JP2001157827A - ポリエチレン中空糸状多孔膜 - Google Patents

ポリエチレン中空糸状多孔膜

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JP2001157827A
JP2001157827A JP2000068853A JP2000068853A JP2001157827A JP 2001157827 A JP2001157827 A JP 2001157827A JP 2000068853 A JP2000068853 A JP 2000068853A JP 2000068853 A JP2000068853 A JP 2000068853A JP 2001157827 A JP2001157827 A JP 2001157827A
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polyethylene
liquid
membrane
pore size
hollow fiber
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JP2000068853A
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Noboru Kubota
昇 久保田
Hiroshi Hatayama
博司 畑山
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Asahi Kasei Corp
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 除濁等の濾過用途に好適な、緻密な細孔と高
い透水性能を併せ持つポリエチレン製中空糸状多孔膜を
提供する。 【解決手段】 外表面部に最小孔径層を持つ外面緻密型
のスポンジ構造状の異方性構造をとり、外表面孔径を1
μm未満、内表面孔径を1μm以上、空孔率を50%以
上95%未満にする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、除濁等の濾過用途
に好適な、緻密な細孔と高い透水性能を持つポリエチレ
ン製中空糸状多孔膜に関する。
【0002】
【従来の技術】精密濾過膜や限外濾過膜等の多孔膜によ
る濾過操作は、自動車産業(電着塗料回収再利用システ
ム)、半導体産業(超純水製造)、医薬食品産業(除
菌、酵素精製)などの多方面にわたって実用化されてい
る。特に近年は河川水等を除濁して飲料水や工業用水を
製造するための手法としても多用されつつある。膜の素
材としては、セルロース系、ポリアクリロニトリル系、
ポリオレフィン系等多種多様のものが用いられている。
中でもポリオレフィン系重合体(ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリフッ化ビニリデン等)は、疎水性のため
に耐水性が高いため水系濾過膜の素材として適してお
り、多用されている。これらポリオレフィン系重合体の
中でも、廃棄時に問題となるハロゲン元素を含まず、か
つ化学反応性の高い3級炭素が少ないために膜洗浄時の
薬品劣化が起こりにくく長期使用耐性が期待でき、かつ
安価であるポリエチレンが、今後特に有望と考えられ
る。
【0003】ポリエチレン膜としては、特開平3−42
025号公報に開示されているような、均一な3次元の
多孔構造(上記公報第3頁右上欄10−11行目)の膜
が従来より知れられている。この均一な3次元の多孔構
造とは、膜断面方向に孔径変化がほとんどなく、膜断面
部分の任意の2点部分どうしでの孔径(および孔径分
布)がほぼ等しい構造を意味する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、除濁等の濾
過用途に好適な、緻密な細孔と高い透水性能を持つポリ
エチレン製中空糸状多孔膜を提供することを目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)外表面
部に最小孔径層を持ち、外表面孔径が1μm未満であり
内表面孔径が1μm以上である、平均孔径1μm未満、
空孔率50%以上95%以下の外面緻密型異方性スポン
ジ構造ポリエチレン中空糸状多孔膜、(2)外表面孔径
が0.03μm以上0.8μm以下であり、平均孔径が
0.03μm以上0.8μm以下である、上記(1)記
載の外面緻密型異方性スポンジ構造ポリエチレン中空糸
状多孔膜、(3)外表面孔径が0.05μm以上0.6
μm以下であり、平均孔径が0.05μm以上0.6μ
m以下である、上記(1)記載の外面緻密型異方性スポ
ンジ構造ポリエチレン中空糸状多孔膜、(4)中空糸内
径が0.4mm以上3mm以下でかつ膜厚が0.05m
m以上1mm以下である、上記(1)から(3)に記載
の外面緻密型異方性スポンジ構造ポリエチレン中空糸状
多孔膜、に関する。
【0006】以下、本発明の詳細について記述する。本
発明膜は、ポリエチレンからなる。ポリエチレンは前述
のように、1)化学反応性に富む3級炭素含量が少ない
ため、3級炭素含量の多いポリプロピレン等に比べて薬
品洗浄等による化学劣化が少ない、即ち長期耐久性が期
待できる、2)廃棄時に問題となるハロゲン元素を含ま
ない、3)安価である、といった利点を持つ。ポリエチ
レンには高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンがあ
るが、膜強度の点から高密度ポリエチレンが好ましい。
また、ポリエチレンには種々の分子量のものが存在する
が、膜強度の点から粘度平均分子量10万以上、さらに
は20万以上が好適である。ポリエチレンの粘度平均分
子量(Mv)は、135℃におけるデカリン溶液の固有
粘度([η])を測定して、下記式より求めることがで
きる(J.Brandrup and E.H.Imm
ergut(Editors)、Polymer Ha
ndbook(2nd Ed.)、IV−7頁、Joh
n Wiley & Sons、New York、1
975年、あるいは、岡叡太郎等編、プラスチック材料
講座4ポリエチレン樹脂、48頁表3・4のd、日刊工
業新聞社、1969年)。 [η]=6.8×10-4×(Mv)0.67
【0007】なお、ポリエチレンは、必要に応じて少量
の酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤を含んでいても
よい。本発明膜の断面構造は、スポンジ構造である。ス
ポンジ構造とは、膜断面に膜厚の10%を超えるような
径(円形近似直径)の粗大孔(マクロボイド)を実質的
に持たない構造を指す。マクロボイドが膜断面に存在す
ると、膜強度が低下して好ましくない。
【0008】本発明膜の形状は、中空糸状である。中空
糸膜は、実際に濾過に使用する形態(モジュール)にす
る場合、平膜(シート状膜)に比べて単位体積当たりの
充填膜面積が多くでき、体積当たりの濾過処理能力を高
くできる点で有利である。中空糸膜の内径は、小さすぎ
ると中空糸管内を流れるの液の抵抗(管内厚損)が大き
くなるため不利であり、逆に大きすぎると単位体積当た
りの充填膜面積が低下するため不利である。中空糸膜の
内径は、0.4mm以上3mm以下が好適である。ま
た、中空糸膜の膜厚は、小さすぎると膜強度が低下して
不利であり、逆に大きすぎると濾過抵抗が大きくなって
透水性能が低下するため不利である。中空糸膜の膜厚
は、0.05mm以上1mm以下が好適である。
【0009】本発明膜は、外表面部に最小孔径層を持つ
外面緻密型の異方性構造をとることを大きな特徴として
有する。異方性構造とは、膜断面方向(膜厚方向)にお
いて孔径が一様(均一)ではなく変化する構造を指す。
本発明膜では、外表面部から内表面部に向けて孔径が連
続的に変化し、その基本的な変化の方向は、外表面部か
ら内表面部に向かって孔径が増大する方向である。膜の
濾過抵抗(透水性能)は、最小孔径層(最も緻密な層)
の厚みに支配される。最小孔径層が厚いほど膜全体の濾
過抵抗は大きくなり、透水性能は低下する。特開平3−
42025号公報に開示されているような均一な3次元
の多孔構造では、いわば膜断面全体が最小孔径層である
に等しくなり、濾過抵抗が高くなって(透水性能が下が
って)不利である。
【0010】一方、本発明膜のように、膜断面全体では
なく外表面部内のみに最小孔径層を配置し、最小孔径層
以外の膜断面部分は最小孔径層よりも大孔径にして濾過
抵抗を極力増やさない工夫をすることで、緻密な細孔と
高い透水性能を持つポリエチレン製中空糸状多孔膜の提
供が可能になる。この場合、膜の濾過(篩い分け)機能
は外表面部内の最小孔径層(緻密な細孔)が受け持ち、
最小孔径層より内表面側の層は、膜の濾過抵抗増大には
極力寄与せずに膜の形態、強度維持のための支持層的機
能を受け持つことになる。本発明のような外面緻密型膜
の場合、外圧式濾過(膜の濾過方向が外表面から内表
面)において特にその性能が発揮される。
【0011】なお、本発明にいう外表面部とは、外表面
そのものと外表面から膜厚の10分の1厚みまでの膜断
面部分を指す。最小孔径層の存在位置および異方性構造
の確認は、膜断面の電子顕微鏡観察によって実施するこ
とができる。本発明膜の外表面の孔径は1μm未満、好
ましくは0.03μm以上0.8μm以下、より好まし
くは0.05μm以上0.6μm以下である。膜の平均
孔径は1μm未満、好ましくは0.03μm以上0.8
μm以下、より好ましくは0.05μm以上0.6μm
以下である。膜の平均孔径は、ASTM:F316−8
6記載の方法(別称:ハーフドライ法)に従って決定で
きる。なお、このハーフドライ法によって決定されるの
は、膜の最小孔径層の平均孔径である。本発明において
ハーフドライ法による平均孔径の測定は、約10cm長
の中空糸膜に対し、使用液体にエタノールを用い、25
℃、昇圧速度0.01atm/秒での測定を標準測定条
件とした。平均孔径[μm]は、下記式より求める。
【0012】
【数1】
【0013】エタノールの25℃における表面張力は2
1.97dynes/cmである(日本化学会編、化学
便覧基礎編改訂3版、II−82頁、丸善(株)、19
84年)ので、本発明における標準測定条件の場合は、 平均孔径[μm]=62834/(ハーフドライ空気圧
力[Pa]) にて求めることができる。ハーフドライ法により求める
膜の平均孔径(膜の最小孔径層の平均孔径)が大きい
と、透過を阻止したい物質、例えば濁質等の透過の阻止
性が低下してしまうため有効な濾過分離ができない。逆
に膜の平均孔径が小さすぎると透水性能が低下して濾過
処理速度が低下するため、この場合も有効な濾過分離が
できない。膜の平均孔径は、1μm未満、好ましくは
0.03μm以上0.8μm以下、より好ましくは0.
05μm以上0.6μm以下が好適である。
【0014】なお、外表面の孔径は、外表面の電子顕微
鏡観察像において、外表面に観察される(存在する)孔
の孔面積比重50%に相当する孔径で表現する。孔面積
比重50%に相当する孔径とは、表面に観察される(存
在する)各孔に対し、孔径の小さい方から、または大き
い方から順に各孔の孔面積を和してゆき、その和した値
が、各孔の孔面積の総和の50%に達するところの孔の
孔径を指す。観察される孔が円形でない場合(楕円形
等)の孔径は、円形近似した場合の直径(その孔の孔面
積と同面積の円の直径)を用いる。
【0015】本発明膜の内表面の孔径は、1μm以上で
ある。1μm未満では最小孔径層を持たない内表面側の
濾過抵抗が不必要に大きくなり、膜全体の濾過抵抗が増
大し透水性能が低下して好ましくない。内表面の孔径
は、外表面の場合と同様に、内表面の電子顕微鏡観察像
における、内表面に観察される(存在する)孔の孔面積
比重50%に相当する孔径で表現する。観察される孔が
円形でない場合(楕円形等)は、円形近似した場合の直
径を用いる。なお、内表面孔径が大きすぎると膜強度の
低下を招きやすいため、内表面孔径は10μm以下が好
ましい。
【0016】本発明膜の空孔率は50%以上95%以
下、好ましくは60%以上90%以下である。空孔率が
小さいと透水性能が低くなって不利であり、逆に大きす
ぎると膜強度が低くなって不利である。空孔率は、以下
の式より決定できる。
【0017】
【数2】
【0018】ここに、湿潤膜とは、孔内は水が満たされ
ているが中空部内は水が入っていない状態の膜を指し、
具体的には、10〜20cm長のサンプル膜をエタノー
ル中に浸漬して孔内をエタノールで満たした後に水浸漬
を4〜5回繰り返して孔内を充分に水で置換し、しかる
後に中空糸の一端を手で持って5回程よく振り、さらに
他端に手を持ちかえてまた5回程よく振って中空部内の
水を除去することで得ることができる。乾燥膜は、前記
湿潤膜の重量測定後にオーブン中で例えば80℃で恒量
になるまで乾燥させて得ることができる。膜体積は、 膜体積[cm3]=π{(外径[cm]/2)2−(内径
[cm]/2)2}(膜長[cm]) より求めることができる。膜1本では重量が小さすぎて
重量測定の誤差が大きくなる場合は、複数本の膜を用い
ることができる。
【0019】次に、本発明膜の好適な製造方法例を述べ
る。本発明膜の好適な製造方法例としては、ポリエチレ
ンと有機液体とを高温にて相溶した後、該相溶物を中空
糸成形用紡口から中空部内に中空糸形成流体を注入しつ
つ中空糸状に空気中を経て水浴中に押し出し冷却するこ
とで該相溶物に液液相分離を生起させ孔構造を発生させ
て固化、構造固定し、しかる後に該有機液体を抽出除去
してポリエチレン中空糸状多孔膜を得る方法において、
1)中空部形成流体が、高温にてポリエチレンと液液相
分離する能力を持つ液体であり、かつ2)押し出し物が
空気中を走行する時間が0から1秒の間(ただし0は含
まない)であることを特徴とする方法がある。このよう
な製膜フローの一例の概念図を図1に示した。
【0020】ここで用いる有機液体は、ポリエチレンと
混合した際に一定の温度およびポリエチレン濃度範囲に
おいて液液相分離状態(ポリエチレン濃厚相液滴/ポリ
エチレン希薄相即ち有機液体濃厚相液滴の2相共存状
態)をとることができ、かつ沸点が液液相分離温度域の
上限温度以上である液体である。単一液体でなく混合液
体であってもよい。このような有機液体とポリエチレン
とを液液相分離の起こる濃度範囲にて混合した場合、温
度をその混合組成において液液相分離状態をとる上限温
度以上に高温にすると、ポリエチレンと有機液体とが均
一に溶解した相溶物を得ることができる。該相溶物を冷
却すると、液液2相(ポリエチレン濃厚相液滴と有機液
体濃厚相液滴)の共存状態(液液相分離状態)が現れて
孔構造が発生し、さらにポリエチレンが固化する温度
(通常100〜150℃)まで冷却することで孔構造が
固定される。
【0021】この相図の例を図2に示した。図2におい
て、ポリエチレン濃度は、ポリエチレン重量と有機液体
重量の和に対するポリエチレンの重量の割合である。ま
た、液1相領域はポリエチレンと有機液体との相溶領域
を、液液2相領域はポリエチレン濃厚相(液状)とポリ
エチレン希薄相(液体)との共存領域を、固化領域はポ
リエチレンが固化する領域(固体ポリエチレンと有機液
体との共存領域)をそれぞれ示す。孔構造が固定された
のち、膜より有機液体を除去することで中空糸状多孔体
が得られる。このとき、液液相分離時のポリエチレン濃
厚相部分が冷却固化されて多孔構造(多孔体骨格)を形
成し、ポリエチレン希薄相(有機液体濃厚相)部分が孔
部分となる。
【0022】このような有機液体の例として、フタル酸
ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、
フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソデ
シル、フタル酸ジトリデシル等のフタル酸エステル類、
セバシン酸ジブチル等のセバシン酸エステル類、アジピ
ン酸ジオクチル等のアジピン酸エステル類、マレイン酸
ジオクチル等のマレイン酸エステル類、トリメリット酸
トリオクチル等のトリメリット酸エステル類、リン酸ト
リブチル、リン酸トリオクチル等のリン酸エステル類、
プロピレングリコールジカプレート、プロピレングリコ
ールジオレエート等のグリコールエステル類、グリセリ
ントリオレエート等のグリセリンエステル類などの単独
あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
【0023】さらに、単独ではポリエチレンと高温にて
も相溶しない液体や、流動パラフィンのように単独では
高温でポリエチレンと相溶するものの相溶性が高すぎて
液液2相の相分離状態をとらない液体を、有機液体の定
義(ポリエチレンと混合した際に一定の温度およびポリ
エチレン濃度範囲において液液相分離状態をとることが
できかつ沸点が液液相分離温度域の上限温度以上の液
体)を逸しない範囲内で前記有機液体例(フタル酸エス
テル類等)と混合した混合液体も有機液体の例として挙
げることができる。
【0024】ポリエチレンと上記有機液体とは、例えば
2軸押し出し機を用いて所定の混合比にてその混合比に
おける液液相分離温度域の上限温度以上の温度にて混
合、相溶させることができる。ポリエチレンと有機液体
との混合比は、ポリエチレンの比が小さすぎると得られ
る膜の強度が低くなりすぎて不利であり、逆にポリエチ
レンの比が大きすぎると得られる膜の透水性能が低くな
りすぎて不利である。ポリエチレンと有機液体との混合
比は、ポリエチレン/有機液体の重量比で10/90か
ら40/60、好ましくは15/85から30/70で
ある。
【0025】相溶物(溶融物)は、押し出し機先端のヘ
ッドと呼ばれる部分に導かれ、押し出される。このヘッ
ド内の押し出し口に、相溶物を所定の形状に押し出すた
めの口金を装着することで所定の形状に相溶物を成形し
て押し出すことができる。本発明の場合は、中空糸状に
成形するための口金(中空糸成形用紡口)をヘッドの押
し出し口に装着する。中空糸成形用紡口は、相溶物を中
空状(円環状)に押し出すための円環状の穴と、押し出
された中空状物の中空部が閉じて円柱状になってしまわ
ないために押し出された中空状物の中空部に注入してお
く中空部形成流体を吐出するための穴(上記円環状穴の
内側に存在する;形状は円形穴)とを押し出し側の面に
持つ紡口ノズルである。ポリエチレンと有機液体との相
溶物は、上記中空糸成形用紡口の円環穴より、円環穴の
内側の穴から中空部形成流体の注入を中空部内に受けつ
つ空気中(窒素等の不活性ガス中でもよい)に押し出さ
れる。
【0026】中空部形成流体としては、高温でポリエチ
レンと液液相分離する能力を持つ液体、即ちポリエチレ
ンと混合した際に一定の温度およびポリエチレン濃度範
囲において液液相分離状態(ポリエチレン濃厚相液滴/
ポリエチレン希薄相即ち有機液体濃厚相液滴の2相共存
状態)をとることができる液体を用いる。ただし、中空
糸成形用紡口から吐出されるときの中空部形成流体の温
度は必ずしもポリエチレンと液液相分離状態となる温度
である必要はなく、液液相分離状態をとる温度域より高
くてもよいし、低くてもよい。このような中空部形成用
流体の例としては、前記の有機液体の例と同じ例を挙げ
ることができる。なお、中空部形成流体の沸点は、前記
の有機液体とは異なり、紡口温度以上であれば液液相分
離温度域の上限温度以下であってもよい。中空部形成流
体としてこのようにポリエチレンと液液相分離状態をと
ることができる液体を用いることで、内表面側を本発明
の好適な構造にすることができる。
【0027】空気中に押し出された相溶物は、次いで水
浴(実質的に水より成る液浴)に導かれ、押し出し物中
のポリエチレンが固化する温度まで冷却される。水浴の
温度は、押し出し物中のポリエチレンの固化温度以下に
設定する。こうして紡口から押し出された相溶物は、紡
口出口から水浴中通過の間に冷却されることで液液相分
離が生起されて孔構造が発生し、次いで固化し、孔構造
が固定される。紡口から空気中に押し出された相溶物が
水浴に入るまでの時間、即ち空中走行時間は、ゼロから
1秒までの間(ただしゼロは含まない)である。空中走
行時間がゼロの場合は、紡口の押し出し面が水浴の水面
と接している状態になる。
【0028】紡口温度はポリエチレンと有機液体の相溶
温度、即ちその混合比における液液相分離温度域以上の
温度に設定するため(通常は150〜300℃程度)、
押し出し物中のポリエチレンが固化する温度以下に設定
されている水浴の温度より必ず高い温度である。従って
空中走行時間がゼロの場合は、紡口が水浴の水で常時冷
却されて紡口の温度調節が不安定になるため、適さな
い。一方で空中走行時間が長くなりすぎると外表面の開
孔性が低下し、膜の透水性能が低下して好ましくない。
【0029】空中走行時間は、好ましくはゼロから0.
5秒の間(ただし0は含まない)、さらに好ましくはゼ
ロから0.25秒の間(ただし0は含まない)である。
空中走行時間の測定は、水浴出口で中空糸を張力をかけ
ない状態で巻き取った場合には、巻き取り速度と空中走
行距離(紡口面と水浴面との距離)から、下記式で求め
ることができる。
【0030】
【数3】
【0031】このように、紡口から出た相溶物をある特
定の空走時間の後に水浴に導くことで、外表面側を本発
明の好適な構造にすることができる。 このように、中
空部形成流体としてポリエチレンと液液相分離状態をと
ることができる液体を用い、かつ紡口から出た相溶物を
ある特定の空走時間の後に水浴に導くことで、膜構造全
体を、本発明で開示する好適な外面緻密型異方性構造に
することができる。水浴から出てきた中空糸状物は、冷
却途中で生起した液液相分離時のポリエチレン濃厚相部
分が冷却固化されて多孔構造(多孔体骨格)を形成し、
液液相分離時のポリエチレン希薄相(有機液体濃厚相)
部分が有機液体の詰まった孔部分となっている。この孔
部分に詰まっている有機液体を除去すれば、本発明開示
の多孔膜が得られる。
【0032】膜中の有機液体の除去は、ポリエチレンを
溶解または劣化させずかつ除去したい有機液体を溶解す
る揮発性液体で抽出除去し、その後乾燥して膜中に残存
する上記揮発性液体を揮発除去することで実施できる。
このような有機液体抽出用の揮発性液体の例としては、
ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、塩化メチレン、四塩
化炭素等の塩素化炭化水素、メチルエチルケトンなどを
挙げることができる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施例を示すが、
本発明はこれに限定されるものではない。なお、純水透
水率、破断強度および破断伸度は以下の測定方法より決
定した。また、外表面および内表面の孔径は、倍率50
00倍あるいは10000倍にて撮影した後、縦横それ
ぞれ2倍に拡大した外表面および内表面の電子顕微鏡写
真コピーの上に透明シートを重ねて置き、表面に存在す
る孔部分を透明シート上に黒く塗りつぶして黒白2値化
した後(孔部分が黒)、CCDカメラを用いてコンピュ
ーターに取り込み、Leica社製画像解析ソフトQu
antimet500を用いることで得た各孔の孔面積
値および孔径値(円形近似直径値)に基づいて決定し
た。
【0034】純水透水率:エタノール浸漬したのち数回
純水浸漬を繰り返した約10cm長の湿潤中空糸膜の一
端を封止し、他端の中空部内へ注射針を入れ、25℃の
環境下にて注射針から0.1MPaの圧力にて25℃の
純水を中空部内へ注入し、外表面から透過してくる純水
の透過水量を測定し、以下の式より純水透水率を決定し
た。
【0035】
【数4】
【0036】ここに膜有効長とは、注射針が挿入されて
いる部分を除いた、正味の膜長を指す。 破断強度および破断伸度:引っ張り試験機(島津製作所
製オートグラフAG−A型)を用い、中空糸をチャック
間距離50mm、引っ張り速度200mm/分にて引っ
張り、破断時の荷重と変位から、以下の式により破断強
度および破断伸度を決定した。
【0037】
【数5】
【0038】ここに、 膜断面積[cm2]=π{(外径[cm]/2)2−(内
径[cm]/2)2} である。 破断伸度[%]=100(破断時変位[mm])/50
【0039】
【実施例1】高密度ポリエチレン(三井化学製:ハイゼ
ックスミリオン030S、粘度平均分子量:45万)2
0重量部と、フタル酸ジイソデシル(DIDP)とフタ
ル酸ジ(2−エチルヘキシル)(DOP)との重量比に
て3対1(DIDP/DOP=3/1)の混合有機液体
80重量部とを、2軸混練押し出し機(東芝機械製TE
M−35B−10/1V)で加熱混練して相溶させ(2
30℃)、押し出し機先端のヘッド(230℃)内の押
し出し口に装着した中空糸成形用紡口の押し出し面にあ
る外径1.58mm/内径0.83mmの相溶物押し出
し用の円環穴から上記相溶物を押し出し、そして相溶物
押し出し用円環穴の内側にある0.6mmφの中空部形
成流体吐出用の円形穴から中空部形成流体としてDOP
を吐出させ、中空糸状押し出し物の中空部内に注入し
た。
【0040】紡口から空気中に押し出した中空糸状押し
出し物を、1.5cmの空中走行距離を経て39℃の水
浴中に入れ、約2m水中を通過させて冷却固化させた
後、中空糸状物に張力をかけることなく16m/分の速
度で水浴中から水浴外へ巻き取った。このときの空中走
行時間は、空中走行距離と巻き取り速度から0.06秒
と決定される。
【0041】次いで、得られた中空糸状物を室温の塩化
メチレン中で30分間の浸漬を5回繰り返して、中空糸
状物内のDIDPとDOPを抽出除去し、次いで50℃
にて半日乾燥させて残存塩化メチレンを揮発除去させる
ことにより、ポリエチレン中空糸状多孔膜を得た。得ら
れた膜の断面を電子顕微鏡で観察したところ、外表面部
に最小孔径層を有する異方性の膜であった。また、膜の
諸物性(外表面孔径、内表面孔径、平均孔径、空孔率、
糸径、純水透水率、破断強度、破断伸度)を表1に示
す。
【0042】
【実施例2】ポリエチレンとして旭化成工業製の高密度
ポリエチレン(サンテックSH800、粘度平均分子量
25万)を18重量部、有機液体としてDIDPとDO
Pとの重量比にて3対1(DIDP/DOP=3/1)
の混合物を82重量部用い、空中走行距離を4.5cm
とした以外は実施例1と同様にしてポリエチレン中空糸
状多孔膜を得た。このときの空中走行時間は0.17秒
である。得られた膜の諸物性(外表面孔径、内表面孔
径、平均孔径、空孔率、糸径、純水透水率、破断強度、
破断伸度)を表1に、電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0043】
【比較例1】特開平3−42025号公報明細書実施例
2に準拠して(SH800/疎水性シリカ/DOPの容
量比を27/14/59にした以外は同様にして)、ポ
リエチレンとして実施例2と同じサンテックSH800
を用いて中空糸状多孔膜を得た。得られた膜の諸物性
(外表面孔径、内表面孔径、平均孔径、空孔率、糸径、
純水透水率、破断強度、破断伸度)を表1に、電子顕微
鏡写真を図4に示す。得られた膜は、異方性を持たない
均一な3次元の多孔構造を有していた。当比較例膜は実
施例2膜に比べて、同等の平均孔径でありながら純水透
水率が低く、濾過膜としての性能が低くなっている。
【0044】
【表1】
【0045】
【発明の効果】本発明により、除濁等の濾過用途に好適
な、緻密な細孔と高い透水性能を併せ持つポリエチレン
製中空糸状多孔膜の提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明膜を製造するための製膜フローの一例を
示す概念図である。
【図2】ポリエチレンと有機液体との相図の概念図であ
る。
【図3】実施例2にて得られた膜の電子顕微鏡写真印刷
である。
【図4】比較例1にて得られた膜の電子顕微鏡写真印刷
である。
【符号の説明】
1 ・・・ ポリエチレンホッパー 2 ・・・ ポリエチレン供給口 3 ・・・ 有機液体供給流路 4 ・・・ 有機液体供給口 5 ・・・ 2軸混練押出機 6 ・・・ 導管 7 ・・・ ヘッド 8 ・・・ 定量ギアポンプ駆動部 9 ・・・ 定量ギアポンプ 10・・・ 中空糸成形用紡口 11・・・ 中空部形成流体供給流路 12・・・ ポリエチレンと有機液体の混合押し出し物 13・・・ 中空部形成流体 14・・・ 空中走行部分 15・・・ 水浴 16・・・ ロール 17・・・ 巻き取りロール イ ・・・ 紡口吐出時点の相溶物 ロ ・・・ 空中走行部および液浴中での冷却過程 ハ ・・・ 液浴出の固化物
フロントページの続き Fターム(参考) 4D006 GA06 GA07 HA19 MA01 MA22 MA24 MA25 MA33 MA34 MB02 MB16 MC22X MC88 NA21 NA23 NA54 NA68 NA75 PA01 PB04 4L035 AA05 AA09 BB31 BB57 CC20 DD03 DD07 EE08 EE20 FF01 HH01 HH05 JJ15 KK05 MA01

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外表面部に最小孔径層を持ち、外表面孔
    径が1μm未満であり内表面孔径が1μm以上である、
    平均孔径1μm未満、空孔率50%以上95%未満の外
    面緻密型異方性スポンジ構造ポリエチレン中空糸状多孔
    膜。
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