JP2000241390A - 中性種の解離を用いる電荷逆転質量分析法 - Google Patents

中性種の解離を用いる電荷逆転質量分析法

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JP2000241390A
JP2000241390A JP11038397A JP3839799A JP2000241390A JP 2000241390 A JP2000241390 A JP 2000241390A JP 11038397 A JP11038397 A JP 11038397A JP 3839799 A JP3839799 A JP 3839799A JP 2000241390 A JP2000241390 A JP 2000241390A
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mass spectrometry
ion
dissociation
spectrum
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Norio Morishita
憲雄 森下
Kazuo Arakawa
和夫 荒川
Shigeo Hayakawa
滋雄 早川
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Japan Atomic Energy Research Institute
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J49/00Particle spectrometers or separator tubes
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    • H01J49/0045Combinations of spectrometers, tandem spectrometers, e.g. MS/MS, MSn characterised by the fragmentation or other specific reaction
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の質量分析法では識別のできなかった異
性体等の物質についても、荷電逆転質量分析法を使用す
ることにより、その識別が可能となる特徴を有する。 【解決手段】 イオン源で異性体の正イオンを発生さ
せ、この正イオンをアルカリ金属ターゲットの満たされ
た衝突室に導入し、アルカリ金属蒸気との衝突により異
性体から解離した負イオン生成させ、電荷逆転によりこ
の負イオンの質量スペクトルを測定して異性体の存在を
検出することにより、従来のCID方では検出できなか
った異性体の検出が可能になった。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来の質量分析法
では識別のできなかった異性体等の物質についても、荷
電逆転質量分析法を使用することにより、その識別が可
能となる特徴を有する。質量分析法は、多くの分析法の
中で物質を構成する分子の質量を決定できると同時にそ
の物質の微量分析ができる点に最大の特徴がある。
【0002】一方、従来の質量分析法では、異性体につ
いての識別能が低いという欠点を持つ。そこで、異性体
の識別能が高い本発明の方法を用いることにより、多く
の微量の物質について、識別・同定・定量が可能とな
り、その利用分野は、クロマトグラフィー法や質量分析
法を用いてきた分析に関する分野である。
【0003】例えば、ダイオキシンでは、塩素原子の置
換位置による異性体の毒性が非常に異なるが、現在それ
らの異性体を分離し定量するには非常に多くの手間がか
かっている。また、医薬品等においても異性体により、
薬効毒性が非常に異なる。そこで、本発明を用いると従
来の方法に比べずっと微量のサンプルから、各異性体の
識別と定量の可能性を有する。
【0004】
【従来の技術】質量分析法において、質量の異なる分子
種は様々なイオン化法を用いて質量スペクトルを測定す
ることにより、その分子量を決定する事がが可能となっ
てきている。また、質量数が同じ分子でも、元素組成等
が異なると電子衝撃スペクトルでその識別が可能であ
る。しかし、質量数が同じで構造の異なる異性体の識別
と構造決定は困難である場合が多い。
【0005】衝突誘起解離(Collision ln
duced Dissociation:CID)法で
は、生成したイオンを希ガス等のターゲットに衝突さ
せ、同じ極性を持つ解離生成したイオンのスペクトルを
測定する事により、一部の分子についてはその異性体の
識別が可能である。しかし、この方法を用いても、異性
体の識別が不可能なまだまだ多くの物質が存在する。質
量分析法の微量分析の能力を保ったまま異性体の識別能
が高い質量分析法が待ち望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】CID法では、生成し
たイオンの解離を用いている。イオンは電荷を持つた
め、電場磁場等の電磁的な方法を利用して分析が可能で
あり、また、検出も容易である。この為、微量分析が可
能である。一方、ラジカルイオンは、中性種と異なり電
子か過不足した状態であり、イオンの異性化の活性化バ
リヤーは中性種のそれに比べて、低いため、異性化が中
性種に比べて非常に起こりやすい。この中性種とは、イ
オンと異なり電気的に中性な粒子の総称であり、原子、
分子、ラジカル、クラスター等を含み、また、粒子が励
起状態にあっても電気的に中性であるならば、それらも
中性種に含まれる。
【0007】また、CID法では、内部エネルギーの異
なる励起状態のイオンが生成し、それらの解離が重なっ
たスペクトルが得られる。従って、微量分析は可能であ
るが、異性体の識別能が低く、ある種の化合物について
は同定が困難となる。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明では、異性化バリ
ヤーの高い状態で解離させる事を目的として、中性種と
して解離が起こるように、入射正イオンとアルカリ金属
のようなイオン化エネルギーの低いターゲットとの1電
子移動反応を用いている。また、本発明では、上記ター
ゲットとの中性化は近共鳴反応として起こるため、反応
確率が高く、また、生成した中性種の励起状態のエネル
ギー分布が狭く、特定の解離が起こりやすい。
【0009】更にまた、本発明では、解離生成した中性
種を上記ターゲットとの再度の1電子移動により負イオ
ンとする。この負イオンを電場磁場等の質量分析法を用
いて分析や定量を行う。この本発明の方法により、従来
の質量分析法に比べて、異性体の識別能が高くなり、ま
た、イオンとして分析と検出を行うため、微量での分析
と定量ができるという質量分析法の利点を保っている。
【0010】本発明は、異性体等の物質をイオン化する
イオン源で正イオンを生成させ、生成した正イオンを電
場又は磁場を使用する質量分析法を用いて質量分析し、
その際に質量分離された正イオンを、例えば、アルカリ
金属蒸気ターゲットで満たされた衝突室に入射し、この
衝突室内で電荷逆転させて負イオンを生成させ、生成し
た負イオンを衝突室から取り出し、衝突室から出た負イ
オンの質量スペクトルを測定して物質の特定及び定量を
行うものである。
【0011】なお、本発明では、物質をイオン化した時
には、物質が壊れずに生成したイオン(通常、親イオン
という)又は物質が壊れて生成した種々のイオン(フラ
グメントイオン)が生成するが、その内の親イオンが物
質の特徴を最も保持しているので、衝突室へはこの親イ
オンを選別して導入しているが、フラグメントイオンも
部分的な物質の構造の特徴を表しているために衝突室に
導入して使用される。
【0012】また、電子衝撃イオン化法では、親イオン
が物質の構造を最も反映しているが、化学イオン化法や
高速中性衝撃法(FAB法)の様な他のイオン化法で
は、電子衝撃法と異なり、分子に水素原子イオンやアル
カリ金属イオンが付いたような擬分子イオンが生成し、
これが物質(分子)の構造を最も反映したイオンとなっ
ている。そこで、本発明においては衝突室へはこの擬分
子イオンも導入して使用することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の電荷逆転質量分析法の概
念は下の様に表される。
【0014】イオン源(正イオンの発生)→正イオンの
質量分離(正イオンは電場や磁場などの質量分析法を用
いて質量分析後に、測定すべき正イオンが質量分離され
る)→アルカリ金属のようなイオン化エネルギーの低い
ターゲットの満たされた衝突室(正イオンが負イオン化
される)→負イオンの質量分析→検出器。
【0015】正イオンを希ガスターゲットに衝突させ解
離生成する正イオンを検出する方法や、負イオンを希ガ
スターゲットに衝突させ解離生成する負イオンを検出す
る方法は、従来から、CID法として利用されてきてい
る。
【0016】本発明の電荷逆転質量分析法を用いると、
CID法等の従来の質量分析法では識別できなかった異
性体を識別できるようになるからである。即ち、下記の
表に示されるように、従来の質量分析法では広い内部エ
ネルギー分布を持つイオンからの解離であり、これに対
し、電荷逆転質量分析法では非常に狭い内部エネルギー
分布を持つ中性種からの解離であるからである。
【0017】 CID法 電荷逆転質量分析法 解離するもの イオン 中性種 内部エネルギー分布 広い 非常に狭い 又、本発明がこの従来の方法と異なる点は、衝突室にア
ルカリ金属のようなイオン化エネルギーの低いターゲッ
トを蒸気として導入する事と入射イオンは正イオンであ
り、検出するのは電荷が異なる負イオンであることであ
る。入射正イオンはイオン源で生成される。本発明の方
法に関わる正イオンを作るイオン化法は、質量分析法で
用いるどの様なイオン化法についても可能である。即
ち、上記の電子衝撃イオン化法、化学イオン化法及び高
速中性衝撃法等のイオン化法が使用できる。生成した正
イオンは電場や磁場などの質量分析法を用いて質量分析
する。質量分離された正イオンはアルカリ金属等の蒸気
で満たされた衝突室に入射する。
【0018】この衝突室内での負イオン生成過程として
は2つある。一方は、アルカリ金属等の蒸気の密度に1
次の比例をする1回衝突2重電子移動過程である。通常
この過程は解離を伴わず、負イオン生成断面積も小さ
い。もう一方は、アルカリ金属等の蒸気の密度に2次の
比例をする2回衝突連続1電子移動過程である。この過
程では近共鳴電子により励起の中性種が生成し、その励
起中性種が中性の解離断片へと解離し、中性の解離断片
が他のアルカリ金属等と衝突し、再度の1電子移動によ
り負イオンとなる。この過程では、中性化の後に解離が
おこり、異性体正イオンにより、またアルカリ金属等の
ターゲット蒸気の種類により解離のパターンが異なる。
この負イオンが衝突室を出る。衝突室から出た負イオン
は、質量分析された後、検出される。以上の様な方法
で、生成した負イオンの質量分析により電荷逆転スペク
トルが得られる。
【0019】上記1次の比例をする1回衝突2重電子移
動過程と2次の比例をする2回衝突連続1電子移動過程
との相違は、質量分析装置が飛行しているイオン(中性
種)とターゲットとの電子移動は衝突によって引き起こ
される。1回の衝突で2個の電子が1度に移る衝突を
『 1回衝突2重電子移動過程』といい、この過程で
は、1回の衝突で負イオンができるので、アルカリ金属
等の蒸気の圧力に1次比例します。
【0020】一方、正イオンがターゲットとの1回の衝
突で1個の電子が移動して中性種となり、その中性種
(実際には、その中性種から解離した中性種)が別のタ
ーゲットと衝突し、再度1個の電子が移動して負イオン
となる過程を『2回衝突連続1電子移動過程』という。
この過程では、ターゲットと2回衝突するので、アルカ
リ金属等の蒸気の圧力に2次に比例し、中性種から中性
種への解離が本発明の異性体識別能を有している。
【0021】下記の実施例では1つの衝突室を用いてい
るが、2回衝突過程も用いているので、2つの衝突室を
用いた電荷逆転質量分析法も考えられる。又、その2つ
の衝突室に異なったターゲットを用いることも可能であ
る。
【0022】この電荷逆転質量分析法では、入射イオン
として正イオンを、検出するイオンとして負イオンを分
析するが、装置として測定条件を設定するためには.第
二の分析用質量分析器で正イオンとして分析できるよう
になっている。負イオンの分析も電場や磁場の極性が異
なる点を除き正イオンの分析と同様である。後に述べる
実施例では実験では正イオンと負イオンの分析を電場や
磁場を用いるセクター型で分析しているが、四重極型や
イオントラップ型などの従来から使用されている全ての
質量分析法が利用可能である。
【0023】このアルカリ金属等の蒸気の密度をコント
ロールする事が重要である。アルカリ金属等の蒸気の密
度が低すぎると正イオンに対し負イオンの強度か弱く充
分な負イオン強度のスペクトルか得られない。また、密
度が高すぎても入射イオンや生成負イオンが多重回衝突
により散乱され減衰し、良いスペクトルが得られない。
以下の実施例ではアルカリ金属のCsやKをターゲット
とした結果を示しているが、イオン化エネルギーの低い
物質であればLi、NaやRb等でも同様な結果が得ら
れる。
【0024】
【実施例1】(オルト、メタ、パラのジクロロベンゼン
の異性体識別)オルト、メタ、パラのジクロロベンゼン
は、電子衝撃イオン化法や衝突誘起解離では同じスペク
トルを与え、それらの異性体の識別は不可能である。本
発明の電荷逆転質量分析法では異性体による明確な相違
が見いだされる。
【0025】図1に電子衝撃スペクトル、図2と図3
に、それぞれ、Csターゲットを用いたCIDスペクト
ルと電荷逆転スペクトルを示す。また、図4と図5にそ
れぞれK(カリウム)ターゲットを用いたCIDスペク
トルと電荷逆転スペクトルを示す。
【0026】図1に示されるように、電子衝撃スペクト
ルではオルト、メタ、パラのジクロロベンゼンの相違は
見いだされない。図2のCsターゲットでのCIDスペ
クトルではメタジクロロベンゼンのみ質量(m/z)5
0のピークに若干の強度差が見られるが、図4のKター
ゲットでのCIDスペクトルでは相違は見いだされな
い。
【0027】これに比べ、図3と図5の電荷逆転スペク
トルでは、CsとKのいずれのターゲットでもオルト、
メタ、パラのジクロロベンゼンの相違が一見して明確で
ある。このように、電荷逆転スペクトルでは、電子衝撃
スペクトル、CIDスペクトルでは違いがほとんど検出
されない異性体についても、明確な識別が可能である。
【0028】オルト、メタ、パラのジクロロベンゼン
は、ベンゼン環の塩素原子の置換位置のよる異性体であ
る。オルト、メタ、パラのジクロロベンゼンについての
電荷逆転質量スペクトルにおける明確な相違は、ダイオ
キシン等の異性体についての質量分析法による、微量で
の分析と定量の可能性を示している。
【0029】
【実施例2】(部分重水素化したCD3OH+とCH3
+イオンを用いて明確にしたCID法によるイオンの
解離と電荷逆転質量分析法による中性種の解離の相違)
CD3OH+のCIDスペクトルと電荷逆転スペクトルを
それぞれ図6に、CH3OD+のCIDスペクトルと電荷
逆転スペクトルをそれぞれ図7に示す。CH3OH+イオ
ンはCIDスペクトルでも電荷逆転スペクトルでも、水
素原子が1つ脱離した質量数31のピークが圧倒的で、
他のピークは非常に弱い。
【0030】図6に示すように、CH3OH+イオンのメ
チル基の水素原子を重水素置換したCD3OH+イオンに
於いて、CIDスペクトルでは質量数が2減少したCD
2OH+イオンのみが観測され、質量数が1だけ減少した
CD3+イオンはほとんど観測されない。一方、電荷逆
転スペクトルでは、賀量数が1だけけ減少した、CD3
-イオンのみが観測され、質量数が2減少したCD2
-イオンはほとんど観測されない。
【0031】また、図7に示すように、CH3OH+イオ
ンの水酸基の水素原子を重水素置換したCH3OD+イオ
ンのスペクトルでは、CIDスペクトルでは質量数が1
だけ減少したCH2OD+イオンのみが観測され、質量数
が2減少した、CH3+イオンはほとんど観測されな
い。一方、電荷逆転スペクトルでは、質量数が2減少し
たCH3-イオンのみが観測され、質量数が1減少した
CH2OD-イオンはほとんど観測されない。
【0032】この結果は、CIDスペクトルのイオンの
解離では、メチル基側の水素原子が脱離し、一方、電荷
逆転スペクトルの中性種の解離では水酸基側の水素原子
が脱雛する事を明確に示している。この事を逆に考える
と、CIDスペクトルではラジカルカチオンからの解離
が検出されるが、電荷逆転スペクトルでは中性分子から
の解離が観測される事を意味している。
【0033】中性分子は通常電子的に閉殻であり、開殻
のラジカルカチオンにくらべてその異性化バリヤーは高
い。電荷逆転質量分析法では、イオンの場合よりも異性
化がより起こりにくい中性分子の解離を用いているた
め、その異性体識別能が高いことが理解できる。
【0034】この実施例2の結果は、CIDスペクトル
のイオンの解離ではメチル基側の水素原子が脱離し、一
方電荷逆転スペクトルの中性種解離では水酸基側の水素
原子が脱離することを明確に示している。これは、CI
Dスペクトルではラジカルカチオンからの解離が検出さ
れるが、電荷逆転スペクトルでは中性分子からの解離が
観測されることを意味している。中性分子は通常電子的
に閉殻であり、閉殻のラジカルカチオンに比べてその異
性化バリヤーは高い。そこで、電荷逆転質量分析法で
は、イオンの場合よりも異性化がより起こりにくい中性
分子の解離を用いているため、その異性体識別能が高い
ことになる(これが実施例1に示されるような異性体識
別能を与えている)。
【0035】
【実施例3】(温度計分子イオンW(CO)n +(n=4
−6)を用いた内部エネルギー分布の測定)W(CO)
6の様な化合物は、温度計分子と呼ばれ、電子衝撃スペ
クトル、CIDスペクトル及び表面誘起解離(SID)
スペクトルで生成されるイオンの内部エネルギー分布の
測定に用いられてきた。W(CO)6の電子衝撃で生成
されるW(CO)n +(n=4−6)のCsをターゲット
としたときのCIDスペクトルと電荷逆転スペクトルを
測定し、CIDと電荷逆転での内部エネルギー分布を求
めた。
【0036】W(CO)6 +のCIDスペクトルにおける
内部エネルギー分布を図8aに示す。また、図8aには
ArターゲットによるCIOスペクトルから得られた文
献値を重ねた。図8bにW(CO)n +(n=4−6)に
ついての電荷逆転スペクトルにおける内部エネルギー分
布を示した。
【0037】CIDにおける内部エネルギー分布はター
ゲットをArとしたときの文献値と一致し、広いエネル
ギー分布を示し、低いエネルギーから高いエネルギーへ
とその強度は減少する。この事は、CID法に於いて
は、内部エネルギーの異なる種々な解離機構による寄与
がスペクトル上に重なっている事を意味する。
【0038】これに対し、電荷逆転質量分析法における
内部エネルギー分布は、入射イオンのエネルギーレベル
より、Csのイオン化エネルギー3.89eVだけ下が
った位置に集中しており、そのエネルギー巾も半値巾と
して約2eVと非常に狭い。
【0039】この事は、電荷逆転質量分析法に於いて
は、中性化が近共鳴でおこり、その中性化で生成した励
起中性種が解離していることが明らかとなった。その
為、CID法と比べ、エネルギー分布が狭く一定の解離
反応だけが起こるため異性体の識別能が高いことが明確
となった。
【0040】即ち、CID法では、内部エネルギーの異
なる種々な解離機構による寄与がスペクトル上に重なっ
ていることを示している。これに対し、電荷逆転質量分
析法における内部エネルギー分布は、入射イオンのエネ
ルギーレベルより、Csのイオン化エネルギー3.89
eVだけ下がった位置に集中しており、そのエネルギー
巾も半値巾として約2eVと非常に狭い。したがって、
電荷逆転質量分析法においては、中性化が近共鳴で起こ
り、その中性化で生成した励起中性種が解離しているこ
とがあきらかとなった。このためにCID法と比べてエ
ネルギー分布が狭く一定の解離反応が起こるために異性
体の識別能が高いことが明確となった(これが実施例1
に示されるような異性体識別能を与えている)。
【0041】
【発明の効果】本発明の中性種の解離を用いる電荷逆転
質量分析法は、本発明に特有の顕著な次の効果を有する
ものである。
【0042】(1) CID法と比べ、エネルギー分布
が狭く一定の解離反応だけが起こるため異性体の識別能
が高いことが明確となった。
【0043】(2) 本発明を用いると従来の方法に比
べずっと微量のサンプルから、各異性体の識別と定量の
可能性を有する。
【0044】(3) 質量分析法の微量分析の能力を保
ったまま異性体の識別能が高い質量分析法である。
【0045】(4) ダイオキシン等の異性体について
の質量分析法による、微量での分析と定量の可能性を示
している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 オルト、メタ、パラ、ジクロロベンゼンの電
子衝撃スペクトルを示す図である。
【図2】 オルト、メタ、パラ、ジクロロベンゼンのC
sターゲットでのCIDスペクトルを示す図である。
【図3】 オルト、メタ、パラ、ジクロロベンゼンのC
sターゲットでの電荷逆転スペクトルを示す図である。
【図4】 オルト、メタ、パラ、ジクロロベンゼンのK
ターゲットでのCIDスペクトルを示す図である。
【図5】オルト、メタ、パラ、ジクロロベンゼンのKタ
ーゲットでの電荷逆転スペクトル。
【図6】 CD3OH+のCIDスペクトルと電荷逆転ス
ペクトルを示す図である。
【図7】 CH3OD+のCIDスペクトルと電荷逆転ス
ペクトルを示す図である。
【図8】 CIOスペクトルと電荷逆転スペクトルにお
ける内部エネルギー分布を示す図である。(a:W(C
O)6 +を用いたCIDにおける内部エネルギー分布、
b:W(CO)n +(n=4−6)を用いた電荷逆転質量
分析法における内部エネルギー分布)。
フロントページの続き (72)発明者 荒川 和夫 群馬県高崎市綿貫町1233番地 日本原子力 研究所高崎研究所内 (72)発明者 早川 滋雄 大阪府河内長野市あかしあ台1丁目1番5 号 Fターム(参考) 5C038 GG02 GH06 GH09 HH02 HH28

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量分析法において、親イオン、フラグ
    メントイオン又は擬分子イオンからなる正イオンをアル
    カリ金属の様なイオン化エネルギーの低いターゲット中
    に入射して生成する中性種を経て生成される負イオンの
    質量スペクトルを測定する事により、物質を特定したり
    定量したりする中性種の解離を用いる電荷逆転質量分析
    方法。
  2. 【請求項2】 物質をイオン化するイオン源で前記正イ
    オンを生成させ、生成した正イオンを電場又は磁場を使
    用する質量分析法を用いて質量分析し、その際に質量分
    離された正イオンを前記ターゲットで満たされた衝突室
    に入射して励起中性種を生成し、これを中性解離断片へ
    と解離し、この断片を他のターゲットと衝突させて衝突
    室内で電荷逆転させて負イオンを生成させ、生成した負
    イオンを衝突室から取り出し、衝突室から出た負イオン
    の質量スペクトルを測定する請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 衝突室内での正イオンからの前記負イオ
    ンの生成過程として、前記ターゲットの密度に2次の比
    例をする2回衝突連続1電子移動過程における近共鳴電
    子により励起の中性種を生成し、その励起中性種を中性
    の解離断片へと解離し、中性の解離断片を他の金属蒸気
    と衝突させ、再度の1電子移動により負イオンを形成さ
    せる請求項2に記載の方法。
JP11038397A 1999-02-17 1999-02-17 中性種の解離を用いる電荷逆転質量分析法 Pending JP2000241390A (ja)

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