【発明の詳細な説明】
眼用組成物の制御放出
技術分野
本発明は、カルボン酸含有ポリマー−シクロデキストリン結合体、眼用組成物
の調製におけるそのような結合体の使用、およびこのような眼用組成物を使用し
て眼症状を処置する方法に関する。
背景
医学的症状、特に眼の医学的症状を、目に治療用組成物を直接投与することに
よって処置し得ることが長い間望まれている。局所送達(delivery)は、限られ
た量の治療用組成物が標的部位に直接提供され得ることを意味する。従って、局
所送達は、標的化されず、送達するためにより多くの量の治療用組成物が使用さ
れ、その結果、治療用組成物の眼におけるレベルが局所送達の場合よりも低い全
身送達よりも大きな利益を有する。
しかし、治療用組成物の眼への送達には、多数の問題が伴っている。投与され
る多くの組成物は、通常、1〜2%程度の低さでしか生物学的に利用されず、任意
の所与時間で送達される組成物の量もかなり変動し易いこともまた示されている
。さらに、組成物の眼で
の滞留時間は非常に短い傾向を有する。これは、特に半減期が短いそのような組
成物にとっては問題である。組成物の眼での短い滞留時間の結果として、一般に
は不便で、患者の見通しからは望ましくない頻繁な投薬が必要になる。
様々な試みが、このような問題を解決するために、特に、治療用組成物の眼で
の滞留時間を延ばすために行われている。このような試みには、下記が含まれる
− ゲルおよび軟膏を含む粘度増強剤の使用;
− 薬剤とともに負荷され、眼の盲管に置かれる挿入物;
− リポソーム、ナノ粒子およびミクロ粒子などの粒子状形態物;
− pHまたは温度またはイオン強度の変化に応答するポリマーなどのゲル化シス
テム;および
− 生体接着性ポリマー。
必要に応じて選択されるこれらは、上記の問題を部分的に解決するに過ぎない
。
近年、生体接着性ポリマーに基づく薬物送達ならびに制御放出システムの設計
および評価における関心は大きくなっている。このような生体接着性ポリマーは
、眼、鼻、口、膣、直腸および胃腸管を含む身体の様々な粘膜への薬物送達の足
場として使用されている。
生体接着性ポリマーは、薬物送達の足場として作用
することに加えて、薬物の放出速度および放出量をある程度制御することができ
る。しかし、薬物放出を制御するその能力は限られているため、制御は、ポリマ
ーよりも薬物の機能であることが多い。従って、いくつかの薬物については、送
達の足場を吸着部位で保持することが増強されているが、薬物の保持は良くない
。
カルボン酸基を含有するポリマーが、生体接着性ポリマーとして使用されてい
る。そのようなカルボン酸基含有ポリマーの例には、ポリアクリル酸(PAA)、
カルボキシメチルセルロースおよびヒアルロン酸が含まれる。例えば、ポリアク
リル酸ポリマーは、粘膜と相互作用して、薬物送達の足場を形成する能力を有す
ると記載されている。
シクロデキストリンの包接複合体もまた記載されている。シクロデキストリン
は、疎水性コアおよび親水性外面を有する環状オリゴ糖である。疎水性コアは、
シクロデキストリンが広範囲の薬物分子と包接複合体を形成することを可能にす
る。生成する包接複合体は、恒常的ではなく、むしろ、遊離の薬物との平衡状態
にある。従って、遊離の薬物が系から取り除かれると、複合体は解離し、再び平
衡状態を築く。さらに、シクロデキストリンは、生物学的膜を通して吸収されな
い。このような2つの特性により、遊離する薬物の供給を連続的に補充するシク
ロデキストリンが薬物の保
持体として作用し得るので、シクロデキストリンは薬物送達において特に有用で
ある。
シクロデキストリンポリマーは、「シクロデキストリン含有ポリマー」(Hara
da,A.他、Macromolecules 5(1976)701〜704)に開示されている。ポリアクリ
ル酸およびシクロデキストリンの結合体もまた、「シクロデキストリン含有ハイ
ドロゲルからの薬物の持続的放出」(Chino,M.他;Proceed.Intern.Symp.Co
ntrol.Rel.Bioact.Mater.18(1992)、Controlled Release Society Inc.9
8頁および99頁)に開示されている。
カルボン酸基含有ポリマー・シクロデキストリン結合体(CACP-CD)、より詳
細には、ポリアクリル酸−シクロデキストリン(PAA-CD)結合体を使用して、薬
物の制御放出を可能にすることができる。
驚くべきことに、本出願人は、今回、CACP-CD結合体を使用して、患者の眼に
投与されたときに、CACP-CD結合体のシクロデキストリン部分に包み込まれた眼
投与可能な薬物の生物学的利用能が増大し得ることを見出した。本発明の基礎は
、この一般的な発見に基づく。
従って、本発明の目的は、薬物が包み込まれるカルボン酸基含有ポリマー・シ
クロデキストリン結合体組成物を含む薬学的組成物を提供することである。これ
は、眼に投与するために、あるいは少なくとも、有用
な選択肢を社会に提供するために処方される。
発明の要旨
従って、第1の面において、本発明は、概略的に、眼投与可能な薬物が結合体
のシクロデキストリン部分に包み込まれたカルボン酸基含有ポリマー・シクロデ
キストリン結合体および眼科的に受容可能な液体キャリアまたは稀釈剤を含む眼
科的に受容可能な薬学的組成物にあるということができる。
カルボン酸基含有ポリマーは、ポリアクリル酸が好ましい。特に好ましいポリ
アクリル酸は、カーボポール(Carbopol)934P、または分子量が450,000のポリ
アクリル酸である。
好ましいシクロデキストリンは、β−シクロデキストリンまたはその誘導体で
あり、特にβ−シクロデキストリンのヒドロキシプロピル誘導体である。
さらなる面において、本発明は、患者の医学的症状を処置するために眼に投与
することが適切な眼用溶液の調製におけるカルボン酸基含有ポリマー・シクロデ
キストリン結合体の使用に関する。この医薬品は、眼投与可能な薬物が結合体の
シクロデキストリン部分に包み込まれているような形態である。
なおさらなる面において、本発明は、上記の眼用組成物を、それの必要な患者
の眼に投与する工程を含む患者の医学的症状を処置する方法を提供する。
大抵の場合、治療すべき医学的症状は、眼の医学的症状である。
本明細書中で使用されている用語である患者は、ヒト患者および非ヒトの動物
患者をいう。
図面の説明
本発明は、大略的には上記の通りであるが、本発明はこれらに限定されず、下
記の説明により実施例となるその実施形態もまた本発明に含まれることが当業者
により理解される。特に、本発明の好ましい面を、添付した図面を参照して説明
する。
図1は、ヒドロコルチゾン処方物の25μlを局所適用した後の角膜において、懸
濁処方物中のヒドロコルチゾン(HC)と、シクロデキストリン・カーボポール
934P結合体に包み込まれたヒドロコルチゾンとの生物学的利用能を比較するグラ
フである。
図2は、ヒドロコルチゾン処方物の25μlを局所適用した後の水性体液において
、懸濁処方物中のヒドロコルチゾン(HC)と、シクロデキストリン・カーボポ
ール934P結合体に包み込まれたヒドロコルチゾンとの生物学的利用能を比較する
グラフである。
発明の説明
第1の面において、本発明は、眼科的に受容可能で薬学的な液体組成物であっ
て、カルボン酸基含有ポリ
マー・シクロデキストリン(CACP-CD)結合体を取り込む液体組成物を提供する
。
結合体に生成において使用されるカルボン酸基含有ポリマーは、任意の知られ
ているカルボン酸基含有ポリマーを含むことができる。ただし、そのようなポリ
マーとしては、ヒトまたは動物の使用に既に認められたポリマーで、分子量範囲
が1000から1千万までのポリマーが好ましい。
適切なカルボン酸基含有ポリマーの例には、ヒアルロン酸類、ポリアクリル酸
類、ポリメタクリル酸類、ポリエタクリル酸類、カルボキシメチルセルロース類
、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等が含まれる。
特に好ましいものはポリアクリル酸類であり、特にカーボポール(Carbopol)
934P(B F Goodrich Co.(Cleveland、Ohio、U.S.A.)から入手可能)およびポ
リアクリル酸(Aldrich;MW 450,000、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee、Wisc
onsin、U.S.A.)から入手可能)である。
カーボポール(Carbopol)は、Goodrich Companyの登録商標である。
結合体の生成において使用されるシクロデキストリンは、α−シクロデキスト
リン、β−シクロデキストリンまたはγ−シクロデキストリンあるいはそれらの
機能的に等価な変化体または誘導体を含むことができ
る。本発明において有用なシクロデキストリンには、特に、ヒドロキシプロピル
誘導体、ヒドロキシエチル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル(maltosyl)
誘導体、マルトトリオゾール(maltotryosol)誘導体等が含まれる。特に好まし
いシクロデキストリンは、American Maize Products Co.(Hammond、Indianapo
lis、U.S.A.)から得られるβ−シクロデキストリンである。β−シクロデキス
トリンのヒドロキシプロピル誘導体もまた好ましい。
好ましいCACP-CD結合体は、ポリアクリル酸(PAA)−β−シクロデキストリン
結合体、またはPAAとβ−シクロデキストリンのヒドロキシプロピル誘導体との
結合体である。
本発明において使用されるCACP-CD結合体は、この分野で知られている従来の
方法のいずれかを使用して、選択されたCACPを選択されたCDに結合することによ
って調製することができる。
読者は、下記の調製法がPAA-CD結合体に関連しているが、下記の調製法は、CA
CP-CD結合体の調製およびそれを含有する薬学的組成物に一般に適用できること
に気づくであろう。
PAA-CD結合体を調製するための1つの方法が、論文「メトクロプラミド含有ハ
イドロゲルの膨張特性および放出特性に対するβ−シクロデキストリン濃度およ
びポリアクリル酸分子量の影響」(N.Garcia-Gonzal
ez他、International Journal of Pharmaceutics、100(1993)25-31、26頁)に
開示されている(これは参考として本明細書中に援用される)。
しかし、好ましい調製法は、所定量の選択されたポリアクリル酸を、N,N'-カ
ルボニルジイミダゾールおよび4−ピロリジノピリジンを含有するジメチルホル
ムアミド溶液に加え、次いで選択されたシクロデキストリンを適切な比で加える
ことである。次いで、溶液を(2日〜5日の程度の)長い期間混合する。次いで、
PAA-CD結合体を、標準的な沈澱技術、その後の遠心分離により単離する。次いで
、得られた結合体を精製する。
ポリアクリル酸に対するシクロデキストリンの比は、ポリアクリル酸のカルボ
ン酸基に対して存在するシクロデキストリン分子の数に基づく。
ポリアクリル酸のカルボン酸基に対するシクロデキストリンの適切な比は、実
質的には1:1から1:100までである。ポリアクリル酸のカルボン酸基に対するシ
クロデキストリンの好ましい比は、1:50〜1:60である。
シクロデキストリンの置換度は、各シクロデキストリン分子と反応したカルボ
ン酸基の数である。適切な比は、1:1〜1:14である。
溶液は、約3日間混合して、その後に沈澱させることが好ましい。一般には、
有機物(例えば、エーテル
)または酸による沈澱が好ましい。
一旦沈澱した結合体は、酸による洗浄を繰り返すか、あるいは透析、イオン交
換および限外ろ過の標準的手順により精製することができる。
本発明の眼用組成物における使用に適切な形態の製造物を得るために、製造物
は、使用前に凍結乾燥または粉砕がさらに行われる。
次の工程として、本発明の滅菌した眼用組成物を調製するときに、眼投与可能
な薬物は、上記のように形成されたPAA-CD結合体のシクロデキストリン部分に包
み込まれる。選択された薬物は、従来の包み込み技術を使用して包み込むことが
できる。
好ましい包み込み技術は、選択されたPAA-CD結合体を適切な溶媒に溶解し、そ
れを選択された眼科的に受容可能な薬物と混合することである。処方物が直ちに
使用されない場合、処方物は、必要に応じて凍結乾燥することができる。処方物
が凍結乾燥された場合、本発明の眼用組成物は、続いて、PAA-CD結合体を、包み
込まれた薬物と一緒に水などの眼科的に受容可能な稀釈剤またはキャリアに溶解
することによって調製される。必要に応じて、眼科的に受容可能なさらなる薬剤
を処方物に含めることができる。そのような薬剤の例には、緩衝剤、浸透圧を調
節する塩、抗菌剤およびキレート化剤が含まれる。
本発明の眼用組成物は、好ましくは、PAA-CD結合体
を、包み込まれ得る薬物およびキャリアまたは稀釈剤と、必要に応じて1つまた
は複数の眼科的に受容可能な上記の薬剤とを1つのプロセスで混合することによ
って調製される。
特に好ましいプロセスにおいて、薬物の包み込み工程および眼用組成物の調製
は、PAA-CD結合体の懸濁物を、包み込まれ得る薬物とともに水で混合することに
よって達成される。次いで、混合物を(1分〜20分の程度の)短い時間超音波処
理し、その後、(12時間〜36時間の程度の)より長い時間の回転が、実質的には
25℃〜45℃の間の温度で、約15rpm〜75rpmの間の回転速度で行われる。
混合物は、約2分間の超音波処理が行われ、その後、ビンの中で、24時間、33
℃および45rpmで回転(rotation end-over-end)することが最も望ましい。
組成物は、眼に投与されるので、滅菌状態で提供されることが重要である。こ
れは、組成物を無菌条件下で調製することによって、あるいは一旦製造した組成
物を滅菌することによって達成することができる。適切な滅菌技術には、特に、
放射線処理、オートクレーブ処理および(低分子量の結合体に関して)ろ過が含
まれる。次いで、組成物は、必要とする時まで室温で貯蔵することができる。
用語「薬物」は、ヒト治療および獣医学的治療の方法において有用な化合物ま
たは組成物を示すために広
い意味で使用される。PAA-CD結合体に取り込まれ、眼科的に受容可能な薬物の例
には、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、散瞳剤、毛様体筋麻痺薬、
縮瞳剤、β遮断薬、局所麻酔剤、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤および免疫
抑制剤が含まれる。
処方物に存在する薬物の量は、当然、所望されるように、w/v百分率基準で変
化し得る。一般に、薬物は、処方物の0.01%w/v〜5%w/vの範囲で処方物に存在
する。
さらなる面において、本発明は、患者の医学的症状を処置するために眼投与が
可能な適切な眼用医薬品の調製における上記のCACP-CD結合体の使用に関する。
なおさらなる面において、本発明は、ヒト患者または動物患者の医学的症状を
処置する方法であって、本発明の眼用組成物をその必要な患者の目に投与する過
程を含む方法に関する。
処置され得る医学的症状は、最も通常的には、細菌、真菌またはウイルスによ
る眼の感染または炎症状態などの眼症状である。本発明の組成物により処置され
やすい症状の例には、緑内障および結膜炎が含まれる。組成物はまた、麻酔薬と
して処方することができる。
本発明の方法において、上記のように調製された眼用組成物は、点眼容器また
はしぼり出し容器などの任意の従来の手段を使用して患者の眼に点眼されるか、
あるいはゲル、スプレーまたは挿入物の形態で投与することができる。
投与される組成物の量は、当然、投与される薬物により、そして処置され得る
症状に従って変化し得る。スプレーまたは点眼などの溶液については、投与量は
50μl(または、1滴)を超えないことが予想され、ゲルについては、投与量は50
mg〜100mgの程度であることが予想される。
使用において、眼用組成物は、その必要な患者の眼に投与される。本発明のい
くつかの組成物は、驚くべきことに、眼に投与されたときにゲルを形成すること
が見出された。このようなゲルは、薬物の生物学的利用能の増強を助けることが
できる。
より一般的には、増強された生物学的利用能は、下記の要因の1つまたは複数
から得られると考えられる:ポリマー結合体の複合体形成性および生体接着性に
よる眼内での薬物の増強された保持;薬物が分子状の形態で、かつ生体接着性ポ
リマーの存在下で分散されていること;あるいは角膜付近での薬物の高められた
濃度;あるいは薬物が内因性物質によって複合体から追い出され、角膜に接する
溶液を過飽和にし得る可能性とともに、これらの要因の組合せ。
今日までの試験により、PAA-CD結合体からの薬物の生物学的利用能は、薬物単
独の懸濁処方物からの薬物の生物学的利用能の実質的には2倍から実質的には10
倍にまで増大することが示されている。
次に、本発明の具体的で非限定的な実施例を記載する。
実施例1 PAA-シクロデキストリン結合体の合成
1.2gのカーボポール934Pを60mlの乾燥ジメチルホルムアミドに分散した。0.36
gのN,N'-カルボニルジイミダゾールを混合物に加え、30分間攪拌した。次いで、
0.6gの4-ピロリジノピリジンを含む40mlの乾燥ジメチルホルムアミドを、1.2gの
β−シクロデキストリンとともに加えた。混合物を3日間振盪した。その後、反
応混合物を800mlの希塩酸に加え、次いで、pH3に希塩酸(0.23M)で調節して、
シクロデキストリン・ポリマーを沈澱させた。生成物を遠心分離によって単離し
、洗液が282nmでの吸収を示さなくなるまで希塩酸で繰り返し洗浄することによ
って精製した。単離し、精製した生成物を凍結乾燥し、粉砕して使用した。
約1.2gのシクロデキストリン・カーボポール934Pポリマーを回収した。この生
成物は、20%w/wのβ−シクロデキストリンを含有していることが分かった。こ
の組成物を元素分析によって確認した。分析は、1分子のシクロデキストリンが
、平均して、ポリ(アクリル酸)のカルボン酸基の3.5個と相互作用しているこ
とを示唆する。シクロデキストリンのポリマー骨格への結合は、限外ろ過によっ
て決定されるように安定である。
実施例2 中分子量PAA−シクロデキストリン結合体の合成
1.2gのポリ(アクリル酸)(分子量450,000、Aldrich)を60mlの乾燥ジメチル
ホルムアミドに分散した。0.36gのN,N'-カルボニルジイミダゾールを混合物に加
え、30分間攪拌した。次いで、0.6gの4-ピロリジノピリジンを含む40mlの乾燥
ジメチルホルムアミドを、1.2gのβ−シクロデキストリンとともに加えた。混合
物を3日間振盪した。その後、反応混合物を400mlの乾燥エーテルに加えて、シク
ロデキストリン・ポリマーを沈澱させた。続いて生成物を単離し、真空乾燥して
残留エーテルを除いた。次いで、生成物を3.3%w/vの濃度になるように水に溶解
し、カチオン交換樹脂(アンバーライトIR20)とともに30分間攪拌した。溶液を
pH5に調節して、デカンテーションした。生成物を、10,000の分子量遮断膜によ
る限外ろ過を行い、精製水で5回洗浄することによってさらに精製した。生成物
を、最終的には、凍結乾燥により単離した。
この生成物は、20%w/wのβ−シクロデキストリンを含有していることが分か
り、25mg/mlを超える水の溶解度を有していた。
実施例3 眼用組成物の調製
実施例1のβ−シクロデキストリン・PAA(934P)
を水に懸濁させた5%懸濁液の10mlを30mgのヒドロコルチゾンに加えて、2分間の
超音波処理を行った。次いで、溶液をビンに入れ、激しく攪拌して、24時間、33
℃および45rpmで回転(rotation end-over-end)させた。存在するすべてのヒド
ロコルチゾンは、複合体化されたか、または溶液中に存在した。
実施例4 懸濁剤として処方されたヒドロコルチゾン、およびカーボポール934P
−シクロデキストリン結合体との複合物として処方されたヒドロコルチゾンの眼
での生物学的利用能の比較
懸濁剤として処方されたヒドロコルチゾン、およびシクロデキストリン・カー
ボポール934Pポリマーとの複合物として処方されたヒドロコルチゾンの眼での生
物学的利用能の比較。
ヒドロコルチゾンの0.3%w/v懸濁処方物の眼での生物学的利用能を、シクロデ
キストリン・カーボポール934Pポリマーを使用して処方した0.3%w/vヒドロコル
チゾンおよび0.1%w/vヒドロコルチゾンの眼での生物学的利用能と比較した。各
処方物の25μlをウサギの目に滴下した。滴下後の様々な時間間隔で、ウサギを
屠殺して、様々な眼の組織におけるヒドロコルチゾン濃度を測定した。結果を図
1および図2のグラフに示す。
結果
シクロデキストリンカーボポール934Pポリマーを含有する0.3%w/v処方物の(
最初の3時間にわたる濃度時間特性の面積によって決定される)水性体液での生
物学的利用能は、懸濁処方物の生物学的利用能よりも6倍高いことが見出された
(図2参照)。生物学的利用能の同様の増大が、角膜(図1参照)および虹彩/毛
様体について観測された。他のすべての眼組織における生物学的利用能もまた、
シクロデキストリン・カーボポール934Pポリマーにより様々な大きさ(少なくと
も2倍)に増大した。
産業上の利用可能性
本発明により、眼投与が可能な薬物の制御放出を可能にし、そして生物学的利
用能のレベルにおいて、薬物がそれ自身の懸濁処方物または溶液処方物で投与さ
れる場合の生物学的利用能のレベルから有意に増強された眼用組成物が提供され
る。従って、本発明の眼用組成物は、医学的症状、特に眼症状の処置における利
点をより効果的に提供するか、あるいは少なくとも、代替的でかつ潜在的に優れ
た投与方法を提供する。本発明の眼用組成物により、標的化された局所送達が、
薬物滞留時間の延長とともに達成され、従って頻繁な投薬の必要性が低くなる。
有害な反応、副作用、および送達される薬物量の変動が、本発明の眼用組成物を
使用して低下する。眼症状の処置における費用の削減もまた、より効果的な薬物
処方物の製造ができることにより可能である。
上記の説明は例として提供されるのみであって、本発明の範囲は、添付した請
求項の法に従った範囲によって限定されるだけであることが当業者によりさらに
理解される。特に、ヒドロコルチゾン以外の薬物を、眼に送達するための組成物
に容易に包み込むことができる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY,
DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I
T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ
,CF,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,
NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,L
S,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ
,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL
,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,
BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,E
E,ES,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU
,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,M
D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL
,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,
SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,U
Z,VN,YU,ZW
(72)発明者 タッカー イアン
ニュー・ジーランド国 ダニーディン ア
ール ディー 2 ポートベロー ロード
211