JP2000188031A - 回路遮断器の接触子装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 短絡電流遮断性能に優れた回路遮断器の接触
子装置を提供する。 【解決手段】 開閉接点２、３の両側にコイル１０、１
１を配置し、これらのコイルを接続する接続導体１２を
開閉接点の近傍に配置して、両コイルにおいて生じる磁
束によるアークのブロー作用と接続導体において生じる
磁束によるアークの移動及びねじれ作用によってアーク
の消滅を促進する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、回路遮断器の接触
子装置、特にその短絡電流遮断性能の向上技術に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来の回路遮断器の例が図５に示されて
いる。この回路遮断器は、一端に電源側端子１を備え他
端に固定接点２を備えるコ字状に曲げられた固定接触子
２４と、一端に可動接点３を備え他端が図示されない負
荷側端子に接続される可動接触子４と、可動接触子４を
接触子軸５によって回転自在に支持する接触子ホルダ６
と、可動接触子４を反時計方向に付勢する図示しない接
圧ばねと、詳細は説明しないが接触子ホルダ６を回転操
作する開閉機構７と、可動接点３の移動軌跡の両側に腕
が形成されるように「Ｖ」字形状に切欠かれた形状を有
し且つ一対の絶縁板の間にそれぞれ保持される複数の磁
性板からなる消弧グリッド２５とを備えている。

【０００３】この回路遮断器は、開閉操作ハンドル８を
操作して開閉機構７を動作させることにより接触子ホル
ダ６を時計方向に回転させ、可動接点３を固定接点２か
ら開離させて回路の電流を遮断することができる。ま
た、開閉操作ハンドル８を操作する代わりに、図示され
ていない引外し装置が過電流を検出して開閉機構７を動
作させ、これにより電流を遮断することもできる。さら
に、この回路遮断器に短絡電流のような大きな電流が流
れたときは、可動接点３と固定接点２との間で発生する
電磁反発力及び対向配置されている固定接触子２４と可
動接触子４との間で発生する電磁反発力によって、上述
の引外し装置の動作を待たずに、鎖線で示すごとく可動
接触子４が時計方向に回転して可動接点３が固定接点２
から開離する。このとき可動接点３と固定接点２との間
にはアーク電流が流れ高温のアーク柱Ａが発生する。こ
のアーク柱Ａは磁気作用により消弧グリッド２５の方向
に誘引され、アーク柱Ａが延びるとともに消弧グリッド
２５によって冷却されてアーク抵抗が増大し、その結果
アークが消滅して電流が遮断される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】この従来の回路遮断器
の消弧グリッド２５は、それなりに大電流を遮断できる
効果を奏する。しかし、消弧グリッド２５によるアーク
の誘因及び冷却作用だけではより優れた短絡電流遮断性
能、すなわちより大きな短絡電流を遮断することができ
なかった。したがって、本発明の課題は、より優れた短
絡電流遮断性能を有する回路遮断器の接触子装置を簡単
な構成で実現することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記の問題を解決するた
めに、この発明に係る回路遮断器の接触子装置は、一端
に端子を備え他端に固定接点を備えた固定接触子と、一
端に固定接点と接触及び開離する可動接点を備えた可動
接触子と、可動接触子を回転自在に保持する接触子ホル
ダと、接触子ホルダを回転操作する開閉機構と、可動接
点と固定接点とが接触する方向に可動接触子を付勢する
接圧ばねと、可動接点と固定接点とが開離したとき発生
するアークを消滅させる消弧グリッドとを備える回路遮
断器の接触子装置において、固定接触子は、短絡電流が
流れたとき可動接点の開離軌跡を横切る磁束を発生させ
るように可動接点及び固定接点の両側に対向して配置さ
れる一対のコイルと、一対のコイルにおいて生じる磁束
が同一方向となるように一対のコイルを互いに直列に接
続する接続導体とを含み、接続導体は短絡電流が流れた
ときに可動接点の開離軌跡方向の磁束を発生するように
可動接点及び固定接点の近傍に位置することとしてい
る。

【０００６】このような構成によって、可動接点と固定
接点とが開離したとき発生するアーク柱を横切る磁束が
２つのコイルから同一方向に発生するため、消弧グリッ
ド方向へのより大きなアークのブロー作用を呈して、消
弧グリッドにおけるアークの消滅を早める。さらに、可
動接点と固定接点の両側に配置されている２つのコイル
を接続する接続導体は可動接点の開離軌跡と直行する方
向に配置される。この接続導体において発生する磁束は
前述の可動接点の開離軌跡方向であるため、この磁束が
アーク柱の根元を可動接点及び固定接点の表面の周縁を
舐めるように回転移動させて、アーク柱の根元における
温度を低下させるとともに、可動接点及び固定接点にお
けるアーク柱の根元の回転方向が互いに逆方向となるた
めアーク柱がねじれるように伸び、アーク抵抗が増大し
てアークの消滅を早める。

【０００７】なお、固定接触子の端子と固定接点との間
に短絡電流による電磁力によって反発して開離する反発
開閉接点を設け、この反発開閉接点の一方を回転自在に
保持される反発可動接触子の一端に取り付けるように設
けて構成することもできる。この構成により、短絡電流
が流れると、可動接点及び固定接点とともに反発可動接
点も開離するためアークの消滅がさらに早くなる。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
１〜図４に示される実施例において説明する。なお、従
来の技術と同等である構成部品については同一符号を付
し、その説明は省略する。第１実施例に係る回路遮断器
の接触子装置が図１及び図２に示されている。この第１
実施例における固定接触子９は、図５に示した従来の装
置の固定接触子２４と同様に一端に電源側端子１を他端
に固定接点２を備えているが、図２に示されるように、
互いに対向するコイル１０及びコイル１１とそれらを接
続する接続導体１２とから平面「コ」字状に形成され、
それらに囲まれるように固定接点２がコイル１１に取り
付けられている。コイル１０は、図１において電源側端
子１から上部へ立ち上がり、一点鎖線で示された開離状
態にある可動接点３付近を通った後、接触状態にある固
定接点２及び可動接点３付近を通って逆「Ｃ」字状に形
成及び配置される。一方、コイル１１は、その一端部１
１ａが直角に屈曲されてここに固定接点２が取り付けら
れ、接触状態にある固定接点２及び可動接点３付近を通
るように図１において「つ」字状に形成及び配置され、
他端部が接続導体１２を介してコイル１０と接続されて
いる。このコイル１１の一端部１１ａは可動接触子４と
対向し、短絡電流が流れたとき双方の間で電磁反発力が
作用するようになっている。

【０００９】なお、接続導体１２は、固定接点２から開
離するときの可動接点３の移動軌跡の略中間部に相当す
る位置に配置され、「コ」字状の固定接触子９に囲まれ
る部分には複数の消弧グリッド１３が設けられる。

【００１０】このように形成された実施例の短絡電流の
遮断動作について説明する。この回路遮断器に短絡電流
が流れると電磁反発力により可動接点３が固定接点２か
ら開離してアーク柱Ａが発生する。このとき短絡電流
は、電源側端子１からコイル１０、接続導体１２、コイ
ル１１、固定接点２、アーク柱Ａ、可動接点３及び可動
接触子４の経路で流れる。なお、接続導体１２では、図
１の紙面の表面から裏面方向に向かうように流れる。こ
のようにコイル１０及びコイル１１に電流が流れること
により、図１の紙面の表面から裏面方向へ向かってアー
ク柱Ａを横切るように磁束Ｈ１が発生し、アーク柱Ａを
消弧グリッド１３の方向に駆動するブロー作用を呈す
る。このブロー作用は、コイル１０とコイル１１におい
て電流が同一方向（時計方向）に流れることによって、
発生する磁束Ｈ１はいずれか一方のコイルのみの場合の
２倍となるため、その作用がより強くなり、より早くア
ークを消滅させる。

【００１１】さらに、接続導体１２において図１の紙面
の表面から裏面方向に向かう方向に電流が流れることに
より、接続導体１２の周囲に時計方向の磁束Ｈ２が発生
し、アーク柱Ａ付近では開離状態の可動接点３（上方）
から固定接点２（下方）の方向に発生する。この磁束Ｈ
２により、固定接点２及び可動接点３の表面におけるア
ーク柱Ａの根元は、これらの表面の周縁を舐めるように
回転移動する。このようにアーク柱Ａは、移動すること
によってその根元が低温化するとともに、固定接点２と
可動接点３の周縁におけるアーク柱Ａの根元の回転方向
が互いに逆となるためアークがねじれるように伸びてア
ーク抵抗が増大し、アークの消滅をより早める作用を呈
する。

【００１２】第２実施例に係る回路遮断器の接触子装置
を図３及び図４に示す。この第２実施例においても従来
技術及び第１実施例と同等の構成部品は同一の符号を付
し、その説明を省略する。第２実施例における固定接触
子１４は、電源側端子１と、図３において電源側端子１
から上方へ立ち上がり一点鎖線で示された開離位置にあ
る可動接点３付近を通って下方へ曲がった形状の導体１
５と、導体１５の下部に軸１６によって回転自在に保持
される反発可動接触子１７と、反発可動接触子１７の先
端に取り付けられた反発可動接点１８と、平面的に見た
とき「コ」字状に曲げられ且つその両腕の下部をそれぞ
れ内方に直角に曲げて形成された折り曲げ部１９ａ及び
１９ｂを備える導体１９と、折り曲げ部１９ａの下面に
備えられ反発可動接点１８と接触開離する反発固定接点
２０とから形成され、折り曲げ部１９ｂの上面には固定
接点２が形成されている。反発可動接触子１７は、図示
しないばねによって軸１６を中心として時計方向に付勢
されるとともに、ばね２１によって導体１５と常時接触
するように付勢されている。

【００１３】この第２実施例を第１実施例と比較する
と、導体１５と、反発可動接触子１７と、反発可動接点
１８と、反発固定接点２０と、折り曲げ部１９ａを含む
導体１９の一方の腕とによって第１実施例のコイル１０
に相当するコイルが形成される。また、導体１９の他方
の腕とその折り曲げ部１９ｂとによって第１実施例のコ
イル１１に相当するコイルが形成される。さらに、この
第２実施例における固定接点２は、図４において導体１
９の「コ」字の中心より上側に位置し、反発可動接点１
８及び反発固定接点２０は下側に位置するように配置さ
れる。したがって、この第２実施例の固定接点２及び可
動接点３に対応して設けられる消弧グリッド２２は、図
４において左側と下側から固定接点２を囲むように
「Ｌ」字状に形成されている。また、反発可動接点１８
及び反発固定接点２０に対応する消弧グリッド２３も設
けられている。

【００１４】このように構成された第２実施例の動作
は、短絡電流が流れたとき電磁反発力によって可動接点
３が固定接点２から開離するとともに反発可動接点１８
が反発固定接点２０から開離する。その結果、固定接点
２と可動接点３との間に発生するアークに対しては第１
実施例と同様の作用が生じるとともに、反発可動接点１
８と反発固定接点２０との間に発生するアークも消弧グ
リッド２３の方向に誘引されて消滅するという作用が生
じるため、第１実施例よりさらに早くアークを消滅させ
ることができる。

【００１５】

【発明の効果】本発明は、以上説明した形態で実施さ
れ、短絡電流が流れたとき可動接点の移動軌跡を横切る
ような磁束が発生するコイルを開閉接点の両側に一対設
けたため、アークのブロー作用がより大きくなるととも
に、両コイルを接続する接続部材を開閉接点の接触部付
近に設けたため、接続部材を流れる電流によって生じる
磁束がアーク柱の根元を移動させてアーク柱を冷却する
とともにアーク長を長くするという作用も加わり、アー
クの消滅がより早くなって短絡遮断性能を向上すること
ができるという効果を奏するとともに、このような効果
を簡単な構成で実現できる。また、コイルの一方に電流
による電磁力で反発する接点をさらに設けることによっ
て、短絡電流の遮断性能をさらに向上できるという効果
を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例に係る接触子装置を組み込
んだ回路遮断器を示す一部破断側面図である。

【図２】図１の接触子装置に用いられた固定接触子を示
す斜視図である。

【図３】本発明の第２実施例に係る接触子装置を組み込
んだ回路遮断器を示す一部破断側面図である。

【図４】図３の接触子装置に用いられた固定接触子を示
す平面図である。

【図５】従来の回路遮断器を示す一部破断側面図であ
る。

【符号の説明】

１ 電源側端子、 ２ 固定接点、 ３ 可動接点、
４ 可動接触子、５ 接触子軸、 ６ 接触子ホルダ、
７ 開閉機構、 ８ 開閉操作ハンドル９、１４ 固
定接触子、 １０、１１ コイル、 １２ 接続導体、
１３、２２、２３ 消弧グリッド、 １５、１９ 導
体、 １６ 軸、１７ 反発可動接触子、 １８ 反発
可動接点、 ２０ 反発固定接点、２１ ばね

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一端に端子を備え他端に固定接点を備え
   た固定接触子と、一端に前記固定接点と接触及び開離す
   る可動接点を備えた可動接触子と、前記可動接触子を回
   転自在に保持する接触子ホルダと、前記接触子ホルダを
   回転操作する開閉機構と、前記可動接点と前記固定接点
   とが接触する方向に前記可動接触子を付勢する接圧ばね
   と、前記可動接点と前記固定接点とが開離したとき発生
   するアークを消滅させる消弧グリッドとを備える回路遮
   断器の接触子装置において、 前記固定接触子は、短絡電流が流れたとき前記可動接点
   の開離軌跡を横切る磁束を発生させるように前記可動接
   点及び前記固定接点の両側に対向して配置される一対の
   コイルと、前記一対のコイルにおいて生じる磁束が同一
   方向となるように前記一対のコイルを互いに直列に接続
   する接続導体とを含み、前記接続導体は短絡電流が流れ
   たときに前記可動接点の開離軌跡方向の磁束を発生する
   ように前記可動接点及び前記固定接点の近傍に位置する
   ことを特徴とする回路遮断器の接触子装置。
2. 【請求項２】 前記固定接触子の前記端子と前記固定接
   点との間に短絡電流による電磁力によって反発して開離
   する反発開閉接点が設けられ、前記反発開閉接点の一方
   は回転自在に保持される反発可動接触子の一端に取り付
   けられることを特徴とする請求項１の回路遮断器の接触
   子装置。