JP2001208100A - 一方向クラッチならびにそれを備えるプーリユニット - Google Patents

一方向クラッチならびにそれを備えるプーリユニット

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JP2001208100A
JP2001208100A JP2000347881A JP2000347881A JP2001208100A JP 2001208100 A JP2001208100 A JP 2001208100A JP 2000347881 A JP2000347881 A JP 2000347881A JP 2000347881 A JP2000347881 A JP 2000347881A JP 2001208100 A JP2001208100 A JP 2001208100A
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way clutch
peripheral surface
inner ring
pulley unit
shaft
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Hideki Fujiwara
英樹 藤原
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Koyo Seiko Co Ltd
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Koyo Seiko Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】一方向クラッチにおいて、カム面を有する内輪
を簡易な加工形態で製作できるようにし、生産効率を高
めて製造コストを低減できる構造とすること。 【解決手段】ころ13を用いるとともに、内輪10の外
周面にカム面10aを設けるタイプの一方向クラッチ3
において、内輪10が、低炭素鋼材とされ、その外周形
状が冷間鍛造または引き抜き加工により成形されている
とともに、この外周面が浸炭処理により硬化されてい
る。これにより、複数のカム面10aを旋削加工により
ひとつずつ形成する従来例に比べてはるかに手間が省
け、カム面10aの耐摩耗性なども十分に高められる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ころを用いた一方
向クラッチならびにそれを備えるプーリユニットに関す
る。このプーリユニットは、例えば自動車などのエンジ
ンのクランクシャフトからベルトを介して駆動される補
機に装備される。補機としては、例えば自動車のエアコ
ンディショナ用コンプレッサ、ウォーターポンプ、オル
ターネータ、冷却ファンなどが挙げられる。
【0002】
【従来の技術】本願出願人は、一方向クラッチにおいて
内輪の円周数カ所に複数のカム面を形成することを行っ
ており、このカム面それぞれについては、現在のところ
旋削加工などによりひとつずつ形成し、このカム面を形
成した後に硬化処理や研磨仕上げなどを行うようにして
いる。
【0003】ちなみに、従来では、内輪の素材として、
比較的塑性変形しにくい高強度な高炭素鋼材、例えばJ
IS規格SUJ−2、S55Cなどを用いている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来例では、内輪
の外周面に複数のカム面をひとつずつ形成する必要があ
るので、製作に手間がかかるとともに、形状ばらつきを
抑制するよう高精度に管理する必要があるので、生産効
率が悪く、製造コストが高くつく結果になっている。
【0005】このような事情に鑑み、本発明は、一方向
クラッチにおいて、複数のカム面を設ける内輪を簡易な
形態で製作できるようにし、生産効率を高めて製造コス
トを低減できる構造とすることを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】(1)本発明第一の一方
向クラッチは、同心状に配設される内・外輪の対向環状
空間に介装され、この内・外輪を同期回転させるロック
状態と相対回転させるフリー状態とに切り換えるもの
で、前記内輪の外周面の円周数カ所に、前記外輪の円筒
形内周面との間でくさび状空間を形成するカム面が設け
られていて、このくさび状空間にころが、円環状の保持
器により周方向転動範囲が規制された状態で1つずつ配
置されており、前記内輪が、低炭素鋼材とされ、その外
周形状が冷間鍛造または塑性加工により成形されている
とともに、前記各内輪の軌道部となる外周面が浸炭処理
により硬化されていることを特徴としている。
【0007】(2)本発明第二の一方向クラッチは、内
周面が円筒形に形成される外輪と、外輪の内周に挿通さ
れ円周数カ所に前記外輪の円筒形内周面との間でくさび
状空間を形成するカム面が設けられる内輪と、前記くさ
び状空間それぞれに1つずつ配置されるころと、前記内
・外輪の対向環状空間に介装されかつ前記ころそれぞれ
が周方向での転動範囲を規制された状態で収納されるポ
ケットを有する円環状の保持器と、この保持器のポケッ
トに配設されて前記ころをくさび状空間の狭い側に弾発
付勢する弾性部材とを含み、前記内輪が、低炭素鋼材と
され、その外周形状が冷間鍛造または塑性加工により成
形されているとともに、この外周面が浸炭処理により硬
化されていることを特徴としている。
【0008】このように、本発明第一および第二の一方
向クラッチでは、ころを用いるとともに、内輪の外周面
にカム面を設けるタイプの一方向クラッチを前提とし、
その内輪を簡易な処理で製作できるように工夫してい
る。
【0009】まず、複数のカム面によって外形が複雑な
形状になる内輪の加工について、冷間鍛造または塑性加
工とする。これにより、カム面の個数に関係なく処理の
手間を削減することが可能になり、生産性がよくなる。
この冷間鍛造または塑性加工を行えるようにするには、
内輪の素材が硬質で塑性変形させにくいものでは困るの
で、内輪の素材について、塑性変形が比較的容易となる
低炭素鋼材を選択している。このような比較的塑性変形
させやすい素材では、使用時にころのロック・フリー動
作時の耐摩耗性が損なわれるので、硬化処理を施すよう
にしている。この硬化処理についても、低炭素鋼材に対
して行うので、浸炭処理としている。
【0010】(3)本発明のプーリユニットは、プーリ
とその内周に挿通される軸体との対向環状空間に、上記
第一または第二の一方向クラッチと、この一方向クラッ
チの少なくとも軸方向一側に配設される転がり軸受とが
介装されたもので、前記軸体が、前記一方向クラッチの
内輪および両転がり軸受の各内輪を兼用する構成とされ
ており、この軸体が、低炭素鋼材とされ、その外周形状
が冷間鍛造または塑性加工により成形されているととも
に、この外周面が浸炭処理により硬化されていることを
特徴としている。
【0011】本発明のプーリユニットは、軸体について
一方向クラッチの内輪および2つの転がり軸受の各内輪
を兼用する構成としているから、部品点数を減らすこと
が可能になる。また、この軸体について、冷間鍛造また
は塑性加工で成形して浸炭処理により硬化する形態とし
ているから、製造工程を減らすことが可能になる。
【0012】本発明のプーリユニットの場合、前記軸体
が、中空状とされ、この軸体の内周面に他の軸体を挿入
してネジ結合させるための雌ネジ部が形成されており、
前記雌ネジ部の硬さを、ビッカース硬さ(Hv)で20
0〜500に設定して雌ネジ部は耐遅れ破壊特性と耐衝
撃性とが確保されるようにしてもよい。
【0013】この場合、雌ネジ部の硬さを母材そのもの
の硬さとしてもよい。
【0014】本発明のプーリユニットの場合、前記軸体
において、少なくとも前記内輪軌道部を形成する領域に
おける最表面の硬さをビッカース硬さ(Hv)で640
〜840に設定して内輪軌道部を転動する転動体の転動
性能や摩耗抑制を図れるようにしてもよい。
【0015】本発明のプーリユニットの場合、プーリを
一方向クラッチの内輪および両転がり軸受の各外輪を兼
用する構成とし、そのプーリにおける前記各外輪の軌道
部となる内周面において、その最表面の硬さをビッカー
ス硬さ(Hv)で640〜840、かつ、ビッカース硬
さ(Hv)で500となる有効硬化層深さが表面から
1.2mm以下に設定してその内周面を転動する転動体
の転動性能や摩耗抑制を図れるようにしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の詳細を図面に示す実施形
態に基づいて説明する。
【0017】図1ないし図3に本発明の実施形態1を示
している。図1は、プーリユニットの縦断面図、図2
は、図1の(2)−(2)線断面の矢視図、図3は、一
方向クラッチにおける内輪および保持器を示す斜視図で
ある。
【0018】図例のプーリユニットAは、プーリ1、中
空軸2、一方向クラッチ3、2つの転がり軸受4,5を
有している。
【0019】プーリ1は、例えば自動車エンジンのクラ
ンクシャフトによりVリブドベルトBを介して回転駆動
されるもので、その外周にはVリブドベルトBが巻き掛
けられる波状溝が形成されている。
【0020】中空軸2は、中空状の軸体としてプーリ1
の内周に挿通されて、図示しないが自動車エンジンの補
機の入力軸(例えばオルタネータのロータ)に固定され
る。
【0021】一方向クラッチ3は、プーリ1と中空軸2
との対向環状空間の軸方向中央に介装されるもので、内
輪10、外輪11、合成樹脂製の円環状の保持器12、
複数のころ13、弾性部材として楕円形のコイルバネ1
4とを備えている。
【0022】2つの転がり軸受4,5は、プーリ1と中
空軸2との対向環状空間の軸方向両側に1つずつ介装さ
れるもので、この実施形態ではいずれも一般的な深溝型
玉軸受が用いられている。これらの転がり軸受4,5の
軸方向外端側には、シール6が装着されている。
【0023】上記一方向クラッチ3の各構成要素を説明
する。
【0024】内輪10は、上記中空軸2に対して圧入に
より外嵌されるもので、その外周面の円周数カ所には平
坦なキー状のカム面10aが設けられている。この例で
は、カム面10aを八つとしており、そのために内輪1
0の外径形状が八角形になっている。
【0025】外輪11は、上記プーリ1に対して圧入に
より内嵌されるもので、その内周面は円筒形に形成され
ている。
【0026】保持器12は、上記内・外輪10,11の
対向環状空間に配設されて内輪10に対して周方向なら
びに軸方向に位置決めされた状態で外装されるもので、
その円周数カ所つまり内輪10のカム面10aに対応す
る領域には、径方向内外に貫通形成されるポケット12
aが設けられている。
【0027】ころ13は、保持器12の各ポケット12
aに1つずつ周方向転動範囲が規制された状態で収納さ
れる。
【0028】コイルバネ14は、保持器12の各ポケッ
ト12aの内壁面に突設される突起12bに対して装着
されて、ころ13をカム面10aと外輪11内周面とで
形成するくさび状空間の狭い側(ロック側)へ押圧する
ものである。
【0029】そして、保持器12の内周面について、内
輪10の多角形の外周面形状に合致嵌合する形状に形成
することにより、保持器12を内輪10に対して周方向
に回り止めさせている。
【0030】また、この保持器12の一方軸端側に、径
方向内向きに延びる鍔部12cを設ける一方で、内輪1
0の一方軸端側に小径円筒部10bを設けることによっ
て当該一方軸端側を段付き形状とし、保持器12の鍔部
12cを内輪10の小径円筒部10aに外嵌させた状態
で当該小径円筒部10bの付け根側の段壁面10cに対
して当接させることにより、保持器12の軸方向一方
(図では左側)への動きを封じている。
【0031】なお、保持器12の軸方向他方(図では右
側)への動きは、一方向クラッチ3において保持器12
の鍔部12cが存在する側に隣り合わせに配設してある
一方の転がり軸受4の内輪20によって封じられている
から、保持器12が内輪10に対して軸方向に位置決め
される結果となっている。
【0032】次に、上記プーリユニットAの動作を説明
する。要するに、プーリ1の回転速度が中空軸2よりも
相対的に速くなると、一方向クラッチ3のころ13がく
さび状空間の狭い側へ転動させられてロック状態となる
ので、プーリ1と中空軸2とが一体化して同期回転す
る。しかし、プーリ1の回転速度が中空軸2よりも相対
的に遅くなると、一方向クラッチ3のころ13がくさび
状空間の広い側へ転動させられてフリー状態となるの
で、プーリ1から中空軸2へ回転動力の伝達が遮断され
ることになって中空軸2が回転慣性力のみで回転を継続
するようになる。
【0033】ちなみに、上記プーリユニットAを自動車
エンジンのオルタネータに利用する場合だと、ベルトB
の駆動源となるエンジンのクランクシャフトの回転変動
に関係なく、オルタネータのロータの回転を高域に維持
して、発電効率を高めるようにすることができる。つま
り、クランクシャフトの回転数が上昇するとき、一方向
クラッチ3がロック状態となって内側環体2を外側環体
1と同期回転させるようにし、一方、クランクシャフト
の回転数が低下するとき、一方向クラッチ3がフリー状
態となって中空軸2をプーリ1の減速と無関係に自身の
回転慣性力により回転継続させるようにすればよい。
【0034】ここで、この実施形態1では、上述したよ
うなプーリユニットAに用いられる一方向クラッチ3に
おける内輪10について、下記のような特徴がある。
【0035】以下、説明する。
【0036】まず、内輪10の素材を低炭素鋼材とす
る。
【0037】低炭素鋼材としては、JIS規格SCr4
15などのいわゆるはだ焼き鋼が好ましい。そして、低
炭素鋼材からなる円筒形母材に冷間鍛造または引き抜き
加工などの塑性加工を施すことにより外周面にカム面1
0aを形成して後、内輪10の外周面に対して浸炭処理
を施すとともに、バレル等の仕上げ処理を施し、表面の
酸化スケールを除去している。
【0038】つまり、内輪10の外周面に複数のカム面
10aを形成するにあたって、比較的塑性変形させやす
い素材を使用することによって冷間鍛造や引き抜き加工
を施せるようにしている。というのは、この冷間鍛造や
引き抜き加工では、内輪10の外周面を塑性変形させて
複数のカム面10aを同時に形成することができるか
ら、複数のカム面10aを旋削加工によりひとつずつ形
成する従来例に比べて手間を省くことができて生産効率
を高めることができるとともに、各カム面10aを高精
度に位置決め形成できるようになる。また、冷間鍛造や
引き抜き加工により形成したカム面10aに対して浸炭
処理を施すことにより硬化させていれば、耐摩耗性を向
上させることができる。
【0039】このようなことから、一方向クラッチ3の
内輪10について、形状精度の高い構造としながら製作
コストを低減できる。
【0040】なお、内輪10に対して浸炭処理を施すに
あたっては、内輪10の外周面に局部的に行うのが好ま
しい。
【0041】内輪10の外周面に局部的な浸炭処理を施
すためのマスキング方法の一例としては、例えば図4に
示すように、支持軸Cの外周に内輪10を装着し、支持
軸Cの軸端に閉蓋Dを螺合することにより、内輪10の
軸方向両端面および中心孔を外部から隠蔽して内輪10
の外周面のみを外部に露呈させることが考えられる。
【0042】図5ないし図7に本発明の実施形態2を示
している。図5は、プーリユニットの縦断面図、図6
は、図5の(6)−(6)線断面の矢視図、図7は、一
方向クラッチにおける内輪および保持器を示す斜視図で
ある。
【0043】この実施形態2のプーリユニットAは、部
品点数ならびに製造コストを削減するために、一方向ク
ラッチ3の内・外輪10,11および2つの転がり軸受
4,5の各内・外輪(符号省略)を省略し、これらの内
輪をプーリユニットAの中空軸2で兼用させて、また、
これらの外輪をプーリユニットAのプーリ1で兼用させ
た構成としている。
【0044】これに関連して、第1転がり軸受4とし
て、複数の玉21およびそれを保持する冠形保持器22
からなる深溝玉軸受を、また、第2転がり軸受5とし
て、複数のころ31およびそれを保持する保持器32か
らなるケージアンドローラをそれぞれ用いている。
【0045】ここで、上記プーリ1および中空軸2の形
状について説明する。
【0046】まず、中空軸2において軸方向中間領域2
aの円周数カ所には、一方向クラッチ3の平坦なカム面
10aが形成され、その軸方向両側領域2b,2cに
は、転がり軸受4,5の内輪軌道部が確保されている。
なお、中空軸2の中間領域2aは八角形に、両側領域2
b,2cは円形に形成されている。
【0047】そして、中空軸2において第1転がり軸受
4の内輪軌道部となる領域2bの外径寸法は、第2転が
り軸受5の内輪軌道部とする領域2cの外径寸法よりも
大きく設定されている。これは、中空軸の軌道成形の容
易性とともに、プーリ1と中空軸2との間に、一方向ク
ラッチ3や2つの転がり軸受4,5を軸方向一方から順
番に簡単に組み込めるようにするためである。
【0048】また、プーリ1の内周面および中空軸2の
外周面において大径に設定した軸方向一端側の領域2b
には、深溝玉軸受からなる第1転がり軸受4の玉21が
介装される軌道溝が形成されている。
【0049】また、プーリ1の内周面および中空軸2の
外周面において小径に設定した軸方向他端側の領域2c
には、周溝2dが設けられており、この周溝2dに対し
てケージアンドローラからなる第2転がり軸受5の保持
器32の内周に設けられてある径方向内向きの輪状突起
32aが係入されることにより、当該保持器32が軸方
向に位置決めされるようになっている。
【0050】そして、一方向クラッチ3の保持器12
は、中空軸2の外周面において軸方向中間領域2aの外
形形状と合致する形状つまり八角形に形成されており、
この保持器12にころ13それぞれを保持させた状態で
中空軸2の軸方向中間領域2aに外嵌されることによ
り、周方向に回り止めされている。
【0051】また、一方向クラッチ3の保持器12は、
中空軸2における中間領域2aのカム面10aと大径の
領域2bとを連接するテーパ状段差部2eによって、第
1転がり軸受4側への動きが封じられ、中空軸2に対し
て軸方向位置決めされた第2転がり軸受5の保持器32
によって第2転がり軸受5側への動きが封じられるよう
になっている。このような形態で一方向クラッチ3の保
持器12を軸方向に位置決めすれば、上記実施形態のよ
うに保持器12の鍔部12cや内輪10の小径円筒部1
0bを省略できて、形状の簡素化が可能になる。
【0052】このように、複雑な外形形状となる中空軸
2について、上記実施形態1での一方向クラッチ3の内
輪10と同様に、低炭素鋼材とし、冷間鍛造または引き
抜き加工により成形して、この冷間鍛造または引き抜き
加工の後で中空軸2の外周面に対して浸炭処理を施すこ
とにより製作するようにしている。
【0053】これにより中空軸2を上記実施形態1と同
様の簡単な工程で高精度な形状に製造できるから、プー
リユニットAの製造コストの低減ならびに製品品質の向
上を図ることができる。
【0054】なお、中空軸2に対して浸炭処理を施すに
あたっては、中空軸2の外周面に局部的に行うのが好ま
しい。というのは、中空軸2の内周面にも浸炭処理を施
すと、中空軸2に挿入される他の軸体に対してネジ結合
する雌ネジ部2fも同時に浸炭されてしまい、水素脆性
と硬度アップにより靭性の低下が問題となるために、雌
ネジ部2fをマスキングする必要がある。
【0055】ここで、中空軸2の外周面のみに局部的に
浸炭処理を施すためのマスキング方法としては、図4と
同様に支持軸Cの外周に中空軸2を装着し、支持軸Cの
軸端に閉蓋Dを螺合することにより、中空軸2の軸方向
両端面および中心孔を外部から隠蔽して中空軸2の外周
面のみを外部に露呈させることが考えられる。
【0056】なお、中空軸2の場合、浸炭処理によって
全体に硬化処理を施すと雌ネジ部2fまでも硬化されて
遅れ破壊が発生したり耐衝撃性が低下するおそれがあ
る。
【0057】ここで、遅れ破壊とは、130kg/mm
2以上の引張強さを持つ鋼に降伏点よりも低い静的引張
力を加えておくと、或る瞬間で突然破壊が起こる現象で
あり、詳しくは「鉄鋼材料学改訂版」門間改三著、実教
出版(株)参照のこと。
【0058】そこで、中空軸2の外周面に熱硬化処理し
てもその内周面における少なくとも雌ネジ部2fがその
影響を受けずに、その耐遅れ破壊特性と耐衝撃性とを確
保した場合、小型軽量でコンパクトなプーリユニットを
提供することに貢献することができる。
【0059】そこで、好ましくは、中空軸2の雌ネジ部
2fの硬さを、ビッカース硬さ(Hv)で200〜50
0に設定する。この場合、中空軸2の母材のビッカース
硬さ(Hv)が前記範囲の場合、雌ネジ部2fは、中空
軸2の母材そのものの硬度としてもよい。
【0060】また、中空軸2において、前記各内輪軌道
部を形成する領域の表層において、最表面硬さを、ビッ
カース硬さ(Hv)で640〜840に設定する。
【0061】さらに詳しく説明する。
【0062】この実施形態で使用する中空軸2の鋼材と
してJIS規格SCr415、SCr420、SCM4
15、SCM418、SCM420やSAE規格512
0鋼などの低炭素鋼材を用いる。
【0063】これら低炭素鋼材は、浸炭処理の際の浸炭
量の調整によりその表層を高い硬度を有したものとし、
内部を低い硬度を有したものとすることができる。
【0064】そこで、本実施形態では、このような低炭
素鋼材としてSAE規格5120など、ビッカース硬さ
(Hv)で200〜430のものを用いるとともに、そ
の低炭素鋼材に対して例えばガス浸炭させる。そして、
この浸炭においては、雌ネジ部2fに対して上述の図4
で示すようにマスキングによる防炭処理を施した状態に
して、一方向クラッチ3、両軸受4,5の内輪軌道部と
なる中空軸2の外周面に対して浸炭させるようにしてい
る。
【0065】そして、浸炭熱処理後に、前記マスキング
状態で焼入することにより内輪軌道部を形成する領域に
おいて、最表面にビッカース硬さ(Hv)で640〜8
40の硬化層(Hv550となる有効硬化層深さ0.4
〜1.2mm)を形成する一方、雌ネジ部2fは、母材
そのものの硬度となるようにし、次いで焼戻しを施して
靭性を付与する。
【0066】カム面10aは、その後バレル研磨し寸法
精度を確保している。
【0067】なお、前記マスキングに代えて、単に雌ネ
ジ部2fの表面に市販の硬化防止溶剤を塗布しておくだ
けでもよい。
【0068】雌ネジ部2fの場合、その強度確保のため
のビッカース硬さ(Hv)で少なくとも200以上必要
であるが、耐遅れ破壊特性や耐衝撃性確保のためには5
00以下であれば十分である。そのため、雌ネジ部2f
は、余裕を見込んでビッカース硬さ(Hv)で200〜
500に設定していればよい。
【0069】以上の処理によって、中空軸2の内周面に
おける雌ネジ部2fを、ビッカース硬さ(Hv)で20
0〜500に設定し、また、一方向クラッチ3や軸受
4,5の内輪軌道部とされる中空軸2の外周面の表層に
おいては、その最表面に、ビッカース硬さ(Hv)で6
40〜840に設定された硬化層を形成することにより
中空軸2を、小型軽量でコンパクトなプーリユニットの
提供に貢献できるものとすることができる。
【0070】なお、中空軸2の冷間鍛造による成形工程
について図8ないし図12を参照して説明する。冷間鍛
造は、周知されるように、素材の再結晶以下の温度また
は室温下で型の間で押し潰し部品を鍛造するものであ
る。そして、中空軸2の冷間鍛造の場合、中空軸2の外
周面形状に対応した穴を有した型30に対して中空軸2
成形用の母材をプレス機械でその穴に押し込んで行くこ
とで成形する。
【0071】まず、図8で示すように所要の型30に対
して中空軸成形用の母材31を据え込み、図示省略のプ
レス機械でその母材31を押し潰していき、母材31の
外周面を中空軸2の外周面形状に成形する。
【0072】次いで、この母材31を型30に入れたま
ま、母材31の一端部に対しては図9のように六角穴3
2を、また母材31の他端部に対して図10のように金
型33を用いてインロー穴34を成形する。
【0073】そして、母材31を型30から外して図1
1のように受け金型35で母材31の他端部を受けてお
いて内周面に金型36を用いて貫通穴37を形成する。
【0074】さらに、図12のように受け金型38で母
材31の他端部と外径部とを受けておいて母材31の外
周面に八角形のカム面10aを形成する。
【0075】こうして中空軸2が冷間鍛造により成形さ
れる。最後に、母材31の内周面に対してダイスを用い
て雌ネジ2fを形成する。なお、プーリ1における内周
面は、一方向クラッチ3と軸受4,5それぞれの外輪軌
道部となり、その最表層にビッカース硬さ(Hv)で6
40〜840に設定された硬化層を形成してもよい。
【0076】このプーリ1の鋼材として前記中空軸2と
同様の低炭素鋼材を用いたり、JIS規格S55C(機
械構造用鋼)を用いてもよい。この鋼材として、ビッカ
ース硬さ(Hv)で200〜350の鋼材を利用する。
このビッカース硬さは、プーリ1の内部硬度とされる。
【0077】これら鋼材に対して高周波焼き入れにより
所要軌道面に硬化層を形成する。この有効硬化層深さ
は、表面から1.2mm以下(Hv500となる有効硬
化層深さが0.4〜1.2mm)にすることが望まし
い。これにより、プーリ1の外径側まで硬化することな
くプーリ1の溝底部との間に非硬化層が形成されプーリ
1の破壊を効果的に防止できる。焼入れによる外径面
(プーリV溝形状)の寸法精歪みが低減できる。
【0078】プーリ1の硬化処理は上述した中空軸2と
同様に浸炭焼き入れでもよい。
【0079】なお、本発明は上述した実施形態1,2の
みに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考え
られる。 (1)上記実施形態では、一方向クラッチ3をプーリユ
ニットAに内蔵した形態で説明したが、一方向クラッチ
3は、種々な用途の装置に利用することができ、よって
使用対象としてプーリユニットAだけに限定されない。 (2)上記実施形態での一方向クラッチ3における細部
の構成についても限定されるものでなく、種々な変形が
考えられる。
【0080】
【発明の効果】本発明の一方向クラッチは、外周面の円
周数カ所にカム面が設けられている内輪を、従来例に比
べて簡単な工程で高精度な形状に製造できるように工夫
しているから、生産効率の向上ならびに製作コストの低
減に貢献できるとともに、製品品質の向上に貢献できる
ようになる。
【0081】本発明のプーリユニットでは、軸体につい
て一方向クラッチの内輪および2つの転がり軸受の各内
輪を兼用する構成として、部品点数を削減する他、この
軸体を簡単な工程で高精度な形状に製造できるように工
夫しているから、プーリユニットの製造コストの低減な
らびに製品品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1のプーリユニットの上半分
の縦断面図
【図2】図1の(2)−(2)線断面の矢視図
【図3】図1の一方向クラッチにおける内輪および保持
器を示す斜視図
【図4】図1の中空軸に対する浸炭処理時のマスキング
形態を示す説明図
【図5】本発明の実施形態2のプーリユニットの縦断面
【図6】図4の(6)−(6)線断面の矢視図
【図7】実施形態2の一方向クラッチにおける内輪およ
び保持器を示す斜視図
【図8】図7の中空軸の成形工程における据え込み状態
を示す図
【図9】図7の中空軸の成形工程における六角穴形成を
示す図
【図10】図7の中空軸の成形工程におけるインロー穴
形成を示す図
【図11】図7の中空軸の成形工程における貫通孔形成
を示す図
【図12】図7の中空軸の成形工程におけるカム面形成
を示す図
【符号の説明】
A プーリユニット 1 プーリ 2 中空軸 2f 雌ネジ部 3 一方向クラッチ 4,5 転がり軸受 10 一方向クラッチの内輪 10a 内輪のカム面 11 一方向クラッチの外輪 12 一方向クラッチの保持器 12a 保持器のポケット 13 一方向クラッチのころ 14 コイルバネ

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】同心状に配設される内・外輪の対向環状空
    間に介装され、この内・外輪を同期回転させるロック状
    態と相対回転させるフリー状態とに切り換える一方向ク
    ラッチであって、 前記内輪の外周面の円周数カ所に、前記外輪の円筒形内
    周面との間でくさび状空間を形成するカム面が設けられ
    ていて、このくさび状空間にころが、円環状の保持器に
    より周方向転動範囲が規制された状態で1つずつ配置さ
    れており、 前記内輪が、低炭素鋼材とされ、その外周形状が冷間鍛
    造または塑性加工により成形されているとともに、この
    外周面が浸炭処理により硬化されている、ことを特徴と
    する一方向クラッチ。
  2. 【請求項2】内周面が円筒形に形成される外輪と、 外輪の内周に挿通され円周数カ所に前記外輪の円筒形内
    周面との間でくさび状空間を形成するカム面が設けられ
    る内輪と、 前記くさび状空間それぞれに1つずつ配置されるころ
    と、 前記内・外輪の対向環状空間に介装されかつ前記ころそ
    れぞれが周方向での転動範囲を規制された状態で収納さ
    れるポケットを有する円環状の保持器と、 この保持器のポケットに配設されて前記ころをくさび状
    空間の狭い側に弾発付勢する弾性部材とを含み、 前記内輪が、低炭素鋼材とされ、その外周形状が冷間鍛
    造または塑性加工により成形されているとともに、この
    外周面が浸炭処理により硬化されている、ことを特徴と
    する一方向クラッチ。
  3. 【請求項3】プーリとその内周に挿通される軸体との対
    向環状空間に、上記請求項1または2の一方向クラッチ
    と、この一方向クラッチの少なくとも軸方向一側に配設
    される転がり軸受とが介装されたプーリユニットであっ
    て、 前記軸体が、前記一方向クラッチの内輪および両転がり
    軸受の各内輪を兼用する構成とされており、 この軸体が、低炭素鋼材とされ、その外周形状が冷間鍛
    造または塑性加工により成形されているとともに、前記
    各内輪の軌道部となる外周面が浸炭処理により硬化され
    ている、ことを特徴とするプーリユニット。
  4. 【請求項4】 請求項3のプーリユニットにおいて、 前記軸体が、中空状とされ、この軸体の内周面に他の軸
    体を挿入してネジ結合させるための雌ネジ部が形成され
    ており、 前記雌ネジ部の硬さが、ビッカース硬さ(Hv)で20
    0〜500に設定されている、ことを特徴とするプーリ
    ユニット。
  5. 【請求項5】 請求項4のプーリユニットにおいて、 前記雌ネジ部の硬さが、前記軸体の母材そのものの硬さ
    とされている、ことを特徴とするプーリユニット。
  6. 【請求項6】 請求項4または5のプーリユニットにお
    いて、 前記軸体において、少なくとも前記内輪軌道部を形成す
    る領域における最表面の硬さが、ビッカース硬さ(H
    v)で640〜840、かつ、ビッカーズ硬さ(Hv)
    で500となる有効硬化層深さが表面から1.2mm以
    下に設定されている、ことを特徴とするプーリユニッ
    ト。
  7. 【請求項7】 請求項4ないし6いずれかのプーリユニ
    ットにおいて、 前記プーリが、前記一方向クラッチの内輪および両転が
    り軸受の各外輪を兼用する構成とされており、 前記プーリにおける前記各外輪の軌道部となる内周面に
    おいて、その最表面の硬さが、ビッカース硬さ(Hv)
    で640〜840、かつ、ビッカース硬さ(Hv)で5
    00となる有効硬化層深さが表面から1.2mm以下に
    設定されている、ことを特徴とするプーリユニット。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007046687A (ja) * 2005-08-09 2007-02-22 Ntn Corp 一方向クラッチの内方部材及びその製造方法とその内方部材を備えたクラッチ内蔵プーリ
JP2015190573A (ja) * 2014-03-28 2015-11-02 Ntn株式会社 クラッチユニット
CN110410482A (zh) * 2019-08-21 2019-11-05 宁波市洋通汽车配件有限公司 超越皮带轮
JP2020068038A (ja) * 2018-10-26 2020-04-30 タタ コンサルタンシー サービシズ リミテッドTATA Consultancy Services Limited 製造プロセスチェーンに関する逆推論のためのシステムおよび方法

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