【発明の詳細な説明】
骨欠乏状態を治療するためのピペラジン誘導体
発明の背景
骨は静的組織ではない。それは、新しい骨を作り出す骨芽細胞及び骨を破壊す
る破骨細胞により媒介される複合過程において一定の破壊及び再生にかけられる
。これらの細胞の活性化は、その多くが現在同定され、クローン化されている多
数のサイトカイン及び成長因子により制御される。Mundyは、現在のこれらの因
子に関する知見を記述する(Mundy,Clin .Orthop.324:24-28,1996;Mundy,J .Bone Miner.Res
.8:8505-10,1993)。
骨の破損及び吸収に作用する因子に関する利用できる多くの情報があるが、新
しい骨の形成を刺激する成長因子に関する情報はより限定されている。研究者ら
はこのような活性の源について調査しており、骨組織自体が骨細胞を刺激する能
力を有する因子のための貯蔵庫であることを見い出した。これにより、屠殺場か
ら得られたウシの骨組織の抽出物は、骨の構造物一体性を維持する原因となる構
造タンパク質ばかりでなく、骨細胞の増殖を刺激することができる生物学的に活
性を骨の成長因子も含む。これらの因子の中には形質転換成長因子β−ヘパリン
結合性成長因子(酸性及び塩基性繊維芽細胞成長因子)、インスリン様成長因子
(インスリン様成長因子I及びインスリン様成長因子II)、骨形態発生タンパク
質(BMP)と呼ばれる現在記載されるタンパク質のファミリーがある。これらの成
長因子は全て、他の型の細胞及び骨細胞に効果を有する。
BMPは広大な形質転換成長因子βスーパーファミリーの中の新しい因子である
。それらは最初に、Wozney J.ら(Science 242:15
28-34,1980)により、遺伝子クローニング技術を用いて、脱灰化骨の抽出物にお
いて生物活性をキャラクタライズする初期の記述(Urist,Science 150:893-99
,1965)の後に同定された。組換えBMP2及びBMP4は、ラットの皮下組織内に局
所的に注入した時に新しい骨の形成を誘導することができる(Wozney,Molec .Re prod.Dev
.32:160-67,1992)。これらの因子は、それらが分化した時に正常な
骨芽細胞により発現され、試験管内で骨芽細胞分化及び骨小節形成を、並びに生
体内で骨形成を刺激することが示されている(Harrisら、J .Bone.Miner.Res.
9:855-63,1994)。この後者の特性は、骨欠乏を生ずる病気において治療剤とし
て潜在的に役立つことを示唆する。
骨を形成する原因である細胞は骨芽細胞である。骨芽細胞が前駆体から成熟骨
形成細胞に分化するにつれ、それらはいくつかの酵素及び骨マトリックスの構造
タンパク質、たとえばI型コラーゲン、オステオカルシン、オステオポンチン及
びアルカリホスファターゼを発現し、分泌する(Stein Gら、Curr .Opin.Cell Biol
.2:1018-27,1990;Harris Sら(1994)、前掲)。それらは、骨マトリック
ス内に貯蔵され、おそらく正常な骨形成の原因であるいくつかの成長調節ペプチ
ドも合成する。これらの成長調節ペプチドには、BMPがある(Harrisら、1994、
前掲)。胎児ラット頭蓋冠骨芽細胞の一次培養物の研究において、BMP1,2,
3,4、及び6は、脱灰化骨結節の形成の前に、培養された細胞によ発現される
(Harrisら(1994)、前掲)。アルカリホスファターゼ、オステオカルシン及び
オステオパンチンと同様に、BMPはそれらが増殖し、分化するにつれて培養され
た骨芽細胞により発現される。
BMPは試験管内及び生体内において骨形成の潜在的な刺激剤であるが、骨の治
癒を増強するための治療剤として用いるのに欠点があ
る。骨形態発生タンパク質のためのレセプターが多くの組織内で同定されており
、BMP自体は特定の一時的及び場所的パターンで多くの種々の組織内で発現され
る。このことは、BMPが骨以外の多くの組織への効果を有し得、全身に投与した
時の治療剤としての有用性を潜在的に制限する。更に、それらはペプチドである
ので、注入により投与されなければならない。これらの欠点は、治療剤としての
BMPの開発にきびしい制限を課す。
骨形成を増強することが必要であることを特徴とする多くの状態がある。おそ
らく、最も明白なのは骨折の場合である。この場合には、骨の成長を刺激するこ
と並びに骨の修復を促進し、完了することが要求されよう。骨形成を増強する剤
は、顔の再構成術にも役立つであろう。他の骨欠損状態には、骨分節欠損、歯周
疾患、転移性の骨の疾患、溶骨性疾患、及び結合組織修飾が有益であろう状態、
例えば軟骨欠損又は傷害の治癒又は再生がある。また、かなり重要なのは、骨粗
しょう症の慢性状態、例えば老化関連の骨粗しょう症及び閉経期後ホルモン状態
に関連する骨粗しょう症である。他の骨の成長を必要とすることを特徴とする状
態には、原発性及び二次性副甲状腺機能亢進症、非活動性骨粗しょう症、糖尿病
関連骨粗しよう症、及びグルココルチコイド関連骨粗しょう症がある。更に、又
はあるいは、本発明の化合物は、正常又は異常細胞又は組織の代謝、増殖及び/
又は分化を調節することができる。
現在、これらの状態のいずれをも処理するための満足いく医薬物アプローチは
ない。骨折は、なお、キャスト、ブレス、固定具及び他の精密を機械的手段を用
いて排他的に処理されている。閉経期後の骨粗しょう症に関連する更なる骨の悪
化はエストロゲン又はビスホスホネートで削減され又は防止されている。
米国特許第5,703,074号、5,670,535号及び5,061,704号は、骨
の代謝において治療価値があるチオフェン化合物を開示する。これらのチオフェ
ン化合物は、骨組織の欠乏を特徴とする病因、例えば骨粗しょう症、ページェッ
ト病、歯周炎及び慢性関節リウマチに役立つ。更に骨形成を刺激することが見い
出されているいくつかのもの、特にN−(3,3−ジメチル5−(5−(3−p
−トリルプロピル)チオフェン−2−イル)ペンチル)N’−(2,3,4−ト
リメトキシベンジル)ピペラジンがある(Sabatiniら(J .Bone Miner.Res.9
(Suppl 1):S350,1995)。
本発明は、不要な骨喪失又は骨成長の必要性を特徴とする状態を治療すること
において、骨折を治療することにおいて、及び軟骨疾患を治療することにおいて
、このような骨の喪失の危険を有する脊椎動物において不要な骨の喪失を抑制す
るのに用いるための方法に関する。これにより、本発明は、記述される化合物を
用いて骨の疾患を治療するための方法に、及びこの使用のための医薬組成物に関
する。
発明の概要
本発明は、脊椎動物において骨の形成を増加させるための方法であって、治療
の必要な脊椎動物被検体に、所定量の式I:(式中、A及びBは各々独立して、アリール、置換化アリール、炭素環、置換化
炭素環、ヘテロ環、置換化ヘテロ環、及びそれらの組合せからなる群から選択さ
れるメンバーであり、ここで前記組合せは融合し又は共有結合しており、そして
前記置換基は、ハロゲン、
ハロアルキル、ヒドロキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、アルコキシ、ハ
ロアルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルオキシ
、アシル、アルキル及びアリールからなる群から選択され;
R1及びR2は各々独立して、水素及び1〜6の炭素原子を有するアルキル基か
らなる群から選択されるか、又は一緒に、飽和もしくは不飽和5員環、飽和もし
くは不飽和6員環及び飽和もしくは不飽和7員環からなる群から選択される環を
形成し;
Y1及びY2は各々独立して、単結合であるか、又は
−CH2−,−NHC(O)−,−NRC(O)−,−NHC(S)−,−NRC(S)−,
−NHC(=NH)−,−OC(O)−,−C(O)−、及び−C(S)−
からなる群から選択される2価の基であり、ここでRは1〜6の炭素原子の低級
アルキル基であり;
nは0〜4の整数である)
の化合物を投与することを含む方法を供する。
関連する実施形態において、前記化合物は、式:
(式中、Y1及びY2は、各々独立して、
−CH2−,−NHC(O)−,−NRC(O)−,−NHC(S)−,−NRC(S)−,
−NHC(=NH)−,−OC(O)−,−C(O)−、又は−C(S)−
からなる群から選択される2価の基であり、ここでRは1〜6の炭素原子の低級
アルキル基であり;
S11,S12,S13,S14,S15、及びS16は各々独立して、水素、ハロゲン、
ハロアルキル、ヒドロキシ、アリールオキシ、ベンジ
ルオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアル
キルアミノ、アシルオキシ、アシル、アルキル及びアリールからなる群から選択
されるメンバーである)
を有する。
Y1は−NHC(O)又は−CH2−であり、Y2は−CH2−であり、そしてS11,S12,
S13,S14,S15、及びS16は各々独立して、水素、ハロゲン、ハロアルキル、
ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又はジ
アルキルアミノである。
S11,S12,S13,S14,S15、及びS16は各々独立して、水素、ハロゲン、
トリフルオロメチル、ヒドロキシ及びメトキシからなる群から選択されるメンバ
ーである。
Y1は−NHC(O)又は−CH2−であり、Y2は−CH2−であり、そしてS11,S12,
S13,S14,S15、及びS16は各々独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメ
チル、ヒドロキシ及びメトキシからなる群から選択されるメンバーである。
他の実施形態において、前記被検体は、骨粗しょう症、骨折もしくは骨の欠乏
、原発性もしくは二次性副甲状腺機能亢進症、歯周疾患もしくは欠損、転移性の
骨の疾患、溶骨性の骨の疾患、形成手術後、プロテーゼ接合手術後、及び歯の移
植後からなる群から選択される状態を特徴とする。
関連する態様において、骨の成長を促進する又は骨の吸収を阻害する1又は複
数の剤が被検体に投与される。前記剤は、骨形態発生因子、骨原因子、軟骨由来
形態発生タンパク質、成長ホルモン、及び分化因子からなる群から選択される。
別の態様において、本発明は、脊椎動物において骨の形成を増強するための医
薬組成物であって、医薬として許容される賦形剤と、
骨の形成を促進するために有効な量の式(I):
(式中、A及びBは各々独立して、アリール、置換化アリール、炭素環、置換化
炭素環、ヘテロ環、置換化ヘテロ環、及びそれらの組合せからなる群から選択さ
れるメンバーであり、ここで前記組合せは融合し又は共有結合しており、そして
前記置換基は、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アリールオキシ、ベンジ
ルオキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアル
キルアミノ、アシルオキシ、アシル、アルキル及びアリールからなる群から選択
され;
R1及びR2は各々独立して、水素及び1〜6の炭素原子を有するアルキル基か
らなる群から選択されるか、又は一緒に、飽和もしくは不飽和5員環、飽和もし
くは不飽和6員環及び飽和もしくは不飽和7員環からなる群から選択される環を
形成し;
Y1及びY2は各々独立して、単結合であるか、又は
−CH2−,−NHC(O)−,−NRC(O)−,−NHC(S)−,−NRC(S)−,
−NHC(=NH)−,−OC(O)−,−C(O)−、及び−C(S)−
からなる群から選択される2価の基であり、ここでRは1〜6の炭素原子の低級
アルキル基であり;
nは0〜4の整数である)
の化合物と、を含む医薬組成物を供する。
関連する実施形態において、前記化合物は、式:(式中、Y1及びY2は、各々独立して、
−CH2−,−NHC(O)−,−NRC(O)−,−NHC(S)−,−NRC(S)−,
−NHC(=NH)−,−OC(O)−,−C(O)−、又は−C(S)−
からなる群から選択される2価の基であり、ここでRは1〜6の炭素原子の低級
アルキル基であり;
S11,S12,S13,S14,S15、及びS16は各々独立して、水素、ハロゲン、
ハロアルキル、ヒドロキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、アルコキシ、ハ
ロアルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルオキシ
、アシル、アルキル及びアリールからなる群から選択されるメンバーである)
を有する。
Y1は、−NHC(O)又は−CH2−であり、Y2は−CH2−であり、そしてS11,S12
,S13,S14,S15、及びS16は各々独立して、水素、ハロゲン、ハロアルキル
、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ又は
ジアルキルアミノである。
S11,S12,S13,S14,S15、及びS16は各々独立して、水素、ハロゲン、
トリフルオロメチル、ヒドロキシ及びメトキシからなる群から選択されるメンバ
ーである。
Y1は−NHC(O)又は−CH2−であり、Y2は−CH2−であり、そしてS11,S12,
S13,S14,S15、及びS16は各々独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメ
チル、ヒドロキシ及びメトキシからなる群から選択されるメンバーである。
本発明のこれら及び他の態様は以下の詳細な説明を引用することにより明らか
になるであろう。
発明の詳細な説明
本明細書において引用する文献は全て本明細書に組入れる。
本発明の化合物はカルシトニンのそのレセプターとの相互作用により生ずる効
果を擬態する能力、及びかかる相互作用を介してアデニルシクラーゼによりGプ
ロテイン媒介活性化を剌激する能力を有する化合物についての大量スクリーニン
グにおいてまず同定された。かかる擬似化合物は骨再吸収の阻害のために有用で
ある。哺乳類の甲状腺及び胸腺により分泌されるペプチドホルモン、カルシトニ
ンは骨の恒常性を維持するうえで重要な役割を果たす。カルシトニンは破骨細胞
上の特異的なカルシトニンレセプターの結合及び活性化を介して骨再吸収を阻害
し、その結果骨から細胞外流体へと放出されるカルシウムの量は減少する(The C
alcitonins-Physiology and Pharmacology,Azria(編)、Karger,Bael,Su.,
1989)。同定したピペラジン誘導体は骨再吸収を阻害する。ここに記載の更なる
分析は同様に骨形成活性を示唆した。Sabatiniら(1995)前掲により発表された
抗再吸収性複素環化合物も骨形成活性を有する。エストロゲンは抗再吸収活性に
加えて同化特性を有することが報告されている(Bainら、J .Bone Miner.Res. 8
:435-42,1993)。更に、ビスホスホネートがヒトにおいて抗再吸収性及び同
化又は骨形成活性の双方を有するものと主張され(Devogalaerら、Bone 18:141
-50,1996)、そしてカルシトニンは骨に対して同化作用を有するものと主張さ
れている(Farleyら、Calcif Tissue Int .50:67-73,1992及びWallachらCalci f .Tissue Int
.52:335-39,1993)。再吸収インヒビターは骨形成活性を有す
るようであり、なぜなら
骨形成は再吸収が停止した後の期間にわたり持続するからである。
本明細書でいう「抑制」、「処置」又は「治療」は同義語である。これらの語
は骨欠損症状の発症の延期及び/又は発症する又はするものと予測されるかかる
症状の症度の軽減を含む。この語は更に現存の骨又は軟骨欠損症状の緩和、更な
る症状の予防、症状の基礎的な代謝性原因の緩和又は予防、及び/又は骨成長の
促進を含む。かくして、これらの語は軟骨、骨もしくは骨格欠損、又はかかる欠
損を発症する潜在性を有する脊椎被検体に対して有益な効果を授けるものを意味
する。
「骨欠損」又は「骨欠乏」とは骨形成、対、骨再吸収の比における不均衡を意
味し、即ち、そのままでいると、被検体は所望するよりも少ない量の骨を有する
か、又は被検体の骨の完全性及び凝集性は所望するよりも弱くなるであろう。骨
欠損は骨折、外科的介入又は歯科もしくは歯周病にも由来しうる。「軟骨欠損」
とは損傷を受けた軟骨、所望するよりも少ない量の軟骨、又は所望するよりも完
全性及び凝集性が弱い軟骨を意味する。
本発明の化合物の代表的な用途には以下が挙げられる:骨欠損及び骨欠乏症、
例えば開放、密閉及び偽関節骨折において起こるもの;密閉及び開放骨折整復に
おける予防的用途;整形外科における骨治癒の促進;非セメント質補ていジョイ
ント及び歯科インプラントへの骨内成長の刺激;閉月経期前の女性の最大骨質量
の高揚;骨欠乏症の処置;歯周病及び欠陥の処置、並びにその他の歯修復工程;
伸延骨発生の際の骨形成の増強;並びにその他の骨格障害、例えば老齢関連骨粗
しょう症、閉月経期後の骨粗しょう症、グルココルチコイド誘導骨粗しょう症、
糖尿病関連骨粗しょう症又は不使用(disuse)骨粗しょう症及び関節炎の処置。
本発明の化合物は骨の先天的、外傷誘導又は外科的切除(例えば、癌の処置のた
め)の修復に
おいて、並びに美容外科においても有用でありうる。更に、本発明の化合物は軟
骨欠陥又は障害を抑制又は処置するために利用でき、そして創傷治癒又は組織修
復において有用でありうる。抗再吸収及び骨形成の二重機能を有する化合物につ
いての重要な指標は閉月経期過程の際の骨の維持及び再吸収の促進にあるであろ
う。
骨又は軟骨の欠損又は欠陥は脊椎被検体において、所定の構造的及び機能的特
性を発揮する本発明の化合物を投与することにより処置できる。本発明の組成物
は全身的に又は局部的に投与してよい。全身的用途のためには、本発明の化合物
は慣用の方法に従って非経口的(例えば静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻内又
は経皮)又は経腸(例えば経口又は経直腸)導入のために処方される。静脈内投
与は一連の注射により、または長期間にわたる連続点滴によることができる。注
射、又はその他の独立に間隔を置いた投与ルートによる投与は毎週から1日1〜
3回に範囲する間隔で行ってよい。他方、本明細書において開示する化合物は周
期的に投与してよい(開示の化合物の投与;しかる後の投与なし;しかる後の開
示の化合物の投与、等)。処置は所望の結果が達成されるまで続けられるであろ
う。一般に、医薬製剤は本発明の化合物を、医薬的に許容されるビヒクル、例え
ば食塩水、緩衝食塩水、5%のデキストロース水溶液、微量の金属を含む硼酸緩
衝食塩水、等と一緒に含むであろう。製剤は更に1又は複数種の賦形剤、保存剤
、可溶化剤、緩衝剤、ウィルス表層上でのタンパク質損失を防ぐためのアルブミ
ン、潤滑剤、充填剤、安定化剤、等を含みうる。製剤化の方法は当業界において
周知であり、そして例えばRemingtonのThe Science and Practice of Pharmacy
,Gennaro編、Mack Publishing Co.,Easton,PA、第19版、1995に開示されてい
る。本発明において利用するための医薬組成物は無菌、非パイロジェン液体溶液
もしくは懸濁物、被覆カ
プセル、座薬、凍結乾燥粉末、経皮パッチの形態又は当業界において公知のその
他の形態であってよい。局部投与は負傷もしくは欠陥部位での注射、又はその部
位での固体担体の挿入もしくは装着、又は粘性液体の直接的な局部塗布、等によ
ることができうる。局部投与のためには、導入ビヒクルは好ましくは成長する骨
又は軟骨のための基質を担い、そしてより好ましくは有害な作用を及ぼすことな
く被検体により吸収されうるビヒクルである。
本発明の化合物の創傷部位への導入は放出制御型組成物、例えばWIPO公開WO93
/20859に記載のものの利用により高めることができうる。このタイプのフィルム
は補てつ及び外科インプラントのためのコーティングとして極めて有用である。
このようなフィルムは、例えば手術用スクリュー、ロッド、ピン、プレート等の
外面のまわりに巻き付けられていてよい。このタイプの移植用器具は整形外科に
おいてもよく利用されている。このようなフィルムは骨充填材料、例えばヒドロ
キシアパタイトブロック、脱鉱化骨基質プラグ、コラーゲン基質、等をコーティ
ングするためにも利用できうる。一般に、本明細書に記載のフィルム又は器具は
骨にその骨折部位にて適用する。適用は一般に標準の外科手順を利用して骨の中
への移植又はその表面への装着による。
上記のコポリマー及び担体の他に、生体適合性フィルム及びマトリックスはそ
の他の活性又は不活性成分を含みうる。特に関心のもたれるのは組織成長又は浸
潤を促進する因子、例えば成長因子である。この目的のために典型的な成長因子
には表皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF
)、形質転換成長因子(TGF)、甲状腺傍ホルモン(PTH)、白血病阻害因子(LIF)及
びインスリン様成長因子(IGF)等が挙げられる。骨成長を促進する因子、例えば
形態発生タンパク質(WIPO公開WO90/11366)、オ
ステオゲニン(Sampathら、Proc .Natl.Acad.Sci.USA 84:7109-13,1987)及
びNaF(TencerらJ .Biomed.Mat.Res.23:571-89,1989)も好ましい。生体適
合性フィルム又はマトリックスは硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロ
キシアパタイト、ポリ乳酸、ポリアンヒドリド、骨又は皮膚コラーゲン、純粋タ
ンパク質、細胞外マトリックス成分等及びそれらの組合せを含む。かかる生体適
合性材料は所望の機械的、美容的又は組織もしくは基質界面特性を発揮するよう
に非生体適合性材料と組合せて用いてよい。
本発明の化合物の導入のための別の方法にはALZET浸透圧ミニポンプ(Alza Co
rp.Palo Alto,CA);持放式マトリックス材料、例えばWangら(WIPO公開WO90/
11366)に開示のもの;Baoら(WIPO公開WO92/03125)に開示の如き帯電デキスト
ランビーズ;コラーゲンベース導入システム、例えばKsanderらAnn .Surg.211
:288-94,1990に開示のもの;BeckらJ .Bone Min.Res.6:1257-65,1991に開
示のメチルセルロースゲルシステム;及びEdelmanら、Biomaterials 12:619-26
,1991に開示のアルギネートベースシステム等の利用が挙げられる。骨における
持続式局部導入のための当業界において周知のその他の方法には、含浸せしめる
ことができる多孔質被覆金属補てつ及び中に組込まれた治療組成物を有するプラ
スチックロッドが挙げられる。
更なる製剤、慣用の調製品、例えば以下に挙げるものを利用してよい。
水性懸濁物は当該活性成分を、懸濁剤、例えばメチルセルロース、及び湿潤剤
、例えばレシチン、リソレシチン又は長鎖脂肪アルコールを含んで成る医薬的に
許容されるビヒクルと一緒に含みうる。
前記水性懸濁物は保存剤、着色料、風味料及び甘味料を産業基準に従って含んで
もよい。
局部及び局所適用のための調製品は、低級脂肪族アルコール、ポリグリコール
、例えばグリセロール、ポリエチレングリコール、脂肪酸のエステル、油及び脂
肪、並びにシリコーンを含んで成りうる医薬的に適当なビヒクル中のエアロゾー
ルスプレー、ローション、ゲル及びオイントメントを含んで成る。この調製品は
更に酸化防止剤、例えばアスコルビン酸又はトコフェロール、及び保存剤、例え
ばp−ヒドロキシ安息香酸エステルを含みうる。
非経口調製品は特に無菌又は無菌化製品を含んで成る。注射用組成物は当該活
性化合物及び任意の周知の注射用担体を含んで提供されうる。これらは浸透圧の
調節のための塩類を含みうる。
所望するなら、骨形成剤をリポソームの中に、様々な病原性症状を処置するう
えで利用するためのリポソームを調製する任意の報告された方法により組込んで
よい。当該組成物は上記の化合物をマクロファージ、単球、その他の細胞並びに
組織及び器官であってこのリポソーム組成物を取り込むものに導くため、リポソ
ームの中に組込まれたかかる化合物を利用する。本発明の化合物を含むリポソー
ムは当該化合物の少なめの用量の効率的な利用を可能とするため、非経口投与に
より利用できうる。リガンドも含ませ、リポソームの特異性を更に集中させるこ
とができる。
リポソーム調製の適当な慣用の方法には、限定することなく、BanghamらJ .Mo l.Biol
.23:238-52,1965,OlsonらBiochim .Biophys.Acta 557:9-23,1979
,SzokaらProc .Natl.Acad.Sci.USA 75:4194-8,1978,MayhewらBiochim Bi ophys Acta
775:169-74,1984らBiochim Biophys Acta 728:339-48,1983及び
MayerらBiochim Biophys Acta 858:161-8,1986により開示のものが挙げられる
。
リポソームは本化合物と、任意の慣用の合成又は天然リン脂質リ
ポソーム材料、例えば天然資源、例えば卵、植物又は動物資源由来のリン脂質、
例えばホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジ
ルグリセロール、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、又はホスファチ
ジルイノシトールとの組合せからできうる。更に利用されうる合成リン脂質には
、限定することなく、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホス
ファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホス
ファチジルコリン、並びに対応の合成ホスファチジルエタノールアミン及びホス
ファチジルグリセロールが挙げられる。コレステロール又はその他のステロール
、コレステロールヘミスクシネート、糖脂質、セレブロシド、脂肪酸、ガングリ
オシド、スフィンゴ脂質、1,2−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチ
ルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、N−〔1−(2,3−ジオレオイル)プロピ
ル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、及びその他の陽イ
オン脂質を、当業者に知られている通り、リポソームの中に組込んでよい。リポ
ソームの中に使用するリン脂質及び添加剤の相対量は所望するなら変えてよい。
好適な範囲は60〜90モル%のリン脂質である;コレステロール、コレステロール
ヘミスクシネート、脂肪酸又は陽イオン性脂質は0〜50モル%の範囲の量で使用
できうる。リポソームの脂質層の中に組込む本化合物の量は約0.01〜約50モル%
に範囲する脂質濃度で変えてよい。
慣用の方法を利用し、溶液内に存在する約20〜30%の当該化合物がリポソーム
の中に捕捉されうる。かくして、約70〜80%の活性化合物が廃棄される。対照的
に、当該化合物がリポソームの中に組込まれているとき、事実上全ての化合物が
リポソームの中に組込まれ、そして廃棄される化合物は本質的にない。
上記の処方による当該リポソームはモノクローナル抗体又は標的
に特異的なその他のリガンドの組込みによりその意図する標的に対して更に一層
特異的なものとすることができうる。例えば、BMPレセプターに対するモノクロ
ーナル抗体をリポソームの中に、Lesermanら、Nature 288:602-4,1980の方法
によりリポソームの中に組込まれたホスファチジルエタノールアミン(PE)への
連結により組込むことができうる。
開示の化合物の獣医用途も考慮される。かかる用途には、飼育動物、家畜及び
サラブレッド馬における骨又は軟骨欠損もしくは欠陥の抑制又は処置が挙げられ
る。本明細書に記載化合物は標的組織又は器官環境を改変せしめ、骨形成細胞を
かかる細胞を要する環境へと引きつけるようにすることもできる。
本発明の化合物は骨形成細胞もしくはその前駆体の成長を刺激するため、又は
骨形成細胞の分化を誘導するため、in vitroでもex vivoでも利用できうる。本
明細書において用いる語「前駆体細胞」とは分化経路へと送られるが、一般に成
熟完全分化細胞としてのマーカー又は機能を発現しない細胞を意味する。本明細
書において用いる語「間葉細胞」又は「間葉幹細胞」とは何回も***でき、そし
てその子孫が骨格組織、例えば軟骨、骨、朧、靱帯、骨髄支質及び接続組織へと
発達する多能始祖細胞を意味する(Caplan J .Orthop.Res.9:641-50,1991)。
本明細書で用いる語「骨形成原細胞」には骨芽細胞及び骨芽細胞前駆細胞が挙げ
られる。より詳しくは、開示の化合物は骨髄間葉細胞を含む細胞集団を刺激する
ために有用であり、かくしてその細胞集団における骨形成原細胞の数を増大させ
る。好適な方法において、造血細胞を細胞集団から、開示の化合物による刺激の
前又は後に取り出す。かかる方法の実施を通じて、骨形成原細胞は増殖しうる。
増殖した骨形成原細胞はそれを要する脊椎被検体に注入(又は再注入)してよい
。例えば、被検体自身の
間葉幹細胞を本発明の化合物にex vivoで曝露し、そして得られる骨形成原細胞
を被検体内の所望の部位に注入又は誘導し、そこで骨形成原細胞の更なる増殖及
び/又は分化が免疫拒絶なしで起こりうる。他方、開示の化合物に曝露された細
胞集団は不死化ヒト胎児骨芽細胞又は骨形成原細胞であってよい。もしかかる細
胞を脊椎被検体内に注入又は移植するなら、このような非自己細胞を「免疫保護
」する、又は受容体を免疫抑制(好ましくは局部的)して移植及び骨又は軟骨修
復を促進することが好都合でありうる。
本発明において、組成物の「有効量」とは統計学的に有意な効果を奏する量で
ある。例えば、治療的用途にとっての「有効量」とは骨折修復における治癒速度
の臨床的に有意な上昇;骨粗しょう症における骨損失の復帰;軟骨欠陥又は障害
の復帰;骨粗しょう症の発症の予防又は遅延;骨折偽関節及び伸延骨発生におけ
る骨形成の刺激及び/又は補強;補てい具への骨成長の増加及び/又は加速;並
びに歯科欠陥の修復を供するのに要する本発明の活性化合物を含んで成る組成物
の量を意味する。かかる有効量は日常の最適化技術を利用して決定され、そして
処置する特定の症状、患者の症状、投与ルート、製剤及び医師の判断、並びに当
業者にとって明らかなその他の要因に依存する。本発明の化合物にとって必要な
用量(例えば、骨形成の増大が所望される骨粗しょう症)は処置及びコントロー
ルグループ間での骨質量における統計学的に有意な差として明示される。骨質量
におけるこの差は例えば処置グループにおける骨質量の5〜20%又はそれを超え
る上昇として認められうる。治癒における臨床学的に有意な増大のその他の尺度
には、例えば破断強度及び張力、破断強度及び応力、4点屈曲、骨生検の持続力
の増大についての検査、並びに当業者に周知のその他の生体機械的検査が挙げら
れうる。処置療法についての一般的な指針は注目の病気の動物モデ
ルで実施する実験から得られる。
試験化合物のその他の効果を決定するためのコントロールとして補助的なアッ
セイが利用できうる。例えば、有系***活性はプロモーターとしての血清応答要
素(SRE)及びルシフェラーゼリポーター遺伝子を際立たせたスクリーニングアッ
セイを利用して測定できうる。より詳しくは、このようなスクリーニングアッセ
イはSRE媒介経路、例えばタンパク質キナーゼC経路におけるシグナル生成を検
出できうる。例えば、骨芽細胞アクチベーターSRE−ルシフェラーゼスクリーン
及びインスリン擬似体SRE−ルシフェラーゼスクリーンがこの目的のために有用
である。
本発明の化合物はin vivo投与アッセイを利用して無傷な動物で更に試験でき
る。模範囲的な投与は皮下、腹腔内又は経口投与により達成し得、そして注射、
持放又はその他の導入技術により実施できうる。試験化合物の投与のための期間
は様々でありうる(例えば、適宜28日及び35日であってよい)。典型的なin viv
o皮下投与アッセイは下記の通りにして行うことができる:
典型的な研究において、生後3ヶ月の70匹の雌Sprague-Dawleyラットを体重対
合させ、そして各グループ10匹づつの動物の7つのグループに分ける。これは研
究の開始時に殺す基底動物コントロールグループ、即ち、ビヒクルのみを投与し
たコントロールグループ;PBS処置コントロールグループ;及び骨成長を促進す
ることで知られる化合物(非タンパク質又はタンパク質)を投与した陽性コント
ロールグループ、を含む。試験する化合物の3通りの用量を残り3つのグループ
に投与する。
テスト化合物、ポジティブコントロール化合物、PBS、又は溶媒単独を、35日
間1日1回皮下に投与する。殺死9日前及び2日前に、カルセインを全動物に注
射する(各指定日にカルセインを2回注
射投与する)。1週間毎に体重を測る。35日間のサイクルの終了時に、動物の体
重を測り、そして眼窩又は心臓穿刺によって血液をとる。血清カルシウム、リン
酸塩、オステオカルシン及びCBSを測定する。両脚骨(大腿骨及び脛骨)及び腰
椎を取り出し、接着軟組織を除いてから、評価のために70%エタノール中に保存
する。末梢定量コンピュータトモグラフィー(pQCT;Ferretti,Bone.17:353S
-64S,1995)、二重エネルギーX線吸収測定(DEXA;Laval-Jeantet et al.,Cal
cif.Tissue Intl.56:14-18,1995;Casez et al.,Bone and Mineval 26:61
-8,1994)及び/又は組織形態計測によって、評価する。骨再形成に対するテス
ト化合物の効果を、この様にして評価できる。
急性卵巣切除動物(予防モデル)において、インビボ投与検査によって、代表
的な化合物をテストすることもできる。この検査では、コントロールとしてエス
トロゲン処理群を含んでよい。代表的な皮下投与検査を以下の様に行う。
典型的な研究では、80ひきの3か月齢メスSprague-Dawleyラットを、体重をそ
ろえて、8群に分ける。各群は10ひきとする。これには、研究開始時に殺死する
ベースラインコントロール群;3つのコントロール群(にせの卵巣切除(にせOVX)
+溶媒のみ;卵巣切除(OVX)+溶媒のみ;PBS処理OVX);及び、骨成長を促進する
ことが知られている化合物を投与したコントロールOVX群が含まれる。3段階の
投与量のテスト化合物を、残りの3群のOVX動物に投与する。
卵巣切除(OVX)は、過食症を誘発するので、全てのOVX動物は、35日間の研究中
、にせOVX動物と対で飼育する。テスト化合物、ポジティブコントロール化合物
、PBS、又は溶媒単独を、35日間1日1回皮下投与する。あるいは、テスト化合
物を、移植できるペレットに調合して、35日間移植するか、又は、胃管による強
制栄養法な
どによって経口投与することもできる。全ての動物(にせOVX/溶媒群及びOVX/
溶媒群を含む)に、殺死9日前及び2日前に、カルセインを腹腔内注射する(新
しく形成される骨を適切に標識するために、各指定日に、カルセインを2回注射
投与する)。1週間毎に、体重をはかる。35日間のサイクル終了時に、前記通り
動物の血液及び組織を処理加工する。
慢性OVX動物(治療モデル)において、代表的な化合物をテストすることもで
きる。固化作用因子の効率を測定するために用いることができる卵巣切除動物に
おいて、確立した骨損失を治療する代表的な方法は、以下の様にして行われる。
80〜100ひきの6か月齢メスSprague-Dawleyラットに、時間0において、にせ手
術(にせOVX)又は卵巣切除(OVX)を施し、そして10ひきのラットを、ベースライ
ンコントロールのために殺死する。体重を、実験中1週間毎に記録した。骨欠失
の約6週間(42日目)以上後に、10ひきのにせOVX及び10ひきのOVXラットを、欠
失期間コントロールとして殺死するために、ランダムに選ぶ。残りの動物のうち
、10ひきのにせOVX及び10ひきのOVXラットをプラセボ処理コントロールのために
用いる。残りのOVX動物に、5週間(35日間)、テスト化合物を3〜5回投与処
理する。ポジティブコントロールとして、本モデルにおいて既知の同化作用因子
であるPTHなどの因子(Kimmel et al.,Endocrinology 132:1577-84,1993)に
よって、1群のOVXラットを処理する。骨形成に対する効果を決定するために、
以下の方法を行う。大腿骨、脛骨及び腰椎1〜4を切り出して集める。pQCT測定
、海綿骨質の鉱物密度(BMD)(重量測定)、及び組織学検査のために、近位左及
び右脛骨を用いる。各脛骨の中間幹を用いて、皮質のBMD又は組織学検査を行う
。生物機械検査の前に、中間幹のpQCTスキャニングを行うために、大腿骨を用意
する。腰椎(LV)に関しては、LV
2を、BMDのために用いる(pQCTを行ってもよい);LV3を、未脱灰骨の組織学
検のために用いる;そしてLV4を、機械検査のために用いる。
本発明の方法において有用な化合物は、以下の式のものである:
この式中では、A及びBは、各々独立に、アリール基、置換アリール基、炭素
環、置換炭素環、複素環、置換複素環、又はこれらの組合せである。組合せは、
縮合又は共有結合であってよい。炭素環基及び複素環基の例には、シクロヘキシ
ル、シクロヘキセニル、ピペラジニル、ピラジニル、モルホリニル、イミダゾー
リル、トリアゾーリル及びチアゾーリルがある。前記した様に、A及びBは、各
々アリール基でもよい。用語「アリール」は、単一環、あるいは、互いに縮合す
るか、エチレンもしくはメチレン部分などの共通基に共有結合するか、又は結合
する複素環である芳香族置換基を指す。
この芳香族環は、各々ヘテロ原子を含んでよい。アリール基の例には、フェニル
、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルメチル、2,2−ジフェニル−1−エチル
、チエニル、ピリジル、及びキノキサリルがある。更に、このアリール基は、本
分子の他の部分に、別の場合には水素原子によって占められているアリールラジ
カル上の任意の位置を介して、結合してもよい(例えば、2−ピリジル、3−ピ
リジル及び4−ピリジル)。
本アリール基は、他の炭素環基又は複素環基と共に、場合によっては置換され
得る。置換基は、典型的には、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アリール
オキシ、ベンジルオキシ、アルコキシ、
ハロアルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルオキ
シ、アシル、アルキル又は追加のアリール基である。用語「アルキル」は、直鎖
状又は分鎖状(例えばエチル、イソプロピル、又はt−アミル)、又は環状(例
えば、シクロブチル、シクロプロピル、又はシクロペンチル)である飽和炭化水
素ラジカルを指す。好ましいアルキル基は、1〜6個の炭素原子を有するもので
ある。本明細書及び請求の範囲に示す数字範囲は、上限値及び下限値を含んで意
味する。用語「アルコキシ」は、別の炭化水素ラジカルに共有結合することがで
きる酸素置換基を保持する、前記の様なアルキルラジカルである(例えばメトキ
シ、エトキシ及びt−ブトキシ)。
記号R1及びR2は、各々独立に水素又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル
基である。いくつかの態様では、R1及びR2は互いに結合して、飽和もしくは不
飽和の4,5,6又は7員環を形成することもある。前記環が不飽和である態様
では、その環は、芳香族環(例えばフェニル又はナフチル)又はヘテロ芳香族環
(例えばピリジル、チエニル、イミダゾーリル)でよい。
記号Y1及びY2は、各々独立に、単なる結合か、又は、−CH2−,−NHC(O)−
,−NRC(O)−,−NHC(S)−,−NRC(S)−,−NHC(=NH)−,−OC(O)−,−C(O)−
もしくは−C(S)−である(ただしRは、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキ
ル基である)二価ラジカルである。好ましい態様では、Y2は、カルボニル、チ
オカルボニル又はメチレン(各々−C(O)−,−C(S)−又は−CH2−で表わせる)
である二価ラジカルである。別の好ましい態様では、Y1は、−NHC(O)−,−NRC
(O)−,−C(O)−、又は−C(S)−である。
記号には、0〜4の整数である。
好ましい態様では、本化合物は、ピペラジンを基にした、以下の
式の化合物である:
前記式中、記号Y1及びY2は、前記の意味である。記号S11,S12,S13,S14
,S15及びS16は、各々独立して、結合された芳香族環上の置換であり、水素
、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、ア
ルコキシ、ハロアルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、
アシルオキシ、アシル、アルキル及びアリールである。特に好ましい態様では、
Y1は、−NHC(O)−又は−CH2−であり、Y2は−CH2−であり、そしてS11,S12
,S13,S14,S15及びS16は、各々独立に水素、ハロゲン、ハロアルキル、ヒ
ドロキシ、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノ、モノアルキルアミノ、又はジ
アルキルアミノである。ある好ましい態様では、各芳香族環上の少くとも1つの
置換基、好ましくは少くとも2つの置換基は、水素以外のものである。最も好ま
しくは、この置換基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、ヒドロキシ及びメトキ
シである。
本発明の化合物は、当業者に既知の標準的な合成方法によって調製される。ピ
ペラジン誘導体を目的とする一般的合成手順を以下に示す。従って、単一保護さ
れたピペラジン(例えばt−BOC−ピペラジン)を、アリールイソシアネートで
処理して、尿素1aを得ることができる。1aから保護基を取り除いて1bを得
て、これを、従来の方法に従って、例えば置換ベンジルハリド又は置換ベンゾイ
ルクロリドによって、アルキル化又はアシル化して、各々1c及び1dを得るこ
とができる。 あるいは、以下に示す様に、還元的アミノ化経路によって、t−Bocピペラジ
ンをアルキル化することができる。例えば芳香族アルデヒドによる還元的アルキ
ル化に続いて、その保護基を取り除き、そして残りのピペラジン窒素を、アリー
ル又はアルキルイソシアネートによってアシル化することができる。
米国特許5,286,728及び5,384,319に記載の類縁化合物の調製方法に類似したそ
の他の調製方法を利用してもよい。
別の合成方法では、適当に置換されたヒドロキシベンズアルデヒドを、最初に
、固体支持体、例えばWang樹脂に結合する。次に、遊離のアルデヒド基を、単一
保護されたジアミン、例えばBOC−ピペラジンを用いて、還元的アルキル化する
。次に、その保護基を取り除き、そして樹脂に結合した化合物を、種々の試薬、
例えばカルボン酸、イソシアネート、イソチオシアネート又はスルホニルハリド
によってアシル化する。この単一保護されたジアミン、例えばピペラジンは、商
業的に得るか、又は、有機合成分野の当業者に既知の種々の方法によって調製す
る。1つの方法では、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒドを、トリ
フェニルホスフィン及びジエチルアゾジカルボキシレートを用いたMitsonobuの
アルキル化によってWang樹脂に結合させる。次に、この樹脂結合化合物の遊離ア
ルデヒド基を、ボラン−ピリジン複合体を用いて、BOC−ピペラジンによって還
元的にアルキル化する。次に、BOC基を、10%TFA/
DCMによって選択的に取り除き、そして次に、遊離の窒素を、アリールイソシア
ネートによってアシル化する。できた化合物の切断を、標準的な方法、例えば、
50%TFA/DCMによる30分間処理によって実行する。当業者に明かな様に、本化合
物を調製するために、多数の代替方法が存在し、例えば、樹脂上の合成順序を逆
にすること、アシル化及び結合のために他の試薬を用いることが考えられ、これ
らは、例えば、March,Advanced Organic Chemistry,4th Edition,Wiley-Inte
rscieuce,NY,1992に記載されている。
前記載及び以下の実施例は、限定するためではなく、説明するためのものであ
る。当業者に明かな様に、本発明系の操作条件、材料、手順工程及びその他のパ
ラメータは、本発明の範囲から離れることなく、種々の方法で、更に改修又は交
換することができる。以下の実施例によって、限定することなく、本発明を更に
説明する。
実施例
実施例1
50−0231の合成
この実施例では、前記の合成手順による、市販品の出発材料からの50−0231の
合成を説明する。t−Boc−ピペラジン(8.6g,100mmol)及びバニリンアセテー
ト(100mmol)を無水メタノール(150ml)と混合し、そして溶液が透明になるまで撹
拌する。酢酸(6.0g)を加え、続いて分子シーブ(4A)47gを加える。1時間
穏やかに撹拌した後、この混合液を氷上で冷却し、そして穏やかに撹拌しながら
、1.5時間に亘って、少量ずつNaCNBH4(6.1g,100mmol)を加える。70時間撹拌し
た後、この混合液を濾過し、その濾液を減圧下で蒸発させる。生じた油性残査を
、水及びNH4Cl 10gで処理する。この懸濁液を撹拌し、固形KHSO4によってpH約
4まで酸性化する。こ
の懸濁液を、NaHCO3によって中和し、EtOAcによって完全に抽出する。その有機
層を水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、そして減圧下で濃縮して、半固体の残査
を得る。この残査を、無水エーテルで滴定し、そして結晶性固体を濾過して取り
出し、冷エーテルで洗浄する。この固体を、2時間空気中で、次に2時間真空中
で乾燥させる。
当固体の一部(20mmol)を、冷やした95%TFA/H2O(50mL)中に溶解する。この
混合液を、30分間氷上で撹拌し、そして減圧下でTFAを除いた。この残査を、水
で処理して、1N HClによってpH3〜4に酸性化して、そしてエーテルで抽出す
る(3×20mL)。その水層を、氷上で冷却し、固形Na2CO3によって中和し、そし
て1N NaOHによってpH10に調整する。生じた溶液をEtOAcで抽出する(5×40mL
)。その水層をNaClで飽和し、そして再びEtOAcで抽出する(2×30mL)。混合
したEtOAc抽出液を水で、そして塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濾過し、
そして減圧下で蒸発させる。この化合物を、真空デジケーター内で一晩乾燥させ
てから、無水DMF(35mL)中に溶解し、そして氷上で冷やす。この冷却した撹拌
中の溶液に、3−トリフルオロメチルイソシアネート(3.74g,20mmol)の乾燥
DMF(15ml)溶液を、分割して加える。本反応において、イソシアネートの消費
及び遊離アミンの消費を監視する。イソシアネートの各添加後、この反応混合液
を20分間撹拌してから、TLCのために少量を取り出す。最終添加後、この反応混
合液を一晩撹拌する。減圧下でDMFを取り除き、そしてその残査を10%Na2CO3溶
液(50mL)で処理する。生じた懸濁液を10分間撹拌し、次にEtOAc(5×50mL)
で抽出する。その有機層を水で(2×25mL)、そして塩水で洗浄し、Na2SO4上で
乾燥させ、そして減圧下で蒸発させる。この残査をエーテル中に溶解し、そして
数時間保ち、その間、結晶性の固
まりを分離させ、それを濾過して取り出し、冷エーテルで洗浄し、そして空気中
で乾燥させる。更に真空デジケーター内で一晩乾燥させて、生成化合物50−0231
を得る:
実施例2
頭蓋冠のエクソビボ固化作用検査
4〜5日齢の新生CD−1マウスから頭蓋冠を取り出し(妊娠マウスをCharles
River Laboratories,Wilmington,MAから入手した)、そして先の鋭いはさみで
、矢状縫合を含む頭頂部を残す様に調整した。これらの調整骨を、6ウェルの細
胞培養クラスタープレート(Coster,Pleasanton,CA)に、ウェルあたり1つ入
れ、そしてテスト化合物又はコントロールを含む培地を、ウェルあたり1ml加え
た。用いた培地は、BGJb,0.1% BSA,50μg/mlアスコルビン酸であった。粉
末のBGJb(Fitton-Jaekson改変;Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)を、
滅菌蒸留水(Baxter Healthcare Corp.,Deerfield,IL)に溶解し、終濃度3.5
g/Lの重炭酸ナトリウムを加え、pHを6.83に調整し、最終的に容量を合わせた
。これに、終濃度1mg/mlのBSA(分画V,Sigma Chemical Co.)、終濃度100U
/mlのペニシリン−ストレプトマイシン、及び10mL/Lの割合で200mMのL−グ
ルタミン保存液を加えた。この培地を、0.22μmフィルターで濾過滅菌した。頭
蓋冠を、37℃で、5%CO2保湿インキュベーター内で、24時間、ゆっくりゆらし
ながら(RedRockerTM,model PR50-115V,Hoefer,San Francisco,CA or Lablin
e Rocking Shaker,model 4635,Labline Instruments,Melrose Park,IL)、事
前にインキュベーションした。
事前インキュベーション後、培地を取り除き、テスト化合物(終濃度5,10,
20及び30μg/ml)のDMSO溶液(検査時の最終DMSO濃度は0.1%以下とする)を
含んでいる培地を、ウェルあたり1.5mL加えた。各実験において、ポジティブコ
ントロールとして、10%ウシ胎児血清を加えた。全てのコントロール用ウェルに
は、最終的に検査時にテスト化合物のウェルに存在しているのと同濃度のDMSOを
加えた。各サンプル群では、4つの骨を用いた。12ウェルプレートでは、1mlの
培地を含んだ1ウェルに1個、又は場合によっては、6ウェルプレートで、5ml
の培地を含んだ1ウェルに4個の割合で、ステンレススチール製の格子上で、骨
をインキュベーションした。骨を、96時間インキュベーションした。このインキ
ュベーション中、細胞毒性の可能な指標として、一般的な外観、健全性、頭蓋冠
から移動した細胞数を観察した。組織学的に検査する頭蓋冠を、10mlの冷却した
10%ホルマリン中性緩衝液を含んだガラス製シンチレーション用バイアルに移し
た。
固定後、頭蓋冠を、5%ホルマリン中性緩衝液を含んだ5%ギ酸中で脱灰し、
流水で洗浄し、濃度を段階的に増やしたエタノール中で脱水し、キシレン中で透
明化し、そしてパラフィン中に包埋した。中間頭頂部骨のところで、5ミクロン
の横断切片を切り出し、脱パラフィンし、そしてヘマトキシリン及びエオシン/
フロキシンB/オレンジGで染色して、骨変化を評価した。骨芽細胞を、強い好
塩基性細胞質染色、中央の非染色ゴルジ領域、そして中心から離れて位置する核
によって同定した。本染色方法では区別できない、骨膜表面上の線維芽細胞及び
骨形成細胞(骨芽細胞の前駆細胞)を、骨形成性/線維芽細胞様組織として認識
した。
骨形成の評価を、骨膜組織(骨形成性/線維芽細胞様組織)、骨
芽細胞及び新しく形成された骨(既存骨のピンクがかった/灰色に対して明るい
オレンジ色を呈する)の量、の各変化を半定量的に調べることによって行った。
骨形成活性の異なったレベルに対して、0〜3の任意の評価点を割り当てる。
評価点0:これは、一般的に、極端な細胞毒性、ネクローシス及び/又は細胞
死を示す。
評価点1:コントロール培養において一般的に観察される骨形成活性。骨膜表
面が、1層の骨芽細胞によって被われる(骨表面の約50%、残りの50%は、骨内
層細胞によって被われる)。テスト薬剤又は化合物の阻害活性又は少量毒性のた
めに、骨膜表面の50%未満が骨芽細胞によって被われている場合には、評価点「
1−」を与える(そして、骨膜表面の50%超の場合には、評価点「1+」を与え
る)。
評価点2:これは、骨形成活性の中程度の増加を示す。骨膜表面の約20〜40%
が、2層までの骨芽細胞によって被われている。骨膜表面の20%未満が、2層の
骨芽細胞によって被われている場合には、評価点「2−」を与える(そして、骨
膜表面の40%超の場合には、評価点「2+」を与える)。
評価点3:これは、骨形成活性の著しい増加を示す(例えば、10%ウシ胎児血
清による刺激)。骨膜表面の20%超が、3層の骨芽細胞によって被われている。
同時に、細胞が丸々と太る(最大サイズが100μm2を超える)。骨膜表面の20%
未満が、3層の骨芽細胞によって被われ、及び/又は、骨芽細胞の最大サイズが
100μm2未満である場合には、評価点「3−」を与える。3を超える評価点(す
なわち「3+」)は、これまで観察されていない。
化合物50−0231は、骨芽細胞数、骨形成性/線維芽細胞様組織(すなわち骨膜
幅の増加)、及び新骨形成の増加によって示される様
に、BGJ処理コントロールの場合と比較して、明かな同化作用効果を示した。こ
れの最大効果濃度は、10〜20μg/mlであると思われる(表1参照)。
前記載から、説明のために、本発明の特別の実施例を記載したが、種々の改修
が、本発明の範囲からはずれることなく、行われ得る。従って、本発明は、請求
の範囲以外によっては、限定されない。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY,
DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I
T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ
,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML,
MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K
E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM
,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM)
,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,
BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D
K,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM
,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,
KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,L
T,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX
,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,
SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,U
A,UG,US,UZ,VN,YU,ZW