JP2000202681A - ろう付け性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 とくに、フッ化物系フラックスを用いるろう
付けに際し、ろう付け性に優れ、ろう付け後の熱伝導
性、強度特性および犠牲陽極効果の良好な熱交換器用ア
ルミニウム合金フィン材を提供する。 【解決手段】 Ｍｎ:0.5〜2.0 ％、Ｓｉ:0.1〜1.0 ％、
Ｆｅ:0.1〜0.7 ％、Ｚｎ:0.5〜4.0 ％、さらに、Ｚｒ:
0.06 〜0.3 ％、Ｃｒ:0.06 〜0.3 ％のうちの１種また
は２種を含み、不純物としてのＭｇを0.04％以下に規制
し、残部Ａｌと不可避的不純物からなるアルミニウム合
金を心材とし、Ｓｉ:6〜14％、Ｆｅ :0.06〜0.7 ％を含
有し、Ｍｇ:0.04 ％以下、Ｃａ:0.006％以下に規制し、
残部Ａｌと不可避的不純物からなるアルミニウム合金ろ
う材を皮材として構成される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ろう付け性に優れた熱
交換器用アルミニウム合金フィン材、詳しくは、カーエ
アコン、ラジエータ、カーヒータなどのように、フィン
と作動流体通路構成材料とがろう付けにより接合される
熱交換器に用いられるアルミニウム合金フィン材、とく
に不活性ガス雰囲気中でフッ化物系フラックスを用いる
ろう付けにおいて、ろう付け性に優れ、且つ犠牲陽極効
果にも優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材に関
する。

【０００２】

【従来の技術】自動車のエアコン、ラジエータ、インタ
ークーラ、オイルクーラなどの熱交換器は、Ａｌ−Ｃｕ
系合金、Ａｌ−Ｍｎ系合金、Ａｌ−Ｍｎ−Ｃｕ系合金な
どからなる作動流体構成材料と、Ａｌ−Ｍｎ系合金フィ
ン材とをろう付けすることにより組み立てられている。
フィン材には、作動流体構成材料を防食するために犠牲
陽極効果が要求されるとともに、ろう付け時の高温加熱
により変形したり、ろうが浸透したりしないように優れ
た耐高温座屈性が要求される。また、フィンと作動流体
構成材料とのろう付けには、無公害、低コストの観点か
ら、フッ化物系フラックスを用いる不活性ガス雰囲気ろ
う付けを適用する場合が多いから、この場合のろう付け
性に優れていることも重要な要件となる。

【０００３】従来、クラッドフィン材としては、Ａｌ−
Ｍｎ系合金にＣｕ、Ｍｇ、Ｚｎ、Ｓｎ、Ｉｎなどを添加
したアルミニウム合金の心材の両面に、Ａｌ−Ｓｉ系合
金からなるろう材、例えば、ＪＩＳＢＡ４３４３合金、
同４０４５合金などをクラッドした材料が用いられてい
る。

【０００４】近年、熱交換器の軽量化、コスト低減がま
すます強く要求され、作動流体通路材料、フィン材など
の熱交換器構成材料をさらに薄肉化することが必要とな
ってきているが、例えば、フィン材を薄肉化すると伝熱
断面積が小さくなるために熱交換性能が低下し、製品と
しての熱交換器の強度、耐久性にも問題が生じるところ
から、伝熱性能とろう付け後の強度の一層の改善が望ま
れている。また、フィン材を薄肉化するとろう付け時の
高温加熱により座屈が発生しやすくなるため、耐高温座
屈性をさらに改善することも望まれている。

【０００５】従来のＡｌ−Ｍｎ系合金では、Ｍn がろう
付け時の変形やろうの浸食を防ぐために有効に作用する
が、ろう付け時の加熱によりＭｎが固溶するため、熱伝
導度が低下するという問題点がある。この難点を解決す
るフィン材として、Ｍｎ含有量を少なくしたアルミニウ
ム合金フィン材が提案されている（特公昭６３−２３２
６０号公報）が、このフィン材は、ろう付け後の強度が
十分でなく、熱交換器として使用中にフィン倒れや変形
が生じやすくなるという難点がある．

【０００６】ろう付け後の強度を改善し、熱伝導性や犠
牲陽極効果も向上させたフィン材として、Ａｌ−Ｍｎ−
Ｓｉ−Ｍｇ−Ｆｅ系合金にＩｎ、ＺｎやＧａ、Ｓｎなど
を添加したアルミニウム合金も提案されており（特開平
４−１２８３３７号公報、特開平３−２０４３６号公
報）、ある程度の薄肉化は可能であるが、フィン材に対
する最近の薄肉化の要求を十分満足させるまでには至っ
ていない。

【０００７】また、近年、アルミニウム熱交換器のろう
付け接合においては、無公害、低コストの観点から、フ
ッ化物系フラックスを用いるろう付けが注目され、普及
しているが、フッ化物系フラックスを適用するろう付け
接合においては、Ｍｇを含有するアルミニウム合金材を
使用した場合、ろう付け性が劣るため、フィン接合率が
低下し、熱交換器としての伝熱特性および耐久性に問題
が生じるという問題点がある。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、熱交換器用
アルミニウム合金フィン材に対する上記従来の問題点を
解消して、薄肉化の要求を満足させ、且つろう付け性と
くにフッ化物系フラックスを用いるろう付けにおけるろ
う付け性にも優れたアルミニウム合金フィン材を得るた
めに、ろう付け性、強度特性および犠牲陽極効果に対す
る合金成分の影響、合金成分の組合せの効果について、
多角的に実験、検討を行った結果としてなされたもので
あり、その目的は、ろう付け加熱時の耐高温座屈性に優
れ、ろう付け後において高い強度を有し、犠牲陽極効果
に優れ、ろう付け性とくにフッ化物系フラックスを用い
るろう付けにおけるろう付け性に優れた熱交換器用アル
ミニウム合金フィン材を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明の請求項１によるろう付け性に優れた熱交換
器用アルミニウム合金フィン材は、Ｍｎ:0.5〜2.0 ％、
Ｓｉ:0.1〜1.0 ％、Ｆｅ:0.1〜0.7 ％、Ｚｎ0.5 〜4.0
％を含有し、さらに、Ｚｒ0.06〜0.3 ％、Ｃｒ:0.06 〜
0.3 ％のうちの１種または２種を含み、不純物としての
Ｍｇを0.04％以下に規制し、残部Ａｌと不可避的不純物
からなるアルミニウム合金を心材とし、Ｓｉ:6〜 14
％、Ｆｅ:0.06 〜0.7 ％を含有し、Ｍｇ:0.04 ％以下に
規制し、Ｃａ:0.006％以下に規制し、残部Ａｌと不可避
的不純物からなるアルミニウム合金ろう材を皮材として
構成されたことを特徴とする。

【００１０】請求項２によるアルミニウム合金フィン材
は、請求項１において、ろう材が、さらにＢｉ:0.01 〜
0.4 ％を含有することを特徴とし、請求項３によるアル
ミニウム合金フィン材は、請求項１〜２において、ろう
材が、さらにＺｎ:0.5〜4.0％を含有することを特徴と
し、請求項４によるアルミニウム合金フィン材は、請求
項１〜３において、心材が、さらにＣｕ:0.05 〜0.3 ％
を含有することを特徴とする。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明のろう付け性に優れた熱交
換器用アルミニウム合金フィン材における合金成分の意
義および限定理由について説明すると以下のとおりであ
る。

【００１２】〈心材合金〉Ｍｎは、強度を高める効果を
有する。好ましい有範囲は0.5 〜2.0 ％であり、含有量
が0.5 ％未満では効果が十分でなく、2.0 ％を越えると
鋳造時に粗大な化合物が生成し、素材の圧延加工が困難
となり健全な材料が得られない。

【００１３】Ｓｉは、強度を高める効果を有する。好ま
しい含有量は0.1 〜1.0 ％の範囲であり、含有量が0.1
％未満では効果が十分でなく、1.0 ％を越えるとろう付
け時に心材の溶融が生じる恐れがある。

【００１４】Ｆｅは、強度を高める効果を有する。好ま
しい含有量は0.1 〜0.7 ％の範囲であり、含有量が0.1
％未満では効果が十分でなく、0.7 ％を越えると材料の
自己耐食性が劣化する。

【００１５】Ｍｇは、フッ化物系フラックスろう付けの
場合、フラックスの成分であるフッ素（Ｆ）と合金中の
Ｍｇとが反応してＭｇＦ₂ などの化合物が生成するた
め、フラックスの絶対量が不足してろう付け性が低下す
る。Ｍｇの含有量が0.04％を越えると、ろう付け性を低
下させる効果が顕著となる。従って、Ｍｇの含有量は0.
04％以下に規制する必要がある。より好ましい含有量は
0.02％以下とする。

【００１６】Ｚｎは、フィン材の電位を卑にし、犠牲陽
極効果を与える。Ｚｎの好ましい含有量は0.5 〜4.0 ％
の範囲であり、Ｚｎの含有量が0.5 ％未満では効果が十
分でなく、4.0 ％を越えると材料の自己耐食性が劣化し
腐食消耗が著しく、犠牲陽極効果が長期に持続されな
い。

【００１７】ＺｒおよびＣｒは、それぞれフィン材の耐
高温座屈性の向上に有効に作用する。それぞれの含有量
が0.06％未満では効果が十分でなく、0.3 ％を越えると
鋳造時に粗大な化合物が生成し、素材の圧延加工が困難
となり健全な材料が得られない。従って、ＺｒおよびＣ
ｒの含有範囲はそれぞれ0.06〜0.3 ％とするのが好まし
い。

【００１８】Ｃｕは、フィン材の強度を向上させる効果
を有する。好ましい含有量は0.05〜0.3 ％の範囲であ
り、含有量が0.05％未満では効果が十分でなく、0.3 ％
を越えるとフィン材の電位を貴にし、犠牲陽極効果を損
ねる恐れがある。

【００１９】その他の元素としては、Ｉｎ、Ｓｎ、Ｇａ
などは、犠牲陽極フィン材として電位を卑にする目的で
添加してもよいが、それぞれ0.1 ％以下にするのが好ま
しい。

【００２０】〈皮材合金〉Ｓｉは、ろう材の融点を下
げ、溶融ろうの流動性を高める効果を有する。Ｓｉの含
有量が6 ％未満ではその効果が十分でなく、14％を越え
て含有すると、ろう材の融点が高くなり、ろう材製造時
の加工性が低下する。従って、Ｓｉの含有範囲は6 〜14
％とするのが好ましい。

【００２１】Ｆｅは、ろう材の溶融・凝固後の組織を微
細化し、溶融ろうの流動性を高める効果を有する。好ま
しい含有量は0.06〜0.7 ％の範囲であり、含有量が0.06
％未満ではその効果が十分でなく、0.7 ％を越えて含有
してもその効果が飽和するとともに、ろう付け後のフィ
ンの自己耐食性が低下する。

【００２２】Ｍｇは、フッ化物系フラックスろう付けの
場合、ろう付け加熱過程においてフィレット表面に濃縮
しやすいため、フラックスの成分であるフッ素（Ｆ）と
合金中のＭｇとが反応してＭｇＦ₂ などの化合物が生成
するため、フラックスの絶対量が不足してろう付け性が
低下する。従って、Ｍｇの含有量は0.04％以下に規制す
る必要がある。より好ましくは0.02％以下に規制する。

【００２３】Ｃａは、ろう材表面に緻密な酸化物を形成
するため、溶融ろうの濡れ性および拡がり性が低下し
て、ろう付け性が低下する。Ｃａの含有量が0.006 ％を
越えると、ろう付け性を低下させる効果が顕著となる。
従って、Ｃａの含有量は0.006％以下に規制する必要が
ある。より好ましくは0.004 ％以下に規制する。

【００２４】Ｂｉは、ろう材の融点を下げ、溶融ろうの
濡れ性および流動性を改善する効果を有する。好ましい
Ｂｉの含有範囲は0.01〜0.4 ％であり、0.01％未満では
その効果が十分でなく、0.4 ％を越えて含有してもその
効果が飽和するとともに、ろう材の自己耐食性が低下す
る。より好ましい含有範囲は0.1 〜0.4 ％である。

【００２５】Ｚｎは、ろう材合金に添加することによ
り、ろう材の電位を卑にし、フィン材に犠牲陽極効果を
与える。好ましい含有範囲は0.5 〜4.0 ％であり、0.5
％未満では効果が十分でなく、4.0 ％を越えるとフィン
材の自己耐食性が劣化し腐食消耗が著しく、犠牲陽極効
果が長期に持続されない。

【００２６】本発明の皮材には、その他の元素として、
ろう付け性を改善するために、少量、例えば、0.1 ％以
下のＢｅ、Ｓｒ、Ｌｉ、Ｎａのうち１種または２種以上
を含有させてもよい。また、Ｉｎ、Ｓｎ、Ｇａなどの元
素を、ろう材の電位を卑にする目的で１種または２種以
上を添加してもよいが、それぞれ0.1 ％以下にするのが
好ましい。また、Ｍｎ、Ｃｕ、Ｔｉ、Ｃｒ、Ｚｒ、Ｎｉ
などの元素が、ろう材の強度を向上させるためなどの目
的で、本発明の効果を損なわない範囲で少量含まれても
よい。ただし、それらの添加量が多くなるとろう材の自
己耐食性が低下するため、添加元素の総量は1 ％以下に
抑えるのが好ましい。

【００２７】本発明の構成によれば、心材中のＭｎ、Ｓ
ｉ、ＦｅおよびＣｕの含有によりろう付け後の強度を高
め、また、Ｚｎを含有させることにより材料の電位を卑
にし、さらに、ＺｒあるいはＣｒを含有させることによ
り耐高温座屈性を向上し、これら合金元素の相互作用に
より、ろう付け後の強度を高め、犠牲陽極効果を優れた
ものとする。また、Ｍｇ含有量を制限することにより、
Ｍｇとフラックスの反応を防ぎ、ろう付けにおいて有効
に作用するフラックスの割合を増やしてフィン接合率を
向上させ、伝熱性能、耐久性の優れた熱交換器とするこ
とができる。

【００２８】また、皮材を構成するろう材としてＳｉ、
Ｆｅ、Ｂｉの含有量の組合せを調整し、また、不純物と
してのＭｇ、Ｃａの含有量を制限することによって、溶
融ろうの濡れ性、拡がり性および流動性を高めるととも
に製造時の加工性を確保し、ろう付け性および耐食性に
優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材とすること
ができる。さらに、ろう材中へのＺｎの添加量を調整す
ることによって、ろう材に犠牲陽極効果を発揮させてフ
ィン材の犠牲陽極効果をさらに向上させることができ
る。

【００２９】本発明のアルミニウム合金クラッドフィン
材は、通常の溶解、鋳造方式に従って鋳塊とし、均質化
処理後、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍および冷間圧延
を経て製造され、通常厚さ0.2 ｍｍ以下の板材とする。
この板材は、所定幅にスリッティングした後、コルゲー
ト加工してＡｌ−Ｍｎ系合金などからなる作動流体通路
用材料（押出扁平多穴管など）と交互に積層し、ろう付
けすることにより熱交換器ユニットとする。

【００３０】

【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明する。 実施例１ 表１に示す組成の心材用アルミニウム合金を溶解、連続
鋳造し、均質化処理後の鋳塊を厚さ24ｍｍに面削して心
材素材とした。一方、表２に示す組成のろう材合金を同
様に鋳造、面削し、熱間圧延を行い、厚さ3.0 ｍｍの皮
材とした。この皮材を心材の両面に重ね合わせ、熱間圧
延を行って厚さ3 ｍｍのクラッド材を得た。その後、冷
間圧延、中間焼鈍および仕上げ冷間圧延を行って厚さ0.
12ｍｍののクラッドフィン材（調質：Ｈ14）とした。

【００３１】

【表１】

【００３２】

【表２】

【００３３】次に、得られたフィン材について、フッ化
物系フラックスを使用するろう付けにおけるろう付け条
件と同様、フッ化物系フラックス（濃度1 ％）を塗布し
た後、窒素ガス雰囲気中で600 ℃で5 分間の加熱を行
い、それぞれの加熱後の試験材について引張試験を行っ
た。また、ろう付け加熱処理後のフィン材の犠牲陽極効
果を評価するために、ｐＨ 3に調整した3 ％ＮａＣｌ水
溶液中に8 時間浸漬した後、自然電極電位を測定した。

【００３４】また、フィン材にコルゲート加工を施し、
コルゲートフィン材とＪＩＳＡ１０５０の押出扁平多穴
管（外周肉厚0.4 ｍｍ）とを組み付けて、ミニコア（熱
交換器コアのミニチュアモデル）を作成した。ミニコア
のろう付けは、前記ろう付け条件と同様、フッ化物系フ
ラックス（濃度1 ％）を塗布した後、窒素ガス雰囲気中
で600 ℃で5 分間の加熱を行った。

【００３５】その後、前記ろう付け加熱後のミニコアに
ついて、コルゲートフィン材と押出扁平多穴管がろう付
け接合している割合を調べ、フィン接合率からろう付け
性を評価した。フィン接合率が高いほど溶融ろうの流動
性が良好で、ろう付け性に優れていることを示す。な
お、通常の自動車用熱交換器用フィン材のろう付けで
は、フィン接合率が70％以下の場合に、熱交換器として
の性能の劣化が著しく、また、フィン材未接合により耐
久性も劣化するため、ミニコアのろう付け性試験でフィ
ン接合率が70％以下のフィン材をろう付け性不充分と評
価した。また、ろう付け前後におけるフィン山高さの変
化率を測定し、フィン材の耐高温座屈性を評価した。

【００３６】耐食性の評価については、前記ろう付け加
熱後のミニコアについて、ＣＡＳＳ試験をＪＩＳＨ８６
８１に基づいて２週間実施し、試験後の押出扁平多穴管
の最大腐食深さを測定した。さらに、腐食試験後のフィ
ン材の腐食状況を調査し、腐食による消耗が著しいフィ
ン材（フィン材の50％以上が腐食によって消耗した試験
材）を、フィン腐食消耗大として自己耐食性不充分と評
価した。試験、測定、評価結果を表３および表４に示
す。

【００３７】表３〜４に示されるように、本発明の条件
を満たすフィン材No.1〜24は、いずれもフィン接合率が
85％以上の優れたろう付け性を示した。また、本発明フ
ィン材の自然電極電位は-830 mV vs SCE以下と卑であ
り、ＣＡＳＳ試験後の押出扁平多穴管の最大腐食深さは
0.12〜0.20ｍｍと浅く、フィン材の犠牲陽極効果が優れ
ていることを示した。また、本発明のフィン材はＣＡＳ
Ｓ試験後の腐食消耗も少なく、良好な自己耐食性を示し
た。また、本発明フィン材のろう付け後に相当する引張
強さ（以下、単に引張強さ）は、いずれも118 ＭＰａ以
上の優れた強度を示した。なお、本発明フィン材は、い
ずれも素材の製造性に問題はなく、良好な加工性を示し
た。

【００３８】

【表３】 《表注》耐高温座屈性の評価基準：ろう付け前後のフィン山高さの変化率が５％ 以下は○

【００３９】

【表４】

【００４０】比較例１ 表５に示す組成の心材用アルミニウム合金を溶解、連続
鋳造し、均質化処理後の鋳塊を厚さ24ｍｍに面削して心
材素材とした。一方、表６に示す組成のろう材合金を同
様に鋳造、面削し、熱間圧延を行い、厚さ3.0 ｍｍの皮
材とした。この皮材を心材の両面に重ね合わせ、熱間圧
延を行って厚さ3 ｍｍのクラッド材を得た。その後、冷
間圧延、中間焼鈍および仕上げ冷間圧延を行って厚さ0.
12ｍｍののクラッドフィン材（調質：Ｈ14）とした。

【００４１】得られたフィン材について、実施例１と同
一の方法により、ろう付け加熱処理後の引張強さ、自然
電極電位を測定し、フィン接合率、耐高温座屈性を評価
し、また、ＣＡＳＳ試験後の押出偏平多穴管の最大腐食
深さを測定し、フィン材の腐食状況を調査した。結果を
表７および表８に示す。

【００４２】

【表５】

【００４３】

【表６】

【００４４】

【表７】 《表注》耐高温座屈性の評価基準：ろう付け前後のフィン山高さの変化率が５％ 以下は○、変化率が５％を越えた場合および座屈が生じた場合は× 備考：※はフィン腐食消耗大

【００４５】

【表８】

【００４６】本発明の条件を満たさないフィン材No.25
〜47は、表７〜８に示されるように、いずれも熱交換器
用フィン材として十分な性能を有しない。すなわち、フ
ィン材No.25 、27および29は、それぞれ心材のＭｎ、Ｓ
ｉおよびＦｅの含有量が少ないため、引張強さが低い。

【００４７】フィン材No.26 、35および37は、それぞれ
心材のＭｎ、ＣｒおよびＺｒの含有量が多いため、素材
の圧延が困難となり、健全な材料が製造できなかった。
フィン材No.28 は、心材のＳｉ含有量が多いため、ろう
付け時の加熱において局部溶融が生じ、フィン材に座屈
が発生した。

【００４８】フィン材No.30 は、心材のＦｅの含有量が
多いため、フィン材の自己腐食が激しく、ＣＡＳＳ試験
後のフィン材の腐食消耗が顕著となり、フィン材の犠牲
陽極効果が長時間持続されない。フィン材No.31 とNo.3
3 は、心材のＺｎ含有量が少ないため、自然電極電位が
貴となり、ＣＡＳＳ試験後の押出扁平多穴管に貫通孔が
発生し、フィン材の犠牲陽極効果が劣る。

【００４９】フィン材No.32 は、心材のＺｎ含有量が多
いため、自然電極電位が著しく卑で、フィン材の自己腐
食が激しく、ＣＡＳＳ試験後のフィン材の腐食消耗が顕
著となり、フィン材の犠牲陽極効果が長時間持続されな
い。No.33 は、心材のＭｇの含有量が多いため、十分な
フィレットが形成されず、フィン接合率が低くろう付け
性が劣り、熱交換器に組み込んだ場合、熱交換器の伝熱
特性が低下する。

【００５０】フィン材No.33 、34および36は、それぞれ
心材のＣｒあるいはＺｒの含有量が少ないため、耐高温
座屈性が劣り、ろう付け加熱時にフィン材に座屈が生じ
た。フィン材No.38 は、心材のＣｕの含有量が少ないた
め、Ｃｕを含有する発明例に比べて、引張強さが低い。
No.39 は、心材のＣｕ含有量が多いため、自然電極電位
が貴であり、ＣＡＳＳ試験後の押出扁平多穴管に貫通孔
が発生し、フィン材の犠牲陽極効果が劣る。

【００５１】フィン材No.40 は、ろう材のＳｉの含有量
が少ないため、フィン材が全く接合されず（フィン接合
率０％）、ろう付け性が劣る。No.41 は、ろう材のＳｉ
の含有量が多いため、素材の製造時の圧延加工性が十分
でなく、健全な材料が得られなかった。No.42 は、ろう
材のＦｅの含有量が少ないため、十分なフィレットが形
成されず、フィン接合率が低くろう付け性が劣り、熱交
換器に組み込んだ場合、熱交換器の伝熱特性を低下させ
る。

【００５２】フィン材No.43 は、ろう材のＦｅの含有量
が多いため、フィン材の自己腐食が激しく、ＣＡＳＳ試
験後のフィン材の腐食消耗が顕著となり、フィン材の犠
牲陽極効果が長時間持続されない。No.44 は、ろう材の
Ｍｇの含有量が多いため、フィン材が全く接合されず
（フィン接合率０％）、ろう付け性が劣る。No.45 は、
ろう材のＣａの含有量が多いため、十分なフィレットが
形成されず、フィン接合率が低くろう付け性が劣り、熱
交換器に組み込んだ場合、熱交換器の伝熱特性を低下さ
せる。

【００５３】フィン材No.46 および47は、それぞれろう
材のＢｉおよびＺｎの含有量が多いため、フィン材の自
己腐食が激しく、ＣＡＳＳ試験後のフィン材の腐食消耗
が顕著となり、フィン材の犠牲陽極効果が長時間持続さ
れない。フィン材No.42 およびNo.45 は、それぞれフィ
ン接合率が低いため、押出扁平多穴管に対するフィン材
の犠牲陽極効果が不十分となり、ＣＡＳＳ試験後の押出
扁平多穴管の最大腐食深さが大きくなった。

【００５４】

【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、ろう付
け性に優れ、ろう付け後の強度および犠牲陽極効果に優
れたアルミニウム合金フィン材が提供される。当該アル
ミニウム合金フィン材を使用することによって、フィン
材の薄肉化が可能となり、熱交換器の軽量化、長寿命化
が達成される。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｆ２８Ｆ 19/06 Ｆ２８Ｆ 19/06 Ｂ 21/08 21/08 Ｄ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 Ｍｎ:0.5〜2.0 ％（質量％、以下同
   じ）、Ｓｉ:0.1〜1.0 ％、Ｆｅ:0.1〜0.7 ％、Ｚｎ:0.5
   〜4.0 ％を含有し、さらにＺｒ:0.06 〜0.3 ％、Ｃｒ:
   0.06 〜0.3 ％のうちの１種または２種を含み、不純物
   としてのＭｇを0.04％以下に規制し、残部Ａｌと不可避
   的不純物からなるアルミニウム合金を心材とし、Ｓｉ:6
   〜14％、Ｆｅ:0.06 〜0.7 ％を含有し、Ｍｇ:0.04 ％以
   下に規制し、Ｃａ:0.006％以下に規制し、残部Ａｌと不
   可避的不純物からなるアルミニウム合金ろう材を皮材と
   して構成されたことを特徴とするろう付け性に優れた熱
   交換器用アルミニウム合金フィン材。
2. 【請求項２】 皮材を構成するろう材が、さらにＢｉ:
   0.01 〜0.4 ％を含有することを特徴とする請求項１記
   載のろう付け性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フ
   ィン材。
3. 【請求項３】 皮材を構成するろう材が、さらにＺｎ:
   0.5〜4.0 ％を含有することを特徴とする請求項１また
   は２記載のろう付け性に優れたアルミニウム合金フィン
   材。
4. 【請求項４】 心材が、さらにＣｕ:0.05 〜0.3 ％を含
   有することを特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載
   のろう付け性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィ
   ン材。