JP2002129513A - 砂入り人工芝生及び屋内運動施設 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 粉塵発生が少なく吸音性に優れた砂入り人工
芝生を提供する。 【解決手段】 人工芝生のパイル間に、ガーネットの粉
粒体を充填する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、砂入り人工芝生、
及び、この砂入り人工芝生を備える屋内運動施設に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】人工芝生生は、運動競技場をはじめとす
る各種施設の表層材料（床材料）として広く用いられて
いる。近年では、季節や気候に影響されない運動施設と
して大型ドーム等の屋根を備えた屋内運動施設が各地に
建設されているが、人工芝生は、特にこのような屋内運
動施設において、屋内で維持の困難な天然芝に替わるも
のとして好適に使用されている。

【０００３】これら運動施設用の人工芝生としては、衝
撃吸収性やシューズグリップ性などが要求されるため、
最近では人工芝生のパイル間に砂（目砂）を充填した砂
入り人工芝生が好適に用いられている。かかる目砂とし
ては、珪砂を主成分とする川砂が一般に使用されてい
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の砂入
り人工芝生には次のような問題があった。即ち、使用期
間の経過と共に粉塵が増加し、観客席や他の設備を汚染
すると共に運動環境の悪化を招くという問題点を有して
いた。また、砂なし人工芝生に比較して音が反響し易く
なるため、観客の騒音が大きくなったり、場内放送の音
声が不明瞭になる等の問題点も有していた。

【０００５】特に、大型ドームのような屋内運動施設に
砂入り人工芝生を敷設する場合には、施設内部が閉鎖さ
れた空間であるため、浮遊する粉塵が施設内に残留する
と共に反響も大きくなり、上述した問題点がより顕著な
ものとなっていた。

【０００６】本発明は、これらの問題を解決すべくなさ
れたものであって、粉塵発生が少なく吸音性に優れた砂
入り人工芝生及び屋内運動施設の提供を目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の前記目的は、人
工芝生のパイル間に、ガーネットの粉粒体を充填した砂
入り人工芝生により達成される。

【０００８】この砂入り人工芝生において、粉粒体はア
ルマンダイト系ガーネットであることが好ましい。ま
た、粉粒体の平均粒径を０．１〜２ｍｍにすることが好
ましい。

【０００９】また、本発明の前記目的は、上述した砂入
り人工芝生と、該砂入り人工芝生の上方を覆う屋根とを
備える屋内運動施設により達成される。

【００１０】

【発明の実施の形態】本発明者等は、上記課題を解決す
るために、まず、従来の砂入り人工芝生の目砂として汎
用されている珪砂が粉塵を発生させる要因の解明を試み
た。この結果、珪砂の主成分である石英がモース硬度７
と極めて硬いにもかかわらず、石英以外に含まれる各種
鉱物の中で比較的硬度の低いものが存在するために、踏
まれた際に砂粒が擦り合わされることによって、硬度の
低い部分が粉塵の元になる微粉末を生じさせていること
がわかった。

【００１１】そこで、硬度がなるべく高く且つ均一な材
料という観点から、吸音性や入手性なども考慮して種々
の材料を比較検討した結果、砂入り人工芝生の目砂とし
てはガーネットの粉粒体を用いることが最適であること
を見出した。即ち、ガーネットは、モース硬度が通常
７．５〜８．０程度であり非常に高く、また、川砂に比
べて比重が大きいため、人工芝生にガーネット粉粒体を
充填することにより、従来の砂入り人工芝生に比べて飛
散する粉塵を大幅に（１／３〜１／４程度にまで）減少
させることが可能になった。

【００１２】更に、吸音性という点においても、ガーネ
ット粉粒体を充填した人工芝生は、後述する試験結果に
示すように、従来の砂入り人工芝生に比べて中高音域で
顕著に優れた効果を示した。

【００１３】ガーネット粉粒体は、別名ざくろ石とも呼
ばれる天然鉱物であり、化学組成としては、二酸化珪
素、酸化アルミニウム及び酸化第一鉄を主体とし、他に
酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化第二鉄、酸化
マンガン、二酸化チタン等の微量成分が含有されること
もある。

【００１４】ガーネットには、アルマンダイト系やライ
ム系など多くの種類が存在するが、高硬度であるという
点からアルマンダイト系ガーネット（鉄礬ざくろ石）が
好ましく用いられる。

【００１５】ガーネット粉粒体の粒径としては、色調
（微細なものほど赤みがかかる傾向がある）、クッショ
ン性、充填の容易さ、及び粉塵発生の抑制等の観点から
平均粒径０．１〜２ｍｍのものが好ましく用いられ、平
均粒径０．３〜０．８ｍｍのものが特に好ましく用いら
れる。平均粒径が２ｍｍを超えると、粉粒体が流れにく
くなり、人工芝生パイル間に均一に充填することが難し
くなり、他方、平均粒径が０．１ｍｍを下回ると、充填
密度が高くなり硬くなるので、適度なクッション性が失
われるため、いずれも好ましくない。

【００１６】ガーネット粉粒体の人工芝生への充填量と
しては、特に制限はなく適宜設定できるが、例えば５〜
５０ｋｇ／ｍ²程度を例示できる。

【００１７】本発明の砂入り人工芝生は、例えばサッカ
ー、野球、アメリカンフットボール、テニス、ホッケ
ー、ラグビー、ゴルフ、バレーボール、短長距離走、槍
投げ、ハンマー投げ、砲丸投げ等を行う各種の運動競技
場用の床材として好適に使用でき、特にドームなどの屋
根を備えた屋内運動施設における床材として好適に使用
することができる。

【００１８】

【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明を更
に詳細に説明する。 ［実施例１］中国産のアルマンダイト系ガーネット（中
国内モンゴル自治区涼城県産出）を粉砕、分級してガー
ネット粉粒体を得た。この化学組成及び主な物性を表１
に示す。

【００１９】

【表１】

【００２０】［比較例１］従来の砂入り人工芝生用目砂
として一般に用いられている川砂（洗砂）を用いた。こ
の化学組成及び主な物性を表２に示す。

【００２１】

【表２】

【００２２】［試験例１］ 摩滅による粒度分布変化の
比較 ３０度の回転軸を持つ鉄製円筒（内径２０ｃｍ、内高３
４ｃｍ）に、直径２５ｍｍの粉砕用陶磁器製球を４．３
ｋｇ投入し、これに実施例１のガーネット粉粒体（乾燥
品）を１７４０ｃｃ混入して、ボールミルにより３０Ｒ
ＰＭで２０００回転させ、ＪＩＳ１１０２−１９９９
「骨材のふるい分け試験法」に準じて試験前後の粒度分
布変化を調べた。更に、ガーネット粉粒体の代わりに比
較例１の川砂（乾燥品）を用いて同様の試験を行い、実
施例１のものと比較した。この結果を表３に示す。

【００２３】

【表３】

【００２４】表３からわかるように、試験前において
は、実施例１及び比較例１で粒度分布にそれほど大差が
ない一方、試験後においては、３００μｍ以下の粒度の
ものが、実施例１よりも比較例１において増加してお
り、粒度が小さくなるにつれてこのような傾向が顕著と
なっている。即ち、比較例１に比べて実施例１の方が、
粉塵の原因となる微粉末の発生量が少ないことがわか
る。 ［試験例２］ 粉塵試験での粉塵発生量の比較 人工芝（商品名「スティングレーサンド ＭＭ−ＮＣ
Ｌ」、大塚化学株式会社製）に、実施例１のガーネット
粉粒体及び比較例１の川砂（いずれも乾燥品）を、それ
ぞれ２７ｋｇ／ｍ²充填した。この人工芝は、アンダー
パット（ゴムチップウレタン（ｔ＝１０ｍｍ）、８ｋｇ
／ｍ²）上に、人工芝本体（芝葉２５ｍｍ長ナイロン、
基布１ｍｍ厚ポリプロピレン、重量３．５ｋｇ／ｍ²）
が設けられたものである。また、充填砂は、試験例１と
同処理したものを使用したので、粒度分布は、それぞれ
表３における試験後のものと同じであった。

【００２５】ついで、砂入り人工芝生の中央に、直径２
０ｃｍの円形穴部を有する９０ｃｍ角の紙を載置し、円
形穴部を覆うように直径６０ｃｍで高さ１ｍの有蓋無底
円筒を起立させ、蓋部の中央から円筒内にエアーノズル
の先端を突出させた。

【００２６】そして、エアーノズルから下方中央の人工
芝に向かって１ｋｇ／ｃｍ²の圧力で３０秒間エアーを
噴出させ、噴出停止後１０分間静置し、紙上に溜まった
粉塵重量を測定した。この結果を表４に示す。

【００２７】

【表４】

【００２８】表４からわかるように、実施例１を用いた
人工芝の粉塵重量は、比較例１を用いた場合に比べて４
０％以下であり、飛散する粉塵の発生量を大幅に低減で
きていることがわかる。尚、比較例１の代わりに珪砂
（５号）を充填して同様に試験を行ったところ、粉塵重
量は４７８０ｍｇであり、比較例１よりも更に大きな値
であった。 ［試験例３］ 吸音特性の比較 試験例２で用いた人工芝（３．６ｍ×２．７ｍ）の周辺
を木枠で囲い、試験室（間組技術研究所残響室（小））
の床面に載置した後、実施例１のガーネット粉粒体及び
比較例１の川砂（いずれも乾燥品）を人工芝にそれぞれ
２７ｋｇ／ｍ²充填して、残響室法吸音率を測定した。

【００２９】試験方法はＪＩＳ Ａ １４０９に準じて
行い、残響室空室時の残響時間と砂入り人工芝載置時の
残響時間とにより、残響室法吸音率を算出した。音源は
１カ所とし、受音点は５カ所とした。

【００３０】残響時間は、以下の方法により求めた。ま
ず、Ｍ系列法によってインパルス応答を測定して、解析
時に１／３オクターブバンドのフィルタリングを実施
し、シュレイダー法により残響減衰曲線を求め、最小２
乗法により残響時間を算出した。この結果を図１に示
す。

【００３１】図１からわかるように、実施例１を用いた
人工芝は、比較例１のものと比較して、周波数が８００
Ｈｚを越える領域で吸音率が高く、吸音性能が良好であ
ることがわかる。

【００３２】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、人工芝生のパイル間にガーネットの粉粒体を
充填しているので、衝撃吸収性やシューズグリップ性が
良好であるだけでなく、従来の砂入り人工芝生に比べて
粉塵発生の抑制や吸音性の向上が可能になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の砂入り人工芝生の実施例と比較例との
吸音率を比較した図である。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 人工芝生のパイル間に、ガーネットの粉
   粒体を充填したことを特徴とする砂入り人工芝生。
2. 【請求項２】 前記粉粒体は、アルマンダイト系ガーネ
   ットであることを特徴とする請求項１に記載の砂入り人
   工芝生。
3. 【請求項３】 前記粉粒体の平均粒径を、０．１〜２ｍ
   ｍにしたことを特徴とする請求項１又は２に記載の砂入
   り人工芝生。
4. 【請求項４】 請求項１から３のいずれかに記載の砂入
   り人工芝生と、該砂入り人工芝生の上方を覆う屋根とを
   備えることを特徴とする屋内運動施設。