)ベクターのクローンをプロ
ーブとする方法(Lengauer, C., et al., Cancer Res.,
52, 2590-2596(1992))。
【0088】(m) NASBA法〔Nucleic acid sequen
ce-based amplification, Nature,350, 91-92 (199
1)〕。
【0089】好適には、一塩基プライマー伸長法、具体
的にはスナップショット法またはピロシーケンス法を挙
げることができる。
【0090】尚、ここで上記遺伝子検出法を採用する場
合に用いられるプライマーとしては、本発明遺伝子ハプ
ロタイプを含む領域のみを特異的に増幅できる該遺伝子
特有のものである限り、特に制限はなく、本発明遺伝子
の配列情報に基いて適宜設定することができる。通常プ
ライマーとして、好ましくは15〜30ヌクレオチド程
度の長さを有し、本発明遺伝子の各ハプロタイプ配列の
SNPを挟むように合成されたヌクレオチド配列を有す
るものを挙げることができる。
【0091】または、例えば、一塩基多型部位よりもセ
ンス鎖又はアンチセンス鎖において1〜数塩基上流
(5’側)に3’末端を有する上記プライマーを例示で
きる。
【0092】本発明においては、イントロン20の遺伝
子多型部位とイントロン23の遺伝子多型部位を同時に
同定できるように、上記検出方法を設定してもよいし、
各々の遺伝子多型を別々に同定できるように設計しても
よい。
【0093】このように、本発明の遺伝子ハプロタイプ
には、本発明にかかる多型遺伝子を検出するための特異
プライマーおよび/または特異プローブとして使用され
るDNA断片もまた包含される。
【0094】また、本発明においては、検出される所望
の多型遺伝子が脳動脈瘤の発症のリスクのあるものを検
出することから、検出用の遺伝子特異的プローブを例え
ば、本発明の脳動脈瘤のリスクの存在の診断において、
エラスチン遺伝子のイントロン20の該遺伝子多型部位
が野生型であって、イントロン23の該遺伝子多型部位
が変異型であるハプロタイプを検出するような多型特異
的配列プローブを作成することが好ましく例示される。
【0095】より具体的には、エラスチン遺伝子のイン
トロン20の17番目の核酸配列が野生型か変異型であ
るかどうか、即ち、17番目の核酸がTであるかCであ
るかを検出できる特異プローブとイントロン23部位の
24番目の核酸配列が野生型か変異型であるかどうか、
即ち、24番目の核酸がTであるかCであるかを検出で
きる特異プローブであればよい。
【0096】キット 本発明の同定方法は、試料中のヒトエラスチン遺伝子の
イントロン20およびイントロン23のハプロタイプの
検出のための試薬キットを利用することによって、簡便
に実施することができる。本発明は、かかるキットも提
供するものである。具体的には、本発明は、ヒト・エラ
スチン遺伝子の20番目のイントロン部位DNA配列の
17番目のDNAの遺伝子多型検出用プライマー、ヒト
・エラスチン遺伝子の23番目のイントロン部位DNA
配列の24番目のDNAの遺伝子多型検出用プライマ
ー、を含む脳動脈瘤の発症のリスク検出用診断キットを
提供するものである。
【0097】プライマーとしては、上記エラスチン遺伝
子のセンス鎖又はアンチセンス鎖にハイブリダイズする
ことができ、且つイントロン20およびイントロン23
の各遺伝子多型部位を増幅することが可能な各プライマ
ー、遺伝子多型部位の1塩基から数塩基上流(5’側)
に3’末端を有する配列からなるプライマー、遺伝子多
型部位を有する配列からなるプライマー等が例示でき
る。
【0098】更に、遺伝子多型部位を含む数塩基の核酸
配列を認識する制限酵素を含有することを特徴とするヒ
ト脳動脈瘤発症のリスク検出の検出用試薬キットが提供
される。
【0099】該試薬キットは、また、少なくともエラス
チン遺伝子のイントロン20部位およびイントロン23
部位のDNA塩基配列もしくはその相補的塩基配列の一
部または全てにハイブリダイズするDNA断片を必須構
成成分として含んでいれば、他の成分として、標識剤、
PCR法に必須な試薬(例えば、TaqDNAポリメラ
ーゼ、デオキシヌクレオチド三リン酸、プライマーな
ど)が含まれていてもよい。
【0100】標識剤としては、放射性同位元素または蛍
光物質などの化学修飾物質などが挙げられるが、DNA
断片自身が予め該標識剤でコンジュゲートされていても
よい。更に当該試薬キットには、測定の実施の便益のた
めに適当な反応希釈液、標準抗体、緩衝液、洗浄剤、反
応停止液などが含まれていてもよい。
【0101】更に本発明は、前記測定方法を用いるヒト
脳動脈瘤発症のリスク診断方法および該方法に用いる診
断剤並びに診断用キットをも提供するものである。
【0102】本発明の遺伝子治療 また、本発明は、ヒトエラスチン遺伝子のイントロン2
3の24番目の核酸配列を野生型に変換するためのオリ
ゴDNA、あるいは該オリゴDNAを含有する遺伝子治
療用ベクターおよび該ベクターによりヒトエラスチン遺
伝子のイントロン23の24番目の核酸配列を野生型に
変換するためのオリゴDNAを導入した細胞を有効成分
とする医薬を提供しようとするものである。
【0103】即ち、本発明によれば、数十から数百塩基
からなり、ヒトエラスチン遺伝子の部分配列からなり、
イントロン23の24番目の核酸配列をTであるように
合成されたオリゴヌクレオチド、該オリゴヌクレオチド
を含有する遺伝子治療用導入用ベクターおよび該ベクタ
ーにより該オリゴヌクレオチドを導入した細胞、並びに
該遺伝子治療用導入用ベクター又は該ベクターによりヒ
トエラスチン遺伝子のイントロン23の野生型核酸を導
入した細胞を有効成分とする遺伝子治療剤が提供され
る。
【0104】また、上記オリゴヌクレオチド、該オリゴ
ヌクレオチドを含有する遺伝子治療用ベクター、該オリ
ゴヌクレオチド又はベクターを導入した細胞、並びに該
遺伝子治療用導入用ベクター又は該ベクターによりヒト
エラスチン遺伝子のイントロン23の野生型核酸を導入
した細胞を有効成分とする遺伝子治療剤を、エラスチン
遺伝子のイントロン20の17番目の核酸が野生型であ
って、イントロン23の24番目の核酸がCに変異して
いる変異型であるハプロタイプを有する脳動脈瘤のリス
クのある人、あるいは該ハプロタイプを有する脳動脈瘤
(クモ膜下出血)患者の脳血管細胞または患者の末梢血組
織部位に、投与することによって、これら組織における
遺伝子変異を改善し、脳動脈瘤発症の二次予防するか、
あるいは脳動脈瘤(クモ膜下出血)患者の再発を抑制する
ことを特徴とする脳動脈瘤予防および治療剤を提供する
ことができる。
【0105】本発明の実施には特記しないかぎり、化
学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、遺伝学、及
び免疫学の慣用的な方法を用いる。例えば、マニアティ
ス(Maniatis,T., et al., Molecular Cloning: a Labor
atory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, cold
Spring Harbor, New York (1982))、サムブルック(Samb
rook,J., et al.,Molecular Cloning a Laboratory Man
ual, 2nd Ed. (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold
Spring Harbor, New York (1981))、アウスベル(ausbe
l,F.M., et al., Current Protocols in Molecular Bio
logy,John Wiley and Sons, New York, New York,(199
2))、グローバー(Glover,D., DNA cloning,I and II
(Oxford Press)(1985))、アナンド(Anand,Techniques f
or the analysis of complex genomes,(Academic Press
(1992))、グスリー(Guthrie,g., et al., Guide to Yea
st Genetics and Molecular Biology, (Academic Pres
s)(1991))及びフィンク(Fink,et al., Hum. Gene The
r., 3, 11-19(1992)にある。
【0106】i) 本発明エラスチン遺伝子ハプロタイプ
検出のための遺伝子解析は、上述の判定方法によって行
うことができ、例えば、エラスチン遺伝子のイントロン
20部位が野生型であって、イントロン23が変異型で
あるハプロタイプを検出するために、ヒトの血液または
組織細胞からの細胞から得られたゲノムDNAをエラス
チン遺伝子のイントロン20の17番目とイントロン2
3の24番目の核酸配列のそれぞれを含むようにゲノム
DNAをPCR増幅するためのプライマーをそれぞれ作
成しDNAを増幅、スクリーニングすることによってヒ
トエラスチン遺伝子ハプロタイプの有無を確認する。
【0107】これらの診断は、ヒトのいかなる組織から
得たDNAを試験することによって調べることが出来
る。好適な方法としては、血液を取り、血液細胞からD
NAを抽出するか、標的とする組織細胞から直接得られ
た細胞からDNAを抽出する。
【0108】ii) 次に、イントロン20の該遺伝子多
型部位が野生型でイントロン23の該遺伝子多型部位が
変異型を有するハプロタイプを有していたヒトに対し
て、イントロン23の遺伝子多型部位を野生型に変換す
ることができる発現制御エレメントに連結したヒトエラ
スチン遺伝子のイントロン23の遺伝子多型部位が野生
型であるDNAのコピーを含み、かつ該細胞内で複製出
来るウイルスまたはプラスミドベクターを作成する。こ
こで適当なベクターは、米国特許第5,252,479
号及びPCT国際公開WO93/07282号に開示さ
れたベクターを使用作成できる。次いで作成されたヒト
エラスチン遺伝子のイントロン23の遺伝子部位が野生
型であるDNAを含むベクターを血液などの細胞内に全
身的に患者に注射投与する。形質転換された遺伝子が標
的化血管細胞の染色体に恒久的に取り込まれない場合に
は、該処理を定期的に繰り返すことができる。遺伝子治
療方法は、前記の如く遺伝子導入用の材料を直接体内に
投与するin vivo法と患者の体内より一旦標的とする細
胞を取り出して体外で遺伝子を導入して、其の後細胞を
体内に戻すex vivo法の両者の方法を適宜選択できる。
【0109】本発明の遺伝子を含有するベクターの製造
法において、導入されるエラスチン遺伝子のイントロン
23が野生型であるDNAは、その遺伝子の塩基配列情
報に基づいて、一般的遺伝子工学的手法により容易に製
造・取得することができる〔Molecular Cloning 2d Ed,
Cold Spring Harbor Lab. Press (1989);続生化学実
験講座「遺伝子研究法I、II、III」、日本生化学会編
(1986)等参照〕。DNAの合成についても上述の通り
である。
【0110】本発明によれば、血液または血清のごとき
生物学的試料を調製し、所望により核酸を抽出し、ヒト
ヒトエラスチン遺伝子のイントロン20およびイントロ
ン23のハプロタイプ感受性遺伝子が存在する否かにつ
いて分析することが可能である。
【0111】また、本発明によれば、血液または血清の
ごとき検体からエラスチン遺伝子のイントロン20およ
びイントロン23のハプロタイプを分析することによ
り、脳動脈瘤発症のリスクの存在を検出することができ
る。
【0112】
【発明の効果】本発明によれば、ヒト脳動脈瘤の発症の
リスクに関連する遺伝子ハプロタイプが提供される。
【0113】本発明の遺伝子ハプロタイプは、ヒト脳動
脈瘤の発症においてその連鎖が強く、これら細胞および
その細胞周辺組織における脳動脈血管、特にクモ膜下出
血の発症を促す因子と考えられる。本発明ヒトエラスチ
ン遺伝子のイントロン20の特定部位の遺伝子多型およ
びイントロン23の特定部位の遺伝子多型などの解析に
より、遺伝子の機能と脳動脈瘤発症との係わりについて
の研究に利用でき、特にヒトまたは脳動脈瘤(クモ膜下
出血)患者への遺伝子診断、二次予防、脳動脈瘤(クモ膜
下出血)の再発予測、手術の適応並びに該変異遺伝子に
対する野生型DNA鎖による医薬用途への応用研究に用
いることが可能である。
【0114】本発明によれば、更にヒトエラスチン遺伝
子のイントロン23部位の野生型オリゴヌクレオチドを
含有する遺伝子治療に有用な遺伝子導入用ベクター、該
ヒトエラスチン遺伝子のイントロン23部位の野生型オ
リゴヌクレオチド導入された細胞および該ベクターまた
は細胞を有効成分とする遺伝子治療剤、並びにその利用
による遺伝子治療法などが提供される。
【0115】また、本発明によれば、ヒトエラスチン遺
伝子のイントロン20の特定部位の遺伝子多型およびイ
ントロン23の特定部位の遺伝子多型のハプロタイプを
原因とする脳動脈瘤(クモ膜下出血)発症に関し、そのリ
スクを低下させるような候補化合物のスクリーニング方
法及びスクリーニング用キットをも提供することができ
る。
【0116】
【実施例】以下、本発明を更に詳しく説明するため、実
施例を挙げるが本発明はこれに限定されない。
【0117】実施例1 ゲノム全域での連鎖解析 材料および方法 :全国1100ヶ所の脳外科関連施設の
協力により、104対の罹患同胞対(脳動脈瘤患者同胞)
を集めた。その内訳は85家系収集され、77組の2人
兄弟、7組の3人兄弟、1組の4人兄弟で、73家系で
は発端者がクモ膜下出血であり、12家系で発端者が、
未破裂脳動脈瘤のみを認めた(Kasuya, H., et al., Ne
urosurgery, 46(6) 1301-1306(2000))。遺伝要因の強
さ、兄弟での危険率(λs=6)を考慮したシュミレー
ションにより、この同胞対数で十分遺子座を特定できる
と予想されたので、罹患同胞対連鎖解析法を実施した。
【0118】即ち、該方法の原理を略記すると、罹患し
ている兄弟は病気の原因となるアレルを親から受け継い
でいるため、そのアレルを必ず共有することとなる。一
方兄弟が共有するアレルの数は1である(帰無仮説に基
づく値)。多くの罹患同胞対で共有するアレル数を検討
することにより、帰無仮説に基づくアレル数より、多く
のアレル共有が観察できたとき、「連鎖を認めた」とい
うこととなる。
【0119】全ゲノムを網羅する連鎖解析の目的で40
0個の蛍光ラベルされたマイクロサテライトマーカーか
らなるリンケージマッピングセット(Linkage mapping s
et version II. PEアプライド・バイオシステムズ社
製 )を用いた。 このマーカーセットにより平均8.6
センチモルガンの間隔で解析できる。しかしながら、日
本人においてはヘテロ接合性の低いマーカーが存在して
いたので、さらにマーカーを増やし、420マーカーを
用いてゲノム全域での解析を実施した。
【0120】3種類の6−FAM(青色)、HEX(緑
色)、NED(黄色)の蛍光色素で標識されたプライマー
の使用により、多型性に富む2塩基繰り返し配列(ジヌ
クレオチドリピート・マイクロサテライト)をPCR増
幅することができた。
【0121】かくして得られたPCR産物のサイズの違
いを自動解析装置ABI PRISM:377モデル
(アプライド・バイオシステムズ社製)を用いたシーケン
スゲルで確認した。前記3種類の蛍光色素で標識したプ
ライマーでPCR反応を行なっているので、たとえ同一
サイズのPCR産物であっても3種類の色を別々に判別
できる。前記反応ゲルにて96サンプルに対して、15
種類のマーカーについて同時に解析可能であるので、約
1500個の遺伝子タイピングが1回の電気泳動で処理
することができた。
【0122】大量のサンプルのタイピングは、Gene
Scan、GenoTyperプログラム(PEアプラ
イド社製)を用いて迅速処理を行なった。
【0123】連鎖の検定は、ノンパラメトリック解析で
あるGENEHUNTER(KruglyaK, L. et al. Am.
J. Genet., 58, 1347-1363(1996))、およびSIBPA
Lプログラム(SIBPAL:SAGE, Statistical Analy
sis for Genetic Epidemiology, release 3.1. Depart
ment of Biometry and Genetics. LSU Medical Cente
r, New Orleans, LA)を用いて行なった。
【0124】解析結果:連鎖が認められる領域の判定
は、以下に示すランダー(Lander)およびクラッグリャッ
ク(Kruglyak) のガイドライン(Nature Genet, 11,241(1
995))に従って、偽陽性の連鎖を得る基準を基にした。
さらにゲノム全域の連鎖解析では偽陽性が多いため、有
意差P<0.05のマーカーが2つ以上連続して認めら
れた領域を連鎖ありと判定した。
【0125】ランダーおよびクラッグリャックのガイド
ライン:多因子疾患でゲノム全域での連鎖解析が盛んに
おこなわれるようになってきたが、個々の遺伝子の連鎖
解析については、その遺伝子機能から原因となりうるか
といった判断も加わる。しかしながらゲノム全域での解
析では遺伝子機能はその段階で考慮にはいらないので、
純粋に数理遺伝学的な有意の判断基準(閾値)が求められ
る。そこで彼らはシュミレーションに従い、有意な連鎖
基準をもうけている 。 ・Suggestive linkage: P<7.4 x 10-4、lod>2.2、ゲノ ム全域で1個の偽陽性の連鎖結果を得る基準 ・Significant linkage: P<2.2 x 10-5、lod>3.6、ゲ ノム全域で0.05個の偽陽性の連鎖結果を得る基準 ・High Significant linkage: P<3.0 x 10-7、lod>5.4、ゲノム 全域で0.01個の偽陽性の連鎖結果を得る基準 全染色体スクリーニングの結果(ここで、SIBPAL
での解析ではX染色体は含まない。)から、5番(D5S42
8,D5S644)、7番(D7S669,D7S630)、14番染色体(D14S2
58,D14S74)で連鎖を認めた。5番(Chromosome 5)、7
番(Chromosome 7)及び14番(Chromosome 14)染色
体での結果を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】続いて、連鎖を認めた上記3箇所の領域に
ついて、さらにマーカーを増やし、連鎖領域を狭めるこ
とと、かつ確実にするためにGENEHUTERによる
多点連鎖解析をおこなった。
【0128】その結果を図1から図3に示す。その結
果、図1に示されるように染色体5番で最大lod2.
24、図2に示されるように染色体7番で最大lod
3.22、図3に示されるように染色体14番で最大l
od2.31を得た。詳細なマッピングの結果、7番染
色体のマーカーD7S2472でP=0.000027
と最も強い連鎖結果を得た。
【0129】かくして得られた値は、上記ランダーおよ
びクラッグリャックらのSuggestivelinkageを満たすも
のであった。従って、脳動脈瘤遺伝子座のひとつを染色
体7q11.23に特定でき、この領域に疾患遺伝子が
存在することが強く示唆された。
【0130】実施例2 脳動脈瘤候補遺伝子の探索 上記実施例1で得られた最も強い連鎖を認めた7q1
1.23領域の遺伝マーカー、D7S2472、D7S
2415に隣接している候補遺伝子について検討した結
果、エラスチン遺伝子が存在していた(http://www.ncb
i.nlm.nih.gov/genemap99/)。
【0131】エラスチンは血管細胞外マトリックスの主
要構成成分であるエラスチン線維の中核をなす。 エラ
スチンは血管の弾性を担う分子であるとともに、血管の
強化に関与していると考えられている(分子細胞生物学
辞典(東京化学同人社発行,1997年)参照)。脳動
脈瘤の好発部位はウイルス輪などの脳血管分岐部であ
り、分岐部の脆弱性と脳動脈瘤発生との関連がこれまで
指摘されてきている(Carmichael, R., J. Path. Bact.
vol 62, 1-18 (1964) )。連鎖解析の結果、および公知
のエラスチンの機能的役割から、エラスチン遺伝子が脳
動脈瘤の有力な疾患候補遺伝子であると考えられた。
【0132】実施例3 エラスチン遺伝子の構造および
スクリーニング エラスチン遺伝子は、前記のように7q11.23に存
在し、短腕テロメアから86.5センチモルガン(cM)に
位置する全長55キロベースの34個のエキソンからな
っている遺伝子である(Peoples, R., et al. Am. J. Hu
m. Genet. 66 (1) 47-68 (2000))。
【0133】このエラスチン遺伝子のすべてのエキソ
ン、プロモーター領域、そしてイントロンの一部につい
て、遺伝子変異のスクリーニングを直接シーケンス解析
にておこなった(Rosenblum, B. B., et al. Nucleic Ac
ids Res. 25, 4500-4504 (1997))。
【0134】その結果を表2に示す。
【0135】
【表2】
【0136】表2から分かるように、13ヶ所で多型変
異を検出した。変異のうち、アミノ酸置換を起こす変異
はエキソン5(61番目C→T:Ala→Val)とエキソン20(11
4番目G→A:Gly→Ser)の2ヶ所のみであった。その他の
変異は、イントロン部位、プロモーター部位に存在して
いた。遺伝子変異タイピングは、一塩基伸長反応を用い
るSNaPshot法をABI377DNAシーケンス
サー(PEアプライドバイオシステムズ社製)用い、それぞ
れの変異でのアレル頻度を検出した。該方法は、ABI
377DNAアナライザーの使用マニュアルに順じてお
こなった。
【0137】実施例4 ケースコントロールスタディ エラスチン遺伝子多型と脳動脈瘤との関連性を調べるた
め、実施例3で得られたすべての多型についてアレル頻
度の比較をケースコントロールスタディでおこなった。
【0138】対象とした患者は、アンギオグラフィー、
MRA(magnetic resonance angiography)か3D CT
A(3 dimentional computed tomographic angiography)
のいずれかの検査により直径4mm以上の脳動脈瘤を認め
たものであり、同様の手法で脳動脈瘤を認めなかったも
のを非患者(対照)とした。患者168名、非患者188
名のそれぞれについて、それぞれの多型について患者と
対照でアレル頻度の比較をカイ検定(χ-テスト)により
おこなった。
【0139】即ち、ある遺伝子変異が病気の原因となっ
ているならば、患者と対照とでそのアレル頻度に差が予
想される。すべての多型でケースコントロールスタディ
をおこなったが、特に頻度に差があるような多型はなか
った。そこで、さらに二つの多型を組み合わせてハプロ
タイプ解析をおこない、その頻度の比較をおこなった。
尚、ハプロタイプはARLEQUINプログラム(http:
//anthropologie.unige.ch/arlequin )により構築し、
可能な2ヶ所の組み合わせ全ての解析をおこなった。そ
の結果を表3に示す。
【0140】
【表3】
【0141】その結果、単独変異では有意な差はなかっ
たが、2ヶ所を組み合わせることにより有意な差を得る
ことが出来た。最も強い有意差を得たのは、イントロン
20(+17)とイントロン23(+24)のハプロタ
イプで、値はP=0.00000005であった(表
3)。即ち、イントロン20とイントロン23多型は、
単独では疾患に関与していないが、両者が組み合わさる
ことにより、疾患に関与していることが判明した。
【0142】従って、これらイントロン20とイントロ
ン23多型を有するものが、脳動脈瘤の発症リスクを保
有するヒトまたは患者としてのリスクが高いことにな
る。即ち、エラスチン遺伝子のイントロン20の17番
目の野生型Tであり、イントロン23の24番目のTが
Cに変異した変異した両者ハプロタイプ上に有するヒト
が脳動脈瘤の発症リスクが高いことがわかる。
【0143】実施例5 脳動脈瘤の発症リスクの検出法 1.エラスチン遺伝子のイントロン20とイントロン2
3ハプロタイプの患者において有意に頻度が高かったの
は、WV(イントロン20は野生型(W)で、イントロン
23は変異型(V))であった(これをWVハプロタイプ
とする。)。
【0144】WVハプロタイプに注目すると、相対危険
率(odds ratio)は、1.91、即ちこのハプロタイプを
有しているヒトは、このハプロタイプを有していないヒ
トより1.9倍も脳動脈瘤に罹患しやすいということで
ある。
【0145】またWVタイプのハプロタイプをホモ接合
性で有しているヒトは、脳動脈瘤で有意に多く(10.7%
vs. 2.7%, P=0.002)、相対危険率は4.39であった。
すなわちWVタイプをホモ接合性で有する個人は脳動脈
瘤の発症リスクが非常に高いことが示唆される。 これ
は一般に以下のように計算される。
【0146】 このような結果によっても、ヒトのエラスチン遺伝子の
タイピングが脳動脈瘤の発症リスクの存在の診断的な意
義を有するものと考えられた。
【0147】また、この遺伝型は脳動脈瘤破裂(クモ膜
下出血)患者で増えるということはなかったので、脳動
脈瘤破裂ではなく脳動脈瘤発生そのものに関与するもの
と予想された。
【0148】従って、脳動脈瘤の発症リスクの存在を検
出するためには、イントロン20(17番目のT→C)と
イントロン23(24番目のT→C)の2ヶ所をそれぞれ
の測定対象とする者で遺伝子タイピングする必要があ
る。この2ケ所からハプロタイプを構築し、イントロン
20の17番目のDNAが野生型Tでイントロン23の
24番目TがCであるハプロタイプを検出する必要があ
る。
【0149】該方法としては、1塩基伸長反応をおこな
うスナップショット(SNaPshot法:)が好ましく
例示される。該方法は、ABI PRISM SNaP
shot ddNTP Primer Extenti
on Kit(ABI バイオシステムズ社製)にて簡便に測
定できる。反応後生成した蛍光フラグメントは、同じく
ABIa PRISM 310/377/3100/37
00およびGeneScanソフトウェアで解析するこ
とができる。
【0150】即ち、対象者から得られた検体からゲノム
DNAを抽出した後、ヒトエラスチン遺伝子のイントロ
ン20およびイントロン23の部分のDNA断片をそれ
ぞれを含むように作成したプライマー対によって、数十
から数百塩基のDNA断片長をPCR増幅する。このP
CR産物をテンプレートにして、目的の変異DNAの直
前に対応するプライマーをアニーリングさせ、ポリメラ
ーゼで1塩基のみ伸長させる。例えばイントロン20の
場合は、アンチセンス鎖にハイブリダイズさせる場合に
はイントロン20部位のDNA配列番号16番目からセ
ンス鎖の5’側に任意の長さ,例えば約16−24塩基
長の野生型配列からなるプライマーを作成する。センス
鎖にハイブリダイズさせる場合にはイントロン20部位
のDNA配列番号18番目からアンチセンス鎖の5’側
に任意の長さ,例えば約16−24塩基長の野生型配列
からなるプライマー、例えばイントロン20のDNA配
列(配列番号1)中番号18〜37の配列に相補的な2
0塩基長の核酸配列からなるプライマー(配列番号3)
を合成する。そして6−FAMとHEXなどのATGC
のそれぞれ異なった色の蛍光でラベルされたddNTP
を混ぜておく。ddNTPは1塩基の伸長で伸長がスト
ップする塩基であるから、この反応の結果により1塩基
のみ伸長したプライマーは、伸長した端の塩基の種類に
依存して色が着く。即ち、イントロン20部位のDNA
配列の17番目が野生型か変異型かを判別することが出
来る。同様にイントロン23部位の24番目のDNAが
野生型か変異型かを判別することが出来る。例えば、イ
ントロン23のDNA配列(配列番号2)中番号25〜
44の配列に相補的な20塩基長の核酸配列からなるプ
ライマー(配列番号4)を合成して上記と同様に判別す
る。
【0151】このddNTPによって蛍光ラベルされた
プライマーを電気泳動で分離し、蛍光シグナルを解析検
出する。尚、蛍光シグナルを電気泳動で検出する方法に
代えて、1塩基伸長のともなう分子量の差をマススペク
トルで検出する方法も適応することができる。
【0152】このように変異により取り込まれる塩基が
異なり、異なる蛍光シグナルとして認識されるので遺伝
子タイピングが可能となる。かくして、196サンプル
(5ngDNAをPCR増幅)を1枚のゲル(泳動2時間)で
解析できる。
【0153】イントロン23についても同様に検出でき
る。
【0154】実施例5−2 脳動脈瘤の発症リスクの検
出法 ピロシーケンス(Pyrosequencing法:Ronaghi, M., et a
l., Science, 281, 363-365(1998))法を用いて行った。
即ち、血液サンプルなどから、常法によりゲノムを単離
した後、ビオチン標識したプライマーにより変異を含む
ターゲットの数十から数百塩基をPCR増幅をおこな
う。マグネットビーズを用い、一本鎖DNAを精製し、
変異の数塩基上流からシーケンスするように設定された
プライマーをアニリングさせる。次にソフトウェアに入
力された変異付近のシーケンスにしたがって装置が1種
類ずつdNTPを添加する。DNAポリメラーゼが塩基
伸長するとPPi(ピロリン酸)を生成する。ピロリン
酸(PPi)をスルフリラーゼ(Sulfurylase)によりAT
Pに返還させ、それをルシフェラーゼの基質とし、発光
検出器やCCDカメラで化学発光を検出する。添加され
たdNTP、即ち、塩基配列に従い発光のピークが得ら
れるので、遺伝子タイピングが可能となる。
【0155】この手法により96サンプルを15分ほど
でタイピングできた。
【0156】上記方法は、DNAポリメラーゼ、ATP
−スルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、アピラーゼ(apyra
se)の4種の酵素混合液、ルシフェリン、APS(アデ
ノシン5’硫酸リン酸)からなる基質液、dATP(デ
オキシアデノシンα−チオ・3リン酸)、dCTP、d
GTP、dTTPからなるdNTPを構成要素とする市
販のSNPReagent Kits(Pyrosequencing A
B社製)を用い、該方法を用いる自動DNA配列分析のた
めのPSQ96システム(Pyrosequencing AB社製)およ
びその使用のためのSNPソフトウェア(Pyrosequencin
g AB社製)を用いて、簡便に測定することができる。
【0157】このように本発明によって見出されたヒト
エラスチン遺伝子のイントロン20とイントロン23の
WVハプロタイプを有するものが、脳動脈瘤の発症リス
クが高いという事実から、該方法により、簡便にヒトが
脳動脈瘤の発症リスクの存在を検出することが可能とな
る。
【0158】また、本発明の脳動脈瘤の発症リスク検出
法の利用によれば、脳動脈瘤の遺伝的なリスクを有する
ヒトを同定し、出血する前に診断する二次予防の体制の
確立が可能となる。また、本発明の利用によれば、脳ド
ックや手術の適正な対象者の抽出にも活用できる。
【0159】さらに原因遺伝子がどのように脳動脈流疾
患の発症へ関与しているかの解析により、脳動脈瘤成因
解明が可能となり、病態生理に基づいた新たな脳動脈瘤
(クモ膜下出血)に対する薬剤の開発に利用できる。
【0160】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> OTSUKA PHARMACEUTICAL CO., LTD. <120> AN INTRACRANIAL ANEURYSM SENSITIVE GENE <130> 2D01JP <140> <141> <160> 4 <170> PatentIn Ver. 2.1 <210> 1 <211> 236 <212> DNA <213> Homo sapiens <220> <221> intron <222> (1)..(236) <223> INTRON 20 REGION (14289 - 14524) OF ELASTIN GENE <400> 1 gtgagcctta gtcacatctg gggacatggg ttgagaaggg atgggggctt cttgtctgct 60 cggctctgca ggggcagtgg ggactgtaga tcgggcttga atgtgctcag ggaggagttg 120 ggggagaaga agggaggtcg tatccatgcc ttacagggca gaagagcttt aaacacggct 180 cggaggagac ccaggcacgg cttctgaggg tctctttctt tctcgtttcc ttgtag 236 <210> 2 <211> 2177 <212> DNA <213> Homo sapiens <220> <221> intron <222> (1)..(2177) <223> INTRON 23 REGION (15550-17726) OF ELASTIN GENE <400> 2 gtaagtcccc ctcacccccg ccattggctc acggagaact gctttctcct gtgccctgct 60 ctggggtctg accgcccagc ttcctgttcc tttccacccc acttaagctg tcacattctg 120 gggtgggccc tccttagacc ttttggccca ctgatgaatg acctctagga gtgtgggtga 180 tgtttctgat taggggagca gggtgagcag tgtgagcctc cctgttccta aagcccctgg 240 tgcctcccag gctattgggg acctgacctc atgctgagct ccagctcccc ttgagggact 300 ccagttctcc cccttctcct tctctttctc cttctccttc ttcttcttgt gctcctcttc 360 cttcttcttc ttcttctttc ttctcctcct cctccttctc cttctccctc ctcctccttc 420 tcattcttct tcttctcctt cctcttcttc tcctcctgct tcttttcctt ctcctccctc 480 ttcctcctcc tcctgcttct cctttcttct ccttcttctt ctttcttctt cttcttcctc 540 tttttctcct tctttcttct tctttctcct tcttcttctt cttcctctgc tccttcttct 600 ttctcctcct tcttctcttc tcttccgtct ttcttctcct ccttttcctc cttcttcttt 660 cttctccttc tccttttttc ttgagatagg gtctagctct gtcacccagg atggggtaca 720 gtgccacaat catagctcac tacagcctca acctcccagt ctcaagcagt ctgcctgctt 780 ccgcccccca agagctgaga ccacaggtgc ccaccaccat gcctggctaa ttttttaatt 840 tttttgtagc gacagcggtc tcactatgtt gctcaggctg gtctcaaact cctaggctaa 900 agcgatcctc ctgcctctgc ctcccaaagt cctgggatta caggcgtgag ccaccacacc 960 cggcctgcag tacttcttgt tccccatctc ttgctacatt tgagggccac cctggcagcc 1020 ccaggtgccc acacttttct gaacatggca aatcgtggca gcaccaattg tagagctcaa 1080 ctgtatgtca ggccctgggc atggggtctg taggccttgg ccctagggac ctgtgggctg 1140 aaaggttcag atcagaatct ctaggactga ataggccaga gagcatttcg actgcaggtc 1200 tgctgagccc catattctca cacacagcaa tctttattat ttatttattt gagacggggt 1260 ctcacattgt cgcccaggtt ggagtgcagt gatgccgtca gctcgccgca ggcctcaaac 1320 tcctagctta agccattatt cccccttagt atccctagta gctggggcta cagtcacatg 1380 ccaccatgcc cagtttaaaa aaaaaaaaaa ttgtatgcga tcctcccaca ttggcctctc 1440 aaagtgctgg gatgacaggc atgagccaac gtgcctggcc tacaaaaatc ttacagagtt 1500 gattttattt ttcccatttt acagatgtgg aaactgaggt tcccagagct taagtaactt 1560 gcctacagtt gcacagctaa atggtggctg agctgagatt tgaacccaaa gcctttctgt 1620 cttacaaagt cccttatata atgtaaatct gcctccatca gcctcaaatc tccaaggggt 1680 ccttgtcact gaaaaggtta agaactcctg gccaaatgca gcagctcaca actataatcc 1740 cagaactttg ggaggccaag tcgggtggat cacccaaggt caggagttta agaccagcct 1800 ggccaacatg gtgaaaccct gtctctacta aaaatacaaa aaaattagcc gggcatggtg 1860 gtgcgcacct gtagtcccag ctactcagga ggctgaggca ggagactcac ttgaactcgg 1920 gaggtggtgg ttgcagtgag tcgagatcac gccattgcac tccagcctgg gcgatagagt 1980 gagactctgt ctccaaaaaa acaaagttat gaactcctga gcctgcacac acttcatatt 2040 agggaggagg aagctgaggc ccagcaaggg aaagtaactg atccagggtc acacagcaaa 2100 tctatgccag ggccgaggct ccagccctct ttccataagc ttctgtcctc tttgatcagg 2160 tcttggttaa tgatcag 2177 <210> 3 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:primer <400> 3 ttctcaaccc atgtccccag 20 <210> 4 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:primer <400> 4 aagcagttct ccgtgagcca 20
【図面の簡単な説明】
【図1】染色体5番における多点連鎖解析によるマーカ
ーと最大lodを示す図面である。
【図2】染色体7番における多点連鎖解析によるマーカ
ーと最大lodを示す図面である。
【図3】染色体14番における多点連鎖解析によるマー
カーと最大lodを示す図面である。
【図4】エラスチン遺伝子(ELN)の構造を示す。P
Mはプロモーター、EXはエキソン、INTはイントロ
ンを示す。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト・エラスチン遺伝子のイントロンの
    部分の遺伝子多型を同定することにより、脳動脈瘤の発
    症のリスクの存在を判定する方法。
  2. 【請求項2】 ヒト・エラスチン遺伝子のイントロンの
    部分の遺伝子多型が、20番目のイントロン部位DNA
    配列の17番目のDNAが野生型(T)であって、且つ
    23番目のイントロン部位DNA配列の24番目のDN
    Aが野生型(T)からCに変異した変異型からなるハプ
    ロタイプ(およびその相補鎖)の場合に脳動脈瘤の発症
    のリスクが高いと判定する、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 遺伝子多型を、ヌクレオチド直接配列決
    定法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)−ド
    ットブロット分析、一塩基プライマー伸長法、PCR−
    単鎖高次構造多型(SSCP)分析、PCR−制限酵素断片長
    多型(RFLP)分析、インベーダー法および定量的リアルタ
    イムPCR検出法からなる群から選ばれる少なくとも一
    つを含む方法を用いて同定する、請求項1又は2に記載
    の方法。
  4. 【請求項4】 一塩基プライマー伸長法を用いて同定す
    る、請求項3に記載の方法。
  5. 【請求項5】 以下の(a)及び(b)からなるオリゴ
    ヌクレオチド (a)ヒト・エラスチン遺伝子にハイブリダイズするこ
    とができる遺伝子多型検出用プライマー又はプローブと
    してのオリゴヌクレオチドであって、該オリゴヌクレオ
    チドが、ヒトエラスチン遺伝子の20番目のイントロン
    部位DNA配列の17番目のDNAの遺伝子多型部位を
    含む配列または該オリゴヌクレオチドの3’末端が該遺
    伝子多型部位よりも1塩基から数塩基上流に位置するも
    のであるオリゴヌクレオチド、(b)ヒト・エラスチン
    遺伝子にハイブリダイズすることができる遺伝子多型検
    出用プライマー又はプローブとしてのオリゴヌクレオチ
    ドであって、該オリゴヌクレオチドが、ヒトエラスチン
    遺伝子の23番目のイントロン部位DNA配列の24番
    目のDNAの遺伝子多型部位を含む配列または該オリゴ
    ヌクレオチドの3’末端が該遺伝子多型部位よりも1塩
    基から数塩基上流に位置するものであるオリゴヌクレオ
    チド。
  6. 【請求項6】 ヒト・エラスチン遺伝子の20番目のイ
    ントロン部位DNA配列の17番目のDNAの遺伝子多
    型検出用プライマー、ヒト・エラスチン遺伝子の23番
    目のイントロン部位DNA配列の24番目のDNAの遺
    伝子多型検出用プライマー、を含む脳動脈瘤の発症のリ
    スク検出用診断キット。
  7. 【請求項7】 ヒト・エラスチン遺伝子の20番目の
    イントロン部位DNA配列の17番目のDNAが野生型
    (T)であって、且つ23番目のイントロン部位DNA
    配列の24番目のDNAがTからCに変異した変異型で
    ある、脳動脈瘤の発症のリスク検出のためのDNA配列
    からなるハプロタイプ(およびその相補鎖)。
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