JP2002205152A - 連続鋳造品の製造方法 - Google Patents

連続鋳造品の製造方法

Info

Publication number
JP2002205152A
JP2002205152A JP2001002889A JP2001002889A JP2002205152A JP 2002205152 A JP2002205152 A JP 2002205152A JP 2001002889 A JP2001002889 A JP 2001002889A JP 2001002889 A JP2001002889 A JP 2001002889A JP 2002205152 A JP2002205152 A JP 2002205152A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molten steel
consumable electrode
slab
alloy
mold
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2001002889A
Other languages
English (en)
Inventor
Masafumi Morishita
雅史 森下
Masahiko Kokita
雅彦 小北
Hideo Mori
秀夫 森
Hironori Yamamoto
裕基 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2001002889A priority Critical patent/JP2002205152A/ja
Publication of JP2002205152A publication Critical patent/JP2002205152A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Continuous Casting (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 連続鋳造にて多種多様な合金成分組成の鋳片
を安定して製造することのできる連続鋳造品の有用な製
造方法を提供する。 【解決手段】 連鋳鋳型内の溶鋼表面に形成したフラッ
クス層に消耗電極を差し込み、該消耗電極の先端をフラ
ックス層中での通電により溶融させて溶鋼中に添加す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】鋼の連続鋳造において、鋳型
内の溶鋼に金属または化合物等を添加して種々の合金成
分組成の連続鋳造品を製造する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】鉄鋼製造プロセスにおいて多種多様な合
金成分組成の鋼鋳片を作り分けるには、溶鋼鍋毎に合金
成分濃度を調整して連続鋳造する方法が一般的となって
いる。しかしながら、こうした方法では同一組成の鋼を
少なくとも溶鋼鍋一杯分製造せざるを得ず、例えば数十
トンの注文に対して容量が数百トンもの溶鋼鍋を使用す
る場合、多量の在庫を抱えたり注文がまとまるまで長い
納期を設定せざるを得ないなど少量多鋼種の製造には応
じ難い状況となっており、鋳片製造の一連の工程の中
で、種々の合金成分組成の鋳片を作り分ける方法が模索
されている。
【0003】このような課題に対し、連続鋳造にて合金
成分を添加することで鍋一杯分の溶鋼から種々の合金成
分組成の鋳片を製造する方法が提案されつつある。
【0004】例えば特開平8−243687号には、図
1(a)に示すように1台の鋳型に合金成分組成の異な
る2種の溶鋼を注入する方法が提案されている。しかし
ながらこの方法で目的の合金成分組成の鋳片を製造する
には、鋳型に注入する2種類の溶鋼の比率を厳密に制御
する必要がある。即ち1種類の溶鋼であれば、鋳片の引
抜き速度と鋳型内の溶鋼湯面レベルを制御して注入流量
を厳密に測定することが可能であるが、この様に2種以
上の溶鋼を注入する場合には、溶鋼注入量を別々に測定
するのが困難であるため、目的の合金成分組成とするの
が難しいという問題がある。また、既存の連続鋳造設備
に対して大幅な設備変更が必要となり、新設する場合の
設備コストが大きいという問題もある。
【0005】上記公報には、図1(b)に示されるよう
な合金成分をフラックスに含有させて鋳型内の溶鋼湯面
上に添加する方法も提案されている。しかしながら、操
業に適したフラックスにはその成分組成範囲に制約があ
り、フラックスに添加できる合金成分も制限されるた
め、得られる鋳片の種類も限られることとなる。
【0006】更に図1(c)に示されるように、合金元
素を含有するワイヤーを鋳型内の溶鋼中に直接供給する
方法も提案されている。しかしながらこの方法では、合
金添加量が溶鋼中のワイヤー溶解速度に左右されるため
その制御が難しいことや、溶鋼中でワイヤーが溶け残っ
たままとなり濃度ムラが生じ易い等の問題が生じる。ま
たワイヤーの溶融熱源を溶鋼に頼っているため、溶鋼の
熱量が部分的に奪われて凝固するなどして品質欠陥を招
き易い。
【0007】一方、特許第3020127号には、タン
ディッシュ内の溶鋼中にワイヤー形状の金属を添加する
際に、予めワイヤーに電流を通して加熱することで溶鋼
から抜熱される熱量を小さくし、溶鋼の局部冷却を防止
する方法が提案されている。
【0008】しかしながら、上記方法ではワイヤーを室
温から溶融温度にまで加熱しているにすぎず、依然とし
てワイヤーの溶融は溶鋼の熱量に頼らざるを得ないた
め、溶鋼から熱量が奪われて溶鋼の局部冷却は避けられ
ないという状況にある。また、上記方法ではワイヤー溶
解のための熱量を調整することができないため、合金添
加量を調整することができず、得られる鋳片の合金成分
組成も制限を受けることとなる。更にワイヤーを溶鋼中
に直接添加しているため、前述したようにワイヤーが溶
け残って鋳片中に合金成分のムラが生じ易いという問題
がある。加えて上記方法では、消耗電極以外の電極を高
温の溶鋼に直接差し込んでいるため、該電極の耐久性が
必然的に低下することや、電極材が溶鋼の汚染源となり
やすいため、例えば極低炭素鋼を鋳造する場合にカーボ
ン電極を用いた場合に溶鋼中のC濃度が高くなってしま
うという問題が生じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑
みてなされたものであって、その目的は、連続鋳造にて
多種多様な合金成分組成の鋳片を安定して製造すること
のできる連続鋳造品の有用な製造方法を提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係る連続鋳造品
の製造方法とは、連鋳鋳型内の溶鋼表面に形成したフラ
ックス層に消耗電極を差し込み、該消耗電極の先端をフ
ラックス層中での通電により溶融させて溶鋼中に添加す
ることを要旨とするものであり、前記消耗電極の溶融
は、該消耗電極の先端と溶鋼の間のアーク放電、または
抵抗加熱によって行うことを好ましいとする。
【0011】また複数の前記消耗電極を前記フラックス
層中に供給して該消耗電極間にて通電させ、前記通電は
銅製端子を介して行うことを好ましい形態とする。
【0012】合金成分の濃度勾配を軽減するには、溶鋼
に周波数1〜100Hz、磁束密度0.01〜0.2T
の移動磁場を作用させればよい。また鋳片の表層部と内
部の間に合金成分の濃度勾配を形成するには、消耗電極
を鋳型の壁面近傍に差し込み、溶鋼に磁束密度0.05
〜5Tの静磁場を作用させればよく、上記電極として鋳
型への注入溶鋼よりも合金元素濃度の高い消耗電極を用
いて、鋳片内部よりも合金元素濃度の高い鋳片表層を形
成したり、鋳型への注入溶鋼よりも合金元素濃度の低い
消耗電極を用いて、鋳片内部よりも合金元素濃度の低い
鋳片表層を形成することができる。
【0013】更に本発明は、表層部の合金元素濃度が内
部よりも高いかまたは低い連続鋳造品も含むものとす
る。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明者らは前述した様な状況の
下で、連続鋳造の鋳型内で溶鋼に合金成分や純鉄、また
はその他の化合物等を添加することで、連続鋳造にて種
々の合金成分組成の鋳片を安定して製造できる方法の実
現を目指し、鋭意研究を進めた。その結果、合金成分を
消耗電極の形態で溶鋼に添加する際に、連鋳鋳型内の溶
鋼表面に形成したフラックス層に該消耗電極を差し込
み、フラックス層中での通電により溶融させて溶鋼中に
添加すれば、鋳片に不必要なムラを生じさせることなく
添加合金元素量を正確に調整して、多種多様な合金成分
組成の鋳片を連続鋳造にて製造できることを見出したの
である。
【0015】本発明は、図2に示すように、連鋳鋳型1
内の溶鋼2表面に形成したフラックス層3に消耗電極4
を差し込み、該消耗電極4の先端をフラックス層3中で
の通電により溶融させて溶鋼中に添加することを特徴と
するものである。即ち本発明では、消耗電極4を溶鋼2
中に浸漬するのではなく、消耗電極4の先端を溶鋼湯面
上のフラックス層3中に保持しながら通電を行う。この
様な形態で消耗電極に通電することによって、消耗電極
4の先端と溶鋼湯面の間に大きな電圧差を設けてアーク
放電5を生じさせることができるので、消耗電極溶融の
ための十分な熱量を得ることができる。更に電気抵抗率
の大きい酸化物等から形成されているフラックス層中で
抵抗加熱効果も得られるので、より大きな発熱効果を得
ることができる。
【0016】この様に大きな発熱効果が得られることに
よって、消耗電極を室温から溶融温度まで昇温するのに
必要な熱量と、溶解するのに必要な熱量の両方を電気エ
ネルギーとして供給することができ、消耗電極を溶鋼に
浸漬して溶融するのに比べて、消耗電極の溶融能力、即
ち合金成分添加能力を飛躍的に向上させることができる
のである。この様に、本発明法では消耗電極溶融のため
の熱源を溶鋼に頼らないため、溶鋼温度を変化させるこ
となく安定した操業を行うことができる。また上記通電
量を制御することで、消耗電極の溶融量、即ち合金等の
添加量を正確に調整することができるのである。
【0017】前記フラックス層の厚さが薄過ぎると、メ
ニスカス保温性の確保や、溶鋼湯面からの酸化防止を十
分に図ることができなくなる。従って、フラックス層の
厚さは10mm以上とするのが好ましい。
【0018】尚、上記消耗電極には、製造する鋳片の合
金成分組成に応じて種々の材質のものを用いることがで
き、例えば鉄−シリコン合金、鉄−マンガン合金、鉄−
燐合金、ニッケル、クロム、モリブデン、銅、ニオブ、
チタン、ジルコニウム等が用いられ、更にこれらにアル
ミニウム、鉛、希土類元素、ホウ素、硫黄等を添加した
ものを用いることができる。また合金成分濃度の低い層
を得るには、純鉄を消耗電極として利用すればよい。消
耗電極の形状にはワイヤー、薄帯状、棒状等のものが挙
げられる。
【0019】本発明を実施するに当たっては、1本の消
耗電極を用いて溶鋼に合金を添加することも可能である
が、消耗電極が1本の場合には、電気回路形成のために
別の電極を溶鋼に浸漬させることが必要になる。そうす
ると、該電極の耐久性や電極材による溶鋼の汚染が問題
となり、例えば別の電極としてカーボン電極を使用した
ときには、材質のカーボンが溶鋼に溶損し易いため安定
して長く使用することが難しい。また溶損したカーボン
が溶鋼中に溶出することで、例えば炭素濃度0.005
%以下の極低炭素鋼を鋳造するときに炭素濃度を必要以
上に高めてしまうこととなる。
【0020】従って、差し込む消耗電極を複数本にする
ことが望ましい。複数本の消耗電極を用いることで合金
元素添加用以外の電極を用いる必要がなくなり、電極の
耐久性や電極材による溶鋼の汚染を防止することができ
る他、合金元素のトータル添加量も増加させることがで
きるのである。
【0021】通電には直流電流を用いることも可能であ
るが、電極間の電圧のバラツキを低減させるには、単相
または多相の交流電流を用いることが望ましい。また消
耗電極と端子の間の電気抵抗を低減して確実に通電する
には、前記図2に示すような銅製端子6を介して消耗電
極に給電することが望ましく、消耗電極の表面に銅鍍金
を施してもよい。
【0022】交流電流を通電する場合、i=2n(nは
整数)本の消耗電極に単相交流電流を通電してもよい
し、またi=3n(nは整数)本の消耗電極に3相交流
電流を通電してもよい。
【0023】消耗電極1本当たりに通電する電流値は、
電極材料や電極断面積にもよるが、200〜2000A
とすることが望ましい。電流値が低すぎると合金成分添
加能力を確保するのに多数の電極を要して設備が複雑に
なり、逆に電流値が高すぎると合金成分を均一に混合す
ることが困難となるからである。
【0024】図3は、鋳造速度1.8m/minの条件
で幅1500mmのスラブを鋳造する際に、鋳型壁面か
ら内部に約120mmの位置に電極を各々2本、4本、
8本差し込んで表層部に集中的に合金成分(Ni)を添
加しながら、鋳型内湯面から深さ500〜700mmの
領域に0.3Tの静磁場を作用させた場合の、電極1本
当たりの電流値と鋳片表層部のNi濃度の関係を電極数
別に示したグラフである。この図から明らかなように、
電流値を高め且つ電極数を増加させることで合金添加能
力を飛躍的に高めることができることが分かる。
【0025】注入される溶鋼の湯面レベルが変化し、且
つ消耗電極の先端が溶融していく状況において、消耗電
極の先端が溶鋼湯面に浸漬しないようにするには、消耗
電極の先端と溶鋼湯面との間隔を一定に制御する必要が
ある。具体的な制御方法として、例えば上記間隔が増大
した場合に消耗電極の溶解速度を低減して間隔を狭め、
上記間隔が小さくなった場合には消耗電極の溶解速度を
速める等の方法があり、これらを自動制御で行なうこと
が望ましい。自動制御の一形態として次の様な方法が挙
げられる。即ち、消耗電極の先端と溶鋼湯面の間隔は、
系の電気抵抗(=電圧/電流)と比例関係にあるので、
例えば電圧を一定にしておけば、間隔が小さくなった場
合に電気抵抗が低下して必然的に電流が増大し、溶解速
度が速まって上記間隔が広がることとなる。また間隔が
広まった場合には、電気抵抗が増大して必然的に電流値
が小さくなるため、溶解速度が減少して間隔が狭まるの
である。
【0026】合金成分組成の均一な鋳片を得るには、合
金添加後の溶鋼を十分に撹拌・混合して溶鋼の濃度ムラ
をなくすことが必要となる。特に、鋳型内の溶鋼に合金
を添加する場合、溶鋼の濃度ムラが直接鋳片の濃度ムラ
となりやすいため溶鋼の撹拌・混合が重要となる。撹拌
の方法として溶鋼中にAr等の不活性ガスを吹込んで行
うガス撹拌等もあるが、より安定した撹拌効果を得るに
は移動磁場を利用して電磁撹拌を行うことが望ましい。
【0027】移動磁場の周波数は、低すぎると撹拌力が
弱くなるため1Hz以上とすることが好ましく、より好
ましくは2Hz以上である。また上記周波数が高すぎて
も溶鋼中への磁場の浸透が弱くなるため、100Hz以
下とすることが好ましく、より好ましくは4Hz以下で
ある。
【0028】移動磁場の磁束密度は、低すぎると撹拌力
が弱く溶鋼中の合金濃度が均一とならないため、0.0
1T以上とすることが好ましく、より好ましくは0.0
5T以上である。また上記磁束密度が大きすぎても溶鋼
湯面が乱れて安定した鋳造が行い難くなるため、移動磁
場の磁束密度は0.2T以下とすることが好ましく、よ
り好ましくは0.12T以下である。
【0029】電磁撹拌の領域が湯面から深すぎる場合に
は、溶鋼湯面の撹拌効果が弱まって濃度ムラが生じ易く
なるため、溶鋼湯面から深さ300mm以内の領域を順
次撹拌していくことが望ましい。
【0030】また合金濃度分布の均一化を図るには、フ
ラックス層中で消耗電極を図4に示すように鋳造方向に
対して垂直に揺動させることも有効である。
【0031】消耗電極を用いて鋳型内の溶鋼に合金を添
加する場合、溶鋼の濃度ムラが生じ易く、特に合金添加
直後の鋳型内上部の方が下部よりも溶鋼の成分組成が偏
り易い。また鋳片の表層部は鋳型上部で凝固し鋳片内部
は下方側で凝固するが、本発明ではこれらの性質を利用
して、鋳片の表層部と内部の間に合金成分の濃度勾配を
設け、表層部のみを有益な合金成分組成とした連続鋳造
品を製造することができたのである。
【0032】この様な合金成分の濃度勾配を積極的に形
成するには、上記消耗電極を鋳型の壁面近傍に差し込め
ばよいが、表層部における鋳片幅方向の濃度分布を均一
化する必要があることから、鋳型のコーナー近傍に差し
込むことが好ましい。
【0033】鋳型内溶鋼上下部の相互の撹拌を抑制する
には、溶鋼に静磁場を作用させることが有効であるが、
静磁場の磁束密度が小さすぎる場合には十分な撹拌抑制
効果が得られないため、0.05T以上とすることが好
ましく、より好ましくは0.15T以上である。磁束密
度が大きすぎても適正な混合抑制効果が得られず、また
磁束を発生させるための設備費用や電力消費量が増大す
るため、静磁場の磁束密度は5T以下とすることが好ま
しく、より好ましくは0.5T以下である。
【0034】尚、静磁場は、溶鋼湯面より下方、かつ鋳
型内に溶鋼を流入する浸漬ノズル吐出孔の上方にて作用
させることが好ましい。
【0035】鋳片の表層部と内部の間に合金成分の濃度
勾配を設ける場合の一態様として、鋳片内部よりも合金
元素濃度の高い鋳片表層を形成する場合がある。
【0036】例えば、厚板用鋼の耐食性を向上させる場
合、Ni、Cr、P、Ti、Cu等の合金成分が一般に
添加されるが、耐食性は鋼片表層部にのみ要求されるこ
とが多いので、上記元素を消耗電極として鋳型の壁面近
傍から溶鋼に添加すれば、鋳片表層部の耐食性を確保し
つつ鋳片内部への合金添加量を抑えることができる。従
って、鋳片内部にまで均一に上記元素を添加した従来品
と比較して、高価な上記合金元素の使用量を抑制するこ
とができ、より安価に耐食性の高い鋼片を提供できるこ
ととなるのである。
【0037】この様に鋳片内部よりも合金元素濃度の高
い鋳片表層を形成するには、鋳型の壁面近傍に、鋳型へ
の注入溶鋼よりも合金元素濃度の高い消耗電極を差し込
めばよく、上記耐食性向上を目的とする他、鋼材表層部
の硬度を高めるには、C,Mn,Cr,Mo,V,Nb
等の元素を含む消耗電極を用いればよい。また、鋼材全
体の被削性を高めるためPb,希土類元素,B,S等を
添加する場合でも、これらの元素を溶鋼鍋に添加して鋳
造する場合と比較して、蒸発や浮上により生ずる前記合
金元素のロスを低減することが可能であり、添加合金元
素の歩留まりを高めることができる。鋳片内部よりも合
金元素濃度の高い鋳片表層を形成する方法には、上記方
法の他、鋳型の中心近傍に、鋳型への注入溶鋼よりも合
金元素濃度の低い消耗電極を差し込む方法が挙げられ
る。
【0038】鋳片の表層部と内部の間に合金成分の濃度
勾配を設ける別の態様として、鋳片内部よりも合金元素
濃度の低い鋳片表層を形成する場合がある。
【0039】例えば、薄板用鋼の加工性を向上させる目
的でSi等の合金を多量に添加することがあるが、加工
性が向上する一方で、亜鉛等をめっきしたときのめっき
密着性が低下するという問題がある。従って加工性とめ
っき密着性とを同時に高めた鋼として、鋼片表層部のS
i濃度が低く内部のSi濃度の高い鋼片が求められる
が、この様な場合、溶鋼鍋から鋳型内へはSi濃度の高
い溶鋼を注入しつつ、Siを含まない鋼を消耗電極とし
て鋳型の壁面近傍から溶鋼に添加することで、上記両特
性を備えた鋼片を得ることができるのである。
【0040】この様に鋳片内部よりも合金元素濃度の低
い鋳片表層を形成するには、鋳型の壁面近傍に、鋳型へ
の注入溶鋼よりも合金元素濃度の低い消耗電極を差し込
めばよいが、その他、鋳型の中心近傍に鋳型への注入溶
鋼よりも合金元素濃度の高い消耗電極を差し込む方法も
挙げられる。鋳片全体に合金元素を添加した場合に、添
加した該合金成分に起因して、鋳造時、鋳片内部にワレ
が生じることがあるが、上記方法で鋳片表層部に集中的
に合金を添加すれば、上記欠陥の発生を防止することが
できるのである。
【0041】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限
を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範
囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、そ
れらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。 (1)消耗電極の供給方法についての実施例 幅が一定(1230mm)のスラブを図5上図に示すよ
うに鋳造速度を変化させながら連続鋳造する場合に、2
台のリールに巻き付けたワイヤー状のNi消耗電極を、
それぞれ電極自動送給装置を用いて、溶鋼供給速度に連
動するように送給速度を調節しながら鋳型内のフラック
ス層中に連続的に供給した。合金成分としてNiを、鋳
片表面から深さ5mm位置の濃度が鋳造速度1.8m/
minにおいて0.1mass%となるよう添加した。
それぞれのリールは絶縁フレームにセットしてリール間
の電気絶縁性を確保した。
【0042】また、連続鋳造速度に関係なく消耗電極の
供給速度を一定とした以外は、上記方法と同様にして連
続鋳造を行なった場合を比較例とした。
【0043】図5下図に、上記電極供給速度制御の有無
別に連続鋳造を行なった場合の、鋳造速度の変動が及ぼ
す鋳片表面から深さ5mm位置でのNi濃度(mass
%)の変化を示したグラフを示す。Ni濃度は、鋳造後
のスラブ鋳片の狭面から深さ5mmの厚み中央位置より
ドリルでサンプルを削り出し、化学分析を行って求め
た。図5は、実施例と比較例について、それぞれ鋳片の
鋳造方向に15箇所づつ、両狭面から5gづつ小計10
gのサンプルを計30回採取して測定した結果である。
この図より、連続鋳造速度の変化に応じて消耗電極の供
給速度、即ちNi添加量を調整することで、鋳片表面か
ら一定深さにおけるNi濃度の変化を抑制できることが
分かる。
【0044】尚、図5下図に示されるように、溶鋼中の
合金成分濃度は鋳造開始直後から所定の合金成分濃度に
到達するまでに時間を要するが、この所要時間を短縮
し、鋳造方向に垂直な鋳片断面の特定位置のNi濃度を
早期に一定にして歩留まりを向上させるには、合金添加
開始直後に消耗電極の供給速度を上げて溶鋼の合金成分
濃度を急激に上昇させた後、所定の濃度に到達した時点
で溶鋼注入流量に応じた供給速度となるよう切り替わる
自動制御にすればよい。
【0045】また本実施例では鋳造中の鋳型幅を一定と
したが、鋳造中に鋳型幅を変化させる場合でも、{(鋳
造速度+湯面レベル上昇速度)×鋳型幅×鋳型厚み}に
比例する溶鋼注入流量に消耗電極の供給速度を連動させ
るようにすれば、例えば渦流式湯面レベル計によって鋳
型内の湯面レベルが一定となるように鋳型への溶鋼注入
量を自動制御すれば、鋳造方向における各鋳片断面の添
加合金濃度を一定とすることができる。鋳型内溶鋼の湯
面レベルが変化した場合に、その湯面レベル変化に応じ
て溶鋼注入流量を制御することで、更に精度良く、鋳造
方向における各鋳片断面の添加合金濃度のばらつきを抑
制することができる。 (2)溶鋼の撹拌・混合方法についての実施例 電極の配置場所、移動磁場の有無および静磁場の有無
が、鋳片の合金濃度の幅方向不均一度、および内部に対
する表層部の合金濃縮度に及ぼす影響について調べた。
【0046】電極の配置場所は、スラブの片側のみまた
は両側に配置し、移動磁場として鋳型内湯面から深さ3
00mmまでの範囲に3Hzで水平に旋回する磁場を作
用させた。また、静磁場として鋳型内湯面からの深さが
500〜700mmの範囲に磁場を作用させた。得られ
た鋳片の合金濃度分布の評価は、図6に示すa,b,c
の3ヶ所からサンプルを採取し、それぞれのサンプルの
Ni濃度(mass%)、即ち、Ca,Cb,Ccを測
定して下記式(1)および(2)に挿入し、A;合金濃
度の幅方向不均一度、およびB;内部に対する表層の合
金濃縮度を求めて行なった。その結果を表1に示す。
【0047】 合金濃度の幅方向不均一度;A=|Ca−Cb|/(Ca+Cb) …(1) 内部に対する表層の合金濃縮度;B=(Ca+Cb)/2Cc …(2)
【0048】
【表1】
【0049】表1におけるNo.4より、消耗電極の配
置場所を両側とし鋳型内湯面から300mm以内の領域
を水平に旋回する移動磁場を作用させれば、合金成分の
濃度勾配発生を抑制でき、合金組成の均一な鋳片が得ら
れることが分かった。またNo.5およびNo.6よ
り、鋳片内部に対して表層部の合金濃度を高めるには、
鋳型内の溶鋼に静磁場を作用させて、静磁場作用領域の
上下の領域の溶鋼が互いに混合するのを抑制すればよい
ことが分かった。
【0050】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、連
続鋳造の鋳型内の溶鋼に合金成分や純鉄、またはその他
の化合物等を添加するに際して、連鋳鋳型内の溶鋼表面
に形成したフラックス層に上記合金成分等を含む消耗電
極を差し込み、該フラックス層中での通電により溶融さ
せて溶鋼中に添加すれば、添加合金元素量を幅広く且つ
正確に調整でき、連続鋳造にて多種多様な合金成分組成
の鋳片を製造できることとなったのである。
【0051】また、上記注入する溶鋼よりも合金濃度の
高いかまたは低い消耗電極を鋳型近傍に差し込んで、表
層部の合金濃度を内部よりも高くしたりまたは低くする
ことで、表層部にのみ有益な層を有する経済的な鋼片を
製造できることとなったのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続鋳造にて合金成分を添加する方法の従来例
を示す概略図であり、(a)は合金成分組成の異なる2
種の溶鋼を供給する方法、(b)は合金成分をフラック
ス中に添加して供給する方法、(c)は合金ワイヤーを
鋳型内の溶鋼中に直接供給する方法を示している。
【図2】本発明にて連鋳鋳型内に合金成分を添加する方
法を例示する概略図である。
【図3】電流値と鋳片表層部のNi濃度との関係を示す
グラフである。
【図4】消耗電極の供給位置を例示した鋳造方向に対し
て垂直な鋳型断面図である。
【図5】鋳片速度の変動が鋳片表面から一定深さのNi
濃度(mass%)に与える影響を消耗電極の供給速度
制御の有無別に示したグラフである。
【図6】実施例における合金濃度測定位置を示す鋳造方
向に対して垂直な鋳片断面図である。
【符号の説明】
1 鋳型 2 溶鋼 3 フラックス層 4 消耗電極 5 アーク放電 6 銅製端子
フロントページの続き (72)発明者 森 秀夫 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社神 戸製鋼所加古川製鉄所内 (72)発明者 山本 裕基 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社神 戸製鋼所加古川製鉄所内 Fターム(参考) 4E004 AA09 MB12 MB14 NB01 NC01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 連鋳鋳型内の溶鋼表面に形成したフラッ
    クス層に消耗電極を差し込み、該消耗電極の先端をフラ
    ックス層中での通電により溶融させて溶鋼中に添加する
    ことを特徴とする連続鋳造品の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記消耗電極の溶融を抵抗加熱または該
    消耗電極の先端と溶鋼の間のアーク放電によって行う請
    求項1に記載の連続鋳造品の製造方法。
  3. 【請求項3】 複数の前記消耗電極を前記フラックス層
    中に供給して該消耗電極間に通電する請求項1または2
    に記載の連続鋳造品の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記消耗電極への通電を銅製端子を介し
    て行う請求項1〜3のいずれかに記載の連続鋳造品の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 溶鋼に周波数1〜100Hz、磁束密度
    0.01〜0.2Tの移動磁場を作用させて合金成分の
    濃度勾配を軽減する請求項1〜4のいずれかに記載の連
    続鋳造品の製造方法。
  6. 【請求項6】 消耗電極を鋳型の壁面近傍に差し込み、
    溶鋼に磁束密度0.05〜5Tの静磁場を作用させて鋳
    片の表層部と内部の間に合金成分の濃度勾配を形成する
    請求項1〜4のいずれかに記載の連続鋳造品の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 鋳型への注入溶鋼よりも合金元素濃度の
    高い消耗電極を用いて、鋳片内部よりも合金元素濃度の
    高い鋳片表層を形成する請求項6に記載の連続鋳造品の
    製造方法。
  8. 【請求項8】 鋳型への注入溶鋼よりも合金元素濃度の
    低い消耗電極を用いて、鋳片内部よりも合金元素濃度の
    低い鋳片表層を形成する請求項6に記載の連続鋳造品の
    製造方法。
  9. 【請求項9】 表層部の合金元素濃度が内部よりも高い
    かまたは低いことを特徴とする連続鋳造品。
JP2001002889A 2001-01-10 2001-01-10 連続鋳造品の製造方法 Withdrawn JP2002205152A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001002889A JP2002205152A (ja) 2001-01-10 2001-01-10 連続鋳造品の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001002889A JP2002205152A (ja) 2001-01-10 2001-01-10 連続鋳造品の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002205152A true JP2002205152A (ja) 2002-07-23

Family

ID=18871320

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001002889A Withdrawn JP2002205152A (ja) 2001-01-10 2001-01-10 連続鋳造品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002205152A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106111927A (zh) * 2016-07-28 2016-11-16 湖南科美达电气股份有限公司 一种连铸坯凝固组织的细晶化和均质化方法
CN106141126A (zh) * 2015-03-25 2016-11-23 宝山钢铁股份有限公司 改善连铸坯凝固组织的装置及方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106141126A (zh) * 2015-03-25 2016-11-23 宝山钢铁股份有限公司 改善连铸坯凝固组织的装置及方法
CN106111927A (zh) * 2016-07-28 2016-11-16 湖南科美达电气股份有限公司 一种连铸坯凝固组织的细晶化和均质化方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8176966B2 (en) Process and equipment for producing copper alloy material
KR102138156B1 (ko) 복층 주조편의 연속 주조 장치 및 연속 주조 방법
JP6855806B2 (ja) 複層鋳片の連続鋳造方法及び連続鋳造装置
JP6515286B2 (ja) 複層鋳片の連続鋳造方法及び連続鋳造装置
JP6123549B2 (ja) 連鋳鋳片の製造方法
KR100918323B1 (ko) 전자기 교반 코일
JP2002205152A (ja) 連続鋳造品の製造方法
JP2015080792A (ja) 鋼の連続鋳造方法
JP6330542B2 (ja) 連鋳鋳片の製造方法
JP4734073B2 (ja) 溶融亜鉛めっき用鋼材の製造方法
JP2002210546A (ja) 連続鋳造品の製造方法
JP2661797B2 (ja) 複層鋳片鋳造方法
JP2020015047A (ja) 薄スラブの連続鋳造方法
JP3849471B2 (ja) タンディッシュ内溶鋼の均一加熱方法
JP2001321907A (ja) 連鋳鋳片の製造方法と連鋳鋳片
JP2008290136A (ja) 低炭素高硫黄鋼の連続鋳造方法
JP2017030013A (ja) 複層鋳片の連続鋳造方法及び連続鋳造装置
JPS5847257B2 (ja) クラツド鋼塊の製造方法
JP2000273581A (ja) 極低炭素鋼の連続鋳造鋳片およびその製造方法
JPH0760408A (ja) 薄板用鋼板の製造方法
JP5004626B2 (ja) Sプリントにおける凝固シェル厚の現出方法
JPH09122833A (ja) 連続鋳造における鋳片表層の溶質濃化方法
JP2004291034A (ja) 溶鋼の連続鋳造方法
JPH10193058A (ja) 鋼スラブの連続鋳造方法
JPH08187553A (ja) 電磁力を応用した連続鋳造用鋳型及び連続鋳造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20080401