【発明の詳細な説明】
往復ピストン内燃機関
本発明は、往復ピストン内燃機関、特に大型ディーゼルエンジンに関するもの
である。本発明に係る内燃機関は、シリンダ内に配置された少なくとも1つのピ
ストンを備えており、このピストンが周囲を取り囲む複数の溝を備えている。こ
れらの溝には、少なくとも部分的にそれぞれ張力下でシリンダに当接する開いた
ピストンリングが配設されており、このピストンリングの両端部がスリットを形
成している。
端部で開いたピストンリングの両端部によって区画されたスリットは、漏れ通
路を形成し、この漏れ通路を介して該当するピストンリングの上側の領域が、こ
のピストンリングの下側の領域とつながり、またこの漏れ通路を介して燃焼圧が
相応に上から下へ広がることができる。従来、端部で開いたピストンリングは、
その両端部によって区画されたスリットとしての漏れ通路しか備えていない。従
ってこの場合、それぞれの次のピストンリングの隙間に対向する領域が、熱によ
って過負荷にさらされる危険がある。このことはピストンリング張力の損失や、
該当するピストンリングの破損につながる可能性がある。さらに別の欠点は、ピ
ストンリングの摩耗が増えるにつれて、ピストンリングの両端部で区画されたス
リットの内のりの幅が増大し、及びそれに伴って断面積も増大するという点であ
る。このことは運転している間に下側の領域での圧力生成が増大することにつな
がり、これは望ましくない。
そこで上記を前提とする本発明の課題は、冒頭に述べた種類の構成を簡単かっ
低コストな方法で改良して、ピストンリングパッケージにおけるピストンリング
の機械的負荷及び熱的負荷が均等になるようにすることである。
この課題は、少なくとも1つの開いたピストンリングが、その外周の領域に複
数の溝を設けることで解決される。
この対策によって、冒頭に述べたような欠点を完全に防ぐことができる。外周
側の溝は追加的な漏れ通路を形成し、これがそれぞれ下側のピストンリングの熱
的負荷及び機械的負荷の信頼性の高い均等化につながる。有利には、ピストンリ
ングパッケージにおける全てのピストンリングが上述のような方法で構成され、
それによってピストンリングパッケージ全体にわたって均等化が得られる。本発
明の方策により、本発明のピストンリングが摩耗したとき、全ての漏れ通路の断
面積の合計がほぼ同じに保たれることが保証される。摩耗が起きた場合、ピスト
ンリングの両端部で区画されたスリットの内のりの幅は増大する。しかし、それ
と同時に外周側の溝の深さが減るので、隙間の領域における断面積の増加が相殺
され、もしくは少なくとも和らげられ、それによって長期の耐用年数を越えても
ピストンリングの圧力負荷が近似的に同じに保たれる。従って本発明の方策は、
全体としてピストンリングの比較的長い耐用寿命を約束するとともに、それに伴
う優れた全体的経済性を生むものである。
国際特許出願WO94/12815号公開公報により外周側の溝を備えたピス
トンリングが公知ではあるが、この公知のピストンリングはスリットを区画する
端部を備えているのでなく、互いに気密に重なり合った端部を備えている。摩耗
が起こった場合、外周側の溝の断面積が減少し、それによって下方への圧力の伝
導も減少する。その結果、一番上のピストンリングの負荷が破損の危険を伴うま
でに増え、逆に下側のピストンリングの圧力負荷は過度に低下する。従ってこの
方策は、本発明の課題を解決するための手本とはならない。
優先させるべき方策の目的に適った構成、及び有利な発展形態は、従属請求項
に記載されている。
例えばビストンリングの外周側の溝の断面積の合計を、その両端部によって区
画され摩耗状態にあるスリットの断面積のほぼ80%にすることができる。この
値は、全ての漏れ通路の断面積合計が使用期間を越えてもほぼ同じに保たれる、
最良の経験値である。
さらに別の有利な方策として、外周側の溝と、両端部によって区画されたスリ
ットとを、所属のピストンリングの円周にわたって均等に分配することができる
。それにより、円周全体にわたって負荷の極めて均等な配分が得られる。
有利には、全てのピストンリングにスリット及び外周側の溝を備えることがで
きる。それにより、ピストンリングパッケージの全てのピストンリングが近似的
に同一の負荷を受けることが保証される。同時にこのことは、在庫維持及び組立
作業を容易にする。
さらに目的に適った別の方策として、所属のピストンリングの両端部によって
区画されたスリットを、有利にはピストンの軸に対して傾けて設け、このスリッ
トに対して、少なくとも部分的に平行な溝を形成することができる。こうして外
周側の溝が傾斜している結果として、運転中に、該当するピストンリングの信頼
性の高い回転をもたらすことが達成され、このことは同じく賃荷の均等化に対し
て有利であり、特にピストンリングに付着されたピストン側のクロムメッキの熱
的負荷の均等化に対して有利である。
さらに、ピストンリングの高さ全体にわたって熱的な負荷を均等化するため、
外周側の溝を少なくとも部分的にさまざまに構成することができ、例えば平行な
側面や平行でない側面を有するようにすると、目的に適っている場合がある。
優先させるべき方策のさらに別の有利な構成、及び目的に適った発展形態は、
残りの従属請求項に記載されているとともに、図面を用いた以下の実施形態の説
明からも明らかである。
以下の説明で参照する図面は、それぞれ次のとおりである:
図1は、往復ピストン内燃機関のシリンダ・ピストン構造部を示す部分断面図
である:
図2は、本発明のピストンリングを示す外観図である。
図1は、シリンダ2の中で軸方向に運動可能に配置されたピストン1を示して
いる。ここに示すシリンダ・ピストン構造部は、例えば船舶の駆動装置として利
用されているような、大型ディーゼルエンジンの形態をとる往復ピストン内燃機
関に属するものである。このような種類の往復ピストン内燃機関の構造と作用形
式は、それ自体公知である。
ピストン1は、互いに上下に配置された複数のピストンリング3からなるピス
トンリングパッケージを備えている。このピストンリングパッケージにより、ピ
ストン1の上側にある燃焼室4は、ピストンの下側にあるクランク室5に対して
密閉されている。ピストンリング3は、ピストン1の円周に刻まれた溝6の中に
それぞれ配設されているとともに、その外周がシリンダ2の内側表面に当接して
いる。溝6は、それぞれに配設されたピストンリング3に対して、半径方向及び
軸方向に大きめの寸法を有していて、ピストンリング3の上側と半径方向内側に
隙間7,8ができるようになっている。この隙間7,8に入り込んだ気体が、ピ
ストンリング3に対する軸方向及び半径方向の圧力負荷を生む。
円周を取り囲むそれぞれの溝6の間には、円周を取り囲むウェブ9があって、
この上にそれぞれのピストンリング3が配設されている。優れた滑り特性を得る
ために、ウェブ9の載置面にはクロムメッキが施されている。
少なくとも1つのピストンリング3、または少なくとも中央のピストンリング
3は、図2に示すように端部が開いている種類のピストンリングとして構成され
ている。図示した有利な実施形態では、この構成が4つのピストンリング3全て
に該当している。しかしながら特殊なケースでは、一番下側及び/またば一番上
側のピストンリング3を、互いに重なりあったリング端部をもつ気密なピストン
リングとして構成することも考えられる。
開いたピストンリング3の互いに対向する端部10,11は、スリット12を
区画形成している。スリット12は軸平行に延びていてよく、もしくは図示した
ようにピストン1の軸に対して、及びそれに伴ってピストンリングパッケージの
個々のピストンリング3に対して傾斜していてもよい。これに関する角度範囲は
、0°から45°までに及ぶ。スリット12は漏れ通路として構成されており、
これを通じて燃焼ガスが該当するピストンリング3の上側の領域から、該当する
ピストンリング3の下側の領域へと達することができるので、ピストンリングパ
ッケージの全てのピストンリング3には、軸方向及び半径方向の負荷が加えられ
ることになり、このことが信頼性の高いシール作用を生む。
ピストンリング3の上側の領域からピストンリング3の下側の領域へと通過し
て流れるカスは、通過領域で、その下にあるピストンリングに当たる。こうして
ガスが当たったそれぞれのピストンリング3の局所的な熱的過負荷を防ぐため、
そしてできるだけ均等な負荷を生じさせるために、開いたピストンリング3は、
図2を見ると分かるように外周の領域に配置された溝13を備えている。ピスト
ンリングの高さ全体にわたって連続しているこの溝13が、追加的な漏れ通路を
形成する。そのため燃焼ガスは複数の部位を通過することになり、このことが、
それぞれ下側のピストンリング3の一つの部位に過大な負荷が生じるのを防ぐ。
図示した実施形態では、ピストンリング3の全ての溝13が同じ形式で平行な
側面を備えており、このことは格別に簡単な製造を可能にする。しかしながらピ
ストンリング3の高さにわたって熱的な負荷を均等化するために、溝13をそれ
ぞれ異なるように形成し、及び/または平行でない側面を備えるのが有利な場合
も少なくない。
同様に、溝13の延びる方向は、負荷の優れた均等性を得るために、0°から
45°までと広い範囲で選択することが可能である。図示した実施形態では、溝
13は、ピストンリング3の傾斜したスリット12に対して平行に延びており、
つまり同じようにピストン1の軸に対して傾き、それに伴ってピストンリング3
の軸に対しても傾いている。溝13とスリット12の傾斜は、運転中にピストン
リング3の信頼性の高い回転を生み、このことが均等性をさらに向上させるとと
もに、ウェブ9のクロムメッキの熱的な負荷も信頼できる範囲内にとどまること
を保証する。
溝13の大きさ及び数は、ピストンリングパッケージの高さにわたって変化し
ていてもよい。溝13の数としては、2〜8が選択されるが、少なくとも2つの
溝13が設けられる。図示した実施形態では4つの溝が設けられている。溝13
は、有利にはスリット12とともにピストンリング3の円周に均等に分配して配
置されるので、等しい角距離が生まれる。それにより、それぞれの下側のピスト
ンリングの負荷の、極めて良好な均等性を得ることができる。
運転を続けるうちに、ピストンリング3はその外周で摩耗する。そのため、ピ
ストンリング3の摩耗が増えるにつれて溝13の深さは減少する。こうしたピス
トンリングの厚さの減少はピストンリング3が広がることで補償され、それによ
ってスリット13は相応に拡大する。従って摩耗が進むにつれて、漏れ通路とし
て形成された溝13の断面積は減少し、同時にやはり漏れ通路として形成された
スリット12の断面積は増大する。これらの断面積は、長期の運転時間を越えて
もなお、ほぼ同じ全体的関係が得られるように、つまりほぼ同じ合計断面積が得
られるように互いに調節されている。そのために溝13は、有利には、初期状態
の全ての溝13の断面積の合計が、摩耗したピストンリング3のスリットの断面
積より大きくないように、有利にはやや小さくなるように形成されている。断面
積の割合か60から90%、有利には80%であると、格別に好ましいことが判
明している。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成11年2月2日(1999.2.2)
【補正内容】
明細書
往復ピストン内燃機関
本発明は、往復ピストン内燃機関、特に大型ディーゼルエンジンに関するもの
である。本発明に係る内燃機関は、シリンダ内に配置された少なくとも1つのピ
ストンを備えており、このピストンが周囲を取り囲む複数の溝を備えている。こ
れらの溝には、少なくとも部分的にそれぞれ張力下でシリンダに当接する開いた
ピストンリングが配設されており、このピストンリングの両端部がスリットを形
成している。このとき少なくとも1つの開いたピストンリングは、その外周領域 に配置された複数の溝を有している。
端部で開いたピストンリングの両端部によって区画されたスリットは、漏れ通
路を形成し、この漏れ通路を介して該当するピストンリングの上側の領域が、こ
のピストンリングの下側の領域とつながり、またこの漏れ通路を介して燃焼圧が
相応に上から下へ広がることができる。従来、端部で開いたピストンリングは、
その両端部によって区画されたスリットとしての漏れ通路しか備えていない。従
ってこの場合、それぞれの次のピストンリングの隙間に対向する領域が、熱によ
って過負荷にさらされる危険がある。このことはピストンリング張力の損失や、
該当するピストンリングの破損につながる可能性がある。さらに別の欠点は、ピ
ストンリングの摩耗が増えるにつれて、ピストンリングの両端部で区画されたス
リットの内のりの幅が増大し、及びそれに伴って断面積も増大するという点であ
る。このことは運転している間に下側の領域での圧力生成が増大することにつな
がり、これは望ましくない。
英国特許第2124332号公開公報には、張力下でシリンダに当接する開い たピストンリングにおいて、円周側の溝を備えているものが記載されている。し かしながらこの溝は漏れ通路ではなく油溝であって、ピストンリングの高さ全体 にわたって通過してはいない。漏れ通路として構成された溝は設けられていない 。
国際特許出願WO94/12815号公開公報には、ピストンの高さ全体にわ たって通じている円周側の溝を備えたピストンリングが記載されている。しかし ながらこの公知のピストンリングは、互いに気密に重なり合った端部を有して円 周側で閉じたピストンリングである。
摩耗が起こった場合、外周側の溝の断面積
が減少し、それによって下方への圧力の伝導も減少する。その結果、一番上のピ
ストンリングの負荷が破損の危険を伴うまでに増え、逆に下側のピストンリング
の圧力負荷は過度に低下する。 そこで上記を前提とする本発明の課題は、冒頭に述べた種類の構成を簡単かつ
低コストな方法で改良して、ピストンリングパッケージにおけるピストンリング
の機械的負荷及び熱的負荷が均等になるようにすることである。
この課題は、漏れ通路を形成している溝の初期状態における総断面積が、最大 でも、摩耗したピストンリングの端部によって区画されたスリットの断面積に相 当するように構成する
ことで解決される。
この対策によって、冒頭に述べたような欠点を完全に防ぐことができる。外周
側の溝は追加的な漏れ通路を形成し、これがそれぞれ下側のピストンリングの熱
的負荷及び機械的負荷の信頼性の高い均等化につながる。有利には、ピストンリ
ングパッケージにおける全てのピストンリングが上述のような方法で構成され、
それによってピストンリングパッケージ全体にわたって均等化が得られる。本発
明の方策により、本発明のピストンリングが摩耗したとき、全ての漏れ通路の断
面積の合計がほぼ同じに保たれることが保証される。摩耗が起きた場合、ピスト
ンリングの両端部で区画されたスリットの内のりの幅は増大する。しかし、それ
と同時に外周側の溝の深さが減るので、隙間の領域における断面積の増加が相殺
され、もしくは少なくとも和らげられ、それによって長期の耐用年数を越えても
ピストンリングの圧力負荷が近似的に同じに保たれる。従って本発明の方策は、
全体としてピストンリングの比較的長い耐用寿命を約束するとともに、それに伴
う優れた全体的経済性を生むものである。 優先させるべき方策の目的に適った構成、及び有利な発展形態は、従属請求項
に記載されている。
例えばピストンリングの外周側の溝の断面積の合計を、その両端部によって区
画され摩耗状態にあるスリットの断面積のほぼ80%にすることができる。この
値は、全ての漏れ通路の断面積合計が使用期間を越えてもほぼ同じに保たれる、
最良の経験値である。
さらに別の有利な方策として、外周側の溝と、両端部によって区画されたスリ
ットとを、所属のピストンリングの円周にわたって均等に分配することができる
。それにより、円周全体にわたって負荷の極めて均等な配分が得られる。
有利には、全てのピストンリングにスリット及び外周側の溝を備えることがで
きる。それにより、ピストンリングパッケージの全てのピストンリングが近似的
に同一の負荷を受けることが保証される。同時にこのことは、在庫維持及び組立
作業を容易にする。
さらに目的に適った別の方策として、所属のピストンリングの両端部によって
区画されたスリットを、有利にはピストンの軸に対して傾けて設け、このスリッ
トに対して、少なくとも部分的に平行な溝を形成することができる。こうして外
周側の溝が傾斜している結果として、運転中に、該当するピストンリングの信頼
性の高い回転をもたらすことが達成され、このことは同じく賃荷の均等化に対し
て有利であり、特にピストンリングに付着されたピストン側のクロムメッキの熱
的負荷の均等化に対して有利である。
さらに、ピストンリングの高さ全体にわたって熱的な負荷を均等化するため、
外周側の溝を少なくとも部分的にさまざまに構成することができ、例えば平行な
側面や平行でない側面を有するようにすると、目的に適っている場合がある。
優先させるべき方策のさらに別の有利な構成、及び目的に適った発展形態は、
残りの従属請求項に記載されているとともに、図面を用いた以下の実施形態の説
明からも明らかである。
以下の説明で参照する図面は、それぞれ次のとおりである:
図1は、往復ピストン内燃機関のシリンダ・ピストン構造部を示す部分断面図
である:
図2は、本発明のピストンリングを示す外観図である。
図1は、シリンダ2の中で軸方向に運動可能に配置されたピストン1を示して
いる。ここに示すシリンダ・ピストン構造部は、例えば船舶の駆動装置として利
用されているような、大型ディーゼルエンジンの形態をとる往復ピストン内燃機
関に属するものである。このような種類の往復ピストン内燃機関の構造と作用形
式は、それ自体公知である。
ピストン1は、互いに上下に配置された複数のピストンリング3からなるピス
トンリングパッケージを備えている。このピストンリングパッケージにより、ピ
ストン1の上側にある燃焼室4は、ピストンの下側にあるクランク室5に対して
密閉されている。ピストンリング3は、ピストン1の円周に刻まれた溝6の中に
それぞれ配設されているとともに、その外周がシリンダ2の内側表面に当接して
いる。溝6は、それぞれに配設されたピストンリング3に対して、半径方向及び
軸方向に大きめの寸法を有していて、ピストンリング3の上側と半径方向内側に
隙間7,8ができるようになっている。この隙間7,8に入り込んだ気体が、ピ
ストンリング3に対する軸方向及び半径方向の圧力負荷を生む。
円周を取り囲むそれぞれの溝6の間には、円周を取り囲むウェブ9があって、
この上にそれぞれのピストンリング3が配設されている。優れた滑り特性を得る
ために、ウェブ9の載置面にはクロムメッキが施されている。
少なくとも1つのピストンリング3、または少なくとも中央のピストンリング
3は、図2に示すように端部が開いている種類のピストンリングとして構成され
ている。図示した有利な実施形態では、この構成が4つのピストンリング3全て
に該当している。しかしながら特殊なケースでは、一番下側及び/または一番上
側のピストンリング3を、互いに重なりあったリング端部をもつ気密なピストン
リングとして構成することも考えられる。
開いたピストンリング3の互いに対向する端部10,11は、スリット12を
区画形成している。スリット12は軸平行に延びていてよく、もしくは図示した
ようにピストン1の軸に対して、及びそれに伴つてピストンリングパッケージの
個々のピストンリング3に対して傾斜していてもよい。これに関する角度範囲は
、0°から45°までに及ぶ。スリット12は漏れ通路として構成されており、
これを通じて燃焼ガスが該当するピストンリング3の上側の領域から、該当する
ピストンリング3の下側の領域へと達することができるので、ピストンリングパ
ッケージの全てのピストンリング3には、軸方向及び半径方向の負荷が加えられ
ることになり、このことが信頼性の高いシール作用を生む。
ピストンリング3の上側の領域からピストンリング3の下側の領域へと通過し
て流れるガスは、通過領域で、その下にあるピストンリングに当たる。こうして
ガスか当たったそれぞれのピストンリング3の局所的な熱的過負荷を防ぐため、
そしてできるだけ均等な負荷を生じさせるために、開いたピストンリング3は、
図2を見ると分かるように外周の領域に配置された溝13を備えている。ピスト
ンリングの高さ全体にわたって連続しているこの溝13が、追加的な漏れ通路を
形成する。そのため燃焼ガスは複数の部位を通過することになり、このことが、
それぞれ下側のピストンリング3の一つの部位に過大な負荷が生じるのを防ぐ。
図示した実施形態では、ピストンリング3の全ての溝13が同じ形式で平行な
側面を備えており、このことは格別に簡単な製造を可能にする。しかしながらピ
ストンリング3の高さにわたって熱的な負荷を均等化するために、溝13をそれ
ぞれ異なるように形成し、及び/または平行でない側面を備えるのが有利な場合
も少なくない。
同様に、溝13の延びる方向は、負荷の優れた均等性を得るために、0°から
45°までと広い範囲で選択することが可能である。図示した実施形態では、溝
13は、ピストンリング3の傾斜したスリット12に対して平行に延びており、
つまり同じようにピストン1の軸に対して傾き、それに伴ってピストンリング3
の軸に対しても傾いている。溝13とスリット12の傾斜は、運転中にピストン
リング3の信頼性の高い回転を生み、このことが均等性をさらに向上させるとと
もに、ウェブ9のクロムメッキの熱的な負荷も信頼できる範囲内にとどまること
を保証する。
溝13の大きさ及び数は、ピストンリングパッケージの高さにわたって変化し
ていてもよい。溝13の数としては、2〜8が選択されるが、少なくとも2つの
溝13が設けられる。図示した実施形態では4つの溝が設けられている。溝13
は、有利にはスリット12とともにピストンリング3の円周に均等に分配して配
置されるので、等しい角距離が生まれる。それにより、それぞれの下側のピスト
ンリングの負荷の、極めて良好な均等性を得ることができる。
運転を続けるうちに、ピストンリング3はその外周で摩耗する。そのため、ピ
ストンリング3の摩耗が増えるにつれて溝13の深さは減少する。こうしたピス
トンリングの厚さの減少はピストンリング3が広がることで補償され、それによ
ってスリット12は相応に拡大する。従って摩耗が進むにつれて、漏れ通路とし
て形成された溝13の断面積は減少し、同時にやはり漏れ通路として形成された
スリット12の断面積は増大する。これらの断面積は、長期の運転時間を越えて
もなお、ほぼ同じ全体的関係が得られるように、つまりほぼ同じ合計断面積が得
られるように互いに調節されている。そのために溝13は、有利には、初期状態
の全ての溝13の断面積の合計が、摩耗したピストンリング3のスリットの断面
積より大きくないように、有利にはやや小さくなるように形成されている。断面
積の割合が60から90%、有利には80%であると、格別に好ましいことが判
明している。
請求の範囲
1. シリンダ(2)内に配置された少なくとも1つのピストン(1)を備え、
該ピストンはその周囲を取り囲む複数の溝(6)を有しており、これらの溝には
、少なくとも部分的にそれぞれ張力下でシリンダ(2)に当接する開いたピスト
ンリング(3)が配設され、該ピストンリングの端部(10,11)がスリット
(12)を形成し、前記少なくとも1つの開いたピストンリング(3)はその外
周領域に形成された複数の溝(13)を有している特に大型ディーゼルエンジン
に代表される往復ピストン内燃機関において、
漏れ通路を形成している前記溝(13)の初期状態における総断面積は、最大
でも、摩耗した前記ピストンリング(3)の端部(10,11)によって区画さ
れたスリット(12)の断面積相当であることを特徴とする往復ピストン内燃機
関。2
. 前記溝(13)の初期状態における総断面積は、摩耗した前記ピストンリ
ング(3)の端部(10,11)によって区画されたスリット(12)の断面積
よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の往復ピストン内燃機関。3
. 前記溝(13)の初期状態における総断面積は、摩耗した前記ピストンリ
ング(3)の端部(10,11)によって区画されたスリット(12)の断面積
の60%から90%、有利には80%であることを特徴とする請求項1または2
に記載の往復ピストン内燃機関。4
. 前記外周側の溝(13)と、端部(10,11)によって区画されたスリ
ット(12)とが、前記ピストンリング(3)の円周に均等に配分されているこ
とを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の往復ピストン内燃機関。5
. 前記外周側の溝(13)の数は、2〜8であることを特徴とする請求項1
から4のいずれかに記載の往復ピストン内燃機関。6
. 少なくとも他のピストンリング(3)の上側及び/または下側に配置され
た前記各ピストンリング(3)が、前記スリット(12)と前記外周側の溝(1
3)とを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の往復ピ
ストン内燃機関。7
. 前記ピストンリング(3)の全てが、スリット(12)及び外周側の溝(
13)を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の往復ピ
ストン内燃機関。8
. 前記ピストンの溝(6)の領域には、それぞれ所属のピストンリング(3
)の方を向いたクロムメッキが施されていることを特徴とする請求項1から7の
いずれかに記載の往復ピストン内燃機関。9
. 前記各溝(13)は、少なくとも部分的に同じ構成を有していることを特
徴とする請求項1から8のいずれかに記載の往復ピストン内燃機関。10
. 前記各溝(13)は、少なくとも部分的に平行な側面を有していること
を特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の往復ピストン内燃機関。11
. 前記各溝(13)は、少なくとも部分的に、所属のピストンリング(3
)の端部(10,11)によって区画されたスリット(12)と平行に延びてい
ることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の往復ピストン内燃機関
。12
. 前記スリット(12)及び/または前記溝(13)は、前記ピストンの
軸に対して傾いていることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の往
復ピストン内燃機関。13
. 前記各溝(13)は、少なくとも部分的に異なっていることを特徴とす
る請求項1から12のいずれかに記載の往復ピストン内燃機関。14
. 前記外周側の溝(13)の数及び/または大きさが、1つのピストンリ
ングパッケージのピストンリング(3)内でバリエーションをもっていることを
特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の往復ピストン内燃機関。
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