JP2001235797A - プロジェクタの内部温度制御 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 冷却ファンの回転速度を安定に制御して、プ
ロジェクタの内部温度を適切に制御する。 【解決手段】 この発明のプロジェクタは、前記プロジ
ェクタの内部温度を検出する温度検出装置と、前記内部
温度の上昇を低減するための冷却ファンと、前記温度検
出手段で検出された検出結果に従って、前記冷却ファン
の回転速度を制御する制御装置と、を有するフィードバ
ッック制御系、を備える。前記制御装置は、前記回転速
度を決定するための制御出力を、あらかじめ設定された
目標温度と前記内部温度との偏差に対する比例積分動作
または比例積分微分動作により求める。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】プロジェクタの内部温度を適
切に制御する技術に関する。

【０００２】

【従来の技術】画像を投写表示するための装置としてプ
ロジェクタがある。プロジェクタは、光源からの光を液
晶パネルのような光変調装置を利用して変調し、変調さ
れた光をスクリーンに投影することにより画像を表示す
る。プロジェクタによる表示画像はより明るいことが好
ましく、光源に利用される光源ランプは表示画像の高輝
度化に応じて高輝度化が図られている。光源ランプの高
輝度化は、光源ランプ自身の発熱により光源ランプ自身
の温度上昇や液晶パネルの温度上昇、プロジェクタの内
部温度上昇を招き、光源ランプや液晶パネル自身等、種
々の構成部品の性能や機能を低下させる。通常、プロジ
ェクタには、冷却ファンが設けられており、プロジェク
タ内部を冷却して、温度上昇を抑制している。冷却ファ
ンは、一定の回転速度で駆動されている。あるいは、Ｔ
１℃からＴ２℃はＡの回転速度、Ｔ２℃からＴ３℃まで
はＢの回転速度というように、複数段回の回転速度で駆
動されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、冷却ファンが
一定の回転速度で駆動されている場合には、光源ランプ
や液晶パネル、プロジェクタの内部温度等が高温となる
場合の冷却効果を高めるために、回転速度が高く設定さ
れている。このため、冷却ファンの回転音による騒音が
大きくなる。また、消費電力が大きくなるという問題が
ある。

【０００４】また、冷却ファンの回転速度を複数段階に
切り替えて駆動する場合、実際の温度は目標温度（管理
温度）より高くなったり低くなったりと波をうつように
変動し、冷却ファンの回転速度が不安定になりやすいと
いう問題がある。また、低速から高速な回転速度に変化
した場合に発生する騒音は大きくなるが、切り替えの段
数が少ないと切り替え時の回転速度が大きく変化するた
め、それによって発生する騒音の変化が一層顕著に感じ
られる。

【０００５】この発明は、従来技術における上述の課題
を解決するためになされたものであり、冷却ファンの回
転速度を安定に制御して、プロジェクタの内部温度を適
切に制御する技術を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上
述の課題を解決するため、本発明のプロジェクタは、前
記プロジェクタの内部温度を検出する温度検出部と、前
記内部温度の上昇を低減するための冷却ファンと、前記
温度検出部で検出された検出結果に従って、前記冷却フ
ァンの回転速度をフィードバック制御する制御部と、を
備え、前記制御部は、前記回転速度を決定するための制
御出力を、あらかじめ設定された目標温度と前記内部温
度との偏差に対する比例積分動作または比例積分微分動
作により求めることを特徴とする。

【０００７】本発明のプロジェクタによれば、冷却ファ
ンの回転速度を安定に制御して、内部温度を適切に制御
することができる。

【０００８】また、前記プロジェクタの複数位置の内部
温度を検出する複数の前記温度検出部と、前記複数の温
度検出部に対応する複数の前記冷却ファンと、を備え、
前記制御部は、前記複数の温度検出部で検出されるそれ
ぞれの内部温度を独立して制御可能であることが好まし
い。

【０００９】このようにすれば、プロジェクタの複数位
置の内部温度をそれぞれ独立して安定に制御することが
できる。

【００１０】

【発明の実施の形態】図１は、本発明を適用した一実施
例としてのプロジェクタの概略構成を示す説明図であ
る。プロジェクタ１０は、プロジェクタ本体部１１０
と、プロジェクタ制御部１２０と、２つの冷却ファン１
３０，１４０と、２つのドライバ１５０，１６０と、２
つのＤ／Ａ変換器１７０，１８０と、２つの温度センサ
１９０，２００と、２つのＡ／Ｄ変換器２１０，２２０
とで概ね構成されている。

【００１１】プロジェクタ本体部１１０は、光変調装置
としての液晶パネル１１４と、光源１１２を含み液晶パ
ネル１１４を照明するための照明装置と、液晶パネル１
１４から射出された光をスクリーンＳＣ上に投写する投
写光学系１１６とを備えている。また、液晶パネル１１
４に供給される画像信号を出力するための画像処理装置
（図示しない）を備えている。

【００１２】プロジェクタ制御部１２０は、ＣＰＵやＲ
ＯＭ，ＲＡＭ等のメモリを含むコンピュータで構成され
ており、ＲＯＭ内に格納された種々のプログラムに従っ
て、プロジェクタ本体部１１０の動作や冷却ファン１３
０，１４０の動作を制御する。

【００１３】第１の温度センサ１９０は、プロジェクタ
本体部１１０内に設けられた光源１１２の温度を検出す
る。第１の温度センサ１９０からの出力はＡ／Ｄ変換器
２１０を介してプロジェクタ制御部１２０に入力され
て、光源１１２の温度が検出される。温度センサ１９０
としては、サーミスタ等の感温素子を利用したものが用
いられる。感温素子は、光源の温度が適切に検出可能な
位置、例えば、光源１１２を構成するリフレクタの裏面
上に設けられる。

【００１４】プロジェクタ制御部１２０は、適当な間隔
で温度センサ１９０からの温度検出結果を取得し、この
結果に応じた制御出力をＤ／Ａ変換器１７０を介してド
ライバ１５０に出力して、冷却ファン１３０の回転速度
を制御する。冷却ファン１３０は、例えば、光源１１２
の周辺部に設けられている。光源１１２は冷却ファン１
３０によって発生する気流によって冷却される。なお、
この制御については後述する。

【００１５】第２の温度センサ２００は、プロジェクタ
本体部１１０内に設けられた液晶パネル１１４の温度を
検出する。第２の温度センサ２００からの出力はＡ／Ｄ
変換器２２０を介してプロジェクタ制御部１２０に入力
されて、液晶パネル１１４の温度が検出される。温度セ
ンサ２００も温度センサ１９０と同様に、サーミスタ等
の感温素子を利用したものが用いられる。感温素子は、
液晶パネル１１４の温度が適切に検出可能な位置、例え
ば、照明光が入射される面の周辺部に設けられる。

【００１６】プロジェクタ制御部１２０は、適当な間隔
で温度センサ２００からの温度検出結果を取得し、この
結果に応じた制御出力をＤ／Ａ変換器１８０を介してド
ライバ１６０に出力して、冷却ファン１４０の回転速度
を制御する。冷却ファン１４０は、例えば、液晶パネル
１１４の周辺部に設けられている。液晶パネル１１４は
冷却ファン１４０によって発生する気流によって冷却さ
れる。なお、この制御については後述する。

【００１７】図２は、光源１１２の温度制御系について
示す説明図である。光源１１２の温度制御系は、図２に
示すように、プロジェクタ制御部１２０と、制御対象と
してのＤ／Ａ変換器１７０とドライバ１５０と冷却ファ
ン１３０と光源１１２を含むプロジェクタ本体部１１０
と、フィードバック経路としての温度センサ１９０とＡ
／Ｄ変換器２１０とで構成されたフィードバック制御系
である。

【００１８】プロジェクタ制御部１２０は、以下に示す
ようにＰＩ動作（比例積分動作）を行う。まず、制御量
ｙ（ｔ）としての光源１１２の温度（制御温度）を、温
度センサ１９０およびＡ／Ｄ変換器２１０を介して取得
する。そして、目標値ｒ（ｔ）としてあらかじめ設定さ
れた光源１１２の管理温度と制御温度ｙ（ｔ）との偏差
ｅ（ｔ）（＝ｒ（ｔ）−（ｙ（ｔ））を求める。次に、
求められた偏差ｅ（ｔ）を入力変数としてディジタル演
算処理し、操作量ｕ（ｔ）として、冷却ファン１３０の
回転速度を制御するための制御出力を求める。制御出力
ｕ（ｔ）は、下式（１）に示すＰＩ動作を表す関係式に
より求められる。

【００１９】

【数１】

【００２０】ここで、ｔは、サンプリング周期Ｔとする
離散時間を示している。Ｋは比例ゲイン、ＴＩは積分時
間を示し、これらはＰＩ定数と呼ばれている。式（１）
は、制御出力ｕ（ｔ）を直接与えるものであり、位置制
御式（位置アルゴリズム）と呼ばれている。

【００２１】また、制御出力ｕ（ｔ）は、下式（２）に
示すＰＩ動作を表す関係式によっても求められる。

【００２２】

【数２】

【００２３】式（２）は、１サンプリング周期分の操作
量の変化分Δｕ（ｔ）を求める式であり、速度制御式
（速度アルゴリズム）と呼ばれている。

【００２４】図２に示すフィードバック制御系のブロッ
ク線図を図３に示す。このフィードバック制御系におけ
る制御要素としての演算処理の（２）式により表される
伝達関数Ｇ１（ｓ）（ｓ＝ｊω：ωは角周波数）は、下
式（３）のように表される。

【数３】

【００２５】制御対象としてのプロジェクタの伝達関数
Ｇ２（ｓ）は、１次遅れ要素と仮定すると、下式（４）
のように表される。

【数４】 ここで、Ｃはプロジェクタの熱容量、ｋは比例定数を示
している。

【００２６】この制御系の目標管理温度Ｒ（ｓ）に対す
る制御温度Ｙ（ｓ）の伝達特性Ｈ（ｓ）は、下式（５）
で表される。

【数５】

【００２７】ＰＩ定数、すなわち比例ゲインＫおよび積
分時間ＴＩは、式（５）で表される伝達特性Ｈ（Ｓ）が
好ましい特性となるように調整される。この調整方法と
しては、シミュレーション等によって行われる。また、
ＰＩ定数を調整しながら実測により調整される。

【００２８】図４は、光源１１２の制御温度について示
す説明図である。図４（Ａ）は、上記のようにして設定
したフィードバック制御系による光源１１２の制御温度
について示している。図４（Ｂ）は、比較例として従来
例で説明した温度切り替え制御による制御温度について
示している。図４（Ｂ）に示すように、比較例において
は制御温度が不安定であるため、制御電圧、すなわち、
冷却ファンへの入力電圧も不安定となりファンの回転速
度も安定ではない。しかしながら、本実施例において
は、図４（Ａ）に示すように、制御温度に応じて安定に
適切な冷却ファン１３０への入力電圧を設定することが
できる。例えば、環境温度が低い場合には冷却ファン１
３０の回転速度を比較的低い状態として、環境温度が高
い場合には冷却ファン１３０の回転速度を比較的高い状
態として、目標の管理温度となるように制御することが
できる。これにより、必要最小限な冷却ファン１３０の
回転速度で装置を冷却することができるので、消費電力
の低減および騒音の低減を図ることができる。

【００２９】なお、プロジェクタ制御部１２０と、制御
対象としてのＤ／Ａ変換器１８０とドライバ１６０と冷
却ファン１４０と液晶パネル１１４を含むプロジェクタ
本体部１１０と、フィードバック経路としての温度セン
サ２００とＡ／Ｄ変換器２２０とで構成されたフィード
バック制御系も、光源１１２のフィードバック制御系と
同様であり、独立して制御可能である。

【００３０】なお、本発明は上記の実施例や実施形態に
限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲にお
いて種々の態様において実施することが可能であり、例
えば次のような変形も可能である。

【００３１】本実施例では、プロジェクタ内の光源１１
２と液晶パネル１１４の２つの位置で検出された温度を
それぞれ制御する構成を例に説明しているが、これに限
定されるものではなく、他の位置で検出された温度を制
御する構成であってもよい。また、１つの位置で検出さ
れた温度を制御する構成、あるいは、３つ以上の位置で
検出された温度をそれぞれ独立して制御する構成とする
こともできる。

【００３２】また、本実施例では、ＰＩ動作によって温
度制御を行う場合を例に説明しているが、ＰＩＤ動作
（比例積分微分動作）によって温度制御を行う場合も同
様である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を適用した一実施例としてのプロジェク
タの概略構成を示す説明図である。

【図２】光源１１２の温度制御系について示す説明図で
ある。

【図３】図２に示すフィードバック制御系のブロック線
図である。

【図４】光源１１２の制御温度について示す説明図であ
る。

【符号の説明】

１０…プロジェクタ １１０…プロジェクタ本体部 １１２…光源 １１４…液晶パネル １１６…投写光学系 １２０…プロジェクタ制御部 １３０，１４０…冷却ファン １５０，１６０…ドライバ １７０，１８０…Ｄ／Ａ変換器 １９０，２００…温度センサ ２１０，２２０…Ａ／Ｄ変換器

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 光源からの光を投写して画像を表示する
   プロジェクタであって、 前記プロジェクタの内部温度を検出する温度検出部と、
   前記内部温度の上昇を低減するための冷却ファンと、前
   記温度検出部で検出された検出結果に従って、前記冷却
   ファンの回転速度をフィードバック制御する制御部と、
   を備え、 前記制御部は、前記回転速度を決定するための制御出力
   を、あらかじめ設定された目標温度と前記内部温度との
   偏差に対する比例積分動作または比例積分微分動作によ
   り求めることを特徴とする、 プロジェクタ。
2. 【請求項２】 請求項１記載のプロジェクタであって、 前記プロジェクタの複数位置の内部温度を検出する複数
   の前記温度検出部と、 前記複数の温度検出部に対応する複数の前記冷却ファン
   と、を備え、 前記制御部は、前記複数の温度検出部で検出されるそれ
   ぞれの内部温度を独立して制御可能であることを特徴と
   する、 プロジェクタ。