JP2001527402A - Ngf変異体 - Google Patents

Ngf変異体

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JP2001527402A JP54714498A JP54714498A JP2001527402A JP 2001527402 A JP2001527402 A JP 2001527402A JP 54714498 A JP54714498 A JP 54714498A JP 54714498 A JP54714498 A JP 54714498A JP 2001527402 A JP2001527402 A JP 2001527402A
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ジー プレスタ,レオナ−ド
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Abstract

(57)【要約】 trkC結合活性及びtrkCシグナル誘導活性を有するNGF変異体が提供される。該変異体は任意に、trkAまたはtrkB結合及びシグナル誘導活性を有する。本発明のNGF変異体は、ニューロン疾患の治療において有用である。NGF変異体ニューロトロフィンをコードする核酸及び発現ベクターもまた提供される。

Description

【発明の詳細な説明】 NGF変異体 発明の背景 技術分野 本出願は、神経組織、特にニューロンの成長、調節または維持に関与するタン パク質に関する。特にそれは、もう一つの神経栄養因子NT−3の活性を有する NGF変異体に関する。trkC結合活性及びtrkCシグナル誘導活性を有す るNGF変異体が提供される。該変異体は任意に、trkAまたはtrkB結合 及びシグナル誘導活性を有する。本発明のNGF変異体は、ニューロン疾患の治 療に有用である。NGF変異体ニューロトロフィンをコードする核酸及び発現ベ クターもまた提供される。 序論 脊椎動物ニューロンの分化した機能の生存及び維持は、ニューロトロフィンと 称される特異的なタンパク質の利用によって影響される。ニューロトロフィンは 、脊椎動物神経系の発達及び成熟段階の間、ニューロンの生存及び維持に対して 重要である成長因子の非常に相同なファミリーを形成している(文献として99 を参照)。ニューロトロフィンの制限された生産は、過剰なニューロンの死を引 き起こす(文献として(1);(2)を参照)。様々なニューロトロフィンが、中枢及 び末梢神経系における別個のニューロン集団の生存を助ける能力において機能的 に分化している(3)、(4);(5)、(80)。 ニューロトロフィンのファミリー(family)は、NT−3(6,7,5,8,9 ,10)、神経成長因子(NGF)(11,12)、脳由来神経栄養因子(BDN F)(13,14)並びにニューロトロフィン4/5(NT−4/5)(15, 16,17)及びニューロトロフィン−6(NT−6)(91,92)を含む非常 に相同なファミリーである。 研究は、ニューロトロフィンが、trkとして周知なMr=140−145, 000のチロシンキナーゼ含有レセプターのクラスのリガンド依存的活性化を通 じて、少なくとも部分的に細胞内シグナリングを伝達することを示唆する(18) ;(19)(21);(20)(22);(23);(24);(25);(26)。ニューロト ロフィンの結合は、シグナル伝達カスケードにおける後の段階の誘発するtrk レセプターの自己リン酸化を誘導する(95)。それ故、ニューロトロフィンのシ グナル伝達経路は、特異的なチロシンキナーゼレセプターに対する高親和性結合 及びそれらの活性化、並びに引き続くレセプター自己リン酸化によって開始され る(19);(27)。ニューロトロフィンと様々なtrkの間にはある程度の交差 レセプター相互作用が存在するが、顕著な特異性は、NGF/trkA、BDN F/trkB、及びNT−3/trkCに存在すると思われ、その一方で、NT −4/5はBDNFと同程度の効率性でtrkBと主に相互作用するように思わ れる(27);(19)(21);(25);(22);(28);(18);(28a)。NG FはtrkAと過度に相互作用する(21)一方で、BDNFおよびNT−4/ 5はtrkBに結合する(29)。trkAおよびtrkBは、複数のニューロト ロフィンに対して特定の環境下、インビトロで応答することができる(6);(2 3)。trkCは、NT−3に対して過度に応答する(25);(26)。NT−3 は、trkCを通じて好ましくはシグナル伝達するが、より低い親和性でtrk AおよびtrkBにも結合する(25;101)(図1)。それ故、特異性の観点 からtrkレセプターの最もストリンジェントなメンバー(trkC)は、ニュ ーロトロフィンファミリーの最も相手を選ばないリガンド(NT−3)と過度に 相互作用する。 しかしながら、ニューロンの環境は、好ましくないニューロトロフィンリガン ドに対して応答する能力においてtrkA及びtrkBを制限している(29)。 レセプターのtrkファミリーに加えて、ニューロトロフィンは、p75低親和 性NGFレセプター(p75;(30);(31))と称される異なるクラスのレセ プターにも結合することができ、該レセプターは、膜貫通シグナリングの未知の 機構を有しているが、腫瘍壊死因子レセプター(TNFR)、CD40、OX40 、及びCD27を含むレセプター遺伝子ファミリーに構造的に関連している(3 2);(33);(34);(35);(36);(37)。ニューロトロフィンの高親和 性結合部位の形成及びシグナル伝達経路における、gp75の役割は、未だ明ら かではない(文献として(38);(39)を参照)。 ニューロトロフィンの一次アミノ酸配列の調査により、ファミリーのメンバー の間の配列の多様性の85%を説明する、それぞれ7−10残基の7個の領域が 明らかにされている。 神経成長因子(NGF)は、末梢神経系の感覚及び交感ニューロンを発達する ことに顕著な効果を有する120アミノ酸ポリペプチドホモダイマータンパク質 である。NGFは、ニューロンの生存を助け、軸索成長を促進し、及び神経化学 的分化を増大するために、応答ニューロン上の特異的な細胞表面レセプターを介 して機能する。NGF機能は、ニューロン膜(40)、(41)における、ニュー ロンタンパク質のリン酸化の状態(42)、(43)における、並びにニューロン の分化及び機能において役割を果たすと思われる特定のmRNA及びタンパク質 の富化(例えば(44)参照)における改変を伴う。 前脳コリン作用性ニューロンもNGFに応答し、栄養の補助のためにNGFを 必要とする(45)。実際、中枢神経系(CNS)におけるNGF及びそのレセプ ターの配置及び発生は、NGFが基底の前脳コリン作用性ニューロンに対する標 的由来神経栄養因子として機能することを示唆する(46)、(81)。 NT−3の転写は、広範囲の末梢組織(例えば腎臓、肝臓、皮膚)と同様に、 中枢神経系(例えば小脳、海馬)においても検出されている(5);(7)、(82) 。発育の間、NT−3mRNAの転写は、ニューロンの増殖、移動及び分化が生 じている、中枢神経系の領域において最も著しい(50)。ニューロンの発展にお ける役割についての証拠を支えることには、神経堤細胞(51)に対するNT− 3の促進効果、及びインビボにおける稀突起神経膠前駆細胞の増殖の刺激が含ま れる。NT−3はまた、結節性神経節(NG)由来の感覚ニューロン(7);(5) 、(83)及び脊髄神経節(DRG)由来の筋感覚ニューロンの集団(52)の 生存をインビトロでも助ける。これらのインビトロでの研究に加えて、最近の研 究により、アルツハイマー病で見出される細胞欠損のパターンに似たモデルで、 NT−3が青斑(locus coemlus)の成人中枢ノルアドレナリン性ニューロン の分解をインビボで妨げることが示された。 ヒトNT−3(101)並びにマウス及びヒトNGF(55;98)の高範囲 にわたる突然変異分析により、trkC及びtrkAのそれぞれに対する結合部 位が示唆された。いくつかのニューロトロフィンの三次元構造が、X線結晶解析 によって解明されている(29;93;96)。NGFにおいて、N末端残基はt rkAに対する親和性に顕著に寄与し、特異性に対する最も重要な決定因子を提 供する(55;101)。生物学的活性及びレセプター結合の顕著な欠損が、アミ ノ及びカルボキシ末端で修飾された相同な切り詰めた形態を表す、ヒト及びマウ スNGFの精製されたホモダイマーで観察された(47);(48);(49)。精製 組換えヒトNGFのN末端の最初の9残基及びC末端の最後の2残基の欠損から 導かれる109アミノ酸種(10−118)hNGFは、(1−118)hNG Fと比較してヒトtrkAレセプターからマウス[125I]NGFを解離させる ことにおいて300倍効率的ではない。(49)。それは、(1−118)hNG Fと比較して脊髄神経節及び交感神経節の生存において50から100倍活性が 低い(48)。(10−118)hNGFは、顕著に低いtrkAチロシンキナー ゼ自己リン酸化活性を有することが報告されている(49)。 NT−3について、trkCに対するエピトープは、中央のβ鎖束領域におけ る残基によって形成されているが、非保存的なループまたはN末端の最初の6残 基由来の残基を含まないことが示されている(101)。しかしながら、40−4 9残基(NGF残基数は本明細書を通じて使用されるであろう)を包含する非保 存的なβヘアピンループは、trkA/trkC特異性を介在することを示すが (94)、このループはtrkCのNT−3の結合には寄与しない(101)。しか しながら、特にtrkCに対する結合に関与するNT−3中の最も重要な残基、 R103が全てのニューロトロフィンで保存されているため、trkCの識別の 機構は不明である。 ニューロトロフィン特異性に対する構造的な決定因子の解明は、このファミリ ーの成長因子の機能及び進化を理解するために重要である。さらに、神経病変の モデルに対するニューロトロフィンの投与は、ニューロンの再生及び生存に対し て有益であることが示されている(97;103)。ニューロトロフィンは様々な 神経変性疾患に対する治療薬の候補となっているため、ニューロトロフィンの特 異性及び機能の構造的な機構の知見は、新規なニューロトロフィンベースの治療 薬の開発の助けになるであろう。 キメラまたは全ニューロトロフィン因子を作製する制限された試みが存在する ((53);(56);(54)、(55)を参照)。神経変性疾患に関与するニューロ ン集団は、一つ以上のtrkレセプターを発現し、それ故MNTS−1(101 )またはPNT−1(55)のような複数の特異性を有する分子の投与が、単一 の特異性を有するニューロトロフィンまたは単一の特異性を有するニューロトロ フィンの混合物の投与と比較して有利であろう。例えば、ニューロトロフィンの ファミリーの様々なメンバーが、異なる薬物生体反応を有し、それ故ニューロト ロフィン混合物の挙動は、予測されたものまたは制御されたものとは異なるであ ろう。一つ以上のニューロトロフィン活性を有し、及び/または改良された薬物 生体反応学的性質を有し、及び投与される準備が整い、有効性を維持しているニ ューロトロフィン分子に対する必要性が存在する。これらの及び他の利点は、こ こで提示される分子及び方法によって提供される。 要約 本発明は、NT−3の中央のβ鎖束の部分であり、ニューロトロフィンの間で 保存されていない特定の残基が、NGFに接合された場合trkC結合及びtr kCシグナル誘導活性を与えることができるという発見に一部基づく。NT−3 相補体による18,20,23,29,84及び89位のNGF残基の交換は、 trkAに対する親和性を維持する一方で、trkCに結合するNGF変異体を 導き、trkCを発現するPC12細胞の自己リン酸化および分化を誘導するこ とができた。これらのNGF変異体は、23位(NGFにおいてグリシン/NT −3においてトレオニン)でのアミノ酸はtrkC認識にとって必須であり、そ の一方で他の残基はtrkCに対するNT−3の特異性を微調整する。この結果 により、trkCとのNT−3の相互作用に対する中央のβ鎖束領域の非保存的 な残基の重要性が示され、NT−3/trkCおよびNGF/trkAリガンド /レセプターペアで使用される特異性の決定因子の異なる機構が強調される。 従って、trkC結合及びシグナル誘導活性を有するNGF変異体が提供され る。NGF変異体は、任意にtrkA結合及びシグナル誘導活性を有し、及び任 意にtrkB結合及びシグナル誘導活性を有する。一つの実施態様として、該変 異体はtrkA及びtrkC活性の両者を有する。もう一つの実施態様として、 該変異体はtrkC活性を有するが、trkA活性を欠いている。NGF変異体 のアミノ酸配列は、典型的には天然のNGF配列である元となるNGFアミノ酸 配列の一つ以上のアミノ酸の置換、挿入または欠失によって得られる。好ましく は、NGFは、天然で生じる哺乳動物NGFである。最も好ましくは、それはヒ トNGFである。NGF変異体は、それが得られたNGFの元の分子と少なくと も75%のアミノ酸配列同一性を典型的に維持するであろう。これらのNGF変 異体の実質的な量は、組換えDNA法を使用して提供される。 さらに、本発明の一面として、NGF変異体をコードする組換え核酸、並びに これらの核酸を含む発現ベクター及び宿主細胞が提供される。 本発明のさらなる一面として、本発明の核酸、ベクター及び宿主細胞を使用す る方法を含む、NGF変異体を生産する方法が提供される。一つの実施態様とし て、NGF変異体をコードする核酸を含む発現ベクターを使用して形質転換され た宿主細胞が、組換えNGF変異体を生産するために核酸の発現が可能となるよ うに培養される。 さらに、本発明のNGF変異体を使用する、哺乳動物のニューロン疾患を治療 するための方法及び組成物が提供される。 神経変性疾患に関与するニューロン集団は、一つ以上のtrkレセプターを発 現するので、ここでのNGF変異体のような、複数の特異性を有する分子の投与 は、単一の特異性を有するニューロトロフィンまたは単一の特異性を有するニュ ーロトロフィンの混合物の投与と比較して有利である。例えば、ニューロトロフ ィンのファミリーの様々なメンバーが、異なる薬物生体反応を有し、それ故、ニ ューロトロフィン混合物の挙動は、ここでのNGF変異体のものとは対照的に予 測または制御し難い。神経病変モデルは、ニューロンの再生及び生存におけるニ ューロトロフィン活性を調べるために利用可能である(97;103)。 本発明の他の利点及び面は、以下の詳細な説明、図面、及び請求の範囲から明 らかとなるであろう。 図面の簡単な説明 図1は、ニューロトロフィン/trkレセプター相互作用の特異性を示す図表 である。 図2は、ヒトNGF及びヒトNT−3の配列のアライメントを示す。NGF配 列に対して与えられる残基数は、本出願を通じて使用されている。星印は、本研 究で分析された変異体において突然変異されたNGF残基を強調する。横線は、 ネズミNGFのX線構造におけるβ鎖の位置を示す(59)。 図3AはヒトNT−3のモデルを表し、図3BはネズミNGFの結晶構造を示 す。各ニューロトロフィンの二つのモノマーが、濃淡で示されている;NGF淡 色モノマーにおける残基数は、*によって表されている。特徴的な残基について 、側鎖の酸素原子は赤色に、側鎖の窒素原子は青色に示されている。103残基 (NGFとNT−3の両者においてArg)は紫色である。NT−3相補体を使 用して置換され、結合及び特異性に影響するNGF残基は黄色である;結合及び 特異性に影響しない残基は緑色である。NGF結晶構造に見られる最初の残基( 10残基)は茶色である。特異性に影響すると以前に提案されていた(94)可 変βヘアピンループ(40−49残基)は青緑色で示されている。 図4A及び4Bは、ラットtrkCを発現するPC12細胞におけるtrkA のチロシンリン酸化を表す。細胞を5分間、100ng/mlのそれぞれのニュ ーロトロフィンを使用して処理する。溶解物を細胞タンパク質について等量化し 、抗trkA特異的ポリクローナル抗血清を使用して免疫沈降し、7.5%SD S−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した。チロシンリン酸化を、抗ホスホ チロシンmAb 4G10を使用して検出した。NGF/P、精製されたNGF ;NGF/U、NGF発現293細胞の濃縮上清;NT−3/P、精製されたN T−3:NT−3/U、NT−3発現293細胞の濃縮上清;0,偽処理化29 3細胞。図4A及び4Bは、上記各レーンに挙げたニューロトロフィンを使用し た二 つの別々の実験からの結果を示す。 図5A、5B及び5Cは、ラットtrkCを発現するPC12細胞におけるt rkCのチロシンリン酸化を表す。細胞を5分間、100ng/mlのそれぞれ のニューロトロフィンを使用して処理する。溶解物を細胞タンパク質について等 量化し、抗trkC特異的抗血清656を使用して免疫沈降し、7.5%SDS ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した。チロシンリン酸化を、抗ホスホチロ シンmAb 4G10を使用して検出した。NGF/P、精製されたNGF;N GF/U、NGF発現293細胞の濃縮上清;NT−3/P、精製されたNT− 3;NT−3/U、NT−3発現293細胞の濃縮上清;0,偽処理化293細 胞。図5A、5B及び5Cは、上記各レーンに挙げたニューロトロフィンを使用 した三つの別々の実験由来の結果を示す。 発明の詳細な説明 定義 アミノ酸に対する一文字コードは、以下の表1に従って本分野で周知なように ここで使用される: 表1 それ故、アミノ酸残基の識別は、一文字のアミノ酸コード、引き続き該残基の 位置数で表記される。位置数は、特定のニューロトロフィン骨格に相当するもの と理解される;それ故、D15A NT3は、NT3の15位のアスパラギン酸 が、アラニンに変化することを意味する。以下に定義される「定常領域」内に見 出されるこのアスパラギン酸は、NGFはN末端で一つのさらなるアミノ酸を有 するため、NGFのD16位に相当する。 本発明は、trkC結合及びシグナル誘導活性を有するニューロトロフィンN GF変異体を提供する。一般的にニューロトロフィンは、神経系、特にニューロ ンの発達、再生及び維持に関与するタンパク質である。現在では、いくつかの周 知の重要な神経栄養因子が存在する:神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィ ン−3(NT3)、ニューロトロフィン−4(NT4、また場合によりニューロト ロフィン−5(NT5)またはNT4/5とも呼ばれる)、脳由来神経栄養因子( BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)及びNT−6。 ここでの用語、「NGF変異体」は、天然で生じるNGFとは異なり、trk C結合及びtrkCシグナル誘導に対するNT−3のニューロトロフィン特異性 を 有するニューロトロフィンを意味する。つまり、該変異体はこれらのNT−3活 性を与えるまたは授ける変化を含む。一つの実施態様としてこれは、本発明のN GF変異体が少なくともtrkCに結合し、任意に好ましくはtrkA及び/ま たはtrkBといった様々なニューロトロフィンレセプターに結合することを意 味する。それ故例えば、trkAレセプターに対する天然のまたは本来のリガン ドである天然で生じるNGFは、高い親和性を有してtrkBまたはtrkCレ セプターのそれぞれに対して検出できるようには結合しない;例えばNGFは、 BDNFまたはNT−3のそれぞれよりも、500−3000倍高いKDを有し てこれらのレセプターに結合する。しかしながらNGF変異体、すなわちそのア ミノ酸骨格がNGFに基づくニューロトロフィンは、少なくともtrkCに結合 することができる。一つの実施態様として、NGF変異体は、trkC及びtr kAに結合するが、trkBには結合しない。好ましい実施態様として、それは trkCに結合するが、trkAまたはtrkBには結合しない。代わりに一つ の実施態様として、該変異体はtrkA、trkB及びtrkC、同様にp75 レセプターに結合する。もう一つの実施態様として、該変異体はtrkC及びt rkBに結合するが、trkAには結合しない。 一つの実施態様として、NGF変異体は、NGFについて天然で見出されるも のより高い親和性を有してtrkA以外のレセプターに結合し、親和性は実質的 にそのレセプターの天然のリガンドのものである。例えば、NGFはtrkAに 強力に結合し、trkB及びtrkCには非常に弱く結合するかまたは全く結合 しない。それ故、一つのNGF変異体の実施態様は、正常なまたは実質的に正常 な結合親和性を有してtrkAに結合し、trkCの天然のリガンド、NT−3 と実質的に同様な親和性を有してtrkCに、またはtrkBの天然のリガンド 、BDNFまたはNT4/5または両者と実質的に同様な親和性を有してtrk Bに結合する。 一つの実施態様として、ニューロトロフィンレセプターに対してNGF変異体 は、trkCに対するNT−3と比較して約50倍以下に減少した、好ましくは 約20倍未満に減少した、さらに好ましくは約15倍未満に減少した、よりさら に好ましくは約10倍未満に減少した、そしてまたよりさらに好ましくはtrk Cに対するNT−3より約5倍未満に減少したtrkCに対する結合親和性を示 す。もう一つの実施態様として、NGF変異体は、NT−3よりも約3倍未満の trkCに対する親和性を有するであろう。NGF変異体は、NT−3と同様の または実質的に同様の親和性を有することができ、若しくはそれらはNT−3よ り10倍以下の高い活性を有することができる。上記親和性の比較は、BDNF と比較したNGF変異体trkB結合にも適用される。 この親和性は、当業者に理解される様々な方法によって測定される。好ましい 方法は、(84)及び実施例中で示されている競合アッセイの使用である。一般 的に結合親和性は、IC50、つまりレセプターに対する標識化リガンドの結合の 50%を阻害する非標識競合物の濃度として記録される。 代わりの実施態様として、ニューロトロフィン活性は、ニューロトロフィンレ セプターに対する結合親和性によってではなく、むしろニューロン生存アッセイ または軸索成長アッセイによって測定される。これは、trk細胞シグナリング に対する変異体の能力を示す。それ故、多くのニューロトロフィンが、胚神経堤 由来感覚ニューロンの生存を助長する(77)、(78)、(7)、(17)。胚交感ニ ューロンの生存はNGFによってのみ助長される一方で、プラコード由来感覚ニ ューロンの生存はNT−3及びBDNFによって助長される(85)。脊髄神経節 の感覚ニューロンは、NGFとBDNFの両者によって助長される(13)。NT −3は、脊髄神経節、交感神経鎖神経節、及び結節神経節由来の感覚ニューロン の軸索成長を導き、同様に結節神経節ニューロン及び脊髄神経節ニューロンの生 存を助長する。それ故、ニューロン生存アッセイまたは軸索成長アッセイは、N GF変異体ニューロトロフィンの活性を測定するために機能することができる。 運動ニューロンの生存は、もう一つの好ましいNGF変異体活性である。 一つの好ましい実施態様として、NGF変異体の活性は、trkCを発現する PC12細胞の分化を刺激する能力によって測定される。trkCを発現するP C12細胞(26;100)は、コラーゲン被膜組織培養皿上に置かれ、軸索所 有細胞の集団に対してアッセイすることができる。軸索所有細胞は、3日後の細 胞体の長さが少なくとも2倍になる工程を含むものとして定義される。代わりに 、trkBを発現するPC12細胞を、trkBシグナル誘導活性に対して試験 す るために使用することができ、trkAを発現するPC12細胞を、trkAシ グナル誘導活性に対して試験するために使用することができる。好ましいNGF 変異体は、培地中で同じ濃度で比較した場合、最も好ましくは最大の応答に必要 なNT−3の濃度で比較した場合、少なくとも約25%のNT−3の最大の応答 、より好ましくは約50%、さらにより好ましくは約75%、またさらにより好 ましくは約90%、最も好ましくは約100%の最大のNT−3応答で軸索成長 を達成するであろう。例えば表4中で、好ましい比較は、培地のml当たりの因 子の1ナノグラムでなされる。 それ故、ニューロトロフィン特異性は、ニューロトロフィンレセプター結合、 及びニューロン生存アッセイ及び/または軸索成長アッセイによって測定される 。それ故、ここで定義されるNGF変異体は、少なくともNT−3の結合性質、 ニューロン生存アッセイ特異性、または軸索成長アッセイ特異性を示すニューロ トロフィンNGFである。任意に、BDNFまたはNT4/5特異性を有するN GF変異体は、NT−3活性について議論された向性を有して、BDNFまたは NT4/5のそれぞれの少なくとも結合特異性、ニューロン生存アッセイ特異性 、または軸索成長アッセイ特異性を示し、例えばそれはBDNFの少なくとも約 25%の最大の応答、より好ましくは約50%での軸索成長等である。 trkC結合及びシグナル誘導活性を有するNGF変異体は典型的に、それが 由来するNGFの元となる分子と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を維持 するであろう。他の実施態様として、該NGF変異体は、それが由来するNGF の元となる分子と好ましくは80%の同一性、より好ましくは少なくとも90% の同一性、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を維持するであろう。 NT−3上のtrkC結合部位は、中央のβ鎖束領域における残基によって占 められているので、trkCは他のニューロトロフィンからNT−3を区別する ためにこの一連の残基を認識すると仮定された(101)。本研究において、この 構造領域に位置する一連の5個の残基を、ヒトNT−3からヒトNGFに変換し た(図2)。trkCに結合する、生じたNGF変異体G23T/V18E/V2 0L/T81K/H84Q(NGF12)はtrkAに対する親和性を維持し、 trkCを発現するPC12細胞の自己リン酸化および分化を刺激した。さらな る突然変異誘発により、特異的なtrkC結合に対する最も重要な決定因子が2 3位及び84位に位置し、18,20,29及び86位の残基がtrkCに対す る特異性を微調整することが明らかにされた。これらの結果は、trkCとのN T−3の相互作用のための中央のβ鎖束領域の非保存的な残基の重要性によって 、NT−3/trkC及びNGF/trkAリガンド/レセプターペアにおいて 使用される特異性の決定因子の異なる機構が強調され、短いアミノ酸「活性部位 」とは対照的にニューロトロフィンの全体の構造が、ニューロトロフィン特異性 を決定することを支持することを示す(56)。 本発明のNGF変異体は、trkCを結合し、レセプターシグナリングを誘導 するNGF変異体を得るために、trkC結合を与えるまたは補充するG23, H84およびV18またはV20のいずれか(または両者)のアミノ酸位置での 置換によってNGFから得ることができる。好ましい実施態様として、V20が 置換される。任意にさらに、NGF変異体は、NT−3特異性を増大または微調 整することができるF86,T81またはT29の置換をさらに含むことができ る。好ましいNGF変異体は、実施例(表3参照)に提供されるようなヒトNG F配列における置換を有するNGF130,NGF131,NGFR2及びNG FR3を含む。trkC結合を得るために、これらの部位での好ましい置換は、 G23T、H84Q、V18E、V20L、F86Y、T81K及びT29Iで ある。しかしながら、例えば保存的及び相同的な一連の置換といった、trkC 結合及びシグナル誘導活性を補充するこれらの部位での他の置換をなすことがで きる。例えばV18は、好ましい置換の保存的なものまたは相同体一例えばtr kC結合を増大するためにアスパラギン酸またはグルタミンを使用したグルタミ ン酸の置換−であるアミノ酸置換を使用して置換することができる。V20は、 trkC結合を増大するために、トレオニンまたはより大きい疎水性アミノ酸( イソロイシン、メチオニン)を使用して置換することができる。G23は、セリ ンまたはアラニンを使用して置換することができる。T29は、イソロイシン、 バリンまたはロイシンを使用して置換することができる。好ましくは、T29I は、F86Yが存在する場合に存在する。H84は、アスパラギンまたはグルタ ミンを使用して置換することができる。F86は、trkC結合に影響するため に、メチオニンまたはトリプトファンを使用して置換することができる。 trkC補充を微調整するために、実質的なtrkC結合を補充するように置 換されていない中央のβ鎖束における天然のNGFアミノ酸は、好ましくはこの 場合維持される。しかしながらあまり好ましくはない置換も存在する:18位の バリンは、ロイシンまたはトレオニンを使用して保存的に置換することができ、 V20は、アラニンを使用して置換することができ、T29は、セリンを使用し て置換することができ、そしてT81は、アルギニン、イソロイシン、バリン、 ロイシンまたはセリンを使用して置換することができる。Y79は、グルタミン 、フェニルアラニン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、トリプトファンま たはアスパラギンを使用して置換することができるが、好ましくはY79は維持 される。 さらにNGF変異体は、trkCに加えてtrkBをも結合するNGF変異体 を生産するためにtrkB結合を補充するまたは与えるNGF配列に対する修飾 を含むことができる。該修飾は、該分子に対するいかなる化学的変化でもあり得 る。修飾には、置換、挿入、欠失、及び脱アミド化、アセチル化、アシル化、P EG化、リン酸化、ミリスチル化および酸化を制限することなく含む化学的修飾 が含まれる。好ましい修飾は、D16でのアミノ酸置換である。好ましい変異体 は、D16A置換を有する。D16A NGFを開示する1995年12月14 日に印刷された国際特許出願WO 95/33829は、参考としてここに取り 込まれる。D16での他のアラニン保存的置換は、trkB結合を得るために成 され得る。ある実施態様として、特定のニューロトロフィンに依存するであろう ニューロトロフィン特異性を与えることができるニューロトロフイン内の一つ以 上のドメインが存在する。例えばBDNFは、BDNF特異性を与えると思われ る数多くのドメインを有する。例えば93−99位(SKKRIG)由来のBD NF配列の置換は、NGFにおけるBDNF特異性を与えるであろう(55)。 NGFは、修飾された場合NGF特異性に影響することができる数多くのドメ インを有する。NGFのN末端アミノ酸は、trkA結合に対して影響のあるN GFにおける主要な領域である。生物学的活性及びレセプター結合の顕著な損失 が、ヒト及びマウスNGFの精製されたホモダイマーを使用して観察され、アミ ノ及びカルボキシ末端で修飾された相同な切り詰められた形態を表す。精製組換 えヒトNGFのN末端の最初の9残基及びC末端の最後の2残基の損失から導か れる109アミノ酸種(10−118)hNGFは、(1−118)hNGFと 比較してヒトtrkAレセプターからマウス[125I]NGFを置換するのに3 00倍のより小さい有効性を有する。それは、(1−118)hNGFと比較し て脊髄神経節及び交感神経節の生存において50から100倍不活性である。N GF変異体は、trkA結合を減少または除去するために10アミノ酸N末端領 域の修飾を含むことができる。一つの実施態様として、NGFの7個のN末端ア ミノ酸(SSSHPIF)が、例えば減少または損失したtrkA結合活性を有 するNGF変異体を得るために、欠失またはNT−3のN末端アミノ酸(YAE HKS)を使用して置換することができる。約4個から約10個のN末端残基が 交換された場合、修飾されたNGF N末端残基の正確な数は必須ではないが、 ある実施態様として、単一のアミノ酸変化が重要であろう。一つの実施態様とし て、10個のN末端アミノ酸の少なくとも一つが、trkA結合を減少または除 去するために欠失または置換される。修飾の特に好ましい位置は、NGF特異性 に非常に重要であると思われる4位のアミノ酸のヒスチジン、同様に5位のプロ リンである。同様に、NGFの他の残基の数は、NGF trkAレセプター結 合、同様に生物学的活性アッセイにおいて重要であることが示されている。例え ば、突然変異させた場合、NGF活性を喪失する数多くの残基が存在する。これ らの残基には、D30,Y52,R59,R69およびH75が制限されること なく含まれる。アラニンを、trkA結合を破壊するためにこれらの位置で置換 することができる一方、該位置でのアミノ酸に対して非保存的な他のアミノ酸も また、使用することができる。NGF活性を喪失したNGF変異体を開示する1 995年12月14日に印刷された国際特許出願WO 95/33829は、参 考としてここに取り込まれる。trkB補充修飾は、trkC及びtrkBの両 者を結合するが、trkAは結合しない変異体を生産するためにtrkA減少修 飾と組み合わせることができる。 V18,V20,G23,H84及びF86,Y79またはT81のいずれか 若しくはこれらの三つのいずれかの組み合わせのアミノ酸位置でtrkC補充 置換を有するNGFを含むNGF変異体もまた提供され、この場合該変異体はt rkCを結合する。好ましい実施態様として、これらの変異体は、trkC結合 活性を増大または微調整するためにT81及びF86の両者で置換される。さら にNGF変異体は、T29の置換を含むことができる。置換には、G23T、G 23A、Y79Y、Y79Q、Y79F、Y79I、Y79L、Y79W、Y7 9N、H84Q、H84N、V18E、V18D、V18Q、V20L、V20 T、V20I、V20M、F86Y、F86W、T81K及びT29Iを含むこ とができる。しかしながら、trkC結合及びシグナル誘導活性を与えるこれら の位置での他の置換、例えば保存的及び相同な一連の置換をなすことができる。 好ましい置換は、G23T、H84Q、V18E、V20L、F86Y、T81 K及びT29Iであり、79位ではYが好ましい。このタイプの好ましいNGF 変異体には、NGF126,NGF1234,NGF124,NGF125,N GF12,NGFR4及びNGF123,及びNGF127が含まれ、ヒトNG Fにおける特異的なアミノ酸置換は、実施例の表3に提供される。 NGFは、120アミノ酸ポリペプチドホモダイマータンパク質である。NG Fは120の形態で生産することができる一方、NGF変異体のより好ましいパ ターンまたは骨格は、118アミノ酸形態であり、好ましくはダイマー形態であ る。118形態において、R119及びA120は存在しない。この形態は、1 18NGFコード核酸を使用した発現によって、または120形態の選択的な翻 訳後タンパク質溶解、例えばトリプシンを使用して得ることができる。もう一つ の実施態様として、117NGF形態が、NGFのパターンまたは骨格として機 能することができる。NGF変異体及び生理学的に許容できる担体を含む組成物 もまた提供される。 さらに、上述の残基の近傍における残基は、NT−3特異性を増大するまたは 微調整することもできる。ある実施態様として、定常領域における変化は、NT 3特異性を与えることもある。代わりに、trkCに対するNT−3結合の増大 を引き起こすNT−3におけるR31及びE92位での突然変異、特にR31A 及びE92A NT3は、以下に記載された方法を使用して、NGFにおける相 当する位置内に取り込むことができる。 さらに、NGF結合及び/または生物学的活性を増大するNGFにおける数多 くのアミノ酸置換が存在する。従って、これらの置換は、NGF特異性を増大す るためのNGF変異体骨格中に含まれる。これらの残基には、E11,F12, D24,E41,N46,S47,K57,D72,N77,D105及びK1 15が制限されることなく含まれる。アラニンは、trkA結合を維持または増 大するためにこれらの位置で置換することができる一方、アラニンまたはその位 置でのアミノ酸に保存的な他のアミノ酸もまた使用することができる。以下に概 略を示す。 ニューロトロフィン特異性において重要である残基は、実施例で記載された方 法、及び部位特異的突然変異誘発として周知の方法を使用して、他のアミノ酸残 基のいずれかによって置換することができる。一般的に、置換されるアミノ酸は 、当業者に理解されている特性に基づいて選択される。例えば、特性における小 さな改変が要求される場合、置換は一般的に以下の表に従ってなされる: 表2 機能における実質的な変化または免疫学的同一性は、表1に示されたものより 保存性でない置換を選択することによってなされる。例えば、より顕著に影響す る置換がなされる:改変の領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えばアルフ ァヘリックスまたはベータシート構造;標的部位での該分子の電荷または疎水性 度;または側鎖の大きさ。一般的にポリペプチドの性質における最大の変化を生 ずると予測される置換は、(a)親水性残基、例えばセリルまたはトレオニルを 、疎水性の残基、例えばロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルま たはアラニルで(またはそれらによって)置換すること;(b)システインまた はプロリンをいずれかの他の残基で(またはそれらによって)置換すること;( c)正電荷の側鎖を有する残基、例えばリシル、アルギニルまたはヒスチジルを 、負電荷残基、例えばグルタミルまたはアスパルチルで(またはそれらによって )置換すること;若しくは(d)大きな側鎖を有する残基、例えばフェニルアラ ニルを、側鎖を有さないもの、例えばグリシルで(またはそれらによって)置換 することである。好ましい実施態様として、残基はアラニン残基に変化される。 さらに、相同的走査突然変異誘発、ランダム突然変異誘発、カセット突然変異 誘発が、推定のNGF変異体を生産するために全て使用することができ、それか ら実施例に記載された方法及び本分野で周知の方法を使用して、レセプター結合 に対してスクリーニングされる。 ここでの用語、「ニューロトロフィンレセプター」または文法的な類義語は、 ニューロトロフィンリガンドを結合するレセプターを意味する。ある実施態様と して、ニューロトロフィンレセプターは、一般的に「trk」レセプターと称さ れるチロシンキナーゼファミリーのレセプターのメンバーであり、それは別個の ニ ューロン集団の表面で発現される。trkファミリーには、trkA(p140t rk としても知られる);trkB(p145trkBとしても知られる);trkC( p145trkCとしても知られる)が制限されることなく含まれる。他の実施態様 として、ニューロトロフィンレセプターはp75NGFRであり、それはp75また は低親和性神経成長因子レセプター(LNGFR)とも称される。他の未だ発見 されていないニューロトロフィンレセプターもまた、本発明のNGF変異体ニュ ーロトロフィンに結合できることが理解され、それは当業者によって容易に確認 できる。 一つの実施態様として、NGF変異体によるp75レセプターに対する結合は 、実質的に減少または除去されている。例えば、突然変異が減少したp75結合 を導くp75結合に寄与する様々なアミノ酸残基が存在する。NGFにおいて、 F12,131,K32,K34,K50,Y52,R69,K74,K88, L112,S113,R114及びK115位での突然変異は、全て減少したp 75結合を引き起こす。F12,131,K50,Y52,R69及びK74は 全て定常領域内に存在する。 上記記載したアミノ酸に加えて、当業者は、アミノ酸配列のいくつかの可変性 が、ニューロトロフィンの特異性及び特徴を改変することなく許容されることを 理解するであろう。それ故、NGF変異体は、trk結合に影響することはない が単に該配列の変異型である野生型配列と比較して、アミノ酸の置換、挿入また は欠失を有することができる。ある実施態様として、これらの突然変異は、特異 性に対して重要であると同定されたものと同じ位置内で見出されるであろう、す なわちある場合、中立の突然変異が、ニューロトロフィンの特異性を変化するこ となくなされるであろう。 本発明のNGF変異体ニューロトロフィンは、組換え法を使用して、様々な方 法で作成することができる。ここでの用語、「組換え核酸」は、天然では通常見 出されない形態における核酸を意味する。つまり、組換え核酸は、核酸を天然で は接合されないヌクレオチド配列によって接合する、または天然では通常見出さ れない配列を有する。組換え核酸は、もともと制限エンドヌクレアーゼによる核 酸の操作によってインビトロで形成され、または代わりにポリメラーゼ連鎖反応 の ような方法を使用して形成することができる。一度組換え核酸が作製され、宿主 細胞または生物内に再導入されると、それは非組換え的に複製される、すなわち インビトロの操作よりむしろ宿主細胞のインビボの細胞機構を使用して複製され るであろうことが理解される;しかしながら、一度組換え的に生産された上記核 酸は、実質的に非組換え的に複製されるが、本発明の目的のために未だ組換え体 と考えられる。 同様に、用語、「組換えタンパク質」は、組換え法を使用して、すなわち上記 記載のような組換え核酸の発現を通じて作製されたタンパク質である。組換えタ ンパク質は、少なくとも一つ以上の特徴によって天然で生じるタンパク質とは区 別される。例えば、該タンパク質は、野生型宿主に通常それが関連しているいく つかのまたは全てのタンパク質及び化合物から単離される。該定義には、同じま たは異なる生物または宿主細胞における一つの生物からのNGF変異体ニューロ トロフィンの生産が含まれる。例えば、該タンパク質は、その増大したレベルが 作製されるような誘導可能または高発現プロモーターの使用を通じて、通常見出 されるよりも顕著に高い濃度で、それが由来する同じ生物において作製される。 代わりに、該タンパク質は、エピトープ標識またはアミノ酸置換、挿入及び欠失 を加えることのような、天然では通常見出されない形態で存在するであろう。 NGF変異体ニューロトロフィンをコードする本発明の核酸を使用して、様々 な発現ベクターが作製される。発現ベクターは、自己複製染色体外ベクター、ま たは宿主ゲノム内に挿入するベクターのいずれかである。一般的に、発現ベクタ ーには、NGF変異体ニューロトロフィンをコードする核酸に機能的に連結した 転写及び翻訳調節核酸が含まれる。本文脈で用語、「機能的に連結した」とは、 転写が開始される態様のように、転写及び翻訳調節DNAがNGF変異体ニュー ロトロフィンのコード配列に関して位置することを意味する。一般的にこれは、 プロモーター及び転写開始またはスタート配列が、NGFニューロトロフィンコ ード領域に対して5’側に位置することを意味するであろう。転写及び翻訳調節 核酸は一般的に、NGF変異体ニューロトロフィンを発現するために使用される 宿主細胞に対して適切なものであろう;例えば、哺乳動物細胞に対する転写及び 翻訳調節核酸配列は、哺乳動物細胞においてNGF変異体ニューロトロフィンを 発 現するために使用される。数多くのタイプの適切な発現ベクター及び適切な調節 配列が、様々な宿主細胞に対して本分野で周知である。 一般的に、転写及び翻訳調節配列には、プロモーター配列、シグナル配列、リ ボソーム結合部位、転写開始及び終結配列、翻訳開始及び終結配列、ターミネー ション及びポリAシグナル配列、及びエンハンサーまたはアクチベーター配列が 制限されることなく含まれる。好ましい実施態様として、調節配列には、プロモ ーター並びに翻訳開始及び終結配列が含まれる。組換え脊椎動物細胞培養物にお けるNGF変異体の合成に対する応用のための適切な方法、ベクター及び宿主細 胞は、Gething等,Nature,293:620-625(1981);Mantei等,Nature,281:40-46(1979) ;欧州特許出願EP 117,060;及び欧州特許出願EP 117,058に記載されている。NG F変異体の哺乳動物細胞培養発現のための特に有様なプラスミドは、pRK5( 欧州特許出願EP 307,247)、pRK7またはpSV16Bである。1991年6 月13日に印刷された国際特許出願WO 91/08291は、参考としてここに取り込ま れる。 プロモーター配列は、構成的または誘導可能プロモーターのいずれかをコード する。一つ以上のプロモーターの要素を組み合わせるハイブリッドプロモーター もまた本分野で周知であり、本発明において有用である。 さらに発現ベクターは、さらなる要素を含むであろう。例えば発現ベクターは 、二つの複製系を有し、それ故二つの生物において、例えば発現のために哺乳動 物細胞において、並びにクローン化及び増幅のために原核生物宿主において維持 することが可能である。さらに組み込み発現ベクターについては、発現ベクター は、宿主細胞ゲノムに相同な少なくとも一つの配列、好ましくは発現構築物の両 端に並んだ二つの相同な配列を含む。組み込みベクターは、ベクター内の挿入物 に対して適切な相同な配列を選択することによって宿主細胞における特異的な部 位に向けられる。組み込みベクターのための構築物は、本分野で周知である。 さらに好ましい実施態様として、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の 選択を許容する選択可能マーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は本分野で周知であ り、使用される宿主細胞について多様である。 本発明のNGF変異体ニューロトロフィンは、NGF変異体ニューロトロフィ ンの発現を誘導または導く適切な条件の下で、NGF変異体ニューロトロフィン をコードする核酸を含む発現ベクターを使用して形質転換された宿主細胞を培養 することによって生産される。NGF変異体ニューロトロフィンの発現のための 適切な条件は、選択される発現ベクター及び宿主細胞によって変化し、当業者に 容易に確立されるであろう。例えば、発現ベクターにおける構成的プロモーター の使用には、宿主細胞の成長及び増殖を最適化することが必要とされ、一方で誘 導可能または抑制的プロモーターの使用には、誘導または抑制のために適切な増 殖条件が必要とされる。 好ましい実施態様として、NGF変異体ニューロトロフィンは、発現の後に精 製または単離される。NGF変異体ニューロトロフィンは、サンプル中に存在す る他の構成成分に依存して、当業者に周知の様々な方法において単離または精製 される。標準的な精製法には、電気泳動、イオン交換、ハイブリッド、アフィニ ティー及び逆相HPLCクロマトグラフィーを含む分子的、免疫学的及びクロマ トグラフィー的方法、クロマトフォーカシングが含まれる。タンパク質濃縮物に 連結した限外濾過及び二重濾過法もまた有用である。適切な精製法における一般 的な手順としては、(57)を参照。必要とされる精製の程度は、NGF変異体 ニューロトロフィンの使用に依存するであろう。いくつかの場合には、精製は必 要とされないであろう。 適切な宿主細胞には、酵母、細菌、古細菌、糸状菌のような真菌、並びに植物 細胞及び哺乳動物細胞を含む動物細胞が含まれる。特に興味あるものは、Saccha romyces cerevisiae及び他の酵母、大腸菌、枯草菌、Pichia pastoris,SF9 細胞、C129細胞、293細胞、Neurospora及びCHO、COS、HeLa細 胞、固定化哺乳動物ミエロイド及びリンパ細胞系である。好ましい宿主細胞は哺 乳動物細胞であり、最も好ましい宿主細胞には、CHO細胞、COS−7細胞、 及びヒト胎児腎細胞系293が含まれる。 好ましい実施態様として、本発明のNGF変異体ニューロトロフィンは、哺乳 動物細胞で発現される。哺乳動物発現系もまた本分野で周知である。 いくつかの遺伝子は、イントロンが存在する場合より効率的に発現される。し かしながら、いくつかのcDNAは、スプライシング配列を欠くベクターから効 率的に発現されている。それ故、いくつかの実施態様においては、NGF変異体 ニューロトロフィンをコードする核酸はイントロンを含む。 哺乳動物宿主、同様に他の宿主内に外来の核酸を導入する方法は本分野で周知 であり、使用される宿主によって変化し、そしてデキストラン介在トランスフェ クション、リン酸カルシウム沈降、ポリブレン介在トランスフェクション、プロ トプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム内へのポリヌクレオチド のカプセル化、及び核内へのDNAの直接マイクロインジェクションが含まれる 。 一つの実施態様として、NGF変異体ニューロトロフィンは酵母細胞で生産さ れる。酵母発現系は本分野で周知であり、Saccharomyces cerevisiaeに対する発 現ベクターが含まれる。Candida albicans及びC.maltasa,Hansenula polymorpha ,Kluyveromyces fragilis及びK.lactis,Pichia Guilerimondii及びP.pastoris,S chizosaccharomyces pombe及びYarrowia lipolyticaに対する発現ベクターが含 まれる。酵母宿主、同様に他の宿主内に外来核酸を導入する方法は本分野で周知 であり、使用される宿主細胞によって変化するであろう。 好ましい実施態様として、NGF変異体ニューロトロフィンは、細菌系におい て発現される。細菌のための発現ベクターは本分野で周知であり、枯草菌、大腸 菌、Streptococcus cremoris及びStrcptococcus lividans及び他のものに対する ベクターが含まれる。細菌発現ベクターは、塩化カルシウム処理、エレクトロポ レーション、及び他の方法のような本分野で周知の方法を使用して細菌宿主内に 形質導入される。 一つの実施態様として、NGF変異体ニューロトロフィンは、昆虫細胞におい て生産される。昆虫細胞の形質転換のための発現ベクター、特にバキュロウイル ス−ベースの発現ベクターが、本分野で周知である。バキュロウイルス/昆虫細 胞発現系のための物質及び方法は、キットの形態で商業的に入手可能である;例 えばSan DiegoにおけるInvitrogcn社製の”MaxBac”キットが挙げられる 。 組換えバキュロウイルス発現ベクターは、いくつかの昆虫細胞内への感染のた めに開発されている。例えば、組換えバキュロウイルスは、Aedes acgypti,Auto grapha califomica,Bombyx mori,Drosophila melangaster,Spodoptera frugiper da及びTrichoplusia niに対して開発されている。 一度発現されると、NGF変異体ニュートロフィンは、神経栄養因子として使 用される。これらのNGF変異体ニューロトロフィンは、様々な診断及び治療上 の応用において利用される。NGF変異体はまた、動物の食料としても使用可能 である。 本発明のNGF変異体ニュートロフィンは、ニュートロフィンレセプターを検 出する診断方法において有用である。例えば、本発明のNGF変異体ニュートロ フィンは標識することができる。ここでの用語、「標識されたNGF変異体ニュ ートロフィン」は、NGF変異体ニユートロフィンまたはニュートロフィンレセ プターに結合したNGF変異体ニュートロフィンの検出を可能にするように付着 した放射性同位元素または化合物である、少なくとも一つの要素を有するNGF 変異体ニュートロフィンを意味する。一般的に、標識は三つのクラスに分類され る:a)放射性同位元素または重同位元素である同位元素標識;b)抗体または 抗原である免疫学的標識;及びc)色素または蛍光染料。標識はいずれかの位置 でNGF変異体ニューロトロフィン内に取り込まれる。一度標識化されると、N GF変異体ニューロトロフィンは、インビトロまたはインビボのいずれかで、ニ ューロトロフィンレセプターを検出するために使用される。例えば、ニューロト ロフィンレセプターの存在は、特定の細胞タイプの存在の指標となり得、診断に おいて有用である。つまり、特定の細胞タイプの二次集団は、レセプターを介し て該細胞に標識化されたNGF変異体ニューロトロフィンを結合することによっ て示される。 さらに、本発明のNGF変異体ニューロトロフィンは、ニューロトロフィンア ッセイの標準として有用である。例えば、いずれかの特定のアッセイにおけるN GF変異体ニューロトロフィンの活性は、周知のニューロトロフィン標準を使用 して測定され、それからNGF変異体ニューロトロフィンを、ニューロトロフィ ンの診断及び定量において使用する。 さらに、本発明のNGF変異体ニューロトロフィンは、多くの神経細胞が成長 因子を必要とするため、インビボにおける神経細胞の培養における使用のための 培養培地の構成成分として有用である。当業者に理解されるように、本発明のN GF変異体ニューロトロフィンは、培地の構成成分として頻繁に使用される他の 神経栄養因子の代わりとなることができる。標準的なアッセイで使用される、添 加されるNGF変異体ニューロトロフィンの量は、容易に測定することができる 。 本発明のNGF変異体ニューロトロフィンはまた、生物または患者内のニュー ロトロフィンまたはニューロトロフィン抗体の診断、同定及び局在において使用 することができる抗体を生産するためにも有用である。例えば、NGF変異体ニ ューロトロフィンは、当業者に周知なようにポリクローナルまたはモノクローナ ル抗体を作製するために使用することができる。それから該抗体を標識化し、ニ ューロトロフィンの存在または非存在を検出するために使用する。それ故、ニュ ーロトロフィンと関連する神経疾患の診断が検出される。代わりに、該抗体は二 次抗体を使用することによって間接的に検出される。例えば、一次抗体をマウス またはウサギにおいて作製し、それから標識化された抗マウスまたは抗ウサギ抗 体を一次抗体を検出するために使用する。これらの方法のそれぞれ、同様に類似 の方法は本分野で周知であり、様々な組織においてニューロトロフィンを検出す ることを可能にする。 さらに、本発明のNGF変異体ニューロトロフィンに対して生産された抗体は 、ニューロトロフィン及びNGF変異体ニューロトロフィンの精製のためにも有 用である。一般的にNGF変異体ニューロトロフィンのアミノ酸置換は少ないた め、多くの免疫学的エピトープをニューロトロフィン及びNGF変異体ニューロ トロフィンが共有する。それ故、NGF変異体ニューロトロフィンに対して向け られた抗体は、天然で生じるニューロトロフィンに結合し、それ故精製において 有用である。例えば本分野で周知なように、アフィニティークロマトグラフィー 法に基づく精製スキームを使用することができる。 本発明のNGF変異体製剤は、中枢(脳及び脊髄)、末梢(交感、副交感、感覚 及び内臓ニューロン)、及び運動ニューロンを含む、インビトロ及びインビボで のニューロンの形成、維持または再生を促進する場合に有用であると考えられる 。従って、本発明のNGF変異体製剤は、様々な神経学的疾患及び疾病の治療の ための方法において有用である。好ましい実施態様として、本発明の製剤は、神 経疾患を治療するために患者に投与される。ここでの用語、「神経疾患」は、ニ ューロンの変質または損傷と関連する中枢及び/または末梢神経系の疾患を意味 する。 神経疾患の特徴的な例としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンティ ングトン舞踏病、発作、ALS、末梢神経障害、及び中枢、末梢、または運動ニ ューロンのいずれかの、ニューロンの壊死または損失によって特徴付けされる他 の疾患が制限されることなく含まれ、さらに外傷、火傷、腎機能障害、傷害、並 びにガン及びAIDSを治療するために使用される化学療法試薬の毒性効果のた めに、損傷された神経を治療することが含まれる。例えば、糖尿病、AIDSま たは化学療法と関連する神経障害のような、特定の病気と関連する末梢神経障害 が、本発明の製剤を使用して治療される。それはまた、インビトロまたはエクス ビボで神経細胞を培養する際の使用のため、培養培地の構成成分としても有用で ある。 本発明の様々な実施態様において、NGF変異体処法は、ニューロンの生存ま たは成長を促進するために、外傷、手術、発作、虚血、感染、代謝疾患、栄養失 調、悪性腫瘍、または毒性試薬によって損傷された神経系を有する患者、または NGF、NT−3,BDNFまたはNT4−5を使用して治療されているいずれ かの疾患を有する患者に投与される。予測されるように、治療または効果は、特 定のtrk結合機能またはNGF変異体に存在する機能に依存する。例えば、本 発明のNGF変異体製剤は、外傷または手術によって損傷された運動ニューロン の生存または成長を促進するために使用することができる。本発明のNGF変異 体製剤はまた、筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病)、ベル麻痺、及び棘筋 萎縮症または麻痺を含む様々な疾患のような、運動ニューロン疾患を治療するた めに使用することができる。本発明のNGF変異体製剤は、アルツハイマー病、 パーキンソン病、癲癇、多発性硬化症、ハンティングトン舞踏病、ダウン症、神 経性難聴、及びメニエール病のような、ヒト神経変性疾患を治療するために使用 することができる。本発明のNGF変異体製剤は、特に痴呆または外傷における 認識を促進するために、認識エンハンサーとして使用することができる。熟年層 における痴呆の50%以上の原因としてNational Institutes of Agingによって 確認されているアルツハイマー病は、65歳を越えるアメリカ人において第四位 または第五位の死を導く原因である。85歳を越えるアメリカ人(米国人口の最 も急速に増える部分である)の40%である4百万人のアメリカ人が、アルツハ イマ ー病に罹患している。パーキンソン病を有する全ての患者の25パーセントもま た、アルツハイマー病様の痴呆に苦しんでいる。そして痴呆を有する患者の約1 5%において、アルツハイマー病及び多梗塞痴呆が共存している。アルツハイマ ー病と血管性痴呆症に次いで、痴呆の第三の一般的な原因は、アルコール中毒に 間接的に関連した器質脳症候群のための認識障害であり、それはアルコール中毒 患者の約10%で生じている。しかしながら、アルツハイマー病、同様に血管性 痴呆症、及びアルコール中毒に関連する器質脳症候群による認識障害についての 、最も一致した異常は、基底の前脳(BF)からコデックス(codex)及び海馬の 両者に生じるコリン作用系の変質である(Bigl等,Brain Cholinergic Systems,M. Steliade及びD.Biesold編、Oxford University Press,Oxford,pp.364-386(1990) )。そして、アルツハイマー病によって影響を受ける数多くの他の神経伝達物質 系が存在する(Davies,Med.Res.Rev.3:221(1983))。しかしながら、例えばコリン 作用性神経伝達物質系の変質に関連する認識障害は、痴呆に苦しんでいる患者に 制限されない。それはまた、他の健康な高齢の成人及びラットにも見られる。高 齢のラットにおける減少した大脳皮質血液流の程度と、認識障害の程度を比較す る研究は、適切な相関関係を示す(Berman等,Neurobiol.Aging 9:691(1988))。慢 性アルコール中毒患者においては、アルツハイマー病及び正常な加齢と同様の、 生じた器質脳症候群もまた、コリン作用性ニューロンが生じ(前脳基底)、それら が機能する(大脳皮質)脳の領域における大脳皮質血液流の拡散した減少によっ て特徴付けされる(Lofti等,Cerebrovasc.and Brain Metab.Rev 1:2(1989))。上 記痴呆は、本発明のNGF変異体製剤の投与によって治療することができる。 さらに本発明のNGF変異体製剤は、神経障害、特に末梢神経障害を治療する ために、好ましくは使用される。用語、「末梢神経障害」は、末梢神経系に作用 する疾患を示し、最も頻繁には、運動、感覚、感覚運動、または自律神経機能不 全の一つまたは組み合わせとして表される。末梢神経障害によって示される広範 囲の形態はそれぞれ、同様に多数の原因に独特に基づいている。例えば、末梢神 経障害は一般的に後天的であり、全身性の疾患から由来し、または毒性試薬によ って誘導され得る。例として、糖尿病性末梢神経障害、遠位の感覚運動神経障害 、または胃腸管の減少した動きや膀胱の無緊張症のような自律神経障害が制限さ れ ることなく含まれる。全身性の疾患と関連した神経障害の例として、ポストポリ オ症候群またはAIDS関連性神経障害が含まれる;遺伝的な神経障害の例とし て、シャルコー-マリー-ツース病、レフサム病、無β-リポ蛋白血症、タンジア ー病、クラッベ病、異染性白質萎縮症、ファブリー病、及びドゥジュリーヌ-ソ ッタ病が含まれる。そして毒性試薬によって引き起こされる神経障害の例として 、ビンクリスチン、シスプラチン、メトトレキセート、または3'-アジド-3'-デ オキシチミジンのような化学療法試薬を使用した治療によって引き起こされるも のが含まれる。従って、NGF変異体の治療上の有効量を哺乳動物に投与するこ とを含む、哺乳動物における神経障害を治療する方法が提供される。好ましくは 、神経疾患は、末梢神経障害であり、より好ましくは糖尿病性末梢神経障害、化 学療法誘発性末梢神経障害、またはHIV関連性神経障害である。好ましくは、 末梢神経障害は、運動ニューロンに影響する。 さらに、NT−3の投与は、アルツハイマ一病で見出される細胞損失のパター ンに似たモデルにおいて、青斑(locus coerulus)の成人中枢ノルアドレナリン作 用性ニューロンのインビトロでの変質を妨げる(86)。さらに、NT3の添加に より、発生の間、同様に成人の脊髄病変の後に、皮質脊髄路の新芽発生を促進す ることが示されている。実際、NT3を、ミエリン関連性成長阻害タンパク質を 阻害する抗体と共に投与した場合、長距離の再生が見られた。それ故、本発明の NGF変異体ニューロトロフィンは、この応用においてNT3の代わりに使用す ることができる。 本実施態様では、NGF変異体ニューロトロフィンの治療上の有効量が、患者 に投与される。ここでの用語、「治療上の有効量」は、それが投与されるものに 対して治療上の効果を生ずる投与量を意味する。正確な投与量は、例えば治療さ れる疾患、投与の形態、及び治療される患者の臨床上の状態に依存し、周知の方 法を使用して当業者によって確立されるであろう。一般的に、本発明のNGF変 異体ニューロトロフィンは、一日当たり約1μg/kgから約100mg/kg で投与される。さらに、本分野で周知なように、年齢、同様に体重、通常の健康 状態、性別、食事、投与時間、薬剤の相互作用、及び疾患の程度に対する調節が 必要とされ、当業者によって通常の実験により確立されるであろう。 ある実施態様では、0.07から20mg/ml、好ましくは0.08から1 5mg/ml、さらに好ましくは0.09から10mg/ml、最も好ましくは 0.1から2mg/mlの量のNGF変異体を含む組成物が調製される。末梢神 経障害に苦しんでいるヒト患者に対する投与におけるこれらの組成物の使用につ いて、例えばこれらの組成物は、上記治療のための現在企図されているNGF投 与量に相当する、約0.1mg/mlから約2mg/mlのNGF変異体を含む 。NGF変異体は、NGFと同様に良好な許容性を有すると考えられ、必要であ れば臨床医によって測定されるように、より高い投与量を投与することができる 。1μg/kgのNGFの単一のIVまたはSC投与量が、ヒト患者において注 射部位の痛覚過敏及び全体または部分的な筋肉痛を引き起こすことが観察される ので、好ましい単一のIVまたはSC投与量は、好ましくは1μg/kgのNG Fより少ないが、本分野で周知なように痛覚過敏及び筋肉痛を改善する段階を踏 めば、より高い投与量を与えることができる。末梢神経障害に対する好ましい摂 生は、一週間に3回SCで0.1μg/kg、または一週間に一度SCで0.3 μg/kgである。 本発明の目的に対して用語、「患者」は、ヒト及び他の動物と生物の両者を含 む。それ故本方法は、ヒトの治療及び獣医学的応用の両者に応用可能である。 本発明のNGF変異体ニューロトロフィンの投与は、例えば経口、皮下、静脈 内、大脳下、鼻孔間、経皮的、腹膜内、筋肉内、肺内、膣内、直腸内、動脈内、 病変内、脳内の心室間、眼内を制限することなく含む特異適応に対して周知の経 路といった様々な方法でなすことができる。NGF変異体ニューロトロフィンは 、CNSの液体貯蔵内への点滴によって継続的に投与されるが、ポンプまたは移 植のような、本分野で周知の方法を使用した、丸薬注射も許容することができる 。ある例として、例えば外傷の治療において、NGF変異体ニューロトロフィン は、溶液またはスプレーとして直接に適用される。持続放出系を使用することも できる。一般的に、疾患が許す場合には、部位特異的な輸送としてNGF変異体 を処方または投与すべきである。投与は、継続的または断続的であることができ る。投与は、一定のまたはプログラム化された循環の移植可能ポンプ、若しくは 断続的な注射によって成し遂げることができる。 半透過性移植可能膜器具は、特定の環境に薬剤を輸送する手段として有用であ る。例えば、可溶性NGF変異体を分泌する細胞をカプセル化でき、上記器具を 患者内に、例えばパーキンソン病に苦しんでいる患者の脳または脊髄(CSF) 内に移植することができる。Aebischer等の米国特許第4,892,538号;Aebischer 等の米国特許第5,011,472号;Aebischer等の米国特許第5,106,627号;国際特許 出願WO 91/10425;国際特許出願WO 91/10470;Winn等,Exper.Neurology,113:322 -329(1991);Aebischer等,Exper.Neurology,111:269-275(1991);及びTresco等, ASAIO,38:17-23(1992)参照。最後に本発明は、半透過性膜及び該膜内にカプセル 化されたNGF変異体を分泌する細胞を含む、神経損傷またはここで教示される 他の細胞に対する損傷を予防または治療するための移植器具を含み、該膜はNG F変異体に対して透過性であり、該細胞に有害な患者由来の因子に透過性ではな い。エクスビボでNGF変異体を生産するように形質転換された患者自身の細胞 は、任意に上記カプセル化することなく患者内に直接移植することができる。生 きた細胞の膜カプセル化のための方法体系は当業者に周知であり、カプセル化細 胞の調製及び患者内への移植は、本分野で周知なように容易に成し遂げることが できる。好ましくは、分泌NGF変異体は、患者がヒトである場合ヒト成熟NG F骨格変異体である。移植物は好ましくは非免疫原性であり、及び/または免疫 原性移植化細胞が免疫系によって認識されることを妨げる。CNS輸送のために 、好ましい移植の部位は、脊髄の大脳脊髄液である。 本発明の製薬組成物には、患者への投与に適した形態のNGF変異体ニューロ トロフィンが含まれる。好ましい実施態様として、製薬組成物は水溶性形態であ り、担体、賦形剤、安定剤、緩衝液、塩類、抗酸化剤、親水性ポリマー、アミノ 酸、炭化水素、イオン性または非イオン性界面活性剤、及びポリエチレンまたは プロピレングリコールのような生理学的に許容可能な物質を含む。NGF変異体 ニューロトロフィンは移植のための一定時間放出形態で存在し、または本分野で 周知の方法を使用してマイクロカプセル内にカプセル化される。 NGF変異体は好ましくは、これらの組成物の安定性を著しく増大するために 、pH5からpH6までの生理学的に許容可能な酢酸緩衝液内に調剤化される。 酢酸濃度は、0.1から200mM、さらに好ましくは1から50mM、またさ ら に好ましくは5から30mM、そして最も好ましくは10から20mMの範囲で あり得る。一つの好ましい実施態様は20mMの酢酸を有し、もう一つは溶液内 に10mMの酢酸を有する。安定性を増大させ容量を緩衝するための好ましい酢 酸塩は、酢酸ナトリウムである。ここでの組成物の調製のための適切なpHの範 囲は5から6,好ましくは5.4から5.9,より好ましくは5.5から5.8 である。好ましいpHは5.5であり、それは安定性を増大し容量を緩衝する。 もう一つの好ましい実施態様は、pH5.8である。 任意に、しかし好ましくは、製剤は製薬学的に許容可能な塩、好ましくは塩化 ナトリウムを好ましくはほぼ生理学的な濃度で含む。低濃度、例えば0.3Mか ら0.5Mより低い、好ましくは0.16から0.20MのNaCl、より好ま しくは0.13から0.15Mが好ましい。好ましい実施態様として、塩化ナト リウム濃度は136mMである。もう一つの好ましい実施態様として、該濃度は 142mMである。 任意に本発明の製剤は、製薬学的に許容可能な防腐剤を含むことができる。あ る実施態様として、防腐剤の濃度は0.1から20%、典型的にはv/vの範囲 である。適切な防腐剤には、製薬学の分野で周知のものが含まれる。ベンジルア ルコール、フェノール、m−クレゾール、メチルパラベン、及びプロピルパラベ ンが、好ましい防腐剤である。ベンジルアルコールは増大したNGF安定性を導 く特に好ましい防腐剤である。特に好ましいベンジルアルコール濃度は、0.7 から1.2%、より好ましくは0.8から1.0%であり、特に好ましい濃度は 0.9%である。 任意に本発明の製剤は、製薬学的に許容可能な界面活性剤を含むことができる 。好ましい界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。好ましい界面活性剤には 、Tween20及びプルロン酸(F68)が含まれる。F68は、NGF変異 体安定性を増大するために特に好ましい。適切な界面活性剤濃度は、0.005 から0.02%である。界面活性剤のための好ましい濃度は0.01%である。 界面活性剤は、特定の形態を最小化するために使用される。 特に好ましい実施態様として、該組成物は、0.1mg/mlの濃度のNGF 変異体、20mM、pH5.5の濃度の酢酸ナトリウム、136mMの濃度の塩 化ナトリウム、及び0.9%(v/v)の濃度のベンジルアルコールを含む。も う一つの実施態様として、NGF変異体濃度は2.0mg/ml、酢酸ナトリウ ム濃度は10mM、pH5.5,及び塩化ナトリウム濃度は142mMである。 本発明のもう一つの実施態様として、製薬学的な有効量のNGF変異体及び製 薬学的に許容可能な酢酸含有緩衝液を含む、本発明の製薬組成物を含むバイアル または容器を含む、NGF変異体投与のためのキットが提供される。好ましいバ イアル容量は、サンプルの繰り返される使用中止が可能である、複数投与量の使 用のために適したものである。本発明の製剤に関して達成される増大した安定性 のため、複数投与量液体製剤が可能である。典型的に複数投与量のバイアルは、 一月間、好ましくは一週間一人の患者に対して十分な投与量を提供するような十 分な製剤を提供するであろう。例えば組成物の容量は一般的に、投与濃度、頻度 及び使用の容易性に依存して、0.3から10.0ml、より好ましくは1.6 から2.0mlの範囲である。例えば1.8mlの容量は、0.3μg/kgま たは0.1μg/kgのそれぞれが使用される場合、それぞれ7または24の投 与が可能であり簡便である。ベンジルアルコールのような光感作性構成成分が存 在する場合、バイアルは強烈な光から保護される。一般的に、暗い冷蔵庫または 不透明な箱内にバイアルを貯蔵することで十分である。しかしながらバイアルの 壁は、光透過減少物質を含むことができる。例えば、半透明コハクまたは茶色バ イアル若しくは半透明バイアルを使用することができる。好ましい実施態様とし て、バイアルは複数投与量製剤を含む。バイアルの形態については、選択された 複数投与量液体製剤が、1.8mLの満たされた容量を有する3ccタイプIガ ラスバイアルに満たすことができる。栓の選択は、選択された製剤と様々なタイ プの栓の適合性に基づくであろう。 本発明の組成物は、典型的には2から8℃で貯蔵される。該製剤は、ここに示 されるような数多くの凍結解凍サイクルに対して安定である。 もう一つの実施態様として、製剤は上記酢酸濃度で調製される。 製剤の調製のための好ましい手段は、最終処方緩衝液内に大量のNGF変異体溶 液を溶解することである。最終NGF変異体濃度は、NGF変異体の非存在の処 方緩衝液を使用して、製剤を適切に調節することによって成し遂げられる。 凍結乾燥形態を含むここでの組成物は、本質的に周知である一般的に利用可能 な製薬学的混合法を使用して構成成分を混合することによって一般的に調製され る。同様に、標準的な凍結乾燥法及び本分野で周知の装置が使用される。ここで のNGF変異体製薬組成物を調製するための特定の方法は、ゲル濾過または透析 のようないくつかの周知の緩衝液交換法のいずれか一つにおいて、(いずれかの 標準的なタンパク質精製スキームに従って)精製されたNGF変異体、好ましく はrhNGF変異体を利用することを含む。 ここで議論されるNGF変異体コード遺伝子構築物は、トランスフェクション 、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム/DEAEデキストラン法、及び 細胞銃を制限することなく含む、本分野で周知のいずれかの方法を使用して、標 的細胞内に挿入することができる。構築物及び加工された標的細胞を、NGF変 異体発現標的細胞が議論されている方法を使用して選択される、導入遺伝子とし て上記記載の構築物を有するトランスジェニック動物の生産のために使用するこ とができる。代わりに、NGF変異体を、NGF変異体コード核酸を使用した遺 伝子治療によって輸送することができる。適切な細胞における組換えNGF変異 体の選択的な発現が、組織特異的または誘導可能プロモーターによって、または 本分野で周知の特定のアデノウイルスのような、組換えNGF変異体遺伝子を運 ぶ複製欠損ウイルスを使用した局在化した感染を生ずることによって、制御され たNGF変異体遺伝子を使用して達成することができる。 遺伝子治療応用において、遺伝子は、例えば欠損遺伝子の置換のために、治療 上有効な遺伝子産物のインビボでの合成を達成するように細胞内に導入される。 用語、「遺伝子治療」は、継続した効果が単一の治療によって達成される伝統的 な遺伝子治療、及び治療上有効なDNAまたはmRNAの一度または繰り返しの 投与を含む遺伝子治療薬剤の投与の両者を含む。生存細胞内に核酸を導入するた めに利用可能な様々な方法が存在する。該方法は、インビトロで培養細胞内に、 または企図された宿主の細胞にインビボで核酸を導入するかどうかに依存して変 化する。インビトロで哺乳動物細胞内に核酸を導入するために適した方法は、リ ポソームの使用、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融 合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈降法等が含まれる。現在好ま しい インビボでの遺伝子導入法には、ウイルス(典型的にはレトロウイルス)ベクタ ーを使用したトランスフェクション、及びウイルスコートタンパク質−リポソー ム介在トランスフェクションが含まれる(Dzau等,Trends in Biotechnology,11:2 05-210(1993))が、裸のDNAも有効である。ある場合には、細胞表面膜タンパ ク質または標的細胞に特異的な抗体、標的細胞上のレセプターに対するリガンド 等のような、標的細胞を標的化する試薬を使用して核酸源を提供することが望ま しい。リポソームを利用する場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タ ンパク質に結合するタンパク質、例えば特定の細胞タイプに反応性のカプシドタ ンパク質またはその断片、サイクリングにおいて中和を受けるタンパク質に対す る抗体、及び細胞内局在を標的化し細胞半減期を増大するタンパク質を、標的化 するため及び/または取り込みを容易にするために使用する。レセプター介在エ ンドサイトーシスの方法は、例えばWu等,J.Biol.Chem.,262:4429-4432(1987); 及びWargner等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:3410-3414(1990)に記載されている 。遺伝子操作及び遺伝子治療プロトコールの文献としては、Anderson等,Science ,256:808-813(1992)参照。 NGFの生物学的有用性は、NT−3のものより優れている。従って、本発明 はNT−3の活性及びNGFの優れた生物学的有用性を有するニューロトロフィ ン分子を提供する。さらに、本発明は、以前の因子と比較して予測できない優れ た全ニューロトロフィン活性を有するニューロトロフィン分子を提供し、それ故 個々のニューロトロフィンの混合物と関連したいずれかの問題を除去するさらな る利点を有する。 以下の実施例は、上記記載の発明を使用する方法をより十分に記載するように 機能し、同様に本発明の様々な面を実施することを企図した最適な方法を示す。 いずれの場合にもこれらの実施例は、本発明の真の範囲を制限するために機能す るものではなく、むしろ説明の目的で提供される。本明細書中の全ての引用文献 の開示は、完全にここで明白に取り込まれる。 実施例 実施例I trkCに結合するNGF変異体のデザインと合成 NGF変異体のデザイン:ヒトNT−3の完全なミューテーション分析により、 そのレセプターtrkCに対するNT−3の結合エピトープの詳細な調査が導か れた(101)。結合部位は、単一の残基、R103によって支配されている(図 3A)。R103の構造的近傍の分析により、NT−3/trkC相互作用に対 するさらなる重要な残基が明らかにされた:ベータ鎖C中のK81およびQ84 ,ベータ鎖A及びA’を連結するループ中のT23、及びより小さな効果を有す るものとしてベータ鎖B中の二つの保存的な残基E55及びR57である(図2 ,3A)。マウスNGFにおいては、NT−3K81及びQ84の対応する残基 であるT81及びH84(図2,3B)が、trkAに対するNGF結合に関与 することが示されており(55)、それ故それらは特異性に関与していると考えら れる。ヒトNGFにおいては、V18,G23,T81及びH84が、trkA 結合に関与していることが示されている。他の非保存的なNT−3残基、T23 は、種を通じてニューロトロフィンの各種類の中で保存された領域に位置してい るが、NT−3,BDNF及びNGFの間で多様化している。T23の近傍及び 該分子の同じ面に位置しているのがE18及びL20である(図3A)。それらは trkCへの結合に直接は関与していないが、NGF(V18及びV20)(図 3B)及びBDNF(118及びE20)におけるそれらの構造的に大変異なっ た相補体が、trkCへの結合を妨げている。これは、NGF残基V18,V2 0,G23,T81及びH84並びにNT−3におけるそれらのそれぞれの相補 体が、trkCに対する特異性を決定することに関与していることを示唆した( 101)。それ故、これらの位置でNT−3アミノ酸を有するNGFの変異体が 構築され、trkC結合の補充に対して分析された。 NGF変異体の合成:NGF及びNT−3は以前にクローン化され、シークエン スされ、大腸菌における二本鎖及び一本鎖DNAの生産、同様にサイトメガロウ イルスプロモーターの制御の下での哺乳動物系におけるニューロトロフィンの発 現を可能にするベクター内にサブクローン化された(83)。このベクター上での 突然変異誘発を、Kunkelの方法にしたがって実施した(66)。大腸菌株XL1− Bleu(Stratagene,San Diego,CA)内への形質転換の後、コロニーを、Sequena s eバージョン2.0kit(U.S.Biochemical Corp.,Cleveland,OH)を使用して二本鎖D NAをシークエンスすることによって所望の突然変異の存在についてスクリーニ ングした。成熟NGF及びNGF変異体をコードする完全なDNA配列を、全て の陽性クローンについて確認した。二本鎖DNAを、QIAGEN DNA精製キット(Qia gen Inc.,Chatsworth CA)を使用してXL−1 Bleuから単離した。 野生型及び変異体ニューロトロフィンの発現:NGFまたは変異体コード配列の それぞれを含有するプラスミドDNAを、リン酸カルシウム沈降によってヒト胎 児腎細胞系293内に導入した(70)。75%の融合細胞を、15mm細胞培養 皿当たり10μgのプラスミドDNA及び1μgのAdVAプラスミドを使用し て共トランスフェクトし、血清含有培地で15時間インキュベートした。次いで 培地を除去し、10mg/Lの組換えウシインスリン、1mg/Lのトランスフ ェリン及び微量元素を補った血清非含有培地(PSO4)と交換した。48及び 96時間後に上清を回収し、Centriprep-10濾過ユニット(Amicon,Berverly,MA) を使用しておよそ20倍に濃縮し、滅菌濾過した。 ニューロトロフィン変異体の定量:特異的NGF ELISA(固相酵素免疫検 定法)は、ハムスター由来のプロテインA精製抗血清(Genentech,Inc.)に基づき 、引き続き標準的なELISA法を実施した。ポリクローナル血清を、抗体に対 する変異体の様々な交差反応性に対する能力を減少するために使用した。標準曲 線を、精製組換えNGFを使用して測定した。 濃縮後のNGF変異体の量は、0.3μg/mlから30μg/mlの間で変 化した。ELISAアッセイは、偽のトランスフェクト細胞由来の上清において はいずれのNGFも検出しなかった。NGF変異体の各発現セットについて、野 生型NGF発現を実施し、レセプター結合研究に対する比較野生型濃度を得るた めに並行してELISAによって定量した。全ての変異体を発現し、定量し、少 なくとも二度アッセイした。 実施例II NGFの中央のベータ鎖束での突然変異は、trkCに結合する変異体を導く 変異体NGF1及びNGF2は、それぞれT81K及びG23T/V18E/ V20Lのミューテーションを有する。5個の点突然変異を変異体NGF12で 組み合わせた。これらの3個の変異体、同様にNGF及びNT−3を発現させ、 trkC細胞外ドメインに結合する能力についてアッセイした。 レセプターイムノアドヘシンタンパク質を、免疫グロブリン定常ドメインに融 合したヒトtrkA及びtrkC細胞外ドメインを使用して構築した(88)。結 合アッセイを、96穴プレートフォーマットを使用して記載されたように(88 )実施した。各ウェル内の標識されたニューロトロフィンの最終濃度は、trk A及びtrkC結合アッセイのためにおよそ30pMであった。精製組換えヒト NT−3,BDNF及びNGF(Genentech)を記載されたようにヨウ素化した(1 01)。通常20μgのニューロトロフィンを、2000−3000Ci/mm olの範囲の特異的な活性にヨウ素化した。標識された物質を4℃に貯蔵し、調 製の2週間以内に使用した。変異体を、複数の発現物のそれぞれに対し少なくと も2回trkA及びtrkCレセプターに対する結合親和性のためアッセイした 。本方法は、それぞれの変異体に対する親和性測定における誤差の見積もりが可 能であった。全てのデータを、Kaleidagraphソフトウェアーパッケージを使用し て一連のデータに対して4パラメータ適合法を適用することによって分析した。 表3における結合結果は、IC50mut/IC50wt比として表されている 。IC50は、天然のニューロトロフィンの結合の50%阻害を導く変異体の濃 度である。 競合的置換結合アッセイにおいて、NT−3野生型は、trkCに対して21 .0±4.9pMの親和性を示す一方、NGFは、NT−3に比較して3587 倍まで減少した親和性を有してこのレセプターに結合した(表3)。変異体NGF 1及びNGF2は、それぞれNT−3より1036倍及び291倍低い親和性を 有してtrkCに結合した(表3);これはNGFと比較した場合、それぞれ3. 5倍及び12倍のtrkCに対する親和性の増大を表す。NGF1及びNGF2 における突然変異を変異体NGF12で組み合わせた場合、trkCに対する親 和性は共同的な方法で実質的に増大した。この変異体は、NT−3と比較した場 合14.7倍のみの減少した親和性でtrkCに結合し、NGFと比較した場合 244倍の増大した親和性を表す(表3)。 表3:trkC及びtrkAに対するNGF変異体の相対的親和性 実施例III 中央のベータ鎖束中の突然変異を有するNGF変異体は trkA結合を維持する 全てのNGF変異体、NGF及びNT−3を、trkA結合についてアッセイ した。NGFは33.9±7.5pMの親和性を示す一方、NT−3はNGFと 比較して137倍減少した親和性を有して結合した(表3)。親和性のこの減少は 、初期の結果と一致する(101)。変異体NGF1,NGF2及びNGF12は 、それぞれ0.7倍、2.1倍及び1.5倍減少した親和性を有してtrkAに 結合する(表3)。これは、NGF2における変化が、trkAに対するわずかに 減少した親和性を導く一方、NGF1における変化が、親和性の小さな増大を導 くことを示す。NGF1及びNGF2をNGF12として組み合わせた場合、t rkAに対するNGF12の親和性は累積的である;trkCに対するNGF1 2の親和性と対照的に、NGF1及びNGF2と比較した場合共同的であった( 表3)。 実施例IV trkC特異性に対する個々の残基の重要性 NGF12において変化した個々の残基の特異性に対する重要性を測定するた めに、これらの残基のそれぞれをNGF配列に戻すように変化した。変異体NG FR1,NGFR2,NGFR3,NGFR4及びNGFR5(表3)は、それ ぞれG23,V18,V20,T81及びH84の特異性に対する寄与を試験し た。変異体NGFR1は、trkCとの相互作用の能力のほとんどを喪失し、N GFR3及びNGFR5は、わずかに減少した親和性を有する一方、NGFR2 及びNGFR4は、NGF12と同様のtrkCに対する親和性を有した(表3) 。これらのデータは、trkC結合に対する最も重要な特異性決定因子が、T2 3/G23,Q84/H84及びL20/V20(NT3/NGF)であること を示唆した。 実施例V trkCに対する増大した親和性を有するNGF12変異体 ヒトNT−3のモデル(101)及びマウスNGFのX線構造(59)の比較 により、二つの分子の間の差異である主要な特異性決定因子に近いいくつかの残 基が明らかにされた。さらにtrkCに対するNGF12の親和性を増大するた めに、これらの残基のいくつかを類似するNT−3アミノ酸に変化した。NGF 12に対してF54Y/K57Rの変化を加えることは、trkC結合を改良し なかった(NGF125,表3)。対照的に、Y79Q/F86Yを加えることは 、NGF12と比較して2倍の結合を増大した(NGF124,表3)。NGF1 2を背景にこれらの二つの残基を個々に変化することにより、F86Y変化が有 益な変化を示す一方で、Y79Q変化は有害な変化であることが示された(NG F126及びNGF127,表3)。最後に、T29Iの変化を評価した。NG F12の背景においては、T29Iは結合においてわずかな減少を与えた(NG F1123に対してNGF12を比較する、表3)が、NGF124及びNGF 126の背景においては、それはわずかに結合を改良した(NGF1234に対 してNGF124変異体を、及びNGF131に対してNGF130を比較する 、表3)。これは103残基を29及び86残基の間に配置したため、59,8 6及び103位で側鎖の相互作用が生じたためであろう(図3)。代わりに、29 及び86位の側鎖は、trkC中の同じアミノ酸と相互作用し、それによってt rkCアミノ酸を介して互いに影響するであろう。 これらのデータに基づいて、二つのさらなる変異体をデザインした。変異体N GF131は、V20L、G23T、V18E、T29I、H84Q及びF86 Yの5個の変化を含み、NT−3に比較して3.3倍だけ減少した親和性を有し てtrkCに結合した。これらの変化は、trkA結合に影響しなかった(表3 )。NGF126及びNGF131は、trkC及びtrkAに等しく十分に結 合する。両変異体は、共通にV20L、G23T、H84Q及びF86Yの突然 変異を有する;NGF126は、さらにV18E及びT81Kの突然変異を有す る一方で、NGF131は、さらにT29Iの突然変異を有する。これは、NG FにおけるV20L、G23T、H84Q及びF86Yの変化が、trkC結合 の補充に必要とされる最小のものであることを示唆する。実際、これらの4つの 突然変異を有するNGF130は、NGF126及びNGF131と同様にtr kCに結合した(表3)。 実施例VI NGF変異体はtrkCレセプター自己リン酸化を誘導する PC12細胞系でtrkレセプター自己リン酸化を刺激するNGF変異体の能 力を測定した。およそ1×107PC12細胞(26)を、100ng/mlの ニューロトロフィンを使用して37℃で5分処理した。NP−40プレート溶解 及び抗trkA特異的ポリクローナル抗血清(Dr.Louis Reichardt,University of California,San Francisco由来)または抗trkC特異的ポリクローナル抗 血清656(101)を使用した免疫沈降を、以前に記載されたように実施した (26)。ホスホチロシン含有量を、以前に記載されたようにモノクローナル抗体 4G10を使用してウエスタンブロットによって分析した(23;26)。全ての 自己リン酸化アッセイを、アッセイされた各ニューロトロフィンについて少なく とも二度実施した。 ラットtrkCを継続的に発現するように操作されたPC12細胞は、trk Cの強力な自己リン酸化の誘導及び軸索伸長の形成によってNT−3に応答する (26)。精製NGF(NGF/P)、同様にNGF発現293細胞の上清(NGF /U)は、trkA自己リン酸化に対する強力なシグナルを導く(図4)が、t rkCの自己リン酸化を誘導しなかった(図5A)。精製NT−3(NT−3/P )及びNT−3発現293細胞の上清(NT−3/U)は、trkCの自己リン 酸化を誘導する(図5A)が、trkAは誘導しなかった(図4A)。trkCに 対するNGF12の親和性から予測されるように、この変異体は、trkC自己 リン酸化に対する強力なシグナルを導く(図5A)が、trkAの自己リン酸化 を引き出す能力を維持していた(図4A)。変異体NGF1及びNGF2のtrk Cに対するかなり低い親和性は、trkC自己リン酸化における弱いシグナルに 反映される(図5A)。しかしながら、両変異体は未だ、NGFと比較した場合、 わずかに減少した活性のみを有してtrkAレセプターの自己リン酸化を誘導し た(図4A)。 変異体NGFR1及びNGFR5を、PC12/trkC細胞の自己リン酸化 の誘導に対してアッセイし、NGFR1は大変弱いシグナルを導く一方で、NG FR5の応答はNGF12とNGFR1の間のものであった(図5B)。これらの 結果は、trkCに対する変異体の測定された親和性と相関した。trkCに対 する親和性をさらに増大するNGFの変異体(NGF123,NGF124,N GF125及びNGF1234)は、NT−3によって引き出されるものと同様 であるtrkC自己リン酸化に対するシグナルを導いた(図5B)。trkCに対 して最も結合する3つの変異体−−NGF126,NGF130及びNGF13 1−−もまた、trkC(図5C)、同様にtrkA(図4B)の自己リン酸化の ための強力なシグナルを引き出した。これらの結果は、trkCに対する増大し た親和性を有するNGF変異体は、モデルのニューロン様の細胞系に対してもこ のレセプターと相互作用することができることを示す。さらに、これらの細胞は 、trkAもまた発現すること、及び両レセプター(trkA及びtrkC)は 多機能性リガンドと競合することに注意することは重要である。NGF変異体が trkA/trkCヘテロダイマーの形成を導くことができる一方で、これは二 つのレセプターのトランスリン酸化を導かない(90)。 実施例VII NGF変異体はtrkC細胞シグナリングを誘導する trkCを発現するPC12細胞の分化を刺激するNGF変異体の能力を測定 した。これは、trkC細胞シグナリングを誘導する変異体の能力を示す。tr kCを発現するおよそ103PC12細胞(26;100)を、全部で2mlの 培地を含む35mmコラーゲンコート組織培養皿上にまいた。PC12/trk C細胞を、250pg/mlから100ng/mlの範囲のニューロトロフィン 濃度でアッセイした。軸索所有細胞の集団を、3日後に細胞体の長さを少なくと も二度測定することを含む細胞の数をカウントすることによって測定した。全て の軸索伸長アッセイを少なくとも二度実施した。 PC12/trkC細胞の軸索成長の誘導からの結果は、結合及び自己リン酸 化アッセイと一致する(表4)。PC12/trkC細胞がtrkA及びtrkC の両者を所有する一方で、NT−3は、ニューロトロフィンの適用後の最初の3 日間で軸索の顕著な誘導を導くが、NGFは導かないことが以前に示されている ;しかしながら10日目でNGF及びNT−3は、同様な軸索成長を誘導する( 100)。そこでPC12/trkC細胞を、3日後の軸索について評価した。 trkCに対する減少した結合を示す変異体もまた減少した応答を示した。NG F12は、天然のNT−3と比較してより高い値にシフトする投与量−応答性を 示し、最も少ない結合を有する変異体(NGF1,NGF2,NGFR1及びN GFR5)は、試験された最も高い投与量の場合さえ最大の応答性に到達しなか った(表4)。NGF126は、天然のNT−3と同様の軸索誘導の能力を有し、 変異体NGF126,NGF130及びNGF131を通じてtrkC結合は同 量である(表3)が、NGF126は、軸索を誘導する点でより有効であり、N GF130及びNGF131の10ng/mlと比較して1ng/mlで最大の 応答に到達した(表4)。特に、これらのNGF変異体は、trkAがその結合に ついてtrkCと競合する環境においてtrkCを通じて軸索を誘導することが できた。10日目、NGF12,NGF1及びNGF2変異体は、trkAに対 するこれらの変異体の結合から予期されるように、軸索を誘導する点でNGF( データは示されていない)と同様に機能した(表3)。 表4:ラットtrkCを発現するPC12細胞における軸索成長の誘導 議論 ニューロトロフィンは、trkレセプターチロシンキナーゼとの相互作用によ って細胞内へシグナルを伝達する(95)。ニューロトロフィン及びtrkの両者 は、高い相同性を有するタンパク質ファミリーを形成する。各ファミリーの中で 、異なるメンバーが同様な構造を有しているようであるが、二つのファミリーの 個々のメンバーは、大変特異的な方法で互いに相互作用する。ニューロトロフィ ンのこの本質的な特異性は、その生物学的な機能にとって必要であり、それ故特 異性決定因子の機構の情報は、ニューロトロフィーファミリーの機能及び進化の 理解に寄与する。 ヒトNT−3の分子モデリング及びアラニンスキャン突然変異誘発(101)、 並びにヒトtrkのドメイン欠失/置換(102)は、このリガンド/レセプタ ー系の結合エピトープを決定した。以前の研究により、レセプターtrkCに対 するNT−3の結合部位が、R103残基及びさらなる近傍の決定因子によって 支配されていることが明らかにされた。結合部位は中央のβ鎖束の周りに広がり 、trkAに対するNGF結合部位とは対照的に、ループ由来の残基及びN末端 の最初の6個の残基を含まない(図3)。結合部位の一部を構成する非保存的残基 には、T23,K81及びQ84が含まれる。L18及びE20と共に残基T2 3は、ニューロトロフィンファミリーのメンバーのそれぞれ内で全ての種を通じ て保存されている領域に位置するが、NT−3,NGF及びBDNFの間では多 様化している。それ故、これらの5個の残基は、trkC結合に対するNT−3 における特異性決定因子の考え得る候補であると思われる。trkCに結合する ための重要性を試験するために、NGF中の残基(V18,V20,G23,T 81及びH84)を、相当するNT−3アミノ酸(E18,L20,T23,K 81及びQ84)に変化し、生じたタンパク質NGF12を、trkC結合の補 充 及びtrkC介在生物学的活性について分析した。NGF12はtrkCに結合 し、PC12細胞上で発現されたtrkCの自己リン酸化を誘導するが、trk Aに対する親和性を喪失していなかった(表3,図4,5)。 ここで示されるように、グリシン23からトレオニンへの変化は、NGF12 における補充効果を示す。各突然変異残基が個々に元のNGFアミノ酸に戻って 変化したNGF12のさらなる変異体(すなわちE18V、L20V、T23G 、K81T、Q84H)は、NT−3においてtrkC特異性に対する最も重要 な決定因子がT23であり、次いでQ84及びL20であることを示した。いず れか一つの理論に制限されるものではないが、NGFにおけるグリシンからトレ オニンへの変化は、trkへの結合に必須である側鎖を導入する;代わりにG2 3Tの変化は、骨格構造の変化に影響し、それによってその近傍で側鎖の構造に 影響する。84位では、ヒスチジンからグルタミンへの変化が、trkCに対し て反発する潜在的な電荷残基を除去し、グルタミン側鎖が特異的な水素結合に必 要である。最後に、20位でのバリンよりロイシンを好むことは、結合部位での 疎水性相互作用のかなり厳格な空間的必要性のためであろう。 T23,Q84及びL20に加えて、86位のアミノ酸は、trkCに対する ニューロトロフィン特異性に重要である。NGF12にNT−3残基を加えるこ とは、trkCに対する結合に4.5倍の改良で影響する一方、trkAに対す る結合を維持する(変異体NGF126,表3)。残基86は、trkCに対する 結合のための最も重要な決定因子であるR103(図3)に近く、さらにtrk C認識のための構造的領域の支配性を確認する。NGFにおいては、86位はフ ェニルアラニンであり、NT−3においてはそれはチロシンであることは、いず れかの一つの理論に制限されるものではないが、側鎖ヒドロキシル基がtrkC 認識に必要とされる特異的水素結合に関与していることを示唆する。 最後に、18及び29位の残基は、trkCに対するNT−3の特異性を微調 整する。29位での影響は、86位のアミノ酸の特性に依存しているようである 。T29Iの変化がNGF12(それはF86を有する)内に導入された場合、 trkC結合はわずかに減少し、一方でT29Iが二つの他の変異体(それらは Y86を有する)に導入された場合、結合はわずかに改良される(NGF123 4 に対してNGF124を、NGF131に対してNGF130を比較した場合、 表3)。86残基と同様に、29残基は重要なR103の近傍に存在する(図3) 。18位では、V18Eの突然変異が、trkC結合にわずかにのみ寄与する( すなわちNGF12及びNGFR2,表3)。しかしながら、NGF126及び NGF130による軸索成長の誘導の比較により、V18Eの突然変異を含むこ とが軸索成長の誘導を改良することが示された;V18Eを含むNGF126は 、天然のNT−3と同様の軸索成長を導く(すなわち、1ng/mlで最大の応 答に到達する)一方で、NGF130は、最大の応答を引き出すために10倍の ニューロトロフィンを必要とした(10ng/ml)(表4)。 要約すると、ここに提示された結果は、ヒトNGFにヒトNT−3由来の中央 のβ鎖束の特異的な一連の残基を接合することは、非同種レセプター(trkC )に対する結合を補充することができる一方で、同種レセプター(trkA)に 対する親和性を維持することを示す。trkCに対するNT−3上の主要な特異 性決定因子には、L20,T23,Q84及びY86が含まれる。残基E18及 び129は、特異性において小さな役割を演じるであろう。6個の残基は二つの クラスターを形成する:Q84及びY86は、trkC結合に関与する最も重要 な残基であるR103の近傍に位置し、E18及びT23は共に位置するが、R 103クラスターからは離れている(図3)。これらは、いずれかの一つの理論に 制限されるものではないが、trkCが、様々なニューロトロフィンの間を識別 するために、少なくとも二つの独特な空間的に離れた部位を使用することを示唆 する。 ネズミ及びヒトニューロトロフィンの初期の突然変異分析により、NGFのN 末端の最初の5個の残基が、trkAに対する特異的な結合に対して重要である ことが提案された(55;101;98)。NGF由来のN末端を有するNGF変 異体を構築し、生じた分子MNTS−1及びPNT−1は実際にNGFと同様な trkAに対する親和性を獲得した(101;55)。MNTS−1がtrkCに 対する親和性を失わないという観察は、NT−3のN末端残基が、trkC認識 に関与しないことを意味し、その結論はNT−3 N末端の部位特異的突然変異 誘発によって確認された(101)。本研究は、NT−3の機能及び特異性に対す る 中央のβ鎖束に位置する残基の重要性を確立する。ここに示されるように、NT −3の非保存的なアミノ酸−−T23及びQ84−−は、NGFにおいて置換す ることができ、trkC結合を補充する。さらに、NT−3における非保存的な アミノ酸−−E18,L20,129及びY86−−もまた、NGF変異体/t rkC相互作用の特異性に寄与することができるが、T23及びQ84と比較し て減少した効果を示す。NT−3相補体を使用してNGF中のこれらの6個の残 基を置換することは、trkAに対する十分な親和性を維持する。ここで提示さ れる研究に関して、中央のβ鎖束中のNT−3残基は特異性に影響する一方で、 NGFにおいてはN末端残基が特異性に影響すると思われる。 異なる種由来のNGF中の配列保存に基づいて、初期の研究により、Y79, T81及びH84がtrkAとNGFの相互作用を介在しているものと提案され た(55)。本研究において、残基81はtrkAまたはtrkCに対する結合ま たは特異性に影響せず(NGF12及びNGFR4参照,表3)、残基84がtr kC特異性に対して重要であるがtrkA特異性に対しては重要ではない(NG F12及びNGFR5参照、表3)ことが決定した。本研究はまた、NGF残基 79がtrkA特異性には関与しない一方で、trkCに対して天然のヒトNG F変異体(Y79)は、ヒトNT−3 Q79と比較してわずかに好ましいこと が解った(NGF127,表3)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/19 C12P 21/02 C 1/21 (C12P 21/02 5/10 C12R 1:91) C12P 21/02 C12N 15/00 ZNAA //(C12P 21/02 5/00 A C12R 1:91) A61K 37/24 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR, NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,L S,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL ,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR, BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,E E,ES,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU ,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR, KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,M D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL ,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK, SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,V N,YU,ZW (72)発明者 ウィンスロウ,ジョン ダブリュ アメリカ合衆国 カリフォルニア 94018 エル グレナダ ピー.オー.ボックス 1232

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.trkCを結合することを特徴とする、trkC結合を与えるアミノ酸G2 3及びH84、及びV18またはV20位のいずれかで置換を有するNGFを含 むNGF変異体。 2.V20が置換されていることを特徴とする請求項1記載のNGF変異体。 3.さらにF86,T81及びT29のいずれか一つ以上の置換を含む請求項1 記載のNGF変異体。 4.置換が、G23T、G23S、G23A、H84Q、H84N、V18E、 V18D、V18Q、V20L、V20I、V20M及びV20Tより成る群か ら選択されることを特徴とする請求項1記載のNGF変異体。 5.置換が、F86Y、F86M、F86W、F86S、F86T、T81K、 T29I、T29V、T29L及びT81Nより成る群から選択されることを特 徴とする請求項3記載のNGF変異体。 6.NGF130,NGF131,NGFR2及びNGFR3より成る群から選 択される請求項1記載のNGF変異体。 7.trkBを結合することを特徴とする、さらにtrkB結合を与えるアミノ 酸置換を含む請求項1記載のNGF変異体。 8.trkBを与えるアミノ酸置換がD16で存在することを特徴とする請求項 7記載のNGF変異体。 9.さらにtrkA結合を減少または除去する10アミノ酸N末端領域の修飾を 含む請求項1記載のNGF変異体。 10.10個のN末端アミノ酸の少なくとも一つが、trkA結合を減少または 除去するために欠失または置換されていることを特徴とする請求項9記載のNG F変異体。 11.N末端アミノ酸SSSHPIFが、存在しないまたはYAEHKSを使用 して置換されていることを特徴とする請求項10記載のNGF変異体。 12.trkBを結合することを特徴とする、さらにtrkB結合を与えるアミ ノ酸置換を含む請求項9記載のNGF変異体。 13.trkBを与えるアミノ酸置換がD16で存在することを特徴とする請求 項12記載のNGF変異体。 14.さらにアミノ酸R119またはA120またはその両者の欠失を含む請求 項1記載のNGF変異体。 15.さらにアミノ酸R118の欠失を含む請求項14記載のNGF変異体。 16.請求項1記載のNGF変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸。 17.請求項16記載の核酸を含む発現ベクター。 18.請求項16記載の核酸を含む宿主細胞。 19.NGF変異体の発現を許容する条件の下で請求項18記載の宿主細胞を培 養することを含む、NGF変異体を生産する方法。 20.さらにNGF変異体を単離する工程を含む請求項19記載の方法。 21.請求項1記載のNGF変異体及び担体を含む組成物。 22.請求項1記載のNGF変異体の治療上の有効量を哺乳動物に投与すること を含む、哺乳動物における神経疾患を治療する方法。 23.神経疾患が末梢神経障害であることを特徴とする請求項22記載の方法。 24.神経疾患が糖尿病性末梢神経障害であることを特徴とする請求項23記載 の方法。 25.神経疾患が毒素誘導性末梢神経障害であることを特徴とする請求項23記 載の方法。 26.神経疾患が化学療法誘導性末梢神経障害であることを特徴とする請求項2 5記載の方法。 27.末梢神経障害がHIV関連性であることを特徴とする請求項23記載の方 法。 28.末梢神経障害が運動ニューロンに影響することを特徴とする請求項23記 載の方法。 29.trkCを結合することを特徴とする、trkC結合を与えるアミノ酸V 18,V20,G23及びH84,及びF86,Y79またはT81位のいずれ かで置換を有するNGFを含むNGF変異体。 30.T81及びF86の両者が置換されていることを特徴とする請求項29記 載のNGF変異体。 31.さらにT29の置換を含む請求項29記載のNGF変異体。 32.NGF126、NGF1234、NGF124、NGF125、NGF1 2,NGFR4、及びNGF123、及びNGF127より成る群から選択され る請求項29記載のNGF変異体。 33.さらにtrkB結合を与えるアミノ酸置換、若しくはtrkA結合を減少 または除去する修飾のいずれか、若しくは両者を含む請求項29記載のNGF変 異体。 34.請求項29記載のNGF変異体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸 。 35.請求項34記載の核酸を含む発現ベクター。 36.請求項34記載の核酸を含む宿主細胞。 37.NGF変異体の発現を許容する条件の下で請求項36記載の宿主細胞を培 養することを含む、NGF変異体を生産する方法。 38.さらにNGF変異体を単離する工程を含む請求項37記載の方法。 39.請求項29記載のNGF変異体及び担体を含む組成物。 40.請求項29記載のNGF変異体の治療上の有効量を哺乳動物に投与するこ とを含む、哺乳動物における神経疾患を治療する方法。
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