JP2002139496A - タンパク質吸着担体の製造方法およびその担体を用いた測定方法 - Google Patents

タンパク質吸着担体の製造方法およびその担体を用いた測定方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】分離分析及び/又は分離精製における目的成分
や標識物質の非特異的吸着を防止或いは低減して、分離
分析の測定感度を向上し、又は、分離精製における回収
率を向上できる、担体や容器の製造方法を提供する。 【解決手段】担体又は容器に蛋白質を吸着して非特異的
吸着の低減された担体又は容器を製造するにあたり、蛋
白質溶液に浸漬した状態で、該担体又は容器に対してマ
イクロ波を照射することからなる、担体又は容器の製造
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生化学、臨床化
学、製薬化学などの分野において分離分析・分離精製手
段として使用されるクロマトグラフィー、電気泳動、免
疫測定などに用いられる担体又は容器であって、蛋白質
の非特異的な吸着を抑制し得る担体又は容器を製造し、
又は、任意の対象物質を特異的に結合するための担体又
は容器を製造するための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、そ
してヘテロジニアスイムノアッセイ等、化学、生化学或
いは医学等の分野では、担体を利用して分離分析、分離
精製を行うことが広く行われている。これらは、担体上
の特定の官能基や、担体上に吸着等によって固定された
蛋白質中の特定部位等と、目的成分(物質)との相互作
用を利用するものであり、分離精度や測定感度が高いこ
とから、例えば生体試料中の微量成分の分離分析や分離
精製に多用されている。
【0003】分離分析の工程では、目的成分や、目的成
分に関連したシグナルを生成するための、抗体や抗原等
に酵素等を結合した標識物質が、非特異的に担体や容器
に吸着することがあり、分離分析の高感度化を目指す場
合には、この様な非特異的な吸着が大きな障害となる。
特に、目的成分が極微量にしか存在しない成分である場
合には、上記の様な非特異的吸着によって、実際に分析
し得る目的成分量が減少することになるし、また、担体
に非特異的に吸着した標識物質からのシグナルが大きく
なって、分離分析におけるS/N比が悪化することにな
る。
【0004】また、分離精製の工程でも、上記同様に目
的成分が担体や容器に吸着することがあるが、これによ
り、実際に回収し得る目的成分量が減少して、目的成分
の回収率が低下することになる。
【0005】上記のような非特異的な吸着を低減する目
的で、例えば、ヘテロジニアス免疫測定等の担体を用い
る分離分析では、担体上に抗原又は抗体を固定化した
後、担体上の疎水吸着点を免疫反応に無関係な蛋白質で
ブロッキングすることが一般に行われている。蛋白質を
用いる以外にも、例えばポリビニルアルコールを用いて
ブロッキングを行う方法(特開平4−19561号公報
参照)や、2−メタクリロイルオキシエチルスルホイル
コリン重合体を用いてブロッキングを行う方法(特開平
7−83923号公報参照)等も報告されている。また
この一方で、免疫反応を行う容器(反応容器)に対する
目的成分や標識物質の非特異的吸着を低減するために、
吸着防止剤を反応溶液に添加することも行われている
(特開平11−248706号公報参照)。
【0006】担体に対する非特異的吸着を低減するため
には、担体表面における親水性を上げ、担体と吸着成分
との間の立体反発力を強めることが効果的であると言わ
れている。蛋白質は約20種類のアミノ酸より構成さ
れ、水溶液中では疎水性アミノ酸側鎖が水分子との接触
面積を小さくするように内側に配置されてコアを形成
し、解離性アミノ酸側鎖や極性アミノ酸側鎖が外側に配
置されて周囲の水と接触するような立体構造を取るが、
周囲の水の一部は水和水として蛋白質に結合し、水和層
を形成する。したがって、蛋白質を用いて担体表面をブ
ロッキングすることは、担体に対して新たに親水性を付
与することになるから、目的成分等の非特異的吸着を防
止する方法として有効と考えられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、蛋白質を単に
担体に吸着させるという、従来のブロッキング方法で
は、蛋白質が担体に吸着することによって吸着変性が生
じ、目的成分との間で新たな相互作用が生まれ、この結
果、担体に対する目的成分の非特異的吸着が誘発される
ことがある。したがって、担体を用いる分離分析を更に
高感度化するためには、担体に対する目的成分や標識物
質の非特異的吸着量を、従来にも増して低減する必要が
あった。前記したように、蛋白質に代えて合成ポリマー
をブロッキングに使用する方法も知られているが、この
方法には、合成ポリマーの調製が複雑で、コスト高であ
る、という課題がある。
【0008】また、クロマトグラフィーやゲル電気泳動
法を用いて生体成分等の目的成分を分離分析し、又は分
離精製する場合にも、分析感度を向上し、又は目的成分
の回収率を向上するには、目的成分や標識物質の担体や
容器への非特異的吸着を低減する必要がある。このた
め、クロマトグラフィーや電気泳動においては、担体基
材に親水性ポリマーを使用したり(Y.Kato et
al,J.Chromatogr.,vol.26
6,p385,1983)、担体や容器を親水性ポリマ
ーでブロッキングすることが行われているが、目的成分
が生体試料中の微量成分である場合、その種類によって
は、効果の無いこともあった。
【0009】そこで本発明の目的は、分離分析及び/又
は分離精製における目的成分や標識物質の非特異的吸着
を防止或いは低減して、分離分析の測定感度を向上し、
又は、分離精製における回収率を向上できる、担体や容
器の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
になされた本願請求項1の発明は、担体又は容器の製造
方法であり、担体又は容器に蛋白質を吸着して非特異的
吸着の低減された担体又は容器を製造するにあたり、蛋
白質溶液に浸漬した状態で、該担体又は容器に対してマ
イクロ波を照射することからなる。
【0011】また前記目的を達成するためになされた本
願請求項2の発明は、担体又は容器の製造方法であり、
担体又は容器に蛋白質を吸着して非特異的吸着の低減さ
れた担体又は容器を製造するにあたり、蛋白質溶液にマ
イクロ波を照射した後、該蛋白質溶液に該担体又は容器
を浸漬することからなる。
【0012】そして前記目的を達成するためになされた
本願請求項3の発明は、前記請求項1又は2の発明に係
り、前記蛋白質溶液が血清アルブミンを含有することを
特徴とする。本願請求項4の発明は、前記請求項1又は
2の発明に係り、前記蛋白質溶液が血清アルブミンを含
有し、かつpHをpH3.0から6.5に調整した溶液
であることを特徴とする。
【0013】前記目的を達成するためになされた本願請
求項5の発明は、担体又は容器に蛋白質を吸着して非特
異的吸着の低減された担体又は容器を製造するにあた
り、血清アルブミンを含有し、かつpHをpH3.0か
ら6.5に調整した蛋白質溶液に該担体又は容器を浸漬
することからなる。
【0014】そして本願請求項6の発明は、前記請求項
1乃至5の発明に係り、前記担体又は容器には、前記蛋
白質の吸着に先立ちリガンドが吸着されていることを特
徴とする。以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】本発明は、担体又は容器の表面に蛋白質を
吸着させることにより、該表面の親水性を上げ、これに
より目的成分や標識物質等の非特異的吸着を防止又は低
減した担体等の製造方法に関するものである。ここで、
表面に吸着させる蛋白質として好ましくは血清アルブミ
ン、更に好ましくは酸性条件下で酸変性させた血清アル
ブミンを、マイクロ波によって変性した後に担体や容器
に吸着させ、マイクロ波によって変性する過程で担体や
容器に吸着させ、或いは、担体や容器に吸着した後に変
性させることを特徴とする。また本発明の別の態様で
は、好ましくは血清アルブミンである蛋白質を、酸性条
件下で酸変性させ、担体や容器に吸着させることを特徴
とする。
【0016】これまでにも、マイクロ波を利用する技術
が無かった分けではないが、従来知られていたのは、免
疫学的活性成分を固定化した不溶性粒子担体にマイクロ
波を照射して、粒子を短時間で均一に分散させる技術
(特開平5−18972号公報参照)や、或いは、抗原
抗体反応時にマイクロ波を照射して反応を促進させる技
術(特開平6−43161号公報参照)であって、マイ
クロ波のもつ振とう、攪拌効果を利用するに過ぎない技
術である。また、マイクロ波の蛋白質に対する変性効果
を利用する技術として、組織標本を調製するに際して組
織の固定を迅速に行う技術(特開平8−33386号公
報参照)があるが、これらでは、本発明のように担体や
容器への非特異的吸着の抑制又は低減という効果につい
ては何ら記載していない。本発明は、マイクロ波の照射
や酸変性により、蛋白質の親水性界面を効率よく表面に
露出させるという効果や、担体や容器に変性された蛋白
質が吸着した場合において、マイクロ波照射によりその
配向性(親水性界面の向き)が整うという効果が得られ
るとの知見に基づいて完成されたものである。
【0017】本発明により製造された担体や容器は、蛋
白質の吸着が制限され、その製造工程において表面に吸
着させた血清アルブミン等の蛋白質はもとより、分離分
析や分離精製操作における蛋白質、すなわち、目的成
分、標識物質、更にはこれら以外の他夾雑蛋白質の吸着
を抑制又は低減するものである。
【0018】本発明において、担体や容器とは、例え
ば、スチレン、エチレングリコール、アクリル酸、メタ
クリル酸等のポリマー系又はコポリマー系、シリカやフ
ェライトなどの無機系の材料を用いて形成したもの、更
にはこれらにスルホプロピル基、ジエチルアミノエチル
基等のイオン交換基、トシル基、トレシル基、エポキシ
基などの反応性官能基を導入した担体や容器である。担
体や容器は、その形状には制限がなく、例えば、プレー
ト状、ビーズ状、微粒子状、ゲル状、チューブ状、カッ
プ状のものを例示することができる。
【0019】例えば免疫分析においては、抗原や抗体等
のリガンドを担体や容器に結合したうえで、他の蛋白
質、すなわち目的成分(測定しようとする成分)や標識
物質(例えば検出可能な蛍光物質や酵素等を結合した抗
原や抗体等)等が担体等に非特異的に吸着することを防
止する必要がある。本発明の担体や容器は、かかる免疫
分析等に使用するために、蛋白質を吸着させるのに先立
ち、上記のようなリガンドが結合されていても良い。こ
こでリガンドは、本発明によって製造される担体や容器
を用い、分析又は精製等を行う場合の対象物質に対して
特異的に結合し得る物質を意味し、前記の抗原や抗体の
他、例えばレセプター、酵素、アビジン、ビオチン、ス
トレプトアビジン、核酸等が例示できる。
【0020】マイクロ波は、周波数が300MHzから
300GHzの電磁波である。かかるマイクロ波は、各
種の通信手段として、或いはその加熱効果を利用した調
理用電子レンジや温熱療法に利用されている。本発明に
おいて担体や容器、或いは蛋白質溶液に照射するマイク
ロ波は、水分子の回転エネルギー領域に作用を及ぼすこ
とのできる発振周波数、出力のものであれば制限はな
い。かかるマイクロ波の周波数及び出力は、具体的に
は、発振周波数が1000〜10000MHzで、出力
が100〜1000W程度である。例えば、調理用電子
レンジに内蔵されているマグネトロンから発振されるマ
イクロ波は、周波数が2450MHz、出力が200〜
600W程度であり、本発明を実施するために利用でき
る。
【0021】本発明において、担体や容器に吸着させる
蛋白質としては、牛血清アルブミン(以下BSA)、ヒ
ト血清アルブミン(以下HSA)、卵白アルブミン、カ
ゼイン、ゼラチン、γ―グロブリン、イムノグロブリン
等を例示できるが、担体や容器に対する吸着性が高く、
そして、マイクロ波変性や酸変性により容易に親水性が
高められることから、少なくともBSA又はHSAを含
む蛋白質溶液を使用することが特に好ましい。また、本
発明の担体や容器を、特にヒト由来の成分を分離分析す
るために使用するのであれば、測定系に影響を与える可
能性が小さいBSAを含む蛋白質溶液を使用することが
好ましい。上記のような蛋白質は、例えば通常の免疫分
析におけるブロッキング操作において使用する種々の緩
衝液、例えば、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、炭酸
緩衝液等に溶解した状態で使用すれば良い。この場合の
蛋白質濃度は、0.1から10重量%程度とすることを
例示できる。
【0022】マイクロ波を照射する蛋白質溶液のpH
は、製造後の担体や容器に対する目的成分等の蛋白質の
非特異的吸着量を最小化できるpHとすることが好まし
い。かかるpH値は、吸着させる蛋白質の、等電点やp
Hによる変性特性にあわせて予備的に検討を行うことで
求めることができる。
【0023】本発明は、少なくとも血清アルブミンを含
む蛋白質溶液用い、マイクロ波を照射することなく、単
に蛋白質溶液のpHを酸性にして血清アルブミンを酸変
性させ、これを担体や容器に吸着させることによって前
記同様の効果を達成するものである。また、マイクロ波
を照射する場合であっても、少なくとも血清アルブミン
を含む蛋白質溶液のpHを酸性にして酸変性させておく
と、マイクロ波を照射したのみの場合と比較して、非特
異的吸着の低減効果を顕著にすることが可能である。こ
のような酸変性による効果は、血清アルブミンが酸変性
することによって分子界面の親水性が高められるためで
ある。血清アルブミンを酸変性させる場合には、蛋白質
溶液のpHを3.0から6.5、特に好ましくはpH
3.0から4.0の範囲に調整することが好ましい。
【0024】蛋白質溶液に対するマイクロ波の照射は、
蛋白質溶液の温度を0から37℃の範囲に維持したうえ
で、10から100秒程度行えば良いが、例えば調理用
電子レンジを用いて室温下で30秒以上マイクロ波を照
射する場合は、出力が比較的高いため、蛋白質溶液の突
沸を防止することが重要である。このためには、例えば
蛋白質溶液を氷冷する等することが好ましい。これによ
り、突沸や温度上昇による変性が生じることがなく、本
発明の効果を達成することが可能となる。より詳しい照
射条件については、吸着させる蛋白質の種類に応じて事
前に予備的検討を行い、製造後の担体や容器に対する目
的成分等の蛋白質の非特異的吸着量を最小化できるよう
に設定することが好ましい。
【0025】本発明の実施にあたっては、前記蛋白質溶
液に担体又は容器を浸漬した状態でマイクロ波を照射し
ても良いし、蛋白質溶液に対してマイクロ波を照射した
後に、該蛋白質溶液に担体又は容器を浸漬しても良い。
前記蛋白質溶液に担体又は容器を浸漬した状態でマイク
ロ波を照射する場合は、蛋白質溶液に担体又は容器を浸
漬するのと同時にマイクロ波を照射して、マイクロ波に
よって変性した蛋白質を担体又は容器に吸着すると共
に、担体又は容器に蛋白質を吸着した後に、マイクロ波
の照射よって吸着した蛋白質を変性することが例示でき
る。しかしながら、後の実施例からも明らかなように、
蛋白質溶液に担体又は容器を浸漬し、担体又は容器に蛋
白質を前もって吸着しておき、その後、マイクロ波を照
射することが好ましい。この場合、マイクロ波の照射
は、担体又は容器に対する蛋白質の吸着が飽和状態とな
った後に行うことが特に好ましい。
【0026】本発明は、マイクロ波の照射及び/又は酸
変性を利用し、変性された蛋白質を担体や容器の表面に
吸着させることで、それ以外の蛋白質が非特異的に吸着
することを抑制し又は低減するものである。従って、前
記したように、担体や容器に、予めリガンドが結合され
ている場合には、該リガンドがマイクロ波の照射及び/
又は酸変性によって特異的な結合対象物質との反応性を
失わないようにすることが重要である。一方で、後の実
施例に示したように、リガンドを結合した担体や容器に
対してマイクロ波を照射すると、その分子配向効果によ
りリガンドの結合部位が外側(溶液側)を向き、有効リ
ガンド量、すなわち真に結合対象物質と結合し得るリガ
ンド量が増加する、という、従来知られていないマイク
ロ波照射の効果がある。したがって、予めリガンドを結
合した担体や容器については、マイクロ波の照射により
リガンドが変性して反応性が低下する可能性、リガンド
が酸変性して反応性が低下する可能性、そしてマイクロ
波照射によるリガンドの分子配向効果により有効リガン
ド量が増加する可能性を比較考慮するために、後の実施
例1から3の記載に従って予備実験を行い、その結果に
基づいて本発明のいずれの方法を採用するか決定するこ
とが好ましい。予備実験の結果、リガンドが酸性に調整
した蛋白質溶液中で変性して前記反応性を失ってしまう
場合には、これを避けるために酸性に調整していない蛋
白質溶液を使用し、及び/又は、リガンドがマイクロ波
の照射によって変性して前記反応性を失ってしまう場合
には、蛋白質溶液に対してマイクロ波を照射した後に、
該溶液に担体や容器を浸漬すると良い。
【0027】なお、担体や容器に予めリガンドを結合す
る方法は、単にリガンドを吸着させるものであっても良
いし、化学的な結合によって結合するものであっても良
い。また担体や容器をリガンドと直接結合するのではな
く、リガンドと特異的に結合し得る物質を前記のような
方法で結合しておき、この物質を介してリガンドを結合
しても良い。
【0028】以上のようにして製造される本発明の担体
や容器は、種々の用途に使用し得るものである。例え
ば、分離精製の工程では、工程に供する試料や分離精製
によって得られた成分を入れるための容器、チューブ等
に使用できる。またクロマトグラフィー等では、担体ゲ
ルや、場合によってはこれを保持するカラムとしても使
用できる。また、蛋白質試料を取り扱うための使い捨て
ピペットチップや、遠心分離を行うための遠心管等とす
ることもできる。
【0029】分離分析の工程では、例えば、目的成分に
対する第1の特異的結合物質を予め結合した担体や容器
について蛋白質を吸着させた後、試料及び目的成分に対
する第2の特異的結合物質(標識物質)と混合し、担体
や容器を洗浄し、そして担体や容器上に形成された、第
1の特異的結合物質−目的成分−第2の特異的結合物質
(標識物質)との複合体中の標識を検出する等のいわゆ
るサンドイッチタイプの免疫分析の他、いわゆる競合タ
イプの免疫分析や核酸分析に代表されるアフィニティー
分析に使用することが例示できる。ここでいう標識物質
は、例えば、蛍光色素、発光物質、酵素、吸光物質、ジ
ニトロフェニル基を有する化合物等の標識を結合した抗
原、抗体、レセプター、酵素等であり、蛋白質を含むも
のであれば、本発明の担体や容器の効果を十分に発揮で
きる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を更に詳細に説明
するために実施例を示すが、これらは本発明の一実施の
形態を示すものであり、本発明を限定するものではな
い。
【0031】実施例 1 以下に示す、2種類の製造方法により、本発明の担体を
製造した。
【0032】(方法1)表面をフェライトで被覆したエ
チレン−酢酸ビニル共重合体製の担体(粒径約1.6m
m、以下フェライトビーズと記載する)約1000個
を、15mlサイズのポリプロピレン製遠沈管7本にそ
れぞれ取った。0.5%の蛋白質(BSA、HSA、ゼ
ラチン、カゼイン、ウシγ−グロブリン、ヤギイムノグ
ロブリンG又は卵白アルブミンの、合計7種類の蛋白質
のうちの一種類)及び0.1%アジ化ナトリウムを含む
0.1Mトリス塩酸緩衝液pH8.0を調製し、フェラ
イトビーズの入ったそれぞれの遠沈管に10mlずつ添
加して静かに転倒混和後、4℃にて12時間以上静置し
た。
【0033】(方法2)方法1で使用したのと同一のフ
ェライトビーズ3個を2mlのマイクロチューブに取
り、方法1と同一の蛋白質溶液(合計7種類のうちの一
種類を含む蛋白質溶液)を200μl添加した。マイク
ロチューブを10分間予備氷冷した後、キャップを開
け、氷冷した状態で調理用電子レンジ(MR−M25、
ターンテーブル方式、発振周波数2450MHz、定格
高周波出力500W、日立製作所(株)製)に入れ、
「強」で正確に30秒間マイクロ波を照射した。チューブ
を取り出し、キャップを閉め、37℃のインキュベータ
内にて6時間振盪撹拌し、4℃にて保存した。
【0034】方法1又は2の様にして製造した担体をそ
れぞれ3個ずつ、2mlのマイクロチューブに取り、蛋
白質溶液をアスピレータにて完全に吸引除去した後、1
mlの0.1%BSAを含む0.1Mリン酸緩衝液(p
H7.4)にて2回洗浄した。0.1%BSAを含む
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で3.7μg/m
lに希釈したアルカリホスファターゼ標識抗αフェトプ
ロテイン抗体溶液(東ソー(株)製)を100μlずつ
添加し、37℃にて10分間振盪した。
【0035】アルカリホスファターゼ標識抗αフェトプ
ロテイン抗体溶液を吸引除去した後、担体を1mlの
0.044% TritonX−100を含む0.1M
NaCl溶液にて3回洗浄した。この溶液を吸引除去
したのち、担体を12×75mmのガラス製チューブに
移し、アルカリ性ホスファターゼ活性測定用の化学発光
基質(CSPD、0.2mM溶液、Tropix社製)
を100μl分注し、ただちに発光検出器(商品名LU
MAT LB9501、ベルトールド社製)にて発光量
をカウントした。測光時間は、検出器へのセット直後か
ら20秒間とした。
【0036】図1は、発光の測定結果を示すものであ
る。7種類のすべての蛋白質において、マイクロ波を照
射することにより、非特異的吸着量が低減した。マイク
ロ波照射後の非特異的吸着量は、BSA及びカゼインが
同程度で最も低く、特にBSAはマイクロ波照射による
非特異的吸着量の低減率が最も高かった。
【0037】実施例 2 以下に示す、3種類の製造方法により、本発明の担体を
製造した。
【0038】(方法1)フェライトビーズ約1000個
を、15mlサイズのポリプロピレン製遠沈管に取り、
合計14種類の、pHが異なる蛋白質溶液(0.5%B
SAと0.1%アジ化ナトリウムを含む、0.1Mリン
酸緩衝液(pH3.0から7.5)、又は、0.5%B
SAと0.1%アジ化ナトリウムを含む、0.1Mトリ
ス塩酸緩衝液(pH8.0から11.2))を10ml
添加して静かに転倒混和後、4℃にて12時間以上静置
した。
【0039】(方法2)フェライトビーズ3個を2ml
のマイクロチューブに取り、方法1と同一の蛋白質溶液
(合計14種類)を200μl添加した。マイクロチュ
ーブを10分間予備氷冷した後、キャップを開け、氷冷
した状態で調理用電子レンジ(MR−M25、ターンテ
ーブル方式、発振周波数2450MHz、定格高周波出
力500W、日立製作所(株)製)に入れ、「強」で正
確に30秒間マイクロ波を照射した。チューブを取り出
し、キャップを閉め、37℃のインキュベータ内にて6
時間振盪撹拌し、4℃にて保存した。
【0040】(方法3)まず、担体を入れることなく、
方法1と同一の蛋白質溶液(合計14種類)のみを10
mlずつ15mlサイズのポリプロピレン製遠沈管に取
り、30分間予備氷冷した後、キャップを開け、氷冷し
たままの状態で前記調理用電子レンジに入れて「強」で
正確に30秒間マイクロ波を照射した。その後、各蛋白
質溶液に約1000個のフェライトビーズをそれぞれ添
加し、キャップを閉め、4℃にて12時間以上静置し、
保存した。
【0041】方法1から3の様にして製造した担体をそ
れぞれ3個ずつ、2mlのマイクロチューブに取り、蛋
白質溶液をアスピレータにて完全に吸引除去した後、1
mlの0.1%BSAを含む0.1Mリン酸緩衝液(p
H7.4)にて2回洗浄した。0.1%BSAを含む
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で3.7μg/m
lに希釈したアルカリホスファターゼ標識抗αフェトプ
ロテイン抗体溶液(東ソー(株)製)を100μlずつ
添加し、37℃にて10分間振盪した。
【0042】アルカリホスファターゼ標識抗αフェトプ
ロテイン抗体溶液を吸引除去した後、担体を1mlの
0.044% TritonX−100を含む0.1M
NaCl溶液にて3回洗浄した。この溶液を吸引除去
したのち、担体を12×75mmのガラス製チューブに
移し、アルカリ性ホスファターゼ活性測定用の化学発光
基質(CSPD、0.2mM溶液、Tropix社製)
を100μl分注し、ただちに発光検出器(商品名LU
MAT LB9501、ベルトールド社製)にて発光量
をカウントした。測光時間は、検出器へのセット直後か
ら20秒間とした。
【0043】図2は、発光の測定結果を示すものであ
る。方法1により、マイクロ波を照射することなく製造
した担体では、担体への蛋白質(標識物質、すなわちア
ルカリホスファターゼ標識抗αフェトプロテイン抗体)
の非特異的吸着量が、pHがpH3.0から6.5、特
にpH3.0から4.0の蛋白質溶液を用いた場合、p
H7.0から8.0の蛋白質溶液を用いた場合と比較し
て、顕著に低減した。方法2又は方法3により、マイク
ロ波を照射して製造した担体では、方法1によりマイク
ロ波を照射せずに製造した担体に比較して、方法2にお
けるpH3.0で製造したものを除き、他は蛋白質溶液
のpHに関わらず、蛋白質の非特異的吸着量の低い担体
を製造することができた。
【0044】方法2において、pHが3.5から6.0
の蛋白質溶液を用いて製造した担体や、方法3におい
て、pHが3.0から4.0の蛋白質溶液を用いて製造
した担体は、方法1において、pHが7.0から8.0
の蛋白質溶液を用いて製造した担体、すなわち、従来か
ら製造されている担体と比較すると、明らかに蛋白質の
非特異的吸着量が低減されており、特に、方法2におい
てpHが4.0の蛋白質溶液を用いることで、非特異的
吸着量の最も低い担体を製造することができた。なお、
方法2により製造された担体では、蛋白質の非特異的吸
着量の測定間変動幅が、他の方法で製造した担体の測定
間変動に比べて小さくなることも明らかとなった。
【0045】実施例 3 (1)抗甲状腺刺激ホルモン抗体固定化フェライトビー
ズの調製 100mlのスクリューキャップ付ガラス容器を用い
て、500μgの抗甲状腺刺激ホルモン抗体Fab'画
分(東ソー(株)製)を含む、0.1%アジ化ナトリウ
ム添加0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を50
ml調製した。約4000個のフェライトビーズをこの
抗体溶液に添加して33℃にて1時間撹拌し、物理吸着
により結合させた。前記混合前後の溶液を高速ゲル浸透
クロマトグラフィーに供して担体への抗体結合量を求め
た結果、抗体はビーズに全量結合した。
【0046】上清を吸引除去して担体を取り出し、約2
000個ずつ、50mlの2本の遠心チューブに分け
た。うち一方の担体は、40mlの0.1Mトリス塩酸
緩衝液(pH8.0)にて、他方の担体は40mlの
0.1Mリン酸緩衝液(pH4.0)にてそれぞれ2回
洗浄した後、それぞれ0.5%BSAと0.1%アジ化
ナトリウムを含む同一の緩衝液(それぞれ同一のpH)
を分注し、4℃にて24時間以上静置した。
【0047】以上のように処理した2種類の担体それぞ
れを、約1000個ずつ、2本の50ml遠心チューブ
に分け、前記した方法1又は方法2に基づいて、担体を
製造した。すなわち、方法1として、1本ずつ、合計2
本の遠沈管中の担体について、静かに転倒混和後、4℃
にて12時間以上静置して担体とした。そして方法2と
して、他の1本ずつ、合計2本の遠沈管中の担体につい
て、30分間予備氷冷した後、氷冷状態で前記調理用電
子レンジにて「強」で正確に30秒間マイクロ波を照射
し、その後室温下にて6時間ローラー撹拌(9rpm)
し、同溶液中で4℃にて保存した。
【0048】(2)甲状腺刺激ホルモンの1ステップサ
ンドイッチ分析 上記(1)において製造した2種類の担体それぞれを、
12個ずつ用いて、免疫分析を行った。各担体を全自動
エンザイムイムノアッセイ装置(商品名AIA−21、
東ソー(株)製)専用の分析容器に入れ、蛋白質溶液を
吸引除去した後、200μlの0.1Mトリス塩酸緩衝
液(pH8.0)にて1回洗浄し、更に、0.1%BS
Aを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で3.7
μg/mlに希釈したアルカリホスファターゼ標識抗甲
状腺刺激ホルモン抗体(東ソー(株))を100μl分
注した。この一方で、甲状腺刺激ホルモン(TSH)標準
液(0及び50.1μIU/ml)(東ソー(株)製)
をそれぞれ専用のサンプルカップに取り、前記のように
して調製した、担体を入れた分析容器とともに装置にセ
ットして、自動測定を行った。
【0049】サンプルの分注後、37℃、40分間の抗
原抗体反応を行い、B/F洗浄を経て、アルカリ性ホス
ファターゼ活性測定用蛍光基質である1mMの4−メチ
ルウンベリフェリルリン酸溶液を220μl添加後、基
質添加直後から300秒間でのレートアッセイを行っ
て、結果を濃度換算した。
【0050】図3及び図4は、それぞれ、0μIU/m
l及び50.1μIU/mlのTSHを含む標準液につ
いての測定結果を示す図である。0μIU/ml標準液
の測定結果は、抗体を結合した担体とこれを入れた分析
容器への蛋白質、すなわち目的成分(TSH)又は標識
物質(アルカリホスファターゼ標識抗甲状腺刺激ホルモ
ン抗体)の非特異的吸着量を反映したものである。この
測定結果に関しては、マイクロ波を照射して製造した担
体(方法2)では、マイクロ波を照射せずに製造した担
体(方法1)と比較して、非特異的吸着量が、pHが
8.0の蛋白質溶液を使用した場合は75%、そしてp
Hが4.0の蛋白質溶液を使用した場合は63%に低減
された。
【0051】50.1μIU/ml標準液の測定結果
は、主として、蛋白質の非特異的な吸着量ではなく、担
体上に形成されたサンドイッチ免疫複合体の量を反映し
たものである。この結果に関しては、マイクロ波を照射
して製造した担体(方法2の担体)では、マイクロ波を
照射せずに製造した担体(方法1の担体)と比較して、
pHが8.0の蛋白質溶液を使用した場合でも78%高
い値となった。これは、マイクロ波の分子配向効果によ
り、抗体分子の抗原結合部位が溶液側を向いて、有効抗
体量すなわち抗原と結合し得る抗体量が増加した結果で
あると考えられる。マイクロ波を照射して製造した担体
(方法2)であっても、pHが4.0の蛋白質溶液を使
用した場合、同pH8.0の蛋白質を用いて製造した場
合の約50%の酵素活性にとどまっているのは、担体に
結合したリガンド(抗体)に対するマイクロ波の配向効
果がpHに依存的であるためと考えられる。
【0052】図5は、図3及び図4に示した測定値につ
いて、2SD法による検出下限界値を求めた結果を示す
ものである。マイクロ波を照射して製造した担体(方法
2)では、マイクロ波を照射せずに製造した担体(方法
1)と比較して、pHが8.0の蛋白質溶液を使用した
場合、約50%、すなわち約2倍の高感度化が達成され
たことが分かる。
【0053】なお、本実施例からは、フェライト等の導
電性素材が含まれている担体や容器にマイクロ波を照射
しても、該導電性素材の特性(磁性等)や担体等に予め
結合されたリガンドの反応性に対する悪影響は認められ
ないことも分かる。
【0054】実施例4 イオン交換クロマトグラフィー用充填剤DEAE−5P
Wのブロッキングおよび充填カラムの作製 市販のイオン交換ゲル(商品名DEAE−5PW、東ソ
ー(株)製)を乾燥重量でそれぞれ4gずつ、2本の5
0mlのポリプロピレン製遠沈管に取り、一方には0.
5%BSAと0.1%アジ化ナトリウムを含む100m
Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を20ml、他方に
は0.5%BSAと0.1%アジ化ナトリウムを含む1
00mMリン酸緩衝液(pH4.0)を20ml添加し
て、泡立てないよう静かに転倒混和した。ローラー式撹
拌機にて室温下、9rpmで18時間撹拌した後、2本
の遠沈管中のゲル懸濁液をそれぞれ10mlずつ、別の
キャップ付きポリプロピレン製のチューブ(14mlサ
イズ)に取り、氷水の入った300mlのポリプロピレ
ン製ビーカーに10分間漬けて氷冷した。
【0055】再度転倒混和を行った後、キャップを外し
てから再度ビーカーにもどし、そのビーカーをただちに
ターンテーブル方式の前記調理用電子レンジに入れ、
「強」で正確に30秒間マイクロ波を照射した。チュー
ブを取り出し、キャップを付けてローラー式撹拌機にて
室温下、9rpmで6時間撹拌した。
【0056】マイクロ波を照射せずに製造した2種類の
担体(方法1の担体)と、マイクロ波を照射して製造し
た2種類の担体(方法2の担体)、更には前記ゲルを
0.1%アジ化ナトリウムを含む100mMトリス塩酸
緩衝液(pH8.0)に懸濁した対照担体の合計5種類
の担体を、4.6mmID×3.5cmのステンレス製
カラムに流速4ml/分で高圧充填した。充填液は、そ
れぞれの担体を製造する過程で使用した緩衝液であり、
対照担体については0.1%アジ化ナトリウムを含む1
00mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)である。
【0057】充填後、各担体のイオン交換基と結合した
BSAを解離させるために、各カラムに対して1M N
aClを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)
を流速0.5ml/分で1時間供し、洗浄した。
【0058】以上のようにして調製した担体への蛋白質
の非特異的吸着を観察するために、以下のような条件に
て担体基材との吸着性が高いBSAをサンプルとしてカ
ラムに供し、その回収率を測定した。なお、サンプルと
したBSAは担体に吸着させた蛋白質そのものである
が、担体は、上記のように製造後、高塩濃度溶液で十分
に洗浄したので問題はなく、担体への吸着性を正しく反
映したものと考えられる。
【0059】(分析条件) 試料:250μg/mlのBSA溶液、 注入量:20μl、 溶離液; A;20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)、 B;0.5M 塩化ナトリウムを含む20mMトリス塩酸
緩衝液(pH8.5)、 溶出条件; AからBへのリニアグラジエント(5分)、 流速:1.0ml/分、 検出:UV(280nm)での吸光度測定。
【0060】カラムを流路から外した状態、すなわちい
ずれのカラムも使用せずに、単に試料のみを流路系に注
入して求めたピーク面積を100とし、カラムを流路に
組み込んだ状態、すなわち各カラムに試料を通過させて
得られたピーク面積の百分率を回収率として求め、図5
に示した。言い換えれば、カラム中の担体に吸着した蛋
白質(BSA)の分だけ回収率は低下し、回収率の高い
担体ほど、蛋白質(BSA)の非特異的な吸着が低いも
のである。
【0061】方法2によって、マイクロ波を照射して製
造した担体を充填したカラムでは、pHが8.0の蛋白
質溶液を用いた場合の回収率が86%、pHが4.0の
蛋白質溶液を用いた場合の回収率が88%となり、対照
担体の回収率76%を大幅に上回った。方法2によって
マイクロ波を照射して製造した担体に関する結果のう
ち、pHが4.0の蛋白質を使用した担体の結果が、方
法1においてマイクロ波を照射せずにpH4.0の蛋白
質溶液を用いて製造した担体と同程度の回収率しか示さ
なかったのは、担体以外にエンドフィッティングへの蛋
白質(BSA)の吸着が起きているためと考えられる。
すなわち、pHが4.0の蛋白質溶液を用いた場合に
は、方法1又は方法2のいずれの方法で製造した担体で
も、実質的には100%の回収率を達成しており、12
%の回収率低下分は、おもにエンドフィッティングを中
心としたカラム内接液部への蛋白質吸着に起因すると考
えられる。
【0062】
【発明の効果】本発明によって提供される担体や容器の
表面には、マイクロ波の照射及び/又は酸処理によって
変性され、親水性の向上した蛋白質が吸着されているた
め、従来実施されている、未変性の蛋白質を吸着させる
方法(いわゆる通常のブロッキング方法)により製造し
た担体や容器と比較して、蛋白質の非特異的吸着をより
抑制又は低減できる。この結果、本発明の担体や容器を
用いた場合には、分離分析や分離精製における測定感度
や回収率を向上できる。
【0063】上記効果は、担体や容器に吸着させる蛋白
質として、少なくとも血清アルブミンを含む溶液を用い
ると、血清アルブミンを酸変性させるのみでも達成され
るものであるが、酸変性に加えてマイクロ波を照射する
という形態によれば、後述する付加的な効果も達成でき
る。すなわち、抗体等のリガンドを結合した後にマイク
ロ波を照射すると、マイクロ波の分子配向効果により、
リガンド分子の抗原結合部位を溶液側に向かせ、有効リ
ガンド量を増加することができるため、分離分析や分離
精製における測定感度のより一層の向上、分離精製にお
けるより一層の回収率の向上を達成できる。
【0064】本発明の担体や容器に対して、例えば、目
的成分に対するリガンドである、抗体又は抗原を結合し
て免疫分析を行う場合等の効果は、具体的には以下の通
りである。まず、目的成分である抗原や抗体、更には標
識と結合した標識物質(標識抗体や標識抗原等)の蛋白
質の担体等への非特異的吸着を低減できるため、標識を
検出する際のバックグランドシグナルを減少できる。こ
れは、測定感度の向上に寄与するものである。加えて、
担体や容器に抗体や抗原を結合した後、蛋白質溶液中で
マイクロ波を照射して製造したものでは、マイクロ波の
もつ分子配向効果が表面に吸着した蛋白質のみならず、
リガンドである抗体や抗原にも及び、その結果、抗体や
抗原は、その抗原結合部位が溶媒側により多く配向され
るようになり、有効固相抗体量が増加する。これは、測
定感度の向上はもとより、検出下限界の改善に寄与す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で製造した担体の、蛋白質の
非特異的吸着の抑制効果を示した図である。図中左から
順にBSA、HSA、ゼラチン、カゼイン、ウシγ―グ
ロブリン、ヤギイムノグロブリンGそして卵白アルブミ
ンの結果を示す。
【図2】図2は、実施例2で製造した担体の、蛋白質の
非特異的吸着の抑制効果を示した図である。
【図3】図3は、実施例3で製造した担体を用いて免疫
分析を行った場合の結果を示す図である。
【図4】図4は、実施例3で製造した担体を用いて免疫
分析を行った場合の結果を示す図である。
【図5】図5は、実施例3で製造した担体を用いて免疫
分析を行った場合の結果を示す図である。
【図6】図6は、実施例4で製造した担体を用いてイオ
ン交換クロマトグラフィーを行った場合の結果を示す図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/543 581 G01N 33/543 581W C07K 1/14 C07K 1/14 G01N 30/50 G01N 30/50

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】担体又は容器に蛋白質を吸着して非特異的
    吸着の低減された担体又は容器を製造するにあたり、蛋
    白質溶液に浸漬した状態で、該担体又は容器に対してマ
    イクロ波を照射することからなる、担体又は容器の製造
    方法。
  2. 【請求項2】担体又は容器に蛋白質を吸着して非特異的
    吸着の低減された担体又は容器を製造するにあたり、蛋
    白質溶液にマイクロ波を照射した後、該蛋白質溶液に該
    担体又は容器を浸漬することからなる、担体又は容器の
    製造方法。
  3. 【請求項3】前記蛋白質溶液は、血清アルブミンを含有
    する溶液であることを特徴とする、請求項1又は2の製
    造方法。
  4. 【請求項4】前記蛋白質溶液は、血清アルブミンを含有
    し、かつpHをpH3.0から6.5に調整した溶液で
    あることを特徴とする、請求項1又は2の製造方法。
  5. 【請求項5】担体又は容器に蛋白質を吸着して非特異的
    吸着の低減された担体又は容器を製造するにあたり、血
    清アルブミンを含有し、かつpHをpH3.0から6.
    5に調整した蛋白質溶液に該担体又は容器を浸漬するこ
    とからなる、担体又は容器の製造方法。
  6. 【請求項6】前記担体又は容器には、前記蛋白質の吸着
    に先立ち、リガンドが結合されていることを特徴とす
    る、請求項1から5のいずれかに記載の製造方法。
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