JP2001346298A - バイノーラル再生装置及び音源評価支援方法 - Google Patents

バイノーラル再生装置及び音源評価支援方法

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JP2001346298A
JP2001346298A JP2000169526A JP2000169526A JP2001346298A JP 2001346298 A JP2001346298 A JP 2001346298A JP 2000169526 A JP2000169526 A JP 2000169526A JP 2000169526 A JP2000169526 A JP 2000169526A JP 2001346298 A JP2001346298 A JP 2001346298A
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loudspeakers
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Koji Udagawa
浩二 宇田川
Yumiko Kurosawa
由美子 黒澤
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Fujifilm Business Innovation Corp
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Fuji Xerox Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 手軽に用いることができ、かつ不特定多数の
人に対して頭外前方方向への音像定位を実現するととも
に、音質面でも原音に忠実な音場再生が可能なバイノー
ラル再生装置を提供する。 【解決手段】 ダミーヘッドマイクロホン2により原音
場1で収録された音響信号は、DAT6に記憶、再出力
される。音像定位フィルタリング部3でクロストーク成
分を消去するためのフィルタ係数を用いた畳み込み演算
等を行って、ラウドスピーカ4からバイノーラル再生
し、不特定多数の人に対して頭外前方方向への音像定位
を実現する。さらに、ラウドスピーカ4を受聴者5に近
接して配置する。これによって、直接音に比べて床面な
どによる反射音を非常に小さくすることができ、原音に
忠実な再生を実現することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダミーヘッドマイ
クロホンで収録した音を再生して両耳で受聴させること
により、臨場感のある音場再生を行うバイノーラル方式
のステレオ音響技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より音響技術の分野では、ダミーヘ
ッドマイクロホンによる収録とヘッドホンによる再生を
用いて、原音に忠実に音像を定位させるバイノーラル方
式が知られている。まず、バイノーラル方式の原理を簡
単に説明する。図13は、実際の音場空間で人間が両耳
で音源の位置を認知する状況の説明図、図14は、原音
場中に設置したダミーヘッドマイクロホンで音を収録
し、ヘッドホンで再生して両耳で受聴させるバイノーラ
ル収録再生方式の一例の説明図である。図中、1は原音
場、2はダミーヘッドマイクロホン、5は受聴者、11
はヘッドホンである。
【0003】人間は、音源位置を知覚するのに、左右両
耳間の音の到達時間差やレベル差などの両耳間特性、周
波数特性変化などの単耳特性、頭を動かしたときの上記
情報の変化、あるいは視覚情報など、いろいろな情報を
用いるといわれている。中でも両耳間特性は大きな役割
を果たしており、古くから両耳特性に着目した研究が行
われてきている。
【0004】音源から放出された音波が空間を伝播し、
人間の頭部周り・耳介・外耳道を経て鼓膜へ到達する際
に、反射・回折・減衰などの現象を生じる。すなわち、
図13において、音源で放出された音と人間の左耳に到
達する音SLおよび右耳に到達する音SRとでは、振幅
や位相などが大きく異なる。したがって、上記の音S
L,SRを収録するためには、人間の両耳の外耳道入り
口や鼓膜前面などに小型マイクロホンを配置して、音を
収録する必要がある。
【0005】一般的には工数や安全上の問題から、数十
〜数百人の頭部、耳介の形状を測定して、これを模擬し
たダミーヘッドを用意し、左右の耳の外耳道入り口また
は鼓膜前面に相当する位置にマイクロホンを配設して音
を収録する。このようなダミーヘッドマイクロホン2を
用いることにより、実際に人間が原音場1で受聴するの
と非常に似た音を収録することができる。この音をヘッ
ドホン11で再生して受聴者5に両耳で受聴させること
により、原音場1に忠実な臨場感のある音場再生が可能
になる。
【0006】しかしながら、人間が音源位置を知覚する
のに用いる左右両耳間の到達時間差、レベル差、周波数
特性変化などの両耳・単耳特性は、頭部や耳介の微妙な
形状で変化することが知られている。上述のようなダミ
ーヘッドマイクロホン2による収録とヘッドホン11に
よる再生とを用いたバイノーラル収録再生方式では、頭
部や耳介の形状の違いによって生じる両耳・単耳特性の
異なる不特定多数の人に対して、完全に性能を発揮する
ことはできなかった。特に再生される音像について、受
聴者の正面方向の定位感が不足し、頭の中に音像が定位
されるように感じられる頭内音像定位現象が生じること
が知られている。
【0007】このような問題に対して、例えば特開平5
−115099号公報には、あらかじめ受聴者個人別の
頭外音像定位情報を測定して記憶カードに記憶してお
き、この情報を基に各個人別に頭外音像定位を知覚でき
るような再生信号を演算する方式が開示されている。こ
の方式によれば、各個人の頭部や耳介の形状に対応した
音響伝達特性を補正することができるため、各個人が良
好な頭外定位感を得ることができる。
【0008】しかしながらこの方式では、不特定多数の
受聴者に対応するためには、受聴対象となる不特定多数
の人々について、両耳の外耳道入り口、望ましくは鼓膜
の前面に小型マイクロホンを挿入して、頭部伝達特性を
測定しておく必要があり、工数や安全上の問題から実現
性が乏しいという問題がある。
【0009】また、例えば特開平6−178396号公
報や特開平3−214896号公報には、受聴者の頭の
向きの変化を検出して、これに応じてヘッドホンの左右
の出力信号を調整することにより、頭の向きが変化して
も常に一定の方向に音像が定位されるようにした音場定
位制御装置あるいは音響信号再生装置が開示されてい
る。一般的なバイノーラル方式では、頭を回転させると
それに伴って音像の位置も回転するが、これらの方式で
は頭を動かしても音像の位置が固定される。このことに
より、受聴者は音像が頭の外にあるように感じることが
できる。
【0010】これらの方式の有用性は、日常生活におい
て人間が音源の位置を認識しにくい場合に、頭を左右に
振ってみると認識しやすくなることからも納得できる。
しかしながら、これらの方式では、頭外音像定位感を持
続するためには、常に頭を動かしていなければならず、
使い勝手が極めて悪いことから実用性が乏しいという問
題があった。
【0011】さらに、例えば特開平7−15780号公
報には、受聴者の左右の耳孔を結ぶ領域外前方にスピー
カ部を配置したヘッドホンが開示されている。このヘッ
ドホンによれば、スピーカ部が前方に配置されているた
め、音は耳孔を結ぶ軸よりも前方から聞こえるというも
のである。
【0012】しかしながら、このヘッドホンではスピー
カ部が耳孔から遠い位置に配置されているため、スピー
カ部から外耳道入り口までの空間の音響伝達特性の歪み
が無視できなくなり、ダミーヘッドマイクロホンで採取
した音をヘッドホンにより外耳道入り口近傍で再生する
というバイノーラル再生の基本概念を崩してしまってい
た。すなわち、ダミーヘッドで採取した音を上記ヘッド
ホンで再生した場合、一般的なステレオ再生の場合と同
様に、再生音像は左右両スピーカ部を結ぶ線上に奥行き
のない音像として定位され、それよりも前方あるいは手
前側に音像を定位させることができない。また、スピー
カ部から外耳道入り口までの空間の音響伝達特性の歪み
が無視できなくなることから、音質的にも原音場の音を
忠実に再生することができないという問題があった。
【0013】再生装置としてヘッドホンの代わりにラウ
ドスピーカを用いる音響システムがBauer(196
1)やSchroeder(1966)らによって提案
されている。一対のラウドスピーカを用いたステレオ再
生の場合、一般には、できるだけ広い再生音像空間を得
るために、左右両ラウドスピーカを受聴者からできるだ
け遠い位置に置くとともに、受聴者から見て120度程
度開いた状態に離して配置する。ラウドスピーカを用い
た音響システムでは、ラウドスピーカから放出された音
が空間を伝播して人間の両耳に伝達されるため、ダミー
ヘッドの左右のマイクロホンで収録された音を受聴者の
左右の耳で分離して受聴するバイノーラル方式の実現は
難しい。しかしこの音響システムでは、あらかじめラウ
ドスピーカから受聴者の両耳に至る音響伝達特性を測定
しておき、その逆特性を演算することにより、左前方
(右前方)のラウドスピーカから放出された音が受聴者
の右耳(左耳)にも伝達されてしまうクロストークを消
去するフィルタを構成し、これによりラウドスピーカに
よるバイノーラル再生を実現している。また、この方式
では、ラウドスピーカが受聴者の前方に配置されている
ため、音像が頭内に定位されることはなく、良好な音像
定位感を得ることができる。この方式を具現化するもの
として、例えば特開平2−86399号公報には、正中
面方向の個人用フィルタを備えたシステムが開示されて
いる。
【0014】しかしながら、これらの音響システムはい
ずれも、全ての壁を音響反射防止の吸音処理を施し、金
網等で浮き床構造とした完全無響室で使用することを前
提にしたものであり、通常の床面が存在する部屋で使用
すると次のような問題が生じていた。すなわち、ラウド
スピーカから放射された音が直接空間を伝播して受聴者
の耳に到達する直接音の他に、床面などで反射されてか
ら受聴者の耳に到達する反射音が存在する。そのため、
特に単一あるいは狭帯域の周波数からなる純音系の音を
再生した場合に、直接伝播音と床面反射音とが空間で干
渉して音が強められたり弱められたりする現象が生じ、
音質面で忠実な音場再生が難しいという問題がある。純
音系の音としてはモータなどの回転機械から生じる音な
どが代表的である。一般的に回転機械では回転数の正数
倍の周波数で極狭帯域の純音系の音が生じることが知ら
れている。バイノーラル収録再生装置は、音楽鑑賞など
の他にこのような機械の動作音を主観的に評価する場合
などにもよく用いられるが、このような評価では音質面
で原音に忠実であることが強く要求されるため、純音系
の音を忠実に再現できない上述のような音響システムを
用いることができなかった。
【0015】また、これらの音響システムのもうひとつ
の問題として、受聴者への心理的・身体的負担が大きい
ことがあげられる。すなわち、この音響システムでは、
ラウドスピーカと受聴者の位置関係などから決定される
音響伝達特性をあらかじめ測定しておき、クロストーク
を消去するフィルタを構成している。したがって、この
クロストーク消去フィルタを有効に作用させるために
は、受聴者は両耳すなわち頭の位置や向きを常に一定に
しておく必要がある。このような制約は受聴者へ大きな
心理的・身体的負担となるため、一般的な用途に広く用
いることができないという問題があった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した事
情に鑑みてなされたもので、手軽に用いることができ、
かつ不特定多数の人に対して頭外前方方向への音像定位
を実現するとともに、音質面でも原音に忠実な音場再生
が可能なバイノーラル再生装置を提供することを目的と
するものである。また、本発明は、そのようなバイノー
ラル再生装置を用いて、受聴者に感覚的な評価を実施さ
せ易くした音響評価支援方法を提供することを目的とす
るものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は、バイノーラル
収録された音響信号を再生するバイノーラル再生装置に
おいて、一対のラウドスピーカを用い、あらかじめ測定
したラウドスピーカから受聴者の両耳に至る音響伝達特
性から左前方(右前方)のラウドスピーカから放射され
た音が受聴者の右耳(左耳)にも伝達されてしまうクロ
ストークを消去する音像定位フィルタリング部を備える
とともに、前記一対のラウドスピーカが受聴者に近接し
て配置されることを特徴とするものである。このような
構成によれば、以下に説明するようにして不特定多数の
受聴者に対して良好な頭外前方への音像定位感を実現す
るとともに、音質面でも原音に忠実な音場再生が可能に
なる。
【0018】上述のように各個人の頭部伝達特性の微妙
な差異があると、特に受聴者の正面方向の音像定位感が
不足し、一般的なヘッドホンによるバイノーラル再生で
は頭内音像定位現象が生じる。しかしながら、受聴者の
前方に配置されたラウドスピーカを用いたバイノーラル
再生では、頭内音像定位は生じない。このことは、頭部
伝達特性の微妙な差異で正面方向の音像定位感が不足す
る状況が生じた場合、再生される音像位置は本当の音源
方向、すなわち、ヘッドホンでは耳介近傍、前方配置の
ラウドスピーカでは前方方向にひっぱられてしまうこと
を示唆している。
【0019】本発明のバイノーラル再生装置では、上述
のように一対のラウドスピーカと音像定位フィルタリン
グ部を備えることによって、ラウドスピーカを用いたバ
イノーラル再生を実現し、ダミーヘッドマイクロホンと
頭部伝達関数の微妙に異なる不特定多数の受聴者に対し
て再生した場合でも、前方方向への音像定位感を付与す
ることが可能になる。
【0020】また、本発明のバイノーラル再生装置で
は、ラウドスピーカが受聴者に近接して配置されている
ため、音質面でも原音に忠実な再生が可能になる。すな
わち、ラウドスピーカが受聴者に近接配置されたこと
で、直接伝播する音の伝播距離が反射音の伝播距離より
も十分に小さくなる。伝播音の音圧が伝播距離の二乗に
反比例して小さくなるという音圧の距離減衰により、直
接伝播する音に対する反射音の比率を無視できる程度に
小さくすることができる。これにより、ラウドスピーカ
を用いた従来の再生装置で問題となっていた、純音系の
音を再生した場合に生じる空間での干渉現象を抑制する
ことができ、音質面でも原音に忠実な再生が可能にな
る。一般に人間の聴覚の弁別閾は1dBといわれてお
り、受聴者に干渉現象による音圧レベルの変化を認知さ
れないようにするためには、受聴者からラウドスピーカ
までの距離が1m以下になるようにラウドスピーカを配
置するとよい。
【0021】さらに、一対のラウドスピーカは、互いに
近接して配置するとよい。一対のラウドスピーカが互い
に近接して配置されることにより、再生中に受聴者の頭
が動いた場合にも良好なバイノーラル再生を維持するこ
とが可能になる。前述したように、人間の音源位置知覚
には左右両耳間の到達時間差やレベル差などの両耳間特
性が大きな役割を果たしている。したがって、良好なバ
イノーラル再生を実現するためには、原音場と同様の両
耳間特性を実現・維持することが重要である。しかし従
来のラウドスピーカを用いたバイノーラル再生装置で
は、できるだけ広い音像空間を得る目的で左右両ラウド
スピーカが受聴者から見て120度程度開いた状態に離
して配置されていた。このような配置では、たとえば受
聴者が頭を右に移動させると、右前方のラウドスピーカ
と右耳の距離は縮まり、左前方のラウドスピーカと左耳
の距離は大きくなる。そのため、左右で逆傾向の変化が
生じ、両耳間特性に大きな影響を及ぼしてしまう。この
ようなことから、再生中に受聴者が頭を動かすと、バイ
ノーラル再生が維持できなくなるという問題があった。
【0022】これに対し、本発明が一対のラウドスピー
カを互いに近接した状態で受聴者の正面に配置すること
によって、受聴者が頭を左右に動かしても、両耳間で傾
向が逆になるような大きな変化が生じない。このことに
より、再生中に受聴者が頭を動かしても良好なバイノー
ラル再生を維持することが可能になる。
【0023】しかしながら、上述のようにラウドスピー
カを互いに近接配置した場合、左前方(右前方)のラウ
ドスピーカから放射された音が受聴者の右耳(左耳)に
伝播するクロストークが増大する。これによってクロス
トークを消去するための音像定位フィルタリング部のフ
ィルタ係数の演算が難しくなり、再生装置を使用する部
屋の環境などによっては良好なバイノーラル再生を損な
う恐れがある。このような問題を抑制するため、例えば
左右のラウドスピーカの間に受聴者の正面空間を左右に
仕切る遮音板を設置することが望ましい。なお、音質面
で原音に忠実な音場再生を実現するために、遮音板の一
部あるいは遮音板全体を吸音材料で構成することが望ま
しい。
【0024】さらに、ラウドスピーカから受聴者の両耳
間の空間は左右非対称でも前方方向の定位感を得ること
ができるが、前方方向の定位感を左右両耳で合わせるた
めには、ラウドスピーカの見開き角度、向き、ラウドス
ピーカから受聴者の耳までの距離などから決定されるラ
ウドスピーカと受聴者の両耳間の空間の位置関係が左右
対称であることが望ましい。また、左右のラウドスピー
カを1つの筐体に収納する場合にはその筐体の空間の位
置関係や形状、さらに遮音板を設ける場合にはその遮音
板の空間の位置関係や形状などについても略対称である
とよい。
【0025】上述のような本発明のバイノーラル再生装
置は、たとえば複数台の機械装置について、それらの騒
音を比較評価するなど、音の評価を支援するための音響
評価支援方法に利用することができる。すなわち、複数
の測定対象から発せられた音をそれぞれ収録して、収録
された各音響信号中から比較対象部分のみを取り出して
録音しておき、本発明のバイノーラル再生装置により、
比較対象部分の音響信号を時系列に並べて再生する。こ
れにより、受聴者は複数の比較対象部分を連続的に聴取
して比較評価することができ、受聴者の感覚を損なわせ
ることなく比較評価を実現するように支援することがで
きる。
【0026】
【発明の実施の形態】図1は、本発明のバイノーラル再
生装置の第1の実施の形態を含むシステムの一例を示す
概略構成図である。図中、1は原音場、2はダミーヘッ
ドマイクロホン、3は音像定位フィルタリング部、4は
ラウドスピーカ、5は受聴者、6はDATである。この
バイノーラル再生装置を含むシステムでは、原音場1で
音を収録するためのダミーヘッドマイクロホン2、これ
を記録あるいは再出力するためのDAT(Digita
l Audio Tape Recorder)6、音
を再生するための一対のラウドスピーカ4、あらかじめ
測定したラウドスピーカ4から受聴者5の両耳に至る音
響伝達特性からクロストークを消去する音像定位フィル
タリング部3などにより構成されている。
【0027】ダミーヘッドマイクロホン2は、原音場1
での音を収録する。ダミーヘッドマイクロホン2として
は、人間の頭部と耳介の形状や音響特性を模したダミー
ヘッドの両耳外耳道入り口にマイクロホンを取り付けた
もの、更に外耳道の形状も模して鼓膜位置にマイクロホ
ンを取り付けたもの、また頭部だけでなく肩や胴体など
上半身の形状も模したHATS(Head and T
orso Simulator)などを用いることがで
きる。ここでは一例として、日本人成人28名のデータ
から頭部および上半身を模擬すると共に、左右耳介の外
耳道入り口部にそれぞれ小型マイクロホンを配設したH
ATS(Head and TorsoSimulat
or)を用いた。
【0028】DAT6は、ダミーヘッドマイクロホン2
で収録した音を記録及び再出力することができる。DA
T6の具体例としては、48kHzサンプリング、16
ビットの一般音楽用のステレオ2チャンネルのDATを
用いることができる。ダミーヘッドマイクロホン2で収
録した音を記録及び再出力する装置としては、DAT6
のほか、テープレコーダやCD−R(CD−ROM R
ecorder)、パソコンやワークステーションのメ
モリや外部記憶装置などに記録するようにしてもよい。
もちろん、このような記録及び再出力する装置を用いず
に、ダミーヘッドマイクロホンで収録された音を、その
ままラウドスピーカ4で再生するように構成してもよ
い。
【0029】音像定位フィルタリング部3は、あらかじ
め測定されたラウドスピーカから左右両耳の特定箇所ま
での空間音響伝達特性やラウドスピーカの電気音響変換
特性を含む再生空間の音響伝達特性を基に、これらの音
響伝達特性の歪みを補正するとともに、クロストーク成
分を消去するためのフィルタ係数を演算しておき、再生
する音響信号をフィルタリング処理する。なお、空間音
響伝達特性の測定は、正弦波掃引法や広帯域雑音を用い
たクロススペクトル法などの既存の伝達特性測定方法を
用いることができる。
【0030】この音像定位フィルタリング部3は、一般
的なアナログあるいはデジタル演算素子を用いることが
できる。デジタル演算素子を用いる場合、デジタルの音
響信号とフィルタ係数を畳み込み演算する畳み込み演算
器、および畳み込み演算結果をアナログ信号に変換して
音響信号としてラウドスピーカ4に出力するディジタル
アナログ(D/A)変換器などにより構成することがで
きる。また、例えばダミーヘッドマイクロホン2から音
響信号が直接入力される場合やDAT6からアナログ出
力された音響信号が入力される場合など、入力される音
響信号がアナログの信号であれば、入力されたアナログ
の音響信号をデジタル信号に変換するアナログディジタ
ル(A/D)変換器が設けられる。
【0031】これらの演算器として、少なくとも畳み込
み演算器はDSP(DigitalSignal Pr
ocessor)などを用いることができる。入力され
た音響信号にフィルタ係数を畳み込み演算するデジタル
フィルタは、入力された音響信号に複数の1サンプル遅
延素子が縦列接続され、入力された音響信号および各遅
延信号にフィルタ係数を乗算してこれらを総和する。具
体的には2048タップのデジタルフィルタを用いるこ
とができる。
【0032】畳み込み演算に用いるフィルタ係数は、次
のようにしてあらかじめ測定算出しておくことができ
る。図2は、ラウドスピーカ4から受聴者5の両耳に至
る音響伝達特性の測定状況の一例を示す説明図である。
ラウドスピーカ4は、後述するようにバイノーラル再生
を行うときと同様に設置されている。また受聴者5の両
耳位置での音響信号を収録するため、受聴者5の代わり
にダミーヘッドマイクロホン2を用いることができる。
【0033】まず、右前方のラウドスピーカ4に広帯域
雑音信号を入力して広帯域雑音を発生させ、元の広帯域
雑音信号とダミーヘッドマイクロホン2で収録された信
号からクロススペクトル法により左右両耳に至る音響伝
達特性HRS、HROを測定する。左前方のラウドスピ
ーカ4についても同様にしてHLS、HLOを測定す
る。このHRS、HRO、HLS、HLOには、ラウド
スピーカ4の電気音響変換特性とラウドスピーカ4から
空間を経てダミーヘッドマイクロホン2に到る空間音響
伝達特性が含まれる。このHRS、HRO、HLS、H
LOから、 CL=−HLO/HLS …(1) CR=−HRO/HRS …(2) TL=1/((1−CL・CR)・HLS) …(3) TR=1/((1−CL・CR)・HRS) …(4) となる特性CL、CR、TL、TRを実現するようにデ
ジタルフィルタの係数を算出すればよい。
【0034】以上のように構成された音像定位フィルタ
リング部3によれば、ダミーヘッドマイクロホン2を用
いて収録された音場信号をラウドスピーカ4から受聴者
5の両耳に再生する際に、右前方(左前方)ラウドスピ
ーカから放射された音が左耳(右耳)に到達するクロス
トーク成分を消去するとともに、ラウドスピーカ4の電
気音響変換特性や空間音響伝達特性がフラットでないこ
とにより生じる音信号の振幅や位相などに対する歪みを
取り除くことが可能になる。
【0035】図1に戻り、一対のラウドスピーカ4は、
音像定位フィルタリング部3でクロストーク防止等のた
めのフィルタリング処理後の音を再生する。ラウドスピ
ーカとしては、動電型、電磁型、静電型、圧電型、電歪
型などの各種スピーカを用いることができる。また左右
のラウドスピーカはそれぞれ1個に限るものではなく、
それぞれ複数のラウドスピーカを用いてもよい。たとえ
ば高音再生用ツィータと低音再生用ウーハとからなる2
個のラウドスピーカにより構成することができる。な
お、左右のラウドスピーカ4は、略対称となるように配
置するとよい。
【0036】図3は、本発明のバイノーラル再生装置の
第1の実施の形態における一対のラウドスピーカの設置
位置を示す平面図、図4は、同じく側面図である。図3
に示す受聴者5から見た一対のラウドスピーカ4の見開
き角度αは任意であるが、受聴者5の両耳とラウドスピ
ーカ4の表面位置との距離bが小さくなるように、受聴
者5に近接して一対のラウドスピーカ4が設置される。
距離bは、後述するように、約1m以下となるようにす
るとよい。
【0037】受聴者5から見た一対のラウドスピーカ4
の見開き角度αは上述のように任意であり、例えば12
0度になるように、受聴者5の前面方向に左右対称に配
置することができる。しかし、受聴者5が頭を動かした
場合にも良好なバイノーラル再生を維持するために、左
右のラウドスピーカ4を互いに近接して配置し、見開き
角度を小さくすることが望ましい。なお、一対のラウド
スピーカ4が互いに近接して配置する場合、これらをひ
とつの筐体内に収納して、みかけ上ひとつのスピーカユ
ニットとすることも可能である。この場合でも、ラウド
スピーカ4及び筐体は、空間的な配置や形状が左右で略
対称となるようにするとよい。
【0038】また、図4に示すように、ラウドスピーカ
4の高さ方向の位置については、受聴者5の両耳の高さ
とラウドスピーカ4の中心が同じ高さになるように設定
するとよい。具体的には、受聴者5の高さが1.5mと
したとき、ラウドスピーカ4のツィータの中心が同じ高
さになるように設定することができる。
【0039】以下、このようなラウドスピーカ4の配置
によるバイノーラル再生の有効性について説明してゆ
く。図5、図6は、本発明のバイノーラル再生装置の実
施の一形態及び従来の各種の再生装置における再生音像
空間に関する実験結果の一例の説明図である。図5,図
6では、受聴者の正面前方に奥行き方向1〜2m、幅方
向2mの音源領域を想定し、音源領域の任意の位置に機
械(プリンタ)などの音源を設置して、音源からの放射
音を収録するとともに、いくつかの再生方法によって再
生し、音源の音像を受聴者が認知する領域(再生音像領
域)がどのように形成されたかを実験した結果を示して
ある。
【0040】図5(A)に示す例では、一般的なステレ
オマイクロホンを用いて収録し、ヘッドホンを用いて再
生する一般的なステレオ方式の場合を示している。この
場合には、受聴者5の左右の耳に対して左右のスピーカ
から音が再生されるため、受聴者5の左右の耳を結ぶ頭
内に再生音像領域が形成される。また図5(B)に示す
例では、同様に一般的なステレオマイクロホンを用いて
収録し、ラウドスピーカを用いて再生する一般的なステ
レオ方式の場合を示している。この場合には、ラウドス
ピーカを結ぶ空間に再生音像領域が形成される。このよ
うに、従来のステレオ方式による再生では、再生音像位
置がヘッドホンやラウドスピーカの位置に定位され、受
聴者5は実際の音源位置とはまったく異なる位置に音源
が存在するものと認識してしまう。
【0041】図5(C)に示す例では、ヘッドホンによ
るバイノーラル方式で再生した場合を示している。この
場合、図5(A)に示すステレオ方式で再生した場合に
比べて、再生音像領域はかなり拡大される。しかし、上
述のように正面方向の定位感が不足し、頭内音像定位現
象が生じてしまう。そのため、受聴者5は実際の音像位
置とは異なる位置に音源が存在するものと認識してしま
っていた。
【0042】図6(A)に示す例では、従来のラウドス
ピーカの配置によってバイノーラル方式で再生した場合
を示している。従来は、ラウドスピーカを受聴者からな
るべく遠くに配置するとともに、左右のスピーカの角度
がなるべく広くなるように配置している。また、図6
(B)及び図6(C)に示す例では、本発明のバイノー
ラル再生装置の第1の実施の形態における構成を示し、
図6(B)ではラウドスピーカを受聴者5に近接して配
置するとともに左右のラウドスピーカを離して設置した
例を、図6(C)ではラウドスピーカを受聴者5に近接
して配置するとともに左右のラウドスピーカを近接して
設置した例をそれぞれ示している。図6(A)〜(C)
に示す例においては、いずれも、図5(A)〜(C)に
示した例と比べ、受聴者の前方に再生音像が形成され、
実際の音源位置と受聴者が認識する音源位置とがほぼ一
致した。
【0043】しかし、図6(A)に示す従来のラウドス
ピーカの配置によるバイノーラル再生を行う場合には、
上述のように床面などによる反射波の影響が大きく、直
接波との干渉などによって忠実に原音を再現できない場
合がある。図7は、ラウドスピーカから受聴者までの距
離の違いによる再生音質の違いの一例の説明図である。
ここでは、受聴者の正面前方2mの位置に音源となる機
械を設置して、見開き角度120度でラウドスピーカを
配置し、バイノーラル方式による再生を行った。図7
(A)は、受聴者からラウドスピーカまでの距離を2m
にして再生した場合、また、図7(B)は受聴者からラ
ウドスピーカまでの距離を70cmにして再生した場合
について、再生された音と原音をそれぞれ収録・測定し
て、その音圧レベルの差分を周波数特性図として表して
いる。
【0044】受聴者からラウドスピーカまでの距離が2
mの場合には、図7(A)に示すように、再生された音
と原音の音圧レベルに複数の周波数帯域で6dB近い大
きな差が生じており、原音を忠実に再現できていない。
なお、この大きな差が生じている領域は、原音に純音系
の成分が含まれている領域と一致することが確認され
た。これに対して、本発明のバイノーラル再生装置のよ
うに受聴者とラウドスピーカとを近接して配置し、その
距離を70cmとした場合には、図7(B)に示すよう
に、周波数帯域全域について原音との差が1dB以下で
再生されており、音質面でも原音に忠実な音場再生が実
現できている。
【0045】このように、図6(A)に示すようにラウ
ドスピーカ4を受聴者5から遠ざけて設置すると、忠実
に原音を再現できない場合があり、特に純音などにおい
ては忠実に再現できない。しかし、図6(B)、(C)
に示す本発明のバイノーラル再生装置の第1の実施の形
態のように、ラウドスピーカ4を受聴者5に近接して配
置することによって、純音なども含めて原音を忠実に再
現することが可能となった。
【0046】これは受聴者5の両耳とラウドスピーカ4
の表面位置との距離bを小さくすることによって、ラウ
ドスピーカ4から受聴者5に直接伝播する音に比べて、
他の経路、例えば床面などで反射した音が十分に小さく
なることによるものである。音圧は伝播距離の二乗に反
比例して小さくなる。ラウドスピーカ4を受聴者5に近
接して設置することによって、ラウドスピーカ4と受聴
者5耳の距離に比べてラウドスピーカ4から床面を経由
して受聴者5の耳に到る距離は非常に長くなり、減衰量
も大きくなる。これによって、反射音の比率を無視でき
る程度に小さくすることができ、反射音などによる干渉
現象を抑制することができる。そのため、無響室などに
設置しなくても原音に忠実な再生が可能になる。
【0047】図8は、直接伝播音と床面反射音との干渉
による影響をシミュレーションした実験結果の一例を示
すグラフである。実際に直接伝播音と床面反射音との干
渉現象が、再生される音の音圧レベルにどの程度の影響
を及ぼすかを調べる実験を行った。その結果を図8に示
す。図8から明らかなように、床面反射音による影響は
受聴者からラウドスピーカまでの距離が大きくなると指
数関数的に急激に増大する。人間の聴覚の弁別閾は1d
Bといわれており、このことから受聴者に干渉現象によ
る音圧レベルの変化を認知されないようにするために
は、受聴者5からラウドスピーカ4までの距離が1m以
下になるようにラウドスピーカ4を配置すればよいこと
がわかる。上述の図7(B)における実験例でにおい
て、受聴者5の両耳とラウドスピーカ4の表面位置との
距離bを70cm程度としたが、これは受聴者5からラ
ウドスピーカ4までの距離が1m以下の範囲に含まれて
おり、床面反射音による干渉などの影響が少なく、原音
に忠実な再現を行うことができる。
【0048】受聴者5から見た一対のラウドスピーカ4
の見開き角度αは、上述のように任意であり、例えば図
6(B)に示すように開いて、受聴者5の前面方向に左
右対称に配置することができる。しかし、受聴者5が頭
を動かした場合にも良好なバイノーラル再生を維持する
ために、例えば図6(C)に示したように左右のラウド
スピーカ4を互いに近接して配置し、見開き角度を小さ
くすることが望ましい。
【0049】前述したように、人間の音源位置知覚には
左右両耳間の到達時間差やレベル差などの両耳間特性が
大きな役割を果たしている。したがって、良好なバイノ
ーラル再生を実現するためには、原音場と同様の両耳間
特性を実現・維持することが重要である。一対のラウド
スピーカ4を互いに近接した状態で受聴者5の正面に配
置することによって、受聴者5が頭を左右に動かして
も、両耳間で傾向が逆になるような大きな変化が生じな
くなる。すなわち、受聴者5が頭を左に動かせば左右両
ラウドスピーカ4との距離がともに変わるため、左右の
耳に達する音の傾向にはあまり変化がない。そのため、
再生中に受聴者が頭を動かしても良好なバイノーラル再
生を維持することが可能になる。
【0050】図9は、本発明のバイノーラル再生装置の
第1の実施の形態において受聴者が頭を動かしたときの
影響を測定した実験結果を示すグラフである。ここで
は、受聴者5の正面前方2mの位置に音源となる機械を
設置して収録した音を、ラウドスピーカ4によるバイノ
ーラル方式を用いて再生した。このとき、(a)受聴者
5からラウドスピーカ4までの距離を2m、ラウドスピ
ーカの見開き角度100度にして再生した場合と、
(b)受聴者5からラウドスピーカ4までの距離を70
cm、ラウドスピーカの見開き角度を20度にして再生
した場合について、ダミーヘッドマイクロホンで測定し
た。再生中に受聴者5が頭を動かした場合に再生される
音にどのような影響が生じるのかを調べるため、ダミー
ヘッドマイクロホンを移動させて音圧レベルを測定し、
その音圧レベルの変動量を図9に示している。図9にお
いて、上述の条件(a)の場合をハッチングを施したグ
ラフで示し、条件(b)の場合を白抜きのグラフで示し
ている。なお、実験で想定した頭部の移動領域は前後方
向±10cm、左右方向±10cm、回転方向±25度
である。
【0051】図9から明らかなように、ハッチングを施
して示した従来のラウドスピーカ4の配置条件(a)で
は、受聴者5が頭を動かした場合に2dBを超える音圧
レベル変動が生じ、良好なバイノーラル再生が維持でき
ていない。これに対して、本発明のバイノーラル再生装
置のように、ラウドスピーカ4を受聴者5に近接して配
置するとともに、一対のラウドスピーカを近接して配置
した条件(b)では、頭部の前後移動、左右移動、回転
時全てにおいて、音圧レベルの変動量が1dB以下に抑
えられており、良好なバイノーラル再生が維持できてい
る。特にこのような頭部の移動に対しては、一対のラウ
ドスピーカ4を近接して配置することが有効である。
【0052】なお、図9における配置条件(a)は上述
の図6(A)に示す場合であり、配置条件(b)は上述
の図6(C)に示す場合である。すなわち、従来のよう
に左右のラウドスピーカ4をなるべく広角にして受聴者
5からなるべく離して配置すると、受聴者5の頭部の移
動によってバイノーラル再生が維持できない。しかし、
左右のラウドスピーカ4を互いに近接させ、しかも受聴
者5に近接して設置することによって、受聴者5の頭部
の移動が生じても、良好なバイノーラル再生を維持する
ことができる。
【0053】図10は、本発明のバイノーラル再生装置
の第2の実施の形態を含むシステムの一例を示す概略構
成図である。図中、図1と同様の部分には同じ符号を付
して説明を省略する。7は遮音板である。この第2の実
施の形態では、ラウドスピーカ4が遮音板7を介して隣
接して配置されている。ラウドスピーカ4が互いに近接
配置された場合、左前方(右前方)のラウドスピーカ4
から放射された音が受聴者5の右耳(左耳)に伝播する
クロストークが増大する。このクロストークは音像定位
フィルタリング部3において消去するが、クロストーク
が大きくなるとクロストークを消去するためのフィルタ
係数の演算が難しくなり、再生装置を使用する部屋の環
境などによっては良好なバイノーラル再生を損なう恐れ
がある。この問題を抑制するため、左右のラウドスピー
カ4の間に受聴者5の正面空間を左右に仕切る遮音板7
を設置している。
【0054】遮音板7としては任意の材料を用いること
ができるが、音質面でも原音に忠実な音場再生を実現す
るためには遮音板7の表面での音波の反射を抑制する必
要がある。そのため、遮音板7の表面あるいは遮音板全
体をグラスウールや多孔質プラスチック、発泡材などか
らなる吸音材料で構成することが望ましい。
【0055】図11は、本発明のバイノーラル再生装置
の第2の実施の形態における一対のラウドスピーカ及び
遮音板の設置位置を示す平面図、図12は、同じく側面
図である。この第2の実施の形態においても、ラウドス
ピーカ4の配置位置に関しては上述の第1の実施の形態
と同様、ラウドスピーカ4の表面位置から受聴者5の両
耳までの距離bは1m以内とすることが望ましく、例え
ば70cm程度とすることができる。また、左右のラウ
ドスピーカ4は近接して配置されており、ラウドスピー
カ4の表面位置から受聴者5の両耳までの距離bを70
cmとしたときの開き角度αは約20度である。またラ
ウドスピーカ4の高さ方向の位置は、受聴者5の両耳の
高さとラウドスピーカ4のツィータの中心が同じ高さに
なるように設定するとよく、例えば高さCを1.5m程
度とすることができる。
【0056】遮音板7は、左右のラウドスピーカ4から
放射された音を分離するため、ラウドスピーカ4の表面
よりも受聴者5側へ突出するように配置される。すなわ
ち、図11に示すように、ラウドスピーカ4の表面位置
から受聴者5の両耳までの距離bよりも、遮音板7の端
部から受聴者5の両耳までの距離aの方が小さくなるよ
うに遮音板7が設けられる。また、図12にも示すよう
に、上下にも延在しているとよい。この例では床面から
遮音板7が設けられており、遮音板7の高さdは、高さ
Cよりも高く設置されている。これによって、受聴者5
の正面空間を左右に良好に仕切ることができ、クロスト
ークを低減することができる。完全に分離できなくて
も、音像定位フィルタリング部3によってクロストーク
をキャンセルするように信号処理を行うので問題ない。
【0057】遮音板7の具体例としては、厚さ10c
m、長さ(d)200cm、幅120cmのグラスウー
ル吸音材を用い、高さ方向については、ラウドスピーカ
4の上面から30cm上方まで、受聴者5の方向へは受
聴者の両耳位置からの距離aが30cmとなるように設
置することができる。
【0058】なお、ラウドスピーカから受聴者の両耳間
の空間は左右非対称でも前方方向の定位感を得ることが
できるが、前方方向の定位感を左右両耳で合わせるため
には、ラウドスピーカ4の見開き角度、向き、ラウドス
ピーカから受聴者の耳までの距離、遮音板7の空間的な
位置などから決定されるラウドスピーカと受聴者の両耳
間の空間の位置関係が左右対称であることが望ましい。
【0059】このようなバイノーラル再生装置の第2の
実施の形態によれば、上述の第1の実施の形態と同様、
原音を忠実に再現することができる。また、受聴者5が
遮音板7を越えて移動しなければ、バイノーラル再生を
維持することができる。
【0060】上述のような本発明のバイノーラル再生装
置は、たとえば複数台の機械装置について、それらの騒
音を比較評価するための音響評価支援方法として利用す
ることができる。すなわち、複数の測定対象から発せら
れた音をそれぞれ収録して、収録された各音響信号中か
ら比較対象部分のみを取り出して録音しておく。録音し
ておいた比較対象部分の音響信号を時系列に並べて、上
述のような本発明のバイノーラル再生装置により再生す
る。これにより、受聴者は複数の比較対象部分を連続的
に聴取して比較評価することができ、受聴者の感覚を損
なわせることなく比較評価を実現することができる。こ
のとき、従来では忠実な再生が難しかった純音成分につ
いても、本発明のバイノーラル再生装置によって忠実に
再生されるため、受聴者による正確な評価を行うことが
可能になる。
【0061】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、ラウドスピーカを受聴者の前方に配置すると
ともに、このような構造にしたことにより生じるクロス
トークを消去するための音像定位フィルタリング部を備
えていることにより、不特定多数の受聴者に良好な前方
方向への頭外音像定位感を実現することができる。さら
に本発明では、ラウドスピーカを受聴者に近接配置した
ので、ラウドスピーカから直接伝播される音と床面によ
る反射音とが空間で干渉する現象を抑制し、音質面でも
原音に忠実な音場再生が可能である。さらに、左右のラ
ウドスピーカを互いに近接配置することにより、受聴者
が頭を動かした場合にも、良好なバイノーラル再生を維
持することが可能である。
【0062】また、本発明によれば、個人専用の頭部伝
達関数の測定や、常に頭を動かしていなければならな
い、逆に常に頭を一定の位置に静止させておかなければ
ならない、無響室を使用する必要があるなど、従来課せ
られていた制約を必要とせず、良好な前方定位感及び音
質面での忠実再生を実現することができ、バイノーラル
方式による再生を簡単に実施することができるという効
果がある。
【0063】さらに、このような本発明のバイノーラル
再生装置を利用することによって音源を忠実に再現する
ことができるので、音源の評価を行う場合に正確な評価
を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のバイノーラル再生装置の第1の実施
の形態を含むシステムの一例を示す概略構成図である。
【図2】 ラウドスピーカ4から受聴者5の両耳に至る
音響伝達特性の測定状況の一例を示す説明図である。
【図3】 本発明のバイノーラル再生装置の第1の実施
の形態における一対のラウドスピーカの設置位置を示す
平面図である。
【図4】 本発明のバイノーラル再生装置の第1の実施
の形態における一対のラウドスピーカの設置位置を示す
側面図である。
【図5】 本発明のバイノーラル再生装置の実施の一形
態及び従来の各種の再生装置における再生音像空間に関
する実験結果の一例の説明図である。
【図6】 本発明のバイノーラル再生装置の実施の一形
態及び従来の各種の再生装置における再生音像空間に関
する実験結果の一例の説明図である。
【図7】 ラウドスピーカから受聴者までの距離の違い
による再生音質の違いの一例の説明図である。
【図8】 直接伝播音と床面反射音との干渉による影響
をシミュレーションした実験結果の一例を示すグラフで
ある。
【図9】 本発明のバイノーラル再生装置の第1の実施
の形態において受聴者が頭を動かしたときの影響を測定
した実験結果を示すグラフである。
【図10】 本発明のバイノーラル再生装置の第2の実
施の形態を含むシステムの一例を示す概略構成図であ
る。
【図11】 本発明のバイノーラル再生装置の第2の実
施の形態における一対のラウドスピーカ及び遮音板の設
置位置を示す平面図である。
【図12】 本発明のバイノーラル再生装置の第2の実
施の形態における一対のラウドスピーカ及び遮音板の設
置位置を示す側面図である。
【図13】 実際の音場空間で人間が両耳で音源の位置
を認知する状況の説明図である。
【図14】 原音場中に設置したダミーヘッドマイクロ
ホンで音を収録し、ヘッドホンで再生して両耳で受聴さ
せるバイノーラル収録再生方式の一例の説明図である。
【符号の説明】
1…原音場、2…ダミーヘッドマイクロホン、3…音像
定位フィルタリング部、4…ラウドスピーカ、5…受聴
者、6…DAT、7…遮音板、11…ヘッドホン。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バイノーラル収録された音響信号を再生
    するバイノーラル再生装置において、音を再生する一対
    のラウドスピーカと、あらかじめ測定したラウドスピー
    カから受聴者の両耳に至る音響伝達特性からクロストー
    クを消去する音像定位フィルタリング部を有し、前記一
    対のラウドスピーカが受聴者に近接して配置されること
    を特徴とするバイノーラル再生装置。
  2. 【請求項2】 前記一対のラウドスピーカが互いに近接
    して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の
    バイノーラル再生装置。
  3. 【請求項3】 前記ラウドスピーカの空間の配置が左右
    チャネルで略対称であることを特徴とする請求項1また
    は請求項2に記載のバイノーラル再生装置。
  4. 【請求項4】 前記一対のラウドスピーカの間に受聴者
    の正面空間を左右に仕切る遮音板が配置されていること
    を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に
    記載のバイノーラル再生装置。
  5. 【請求項5】 前記遮音板の全体あるいはその一部分が
    吸音材により構成されていることを特徴とする請求項4
    に記載のバイノーラル再生装置。
  6. 【請求項6】 前記一対のラウドスピーカの表面から受
    聴者の両耳までの距離が1m以下であることを特徴とす
    る請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のバイ
    ノーラル再生装置。
  7. 【請求項7】 複数の測定対象からそれぞれ発せられた
    音響信号をそれぞれバイノーラル収録し、収録された音
    響信号の中から比較対象部分のみを取り出し、前記比較
    対象部分の音響信号を時系列に並べて請求項1ないし請
    求項6のいずれか1項に記載のバイノーラル再生装置に
    よって再生することを特徴とする音源評価支援方法。
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