JP2002193876A - グリオキシル酸系化合物の精製方法および5−アリールヒダントイン類の製造方法 - Google Patents

グリオキシル酸系化合物の精製方法および5−アリールヒダントイン類の製造方法

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JP2002193876A
JP2002193876A JP2000392577A JP2000392577A JP2002193876A JP 2002193876 A JP2002193876 A JP 2002193876A JP 2000392577 A JP2000392577 A JP 2000392577A JP 2000392577 A JP2000392577 A JP 2000392577A JP 2002193876 A JP2002193876 A JP 2002193876A
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glyoxylic acid
glyoxylate
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arylhydantoins
cho
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JP2000392577A
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Masanori Nonoguchi
真則 野々口
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 グリオキシル酸系化合物の精製方法を提供す
る。 【解決手段】 アルコール存在下に、グリオキシル酸エ
ステル、グリオキシル酸、グリオキシル酸エステルアル
キルヘミアセタールおよびグリオキシル酸エステルのオ
リゴマーからなる群から選ばれる1種以上のグリオキシ
ル酸系化合物を蒸留して該グリオキシル酸系化合物に含
まれる(3)R4−CHO(R4は、水素原子、ホルミル
基、または炭素数1〜7の有機残基である。)で示すア
ルデヒドをジアルキルアセタールとし、これを除去する
ことを特徴とする、グリオキシル酸系化合物の精製方法
である。本発明によれば、簡便にR4−CHOを除去す
ることができ、これによって目5−アリールヒダントイ
ン類の析出量を増加させ収率を向上さることができる。
また、原料化合物として混合物を使用することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グリオキシル酸系
化合物の精製方法および5−アリールヒダントイン類の
製造方法に関し、より詳細には、グリオキシル酸系化合
物に含まれる特定のアルデヒド類を該アルデヒドのジア
ルキルアセタールとして分離することを特徴とする、グ
リオキシル酸系化合物の精製方法および該精製方法によ
って得たグリオキシル酸系化合物を用いてなる5−アリ
ールヒダントイン類の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】5−アリールヒダントイン類は半合成ペ
ニシリンおよびセファロスポリン類の合成に有用なD−
アリールグリシン類(例えばD−フェニルグリシンやD
−パラヒドロキシフェニルグリシンなど)の重要な合成
中間体である。
【0003】このような5−アリールヒダントイン類
は、製造原料としてグリオキシル酸やグリオキシル酸エ
ステルを出発原料として使用することができる。このグ
リオキシル酸は、グリオキザールの硝酸酸化法やグリオ
キシル酸エステルを加水分解することで容易に得ること
ができる。また、グリオキシル酸エステルは、例えば特
開平11−263751号公報開示されている方法で容
易に得ることができる。即ち、エチレングリコール等の
1,2−ジオールを分子状酸素含有ガス含有ガスの存在
下に気相酸化反応させてガス状のα−オキソアルデヒド
及び/又はα−ヒドロキシアルデヒドを得て(前段反
応)、これに気化室でガス状にしたアルコール又はオレ
フィンを加えて前段反応容器に連結された後段反応容器
に導入し、後段反応容器中で触媒の存在下、分子状酸素
含有ガスによって酸化エステル化することにより、α−
オキソカルボン酸エステルであるグリオキシル酸エステ
ルを製造することができる。得られたグリオキシル酸エ
ステルは、反応系に添加されたアルコール中に溶解して
存在するが、目的物以外の副生物、たとえば、水、アル
コール類、カルボン酸類を含むため、これを精製して使
用することが一般的である。
【0004】ところが、グリオキシル酸エステル類は、
副生物の中でも水やアルコール類とは可逆的に化学結合
して水和物やヘミアセタールなどを形成するため、精製
は容易でない。また、副生物として水を含む場合にこれ
を加熱すると、グリオキシル酸エステルが加水分解され
る場合もあり、エステル体の収率が低下する。このた
め、例えば、特許公報3056705号公報では、粗α
−オキソカルボン酸エステルの精製方法として薄膜蒸発
器によって低沸点物質を除去する方法を開示している。
薄膜蒸発器による場合には、粗蒸留時の滞留時間、すな
わち加熱時間を蒸留塔を使用した場合と比較して短縮で
きるために、粗蒸留時のグリオキシル酸エステル類の加
水分解を抑制でき、収率よく高純度のグリオキシル酸エ
ステル類を得ることができる、とする。
【0005】このようなグリオキシル酸やグリオキシル
酸エステルを用いた5−アリールヒダントイン類の製造
方法として、例えば、特公昭55−22474号公報に
は、グリオキシル酸、尿素およびフェノールを酸性条件
下で反応させる方法が開示されている。また、特開平6
−278414号公報には、グリオキシル酸メチルエス
テルメチルヘミアセタールと尿素とからアラントイン酸
アルキルエステルを得て、次いでアリール化合物を反応
させる方法が開示され、特開平11−335357号公
報には、精製グリオキシル酸メチルに尿素とアリール化
合物とを反応させて5−アリールヒダントン類を製造す
る方法が開示されている。また、特許公報第29747
42号には、アリール化合物に2−ヒドロキシ−2−メ
トキシ酢酸メチルエステルと尿素とを反応させて、5−
アリールヒダントインを得る方法が開示されている。
【0006】一方、5−アリールヒダントイン類は、こ
のようなグリオキシル酸やグリオキシル酸エステルを用
いて製造することができ、例えば、特公昭55−224
74号公報には、グリオキシル酸を原料化合物として、
これに尿素およびフェノールを酸性条件下で反応させる
方法が開示されている。また、特開平6−278414
号公報には、グリオキシル酸メチルエステルメチルヘミ
アセタールを原料化合物として、これに尿素を添加して
アラントイン酸アルキルエステルを得て、次いでこれに
アリール化合物を反応させる方法が開示され、特開平1
1−335357号公報には、グリオキシル酸エステル
を原料化合物として、これに尿素とアリール化合物とを
反応させて5−アリールヒダントイン類を製造する方法
が開示されている。また、特許公報第2974742号
には、アリール化合物にグリオキシル酸メチルエステル
メチルヘミアセタールを原料化合物として、これに尿素
を反応させて、5−アリールヒダントインを得る方法が
開示されている。
【0007】一般に、このように製造された5−アリー
ルヒダントイン類の反応混合物からの単離方法として、
反応混合物を中和した後に、ジイソプロピルエーテル、
ジエチルエーテル等のエーテル類、ジクロロエタン、ク
ロロホルム等のハロゲン系炭化水素、酢酸エチル等のエ
ステル、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素などの
有機溶剤を用いて抽出する方法がある。これに対して、
5−アリールヒダントイン類の反応中、または反応終了
後に反応液を冷却して析出させ、これを瀘過または遠心
分離によって目的物を単離することができる。これは、
5−アリルヒダントイン類が一般に酸性、中性の水溶液
に難溶であることを利用したものであり、簡便な5−ア
リールヒダントイン類の製造方法といえるものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、5−ア
リールヒダントイン類の製造に際して、反応液中に5−
アリールヒダントイン類が析出せず、結晶としての収率
が極めて低下する場合が発生する。この場合であって
も、液相中にはある程度の目的物が製造されているが、
反応液中に析出しないために、反応混合物を中和した後
にエーテル類やハロゲン系炭化水素、ベンゼン、トルエ
ン等の芳香族炭化水素などの有機溶剤を用いて抽出しな
ければならず、反応が複雑化し全体の収率も低下する。
【0009】一方、5−アリールヒダントイン類の製造
原料として使用されるグリオキシル酸エステル体は水の
存在によって加水分解し、アルコールの共存によってヘ
ミアセタールを形成するなど極めて反応が不安定であ
る。このため、目的物たる5−アリールヒダントイン類
の析出量の低減が、原料化合物と他の副材料との相互関
係によることも考えられるが、析出現象の解明は極めて
困難であり、析出量を増加する方法が全く見出されてい
ない。むしろ、該析出量の低減現象の発生自体が着目さ
れておらず、従って、これを解決する方法は全く見出さ
れていないのが現状である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、5−アリ
ールヒダントイン類の製造方法を詳細に検討した結果、
原料化合物として使用されるグリオキシル酸系化合物に
含まれる特定の副生物が、5−アリールヒダントイン類
の合成を阻害し、同時に析出現象を抑制し、最終的に目
的物の収率を低下すること、および該副生物は、グリオ
キシル酸系化合物の溶媒として使用されるアルコールと
反応してジアルキルアセタールとなり、容易にグリオキ
シル酸系化合物から分離することができることを見出
し、本発明を完成させた。すなわち、上記課題は、以下
の(1)〜(6)によって解決される。
【0011】(1) アルコールおよび/または水の存
在下に、グリオキシル酸エステル、グリオキシル酸、グ
リオキシル酸エステルアルキルヘミアセタールおよびグ
リオキシル酸エステルのオリゴマーからなる群から選ば
れる1種以上のグリオキシル酸系化合物を単蒸留して該
グリオキシル酸系化合物に含まれる(3)R4−CHO
(R4は、水素原子、ホルミル基、または炭素数1〜7
の有機残基である。)で示すアルデヒドを該アルデヒド
のジアルキルアセタールとし、これを除去することを特
徴とする、グリオキシル酸系化合物の精製方法。
【0012】(2) 該アルデヒドのジアルキルアセタ
ールの形成および除去が、回分単蒸留によるものであ
る、上記(1)記載の精製方法。
【0013】(3) 該式(3)で示すR4−CHO
が、ホルムアルデヒドである、上記(1)または(2)
に記載の製造方法。
【0014】(4) 該アルデヒドの含有量を、グリオ
キシル酸系化合物の30モル%以下とすることを特徴と
する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の精製方
法。
【0015】(5) 上記(1)〜(4)記載の精製方
法の後、該精製方法で得られたグリオキシル酸系化合物
に、尿素と、式(1)で示すアリール化合物とを反応さ
せる式(2)で示す5−アリールヒダントイン類の製造
方法。
【0016】
【化3】
【0017】
【化4】
【0018】(6) 該式(2)で示す5−アリールヒ
ダントイン類が、5−(4−ヒドロキシフェニル)ヒダ
ントインである、上記(5)記載の製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の第一は、アルコール存在
下に、グリオキシル酸エステル、グリオキシル酸、グリ
オキシル酸エステルアルキルヘミアセタールおよびグリ
オキシル酸エステルのオリゴマーからなる群から選ばれ
る1種以上のグリオキシル酸系化合物を単蒸留して該グ
リオキシル酸系化合物に含まれる(3)R4−CHO
(R4は、水素原子、ホルミル基、または炭素数1〜7
の有機残基である。)で示すアルデヒドを該アルデヒド
のジアルキルアセタールとし、これを除去することを特
徴とする、グリオキシル酸系化合物の精製方法である。
【0020】まず、本発明では、原料化合物に含まれる
上記R4−CHOを該アルデヒドのジアルキルアセター
ルとすることを特徴とするが、原料化合物にはR4−C
HOが含まれることが一般的である。これは、原料化合
物であるグリオキシル酸エステル、グリオキシル酸、グ
リオキシル酸エステルアルキルヘミアセタールおよびグ
リオキシル酸エステルのオリゴマーからなる群から選ば
れる1種以上のグリオキシル酸系化合物が、1,2−ジ
オールを分子状酸素含有ガス含有ガスで気相酸化して得
たグリオキザールを出発原料として使用しこれ自体に上
記R4−CHOが含まれていることに由来する。すなわ
ちグリオキザールをアルコールとともに気相酸化すれば
グリオキシル酸エステルとなり、グリオキザールを硝酸
酸化すればグリオキシル酸が得られ、またはグリオキシ
ル酸エステルをアルコール中に溶解するとグリオキシル
酸エステルアルキルヘミアセタールとなるからである。
【0021】このようなR4−CHOを含有するグリオ
キシル酸系化合物としては、例えば、特公昭56−80
18号公報に記載されるグリオキザールの硝酸酸化法
や、特開平11−335320号公報に記載されるグリ
オキシル酸エステルを加水分解することで得ることがで
きる。
【0022】また、グリオキシル酸エステルとしては、
工業的な従来公知の製造方法、例えば、特開平11−2
63751号公報に記載される、1,2−ジオールであ
るエチレングリコールを分子状酸素含有ガス含有ガスと
金属銀等の触媒の存在下で気相酸化して、酸化的脱水素
することによりガス状のグリオキザールを得た後、該ガ
ス状のグリオキザールに分子状酸素含有ガス含有ガス、
およびアルコールまたはオレフィンとを気化して供給
し、リン含有無機酸化物を含む触媒の存在下で気相酸化
して酸化的エステル化する方法等によって製造すること
ができる。これによって供給したアルコールに対応する
グリオキシル酸エステルを得ることができる。このグリ
オキシル酸エステルは、反応器から未反応のアルコール
と共にガス状でグリオキシル酸エステルが生成されるた
め、これを冷却するとアルコール中に溶解したグリオキ
シル酸エステルが得られる。なお、該グリオキシル酸エ
ステル溶液には、エステル化反応による副生物である水
も含まれる。グリオキシル酸エステルとしては、グリオ
キシル酸メチル、グリオキシル酸エチル、グリオキシル
酸n−プロピル、グリオキシル酸イソプロピル、グリオ
キシル酸n−ブチル、グリオキシル酸イソブチル等があ
る。
【0023】また、グリオキシル酸エステルアルキルヘ
ミアセタールは、上記グリオキシル酸エステルをアルコ
ール中に溶解すると形成される化合物である。従ってア
ルキルヘミアセタールの「アルキル」としては、溶解液
のアルコールのアルキル基を選択することで任意に調整
することができる。例えば、メタノール溶液にグリオキ
シル酸メチルを溶解させれば、「グリオキシル酸メチル
メチルヘミアセタール」が形成され、エタノール溶液に
グリオキシル酸メチルを溶解させれば、「グリオキシル
酸メチルエチルヘミアセタール」が形成される。本発明
では、グリオキシル酸メチルメチルヘミアセタール、グ
リオキシル酸メチルエチルヘミアセタール、グリオキシ
ル酸エチルメチルヘミアセタール、グリオキシル酸エチ
ルエチルヘミアセタールが好ましい。
【0024】また、グリオキシル酸系化合物のひとつで
あるグリオキシル酸エステルのオリゴマーとは、グリオ
キシル酸エステルのオリゴエステル体であり、グリオキ
シル酸エステルを3〜20単位エステル結合させたもの
をいい、より好ましくは3〜15単位、特に好ましくは
3〜12単位エステル結合させたオリゴ体である。
【0025】なお、グリオキシル酸エステルのオリゴマ
ーは、例えば、従来公知のグリオキシル酸系ポリマーの
製造方法で製造できる。例えば、ジクロロメタン等の重
合溶媒にメタノール等の重合開始剤およびトリエチルア
ミン等の重合触媒をあらかじめ加えておき、単量体であ
るグリオキシル酸メチルを逐次添加して反応させる。し
かしながら、水やアルコール等を含む粗グリオキシル酸
エステルから、水やアルコール等を除去する反応工程に
おいて、グリオキシル酸エステルが単独重合して重合単
位3〜20のオリゴマーを得ることももできる。具体的
には、水、メタノール等を多く含む粗グリオキシル酸メ
チルを、特許第3056705号に記載されているよう
な蒸留工程、すなわち粗蒸留工程および共沸脱水工程を
経ることによって、水、メタノール等の低沸点成分を除
去することにより、単量体であるグリオキシル酸メチル
とそのオリゴ体であるグリオキシル酸メチルのオリゴマ
ーの混合物を缶出液として得ることができる。グリオキ
シル酸メチルはアルコールの存在によりアルキルヘミア
セタールとなり、また、水の存在によって水和物を構成
するため、オリゴマーは、以下の反応式によって製造さ
れる。
【0026】
【化5】
【0027】本発明の精製方法で対象とする、グリオキ
シル酸系化合物に含まれるR4−CHO(R4は、水素原
子、ホルミル基、または炭素数1〜7の有機残基であ
る。)とは、上記したようにグリオキシル酸系化合物の
製造工程で副生され、かつ残存する副生物である。R4
−CHOにおいて、R4は、水素原子、ホルミル基、ま
たは炭素数1〜7の有機残基であり、「炭素数1〜7の
有機残基」としては、炭素数1〜7の分岐または直鎖の
炭化水素、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、イ
ソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、炭素数1〜7
の芳香族化合物残基であるフェニル基、トリル基、ベン
ジル基等がある。より具体的には、ホルムアルデヒド、
グリオキザール、アセトアルデヒド、プロピオンアルデ
ヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド等の脂
肪族アルデヒド、アクロレイン、メタクロレイン、クロ
トンアルデヒド等の不飽和アルデヒド、ベンズアルデヒ
ド、トリルアルデヒド、フタルアルデヒド、メトキシベ
ンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド等がある。なお、
本発明では、R4−CHOが、ホルムアルデヒドである
場合に特に精製効率に優れる。
【0028】本発明では、グリオキシル酸系化合物をア
ルコールの存在下に単蒸留することを特徴とする。これ
は、アルコールをR4−CHOと反応させて、対応する
アルデヒドのジアルキルアセタールとするためである。
本発明の精製方法において、R4−CHOを除去するこ
ととしたのは、グリオキシル酸系化合物を原料化合物と
して5−アリルヒダントイン類を製造すると、R4−C
HOの含有量によって目的化合物の製造率が変化するこ
とが判明したからである。この理由については明確でな
いが、該R4−CHOは、グリオキシル酸やそのエステ
ル体と同様にアルデヒド基を有するため、尿素やアリー
ル化合物とグリオキシル酸系化合物とが反応する際に、
グリオキシル酸系化合物と競合して反応し、この結果目
的物の合成を阻害し、反応液中の目的化合物の濃度低下
に伴って析出量を低減させるものと考えられる。このた
め、グリオキシル酸系化合物に含まれるR4−CHOの
濃度を特定量以下に制限することで、合成系の阻害と析
出現象の抑制とを同時に回避することができるのであ
る。このようなR4−CHOの除去方法として、従来の
蒸留方法ではR4−CHOをそのまま蒸留する方法であ
ったが、一般にR4−CHO化合物は沸点が高く、溶媒
系から分離するには高温で蒸留操作を行うなど、分離が
困難である。また、R4−CHOに含まれるホルムアル
デヒドは水に溶けた状態では水と共沸組成を持つことが
一般に知られており、その共沸温度は常圧で約99〜1
00℃と極めて水の沸点に近いものである。従ってホル
ムアルデヒドを含む水からホルムアルデヒドを蒸留によ
って留去する場合は水と共沸させて系外に除去すること
になるが、沸点が高いことおよび系外に除去する必要の
ない水を大量に同伴させて除去するために多大な熱量を
必要とすることになり熱的効率が悪い。その一方、R4
−CHOをグリオキシル酸系化合物の溶媒として使用さ
れるアルコールと加熱すると対応するアルデヒドのジア
ルキルアセタールとなり、容易に溶媒系から分離でき、
しかも精製収率に優れることが判明したのである。特
に、R4−CHOがホルムアルデヒドの場合は生成する
アセタールがメチラールであり、その沸点は常圧で43
℃と水の沸点に比べて非常に低く、水との共沸組成が非
常に小さいために同伴する水の量も少ないことから、少
ない熱量で容易に溶媒系から分離できる。また、このよ
うにして得られたグリオキシル酸系化合物を用いると、
目的物が溶媒中に高濃度に析出するため高収率で5−ア
リールヒダントイン類を製造することができる。
【0029】なお、ホルムアルデヒドに代えてホルムア
ルデヒドの酸化物である蟻酸に着目し、目的物の析出状
態を調べたが、蟻酸量が増加しても目的物の収率や結晶
化にはほとんど影響が無いことが確認されている。
【0030】本発明では、アルコール存在下に、グリオ
キシル酸系化合物を蒸留して該グリオキシル酸系化合物
に含まれるR4−CHOで示すアルデヒドを該アルデヒ
ドのジアルキルアセタールとし、これを除去することを
特徴とするが、この際使用するアルコールとしては、蒸
留の際に新たに添加してもよいが、グリオキシル酸系化
合物の合成の際に原料として供給したアルコールが含ま
れる場合には、これを用いることができる。従って、例
えばグリオキシル酸系化合物としてグリオキシル酸エス
テルを対象とする場合には、グリオキシル酸エステルに
対応するアルコールが反応系に含まれることが一般的で
あり、これを利用することができる。
【0031】R4−CHOで示すアルデヒドとアルコー
ルとを反応させて対応するアルデヒドのジアルキルアセ
タールを形成させてから蒸留するには、回分単蒸留を行
うことが好ましい。
【0032】例えば、特開平11−80085号公報で
は粗グリオキシル酸エステル類の精製方法として、薄膜
蒸発器にて膜状に連続的に蒸留することを開示してい
る。しかしながら、このような蒸留形式では熱伝面に対
する原料の接触時間が短いため、R4−CHOで示すア
ルデヒドと共存するアルコールとのアセタール化反応が
十分に進まない。さらに、同条件下では原料中のグリオ
キシル酸系化合物の加水分解が十分に進まないためにア
セタール化の触媒となるグリオキシル酸もほとんど生成
しない。このため、当該混合物から該アルデヒドを対応
するアルデヒドのアセタールとして十分に除去すること
が難しい。
【0033】蒸留形式としては回分単蒸留が好ましい。
形式上、塔底において原料と熱伝面との接触時間が十分
に得られる上に、蒸留装置も簡便である。温度、圧力、
還流比等の蒸留条件は、原料混合物の組成および留出す
る該アルデヒドの物性に応じて実験的にまたは計算によ
って適宜決定すればよい。蒸留時の圧力は特に限定され
ないが、大気圧下で行うことが加圧、減圧装置等が必要
ないので経済的にも好ましい。塔底温度は特に限定され
ないが、塔底部に存在するR4−CHOで示すアルデヒ
ドのアセタールが塔頂部に留出し、かつ塔底部に存在す
るグリオキシル酸系化合物が塔頂部に留出しないように
操作することが好ましい。この条件下では、R4−CH
Oで示すアルデヒドが共存するアルコールと塔底で反応
して対応するアルデヒドのジアルキルアセタールを形成
する。また同条件下では、塔底でグリオキシル酸系化合
物の一部が加水分解してグリオキシル酸が生成し、この
グリオキシル酸が触媒となってアセタール形成をさらに
促進する。このアルデヒドのジアルキルアセタールは同
蒸留条件で塔頂部に留出するため、塔頂部に配設したコ
ンデンサーで冷却しつつ系外に分離する。
【0034】本発明の精製方法では、R4−CHOの含
有量を、グリオキシル酸系化合物の30モル%以下とす
ることを特徴とすることが好ましい。グリオキシル酸系
化合物を原料として、5−アリルヒダントイン類を製造
するには、すでに記載したように、原料化合物に含まれ
るR4−CHOの含有量によって目的化合物の析出量が
異なる。目的化合物の合成量および析出量を共に増大さ
せるには、R4−CHO量を少なくすることが好まし
く、好ましくは、0.001〜30モル%、より好まし
くは0.001〜10モル%、特に好ましくは0.00
1〜1モル%まで精製する。本発明では、R4−CH
O、特にこれがホルムアルデヒドである場合に精製効率
に優れる。アルデヒドはグリオキシル酸系化合物の合成
系において一般に含まれる化合物であるが、特に1,2
−ジオールを分子状酸素含有ガスの存在下に気相酸化反
応させてグリオキザールを合成し、またはこれにアルコ
ールを作用させてグリオキシル酸エステルを製造して得
た粗グリオキシル酸エステルには、副生物としてホルム
アルデヒドが高濃度に含まれる。本発明者らは、このよ
うな原料化合物の合成系を詳細に検討し、該アルデヒド
による弊害を見出したのであるが、弊害の強さからホル
ムアルデヒドを30モル%以下に制御することが極めて
有効である。しかも、本発明では、R4−CHOがホル
ムアルデヒドである場合には、これがアルコールと反応
してメチラールを形成し、該メチラールはホルムアルデ
ヒドよりも溶媒系からの留出が容易であるため簡便かつ
低温でこれを精製することができる。
【0035】なお、本発明の精製方法で特定するR4
CHOで特定するアルデヒドの分離/除去は、R4−CH
Oで特定する各アルデヒドのそれぞれの量が、いずれも
グリオキシル酸系化合物に対して30モル%以下に精製
することが好ましい。
【0036】本発明の第二は、上記精製方法の後、該精
製方法で得られたグリオキシル酸系化合物に、尿素と、
式(1)で示すアリール化合物とを反応させることを特
徴とする式(2)で示す5−アリールヒダントイン類の
製造方法である。
【0037】上記のように、グリオキシル酸系化合物に
は、上記R4−CHOで示すアルデヒドが含まれる。該
アルデヒドは、グリオキシル酸やそのエステル体と同様
にアルデヒド基を有するため、尿素やアリール化合物と
グリオキシル酸系化合物とが反応する際に、グリオキシ
ル酸系化合物と競合して反応し、この結果目的物の合成
を阻害し、反応液中の目的化合物の濃度低下に伴って析
出量を低減させるものと考えられる。該R4−CHOの
濃度を特定量以下に制限すると、合成系の阻害と析出現
象の抑制とを同時に回避でき、その結果、簡便かつ高収
率で5−アリールヒダントイン類を製造することができ
る。
【0038】本発明の5−アリールヒダントイン類の製
造方法では、グリオキシル酸系化合物として、本願第一
の発明に精製方法に次いで、該精製方法で得たグリオキ
シル酸系化合物を尿素と、上記式(1)で示すアリール
化合物とを反応させる。
【0039】この際、グリオキシル酸系化合物として
は、上記したグリオキシル酸エステル、グリオキシル
酸、グリオキシル酸エステルアルキルヘミアセタールお
よびグリオキシル酸エステルのオリゴマーからなる群か
ら選ばれる1種以上のグリオキシル酸系化合物を使用す
ることができる。これらは単独で使用する場合のほか、
2種以上の混合物を使用することもできる。従来は、原
料化合物として本発明で使用するグリオキシル酸系化合
物に含まれる特定の一種に限定して製造していた。しか
しながら、グリオキシル酸は、アルコール存在下でエス
テル化してグリオキシル酸エステルとなり、さらに、グ
リオキシル酸エステルをアルコール中に溶解すればグリ
オキシル酸エステルアルキルヘミアセタールが形成され
るのであるから、グリオキシル酸エステルを原料とする
場合であって、結果的にグリオキシル酸エステルアルキ
ルヘミアセタールが反応器中に存在する場合でもある。
一方、5−アリールヒダントイン類の製造原料として使
用するグリオキシル酸エステルはイオン重合性を有し、
重合化すると単量体のグリオキシル酸エステルよりも反
応率が低下することが特開平11−335357号公報
に記載され、このため、重合体を除去して反応させるこ
とが一般的であった。特に、重合物は加熱による解重合
も容易でなく、重合による粘性増加によって流動性も減
少させるからである。しかしながら、本発明者らは、グ
リオキシル酸エステルモノマーは非常に反応性が高く重
合しやすいため安定に移送などすることが困難であるこ
と、高分子量の場合には粘度が高くなり流動性に劣りハ
ンドリングが悪くなること、およびこれらに対して、エ
ステル単位として3〜20単位を重合させたグリオキシ
ル酸エステルのオリゴエステルの場合には、グリオキシ
ル酸エステルモノマーを使用した場合と同じ反応率で目
的物を製造することができ、しかも反応液の流動性も従
来法と同程度であって、反応原料として安定に入手でき
るため、より簡便な5−アリールヒダントイン類の原料
化合物として使用可能であることを見出した。これによ
って、従来モノマーに解重合しなければ使用できないと
された材料を用いても、5−アリールヒダントイン類を
製造することができるようになったのである。更に、本
発明では、上記した互換性を有するグリオキシル酸系化
合物のいずれをも使用でき、かつこれらの混合物として
も使用できる点で、極めて実用的ある。本発明は、グリ
オキシル酸系化合物に含まれるR4−CHOによって目
的化合物の析出現象が左右されることを見出したのであ
り、いずれを原料とした場合にもR4−CHOを特定濃
度以下に精製した後に原料化合物として使用すると、該
高収率で目的化合物を得ることができることを見出した
のである。
【0040】なお、グリオキシル酸エステル、グリオキ
シル酸、グリオキシル酸エステルアルキルヘミアセター
ルおよびグリオキシル酸エステルのオリゴマーからなる
群から選ばれる1種以上のグリオキシル酸系化合物の中
でも、R4−CHOの除去に優れるのはグリオキシル酸
エステル、特にグリオキシル酸メチルである。溶媒とし
て含まれるメタノールとR4−CHOであるホルムアル
デヒドとが反応してメチラールとなり、メチラールは沸
点が非常に低いために容易にグリオキシル酸メチルから
分離除去できるからである。
【0041】また、一方の原料として使用される前記式
(1)で表されるアリール化合物としては、例えば、ベ
ンゼン、フェノール、o−メトキシフェノール、o−クロ
ロフェノール、カテコール、レゾルシノール、アニソー
ル、m−クレゾール等が挙げられる。その使用量はグリ
オキシル酸系化合物の合計量に対し等モル以上であり、
1〜2倍モル程度が適当である。なお、本発明において
は、グリオキシル酸系化合物の合計量の換算においてグ
リオキシル酸エステルのオリゴマーを算出する場合に
は、これを完全に解重合した場合のモノマー量に換算し
て算出するものとする。
【0042】また尿素の使用量はグリオキシル酸系化合
物に対し等モル以上であり、1〜3倍モル程度が適当で
ある。
【0043】反応溶媒としては水性溶媒が良いが、水−
アルコールまたは水−酢酸などの混合溶媒も用いること
ができる。また原料アリール化合物としてベンゼンなど
を用いる場合はそれ自身溶媒またはベンゼン−酢酸など
の混合溶媒を採用することができる。
【0044】本反応は、酸の存在によって促進される。
そのため酸の存在下で反応を行うことが好ましく、酸と
しては塩酸や硫酸およびりん酸等の鉱酸、p−トルエン
スルホン酸、酢酸等の有機酸などを挙げることができ、
なかでも塩酸、硫酸等の強酸が好ましい。反応系中の酸
の最適濃度は、反応温度、原料濃度等によって異なる
が、一般に高濃度ほど生成物5−アリールヒダントイン
の収率は向上する。ただ過度の酸の使用は生成した目的
物を分解する恐れが有るばかりでなく、後処理に多量の
アルカリなどの中和剤が必要となり廃液も増加するので
無駄である。好ましくは0.001〜0.015モル/
3の範囲から適宜選ばれる。
【0045】反応温度は25℃以上が好ましく、さらに
好ましくは50〜95℃の温度が適当である。また反応
時間は反応温度、用いる酸の濃度、原料濃度等により異
なるが、0.5〜30時間を要する。
【0046】グリオキシル酸系化合物は、いずれもその
まま、もしくは適当な反応溶媒に溶解希釈して反応に供
することができる。グリオキシル酸系化合物を希釈せず
に用いる場合は高濃度反応が可能で生産性を上げること
が出来る。
【0047】グリオキシル酸系化合物の添加方法は、あ
らかじめ必要量を尿素、アリール化合物を含む溶液に加
えるか、徐々に尿素、アリール化合物を含む溶液に添加
していくか、あるいははじめからグリオキシル酸系化合
物を仕込んだ中に尿素、アリール化合物を含む溶液を添
加しても良く、適宜選択することができる。
【0048】一般に、5−アリールヒダントイン類の製
造法において、上記グリキシル酸系化合物と尿素とのヒ
ダントイン化反応では触媒として酸を用いることが一般
的であるが、グリオキシル酸系化合物としてグリオキシ
ル酸エステルのオリゴマーを使用する場合には、特に酸
の存在によって反応が促進される。酸によってオリゴマ
ー中のアセタール結合が分解しながらヒダントイン化反
応が起こり、目的物の生成が促進されるものと考えられ
る。したがって、グリオキシル酸エステルのオリゴマー
を使用する場合には、ヒダントイン化反応に使用する酸
に加えて、オリゴマーの分解を促進するためにヒダント
イン化反応と異なる酸を併用することもできる。
【0049】このような酸としては、塩酸や硫酸および
りん酸等の鉱酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸等の有
機酸などを挙げることができ、なかでも塩酸、硫酸等の
強酸が好ましい。酸を添加する方法は特に限定されな
い。酸および尿素、アリール化合物を含む溶液にグリオ
キシル酸エステルのオリゴマーを添加するか、あらかじ
めグリオキシル酸エステルのオリゴマー中に酸を加えて
おき、尿素およびアリール化合物を含む溶液に添加する
か、または、あらかじめグリオキシル酸エステルのオリ
ゴマー中に酸を加えておき、酸および尿素、アリール化
合物を含む溶液に添加するか適宜選択することができ
る。反応系中の酸の最適濃度は、反応温度、原料濃度等
によって異なる。一般に高濃度ほど生成物5−アリール
ヒダントインの生成速度、収率は向上するが、過度に酸
を加えても収率はそれ以上向上せず、逆に後処理に多量
の中和剤を必要とするので無駄である。好ましくは、
0.001〜0.015モル/m3の範囲であれば好ま
しく使用することができる。
【0050】本発明では、R4−CHOで示すアルデヒ
ドの含有量がグリオキシル酸系化合物の30モル%以下
であるグリオキシル酸系化合物と、尿素と、上記式
(1)で示すアリール化合物とを反応させて5−アリー
ルヒダントイン類を製造するものであり、これらの原料
化合物がどのように反応するかは問わない。従って、特
開平6−279414号公報に記載されるように、グリ
オキシル酸メチルエステルメチルヘミアセタール、グリ
オキシル酸エステル、グリオキシル酸、グリオキシル酸
エステルのオリゴマー等と尿素とから、アルキルアルコ
ールと鉱酸の存在下に反応させることによって該公報の
式(II)で示すアラントイン酸アルキルエステルを介
して、これに本発明の式(1)で示すアリール化合物と
が反応して5−アリールヒダントイン類を製造する場合
であっても、これ以外の経路を介して5−アリールヒダ
ントイン類を製造する場合であってもよい。
【0051】具体的には、反応器に式(1)で示すアリ
ール化合物、尿素、水、酸を仕込み、これにグリオキシ
ル酸系化合物を滴下し、温度50〜95℃程度で撹拌さ
せると、目的物である5−アリールヒダントイン類が反
応液中に析出する。反応生成物からの5−アリールヒダ
ントイン類の単離は、一般に極めて容易である。即ち目
的とする5−アリルヒダントインは一般に酸性、中性の
水溶液に難溶であるため、反応中、あるいは反応終了後
反応液を冷却することによって、析出してくるので、常
法で、例えば濾過または遠心分離で単離することができ
る。このようにして得られた5−アリールヒダントイン
は特に精製を要しないが、必要ならば再結晶、抽出、ク
ロマトグラフィー法による精製をさらに行い純度を高め
ることも可能である。
【0052】本発明において、式(1)で示すアリール
化合物としてフェノールを使用することで、半合成ペニ
シリンおよびセファロスポリン類の合成に有用な中間体
である、5−(4−ヒドロキシフェニル)ヒダントイン
を得ることができる。
【0053】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに具体的
に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるも
のではない。
【0054】(実施例1)特開平11−263751号
公報の実施例1に記載の方法により合成したグリオキシ
ル酸メチル(粗グリオキシル酸メチル)の組成をガスク
ロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーによ
り分析したところ、グリオキシル酸メチル20.3質量
%、メタノール35.7質量%、グリコール酸メチル
2.3質量%、ホルムアルデヒド3.2質量%、水3
8.5質量%であった。
【0055】この粗グリオキシル酸メチル210gに対
して回分単蒸留を行った。その際、塔底温度は100℃
から110℃に保ち、圧力は1013hPa、還流比は
平均0.4の条件で行った。その結果、塔頂からメタノ
ール31.7質量%、メチラール19.4質量%、水4
8.9質量%からなる留出液81gが得られ、塔底から
グリオキシル酸メチル27.3質量%、メタノール2
3.4質量%、グリコール酸メチル3.6質量%、グリ
オキシル酸18.2質量%、メチラール0.1質量%、
水27.5質量%からなる缶残液は129gを得た。
【0056】フェノール28.3g(0.3mol)、
尿素24.1g(0.4mol)、水131.1g、濃
塩酸68mlの混合液を70℃で加熱攪拌しながら、上
記の缶残液43.8gを10時間かけて連続的に滴下し
た。滴下の途中、徐々に結晶が析出した。滴下終了後さ
らに70℃で10時間にわたり加熱攪拌した。その後反
応液を50℃まで冷却し、沈殿を濾過、水洗した後乾燥
して純度99%以上の5−(4−ヒドロキシフェニル)
ヒダントイン23.8gを得た。濾液は水で希釈して高
速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、この反
応で得られた5−(4−ヒドロキシフェニル)ヒダント
イン28.9gであり、原料中のグリオキシル酸メチル
量とグリオキシル酸量の合計値を基準とした収率は7
5.1%であった。
【0057】(比較例1)特開平11−263751号
公報の実施例1に記載の方法により合成したグリオキシ
ル酸メチル(粗グリオキシル酸メチル)の組成をガスク
ロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーによ
り分析したところ、グリオキシル酸メチル28.8質量
%、メタノール35.8質量%、グリコール酸メチル
4.3質量%、ホルムアルデヒド6.4質量%、水2
4.7質量%であった。
【0058】この粗グリオキシル酸メチルを、450c
2の伝熱面積を有する強制攪拌型の薄膜蒸発器に対し
て0.2kg/hの速度で連続的に供給した。このと
き、薄膜蒸発器の運転に際し、伝熱面の温度は90℃、
内部の圧力は467hPaに維持した。その結果、薄膜
蒸発器の頂部よりメタノール54.7質量%、水36.
7質量%、ホルムアルデヒド6.4質量%、グリオキシ
ル酸メチル2.2質量%を含む留出液が得られ、底部よ
りグリオキシル酸メチル47.2質量%、メタノール2
2.7質量%、グリコール酸メチル7.3質量%、ホル
ムアルデヒド6.4質量%、水16.5質量%からなる
缶出液を得た。また、メチラールの生成は缶出液・留出
液共に認められなかった。
【0059】フェノール28.3g(0.3mol)、
尿素24.1g(0.4mol)、水131.1g、濃
塩酸68mlの混合液を70℃で加熱攪拌しながら、上
記の缶出液37.3gを10時間かけて連続的に滴下し
た。途中、結晶の析出は見られず、その後反応液を50
℃まで冷却しても、やはり結晶の析出は見られなかっ
た。反応液は水で希釈して高速液体クロマトグラフィー
により分析した結果、この反応で得られた5−(4−ヒ
ドロキシフェニル)ヒダントインは23.2g、グリオ
キシル酸基準の収率は60.3%であった。
【0060】
【発明の効果】本発明によれば、グリオキシル酸エステ
ル、グリオキシル酸、グリオキシル酸エステルアルキル
ヘミアセタールおよびグリオキシル酸エステルのオリゴ
マーからなる群から選ばれる1種以上のグリオキシル酸
系化合物に含まれるR4−CHOをアルコールと反応さ
せることで、例えば、R4−CHOがホルムアルデヒド
である場合には容易にこれをメチラールとして、溶媒系
から除去できる。このため従来の装置を用いて簡便にR
4−CHOを除去することができる。特に、R4−CHO
の精製をグリオキシル酸系化合物の30モル%以下とす
ることで、これを原料として、簡便に5−アリールヒダ
ントイン類を製造することができる。特に、相互に互換
性のあるグリオキシル酸系化合物を精製することなく、
混合物のまま反応器に供給することで目的物を製造する
ことができるため、極めて実用的な発明である。この
際、特定のアルデヒドに着目し、この濃度を特定範囲に
調整することで目的物の分離を容易にすることができ、
操作を簡便にすることができる。しかも、目的物の収率
にも極めて優れる。
【0061】本発明で得られた5−アリールヒダントイ
ン類は、D−アリールグリシン等の製造用中間原料とし
て極めて有用である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルコールおよび/または水の存在下
    に、グリオキシル酸エステル、グリオキシル酸、グリオ
    キシル酸エステルアルキルヘミアセタールおよびグリオ
    キシル酸エステルのオリゴマーからなる群から選ばれる
    1種以上のグリオキシル酸系化合物を蒸留して該グリオ
    キシル酸系化合物に含まれる(3)R4−CHO(R
    4は、水素原子、ホルミル基、または炭素数1〜7の有
    機残基である。)で示すアルデヒドを該アルデヒドのジ
    アルキルアセタールとして、これを除去することを特徴
    とする、グリオキシル酸系化合物の精製方法。
  2. 【請求項2】 該アルデヒドのジアルキルアセタールの
    形成および除去が、回分単蒸留によるものである、請求
    項1記載の精製方法。
  3. 【請求項3】 該式(3)で示すR4−CHOが、ホル
    ムアルデヒドである、請求項1または2に記載の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 該アルデヒドの含有量を、グリオキシル
    酸系化合物の30モル%以下とすることを特徴とする、
    請求項1〜3のいずれかに記載の精製方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4記載の精製方法の後、該精
    製方法で得られたグリオキシル酸系化合物に、尿素と、
    式(1)で示すアリール化合物とを反応させる式(2)
    で示す5−アリールヒダントイン類の製造方法。 【化1】 【化2】
  6. 【請求項6】 該式(2)で示す5−アリールヒダント
    イン類が、5−(4−ヒドロキシフェニル)ヒダントイ
    ンである、請求項5記載の製造方法。
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