JP2001288627A - オープンエンド・ロータスパン・ハイブリッドヤーンおよびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】 異種類の繊維集合体を芯糸と鞘糸、あるいは
ラッピング糸とするコア糸またはラップド糸を製造でき
る、オープンエンド・ロータスパン・ハイブリッドヤー
ンの製造装置、製造方法およびオープンエンド・ロータ
スパン・ハイブリッドヤーンを提供する。 【解決手段】 製造方法は、異種類の繊維集合体、特に
ここでは綿繊維からなるスライバ４およびポリエステル
連続繊維からなる供給糸５をそれぞれ所定の繊維含有割
合で、機台中の異なる供給部に入れて、供給糸は可変モ
ータによって制御された一対のフィードローラ６、なら
びにテンサ７等の張力付与手段を介した後、張力測定器
８と中空軸部を通りロータ内部へ導かれて、綿繊維がポ
リエステル糸を包み込むように加撚し、巻取ローラ９で
巻取ることによって、異種類の繊維集合体から１回の精
紡工程で、綿・ポリエステルのオープンエンド・ロータ
スパン・ハイブリットヤーン１０を得ることが出来る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、複合糸やハイブリッド
ヤーンの製造法に関し、特にコア糸またはラップド糸を
製造するのに用いられる、オープンエンド・ロータスパ
ン・ハイブリッドヤーンの製造装置、製造方法およびハ
イブリッドヤーンに関する。

【０００２】

【従来の技術】ロータ式オープンエンド精紡機における
従来の技術としては、カバーヤーンや複合糸、スラブヤ
ーンの製造方法および装置（たとえば特開平２−８０６
２４、特開昭５８−８１３４、特開昭５５−２６２７
３、特開昭５５−１３８３）、二層構造糸（特開昭５８
−６００３６）、多層構造紡績糸（特開昭５６−６３０
３８）などが知られている。しかし、これらの製造方法
においては、幾何学的に理想的な糸構造から得られる各
層に必要な径路長を考慮した積極的かつ正確な糸張力の
制御を行おうとせずに、芯糸や被覆繊維を供給している
ため、複合糸中における各層の糸の位置が不安定とな
り、均一に被覆することが困難となっている。

【０００３】そのために、従来の複合糸や二層構造糸の
製造法では、ロータ部への短繊維束供給口を複数に改造
し、ロータ開口部方向から芯糸を供給することによっ
て、芯糸に短繊維を十分に絡みつかせた複合糸を製造す
るものである。したがって、これらの糸は太く、細番手
の糸製造には不向きであり、オープンエンド・ロータス
パンヤーン本来の特性を損なっており、その特徴は複雑
な断面構造にある。

【０００４】また、カバーヤーンの製造法では、中空ロ
ータ軸に単一あるいは複数の供給管を挿入・固定し、ロ
ータ内に突出した供給管の長さを調節することによっ
て、種々のカバーヤーンを製造するものである。しか
し、供給管突出長の調節が、供給糸と短繊維束との相互
関係を変化できるとは考えられず、コア糸の製造法とし
ては、疑問がかった方法である。さらに、これらの製造
装置および方法においては、紡績中、すなわちロータの
回転に伴って、供給糸には多数の仮撚りが挿入されるた
めに、供給糸であるフィラメント糸本来の糸強力は低下
し、糸の実際強力と単純な複合則から予想される理論強
力との偏差値が大きくなる欠点をもっている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】これに対して、本発明
のオープンエンド・ロータスパン・ハイブリッドヤーン
は、オープンエンド・ロータスパンヤーンの特性を損な
うことなく、しかも供給糸本来の強力を十分に発揮で
き、相互に補完しあって独特の性能をもつ多様な新規ハ
イブリッドヤーンである。

【０００６】また、異種類の繊維集合体を芯糸と鞘糸、
あるいはラッピング糸とするコア糸やラップド糸を簡単
にかつ安定的に製造できる、オープンエンド・ロータス
パン・ハイブリッドヤーンの製造方法およびオープンエ
ンド・ロータスパン・ハイブリッドヤーンを提供するこ
とを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の課題は、ロータ式
オープンエンド精紡機ロータ部を中空軸として、その中
へ異種の繊維集合体、あるいは糸用に単一あるいは複数
の供給管を挿入し、この供給管を複数のボール・ベアリ
ングなどの回転支持装置を用いて、ロータ軸内に固定し
ており、しかも供給管の先端部はロータ内底面よりも突
出しておらず、その後端部はロータ中空軸よりも長くす
ることによって、ロータ回転に伴う供給管の回転、すな
わち芯糸への仮撚り挿入を阻止し、芯糸となる糸本来の
性能を損なわず、また供給管の回転・停止や回転の方向
と回転数等を制御することによって、細番手のオープン
エンド・ロータスパン・ハイブリッドヤーンであるコア
糸、あるいはラップド糸が製造できるようになった。

【０００７】また、オープンエンド・ロータスパン・ハ
イブリッドヤーンの製造時において、芯糸と鞘糸、ある
いはラッピング糸との間に張力差を発生させるために、
芯糸となる供給糸に所定の張力を付与するテンサや可変
フィードローラ等の張力付与手段を調節することによ
り、芯糸となる糸に所定の張力を付与して、芯糸と鞘
糸、あるいはラッピング糸を撚り合わせ、巻き取ること
によって、オープンエンド・ロータスパン・ハイブリッ
ドヤーンであるコア糸、ならびにラップド糸が製造でき
るようになった。

【０００８】

【作用】本発明は、短繊維束、あるいは連続繊維束を芯
糸に、オープンエンド短繊維束を鞘糸、あるいはラッピ
ング糸として撚り合わせ被覆し、しかも芯糸への仮撚り
挿入を阻止すること、ならびに供給管の回転・停止や回
転の方向と回転数等を制御することを特徴とするオープ
ンエンド・ロータスパン・ハイブリッドヤーンの製造装
置、製造方法およびオープンエンド・ロータスパン・ハ
イブリッドヤーン、すなわちコア糸またはラップド糸か
らなるものであり、それぞれの繊維集合体の欠点を補い
かつ長所を生かした特性、ならびに独特の外観と風合い
を有する多様なオープンエンド・ロータスパン・ハイブ
リッドヤーンが得られる。

【０００９】

【実施例】以下、本発明のオープンエンド・ロータスパ
ン・ハイブリッドヤーンの製造装置、製造方法およびオ
ープンエンド・ロータスパン・ハイブリッドヤーンの具
体的な構成を実施例に基づいて説明すると共に、その特
性を説明する。

【００１０】実施例１ 第１図に示すこの実施例の製造装置は、中空ロータ軸部
をもち、ロータ内部へ異種の繊維集合体を供給するため
に、供給管としての細いステンレス製パイプ１には、２
個の小さな高性能ボール・ベアリング２を取り付けて、
中空軸部３に挿入・固定した状態であり、供給管の先端
部はロータ内底面よりも突出しておらず、またその後端
部はロータ中空軸よりも長くした、静止供給管の場合で
ある。

【００１１】実施例２ 第２図に示すこの実施例のオープンエンド・ロータスパ
ン・ハイブリッドヤーン製造方法は、異種類の繊維集合
体、特にここでは綿繊維からなるスライバ４およびポリ
エステル連続繊維からなる供給糸５をそれぞれ所定の繊
維含有割合で、機台中の異なる供給部に入れて、供給糸
は可変モータによって制御された一対のフィードローラ
６、ならびにテンサ７等の張力付与手段を介した後、張
力測定器８と中空軸部を通りロータ内部へ導かれて、綿
繊維がポリエステル糸を包み込むように加撚し、巻取ロ
ーラ９で巻取ることによって、異種類の繊維集合体から
１回の精紡工程で、綿・ポリエステルのオープンエンド
・ロータスパン・ハイブリッドヤーン１０を得ることが
できた。

【００１２】実施例３ 前記実施例１および２に示した製造方法において、綿繊
維およびポリエステル糸、それぞれの繊維含有割合、あ
るいは供給糸付与張力の調整によって、綿・ポリエステ
ルで構成されたそれぞれ異なるオープンエンド・ロータ
スパン・ハイブリッドヤーン、すなわちコア糸あるいは
カバード糸が製造できた。綿繊維およびポリエステル
糸、それぞれの繊維含有割合、あるいは供給糸付与張力
を調整した場合に、製造できるオープンエンド・ロータ
スパン・ハイブリッドヤーンの具体的な種類を実施例４
〜１１に基づいて説明する。

【００１３】実施例４ 綿繊維束およびポリエステル糸を、それぞれ通常状態で
紡績した場合には、繊維含有割合、あるいは供給糸付与
張力の調整によらず、綿繊維束およびポリエステル糸を
撚り合わせた諸撚糸状のハイブリッドヤーン、あるいは
綿繊維束を芯糸としてポリエステル糸で被覆したことを
特徴とするハイブリッドヤーン、すなわちカバード糸が
製造できた。通常の紡績状態では、綿繊維束の紡糸張力
がポリエステル糸の供給張力よりも大きくなるために、
供給糸に比べて、綿繊維束が芯糸となりやすい。

【００１４】実施例５ また、ポリエステル糸を供給糸付与張力で調整した場合
には、ポリエステル糸を芯糸として綿繊維で被覆したこ
とを特徴とするハイブリッドヤーン、すなわちコア糸あ
るいはラップド糸が製造できた。ここで、ポリエステル
糸のフィードローラ速度を、ハイブリッドヤーンの巻取
速度以下の低速にて、供給した場合には、前記ハイブリ
ッドヤーン、すなわちコア糸が製造できるが、綿繊維束
の紡糸張力以上に供給糸張力を調整した場合に、最も良
好な被覆状態をもつコア糸が得られた。しかし、綿繊維
束の紡糸張力は紡出番手によって変化するので、前記供
給糸張力の範囲以外では、前記ハイブリッドヤーン、す
なわちカバード糸が製造できた。

【００１５】実施例６ ついで、ポリエステル糸のフィードローラ速度を、ハイ
ブリッドヤーンの巻取速度とほぼ等しい速度、あるいは
綿短繊維束の紡糸張力とほぼ等しい供給糸張力にて、供
給した場合には、ポリエステル糸と綿繊維束が撚り合わ
されたことを特徴とする前記ハイブリッドヤーン、すな
わちハーフ・アンド・ハーフ糸が製造できた。

【００１６】実施例７ さらに、ポリエステル糸のフィードローラ速度を、ハイ
ブリッドヤーンの巻取速度以上の高速にて、供給した場
合には、綿繊維束を芯糸としてポリエステル糸で被覆し
たことを特徴とする前記ハイブリッドヤーン、すなわち
カバード糸が製造できるが、綿繊維束の紡糸張力以下に
供給糸張力を調整した場合に、最も良好な被覆状態をも
つコア糸が得られた。しかし、フィードローラ速度を必
要以上に増加させすぎるとき、供給糸はオーバフィード
状態となり、スナールを形成するために、供給管内の詰
まりや糸切れを多発する結果となるが、良好なオーバフ
ィード状態を確保できれば、意匠糸であるスナール糸様
のハイブリッドヤーンが製造できる。

【００１７】実施例８ 第３図に示す３種類のハイブリッドヤーン側面、および
横断面顕微鏡写真の一例において、前記実施例３〜７の
ハイブリッドヤーンは、タイプＡがコア糸、タイプＢが
ハーフ・アンド・ハーフ糸、ならびにタイプＣがカバー
ド糸を、それぞれに示すものである。それぞれの糸およ
びその写真より、供給糸、ここではポリエステル糸に
は、仮撚り挿入のないことが確認できた。

【００１８】実施例９ 一方、前記実施例２に示した製造方法において、１本の
供給管内部を複数に分割、あるいは複数本の供給管を導
入し、複数の繊維集合体をロータ内部へ送り込むことに
よって、あるいは供給管の回転・停止や回転の方向と回
転数を制御することによって、単一工程でありながら
も、複数の層状に撚り合わせた複雑な構造をもつ多層構
造ハイブリッドヤーンが製造できた。

【００１９】実施例１０ また、前記実施例２に示した製造方法において、単一の
供給管に、供給糸として前記実施例３〜７のハイブリッ
ドヤーンや複合糸を導入することによって、前記実施例
９と同様な糸構造をもつさまざまなハイブリッドヤーン
が製造できた。

【００２０】実施例１１ さらに、前記実施例２に示した製造方法において、供給
糸の速度や張力を所定の制御装置を用いて、周期的、あ
るいはランダムに変動させることにより、ハイブリッド
ヤーンの外観と構造をさまざまに変化させることも簡便
にでき、個性豊かな多様なハイブリッドヤーンが製造で
きた。

【００２１】本発明の製造方法およびハイブリッドヤー
ンは、異種類の繊維集合体を使用するものであり、すべ
ての繊維に対して、応用することが可能であり、その組
み合わせによっては、独特の外観と構造、風合いをもつ
広範囲な新規ハイブリッドヤーンが安定的に製造でき
る。また、各種の繊維集合体を芯糸や鞘糸として、化学
繊維や金属繊維、あるいは天然繊維等の多種な糸を目的
に応じて組み合せた新規ハイブリッドヤーン、たとえば
金属繊維を芯糸として綿繊維と一緒に撚り合わせた電磁
波防止用ハイブリッドヤーンや炭素繊維と組み合せた特
殊なハイブリッドヤーンなども製造できる。さらに、従
来の技術、たとえばロータ式オープンエンド糸等の製造
方法において、本法に示した所定の張力を付与するため
の張力付与手段（変速制御装置付フィードローラやテン
サ等）と供給管を付設することにより、ハイブリッドヤ
ーン中での各繊維束からなる糸径路を正確かつ簡単に調
整できるために、より被覆状態の良好な複合糸等を安定
的に得ることができる。

【００２２】

【効果】本発明によれば、オープンエンド・ロータスパ
ン・ハイブリッドヤーン、すなわちコア糸あるいはラッ
プド糸は、ともに異種類の繊維集合体の組み合わせであ
るので、それぞれの繊維の特性や光沢、ならびに風合い
を損なうことなく、また供給糸本来の強力を十分に発揮
でき、相互に補完しあって独特の外観と風合いをもつ新
規ハイブリッドヤーンであるばかりではなく、その性能
が向上した糸を、安定的にかつ安価に製造できる。

【００２３】

【図面の簡単な説明】

【第１図】および

【第２図】は、それぞれ本発明の一実施例を示す図解図
である。図において、１は回転制御機構を備えた供給
管、２は２個のボール・ベアリング、３はロータ中空軸
部、４は原料繊維集合体特にここでは綿繊維スライバ、
５は原料繊維集合体特にここではポリエステルフィラメ
ント糸、６はフィードローラ、７はテンサ、８は張力測
定器、９は巻取ローラ、１０はハイブリッドヤーン特に
ここでは綿・ポリエステルのオープンエンド・ロータス
パン・ハイブリッドヤーンを示す。

【第３図】は本発明のオープンエンド・ロータスパン・
ハイブリッドヤーン３種類、すなわちタイプＡはコア
糸、タイプＢはハーフ・アンド・ハーフ糸、タイプＣは
カバード糸の側面および横断面写真の一例である。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 請求項３に掲げる製造装置、および請
   求項２に掲げる製造方法を用いることにより、異種の繊
   維集合体、あるいは糸を芯糸および鞘糸として、包み込
   むように加撚したもので、その外観は１００％オープン
   エンド・ロータスパンヤーンに酷似しているが、仮撚り
   挿入のない芯糸を有し、その芯糸性能を十分に発揮でき
   うるオープンエンド・ロータスパン・ハイブリッドヤー
   ン。
2. 【請求項２】 請求項３に掲げる製造装置を用いるロ
   ータ式オープンエンド精紡機において、異種の繊維集合
   体、あるいは糸を組合わせ、しかも供給糸への仮撚り挿
   入を阻止すること、ならびに回転制御機構付供給管を備
   えることを特徴とするオープンエンド・ロータスパン・
   ハイブリッドヤーンの製造方法。
3. 【請求項３】 ロータ式オープンエンド精紡機におい
   て、中空ロータ軸をもち、その中へ異種の繊維集合体、
   あるいは糸用として単一または複数の供給管を挿入し、
   またこの供給管を複数のボール・ベアリングなどの回転
   支持装置を用いて、ロータ軸内に固定しており、供給管
   の先端部はロータ内底面よりも突出しておらず、その後
   端部はロータ中空軸よりも長くすること、ならびに供給
   管の回転・停止や回転の方向と回転数等を制御できるこ
   とを特徴とするオープンエンド・ロータスパン・ハイブ
   リッドヤーンの製造装置。