JP2001315285A - 高分子樹脂複合成形体の製造方法、高分子樹脂複合成形体、積層体 - Google Patents

高分子樹脂複合成形体の製造方法、高分子樹脂複合成形体、積層体

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JP2001315285A
JP2001315285A JP2000140087A JP2000140087A JP2001315285A JP 2001315285 A JP2001315285 A JP 2001315285A JP 2000140087 A JP2000140087 A JP 2000140087A JP 2000140087 A JP2000140087 A JP 2000140087A JP 2001315285 A JP2001315285 A JP 2001315285A
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JP2000140087A
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English (en)
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Tatsuichiro Kin
辰一郎 金
Michinao Iwai
理直 岩井
Satoshi Omori
智 大森
Hiromasa Minematsu
宏昌 峯松
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Teijin Ltd
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Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 硬度と耐摩耗性に優れ、更には、表面平滑性
に優れ、成形体の曲面化等のデザインも容易な、高分子
樹脂複合成形体を、高い生産性で製造する方法を提供す
る。 【解決手段】 支持基板(A)に、ハードコート層
(B)と、接着層(C)とがこの順に積層されてなる積
層体(D)を作成した後に、これに1層以上の高分子樹
脂層を積層し、その後、支持基板(A)を分離して高分
子樹脂複合成形体を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、各種の自動車や
建築物の窓材や構造材等として好適な表面硬度の高い高
分子樹脂複合成形体とその製造方法に関し、更には高分
子樹脂複合成形体の製造において使用する積層体に関す
るものである。
【0002】また本願発明による高分子樹脂複合成形体
は、前記の用途以外に、例えば液晶表示装置(LCD)
やプラズマディスプレー、エレクトロルミネセンスディ
スプレー、CRT等の各種の表示装置の電極基板や表面
保護用シート、もしくは各種の携帯情報端末、タッチパ
ネル入力装置等で用いられる透明タブレットにおける電
極基板等としても好適に用いることができる。
【0003】
【従来の技術】ポリカーボネート、ポリメチルメタクリ
レート等に代表される透明性に優れる各種高分子樹脂の
成形体を、例えば、建築物、自動車等の窓材や構造材等
として用いる場合、硬度・耐擦傷性・耐侯性・耐薬品性
の特性がガラスに大幅に劣るという欠点がある。
【0004】そのため、高分子樹脂成形体の表面にハー
ドコートを施す(例えば特開昭48−81928号、特
開昭52−138565号、特開昭53−138476
号)ことが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これらのハードコート
層としては、珪素アルコキシドの加水分解縮合物もしく
は、それに加えて他種のアルコキシドや各種の超微粒子
等を適当な割合で混合した組成物を熱的に硬化してなる
層や、多官能アクリレートを紫外線や電子線等の活性光
線の照射等によって重合してなる層が多く用いられてい
る。
【0006】こうしたハードコート層の積層により、耐
擦傷性は大きく改善され、例えば荷重4.9N、100
0サイクルのテーバー摩耗試験におけるヘーズの増加が
10%以下といった高い耐擦傷性能を得ることも可能に
なる。
【0007】しかしながら表面硬度に関しては、このよ
うな厚みのハードコート層の積層による向上効果は比較
的小さく、ポリカーボネート成形体上にこれらのハード
コート層を5μm程度の厚みで積層した場合を例にとる
と、日本工業規格K5400記載の鉛筆硬度試験法に準
拠して測定を行った成形体の鉛筆硬度の値は、ポリカー
ボネートの成形体の鉛筆硬度が2BないしB程度であっ
て、ハードコート層を積層した成形体ではFないしH程
度で、硬度が不十分になる場合が多い。
【0008】このことから高分子樹脂成形体そのものの
鉛筆硬度が高いことが望まれ、例えばポリメチルメタク
リレートの成形体は、成形体そのものの鉛筆硬度が5H
程度であって、本目的で好ましい。
【0009】しかしながら、例えば前記の珪素アルコキ
シドの加水分解縮合物のような加熱硬化型のハードコー
ト層を用いる場合には、ポリメチルメタクリレートの成
形体の熱変形温度およびガラス転移温度が低いために、
温度の上限値が100℃以下に制限され、ハードコート
層の硬化が不十分となって、耐擦傷性や硬度が低下して
しまう場合が多い。
【0010】またハードコート層の積層方法をその生産
性の観点から見ると、ロールから巻き出したフィルムに
連続的にハードコート層をコーティングして積層する方
法が最も好ましく、更に、例えばハードコート層が積層
されたフィルムをインサートフィルムとしてインモール
ド成形を行うことによって適当な厚さの高分子樹脂積層
成形体を作成する方法が好ましい。
【0011】しかしながらこの場合、ポリメチルメタク
リレートを主成分とするフィルムは伸度が低く、非常に
脆く、破断が起こりやすいので、上記のようにロールフ
ィルムに連続的にコーティングすることは困難であり、
生産性に劣る場合の多い枚葉方式のコーティング方法を
取らざるを得ないといった問題点があった。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち、本願発明は次
の通りである。
【0013】1. 厚みが20〜500μmの支持基板
(A)に、支持基板(A)との層間密着力が200N/
m以下で、厚みが1〜20μmであって、荷重4.9
N、1000サイクルのテーバー摩耗試験におけるヘー
ズの増加が10%以下、鉛筆硬度が4H以上であるハー
ドコート層(B)と、厚みが0.5〜20μmであっ
て、ハードコート層(B)との層間密着力および下記高
分子樹脂層(E)との層間密着力がともに200N/m
以上である接着層(C)とがこの順に積層されてなる積
層体(D)を作成した後に、この積層体(D)の接着層
(C)の自由表面に、厚みが50μm以上で、鉛筆硬度
が3H以上である高分子樹脂層(E)を積層して積層体
(G)を作成し、もしくは、当該高分子樹脂層(E)
と、厚みが高分子樹脂層(E)の厚み以上であって、ア
イゾット衝撃強さが50J/m以上および/または荷重
撓み温度が115℃以上の高分子樹脂層(F)とをこの
順に積層して積層体(H)を作成し、その後、支持基板
(A)とハードコート層(B)との界面で剥離して、積
層体(G)もしくは積層体(H)から支持基板(A)を
分離し、高分子樹脂層(E)と接着層(C)とハードコ
ート層(B)とがこの順に積層されてなる高分子樹脂複
合成形体、もしくは、高分子樹脂層(F)と高分子樹脂
層(E)と接着層(C)とハードコート層(B)とがこ
の順に積層されてなる高分子樹脂複合成形体、を得るこ
とを特徴とする高分子樹脂複合成形体の製造方法。
【0014】2. 高分子樹脂層(E)、もしくは高分
子樹脂層(F)、もしくは高分子樹脂層(E)と高分子
樹脂層(F)とを、単独の熱溶融物としてまたは積層状
態の熱溶融物として、積層することにより、積層体
(G)もしくは積層体(H)を得ることを特徴とする上
記1に記載の高分子樹脂複合成形体の製造方法。
【0015】3. 積層体(D)もしくは積層体(G)
を、その二面のうち支持基板(A)側の自由表面が金型
の内壁面に接する向きで金型に配置した後に、高分子樹
脂層(E)、もしくは高分子樹脂層(F)、もしくは高
分子樹脂層(E)と高分子樹脂層(F)とを射出成形法
により積層することを特徴とする上記2に記載の高分子
樹脂複合成形体の製造方法。
【0016】4. ハードコート層(B)が、珪素一原
子に3個のメトキシ基および/またはエトキシ基が結合
した3官能珪素アルコキシドの加水分解縮合物を50重
量%以上含有する層であって、接着層(C)が、下記一
般式(1)に示す成分(c1)と下記一般式(2)に示
す成分(c2)とが、モル比(c1/c2)で2〜10
の範囲で共重合されてなる組成物から主としてなること
を特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の高分子樹脂
複合成形体の製造方法。 CH2=CCH3COOR1 ・・・(1) (R1は、水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基
のいずれかを示す。) CH2=CCp2p+1COOCq2qSi(CH3r(OR2s ・・・(2) (R2は、メチル基および/またはエチル基、p、rは
0もしくは1、qは1〜5の整数、sは2もしくは3で
ある。)
【0017】5. 一般式(2)で示す成分が、γ−メ
タクリロキシプロピルトリメトキシシランであることを
特徴とする上記4に記載の高分子樹脂複合成形体の製造
方法。
【0018】6. 高分子樹脂層(E)が、主としてポ
リメチルメタクリレートからなることを特徴とする上記
1〜5のいずれかに記載の高分子樹脂複合成形体の製造
方法。
【0019】7. 高分子樹脂層(F)が、主としてポ
リカーボネートおよび/またはポリアリレートからなる
層である上記1〜6に記載の高分子樹脂複合成形体の製
造方法。
【0020】8. 高分子樹脂複合成形体のヘーズ値が
5%以下であることを特徴とする上記1〜7のいずれか
に記載されている製造方法で製造される高分子樹脂複合
成形体。
【0021】9. 成形体が自動車窓もしくは建材用窓
であることを特徴とする上記8に記載の成形体。
【0022】10. 厚みが20〜500μmの支持基
板(A)に、珪素一原子に3個のメトキシ基および/ま
たはエトキシ基が結合した3官能珪素アルコキシドの加
水分解縮合物を50重量%以上含有し、厚みが1〜20
μmであって、荷重4.9N、1000サイクルのテー
バー摩耗試験におけるヘーズの増加が10%以下、鉛筆
硬度が4H以上であるハードコート層(B)と、厚みが
0.5〜20μmであって、下記一般式(1)に示す成
分(c1)と下記一般式(2)に示す成分(c2)と
が、モル比(c1/c2)で2〜10の範囲で共重合さ
れてなる組成物から主としてなる接着層(C)とがこの
順に積層されてなる積層体。 CH2=CCH3COOR1 ・・・(1) (R1は、水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基
のいずれかを示す。) CH2=CCp2p+1COOCq2qSi(CH3r(OR2s ・・・(2) (R2は、メチル基および/またはエチル基、p、rは
0もしくは1、qは1〜5の整数、sは2もしくは3で
ある。)
【0023】11. 一般式(2)で示す成分が、γ−
メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである上記
10に記載の積層体。
【0024】ここで、上記7.において、「ポリカーボ
ネートおよびポリアリレートからなる」とは、ポリカー
ボネートとポリアリレートとのブレンド物を意味する。
ただし、このブレンド物には部分共重合物も含まれる。
【0025】上記8.においては、透明性を必要とする
用途の場合には可視波長域の全光線透過率が30%以上
であることがより望ましい場合がある。
【0026】1〜11において、「主として」とは、使
用される剤、成分等が全体の70重量%以上を占めてい
ることを意味する。
【0027】また、「自由表面」とは、積層されておら
ず、外気に触れている方の表面を意味する。たとえば
「積層体(D)の接着層(C)の自由表面」とは、「積
層体の二つの表面のうちの一つであって、接着層(C)
の二つの面の内積層されていない方の表面でもあるも
の」を意味する。
【0028】また、上記積層体の順序はそれを構成する
層の間の順序を指すもので、本願発明の目的にかなう限
り、それらの順序に加えて他の層が挿入される場合も含
まれる。たとえば、接着層(C)とハードコート層
(B)との間にプライマー層を設ける場合である。
【0029】また、ハードコート層(B)の鉛筆硬度
は、当該ハードコート層を単独で、2mm厚みの石英板
上に1〜20μmの膜厚で積層硬化した後、その表面に
ついて測定したものであり、荷重4.9N、1000サ
イクルのテーバー摩耗性は、ハードコート層を単独で、
1mm厚のポリカーボネート板(例えば帝人化成株式会
社製「パンライトPC−1151」)上に1〜20μm
の膜厚で積層した後、この層の表面について測定したも
のである。
【0030】なお、これらの測定を行う際、ハードコー
ト層と石英板との間、もしくはハードコート層とポリカ
ーボネート板との間の密着性は良好であることが好まし
く、少なくとも日本工業規格K5400記載の碁盤目テ
ープ法試験で100/100であることが好ましい。
【0031】このため、場合によってはプライマー層を
ハードコート層と石英板との間、ハードコート層とポリ
カーボネート板との間に挟持して設けることが好まし
い。これらのプライマー層としては、例えばポリメチル
メタクリレートや、メチルメタクリレートと2−ヒドロ
キシエチルメタクリレートとの共重合物、および前記の
接着層(C)に用いた成分による層等が好ましく例示さ
れる。
【0032】このプライマー層の厚みは鉛筆硬度の測定
結果への影響を防ぐ観点から1〜3μmの範囲とするこ
とが好ましい。
【0033】なお、上記において「単独に」とは、この
プライマー層をハードコート層と石英板との間、ハード
コート層とポリカーボネート板との間に挟持して設ける
場合をも含むものである。
【0034】本願発明における支持基板(A)として
は、高分子樹脂のフィルム、金属箔等が好ましく、高分
子樹脂複合成形体のハードコート層(B)の積層面を優
れた表面平滑性を有する表面とする目的で、少なくとも
支持基板(A)のハードコート層(B)と相対する側の
面の表面平滑性が優れていることが好ましい。
【0035】このように、基板の少なくとも片面の表面
平滑性に優れた支持基板(A)は、例えば、基板の材料
の熱溶融物もしくは溶剤への溶解物(溶液)を表面平滑
な支持基体上に展開した後に、冷却もしくは溶剤乾燥し
て作成することが可能である。
【0036】なお、高分子樹脂複合成形体のハードコー
ト層(B)の積層面に対して意図的に表面賦形を行う場
合には、支持基板(A)のハードコート層(B)と相対
する側の面にあらかじめ、その鋳型となる表面形状を形
成しておくことが好ましい場合もある。
【0037】上記高分子樹脂のフィルムとしては、例え
ばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレ
ンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(P
C)、ポリアリレート(PAR)、およびそれらと他種
成分とを共重合および/またはブレンドしてなるフィル
ムや、オレフォン系フィルム(例えばJSR製の「アー
トンフィルム」)等が好ましく挙げられる。
【0038】金属箔としては、銅、黄銅、アルミニウム
等による箔が好ましく用いられる。
【0039】なお、支持基板(A)は、ハードコート層
(B)および接着層(C)を連続的にコーティング形成
する場合においては、コーティングのなされた支持基板
(A)をロール形態に巻き取ることを可能とするため
に、その厚みは20〜500μmの範囲にあることが好
ましい。
【0040】また特にハードコート層(B)として、珪
素アルコキシドの加水分解縮合物等の熱硬化型の材料を
用いる場合には、フィルムもしくは箔の、少なくとも1
方向の引張り弾性率が120℃で200MPa以上であ
る高分子樹脂フィルムもしくは金属箔が好ましく用いら
れる。より好ましくは140℃で200MPa以上、最
も好ましくは160℃で200MPa以上である。
【0041】ハードコート層(B)および接着層(C)
を支持基板(A)から剥離する場合に、その剥離をスム
ーズに行えるように、支持基板(A)とハードコート層
(B)との層間密着力は200N/m以下であることが
好ましい。更に好ましくは100N/m以下である。
【0042】なお、この目的のため、必要に応じて、支
持基板(A)には、ハードコート層(B)と層間密着力
を減じるような表面処理を行うことも望ましい態様の一
つである。こうした表面処理としては、例えばAr、X
e、N2等の不活性ガス雰囲気下でのプラズマ処理が例
示され、支持基板(A)の表面エネルギーを減じる効果
を有する。
【0043】また、同様の目的で、支持基板(A)上
に、支持基板(A)との層間密着力が200N/m以上
であって、ハードコート層(B)との層間密着力が20
0N/m以下であるような塗膜をコーティング積層する
方法も用いることが可能である。
【0044】すなわち、このような場合も「支持基板
(A)とハードコート層(B)との層間密着力は200
N/m以下であることが好ましい。更に好ましくは10
0N/m以下である」とする要件の範疇に含まれる。
【0045】これらの塗膜は、ハードコート層(B)の
種類によって組成を変えることが好ましい場合は多い。
【0046】すなわちハードコート層(B)が前述の、
珪素一原子に3個のメトキシ基および/またはエトキシ
基が結合した3官能珪素アルコキシドの加水分解縮合物
を50重量%以上含有する層である場合には、一例とし
て、分子内に3個以上のアクリロイル基もしくはメタク
リロイル基を有する多官能アクリレートを主成分として
なる前駆材料を紫外線や電子線の照射等によって硬化さ
せてなる層がこれらの塗膜として好ましく用いられる。
【0047】分子内に3個以上のアクリロイル基を有す
る多官能アクリレートとしては、例えばトリメチロール
プロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエ
チレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロー
ルプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレー
ト、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリ
レート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ
ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエ
リスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0048】さて、本願発明のハードコート層(B)
は、鉛筆硬度が4H以上で、東洋精機(株)製テーバー
磨耗試験装置(磨耗輪CS−10F、垂直荷重4.9
N)を使用した、ハードコート層(B)の1000サイ
クルのテーバー摩耗試験におけるヘーズ値の上昇が、少
なくとも10%以下となるような耐摩耗性に優れた層で
ある。
【0049】このようなハードコート層(B)として
は、特に珪素一原子に3個のメトキシ基および/または
エトキシ基が結合した3官能珪素アルコキシドの加水分
解縮合物を50重量%以上含有する層が好ましく用いら
れる。
【0050】なお、該層は各種の無機酸化物の超微粒子
を50重量%未満の割合で含有していても良く、各種の
硬化剤(重合開始剤、重合触媒)、レベリング剤等の添
加剤を含有していて良い。
【0051】ここで無機酸化物の超微粒子としては、例
えば酸化珪素、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、
酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウ
ム、酸化錫等の平均粒径が3〜30nmの超微粒子が好
適である。
【0052】なお、珪素一原子に3個のメトキシ基およ
び/またはエトキシ基が結合した3官能珪素アルコキシ
ドの加水分解縮合物が、ハードコート層(B)中に50
重量%以上含有されていないと、部分的な剥がれ、チョ
ーキング等の問題が発生しやすくなる。更に好ましくは
60重量%以上である。
【0053】また、該層は、25重量%以下の割合で珪
素一原子に4個のメトキシ基および/またはエトキシ基
が結合した4官能珪素アルコキシドの加水分解縮合物を
含有していても良く、また同様に25重量%以下の割合
で珪素以外の他種のアルコキシドの加水分解縮合物、例
えばアルミニウムやチタン、ジルコニウム、ボロン等の
金属アルコキシドの加水分解縮合物を含有していても良
い。
【0054】これら3官能珪素アルコキシドとしては、
例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシ
シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラ
ン、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリ
メトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β
(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラ
ン、アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、メタア
クリロイルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、
4官能珪素アルコキシドとしては、テトラメトキシシラ
ン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0055】なお、ここで珪素アルコキシドの加水分解
縮合物とは、珪素アルコキシドと水と酸触媒(主にぎ
酸、酢酸、塩酸、硝酸等が用いられる)とを混合し、撹
拌することにより、アルコキシ基と水との間に脱アルコ
ール反応が起こり水酸基(Si−OH)を生ずる加水分
解反応と、それに引き続いて起こる、水酸基同士による
脱水反応、もしくは水酸基とアルコキシ基による脱アル
コール反応等に基づく縮合物(Si−O−Si結合によ
る連鎖)のことを指している。
【0056】この縮合物は一般に前記反応によって生ず
るアルコール系溶媒に溶解した状態で存在するが、縮合
反応が進行しすぎるとゲル化が起こり、コーティングが
不可となる。これらの反応速度は溶液のpH値や温度等
に大きく依存することから、これらの溶液にはpH緩衝
剤(酢酸ナトリウム等)を添加したり、冷蔵状態で保管
することが好ましい。
【0057】これらの溶液は基材上にコーティング後、
自然乾燥(風乾)および/またはコーター乾燥炉での加
熱等によって溶剤成分が揮発乾燥され、この後、乾燥炉
で高温に加熱されることにより縮合反応が著しく進行し
て硬化層すなわちハードコート層(B)を形成する。
【0058】なお、これらの溶液もしくはこれらの溶液
をコーティングした基材面に、170〜300nmの波
長領域の紫外線(特に低圧水銀ランプの主発光波長であ
る195nm、254nm)を照射すると、アルコキシ
ドの縮合反応活性が高まることが公知となっており、本
願発明においても本方法を併用することも好ましく行わ
れる。
【0059】ハードコート層(B)の膜厚は目的に応じ
て、適宜選択できるが、1〜20μmの範囲にあること
が好ましい。膜厚が1μm未満であると繰返して摩耗を
受けた場合に耐擦傷性が不十分となる場合がある。20
μmを越えるとハードコート層(B)の脆さが表面化し
て、表面にクラックを生じ易くなったり、高分子樹脂フ
ィルムとの密着性が低下する場合がある。更に好適には
膜厚は2〜10μmの範囲である。
【0060】接着層(C)は、ハードコート層(B)と
の層間密着力、および高分子樹脂層(E)との層間密着
力が、それぞれ200N/m以上であることが好まし
い。より好ましくは400N/m以上である。
【0061】すなわち高分子樹脂複合成形体の、ハード
コート層(B)または高分子樹脂層(E)との層間密着
力が200N/m未満では、実使用において層間剥離等
の問題を生ずる場合が多いからである。
【0062】また接着層(C)の鉛筆硬度が3H以上で
あることが好ましい場合が多く、ガラス転移温度が70
〜160℃の範囲にあることが好ましい場合が多い。
【0063】接着層(C)の鉛筆硬度が3H未満である
場合には、本願発明の高分子樹脂複合成形体のハードコ
ート層(B)の鉛筆硬度(室温下で測定)が不十分にな
る場合が多い。
【0064】接着層(C)のガラス転移温度が70℃未
満であると、高分子樹脂複合成形体の耐熱性が不十分に
なって、実使用に問題を生ずる場合が多い。
【0065】またガラス転移温度が160℃を超える場
合には、高分子樹脂層(E)の成形時に、接着層(C)
が充分に可塑化されないために、主に熱的な融着によっ
て融着される接着層(C)と高分子樹脂層(E)との間
の層間密着性が不十分になる場合が多い。
【0066】接着層(C)は、ハードコート層(B)と
の層間密着力が充分な値が得られるように、ハードコー
ト層(B)の種類によって好適な組成を使い分けること
が好ましい。
【0067】例えば、ハードコート層(B)が、前述
の、珪素一原子に3個のメトキシ基および/またはエト
キシ基が結合した3官能珪素アルコキシドの加水分解縮
合物を50重量%以上含有する層である場合には、接着
層(C)は、下記一般式(1)に示す成分(c1)と下
記一般式(2)に示す成分(c2)とが、モル比(c1
/c2)で2〜10の範囲で共重合されてなる組成物か
ら主としてなることが好ましい。 CH2=CCH3COOR1 ・・・(1) (R1は、水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基
のいすれかを示す) CH2=CCp2p+1COOCq2qSi(CH3r(OR2s ・・・(2) (R2は、メチル基および/またはエチル基、p、rは
0もしくは1、qは1〜5の整数、sは2もしくは3で
ある)
【0068】ここで、一般式(1)で示す成分は、高分
子樹脂層(E)との層間密着性を向上する目的で用いら
れる。具体的には、メタクリル酸、メチルメタクリレー
ト、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレー
ト、イソブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタ
クリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙
げられる。また、これらの2種類以上を同時に用いるこ
とも可能である。
【0069】なお、一般式(1)で示す成分の中では、
特にメチルメタクリレートが好ましく用いられる。
【0070】一般式(2)で示す成分は、ハードコート
層(B)との層間密着性を向上する目的で用いられる珪
素アルコキシドを分子内に含む成分である。一般式
(2)で示す成分の中では、mが3であるものが特に好
ましく用いられる。これらの例としては、例えば、γ−
メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アク
リロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロ
キシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキ
シプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキ
シプロポキシエチルトリメトキシシラン等が挙げられ
る。なお、一般式(2)で示す成分の中では、特にγ−
メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく
用いられる。
【0071】なお、一般式(2)で示す成分は、珪素ア
ルコキシド部位のSi−OR2の一部が周囲環境等に存
在した水分によって加水分解されて、もしくは意図的に
加水分解してSi−OHの形になったものも好ましく用
いられる。
【0072】接着層(C)の厚みは0.5〜20μmの
範囲にあることが好ましい。
【0073】また接着層(C)には、必要に応じて各種
の紫外線吸収剤や酸化防止剤等の成分を適量含有させる
ことも好ましく行われ、高分子樹脂複合成形体の耐候性
(例えば耐紫外線老化性)を向上する効果を得ることが
できる。
【0074】なお、ハードコート層(B)および接着層
(C)の支持基板(A)上へのコーティング方法として
は、スピンコート法、(ドクター)ナイフコート法、各
種のグラビヤコート法、マイクログラビヤコート法、
(マイヤー)バーコート法、リバースロールコート法、
ダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法等
の各種の方法を用いることができる場合が多い。
【0075】なお、前記のように、ハードコート層
(B)が、珪素一原子に3個のメトキシ基および/また
はエトキシ基が結合した3官能珪素アルコキシドの加水
分解縮合物を50重量%以上含有する層であり、接着層
(C)が一般式(1)に示す成分(c1)と一般式
(2)に示す成分(c2)とが、重量比(c1/c2)
で2〜10の範囲で共重合されてなる組成物から主とし
てなる層である場合には、ハードコート層(B)と接着
層(C)との積層に先立ち、ハードコート層(B)の熱
処理を行うことが多いが、その場合、たとえば、熱処理
の温度を下げ、熱処理時間を短くする等の手段により、
熱処理の程度を層の粘着性(タック性)が消失する程度
にとどめ、接着層(C)の積層後に充分な熱処理を施す
といった方法が好ましく用いられる。
【0076】このような方法を用いると、ハードコート
層(B)中の珪素アルコキシド成分と接着層(C)中の
珪素アルコキシド成分(c2)との化学的結合(縮合)
がなされやすく、層間密着力が向上する場合が多い。
【0077】このようにして、支持基板(A)とハード
コート層(B)と接着層(C)とがこの順に積層された
積層体(D)が得られるが、この積層体(D)を用い
て、目的の高分子樹脂複合成形体の成形を行う。
【0078】その方法としては、まず積層体(D)の接
着層(C)の自由表面に、厚みが50μm以上で、鉛筆
硬度が3H以上である高分子樹脂層(E)を積層成形し
た後に、支持基板(A)とハードコート層(B)との界
面を剥離せしめ、支持基板(A)と、高分子樹脂層
(E)と接着層(C)とハードコート層(B)とがこの
順に積層されてなる目的とする高分子樹脂複合成形体と
の、2つの部分に分離する。
【0079】支持基板(A)とハードコート層(B)と
の界面での剥離は、前述のように、支持基板(A)とハ
ードコート層(B)との間の層間密着力が200N/m
以下、より好ましくは100N/m以下であることによ
り、剥離動作をわずかな外力をもって、比較的簡単に行
うことができる。
【0080】さて、高分子樹脂層(E)を単独の熱溶融
物として積層するには、高分子樹脂の熱溶融物をノズル
やダイ等から押し出して、高分子樹脂の熱溶融物からな
る層を形成し、そのまま、積層体(D)と積層する方法
もあるが、層を形成した後に該層を冷却することによっ
て形成することが好ましい。
【0081】具体的には、例えば、積層体(G)を作製
する場合には、1組の金型により挟持されたキャビティ
内部に、高分子樹脂の熱溶融物をノズルから押し出し
て、充填させた後、その熱溶融物を冷却して所定の形状
の成形体を得る方法である公知の射出成形法が好ましく
用いることができる。
【0082】この場合、積層体(D)の二面のうち支持
基板(A)の側の自由表面が、金型の内壁に接した状態
で、積層体(D)を金型内に設置し、その後熱溶融樹脂
を射出して、高分子樹脂層(E)を積層することが好ま
しい。
【0083】この時、積層体(D)はあらかじめ金型の
内寸に合わせて切断し、前記要領で金型内壁に密着固定
する場合と、積層体(D)を切断せずに用い、連続的に
処理する場合とがある。
【0084】図1は、このうち、積層体(D)をあらか
じめ金型の内寸に合わせて切断し、前記要領で金型内壁
に密着固定する場合の一例を示す。
【0085】図1において、積層体(D)は、その支持
基盤(A)(番号1a)の自由表面を金型の一方の面
(図1では可動側金型4a)に向けて配置し、キャビテ
ィー6aに溶融樹脂を射出する。
【0086】図2は、このうち、積層体(D)(番号
8)を切断せずに用い、連続的に処理する場合の一例を
示す。
【0087】図2において、積層体(D)の巻き出し部
(番号7)と、巻き取り部(番号10)とを、金型(4
6,5b)の両側に設け、巻き出し部7と巻き取り部1
0とを結ぶ積層体(D)の搬送経路がキャビティー6b
を通過するような配置とし、少なくとも型締めの時点
で、積層体(D)を金型内壁に密着固定させる。ただ
し、この場合積層体(D)(番号8)は切断されないま
まである。なお、この場合の積層体(D)(番号8)
は、そのの二面のうち支持基板(A)の側の自由表面
が、固定側金型5bと接した状態になっている。
【0088】後者の方法では、例えば、高分子樹脂層
(E)の射出成形から、積層体(D)の移動、高分子樹
脂層(E)の射出成形、積層体(D)の移動といったプ
ロセスを繰り返す方法で、射出成形の生産性を高めるこ
とができる。
【0089】なお、この方法においては、積層体(D)
上の、高分子樹脂層(E)が積層された領域に存在した
ハードコート層(B)と接着層(C)のみが剥離し、高
分子樹脂層(E)のその他の部分では、ハードコート層
(B)と接着層(C)の剥離が起こらない場合がほとん
どである。
【0090】積層体(D)の金型内壁への固定方法とし
ては、例えば公知の、積層体(D)と金型内面との静電
気による引力を利用して固定する方法や、金型内面にあ
らかじめ微細な空気流通孔を複数個設けておき、この孔
を通して真空ポンプにより積層体(D)を吸引固定する
方法等が好ましく用いられる。
【0091】高分子樹脂層(E)の射出成形は、公知の
方法に従い、型締め、溶融樹脂の射出、型冷却、型開き
の順に行う。
【0092】ただし後述のように、高分子樹脂層(E)
上に別種の高分子樹脂層(F)の射出成形を引き続いて
行う場合には、例えば、第一の溶融樹脂の射出を行い、
高分子樹脂層(E)を形成した後、型開きをせず、成形
体を取り出さずに、移動側金型を後退させて、新たなキ
ャビティーを形成し、第二の溶融樹脂の射出を行って高
分子樹脂層(F)を積層する、いわゆるコアバック方式
等の特殊なプロセスを用いることがある。
【0093】また高分子樹脂層(E)の形成方法として
は、前記の射出成形法以外にも、例えば、ノズルやダイ
から連続的に押し出した熱溶融樹脂を、ある速度で運動
する適当な支持基体(ベルト、ドラム等)上に展開し
て、熱溶融樹脂の層を形成し、その後に該層を冷却する
ことによって、シート状もしくはフィルム状の形状をし
た高分子樹脂層(E)を形成する、いわゆる溶融押し出
し法も好ましく用いられる。
【0094】この場合、支持基体上に展開した熱溶融樹
脂層上に積層体(D)を接着層(C)が熱溶融樹脂層に
直接接するようにラミネートする方法や、ノズルやダイ
から押し出した熱溶融樹脂を直接、積層体(D)の接着
層(C)上に展開せしめる方法(なお、この時、積層体
(D)の接着層(C)が積層されていない側の面を、通
常の溶融押し出し法で用いられるベルトやドラム等の支
持体により更に支持した方が好ましい場合もある)等が
好ましく用いられる。
【0095】もちろん、積層体(D)は、巻き出し部と
巻き取り部とを結ぶ経路上で、ラミネートされるか、支
持基体として働くように配置することが好ましい。
【0096】高分子樹脂層(E)の厚みは、高分子樹脂
複合成形体の機械的強度の観点から、少なくとも50μ
m以上、より好ましくは100μm以上であることが好
ましい。
【0097】また本願発明においては、高分子樹脂層
(E)は、鉛筆硬度が3H以上の樹脂層であることが好
ましい。
【0098】このような高分子樹脂層(E)としては、
特に、主としてポリメチルメタクリレートからなる層が
好ましく用いられる。
【0099】こうして得られた高分子複合成形体のハー
ドコート層(B)の積層面は、高分子樹脂層(E)およ
びハードコート層(B)の高い鉛筆硬度に起因して、4
H以上の高い鉛筆硬度を有しており、またハードコート
層(B)の優れた耐磨耗性に起因して、テーバー磨耗試
験におけるヘイズ値の上昇が10%以下の優れた耐磨耗
性を有している。
【0100】さて、この高分子樹脂複合成形体の高分子
樹脂層(E)上には、必要に応じて、更に高分子樹脂層
(E)とは別種の高分子樹脂層(F)を射出成形等によ
り積層することも好ましく行われる。
【0101】例えば、高分子樹脂層(E)が、ポリメチ
ルメタクリレートから主としてなる前駆材料の重合物か
らなる層である場合には、高分子樹脂複合成形体の耐衝
撃性(アイゾット衝撃強さ)や耐熱性(荷重撓み温度)
が不十分になる場合が多いが、これらの特性のいずれか
もしくは双方に優れる、高分子樹脂層(E)とは別種の
高分子樹脂層(F)を、高分子樹脂層(E)上に高分子
樹脂層(E)の厚み以上の厚みで積層した場合には、こ
の高分子樹脂複合成形体の耐衝撃性や耐熱性を大きく改
善できる場合が多い。
【0102】このような高分子樹脂層(F)の耐衝撃性
は、各種用途での高分子樹脂複合成形体の実用上の観点
から、アイゾット衝撃強さが50J/m以上、より好ま
しくは100J/m以上であることが好ましい。
【0103】また高分子樹脂層(F)の荷重撓み温度
は、同様に実用上の観点から、115℃以上、より好ま
しくは130℃以上であることが好ましい。
【0104】また前述のように、高分子樹脂層(F)の
厚みは、高分子樹脂層(E)の厚み以上であることが好
ましい。
【0105】ここで、高分子樹脂層(F)の厚みが、高
分子樹脂層(E)の厚み未満であると、高分子樹脂複合
成形体の耐衝撃性および/または耐熱性の向上が不十分
になる場合が多い。
【0106】なお、高分子樹脂層(F)を単独の熱溶融
物として積層するには、高分子樹脂の熱溶融物をノズル
やダイ等から押し出して、高分子樹脂の熱溶融物からな
る層を形成し、そのまま積層体(G)と積層する方法も
あるが、層を形成した後に該層を冷却することによって
形成することが好ましい。
【0107】また、高分子樹脂層(E)と高分子樹脂層
(F)とを、積層状態の熱溶融物として積層するには、
二つの高分子樹脂の熱溶融物をノズルやダイ等から共押
し出して、高分子樹脂の熱溶融物からなる層を形成し、
そのまま積層体(D)と積層する方法もあるが、層を形
成した後に該層を冷却することによって形成することが
好ましい。
【0108】なお、高分子樹脂層(F)の射出成形は、
高分子樹脂層(E)とは異なる金型を用いて行っても、
同一の金型を用いて行っても良い。
【0109】前者の場合には、例えば、高分子樹脂層
(E)の射出成形した後に、この金型を開き、成形体を
取り出して、別の金型内部に固定配置した後に、高分子
樹脂層(E)上に高分子樹脂層(F)を射出成形する方
法が好ましく用いられる。
【0110】後者の場合には、前述したコアバック方式
等の方法が好ましく用いられる。
【0111】なお、このように高分子樹脂層(F)の積
層を行う場合には、高分子樹脂層(F)の射出成形の終
了後に、支持基板(A)をハードコート層(B)との界
面で剥離し、目的とする高分子樹脂複合成形体を得るこ
とが好ましい場合が多い。
【0112】高分子樹脂層(F)としては、具体的に、
例えば、ポリカーボネートおよび/またはポリアリレー
トの層が好ましく用いられる。
【0113】ここでポリカーボネートとは、芳香族ジヒ
ドロキシ化合物と炭酸結合形成性化合物との重縮合物を
意味する。
【0114】かかる芳香族ジヒドロキシ化合物として
は、具体的にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタ
ン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパ
ン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)
プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘ
プタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジク
ロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキ
シ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4−
ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、4,4−ジヒド
ロキシフェニル−1,1’−m−ジイソプロピルベンゼ
ン、4,4’−ジヒドロキシフェニル−9,9−フルオ
レンなどのビス(4−ヒドロキシアリール)アルカン
類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペ
ンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シク
ロヘキサン、1−メチル−1−(4−ヒドロキシフェニ
ル)−4−(ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチ
ル−シクロヘキサン、4−[1−〔3−(4−ヒドロキ
シフェニル)−4−メチルシクロヘキシル〕−1−メチ
ルエチル]−フェノール、4,4’−〔1−メチル−4
−(1−メチルエチル)−1,3−シクロヘキサンジイ
ル〕ビスフェノール、2,2,2’,2’−テトラヒド
ロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−ス
ピロビス−〔1H−インデン〕−6,6’−ジオールな
どのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、ビ
ス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒ
ドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、4,
4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエー
テルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’
−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒ
ドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドな
どのジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’−
ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒ
ドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド
などのジヒドロキシジアリールスルスルホキシド類、
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’
−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホ
ン、などのジヒドロキシジアリールスルホン類、4,
4’−ジヒドロキシジフェニル−3,3’−イサチンな
どのジヒドロキシジアリールイサチン類、3,6−ジヒ
ドロキシ−9,9−ジメチルキサンテンなどのジヒドロ
キシジアリールキサンテン類、レゾルシン、3−メチル
レゾルシン、3−エチルレゾルシン、3−ブチルレゾル
シン、3−t−ブチルレゾルシン、3−フェニルレゾル
シン、3−クミルレゾルシン、ヒドロキノン、2−メチ
ルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−ブチル
ヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェ
ニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノンなどのジヒ
ドロキシベンゼン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニ
ル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフ
ェニル等ジヒドロキシジフェニル類が挙げられる。
【0115】中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェ
ニル)プロパンが好ましい。
【0116】炭酸結合形成性化合物としては、具体的に
はホスゲンやトリクロロメチルクロロフォーメート、ビ
ス(トリクロロメチル)カーボネートなどのホスゲン
類、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートな
どのジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネー
ト、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネー
ト類、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカ
ーボネートなどのアルキルアリールカーボネート類など
を挙げることができる。
【0117】ホスゲン類を用いる場合はポリカーボネー
トは溶液法で製造され、カーボネート結合を有する炭酸
エステル類を用いる場合は溶融法で製造される。
【0118】炭酸エステル類の中ではジフェニルカーボ
ネートが好ましく用いられる。
【0119】これらの化合物は単独または組み合わせて
用いることができる。
【0120】なお、他の成分を共重合またはブレンド成
分として含むものも上記のポリカーボネートの範疇に含
まれる。
【0121】本願発明にもっとも適するものは芳香族ジ
ヒドロキシ化合物として、2,2−ビス(4−ヒドロキ
シフェニル)プロパンを使用し、炭酸結合形成性化合物
として、ホスゲン類やカーボネート結合を有する炭酸エ
ステル類を使用するポリカーボネートである。
【0122】それ以外の成分の共重合率またはブレンド
率が高いとポリカーボネートの特徴が薄れるため、共重
合率またはブレンド率は20重量%以下が望ましく、1
0重量%以下が更に望ましい。
【0123】また、ポリアリレートとしては、芳香族ジ
オールと芳香族ジカルボン酸に由来する全芳香族ポリエ
ステルや芳香族ポリエステルカーボネートが挙げられ
る。より具体的には、例えば、芳香族ジオールとして
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、芳
香族ジカルボン酸としてテレフタル酸とイソフタル酸よ
りなる全芳香族ポリエステルが好適に挙げられる。
【0124】本願発明の高分子樹脂複合成形体は、透視
性が高いことが好ましく、具体的には積層体のヘーズ値
が5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%
以下である。
【0125】また積層体の光透過率は少なくとも可視波
長域の全光線透過率が30%以上あることが好ましく、
より好ましくは50%以上である。
【0126】
【実施例】以下に発明の好適な実施例について説明す
る。ただし、本願発明はこれに限定されるものではな
い。また、「部」は特に断らない限り「重量部」であ
る。なお、実施例における各種の特性評価は以下の要領
にて行った。
【0127】(鉛筆硬度の測定)日本工業規格K540
0に準拠して鉛筆硬度の測定を行った。
【0128】(テーバー摩耗性の測定)テーバー摩耗試
験機(東洋精機(株)製)を用い、摩耗輪CS−10
F、荷重4.9N、1000サイクルの条件で試験片表
面を摩耗し、次式から求められるヘーズ値の摩耗前後の
差(ΔH)で評価した。 ヘーズ(%)=(拡散透過率/全光線透過率)×100 なお、ハードコート層(B)のテーバー磨耗性は熱硬化
処理を施した時点からの室温下の保存(エージング)に
より若干向上する場合があるので、各サンプルともテー
バー摩耗試験はサンプルの作成後、温度25℃、湿度5
0%の環境下で7日間保存した後に行った。
【0129】(ヘーズ値および全光線透過率の測定)日
本電色工業社製の測定器(商品名「COH−300
A」)を用いて測定を行った。
【0130】(密着性の測定)日本工業規格K5400
の碁盤目テープ試験法に準拠して測定を行った。
【0131】(層間密着力の測定)帝人(株)製の厚さ
100μmのポリカーボネートフィルム「ピュアエース
C110」およびサンプルをそれぞれ幅15mm、長さ
150mmの短冊状に切り取り、図4に例示したような
ポリカーボネートフィルムとサンプルの塗膜表面とを接
着した試験片を作成した。なお、接着部の幅は15m
m、長さは70mmとした。
【0132】接着剤としてはシリコーン系塗膜との接着
力に優れるセメダイン社製のシリコーン変性接着剤「C
EMEDINE SUPER X」を用いた。
【0133】この試験片に対し、万能試験機「テンシロ
ン」を用いて前記ポリカーボネートフィルムを移動片と
して室温下で180度剥離試験を行った。ここで試験片
の移動速度は1000mm/分とし、5個の試験片の平
均値で塗膜の剥離力(N/m)を求めた。
【0134】なお、前記接着剤層の凝集破壊に基づく剥
離はおよそ1650(N/m)で発生した。
【0135】(荷重撓み温度の測定)日本工業規格K6
735に準拠した。
【0136】[接着層(C)形成用前駆材料Cの調製]
還流冷却器および撹拌装置を備え、窒素置換したフラス
コ中に、メチルメタクリレート85重量部、γ−メタク
リロキシプロピルトリメトキシシラン37.3重量部、
アゾビスイソブチロニトリル0.16重量部および1、
2−ジメトキシエタン200重量部を添加し、溶解させ
た。
【0137】70℃で6時間撹拌して得られた反応系を
n−ヘキサンに投入して析出させ、共重合ポリマー96
重量部を得た。
【0138】なお、このポリマーにおいて、メチルメタ
クリレートは前記一般式(1)の成分に相当し、γ−メ
タクリロキシプロピルトリメトキシシランは前記一般式
(2)の成分に相当する。従って、このポリマーの前記
一般式1の成分(c1)と一般式2の成分(c2)の共
重合比は、モル比(c1/c2)で約5.7であり、重
量平均分子量はGPC測定から約12万、示差熱分析法
(DSC)によるガラス転移温度は108℃であった。
【0139】このポリマー10重量部をメチルイソブチ
ルケトン63重量部、2−ブタノール27重量部からな
る混合溶媒に溶解した後に、3μmのフィルターでろ過
し接着層(C)形成用前駆材料Cを得た。
【0140】なお、この接着層(C)形成用前駆材料C
を用いて、接着層を2mm厚みの石英板上に5μmの膜
厚で積層し、130℃で32分間硬化した後、この層の
表面について測定した鉛筆硬度は5Hであった。
【0141】[ハードコート層(B)形成用前駆材料B
の調製]メチルトリメトキシシラン30重量部中に、平
均粒径10〜20nmの酸化珪素の超微粒子の水性分散
液(触媒化成工業(株)製の商品名「カタロイドSI−
30」固形分濃度30重量%)の20重量部と酢酸3.
5重量部とを混合した酸性分散液を、外部冷却下で激し
く撹拌しながら添加した。
【0142】次いで室温下3時間撹拌した後、イソプロ
ピルアルコール35重量部、酢酸ナトリウム0.2重量
部を加えた。該系のpHは約5.3であった。室温で3
日間放置した後、3μmのフィルターで濾過してハード
コート層(B)形成用前駆材料Bを調製した。
【0143】この前駆材料Bでは、珪素アルコキシドの
加水分解縮合物は、アルコキシドの脱アルコール反応か
ら生じたメタノール成分と添加したイソプロピルアルコ
ールとに溶解した状態のものである。
【0144】なお、この前駆材料Bでは酸化珪素の超微
粒子とメチルトリメトキシシランの加水分解縮合物とが
不揮発成分に相当する。すなわち、酸化珪素の超微粒子
は6重量部であり、メチルトリメトキシシランの加水分
解縮合物は、完全縮合状態を仮定すると14.6重量部
である。
【0145】よってメチルトリメトキシシランの加水分
解縮合が完全になされた場合の、前駆材料Bの不揮発成
分中の、珪素一原子に3個のメトキシ基および/または
エトキシ基が結合した3官能珪素アルコキシドの加水分
解縮合物の重量比率は約71重量%である。なお、メチ
ルトリメトキシシランの加水分解縮合が完全になされて
いない場合にはこの重量比率は更に高くなる。
【0146】なお、この前駆材料Bを使用してハードコ
ート層を2mm厚みの石英板上に5μmの膜厚で積層
し、130℃で33分間硬化(前駆材料Cの2μm厚の
プライマー層を介して積層)した後、この層の表面につ
いて測定した鉛筆硬度は9Hであり、前記と同じ前駆材
料Bを使用してハードコート層(B)を1mm厚みのポ
リカーボネート板上に5μmの膜厚で積層硬化(前駆材
料Cの2μm厚のプライマー層を介して積層)した後、
この層の表面について測定したテーバー磨耗によるヘー
ズ上昇は3.6%であった。
【0147】[実施例1]支持基板(A)として、幅3
00mm、厚みが110μmのポリカーボネートフィル
ム(帝人製商品名「ピュアエースC110)を用い、フ
ィルムを連続的にロールから巻き出して、ハードコート
層(B)形成用前駆材料Bをマイクログラビヤコート法
によりコーティングし、130℃の乾燥炉で1分間熱処
理を施して、膜厚が4μmのハードコート層(B)を形
成して、ロールに巻き取った。
【0148】次に、ハードコート層(B)の積層面に、
接着層(C)形成用前駆材料Cを同様にマイクログラビ
ヤコート法によりコーティングし、130℃で乾燥炉で
2分間熱処理を施して膜厚が3μmの接着層(C)を形
成して、ロールに巻き取った。
【0149】更に、この積層体(D)を、130℃の乾
燥炉を30分間かけて通過させ、ロールに巻き取った。
【0150】なお、この積層体(D)の層間密着力の試
験では、支持基板(A)とハードコート層(B)の界面
で剥離が生じ、その層間密着力は70N/mであった。
【0151】次に、この積層体(D)をインサートフィ
ルムとして用いて、日精樹脂工業製の射出成形機(「P
S20」)を用い、高分子樹脂層(E)の射出成形を行
った。
【0152】積層体(D)は、図3に模式的に示すよう
に、積層体(D)の支持基板(A)(番号1c)側が固
定側金型の内壁に密着するように配置した後に、型締め
をして射出成形を行った。
【0153】高分子樹脂層(E)を形成する高分子樹脂
は、ポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン製「アク
リペットVH」)とし、金型温度50℃、ノズル温度3
20℃、射出圧力3MPa、型冷却時間20秒の条件で
射出成形を行い、厚み2mm、縦横50mmの高分子樹
脂層(E)を形成し、支持基板(A)(番号1c)/ハ
ードコート層(B)(番号2c)/接着層(C)(番号
3c)/高分子樹脂層(E)がこの順に積層された積層
体(G)を作成し、金型から取り出した。なお、使用し
た高分子樹脂層(E)の鉛筆硬度は5Hであった。
【0154】なお、この高分子樹脂層(E)の鉛筆硬度
の測定結果は、前記記載の石英板上に層を積層した後に
測定を行う方法によるものではなく、前記積層体(G)
から鉛筆硬度を直接測定する方法による結果である。
【0155】次に、この積層体(G)から支持基板
(A)を、ハードコート層(B)と支持基板(A)との
界面で剥離せしめ、高分子樹脂層(E)/接着層(C)
/ハードコート層(B)がこの順に積層されてなる目的
の高分子樹脂複合成形体を得た。
【0156】この高分子樹脂複合成形体の外観は非常に
良好であり、全光線透過率は92.1%、ヘーズは0.
4%、鉛筆硬度は6H、テーバー摩耗試験によるヘイズ
上昇は4.3%、密着性は100/100と良好であっ
た。なお、この高分子樹脂複合成形体の鉛筆硬度、テー
バー摩耗試験によるヘイズ測定はこの高分子樹脂複合成
形体について行ったものである。
【0157】また、この高分子樹脂複合成形体の層間密
着力試験を行った結果、層の剥離は、接着層(C)とハ
ードコート層(B)との界面で生じ、その層間密着力は
350N/mであった。またこの結果から接着層(C)
と高分子樹脂層(E)との層間密着性は、少なくとも3
50N/m以上の値であることがわかる。
【0158】[実施例2]実施例1で作成した積層体
(G)を、実施例1とは別の金型の内部に、積層体
(G)の支持基板(A)側が金型内壁に接するような方
向で装着した後に、高分子樹脂層(F)を射出成形して
積層した。
【0159】高分子樹脂層(F)は、ポリカーボネート
(帝人化成製「パンライトL−1250」)の層とし、
金型温度50℃、ノズル温度340℃、射出圧力4MP
aの条件にて射出成形を行い、厚み3mm、縦横50m
mの高分子樹脂層(F)を積層して、積層体(H)を作
成し、金型から取り出した。
【0160】次に、この積層体(H)から、支持基板
(A)をハードコート層(B)と支持基板(A)との界
面で剥離して分離し、高分子樹脂層(F)と高分子樹脂
層(E)と接着層(C)とハードコート層(B)がこの
順に積層されてなる目的の高分子樹脂複合成形体を得
た。
【0161】この高分子樹脂複合成形体の外観は非常に
良好であり、全光線透過率は90.7%、ヘーズは0.
7%、鉛筆硬度は6H、テーバー磨耗試験によるヘイズ
上昇は4.1%、密着性は100/100であった。な
お、この高分子樹脂複合成形体の鉛筆硬度、テーバー摩
耗試験によるヘイズ測定はこの高分子樹脂複合成形体に
ついて行ったものである。
【0162】このポリカーボネートの高分子樹脂成形体
(下記試験法に準拠した大きさの成形体)の、アイゾッ
ト衝撃強さ(ASTM D−256に準拠)は800J
/m、荷重撓み温度(JIS K6735に準拠)は1
32℃であった。
【0163】なお、前記のポリメチルメタクリレートの
高分子樹脂成形体(試験法に準拠した大きさの成形体)
の、アイゾット衝撃強さ(ASTM D−256に準
拠)は18J/m、荷重撓み温度(JIS K6735
に準拠)は102℃であった。
【0164】[比較例1]実施例1において、接着層
(C)形成用前駆材料として、下記の前駆材料を用いた
以外は全く実施例1と同様にして、高分子樹脂複合成形
体を形成した。
【0165】すなわち還流冷却器および撹拌装置を備
え、窒素置換したフラスコ中に、メチルメタクリレート
95重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシ
シラン12.4重量部、アゾビスイソブチロニトリル
0.16重量部および1、2−ジメトキシエタン200
重量部を添加し、溶解させた。
【0166】70℃で6時間撹拌して得られた反応系を
n−ヘキサンに投入して析出させ、共重合ポリマー90
重量部を得た。
【0167】なお、このポリマーにおいて、メチルメタ
クリレートは前記一般式(1)の成分に相当し、γ−メ
タクリロキシプロピルトリメトキシシランは前記一般式
(2)の成分に相当する。従って、このポリマーの前記
一般式1の成分(c1)と一般式2の成分(c2)の共
重合比は、モル比(c1/c2)で約19であり、重量
平均分子量はGPC測定から約15万であった。
【0168】このポリマー10重量部をメチルイソブチ
ルケトン63重量部、2−ブタノール27重量部からな
る混合溶媒に溶解した後に、3μmのフィルターでろ過
し前駆材料とした。
【0169】この高分子樹脂複合成形体の外観は非常に
良好であり、全光線透過率は91.7%、ヘーズは0.
8%であったが、ハードコート層(B)と接着層(C)
との密着性は30/100、密着力は90N/mであっ
た。なお、鉛筆硬度試験、テーバー摩耗試験は実施しな
かった。
【0170】[比較例2]実施例1において、接着層
(C)形成用前駆材料として、下記の前駆材料を用いた
以外は全く実施例1と同様にして、高分子樹脂複合成形
体を形成した。
【0171】すなわち還流冷却器および撹拌装置を備
え、窒素置換したフラスコ中に、メチルメタクリレート
50重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシ
シラン124.2重量部、アゾビスイソブチロニトリル
0.16重量部および1、2−ジメトキシエタン200
重量部を添加し、溶解させた。
【0172】70℃で6時間撹拌して得られた反応系を
n−ヘキサンに投入して析出させ、共重合ポリマー10
8重量部を得た。
【0173】なお、このポリマーにおいて、メチルメタ
クリレートは前記一般式(1)の成分に相当し、γ−メ
タクリロキシプロピルトリメトキシシランは前記一般式
(2)の成分に相当する。従って、このポリマーの前記
一般式1の成分(c1)と一般式2の成分(c2)の共
重合比は、モル比(c1/c2)で約1.0であり、重
量平均分子量はGPC測定から約9万であった。
【0174】このポリマー10重量部をメチルイソブチ
ルケトン63重量部、2−ブタノール27重量部からな
る混合溶媒に溶解した後に、3μmのフィルターでろ過
し前駆材料とした。
【0175】前記の接着層(C)を用い、実施例1と同
様に、高分子樹脂層(E)の射出成形を行い、成形体を
取り出そうとした所、成形体の高分子樹脂層(E)と接
着層(C)の界面で簡単に剥離が生じた。
【0176】このため、本比較例では、目的の高分子樹
脂複合成形体を作成することができなかった。
【0177】また上記の結果から、高分子樹脂層(E)
と接着層(C)の層間密着力は、支持基板(A)とハー
ドコート層(B)の層間密着力よりも小さく、少なくと
も70N/m以下の値であることがわかる。
【0178】
【発明の効果】本願発明によれば、硬度と耐摩耗性に優
れる高分子樹脂複合成形体を、高い生産性で製造するこ
とができ、更には、表面平滑性に優れ、成形体の曲面化
等のデザインも容易な、高分子樹脂複合成形体を得るこ
とが可能になり、本方法により製造された高分子樹脂複
合成形体は自動車や建材等の窓材や透視性を必要とする
構造材、その他の幅広い用途に利用することができるよ
うになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明において、あらかじめ所定の寸法に切
断した積層体(D)を用いて高分子樹脂層(E)の射出
成形を行う場合の金型内部での好適な配置の一例を示す
側断面図である。
【図2】本願発明において、積層体(D)を切断するこ
となく、積層体(D)を移動させながら、高分子樹脂層
(E)の射出成形を行う場合の、各装置の好適な配置の
一例を示す側断面図である。
【図3】本願発明において、積層体(D)を切断するこ
となく、積層体(D)を移動させながら、高分子樹脂層
(E)の射出成形を行う場合の、積層体(D)の金型内
部での好適な配置の一例を示す側面図である。
【図4】実施例における層間密着力測定用のサンプルの
模式図である。
【符号の説明】
1a、1c 支持基板(A) 2a、2c ハードコート層(B) 3a、3c 接着層(C) 4a、4b 可動側金型 5a、5b 固定側金型 6a、6b キャビティー(1組の金型によって挟持さ
れた空間) 7 積層体の巻き出し部 8 積層体 9 溶融樹脂の射出ノズル 10 積層体の巻き取り部。 11 ポリカーボネートフィルム 12 接着剤 13 サンプル 14 塗膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B32B 27/00 101 B32B 27/00 101 B60J 1/00 B60J 1/00 H // B29K 33:00 B29K 33:00 67:00 67:00 69:00 69:00 B29L 31:10 B29L 31:10 31:30 31:30 (72)発明者 大森 智 山口県岩国市日の出町2番1号 帝人株式 会社岩国研究センター内 (72)発明者 峯松 宏昌 山口県岩国市日の出町2番1号 帝人株式 会社岩国研究センター内 Fターム(参考) 4F100 AH06A AK01B AK01C AK25B AK25E AK25G AK43C AK45 AK45C AK52A AK52E AK52G AL01E AL01G AR00E AT00D BA02 BA03 BA07 BA10A BA10C BA10D BA10E CB00 CC00A EH112 EH36B EH36C EH362 EH46 EH462 GB07 GB32 JA20A JA20D JK04C JK06 JK06A JK09 JK09A JK10C JK12 JK12A JK12B JK15 JL11E JN01 YY00 YY00A YY00B YY00C YY00D 4F206 AA21 AA24 AA28 AD20 AG03 AH17 AH47 JA07 JB12 JB21 JN12 JQ81

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 厚みが20〜500μmの支持基板
    (A)に、支持基板(A)との層間密着力が200N/
    m以下で、厚みが1〜20μmであって、荷重4.9
    N、1000サイクルのテーバー摩耗試験におけるヘー
    ズの増加が10%以下、鉛筆硬度が4H以上であるハー
    ドコート層(B)と、厚みが0.5〜20μmであっ
    て、ハードコート層(B)との層間密着力および下記高
    分子樹脂層(E)との層間密着力がともに200N/m
    以上である接着層(C)とがこの順に積層されてなる積
    層体(D)を作成した後に、この積層体(D)の接着層
    (C)の自由表面に、厚みが50μm以上で、鉛筆硬度
    が3H以上である高分子樹脂層(E)を積層して積層体
    (G)を作成し、もしくは、当該高分子樹脂層(E)
    と、厚みが高分子樹脂層(E)の厚み以上であって、ア
    イゾット衝撃強さが50J/m以上および/または荷重
    撓み温度が115℃以上の高分子樹脂層(F)とをこの
    順に積層して積層体(H)を作成し、その後、支持基板
    (A)とハードコート層(B)との界面で剥離して、積
    層体(G)もしくは積層体(H)から支持基板(A)を
    分離し、高分子樹脂層(E)と接着層(C)とハードコ
    ート層(B)とがこの順に積層されてなる高分子樹脂複
    合成形体、もしくは、高分子樹脂層(F)と高分子樹脂
    層(E)と接着層(C)とハードコート層(B)とがこ
    の順に積層されてなる高分子樹脂複合成形体、を得るこ
    とを特徴とする高分子樹脂複合成形体の製造方法。
  2. 【請求項2】 高分子樹脂層(E)、もしくは高分子樹
    脂層(F)、もしくは高分子樹脂層(E)と高分子樹脂
    層(F)とを、単独の熱溶融物としてまたは積層状態の
    熱溶融物として、積層することにより、積層体(G)も
    しくは積層体(H)を得ることを特徴とする請求項1に
    記載の高分子樹脂複合成形体の製造方法。
  3. 【請求項3】 積層体(D)もしくは積層体(G)を、
    その二面のうち支持基板(A)側の自由表面が金型の内
    壁面に接する向きで金型に配置した後に、高分子樹脂層
    (E)、もしくは高分子樹脂層(F)、もしくは高分子
    樹脂層(E)と高分子樹脂層(F)とを射出成形法によ
    り積層することを特徴とする請求項2に記載の高分子樹
    脂複合成形体の製造方法。
  4. 【請求項4】 ハードコート層(B)が、珪素一原子に
    3個のメトキシ基および/またはエトキシ基が結合した
    3官能珪素アルコキシドの加水分解縮合物を50重量%
    以上含有する層であって、接着層(C)が、下記一般式
    (1)に示す成分(c1)と下記一般式(2)に示す成
    分(c2)とが、モル比(c1/c2)で2〜10の範
    囲で共重合されてなる組成物から主としてなることを特
    徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子樹脂複
    合成形体の製造方法。 CH2=CCH3COOR1 ・・・(1) (R1は、水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基
    のいずれかを示す。) CH2=CCp2p+1COOCq2qSi(CH3r(OR2s ・・・(2) (R2は、メチル基および/またはエチル基、p、rは
    0もしくは1、qは1〜5の整数、sは2もしくは3で
    ある。)
  5. 【請求項5】 一般式(2)で示す成分が、γ−メタク
    リロキシプロピルトリメトキシシランであることを特徴
    とする請求項4に記載の高分子樹脂複合成形体の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 高分子樹脂層(E)が、主としてポリメ
    チルメタクリレートからなることを特徴とする請求項1
    〜5のいずれかに記載の高分子樹脂複合成形体の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 高分子樹脂層(F)が、主としてポリカ
    ーボネートおよび/またはポリアリレートからなる層で
    ある請求項1〜6に記載の高分子樹脂複合成形体の製造
    方法。
  8. 【請求項8】 高分子樹脂複合成形体のヘーズ値が5%
    以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに
    記載されている製造方法で製造される高分子樹脂複合成
    形体。
  9. 【請求項9】 成形体が自動車窓もしくは建材用窓であ
    ることを特徴とする請求項8に記載の成形体。
  10. 【請求項10】 厚みが20〜500μmの支持基板
    (A)に、珪素一原子に3個のメトキシ基および/また
    はエトキシ基が結合した3官能珪素アルコキシドの加水
    分解縮合物を50重量%以上含有し、厚みが1〜20μ
    mであって、荷重4.9N、1000サイクルのテーバ
    ー摩耗試験におけるヘーズの増加が10%以下、鉛筆硬
    度が4H以上であるハードコート層(B)と、厚みが
    0.5〜20μmであって、下記一般式(1)に示す成
    分(c1)と下記一般式(2)に示す成分(c2)と
    が、モル比(c1/c2)で2〜10の範囲で共重合さ
    れてなる組成物から主としてなる接着層(C)とがこの
    順に積層されてなる積層体。 CH2=CCH3COOR1 ・・・(1) (R1は、水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基
    のいずれかを示す。) CH2=CCp2p+1COOCq2qSi(CH3r(OR2s ・・・(2) (R2は、メチル基および/またはエチル基、p、rは
    0もしくは1、qは1〜5の整数、sは2もしくは3で
    ある。)
  11. 【請求項11】 一般式(2)で示す成分が、γ−メタ
    クリロキシプロピルトリメトキシシランである請求項1
    0に記載の積層体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7229686B2 (en) 2002-09-25 2007-06-12 Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. Antireflection film and making method
JP2018154036A (ja) * 2017-03-17 2018-10-04 コニカミノルタ株式会社 ディスプレイ装置用加飾フィルム
WO2022049861A1 (ja) * 2020-09-07 2022-03-10 昭和電工マテリアルズ株式会社 積層構造体及び対象物検知構造

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