JP2001178460A - 固相担体表面へのdna断片の固定方法及びdnaチップ - Google Patents

固相担体表面へのdna断片の固定方法及びdnaチップ

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JP2001178460A
JP2001178460A JP37133299A JP37133299A JP2001178460A JP 2001178460 A JP2001178460 A JP 2001178460A JP 37133299 A JP37133299 A JP 37133299A JP 37133299 A JP37133299 A JP 37133299A JP 2001178460 A JP2001178460 A JP 2001178460A
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dna
fragment
dna fragment
dna chip
nucleic acid
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JP37133299A
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Keiichi Adachi
慶一 安達
Takemare Nakamura
剛希 中村
Hiroshi Shinoki
浩 篠木
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Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 固相担体表面に、予め別に調製したDNA断
片を迅速な反応によって結合させることが可能で、か
つ、反応生成物が安定に結合を維持することが可能な固
定方法を開発し、ブロッキング工程を特に必要としない
DNAチップを得ること。 【解決手段】 環状の酸無水物構造を持つポリマーを表
面に担持した固相担体上に、末端部にアミノ基を有する
DNA断片を含有する水性液体を点着すること、あるい
はカルボキシル基を持つモノマーを構成成分とするポリ
マーを表面に担持した固相担体を脱水剤により環状の酸
無水物とし、ついで、末端部にアミノ基を有するDNA
断片を含有する水性液体を点着することを特徴とするD
NA断片の固相担体表面への固定方法。この方法により
得られたDNAチップ、そしてそのDNAチップを用い
るDNAチップ上のDNA断片に対して相補性を有する
核酸断片を検出する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遺伝子の発現、変
異、多型等の同時解析に非常に有用である、多数のDN
A断片やオリゴヌクレオチドを固相表面に整列させた高
密度アレイ(DNAチップ)の作製に必要な、DNA断
片の固相担体表面への固定方法に関する。本発明はま
た、そのDNA断片の固相担体表面への固定方法により
製造されたDNAチップ、そしてDNAチップ上のDN
A断片に対して相補性を有する核酸断片の検出方法にも
関する。
【0002】
【従来の技術】多彩な生物の全遺伝子機能を効率的に解
析するための技術開発が進んでおり、その解析手段とし
て、DNAチップが利用されている。DNAチップは通
常、スライドガラス等の固相担体に多数のDNA断片を
整列固定させたマイクロアレイの形態にあり、DNAチ
ップに固定されているDNA断片と相補性を持つDNA
断片試料をハイブリダイゼーションによってDNAチッ
プ上に固定し、検出する方法に利用される。形成された
ハイブリッドの検出手段としては、DNA断片試料に予
め結合させた蛍光標識あるいは放射性標識を利用する方
法、そしてハイブリッドに取り込まれる導電性基を持つ
インターカレータを利用する方法などが知られている。
【0003】DNAチップを用いるDNAチップ技術
は、DNA以外の生体分子にも適用可能であり、創薬研
究、疾病の診断や予防法の開発、エネルギーや環境問題
対策等の研究開発に新しい手段を提供するものとして期
待されている。
【0004】DNAの解析手段としてのDNAチップの
利用が具体化してきたのは、DNAの塩基配列をオリゴ
ヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって決定
する方法(SBH,sequencing by hyb
ridization)が考案されたことに始まる(D
rmanac,R.et al.,Genomics,
4,page 114(1989))。SBHは、ゲル
電気泳動を用いる塩基配列決定法の限界を克服できる方
法ではあったが、実用化には至らなかった。
【0005】その後、DNAチップ作製技術が開発さ
れ、遺伝子の発現、変異、多型等を短時間で効率よく調
べる、いわゆるHTS(high throughpu
t screening)が可能となった(Fodo
r,S.P.A.,Science,251,page
767(1991)およびSchena,M.,Sc
ience,270,page 467(199
5))。
【0006】しかし、DNAチップ利用技術を実用化す
るためには、多数のDNA断片やオリゴヌクレオチドを
固相担体表面に整列固定させるためのDNAチップの作
製技術が必要とされる。
【0007】DNAチップの作製方法としては、固相担
体表面で直接DNA断片を合成する方法(「オン・チッ
プ法」という。)と、予め別に調製したDNA断片を固
相担体表面に固定する方法とが知られている。オン・チ
ップ法としては、光照射で選択的に除去される保護基の
使用と、半導体製造に利用されるフォトリソグラフィー
技術および固相合成技術とを組み合わせて、微小なマト
リックスの所定の領域での選択的合成を行う方法(「マ
スキング技術」という。)が代表的である。
【0008】予め調製したDNA断片を固相担体表面に
固定する方法としては、DNA断片の種類や固相担体の
種類に応じて下記の方法がある。 (1)固定するDNA断片がcDNA(mRNAを鋳型
にして合成した相補的DNA)やPCR産物(cDNA
をPCR法によって増幅させたDNA断片)の場合に
は、これらをDNAチップ作製装置に備えられたスポッ
タ装置を用いて、ポリ陽イオン(ポリリシン、ポリエチ
レンイミン等)で表面処理した固相担体表面に点着し
て、DNAの荷電を利用して固相担体に静電結合させる
方法が一般的に利用される。また、固相担体表面の処理
方法として、アミノ基、アルデヒド基、エポキシ基等を
有するシランカップリング剤を用いる方法も利用されて
いる(Geo,Z.et al.,Nucleic A
cid Research,22,5456−5465
(1994))。この場合には、アミノ基、アルデヒド
基等は、共有結合により固相担体表面に導入されるた
め、ポリ陽イオンによる場合と比較して安定に固相担体
表面に存在する。
【0009】DNAの荷電を利用する方法の変法とし
て、アミノ基で修飾したPCR産物をSSC(標準食塩
クエン酸緩衝液)に懸濁させ、これをシリル化したスラ
イドガラス表面に点着し、インキュベートした後、水素
化ホウ素ナトリウムによる処理および加熱処理を順に行
う方法が報告されている(Schena,M.et a
l.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
93,10614−10619(1996))。しか
し、この固定方法では必ずしも充分な安定度が得られ難
いという問題がある。DNAチップ技術では、検出限界
が重要となる。そのため、固相担体表面に充分な量で安
定にDNA断片を固定する技術の開発は、固定DNA断
片と標識した試料核酸断片とのハイブリダイゼーション
の検出限界の向上に大きく寄与する。
【0010】(2)固定するDNA断片が合成オリゴヌ
クレオチドの場合には、反応活性基を導入したオリゴヌ
クレオチドを合成し、表面処理した固相担体表面に該オ
リゴヌクレオチドを点着し、共有結合させる(「蛋白質
・核酸・酵素」、43巻、(1998)、2004−2
011、Lamture,J.B. et al.,Nu
cl.Acids Res.,22,2121−212
5,1994、およびGuo.Z.,et al.,
Nucl.Acids Res.,22,5456−5
465,1994)。例えば、アミノ基を導入したスラ
イドガラスに、PDC(p−フェニレンジイソチオシア
ネート)存在下、アミノ基導入オリゴヌクレオチドを反
応させる方法、および該スライドガラスに、アルデヒド
基導入オリゴヌクレオチドを反応させる方法が知られて
いる。これらの二つの方法は、前記(1)のDNAの荷
電を利用する方法と比べて、オリゴヌクレオチドが固相
担体表面に安定に固定される。しかし、PDCを存在さ
せる方法は、PDCとアミノ基導入オリゴヌクレオチド
との反応が遅く、またアルデヒド基導入オリゴヌクレオ
チドを用いる方法は、反応生成物であるシッフ塩基の安
定性が低い(通常、加水分解が起こり易い)という問題
点を有し、さらに、固相表面にアミノ基のようにDNA
との相互作用の強い官能基が全面に存在すると、被検体
である核酸断片がDNAチップ全面に非特異的に付着し
やすいため、検出を妨害するという問題がある。このた
め、これを防止するために、未反応の官能基を塞ぐ、ブ
ロッキングという工程が必要であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、固相担体表
面に、予め別に調製したDNA断片を迅速な反応によっ
て結合させることが可能で、かつ、反応生成物が安定に
結合を維持することが可能な固定方法、ブロッキング工
程を特に必要としないDNAチップ、および核酸断片の
検出方法を提供することを、その課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題は下記の本発
明によって解決された。 (1)環状の酸無水物構造を有するポリマーを表面に担
持した固相担体上に、末端部にアミノ基を有するDNA
断片を含有する水性液体を点着すること特徴とするDN
A断片の固相担体表面への固定方法。この固定方法で
は、環状の酸無水物構造を有するポリマーが無水マレイ
ン酸を重合成分として得られたものであることが好まし
い。また、水性液体の点着後、80乃至180℃の範囲
で加熱を行なうことが好ましい。 (2)カルボキシル基を有するモノマーを構成成分とす
るポリマーを表面に担持した固相担体を脱水剤により環
状の酸無水物とし、ついで、末端部にアミノ基を有する
DNA断片を含有する水性液体を点着することを特徴と
するDNA断片の固相担体表面への固定方法。この固定
方法でも、水性液体の点着後、80乃至180℃の範囲
で加熱を行なうことが好ましい。
【0013】(3)上記の方法によって得られたDNA
チップ。
【0014】(4)上記のDNAチップの表面に、蛍光
物質もしくは放射性物質で標識した核酸断片試料を含む
水性液を付与する工程、DNAチップに固定されている
DNA断片と相補性を有する核酸断片試料をハイブリダ
イゼーションによってDNAチップ上に固定する工程、
そしてDNAチップ上に固定された標識核酸断片試料の
蛍光標識もしくは放射性標識を検出する工程からなる、
DNAチップ上のDNA断片に対して相補性を有する核
酸断片の検出方法。 (5)上記のDNAチップの表面に、導電性基を有する
インターカレータと核酸断片試料とを含む水性液を付与
する工程、DNAチップに固定されているDNA断片と
相補性を有する核酸断片試料をハイブリダイゼーション
によってDNAチップ上に固定する工程、そしてDNA
チップのDNA断片と核酸断片試料とから形成されたハ
イブリッド構造内に取り込まれたインターカレータの導
電性基を介して流れる電流を電気化学的に検出する工程
からなる、DNAチップ上のDNA断片に対して相補性
を有する核酸断片の検出方法。
【0015】本発明は、被検体の核酸断片試料との相互
作用が小さく、かつアミノ基との反応性を有する固相担
体を用い、そして、アミノ基を末端に有するDNA断片
を作成し、固相担体上に点着した箇所でのみ、該DNA
断片と固相担体との間に強固な共有結合が形成され、固
定化が起こる。被検体核酸断片試料との相互作用の小さ
い固相担体を用いている結果として、ブロッキング工程
が不要となることに基づいている。
【0016】さらに詳しく述べると、本発明において
は、固相担体表面へのDNA断片固定は共有結合の形成
をもって行われる。この共有結合の形成は固相担体表面
に環状構造を有する酸無水物を固定し、この酸無水物と
アミノ基を有するDNA断片間で形成される。一般に、
アミノ基は酸無水物との反応が極めて高いために、水が
存在しても大きく反応が阻害されることなく結合を形成
する。一方、被検体となる核酸断片は水が存在する系に
おいては、酸無水物との反応が遅く、実質的に反応しな
い。従って、固相担体上に固定されるべきDNA断片の
末端にアミノ基を含有せしめ、これを含む水性液体を該
固相担体上に点着して、共有結合を形成させることがで
き、一方、非点着部分では被検体の核酸断片が酸無水物
とは反応しないため、ハイブリダイゼーションの起こっ
た個所でのみ被検体核酸断片が結合する。ハイブリダイ
ゼーション工程の後に洗浄操作を行うことにより、非点
着部分における非特異的な結合(吸着)を極めて小さい
レベルに抑制することができる。この結果、ブロッキン
グ工程が不要となる。本発明は以上の発見に基づいてい
る。
【0017】本発明のDNA断片の固相担体表面への固
定方法の好ましい態様は、以下の通りである。 (1)固相担体表面に環状の酸無水物構造を有するポリ
マーを結合させる。 (2)DNA断片として、末端にアミノ基を有し、その
塩基配列が既知であるものを用いる。 (3)(1)で作製した固相担体表面に、(2)で示し
た末端にアミノ基を有するDNA断片を含む液体を点着
する。点着部分においてはアミノ基を有するDNA断片
が共有結合により固定される。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明のDNA断片固定固相担体
(以下「DNAチップ」という。)では、固相担体表面
に固定された環状の酸無水物構造を有する化合物に、共
有結合を介してDNA断片が固定されている。DNA断
片の固相担体表面への固定は、固相担体表面に、環状の
酸無水物構造を有する化合物を固定する工程、そしてア
ミノ基を末端に含有したDNA断片を含む液体を点着
し、点着部分での酸無水物とアミノ基間の反応によって
DNA断片を固定する工程を順次行うことによってなさ
れる。
【0019】本発明の代表的な固定方法を下記に示す。
環状の酸無水物構造を有するポリマーを固相担体表面に
担持してなる固相担体に、末端にアミノ基を有するDN
A断片を含む液体を点着する。点着部分においては酸無
水物部分とアミノ基を有するDNA断片が共有結合を形
成する。このように、DNA断片を固定する工程を順次
行うことによってDNAチップを得ることができる。D
NA断片が有するアミノ基と、DNA断片のリン酸エス
テル基との間には、合成の都合上、クロスリンカーを存
在させてもよい。以下、各工程について説明する。
【0020】本発明で用いる固相担体は、疎水性、ある
いは親水性の低い担体であることが好ましい。また、そ
の表面が凹凸を有する平面性の低いものであっても好ま
しく用いることができる。固相担体の材質としては、ガ
ラス、セメント、陶磁器等のセラミックスもしくはニュ
ーセラミックス、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セ
ルロース、ビスフェノールAのポリカーボネート、ポリ
スチレン、ポリメチルメタクリレート等のポリマー、シ
リコン、活性炭、多孔質ガラス、多孔質セラミックス、
多孔質シリコン、多孔質活性炭、織物、編み物、不織
布、濾紙、短繊維、メンブレンフィルター等の多孔質物
質、金などの導電性材料などを拳げることができる。多
孔質物質の細孔の大きさは、2乃至1000nmの範囲
にあることが好ましく、2乃至500nmの範囲にある
ことが特に好ましい。固相担体の材質は、ガラスもしく
はシリコンであることが特に好ましい。これは、表面処
理の容易さや電気化学的方法による解析の容易さによる
ものである。固相担体の厚さは、100乃至2000μ
mの範囲にあることが好ましい。
【0021】本発明で用いられる環状の酸無水物構造を
有するポリマーについて述べる。環状の酸無水物構造と
しては、4乃至20員環を形成していることが好まし
く、5乃至12員環がより好ましく、5乃至7員環がさ
らに好ましい。この環状の酸無水物構造を有するポリマ
ーは次に述べる二つの方法によって得ることができる。
一つは予め環状の酸無水物構造を有するモノマーを単独
であるいは他の重合性成分と共重合することによって得
ることができる。環状の酸無水物構造を有するモノマー
としては、無水マレイン酸、デヒドロ無水グルタル酸、
無水イタコン酸の2重結合をそのまま重合性基として用
いる方法であり、例えば特開平7−110577号に記
載のポリマーである。この他、無水マレイン酸、デヒド
ロ無水グルタル酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無
水ヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水ホモフタル酸、
無水イサト酸、無水ナフタル酸、無水イミノジ酢酸、無
水ジグリコール酸、無水ジフェン酸、無水キノリン酸、
無水2,3−ピラジンジカルボン酸、無水3,4−ピリ
ジンジカルボン酸、無水2−スルホ安息香酸などの環状
無水物に対して、アクリル酸アミド、アクリル酸エステ
ル、メタクリル酸アミド、メタクリル酸エステル、スチ
レン、末端アルキレン、末端アルキンなどの重合性基を
結合する方法であり、例えば。特開平8−123026
号に記載のポリマーにおいて、ハーフアミド構造が酸無
水物構造になったものがこの例として挙げられる。
【0022】もう一つの方法としては、カルボキシル基
を有するモノマーを単独であるいは他の重合性成分と共
重合し、固相担体表面に担持した後、脱水剤を作用させ
て環状の酸無水物を形成する方法である。この方法は環
状の酸無水物構造の導入密度が上記の方法に比して劣る
場合が多いが、固相担体表面に担持する際に水やアルコ
ールなどの求核性基が共存しても良く、固相担体表面へ
の薄膜形成の面で自由度が大きい点で有利である。カル
ボキシル基を有するモノマーの例としてはアクリル酸、
メタクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、フ
マル酸、マレイン酸、ビニル酢酸、イタコン酸、マレイ
ン酸モノエステル、コハク酸モノ(2−アクリロイルオ
キシエチル)エステル、コハク酸モノ(2−メタクリロ
イルオキシエチル)エステルおよびこれらの塩が挙げら
れる。この他にマレイン酸、デヒドログルタル酸、グル
タル酸、フタル酸、ヒドロフタル酸、コハク酸、ホモフ
タル酸、ナフタル酸、イミノジ酢酸、ジグリコール酸、
ジフェン酸、キノリン酸、2,3−ピラジンジカルボン
酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、2−スルホ安息香
酸などに対して、アクリル酸アミド、アクリル酸エステ
ル、メタクリル酸アミド、メタクリル酸エステル、スチ
レン、末端アルキレン、末端アルキンなどの重合性基を
結合したものを用い、固相担体表面に担持した後、脱水
剤を作用させて環状の酸無水物を形成する方法も好まし
く用いることができる。
【0023】上記の方法で用いられる脱水剤としては、
酸無水物を生成する試薬として公知のものはいずれも使
用できるが、好ましくは酸無水物(無水酢酸、無水プロ
ピオン酸など)、酸ハロゲン化物(メタンスルホニルク
ロリド、クロロ炭酸イソブチルなど)、カルボジイミド
類(ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3
−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸
塩など)、2−ハロピリジニウム化合物(ヨウ化−2−
フルオロ−1−メチルピリジニウムなど)、2位に離脱
基を有する1,1,3,3−テトラアルキルアミジニウ
ム化合物(O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−
N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフル
オロリン酸塩、塩化2−クロロ−1,3−ジメチルイミ
ダゾリニウムなど)、活性エステルおよび活性アミド類
(酢酸1−スクシンイミジル、カルボニルジイミダゾー
ルなど)などが好ましく用いられる。
【0024】本発明において、環状の酸無水物構造を有
するポリマーはモノマー単位として10乃至100%の
範囲の酸無水物構造を有していることが好ましく、20
乃至95%の範囲の酸無水物構造を有していることが特
に好ましい。
【0025】本発明で用いられる環状の酸無水物構造を
有するポリマーは、固相担体と該ポリマーの密着性を向
上させる目的で、密着性改良用の共重合モノマーを使用
することができる。密着性改良用の共重合モノマーの例
としてはシランカップリング剤を好ましく用いることが
できる。この具体例としては、ジエトキシメチルビニル
シラン、ジメチルエトキシビニルシラン、メタクリル酸
−3−トリメトキシシリルプロピルエステル、トリアセ
トキシビニルシラン、アクリル酸−3−トリメトキシシ
リルプロピルエステル、トリアセトキシビニルシラン、
トリエトキシビニルシラン、3−(トリス(トリメチル
シリルオキシ)シリル)プロピルメタクリレート、3−
(トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル)プロピル
アクリレート、トリメトキシビニルシラン、トリス(2
−メトキシエトキシ)ビニルシランなどが挙げられる。
これらのモノマーは、ポリマー全体の0.05乃至20
質量%の範囲にあることが好ましく、0.1乃至10質
量%の範囲にあることが特により好ましく、0.3乃至
5質量%の範囲にあることが特に好ましい。
【0026】本発明で用いられる環状の酸無水物構造を
有するポリマーにおいて共重合モノマーとして好ましく
用いられる例としては、(メタ)アクリル酸エステル
類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニル
エチル類、ビニルエスエル類、スチレン類、クロトン酸
エステル類などから選ばれるものが挙げられる。具体的
には、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、例え
ば、アルキル(メタ)アクリレート、又は置換(メタ)
アルキルアクリレート(例えば、メチル(メ夕)アクリ
レート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メ
タ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレー
ト、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アク
リレート、へキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキ
シル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)ア
クリレート、オクチル(メタ)アクリレート、t−オク
チル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アク
リレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキ
シエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピ
ル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシプチル(メ
タ)アクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシ
プロピル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチ
ル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ
(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メ
タ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メ
トキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル
(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレー
ト、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フ
ェノキシエチル(メタ)アクリレートなど);アリル
(メタ)アクリレート(例えば、フェニル(メタ)アク
リレート、クレジル(メタ)アクリレート、ナフチル
(メタ)アクリレートなど);(メタ)アクリルアミド
類、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル
(メタ)アクリルアミド(該アルキル基としては、例え
ば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−
ブチル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル
基、シクロヘキシル基、ヒドロキシエチル基、ベンジル
基などがある。)、N−アリール(メタ)アクリルアミ
ド(該アリール基としては、例えば、フェニル基、トリ
ル基、ニトロフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシフェ
ニル基などがある。)、N,N−ジアルキル(メタ)ア
クリルアミド(該アルキル基としては、例えば、メチル
基、エチル基、ブチル基、イソブチル基、エチルヘキシ
ル基、シクロヘキシル基などがある。)、N,N−ジア
リル(メタ)アクリルアミド(該アリル基としては、例
えば、フェニル基などがある。)、N−メチル−N−フ
ェニル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル
−N−メチル(メタ)アクリルアミド、N2−アセトア
ミドエチル−N−アセチル(メタ)アクリルアミド、N
−(フェニルスルホニル)(メタ)アクリルアミド、N
−(p−メチルフェニルスルホニル(メタ)アクリルア
ミドなど:アリル化合物、例えば、アリルエステル類
(例えば、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸
アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステ
アリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、
乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノールなど;ビニ
ルエーテル類、例えば、アルキルビニルエーテル(該ア
ルキル基としては例えば、へキシル基、オクチル基、デ
シル基、エチルヘキシル基、メトキシエチル基、エトキ
シエチル基、クロルエチル基、1−メチル−2,2−ジ
メチルプロピル基、2−エチルブチル基、ヒドロキシエ
チル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ジメチルアミノ
エチル基、ジエチルアミノエチル基、ブチルアミノエチ
ル基、ベンジル基、テトラヒトロフルフリル基などがあ
る)、ビニルアリルエーテル(該アリール基としては例
えぱ、フェニル基、トリル基、クロロフェニル基、2,
4−ジクロロフェニル基、ナフチル基、アントラニル基
などがある);ビニルエステル類、例えば、ビニルブチ
レート、ピニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセ
テート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、
ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニル
ジクロロアセテト、ビニルメトキシアセテート、ビニル
ブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニ
ルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−
フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシ
レート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安
息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ
酸ビニルなど;スチレン類、例えば、スチレン、アルキ
ルスチレン(例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレ
ン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルス
チレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキ
シルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレ
ン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフ
ルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセ
トキシメチルスチレンなど)、アルコキシスチレン(例
えば、メトキシスチレン、4−メトキシ−3−メチルス
チレン、ジメトキシスチレンなど)、ハロゲノスチレン
(例えば、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリク
ロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロス
チレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードス
チレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2
−ブロモ−4−トリフルオロメチルスチレン、4−フル
オロ−3−トリフルオロメチルスチレンなど);クロト
ン酸エステル類、例えば、クロトン酸アルキル(例え
ば、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、グリセリ
ンモノクロトネートなど);イタコン酸ジアルキル類
(例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、
イタコン酸ジブチルなど);マレイン酸あるいはフマル
酸のジアルキル類(例えば、ジメチルマレエート、ジブ
チルフマレートなど):(メタ)アクリロニトリル等が
ある。
【0027】本発明において用いられる環状の酸無水物
構造を有するポリマーの重量平均分子量は、500乃至
100000の範囲にあることが好ましく、700乃至
50000の範囲にあることがより好ましく、800乃
至20000の範囲にあることが特に好ましい。重量平
均分子量が500未満のポリマーは、DNA断片の固定
性に欠けるため、好ましくない。
【0028】環状の酸無水物構造を有するポリマーが固
定された固相担体は、次のようにして作製することがで
きる。ガラス製の担体の場合には、ポリマーの共重合成
分として導入された前述のシランカップリング剤を接
触、反応させて固相表面上に環状の酸無水物構造を有す
るポリマーが担持された固相担体を得ることができる。
【0029】表面にアミノ基を有する固相担体(例え
ば、ガラス製担体表面を3−アミノプロピルトリメトシ
キシランを作用させて作製する)を用いる場合には、予
め環状の酸無水物構造が導入されたポリマーにおいて
は、該アミノ基に直接接触させる形で固定化することが
できる。また、環状の酸無水物構造を有していない、カ
ルボキシル基を有するポリマーの場合には、該カルボキ
シル基を有するポリマーの溶液を担体上に付与した後
に、適当な縮合剤を作用させて、アミド結合を形成させ
ることにより、固定することができる。この際に、縮合
剤としては、前述の酸無水物を固相担体上で形成する時
に用いられる脱水剤を使用することができる。従って、
この方法の場合には担体上へのポリマーの固定と酸無水
物の形成を同時に行うこともできる。
【0030】担体として、脂肪族水酸基を有する重合性
モノマーを構成単位として有するポリマーを担持した固
相担体も好ましく用いることができる。この場合、脂肪
族水酸基を有する重合性モノマーとしては3−ヒドロキ
シプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリ
レート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどが挙
げられ、これらの重合性モノマーはホモポリマーとして
用いることもできるが、適宜、他の重合性モノマーと共
重合して用いることも好ましい。これらのポリマーは、
ラテックスとして担体表面に塗布した後、加熱処理など
によって融着させる方法もとることができる。
【0031】上で述べた脂肪族水酸基を有する化合物を
固相担体に確実に固定する方法として、固定化剤を用い
ることができる。このような固定化剤としてはシランカ
ップリング剤、多官能エポキシ化合物、多官能ビニルス
ルホン、塩化シアヌルなどの多点反応剤が好ましく用い
られる。この中ではシランカップリング剤が好ましく、
シランカップリング剤の例としては1,2−ビス(トリ
メトキシシリル)エタン、1,7−ジクロロオクタメチ
ルテトラシロキサン、1,3−ジクロロ−1,1,3,
3−テトライソプロピルシロキサン、3−グリシジルオ
キシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。ま
た、シランカップリング剤を構成モノマーとして有する
ポリマーを用いることもできる。脂肪族水酸基を有する
化合物を固定する担体上には、層間の密着を良くするた
めに、ゼラチンなどの下塗り層を施してもよいし、コロ
ナ放電などにより、担体表面を処理する方法も用いるこ
とができる。
【0032】本発明の環状の酸無水物構造を有するポリ
マーを固相担体上に固定する工程中およびDNA断片を
点着後までの工程においては、酸、塩基や触媒の使用、
水および有機溶媒の使用、加熱なども適宜行うことがで
きる。酸としては無機酸および有機酸のいずれでも用い
ることができるが、塩酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、硫
酸、p−トルエンスルホン酸などが好ましく、トリフル
オロ酢酸、酢酸が好ましい。
【0033】塩基としては、無機塩基および有機塩基の
何れも用いることができるが、1−メチル−2−ピロリ
ドン、トリエチルアミン、ピリジン、炭酸カリウムある
いは炭酸ナトリウムを用いることがより好ましく、1−
メチル−2−ピロリドン、トリエチルアミンあるいはピ
リジンを用いることがさらに好ましく、1−メチル−2
−ピロリドンを用いることが特に好ましい。加熱する場
合には、その温度は40乃至150℃の範囲にあること
が好ましく、50乃至120℃の範囲にあることが特に
好ましい。
【0034】表面処理がされた固相担体表面上には、さ
らに、電荷を有する親水性高分子等からなる層や架橋剤
からなる層を設けてもよい。このような層を設けること
によって表面処理がされた固相担体の凹凸を軽減するこ
とができる。固相担体の種類によっては、その担体中に
親水性高分子等を含有させることも可能であり、このよ
うな処理を施した固相担体も好ましく用いることができ
る。
【0035】クロスリンカーは、単結合、アルキレン基
あるいはN−アルキルアミノアルキレン基であることが
好ましく、単結合、ヘキシレン基あるいはN−メチルア
ミノへキシレン基であることが特に好ましい。
【0036】DNA断片は、目的によって二通りに分け
ることができる。遺伝子の発現を調べるためには、cD
NA、cDNAの一部、EST等のポリヌクレオチドを
使用することが好ましい。これらのポリヌクレオチド
は、その機能が未知であってもよいが、一般的にはデー
タベースに登録された配列を基にしてcDNAのライブ
ラリー、ゲノムのライブラリーあるいは全ゲノムをテン
プレートとしてPCR法によって増幅して調製する(以
下、「PCR産物」という。)。PCR法によって増幅
しないものも好ましく使用することができる。また、遺
伝子の変異や多型を調べるには、標準となる既知の配列
をもとにして、変異や多型に対応する種々のオリゴヌク
レオチドを合成し、これを使用することが好ましい。さ
らに、塩基配列分析の場合には、4n(nは、塩基の長
さ)種のオリゴヌクレオチドを合成したものを使用する
ことが好ましい。DNA断片の塩基配列は、一般的な塩
基配列決定法によって予めその配列が決定されているこ
とが好ましい。DNA断片は、2乃至50量体であるこ
とが好ましく、10乃至25量体であることが特に好ま
しい。
【0037】DNA断片の点着は、DNA断片を水性媒
体に溶解あるいは分散した水性液を、96穴もしくは3
84穴プラスチックプレートに分注し、分注した水性液
をスポッター装置等を用いて固相担体表面上に滴下して
行うことが好ましい。
【0038】点着後のDNA断片の乾燥を防ぐために、
DNA断片が溶解あるいは分散してなる水性液中に、高
沸点の物質を添加してもよい。高沸点の物質としては、
DNA断片が溶解あるいは分散してなる水性液に溶解し
得るものであって、試料核酸断片とのハイブリダイゼー
ションを妨げることがなく、かつ粘性の大きくない物質
であることが好ましい。このような物質としては、グリ
セリン、エチレングリコール、ジメチルスルホキシドお
よび低分子の親水性ポリマーを挙げることができる。親
水性ポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリエチ
レングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム等を挙げる
ことができる。ポリマーの分子量は103乃至106の範
囲にあることが好ましい。高沸点の物質としては、グリ
セリンあるいはエチレングリコールを用いることがさら
に好ましく、グリセリンを用いることが特に好ましい。
高沸点の物質の濃度は、DNA断片の水性液中、0.1
乃至2容量%の範囲にあることが好ましく、0.5乃至
1容量%の範囲にあることが特に好ましい。また、同じ
目的のために、DNA断片を点着した後の固相担体を、
90%以上の湿度および25乃至50℃の温度範囲の環
境に置くことも好ましい。
【0039】DNA断片を点着後、紫外線、水素化ホウ
素ナトリウムあるいはシッフ試薬による後処理を施して
もよい。これらの後処理は、複数の種類を組み合わせて
行ってもよく、加熱処理と紫外線処理を組み合わせて行
うことが特に好ましい。点着後は、インキュベーション
を行うことも好ましい。インキュベート後、未点着のD
NA断片を洗浄して除去することが好ましい。
【0040】DNA断片の固定量は、固相担体表面に対
して、102乃至105種類/cm2の範囲にあることが
好ましい。DNA断片の量は、1乃至1015モルの範囲
にあり、重量としては数ng以下であることが好まし
い。点着によって、DNA断片の水性液は、固相担体表
面にドットの形状で固定される。ドットの形状は、ほと
んど円形である。形状に変動がないことは、遺伝子発現
の定量的解析や一塩基変異を解析するために重要であ
る。ドット間の距離は、0乃至1.5mmの範囲にある
ことが好ましく、100乃至300μmの範囲にあるこ
とが特に好ましい。1つのドットの大きさは、直径が5
0乃至300μmの範囲にあることが好ましい。点着す
る量は、100pL乃至1μLの範囲にあることが好ま
しく、1乃至100nLの範囲にあることが特に好まし
い。
【0041】環状の酸無水物構造を有するポリマーが導
入された固相担体に、アミノ基を有するDNA断片を点
着させると、該DNA断片が共有結合によって固相担体
表面に固定されるが、固相担体の表面には該DNA断片
が結合していない該ポリマーも存在する。このような該
ポリマーの酸無水物構造は、標識された核酸断片試料と
のハイブリダイゼーションにおいて非特異的な反応を生
じる可能性があるため、予め、その該酸無水物構造をブ
ロッキング処理(ブロッキング処理を施さなくても、本
発明の固定方法によって製造された、DNA断片固定固
相担体は、充分にDNAチップとして使用することがで
きる。)しておくことも好ましい。ブロッキング処理に
使用されるブロッキング試剤としては、アンモニア、エ
タノールアミン、タウリン、アミノ酸類、エチルアミン
等を挙げることができる。
【0042】上記の工程によって作製されたDNAチッ
プの寿命は、cDNAが固定されてなるcDNAチップ
で数週間、オリゴDNAが固定されてなるオリゴDNA
チップではさらに長期間である。これらのDNAチップ
は、遺伝子発現のモニタリング、塩基配列の決定、変異
解析、多型解析等に利用される。検出原理は、後述する
標識した試料核酸断片とのハイブリダイゼーションであ
る。
【0043】標織方法としては、大別してRI法と非R
I法(蛍光法、ビオチン法、電気化学的方法、化学発光
法等)とが知られているが、本発明のDNAチップは、
蛍光法を用いる際に特に有利である。蛍光物質として
は、核酸の塩基部分と結合できるものであれば何れも用
いることができるが、たとえば、シアニン色素(例え
ば、CyDyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、ロー
ダミン6G試薬、N−アセトキシ−N2−アセチルアミ
ノフルオレン(AAF)あるいはAAIF(AAFのヨ
ウ素誘導体)を使用することができる。
【0044】なお、上記の標識を利用する以外にも、導
電性基を持ち、形成されたハイブリッド構造体に取り込
まれる性質を持つインターカレータを用いる電気化学的
な検出方法を利用する方法も知られており、本発明のD
NAチップは電気化学的な検出方法に利用することもで
きる。
【0045】試料として用いる核酸断片としては、その
配列や機能が未知であるDNA断片試料あるいはRNA
断片試料を用いることが好ましい。試料核酸断片は、遺
伝子発現を調べる目的では、真核生物の細胞や組織サン
プルから単離することが好ましい。試料がゲノムなら
ば、赤血球を除く任意の組織サンプルから単離すること
が好ましい。赤血球を除く任意の組織は、末梢血液リン
パ球、皮膚、毛髪、***等であることが好ましい。試料
がmRNAならば、mRNAが発現される組織サンプル
から抽出することが好ましい。mRNAは、逆転写反応
により標識dNTP(「dNTP」は、塩基がアデニン
(A)、シトシン(C)、グアニン(G)もしくはチミ
ン(T)であるデオキシリボヌクレオチドを意味す
る。)を取り込ませて標識cDNAとすることが好まし
い。dNTPとしては、化学的な安定性のため、dCT
Pを用いることが好ましい。1回のハイブリダイゼーシ
ョンに必要なmRNA量は、液量や標識方法によって異
なるが、数μg以下であることが好ましい。尚、DNA
チップ上のDNA断片がオリゴDNAである場合には、
試料核酸断片は低分子化しておくことが望ましい。原核
生物の細胞では、mRNAの選択的な抽出が困難なた
め、全RNAを標識することが好ましい。試料核酸断片
は、遺伝子の変異や多型を調べる目的では、標識プライ
マーもしくは標識dNTPを含む反応系で標的領域のP
CRを行って得ることが好ましい。
【0046】ハイブリダイゼーションは、96穴もしく
は384穴プラスチックプレートに分注しておいた、標
識した試料核酸断片が溶解あるいは分散してなる水性液
を、上記で作製したDNAチップ上に点着することによ
つて実施することが好ましい。点着の量は、1乃至10
0nLの範囲にあることが好ましい。ハイブリダイゼー
ションは、室温乃至70℃の温度範囲で、そして6乃至
20時間の範囲で実施することが好ましい。ハイブリダ
イゼーション終了後、界面活性剤と緩衝液との混合溶液
を用いて洗浄を行い、未反応の試料核酸断片を除去する
ことが好ましい。界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナ
トリウム(SDS)を用いることが好ましい。緩衝液と
しては、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝
液、トリス緩衝液、グッド緩衝液等を用いることができ
るが、クエン酸緩衝液を用いることが特に好ましい。
【0047】DNAチップを用いるハイブリダイゼーシ
ョンの特徴は、標識した試料核酸断片の使用量が非常に
少ないことである。そのため、固相担体に固定するDN
A断片の鎖長や標識した試料核酸断片の種類により、ハ
イブリダイゼーションの最適条件を設定する必要があ
る。遺伝子発現の解析には、低発現の遺伝子も十分に検
出できるように、長時間のハイブリダイゼーションを行
うことが好ましい。一塩基変異の検出には、短時間のハ
イブリダイゼーションを行うことが好ましい。また、互
いに異なる蛍光物質によって標識した試料核酸断片を二
種類用意し、これらを同時にハイブリダイゼーションに
用いることにより、同一のDNAチップ上で発現量の比
較や定量ができる特徴もある。
【0048】
【実施例】[実施例1]DNA断片固定スライドの作成
及びDNA断片の固定量の測定 (1)環状の酸無水物構造を有するポリマーが固定され
たスライド(C)の作成常法にて合成したポリマー(ス
チレン:無水マレイン酸:3−(トリメトキシシリル)
プロピルメタクリレート(東京化成工業(株)製)=6
5:30:5モル比)をプロピレングリコールモノメチ
ルエーテルアセテート/メチルエチルケトン=4/1に
溶解し、10質量%の溶液を作成した。この溶液に、ス
ライドガラス(25mm×75mm)を10分間浸した
後取り出し、アセトニトリルで洗浄後、110℃で10
分間乾燥して、環状の酸無水物構造を有するポリマーが
表面に固定されたスライド(C)を作成した。
【0049】(2)DNA断片の点着と蛍光強度の測定 3'末端および5'未端がそれぞれアミノ基、蛍光標織試
薬(FluoroLink Cy5dCTP、アマシャ
ム・ファルマシア・バイオテック社製)で修飾されたD
NA断片(3'CTAGTCTGTGAAGTGTCTGATC5')を0.1M
炭酸緩衝液(pH9.3)に分散してなる水性液(1×
10-6M、1μL)に、3質量%になるようにジメチル
スルホキシドを添加した溶液を作成し、上記(1)で得
たスライド(C)にこれを点着した。直ちに、点着後の
スライドを25℃、湿度90%にて1時間放置した後、
このスライドを0.1質量%SDS(ドデシル硫酸ナト
リウム)と2×SSC(2×SSC:SSCの原液を2
倍に希釈した溶液、SSC:標準食塩クエン酸緩衝液)
との混合溶液で2回、0.2×SSC水溶液で1回順次
洗浄した。次いで、上記の洗浄後のスライドを0.1M
グリシン水溶液(pH10)中に1時間30分浸漬した
後、蒸留水で洗浄し、室温で乾燥したのち、100℃で
15分間加熱し、DNA断片が固定されたスライド(D
1)を得た。このスライド(D1)表面の蛍光強度を蛍
光スキャニング装置で測定したところ、1530であっ
た。本発明の固定化方法により、DNA断片が効率よく
スライドガラスに固定されたことが分かる。
【0050】[実施例2]試料DNA断片の検出 (1)DNAチップの作成 3'末端が蛍光標識試薬で修飾されていないDNA断片
を用いる以外は実施例1と同様にして、DNA断片が固
定されたスライド(D2)を得た。 (2)試料DNA断片の検出 5'末端にCy5が結合した22merの試料オリゴヌ
クレオチド(GATCAGACACTTCACAGACTAG5')をハイブリ
ダイゼーション用溶液(4×SSCおよび10質量%の
SDSの混合溶液)(20μL)に分散させたものを、
上記(1)で得たスライド(D2)に点着し、表面を顕
微鏡用カバーガラスで保護した後、モイスチャンバー内
にて60℃で20時間インキュベートした。次いで、こ
のものを0.1質量%SDSと2×SSCとの混合溶
液、0.1質量%SDSと0.2×SSCとの混合溶
液、および0.2×SSC水溶液で順次洗浄した後、6
00rpmで20秒間遠心し、室温で乾燥した。スライ
ドガラス表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定
したところ、542であった。本発明の固定化方法によ
って作成されたDNAチップを用いることによって、D
NAチップに固定されているDNA断片と相補性を有す
る試料DNA断片を検出できることが分かる。
【0051】
【発明の効果】本発明によって、固相担体表面にDNA
断片を安定かつ迅速に固定することができる。特に、固
相担体表面に環状の酸無水物構造を有するポリマーを有
する場合には、DNA断片の結合が共有結合であるた
め、強固にDNA断片を固定することができる。DNA
断片の安定な固定は、遺伝子解析等に有効に利用するこ
とができる高い検出限界を有するDNAチップの作製が
可能となる。その一つの例として、本発明によって作製
されたDNAチップを用いて、試料核酸断片とのハイブ
リダイゼーションを行うことにより、DNAチップに固
定されているDNA断片に相補性を有する試料核酸断片
を感度よく検出することができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/566 C12N 15/00 ZNAZ (72)発明者 篠木 浩 埼玉県朝霞市泉水3−11−46 富士写真フ イルム株式会社内 Fターム(参考) 4B033 NA45 NB04 NB13 NB15 NB25 NB34 NB36 NC03 ND05 ND08 4B063 QA01 QA18 QQ42 QR32 QR56 QR84 QS03 QS34 QS39 QX02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 環状の酸無水物構造を有するポリマーを
    表面に担持した固相担体上に、末端部にアミノ基を有す
    るDNA断片を含有する水性液体を点着すること特徴と
    するDNA断片の固相担体表面への固定方法。
  2. 【請求項2】 環状の酸無水物構造を有するポリマーが
    無水マレイン酸を重合成分として得られたものであるこ
    とを特徴とする請求項1に記載のDNA断片の固相担体
    表面への固定方法。
  3. 【請求項3】 カルボキシル基を有するモノマーを構成
    成分とするポリマーを表面に担持した固相担体を脱水剤
    により環状の酸無水物とし、ついで、末端部にアミノ基
    を有するDNA断片を含有する水性液体を点着すること
    を特徴とするDNA断片の固相担体表面への固定方法。
  4. 【請求項4】 水性液体の点着後、80乃至180℃の
    範囲で加熱を行なうことを特徴する請求項1乃至3に記
    載のDNA断片の固相担体表面への固定方法。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のうちのいずれかの項に
    記載の方法によって得られたDNAチップ。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載のDNAチップの表面
    に、蛍光物質もしくは放射性物質で標識した核酸断片試
    料を含む水性液を付与する工程、DNAチップに固定さ
    れているDNA断片と相補性を有する核酸断片試料をハ
    イブリダイゼーションによってDNAチップ上に固定す
    る工程、そしてDNAチップ上に固定された標識核酸断
    片試料の蛍光標識もしくは放射性標識を検出する工程か
    らなる、DNAチップ上のDNA断片に対して相補性を
    有する核酸断片の検出方法。
  7. 【請求項7】 請求項5に記載のDNAチップの表面
    に、導電性基を有するインターカレータと核酸断片試料
    とを含む水性液を付与する工程、DNAチップに固定さ
    れているDNA断片と相補性を有する核酸断片試料をハ
    イブリダイゼーションによってDNAチップ上に固定す
    る工程、そしてDNAチップのDNA断片と核酸断片試
    料とから形成されたハイブリッド構造内に取り込まれた
    インターカレータの導電性基を介して流れる電流を電気
    化学的に検出する工程からなる、DNAチップ上のDN
    A断片に対して相補性を有する核酸断片の検出方法。
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