JP2001046053A - 多核細胞のゲノムターゲット部位の改変方法、それに使用するためのターゲティングベクター、および改変された多核細胞 - Google Patents

多核細胞のゲノムターゲット部位の改変方法、それに使用するためのターゲティングベクター、および改変された多核細胞

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修 畑本
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Osamu Takahashi
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玄龍 海附
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多核細胞のゲノムターゲット部位を遺伝子タ
ーゲティング法により改変する方法を提供する。 【解決手段】 a.改変されたターゲット部位と、b.相同
組み換え体セレクションマーカーと、c.コピー数コント
ロール用マーカーとを含有するDNAを含む、多核細胞
のゲノムターゲット部位を改変するためのターゲティン
グベクター、その製法、このベクターを用いる多核細胞
の改変方法、ならびに改変された多核細胞。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多核細胞におい
て、所望のコピー数のゲノムターゲット部位を改変する
方法、それに使用するターゲティングベクター、その製
法、およびターゲット部位が改変された多核細胞に関す
る。
【0002】
【従来の技術】微生物は、各種産業分野、例えば発酵食
品や医薬品等の製造現場において広く使用されている。
従来より、微生物の細胞中のDNA構造のうち、所望の
部位(ターゲット部位)を改変して有用な細胞を得る方
法が種々開発されている。遺伝子工学的手法によるター
ゲット部位の改変は、特定の遺伝子発現の活性化や不活
化、細胞の形質・物質生産性の改善、等を目的として、
各種産業分野において広く行われている。
【0003】染色体上のターゲット部位を改変する方法
としては、例えば、ターゲティングベクターを用いて相
同組み換えの原理によりターゲット部位を改変する方法
(以下「遺伝子ターゲティング法」)が知られている。
遺伝子ターゲティング法を用いて特定の遺伝子発現を不
活化する技術は、遺伝子破壊法とよばれ、すでに動物細
胞、酵母、糸状菌等の系では、遺伝子破壊株あるいは遺
伝子欠失株が作出されている。
【0004】産業上用いられる微生物のなかには、細胞
中に複数の核を含む生物、すなわち多核細胞(multinuc
leate cell)からなる生物(多核細胞生物)があり、食
品、医療、基礎研究の現場で広く使用されており産業上
有用な微生物である。しかし、多核細胞の核をたとえば
遺伝子ターゲティング法などの技術により改変したとい
う例は極めて少ない。とりわけ以下のものが知られてい
る。
【0005】(1)Transformation of Aspergillus flavu
s :construction of urate oxidase-deficient mutants
by gene disruption. Laurent Chevalet et.al. Curr
Genet(1992) 21:447-453:(1)ではアスペルギルス・
フラバスを宿主にuaZ遺伝子(urate oxidase-encoding
gene)破壊を行い、目的の株をプレートアッセイにより
検定し、最終的にurate oxidase活性の測定とサザン解
析によりuaZ遺伝子破壊を確認している。また、アスペ
ルギルス属は胞子の段階では単核(細胞内に一つの核が
存在)であるので、容易にheterokaryonの株(異なる種
類の核が細胞内に混在する株)からhomokaryonの株(同
一種類の核が細胞内に存在する株)を選択できると記載
されている。しかしながら、アスペルギルス属のすべて
の糸状菌が、単核の胞子を作るわけではなく、例えば、
アスペルギルス・オリゼ(A・オリゼ)あるいはアスペ
ルギルス・ソーヤ(A・ソーヤ)の胞子は多核の状態で
ある(Ushijima S. Agric.Biol.Chem.,54(7),1667-167
6,1990、Ushijima S. Agric.Biol.Chem.,51 (4),1051-1
057,1987)。
【0006】また、本報引例(Fincham JRS(1989) Micr
obiol. Rev.53:148-170)に記載の通り、胞子が多核の
状態である多核生物での遺伝子破壊株の選択は、破壊さ
れた遺伝子に由来する表現型の変化(形態、酵素活性、
薬剤耐性、栄養要求性等)を指標にシングルコロニーア
イソレーションをくり返すしかなく、細胞中のすべての
核が目的の核で占められているか否かを容易に検定する
方法は開発されていない。特に、遺伝子破壊のターゲッ
ト遺伝子が、活性測定が容易でないタンパク質をコード
する遺伝子あるいはサイレントな遺伝子の場合の遺伝子
破壊はさらに困難となる。
【0007】(2)Transcription stimulates homolpgous
recombination in mammalian cells. Nickoloff JA e
t.al. Mol.Cell.Biol.,Sep.10(9)1990,p.4837-4845 (2)では酵母あるいは哺乳動物において遺伝子の相同組
み換えが起こる場合、転写が起こっている遺伝子は、転
写されていない遺伝子にくらべて相同組み換えが起こる
頻度が高いことが記載されている。
【0008】すなわち、サイレントな遺伝子の破壊を行
う場合、破壊した遺伝子に由来する表現型の変化で遺伝
子破壊株の選択を行うことが出来ないだけでなく、相同
組み換えの起こる頻度が低いために目的の遺伝子破壊株
の作出がより困難となる。多核細胞のサイレント遺伝子
を破壊する場合も、相同組み換え効率の低下が予想され
る。
【0009】(3)Characterrization of Polyketide Syn
thase Gene(pksL1) Required for Aflatoxin Biosynthe
sis in Aspergillus parasiticus. Guo Hong Feng et.a
l.Journal of Bacteriology,Nov.1995,p6246-6254 (4)avnA, a Gene Encoding a Cytochrome P-450 Monoox
ygenase, Is Involved in the Congersion of Averanti
n to Averufin in Aflatoxin Biosynthesis in Aspergi
llus parasiticus. Jiujiang Yu et. al. Appl. Enviro
n. Microbiol.,Apr. 1997,p.1349-1356 (5)Structural and Functional Analysis of the nor I
Gene Involved in theBiosynthesis of Aflatoxins by
Aspergillus parasiticus. Frances Trail et.al. App
l.Environ.Microbiol.,Nov.1994,p.4078-4085 (3)、(4)、(5) は、アフラトキシン生合成系関連遺伝子
であるpksL1、avnA、nor I が破壊されたアスペルギル
ス・パラスティカス(A・パラスティカス)の育種に関
する。目的の遺伝子破壊株の選択法は、煩雑な方法であ
る薄相クロマトグラフィー、プレートアッセイ法および
サザン解析法である。
【0010】また、A・パラスティカスでは、これらの
遺伝子は実際に転写されているアクティブな遺伝子であ
る。一方、後述の通り、A.オリゼあるいはA.ソーヤ
においてはアフラトキシン生合成系関連遺伝子であるpk
sA、nor I、avnA等はサイレントな遺伝子である。これ
らの遺伝子の破壊を行う場合プレートアッセイ法による
スクリーニングが不可能であり、破壊株の取得は非常に
困難である。さらにまた、多核細胞のターゲット部位を
遺伝子ターゲティング法により改変しようとする場合に
は、種々の課題を解決する必要がある。
【0011】例えば、多核細胞中に複数コピー存在する
ターゲット部位の全てを改変しなければならない場合が
ある。食品醸造分野では、食品の風味を低下させる物質
の生成に関与する酵素を不活化したいという要望があ
る。このような場合、問題となる酵素の遺伝子を不活化
した遺伝子破壊株を作出するが、その際は、ターゲット
部位となる遺伝子の1コピーのみならず、全コピーを不
活化することが望ましい。
【0012】また、多核細胞を培養して有用物質の生産
を行なう場合、該物質の生合成に関与する酵素の遺伝子
の発現を向上させるため、遺伝子ターゲティング法を用
いて耐熱性や触媒活性等を向上させた酵素遺伝子、ある
いは改変された遺伝子発現調節部位を宿主細胞に導入す
る。この場合も、ターゲット部位の全コピーを改変する
ことが望ましい。さらには、多核細胞の使用の目的によ
っては、複数コピー存在するターゲット部位のうち、所
望のコピー数のターゲット部位を改変する場合もある。
【0013】多核細胞のターゲット部位を改変する場合
には、以下のような問題点がある。 (1) ターゲット部位の全コピーが改変されていることの
確認は、通常はサザン解析法またはPCR法により行な
う。これらの方法では、改変されたターゲット部位に比
べ、未改変のターゲット部位がごく少数存在する場合、
その改変状態を検出することが困難である。 (2)ターゲット部位の全コピーが改変されていない場
合、形質転換の際、ベクターの導入に用いたマーカーを
維持するための選択圧をかけていない状態では、改変さ
れたターゲット部位を含む核の欠落が起こる場合があ
る。 (3)非相同組み換えの頻度が高いことから、微生物を利
用するうえで好ましくない部位で組み換えが起こること
がある。
【0014】(4)所望のコピー数のターゲット部位が改
変された細胞を選択するのが困難である。 (5) 多核細胞では細胞複製の際、複製されたそれぞれの
核の染色体が均等に娘細胞へ分配されるわけではない。
このため、ターゲット部位の全コピーが改変されていな
い細胞を継代培養した場合、改変されたターゲット部位
を含む核が存在しない細胞が現れる頻度が高い。技術的
な問題により、糸状菌をはじめとする多核生物において
は、ターゲット部位を簡便かつ高頻度に改変する方法は
確立されていなかった。このため、全てのコピーのター
ゲット部位を改変した多核細胞を得ることは非常に困難
であった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、 (1)多核細胞の所望のゲノムターゲット部位を改変す
るためのターゲティングベクター; (2)そのようなターゲティングベクターを製造する方
法; (3)多核細胞のゲノムターゲット部位を改変する方
法; (4)ターゲット部位が改変された多核細胞;および (5)ターゲティングベクターを製造するための中間体
ベクターを提供することである。
【0016】本発明により例えば以下のことが可能とな
る。 (1)生活環に単核相を持たない多核生物においても容
易に遺伝子破壊を行うことができる。 (2)相同組み換え体セレクションマーカー、特に、ポ
ジティブセレクションマーカーおよびネガティブセレク
ションマーカーの働きにより、形質転換体の中から効率
的に、相同組み換えにより目的遺伝子が破壊された株を
スクリーニングできる。 (3)効率的にサイレントな遺伝子が破壊された株を作
出することができる。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、多核細胞
のターゲット部位を改変する方法について鋭意検討を行
ない、以下に記載する本発明を完成した。すなわち本発
明は、a.改変されたターゲット部位と、b.相同組み換え
体セレクションマーカーと、c.コピー数コントロール用
マーカーとを含有するDNAを含む、多核細胞のゲノム
ターゲット部位を改変するためのターゲティングベクタ
ーを提供する。
【0018】本明細書中、「ターゲット部位」とは、多
核細胞の染色体(すなわちゲノム)上に存在する塩基配
列のうちの任意の部位を指す。また、「改変されたター
ゲット部位」とは、上記ターゲット部位の塩基配列にお
いて、1または複数の塩基に、置換、欠失、挿入または
付加の変異を導入されているものを指す。
【0019】また本明細書中、「相同組み換え体セレク
ションマーカー」とは、ターゲティングベクターが、相
同組み換えの原理により宿主細胞に導入されたか否かを
確認するためのマーカーを指す。さらに本明細書中、
「コピー数コントロール用マーカー」とは、細胞中に複
数コピー存在するターゲット部位のうち、改変されてい
る割合を確認するためのマーカーを指す。
【0020】本発明の実施態様において、相同組み換え
体セレクションマーカーは、ポジティブセレクションマ
ーカーおよびネガティブセレクションマーカーでありう
る。本発明の別の実施態様において、コピー数コントロ
ール用マーカーは、その発現が以下のいずれかの方法、
すなわち細胞の薬剤(ブレオマイシン等)感受性試験、
細胞の生育速度、酵素活性試験、光学的方法または栄養
要求性試験により観察できるようなポリペプチドをコー
ドするDNAでありうる。具体的には、そのようなコピ
ー数コントロール用マーカーは、ラッカーゼ、β-ガラ
クトシダーゼ、β-グルクロニダーゼおよびアルカリフ
ォスファターゼからなる群から選択される酵素をコード
しているDNAを例示できる。
【0021】本発明のさらに別の実施態様において、タ
ーゲティングベクターは以下の(1)または(2)のい
ずれかのDNA構造を含むことができる: (1)
【0022】
【化4】 (2)
【0023】
【化5】 さらに具体的には以下のDNA構造を有するターゲティ
ングベクターを例示することができる:
【0024】
【化6】
【0025】(ここで、pyrGはオロチジン−5’−ホス
フェートデカルボキシラーゼ遺伝子、oliC31はオリゴマ
イシン耐性ATPシンターゼサブユニット9遺伝子を示
す。)本発明において、ターゲット部位は以下のいずれ
かの遺伝子: (1)サイレント遺伝子、(2)その発現の観察が困難
である遺伝子、または(3)機能未知の遺伝子領域であ
りうる。
【0026】本明細書中、「サイレント遺伝子」とは、
通常細胞内で発現していない遺伝子をいう。また、「そ
の発現の観察が困難である遺伝子」とは、検出技術など
の点で発現の同定が難しい遺伝子を指す。さらに「機能
未知の遺伝子領域」とは、コードされているタンパク質
の機能が知られていない遺伝子領域、あるいは機能が十
分に解明されていない遺伝子領域(例えば、染色体上に
存在する転写に関与するシスエレメント等)を指す。
【0027】或いは、本発明において、ターゲット部位
は、酵素、ペプチドホルモン、細胞骨格構成タンパク
質、生理活性物質生合成系関連酵素またはトキシン生合
成系関連酵素をコードする遺伝子を例示することができ
る。本発明のベクターは通常プラスミドベクターである
が、これに限定されない。例えば本発明のターゲティン
グベクターを構築するために使用可能なベクターとして
は、例えばpUC118、pBR322、pUC18等を挙げることがで
きる。
【0028】本発明の別の実施態様において、多核細胞
は糸状菌または担子菌に属する生物由来でありうる。本
発明はまた、別の態様において、多核細胞において、所
望のコピー数のターゲット部位を改変する方法であっ
て、 (1)以下のa〜cを含むDNA構造を宿主細胞に導入す
る工程 a.改変されたターゲット部位、 b.相同組み換え体セレクションマーカーおよび c.コピー数コントロール用マーカー; (2)相同組み換え体セレクションマーカーの発現を指
標として相同組み換え体を選抜し、1コピー以上のター
ゲット部位が改変されている細胞を得る工程;および (3)得られた相同組み換え体について、コピー数コン
トロール用マーカーの発現を指標として選抜を行ない、
所望のコピー数のターゲット部位が改変されている細胞
を得る工程、を含む、前記方法を提供する。
【0029】本発明の実施態様において、上記方法中の
(1)の工程は、 上記定義のターゲティングベクター
を宿主細胞に導入する工程を含みうる。本発明の別の実
施態様において、上記方法中の(3)の工程は、 a.得られた相同組み換え体を培地に播種し、 b.コピー数コントロール用マーカーの発現が最も強い細
胞を選抜し、 c.選抜された細胞を培養培地に播種し、および d.1つの細胞から得られる子孫の細胞の全てが、等し
い強度でコピー数コントロール用マーカーを発現するよ
うになるまで、a〜cの操作を繰り返すことを含みう
る。
【0030】本発明のさらに別の実施態様において、上
記方法における多核細胞は糸状菌または担子菌に属する
生物由来でありうる。具体的には、多核細胞として、ア
スペルギルス属、ペニシリウム属、ノイロスポラ属、ま
たはフザリウム属のいずれかに属する生物細胞を例示で
きる。
【0031】本発明はさらに、別の態様において、上記
定義のターゲティングベクターを宿主細胞に導入するこ
とにより、ターゲット部位のうち、1コピー〜全コピー
のターゲット部位が改変されている多核細胞を提供す
る。本発明の実施態様において、多核細胞は、上記の方
法より、ターゲット部位のうち、1コピー〜全コピーの
ターゲット部位が改変されているものを例示できる。
【0032】本発明の別の実施態様において、多核細胞
は糸状菌または担子菌由来でありうる。本発明は、さら
に別の態様において、マイコトキシンの生合成に関与す
る一つあるいは複数の酵素の遺伝子の全コピーが破壊さ
れているA・オリゼまたはA・ソーヤから選択される微
生物細胞を提供する。あるいは、本発明は、上記の方法
によりマイコトキシンの生合成に関与する一つあるいは
複数の酵素の遺伝子の全コピーが破壊されているA・オ
リゼまたはA・ソーヤから選択される微生物細胞を提供
する。
【0033】本発明でいう「多核細胞」とは、1つの細
胞中に2個以上の核が存在する細胞を意味する。本発明
はさらに、本発明の上記ターゲティングベクターの製造
方法であって、ターゲット部位を導入するための少なく
とも1つの制限部位を含むリンカーと相同組み換え体セ
レクションマーカーとコピー数コントロール用マーカー
とを含有するDNAを含む中間体ベクターを該制限部位で
酵素的に切断し、その切断部位に該ターゲット部位を導
入することを含む方法を提供する。
【0034】本発明はさらに、ターゲット部位を導入す
るための少なくとも1つの制限部位を含むリンカーと、
相同組み換え体セレクションマーカーと、コピー数コン
トロール用マーカーとを含有するDNAを含む中間体ベク
ターを提供する。本発明はさらに、本発明の上記ターゲ
ティングベクターの、多核生物における特定遺伝子の機
能を調べるための使用を提供する。この使用方法には多
核生物における染色体中への該ベクターの組み込みの結
果喪失する機能を同定することを含む。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明についてさらに詳細
に説明する。 1.本発明のターゲティングベクター 本発明のターゲティングベクターは、多核細胞におい
て、該細胞の染色体上のターゲット部位を改変するため
ものである。
【0036】多核細胞は、上記定義のとおり、1つの細
胞中に2個以上の核が存在する細胞であればよく、特に
限定されるものではない。多核細胞生物としては、例え
ば糸状菌、担子菌、子のう菌、等に分類されている微生
物、例えばアスペルギルス属、ペニシリウム属、ノイロ
スポラ属、フザリウム属に属する微生物、あるいはScut
ellospora castanea等を例示することができる。とりわ
け、アスペルギルス属に属する微生物としては、例えば
A・オリゼ、A・ソーヤ、A・パラスティカス、A・フ
ラバス、アスペルギルス・ニーデュランス(A・ニーデ
ュランス)、アスペルギルス・フミガタス(A・フミガ
タス)等を挙げることができる。A・ニーデュランスは
細胞中に核が1個存在する生活相(単核相)と核が複数
個存在する生活相(多核相)とを有するが、本発明でい
う多核細胞生物には、細胞中の核が常に複数個存在する
生物のみならず、生活相の一部に多核相を有する生物も
含まれる。
【0037】本発明のベクターの使用により、多核細胞
中の全コピーあるいは所望のコピー数のターゲット部位
を改変することができる。改変方法は、一般的な相同組
み換えの原理により、前記ベクター中の改変ターゲット
部位を宿主細胞である多核細胞に導入することによって
実施することができる。
【0038】本発明のターゲティングベクターは、以下
の3種のDNA構造: a.改変されたターゲット部位、 b.相同組み換え体セレ
クションマーカーおよびc.コピー数コントロール用マー
カー、を含むことによって特徴付けられる。これらのエ
レメントの配置には、特に制限はなく、考えうるいかな
る配置でもよい。ベクターは、必要に応じて、プロモー
ター、ターミネーター等の調節配列、複製開始点などを
含むことができる。
【0039】本発明におけるターゲット部位は、多核細
胞の染色体上に存在する塩基配列のうちの任意の部位で
あり、多核細胞を使用する目的により適宜選択すればよ
い。ターゲット部位としては、例えば、各種酵素・ペプ
チドの構造遺伝子(例えば種々の酵素類やペプチドホル
モン類、細胞骨格構成タンパク質、等をコードする遺伝
子)、遺伝子発現調節部位(プロモーター、オペレータ
ー、エンハンサー、ターミネーター等)、介在配列(イ
ントロン)、テロメア、セントロメア等に該当するDN
A領域またはその近傍の領域が挙げられる。また、ター
ゲット部位としては、機能未知の遺伝子領域も選択可能
である。
【0040】酵素としては、特に限定されないが、例え
ば、プロテアーゼ、セルラーゼ、ラクターゼ、グルコー
スオキシダーゼ、ペクチナーゼ、カタラーゼ、アミラー
ゼ、リパーゼ、抗生物質生合成系関連酵素、トキシン生
合成系関連酵素等が挙げられる。プロテアーゼとして
は、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリプ
ロテアーゼ等が挙げられる。トキシン生合成系関連酵素
としては、オクラトキシン(アスペルギルス属)、トリ
コテセン(トリコデルマ属)、アフラトキシン(アスペ
ルギルス属)等の生合成関連酵素が挙げられ、具体的に
は、diacylglycerol lipase、ketoreductase、C-15 hyd
roxylase等が挙げられる。抗生物質生合成系関連酵素と
しては、acvA(delta-(L-alpha-animoadipyl)-L-cystein
yl-D-valine synthetase)、ipnA(isopenicillin-N-synt
hetase)等の生合成関連酵素が挙げられる。
【0041】ターゲット部位は、通常細胞内で発現して
いない遺伝子(サイレント遺伝子という)であってもよ
い。A・オリゼあるいはA・ソーヤにおけるサイレント
遺伝子としては、pksA、nor1、ver1、aflR等が挙げられ
る。これらの遺伝子はA・パラスティカスやA・フラバ
スではアフラトキシン生合成系関連酵素として機能する
遺伝子であるが、一方A・オリゼあるいはA・ソーヤで
は該遺伝子は発現していないためサイレント遺伝子であ
り、これらの微生物はアフラトキシン非生産株である。
サイレント遺伝子に対し遺伝子を破壊するような改変を
加えることにより、A・オリゼあるいはA・ソーヤのア
フラトキシン非生産性をより確実にすることができる。
【0042】また、ターゲット部位としては、改変の結
果が容易に観察できない領域を選択することができる。
例えば、その発現の観察が困難である遺伝子領域をター
ゲット部位とした場合、該ターゲット部位が改変された
株を取得することは従来の技術では非常に困難である
が、本発明の方法により、そのような株の取得は非常に
容易になる。あるいは、多核細胞のの遺伝子領域のすべ
てのコピーが改変された場合に、その細胞が致死となる
遺伝子領域をターゲット部位とする場合においても、本
発明の方法を用いることは非常に有用である。
【0043】さらに、ターゲット部位としては機能未知
の遺伝子領域を選択することができ、本発明により該領
域の改変によりその遺伝子の機能解析を行うことも可能
である。したがって、本発明のターゲティングベクター
はそのようなターゲット部位を改変する場合にも非常に
有用である。
【0044】本発明における「改変されたターゲット部
位」とは、上記ターゲット部位の塩基配列において、1
または複数の塩基に、置換、欠失、挿入または付加の変
異を導入されているものをいう。ターゲット部位を改変
するためには、従来公知の遺伝子工学的手法(例えば、
部位特異的変異誘発法、PCR法など)を用いることが
できる。例えば、特定の酵素の構造遺伝子あるいは遺伝
子発現調節部位をターゲット部位とし、これを改変する
場合、まず、公知の遺伝子クローニング法により、当該
ターゲット部位のDNA領域をクローニングする。つい
で、得られたターゲット部位の塩基配列において、1ま
たは複数の塩基に、置換、欠失、挿入または付加の変異
を導入する。変異の導入は、オリゴDNAとポリメラーゼ
を用いる方法、制限酵素を用いる方法、PCRを用いる
方法等により実施することができる。これらの一般的な
方法は、例えばSambrookら,Molecular Cloning, Labora
tory Mannual, Second ed. (1989), Cold Spring Horbo
r Laboratory Pressに記載されており、本発明の実施に
おいて利用可能である。
【0045】本発明における「相同組み換え体セレクシ
ョンマーカー」とは、ターゲティングベクターが、相同
組み換えの原理により宿主細胞に導入されたか否かを確
認するためのマーカーである。該マーカーとしては、ポ
ジティブ−ネガティブセレクションを可能とするマーカ
ー、すなわちポジティブセレクションマーカーおよびネ
ガティブセレクションマーカーからなるものであること
が好ましい。ポジティブ−ネガティブセレクション法
は、所望の相同組換え体のスクリーニングを容易にする
ための方法であって、相同組み換え体を選択し、かつ非
相同組み換え体を除去することができる。
【0046】この方法では、まず、ポジティブセレクシ
ョンマーカーの働きにより、形質転換された細胞のみが
選択される。次に、ネガティブセレクションマーカーの
働きにより相同組み換え体のみが選択される。ポジティ
ブセレクションマーカーは形質転換体を選択するための
マーカーであり、例えば薬剤耐性遺伝子、栄養要求性相
補遺伝子等が好適に使用できる。薬剤耐性遺伝子として
は、ネオマイシン耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝
子、オリゴマイシン耐性遺伝子、等が挙げられる。栄養
要求性相補遺伝子としては、例えば、argB遺伝子(Mole
cular cloning and deletion of the gene encoding As
pergillopepsinA from Aspergillus awamori. Berka RM
et. al. Gene, 1990 Feb.14,86(2)p.153-162)、pyrG
遺伝子(Recombinational Inactivation of the Gene E
ncoding Nitrate Reductase in Aspergillus parasitic
us. Tzong-Shoon Wu et. al. Appl. Environ. Microbio
l. ,Sept.1993,p.2998-3002)、niaD遺伝子(The devel
opment of a homologous transformation system for A
spergillusoryzae based on the nitrate assimilation
pathway:a convenient and general selection system
for filamentous fungal transformation. Shiela E.
Unkles et. al. Mol. Gen. Genet.1989, 218 p.99-10
4)等が挙げられる。
【0047】ネガティブセレクションマーカーは形質転
換体から非相同組み換え体を除去するためのマーカーで
あり、薬剤感受性遺伝子等が好適に使用できる。ネガテ
ィブセレクションマーカーは、相同組み換えが起こった
時には染色体に組み込まれず、非相同組み換えが起こっ
た時には染色体に組み込まれて機能することにより形質
転換体の生育を阻害するものが好ましい。薬剤感受性遺
伝子としては、例えばoliC31遺伝子等が挙げられる(Tr
ansformation of Aspergillus nidulans witha cloned,
oligomycin-resistant ATP synthase subunit 9 gene.
Michael Wardet.al. Mol. Gen. Genet.1986, 202 p.265
-270)。oliC31遺伝子が非相同組み換えにより染色体に
組み込まれた場合、細胞がトリエチルチンに対して感受
性となるので、形質転換体はトリエチルチンを含む培地
では生育できない。
【0048】本発明における「コピー数コントロール用
マーカー」とは、細胞中に複数コピー存在するターゲッ
ト部位のうち、改変されている割合を確認するためのマ
ーカーである。該マーカーとしては、改変されたターゲ
ット部位のコピー数に応じて、マーカーの発現が定量的
に観察できるものが使用される。本発明のコピー数コン
トロール用マーカーとしては、その発現が以下のいずれ
かの方法、すなわち細胞の薬剤感受性試験、薬剤耐性試
験、細胞の生育速度、酵素活性試験、光学的方法または
栄養要求性試験により観察できるようなポリペプチドを
コードする遺伝子であることが好ましい。特に好ましい
マーカーとしては、プレートアッセイ等の光学的方法に
よる観察が可能である酵素、例えば発色性酵素(ラッカ
ーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ
等)、発光性酵素(アルカリフォスファターゼ、ホタル
ルシフェラーゼ等)が挙げられる。発色性酵素をマーカ
ーに用いた場合には、シングルコロニーアイソレーショ
ン時のプレート上で検定が可能であり目的の細胞を簡便
に選択することができる。
【0049】ターゲティングベクターに含まれる3種の
DNA構造(a.改変されたターゲット部位、b.相同組み
換え体セレクションマーカー、c.コピー数コントロール
用マーカー)は、相同組み換えの原理によるターゲット
部位の改変という目的を果たす限り、どのような順序で
配置されていてもよい。本発明のターゲティングベクタ
ーとしては、以下(1)〜(3)のいずれかの配置から
なるDNA構造を含むものが好適に使用される: (1)
【0050】
【化7】 (2)
【0051】
【化8】 (3)
【0052】
【化9】
【0053】上記(1)および(2)では、ターゲット
部位内部へのコピー数コントロール用マーカーおよびポ
ジティブセレクションマーカーの挿入によって、ターゲ
ット部位が改変されている。上記(1)または(2)の
ターゲティングベクターが相同組み換えの原理により多
核細胞に導入された場合は、改変されたターゲット部
位、ポジティブセレクションマーカー、およびコピー数
コントロール用マーカーが染色体に挿入される。このと
き、ポジティブセレクションマーカーを指標として選抜
された組み換え体は相同組み換え体である。一方、上記
(1)または(2)のターゲティングベクターが非相同
組み換えの原理により多核細胞に導入された場合は、ネ
ガティブセレクションマーカーも染色体に挿入される。
例えば、形質転換体を選択する培地に、ネガティブセレ
クションマーカーとして用いた薬剤感受性遺伝子の導入
により感受性になる薬剤を加えておくことにより、非相
同組み換え体を生育させず、相同組み換え体のみを選択
的に選抜することができる。
【0054】多核細胞における遺伝子ターゲティングが
可能である限り、ポジティブセレクションマーカーとコ
ピー数コントロール用マーカーはそれぞれの機能を兼ね
備えていれば、同一のマーカーであってもよい。その場
合、ターゲティングベクターは上記(3)に示した構成
となる。
【0055】ターゲティングベクターについては、各構
成部分は、直接隣り合っていてもよいし、あるいは適当
な鎖長の塩基配列を介して連結されていてもよい。ま
た、各構成部分の間には、マーカー遺伝子やターゲット
部位の発現に関与する塩基配列(プロモーター、エンハ
ンサー等)あるいはその他任意の配列が挿入されていて
もよい。さらに、本発明のターゲティングベクターに必
須である3種のDNA構造の両側には、必要により遺伝
子操作のために必要な他の塩基配列が連結されていても
よい。宿主細胞が糸状菌である場合の、本発明のターゲ
ティングベクターの例を以下に示す:
【0056】
【化10】
【0057】(ここで、pyrGはオロチジン−5’−ホス
フェートデカルボキシラーゼ遺伝子、oliC31はオリゴマ
イシン耐性ATPシンターゼサブユニット9遺伝子を示
す。)なお、本発明のターゲティングベクターの形状は
直鎖状であってもよく、また環状であってもよい。
【0058】2.本発明のターゲット部位を改変する方
本発明の方法は、多核細胞において、所望のコピー数の
ターゲット部位を改変する方法であって、以下の(1)
〜(3)の工程を含むことを特徴とする方法である: (1)以下のa〜cのDNA構造を宿主細胞に導入する工
程 a.改変されたターゲット部位、 b.相同組み換え体セレクションマーカー、 c.コピー数コントロール用マーカー; (2)相同組み換え体セレクションマーカーの発現を指
標として、相同組み換え体を選抜し、1コピー以上のタ
ーゲット部位が改変されている細胞を得る工程; (3)得られた相同組み換え体について、コピー数コン
トロール用マーカーの発現を指標として選抜を行ない、
所望のコピー数のターゲット部位が改変されている細胞
を得る工程。
【0059】上記(1)の工程は、相同組み換えの原理
によって多核細胞のターゲット部位を改変するために必
要な、3種のDNA構造(a〜c)を宿主に導入する工
程である。この工程を効率的に実施するためには、上述
した本発明のターゲティングベクターを、環状または直
鎖状にて宿主細胞に導入する方法を採用することが好ま
しい。ベクターを宿主細胞に導入する場合は、公知の遺
伝子導入法、例えば、エレクトロポレーション法、パー
ティクルガン(particle gun)を使用する方法、塩化カ
ルシウムや塩化リチウムで処理した細胞をベクターと接
触させる方法等を採用できる。
【0060】また、細胞を細胞壁分解酵素で処理してプ
ロトプラストとした後にベクターと接触させる方法も好
適である。効率的にベクターを導入するために、プロト
プラストとベクターとの接触は、ポリエチレングリコー
ル存在下で行なうことが好ましい。細胞壁分解酵素とし
ては、例えば、リゾチーム、セルラーゼ、キチナーゼ、
あるいはこれらの混合物が使用できる。
【0061】あるいは、各DNA構造を多核細胞に別々
に導入することもできる。例えば、相同組み換え体セレ
クションマーカーのうちのポジティブセレクションマー
カーを含むベクターとその他のDNA構造を含むベクタ
ーを個別に調製し、共形質転換(co-transformation)
法を用いて細胞内に導入することができる。
【0062】上記(2)の工程では、相同組み換え体セ
レクションマーカーの発現を指標として、相同組み換え
体を選抜し、1コピー以上のターゲット部位が改変され
ている細胞を得ることができる。多核細胞のターゲット
部位は複数個存在するから、(1)の工程で得られる相
同組み換え体において、改変されたターゲット部位のコ
ピー数は1コピー〜全コピーとなる。
【0063】本発明の方法においては、相同組み換え体
セレクションマーカーは、ポジティブセレクションマー
カーおよびネガティブセレクションマーカーからなるマ
ーカーであることが望ましい。そのようなマーカーを使
用することにより、相同組み換え体を効率的に選抜する
ことができる。上記(3)の工程では、得られた相同組
み換え体について、コピー数コントロール用マーカーの
発現を指標として選抜を行ない、所望のコピー数のター
ゲット部位が改変されている細胞を得ることができる。
【0064】コピー数コントロール用マーカーは、改変
されたターゲット部位のコピー数に応じて、マーカーの
発現が定量的に観察できるものである。例えば、コピー
数コントロール用マーカーが発色性酵素(例えばラッカ
ーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ等)
の遺伝子である場合、マーカーの発現は以下のように観
察する。まず、発色のための基質を添加した培地に、上
記(2)の工程で得られた相同組み換え体を接種する。
細胞が増殖してコロニーが形成されるので、該コロニー
の発色またはコロニー周辺の培地の発色を観察する。細
胞中に導入された発色性酵素のコピー数が多い程(すな
わち改変されたターゲット部位のコピー数が多い程)、
観察される発色は強くなる。
【0065】上記(2)の工程で得られる相同組み換え
体において、改変されたターゲット部位のコピー数は様
々である。予め、マーカーの発現量と、改変されたター
ゲット部位のコピー数との相関を把握しておけば、上記
(3)の工程における選抜を繰り返すことにより、所望
のコピー数のターゲット部位が改変されている細胞を得
ることができる。
【0066】本発明の方法は、特に、ターゲット部位の
全てを改変する方法として有用である。ターゲット部位
の全てを改変する場合は、上記(3)の工程を下記のご
とく実施すればよい: a.得られた相同組み換え体を培地に播種する。 b. コピー数コントロール用マーカーの発現が最も強い
細胞を選抜する。 c.選抜された細胞を、培地に播種する。 d.1つの細胞から得られる子孫の細胞の全てが、等しい
強度でコピー数コントロール用マーカーを発現するよう
になるまで、a〜cの操作を繰り返す。
【0067】相同組み換え体における改変されたターゲ
ット部位のコピー数は様々であるから、コピー数コント
ロール用マーカーが発色性酵素の遺伝子である場合、各
相同組み換え体のコロニーにおいて観察される発色の強
度も様々である。発色が最も強く観察される細胞の選抜
を続けると、最終的には全てのターゲット部位が改変さ
れた相同組み換え体を得ることができる。
【0068】本発明では、(4)の工程として、宿主細
胞に導入したターゲティングベクター由来のDNA領域
を除去する工程を加えてもよい。除去するDNA領域とし
ては、マーカー遺伝子、遺伝子発現調節領域、ターゲッ
ト部位の一部等が挙げられる。特にマーカー遺伝子を除
去することにより、同じマーカー遺伝子を再度利用し
て、他のターゲット部位の改変を行なうことが可能とな
る。
【0069】DNA領域を除去する場合は、相同組み換
えの原理を利用した通常のターゲティングベクターを使
用することができる。マーカー遺伝子を除去する場合の
ベクターとしては、以下のDNA構造、(1)マーカー
が除去された後の染色体DNA領域および(2)ネガテ
ィブセレクションマーカーを有するものが例示される。
そのようなベクターが相同組み換えの原理により宿主細
胞に導入された場合、「宿主細胞の染色体DNA上のマ
ーカー近傍の領域」と「マーカーが除去された後の染色
体DNA領域」とが入れ替わるので、結果的に宿主細胞
からマーカー遺伝子が除去される。一方、非相同組み換
えが起こった宿主細胞は、ネガティブセレクションマー
カーの働きにより排除することができる。実施例5に、
本発明のターゲティングベクターを用いて作出したアル
カリプロテアーゼ遺伝子破壊株から、ターゲティングベ
クター由来のマーカー遺伝子を除去する方法について記
載した。
【0070】3.本発明により提供される多核細胞 本発明は、上記のターゲティングベクターを宿主細胞に
導入することにより、ターゲット部位の1コピー〜全コ
ピー、好ましくは全コピー、のターゲット部位が改変さ
れていることを特徴とする多核細胞を提供する。また、
本発明は上記の方法によりターゲット部位の1コピー〜
全コピー、好ましくは全コピー、のターゲット部位が改
変されていることを特徴とする多核細胞も提供する。
【0071】本発明の多核細胞としては、以下のような
ものが例示される。 ・糸状菌由来であって、アルカリプロテアーゼ遺伝子の
全コピーが破壊されている多核細胞。具体的には、実施
例2に記載の1764-6-5株が挙げられる。1764-6-5株は、
A.オリゼ由来であって、アルカリプロテアーゼ遺伝子
の全コピーが破壊されている。
【0072】・マイコトキシンの生合成に関与する一つ
あるいは複数の酵素の遺伝子の全コピーが破壊されてい
るマイコトキシン非生産細胞であって、A.ソーヤまた
はA.オリゼ由来の多核細胞。マイコトキシンとして
は、オクラトキシン、アフラトキシン等が挙げられる。
また、マイコトキシンの生合成に関与する遺伝子として
は、ver1、nor1、afrR、pksA 遺伝子;等が挙げられ
る。具体的には、実施例3に記載の、Aspergillus Oryz
ae 1764-22-5株(FERM BP−6821;平成11年8月3日付
けで工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば
市東1−1−3)に寄託)が挙げられる。1764-22-5株は、
A.オリゼ由来であって、pksA遺伝子の全コピーが破
壊されている。このため、アフラトキシン非生産性がよ
り確実なものとなっている。
【0073】・同様に実施例4に記載の、Aspergillus
sojae KS1-7-5株(FERM BP-6820;平成11年8月3日
付けで工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託)が挙
げられる。KS1-7-5株は、A・ソーヤ由来であって、pks
A遺伝子の全コピーが破壊されている。このため、アフ
ラトキシン非生産性がより確実なものとなっている。
【0074】以下に、糸状菌由来の多核細胞を宿主と
し、そのターゲット部位を改変する方法について説明す
る。糸状菌としては、細胞に複数の核を有する糸状菌で
あれば、特に限定されず、例えば、N・クラッサ、A・
オリゼ、A・ソーヤを好適な生物として挙げることがで
きる。ターゲティング部位としては、改変が求められる
いずれのDNA領域でも可能であり、特に、従来の技術で
は困難であった、その遺伝子の発現の観察が困難あるい
は発現していない遺伝子領域においても可能である。本
発明の所望のコピー数のターゲット部位が改変されてい
る糸状菌は、例えば、以下のようなステップを経て作出
される。
【0075】(1)まず、ポジティブセレクション可能
な宿主の育種をおこなう。ただし、ポジティブセレクシ
ョンマーカーとして用いる遺伝子の持つ機能と同様の機
能をもつ遺伝子を、宿主細胞が有しない場合は宿主の育
種は省略できる。 (2)改変が求められるターゲット部位をクローニング
する。 (3)クローニングしたターゲット部位の1または複数
の塩基に、置換、欠失、挿入または付加の変異を導入
し、改変されたターゲット部位を作成する。
【0076】(4)改変されたターゲット部位、相同組
み換え体セレクションマーカー(ポジティブセレクショ
ンマーカーおよびネガティブセレクションマーカーから
なる)、コピー数コントロール用マーカーを含むターゲ
ティングベクターを構築する。 (5)ターゲティングベクターを宿主に導入し、ポジテ
ィブセレクションマーカーにより形質転換体の選択を行
うとともに、ネガティブセレクションマーカーにより相
同組み換えのみが起こった形質転換体を選択する。 (6)相同組み換えのみが起こった形質転換体につい
て、コピー数コントロール用マーカーの発現を指標とし
て選抜を行い、所望のコピー数のターゲット部位が改変
されている細胞を得る。
【0077】以下、糸状菌としてA・オリゼ、ターゲッ
ト部位としてアルカリプロテアーゼ遺伝子あるいはpksA
遺伝子、コピー数コントロール用マーカーとしてラッカ
ーゼ遺伝子、相同組み換え体セレクションマーカーとし
てpyrG遺伝子およびoliC31遺伝子を用いた場合について
各ステップごとに説明する。なお、同様の方法によりA
・オリゼの任意のターゲット部位、あるいはA.オリゼ
の近縁の種であるA・ソーヤの任意のターゲット部位を
改変することが可能である。
【0078】まず、第一のステップでは、pyrG遺伝子領
域での相同組み換えを防ぐため、A・オリゼのpyrG遺伝
子欠失株を作出して宿主とする。まず、ポジティブセレ
クションマーカーとして用いるpyrG遺伝子プロモーター
上流の領域と構造遺伝子領域下流のDNA断片をPCR法で増
幅、結合し、pyrG遺伝子領域の欠失したpyrG遺伝子近傍
のDNA断片を作製する。
【0079】次いで、pyrG遺伝子領域の欠失したpyrG遺
伝子近傍のDNA断片と、niaD遺伝子を含むプラスミドを
用いてA・オリゼのniaD-株の形質転換を行うことによ
り、pyrG遺伝子欠失株が得られる。なお、上記niaD-
は、KClO3耐性を指標として選択することができる。
【0080】pyrG遺伝子欠失株は、pyrG遺伝子にコード
されているorotidine-5'-phosphatedecarboxylase が機
能しないので、5-Fluoroorotic acidを含む最小培地で
生育可能である。また、pyrG遺伝子欠失株はウリジン要
求性を示すので、培地にはウリジンを加える必要があ
る。
【0081】第二のステップでは、改変が求められるタ
ーゲット部位をクローニングする。アルカリプロテアー
ゼ遺伝子のクローニングは、すでにクローニングされて
いたアスペルギルス・オリゼ由来のアルカリプロテアー
ゼ遺伝子断片をプローブにして行った。プローブと結合
しサザン解析で濃いバンドを示すアスペルギルス・ソヤ
アルカリプロテアーゼ遺伝子断片を含むDNA断片をベク
ターと結合し、大腸菌を形質転換後、コロニーハイブリ
ダイゼーション法により目的のアルカリプロテアーゼ遺
伝子を取得する。pksA遺伝子は、すでに知られているpk
sA遺伝子(GeneBank accession number: Z47198)の配列
をもとにPCR法により取得できる。
【0082】第三、第四のステップでは、クローニング
したターゲット部位にポジティブセレクションマーカー
およびコピー数コントロール用マーカーを挿入あるいは
置換することにより改変し、改変されたターゲット部
位、相同組み換え体セレクションマーカー、コピー数コ
ントロール用マーカーを含むターゲティングベクターを
構築する。ポジティブセレクションマーカーとして用い
たpyrG遺伝子は既知の配列(Gene Bank accession numb
er: Y13811)をもとにPCR法で取得できる。ネガティブ
セレクションマーカーとして用いたoliC31遺伝子はMich
ael Ward ら(MolGen Genet (1986)202:265-270)記載
のプラスミドから取得できる。コピー数コントロール用
マーカーとしては、Biosci.Biotechnol.Biochem.,63
(1),58-64,1999に記載のプラスミド(タンナーゼ遺伝子
プロモーター、ターミネーターとラッカーゼ構造遺伝子
をコピー数コントロール用マーカーとして含むプラスミ
ド)から取得できる。ベクターの構築は図4と図5に示
した。まず、pUC18ベクターにネガティブセレクション
マーカーとターゲット部位を結合する。次に、PCR法を
用いてポジティブセレクションマーカーとコピー数コン
トロール用マーカーをpUC18ベクターに結合し、さら
に、それを鋳型にPCR法で増幅した、ポジティブセレク
ションマーカーとコピー数コントロール用マーカーを含
むDNA断片をネガティブセレクションマーカーとターゲ
ット部位を含むプラスミドに結合して、ターゲティング
ベクターを構築する。
【0083】第五のステップではターゲティングベクタ
ーを宿主に導入し、ポジティブセレクションマーカーに
より形質転換体の選択を行うとともに、ネガティブセレ
クションマーカーにより相同組み換えが起こった形質転
換体を選択する。宿主として用いるPyrG遺伝子欠失株を
細胞壁溶解酵素(例えば商品名「ノボザイム234」(ノ
ボ社))で処理し、プロトプラストを調製する。
【0084】得られたプロトプラストにターゲティング
ベクターを加え、ポジティブセレクションマーカーであ
るpyrG遺伝子が導入された形質転換体のみが生育可能な
ポジティブセレクションプレート(ウリジンを含まない
最小培地)を用いて形質転換体の選抜を行う。得られた
形質転換体をウリジンを含むGA培地とウリジンを含むト
リエチルチン培地に点植後、両培地に生育し、GA培地で
褐変が見られる形質転換体を選抜する。培地にウリジン
を含む培地を使用することにより、改変されたターゲッ
ト部位のコピー数が少ない形質転換体の生育が促進され
る。
【0085】非相同組み換えが起こった形質転換体は、
ネガティブセレクションマーカーであるoliC31遺伝子の
働きでトリエチルチンプレートでは生育しないため、相
同組み換えのみが起こった形質転換体が選択される。ま
た、コピー数コントロール用マーカーであるラッカーゼ
遺伝子の導入された形質転換体はラッカーゼの働きによ
りGAが酸化されGAプレートで褐変がみられる。
【0086】第六のステップでは相同組み換えのみが起
こった形質転換体について、コピー数コントロール用マ
ーカーの発現を指標として選抜を行い、所望のコピー数
のターゲット部位が改変されている細胞を得る。相同組
み換えのみが起こった形質転換体の胞子をウリジンを含
むGAプレートに播種し、30℃で4日間培養する。得ら
れる各コロニーの中から、より強く褐変がみられる株の
胞子を取り、再度ウリジンを含むGAプレートに播種す
る。得られるすべてのコロニーで同程度に強く褐変が見
られるまで上記播種をくり返す。このようにして得られ
た株は、すべての核で所望のターゲット部位が改変され
た株である。また、播種により得られた中程度の褐変を
示すコロニーは、細胞内に、所望のターゲット部位が改
変された核とベクターが挿入されていない核が混在する
株であり、より褐変が進んだ株を選択することにより、
細胞内の所望のターゲット部位が改変された核の割合い
が高い株を、褐変の程度が低い株を選択することによ
り、細胞内の所望のターゲット部位が改変された核の割
合いが低い株を選択することができる。
【0087】
【実施例】以下、実施例によりさらに詳細に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例1 コピー数コントロール用マーカーを含むベクターを用い
たアルカリプロテアーゼ遺伝子の破壊 実施例1では、ラッカーゼをコピー数コントロール用マ
ーカーとする、アルカリプロテアーゼ遺伝子破壊用ベク
ターを構築し、A・オリゼに導入した。該マーカーの発
現を指標にして、細胞内に異なる核を有する様々な形質
転換体が得られる事を確認した。
【0088】(1)アルカリプロテアーゼ遺伝子破壊用
ベクターの構築 アルカリプロテアーゼ遺伝子破壊用ベクターの構築を図
1を用いて以下に説明する。pUC19に結合した、A・オ
リゼタンナーゼ遺伝子プロモーターおよびシグナルシー
クエンスの下流にスエヒロタケラッカーゼ遺伝子成熟領
域、さらにその下流にタンナーゼ遺伝子ターミネーター
を結合したプラスミドlacAL/pTPT(Biosci.Biotechnol.
Biochem.,63(1),58-64,1999記載のプラスミ
ド)を鋳型にプライマー1(5'GAA TTC TAG ATC TGG GG
A GCC GGG TAT 3';配列番号1)およびプライマー2
(5'GGG GGT TTT TAG ATC TTT GAT GCG GG3';配列番
号2)を用いてPCRを行った(94℃ 2分 1サイクル、94
℃ 30秒 55℃ 30秒 72℃ 3分30サイクル、72℃ 2分
1サイクル)。得られたPCR断片をBglIIで処理した後、Q
iAquick PCR Purification Kit(QIAGEN K.K.)を用い
てPCR断片の精製を行った。
【0089】A・ソーヤ アルカリプロテアーゼ遺伝子
(Gene Bank Accession Number : E03647)N末端部分を
含むBamHI-EcoRI断片をpuc118BamHI-EcoRI部位に結合
し、プラスミドpUCAlpEBとした。プラスミドpUCAlpEBの
EcoRI部位にアルカリプロテアーゼ遺伝子C末端部分を含
むEcoRI断片を結合しプラスミドpEEB65とした。pEEB65
をSacIで処理後、平滑末端化処理し、BamHIリンカーを
結合しプラスミドpAlpBEBとした。pAlpBEBのアルカリプ
ロテアーゼ構造遺伝子内のBglII部位に上記DNA断片を結
合しプラスミドplacEEB7とした。
【0090】(2)アルカリプロテアーゼ遺伝子破壊株
の作出 アルカリプロテアーゼ遺伝子破壊用宿主として用いる
為、特開平8-80196号公報記載の方法を用い、A・オリ
ゼ1764株(IAM2636)のniaD遺伝子欠損株(nitrateredu
ctase欠損株)の作出を行った。得られた株を、A・オ
リゼ1764 niaD-株と命名した。
【0091】placEEB7を鋳型に、プライマー3(5'ATG
CAG TCC ATC AAG CGT ACC TTG3';配列番号3)および
プライマー4(5'CGG CGT CGC CAG CAA TGT TCG 3';
配列番号4)を用いてPCRを行い(94℃ 2分 1サイク
ル、94℃ 30秒 55℃ 30秒72℃ 6分 30サイクル、72℃
2分 1サイクル)、PCR断片を得た。得られたPCR断片
と、niaD遺伝子を含むプラスミドpSTA14(Mol.Gen.Genet
(1989)218:p.99-104)を用い、特開平8-80196号公報記載
の方法により、1764 niaD-株の形質転換を行った。形質
転換体500株を、没食子酸(GA)プレート(1.2% diam
monium dihydrogen phosphate, 0.2% potassium dihydr
ogen phosphate, 0.1% magnesium sulfate, 5.3% gluco
se, 1% gallic acid, 0.005% copper( I )sulfate pent
ahydrate; pH6.0)に点植し、ラッカーゼの働きにより
褐変が見られる約150株の形質転換体を得た。
【0092】(3)形質転換体の解析 GAプレートで褐変が見られた150株の形質転換体の染
色体DNAを、特開平8-80196号公報記載の方法を用いて取
得した。得られた染色体DNAをPvuII処理後、ラッカーゼ
遺伝子の成熟領域をプローブとしてサザン解析を行い、
ベクターに含まれるラッカーゼ遺伝子由来のバンドが検
出された形質転換体4株(1764-36株、1764-66株、1764
-82株、1764-135株)を得た。1764-66株はラッカーゼ遺
伝子由来のバンドの数が最も少なかったので、染色体に
挿入されたアルカリプロテアーゼ遺伝子破壊用ベクター
のコピー数が最も少ない株であると判断した。
【0093】1764-66株について、GAプレート上でシン
グルコロニーアイソレーションを行い、全く褐変が見ら
れないものから、濃く褐変するものまで多段階の褐変度
合いを示す14株を得た。得られた14株の染色体DNA
を特開平8-80196号公報記載の方法を用いて取得後、Pvu
IIで処理し、タンナーゼ遺伝子ターミネーター領域およ
びアルカリプロテアーゼ遺伝子プロモーター領域をプロ
ーブにサザン解析を行った。
【0094】サザン解析の結果、1764-66株は、以下の
3種類の核(核A〜C)が混在する株であることを確認
した。 核A:目的のAlp遺伝子部位およびそれとは異なる部位
にアルカリプロテアーゼ遺伝子破壊用ベクターが挿入さ
れた核、すなわち、1つの核に2コピーのベクターが挿
入されている核。
【0095】核B:目的のAlp遺伝子部位とは異なる部
位にアルカリプロテアーゼ遺伝子破壊用ベクターが挿入
された核、すなわち、1つの核に1コピーのベクターが
挿入されている核。 核C:アルカリプロテアーゼ遺伝子破壊用ベクターが挿
入されていない核。
【0096】(4)異なる核を持つ形質転換体の選択 1764-66株からシングルコロニーアイソレーションされ
た上記14株のサザン解析を行い、それぞれの株の核の
状態を確認した(図2)。サザン解析に用いた株の染色
体DNAは、特開平8-80196号公報記載の方法を用いて取得
し、PvuIIで処理後、タンナーゼ遺伝子ターミネーター
領域およびアルカリプロテアーゼ遺伝子プロモーター領
域をプローブにサザン解析を行った。
【0097】a)上記14株の内、もっとも濃く褐変し
ている株を選び、GAプレート上でシングルコロニーアイ
ソレーションを行った。さらに、得られた株の内もっと
も濃く褐変している株を選びシングルコロニーアイソレ
ーションを行ったところ、全ての単胞子由来の株が濃く
褐変する株が得られた[この株では、全ての核が核Aであ
る(図2(A)のレーン1,5,9,14)。 レーン1,5,9,14
ではアルカリプロテアーゼ遺伝子をプローブにした場合
は、宿主(1764niaD-株)に見られるバンドが消失し、
アルカリプロテアーゼ遺伝子の位置で組み換えが起こっ
たと予想される位置に新たなバンドが見られた。また、
タンナーゼ遺伝子をプローブに用いた場合、宿主に見ら
れるバンドに加え、アルカリプロテアーゼ遺伝子の位置
で組み換えが起こったと予想される位置、さらにはそれ
以外に非特異的に組み換えが起こった結果生じたと考え
られる合計3本のバンドが見られた。]。また、ほとん
どの単胞子由来の株が濃く褐変するが、やや薄めの株が
存在する株が得られた(この株は、ほとんどの核が、核
Aで占められているが、わずかに核Bが混在している)。
【0098】b)同様に、上記14株の内、やや薄めに
褐変する株を選びシングルコロニーアイソレーションを
くり返すと、単胞子由来の株が1764-66と同様に多段階
の褐変度合いを示す株が得られた[この株では、核A、核
B、核Cが混在する(図2(A)のレーン3,4)。レーン
3,4ではアルカリプロテアーゼ遺伝子をプローブにした
場合、宿主に見られるバンドおよびアルカリプロテアー
ゼ遺伝子の位置で組み換えが起こったと予想される位置
に新たなバンドが見られた。また、タンナーゼ遺伝子を
プローブに用いた場合、宿主に見られるバンドに加え、
アルカリプロテアーゼ遺伝子の位置で組み換えが起こっ
たと予想される位置、さらにはそれ以外にすべての核が
核Aで占められた株およびすべての核が核Bで占められた
株でみられる、非特異的に組み換えが起こった結果生じ
たと考えられる合計4本のバンドが見られた。]。ま
た、全ての単胞子由来の株が同様にやや薄めに褐変する
株が得られた[この株では、全ての核が核Bである(図
2(B)のレーン2,6,7,10,11,12,13)。レーン2,6,7,1
0,11,12,13ではアルカリプロテアーゼ遺伝子をプローブ
にした場合、宿主と同じ位置に1本のバンドが見られ
た。タンナーゼ遺伝子をプローブに用いた場合、宿主に
見られるバンドに加え、非特異的に組み換えが起こった
結果生じたと考えられる合計2本のバンドが見られた
(すべての核が核Aで占められた株で見られる非特異的
組み換えによるバンドの位置とは異なることから、核A
とは異なる位置で非特異的組み換えが起こったと考えら
れる)。]。
【0099】c)同様に14株の内、褐変の程度が最も
薄い株を選びシングルコロニーアイソレーションをくり
返すと、すべての単胞子由来の株について、褐変の見ら
れない株が得られた[この株では、全ての核が核Cであ
る(図2(A)、(B)の レーン8)。レーン8では、
アルカリプロテアーゼ遺伝子およびタンナーゼ遺伝子の
どちらのプローブを用いた場合にも宿主と同じ位置にバ
ンドが見られた。]。シングルコロニーアイソレーショ
ンを行なった際に、多段階の褐変度合いを示す株の場合
でも、その株の褐変の程度により、核Aがより多く存在
する株あるいは核B、核Cが多く存在する株を選択するこ
とができることが示された。
【0100】このように、コピー数コントロール用マー
カーの発現(GAプレート上での褐変の程度)を指標にし
て、様々な核の状態を持つ形質転換体を選択できること
が示された。図3にレーン1から14で示した株をGAプ
レートに点植した結果を示す。それぞれの株は、細胞内
のラッカーゼ遺伝子のコピー数を反映した褐変の程度を
示している。
【0101】実施例2 本発明のターゲティングベクターを用いたA.オリゼ ア
ルカリプロテアーゼ遺伝子破壊株の作出 実施例2では、本発明のターゲティングベクターを構築
し、A・オリゼのアルカリプロテアーゼ遺伝子破壊株を
得た。該ベクターは、改変されたアルカリプロテアーゼ
遺伝子、コピー数コントロール用マーカーとしてのラッ
カーゼ遺伝子、ポジティブセレクションマーカーとして
のpyrG遺伝子、ネガティブセレクションマーカーとして
のoliC31遺伝子を含む。
【0102】(1)アルカリプロテアーゼ遺伝子破壊用
ターゲティングベクターの構築 アルカリプロテアーゼ遺伝子破壊用ターゲティングベク
ターの構築を図4を用いて以下に説明する。特開平8-80
196号公報記載の方法を用いて取得したA・オリゼ AO1
株の染色体DNAを鋳型に、プライマー5(5' GAG ACT GA
C TCT GTG GATCCG 3';配列番号5 )およびプライマー
6(5' CGG ATA CCC AGA TCT TGT GGC3';配列番号6)
を用いてPCRを行い、pyrG遺伝子を含むDNA断片を得た
(94℃ 2分 1サイクル、94℃ 30秒 55℃ 30秒 72℃
3分 30サイクル、72℃ 2分 1サイクル)。得られたPC
R断片をBglIIとBamHIで処理した後、QiAquick PCR Puri
fication Kit(QIAGEN K.K.)を用いてPCR断片の精製を
行った。
【0103】pUC18をBamHIで処理、脱リン酸化後、上記
PCR断片と結合してプラスミドppyrG-26とした。lacAL/p
TPTを鋳型に、プライマー1(配列番号1)およびプラ
イマー2(配列番号2)を用いてPCRを行い(94℃ 2分
1サイクル、94℃ 30秒 55℃ 30秒 72℃ 3分 30サ
イクル、72℃ 2分 1サイクル)、得られたPCR断片をBg
lIIで処理した後、QiAquick PCR Purification Kit(QI
AGEN K.K.)を用いてPCR断片の精製を行った。
【0104】ppyrG-26をBamHIで処理、脱リン酸化後、
上記PCR断片と結合してプラスミドpTLTpyrG-1とした。
A・ニードランス OliC31 PstI-XhoI断片をpUC18 PstI-
SalI部位に結合しプラスミドpMWPX-2とした。pMWPX-2
をBamHIで処理、脱リン酸化後、アルカリプロテアーゼ
遺伝子を含むpAlpBEB BamHI断片を結合しプラスミドpOl
iAlp-1とした。
【0105】pTLTpyrG-1を鋳型にプライマー7(5' GGT
TGC CCA GAT CTG TAA ACG 3';配列番号7)およびプ
ライマー8(5' CAC CCA TAG ATC TGG TCG GAC3';配
列番号8)を用いてPCRを行い(94℃ 2分 1サイクル、
94℃ 30秒 55℃ 30秒 72℃5分 30サイクル、72℃ 2
分 1サイクル)、得られたPCR断片をBglIIで処理した
後、QiAquick PCR Purification Kit(QIAGEN K.K.)を
用いてPCR断片の精製を行った。
【0106】pOliAlp-1をBglIIで処理、脱リン酸化後、
上記PCR断片を結合して、本発明のターゲティングベク
ター構造を含むプラスミドpdAlp-8とした。pdAlp-8に
は、改変されたターゲット部位としてアルカリプロテア
ーゼ遺伝子、ポジティブセレクションマーカーとしてpy
rG遺伝子、ネガティブセレクションマーカーとしてoliC
31遺伝子、コピー数コントロール用マーカーとしてラッ
カーゼ遺伝子、ラッカーゼ遺伝子の発現に必要な領域と
してタンナーゼ遺伝子プロモーターおよびターミネータ
ーが含まれている。アルカリプロテアーゼ遺伝子は、py
rG遺伝子ラッカーゼ遺伝子・タンナーゼ遺伝子プロモー
ターおよびターミネーターの挿入により破壊されてい
る。
【0107】(2)pyrG遺伝子欠失宿主株の作出 以下の方法により、ターゲティングベクターを導入する
ための宿主株を作出した。まず、特開平8-80196号公報
記載の方法を用いて取得した、AO1株の染色体DNAを鋳型
に、プライマー9(5' TAT CGA TAA GCT TTT GAA GAG
3';配列番号9)およびプライマー10(5' CTG GAG GCT
TGC GCG CAT TAG TGA TG 3';配列番号10)を用いて
PCRを行った(94℃ 2分 1サイクル、94℃ 30秒 55℃
30秒 72℃ 3分 30サイクル、72℃ 2分 1サイク
ル)。得られたPCR断片をHindIIIとBssHIIで処理した
後、QiAquick PCR Purification Kit(QIAGEN K.K.)を
用いてPCR断片の精製を行った。
【0108】同様に、 AO1株の染色体DNAを鋳型に、プ
ライマー11(5' GAC CTA CAG CGC GCG CGC TAG CAA GC
3';配列番号11)およびプライマー12(5' TCT CAC T
AG ATC TAT TCA TCC 3';配列番号12)を用いてPCRを
行った(94℃ 2分 1サイクル、94℃ 30秒 55℃ 30秒
72℃ 3分 30サイクル、72℃ 2分 1サイクル)。得
られたPCR断片をBglIIとBssHIIで処理した後、QiAquick
PCR Purification Kit(QIAGEN K.K.)を用いてPCR断
片の精製を行った。
【0109】両PCR断片を、BamHIとHindIIIで処理したp
UC18に加え、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を
用いて結合した後、それぞれの断片がpUC18に1コピー
ずつ結合したプラスミドを選択し、ppyrGdelとした。pp
yrGdelを鋳型に、プライマー13(5' TGT CTC AAA AGT C
GG GTC AAG AGT ATC C 3';配列番号13)およびプラ
イマー14(5' AGC CCA GAA AGC GAC ACG GCT AGC TT
3';配列番号14)を用いてPCRを行い(94℃ 2分 1サ
イクル、94℃ 30秒 55℃ 30秒 72℃ 6分 30サイク
ル、72℃ 2分 1サイクル)PCR断片を得た。
【0110】得られたPCR断片とpSTA14を用い、特開平8
-80196号公報記載の方法により、1764 niaD-株の形質転
換を行った。得られた形質転換体のうち、10mMウリジ
ン、0.2%5-Fluoroorotic Acidを含む最小培地(UFプレ
ート:3.5%CZAPEK-DOX BROTH DIFCO社製)で生育する株
の染色体DNAを特開平8-80196号公報記載の方法を用いて
取得し、XbaI処理後、pyrG構造遺伝子領域をプローブに
サザン解析を行った。サザン解析の結果で、1764niaD-
株より約750bp短いバンドが1本みられる1764-4株を選
択し、pyrG遺伝子欠失宿主株とした。
【0111】(3)ターゲティングベクターを用いたア
ルカリプロテアーゼ遺伝子破壊株の作出 pdAlp-8を鋳型に、プライマー15(5' CGA CGT TGT AAA
ACG ACG GCC 3';配列番号15)およびプライマー16
(5' ACA GCT ATG ACC ATG ATT ACG 3';配列番号1
6)を用いてPCRを行い(94℃ 2分 1サイクル、94℃ 3
0秒 58℃ 30秒 72℃ 10分 30サイクル、72℃ 2分
1サイクル)、PCR断片を得た。該PCR断片には、改変さ
れたターゲット部位としてアルカリプロテアーゼ遺伝
子、ポジティブセレクションマーカーとしてpyrG遺伝
子、ネガティブセレクションマーカーとしてoliC31遺伝
子、コピー数コントロール用マーカーとしてラッカーゼ
遺伝子、ラッカーゼ遺伝子の発現に必要な領域としてタ
ンナーゼ遺伝子プロモーターおよびターミネーターが含
まれている。
【0112】得られたPCR断片を用い、特開平8-80196号
公報記載の方法により、1764 -4株の形質転換を行っ
た。具体的に、まず、宿主株の培養物を濾過して細胞を
集めた後、細胞を細胞壁溶解酵素(商品名「ノボザイム
234」(ノボ社))で処理してプロトプラストとした。
次いで、該プロトプラストと上記PCR断片をポリエチ
レングリコール存在下で混合し、氷上で20分放置した。
この操作によりPCR断片がプロトプラストに導入さ
れ、さらに相同組み換えの原理により、PCR断片中の
ネガティブセレクションマーカー以外のDNA構造が染
色体上のターゲット部位に挿入される。氷上放置後に、
ソルビトールを含む最小培地でプロトプラストを培養
し、細胞壁を再生させた。ついで、細胞を軟寒天培地に
移し、コロニーが出現するまで培養した。なお、実施例
3(2)、実施例4(2)および実施例5(2)におけ
る形質転換も同様の方法で行なった。形質転換体120
株を、10mMウリジンを含むGAプレート(UGプレート)お
よび10mMウリジン、0.00002%トリエチルチンを含む最小
培地(UTプレート:3.5%CZAPEK-DOX BROTH DIFCO社製)
に点植し、UTプレートで生育し、UGプレートで薄く褐変
する形質転換体を選択した。選択した株をUGプレート上
でシングルコロニーアイソレーションし、コピー数コン
トロール用マーカー(UGプレート上での褐変の程度)を
指標にして、褐変の程度の最も濃い株を選択した。それ
ぞれの単胞子由来の株が、一様に濃くなるまで数回シン
グルコロニーアイソレーションをくり返し、最終的に得
られた株を1764-6-5株とした。
【0113】1764-6-5株の染色体DNAを特開平8-80196号
公報記載の方法を用いて取得し、ApaLI処理後、アルカ
リプロテアーゼ遺伝子プロモーター領域をプローブにサ
ザン解析を行った。その結果、親株である1764-4株では
約1.6kbと約3kbのバンドが見られたのに対して、176
4-6-5株では、約1.6kbのバンドとアルカリプロテアーゼ
遺伝子部位での相同組み換えにより染色体上にベクター
が挿入された際に予想される、約8kbのバンドが見られ
た。また、1764-6-5株をカゼインプレートに点植したと
ころ、1764-6-5株はほとんどハローを示さなかった。細
胞がアルカリプロテアーゼを発現する場合は、プレート
中のカゼインが分解されてハローが観察される。ターゲ
ティングベクターの導入により、1764-6-5株のアルカリ
プロテアーゼ遺伝子が破壊されたことが示唆された。
【0114】(4)PCRによるアルカリプロテアーゼ遺
伝子破壊株の確認 1764-6-5株の染色体DNAを鋳型に、プライマー17(ベク
ターに用いたpyrG遺伝子内の配列:5' GTA CCG GAG TG
T CTG AAG GTG 3';配列番号17)およびプライマー1
8(ベクターに用いたアルカリプロテアーゼ遺伝子より
さらに下流の配列:5' CTA CCC CTT GGT GGC CAT ACC
3';配列番号18)を用いてPCRを行った(94℃ 2分
1サイクル、94℃ 30秒 58℃ 30秒 72℃ 3分 30サイ
クル、72℃ 2分 1サイクル)。ベクターがアルカリプ
ロテアーゼ遺伝子部位で相同組み換えを起こした場合に
増幅される約2.8kbのバンドが観察された。
【0115】また、プライマー19(アルカリプロテアー
ゼ翻訳開始点下流の配列:5' ATGCAG TCC ATC AAG CGT
ACC 3';配列番号19)およびプライマー18を用いて
PCRを行った(94℃ 2分 1サイクル、94℃ 30秒 58℃
30秒 72℃ 7分 30サイクル、72℃ 2分 1サイク
ル)。ベクターがアルカリプロテアーゼ遺伝子部位で相
同組み換えを起こした場合に増幅される約7.5kbのバン
ドが増幅された。以上により、1764-6-5株はアルカリプ
ロテアーゼ遺伝子の位置で相同組み換えが起こった株で
あること、および本発明のターゲティングベクターの導
入により、細胞中のアルカリプロテアーゼ遺伝子の全コ
ピーが破壊されていることをPCRで確認した。本発明の
ターゲティングベクターおよび方法により、A・オリゼ
のアルカリプロテアーゼ遺伝子破壊株(1764-6-5株)が
作出された。
【0116】実施例3 本発明のターゲティングベクターを用いたA.オリゼ pks
A遺伝子破壊株の作出 実施例3では、本発明のターゲティングベクターを構築
し、A・オリゼのpksA遺伝子破壊株を得た。該ベクター
は、改変されたpksA(polyketide synthase)遺伝子、
コピー数コントロール用マーカーとしてのラッカーゼ遺
伝子、ポジティブセレクションマーカーとしてのpyrG遺
伝子、ネガティブセレクションマーカーとしてのoliC31
遺伝子を含む。
【0117】(1)pksA遺伝子破壊用ターゲティングベ
クターの構築 pksA遺伝子破壊用ターゲティングベクターの構築を図5
を用いて以下に説明する。特開平8-80196号公報記載の
方法を用いて取得した、A・ソーヤ A1株の染色体DNAを
鋳型にプライマー20(5' CAA TTT TGG CTA GCC TAT GT
G 3';配列番号20)およびプライマー21(5' CGC
CCT TGG TCG CGA GAG CTC 3';配列番号21)を用い
てPCRを行い(94℃ 2分 1サイクル、94℃ 30秒 58℃
30秒 72℃ 10分 30サイクル、72℃ 2分 1サイク
ル)、pksA遺伝子を含む約8.5kbのPCR断片を得た。得ら
れたPCR断片をNheIとNruIで処理した後、QiAquick PCR
Purification Kit(QIAGEN K.K.)を用いてPCR断片の精
製を行った。pMWPX-2をXbaIとSmaIで処理した後、上記P
CR断片を結合しプラスミドpOliC-pksA-43とした。な
お、pOliC-pksA-43の調製には、E.coli SCS110株(STRA
TAGENE社製)を用いた。
【0118】pTLTpyrG-1を鋳型にプライマー7およびプ
ライマー8を用いてPCRを行い(94℃ 2分 1サイクル、
94℃ 30秒 55℃ 30秒 72℃ 5分 30サイクル、72℃ 2
分1サイクル)、得られたPCR断片をBglIIで処理した
後、QiAquick PCR Purification Kit(QIAGEN K.K.)を
用いてPCR断片の精製を行った。pOliC-pksA-43をFbaIと
BglIIで処理、脱リン酸化後、上記PCR断片を結合し、本
発明のターゲティングベクター構造を含むプラスミドpd
pksA-38とした。
【0119】pdpksA-38には、改変されたターゲット部
位としてpksA遺伝子、ポジティブセレクションマーカー
としてpyrG遺伝子、ネガティブセレクションマーカーと
してoliC31遺伝子、コピー数コントロール用マーカーと
してラッカーゼ遺伝子、ラッカーゼ遺伝子の発現に必要
な領域としてタンナーゼ遺伝子プロモーターおよびター
ミネーターが含まれている。
【0120】pksA遺伝子は、pyrG遺伝子、ラッカーゼ遺
伝子、タンナーゼ遺伝子プロモーターおよびターミネー
ターの挿入により破壊されている。pdpksA-38を用いて
大腸菌を形質転換し、得られた形質転換体をE.coli XL-
1Blue(pdpksA-38)と命名した(FERM BP-6819;平成11
年8月3日付けで工業技術院生命工学工業技術研究所に寄
託)。
【0121】(2)ターゲティングベクターを用いたpk
sA遺伝子破壊株の作出 pdpksA-38を鋳型に、プライマー15およびプライマー16
を用いてPCRを行い(94℃ 2分 1サイクル、94℃ 30秒
58℃ 30秒 72℃ 10分 30サイクル、72℃ 2分 1サ
イクル)、改変されたターゲット部位としてpksA遺伝
子、ポジティブセレクションマーカーとしてpyrG遺伝
子、ネガティブセレクションマーカーとしてoliC31遺伝
子、コピー数コントロール用マーカーとしてラッカーゼ
遺伝子、ラッカーゼ遺伝子の発現に必要な領域としてタ
ンナーゼ遺伝子プロモーターおよびターミネーターを含
むPCR断片を得た。
【0122】得られたPCR断片を用い、特開平8-80196号
公報記載の方法を用いて、1764 -4株の形質転換を行っ
た。形質転換体200株をUGプレートおよびUTプレート
に点植し、UTプレートで生育し、UGプレートで薄く褐変
する形質転換体を選択した。選択した株をUGプレート上
でシングルコロニーアイソレーションし、コピー数コン
トロール用マーカー(UGプレート上での褐変の程度)を
指標にして、褐変の程度の最も濃い株を選択した。それ
ぞれの単胞子由来の株が、一様に濃くなるまで数回シン
グルコロニーアイソレーションをくり返し、最終的に得
られた株を1764-22-5株とした。
【0123】1764-22-5株の染色体DNAを特開平8-80196
号公報記載の方法を用いて取得し、SalI処理後、pksA遺
伝子領域をプローブにサザン解析を行った。その結果、
親株である1764-4株では約4.8kbのバンドが見られたの
に対して、1764-22-5株では、pksA遺伝子部位での相同
組み換えにより染色体上にベクターが挿入された際に予
想される、約8.5kbのバンドが見られた。
【0124】(3)PCRによるpksA遺伝子破壊株の確認 pksA遺伝子の破壊を確認するために、1764-22-5株の染
色体DNAを鋳型にPCRを行った(94℃ 2分 1サイクル、9
4℃ 30秒 58℃ 30秒 72℃ 3分 30サイクル、72℃ 2
分 1サイクル)。プライマー22(5’CAC CCT CGG AAT
AGT CCT CTC3’)およびプライマー-23(5’TGG GCG GT
T GGG TGG CAG GCA TTT GA3’)を用いた場合に、ベク
ターがpksA遺伝子部位で相同組み換えを起こした場合に
増幅される約1.9kbのバンドが増幅された。
【0125】このように、1764-22-5株はpksA遺伝子の
位置で相同組み換えが起こった株であること、および本
発明のターゲティングベクターの導入により、細胞中の
pksA遺伝子の全コピーが破壊されていることをPCRで確
認した。本発明のターゲティングベクターおよび方法に
より、A・オリゼのpksA遺伝子破壊株(1764-22-5株)
が作出された。1764-22-5株を、Aspergillus Oryzae 17
64-22-5と命名した(FERM BP-6821;平成11年8月3日
付けで工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託)。
【0126】実施例4 本発明のターゲティングベクターを用いたA.ソーヤ pks
A遺伝子破壊株の作出 実施例4では、実施例3にて構築したターゲティングベ
クター(pdpksAを鋳型に増幅したPCR断片)をA・ソー
ヤに導入し、A・ソーヤpksA遺伝子破壊株を得た。
【0127】(1)A.ソーヤ pyrG遺伝子欠失宿主株の
作出 特開平8-80196号公報記載の方法を用いて取得した、AO1
株の染色体DNAを鋳型に、プライマー9およびプライマー
24 (5' ATG CAC TAG GCG CGC GTT TCT CCG3';配列番
号24)を用いてPCRを行った(94℃ 2分 1サイクル、
94℃ 30秒 55℃ 30秒 72℃ 3分 30サイクル、72℃ 2
分 1サイクル)。得られたPCR断片をHindIIIとBssHII
で処理した後、QiAquick PCR Purification Kit(QIAGE
N K.K.)を用いてPCR断片の精製を行った。
【0128】また、 AO1株の染色体DNAを鋳型に、プラ
イマー25(5' GAA GGT GCA GCG CGCGAT TGG TCT 3';配
列番号25)およびプライマー12を用いてPCRを行った
(94℃ 2分 1サイクル、94℃ 30秒 55℃ 30秒 72℃
3分 30サイクル、72℃ 2分1サイクル)。得られたPCR
断片をBglIIとBssHIIで処理した後、QiAquick PCRPurif
ication Kit(QIAGEN K.K.)を用いてPCR断片の精製を
行った。
【0129】両PCR断片を、BamHIとHindIIIで処理したp
UC18に加え、DNA Ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を
用いて結合した後、それぞれの断片がpUC18に1コピー
ずつ結合したプラスミドを選択しppyrGdel-2とした。Pp
yrGdel-2を鋳型に、プライマー13およびプライマー14を
用いてPCRを行い(94℃ 2分 1サイクル、94℃ 30秒55
℃ 30秒 72℃ 6分 30サイクル、72℃ 2分 1サイク
ル)PCR断片を得た。得られたPCR断片とpSTA14を用い
て、特開平8-80196号公報記載の方法により、A.ソーヤ
KS1 niaD-株の形質転換を行った。
【0130】得られた形質転換体のうち、10mMウリジ
ン、0.2%5-Fluoroorotic Acidを含む最小培地(UFプレ
ート:3.5%CZAPEK-DOX BROTH DIFCO社製)で生育する株
の染色体DNAを特開平8-80196号公報記載の方法を用いて
取得し、XbaI処理後、pyrG構造遺伝子領域をプローブに
サザン解析を行った。サザン解析の結果、KS1 niaD-
より約1.4kb短いバンドが1本みられるKS1-7株を選択
し、pyrG遺伝子欠失宿主株とした。
【0131】(2)ターゲティングベクターを用いたA.
ソーヤ pksA遺伝子破壊株の作出 実施例3で構築したpdpksA-38を鋳型に、プライマー15
およびプライマー16を用いてPCRを行い(94℃ 2分 1サ
イクル、94℃ 30秒 58℃ 30秒 72℃ 10分30サイク
ル、72℃ 2分 1サイクル)、改変されたターゲット部
位としてpksA遺伝子、ポジティブセレクションマーカー
としてpyrG遺伝子、ネガティブセレクションマーカーと
してoliC31遺伝子、コピー数コントロール用マーカーと
してラッカーゼ遺伝子、ラッカーゼ遺伝子の発現に必要
な領域としてタンナーゼ遺伝子プロモーターおよびター
ミネーターを含むPCR断片を得た。
【0132】得られたPCR断片を用い、特開平8-80196号
公報記載の方法を用いて、KS1-7株の形質転換を行っ
た。形質転換体220株をUGプレートおよびUTプレート
に点植し、UTプレートで生育し、UGプレートで薄く褐変
する形質転換体を選択した。選択した株をUGプレート上
でシングルコロニーアイソレーションし、コピー数コン
トロール用マーカー(UGプレート上での褐変の程度)を
指標にして、褐変の程度の最も濃い株を選択した。それ
ぞれの単胞子由来の株が、一様に濃くなるまで数回シン
グルコロニーアイソレーションをくり返し、最終的に得
られた株をKS1-7-5株とした。
【0133】KS1-7-5株の染色体DNAを特開平8-80196号
公報記載の方法を用いて取得し、SalI処理後、pksA遺伝
子領域をプローブにサザン解析を行った。その結果、親
株であるKS1-7株では約4.8kbのバンドが見られたのに対
して、KS1-7-5株では、pksA遺伝子部位での相同組み換
えにより染色体上にベクターが挿入された際に予想され
る、約8.5kbのバンドが見られた。
【0134】(3)PCRによるpksA遺伝子破壊株の確認 pksA遺伝子の破壊を確認するために、KS1-7-5株の染色
体DNAを鋳型にPCRを行った(94℃ 2分 1サイクル、94
℃ 30秒 58℃ 30秒 72℃ 3分 30サイクル、72℃ 2
分 1サイクル)。プライマー22および23を用いた場合
に、ベクターがpksA遺伝子部位で相同組み換えを起こし
た場合に増幅される約1.9kbのバンドが増幅された。
【0135】このように、KS1-7-5株はpksA遺伝子の位
置で相同組み換えが起こった株であること、および本発
明のターゲティングベクターの導入により、細胞中のpk
sA遺伝子の全コピーが破壊されていることをPCRで確認
した。すなわち、本発明のターゲティングベクターおよ
び方法により、A・ソーヤのpksA遺伝子破壊株(KS1-7-
5株)が作出された。KS1-7-5株を、Aspergillus sojae
KS1-7-5と命名した(FERM BP-6820;平成11年8月3日
付けで工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託)。
【0136】実施例5 マーカー除去ベクターを用いたアルカリプロテアーゼ遺
伝子破壊株からのマーカー領域の除去 実施例5では、遺伝子破壊株の染色体DNA上に存在する
マーカー領域を除去するためのマーカー除去ベクターを
構築し、それを用いて、実施例2で作出したA・オリゼ
アルカリプロテアーゼ遺伝子破壊株(1764-6-5株)から
マーカー領域を除去した。
【0137】(1)マーカー除去ベクターの構築 マーカー除去ベクターを構築した。SalIとXhoIで処理し
たpOliAlp-1を、0.7%アガロースゲル電気泳動により分
離した後、約7kbの断片を切り出し、QIAquickGel Extr
action Kit(キアゲン社製)を用いて精製した。精製し
た断片を、DNALigation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用
いてセルフライゲーションさせ、プラスミドpAlpdelと
した。
【0138】(2)マーカー除去ベクターを用いたマー
カーの除去 pAlpdelを鋳型に、プライマー15およびプライマー16を
用いてPCRを行い(94℃2分 1サイクル、94℃ 30秒 55
℃ 30秒 72℃ 6分 30サイクル、72℃ 2分 1サイク
ル)、構造遺伝子領域の破壊により不活化されたアルカ
リプロテアーゼ遺伝子領域とoliC31遺伝子領域を含むPC
R断片を得た。得られたPCR断片を用い、特開平8-80196
号公報記載の方法を用いて、1764-6-5株の形質転換を行
った。なお、形質転換体選択の際に用いる重層プレート
には、0.2%5-Fluoroorotic Acidおよび10mMウリジンを
加えた。
【0139】得られた形質転換体のうち、UGプレートに
点植した際、褐変が見られず、UTプレートで生育する17
64-6-5-1株の染色体DNAを特開平8-80196号公報記載の方
法を用いて取得し、ApaLI処理後、アルカリプロテアー
ゼ遺伝子プロモーター領域をプローブにサザン解析を行
った。その結果、1764-6-5-1株では1764-6-5株で見られ
た約8kbのバンドが消失し、新たに、約2.3kbのバンド
が見られた。また、プローブとしてラッカーゼ遺伝子、
pyrG遺伝子を用いて上記と同様にサザン解析を行ったと
ころ、1764-6-5株で見られた約8kbのバンドは見られな
かった。上記の通り、マーカー除去ベクターを用いて、
染色体DNA上にマーカー領域の存在しないA・オリゼの
アルカリプロテアーゼ遺伝子破壊株(1764-6-5-1株)が
作出された。
【0140】
【発明の効果】本発明により、多核細胞において、効率
的にターゲット部位を改変するための方法およびターゲ
ティングベクターが提供された。さらにターゲット部位
が改変された多核細胞が提供された。本発明の方法は、
特に、 1.遺伝子破壊株の作出法、 2.その発現の観察が困難あるいは発現していない遺伝
子をターゲット部位とする場合の遺伝子ターゲティング
法、 3.相同組み換えの起こりにくい部位での遺伝子ターゲ
ティング法、または 4.所望のコピー数のターゲット部位を改変する方法、
として有用である。本発明で提供される多核細胞は、各
種産業分野で使用できるので非常に有用である。また本
発明のターゲティングベクターは、上記の方法を実施す
る場合、および上記多核細胞を作出する際に有用であ
る。
【0141】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> KIKKOMAN CORPORATION <120> METHOD FOR MODIFYING GENOMIC TARGET SITE OF MULTINUCLEATE CELL, TARGETING VECTOR FOR USE THEREIN, AND MODIFIED MULTINUCLEATE CELL <130> P99-0308 <140> <141> <160> 25 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 27 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 1. <400> 1 gaattctaga tctggggagc cgggtat 27 <210> 2 <211> 26 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 2. <400> 2 gggggttttt agatctttga tgcggg 26 <210> 3 <211> 24 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 3. <400> 3 atgcagtcca tcaagcgtac cttg 24 <210> 4 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 4. <400> 4 cggcgtcgcc agcaatgttc g 21 <210> 5 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 5. <400> 5 gagactgact ctgtggatcc g 21 <210> 6 <211> <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 6. <400> 6 cggataccca gatcttgtgg c 21 <210> 7 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 7. <400> 7 ggttgcccag atctgtaaac g 21 <210> 8 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 8. <400> 8 cacccataga tctggtcgga c 21 <210> 9 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 9. <400> 9 tatcgataag cttttgaaga g 21 <210> 10 <211> 26 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 10. <400> 10 ctggaggctt gcgcgcatta gtgatg 26 <210> 11 <211> 26 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 11. <400> 11 gacctacagc gcgcgcgcta gcaagc 26 <210> 12 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 12. <400> 12 tctcactaga tctattcatc c 21 <210> 13 <211> 28 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 13. <400> 13 tgtctcaaaa gtcgggtcaa gagtatcc 28 <210> 14 <211> 26 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 14. <400> 14 agcccagaaa gcgacacggc tagctt 26 <210> 15 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 15. <400> 15 cgacgttgta aaacgacggc c 21 <210> 16 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 16. <400> 16 acagctatga ccatgattac g 21 <210> 17 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 17. <400> 17 gtaccggagt gtctgaaggt g 21 <210> 18 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 18. <400> 18 ctaccccttg gtggccatac c 21 <210> 19 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 19. <400> 19 atgcagtcca tcaagcgtac c 21 <210> 20 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 20. <400> 20 caattttggc tagcctatgt g 21 <210> 21 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 21. <400> 21 cgcccttggt cgcgagagct c 21 <210> 22 <211> 18 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 22. <400> 22 cctcggaata gtcctctc 18 <210> 23 <211> 26 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 23. <400> 23 tgggcggttg ggtggcaggc atttga 26 <210> 24 <211> 24 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 24. <400> 24 atgcactagg cgcgcgtttc tccg 24 <210> 25 <211> 24 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: Designated is PCR primer 25. <400> 25 gaaggtgcag cgcgcgattg gtct 24
【0142】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:PCRプライマー1を示す。 配列番号2:PCRプライマー2を示す。 配列番号3:PCRプライマー3を示す。 配列番号4:PCRプライマー4を示す。 配列番号5:PCRプライマー5を示す。
【0143】 配列番号6:PCRプライマー6を示す。 配列番号7:PCRプライマー7を示す。 配列番号8:PCRプライマー8を示す。 配列番号9:PCRプライマー9を示す。 配列番号10:PCRプライマー10を示す。
【0144】 配列番号11:PCRプライマー11を示す。 配列番号12:PCRプライマー12を示す。 配列番号13:PCRプライマー13を示す。 配列番号14:PCRプライマー14を示す。 配列番号15:PCRプライマー15を示す。
【0145】 配列番号16:PCRプライマー16を示す。 配列番号17:PCRプライマー17を示す。 配列番号18:PCRプライマー18を示す。 配列番号19:PCRプライマー19を示す。 配列番号20:PCRプライマー20を示す。
【0146】 配列番号21:PCRプライマー21を示す。 配列番号22:PCRプライマー22を示す。 配列番号23:PCRプライマー23を示す。 配列番号24:PCRプライマー24を示す。 配列番号25:PCRプライマー25を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】この図は、アルカリプロテアーゼ遺伝子破壊用
ベクターplacEEB7の構築を示す。
【図2】この図は、形質転換体1764−66株からシングル
コロニー単離された14株(レーン1〜14)のサザン分
析による核の状態を示す。(A)はアルカリプロテアー
ゼ遺伝子プロモーター領域をプローブに使用した場合で
あり、一方(B)はタンナーゼ遺伝子ターミネーター領
域をプローブに使用した場合である。図中、hostは宿主
であるA・オリゼ1764株を、またMはマーカーを示す。
【図3】この図は、コピー数コントロール用マーカーの
発現(GAプレート上での褐変の程度)を指標にして状
態の異なる核をもつ株を選択できることを示している。
1から14の株の各々について褐変の程度は細胞内のラ
ッカーゼ遺伝子のコピー数を反映している。
【図4】アルカリプロテアーゼ遺伝子破壊用ターゲティ
ングベクターpdAlp-8の構築を示す。図中、Tanpはタン
ナーゼプロモーター、Tantはタンナーゼターミネータ
ー、lacはラッカーゼ遺伝子、Alpはアルカリプロテアー
ゼ遺伝子、pyrGはオロチジン−5’−ホスフェートデカ
ルボキシラーゼ遺伝子、oliC31はオリゴマイシン耐性AT
Pシンターゼサブユニット9遺伝子をそれぞれ示す。
【図5】pksA遺伝子破壊用ターゲティングベクターpdpk
sA-38の構築を示す。図中、Tanpはタンナーゼプロモー
ター、Tantはタンナーゼターミネーター、lacはラッカ
ーゼ遺伝子、pksAはポリケタイドシンターゼ遺伝子、py
rGはオロチジン−5’−ホスフェートデカルボキシラー
ゼ遺伝子、oliC31はオリゴマイシン耐性ATPシンターゼ
サブユニット9遺伝子をそれぞれ示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 理 千葉県野田市野田339番地 キッコーマン 株式会社内 (72)発明者 海附 玄龍 千葉県野田市野田339番地 キッコーマン 株式会社内 (72)発明者 阿部 敬悦 宮城県仙台市青葉区川内元支倉35 2− 101 Fターム(参考) 4B024 AA03 AA05 AA20 CA02 CA09 CA20 DA06 DA11 EA04 FA02 FA07 FA10 FA18 FA20 HA13 HA14 4B065 AA60X AA60Y AA63X AB01 AC14 AC20 BA02 BA16 BA25 BD50 CA42 CA60

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 a.改変されたターゲット部位と、b.相同
    組み換え体セレクションマーカーと、c.コピー数コント
    ロール用マーカーとを含有するDNAを含む、多核細胞
    のゲノムターゲット部位を改変するためのターゲティン
    グベクター。
  2. 【請求項2】 相同組み換え体セレクションマーカー
    が、ポジティブセレクションマーカーおよびネガティブ
    セレクションマーカーからなることを特徴とする請求項
    1記載のターゲティングベクター。
  3. 【請求項3】 コピー数コントロール用マーカーが、そ
    の発現が以下のいずれかの方法:1.細胞の薬剤感受性
    試験、2.細胞の生育速度、3.酵素活性試験、4.光
    学的方法または5.栄養要求性試験により観察できるよ
    うなポリペプチドをコードしていることを特徴とする請
    求項1記載のターゲティングベクター。
  4. 【請求項4】 コピー数コントロール用マーカーが、ラ
    ッカーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ
    およびアルカリフォスファターゼからなる群から選択さ
    れる酵素をコードしていることを特徴とする請求項3記
    載のターゲティングベクター。
  5. 【請求項5】 以下の(1)または(2)のいずれかの
    DNA構造を含むことを特徴とする請求項1記載のター
    ゲティングベクター。 (1) 【化1】 (2) 【化2】
  6. 【請求項6】 以下のDNA構造を有することを特徴と
    する請求項5記載のターゲティングベクター。 【化3】 (ここで、pyrGはオロチジン−5’−ホスフェートデカ
    ルボキシラーゼ遺伝子、oliC31はオリゴマイシン耐性AT
    Pシンターゼサブユニット9遺伝子を示す。)
  7. 【請求項7】 ターゲット部位が、酵素、ペプチドホル
    モン、生理活性物質生合成系関連酵素またはトキシン生
    合成系関連酵素をコードする遺伝子であることを特徴と
    する請求項1記載のターゲティングベクター。
  8. 【請求項8】 多核細胞が糸状菌または担子菌に属する
    生物由来であることを特徴とする請求項1〜7のいずれ
    かに記載のターゲティングベクター。
  9. 【請求項9】 多核細胞において、所望のコピー数のタ
    ーゲット部位を改変する方法であって、 (1)以下のa〜cを含むDNA構造を宿主細胞に導入す
    る工程 a.改変されたターゲット部位、 b.相同組み換え体セレクションマーカーおよび c.コピー数コントロール用マーカー; (2)相同組み換え体セレクションマーカーの発現を指
    標として相同組み換え体を選抜し、1コピー以上のター
    ゲット部位が改変されている細胞を得る工程;および (3)得られた相同組み換え体について、コピー数コン
    トロール用マーカーの発現を指標として選抜を行ない、
    所望のコピー数のターゲット部位が改変されている細胞
    を得る工程を含む、前記方法。
  10. 【請求項10】 (1)の工程が、 請求項1〜8のい
    ずれかに記載のターゲティングベクターを、宿主細胞に
    導入する工程であることを特徴とする請求項9記載の方
    法。
  11. 【請求項11】 (3)の工程が、 a.得られた相同組み換え体を培地に播種し、 b.コピー数コントロール用マーカーの発現が最も強い細
    胞を選抜し、 c.選抜された細胞を培養培地に播種し、および d.1つの細胞から得られる子孫の細胞の全てが、等し
    い強度でコピー数コントロール用マーカーを発現するよ
    うになるまで、a〜cの操作を繰り返すことからなるこ
    とを特徴とする請求項9または10記載の方法。
  12. 【請求項12】 (1)〜(3)の工程に加えて、 (4)ターゲット部位に導入されたターゲティングベク
    ター由来のDNA領域を除去する工程を含む、請求項9〜
    11のいずれかに記載の方法。
  13. 【請求項13】 多核細胞が糸状菌に属する生物由来で
    あることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載
    の方法。
  14. 【請求項14】 多核細胞が、アスペルギルス属、ペニ
    シリウム属、またはノイロスポラ属、フザリウム属のい
    ずれかに属する生物由来であることを特徴とする請求項
    13記載の方法。
  15. 【請求項15】 請求項1〜8のいずれかに記載のター
    ゲティングベクターを宿主細胞に導入することにより、
    ターゲット部位のうち、1コピー〜全コピーのターゲッ
    ト部位が改変されている多核細胞。
  16. 【請求項16】 請求項9〜12のいずれかに記載の方
    法により、ターゲット部位のうち、1コピー〜全コピー
    のターゲット部位が改変されていることを特徴とする請
    求項15記載の多核細胞。
  17. 【請求項17】 糸状菌または担子菌由来であることを
    特徴とする請求項15または16記載の多核細胞。
  18. 【請求項18】 マイコトキシンの生合成に関与する一
    つあるいは複数の酵素の遺伝子の全コピーが破壊されて
    いるアスペルギルス・オリゼまたはアスペルギルス・ソ
    ーヤから選択される微生物細胞。
  19. 【請求項19】 請求項9〜12のいずれかに記載の方
    法によりマイコトキシンの生合成に関与する一つあるい
    は複数の酵素の遺伝子の全コピーが破壊されているアス
    ペルギルス・オリゼまたはアスペルギルス・ソーヤから
    選択される微生物細胞。
  20. 【請求項20】 請求項1〜8のいずれかに記載のター
    ゲティングベクターの製造方法であって、ターゲット部
    位を導入するための少なくとも1つの制限酵素部位を含
    むリンカーと相同組み換え体セレクションマーカーとコ
    ピー数コントロール用マーカーとを含有するDNAを含む
    中間体ベクターを該制限酵素部位で酵素的に切断し、そ
    の切断部位に該ターゲット部位を導入することを含む、
    前記方法。
  21. 【請求項21】 ターゲット部位を導入するための少な
    くとも1つの制限酵素部位を含むリンカーと、相同組み
    換え体セレクションマーカーと、コピー数コントロール
    用マーカーとを含有するDNAを含む中間体ベクター。
  22. 【請求項22】 請求項1〜8のいずれかに記載のター
    ゲティングベクターの、多核生物における特定遺伝子の
    機能を調べるための使用。
  23. 【請求項23】 多核生物において染色体中への前記ベ
    クターの組み込みの結果喪失する機能を同定することを
    含む請求項22記載の使用。
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