JP2000297789A - 軸流圧縮機 - Google Patents

軸流圧縮機

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JP2000297789A
JP2000297789A JP11106662A JP10666299A JP2000297789A JP 2000297789 A JP2000297789 A JP 2000297789A JP 11106662 A JP11106662 A JP 11106662A JP 10666299 A JP10666299 A JP 10666299A JP 2000297789 A JP2000297789 A JP 2000297789A
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blade
region
surface region
axial flow
surface roughness
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JP11106662A
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English (en)
Inventor
Toshiaki Tsuchiya
屋 利 明 土
Masanori Shimizu
水 雅 典 清
Makoto Kubo
保 良 久
Haruhiko Hirata
田 東 彦 平
Yukio Ohashi
橋 幸 夫 大
Masafumi Fukuda
田 雅 文 福
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Toshiba Corp
Tokyo Electric Power Co Holdings Inc
Original Assignee
Toshiba Corp
Tokyo Electric Power Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 翼型自体を変更することなく、限界マッハ数
で生じる損失の急増を緩和させる。 【解決手段】 軸流圧縮機を構成する静翼列および動翼
列のうちの少なくとも1つの翼列を構成する翼(例えば
静翼3の背側3a)の翼面を、所定範囲内の表面粗さを
有する通常面領域3fと、この通常面領域3fよりも大
きい表面粗さを有する粗面領域3eとで構成する。この
ように構成することで、翼面上の流体摩擦を当該粗面領
域3eにおいて局所的に増大させ、翼面上の流れの増速
を抑えることができる。このことにより、当該翼面上で
の衝撃波の発生規模を縮小することができるので、軸流
圧縮機を限界マッハ数以上で運転する際に生じる損失を
減少させることが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は軸流圧縮機に係り、
特に軸流圧縮機翼の低損失化を図るための改良に関す
る。
【0002】
【従来の技術】軸流圧縮機の性能は一般に翼形状に大き
く依存する。多段軸流圧縮機を小型・軽量化するため
に、1段当たりの圧力比を増加させ、流量を大きく取ろ
うとした場合、ある流量以上で損失が急増し、さらに流
量を増加させていくと最終的にチョークが発生する。
【0003】以下、図15を参照して一般的な軸流圧縮
機の概要を説明する。図15に示す多段軸流圧縮機は、
環状流路2を構成するケーシング1及びロータ5を備え
ている。このうち、ケーシング1の内面には複数の静翼
3からなる静翼列が取り付けられ、ロータ5の外周には
複数の動翼4からなる動翼列が取り付けられている。ロ
ータ5は、別途設けられたモータやタービン等により回
転駆動される。
【0004】図16は、図15に示す(静翼3からな
る)静翼列のA―A線円筒断面図である。図16に示す
ように、各静翼3の円筒断面での形状は、隣り合う翼と
同一であり、背側3a、腹側3b、前縁3c及び後縁3
dで構成されている。なお、動翼4については、回転し
ているという点を除いて静翼3と同様の構成になってい
るので、以下説明を省略する。
【0005】ここで、翼の表面粗さは、流体による摩擦
抵抗を削減する目的で、可能な限り小さく加工されるの
が一般的である。このときの翼列入口マッハ数と全圧損
失の関係は、翼列入口マッハ数が限界マッハ数に達する
と急速に損失が増加するようになっている。翼列入口マ
ッハ数に代えて流量を取った場合の損失も、ほぼ同様の
傾向を示す。これは、翼の負圧側で局所的にマッハ数が
1以上となり衝撃波が発生するためで、衝撃波自体によ
る損失と、衝撃波と翼面境界層との干渉によって生じる
流れの剥離による損失とからなる。
【0006】従って軸流圧縮機を小型・軽量化するため
に、該圧縮機を限界マッハ数以上で運転する場合の損失
の急増を緩和させる手段を用いて、軸流圧縮機の高効率
化を行うのが一般的である。
【0007】この種の手段を講じた軸流圧縮機として
は、例えば特開平7−83196号公報に記載されたも
のが知られている。この軸流圧縮機では、翼背側の曲率
分布が、翼前縁から一旦極小値をもち、その後極大値を
有するように翼型を構成している。このように軸流圧縮
機の損失の急増を緩和させる手段としては、一般に翼型
を変更する手段が採用されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、翼型を
変更する場合は、一般に翼の強度・性能を求める数値計
算や長期に渡る試験を行う必要があり、経済性や信頼性
の面で問題がある。
【0009】そこで本発明の目的は、翼型自体を変更す
ることなく、限界マッハ数で生じる損失の急増を緩和さ
せることの可能な軸流圧縮機を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】第1の手段は、環状流路
を構成するケーシング及びロータと、前記ケーシングの
内面に取り付けられた静翼列と、前記ロータの外周に取
り付けられた動翼列とを備えた軸流圧縮機において、前
記静翼列および動翼列のうちの少なくとも1つの翼列を
構成する翼の翼面を、所定範囲内の表面粗さを有する通
常面領域と、この通常面領域よりも大きい表面粗さを有
する粗面領域とで構成したものである。
【0011】この第1の手段によれば、翼列を構成する
翼の翼面上に、通常面領域よりも大きい表面粗さを有す
る粗面領域を設けることで、翼面上の流体摩擦を当該粗
面領域において局所的に増大させ、翼面上の流れの増速
を抑えることができる。このことにより、当該翼面上で
の衝撃波の発生規模を縮小し、境界層の剥離を抑制する
ことができる。
【0012】第2の手段は、第1の手段において、前記
粗面領域が、翼の最大翼厚位置よりも後縁側に設けられ
ているものである。
【0013】この第2の手段によれば、第1の手段にお
いて、粗面領域を衝撃波が発生する領域により近い位置
に設けることで、衝撃波による境界層の剥離を抑制する
作用をより効果的に発揮させることができる。
【0014】第3の手段は、第1の手段において、翼の
前縁と後縁とを結ぶ翼面長さに対する前記粗面領域の長
さの比率が、翼の背側と腹側とで等しくなるようにした
ものである。
【0015】この第3の手段によれば、第1の手段にお
いて、翼の背側と腹側とで境界層厚さの増加を同程度に
することにより、当該翼列からの流出角度の偏向を低減
させることができる。このことにより、当該翼列に対し
て下流側の翼列の入射角度が大きく偏向されなくなるた
め、軸流圧縮機全体の性能を向上させることができる。
【0016】第4の手段は、第1の手段において、前記
通常面領域の表面粗さが、翼面流れにおける粘性底層の
厚さよりも小さくなるようにしたものである。
【0017】この第4の手段によれば、第1の手段にお
いて、通常面領域での表面粗さによる翼面流れの摩擦損
失の増大を回避することができる。このことにより、摩
擦損失の増大を粗面領域のみに抑えることができるた
め、特に翼列入口マッハ数が限界マッハ数以下の場合の
無用な損失の増大を効果的に抑制することが可能とな
る。
【0018】第5の手段は、第1の手段において、前記
通常面領域と前記粗面領域との間に、表面粗さが徐々に
変化する粗さ変化領域を設けたものである。
【0019】この第5の手段によれば、第1の手段にお
いて、翼面での急激な表面粗さの変化に伴う境界層厚さ
の急増によって境界層が剥離することを防止することが
できる。
【0020】第6の手段は、第1乃至第5のいずれかの
手段において、翼面にコーティングを施すことによっ
て、前記通常面領域と前記粗面領域との表面粗さを異な
らせたものである。
【0021】この第6の手段によれば、第1乃至第5の
いずれかの手段において、研磨加工等によって表面粗さ
を異ならせる場合に比べ、より簡単な作業で高い加工精
度が得られ、経済性の点でも有利となる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態について説明する。図1乃至図14は、本発明
による軸流圧縮機の実施の形態を説明するための図であ
る。なお、図1乃至図14に示す本発明の実施形態にお
いて、図15に示す一般的な軸流圧縮機と同様の構成部
分については、同一符号を付すと共に、適宜図15を参
照して説明する。
【0023】[第1の実施形態]まず、図1乃至図4及
び図15により、本発明の第1の実施形態について説明
する。
【0024】本発明が適用される一般的な多段式の軸流
圧縮機は、図15に示すように、環状流路2を構成する
ケーシング1及びロータ5を備えている。このうち、ケ
ーシング1の内面には複数の静翼3からなる静翼列が取
り付けられ、ロータ5の外周には複数の動翼4からなる
動翼列が取り付けられている。ロータ5は、別途設けら
れたモータやタービン等(図示せず)により回転駆動さ
れる。
【0025】図1は、本発明による軸流圧縮機の第1の
実施形態における静翼3を、図15のA―A線円筒断面
に対応して示す図である。図1において、静翼3の円筒
断面での形状は、図16に示した静翼3と同様、背側3
a、腹側3b、前縁3c及び後縁3dで構成されてい
る。このうち、静翼3の背側3aの翼面は、所定範囲内
の表面粗さを有する通常面領域3fと、この通常面領域
3fよりも大きい表面粗さを有する粗面領域3eとで構
成されている。
【0026】図2に、図1のように構成された静翼3の
翼面上の表面粗さ分布を示す。図2に示すように、背側
3aの翼面長さ方向中央部分に上記粗面領域3eが形成
されている。また、腹側3bの翼面は、全て上記通常面
領域3fによって構成されている。この場合、通常面領
域3f及び粗面領域3eの表面粗さは、例えば図2に示
すように、それぞれ約5ミクロン及び約15ミクロンで
ある。
【0027】なお、静翼3と動翼4のいずれか一方を上
述したような構成にしてもよく、静翼3と動翼4の両方
を上述したような構成にしてもよい。また、上述したよ
うな翼の構成を、複数の静翼列および動翼列の全部につ
いて採用してもよく、それらの翼列のうちの一部につい
て採用してもよい。(以下、他の実施形態においても同
様。) 次に、このような構成よりなる本実施形態の作用効果に
ついて、図3及び図4を参照して説明する。図3は、本
発明による軸流圧縮機の翼と従来の軸流圧縮機の翼につ
いて数値解析を実施した一例として、入口マッハ数が
0.8の場合における背側3aの翼面上でのマッハ数分
布測定結果を、翼面位置と翼面マッハ数との関係で示す
グラフである。図3に示すように、従来の翼では、入口
流れが高亜音速になると、背側3aの翼面上の流れが増
速し、最大マッハ数は1を超え、その下流では衝撃波が
発生する。したがって前述のように損失が急激に増大す
る。
【0028】一方、本発明の翼では、上記粗面領域3e
で局所的な流体摩擦の増大が生じ、背側3aでの翼面上
の流れの増速を抑える。その結果、背側3aの翼面上で
の衝撃波の規模を小さくし、境界層の剥離が発生するの
を抑制している。
【0029】図4に、数値解析で得られた翼列入口マッ
ハ数と全圧損失係数の関係を示す。図4によれば、限界
マッハ数を超えた領域において、本発明の翼は、従来の
翼に比べて全圧損失係数が大幅に低減されている。これ
は上述のように衝撃波によって発生する流れの剥離が抑
制されたためと考えられる。
【0030】従って、本実施形態によれば、軸流圧縮機
を限界マッハ数以上で運転する際に生じる損失を減少さ
せ、軸流圧縮機の性能を向上させることが可能となる。
また、翼面の表面粗さを変えるだけで上述した効果が得
られ、数値計算や性能試験によって翼型を変更する必要
がなくなるので、経済性や信頼性にも優れている。
【0031】[第2の実施形態]次に、図5乃至図7に
より本発明の第2の実施形態について説明する。本実施
形態は、図5及び図6に示すように、上記粗面領域3e
が、翼の最大翼厚位置3gよりも後縁3d側に設けられ
ている点で上記第1の実施形態と異なり、その他の構成
は図1等に示す上記第1の実施形態と同様である。
【0032】次に、このような構成よりなる本実施形態
の作用効果について、図7を参照して説明する。図7
は、図4に示す翼列入口マッハ数と全圧損失係数との関
係に、更に本実施形態の翼についての解析結果を重ね合
わせて示したグラフである。図4によれば、本実施形態
の翼の方が、第1の実施形態の翼よりも限界マッハ数を
超えた領域における全圧損失係数がより低減されてい
る。
【0033】これは粗面領域3eを第1の実施形態の翼
よりも後方の、衝撃波が発生する領域により近い位置に
移したことによって、衝撃波が発生する領域の境界層が
薄くなり、その結果、衝撃波に起因して発生する剥離が
抑制されるためと考えられる。すなわち、本実施形態に
よれば、粗面領域3eを衝撃波が発生する領域により近
い位置に設けることで、上記第1の実施形態に比べて、
衝撃波による境界層の剥離を抑制する作用をより効果的
に発揮させることができる。
【0034】[第3乃至第5の実施形態]次に、図8乃
至図10により本発明の第3乃至第5の実施形態につい
て説明する。本発明の第3乃至第5の実施形態は、図8
乃至図10に示すように、翼の前縁3cと後縁3dとを
結ぶ翼面長さ(図5参照)に対する上記粗面領域3eの
長さの比率が、翼の背側3aと腹側3bとで等しくなる
ようにした点で上記第2の実施形態と異なり、その他の
構成は図5及び図6に示す上記第2の実施形態と同様で
ある。
【0035】具体的には、図8に示す第3の実施形態で
は、粗面領域3eの上記翼面長さに対する長さの比率、
形成位置および表面粗さの全てを、翼の背側3aと腹側
3bとで互いに等しくしている。
【0036】また、図9に示す第4の実施形態では、粗
面領域3e’,3eの翼面長さに対する長さの比率およ
び形成位置は、翼の背側3aと腹側3bとで互いに等し
くしているが、粗面領域3e’,3eの表面粗さは、翼
の背側3aと腹側3bとで互いに異ならせている。
【0037】また、図10に示す第5の実施形態では、
粗面領域3eの翼面長さに対する長さの比率および表面
粗さを、翼の背側3aと腹側3bとで互いに等しくして
いるが、粗面領域3eの翼面長さに対する形成位置は、
翼の背側3aと腹側3bとで互いに異ならせている(よ
り具体的には、腹側3bの粗面領域3eの形成位置のみ
を、後縁3d側よりやや前縁3c側へずらしている)。
【0038】次に、以上のような構成よりなる第3乃至
第5の実施形態の作用効果について説明する。これらの
実施形態によれば、上記翼面長さに対する粗面領域3e
の長さの比率が、翼の背側3aと腹側3bとで等しくな
るようにすることで、翼の背側3aと腹側3bとで境界
層厚さの増加を同程度にし、当該翼列からの流出角度の
偏向を低減させることができる。このことにより、当該
翼列に対して下流側の翼列の入射角度(インシデンス)
が大きく偏向されなくなるため、軸流圧縮機全体の性能
を向上させることができる。
【0039】また、特に第4又は第5の実施形態によれ
ば、第3の実施形態では扱えないような、そり線からの
厚みが背側3aと腹側3bとで対称に形成されていない
翼(非対称翼)や、対称翼においてもそり線が特殊なプ
ロファイルを有する翼等に対して、翼列からの流出角度
の偏向の低減が可能となる。円弧あるいは放物線等の一
般的なそり線を有する翼を用いた場合でも、衝撃波の影
響が大きい領域では、衝撃波の状態・発生位置に応じて
流出角度が著しく偏向する場合がある。このような条件
下の翼に対しても、第4又は第5の実施形態によれば、
翼列からの流出角度の偏向の低減が可能となる。
【0040】[第6の実施形態]次に、図11により本
発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態
は、通常面領域3fの表面粗さが、翼面流れにおける粘
性底層の厚さよりも小さくなるようにした点で上記第2
の実施形態と異なり、その他の構成は図5及び図6に示
す上記第2の実施形態と同様である。
【0041】具体的には、例えば翼面流れにおける粘性
底層の厚さが5乃至10ミクロン程度である場合に、図
11に示すように翼の粗面領域3eの表面粗さを5乃至
15ミクロン程度(例えば15ミクロン)とし、通常面
領域3fの表面粗さをそれより小さい粗さ(例えば4ミ
クロン)としている。
【0042】次に、このような構成よりなる本実施形態
の作用効果について説明する。本実施形態によれば、
通常面領域3fでの表面粗さによる翼面流れの摩擦損失
の増大を回避することができる。このことにより、摩擦
損失の増大を粗面領域3eのみに抑えることができるた
め、特に翼列入口マッハ数が限界マッハ数以下の場合の
無用な損失の増大を効果的に抑制することが可能とな
る。
【0043】すなわち、本発明による軸流圧縮機では、
翼列入口マッハ数が比較的小さい部分負荷運転時におい
て、翼面の表面粗さによって従来より摩擦抵抗が増大す
ることにより、全圧損失が従来の翼を用いた場合より大
きくなる場合がありうる。
【0044】一方、限界マッハ数付近で動作している翼
の周りには前縁3cの周りを除いて乱流境界層が形成さ
れており、翼面のごく近くの極めて薄い層では、翼面の
存在により乱流混合が抑制され、粘性の影響が支配的に
なる。この翼面近くの極めて薄い層を「粘性底層」とい
い、翼面の粗さが粘性底層の厚さ以下の場合には、流れ
に対する粗さの影響が現れないことが知られている(例
えば、田古里哲夫・荒川忠一著「流体工学」1993年4月1
5日・東京大学出版会発行/第157頁参照)。従って、表
面粗さを粘性底層の厚さよりも小さくすることによっ
て、表面粗さによる損失の増大を抑制できる。
【0045】具体的には、定格運転される一般的な産業
用ガスタービンにおける軸流圧縮機の翼について、数値
計算により粘性底層の厚さを求めると、5乃至10ミク
ロン程度となる。従って、上述したように粗面領域3
e"の表面粗さを5乃至10ミクロン程度とし、通常面
領域3fの表面粗さをそれより小さい粗さとすることに
よって、摩擦抵抗が増加するのが粗面領域3e"の部分
だけとなることから、特に限界マッハ数以下の翼列入口
マッハ数領域において、従来翼に対する損失増加量を低
減させることができる。
【0046】[第7の実施形態]次に、図12により本
発明の第7の実施形態について説明する。本実施形態
は、図12に示すように、通常面領域3fと粗面領域3
eとの間に、表面粗さが徐々に変化する粗さ変化領域3
hを設けた点で上記第2の実施形態と異なり、その他の
構成は図5及び図6に示す上記第2の実施形態と同様で
ある。
【0047】具体的には、図12は翼面位置に対する表
面粗さの変化を示す図であるが、この図12上におい
て、背側3aに設けられた粗さ変化領域3hは、通常面
領域3fと粗面領域3eとの間を結ぶ一定の傾きの直線
として表されている。すなわち、粗さ変化領域3hにお
ける表面粗さは、通常面領域3fの表面粗さと粗面領域
3eの表面粗さとの間で、翼面長さ方向で線形に変化す
るようになっている。
【0048】次に、このような構成よりなる本実施形態
の作用効果について説明する。本実施形態によれば、表
面粗さが徐々に変化する粗さ変化領域3hを設けること
で、翼面での急激な表面粗さの変化に伴う境界層厚さの
急増によって境界層が剥離することを防止することがで
きる。
【0049】[第8の実施形態]次に、図13により本
発明の第8の実施形態について説明する。本実施形態
は、上記図12と同様の図13上において、粗さ変化領
域3h’の両端部が、それぞれ通常面領域3f及び粗面
領域3eと滑らかに繋がる曲線で構成されている点で上
記第7の実施形態と異なり、その他の構成は図12に示
す上記第7の実施形態と同様である。
【0050】本実施形態によれば、上記第7の実施形態
に比べ、翼面での急激な表面粗さの変化をさらに少なく
できるため、境界層厚さの急増による境界層の剥離を防
ぐ効果を一層向上させることができる。
【0051】[第9の実施形態]次に、図14により本
発明の第9の実施形態について説明する。本実施形態
は、図14に示すように、粗面領域3eを翼の前縁3c
側(図5参照)に設けた点で上記第7の実施形態と異な
り、その他の構成は図12に示す上記第7の実施形態と
同様である。
【0052】具体的には図14に示すように、翼の背側
3aにおいて、前縁3c側に設けられた粗面領域3eと
その後縁3d側に設けられた通常面領域3fとの間に、
上記第7の実施形態と略同様の粗さ変化領域3hが設け
られている。
【0053】次に、このような構成よりなる本実施形態
の作用効果について説明する。本実施形態によれば、翼
の前縁3c側に粗面領域3eを設けることにより、前縁
3c付近での層流境界層の剥離を防ぐことができる。す
なわち、翼の前縁3c近くでは層流境界層が形成されて
おり、この領域で剥離が生じると乱流境界層の剥離に比
べてより大きい全圧損失が生ずる。そして、上記第1乃
至第8の実施形態では衝撃波の発生に起因する乱流境界
層の剥離に対しての抑止効果しかなく、層流境界層の剥
離に対しての抑止効果を持たない。これに対して本実施
形態によれば、翼の前縁3c付近での層流境界層の剥離
を抑止することで、そのような剥離による大きな全圧損
失の発生を防止することが可能となる。
【0054】なお、本実施形態においても、上記第8の
実施形態の粗さ変化領域3h’のように、粗さ変化領域
3hの両端部を、それぞれ通常面領域3f及び粗面領域
3eと滑らかに繋がる曲線で構成することがより好まし
い。
【0055】ここで、以上の第1乃至第9の実施形態に
おいて、通常面領域3fと粗面領域3e〜3e"との表
面粗さを異ならせる手段としては、翼面にコーティング
を施す手段を採ることが好ましい。具体的には、部分的
なコーティングによる方法の他、数種類のコーティング
を重ね合わせる方法があげられる。このことにより、異
なる粗さの紙ヤスリを複数用いた手作業での研磨加工等
の一般的な表面仕上げ手段を採る場合に比べ、より簡単
な作業で高い加工精度が得られ、経済性の点でも有利と
なる。
【0056】また、そのような翼面のコーティングとし
て、タングステンカーバイドやクロムカーバイド等のコ
ーティングを用いることにより、吸入空気中のダスト、
ミストによる摩耗を防止する効果を得ることができる。
衝撃波による発熱が著しい場合には、耐熱層として作用
するセラミックコーティング等の遮熱コーティングを用
いることにより、翼を熱から保護する効果を得ることが
できる。なお、コーティング加工においてマスキングを
併用すると加工がより簡単となる。
【0057】以上の実施の形態において、本発明を軸流
圧縮機に適用する場合について説明したが、本発明はこ
れらに限られるものではなく、超音速域で作動するター
ビン等に適用してもよい。また、翼の背側3aまたは腹
側3bに、所定の表面粗さの粗面領域3e〜3e"を1
つだけ設ける場合について説明したが、条件に応じて、
異なる表面粗さの粗面領域を複数設けるようにしてもよ
い。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、翼
列を構成する翼の翼面上に、通常面領域よりも大きい表
面粗さを有する粗面領域を設けることで、翼面上の流体
摩擦を当該粗面領域において局所的に増大させ、翼面上
の流れの増速を抑えることができる。このことにより、
当該翼面上での衝撃波の発生規模を縮小し、衝撃波によ
る境界層の剥離を抑制することができるので、軸流圧縮
機を限界マッハ数以上で運転する際に生じる損失を減少
させ、軸流圧縮機の性能を向上させることが可能とな
る。また、翼面の表面粗さを変えるだけで上述した効果
が得られ、数値計算や性能試験によって翼型を変更する
必要がなくなるので、経済性や信頼性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る軸流圧縮機の静
翼を円筒断面で示す図。
【図2】図1に示す静翼の翼面粗さ分布図。
【図3】図1に示す静翼の翼面位置と翼面マッハ数との
関係曲線図。
【図4】図1に示す静翼の翼列入口マッハ数と全圧損失
係数の関係曲線図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る軸流圧縮機の静
翼を示した図1と同様の図。
【図6】図5に示す静翼の翼面上粗さ分布図。
【図7】図5に示す静翼の翼列入口マッハ数と全圧損失
係数の関係曲線図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る軸流圧縮機の静
翼の翼面粗さ分布図。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る軸流圧縮機の静
翼の翼面粗さ分布図。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る軸流圧縮機の
静翼の翼面粗さ分布図。
【図11】本発明の第6の実施形態に係る軸流圧縮機の
静翼の翼面粗さ分布図。
【図12】本発明の第7の実施形態に係る軸流圧縮機の
静翼の翼面粗さ分布図。
【図13】本発明の第8の実施形態に係る軸流圧縮機の
静翼の翼面粗さ分布図。
【図14】本発明の第9の実施形態に係る軸流圧縮機の
静翼の翼面粗さ分布図。
【図15】本発明が適用される一般的な軸流圧縮機の部
分横断面図。
【図16】従来の軸流圧縮機の静翼を、図15のA―A
線円筒断面で示す図。
【符号の説明】
1 ケーシング 2 環状流路 3 静翼 3a 背側 3b 腹側 3c 前縁 3d 後縁 3e,3e’,3e" 粗面領域 3f 通常面領域 3g 最大翼厚位置 3h,3h’ 粗さ変化領域 4 動翼 5 ロータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清 水 雅 典 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町4−1 東 京電力株式会社内 (72)発明者 久 保 良 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1 株式会 社東芝研究開発センター内 (72)発明者 平 田 東 彦 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1 株式会 社東芝研究開発センター内 (72)発明者 大 橋 幸 夫 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1 株式会 社東芝研究開発センター内 (72)発明者 福 田 雅 文 東京都港区芝浦一丁目1番1号 株式会社 東芝本社事務所内 Fターム(参考) 3H033 BB03 BB08 BB17 CC01 CC03 DD06 DD25 DD26 DD29 EE08 EE19 3H034 BB03 BB08 BB17 CC01 CC03 DD07 DD22 DD24 DD28 EE08 EE18

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】環状流路を構成するケーシング及びロータ
    と、前記ケーシングの内面に取り付けられた静翼列と、
    前記ロータの外周に取り付けられた動翼列とを備えた軸
    流圧縮機において、 前記静翼列および動翼列のうちの少なくとも1つの翼列
    を構成する翼の翼面を、所定範囲内の表面粗さを有する
    通常面領域と、この通常面領域よりも大きい表面粗さを
    有する粗面領域とで構成したことを特徴とする軸流圧縮
    機。
  2. 【請求項2】前記粗面領域が、翼の最大翼厚位置よりも
    後縁側に設けられていることを特徴とする請求項1記載
    の軸流圧縮機。
  3. 【請求項3】翼の前縁と後縁とを結ぶ翼面長さに対する
    前記粗面領域の長さの比率が、翼の背側と腹側とで等し
    くなるようにしたことを特徴とする請求項1記載の軸流
    圧縮機。
  4. 【請求項4】前記通常面領域の表面粗さが、翼面流れに
    おける粘性底層の厚さよりも小さくなるようにしたこと
    を特徴とする請求項1記載の軸流圧縮機。
  5. 【請求項5】前記通常面領域と前記粗面領域との間に、
    表面粗さが徐々に変化する粗さ変化領域を設けたことを
    特徴とする請求項1記載の軸流圧縮機。
  6. 【請求項6】翼面にコーティングを施すことによって、
    前記通常面領域と前記粗面領域との表面粗さを異ならせ
    たことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の
    軸流圧縮機。
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