JP2001005378A - 手術手技訓練用シミュレータ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】人体による実際の手術に近似した模擬体験を可
能にして、臨床経験によらなくても、臓器手術の手術手
技を習得することができ、その手技向上も図れるように
する。 【解決手段】人体の胸壁部に相当する天板部３に、メス
等で切開される胸壁部の切開部に相当する開口部５が形
成され、その天板部３の下方に、人体の胸腔部に相当す
る空間４が形成され、当該空間４内に、臓器やその被手
術部位を模した代替物１１が取り付けられ、開口部５か
ら空間４内に差し入れるメスや鉗子１２、縫合針１３等
で代替物１１を切除したり吻合することにより、手術手
技を訓練することができるようになっている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、患者の胸壁部を切
開して行う臓器手術の手術手技を習得し、熟練するため
に使用する手術手技訓練用シミュレータに関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、外科手術の分野では、患者の負担
を出来るだけ軽くするための新しい手術法が色々と試み
られており、胸壁部を切開して行う心臓外科手術におい
ても、患者の負担を著しく軽減する低侵襲小切開手術
（ minimally invasive cardiacsurgery ／ＭＩＣＳ）
等が行われつつある。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、新しい
手術法は、その手術手技を習得するのに時間がかかり、
特に、ＭＩＣＳは、非常に高度な手術手技が要求される
ので、これを習得しているのは臨床経験が豊富な極一部
の術者だけに限られているのが現状である。

【０００４】また、手術手技を習得するための教育・実
験・練習等は、人体を用いて行うことができないし、動
物の体は、解剖学的に人体とは著しく相違しており、実
際の手術と同様の感覚を味わうことはできないので、臨
床経験によらずして高度な手術手技を習得するのは困難
であるとされていた。

【０００５】そこで本発明は、人体による実際の手術に
近似した模擬体験をさせる手術手技訓練用シミュレータ
なる新規な装置を提供して、臨床経験によらなくても高
度な手術手技を習得することができると同時に、手術手
技のレベルアップも図れるようにすることを技術的課題
としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の手術手技訓練用シミュレータは、人体の胸
壁部に相当する天板部に、前記胸壁部の切開部に相当す
る開口部が形成されると共に、その天板部の下方に、人
体の胸腔部に相当する空間が形成され、当該空間内に、
臓器もしくはその被手術部位を模した代替物が着脱自在
に取り付けられることを特徴とする。

【０００７】このシミュレータは、天板部が人体の胸壁
部に相当し、その天板部に形成された開口部が胸壁部の
切開部に相当し、また、天板部の下方に形成された空間
が人体の胸腔部に相当する。

【０００８】したがって、天板部に形成された開口部か
らその天板部の下方に形成された空間内へメスや剪刀、
鉗子等の手術具を差し入れて、その空間内に取り付けら
れた代替物を切開、切除もしくは吻合することにより、
人体の胸壁部に形成された切開部から胸腔部内へ手術具
を差し入れて、その胸腔部内にある臓器もしくはその被
手術部位を切開、切除もしくは吻合する実際の手術に近
似した模擬体験が可能となる。

【０００９】なお、人体の胸壁部に相当する天板部に、
胸壁部の切開部に相当する開口部の大きさを可変するス
ライドプレートが設けられた構成にすれば、胸壁部の切
開部が小さくて高度な手術手技が要求されるＭＩＣＳを
模擬体験することができ、臨床経験によらずしてその手
術手技を習得し、手技向上を図ることもできる。

【００１０】また、人体の胸壁部の切開部に対する臓器
もしくはその被手術部位の位置と向きに応じて、天板部
の開口部に対する代替物の取付位置と取付角度を可変す
る位置調節機構及び角度調節機構を備えた構成にすれ
ば、解剖学的により一層人体の手術に近似した模擬体験
ができる。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
よって具体的に説明する。図１は本発明に係る手術手技
訓練用シミュレータの一例を示す斜視図、図２はその分
解図である。

【００１２】本例に示す手術手技訓練用シミュレータ
は、手術台に見立てた机やテーブル等の上に載置する基
板１に、左右一対の側板部２Ｒ，２Ｌが形成され、その
側板部２Ｒ，２Ｌの上端部間から基板１の後端部にかけ
て人体の胸壁部に相当する天板部３が形成されると共
に、その天板部３の下方に、人体の胸腔部に相当する空
間４が形成されている。

【００１３】天板部３は、側板部２Ｒ，２Ｌの上端部間
に位置する最高位の部分が水平面に形成され、基板１か
らその水平面までの高さが、人体の胸厚に略相当する１
５０〜２００mm程度に選定されると共に、その水平面の
部分に、幅８０mm×長さ１６０mmの長孔をあけて人体の
胸壁部を切開した切開部に相当する開口部５が形成さ
れ、当該開口部５の周囲四隅に各々ネジ孔６が設けられ
ている。

【００１４】また、天板部３には、開口部５の大きさを
可変する前後一対のスライドプレート７Ｆ，７Ｂと、左
右一対のスライドプレート７Ｒ，７Ｌが設けられてい
る。なお、これらスライドプレート７Ｆ〜７Ｌや、基板
１、側板部２Ｒ，２Ｌ及び天板部３等は、硬質プラスチ
ックもしくは軽合金等で成形されている。

【００１５】スライドプレート７Ｆ，７Ｂは、開口部５
の幅方向から互いに接近又は離反してその開口部５の幅
を可変調節するもので、各々の左右両端には開口部５の
幅方向に延びる一対の長孔８，８が平行に形成されてい
る。一方、スライドプレート７Ｒ，７Ｌは、開口部５の
長さ方向から互いに接近又は離反してその開口部５の長
さを可変調節するもので、各々の前後両端には開口部５
の長さ方向に延びる一対の長孔９，９が平行に形成され
ている。

【００１６】そして、スライドプレート７Ｆ，７Ｂの上
から、スライドプレート７Ｒ，７Ｌを井桁状に重ね合わ
せて、その重ね合わせ箇所で双方の長孔８，９を互いに
連通させると同時に、それら長孔８，９を天板部３の各
ネジ孔６と連通させ、その連通部に差し込んで各ネジ孔
６にねじ込む計４本の留めネジ１０によって、スライド
プレート７Ｆ，７Ｂが開口部５の幅方向に、また、スラ
イドプレート７Ｒ，７Ｌが開口部５の長さ方向に夫々ス
ライド可能に取り付けられている。

【００１７】なお、スライドプレート７Ｆ，７Ｂの長孔
８の長さは、各々２０mmに選定され、また、スライドプ
レート７Ｒ，７Ｌの長孔９の長さは、各々４０mmに選定
されて、開口部５の大きさを、最大サイズの幅８０mm×
長さ１６０mmから最小サイズの幅４０mm×長さ８０mmま
での範囲内で自由に可変調節できるようになっている。

【００１８】また、天板部３の下方に形成された空間４
内には、心臓等の臓器を模した代替物もしくはその臓器
の被手術部位を模した代替物が着脱自在に取り付けられ
るようになっており、例えば図１，図２に示す代替物１
１は、心臓の左心室と左心房の境にある僧帽弁の弁輪部
を模した外径約１００mm程度の輪形状シートで形成され
ている。

【００１９】また、臓器もしくはその被手術部位を模し
た代替物は、手術具によって切開、切除もしくは吻合可
能な弾性材で成形され、図示した代替物１１も、鉗子１
２の先に持った縫合針１３によって吻合可能なラテック
スやウレタンゴム等の弾性材で成形されている。なお、
代替物１１は、天板部３の下方の空間４内に設置される
載物台１４に対して着脱自在に取り付けられるようにな
っている。

【００２０】載物台１４は、側板部２Ｒ，２Ｌ間に差し
込み可能な方形プレート１５に輪形状シートで成る代替
物１１と符合する大きさの円形孔１６が形成されると共
に、その円形孔１６の周囲に沿って一定の間隔で複数本
のピン１７、１７〜あるいはフックが突設され、代替物
１１の周縁部に形成された小孔１８、１８〜をそのピン
１７、１７〜あるいはフックに引っ掛けて代替物１１を
固定するようになっている。

【００２１】また、載物台１４は、側板部２Ｒ，２Ｌの
内面側に摺接する方形プレート１５の左右両端に沿って
一対の底桁部１９Ｒ、１９Ｌが形成され、それら底桁部
１９Ｒ，１９Ｌに、その側面を貫通する横長な長孔２０
が設けられると共に、当該長孔２０の内側に沿って、ナ
ット２１をスライド可能に嵌め入れる凹溝２２が設けら
れている。

【００２２】そして、側板部２Ｒ，２Ｌに設けられた縦
長な長孔２３から載物台１４の底桁部１９Ｒ，１９Ｌに
設けられた横長な長孔２０に差し込まれる留めネジ２
４，２４を、底桁部１９Ｒ，１９Ｌの凹溝２２内に嵌め
入れた各ナット２１に螺合させることにより、載物台１
４が、側板部２Ｒ，２Ｌ間に架設した状態に締め止めら
れて空間４内に設置されるようになっている。

【００２３】また、側板部２Ｒ，２Ｌに設けた縦長な長
孔２３と、載物台１４の底桁部１９Ｒ，１９Ｌに設けた
横長な長孔２０と、それら長孔２０，２３に差し込む留
めネジ２４と、底桁部１９Ｒ，１９Ｌの凹溝２２内にス
ライド可能に嵌め入れたナット２１とによって、載物台
１４を縦長な長孔２３に沿った上下方向と横長な長孔２
０に沿った前後方向とに移動させて代替物１１の取付位
置を可変する位置調節機構と、載物台１４を留めネジ２
４を軸として前後方向に傾動させて代替物１１の取付角
度を可変する角度調節機構とが構成されている。

【００２４】これにより、人体の胸壁部の切開部に対す
る臓器もしくはその被手術部位の位置や向きに応じて、
天板部３の開口部５に対する代替物１１の位置や向きを
可変調節することができるので、解剖学的により一層人
体の手術に近似した模擬体験が可能となる。

【００２５】つまり、例えば僧帽弁の弁輪形成術は、患
者の胸壁部中央にある胸骨の部分を切開して行われる
が、このとき、僧帽弁の弁輪は、切開部から一定の距離
だけずれた所に位置すると同時に、切開部に対して約３
０°程度傾いた状態となるので、載物台１４を側板部２
Ｒ，２Ｌに締め止める留めネジ２４，２４を一旦緩め
て、図１の如く、載物台１４を上下・前後方向に移動さ
せて、僧帽弁の弁輪を模した代替物１１を胸壁部の切開
部に相当する天板部３の開口部５から一定の距離だけず
らした所に位置させると同時に、載物台１４を傾動させ
て、代替物１１を開口部５に対して約３０°傾けること
により、解剖学的に実際の手術に酷似した状態とする。

【００２６】この状態で、天板部３に形成した開口部５
から下方の空間４内へ鉗子１２を差し入れて、その鉗子
１２の先端に持った縫合針１３で代替物１１を吻合する
練習を繰り返せば、患者の胸壁部に形成した切開部から
胸腔部内へ鉗子を差し入れて、その鉗子の先端に持った
縫合針で僧帽弁の弁輪を吻合する弁輪形成術の手術手技
を習得することができる。

【００２７】特に、僧帽弁開閉不全症患者の拡大した僧
帽弁輪をリングを用いて縫い縮めながらその形を整える
弁輪形成術は、非常に高度な手術手技が要求されるが、
本発明のシミュレータによれば、その手術手技も確実に
習得することができる。

【００２８】また、天板部３に設けられたスライドプレ
ート７Ｆ，７Ｂ，７Ｒ，７Ｌで開口部５の大きさを縮小
すれば、ＭＩＣＳの模擬体験も可能となるので、臨床経
験によらずしてその手術手技を習得することができると
共に、その手術手技のレベルアップを図ることもでき
る。

【００２９】なお、代替物１１は、僧帽弁の弁輪を模し
たものであるが、本発明に係る代替物は、これに限ら
ず、三尖弁の弁輪を模したものでも良いし、大動脈弁や
肺動脈弁の弁体又はその周辺部位、あるいは心室中隔等
を模したものでも良い。また、臓器の被手術部位だけを
模したものに限らず、臓器の全体形状を模したものであ
っても良い。

【００３０】

【発明の効果】本発明によれば、解剖学的に人体の手術
に近似した模擬体験が可能となり、臨床経験がなくても
ＭＩＣＳ等の高度な手術手技を習得したり、その手技を
レベルアップすることができるという大変優れた効果が
ある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る手術手技訓練用シミュレータの一
例を示す斜視図。

【図２】図１に示す手術手技訓練用シミュレータの分解
図。

【符号の説明】

３・・・・・・・天板部 ４・・・・・・・空間 ５・・・・・・・開口部 ７Ｆ〜７Ｌ・・・スライドプレート １１・・・・・・・代替物

フロントページの続き (72)発明者 田 中 隆 神奈川県横浜市神奈川区松見町３−604− 18 Ｆターム(参考） 2C032 CA03

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】人体の胸壁部に相当する天板部（３）に、
   前記胸壁部の切開部に相当する開口部（５）が形成され
   ると共に、その天板部（３）の下方に、人体の胸腔部に
   相当する空間（４）が形成され、当該空間（４）内に、
   臓器もしくはその被手術部位を模した代替物（11）が着
   脱自在に取り付けられることを特徴とする手術手技訓練
   用シミュレータ。
2. 【請求項２】前記天板部（３）に、前記開口部（５）の
   大きさを可変するスライドプレート（7F，7B，7R，7L）
   が設けられた請求項１記載の手術手技訓練用シミュレー
   タ。
3. 【請求項３】前記天板部（３）の下方に、前記代替物
   （11）を着脱自在に取り付ける載物台（14）が設置され
   た請求項１又は２記載の手術手技訓練用シミュレータ。
4. 【請求項４】前記代替物（11）が、手術具によって切
   開、切除もしくは吻合可能な弾性材で成形されている請
   求項１、２又は３記載の手術手技訓練用シミュレータ。
5. 【請求項５】前記代替物（11）の取付位置を可変する位
   置調節機構と、その代替物（11）の取付角度を可変する
   角度調節機構とを備えた請求項１、２、３又は４記載の
   手術手技訓練用シミュレータ。