JP2001276049A - カソードスキャン型x線発生器及びx線ctスキャナ - Google Patents

カソードスキャン型x線発生器及びx線ctスキャナ

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JP2001276049A
JP2001276049A JP2000100196A JP2000100196A JP2001276049A JP 2001276049 A JP2001276049 A JP 2001276049A JP 2000100196 A JP2000100196 A JP 2000100196A JP 2000100196 A JP2000100196 A JP 2000100196A JP 2001276049 A JP2001276049 A JP 2001276049A
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Katsuhiro Ono
勝弘 小野
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】X線CTスキャナのスキャン時間を大幅に短縮
した超高速CTスキャナ、及びこれを実現する為にカソ
ードスキャン型X線発生器を提供する。 【解決手段】ドーナツ型の真空容器VV内に、陰極側回
転体組立ARと、電子銃組立EGと、電子放出用陰極
と、環状の陰極給電機構SL1とを有し、上記陰極に給
電しながら陰極を被検体の周りで周回させ、環状のX線
ターゲットTGの表面に、加速電子ビームを入射して高
速度で周回するX線を発生させることができる超高速C
Tスキャナ、及びこれを実現する為のカソードスキャン
型X線発生器であって、陰極側回転体組立は液体金属潤
滑剤で潤滑した動圧滑り軸受から成る軸受機構CBGで
回転自在に支承されている。動圧滑り軸受の開口部に方
向性を持った液体金属潤滑剤の通路を持つ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、小型でありなが
ら、高速度で周回するX線焦点からX線を放射して超高
速スキャンができるX線CTスキャナ用のカソードスキ
ャン型X線発生器、及びこれを使った超高速スキャンが
できるX線CTスキャナに関する。X線焦点を周回させ
る為の回転部分を真空容器内の小型の部品に限定するこ
とにより、大気中における機械的な回転機構を持たずに
X線焦点を披検体の周囲に高速度で安定して周回させて
被検体を瞬時に撮影して3次元の画像が得られる小型の
X線CTスキャナを提供する。液体金属を潤滑剤とする
動圧滑り軸受を使って真空容器内で電子銃組立を周回さ
せると共に、真空容器内で周回している電子銃組立や他
の部品に真空容器の外から通電している。
【0002】
【従来の技術】従来のX線CTスキャナについて、概略
の断面を表している図1を参照して説明する。従来のX
線CTスキャナは、固定架台1001と、軸受1003
を介して回転する回転架台1002とを有している。回
転架台1002は制御器1008を用いて制御された回
転駆動機構1009によって空気中において回転させら
れる。X線を発生する為のX線管1004や、これに高
電圧を供給する為の高電圧電源(図示せず)や、X線を
受け取る為の検出器1006や、その他の電子回路10
07等をこの回転架台1002に取り付けた構造になっ
ている。回転架台1002に取り付けられた電子回路の
信号は図示しないスリップリングで固定架台1001に
伝達される。この為に回転架台1002に取り付けられ
た部品の質量の和が大きくなって、X線CTスキャナの
スキャン速度を増そうとすると大きな遠心力が働き、回
転架台1002に取り付けられた部品や回転架台100
2自体が過大な応力に耐えられないのでスキャン速度を
高めることができない欠点を持っている。
【0003】従来構造のX線CTスキャナに使われるX
線管1004は、直径が10cm程度の円板状のX線タ
ーゲットをシリンダー状の真空容器の中で3000rp
m程度の高速度で回転させ、これに電子銃組立の陰極か
ら放射された電子を衝突させてX線1005を一方向に
放出するものであり、全体が円柱状に構成されている。
多量のX線を発生させる必要があるX線CTスキャナ用
のX線管では冷却器が必要であり、両者の質量の和は1
00Kg程度に大きくなり、体積も大きくなり、これを
取り付けて空気中で回転させる為の回転架台1002は
大型になり、X線CTスキャナ全体が大きくなって取り
扱いが不便であるだけでなく、設置スペースも大きくな
り、運転費用も多額であった。更に、近年になってX線
CTスキャナの用途が広がるにしたがって血液や造影剤
の瞬時的な観測が求められてきた。これに応える為に
は、X線管1004を高速度で被検体の周りで周回させ
る必要が生じている。これまでの最高の周回速度は2r
psであり、これが限度と考えられている。一方では、
X線量を増して画質を高めて診断能を高めたいとの要求
があり、従来のX線管1004の寸法と質量がますます
増大する必要がある。この相反する要求を同時に満たす
ことは従来の構造のX線CTスキャナでは不可能であっ
た。
【0004】一方で、スキャン速度を増す為に電子スキ
ャン方式のX線CTスキャナが過去に開発された。これ
は、横倒しに置いた魔法瓶の形をした真空容器の底の位
置に固定した電子銃組立から電子を取り出し、電子を真
空容器内でおよそ100cm走行させながら電磁的に電
子の位置を制御して被検体の周りを周回させた後に、こ
の電子を円弧状のX線ターゲットに入射させて半周回す
るX線を取り出すようになっている。この構造では、ス
キャン時間が0.1秒程度の高速スキャンができるが、
十分なX線量が得られないこと等に起因して画質が劣悪
であることや、X線の焦点が大き過ぎることや、安定な
動作を維持し難いことや、装置全体が大きくて取り扱い
難いことや、高価であること等の欠点を持ち、特殊な用
途に使用されているにすぎない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】解決しようとする問題
点は、X線CTスキャナのスキャン時間を大幅に短縮し
て動きが速い被検体の撮影においてモーションアーチフ
ァクトを無くするとともに十分なレベルのX線量を確保
してフォトンノイズが少ない良質な画像を得ることがで
き、装置全体が小型であって取り扱い易いX線CTスキ
ャナを提供することである。特に、これを実現する為に
真空中で信頼性よく使える軸受機構、及び真空中で回転
している部品に給電できる給電機構として、動作時に液
体である液体金属を潤滑剤として使用した環状の動圧滑
り軸受を開発し、この軸受の直径が大きく、軸受の開口
部の高低落差が大きいにもかかわらず、液体金属潤滑剤
が軸受機構の外に漏出しないだけでなく、仮に軸受機構
の中で何らかの突発性の不都合が生じて液体金属潤滑剤
が軸受の開口からはみ出した場合でも、自動的に軸受の
中に戻される機構を設けて軸受機構の信頼性を高めたカ
ソードスキャン型X線発生器、及びこれを使ったX線C
Tスキャナを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明では、X線CTス
キャナの全ての回転部分をドーナツ状の真空容器の中に
取り付けて最小限度まで小さくし、空気中での機械的な
回転部分をなくすることにより超高速スキャンができる
X線CTスキャナを実現している。真空容器はドーナツ
状に作られており、真空容器の中心軸近傍の大気中に在
る寝台上に被検体が置かれている。真空容器の中で周回
する電子銃組立の陰極から電子が放出され、陰極の周回
軌道に対向して真空容器内に取り付けてある環状のX線
ターゲットに、加速された電子が衝突してX線を発生さ
せる。発生したX線は真空容器の小径側の壁に設けられ
たX線放出窓を通って大気中に在る被検体に照射され
る。被検体を通過したX線は前記の真空容器と同軸状に
大気中において配設された環状のX線検出器で検出さ
れ、コンピュータで断層像に再構成されて表示装置に表
示される。真空容器内のX線焦点を周回させる為の回転
部分は軽量な電子銃組立などに限定されており、その体
積が小さく、全体としてほぼ対称な形状であるので回転
周期が0.1秒以下の高速回転をしても回転体にかかる
応力が十分に小さくでき、安定して高速回転を続けるこ
とができる。また、同一の陰極側回転体組立に3個程度
の電子銃組立が取り付けられるのでスキャン時間が0.
03秒程度の超高速スキャンが行える。
【0007】ドーナツ型の真空容器の内部で電子銃部分
を周回させる方式のX線CTスキャナは過去に提案され
ているがこれまでに実現していない。その理由の一つは
真空中において安定した回転を続ける手段と、回転体の
電位を安定して一定値に設定する確かな手段が見出され
なかった為である。本発明では真空中において信頼性よ
く使える軸受機構として、動作時に液体である液体金属
を潤滑剤として使用した環状の動圧滑り軸受を採用し、
この軸受の直径が大きくて軸受の開口部の高低落差が大
きいにもかかわらず、液体金属潤滑剤が軸受機構の外に
漏出しない手段を提供している。また、液体金属潤滑剤
を介して回転体の電位を一定値に設定している。
【0008】軸受機構の回転部分を構成する軸受回転体
が回転している時には、軸受の表面に設けられた軸受溝
の吸引作用によって液体金属潤滑剤が軸受の内部に閉じ
込められる。一般的に、軸受回転体が回転を停止した時
には、軸受の端部に在る開口部において生じる液体金属
潤滑剤の表面張力によって液体金属潤滑剤の漏出が防止
される。しかるに、本発明のX線CTスキャナでは、軸
受回転体の回転中心が実質的に水平方向にあり、軸受の
直径がおよそ100cmと大きい為に軸受の開口部にお
けるギャップの全周囲での高低落差が大きく、軸受の開
口部の鉛直下方に位置する部分に在る液体金属潤滑剤は
重力加速度によって大きな静圧力を受ける。前記の軸受
の開口部において、前記の液体金属に生じる表面張力の
圧力効果が前記の静圧力に打ち勝つように、軸受の開口
部におけるギャップのサイズを極めて小さくしてある。
これを実現する手段のひとつとして、軸受の開口部と隣
接する軸受をスラスト軸受に限定し、このスラスト軸受
の軸受ギャップのサイズを小さく保った。この影響で鉛
直下方における表面張力の圧力効果が液体金属潤滑剤の
静圧力よりも大きくなり、液体金属潤滑剤が外部に漏出
するのが防止され、安定な動作が保証される。
【0009】しかしながら、軸受機構の内部において、
例えば内臓ガスの噴出等の突発事故が発生した場合で
も、液体金属潤滑剤が軸受機構の外部の真空空間に漏出
しないようにする必要がある。本発明では、軸受の開口
部から真空空間に向かう面と軸受面とが成す角度を大き
くし、液体金属潤滑剤の内部の圧力が増えて液体金属潤
滑剤の表面が外部に向かって膨らんだ場合でも、この部
分が周囲の面に接触しないようにしてあるので、圧力が
正常に戻れば液体金属潤滑剤は軸受内に戻ることにな
る。また、軸受の開口部には軸受機構の内部に通ずる方
向性通路が設けてあり、万一軸受の開口部から真空空間
の側にはみ出した液体金属潤滑剤は、この方向性通路を
通って軸受機構の内部に自動的に戻される。この方向性
通路では液体金属潤滑剤が逆流できないので、この方向
性通路を通って真空空間に液体金属潤滑剤が漏出するこ
とは無い。従って、本発明のカソードスキャン型X線発
生器は液体金属潤滑剤が軸受機構の外部に漏出すること
なく、長期間にわたって安定な動作を続けることができ
る。
【0010】本発明を採用すれば、軸受面は真空容器に
熱的に連通しており、真空容器は外部から強制冷却され
ているので軸受での発熱があるにもかかわらず、軸受面
の温度が上がらず、熱膨張が少なく、長時間にわたって
安定な動作を続けることができる。さらに、電子銃組立
やX線ターゲットなどのように発熱する部品も軸受ギャ
ップ内に在る液体金属潤滑剤を介して強制冷却され、熱
膨張等が抑制される。
【0011】
【発明の実施の形態】カソードスキャン型X線発生器は
ドーナツ型の真空容器で包まれており、この真空容器は
中心軸がほぼ水平になるように設置してあり、その中心
軸の近くの大気中に被検体(人体)が置かれており、真
空容器は被検体を取り囲むように配置されている。真空
容器は回転せずに固定されており、被検体との角度及び
水平方向の位置は変えることができるようになってい
る。この真空容器の内部でX線焦点が被検体の周りを周
回するように、X線焦点が移動しながら被検体に向って
X線が発生される。この周回するX線を使用することに
より大気中に回転機構を持たないX線CTスキャナを実
現している。従来の構造のX線CTスキャナでは実現が
不可能であった超高速スキャンが行えるとともに大出力
が得られるX線CTスキャナ用のカソードスキャン型X
線発生器、及びこれを使った超高速X線CTスキャナを
簡単な構造で安価にしかも信頼性良く実現した。
【0012】
【実施例】以下に、図面を参照して、本発明の一実施例
によるカソードスキャン型X線発生器、及びこれを使っ
たX線CTスキャナの実施例を説明する。図2は本発明
のカソードスキャン型X線発生器、及びこれを使ったX
線CTスキャナの全体構造体の概略の断面図であり、図
3は原理図であり、図4は本発明に係わるカソードスキ
ャン型X線発生器の、ある瞬間において鉛直上方に位置
する一部分の断面を拡大した図であり、図5は本発明の
カソードスキャン型X線発生器の主要部である軸受機構
の部分を拡大した断面図であり、図6は図5の下方の一
部を拡大した断面図である。
【0013】図2に示すように、ドーナツ型の真空容器
VVは中心軸がほぼ水平になるように設置してあり、図
示しない真空ポンプによって排気口VCから高真空状態
にいつも排気されている。図2又は図4に示すように、
この真空容器VVの内部の真空空間に円筒状の陰極側回
転体組立CRがあり、陰極側回転体組立CRは常温で液
体である液体金属を潤滑剤とした動圧滑り軸受から成る
軸受機構CBGによって真空中で回転自在に支承されて
おり、これらの中心軸はCC’に一致している。陰極側
回転体組立CRには電子銃組立EGが周方向に分離して
3個取り付けてある。図2又は図4又は図5に示すよう
に、陰極側回転体組立CRには銅でできた円筒状のロー
タRT2が同軸状に取り付けられており、これと同軸状
に磁性体から成る磁路円筒が取り付けられている。ロー
タRT2に対向した状態で真空容器VVの外側において
真空容器壁に沿って円弧状のステータLM2が取り付け
られている。前記のロータRT2は前記の磁路円筒とス
テータLM2で挟まれた状態に配設されている。ロータ
RT2はステータLM2から真空容器の非磁性の材質で
出来た壁を通して電磁誘導作用を受けて回転トルクを与
えられるので陰極側回転体組立CRは回転する。陰極側
回転体組立CRは動圧滑り軸受から成る軸受機構CBG
内の液体金属潤滑剤を通して電気的にも熱的にも真空容
器VVに接続されている。
【0014】図2又は図4に示すように、電子銃組立E
Gの先端部には熱電子2を放出する陰極1が取り付けら
れている。この陰極1の周回軌道に対向した状態で環状
のX線ターゲットTGが取り付けられている。図2又は
図4に示すように、X線ターゲットTGは円筒状の陽極
側回転体組立ARに機械的に結合されている。陽極側回
転体組立ARは常温で液体である液体金属を潤滑剤とし
た動圧滑り軸受から成る軸受機構ABGを介して真空容
器VVの一部に回転自在に取り付けられている。陽極側
回転体組立ARには銅管でできたロータRT1が取り付
けられており、これと同軸状に磁性体から成る磁路円筒
が取り付けられている。ロータRT1に対向した状態で
真空容器VVの外側において真空容器壁に沿って円弧状
のステータLM1が取り付けられている。前記のロータ
RT1は前記の磁路円筒とステータLM1で挟まれた状
態に配設されている。ロータRT1はステータLM1か
ら真空容器の非磁性の材質で出来た壁を通して電磁誘導
作用を受けることによって回転トルクを与えられるの
で、陽極側回転体組立ARは回転する。X線ターゲット
TGの回転中心軸と前記の電子銃組立EGに含まれる陰
極1の周回中心軸CC’とは一致しており、陰極1は常
にX線ターゲットTGの表面と対向した状態で両者は互
いに反対方向に回転する。
【0015】図2又は図4を参照して陰極給電機構SL
1について説明する。図2又は図4に示す実施例では3
個の陰極給電機構SL1が同軸状に取り付けられてお
り、3本の独立した電流通路を形成している。これらの
図では陰極給電機構SL1の内部構造は簡略化して表し
ている。電子銃組立EGの陰極1は、真空容器VV内の
真空空間で電子銃組立EGの周回中心軸CC’と実質的
に同じ中心軸を持つ環状の陰極給電機構SL1を通して
高電圧端子HTに電気的に接続されている。高電圧端子
HTには真空容器VVの外に在る図示しない高電圧電源
からおよそー150KVの負の高電圧と電子銃組立EG
の陰極1を加熱する電力が供給される。それぞれの陰極
給電機構SL1は固定部と回転部とを有し、固定部は絶
縁体220を介して電気絶縁を保ちながら真空容器VV
の一部に機械的に固定されている。陰極給電機構SL1
の回転部と固定部は、液体金属を潤滑剤とする動圧滑り
軸受を構成しており、液体金属潤滑剤を介して両者間で
通電される。陰極給電機構SL1の回転部が電子銃組立
EGに弾力性のある回転トルク伝達機構217で機械的
に連結されており、陰極給電機構SL1は、ある程度の
偏芯及び軸方向の変位を許容した状態で電子銃組立と共
に回転する。
【0016】X線ターゲットTGは陽極側回転体組立A
Rの軸受機構ABG内に在る液体金属潤滑剤を介して電
気的にも熱的にも真空容器VVに接続されている。真空
容器VVは接地電位になっており、冷却水等で強制冷却
されている。従って、X線ターゲットTGは接地電位に
設定されると共に、X線ターゲットTGから発生した多
量の熱は液体金属潤滑剤を介して真空容器VVの壁の部
分を流れる冷却水で効率良く取り去られる。X線ターゲ
ットTGと冷却水との間の熱抵抗は十分に小さいのでX
線ターゲットTGの温度は低く保たれる為に大電力の入
力が許容され、極めて多量のX線を短時間に発生するこ
とができる。
【0017】電子銃組立EGは、図3に示すF1,F
2,F3のように陰極側回転体組立CRの周囲に等配に
3個取り付けられている。ここで、F1,F2,F3は
前記の電子2がX線ターゲットTGに衝突してできるX
線の3つの焦点を示している。X線焦点F1,F2,F
3は同時にX線を発生させながら図3に示すように同時
に同じ方向に周回する。これらのX線焦点の現在位置は
陰極側回転体組立CRに取り付けられた角度検出機構
(図示せず)によって検出される。X線焦点F1,F
2,F3から放射されたX線は、図2又は図4に示すよ
うに、X線ターゲットTGの内側にあるX線分布制限機
構によってファン状に整形され、陰極側回転体組立CR
に取り付けられたファン方向分布整形器WF(図4参
照)を通過してファン方向のX線強度分布を適正化され
た後に真空容器VVのX線放出窓XW(図4参照)を通
過し、外部の環状のスリットSLTを通過した後に、被
検体Mを通過してX線ターゲットTGと同軸状に取り付
けられた2個の環状のX線検出器DF,DBのそれぞれ
の対向面に到達する。
【0018】図3に示すように、X線焦点F1,F2,
F3から出たX線は、それぞれが検出器の対向する部分
D1,D2,D3に在る細分化された検出素子で受信さ
れる。検出器の部分D1,D2,D3は互いに重ならな
いように照射野範囲などが決められている。検出器の部
分D1,D2,D3の合計は環状検出器のほとんど全体
を占めるのでX線検出器DF,DB内のすべての検出素
子が有効に活用され、コスト対性能比が改善される。環
状の検出器DF,DBはそれぞれが中心軸CC’の方向
にも多数の検出素子列に分けられており、それぞれの検
出素子で検出された信号は図示しない電子回路でデジタ
ル信号に変換され、図示しないコンピュータで断層像に
再構成され、図示しない画像表示装置に表示されてマル
チスライスのCT画像を得ることができるようになって
いる。
【0019】ある瞬間に鉛直上方に位置した状態におけ
る電子銃組立周辺の断面の一部を拡大して図4に示して
おり、同じ部分は同じ記号を付している。図4におい
て、軸受機構CBGの内部構造は簡略化して表してい
る。陰極側回転体組立CRは全体的に見ると概略回転対
称構造であり、これに取り付けられた電子銃組立EG等
の部品は小型で軽量であるので10rps程度の高速回
転に十分耐えることができる。この場合、X線焦点が3
個であるのでスキャン時間は0.03秒まで短縮するこ
とができる。X線ターゲットTGは直径が120cmと
大型であり、X線焦点F1,F2,F3と反対方向に回
転しており、前記のように強制冷却されているのでX線
ターゲットTGの表面温度が高くなり難く、大電力の入
力が許容されるので短時間に十分な量のX線を発生する
ことができ、超高速スキャンであるにもかかわらずフォ
トンノイズが少ない良質なCT画像を得ることができ
る。また、マルチスライススキャンを実現しているので
X線の有効利用ができ、中心軸CC’と平行な方向の解
像度を高めることもできるだけでなく、広い範囲の撮影
を短時間で完了して3次元のリアルタイムCT画像を得
ることができる。
【0020】上記の構成のX線CTスキャナを実現する
為に避けて通れないのは、前記の機器構成で実用できる
軸受機構CBG、ABG、及び前記の陰極給電機構SL
1の回転部分を真空中で回転自在に支承する動圧滑り軸
受を実現させることである。従来は、直径が5cm以下
である小型で且つ開口部が片側のみにある動圧滑り軸受
は実用化されている。この場合には、動圧滑り軸受の内
部に挿入された液体金属潤滑剤は軸受の開口部における
表面張力の作用で軸受の開口より内側に留められてい
た。動圧滑り軸受の十分な軸受圧力を得る為には回転部
分と固定部分のギャップのサイズは数十μmに限定され
ていた。例えば軸受の開口部におけるギャップのサイズ
が50μmの場合には液体金属潤滑剤の高低落差がおよ
そ18cmを超えると、重力加速度による液体金属潤滑
剤の静圧力が軸受の開口における表面張力に打ち勝って
液体金属潤滑剤が外部に漏出する。このことは、軸受の
回転部分が回転を停止したときに深刻な問題となる。特
に、本発明の場合のように軸受の開口部の高低落差が1
00cm程度の動圧滑り軸受は従来の技術では実現不可
能であった。
【0021】図5を及び図6を参照して動圧滑り軸受か
ら成る軸受機構CBGの実施例について説明する。図5
は陰極側回転体組立CRと陰極側の軸受機構CBGの断
面の一部を拡大して表しており、図5の上方の部分は実
使用時において、ある瞬間に鉛直上方に位置する部分を
示し、下方の部分は同じ瞬間に鉛直下方に位置する部分
を示している。図5においては中央部を省略して短縮し
て表示している。図6は図5の下方の一部を拡大した図
で、軸受機構CBGの断面を表している。陰極側回転体
組立CRには軸受機構CBGの回転部分である軸受回転
体102が同軸状に取り付けてある。軸受回転体102
には軸受機構CBGの固定部分である軸受固定体101
がギャップを有して嵌め合わせてある。軸受固定体10
1の一部は真空容器VVに機械的及び熱的に結合されて
いる。真空容器VVは図示しない支持架台に取り付けら
れており、設置床に対して適正な姿勢及び水平方向の位
置が保てるようになっている。軸受固定体101と軸受
回転体102とは互いに対向した面を有し、この対向し
た面は第一の軸受ギャップ103、108、第二の軸受
ギャップ104,109、第三の軸受ギャップ106、
111を有している。これらの軸受ギャップを構成する
対向面の少なくとも一方にはヘリンボーン状の軸受溝が
ある。第一、第二、第三の軸受ギャップ内には常温で液
体である液体金属、好適にはガリウム、インジューム、
鈴の合金からなる潤滑剤が充填されており、それぞれの
軸受ギャップは、ラジアル軸受と、これを挟んで互いに
距離をもって対向して取り付けられた第一のスラスト軸
受、及び第二のスラスト軸受のそれぞれの軸受ギャップ
となっている。軸受ギャップ103と108、軸受ギャ
ップ104と109、軸受ギャップ106と111とは
それぞれ同一のものであり、異なる番号は示す位置の違
いを表している。ここで、軸受ギャップとは対向する面
の少なくとも一方に前記の軸受溝を有していることを示
している。
【0022】陰極側回転体組立CRに回転トルクが与え
られた場合には、これらの軸受内に動圧力が生じるので
回転部分を浮上させて回転自在に支承することができ
る。軸受回転体102が回転している場合にはそれぞれ
の軸受ギャップ内の液体金属潤滑剤は、軸受の内部に閉
じ込める作用を受けるので軸受ギャップから外部の真空
空間に漏出することは無い。
【0023】図5及び図6に示すように、前記の軸受固
定体101と軸受回転体102が構成する対向面には第
一の端部ギャップ105、110、第二の端部ギャップ
107、112があり、ラジアル軸受の軸受ギャップ1
03,108と、第一の端部ギャップ105,110、
及び第二の端部ギャップ107,112とを構成する対
向面の中心軸は概略水平方向になった状態でCC’に一
致している。第一のスラスト軸受の軸受ギャップ10
4,109、及び第二のスラスト軸受の軸受ギャップ1
06,111を構成するそれぞれの対向面は平面状にな
っており、第一のスラスト軸受の軸受ギャップ104,
109はラジアル軸受の軸受ギャップ103,108と
第一の端部ギャップ105,110とに、第二のスラス
ト軸受の軸受ギャップ106,111はラジアル軸受の
軸受ギャップ103,108と第二の端部ギャップ10
7,112とに連通している。第一の端部ギャップ10
5,110と第二の端部ギャップ107,112を構成
するそれぞれの対向面の直径はラジアル軸受の軸受ギャ
ップ103,108を構成する対向面の直径より小さく
なっている。第一の端部ギャップ105,110のサイ
ズと第二の端部ギャップ107,112のサイズはラジ
アル軸受の軸受ギャップ103、108のサイズよりも
大きくなっており、第一の端部ギャップ105,110
と第二の端部ギャップ107,112は両方とも真空空
間と連通しており、それらを構成する対向面には前記の
液体金属潤滑剤で濡れない表面(図示せず)を持ってい
る。第一のスラスト軸受の軸受ギャップ104,109
と第一の端部ギャップ105、110との間には環状の
軸受開口121、121’があり、第二のスラスト軸受
の軸受ギャップ106、111と第二の端部ギャップ1
07、112との間には環状の軸受開口120、12
0’がある。これらの軸受開口は前記の液体金属潤滑剤
で濡れない互いに対向する表面とこれで挟まれたギャッ
プを持っている。軸受開口120と120’と軸受開口
121、121’を構成する対向面の直径はラジアル軸
受の軸受ギャップ103,108を構成する対向面の直
径より小さくなっている。端部ギャップ105と11
0、端部ギャップ107と112、軸受開口120、1
20’、軸受開口121と121’とはそれぞれ同一の
ものであり、異なる番号は示す位置の違いを表してい
る。ここで、端部ギャップとは対向する面の少なくとも
一方に前記の濡れない面を有していることを示してい
る。
【0024】前記の軸受回転体102が回転を停止した
場合には、軸受機構CBG内で液体金属潤滑剤が存在す
る領域と真空領域との実質的な境界を成す軸受開口12
0、120’、及び軸受開口121、121’において
液体金属潤滑剤に表面張力が作用し、前記の液体金属潤
滑剤が前記の軸受開口の外部に漏出するのが防止され
る。重力加速度による液体金属潤滑剤内の静圧力は液体
金属潤滑剤の喫水線からの深さに比例する。言い換える
と、鉛直下方に位置するに従って液体金属潤滑剤内の静
圧力がより大きいことになる。一方、前記の表面張力に
よって液体金属潤滑剤を押し込める圧力効果は軸受開口
のギャップのサイズに反比例する。従って、軸受開口1
20、120’、及び軸受開口121、121’のギャ
ップのサイズを十分に小さくしておくと大きな直径を持
つ動圧滑り軸受の内部から液体金属潤滑剤が漏出するの
を防止することができる。これは、軸受開口120、1
20’、及び軸受開口121、121’をそれぞれ前記
の第一のスラスト軸受の端部、及び第二のスラスト軸受
の端部に構成することによって達成できる。その理由
は、本発明に使用される軸受の直径が100cm程度と
大きい為にラジアル軸受のギャップのサイズは十分に小
さな値に保つことは困難であるが、スラスト軸受の軸受
ギャップのサイズは小さな値に保つことは容易であり、
従って、これに隣接して設けられた軸受開口のギャップ
のサイズも小さな値に保つことが容易であることであ
る。スラスト軸受の軸受ギャップのサイズを小さくでき
る理由は、スラスト軸受では対向する軸受間の距離が短
いので熱膨張の影響を受け難いことや、水平な回転中心
軸CC’を持つように取り付けられているので重力加速
度の影響も、遠心力の影響も受け難いことや、軸受面が
平面状に作られているので高精度を維持し易いことや、
軸受ギャップのサイズが小さくても軸受の幅を狭くする
ことにより軸受損失が過大にならないようにできること
等である。
【0025】しかしながら、真空容器VVの内部を真空
状態に排気している過程や長時間の運転の間には前記の
液体金属潤滑剤の中に含まれていたガスや、前記の軸受
面を構成する材質に残留するガスが膨張した場合等のよ
うな不都合が生じた場合には、液体金属潤滑剤が前記の
軸受開口120,120’、又は軸受開口121、12
1’から押し出されることもある。この場合でも、液体
金属潤滑剤を軸受の内部に押し込む作用が生じるように
なっていることが求められる。更に、仮に、液体金属潤
滑剤が非可逆的に軸受開口120,120’、又は軸受
開口121,121’の外部に押し出された場合にで
も、液体金属潤滑剤が軸受機構CBGの外側の真空空間
に飛散するのは防止する必要がある。本発明では、これ
らの要求に応えるために、以下に説明するように液体金
属潤滑剤の方向性通路を取り付けており、軸受開口12
0,120’、及び軸受開口121,121’より外側
に押し出された液体金属潤滑剤は方向性通路によって軸
受の内部に自動的に戻されるようになっている。
【0026】図6を参照して上記について説明する。こ
こでの説明は図示されている鉛直下方の部分のみについ
て述べる。前記の第二のスラスト軸受を構成する軸受ギ
ャップ111、及び前記の第一のスラスト軸受を構成す
る軸受ギャップ109は真空空間とのそれぞれの実質的
な境界をなす環状の軸受開口120、及び軸受開口12
1と隣り合わせになっている。軸受回転体102には、
軸受開口120、及び軸受開口121と端部ギャップ1
12、及び端部ギャップ110とのそれぞれの境界の位
置に環状の窪み132、及び環状の窪み133が設けて
ある。更に、軸受回転体102には、より直径が大きい
環状の窪み、151、152、153が設けてあり、こ
れらの部分では、回転する面と固定の面とのギャップの
サイズは1mm以上と大きくなっており、軸受圧力は実
質的に生じない。環状の窪み152は第二のスラスト軸
受の軸受ギャップ111に隣接しており、環状の窪み1
53は第一のスラスト軸受の軸受ギャップ109に隣接
しており、環状の窪み152と環状の窪み153の中間
に第三の環状の窪み151がある。環状の窪み152と
環状の窪み151の間、及び環状の窪み153と環状の
窪み151の間にはそれぞれラジアル軸受が構成されて
いる。これまでの説明では、これらのラジアル軸受の軸
受ギャップは一括して108で示している。環状の窪み
151,152,153の少なくとも一部は、いかなる
場合でも液体金属潤滑剤で満たされない空間ができるよ
うに、液体金属潤滑剤の量が決められている。
【0027】軸受開口120、及び軸受開口121に隣
接した環状の窪み132、及び環状の窪み133は、前
記の軸受間に在る環状の窪み151、152,153と
方向性通路154,155,156,157で連結され
ている。方向性通路154,155,156,157そ
れぞれは、軸受回転体102の全周囲にわたって等配に
配設された多数の方向性通路から成っている。これらの
方向性通路は、環状の窪み132、及び環状の窪み13
3から環状の窪み151,152,153の方向には液
体金属潤滑剤が移動するが、逆の方向には液体金属潤滑
剤が移動できないようになっている。これらの方向性
は、これらの通路の中又は通路の出口に図示しない小さ
な弁を設けることによって得られる。通路の中は液体金
属潤滑剤で濡れないようになっている。液体金属潤滑剤
が環状の窪み132又は環状の窪み133に達した状態
で軸受回転体102が高速度で回転すると、液体金属潤
滑剤は遠心力を受けて前記の弁を押してこの部分を通過
してより大きな直径を持つ環状の窪み151,152,
153に達する。一方、液体金属潤滑剤が逆の方向に力
を受けると前記の弁が閉じて通路が閉鎖されるので液体
金属潤滑剤は移動できなくなる。
【0028】次に、他の実施例について述べる。前記の
方向性通路154,155,156,157の表面は液
体金属潤滑剤で濡れない状態になっている。例えば金属
酸化膜からできている。これらの通路は、この中で液体
金属潤滑剤に作用する表面張力が液体金属潤滑剤を押し
戻す圧力効果が、液体金属潤滑剤の静圧力によって押し
出される効果よりも大きくなっており、液体金属潤滑剤
に作用する表面張力が液体金属潤滑剤を押し戻す圧力効
果が、液体金属潤滑剤が受ける遠心力によって液体金属
潤滑剤を移動させる効果よりは小さくなっているように
作られている。これらの通路が円形の断面を持つ穴でで
きている場合には通路の直径を、スリット状の断面を持
つ場合にはスリットの幅を適正な値に決めることによっ
て達成できる。液体金属潤滑剤が受ける遠心力は液体金
属潤滑剤の静圧力よりも大きく、遠心力が働く方向が決
められているので液体金属潤滑剤の移動できる方向が決
まり、方向性が生じることになる。
【0029】予期しない理由によって液体金属潤滑剤が
環状の軸受開口120又は軸受開口121より真空空間
側に出てきて、環状の窪み132、又は環状の窪み13
3に到達した場合には、遠心力を受けてこの液体金属潤
滑剤は方向性通路154,155,156,157を通
って軸受間にある環状の窪み151,152,153の
いずれかに戻されることになる。このようにして、軸受
開口120、又は軸受開口121を出た液体金属潤滑剤
は軸受の内部に戻されるので液体金属潤滑剤が軸受機構
の外部に漏出するのが防げ、長時間にわたって安定な動
作を続けることができる。
【0030】これまでの説明では陰極側回転体組立CR
に使用している動圧滑り軸受から成る軸受機構CBGに
ついて説明したが、陽極側回転体組立ARに使用してい
る動圧滑り軸受から成る軸受機構ABGも、前記の陰極
給電機構SL1の回転部分に使用している動圧滑り軸受
から成る軸受機構も同様の構造と成っている。
【0031】軸受回転体102が十分な高速度で回転し
ている場合には、前記の動圧滑り軸受の軸受ギャップに
おいて比較的大きな軸受損失が発生するが、軸受固定体
101は、外部から強制冷却されている真空容器VVに
熱的にも結合してあるので、低い温度に保たれる。軸受
回転体102は、前記の動圧滑り軸受の軸受ギャップ内
に在る液体金属潤滑剤を介して軸受固定体101に熱的
に連結されているので、十分に低い温度に保たれる。ま
た、軸受回転体102には陰極側回転体組立CRが機械
的に結合してあり、陰極側回転体組立CRには電子銃組
立EGなどの発熱体が取り付けてある。特に、陽極側の
軸受機構AGBでは多量の熱を発生するX線ターゲット
TGから多量の熱が流入する。これらの場合でも、上記
の理由により、軸受機構部分の温度を十分に低く保つこ
とができる。
【0032】本発明を実施例に関連して説明したが、本
発明は、ここに例示した実施例の構造及び形態に限定さ
れるものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱する
ことなく、いろいろな実施形態が可能であり、いろいろ
な変更及び改変を加えることができることを理解された
い。例えば、この発明では電子銃組立が3個取り付けて
あるが1個でも3個以上でも良い。また、この発明では
陰極側回転体組立CRとX線ターゲットTGの両方を回
転させる構造を示しているが、X線ターゲットTG及び
これに繋がっている部分を固定にした構造のカソードス
キャン型X線発生器、及びこれを使ったX線CTスキャ
ナを含む事は勿論である。軸受固定体101は真空容器
の一部として構成しても良いことは勿論である。また、
上記の実施例では常温で液体である液体金属を潤滑剤と
して使用した例を示しているが、やや高い融点を持って
おり常温で固体であっても動作の前に加熱して液化させ
てから動作させれば同じ効果が得られることは勿論であ
る。更に、前記のX線ターゲットから発生したX線を前
記の真空容器の外に取り出す為のX線放出窓は真空容器
と一体になっていても、真空容器の一部として構成され
ていてもこの部分でのX線の減衰率が小さければX線放
出窓と見なすことが出来るのは勿論である。真空容器V
Vは回転対称な形状でなくても良い事は勿論である。真
空容器VVの中心軸と陰極側回転体組立CR又は陽極側
回転体組立ARの中心軸がある程度ずれていても良い事
は勿論である。X線ターゲットTGが分割して構成され
ており、それぞれの分割された部分に隙間があっても良
い事は勿論である。陰極給電機構SL1の回転部分は、
この陰極給電機構SL1の軸受機構を構成する軸受回転
体そのものであっても良い事は勿論である。陰極給電機
構SL1は、軸受機構CBGと一体に構成されていても
良い事は勿論である。尚、本発明では、ギャップのサイ
ズとは、ギャップを構成する対向面の一方の面上の任意
の点から、このギャップを構成する対向面の他方の面へ
の最短の距離を意味している。
【0033】この発明は、これまで述べてきたように超
高速スキャンができるX線CTスキャナを実現させるも
のであるが、次のように小変更することにより周回中心
軸方向に向かって全周囲方向から電子線を照射する電子
線照射装置に応用することができる。即ち、前記の実施
例で説明した機器構成からX線ターゲット及びこれに関
する部分と、X線のX線分布制限機構及びファン方向分
布整形器WF及びその他のX線に関する部品を省略し
て、X線放出窓XWを薄いチタン板から成る電子線放出
窓に変更し、電子銃組立EGから電子を放出する方向を
電子線放出窓の方向に変えるだけでそのまま実用にな
る。これを使用すると、プラスチックやガラスやその他
の改質処理に使用できて工業的に大きな効果を得る電子
線照射装置を提供することができる。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のカソード
スキャン型X線発生器を採用すると、回転する部分を真
空容器内部の概略回転対称な構造体に軽い部品を取り付
けた構造にできるので遠心力の影響が少なくなり、例え
ばスキャン時間が0.03秒の超高速スキャン型X線C
Tスキャナを簡単な構造で安価に実現させることができ
る。特に、複数のX線焦点から同時に短時間に多量のX
線を発生することができ、フォトンノイズが少ない十分
に良質な画像を得ることができる。発生したX線は環状
の面検出器で有効に受信され、広い範囲の領域における
多数の断面を瞬時に撮影することができ、このデータを
使用して被検体の3次元の内部構造を瞬時に検査できる
ようになる。その為に例えば人間の心臓のように動きが
速い部分が被検体の内部にあっても、これを忠実に即時
性をもって撮影できるX線CTスキャナを提供すること
ができる。軸受機構には液体金属を潤滑剤とした動圧滑
り軸受を採用しているので真空中で長時間にわたって安
定に使用できるだけでなく、回転している部分の電位を
一定に保つことができて微小放電などの不安定な現象の
発生を防止できる。更に、動圧滑り軸受を通して内部で
発生した熱を有効に真空容器の外部に導いて冷却するこ
とができる。軸受の開口部から液体金属潤滑剤が漏出し
た場合でも再び軸受の内部に戻されるので軸受機構が高
真空の環境で十分な信頼性を保って安定に動作すること
ができる。外部に機械的な回転機構がなく、これに関連
した電源や電子回路は静止状態で使用できるので全体と
して信頼性がよく、X線CTスキャナ全体がコンパクト
になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のX線CTスキャナの概略の断面を表す図
である。
【図2】本発明に係わるカソードスキャン型X線発生
器、及びこれを使ったX線CTスキャナの全体構造体の
主要部の断面である。
【図3】本発明に係わるカソードスキャン型X線発生
器、及びこれを使ったX線CTスキャナの原理を説明す
る図である。
【図4】本発明に係わるカソードスキャン型X線発生器
の、ある瞬間に鉛直上方に位置する一部分の断面を拡大
した図である。
【図5】本発明に係わるカソードスキャン型X線発生器
の主要部である軸受機構の部分を拡大した断面図であ
る。
【図6】本発明のカソードスキャン型X線発生器の主要
部である図5の一部分を更に拡大した断面図である。
【符号の説明】
ABG 陽極側の軸受機構 AR 陽極側回転体組立 B 寝台 CBG 陰極側の軸受機構 CR 陰極側回転体組立 DB 後方検出器組立 DF 前方検出器組立 D1 検出器DF,DBの一部 D2 検出器DF,DBの一部 D3 検出器DF,DBの一部 EG 電子銃組立 F1 X線焦点 F2 X線焦点 F3 X線焦点 HT 高電圧端子 LM1 円弧状のステータ LM2 円弧状のステータ M 被検体 RT1 ロータ RT2 ロータ SL1 陰極給電機構 SLT スリット TG X線ターゲット VC 排気口 VV 真空容器 WF ファン方向分布整形器 XW X線放出窓 1 陰極 2 電子ビーム 101 軸受固定体 102 軸受回転体 103 ラジアル軸受ギャップの鉛直上方部分 104 第一スラスト軸受の軸受ギャップの鉛直上
方部分 105 端部ギャップの鉛直上方部分 106 第二スラスト軸受の軸受ギャップの鉛直上
方部分 107 端部ギャップの鉛直上方部分 108 ラジアル軸受ギャップの鉛直下方部分 109 第一スラスト軸受の軸受ギャップの鉛直下
方部分 110 端部ギャップの鉛直下方部分 111 第二スラスト軸受の軸受ギャップの鉛直下
方部分 112 端部ギャップの鉛直下方部分 120 軸受開口 120’ 軸受開口 121 軸受開口 121’ 軸受開口 132 環状の窪み 133 環状の窪み 151 環状の窪み 152 環状の窪み 153 環状の窪み 154 方向性通路 155 方向性通路 156 方向性通路 157 方向性通路 217 回転トルク伝達機構 220 絶縁体 1001 従来のX線CTスキャナの固定架台 1002 従来のX線CTスキャナの回転架台 1003 従来のX線CTスキャナの軸受 1004 従来のX線CTスキャナのX線管 1005 従来のX線CTスキャナのX線 1006 従来のX線CTスキャナの検出器 1007 従来のX線CTスキャナの電子回路 1008 従来のX線CTスキャナの制御器 1009 従来のX線CTスキャナの回転駆動機構

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部を真空の状態に保持して真空空間を
    形成するドーナツ形状の真空容器と、この真空容器の内
    部の真空空間において真空容器の中心軸と同軸的に回転
    できるように支承された陰極側回転体組立と、この陰極
    側回転体組立の一部に取り付けられた電子銃組立と、こ
    の電子銃組立に取り付けられており電子を放出する陰極
    と、この陰極に前記の真空容器の外部から給電する為の
    陰極給電機構の回転部分と、前記の陰極の周回軌道を含
    む面に対面して取り付けられた環状のX線ターゲット
    と、このX線ターゲットの表面で発生したX線を前記の
    真空容器の外に取り出す為のX線放出窓と、前記の陰極
    側回転体組立に回転力を与える回転駆動機構と、前記の
    陰極側回転体組立を真空容器内で回転自在に支承する軸
    受機構と、前記の陰極給電機構の回転部分を真空容器内
    で回転自在に支承する軸受機構とを有して構成されてお
    り、これらの軸受機構の内の少なくとも一方の軸受機構
    は、この軸受機構を固定する部分である環状の軸受固定
    体と、回転部分である環状の軸受回転体とを含んでお
    り、これらの軸受固定体と軸受回転体の間には動作時に
    液体である液体金属を潤滑剤とした動圧滑り軸受が構成
    されており、前記の軸受回転体には前記の液体金属潤滑
    剤が一方向のみに移動できる方向性通路が設けられてい
    ることを特徴とするカソードスキャン型X線発生器、及
    びこれを使ったX線CTスキャナ。
  2. 【請求項2】 内部を真空の状態に保持して真空空間を
    形成するドーナツ形状の真空容器と、この真空容器の内
    部の真空空間において真空容器の中心軸と同軸的に回転
    できるように支承された陽極側回転体組立と、この陽極
    側回転体組立に取り付けられた環状のX線ターゲット
    と、このX線ターゲットの表面に対向した軌道を成して
    周回できるように取り付けられた電子銃組立と、この電
    子銃組立に取り付けられており電子を放出する陰極と、
    この陰極に前記の真空容器の外部から給電する為の陰極
    給電機構と、前記のX線ターゲットの表面で発生したX
    線を前記の真空容器の外に取り出す為のX線放出窓と、
    前記の陽極側回転体組立に回転力を与える回転駆動機構
    と、前記の陽極側回転体組立を真空容器内の真空空間で
    回転自在に支承する軸受機構とを有して構成されてお
    り、この軸受機構は、この軸受機構を固定する部分であ
    る環状の軸受固定体と、回転部分である軸受回転体とを
    含んでおり、これらの軸受固定体と軸受回転体の間には
    動作時に液体である液体金属を潤滑剤とした動圧滑り軸
    受が構成されており、前記の軸受回転体には前記の液体
    金属潤滑剤が一方向のみに移動できる方向性通路が設け
    られていることを特徴とするカソードスキャン型X線発
    生器、及びこれを使ったX線CTスキャナ。
  3. 【請求項3】 前記の方向性通路は弁を有していること
    を特徴とする特許請求項1または2のいずれか1つに記
    載のカソードスキャン型X線発生器、及びこれを使った
    X線CTスキャナ。
  4. 【請求項4】 前記の方向性通路は、遠心力の作用で一
    方向にのみ前記の液体金属潤滑剤を移動させることを特
    徴とする特許請求項1または2のいずれか1つに記載の
    カソードスキャン型X線発生器、及びこれを使ったX線
    CTスキャナ。
  5. 【請求項5】 前記の方向性通路は、この方向性通路の
    表面における前記の液体金属潤滑剤の表面張力によっ
    て、前記の液体金属潤滑剤が逆流することを防止するよ
    うに構成されていることを特徴とする特許請求項1また
    は2のいずれか1つに記載のカソードスキャン型X線発
    生器、及びこれを使ったX線CTスキャナ。
  6. 【請求項6】 前記の方向性通路は、前記の液体金属潤
    滑剤の静圧力よりも大きい表面張力の圧力効果を生じる
    ことを特徴とする特許請求項5に記載のカソードスキャ
    ン型X線発生器、及びこれを使ったX線CTスキャナ。
  7. 【請求項7】 前記の動圧滑り軸受はギャップを有して
    対向する軸受面を有しており、これらの軸受面の少なく
    とも一方にはヘリンボーン状の軸受溝が設けられてお
    り、前記の動圧滑り軸受には、回転軸方向に動圧力を生
    じる第一のスラスト軸受と、回転半径方向に動圧力を生
    じる少なくとも1個のラジアル軸受と、前記の第一のス
    ラスト軸受に距離をもって対面して設けられた第二のス
    ラスト軸受とが含まれており、これらの軸受の内のいず
    れか2つの間に軸受圧力が小さい低圧力部分が設けられ
    ており、この低圧力部分と連通している前記の方向性通
    路を有していることを特徴とする特許請求項1〜6のい
    ずれか1つに記載のカソードスキャン型X線発生器、及
    びこれを使ったX線CTスキャナ。
  8. 【請求項8】 前記の第一のスラスト軸受又は前記の第
    二のスラスト軸受の少なくとも一方は、前記の真空空間
    との実質的な境界となる第一の軸受開口と繋がってお
    り、この第一の軸受開口に隣接した、前記の軸受回転体
    内において回転軸方向に窪んだ環状の窪みを有してお
    り、この環状の窪みと前記の低圧力部分とが前記の方向
    性通路を介して連通していることを特徴とする特許請求
    項7に記載のカソードスキャン型X線発生器、及びこれ
    を使ったX線CTスキャナ。
  9. 【請求項9】 前記の方向性通路は前記の低圧力部分に
    入る方向に前記の液体金属潤滑剤が移動するように取り
    付けられたことを特徴とする特許請求項7または8のい
    ずれか1つに記載のカソードスキャン型X線発生器、及
    びこれを使ったX線CTスキャナ。
  10. 【請求項10】 内部を真空の状態に保持して真空空間
    を形成するドーナツ形状の真空容器と、この真空容器の
    内部の真空空間において真空容器の中心軸と同軸的に回
    転できるように支承された陰極側回転体組立と、この陰
    極側回転体組立の一部に取り付けられた電子銃組立と、
    この電子銃組立に取り付けられており電子を放出する陰
    極と、この陰極に前記の真空容器の外部から給電する為
    の陰極給電機構の回転部分と、前記の陰極から放出され
    て加速された電子を取り出す為の電子線放出窓と、前記
    の陰極側回転体組立に回転力を与える回転駆動機構と、
    前記の陰極側回転体組立を真空容器内で回転自在に支承
    する軸受機構と、前記の陰極給電機構の回転部分を真空
    容器内で回転自在に支承する軸受機構とを有して構成さ
    れており、これらの軸受機構の内の少なくとも一方の軸
    受機構は、この軸受機構を固定する部分である環状の軸
    受固定体と、回転部分である環状の軸受回転体とを含ん
    でおり、これらの軸受固定体と軸受回転体の間には動作
    時に液体である液体金属を潤滑剤とした動圧滑り軸受が
    構成されており、前記の軸受回転体には前記の液体金属
    潤滑剤が一方向のみに移動できる方向性通路が設けられ
    ていることを特徴とする電子線照射装置。
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