JP2001085216A - 酸化物磁性材料とチップ部品と酸化物磁性材料の製造方法とチップ部品の製造方法 - Google Patents
酸化物磁性材料とチップ部品と酸化物磁性材料の製造方法とチップ部品の製造方法Info
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Abstract
って、焼結性や透磁率と保持し、粉砕時間が短縮できる
酸化物磁性材料とこれを用いたチップ部品と前記酸化物
磁性材料の製造方法とチップ部品の製造方法を提供す
る。 【解決手段】Fe2O3、ZnO、CuOおよびNiO
を主成分とし、この主成分に、全体量に対する含有量が
0.001〜0.011重量%となるY2O3を含み、
かつ0.031〜0.194重量%となるZrO2を含
み、かつ0.010〜0.056重量%となるSiを含
む。
Description
用される酸化物磁性材料と、その酸化物磁性材料を用い
て構成され、高周波領域で使用されるバルク型コイル部
品や内部導体を含むインダクタ用チップ部品と、前記酸
化物磁性材料の製造方法とチップ部品の製造方法に関す
る。
酸化物磁性材料として、Ni−Cu−Zn系のフェライ
トが一般に用いられる。その製造方法としては、粉末冶
金法が一般的である。この方法は、出発材料となるFe
2O3、NiO、CuO、ZnO等の酸化物を所定の比率
となるように秤量し、その後乾式もしくは湿式にて混合
粉砕し、この混合粉末を仮焼成する。次いで、この仮焼
成物を粗粉砕し、さらに微粉砕する。湿式で粉砕を行っ
た場合は乾燥が必要となる。ここでフェライトの特性は
その組成に負うところが大きく、製造の管理の面から、
組成のずれを極めて小さくすることが必要である。ま
た、積層型コイル用の材料としては、Agの融点以下の
低温で焼成する必要があり、Fe2O3、NiO、Cu
O、ZnOの0.1mol%レベルでの組成管理が求め
られる。特にFe2O3については、フェライトの化学量
論組成(ストイキオ組成)に近づくにつれて反応性が向
上するが、これを越えると反応性が急激に劣化するた
め、フェライトの主成分の中で最も慎重な組成管理が必
要となる。
の製造工程において、ステンレス鋼ボール、アルミナボ
ール、ジルコニアボール等を媒体ビーズとして用い、混
合粉砕、仮焼成を経た材料の粗粉砕および微粉砕を行っ
てきた。バルク型コイル用材料は、通常、比表面積が
1.0〜6.0m2/g程度となるように仮焼成物を粉
砕しているが、積層型コイル材料はAgの融点以下の低
温で焼成する必要があるため、長時間の粉砕を行い、比
表面積を3.0〜15.0m2/g程度まで上げること
によって粉末の低温での反応性を向上させている。
分としており、粉砕時のメカノケミカル反応により、N
i−Cu−Znフェライトの主成分であるFe2O3を増
加させる。そして、Fe2O3の増加はNi−Cu−Zn
フェライトの組成を変化させると共に、安定した組成管
理が困難となる。すなわち秤量値で管理することができ
ない。また、その他の媒体ビーズにおいても耐摩耗性に
難点があり、これらの媒体ビーズの摩耗粉が不純物とし
て混入する虞があるという難点があった。
性に比較し、内部のそれは低く、製造を重ねていく上で
摩耗により生じた粉体の混入量の違いによる組成のずれ
が発生し、安定した組成が得られない。そして長時間に
わたる粉砕は混入量の増加を招き、焼成物の特性劣化を
招くことになる。すなわち、不純物として混入した摩耗
粉はNi−Cu−Znフェライトの焼結性を劣化させ、
理論密度近傍の焼結体密度および透磁率を得るための焼
成温度が高温となり、製造コストの増加、製品の安定性
の低下を招き、さらにAgの融点以下での焼成が困難に
なる。
的として、特許第2708160号公報においては、媒
体ビーズとして、耐摩耗性の大きな安定化ジルコニア
(FSZ)や部分安定化ジルコニア(PSZ)からなる
ボールを媒体ビーズとしてMn−Zn系フェライトの粉
砕に用いることが記載されている。該公報記載の方法
は、直径が0.5〜3.0mmのジルコニアボールを媒
体ビーズとして微粉砕工程に使用することにより、不純
物の混入を極力防止し、主成分に対して0.02重量%
程度以下に混入量の抑制する方法である。また、この方
法により、従来の1200℃以上という仮焼温度に対
し、約100℃から200℃低温(すなわち1000℃
程度)で焼結させても理論密度近傍の焼結体が得られ、
工業的には焼成温度が下がり、製造コストの低減が可能
であるとしている。
は、機械的強度が高い磁性材料の提供を目的として、N
i−Cu−Znフェライトの材料の主成分に対し、0.
01〜3.0重量%のZrO2を混入して1100℃で
1.5時間焼成した例が開示されている。
708160号公報記載の製造方法に記載された100
0℃程度の焼成温度は焼成コストを低減できる温度では
なく、また融点が約960℃であるAgとの同時焼成は
不可能である。また、特開平7−133150号公報記
載のように、1100℃ではさらにAgとの同時焼成は
不可能である。
製造方法では、媒体ビーズの摩耗による不純物の材料へ
の混入を低く抑えるため、媒体ビーズに直径の小さいも
のを使用し、例えば196時間という長い時間をかけて
仮焼成物を粉砕しているので、ボール効率(材料処理量
/ボール重量)、すなわち粉砕効率が悪いという問題点
もある。
可能であって、焼結性や透磁率と保持し、粉砕時間が短
縮できる酸化物磁性材料とこれを用いたチップ部品と前
記酸化物磁性材料の製造方法とチップ部品の製造方法を
提供することを目的とする。
料は、Fe2O3、ZnO、CuOおよびNiOを主成
分とし、この主成分に、全体量に対する含有量が0.0
01〜0.011重量%となるY2O3を含み、かつ
0.03〜0.194重量%となるZrO2を含み、か
つ0.010〜0.056重量%となるSi(Siの酸
化物である場合を含む)を含むことを特徴とする。
を与えない程度であれば、不純物としてP、Al、B、
Mn、Mg、Co、Ba、Sr、Bi、Pb、W、V、
Mo等を含有してもよい。また、主成分の組成は、所定
値以上の透磁率を得る上で、好ましくは、Fe2O3
40〜51mol%、ZnO 1〜34mol%、Cu
O 1〜30mol%、残部NiOである。さらに好ま
しくはFe2O3 46〜50mol%、ZnO 32
〜34mol%、CuO 9〜11mol%、NiO
8〜11mol%である。
(PSZ)を用い、仮焼成後の粉体を粉砕する場合、部
分安定化ジルコニアボールはY2O3を約3mol%含む
ものが硬度、破壊強靱値が最も優れていることが分かっ
ており(内田老鶴園発行、強靱ジルコニア−タフなセラ
ミックス、著者堀三郎)、粉砕された粉体の平均粒径が
0.1〜1.0μm程度の粒度のものを得ようとする
と、Y2O3が0.001重量%未満、ZrO2が0.0
31重量%未満、Siが0.010重量%未満の組成の
ものであれば、攪拌速度を遅くし、長い時間をかけて粉
砕する必要が生じるが、これらの重量%以上になれば、
ボール直径や攪拌速度にもよるが、粉砕効率が上り、よ
り短時間で粉砕可能である。一方、Y2O3が0.011
重量%、ZrO2が0.194重量%、Siが0.05
6重量%を越えると、Agとの同時焼成が可能な920
℃において、物理的強度において問題が生じないと言わ
れている5.0g/cm3以上の見かけ密度が得にくく
なり、見かけ密度を確保するため、焼成温度を高くせざ
るを得なくなる。また、Y2O3が0.011重量%、
ZrO2が0.194重量%、Siが0.056重量%
を越えると、透磁率の劣化も見られる。
物磁性材料の焼結体を用い、バルク型コイル部品として
構成されていることを特徴とする。
物磁性材料を用いて構成されるため、焼成温度が低く、
廉価に提供でき、強度や透磁率の面においても高温焼成
のものとそれほど遜色がない。
物磁性材料の焼結体を用い、かつ焼結体内に導電体層を
有して積層型コイル部品または積層型コイル部品を一部
に含んで構成されていることを特徴とする。
て、内部導体がAgまたはAgとPdの合金を主成分と
することを特徴とする。
求項1の酸化物磁性材料を用いて構成されるため、請求
項2のチップ部品と同様の強度、透磁率が得られ、Ag
やAg−Pdの合金との同時焼成が可能である。
製造する方法であって、原料の混合粉砕時および仮焼成
を経た材料の粉砕時に湿式内部循環式のメディア撹拌型
ミルを用い、媒体ビーズとして部分安定化ジルコニアと
窒化珪素を使用し、媒体ビースの摩滅により、酸化物磁
性材料内に、全体量に対する含有量が0.001〜0.
011重量%となるY2O3を含み、かつ0.03〜
0.194重量%となるZrO2を含み、かつ0.01
0〜0.056重量%となるSiを含有させることを特
徴とする。
と窒化珪素ボールを利用して仮焼成後の材料の粉砕を行
うことにより、従来のステンレス鋼ボール等を用いる場
合のような組成管理の困難の問題を解消することができ
る。また、粉砕工程を利用してY2O3、ZrO2および
Siの混入を行うので、材料混入のための秤量や混合の
工程が不要になる。
は、請求項5において、部分安定化ジルコニアビーズお
よび窒化珪素ビーズの全体量に対し、窒化珪素ビーズ
が、体積比で20%〜99%であることを特徴とする。
ーズの比率をこの比率に設定することにより、部分安定
化ジルコニアビーズのみを用いて粉砕した場合と比較し
ても、部分安定化ジルコニアビーズの主成分であるZr
O2とY2O3の摩耗による混入量の制御が一層容易とな
る。
性材料の製造方法であって、媒体ビーズとしてその直径
が0.2〜5mmのものを使用することを特徴とする。
と、粉砕効率が低下し、5mmを越えると得られる粉末
の微細化を十分行うことができず、理論密度近傍の焼結
体密度を得るための焼成温度が高くなり、また、透磁率
の劣化を招くことになる。
磁性材料の製造方法であって、媒体ビーズの撹拌速度を
2.0〜8.0m/sとすることを特徴とする。
たない速度では、所望の比表面積まで粉砕処理を行うた
めの時間が長時間となり、材料の製造に係るリードタイ
ムを考慮すると適正とはいえない。一方、8.0m/s
を越えると媒体ビーズの摩耗量が増大し、理論密度近傍
の焼結体密度および所望の透磁率を得るための焼成温度
が高温となり、製造コストの増加、製品の安定性の低減
を招き、さらにAgの融点以下での焼成は困難となる。
かの酸化物磁性材料の製造方法であって、仮焼成を経た
材料から粉砕により比表面積が6.0〜15.0m2/
gのものを粉体を得ることを特徴とする。
論密度近傍の焼結体密度を得るための焼成温度が高温に
なり、また、透磁率の劣化を招くこととなる。また、1
5.0m2/g以上とするには粉砕時間が長くなる。
部品の製造方法であって、媒体ビーズにより粉砕した酸
化物磁性材料と内部導体とを成形して910〜920℃
で焼成することを特徴とする。
足になり、920℃を越えるとフェライト中に電極材料
が拡散してチップの電磁気的特性を著しく悪化させる。
なお、焼成時間は5分から3時間程度である。
または積層型コイル部品あるいはその他の電子部品用酸
化物磁性材料は、Fe2O3、ZnO、NiO、CuOを
主成分とするフェライト材料であり、必要な場合には前
記したP、Al、B、Mn、Mg、Co、Ba、Sr、
Bi、Pb、W、V、Mo等の微量添加物を秤量して加
え、さらに副成分として、媒体ビーズである部分安定化
ジルコニアボールおよび窒化珪素ビーズの摩耗により混
入したZrO2、Y2O3およびSiを含有するものであ
る。そして、原料の混合粉砕時および仮焼成後の材料の
粉砕時における媒体ビーズの粒度、攪拌速度、攪拌時間
を調整することにより、媒体ビーズの混入の量を調整
し、焼成温度の高温化を必要とせず、Agの融点以下で
の焼成を可能とするものである。
循環式のメディア攪拌型ミルを用い、媒体ビーズとし
て、部分安定化ジルコニアボールと窒化珪素ボールを用
い、混合粉砕する。その後、仮焼成し、湿式内部循環式
のメディア攪拌型ミルを用い、媒体ビーズとして、部分
安定化ジルコニアボールを用い、粉砕することにより、
酸化物磁性材料を得る。
して製造した酸化物磁性材料にバインダーを加え、造粒
した後に所定の形状に成形、加工し、空気中で900〜
1300℃程度で焼成して作る。なお、このコアは、焼
成後に加工してもよい。そして、このコアに、Au、A
g、Cu、Fe、Pt、Sn、Ni、Pb、Al、Co
またはこれらの合金からなるワイヤを巻いて作製する。
材料からなる磁性体層ペーストと内部導電体層とを厚膜
技術(印刷法やドクターブレード法)により積層し一体
化した後、焼成し、得られた焼結体表面に外部電極用ペ
ーストを印刷し、焼き付けすることにより製造される。
内部導電体用ペーストは、通常、導電性素子とバインダ
ーと溶剤とを含有する。導電性素子の材質は、インダク
タの品質係数Qが向上するという理由から、Agまたは
Ag−Pd合金が好適である。焼成条件や焼成雰囲気は
磁性体や導電性素子の材質等に応じて適宜決定すればよ
いが、焼成温度は好ましくは800〜950℃、より好
ましくは910〜920℃程度である。
イトの主成分として、NiO 8.7mol%、CuO
10.0mol%、ZnO 32.0mol%、Fe
2O3 49.3mol%なる組成のものを媒体ビーズと
して直径3mmの部分安定化ジルコニア(PSZ)と窒
化珪素ビーズを用い、湿式内部循環方式のメディア撹拌
型ミルにより、表1に示す媒体ビーズの比率により湿式
で混合し、乾燥した後800℃にて仮焼成した。次にこ
の仮焼成物を媒体ビーズであるPSZを用い、表1に示
すように、再び湿式内部循環方式のメデイア撹拌型ミル
により湿式で仮焼成物の濃度を33%とし、表1の左端
の欄に示すように、撹拌速度、粉砕時間、ボール直径を
パラメータとして変化させ、微粉砕した。
率を体積比としてPSZ:50%、窒化珪素:50%、
また、媒体ビーズの直径を3mmとし、材料の平均粒径
が0.5μm、すなわち比表面積が8m2/gとなるよ
うに、撹拌速度を1m/s、2.0m/s、4.0m/
s、4.3m/s、5.0m/s、6.0m/s、7.
0m/s、8.0m/s、10m/sと変化させ、各撹
拌速度に対し、粉砕時間を93時間、82時間、55時
間、45時間、40時間、28時間、20時間、12時
間、2。5時間と変化させた。そしてこれらをサンプル
1〜9として、いずれも、平均粒径が0.5μm、比表
面積が8m2/gの粉体を得た。
を3mm、撹拌速度を4m/sとし、粉砕時間を1時
間、1.5時間、115時間、134時間に変化させ、
平均粒径が2.2μm、1.8μm、0.3μm、0.
2μm、比表面積が1.8m2/g、2.2m2/g、1
5m2/g、17m2/gの粉体を得たものである。
4m/s、粉砕時間を55時間と一定にし、ボール直径
を0.2mm、5mm、12mmに変化させて、それぞ
れ平均粒径が0.6μm、0.7μm、1.5μm、比
表面積がそれぞれ7m2/g、6m2/g、3m2/gの
粉体を得たものである。
4m/s、粉砕時間を55時間、ボール直径を3mmと
一定にし、媒体ビーズとして用いたPSZと窒化珪素の
比率を体積比でPSZ:窒化珪素=20:80、PS
Z:窒化珪素=80:20、PSZ:窒化珪素=99:
1と変化させ、それぞれ平均粒径が0.7μm、0.4
5μm、0.45μm、比表面積がそれぞれ6m2/
g、9m2/g、9m2/gの粉体を得たものである。
ル20〜22について試験を行った。サンプル20は、
主成分が、NiO 9.5mol%、CuO 10.5
mol%、ZnO 34.0mol%、Fe2O3 4
6.0mol%のものを用い、粉砕機として前記湿式内
部循環式メディア撹拌型ミルを用い、ボールとして直径
が3mm、材質がステンレス鋼のものを用い、前記サン
プル1〜9と同じ平均粒径0.5μm、比表面積8m2
/gが得られるように、撹拌速度、粉砕時間を設定した
ものである。
した主成分の材料を用い、粉砕機として前記湿式内部循
環式メディア撹拌型ミルを用い、ボールとして直径が3
mm、材質がチタニアのものを用い、前記サンプル1〜
9と同じ平均粒径0.5μm、比表面積8m2/gが得
られるように、撹拌速度、粉砕時間を設定したものであ
る。
5mol%、CuO 10.5mol%、ZnO 3
4.0mol%、Fe2O3 46.0mol%のものを
用い、粉砕機としてボールミルを用い、ボールとして直
径が3mm、材質がステンレス鋼のものを用い、平均粒
径0.3μm、比表面積12m2/gのものを得たもの
である。
混入量および表3に示す製造後の主成分の定量分析は蛍
光X線分析法により測定した。また、比表面積は(株)
島津製作所製流動式比表面積自動測定装置、フローソー
プ2300型でBET一点法により測定した。また、平
均粒径は、ハネウェル(HONEWELL)社製マイク
ロトラックHRA9320−X100型でレーザー回折
・散乱法により測定した。
料作製)前記サンプル1〜22に示した材料にバインダ
ーとしてPVA124の3%水溶液を10重量部加えて
造粒し、後述の測定条件により所定の形状に成形し、空
気中で870℃、880℃、910℃、920℃、94
0℃、1000℃、1100℃で2時間焼成して作製し
た。
の比表面積とするまでの粉砕時間と、媒体ビーズの摩耗
による混入と思われる不純物の確認と、主成分であるF
e2O3、ZnO、CuO、NiOの組成のずれと、表4
に示す初透磁率と、表5に示す見かけ密度とを評価する
ことにより行った。初透磁率の測定は、外径18mm、
内径10mm、高さ3.1mmのトロイダル型となるよ
うに成形し、空気中で所定温度にて焼成し、ワイヤーを
20回巻いて実際にコイルを作製し、インピーダンスア
ナライザ(ヒューレットパッカード社製4291A)に
より、磁界を0.4A/m印加し、100kHzのイン
ダクタンスを測定し、形状から得られた定数から算出し
てこれを求めた。
め、その質量を体積で除算して求めた。ここで、見かけ
密度は、焼結体の焼結性の良し悪しを見るためのもので
ある。見かけ密度が低いことにより、焼結体内部の空孔
が多くなり、素子化した場合において、高い温湿度での
使用により、この空孔が原因となり、ショート不良等の
信頼性に影響を及ぼしたり、物理的強度が脆弱となると
いう問題が生じる。このような問題が生じない見かけ密
度は、一般にNi−Cu−Znフェライトの理論密度
(5.3〜5.5g/cm3)の95%以上となる5.
0g/cm3以上である。
に、所望の比表面積を8m2/gとしたとき、撹拌速度
が増加するにつれ、粉砕時間が短時間になることから、
撹拌速度の増加が粉砕効率を向上させることが分かる。
ただし、この撹拌速度の増加は媒体ビーズの摩耗量を増
加させる。表2に示すように、PSZおよび窒化珪素に
ついては、その主成分であるZrO2とY2O3とSiが
混入するが、他の成分の混入は認められない。
おいては、ボール直径と撹拌速度が同じであるサンプル
5の場合と粉砕時間とボールの摩耗量を比較すると、サ
ンプル20、すなわちステンレス鋼の場合、PSZ:窒
化珪素=50:50の場合より粉砕時間が短縮され、粉
砕効率は非常に高いが、摩耗量はPSZ:窒化珪素=5
0:50の場合に比較して約20倍と非常に多量であ
る。また、サンプル21、すなわちチタニアの場合もP
SZ:窒化珪素=50:50に比較して約8.2倍の摩
耗量がある。
3は主成分であるFe2O3、ZnO、CuO、NiOの
秤量から混合粉砕、仮焼成、微粉砕を経た材料の組成の
ずれを示す。これは主成分である前記各酸化物の定量分
析の結果である。表3から分かるように、サンプル2
0、22のようにステンレス鋼を媒体ビーズに用いた場
合、秤量から完成までのFe2O3のずれが大きく、Ni
−Cu−Znフェライトにおいて、最も慎重な管理が要
求されるFe2O3の組成が秤量から完成までに3mol
%以上増加する。また、ステンレス鋼は内部と外部の硬
度に違いがあるため、媒体ビーズの使用が長期にわたる
と、Fe2O3の混入量にも違いが生じるため、組成管理
が困難になることが分かる。
ンプル10〜13から分かるように、粉砕時間を長時間
とすることにより、比表面積を増加させることができる
ことが分かる。
撹拌速度と粉砕時間を一定としたサンプル3、14、1
5、16に示すように、同じ撹拌速度で同じ粉砕時間粉
砕した場合、ボール直径が3mmの場合が得られる粉体
の比表面積が最も大きく、粉砕効率が高いことが分か
る。一般にボール直径が小さくなるにつれて、粉砕効率
が大きくなることが知られているが、ただしそれは、粗
粉砕工程を経た場合であって、十分粗粉砕を行わない実
施例においては、ボール直径が3mmの場合が最も粉砕
効率が高いことが分かる。なお、サンプル22のように
ボールミルを使用した場合、192時間の長時間の粉砕
により、比表面積を12m2/gとすることが可能とな
る。しかしこれは、湿式内部循環式のメディア撹拌型ミ
ルで撹拌速度を4m/sとしたときのサンプル12と比
較しても、倍以上の粉砕時間を要する。しかも、サンプ
ル22の場合、比表面積も小さく、ボールミルの粉砕効
率が低いことが分かる。
示す初透磁率は、表5に示す見かけ密度と関連のあるこ
とが分かる。すなわち比較的低い透磁率しか得られない
サンプル9〜11、16、21においては、見かけ密度
も低くなる。サンプル1〜9において、ボール直径3m
mのPSZと窒化珪素を媒体ビーズとして、湿式内部循
環式のメディア撹拌型ミルを用い、比表面積が8m2/
gとなるように撹拌速度を変化させたが、撹拌速度を大
きくすると透磁率と焼結体密度は双方とも劣化した。こ
れはPSZの成分であるZrO2とY2O3の混合量およ
び窒化珪素によるSiの混入量の増加が、特性の劣化に
寄与しているものである。ただし焼成温度が1100℃
とするとその差は小さく、ほぼ同等と考えられるが、9
40℃以下では大きくなる。
ル22と比較すると、撹拌速度が6m/s、ZrO2の
混入量が0.111重量%、Y2O3が0.006重量
%、Siが0.027重量%を越えると劣化することが
分かる。これを越えない範囲では従来と比較して極めて
良好な特性が得られる。また、920℃での焼成、すな
わちAgの融点以下での焼成が可能となる。ただし、こ
の値を越えても、ZrO2の混入量が0.194重量
%、Y2O3が0.011重量%、Siが0。056重量
%を越えない範囲であれば、サンプル8に示すように、
920℃において、5g/cm3以上の見かけ密度が得
られた。
/cm3以上が、Agとの同時焼成に好適な920℃以
下の焼結により得られるサンプルは、サンプル1〜8、
サンプル12〜15、サンプル17〜19、サンプル2
0、22である。サンプル9の場合、撹拌速度が10m
/sであり、この場合は、平均粒径、比表面積がサンプ
ル1〜8と同じであっても、ZrO2、Y2O3、Siの
混入量が多過ぎるため、940℃であっても5.0g/
cm3以上の見かけ密度を得ることができない。また、
サンプル1の場合、撹拌速度が1m/sであり、比表面
積が8.0m2/gとなるまでに93時間の長時間を要
するので好ましくない。このようなことから、好適な撹
拌速度は2.0〜8.0m/sである。
面積が2.5m2/gであるサンプル11や3m2/gで
あるサンプル16の場合には、920℃において、5g
/cm3以上の見かけ密度が得られない。比表面積が6
m2/gとなるサンプル15においては、5.0g/c
m3以上の見かけ密度が得られる。
15m2/gであれば、見かけ密度として5.0g/c
m3以上の値が得られる。サンプル12の場合、粉砕時
間が115時間と長くなっているが、これは撹拌速度を
大とすることにより、短縮することができる。
〜16は撹拌速度、粉砕時間を一定にし、媒体ビーズと
して使用したボール直径を変更し、湿式内部循環式のメ
ディア撹拌型ミルを用いて粉砕を行ったものであるが、
サンプル3、14、15のように、直径が0.2〜5m
mの範囲では5g/cm3以上の見かけ密度が920℃
以上での焼成で得られる。
ついて]サンプル3、17〜19は、ボール直径、撹拌
速度、粉砕時間を一定にし、媒体ビーズとして使用した
PSZと窒化珪素の体積比率を変更し、湿式内部循環式
のメディア撹拌型ミルを用いて粉砕を行ったものである
が、PSZ:窒化珪素=20:80〜99:1の範囲に
おいて、5g/cm3以上の見かけ密度が920℃以上
の焼成温度で得られる。
より低い940℃以下であれば、Agとの同時焼成が可
能である。従って焼成温度は80〜940℃であり、さ
らに好ましくは910〜920℃である。
の場合、5g/cm3の焼結体密度を得るには1100
℃以上の焼成温度が必要である。
との比較]該公報に記載の方法では、媒体ビーズ摩耗に
よるZrO2の混入量を0.02重量%程度に抑えるた
め、196時間という長時間をかけてゆっくりと粉砕し
ている。本発明は、Agとの同時焼成を目標として、9
20℃程度の焼成でも5g/cm3以上の見かけ密度が
得られる範囲でZrO2、Y2O3の混入量をサンプル7
のようにそれぞれ0.03重量%、0.001重量%以
上に、また、窒化珪素ビーズも併用してそのSiの混入
量をサンプル18のように0.001重量%以上に上
げ、これにより撹拌速度を上げて粉砕効率を上げること
を可能としているのである。
SZと窒化珪素を用いてNi−Cu−Znに前記混入量
のY2O3、ZrO2およびSiを含ませることにより、
Agとの同時焼成が可能な温度において焼成可能で、焼
成により5.0g/cm3以上の見かけ密度で透磁率の
面においても需要に応じることのできる焼結体を得るこ
とができる。また、Y2O3、ZrO2およびSiの量を
前記範囲に設定することにより、短い粉砕時間で酸化物
磁性材料を得ることができ、製造コストを低減できる。
酸化物磁性材料の焼結体を用い、バルク型コイル部品、
あるいは積層型コイル部品が構成されるので、強度や透
磁率の面においても高温焼成のものとそれほど遜色がな
いコイル部品が得られる。
て、内部導体がAgまたはAgとPdの合金を主成分と
するので、Qの高いコイル部品が得られる。
方法によれば、PSZボール、窒化珪素ボールを利用し
て仮焼成後の材料の粉砕を行うことにより、従来のステ
ンレス、鋼ボール等を用いる場合のような組成管理の困
難の問題を解消することができる。また、粉砕工程を利
用してY2O3、、ZrO2およびSiの混入を行うので、
材料混入のための秤量や混合の工程が不要になる。ま
た、特許第2708160号公報に記載のように、粉砕
時の媒体ビーズからの混入量を低く抑える場合に比較
し、撹拌速度を上げ、粉砕時間を短縮して製造コストを
安価にすることができる。
方法によれば、媒体ビーズ直径、媒体ビーズの撹拌速
度、仮焼成を経た粉砕物の比面積をそれぞれ前記各範囲
に設定するため、粉砕効率が低下や、焼結体密度および
透磁率の劣化をきたすことなく、酸化物磁性材料を得る
ことができる。
ば、媒体ビーズにより粉砕した酸化物磁性材料と内部導
体とを成形して910〜920℃で焼成するため、焼結
不足になったり、フェライト中に電極材料が拡散するこ
とを防ぎ、電磁気的特性の劣化を防止することができ
る。
8)
おいては、ボール直径と撹拌速度が同じであるサンプル
5の場合と粉砕時間とボールの摩耗量を比較すると、サ
ンプル20、すなわちステンレス鋼の場合、PSZ:窒
化珪素=50:50の場合より粉砕時間が短縮され、粉
砕効率は非常に高いが、摩耗量はPSZ:窒化珪素=5
0:50の場合に比較して約73倍と非常に多量であ
る。また、サンプル21、すなわちチタニアの場合もP
SZ:窒化珪素=50:50に比較して約8.2倍の摩
耗量がある。
Claims (10)
- 【請求項1】Fe2O3、ZnO、CuOおよびNiOを
主成分とし、この主成分に、全体量に対する含有量が
0.001〜0.011重量%となるY2O3を含み、か
つ0.031〜0.194重量%となるZrO2を含
み、かつ0.010〜0.056重量%となるSiを含
むことを特徴とする酸化物磁性材料。 - 【請求項2】請求項1の酸化物磁性材料の焼結体を用
い、バルク型コイル部品として構成されていることを特
徴とするチップ部品。 - 【請求項3】請求項1の酸化物磁性材料の焼結体を用
い、かつ焼結体内に導電体層を有して積層型コイル部品
または積層型コイル部品を一部に含んで構成されている
ことを特徴とするチップ部品。 - 【請求項4】請求項3において、内部導体がAgまたは
AgとPdの合金を主成分とすることを特徴とするチッ
プ部品。 - 【請求項5】請求項1の酸化物磁性材料を製造する方法
であって、 原料の混合粉砕時および仮焼成を経た材料の粉砕時に湿
式内部循環式のメディア撹拌型ミルを用い、媒体ビーズ
として部分安定化ジルコニアと窒化珪素を使用し、 媒体ビースの摩滅により、酸化物磁性材料内に、全体量
に対する含有量が0.001〜0.011重量%となる
Y2O3を含み、かつ0.03〜0.194重量%となる
ZrO2を含み、かつ0.010〜0.056重量%と
なるSiを含有させることを特徴とする酸化物磁性材料
の製造方法。 - 【請求項6】請求項5において、 部分安定化ジルコニアビーズおよび窒化珪素ビーズの全
体量に対し、窒化珪素ビーズが、体積比で20%〜99
%であることを特徴とする酸化物磁性材料の製造方法。 - 【請求項7】請求項5または6の酸化物磁性材料の製造
方法であって、 媒体ビーズとしてその直径が0.2〜5mmのものを使
用することを特徴とする酸化物磁性材料の製造方法。 - 【請求項8】請求項5から7までのいずれかの酸化物磁
性材料の製造方法であって、 媒体ビーズの撹拌速度を2.0〜8.0m/sとするこ
とを特徴とする酸化物磁性材料の製造方法。 - 【請求項9】請求項5から8までのいずれかの酸化物磁
性材料の製造方法であって、 仮焼成を経た材料から粉砕により比表面積が6.0〜1
5.0m2/gの粉体を得ることを特徴とする酸化物磁
性材料の製造方法。 - 【請求項10】請求項3または4のチップ部品の製造方
法であって、 媒体ビーズにより粉砕した酸化物磁性材料と内部導体と
を成形して910〜920℃で焼成することを特徴とす
るチップ部品の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012124216A (ja) * | 2010-12-06 | 2012-06-28 | Tdk Corp | フェライト組成物、フェライトコアおよび電子部品 |
-
1999
- 1999-09-17 JP JP26293599A patent/JP2001085216A/ja active Pending
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JP2011096977A (ja) * | 2009-11-02 | 2011-05-12 | Tdk Corp | フェライト組成物、フェライトコアおよび電子部品 |
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