JP2001316462A - 3−ヒドロキシチエニルアルカン酸をモノマーユニットとして含むポリヒドロキシアルカノエート及びその製造方法 - Google Patents

3−ヒドロキシチエニルアルカン酸をモノマーユニットとして含むポリヒドロキシアルカノエート及びその製造方法

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JP2001316462A
JP2001316462A JP2001055670A JP2001055670A JP2001316462A JP 2001316462 A JP2001316462 A JP 2001316462A JP 2001055670 A JP2001055670 A JP 2001055670A JP 2001055670 A JP2001055670 A JP 2001055670A JP 2001316462 A JP2001316462 A JP 2001316462A
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acid
pha
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Shinya Furusaki
眞也 古崎
Tsutomu Honma
務 本間
Takeshi Imamura
剛士 今村
Takashi Kenmoku
敬 見目
Tatsu Kobayashi
辰 小林
Tetsuya Yano
哲哉 矢野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 新規な構成を有するポリヒドロキシアルカノ
エート(PHA)、ならびに、目的とするモノマーユニ
ット以外に、混入してくる不要なモノマーユニットを大
幅に低減しつつ、高い収率で、生分解性を有する前記P
HAを微生物を利用して生産する方法の提供。 【解決手段】 3−ヒドロキシチエニルアルカン酸をモ
ノマーユニットとして有する新規PHAであり、対応す
るチエニルアルカン酸を原料として、前記PHA産生能
を有する微生物を、基質のチエニルアルカン酸を含む培
地で培養し、得られる培養菌体中に蓄積される目的のP
HAを抽出、回収する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なポリヒドロ
キシアルカノエート(以下、PHAと略す場合もある)
ならびにその製造方法に関する。より具体的には、PH
Aを生産し菌体内に蓄積する能力を有する微生物を用
い、側鎖にチエニル基を置換基として有するPHAを、
対応するチエニル基を置換基として有する置換アルカン
酸を基質に用いて、目的のPHAの効率的な製造する方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】これまで、多くの微生物がポリ−3−ヒ
ドロキシ酪酸(以下、PHBと略す場合もある)あるい
はその他のPHAを生産し、菌体内に蓄積することが報
告されてきた(「生分解性プラスチックハンドブッ
ク」、生分解性プラスチック研究会編、(株)エヌ・ティ
ー・エス、P178-197)。これらのポリマーは従来のプ
ラスチックと同様に、溶融加工等により各種製品の生産
に利用することができる。さらに、微生物が生産するP
HAは生分解性であるので、自然界で微生物により完全
分解されるという利点を有している。従って、これら生
分解性PHAは、従来の多くの合成高分子化合物のよう
に自然環境に残留して汚染を引き起こすことがない。ま
た、生体適合性にも優れており、医療用軟質部材等とし
ての応用も期待されている。
【0003】このような微生物産生PHAは、その生産
に用いる微生物の種類や培地組成、培養条件等により、
様々な組成や構造のものとなり得ることが知られてお
り、これまで主に、PHAの物性の改良という観点か
ら、このような組成や構造の制御に関する研究がなされ
てきた。
【0004】例えば、アルカリゲネス・ユウトロファス
H16株(Alcaligenes eutropusH16、ATCC No.1
7699)及びその変異株は、その培養時の炭素源を変化さ
せることによって、3-ヒドロキシ酪酸(以下、3HB
と略す場合もある)と3-ヒドロキシ吉草酸(以下、3
HVと略す場合もある)との共重合体を様々な組成比で
生産することが報告されている(特表平6-15604
号公報、特表平7-14352号公報、特表平8-192
27号公報など)。
【0005】特開平5-74492号公報では、メチロ
バクテリウム属(Methylobacterium sp.)、パラコッ
カス属(Paracoccus sp.)、アルカリゲネス属(Alcal
igenes sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)
の微生物を、炭素数3から7の第一アルコールに接触さ
せることにより、3HBと3HVとの共重合体を生産さ
せる方法が開示されている。
【0006】特開平5-93049号公報、及び、特開
平7-265065号公報では、アエロモナス・キャビ
エ(Aeromonas caviae)を、オレイン酸やオリーブ油
を炭素源として培養することにより、3HBと3-ヒド
ロキシヘキサン酸(以下、3HHxと略す場合もある)
との2成分共重合体を生産することが開示されている。
【0007】特開平9-191893号公報では、コマ
モナス・アシドボランス・IFO 13852株(Comamona
s acidovorans IFO 13852)が、炭素源としてグルコ
ン酸及び1,4-ブタンジオールを用いた培養により、3
HBと4-ヒドロキシ酪酸とをモノマーユニットに持つ
ポリエステルを生産することが開示されている。
【0008】また、近年、炭素数が12程度までの中鎖
長(mediu chain-length:mclと略記)の3−ヒドロキ
シアルカノエート(以下、3HAと略す場合もある)を
モノマーユニットとするPHAについての研究が精力的
に行われている。このようなPHAの合成経路は大きく
2つに分類することが可能であり、その具体例を下記
(1)および(2)に示す。
【0009】(1)β酸化を利用した合成:特許公報第
2642937号では、シュードモナス・オレオボラン
ス・ATCC 29347株(Pseudomonas oleovorans ATCC 2934
7)に、炭素源として非環状脂肪族炭化水素を与えるこ
とにより、炭素数が6から12までの3−ヒドロキシア
ルカノエートのモノマーユニットを有するPHAが生産
されることが開示されている。また、Appl. Environ. M
icrobiol., 58(2), 746 (1992)には、シュードモ
ナス・レジノボランス(Pseudomonas resinovorans)
が、オクタン酸を単一炭素源として、3−ヒドロキシ酪
酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタ
ン酸、3−ヒドロキシデカン酸(含有比(モル比率)
1:15:75:9)をモノマーユニットとするポリエステル
を生産し、また、ヘキサン酸を単一炭素源として、3−
ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒド
ロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸(含有比
(モル比率) 8:62:23:7)をユニットとするポリエ
ステルを生産することが報告されている。ここで、原料
のアルカン酸に対して、その炭素数が2または4少ない
3HAモノマーユニットは、代謝産物であるが、原料の
アルカン酸よりも鎖長の延長がなされている3HAモノ
マーユニットは、次ぎの(2)に説明する脂肪酸合成経
路を経由していると考えられる。
【0010】(2)脂肪酸合成経路を利用した合成 Int. J. Biol. Macromol., 16(3)、 119 (1994)
には、シュードモナスsp.61-3株(Pseudomonas sp.61-3
strain)が、グルコン酸ナトリウムを単一炭素源とし
て、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、
3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸、
3−ヒドロキシドデカン酸といった3−ヒドロキシアル
カン酸、ならびに、3−ヒドロキシ−5−cis−デセン
酸、3−ヒドロキシ−5−cis−ドデセン酸といった3
−ヒドロキシアルケン酸(3−ヒドロキシ5−cis−ア
ルケン酸)をモノマーユニットとするポリエステルを生
産することが報告されている。
【0011】ところで、通常、PHAの生合成は、細胞
内の様々な代謝経路の中間体として生じる「D−3−ヒ
ドロキシアシル−CoA」を基質とし、PHAシンター
ゼ(PHA synthase)により行われる。
【0012】ここで、「CoA」とは「補酵素A(coenz
yme A)」のことである。そして上記(1)中の文献に
記載されている様に、オクタン酸やノナン酸等の脂肪酸
を炭素源とした場合、PHAの生合成は、「β酸化サイ
クル」中に生じた「D−3−ヒドロキシアシル−Co
A」が出発物質として行われるとされている。
【0013】以下に、「β酸化サイクル」を経由してP
HAが生合成されるまでの反応を示す。
【0014】
【化33】
【0015】一方、この(2)中の文献に記載されてい
る様に、グルコース等の糖類を基質とし、PHAを生合
成する場合は、「脂肪酸合成経路」中に生成する「D−
3−ヒドロキシアシル−ACP」から変換された「D−
3−ヒドロキシアシル−CoA」が出発物質として利用
されるとされている。なお、「ACP」とは「アシルキ
ャリアプロテイン(acyl carrier protein)」のことで
ある。従って、脂肪酸合成経路で生成する3−ヒドロキ
シアルカノイル基、ならびに、その過渡的な中間体であ
る3−ヒドロキシ−5−cis−アルケノイル基を利用し
て、生合成される。
【0016】ところで、先に述べた通り、炭素源として
アルカン酸を用いる際、上記(1)および(2)の過程
で合成されているPHAは、いずれも側鎖にアルキル基
(あるいは3−cis−アルケニル基)を有するモノマー
ユニットからなるPHA、即ち、「usual PHA」であ
る。しかし、このような微生物産生PHAのより広範囲
な応用、例えば機能性ポリマーとしての応用を考慮した
場合、アルキル基以外の置換基(例えば、フェニル基な
ど)を側鎖に導入したPHAが極めて有用であることが
期待される。他の置換基の例としては、不飽和炭化水
素、エステル基、アリル基、シアノ基、ハロゲン化炭化
水素、エポキシドなどが挙げられる。
【0017】そのような置換基を側鎖に導入したPHA
(以下、「unusual PHA」とする)の合成に関して
は、β酸化を利用した合成について、例えば、Macromol
ecules, 24, p5256-5260 (1991)に、アリール基等
を側鎖に導入したPHAに関する報告がある。具体的に
は、シュードモナス・オレオボランスが5−フェニル吉
草酸(以下、PVAと略す場合もある)とノナン酸とを
基質として(モル比2:1、総濃度 10mmol/L)、3H
V、3−ヒドロキシヘプタン酸、3−ヒドロキシノナン
酸、3−ヒドロキシウンデカン酸、3−ヒドロキシ−5
−フェニル吉草酸(以下、3HPVと略す場合もある)
をモノマーユニットとして、0.6:16.0:41.1:1.7:4
0.6 の含有比(モル比率)で含むPHAを、培養液1L
あたり 160mg(菌体に対する乾燥重量比 31.6%)生産
し、また、PVAとオクタン酸とを基質として(モル比
1:1、総濃度 10mmol/L)、3HHx、3−ヒドロキ
シオクタン酸、3−ヒドロキシデカン酸、3HPVをモ
ノマーユニットとして、7.3:64.5:3.9:24.3の含有比
(モル比率)で含むPHAを、培養液1Lあたり 200mg
(菌体に対する乾燥重量比 39.2%)生産することが報
告されている。この報告におけるPHAは、副次的な原
料として、ノナン酸やオクタン酸が用いられていること
からも、主にβ酸化経路を経て合成されているものと考
えられる。
【0018】関連する記述は、Macromol. Chem., 19
1, 1957-1965 (1990)、Chirality, 3, 492-494
(1991)にもあり、含有される3HPVモノマーユニッ
ト、そのフェニル基の存在に起因すると思われる、ポリ
マー物性の変化が認められている。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、微生物
産生PHAにおいては、その製造に用いる微生物の種類
や培地組成、培養条件等を変えることにより、各種の組
成・構造のものが得られている。しかしながら、既に得
られている微生物産生PHAは、プラスチックとしての
応用を進める上では、種々の応用分野に応じて、物性的
に用途に適するものが未だ十分に供給されているとは言
えない。先ず、微生物産生PHAの利用範囲をさらに拡
大する上では、従来に増して、物性の改良をより幅広く
検討していくことが重要である。そのためには、さらに
多様な構造のモノマーユニットを含むPHAと、その製
造方法を開発することが不可欠であり、それに伴い、所
望のPHAを効率的に生産しうる微生物の開発、探索も
必要となる。
【0020】一方、前述のように種々の置換基を側鎖に
導入したタイプのPHA(unusualPHA)は、所望と
する特性等に応じて、導入される置換基を選択すること
で、その置換基自体の特性等に起因する、極めて有用な
機能や特性を具備した「機能性ポリマー」としての展開
も期待できる。生分解性に加えて、そのような機能性を
も有する、新規な機能を持つPHAと、その製造方法、
加えて、かかる新規な機能を持つPHAを効率的に生産
しうる微生物の開発、探索もまた重要な課題である。
【0021】側鎖に置換基が導入されたPHAの例とし
ては、前記したフェニル基に加えて、さらに、フェノキ
シ基を側鎖に有するPHAの報告例が挙げられる。
【0022】3HPVモノマーユニット以外に、フェニ
ル基を側鎖に有するPHAの他の例としては、Macromol
ecules, 29, 1762-1766 (1996)に、シュードモナス
・オレオボランスが、5−(p−トリル)吉草酸(5−
(4−メチルフェニル)吉草酸)を基質として含む培地
中での培養によって、3−ヒドロキシ−5−(p−トリ
ル)吉草酸をモノマーユニットとして含むPHAを生産
することが報告されている。
【0023】さらには、Macromolecules, 32, 2889-2
895 (1999)には、シュードモナス・オレオボランス
が、5−(2,4−ジニトロフェニル)吉草酸とノナン酸
を基質として含む培地中での培養によって、3−ヒドロ
キシ−5−(2,4−ジニトロフェニル)吉草酸、およ
び、3−ヒドロキシ−5−(4−ニトロフェニル)吉草酸
をモノマーユニットとして含むPHAを生産することが
報告されている。
【0024】また、フェノキシ基を側鎖に有するPHA
の例として、Macromol. Chem. Phys., 195, 1665-1672
(1994)に、シュードモナス・オレオボランスが、11
-フェノキシウンデカン酸から3−ヒドロキシ−5−フ
ェノキシ吉草酸、および、3−ヒドロキシ−9−フェノ
キシノナン酸をユニットとして含むPHAを生産するこ
とが報告されている。
【0025】また、Macromolecules, 29, 3432-3435
(1996)には、シュードモナス・オレオボランスを用い
て、6-フェノキシヘキサン酸から3−ヒドロキシ−4
−フェノキシ酪酸および3−ヒドロキシ−6−フェノキ
シヘキサン酸をユニットとして含むPHAを、また、8
−フェノキシオクタン酸から3−ヒドロキシ−4−フェ
ノキシ酪酸、3−ヒドロキシ−6−フェノキシヘキサン
酸および3−ヒドロキシ−8−フェノキシオクタン酸を
ユニットとして含むPHAを、さらには、11−フェノ
キシウンデカン酸から3−ヒドロキシ−5−フェノキシ
吉草酸および3−ヒドロキシ−7−フェノキシヘプタン
酸をユニットとして含むPHAを生産することが報告さ
れている。この報告におけるポリマーの収率を抜粋する
と以下のとおりである。
【0026】
【表1】
【0027】更に、Can. J. Microbiol., 41, 32-43
(1995)では、シュードモナス・オレオボランス ATCC
29347株及びシュードモナス・プチダ(Pseudomonas pu
tida) KT 2442株を用いて、オクタン酸と6−(p
−シアノフェノキシ)ヘキサン酸あるいは6−(p−ニ
トロフェノキシ)ヘキサン酸を基質として、3−ヒドロ
キシ−6−(p−シアノフェノキシ)ヘキサン酸あるい
は3−ヒドロキシ−6−(p−ニトロフェノキシ)ヘキ
サン酸をモノマーユニットとして含むPHAの生産に成
功している。
【0028】特許第2989175号公報には、3−ヒ
ドロキシ−5−(モノフルオロフェノキシ)ペンタノエ
ート(以下、3H5(MFP)Pと略す場合もある)ユニ
ットあるいは3−ヒドロキシ−5−(ジフルオロフェノ
キシ)ペンタノエート(以下、3H5(DFP)Pと略す
場合もある)ユニットからなるホモポリマー、少なくと
も3H5(MFP)Pユニットあるいは3H5(DF
P)Pユニットを含有するコポリマー;これらのポリマ
ーを産生するシュードモナス・プチダ;シュードモナス
属を用いた前記のポリマーの製造方法が記載されてい
る。
【0029】これらPHAの生産は、以下の様な「二段
階培養」で行われている。 培養時間: 一段目、24時間 ; 二段目、96時間 各段における炭素源と得られるポリマーを以下に示す。 (1)得られるポリマー:3H5(MFP)Pホモポリ
マー 一段目の炭素源:クエン酸、イーストエキス 二段目の炭素源:11−(モノフルオロフェノキシ)ウ
ンデカン酸 (2)得られるポリマー:3H5(DFP)Pホモポリマ
ー 一段目の炭素源:クエン酸、イーストエキス 二段目の炭素源:11−(ジフルオロフェノキシ)ウン
デカン酸 (3)得られるポリマー:3H5(MFP)Pコポリマー 一段目の炭素源:オクタン酸あるいはノナン酸、イース
トエキス 二段目の炭素源:11−(モノフルオロフェノキシ)ウ
ンデカン酸 (4)得られるポリマー:3H5(DFP)Pコポリマー 一段目の炭素源:オクタン酸あるいはノナン酸、イース
トエキス 二段目の炭素源:11−(ジフルオロフェノキシ)ウン
デカン酸 上記の二段階培養法の効果として、置換基を有する中鎖
脂肪酸を資化して、側鎖末端が1から2個のフッ素原子
で置換されたフェノキシ基を有するポリマーを生産する
ことができる。得られるPHAは、フッ素原子で置換さ
れたフェノキシ基を有するため、融点が高く良い加工性
を保ちながら、立体規則性、撥水性を与えることができ
るとしている。
【0030】あるいは、シクロヘキシル基を側鎖上に有
するモノマーユニットを含むPHAは、通常の脂肪族3
−ヒドロキシアルカン酸をユニットとして含むPHAと
は異なる高分子物性を示すことが期待されている。例え
ば、シュードモナス・オレオボランスによる生産の例が
報告されている(Macromolecules, 30, 1611-1615(1
997))。
【0031】この報告によれば、シュードモナス・オレ
オボランスを、ノナン酸(以下、NAと略す場合もあ
る)とシクロヘキシル酪酸(以下、CHBAと略す場合
もある)あるいはシクロヘキシル吉草酸(以下、CHV
Aと略す場合もある)の共存する培地中で培養すると、
シクロヘキシル基を側鎖上に有するモノマーユニット
と、ノナン酸由来のユニットを含むPHAが得られてい
る(各割合は不明)。
【0032】その収率等に関しては、CHBAに対し
て、基質濃度トータル20 mmol/L の条件で、CHBA
とNAの量比を変化させ、表2に示すような結果を得た
と報告されている。
【0033】
【表2】
【0034】しかしながら、この例では、培養液当たり
のポリマー収率は十分なものではなく、また、得られた
PHA自体も、そのモノマーユニット中にはノナン酸由
来の脂肪族ヒドロキシアルカン酸が混在しているもので
ある。
【0035】側鎖に様々な置換基が導入されたPHAを
微生物により生産しようとする場合、先に挙げたシュー
ドモナス・オレオボランスの報告例等に見られるよう
に、導入しようとする置換基を有するアルカノエート
を、ポリマーの原料とする上に、微生物の増殖用炭素源
としても利用する方法が用いられている。
【0036】しかしながら、導入しようとする置換基を
有するアルカノエートを、ポリマー原料とする上に、増
殖用炭素源としても利用する培養方法では、原料の置換
アルカノエートのβ酸化に因るアセチル−CoAの生成
を経て、エネルギー源の供給が期待されている。この培
養方法においては、ある程度の鎖長を有する置換アルカ
ノエート基質でないとβ酸化によりアセチル−CoAを
生成することができず、そのため、PHA産生の基質と
して用いうる置換アルカノエートが限定されてしまう点
が大きな課題となる。また、一般的に、前記のβ酸化に
より、原料と比較して、その鎖長がメチレン鎖2つ分ず
つ短くなった基質が新たに生成される。これら副生する
基質に由来するモノマーユニットも、産生されるPHA
のモノマーユニットとして取り込まれるため、得られる
PHAは鎖長がメチレン鎖2つ分ずつ異なるモノマーユ
ニットからなる共重合体となることが多い。前述の報告
例では、原料基質である8−フェノキシオクタン酸由来
の3−ヒドロキシ−8−フェノキシオクタン酸に加え
て、代謝産物由来の副生物である3−ヒドロキシ−6−
フェノキシヘキサン酸及び3−ヒドロキシ−4−フェノ
キシ酪酸を含む、合計3種類のモノマーユニットからな
る共重合体が生産されている。そのため、原料基質を唯
一の炭素源とする培養方法を用いて、単一のモノマーユ
ニットからなるPHAを得ることは極めて難しい。さら
に、β酸化によるアセチル−CoAの生成を経るエネル
ギー源の供給を前提とした方法では、微生物の増殖が遅
く、PHAの生産に時間を要する点、また、産生される
PHAの収率が低くなりがちな点も大きな課題となる。
【0037】それを解決するため、導入しようとする置
換基を有するアルカノエートに加えて、増殖用炭素源と
して、オクタン酸やノナン酸といった中鎖の脂肪酸等を
共存させた培地で微生物を培養した後、PHAを抽出す
る方法は、収率の向上に有効と考えられ、一般的に利用
されている。
【0038】しかしながら、本発明者らの検討によれ
ば、原料基質以外に、オクタン酸やノナン酸といった中
鎖の脂肪酸等を増殖用炭素源として含有する培地を利用
すると、β-酸化経路を経て合成されるPHAは、原料
基質に由来する目的のモノマーユニットの純度(含有比
率)が相対的に低く、得られるポリマーに含まれるモノ
マーユニットの 50%以上(モル比率)が、増殖用炭素
源として利用する中鎖の脂肪酸等に由来するモノマーユ
ニット(例えば、3−ヒドロキシオクタン酸や3−ヒド
ロキシノナン酸等)であるmcl-3HAモノマーユニッ
ト、すなわち「usual PHA」のユニットとなる。これ
らmcl-3HAユニットは、単独の組成においては常温で
粘着性のポリマーを与え、目的とするPHAに多量に混
在した場合、得られるポリマーのガラス転移温度(T
g)を著しく降下させる。従って、常温で硬いポリマー
物性を得ようとする際には、mcl-3HAモノマーユニッ
トの混在は望ましくない。加えて、このようなヘテロな
側鎖構造は、ポリマー分子内あるいは分子間での側鎖構
造に由来する相互作用を妨害し、結晶性あるいは配向性
に大きな影響を与えることが知られている。その点から
も、ポリマー物性の向上、機能性の付与を達成するにあ
たり、これらのmcl-3HAモノマーユニットの混在は大
きな課題である。
【0039】このmcl-3HAモノマーユニットの混在に
起因する特性上の課題を解決する手段の一つとして、特
定の置換基を有するモノマーユニットのみで構成された
PHAを取得するため、増殖用炭素源由来のmcl-3HA
モノマーユニット等の「目的外」のモノマーユニットを
分離/除去するための精製工程を設けることが挙げられ
る。しかしながら、精製工程を設けると、目的とするP
HAの回収工程全体として、操作が煩雑となる上、分離
/除去に伴い、場合によっては、大幅な収率の低下を引
き起こすことも避けられない点が課題として残る。さら
に、本質的な大きな問題点は、目的のモノマーユニット
と目的外のモノマーユニットとが共重合体を形成してい
る際には、精製工程によって、目的外のモノマーユニッ
トのみを除去するのは極めて困難であることである。特
に、不飽和炭化水素から得られる基、エステル基、アリ
ル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン化炭化水素から得
られる基、エポキシド等が導入された基を、側鎖構造上
の置換基として有するようなモノマーユニットを含むP
HAの生産を目的とする際には、mcl-3HAモノマーユ
ニットは目的のモノマーユニットと共重合体を形成して
いる場合が多く、産生されたPHAから、含まれている
mcl-3HAモノマーユニットの除去は極めて困難であ
る。
【0040】以上のことを考慮に入れ、本発明者らは、
機能性ポリマーへの応用を図る上では、目的とする「un
usual PHA」を高純度で得られる微生物による生産方
法の開発が是非とも必要であるとの認識を持つに至っ
た。より具体的には、生分解性と導入される置換基に由
来する前記のような機能性とを兼ね備えた優れたポリマ
ーの創製と、このポリマーを生産し菌体内に蓄積し得る
微生物を見出すこと、ならびに、見出した微生物を利用
して、目的とするモノマーユニットを高い比率(高純
度)で含むPHAを効率的に生産する方法の開発は、有
用かつ重要であると考えた。
【0041】本発明は前記の課題を解決するもので、本
発明の目的は、デバイス材料や医用材料等として利用可
能な、ポリマー特性の付与に有用な多様な構造の置換基
を側鎖に有するモノマーユニットを含む新規なPHA
(unusual PHA)、ならびに、かかる新規な「unusua
l PHA」を微生物を利用して製造する方法を提供する
ことにある。より具体的には、目的外のモノマーユニッ
トの混在が少なく、目的とする置換基を側鎖に有するモ
ノマーユニットを高純度で含む「unusual PHA」を選
択的に、また、高収率で得ることができる製造方法を提
供することにある。
【0042】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の課
題を解決すべく、デバイス材料や医用材料等として有用
な官能基を側鎖に有するPHAの開発を目指して、各種
のPHAを生産し菌体内に蓄積する能力を有する微生物
の探索、ならびに、このようなPHA産生能を有する微
生物を用いて、所望のモノマーユニットを高純度で含む
PHAの生産方法を開発するため、鋭意研究を重ねてき
た。その結果、末端にチエニル基を置換したアルカン酸
(ω−チエニルアルカン酸)を基質として、対応する3
−ヒドロキシ−ω−チエニルアルカン酸のモノマーユニ
ットを含む新規なPHAを生産し菌体内に蓄積する能力
を有する微生物を見出した。さらに、本発明者らは、こ
れらPHA産生能を有する微生物を、基質のω−チエニ
ルアルカン酸に加えて、糖類、酵母エキス、または、ポ
リペプトンを共存させている培地で培養することによ
り、前記の目的とするPHAを高い収率で生産すること
ができること、さらには、その際得られるPHAは、対
応する3−ヒドロキシ−ω−チエニルアルカン酸のモノ
マーユニットを比較的高純度(含有比率)で含むことを
も見出し、本発明を完成するに至った。
【0043】すなわち、本発明のポリヒドロキシアルカ
ノエートは、下記式[1]で表されるモノマーユニット
組成を有することを特徴とするポリヒドロキシアルカノ
エート。 Ax(1-x) [1] (式中、Aは、下記一般式[2]で表される少なくとも
1つ以上のモノマーユニットであり、Bは、下記一般式
[3]で表されるモノマーユニットならびに下記一般式
[4]で表されるモノマーユニットからなる群から選択
される少なくとも1つ以上のモノマーユニットであり、
xは0.01以上1以下である)
【0044】
【化34】
【0045】(式中、nは1から8の整数のいずれかを
表す)
【0046】
【化35】
【0047】(式中、pは0から10の整数のいずれか
を表す)
【0048】
【化36】
【0049】(式中、qは3または5である) 本発明のポリヒドロキシアルカノエートには、前記A成
分のモノマーユニットの一つとして、下記化学式[5]
で表されるモノマーユニットを含むことを特徴とするポ
リヒドロキシアルカノエートが含まれる。
【0050】
【化37】
【0051】本発明のポリヒドロキシアルカノエートに
は、前記A成分のモノマーユニットの一つとして、下記
化学式[6]で表されるモノマーユニットを含むことを
特徴とするポリヒドロキシアルカノエートが含まれる。
【0052】
【化38】
【0053】本発明のポリヒドロキシアルカノエートに
は、前記A成分のモノマーユニットの一つとして、下記
化学式[7]で表されるモノマーユニットを含むことを
特徴とするポリヒドロキシアルカノエートが含まれる。
【0054】
【化39】
【0055】本発明のポリヒドロキシアルカノエートに
は、前記A成分のモノマーユニットの一つとして、下記
化学式[8]で表されるモノマーユニットを含むことを
特徴とするポリヒドロキシアルカノエートが含まれる。
【0056】
【化40】
【0057】本発明のポリヒドロキシアルカノエートに
は、前記A成分のモノマーユニットとして、下記化学式
[5]で表されるモノマーユニットならびに下記化学式
[7]で表されるモノマーユニットを含むことを特徴と
するポリヒドロキシアルカノエートが含まれる。
【0058】
【化41】
【0059】
【化42】
【0060】本発明のポリヒドロキシアルカノエートに
は、前記A成分のモノマーユニットとして、下記化学式
[6]で表されるモノマーユニットならびに下記化学式
[8]で表されるモノマーユニットを含むことを特徴と
するポリヒドロキシアルカノエートが含まれる。
【0061】
【化43】
【0062】
【化44】
【0063】本発明のポリヒドロキシアルカノエートに
は、前記A成分のモノマーユニットとして、下記化学式
[5]で表されるモノマーユニットのみを含むポリマー
であることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート
が含まれる。
【0064】
【化45】
【0065】本発明のポリヒドロキシアルカノエートに
は、前記A成分のモノマーユニットとして、下記化学式
[6]で表されるモノマーユニットのみを含むポリマー
であることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート
が含まれる。
【0066】
【化46】
【0067】本発明のポリヒドロキシアルカノエートに
は、前記A成分のモノマーユニットとして、下記化学式
[7]で表されるモノマーユニットのみを含むポリマー
であることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート
が含まれる。
【0068】
【化47】
【0069】本発明のポリヒドロキシアルカノエートに
は、前記A成分のモノマーユニットとして、下記化学式
[8]で表されるモノマーユニットのみを含むポリマー
であることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエート
が含まれる。
【0070】
【化48】
【0071】なお、上記する種々の構成をとる本発明の
ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリマー全体の数平
均分子量が10,000から300,000であるポリヒドロキシア
ルカノエートとすることができる。
【0072】加えて、本発明は、微生物を利用して、上
記する種々の構成をとる本発明のポリヒドロキシアルカ
ノエートを製造する方法をも提供している。すなわち、
本発明のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法は、
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)産生能を有す
る微生物を利用して、下記式[1]で表されるモノマー
ユニット組成を有するポリヒドロキシアルカノエートを
製造する方法であって、目的とするポリヒドロキシアル
カノエートは、下記式[1]で表されるモノマーユニッ
ト組成を有するポリヒドロキシアルカノエートであり、 Ax(1-x) [1] (ただし、上記式中、Aは下記化学式[2]で表される
少なくとも1つ以上であり、Bは下記化学式[3]また
は下記化学式[4]で表されるモノマーユニットから選
択される少なくとも1つ以上であり、xは0.01以上1
以下である);
【0073】
【化49】
【0074】(式中、nは1以上8以下の整数を表
す);
【0075】
【化50】
【0076】(式中、pは0から10の整数のいずれか
を表す);
【0077】
【化51】
【0078】(式中、qは3または5である);利用す
るPHA産生能を有する微生物は、末端にチエニル基置
換を有するアルカン酸(チエニルアルカン酸)を基質と
して、対応する末端にチエニル基置換を有する3−ヒド
ロキシアルカン酸のモノマーユニットを含むポリヒドロ
キシアルカノエートを産生する能力を有し;上記A成分
の末端にチエニル基置換を有する3−ヒドロキシアルカ
ン酸のモノマーユニットに対応する末端にチエニル基置
換を有するアルカン酸(チエニルアルカン酸)を原料と
して含む培地において、前記微生物を培養する工程を有
することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの
製造方法である。
【0079】本発明のポリヒドロキシアルカノエートの
製造方法は、例えば、原料のチエニルアルカン酸とし
て、下記一般式[9]で表されるチエニルアルカン酸を
用いて、生産するポリヒドロキシアルカノエートは、下
記一般式[10]で表されるモノマーユニットを含むポ
リヒドロキシアルカノエートであることを特徴とするポ
リヒドロキシアルカノエートの製造方法とすることがで
きる。
【0080】
【化52】
【0081】(式中、nは1から8の整数のいずれかを
表す);
【0082】
【化53】
【0083】(式中、mは、1以上の整数であって、前
記一般式[9]のnにより定まる、n、n−2、n−
4、n−6からなる群より選択されるいずれかの整数を
表す) 本発明のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法は、
例えば、原料のチエニルアルカン酸と糖類とを含む培地
で、原料の前記チエニルアルカン酸を利用して、前記式
[1]で表されるモノマーユニット組成を有するポリヒ
ドロキシアルカノエートを生産する微生物を培養する工
程を有することを特徴とするポリヒドロキシアルカノエ
ートの製造方法とすることができる。例えば、前記微生
物の培養は、原料のチエニルアルカン酸と糖類とを含む
培地による1段階培養であることを特徴とするポリヒド
ロキシアルカノエートの製造方法とすることができる。
また、例えば、前記微生物の培養は、原料のチエニルア
ルカン酸と糖類とを含む培地による培養と、これに続
く、原料のチエニルアルカン酸と糖類を含み、しかしな
がら、含有される窒素源を制限した培地による培養と
の、少なくとも2段階の培養で実施されることを特徴と
するポリヒドロキシアルカノエートの製造方法とするこ
ともできる。その際、例えば、培地に含有される前記糖
類が、グルコース、フルクトース、マンノースからなる
群から選択される少なくとも一つの糖類であることを特
徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法とす
ることができる。
【0084】本発明のポリヒドロキシアルカノエートの
製造方法は、例えば、原料のチエニルアルカン酸と酵母
エキスとを含む培地で、原料の前記チエニルアルカン酸
を利用して前記式[1]で表されるモノマーユニット組
成を有するポリヒドロキシアルカノエートを生産する微
生物を培養する工程を有することを特徴とするポリヒド
ロキシアルカノエートの製造方法とすることができる。
【0085】本発明のポリヒドロキシアルカノエートの
製造方法は、例えば、原料のチエニルアルカン酸とポリ
ペプトンとを含む培地で、原料の前記チエニルアルカン
酸を利用して前記式[1]で表されるモノマーユニット
組成を有するポリヒドロキシアルカノエートを生産する
微生物を培養する工程を有することを特徴とするポリヒ
ドロキシアルカノエートの製造方法とすることができ
る。
【0086】さらに、本発明のポリヒドロキシアルカノ
エートの製造方法は、微生物が産生したポリヒドロキシ
アルカノエートを単離する工程をさらに有することを特
徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法とす
ることが好ましい。
【0087】上記の本発明のポリヒドロキシアルカノエ
ートの製造方法においては、利用するPHA産生能を有
する微生物が、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)
に属する微生物であることを特徴とするポリヒドロキシ
アルカノエートの製造方法とすることが好ましい。その
際、例えば、前記微生物が、シュードモナス・プチダ・
P91株(Pseudomonas putida P91、FERM B
P−7373)、シュードモナス・チコリアイ・H45
株(Pseudomonas cichorii H45、FERMBP−7
374)、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Ps
eudomonas cichorii YN2、FERM BP−737
5)、シュードモナス・ジェッセニイ・P161株(Ps
eudomonas jessenii P161、FERM BP-737
6)からなる群から選択される少なくとも1つの菌株で
あることを特徴とするポリヒドロキシアルカノエートの
製造方法とするとより好ましい。
【0088】本発明のポリヒドロキシアルカノエートの
製造方法には、生産目的のポリヒドロキシアルカノエー
トは、下記化学式[6]で表されるモノマーユニットを
含むポリヒドロキシアルカノエートであり、下記化学式
[11]で表される5−(2−チエニル)吉草酸を原料
として含む前記培地において、5−(2−チエニル)吉
草酸を基質に利用して、下記化学式[6]で表されるモ
ノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを
生産する微生物を培養する工程を有することを特徴とす
るポリヒドロキシアルカノエートの製造方法が含まれ
る。
【0089】
【化54】
【0090】
【化55】
【0091】本発明のポリヒドロキシアルカノエートの
製造方法には、生産目的のポリヒドロキシアルカノエー
トは、下記化学式[7]で表されるモノマーユニットを
含むポリヒドロキシアルカノエートであり、下記化学式
[12]で表される6−(2−チエニル)ヘキサン酸を
含む培地で、6−(2−チエニル)ヘキサン酸を利用し
て下記化学式[7]で表されるモノマーユニットを含む
ポリヒドロキシアルカノエートを生産する微生物を培養
する工程を有することを特徴とするポリヒドロキシアル
カノエートの製造方法が含まれる。
【0092】
【化56】
【0093】
【化57】
【0094】本発明のポリヒドロキシアルカノエートの
製造方法には、生産目的のポリヒドロキシアルカノエー
トは、下記化学式[8]で表されるモノマーユニットを
含むポリヒドロキシアルカノエートであり、下記化学式
[13]で表される7−(2−チエニル)ヘプタン酸を
含む培地で、7−(2−チエニル)ヘプタン酸を利用し
て下記化学式[8]で表されるモノマーユニットを含む
ポリヒドロキシアルカノエートを生産する微生物を培養
する工程を有することを特徴とするポリヒドロキシアル
カノエートの製造方法が含まれる。
【0095】
【化58】
【0096】
【化59】
【0097】本発明のポリヒドロキシアルカノエートの
製造方法には、生産目的のポリヒドロキシアルカノエー
トは、下記化学式[5]で表されるモノマーユニットと
下記化学式[7]で表されるモノマーユニットとを含む
ポリヒドロキシアルカノエートであり、下記化学式[1
2]で表される6−(2−チエニル)ヘキサン酸を含む
培地で、6−(2−チエニル)ヘキサン酸を利用して。
下記化学式[5]で表されるモノマーユニットならびに
下記化学式[7]で表されるモノマーユニットを含むポ
リヒドロキシアルカノエートを生産する微生物を培養す
る工程を有することを特徴とするポリヒドロキシアルカ
ノエートの製造方法が含まれる。
【0098】
【化60】
【0099】
【化61】
【0100】
【化62】
【0101】本発明のポリヒドロキシアルカノエートの
製造方法には、生産目的のポリヒドロキシアルカノエー
トは、下記化学式[6]で表されるモノマーユニットと
下記化学式[8]で表されるモノマーユニットとを含む
ポリヒドロキシアルカノエートであり、下記化学式[1
3]で表される7−(2−チエニル)ヘプタン酸を含む
培地で、7−(2−チエニル)ヘプタン酸を利用して、
下記化学式[6]で表されるモノマーユニットならびに
下記化学式[8]で表されるモノマーユニットを含むポ
リヒドロキシアルカノエートを生産する微生物を培養す
る工程を有することを特徴とするポリヒドロキシアルカ
ノエートの製造方法が含まれる。
【0102】
【化63】
【0103】
【化64】
【0104】
【化65】
【0105】
【発明の実施の形態】本発明のPHAは、特には、下記
する一般式[9]:
【0106】
【化66】
【0107】(式中、nは1から8の整数のいずれかで
ある)で表されるチエニルアルカン酸を原料として、対
応する一般式[2]:
【0108】
【化67】
【0109】(式中、nは1から8の整数のいずれかで
ある)で表される3−ヒドロキシチエニルアルカン酸を
モノマーユニットとして含む新規なPHAを生産し菌体
内に蓄積する能力を有する微生物により産生される生分
解性のPHAである。また、本発明にかかるPHAの製
造方法は、これら微生物を、前記化学式[9]で表され
るチエニルアルカン酸に加えて、糖類、酵母エキス、ま
たは、ポリペプトンのいずれかを炭素源として加えてあ
る培地で培養することにより、目的とする上記一般式
[2]のモノマーユニットを含むPHAを高い収率で生
産させ、さらには、その際に得られるPHA中におい
て、上記一般式[2]のモノマーユニットが比較的高純
度(含有モル比率)としたものである。
【0110】一例を挙げるち、原料基質として、化学式
[11]:
【0111】
【化68】
【0112】で表される5−(2−チエニル)吉草酸
(以下、TVAと略す)、化学式[12]:
【0113】
【化69】
【0114】で表される6−(2−チエニル)ヘキサン
酸(以下、THxAと略す)、化学式[13]:
【0115】
【化70】
【0116】で表される7−(2−チエニル)ヘプタン
酸(以下、THpAと略す)これらのいずれかを用い
て、目的とするPHAは、対応するモノマーユニットと
して、化学式[5]:
【0117】
【化71】
【0118】で表される3−ヒドロキシ−4−(2−チ
エニル)酪酸(以下、3HTBと略す)のユニット、化
学式[6]:
【0119】
【化72】
【0120】で表される3−ヒドロキシ−5−(2−チ
エニル)吉草酸(以下、3HTVと略す)のユニット、
化学式[7]:
【0121】
【化73】
【0122】で表される3−ヒドロキシ−6−(2−チ
エニル)ヘキサン酸(以下、3HTHxと略す)のユニ
ット、化学式[8]:
【0123】
【化74】
【0124】で表される3−ヒドロキシ−7−(2−チ
エニル)ヘプタン酸(以下、3HTHpと略す)のユニ
ット、の何れかをモノマーユニットとして含む新規なP
HAを、それを生産し菌体内に蓄積する能力を有する微
生物によって生産させる方法となる。
【0125】なお、本発明の方法は、上述する培養方法
を利用することによって、化学式[2]:
【0126】
【化75】
【0127】(式中、nは1から8の整数のいずれかで
ある)で表される2−チエニル基を側鎖上に有するモノ
マーユニットを主成分として有するポリヒドロキシアル
カノエートを高い効率で製造する方法とするものであ
る。
【0128】なお、本発明の方法では、基質として、一
般式[9]:
【0129】
【化76】
【0130】(式中、nは1から8の整数のいずれかで
ある)で表されるチエニルアルカン酸を含む培地で微生
物を培養することで、上記の微生物がβ酸化により産生
する、一般式[10]:
【0131】
【化77】
【0132】(式中、mは、1以上の整数であって、前
記一般式[9]のnにより定まる、n、n−2、n−
4、n−6からなる群より選択されるいずれかの整数で
ある)で表される対応する炭素数のモノマーユニットを
有するPHAを産生させるものである。
【0133】本発明のPHAは、デバイス材料や医用材
料等として有用な置換基を側鎖に有する多様な構造のモ
ノマーユニットを含むPHAであり、より具体的には、
チエニル基を側鎖に有するPHAである。また、本発明
のPHAの製造方法は、微生物を利用して高純度かつ高
収率に所望のPHAを製造することを可能とするもので
ある。なお、本発明のPHAは、一般にR体のみから構
成される、アイソタクチックなポリマーである。また、
前記の用途では、本発明のPHAにおいて、上述のA成
分、すなわち、一般式[2]で示されるチエニル基を側
鎖に有するモノマーユニットを主成分、例えば、二種以
上含む際には、その総和として、組成比(モル比率)
が、少なくとも0.6を超える、より好ましくは、0.
8以上とするPHAとすることも望ましい。
【0134】<糖類の利用>本発明のPHA製造方法の
1つの形態は、微生物を培養する際、培地に所望とする
モノマーユニット導入用のアルカン酸に加えて、当該ア
ルカン酸以外の炭素源として糖類のみを添加すること
で、微生物が産生・蓄積するPHAにおいて、目的とす
るモノマーユニットの含有率を著しく高いものとする、
あるいは目的とするモノマーユニットのみとする点を特
徴としている。この特定のモノマーユニットの優先化を
促進する効果は、培地中に当該アルカン酸以外の炭素源
として糖類のみを添加することにより得られている。
【0135】すなわち、発明者らは、糖類を共存炭素源
として、所望とするモノマーユニット導入用のアルカン
酸と共に培養せしめたところ、ノナン酸やオクタン酸と
いったmcl-アルカン酸を共存炭素源として用いた従来の
方法に比較して、目的とするPHAが格段に優れた収率
および純度で得られること、そしてこのような効果が、
微生物の炭素源ならびにエネルギー源であるアセチル−
CoAをβ酸化に拠らない方法により生成することが可
能な培養方法であることにより得られるものであるとの
知見を得て本発明に至ったものである。
【0136】本発明の方法においては、糖類化合物、例
えばグルコースやフルクトース、マンノース等は、微生
物の増殖基質として利用されることになり、生産される
PHAは、糖類に共存させている所望とするモノマーユ
ニット導入用のアルカノエートから構成され、グルコー
ス等の糖類に由来するモノマーユニットが全く含まれな
いか、極めて少量しか含まれない。このような点で、本
発明の方法は、従来のグルコースなどの糖類そのものを
PHAに導入するモノマーユニットの原料基質として用
いるPHA微生物生産方法とは構成及び効果ともに根本
的に異なるものである。
【0137】<酵母エキスの利用>本発明のPHA製造
方法の1つの形態は、微生物を培養する際、培地に所望
とするモノマーユニット導入用のアルカン酸に加えて、
当該アルカン酸以外の炭素源として酵母エキスのみを添
加することで、微生物が産生・蓄積するPHAにおい
て、目的とするモノマーユニットの含有率を著しく高い
ものとする、あるいは目的とするモノマーユニットのみ
とする点を特徴としている。この特定のモノマーユニッ
トの優先化を促進する効果は、培地中に当該アルカン酸
以外の炭素源として酵母エキスのみを添加することによ
り得られている。
【0138】微生物によるPHAの製造に際して、培地
に酵母エキスを利用する例として、特開平5−4948
7号公報に記載の、ロドバクター属(Rhodobacter s
p.)に属する微生物を用いた方法が挙げられる。しかし
ながら、この従来技術は、置換基を有しないヒドロキシ
アルカノエートをモノマーユニットとする、一般的なP
HBおよびPHVを製造する方法である。本発明のPH
A製造方法が目的とするようなPHAの合成経路は、P
HBおよびPHVを生産する合成経路とは独立した経路
であることが知られている。従って、特開平5−494
87号公報においては、本発明の方法が目的とするよう
なPHAの合成経路における酵母エキスの効果について
は何ら言及がないものである。また、酵母エキス利用の
効果も、微生物が一般的に生産するPHAやPHVに関
して、酵母エキスを添加すると、単に菌体内のPHA蓄
積量の増大が図られる効果があることを示すのみであ
る。その点から、増殖の向上を図るために、酵母エキス
が添加されている訳ではないことが明記されている。本
発明の方法では、チエニルアルカン酸と酵母エキスとを
共存させることにより、菌体の増殖とともにPHAの生
産・蓄積を行うものであり、その意味では、酵母エキス
の発揮する効果が全く異なるものとなっている。さら
に、本発明の方法で達成される効果である、特定のモノ
マーユニットの優占化について何ら言及されておらず、
勿論のことながら、本発明の方法のように、微生物が生
産するPHA組成における、チエニル基を置換基として
有する特定のモノマーユニットの優占化という効果は示
されていない。
【0139】さらに、微生物によるPHAの生産に酵母
エキスを利用する例としては、特許第2989175号
公報に記載のシュードモナス・プチダ(Pseudomonas pu
tida)を用いた方法が挙げられる。ここで開示されてい
るPHAの製造方法は、2段階培養によるもののみであ
り、PHAの蓄積は2段階目の培養においてのみ、炭素
源以外の栄養源の制限下で行うことが開示されている。
この点で、本発明の方法における、チエニルアルカン酸
と酵母エキスとを含む培地を利用して、1段階培養のみ
でも、所望のPHAを合成・蓄積させる方法とは構成/
効果ともに全く異なる。なお、二段階培養法を採用する
際にも、何れの段階にも、基質のアルカン酸と酵母エキ
スとを含む培地を利用する点に、根本的な相違を有して
いる。つまり、特許第2989175号公報における酵
母エキスの効果は、2段階培養を用いる際、1段階目の
培養において、単に2段階目の培養に用いる微生物の増
殖のみを目的としたものであり、1段階目は栄養源の豊
富な条件下で培養されると明記されている。ここで、P
HAの基質は1段階目には共存していない。本発明の方
法における酵母エキスの効果は、チエニルアルカン酸と
酵母エキスとを共存させることにより、増殖とともにP
HAの生産・蓄積を行うものであり、その点において、
酵母エキスの発揮する効果が全く異なる。また、特許第
2989175号公報では、1段階目の培養に、炭素源
としてクエン酸、オクタン酸、ノナン酸のいずれかが共
存しており、チエニルアルカン酸と酵母エキスのみを共
存させる本発明の方法とは、実質的な構成においても異
なるものである。
【0140】<ポリペプトンの利用>本発明のPHA製
造方法の1つの形態は、微生物を培養する際、培地に所
望とするモノマーユニット導入用のアルカン酸に加え
て、当該アルカン酸以外の炭素源としてポリペプトンの
みを添加することで、微生物が産生・蓄積するPHAに
おいて、目的とするモノマーユニットの含有率を著しく
高いものとする、あるいは目的とするモノマーユニット
のみとする点を特徴としている。この特定のモノマーユ
ニットの優先化を促進する効果は、培地中に当該アルカ
ン酸以外の炭素源としてポリペプトンのみを添加するこ
とにより得られている。
【0141】なお、微生物によるPHAの生産にポリペ
プトンを利用する例として、特開平5−49487号公
報、特開平5−64591号公報、特開平5−2140
81号公報、特開平6−145311号公報、特開平6
−284892号公報、特開平7−48438公報、特
開平8−89264号公報、特開平9−191893号
公報、特開平11−32789号公報等に、PHAを微
生物に生産させる際に、培地中にポリペプトンを含有さ
せていることが開示されている。しかしながら、これら
の方法では、いずれも前培養、つまり、菌体を単に増殖
させる段階で用いており、前培養時にPHAのモノマー
ユニットとなる基質は含まれていない。また、菌体にP
HAを生産させる工程でポリペプトンを用いた事例はな
い。それに対して、本発明の方法では、所望のモノマー
ユニット導入用のアルカン酸と、当該アルカン酸以外の
炭素源としてポリペプトンのみを共存させることによ
り、増殖とともにPHAの生産・蓄積を行うものであ
る。その点で、従来のポリペプトンを利用した例とは構
成および効果が全く異なる。さらに本発明の方法が有す
る効果である、特定のモノマーユニットの優占化につい
て、上述の刊行物には何ら言及されておらず、勿論のこ
とであるが、本発明のように、微生物が生産するPHA
組成における、チエニル基を置換基として有する特定の
モノマーユニットの優占化という効果は示されていな
い。
【0142】以下に、本発明において利用される微生
物、培養工程などについて説明する。
【0143】<PHAモノマーユニット供給系>先ず、
目的とするPHAに混在してくるmcl-3HAモノマーユ
ニットの供給系の1つである「脂肪酸合成経路」につい
て詳細に説明する。
【0144】グルコース等の糖類を炭素源とした場合、
細胞成分として必要なアルカン酸は、糖類から「解糖
系」を経て生産されるアセチル−CoAを出発物質とし
た「脂肪酸合成経路」から生合成される。なお、脂肪酸
合成には新規(de novo)合成経路と炭素鎖延長経路が
あり、以下にこれらについて説明する。
【0145】(1)新規(de novo)合成経路 アセチル−CoAカルボキシラーゼ(EC 6.4.1.
2)と脂肪酸合成酵素(EC 2.3.1.85)の2つの
酵素で触媒される。なお、アセチルCoAカルボキシラ
ーゼは、ビオチンを介在し、最終的に以下の反応を触媒
し、アセチルCoAからマロニルCoAを生成する酵素で
あり、反応は下記式で表わされる。 アセチル−CoA+ATP+HCO3 - → マロニル−CoA+ADP
+Pi また、脂肪酸合成酵素は、転移−縮合−還元−脱水−還
元の反応サイクルを触媒する酵素であり、全反応は次の
反応式で示される。 アセチル−CoA+nマロニル−CoA+2nNADPH+2nH+ →CH3
(CH2)2nCOOH+nCO2+2nNADP++(n-1)CoA なお、酵素の種類によって、反応産物が遊離酸、CoA
誘導体、あるいはACP誘導体の場合がある。
【0146】ここで、アセチル−CoAは以下の化学式
で示され、
【0147】
【化78】
【0148】マロニル−CoAは以下の化学式で示され
る。
【0149】
【化79】
【0150】また、CoAとは、補酵素A(coenzyme
A)の略称であり、以下の化学式で示される。
【0151】
【化80】
【0152】本反応経路のうち、以下に示す経路によ
り、PHA生合成のモノマー基質となる「D−3−ヒド
ロキシアシル−ACP」が中間体として供給される。ま
た、以下の反応式に示すように経路は炭素を2個ずつ付
加しながら最終的にはパルミチン酸まで延長される。そ
れゆえPHA生合成のモノマー基質としては「D−3−
ヒドロブチリル−ACP」から「D−3−ヒドロキシパ
ルミチル−ACP」の炭素数が偶数(4以上16以下)
の7種類の「D−3−ヒドロキシアシル−ACP」が供
給されることになる。
【0153】
【化81】
【0154】(2)炭素鎖延長経路 この経路は、アシル−ACPにマロニル−ACPが付加
し、最終的に炭素鎖が2つ延長されたアシル−ACP
(及びCO2)となる経路(経路Aとする)と、アシル
−CoAにアセチル−CoAが付加し、最終的に炭素鎖が
2つ延長されたアシル−CoAとなる経路(経路Bとす
る)の2経路に大別される。以下に各経路について説明
する。 経路A、Bいずれの系も、中間体として「D−3−ヒド
ロキシアシル−CoA」あるいは「D−3−ヒドロキシ
アシル−ACP」が生じ、「D−3−ヒドロキシアシル
−CoA」はそのままPHA合成のモノマー基質として
利用され、「D−3−ヒドロキシアシル−ACP」はA
CP−CoA転移酵素により「D−3−ヒドロキシアシ
ル−CoA」に変換された後に、PHA合成のモノマー
基質として利用されると考えられる。
【0155】グルコース等の糖類を炭素源とした場合、
微生物細胞中では以上のような「解糖系」及び「脂肪酸
合成経路」を経由してmcl-3HAモノマーユニットが生
成されると考えられる。
【0156】ここで、例えば、オクタン酸、ノナン酸等
のmcl-アルカン酸、あるいは、例えば、5−フェニル吉
草酸、4−フェノキシ酪酸、4−シクロヘキシル酪酸、
5−(2−チエニル)吉草酸といった、末端に直鎖脂肪族ア
ルキル以外の官能基が付加されたアルカン酸はCoAリ
ガーゼ(EC 6.2.1.3等)によりCoA誘導体とな
り、β酸化系を担う酵素群により直接的にPHA生合成
のモノマー基質となる「D−3−ヒドロキシアシル−C
oA」となると考えられる。
【0157】つまり、糖類から生成するmcl-3HAモノ
マーユニットが、きわめて多段階の酵素反応を経て(つ
まり間接的に)生成されるのに比較し、mcl-アルカン酸
からはきわめて直接的にmcl-3HAモノマーユニットが
生成されてくることになる。
【0158】ここで、微生物の増殖を担うアセチル−C
oAの生成について説明する。目的とするモノマーユニ
ット導入用のアルカン酸に加えて、mcl-アルカン酸を培
地中に共存させる方法では、これらのmcl-アルカン酸が
β酸化系を経由することによりアセチル−CoAが生成
する。一般に、バルキーな置換基を有するアルカン酸
(フェニル基、フェノキシ基、シクロヘキシル基、チエ
ニル基等の置換基を有するアルカン酸)と比較して、mc
l-アルカン酸はβ酸化系の酵素群との基質親和性に優れ
ていると考えられる。従って、mcl-アルカン酸の共存に
より効果的にアセチル−CoAが生成される。このた
め、アセチル−CoAを、エネルギー源ならびに炭素源
として用いる微生物の増殖には有利となる。
【0159】しかしながら、mcl-アルカン酸は、β酸化
系を経由することで、直接的にPHAのモノマーユニッ
トとなるために、生産されるPHAは、目的のモノマー
ユニットに加えて、mcl-3HAモノマーユニットの混在
が多いものとなってしまうことが大きな課題となる。
【0160】この課題を回避するためには、mcl-アルカ
ン酸以外で、効果的にアセチル−CoAの生成に利用さ
れ、エネルギー源及び炭素源を供給し得るような炭素源
を選択して、目的とするアルカン酸と共存させる方法が
望ましいことが、本発明者らの検討により結論された。
前述のように、一旦生成されたアセチル−CoAは、脂
肪酸合成経路を経ることによりPHAのモノマーユニッ
トとなり得るが、mcl-アルカン酸からβ酸化系で直接生
成するものと比較すれば、より多段階の反応を経由する
必要がある、間接的な産物である。また、このアセチル
−CoAの生成に利用される炭素源の濃度等、培養条件
を適宜選択することにより、実質的には、脂肪酸合成経
路に由来するmcl-3HAの混在のない、あるいは少ない
PHA製造の実現が可能となる。
【0161】また、従来より、1段階目で微生物の増殖
のみを目的に培養し、2段階目においては、炭素源とし
て、目的とするモノマーユニットを与えるアルカン酸の
みを培地に加える二段階培養法を利用したPHAの製造
方法が汎用されている。ここで、当該アルカン酸をアシ
ルCoA化するβ酸化系の初発酵素であるアシルCoAリ
ガーゼがATPを要求することから、発明者らの検討に
よれば2段階目においても微生物がエネルギー源として
利用し得る基質を共存させる製造方法がより効果的であ
るとの結果を得て、本発明を完成した。
【0162】本発明のPHAの製造方法においては、利
用する微生物おけるアセチルCoAの産生に利用され
る、エネルギー源ならびに炭素源を培地に含有させる。
その際、エネルギー源ならびに炭素源として効果的に使
用される炭素源化合物として、グリセロアルデヒド、エ
リスロール、アラビノース、キシロース、グルコース、
ガラクトース、マンノース、フルクトースといったアル
ドース、グリセロール、エリスリトール、キシリトール
等のアルジトール、グルコン酸等のアルドン酸、グルク
ロン酸やガラクツロン酸等のウロン酸、マルトース、ス
クロース、ラクトースといった二糖等の糖類が挙げられ
る。その他に、酵母エキス、ポリペプトン、肉エキス、
カザミノ酸などの天然物由来の培地成分など、前記糖類
と同様に、β酸化系を経ずにアセチルCoAの産生を可
能とする、エネルギー源ならびに炭素源として、用いる
微生物が利用できる有機化合物であれば、いかなる化合
物でも用いることができる。これら炭素源化合物は、用
いる菌株に対する基質としての有用性で適宜選択するこ
とができる。また、mcl-3HAの混入の少ない組み合わ
せであれば、複数の化合物を選択して用いることも可能
である。
【0163】<微生物>本発明に用いる微生物として
は、末端にチエニル基を置換したアルカン酸(ω−チエ
ニルアルカン酸)を基質として、対応する3−ヒドロキ
シ−ω−チエニルアルカン酸のモノマーユニットを含む
新規なPHAを生産し菌体内に蓄積する能力を有する微
生物、例えば、前記のTVA、THxA、または、TH
pAを原料とし、前記の3HTB、3HTV、3HTH
x、または、3HTHpをモノマーユニットとして含む
PHAを産生可能であれば、いかなる微生物をも使用す
ることができる。また、本発明の目的を達成できる範囲
内で、必要に応じて複数の微生物を混合して用いること
もできる。
【0164】本発明者らは、TVA、THxA、また
は、THpAを基質として用いて、前記の3HTB、3
HTV、3HTHx、または、3HTHpをモノマーユ
ニットとして含むPHAを生産し菌体内に蓄積する能力
を有する微生物の探索を行った。その結果、PHAを生
産し菌体内に蓄積する能力を有する、シュードモナス属
(Pseudomonas sp.)に属する微生物が、好ましいもの
であることを見出した。なかでも、好適に菌株として、
本発明者らが山梨県の土壌より分離した微生物であり、
PHAの生産能力を有する、シュードモナス・プチダ・
P91株(Pseudomonas putida P91)、シュードモ
ナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonascichorii H
45)、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseu
domonas cichorii YN2)、シュードモナス・ジェッ
セニイ・P161株(Pseudomonas jessenii P16
1)等が所望の能力を有することを見出した。
【0165】なお、前記4種の菌株については、シュー
ドモナス・プチダ・P91株(Pseudomonas putida P
91)は、平成11年6月3日付けで、微工研菌寄第P
−17409号(FERM P−17409)として寄
託され、その後、原寄託は平成12年11月20日付け
でブタペスト条約に基づく寄託へと移管され、寄託番号
「FERM BP−737」として国際寄託され、シュ
ードモナス・チコリアイ・H45株(Pseudomonas cich
orii H45)は、平成11年6月3日付けで、微工研
菌寄第P−17410号(FERM P−17410)
として寄託され、その後、原寄託は平成12年11月2
0日付けでブタペスト条約に基づく寄託へと移管され、
寄託番号「FERM BP−7374」として国際寄託
され、シュードモナス・チコリアイ・YN2株(Pseudo
monas cichorii YN2)は、平成11年6月3日付け
で、微工研菌寄第P−17411号(FERM P−1
7411)として寄託され、その後、原寄託は平成12
年11月20日付けでブタペスト条約に基づく寄託へと
移管され、寄託番号「FERM BP−7375」とし
て国際寄託され、シュードモナス・ジェッセニイ・P1
61株(Pseudomonas jessenii P161)は、平成1
1年7月1日付けで、微工研菌寄第P−17445号
(FERM P−17445)として寄託され、その
後、原寄託は平成12年11月20日付けでブタペスト
条約に基づく寄託へと移管され、寄託番号「FERM
BP−7376」として国際寄託され、国際寄託機関で
ある、経済産業省生命工学工業技術研究所(特許微生物
寄託センター)にそれぞれ寄託されている。
【0166】前記のP91株、H45株、YN2株およ
びP161株の菌学的性質を列挙すれば以下の通りであ
る。また、P161株については、16S rRNAの塩基
配列を配列番号1に示す。 <P91株の菌学的性質> 形態学的性質 細胞の形と大きさ :桿菌、0.6μm×1.5
μm 細胞の多形性 :なし 運動性 :あり 胞子形成 :なし グラム染色性 :陰性 コロニー形状 :円形、全縁なめらか、低凸
状、表層なめらか、光沢、クリーム色 生理学的性質 カタラーゼ :陽性 オキシダーゼ :陽性 O/F試験 :酸化型 硝酸塩の還元 :陰性 インドールの生成 :陰性 ブドウ糖酸性化 :陰性 アルギニンジヒドロラーゼ :陽性 ウレアーゼ :陰性 エスクリン加水分解 :陰性 ゼラチン加水分解 :陰性 β−ガラクトシダーゼ :陰性 King'sB寒天での蛍光色素産生 :陽性 基質資化能 ブドウ糖 :陽性 L−アラビノース :陰性 D−マンノース :陰性 D−マンニトール :陰性 N−アセチル−D−グルコサミン :陰性 マルトース :陰性 グルコン酸カリウム :陽性 n−カプリン酸 :陽性 アジピン酸 :陰性 dl−リンゴ酸 :陽性 クエン酸ナトリウム :陽性 酢酸フェニル :陽性 <H45株の菌学的性質> (1)形態学的性質 細胞の形と大きさ :桿菌、0.8μm×1.0〜1.2μm 細胞の多形性 :なし 運動性 :あり 胞子形成 :なし グラム染色性 :陰性 コロニー形状 :円形、全縁なめらか、低凸状、表
層なめらか、光沢、クリーム色 (2)生理学的性質 カタラーゼ :陽性 オキシダーゼ :陽性 O/F試験 :酸化型 硝酸塩の還元 :陰性 インドールの生成 :陰性 ブドウ糖酸性化 :陰性 アルギニンジヒドロラーゼ :陰性 ウレアーゼ :陰性 エスクリン加水分解 :陰性 ゼラチン加水分解 :陰性 β-ガラクトシダーゼ :陰性 King’sB寒天での蛍光色素産生:陽性 4%NaClでの生育 :陰性 ポリ−β−ヒドロキシ酪酸の蓄積 :陰性 (3)基質資化能 ブドウ糖 :陽性 L−アラビノース :陰性 D−マンノース :陽性 D−マンニトール :陽性 N−アセチル−D−グルコサミン :陽性 マルトース :陰性 グルコン酸カリウム :陽性 n−カプリン酸 :陽性 アジピン酸 :陰性 dl−リンゴ酸 :陽性 クエン酸ナトリウム :陽性 酢酸フェニル :陽性 <YN2株の菌学的性質> (1)形態学的性質 細胞の形と大きさ :桿菌、0.8μm×1.5〜2.0μm 細胞の多形性 :なし 運動性 :あり 胞子形成 :なし グラム染色性 :陰性 コロニー形状 :円形、全縁なめらか、低凸状、表
層なめらか、光沢、半透明 (2)生理学的性質 カタラーゼ :陽性 オキシダーゼ :陽性 O/F試験 :酸化型 硝酸塩の還元 :陰性 インドールの生成 :陽性 ブドウ糖酸性化 :陰性 アルギニンジヒドロラーゼ :陰性 ウレアーゼ :陰性 エスクリン加水分解 :陰性 ゼラチン加水分解 :陰性 β-ガラクトシダーゼ :陰性 King’sB寒天での蛍光色素産生:陽性 4%NaClでの生育 :陽性(弱い生育) ポリ−β−ヒドロキシ酪酸の蓄積 :陰性 Tween80の加水分解 :陽性 (3)基質資化能 ブドウ糖 :陽性 L−アラビノース :陽性 D−マンノース :陰性 D−マンニトール :陰性 N−アセチル−D−グルコサミン :陰性 マルトース :陰性 グルコン酸カリウム :陽性 n−カプリン酸 :陽性 アジピン酸 :陰性 dl−リンゴ酸 :陽性 クエン酸ナトリウム :陽性 酢酸フェニル :陽性 <P161株の菌学的性質> (1)形態学的性質 細胞の多形性 :あり(伸長型) 運動性 :あり 胞子形成 :なし グラム染色性 :陰性 コロニー形状 :円形、全縁なめらか、低凸状、表
層なめらか、淡黄色 (2)生理学的性質 カタラーゼ :陽性 オキシダーゼ :陽性 O/F試験 :酸化型 硝酸塩の還元 :陽性 インドールの生成 :陰性 ブドウ糖酸性化 :陰性 アルギニンジヒドロラーゼ :陽性 ウレアーゼ :陰性 エスクリン加水分解 :陰性 ゼラチン加水分解 :陰性 β-ガラクトシダーゼ :陰性 King’sB寒天での蛍光色素産生:陽性 (3)基質資化能 ブドウ糖 :陽性 L−アラビノース :陽性 D−マンノース :陽性 D−マンニトール :陽性 N−アセチル−D−グルコサミン :陽性 マルトース :陰性 グルコン酸カリウム :陽性 n−カプリン酸 :陽性 アジピン酸 :陰性 dl−リンゴ酸 :陽性 クエン酸ナトリウム :陽性 酢酸フェニル :陽性 また、シュードモナス属に属する微生物に加えて、アエ
ロモナス属(Aeromonas sp.)、コマモナス属(Comamon
as sp.)、バークホルデリア属(Burkholderiasp.)な
どに属し、上記一般式[2]で表されるモノマーユニッ
トを含むPHAを生産する微生物を用いることも可能で
ある。
【0167】<培養>上記の微生物を、所望とするモノ
マーユニット導入用のアルカノエート基質と増殖用基質
とを含む培地で培養することで、目的とする側鎖上のチ
エニル基が置換したモノマーユニットを含むPHAを生
産することができる。この微生物が産生するPHAは、
一般にR−体のみから構成され、アイソタクチックなポ
リマーであり、加えて、生分解性を示すポリマーであ
る。
【0168】本発明にかかるPHAの製造方法に用いる
微生物の通常の培養、例えば、保存菌株の作成、PHA
の生産に必要とされる菌数や活性状態を確保するための
増殖などには、用いる微生物の増殖に必要な成分を含有
する培地を適宜選択して用いる。例えば、微生物の生育
や生存に悪影響を及ぼすものでない限り、一般的な天然
培地(肉汁培地など)や、栄養源(酵母エキス、ポリペ
プトンなど)を添加した合成培地など、いかなる種類の
培地をも用いることができる。
【0169】培養には、利用する微生物が増殖し、PH
Aを生産する培養方法である限り、液体培養、固体培養
などの種類に依らず、いかなる培養方法でも用いること
ができる。さらには、バッチ培養、フェドバッチ培養、
半連続培養、連続培養等の培養形態も問わない。液体バ
ッチ培養の形態としては、振とうフラスコによって、培
地を振とうさせて酸素を供給する方法、ジャー・ファー
メンターによる攪拌通気方式の酸素供給を利用する方法
がある。また、これらの培養工程を、複数段接続した多
段方式の培養形態を採用してもよい。
【0170】上述するPHA生産微生物を利用して、例
えば、3HTB、3HTV、3HTHx、または、3H
THpをモノマーユニットとして含むPHAを製造する
場合は、PHA生産用の原料として、それぞれ目的のモ
ノマーユニットに対応するTVA、THxA、THpA
を含み、加えて、微生物の増殖用炭素源を少なくとも一
種含んだ無機培地などを用いることができる。利用され
る増殖用炭素源としては、酵母エキスやポリペプトン、
肉エキスといった栄養素を用いることも可能である。さ
らには、増殖用炭素源として、糖類、例えば、グリセロ
アルデヒド、エリスロース、アラビノース、キシロー
ス、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクト
ースといったアルドース、グリセロール、エリスリトー
ル、キシリトール等のアルジトール、グルコン酸等のア
ルドン酸、グルクロン酸やガラクツロン酸等のウロン
酸、マルトース、スクロース、ラクトースといった二糖
等など、β酸化サイクルを経ずにアセチルCoAを生じ
る化合物であれば、いかなる化合物でも用いることがで
きる。これらの増殖用炭素源は、用いる菌株に対する基
質としての有用性で適宜選択することができる。また、
mcl-3HAのユニットの混入が少ない組み合わせであれ
ば、増殖用炭素源に複数の化合物を選択して用いること
も可能である。先に例示する増殖用炭素源の中でも、特
に糖類を用いることが好ましく、中でもグルコース、フ
ルクトース、マンノースからなる群から選択される少な
くとも一つであることがより好ましい。
【0171】すなわち、目的のPHAを生産させる培養
では、基質とするチエニルアルカン酸に加えて、培地中
に、糖類、酵母エキス、ポリペプトンのいずれかを、含
有濃度を、一般に、0.05%〜5.0%の範囲で、好
ましくは、0.1%〜2.0%の範囲などで含有させた
状態で微生物の培養を行うことが望ましい。その際、基
質とするチエニルアルカン酸の添加率は、その分子量に
もよるが、一般に、0.01%〜1.0%の範囲に、好
ましくは、0.05%〜0.5%の範囲に選択すること
が望ましい。
【0172】微生物にPHAを生産・蓄積させる方法と
しては、一旦十分に増殖させた後に、塩化アンモニウム
のような窒素源を制限し、目的とするモノマーユニット
の基質となる化合物を加えた培地へ菌体を移し、更に培
養する二段階の培養方法を採用すると、目的とするPH
Aの生産性が向上する場合がある。具体的には、前記の
工程を複数段接続した多段方式の採用が挙げられる。例
えば、二段階培養法として、D-グルコースを 0.05%〜
5.0%の範囲、および、TVA、THxA、または、T
HpAを 0.01%〜1.0%の範囲で含んだ無機培地等で対
数増殖後期から定常期の時点まで培養し、菌体を遠心分
離等で回収した後、TVA、THxA、または、THp
Aを 0.01%〜1.0%の範囲で含んだ、窒素源を制限し
た、あるいは実質的に存在しない無機培地に回収した菌
体を再懸濁し、さらに培養する方法がある。
【0173】上記の培養方法に用いる無機培地として
は、リン源(例えば、リン酸塩等)、窒素源(例えば、
アンモニウム塩、硝酸塩等)等、微生物が増殖し得る成
分を含んでいるものであればいかなるものでも良く、例
えば、利用可能な無機塩培地として、MSB培地、E培
地(J. Biol. Chem., 218, 97-106 (1956))、
M9培地等を挙げることができる。
【0174】なお、本発明の生産方法に利用可能な無機
塩培地の一例、下記の実施例で用いるM9培地の組成は
以下の通りである。
【0175】(M9培地の組成) Na2HPO4: 6.2 g KH2PO4 : 3.0 g NaCl : 0.5 g NH4Cl : 1.0 g (培地1リットル中、pH7.0) 更に、良好な増殖及びPHAの生産のためには、上記の
無機塩培地に対して、微生物の増殖に利用される微量金
属などを補う目的で、以下に示す組成の微量成分溶液を
0.3%(v/v)程度添加することが好ましい。
【0176】(微量成分溶液の組成) ニトリロ三酢酸: 1.5 g MgSO4 : 3.0 g MnSO4 : 0.5 g NaCl : 1.0 g FeSO4 : 0.1 g CaCl2 : 0.1 g CoCl2 : 0.1 g ZnSO4 : 0.1 g CuSO4 : 0.1 g AlK(SO4)2: 0.1 g H3BO3 : 0.1 g Na2MoO4: 0.1 g NiCl2 : 0.1 g (培地1リットル中、pH7.0) 培養温度としては、上記の菌株など、利用する微生物が
良好に増殖可能な温度であれば良く、例えば 14〜40℃
の範囲、好ましくは 20〜35℃の範囲に選択することが
適当である。
【0177】具体的な例としては、D-グルコースを 0.
05%から 5.0%程度、および、TVA、THxA、また
は、THpAを 0.01%から 1.0%程度含んだ無機培地
等で培養し、対数増殖後期から定常期の時点で菌体を回
収して目的外のモノマーユニットの混在が少ない、ある
いは全くない所望のPHAを抽出することができる。こ
のようなPHAは、一般にR-体のみから構成され、ア
イソタクチックなポリマーである。
【0178】D-グルコースの代わりに同量の酵母エキ
スまたはポリペプトンを与えても良い。また、それらの
組み合わせを用いてもよい。
【0179】<PHAの回収>本発明の生産方法では、
かかる培養液からのPHAの分離には、通常行われてい
る方法を適用することができる。仮に、PHAが培養液
中に分泌される場合は、培養液からの抽出精製方法が利
用できる。目的とするPHAが菌体に蓄積される場合
は、菌体からの抽出精製方法が用いられる。例えば、微
生物の培養菌体からのPHAの回収には、通常行われて
いるクロロホルムなどの有機溶媒による抽出が最も簡便
ではある。利用される有機溶媒には、クロロホルム以外
に、アセトンが用いられる場合もある。また、有機溶媒
の使用が制限される環境中においては、溶媒抽出に代え
て、SDS等の界面活性剤による処理、リゾチーム等の
酵素による処理、EDTA、次亜塩素酸ナトリウム、ア
ンモニア等の薬剤による処理によってPHA以外の菌体
成分を除去して、PHAを回収する方法を用いることも
できる。
【0180】なお、本発明の生産方法において、微生物
の培養、微生物によるPHAの生産と菌体への蓄積、並
びに、菌体からのPHAの回収は、上記の方法に限定さ
れるものではない。
【0181】
【実施例】以下に、実施例を示して、本発明をより具体
的に説明すり。なお、これらの実施例は、本発明の最良
の実施の形態の一例を示すものの、本発明は、これら実
施例により、限定を受けるものではない。また、以下に
おける「%」は特に標記した以外は重量基準である。
【0182】(実施例1)酵母エキス(Difco社製)0.5
%、TVA0.1%を含むM9培地200 mlにシュードモナ
ス・プチダ・P91株を植菌し、30℃、125ストローク
/分で振盪培養した。24時間後、菌体を遠心分離によっ
て回収し、冷メタノールで一度洗浄して凍結乾燥した。
【0183】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0184】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分析
装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモ
ノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。
その結果、表3に示す通り、このPHAは、前記化学式
[6]に示す3HTVのモノマーユニットを唯一のモノ
マーユニットとするPHAであることが確認された。
【0185】
【表3】
【0186】このPHAについて、核磁気共鴫装置(F
T-NMR:Bruker DPX400)を用いて、下記の測
定条件で分析した。 <測定条件> 測定核種:1H、13C 使用溶媒:CDCl3(TMS/CDCl3をキャピラリ封
入で reference として使用) 共鳴周波数:1H=400MHz、13C=100MHz 図1及び図2に、1H及び13C-NMRスぺクトルを、そ
の帰属結果(化学式[14]参照)を表4にそれぞれ示
した。
【0187】
【化82】
【0188】
【表4】
【0189】さらに、このPHAの分子量をゲルパーミ
エーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHLC
-8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIXE
D-C(5μm)、溶媒;クロロホルム、ポリスチレン換
算)により評価した結果、数平均分子量Mn=72,000、
重量平均分子量Mw=260,000であった。
【0190】(実施例2)D-グルコース 0.5%、TV
A 0.1%を含むM9培地 200 mlにシュードモナス・チ
コリアイ・YN2株を植菌し、30℃、125ストローク/
分で振盪培養した。48時間後、菌体を遠心分離によって
回収した。次いで、D-グルコース 0.5%とTVA 0.1
%とを含む、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培地 200
mLに、回収した菌体を再懸濁して、更に30℃、125ス
トローク/分で振盪培養した。42時間後、菌体を遠心分
離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄して凍結乾
燥した。
【0191】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターで
ろ過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃
縮液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回
収して真空乾燥してPHAを得た。
【0192】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー質量分析装
置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PH
Aモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行っ
た。その結果、表5に示す通り、このPHAは前記化学
式[6]で示されるモノマーユニットを有するPHAで
あることが確認された。
【0193】
【表5】
【0194】(実施例3)D-グルコース 0.5%、TV
A 0.1%を含むM9培地 200 mlにシュードモナス・チ
コリアイ・H45株を植菌し、30℃、125ストローク/
分で振盪培養した。48時問後、菌体を遠心分離によって
回収した。次いで、D-グルコース 0.5%とTVA 0.1
%とを含む、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培地 2
00mLに、回収した菌体を再懸濁して、更に30℃、125
ストローク/分で振盪培養した。42時間後、菌体を遠心
分離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄して凍結
乾燥した。
【0195】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターで
ろ過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃
縮液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回
収して真空乾燥してPHAを得た。
【0196】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー質量分析装
置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PH
Aモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行っ
た。その結果、表6に示す通り、このPHAは前記化学
式[6]で示されるモノマーユニットを有するPHAで
あることが確認された。
【0197】
【表6】
【0198】(実施例4)D-グルコース 0.5%、TV
A 0.1%を含むM9培地 200 mlにシュードモナス・ジ
ェッセニイ・P161株を植菌し、30℃、125ストロー
ク/分で振盪培養した。46時間後、菌体を遠心分離によ
って回収した。次いで、D-グルコース 0.5%とTVA
0.1%とを含む、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培
地 200 mlに、回収した菌体を再懸濁して、更に30℃、1
25ストローク/分で振盪培養した。41時間後、菌体を遠
心分離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄して凍
結乾燥した。
【0199】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た.抽出液を孔径 0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0200】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー質量分析装
置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PH
Aモノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行っ
た。その結果、表7に示す通り、このPHAは前記化学
式[6]で示されるモノマーユニットを有するPHAで
あることが確認された。
【0201】
【表7】
【0202】(実施例5)ポリペプトン(日本製薬社
製)0.5%、THxA0.1%を含むM9培地200 mlにシュ
ードモナス・チコリアイ・YN2株を植菌し、30℃、12
5ストローク/分で振盪培養した。48時間後、菌体を遠
心分離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄して凍
結乾燥した。
【0203】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0204】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分析
装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモ
ノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。
その結果、表8に示す通り、このPHAは前記化学式
[8]で示されるモノマーユニットを有するPHAであ
ることが確認された。
【0205】
【表8】
【0206】これらのPHAについて、核磁気共鴫装置
(FT-NMR:Bruker DPX400)を用いて、下記
の測定条件で分析した。 <測定条件> 測定核種:1H 使用溶媒:CDCl3(TMS/CDCl3をキャピラリ封
入で referenceに使用) 共鳴周波数:1H=400MHz 図3に、1H-NMRスぺクトルをその帰属結果(化学
式:3−ヒドロキシ−4−(2−チエニル)酪酸[1
5]、3−ヒドロキシ−6−(2−チエニル)ヘキサン
酸[16]、3−ヒドロキシ酪酸[17]参照)を表9
にそれぞれ示した。
【0207】
【化83】
【0208】
【化84】
【0209】
【化85】
【0210】
【表9】
【0211】さらに、これらPHAの分子量をゲルパー
ミエーションクロマトグラフィー(GPC;東ソーHL
C-8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel MIX
ED-C(5m)、溶媒;クロロホルム、ポリスチレン換
算)により評価した結果、数平均分子量Mn=180,000、
重量平均分子量Mw=411,000であった。
【0212】(実施例6)ポリペプトン(日本製薬社
製)0.5%、THxA0.1%を含むM9培地200 mlにシュ
ードモナス・ジェッセニイ・P161株を植菌し、30
℃、125ストローク/分で振盪培養した。48時間後、菌
体を遠心分離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄
して凍結乾燥した。
【0213】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0214】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分析
装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモ
ノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。
その結果、表10に示す通り、このPHAは前記化学式
[8]で示されるモノマーユニットを有するPHAであ
ることが確認された。
【0215】
【表10】
【0216】(実施例7)ポリペプトン(日本製薬社
製)0.5%、THxA0.1%を含むM9培地200 mlにシュ
ードモナス・チコリアイ・H45株を植菌し、30℃、12
5ストローク/分で振盪培養した。48時間後、菌体を遠
心分離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄して凍
結乾燥した。
【0217】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0218】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分析
装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモ
ノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。
その結果、表11に示す通り、このPHAは前記化学式
[8]で示されるモノマーユニットを有するPHAであ
ることが確認された。
【0219】
【表11】
【0220】(実施例8)D-グルコース 0.5%、TH
xA0.1%を含むM9培地 200 mlにシュードモナス・チ
コリアイ・YN2株を植菌し、30℃、125ストローク/
分で振盪培養した。48時間後、菌体を遠心分離によって
回収した。次いで、D-グルコース 0.5%とTHxA0.1
%とを含む、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培地 200
mLに、回収した菌体を再懸濁して、更に30℃、125ス
トローク/分で振盪培養した。42時間後、菌体を遠心分
離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄して凍結乾
燥した。
【0221】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0222】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分析
装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモ
ノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。
その結果、表12に示す通り、このPHAは前記化学式
[8]で示されるモノマーユニットを有するPHAであ
ることが確認された。
【0223】
【表12】
【0224】(実施例9)D-グルコース 0.5%、TH
xA0.1%を含むM9培地 200 mlにシュードモナス・ジ
ェッセニイ・P161株を植菌し、30℃、125ストロー
ク/分で振盪培養した。48時間後、菌体を遠心分離によ
って回収した。次いで、D-グルコース 0.5%とTHx
A0.1%とを含む、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培
地 200mLに、回収した菌体を再懸濁して、更に30℃、
125ストローク/分で振盪培養した。42時間後、菌体を
遠心分離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄して
凍結乾燥した。
【0225】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0226】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分析
装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモ
ノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。
その結果、表13に示す通り、このPHAは前記化学式
[8]で示されるモノマーユニットを有するPHAであ
ることが確認された。
【0227】
【表13】
【0228】(実施例10)D-グルコース 0.5%、T
HxA0.1%を含むM9培地 200 mlにシュードモナス・
チコリアイ・H45株を植菌し、30℃、125ストローク
/分で振盪培養した。48時間後、菌体を遠心分離によっ
て回収した。次いで、D-グルコース 0.5%とTHxA
0.1%とを含む、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培地
200mLに、回収した菌体を再懸濁して、更に30℃、125
ストローク/分で振盪培養した。42時間後、菌体を遠心
分離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄して凍結
乾燥した。
【0229】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0230】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0231】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分析
装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモ
ノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。
その結果、表14に示す通り、このPHAは前記化学式
[8]で示されるモノマーユニットを有するPHAであ
ることが確認された。
【0232】
【表14】
【0233】(実施例11)ポリペプトン(日本製薬社
製)0.5%、THpA0.1%を含むM9培地200 mlにシュ
ードモナス・チコリアイ・YN2株を植菌し、30℃、12
5ストローク/分で振盪培養した。48時間後、菌体を遠
心分離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄して凍
結乾燥した。
【0234】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0235】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分析
装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモ
ノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。
その結果、表15に示す通り、このPHAは前記化学式
[2]で示されるモノマーユニットを有するPHAであ
ることが確認された。
【0236】
【表15】
【0237】これらのPHAについて、核磁気共鴫装置
(FT-NMR:Bruker DPX400)を用いて、下記
の測定条件で分析した。 <測定条件> 測定核種:1H 使用溶媒:CDCl3(TMS/CDCl3をキャピラリ封
入で referenceに使用) 共鳴周波数:1H=400MHz 図4に、1H−NMRスぺクトルを、その帰属結果(化
学式:3−ヒドロキシ−5−(2−チエニル)吉草酸
[18]、3−ヒドロキシ−7−(2−チエニル)ヘプ
タン酸[19]参照)を表16にそれぞれ示した。
【0238】
【化86】
【0239】
【化87】
【0240】
【表16】
【0241】さらに、これらPHAの分子量をゲル・パ
ーミエーション・クロマトグラフィー(GPC;東ソー
HLC-8020、カラム;ポリマーラボラトリーPLgel
MIXED-C(5m)、溶媒;クロロホルム、ポリスチレ
ン換算)により評価した結果、数平均分子量Mn=49,00
0、重量平均分子量Mw=88,000であった。
【0242】(実施例12)ポリペプトン(日本製薬社
製)0.5%、THpA0.1%を含むM9培地200 mlにシュ
ードモナス・ジェッセニイ・P161株を植菌し、30
℃、125ストローク/分で振盪培養した。48時間後、菌
体を遠心分離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄
して凍結乾燥した。
【0243】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0244】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分析
装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモ
ノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。
その結果、表17に示す通り、このPHAは前記化学式
[2]で示されるモノマーユニットを有するPHAであ
ることが確認された。
【0245】
【表17】
【0246】(実施例13)ポリペプトン(日本製薬社
製)0.5%、THpA0.1%を含むM9培地200 mlにシュ
ードモナス・チコリアイ・H45株を植菌し、30℃、12
5ストローク/分で振盪培養した。48時間後、菌体を遠
心分離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄して凍
結乾燥した。
【0247】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0248】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分析
装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモ
ノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。
その結果、表18に示す通り、このPHAは前記化学式
[2]で示されるモノマーユニットを有するPHAであ
ることが確認された。
【0249】
【表18】
【0250】(実施例14)D-グルコース 0.5%、T
HpA0.1%を含むM9培地 200 mlにシュードモナス・
チコリアイ・YN2株を植菌し、30℃、125ストローク
/分で振盪培養した。48時間後、菌体を遠心分離によっ
て回収し、D-グルコース 0.5%とTHpA0.1%とを含
む、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培地 200mLに再
懸濁して、更に30℃、125ストローク/分で振盪培養し
た。42時間後、菌体を遠心分離によって回収し、冷メタ
ノールで一度洗浄して凍結乾燥した。
【0251】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。得られたPHAは、常
法に従ってメタノリシスを行ったのち、ガスクロマトグ
ラフィー−質量分析装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)
で分析し、PHAモノマーユニットのメチルエステル化
物の同定を行った。その結果、表19に示す通り、この
PHAは前記化学式[2]で示されるモノマーユニット
を有するPHAであることが確認された。
【0252】
【表19】
【0253】(実施例15)D-グルコース 0.5%、T
HpA0.1%を含むM9培地 200 mlにシュードモナス・
ジェッセニイ・P161株を植菌し、30℃、125ストロ
ーク/分で振盪培養した。48時間後、菌体を遠心分離に
よって回収した。次いで、D-グルコース 0.5%とTH
pA0.1%とを含む、窒素源(NH4Cl)を含まないM9
培地 200mLに、回収した菌体を再懸濁して、更に30
℃、125ストローク/分で振盪培養した。42時間後、菌
体を遠心分離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄
して凍結乾燥した。
【0254】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0255】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分析
装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモ
ノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。
その結果、表20に示す通り、このPHAは前記化学式
[2]で示されるモノマーユニットを有するPHAであ
ることが確認された。
【0256】
【表20】
【0257】(実施例16)D-グルコース 0.5%、T
HpA0.1%を含むM9培地 200 mlにシュードモナス・
チコリアイ・H45株を植菌し、30℃、125ストローク
/分で振盪培養した。48時間後、菌体を遠心分離によっ
て回収した。次いで、D-グルコース 0.5%とTHpA
0.1%とを含む、窒素源(NH4Cl)を含まないM9培地
200mLに、回収した菌体を再懸濁して、更に30℃、125
ストローク/分で振盪培養した。42時間後、菌体を遠心
分離によって回収し、冷メタノールで一度洗浄して凍結
乾燥した。
【0258】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0259】この凍結乾燥ペレットを20 mlのクロロホ
ルムに懸濁し、60℃で20時間攪拌してPHAを抽出し
た。抽出液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターでろ
過したのち、ロータリーエバポレーターで濃縮し、濃縮
液を冷メタノール中で再沈澱させ、更に沈澱のみを回収
して真空乾燥してPHAを得た。
【0260】得られたPHAは、常法に従ってメタノリ
シスを行ったのち、ガスクロマトグラフィー−質量分析
装置(GC-MS,島津QP-5050、EI法)で分析し、PHAモ
ノマーユニットのメチルエステル化物の同定を行った。
その結果、表21に示す通り、このPHAは前記化学式
[2]で示されるモノマーユニットを有するPHAであ
ることが確認された。
【0261】
【表21】
【0262】
【発明の効果】本発明のPHAは、構成するモノマーユ
ニットとして、側鎖末端にチエニル基を置換基として含
有するものであり、この芳香性を有するチエニル基の存
在により、融点も高く、加工性も優れたものとなり、新
規な機能性を発揮するPHAポリマー材料となる。特
に、微生物により生産させることにより、前記の機能性
を具えつつ、生分解性をも保持するポリマー材料とな
る。加えて、本発明のPHAの製造方法では、かかる側
鎖末端にチエニル基を置換基として含有するモノマーユ
ニットに対応する基質のチエニルアルカン酸に加えて、
利用するPHA産生能を有する微生物が炭素源、エネル
ギー源として利用できる、糖類、酵母エキス、または、
ポリペプトンのいずれかを加えてある培地で培養するこ
とにより、基質チエニルアルカン酸に由来する目的とす
るモノマーユニットを含むPHAを高い収率で生産さ
せ、さらには、その際に得られるPHA中において、基
質チエニルアルカン酸に由来する目的とするモノマーユ
ニットが比較的高純度(含有モル比率)とすることがで
きる。
【0263】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Canon Inc. <120> Polyhydroxyalkanoate comprising 3-hydroxythenylalkanoic acid as mo nomer units, and its manufacturing method. <130> 4416075 <160> 1 <210> 1 <211> 1501 <212> DNA <213> Pseudomonas jessenii 161 strain (FERM BP-7376). <400> 1 tgaacgctgg cggcaggcct aacacatgca agtcgagcgg atgacgggag cttgctcctg 60 aattcagcgg cggacgggtg agtaatgcct aggaatctgc ctggtagtgg gggacaacgt 120 ctcgaaaggg acgctaatac cgcatacgtc ctacgggaga aagcagggga ccttcgggcc 180 ttgcgctatc agatgagcct aggtcggatt agctagttgg tgaggtaatg gctcaccaag 240 gcgacgatcc gtaactggtc tgagaggatg atcagtcaca ctggaactga gacacggtcc 300 agactcctac gggaggcagc agtggggaat attggacaat gggcgaaagc ctgatccagc 360 catgccgcgt gtgtgaagaa ggtcttcgga ttgtaaagca ctttaagttg ggaggaaggg 420 cattaaccta atacgttagt gttttgacgt taccgacaga ataagcaccg gctaactctg 480 tgccagcagc cgcggtaata cagagggtgc aagcgttaat cggaattact gggcgtaaag 540 cgcgcgtagg tggtttgtta agttggatgt gaaagccccg ggctcaacct gggaactgca 600 ttcaaaactg acaagctaga gtatggtaga gggtggtgga atttcctgtg tagcggtgaa 660 atgcgtagat ataggaagga acaccagtgg cgaaggcgac cacctggact gatactgaca 720 ctgaggtgcg aaagcgtggg gagcaaacag gattagatac cctggtagtc cacgccgtaa 780 acgatgtcaa ctagccgttg ggagccttga gctcttagtg gcgcagctaa cgcattaagt 840 tgaccgcctg gggagtacgg ccgcaaggtt aaaactcaaa tgaattgacg ggggcccgca 900 caagcggtgg agcatgtggt ttaattcgaa gcaacgcgaa gaaccttacc aggccttgac 960 atccaatgaa ctttccagag atggatgggt gccttcggga acattgagac aggtgctgca 1020 tggctgtcgt cagctcgtgt cgtgagatgt tgggttaagt cccgtaacga gcgcaaccct 1080 tgtccttagt taccagcacg taatggtggg cactctaagg agactgccgg tgacaaaccg 1140 gaggaaggtg gggatgacgt caagtcatca tggcccttac ggcctgggct acacacgtgc 1200 tacaatggtc ggtacagagg gttgccaagc cgcgaggtgg agctaatccc acaaaaccga 1260 tcgtagtccg gatcgcagtc tgcaactcga ctgcgtgaag tcggaatcgc tagtaatcgc 1320 gaatcagaat gtcgcggtga atacgttccc gggccttgta cacaccgccc gtcacaccat 1380 gggagtgggt tgcaccagaa gtagctagtc taaccttcgg gaggacggtt accacggtgt 1440 gattcatgac tggggtgaag tcgtaccaag gtagccgtag gggaacctgc ggctggatca 1500 c 1501
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において、TVAを原料として生産さ
れたPHAポリマーの1H-NMRスペクトルを示す図で
ある。
【図2】実施例1において、TVAを原料として生産さ
れたPHAポリマーの13C-NMRスペクトルを示す図
である。
【図3】実施例5において、THxAを原料として生産
されたPHAポリマーの1H-NMRスペクトルを示す図
である。
【図4】実施例11において、THpAを原料として生
産されたPHAポリマーの1H-NMRスペクトルを示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12R 1:38) C12R 1:38) (72)発明者 今村 剛士 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 見目 敬 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 小林 辰 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 矢野 哲哉 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (28)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式[1]で表されるモノマーユニッ
    ト組成を有することを特徴とするポリヒドロキシアルカ
    ノエート。 Ax(1-x) [1] (式中、Aは、下記一般式[2]で表される少なくとも
    1つ以上のモノマーユニットであり、Bは、下記一般式
    [3]で表されるモノマーユニットならびに下記一般式
    [4]で表されるモノマーユニットからなる群から選択
    される少なくとも1つ以上のモノマーユニットであり、
    xは0.01以上1以下である) 【化1】 (式中、nは1から8の整数のいずれかを表す) 【化2】 (式中、pは0から10の整数のいずれかを表す) 【化3】 (式中、qは3または5である)
  2. 【請求項2】 前記A成分のモノマーユニットの一つと
    して、下記化学式[5]で表されるモノマーユニットを
    含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリヒドロキ
    シアルカノエート。 【化4】
  3. 【請求項3】 前記A成分のモノマーユニットの一つと
    して、下記化学式[6]で表されるモノマーユニットを
    含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリヒドロキ
    シアルカノエート。 【化5】
  4. 【請求項4】 前記A成分のモノマーユニットの一つと
    して、下記化学式[7]で表されるモノマーユニットを
    含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリヒドロキ
    シアルカノエート。 【化6】
  5. 【請求項5】 前記A成分のモノマーユニットの一つと
    して、下記化学式[8]で表されるモノマーユニットを
    含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリヒドロキ
    シアルカノエート。 【化7】
  6. 【請求項6】 前記A成分のモノマーユニットとして、
    下記化学式[5]で表されるモノマーユニットならびに
    下記化学式[7]で表されるモノマーユニットを含むこ
    とを特徴とする、請求項1に記載のポリヒドロキシアル
    カノエート。 【化8】 【化9】
  7. 【請求項7】 前記A成分のモノマーユニットとして、
    下記化学式[6]で表されるモノマーユニットならびに
    下記化学式[8]で表されるモノマーユニットを含むこ
    とを特徴とする、請求項1に記載のポリヒドロキシアル
    カノエート。 【化10】 【化11】
  8. 【請求項8】 前記A成分のモノマーユニットとして、
    下記化学式[5]で表されるモノマーユニットのみを含
    むポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の
    ポリヒドロキシアルカノエート。 【化12】
  9. 【請求項9】 前記A成分のモノマーユニットとして、
    下記化学式[6]で表されるモノマーユニットのみを含
    むポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の
    ポリヒドロキシアルカノエート。 【化13】
  10. 【請求項10】 前記A成分のモノマーユニットとし
    て、下記化学式[7]で表されるモノマーユニットのみ
    を含むポリマーであることを特徴とする、請求項1に記
    載のポリヒドロキシアルカノエート。 【化14】
  11. 【請求項11】 前記A成分のモノマーユニットとし
    て、下記化学式[8]で表されるモノマーユニットのみ
    を含むポリマーであることを特徴とする、請求項1に記
    載のポリヒドロキシアルカノエート。 【化15】
  12. 【請求項12】 ポリマー全体の数平均分子量が10,000
    から300,000である、請求項1〜11のいずれかに記載
    のポリヒドロキシアルカノエート。
  13. 【請求項13】 ポリヒドロキシアルカノエート(PH
    A)産生能を有する微生物を利用して、下記式[1]で
    表されるモノマーユニット組成を有するポリヒドロキシ
    アルカノエートを製造する方法であって、 目的とするポリヒドロキシアルカノエートは、下記式
    [1]で表されるモノマーユニット組成を有するポリヒ
    ドロキシアルカノエートであり、 Ax(1-x) [1] (ただし、上記式中、Aは下記化学式[2]で表される
    少なくとも1つ以上であり、Bは下記化学式[3]また
    は下記化学式[4]で表されるモノマーユニットから選
    択される少なくとも1つ以上であり、xは0.01以上1
    以下である); 【化16】 (式中、nは1以上8以下の整数を表す); 【化17】 (式中、pは0から10の整数のいずれかを表す); 【化18】 (式中、qは3または5である);利用するPHA産生
    能を有する微生物は、末端にチエニル基置換を有するア
    ルカン酸(チエニルアルカン酸)を基質として、対応す
    る末端にチエニル基置換を有する3−ヒドロキシアルカ
    ン酸のモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカノ
    エートを産生する能力を有し;上記A成分の末端にチエ
    ニル基置換を有する3−ヒドロキシアルカン酸のモノマ
    ーユニットに対応する末端にチエニル基置換を有するア
    ルカン酸(チエニルアルカン酸)を原料として含む培地
    において、前記微生物を培養する工程を有することを特
    徴とするポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  14. 【請求項14】 原料のチエニルアルカン酸として、下
    記一般式[9]で表されるチエニルアルカン酸を用い
    て、 生産するポリヒドロキシアルカノエートは、下記一般式
    [10]で表されるモノマーユニットを含むポリヒドロ
    キシアルカノエートであることを特徴とする、請求項1
    3に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。 【化19】 (式中、nは1から8の整数のいずれかを表す); 【化20】 (式中、mは、1以上の整数であって、前記一般式
    [9]のnにより定まる、n、n−2、n−4、n−6
    からなる群より選択されるいずれかの整数を表す)
  15. 【請求項15】 原料のチエニルアルカン酸と糖類とを
    含む培地で、原料の前記チエニルアルカン酸を利用し
    て、前記式[1]で表されるモノマーユニット組成を有
    するポリヒドロキシアルカノエートを生産する微生物を
    培養する工程を有することを特徴とする、請求項13に
    記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  16. 【請求項16】 前記微生物の培養は、原料のチエニル
    アルカン酸と糖類とを含む培地による1段階培養である
    ことを特徴とする、請求項15に記載のポリヒドロキシ
    アルカノエートの製造方法。
  17. 【請求項17】 前記微生物の培養は、 原料のチエニルアルカン酸と糖類とを含む培地による培
    養と、 これに続く、原料のチエニルアルカン酸と糖類を含み、
    しかしながら、含有される窒素源を制限した培地による
    培養との、少なくとも2段階の培養で実施されることを
    特徴とする、請求項15に記載のポリヒドロキシアルカ
    ノエートの製造方法。
  18. 【請求項18】 培地に含有される前記糖類が、グルコ
    ース、フルクトース、マンノースからなる群から選択さ
    れる少なくとも一つの糖類であることを特徴とする、請
    求項15に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造
    方法。
  19. 【請求項19】 原料のチエニルアルカン酸と酵母エキ
    スとを含む培地で、原料の前記チエニルアルカン酸を利
    用して前記式[1]で表されるモノマーユニット組成を
    有するポリヒドロキシアルカノエートを生産する微生物
    を培養する工程を有することを特徴とする、請求項13
    に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  20. 【請求項20】 原料のチエニルアルカン酸とポリペプ
    トンとを含む培地で、原料の前記チエニルアルカン酸を
    利用して前記式[1]で表されるモノマーユニット組成
    を有するポリヒドロキシアルカノエートを生産する微生
    物を培養する工程を有することを特徴とする、請求項1
    3に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  21. 【請求項21】 微生物が産生したポリヒドロキシアル
    カノエートを単離する工程をさらに有することを特徴と
    する、請求項13に記載のポリヒドロキシアルカノエー
    トの製造方法。
  22. 【請求項22】 利用するPHA産生能を有する微生物
    が、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)に属する微
    生物であることを特徴とする、、請求項13に記載のポ
    リヒドロキシアルカノエートの製造方法。
  23. 【請求項23】 前記微生物が、シュードモナス・プチ
    ダ・P91株(Pseudomonas putida P91、FERM
    BP−7373)、シュードモナス・チコリアイ・H
    45株(Pseudomonas cichorii H45、FERM BP
    −7374)、シュードモナス・チコリアイ・YN2株
    (Pseudomonas cichorii YN2、FERM BP−73
    75)、シュードモナス・ジェッセニイ・P161株
    (Pseudomonas jessenii P161、FERM BP-7
    376)からなる群から選択される少なくとも1つの菌
    株であることを特徴とする、請求項22に記載のポリヒ
    ドロキシアルカノエートの製造方法。
  24. 【請求項24】 生産目的のポリヒドロキシアルカノエ
    ートは、下記化学式[6]で表されるモノマーユニット
    を含むポリヒドロキシアルカノエートであり、 下記化学式[11]で表される5−(2−チエニル)吉
    草酸を原料として含む前記培地において、5−(2−チ
    エニル)吉草酸を基質に利用して、下記化学式[6]で
    表されるモノマーユニットを含むポリヒドロキシアルカ
    ノエートを生産する微生物を培養する工程を有すること
    を特徴とする請求項14に記載のポリヒドロキシアルカ
    ノエートの製造方法。 【化21】 【化22】
  25. 【請求項25】 生産目的のポリヒドロキシアルカノエ
    ートは、下記化学式[7]で表されるモノマーユニット
    を含むポリヒドロキシアルカノエートであり、 下記化学式[12]で表される6−(2−チエニル)ヘ
    キサン酸を含む培地で、6−(2−チエニル)ヘキサン
    酸を利用して下記化学式[7]で表されるモノマーユニ
    ットを含むポリヒドロキシアルカノエートを生産する微
    生物を培養する工程を有することを特徴とする請求項1
    4に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。 【化23】 【化24】
  26. 【請求項26】 生産目的のポリヒドロキシアルカノエ
    ートは、下記化学式[8]で表されるモノマーユニット
    を含むポリヒドロキシアルカノエートであり、 下記化学式[13]で表される7−(2−チエニル)ヘ
    プタン酸を含む培地で、7−(2−チエニル)ヘプタン
    酸を利用して下記化学式[8]で表されるモノマーユニ
    ットを含むポリヒドロキシアルカノエートを生産する微
    生物を培養する工程を有することを特徴とする請求項1
    4に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。 【化25】 【化26】
  27. 【請求項27】 生産目的のポリヒドロキシアルカノエ
    ートは、下記化学式[5]で表されるモノマーユニット
    と下記化学式[7]で表されるモノマーユニットとを含
    むポリヒドロキシアルカノエートであり、 下記化学式[12]で表される6−(2−チエニル)ヘ
    キサン酸を含む培地で、6−(2−チエニル)ヘキサン
    酸を利用して。下記化学式[5]で表されるモノマーユ
    ニットならびに下記化学式[7]で表されるモノマーユ
    ニットを含むポリヒドロキシアルカノエートを生産する
    微生物を培養する工程を有することを特徴とする請求項
    14に記載のポリヒドロキシアルカノエートの製造方
    法。 【化27】 【化28】 【化29】
  28. 【請求項28】 生産目的のポリヒドロキシアルカノエ
    ートは、下記化学式[6]で表されるモノマーユニット
    と下記化学式[8]で表されるモノマーユニットとを含
    むポリヒドロキシアルカノエートであり、下記化学式
    [13]で表される7−(2−チエニル)ヘプタン酸を
    含む培地で、7−(2−チエニル)ヘプタン酸を利用し
    て、下記化学式[6]で表されるモノマーユニットなら
    びに下記化学式[8]で表されるモノマーユニットを含
    むポリヒドロキシアルカノエートを生産する微生物を培
    養する工程を有することを特徴とする請求項14に記載
    のポリヒドロキシアルカノエートの製造方法。 【化30】 【化31】 【化32】
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