JP2000512625A - 生きている組織の保存用組成物および方法 - Google Patents

生きている組織の保存用組成物および方法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、器官、組織および細胞を最小限の生物学的活性の喪失で長期間保存できる生物学的物質の保存溶液および方法を提供する。本発明の溶液は(i)保存すべき生物学的物質と実質的に等張であり、1価オキシアニオン類およびヨウ化物を実質的に含まず、および/または(ii)少なくとも約335の分子量および少なくとも約0.3Mの水への溶解度を有する第一の中性溶質と、約200未満の分子量を有し、親水性および疎水性の両部分を有する第二の中性溶質とを含むことができる。本発明の溶液はCaSO4を、ホフマイスター系列のタンパク質安定化末端からのアニオンおよびカチオンの組み合わせ、例えばK2SO4など、と共に含むのが好ましい。本発明は、生物学的物質を保存溶液に先立って酪酸ナトリウムで前処理することも含める。

Description

【発明の詳細な説明】 生きている組織の保存用組成物および方法発明の技術分野 本発明は生物学的物質の保存分野に関するものであり、より詳細に述べるなら ば、哺乳動物、海洋生物および植物の器官、組織および細胞を保存するための組 成物および方法に関するものである。発明の背景 生物学的物質の保存法は多くの臨床的および獣医学的用途に用いられ、その際 器官、組織および細胞を含める生体物質を取得し、使用するまでの或る期間イン ビトロで保存する。このような用途の例は器官保存および移植、自己−および同 種骨髄移植、全血移植、血小板移植、胚転移、人工授精、インビトロ受精、皮膚 移植および診断目的のための組織生検保存などを含める。保存技術は、病院、産 業界、大学およびその他の研究所において実験的に使用される細胞系統の保存に も重要である。 細胞生物学的物質の保存のために現在用いられる方法は、食塩水を基礎とする 培地への浸漬、凍結温度より若干高い温度での保存、約−80℃における保存、 および約−196℃の温度の液体窒素中における保存などである。これらの方法 の目的は生きている生物学的物質を正常な生物学的構造および機能の損失を最小 にして長時間保存することである。 器官、例えば心臓および腎臓などを0℃未満の温度で保存すると、 多くの細胞の損失とそれに伴うその器官の生存率能力の減少をおこすことがよく ある。このような複雑な生物学的物質は、それゆえ典型的には水性食塩液を基礎 とした培地中で凍結温度より高い温度、典型的には約4℃で保存する。食塩液を 基礎とした培地は普通は等張食塩水(塩化ナトリウム0.154M)からなり、 それに低濃度の種々の無機イオン、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、 マグネシウム、塩化物、リン酸塩および炭酸水素塩を付加して細胞外環境に似せ るように改変したものである。少量の、グルコース、ラクトース、アミノ酸およ びビタミンなどの化合物を代謝に必要な物質として加えることも多い。生物学的 物質の保存に用いられるすべての食塩水を基礎とした培地は高い電気伝導度を有 する。現在生物学的物質の保存に用いられる培地の例は、リン酸緩衝食塩水(P BS)、M−2(ヘペス緩衝ネズミ培養培地)、リンゲル溶液およびクレブス炭酸 水素塩緩衝培地などである。 食塩水を基礎とした培地に保存された生物学的物質の生存率能力は、経時的に 徐々に減少する。生存率能力の喪失は、連続的代謝活動による毒性排出物の蓄積 、代謝産物およびその他の補助的化合物の損失によると考えられている。従来の 食塩水を基礎とした培地を用いるとき、生きている組織は比較的短期間しか保存 できない。時間的上限の近くまで保存した器官の微小構造を測定すると、心筋の ミトコンドリアなどが劣化し、ひとたび置換した器官の性能はかなり低下してい る。例えば、ヒト心臓はドナーから摘出後冷イオン水に約5時間しか保存できず 、このためその心臓を運搬する距離が著しく制限される。 生物学的物質を保存するために凍結技術を用いる場合、凍結中の 氷結晶の生成によって細胞に起きる損傷量を制限するために、凍結防止剤、例え ばグリセロール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリコール類またはプロパ ンジオールなどを凍結前の材料に挿入することが多い。凍結防止剤の選択および 濃度、凍結防止剤の添加の時間的手順、および凍結防止剤を挿入する温度はすべ てその保存法の成功に重要な役割を果たす。さらに、細胞損失を減らすために、 凍結の速度および時間的手順、解凍の速度および時間的手順、さらに室温または 体温までの加温、および組織塊における凍結防止剤溶液の生理食塩溶液への置換 等の様々な点を注意深くコントロールすることが重要である。凍結技術に必要な 多数の操作段階は細胞損失を増加させる。生物学的物質の保存に現在用いられる 凍結技術は、技術的要求が厳しく、時間がかかる。生物学的物質を凍結によって 保存する場合のその他の欠点は、細胞生存率能力の減少、再注入したときに凍結 防止剤が患者に及ぼす毒性効果の可能性、および処理および保存の高コストなど である。 一例として、一般に凍結防止剤としてDMSOの添加を含める凍結保存は、現 在、例えば高用量の化学療法または放射線治療などに続く、移植処置に使用する ために取得した骨髄を保存するために用いられている。自己移植においては骨髄 を長期間、数週間から数カ月保存しなければならない。しかしながら、この技術 は幹細胞回収の顕著な減少(50%以下までのレベル)をおこす。この技術のそ の他の欠点は、種々の成熟細胞を著しく損傷し得ることであり、そのため凍結前 にこれらの細胞を取り出すための処置がさらに必要になることである。最後にD MSOの使用は、保存骨髄の再注入時に患者に中程度ないし重度の毒性を与える 。 このため当業者には、生きている生物学的物質を保存するための改良された方 法がいまだに必要である。概要 本発明は器官、組織および細胞を含める材料を、生物学的活性の損失を最小に して、長期間保存することを可能とする、生物学的物質を保存するための組成物 および方法を提供する。 第一の面において、本発明は、1価オキシアニオン類およびヨウ化物を実質的 に含まない溶液であって、保存すべき生物学的物質と実質的に等張である溶液を 提供する。このような溶液は、少なくとも約335の分子量および少なくとも約 0.3Mの水への溶解度を有する、正味電荷をもたない第一の中性溶質と、約2 00未満の分子量を有する第二の中性質とを含む。ここで第二の溶質はさらに親 水性および疎水性部分の両方を有する。 本発明の保存溶液は、1つ以上のイオンを含んでもよい。保存溶液の多くの種 類には、カルシウム塩、好適にはCaSO4またはCaCl2が約2mM未満の濃 度で使用されている。付加的イオン類は、アニオンまたはカチオンのホフマイス ター系列におけるそれらの特異的位置によって選択される。特に、ホフマイスタ ー系列のタンパク質安定化末端のイオンが本発明の保存溶液に含まれる。適した イオンおよび選択基準を以下に詳細に記載する。 一つの実施態様において、第一の中性溶質は二糖類か三糖類かのどちらかであ り、好適にはラフィノース、トレハロース、スクロース、ラクトースおよびそれ らの類似体からなる群から選択される。類似体は天然に存在するものでも合成物 でもよい。第二の中性溶質 は好適にはトリメチルアミノオキシド(TMAO)、ベタイン、タウリン、サルコ シン、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、ガラクトース、ソル ビトール、マンニトール、イノシトールおよびこれらの類似体からなる群から選 択される。本発明の溶液は硫酸ナトリウムおよびカルシウムを含むことができ、 カルシウムは好適には硫酸カルシウムとして約1.5mM〜約2.0mM濃度、最 も好適には約1.75mM濃度で存在する。 生物学的物質の保存のための好適溶液は、保存すべき特定の生物学的物質に依 存するが、ラフィノースとTMAO、またはトレハロースとTMAOのどちらか を含む溶液が多くの生物学的物質の保存において特に効果的であることがわかっ た。一つの実施態様において、本発明による溶液はラフィノースおよびTMAO を約1.4:1〜約1.8:1の比、より好適には1.6:1の比で含む。好適に は本発明の溶液は約60%と約80%との間のラフィノースとTMAO、約40 %と約20%との間の硫酸ナトリウム、および約1.5mMと約2.0mMとの間 の硫酸カルシウムを含み、ラフィノースおよびTMAOは約1.6:1の比で存 在する。最も好適には、溶液は約70%のラフィノースおよびTMAO、約30 %の硫酸ナトリウム、そして約1.75mM硫酸カルシウムを含み、ラフィノー スおよびTMAOは約1.6:1の比で存在する。第二の実施態様では、溶液は トレハロースおよびTMAOを約1.1:1〜約1.4:1の比で、最も好適には 1.3:1の比で含み、硫酸カルシウムが添加される。 本発明の保存溶液の重量オスモル濃度は保存すべき生物学的物質によって変化 し、哺乳動物の生物学的物質には約0.28〜約0.32 OsMの重量オスモル 濃度が好ましく、植物の生物学的物質には 約70〜約80m OsMの重量オスモル濃度が好ましく、海洋の生物学的物質 には約0.9〜約1.0 OsMの重量オスモル濃度が好ましい。 関連する面において、本発明は、本発明の保存溶液の脱水および濃縮形を提供す る。このような形は粉末または錠剤のような固体でもよいし、液体でもよい。 また別の面において、本発明は哺乳動物、植物および海洋物質を含める生物学 的物質の保存法であって、生物学的物質を1つ以上の本発明の溶液と接触させる ことを含んでなる方法を提供する。 もう一つの面において、白血病の治療法が提供され、その方法は患者から骨髄 を取り出し、その骨髄を本発明の保存組成物または溶液と少なくとも約3日間接 触させて骨髄から白血病細胞を浄化し、その浄化した骨髄をその対象(患者)に 戻すことを含んでなる。 以下に詳述するように、本発明の溶液および方法を用いて、細胞、組織および 器官などの生物学的物質の生存率能力を、従来の保存方法で一般的に可能な時間 よりも長時間維持し、それによって、臓器移植および骨髄移植のような用途に用 いるための生物学的物質の改善された保存および運搬時間を提供する。 本発明の保存方法は生物学的物質の保存のために用いられる多くの一般的方法 よりも複雑でなく、そのため経費は減少し、使用し易さおよび保存操作の利用可 能性が高められる。さらに、本発明の組成物は低毒性で、移植臓器のような生物 学的物質を患者に戻す場合、不都合な副作用がほとんどない。 下記のより詳細な説明を参照し、添付の図面に関連づけて読むことによって、 本発明の、上記およびその他の特徴、およびそれらを 得る方法は明らかになり、本発明を最もよく理解することができる。図面の簡単な説明 図1A、BおよびCは、1.75mMのCaSO4を含むスクロースおよび種々 のクラスII溶質の水溶液に、4℃でそれぞれ1、2および3日間保存した後の マウス胚の生存を示す。 図2A、BおよびCは、1.75mMのCaSO4を含むラクトースおよび種々 のクラスII溶質の水溶液に、4℃でそれぞれ1、2および3日間保存した後の マウス胚の生存を示す。 図3A、BおよびCは、1.75mMのCaSO4を含むトレハロースおよび種 々のクラスII溶質の水溶液に、4℃でそれぞれ1、2および3日間保存した後 のマウス胚の生存を示す。 図4A、BおよびCは、1.75mMのCaSO4を含むラフィノースおよび種 々のクラスII溶質の水溶液に、4℃でそれぞれ1、2および3日間保存した後 のマウス胚の生存を示す。 図5A、BおよびCは、1.75mMのCaSO4を含む、TMAOに対するラ フィノースの種々のモル比の水溶液に、4℃でそれぞれ1、2および3日間保存 した後のマウス胚の生存を示す。 図6は、4℃で2および3日間、ラフィノース/TMAO中に保存後のマウス 胚生存のCa2+依存性を示す。 図7(i)A、BおよびCは1.75mMのCaSO4を含むラフィノース/T MAOとNa2SO4との混合物中に、4℃でそれぞれ1、2および3日間保存し た後のマウス胚の生存を示す。図7(ii)は、種々の重量オスモル濃度の溶液 70/30中に1、2、3および4日間保存した後のマウス胚の生存の平均値お よびSEMを 示す。 図8A、BおよびCは、PBS中5、10または15mM酪酸ナトリウムで、 室温にて10、20または30分間前処理した後、溶液70/30に4℃でそれ ぞれ1、2および3日間保存後、後期胞胚期に達するマウス胚のパーセントを示 す。図8D、EおよびFは、PBS中5、10または15mM酪酸ナトリウムで 室温にて10、20または30分間前処理した後、溶液70/30に4℃でそれ ぞれ1、2および3日間保存した後に生存率しているマウス胚のパーセントを示 す。 図9は、PBS中70mM酪酸塩て前処理し、または前処理せずに、PBS、 ラフィノース/TMAO(比1.6:1)、または溶液70/30中に4℃で保存 した後のマウス胚の生存を示す。 図10A、B、CおよびDは、PBS中25mM酪酸ナトリウムで5、10ま たは15分間前処理した後、1、2、3および4日間、溶液70/30中に保存 した後のマウス胚の生存を示す。 図11は、血漿、またはCa2+を含有しない溶液70/30のどちらかに、4 ℃で保存した後の血小板の生存を示す。 図12A、BおよびCは、患者1から得た骨髄をハンクス緩衝食塩溶液、ラフ ィノース/TMAO、トレハロース/ベタインまたは溶液70/30のいずれか に保存した後の、その骨髄中のCD45−およびCD34−陽性細胞およびコロ ニー形成単位の数をそれぞれ示す。 図13A、BおよびCは、患者2から得た骨髄を1.75mMのCaSO4を含 むラフィノース/TMAO中またはM−2中に4℃で保存した後の、骨髄中のコ ロニー形成単位、CD34−およびCD 45−陽性細胞のパーセントをそれぞれ示す。 図14AはPBSまたは溶液70/30中に4℃または−80℃で保存したネ ズミ骨髄細胞の回収パーセントを示す。図14Bは、溶液70/30中に−80 ℃で8日間保存後に解凍したネズミ骨髄細胞を注射し、その後8日目に致死量を 照射したマウスの脾臓に見いだされる細胞コロニー数を示す。 図15は溶液70/30に4℃で4時間保存した後のラット心臓における圧力 変換器からの曲線を示す。 図16は、生理食塩液または本発明の保存溶液に4℃で48時間まで保存した 後、トリチウム化チミジンの取り込みによって評価したジュルカット細胞(急性 T−細胞白血病)の増殖を示す。 図17は、生理食塩液または本発明の保存溶液に4℃で48時間まで保存した 後、トリチウム化チミジンの取り込みによって評価したK562慢性骨髄性白血 病細胞の増殖を示す。 図18は、PBSおよび本発明の種々の保存溶液に4℃で保存後のネズミ骨芽 細胞の融合に至る増殖を示す。 図19はPBSまたは溶液70/30に保存後の、ネズミ角膜細胞系統T7T の回収パーセントを示す。 図20はPBSまたは溶液70/30に保存後の、ネズミ3T3線維芽細胞の 回収パーセントを示す。詳細な説明 本発明の溶液および方法は哺乳動物、植物および海洋細胞、細胞系、組織およ び器官を含める生物学的物質の保存に用いることができる。生物学的物質を保存 するとき、その材料が保存から元に戻す とき正常な生物学的活性を取り戻すことができるように、その生存能力はインビ トロで長期間維持される。そのため保存中、生物学的物質は可逆的休眠状態に維 持され、代謝活性は正常時より実質的に低い。例えば、保存中において心臓は拍 動の停止が認められる。本発明を用いて保存できる哺乳動物の生物学的物質の例 は、心臓のような器官、細胞および組織、例えば造血幹細胞、骨髄、胚、血小板 、骨芽細胞、***、そして組織培養で確立された種々の動物細胞系統を含める。 ヒト生物学的物質の保存に加えて、本発明の溶液および方法は獣医学的用途にも 、植物組織の保存にも用いることができる。 本発明の保存溶液は使用するばかりになった形でも、または使用前に水で希釈 する濃縮形、例えば粉末または錠剤などの固体でもよい。本発明の溶液は使用者 が希釈する濃縮液体形でもよい。従来の保存溶液のように、本発明の溶液も無菌 である。 本発明の溶液は保存すべき生物学的物質と実質上等張である。等張溶液中の細 胞は収縮も膨張もしない。本発明の保存溶液は保存すべき生物学的物質の重量オ スモル濃度と実質的に等しい重量オスモル濃度を有するが、これは本発明の要求 事項ではない。なぜならば若干の溶液は、その溶液の重量オスモル濃度を高める が半透膜を自由に通過できて、そのため細胞膜の両側で等しく浸透圧を高める1 種類以上の成分を含むことができるからである。 以下に詳述するように、咄乳動物の生物学的物質の保存溶液では約0.28 O sMと約0.32 OsMとの間の重量オスモル濃度が好ましいことが確認されて いる。海洋および植物の生物学的物質の保存には、それぞれ約0.9〜約1.0 OsMの重量オスモル濃度および約70〜約80m OsMの重量オスモル濃度 が好ましい。 1価のオキシアニオン類、例えばH2PO4 -、HCO3 -、NO3 -およびHSO4 - などの混入は保存中の代謝活性レベルを高めることが認められた。例えばHS O4 -の混入はラット心臓をゆっくりと、弱く拍動させるが、1価のオキシアニオ ン類が存在しないと拍動は起きないことが認められた。大部分の用途では、本発 明の保存溶液には1価オキシアニオン類は排除される。 本発明の溶液は、少なくとも約335の分子量と、少なくとも約0.3Mの水 への溶解度を有する第一の中性溶質(以後、クラスI溶質と呼ぶ)および約200 未満の分子量を有する第二の中性溶質(以後、クラスII溶質と呼ぶ)とを含んで なり、第二の中性溶質は付加的に親水性および疎水性の両部分を有する。クラス I溶質は通常細胞膜を通過するには大きすぎ、主として本発明の溶液の重量オス モル濃度を高めるように作用する。好適にはクラスI溶質は二糖類または三糖類 である。そのような溶質の例としてはラフィノース、トレハロース、スクロース 、ラクトースおよびこれらの合成または天然の類似体がある。ラフィノースおよ びトレハロースが好適クラスI溶質である。クラスII溶質は通常細胞膜を横切 らないが、浸透圧的変動(insult)に応答して細胞に活発に取り込まれる 。それらは細胞内オスモライト(osmolyte)として多くの細胞に用いら れる。このような溶質の例としてはTMAO、ベタイン、タウリン、サルコシン 、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、ガラクトース、ソルビト ール、マンニトールおよびイノシトールおよびそれらの合成または天然の類似体 がある。TMAOは多くの生物学的物質のための好適なクラスII溶質である。 ラフィノースおよびTMAOは好適には約1.4:1〜約1.8:1のモ ル比、最も好適には約1.6:1のモル比であり、トレハロースおよびTMAO は好適には約1.1:1〜約1.4:1のモル比、最も好適には約1.3:1のモ ル比が生物学的物質の保存のために特に有用であることがわかった。 本発明の溶液はさらに1種類以上のイオンを含むことができるが、1価のオキ シアニオンおよびヨウ化物は実質上含まない。保存溶液にはCaSO4のような カルシウムイオンが約2mM未満の濃度で多くの用途に用いられる。その他のイ オン種はアニオンおよび/またはカチオンのホフマイスター系列におけるそれら の特徴的位置によって選択することができる。アニオンおよびカチオンのホフマ イスター系列はタンパク質および膜の安定性を減少させるようにランクづけされ ている(ホフマイスター、エフ.)、「塩類の効果の理解について。第2報。塩 類の沈殿効果の規則性およびそれらの生理的挙動との関連性。」Naunyn-Schmied ebergs Archiv Fuer Experimentalle Pathologic und Pharmakologic (ライプ チッヒ)14巻、247−260ページ、1988;コリンズ(Collins ,K.D.)およびウォッシャボー(Washabaugh,M.W.)、「ホフマ イスター効果および界面における水の挙動。」Quarterly.Rev.Biophys.18巻、 323−422ページ、1985)。アニオンの順位は次のようである。クエン 酸塩>酢酸塩>リン酸二水素塩>硫酸塩>ヒドロキシル>フッ化物>塩化物>臭 化物>ヨウ化物>リン酸水素塩>炭酸水素塩>硫酸水素塩>硝酸塩。カチオンの 順位は次のようである。テトラメチルアンモニウム>アンモニウム>セシウム> ルビジウム>カリウム>ナトリウム>リチウム>カルシウム>マグネシウム。 1価オキシアニオン類およびヨウ化物を除くイオン類はそれらの順位とは関係 なく、本発明の保存溶液に約2mM未満の濃度で含むことができる。約2mMよ り大きいイオン濃度では下記の選択基準が適用される。 (i)塩化物の左側の各アニオンがナトリウムまたはナトリウムの左側のカチ オンと結合して中性塩になる。 (ii)塩化物の右側のアニオンは除外される。そして、 (iii)ナトリウムの右側のカチオンは塩化物のみと結合できる。 保存溶液に用いるための特に好適なイオンは、カリウム、テトラメチルアンモ ニウム、アンモニウム、セシウムおよびクエン酸塩を含む。マグネシウムも約2 mM未満の濃度では好適カチオンである。 以下に詳細に述べるように、血小板を除き、生物学的物質の有効保存時間は、 保存組成物にカルシウムを添加すると増加することが確認されている。これはお そらく、細胞膜に見いだされるホスホリピド二重層をカルシウムが安定化し、細 胞間付着を安定化するためであろう。好適にはカルシウムは硫酸カルシウムとし て存在し、1.5mM〜約2.0mMの濃度、最も好適には1.75mMの濃度で 存在する。硫酸ナトリウムの添加も多くの生物学的物質の有効保存時間を延長す る。約60%〜約80%、好適には約70%のラフィノースおよびTMAO、約 40%〜約20%、好適には約30%の硫酸ナトリウム、および約1.75mM 硫酸カルシウムを含んでなり、ラフィノースとTMAOとが約1.6:1の比で 存在することを含む組成物が多くの生物学的物質の保存に特に有効であることが わかった。 本発明の組成物に含まれるその他の成分としては、微生物をコントロールする 抗生物質、および胚などの生物学的物質の表面への付着を阻止するためのタンパ ク質、例えばウシ血清アルブミンなどがある。幾つかの用途、例えば心臓の保存 などでは、保存溶液を使用前に酸素で飽和してもよい。 理論によって束縛されたくはないが、発明者は、本発明の保存溶液がイオンチ ャンネルの開口を阻止し、それによって細胞を休眠状態に維持することによって 、細胞膜を通って運ばれる外部刺激シグナルから細胞を分離すると考える。 保存すべき生物学的物質を標準的技術を用いて取得し、本発明の水性保存溶液 に接触させ、好適には浸漬する。生物学的物質は、もし必要ならば、浸漬前にそ の保存溶液ですすいでもよい。生物学的物質は凍結する手前の温度で保存しても よいが、材料は約4℃の温度で保存するのが便利である。保存後、保存溶液を材 料から除去し、標準食塩水を基礎とした培地に置き換えるか、または保存した材 料を保存溶液に入れたまま直接用いてもよい。生物学的物質を凍結温度より低い 温度で保存するとき、熟練した当業者には公知の方法に用いられるように、有効 濃度の凍結防止剤をその保存溶液に加えることもできる。本発明の溶液はこうし て生物学的物質の長期保存にも短期保存にも用いることができる。 以下の例2に詳述するように、例えば胚のようないくつかの生物学的物質の保 存時間はクラスII溶質または酪酸ナトリウムのどちらかによる前処理によって 増加してもよい。 下記の例は説明のためのものであって、制限するものではない。例1 マウス胚の保存における本発明の溶液の有効性を以下に記載のように試験した 。胚は速やかに***する細胞からなるから、それらを停止させるのは難しく、し たがって保存溶液の感度テストを提供する。胚は、保存中の生存を、保存1〜5 日後の培養時における孵化能力によって評価することができるという長所も有す る。 生育可能のマウス胚をPBS中、またはラフィノース、トレハロース、スクロ ースまたはラクトース(クラスI溶質)のいづれかと、トリメチルアミンオキシ ド(TMAO)、ベタイン、タウリン、サルコシン、グルコース、マンノース、フ ルクトース、リボース、ガラクトース、ソルビトール、マンニトール、イノシト ールおよびタウリン(クラスII溶質)からなる群から選択される溶質との水溶 液(クラスII溶質に対するクラスI溶質の比が1.6:1)中で、4℃で1、2 または3日間保存した。各クラスI/クラスII溶液は1.75mM濃度の硫酸 カルシウムも含んでいた。それら溶液は0.1〜1%ウシ血清アルブミン(BS A)および25mg/Lの硫酸カナマイシンも含んでいた。すべての試薬はシグ マケミカル社(セントルイス、エムオー)から入手した。胚の生存はその後のダ ルベッコ改良イーグル培地(DMEM、ライフテクノロジー、グランドアイラン ド、ニューヨーク)における培養によって評価し、保存後に存在する生きている 胚の数、および37℃で48時間培養後に孵化した胚の数としてあらわした。 これらの実験結果を、スクロース、ラクトース、トレハロースおよびラフィノ ースの溶液についてそれぞれ図1〜4に示す。ここでHB+LBは、孵化した、 または後期胞胚段階に達している胚のパー セントをあらわす。ほとんどの溶質の組み合わせで1日保存後、高い割合で胚が 孵化したが、3日間保存後は、高い割合で孵化がみられたのはラフィノース、ト レハロースまたはスクロースとTMAOとの組み合わせのみであった。ラフィノ ースが最良のクラスI溶質で、TMAOが最良のクラスII溶質であることが分 かった。トレハロースおよびベタインはそれぞれ二番目に良いクラスIおよびク ラスII溶質であった。マウス胚の保存のためのクラスI/クラスII溶液の最 適な総重量オスモル濃度は0.30 OsMであることがわかった。 クラスIおよびクラスII溶質の最良の3つの組み合わせをその後再試験し、 クラスII溶質に対するクラスI溶質の最適モル比を決定した。これら3つの溶 質のうちで、ラフィノース:TMAO、モル比1.6:1、において胚の生存率 が最も高かった(図5参照)。二番目に高い生存率はトレハロース:TMAOのモ ル比1.3:1で得られた。三番目に高い生存率はラフィノース:ベタインのモ ル比1.4:1で得られた。 TMAOに対するラフィノースのモル比(1.6:1)および種々の濃度のC a2+を含む溶液に保存後、孵化した胚のパーセントを図6に示す。胚の保存のた めにはCa2+が非線型濃度依存的に必要であることか判明した。その後は、すべ ての溶液および大部分の生物学的物質に1.75mMのCaSO4を用いた。一つ の例外は分離した血小板で、それはCa2+のない溶液中で最も良く生存率するこ とが判明した。 1.75mMのCaSO4を含むラフィノース/TMAO(1.6:1)溶液の 異なる量を、1.75mMのCaSO4を含む0.3 0 OSMのNa2SO4溶液と混ぜ合わせた。これらの溶液中で、1、2および 3日間保存後に培養して孵化するマウス胚のパーセントを図7(i)A、Bおよ びCにそれぞれ示す。孵化した胚の最高パーセントは70%ラフィノース/TM AO(1.6:1)、30%Na2SO4および1.75mMのCaSO4の時に得ら れた(以後は「溶液70/30」と表す)。図7(ii)は種々の重量オスモル濃 度の溶液70/30に保存した後の胚の生存を示す。最適重量オスモル濃度は3 00m OsMに近いが、特に重要ではないと思われる。その後、溶液70/3 0を多くの用途に用い、骨髄幹細胞、心臓、赤血球および骨芽細胞に対して、最 も有効な保存溶液であることが証明された。Ca2+を含まない溶液70/30は 血小板の保存に最も有効な溶液であることがわかった。 例2 下に記すように、保存中のマウス胚の生存は、クラスII溶質または酪酸ナト リウムで前処理することによって、著しく高まることが判明した。 マウス胚を酪酸ナトリウムかクラスII溶質と共に、室温、30℃または4℃ でインキュベートし、その後溶液70/30中、4℃で5日間まで保存した。室 温における酪酸ナトリウム濃度(5〜70mM)および前処理時間(5〜30分 間)の多くの異なる組み合わせにより保存時間は著しく改善された。酪酸ナトリ ウムをPBS中で同濃度の塩化ナトリウムに置き換えた。図8A、B、およびC は、5、10または15mM程度の酪酸ナトリウムで10、20または30分間 前処理した後に、1、2および3日間それぞれ保存したマ ウス胚の孵化パーセントを示す。図8D、EおよびFは、5、10または15m Mの濃度の酪酸ナトリウムで10、20または30分間前処理した後に、1、2 および3日間それぞれ保存した後、生きているマウス胚のパーセントを示す。酪 酸ナトリウムによる前処理で、溶液70/30に3日間保存した後、80%の胚 が孵化した。高濃度の酪酸ナトリウムで前処理した後に、溶液70/30に5日 間保存した後、胚の70%までが孵化した。これに対し前処理しない場合は2% の孵化であった(図9参照)。前処理せずにPBSに保存した胚は3日間より長く は生き続けなかった。酪酸塩を含まないPBSで胚を前処理すると、胚のかなり の損失が起きた。図10A、B、CおよびDは、室温にて25mMの酪酸ナトリ ウムで5、10または15分間前処理した後に、溶液70/30中に4日間まで 保存した後のマウス胚の生存を示す。 例3 全血の保存における溶液70/30の効果を下記に詳述するように試験した。 全血を血漿、Ca2+を含有する溶液70/30またはCa2+を含有しない溶液 70/30で1:1の容量比にて希釈し、4℃で28日間まで保存した。クエン 酸塩を基礎とした抗凝固溶液の存在する場合は、血小板が18日で最初の数の約 30%に減少した。抗凝固剤としてEDTAを用いた場合、血小板数はCa2+を 含有しない溶液70/30中では正常範囲にとどまり、すなわち約60%に近い 生存率であったが、Ca2+を含有する溶液70/30または血漿中では正常範囲 にはなかった。 同じ試験で、クエン酸塩を基礎とした抗凝固剤の存在下における白血球の生存 は血小板の生存よりもわずかに高かった。血液をEDTAを含むバッグに集め、 Ca2+を含有する溶液70/30で1:1(容量比)に希釈し、18日間保存し たとき、Ca2+を含有しない溶液70/30または血漿に保存した場合と比較し て、最も高い生存率が得られた。これは白血球保存のために必要なCa2+の代わ りとなり、そしてクエン酸塩の有害作用を回避した。 例4 この例は、分離した血小板の保存における本発明の保存溶液の効果を示すもの である。 血液をEDTA中に集め、標準的な遠心分離法を用いて血小板を分離した。最 終的な血小板に富んだペレットを50mlの血漿またはCa2+を含有しない溶液 70/30で希釈した。図11は、4℃で28日保存後に血小板の80%が生き 残っていることを示す。保存後のこの生存率は、血漿中に保存した場合より明ら かに良く、血小板を一般的保存で21℃に5日間保存した場合よりもかなり良か った。血液をEDTA中に集め、クエン酸塩を避け、同時にCa2+を含有しない 溶液70/30中に4℃で保存する方法がすぐれていることは非常に明らかであ る。 例5 この例は骨髄保存のための本発明の溶液の効果を示すものである。 異なる患者2名から骨髄をヘパリン中に集め、本発明の溶液または標準生理的 食塩液(ハンクス緩衝食塩溶液(HBSS)または食 塩水を基礎とするネズミ培養培地(M−2))で1:1(容量比)に希釈した。骨 髄を4℃で28日までの期間保存し、そのときに白血球数および生存率能力、コ ロニー形成単位数、およびCD34およびCD45細胞の数を測定した。 図12A、BおよびCは患者1から取得し、本発明の溶液に28日間まで保存 した骨髄のCD−45陽性およびCD−34陽性細胞およびコロニー形成単位の 数をそれぞれ示す。図13A、BおよびCは、患者2から取得し、4℃で保存溶 液および対照溶液に保存した骨髄の、コロニー形成単位、CD45−陽性および CD34−陽性細胞の数をそれぞれ示す。ラフィノース/TMAOはモル比1. 6:1で、トレハロース/ベタイン溶液はモル比1.4:1であった。溶液70 /30は骨髄幹細胞の保存に特に有効で、コロニー形成単位、CD45およびC D34−陽性細胞の数は対照溶液のいずれと比較しても非常に高く、相対的な改 善は時間と共に増加した。図13A、BおよびCは、コロニー形成単位、CD3 4−陽性細胞およびCD45−陽性細胞の数が、溶液70/30に保存後、食塩 液培地M−2に保存後と比較して非常に高いことを証明している。骨髄を凍結せ ずに2〜3週間保存できることは、骨髄移植において特に好都合である。それは 、凍結防止のためのDMSOの使用に関連した毒性を回避し、再注入前の全身照 射などの治療法のための時間を与えるからである。 例6 ネズミ骨髄細胞の保存のための本発明の溶液の効果を下記のように測定した。 ネズミ骨髄を溶液70/30またはPBS中に直接取得した。その溶液を4℃ または−80℃で保存した。図14Aは、4℃で溶液70/30に保存したネズ ミ骨髄が14日後に28%の回収を示し、4℃でPBSに14日間保存した骨髄 細胞は生き残っていなかったことを示す。溶液70/30中で−80℃で凍結し た骨髄は8および14日後に20%の回収を示したが、PBSに−80℃で保存 した骨髄細胞は2、6、8および14日間まで生き残らなかった。図14Bは、 ネズミ骨髄を溶液70/30中で−80℃で8日間凍結し、解凍し、それから致 死量(1000R)を照射した同系マウスに注射したとき、注射後8日目に分析 した結果脾臓コロニーが生成していたことを示す。50,000の骨髄細胞を注 射したマウスには16個のコロニーが生成し、10,000の細胞を注射したマ ウスには4個のコロニーが生成し、2000の骨髄を注射した1匹のマウスには 2個のコロニーが生成した。これらのデータはネズミ造血幹細胞が溶液70/3 0中、−80℃の凍結下で8日間生きており、インビボ脾臓コロニー形成特性を 保有することを示す。 例7 心臓の保存のための本発明の溶液の効果を下記のように測定した。 ラット心臓を外科的に摘出し、4℃にて溶液70/30またはラフィノース/ TMAO(モル比1.6:1)を大動脈を通して潅流した。その間心拍数は約3 00拍動/分から約180拍動/分に低下した。次に、心臓を同じ溶液に4〜2 4時間保存した。その間心臓は拍動を停止した。心臓にその後カニューレを取り 付け、クレプス溶液を再潅流した。そのクレプス溶液は最初は室温でその後20 分 間かけて37℃まで高めた。潅流溶液を重力のみで供給したとき、保存4時間後 の心臓の回復は優れており、心拍数も発生した圧力も正常範囲であった(心拍数 170拍動/分、圧力98mmHg、図15参照)。潅流にポンプを用いたとき は変動する結果が得られた。通常、ポンプによって心臓にかかる圧力はダメージ を与え、そのダメージは非可逆的であることが多いことが判明した。 4時間より長時間の保存を実現するには、心臓をクレプス溶液中25mMのタ ウリンで、38℃にて10分間前処理し、その後***液70/30またはラフィ ノース/TMAOで潅流し、4℃で保存した。最初の潅流および再潅流を重力の みで行ったとき、24時間保存した心臓は正常範囲の心拍数および正常レベルの 約半分の圧力を回復した。その後の実験は、約0.2mMのタウリンを保存溶液 に加えることによって、タウリンによる前処理を行わずにすみ、内因性タウリン の流出を防止できた。本発明の保存溶液を用いて得られた結果は、冷食塩水を基 礎とした培地に保存する先行技術と好ましい比較を示す。その際心臓は、許容不 可能な生物学的機能の低下により5時間以内しか保存できない。心臓を劣化させ ずに24時間保存することは、移植のために心臓を世界的規模で輸送する時間を 与えるであろう。 例8 種々の腫瘍細胞系統、例えばヒトリンパ性白血病のジュルカートおよびK56 2慢性骨髄性白血病細胞系統などの保存のための本発明の溶液の効果を、上記の 例5および6においてヒト骨髄の保存のために試験した溶液を用いて試験した。 骨髄前駆細胞とは異なり、 腫瘍細胞系統は本発明の溶液中で完全に細胞が死ぬまでたった2日しか生きてい なかった(図16および17)。このように、本発明の保存溶液に骨髄を3日間よ り多く保存すると、骨髄から白血病細胞が浄化され、一方骨髄の生存率能力は維 持される。 例9 本発明の溶液の骨芽細胞の保存効果を下記に示した。 マウス骨芽細胞を細かく切り、D−MEM培養培地において38℃で融合近く まで増殖させた。それらをその後Ca2+およびMg2+を含有しないリン酸緩衝食 塩水中でトリプシンを分散し、D−MEMに再接種した。さらに培養後、培地を 吸引によって除去し、下記の溶液の1つに置き換えた。PBS、ベタイン、ガラ クトース、ソルビトール、マンノース、トレハロース、ラフィノース、ラフィノ ース/TMAO(比1.6:1)、ラフィノース/ベタイン(比1.6:1)トレハ ロース/TMAO(比1.6:1)およびトレハロース/ベタイン(比1.6:1) 。4℃で種々の時間保存した後、保存溶液を吸引により除去し、D−MEMに置 き換えた。その後骨芽細胞が融合に至るまで増殖したものを保存の成功とした。 図18に示すように、骨芽細胞は本発明の溶液中の保存では、PBSの場合より 非常に長時間生き残った。骨芽細胞は重量オスモル濃度の変動に対し、胚に比べ てよりよく耐えることが判明した。 例10 ネズミT7Tケラチノサイト腫瘍細胞系統の保存における本発明の溶液の効果 を下記のように試験した。5%血清を補充したD−M EM中で増殖しているT7Tの付着性培養物から培養培地を吸引によって除去し 、PBSまたは溶液70/30に置き換え、4℃で保存した。4、7、12およ び14日後、これらの溶液を除去し、付着性細胞をトリプシン処理によって取り 出し、回収率を測定した。図19は、T7T細胞がPBS中では生き残らず、溶 液70/30中では14日間保存後、生きているT7T細胞が回収されたことを 示す。 例11 ネズミ3T3線維芽細胞の保存における本発明の溶液の効果が次のように証明 された。 5%血清を補充したD−MEM中で増殖した3T3細胞の付着性培養物から培 地を吸引によって除去し、PBSまたは溶液70/30に置き換え、4℃で保存 した。1、7および14日後、これらの溶液を除去し、付着性細胞をトリプシン 処理によって除去し、回収率を測定した。図19に示すように、PBS中では生 育可能の3T3細胞は残っていなかったが、溶液70/30では生育可能の3T 3細胞が保存14日後まで回収された。 本発明を特別の実施形態の形で説明したが、本発明から逸脱することなく変更 および改変を行うことができ、本発明は添付の請求に範囲によってのみ制限され るものとする。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 35/34 A61K 35/34 35/36 35/36 35/60 35/60 35/78 35/78 Y C12N 1/04 C12N 1/04 5/06 5/00 E (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S Z,UG),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD ,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CZ, DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,HU,I L,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK ,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK, MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TR ,TT,UA,UG,UZ,VN

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.生物学的物質の保存溶液であって (a)少なくとも約335の分子量および少なくとも約0.3Mの水への溶解 度を有する第一の中性溶質と (b)約200未満の分子量を有し、親水性部分及び疎水性部分を有する第二 の中性溶質 とを含んでなる溶液。 2.前記溶液が1価オキシアニオン類およびヨウ化物を実質的に含まず、前記 溶液はホフマイスター系列のタンパク質安定化末端からの1つ以上のイオンをさ らに含む請求項1記載の溶液。 3.第一の溶質が二糖類および三糖類からなる群から選択される請求項1記載 の溶液。 4.第一の溶質がラフィノース、トレハロース、スクロース、ラクトースおよ びそれらの類似体からなる群から選択される請求項3記載の溶液。 5.第二の中性溶質がトリメチルアミノオキシド、ベタイン、タウリン、サル コシン、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、ガラクトース、ソ ルビトール、マンニトール、イノシトールおよびこれらの類似体からなる群から 選択される請求項1記載の溶液。 6.さらに硫酸ナトリウムを含んでなる請求項1記載の溶液。 7.さらにカルシウムを含んでなる請求項1記載の溶液。 8.カルシウムが約1.5mM〜約2.0mMの濃度の硫酸カルシウムとして存 在する請求項7記載の溶液。 9.カルシウムが約1.75mMの濃度で存在する請求項8記載の溶液。 10.溶液が濃縮形である請求項1記載の溶液。 11.濃縮形が固体である請求項10記載の濃縮形。 12.ラフィノースおよびトリメチルアミンオキシドを含んでなり、1価オキ シアニオン類およびヨウ化物を実質的に含まない、生物学的物質の保存溶液。 13.ラフィノースおよびトリメチルアミンオキシドが約1.4:1〜約1.8 :1の比で存在する請求項12記載の溶液。 14.さらに硫酸ナトリウムを含んでなる請求項12記載の溶液。 15.さらにカルシウムを含んでなる請求項12記載の溶液。 16.カルシウムが約1.5mM〜約2.0mMの濃度の硫酸カルシウムとして 存在する請求項15記載の溶液。 17.硫酸カルシウムが約1.75mMの濃度で存在する請求項16記載の溶液 。 18.約60%〜約80%のラフィノースおよびTMAO、約40%〜約20 %の硫酸ナトリウム、ならびに約1.75mMの硫酸カルシウムを含んでなり、 ラフィノースおよびTMAOが約1.6:1の比で存在する、生物学的物質の保 存溶液。 19.約70%のラフィノースおよびTMAO、ならびに約30%硫酸ナトリ ウムを含む請求項18記載の溶液。 20.トレハロースおよびトリメチルアミンオキシドを含み、1価オキシアニ オン類およびヨウ化物を実質的に含まない生物学的物質の保存溶液。 21.トレハロースおよびトリメチルアミノオキシドが約1.1: 1〜約1.4:1の比で存在する請求項20記載の溶液。 22.トレハロースおよびトリメチルアミンオキシドが約1.3:1の比で存 在する請求項20記載の溶液。 23.さらにカルシウムを含む請求項20記載の溶液。 24.カルシウムが約1.5mM〜約2.0mM濃度の硫酸カルシウムとして存 在する請求項23記載の溶液。 25.硫酸カルシウムが約1.75mMの濃度で存在する請求項24記載の組成 物。 26.生物学的物質と実質的に等張てあり、1価オキシアニオン類およびヨウ 化物を実質的に含まない、生物学的物質の保存溶液。 27.哺乳動物の生物学的物質の保存溶液であって (a)少なくとも約335の分子量および少なくとも約0.3Mの水への溶 解度を有する第一の中性溶質と (b)約200未満の分子量を有し、親水性部分及び疎水性部分を有する第 二の中性溶質 とを含んでなり、 1価オキシアニオン類およびヨウ化物を実質的に含まず、ホフマイスター系列 のタンパク質安定化末端からの1つ以上のイオンをさらに含み、さらに約0.2 8〜約0.32 OsMの重量オスモル濃度を有する保存溶液。 28.植物性生物学的物質の保存溶液であって (a)少なくとも約342の分子量および少なくとも約0.3Mの水への溶 解度を有する第一の中性溶質と (b)約200未満の分子量を有し、親水性部分及び疎水性部分を有する第 二の中性溶質 とを含んでなり、 1価オキシアニオン類およびヨウ化物を実質的に含まず、ホフマイスター系列 のタンパク質安定化末端からの1つ以上のイオンをさらに含み、さらに約70〜 約80mOsMの重量オスモル濃度を有する保存溶液。 29.海洋性生物学的物質の保存溶液であって (a)少なくとも約335の分子量および少なくとも約0.3Mの水への溶 解度を有する第一の中性溶質と (b)約200未満の分子量を有し、親水性部分及び疎水性部分を有する第 二の中性溶質 とを含んでなり、 1価オキシアニオン類およびヨウ化物を実質的に含まず、ホフマイスター系列 のタンパク質安定化末端からの1つ以上のイオンをさらに含み、さらに約0.9 〜約1.0 OsMの重量オスモル濃度を有する保存溶液。 30.生物学的物質を溶液と接触させることを含んでなり、前記溶液は前記生 物学的物質と実質的に等張であり、かつ1価オキシアニオン類およびヨウ化物を 実質的に含まない、生物学的物質の生存能力を保存する方法。 31.溶液が、少なくとも約335の分子量および少なくとも約0.3Mの水 への溶解度を有する第一の中性溶質と、約200未満の分子量を有しかつ親水性 部分及び疎水性部分を有する第二の中性溶質とを含み、さらにホフマイスター系 列のタンパク質安定化末端からの1つ以上のイオンを含む請求項30記載の方法 。 32.生物学的物質が哺乳動物性、海洋性および植物性物質から なる群から選択される請求項30記載の方法。 33.生物学的物質が哺乳動物の物質であり、溶液が約0.28〜約0.32 O sMの重量オスモル濃度を有する請求項32記載の方法。 34.生物学的物質が心臓、幹細胞、骨髄、胚、血小板、骨芽細胞および皮膚 細胞からなる群から選択される哺乳動物の物質である請求項32記載の方法。 35.生物学的物質が海洋性物質であり、溶液が約0.9〜約1.0 OsMの 重量オスモル濃度を有する請求項32記載の方法。 36.生きている組織が植物組織であり、溶液が約70〜約80mOsMの重 量オスモル濃度を有する請求項32記載の方法。 37.(a)対象から骨髄を取り出し (b)前記骨髄を請求項1記載の組成物と少なくとも約3日間接触させ 、そして 諸段階を含む白血病の治療方法。 38.(a)生物学的物質を酪酸ナトリウムを含む溶液で前処理し、そして (b)前記生物学的物質を保存溶液と接触させる 諸段階を含む生物学的物質の保存方法。 39.保存溶液が生物学的物質と実質的に等張であり、1価オキシアニオン類 およびヨウ化物を実質的に含まない請求項38記載の方法。 40.保存溶液が少なくとも約335の分子量および少なくとも約0.3Mの 水への溶解度を有する第一の中性溶質と、約200未満 の分子量を有しかつ親水性部分および疎水性部分を有する第二の中性溶質とを含 み、さらにホフマイスター系列のタンパク質安定化末端からの1つ以上のイオン を含む請求項39記載の方法。
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