JP2001172457A - 環境に配慮した難燃性樹脂組成物並びにそれを用いた絶縁電線、テープ又はチューブ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】環境汚染がなく、不飽和ポリエステル系含浸ワ
ニスの乾燥性に問題のない製品を実現できる難燃性樹脂
組成物、並びにこれを用いた絶縁電線、テープ又はチュ
ーブの提供。 【解決手段】ハロゲン系ポリマ１００重量部に対してナ
フテン酸又はオクチル酸又はラウリン酸の金属塩を０．
５〜１０重量部含有し、鉛を含有しない環境に配慮した
ハロゲン系樹脂組成物、及び、非ハロゲン系ポリマ１０
０重量部に対してナフテン酸又はオクチル酸又はラウリ
ン酸の金属塩を０．５〜１０重量部、水酸化マグネシウ
ム又は水酸化アルミニウムを４０重量部以上含有し、鉛
を含有しない環境に配慮した難燃性樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は鉛を含まない環境に
配慮した難燃性樹脂組成物、並びにこの樹脂組成物を用
いた絶縁電線、テープ又はチューブに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】ポリ塩化ビニルに代表されるハロゲン系
ポリマは、電気、機械特性に加えて難燃性に優れるた
め、電線の絶縁体や電気絶縁性テープおよびチューブと
して広く使用されている。このハロゲン系ポリマには耐
熱性を高めるため、三塩基性硫酸鉛やフタル酸鉛などの
鉛系安定剤が多用されるが、近年、有害な鉛が電線焼却
時に飛灰として大気中に拡散したり、埋め立て時に地下
水に溶出するなどの環境汚染が懸念されている。

【０００３】このことから、鉛化合物の代わりに、ステ
アリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸
バリウムに代表されるカルシウム、亜鉛、バリウムを金
属成分として持つ脂肪酸金属塩、ハイドロタルサイト
類、ポリオール、β−ジケトン化合物及びその金属塩な
どの鉛を含まない化合物いわゆる非鉛系安定剤で耐熱性
を高めた組成物が提案されている。

【０００４】一方、最近、鉛の他に有害性の高いハロゲ
ン化水素やダイオキシンの原因となるハロゲンを含まな
い絶縁体からなる通称エコ電線（エコマテリアル電線）
が登場している。これはポリエチレンに代表される非ハ
ロゲン系ポリマに、無機難燃剤の１種である水酸化マグ
ネシウムまたは水酸化アルミニウムを配合して難燃化し
た絶縁体を有する電線である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかし、鉛を含まず環
境に配慮したこれらの電線を電源トランス等の口出し線
として用いたとき、従来の鉛を含む電線に比べて、含浸
剤である不飽和ポリエステル系ワニスが乾燥しにくいと
いう欠点があることが分った。

【０００６】本発明の目的は、不飽和ポリエステル系含
浸ワニスの乾燥性に問題のない製品を実現できる鉛を含
有しない難燃性樹脂組成物、並びにこれを用いた絶縁電
線、テープ又はチューブを提供することである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は、ハロゲン系ポリマ１００重量部に対して
ナフテン酸又はオクチル酸又はラウリン酸の金属塩を
０．５〜１０重量部含有し、鉛を含有しない環境に配慮
した難燃性樹脂組成物を提供する（請求項１）。

【０００８】又、本発明は、非ハロゲン系ポリマ１００
重量部に対してナフテン酸又はオクチル酸又はラウリン
酸の金属塩を０．５〜１０重量部、水酸化マグネシウム
又は水酸化アルミニウムを４０重量部以上含有し、鉛を
含有しない環境に配慮した難燃性樹脂組成物を提供する
（請求項４）。

【０００９】更に、本発明は、上記難燃性樹脂組成物を
導体外周に被覆した絶縁電線、テープ成形したテープ及
びチューブ成形したチューブを提供するものである。

【００１０】本発明においては、上記組成物を銅やアル
ミニウム等の導体外周に押出等により被覆することによ
り絶縁電線を得ることができ、又、テープ又はチューブ
成形することによりテープ又はチューブを得ることがで
きる。

【００１１】本発明者らは不飽和ポリエステル系ワニス
の乾燥性に影響を与える因子を鋭意検討した結果、従来
ハロゲン系ポリマ組成物の耐熱性を高めるために用いて
きた鉛化合物がワニスの乾燥性を著しく高めていた事実
を見出した。この鉛に代わるワニス乾燥効果を持つ化合
物を広範に探索した結果、ナフテン酸又はオクチル酸又
はラウリン酸の金属塩が有効であることを見出した。

【００１２】

【発明の実施の形態】金属成分としては環境汚染を小さ
くするためマンガン、コバルト、亜鉛、銅、カルシウム
及びスズの中から選択することが好ましい。ナフテン酸
又はオクチル酸又はラウリン酸の金属塩は単独で使用し
ても、２種類以上を組み合わせて使用しても良い。一
方、これら金属塩の配合量はハロゲン系ポリマ１００重
量部に対して０．５〜１０重量部とする必要があり、
０．５重量部未満では乾燥性を高める効果がなく、１０
重量部を超えて配合すると成形体の耐熱性が損なわれる
ためである。

【００１３】本発明で使用できるハロゲン系ポリマとし
ては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、クロロス
ルフォン化ポリエチレン、クロロプレンゴム、ポリ塩化
ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビ
ニル−アクリル酸エチル共重合体などが代表的である
が、これに限るものではない。又、これらのハロゲン系
ポリマを２種類以上組み合わせたポリマブレンドであっ
てもよい。更に、ハロゲン系ポリマとポリエチレン、エ
チレンプロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合
体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−
メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メ
チル共重合体、ニトリルゴム、ポリエステル、熱可塑性
ポリウレタンなど非ハロゲン系ポリマとのポリマブレン
ドとして使用することもできる。

【００１４】ハロゲン系ポリマの耐熱性を高めるために
使用する安定剤としては、ステアリン酸カルシウム、ス
テアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウムなどに代表され
るカルシウム、亜鉛、バリウムを金属成分として持つ脂
肪酸金属塩、ハイドロタルサイト、ポリオール、β−ジ
ケトン化合物及びその金属塩などであり、定法に従っ
て、これらを組み合わせて使うこともできる。

【００１５】ハロゲン系ポリマがポリ塩化ビニルの場
合、可塑剤としてジ−（２−エチルヘキシル）フタレー
ト、ジ−ｎ−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレ
ート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸系エステ
ル、トリ−（２−エチルヘキシル）トリメリテート、ト
リ−ｎ−オクチルトリメリテート、トリイソノニルトリ
メリテート、トリイソデシルトリメリテート等のトリメ
リット酸系エステル、テトラ−（２−エチルヘキシル）
ピロメリテート、テトラ−ｎ−オクチルピロメリテー
ト、テトライソノニルピロメリテート等のピロメリット
酸系エステルの他にアジピン酸系エステル、セバシン酸
系エステル、アゼライン系酸エステル、塩化パラフィン
などを定法に従って、１種あるいは２種以上組み合わせ
て使うことができる。これら可塑剤の配合量はポリ塩化
ビニル１００重量部あたり４０〜８０重量部程度である
が、硬度や耐熱性の要求によって増減するので特に規定
するものではない。

【００１６】一方、本発明における非ハロゲン系ポリマ
としてはポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合
体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−
アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−オクテン１共重
合体、エチレン−ブテン−１共重合体、エチレン−スチ
レン共重合体、エチレンプロピレンゴム、スチレン−エ
チレンブチレン−スチレン共重合体、エチレン−メタク
リル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共
重合体、ポリプロピレン、シリコーンゴムなどが代表的
であるが、これに限るものではない。また、２種類以上
のポリマを組み合わせてポリマブレンドとすることもで
きる。

【００１７】これらの非ハロゲン系ポリマを難燃化する
ための水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムについ
ては特に規定しないが、好ましくは粒子径が１μｍ前後
でステアリン酸、ステアリン酸ナトリウムあるいはシラ
ンカップリング剤またはチタネートカップリング剤で表
面処理されているものが望ましい。また、ニッケルや亜
鉛を固溶したタイプの水酸化マグネシウムや水酸化アル
ミニウムも使用することができる。水酸化マグネシウム
や水酸化アルミニウムの配合量を非ハロゲン系ポリマ１
００重量部あたり４０重量部以上に規定したのは、この
量未満ではＪＩＳ規格の６０度傾斜燃焼試験に合格する
ことが難しいからである。上限値は特に規定しないが、
組成物の成形加工性及び成形体の機械的強度等を考慮す
ると３５０重量部程度である。なお、水酸化マグネシウ
ムと水酸化アルミニウムは併用することも可能である。

【００１８】本発明の樹脂組成物には定法に従って、滑
剤、充填剤、難燃助剤、プロセスオイル、着色剤、酸化
防止剤、防蟻剤、防鼠剤、加工助剤、耐候付与剤、発泡
剤などを加えることができる。また、電子線照射や有機
過酸化物を用いて架橋性の樹脂組成物とすることもでき
る。

【００１９】

【実施例】次に本発明の実施例を比較例と共に説明す
る。表１の各例に示す配合成分を所定量秤量し、バンバ
リーミキサーで混練して押出用のコンパウンドを作製し
た。ただし、実施例７、８、比較例５についてはバンバ
リーミキサー混練時に架橋が起きるのを防ぐため、有機
過酸化物であるジクミルパーオキサイドを除いて混練
し、別工程で低温のミキシングロールによって有機過酸
化物を分散させた。このようにして作製したコンパウン
ドを１７０℃に設定した６５mm押出機に導入し、断面積
０．５mm² のスズめっき銅導体上に０．５mmの厚さに押
し出して電線を得た。有機過酸化物で架橋を行う実施例
７，８、比較例５は、引き続き２３０℃の加硫筒の中で
架橋反応を行い絶縁電線を得た。また、電子線照射架橋
を行う実施例６、１２、比較例７については、別工程で
１０Ｍｒａｄの電子線を照射して絶縁電線を得た。

【００２０】このようにして作製した絶縁電線に対し
て、次のような特性試験を行い、その結果を表１の下欄
に示した。

【００２１】ワニス乾燥性：電線試料を不飽和ポリエス
テル系ワニス（主材：ＷＰ−２９５２Ｆ２Ｇ（Ｙ）、硬
化剤：ＣＴ−３８Ｔ２、主材／硬化剤＝１００／２（重
量比）、日立化成製）に常温で浸漬後、引き上げ１１０
℃の高温槽中で乾燥させた。この条件で１時間以内に乾
燥したものを良、乾燥せずにべたついているものを悪と
した。なお、判定は指による触診によった。

【００２２】耐熱性：電線の耐熱性を熱劣化の伸び残率
で判断した。１２０℃のギアオーブン中で２０日間加熱
し、加熱後の伸び残率（％）が８０％以上のものを合格
とした。

【００２３】難燃性：ＪＩＳ規格の６０度傾斜燃焼試験
を行い、着火後６０秒以内に消火したものを合格とし
た。

【００２４】

【表１】

【００２５】本発明で規定するナフテン酸またはオクチ
ル酸またはラウリン酸の金属塩を用いた実施例１〜１２
はワニス乾燥性に優れ、耐熱性、難燃性とも問題ない。
従来の鉛を含むポリ塩化ビニルを用いた比較例１は、環
境汚染の懸念はあるが、ワニス乾燥性、耐熱性、難燃性
とも優れている。

【００２６】これに対し、比較例２、５、７は鉛を含ま
ないポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、難燃化され
たエチレン−酢酸共重合体の例であり、本発明で規定す
るナフテン酸またはオクチル酸またはラウリン酸の金属
塩を配合していないため、ワニス乾燥性が悪い。また、
比較例３、４はナフテン酸金属塩の配合量が本発明の規
定値を外れる例である。比較例３は規定量以下の例であ
り、ワニス乾燥性が悪い。比較例４は規定量以上の例で
あり、絶縁体の耐熱性が悪くなっている。また、比較例
６は難燃剤である水酸化マグネシウムの配合量が本発明
の規定量に満たない例であり、難燃性が劣っている。

【００２７】

【発明の効果】以上説明してきた通り、本発明で規定す
るナフテン酸又はオクチル酸又はラウリン酸の金属塩を
配合し、鉛を含まない樹脂組成物、並びにこの樹脂組成
物を使用した絶縁電線、テープ、チューブは難燃性、耐
熱性はもとより、環境汚染がなく、しかも不飽和ポリエ
ステルワニスの乾燥性に優れており、その工業的価値は
極めて高いものである。

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ハロゲン系ポリマ１００重量部に対してナ
   フテン酸又はオクチル酸又はラウリン酸の金属塩を０．
   ５〜１０重量部含有し、鉛を含有しないことを特徴とす
   る環境に配慮したハロゲン系樹脂組成物。
2. 【請求項２】金属塩の金属成分がマンガン、コバルト、
   亜鉛、銅、カルシウム及びスズから選ばれたものである
   ことを特徴とする請求項１記載の環境に配慮した難燃性
   樹脂組成物。
3. 【請求項３】ハロゲン系ポリマがポリ塩化ビニルである
   ことを特徴とする請求項１記載の環境に配慮した難燃性
   樹脂組成物。
4. 【請求項４】非ハロゲン系ポリマ１００重量部に対して
   ナフテン酸又はオクチル酸又はラウリン酸の金属塩を
   ０．５〜１０重量部、水酸化マグネシウム又は水酸化ア
   ルミニウムを４０重量部以上含有し、鉛を含有しないこ
   とを特徴とする環境に配慮した難燃性樹脂組成物。
5. 【請求項５】金属塩の金属成分がマンガン、コバルト、
   亜鉛、銅、カルシウム及びスズから選ばれたものである
   ことを特徴とする請求項４記載の環境に配慮した難燃性
   樹脂組成物。
6. 【請求項６】導体外周の絶縁体が、請求項１又は請求項
   ４に記載の難燃性樹脂組成物からなることを特徴とする
   絶縁電線。
7. 【請求項７】請求項１又は請求項４に記載の難燃性樹脂
   組成物をチューブ成形してなることを特徴とするテー
   プ。
8. 【請求項８】請求項１又は請求項４に記載の難燃性樹脂
   組成物をテープ成形してなることを特徴とするチュー
   ブ。