JP2000176679A - 高延性肉盛用合金粉末 - Google Patents
高延性肉盛用合金粉末Info
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Landscapes
- Powder Metallurgy (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 高温強度が高く、かつ室温での延性に優れた
耐熱・耐摩耗用肉盛金属が選られる肉盛用合金粉末を提
供する。 【解決手段】 Ｎｉ基合金で、主な合金元素として質量
％で、Ｃ：０．１０〜１．００％、Ｃｒ：１５．０〜２
５．０、Ａｌ：１．０〜４．０％、Ｔｉ：３．０〜９．
０％を含有する。Ｔｉ含有率との和が９．０質量％以下
の範囲でＷ、Ｍｏ、Ｚｒ、Ｔａ、Ｎｂ、Ｖのいずれか１
種または２種以上を０．１〜４．０質量％含有してもよ
い。Ｔｉ：１．５〜３．０質量％含有の合金ではＷ、Ｍ
ｏ、Ｚｒ、Ｔａ、Ｎｂ、Ｖは合計６．０質量％まで含有
してもよい。いずれもＲＥＭを０．０１質量％以上１．
０％以下含有することができる。肉盛後６００〜８００
℃で時効処理して使用するのが好ましい。
耐熱・耐摩耗用肉盛金属が選られる肉盛用合金粉末を提
供する。 【解決手段】 Ｎｉ基合金で、主な合金元素として質量
％で、Ｃ：０．１０〜１．００％、Ｃｒ：１５．０〜２
５．０、Ａｌ：１．０〜４．０％、Ｔｉ：３．０〜９．
０％を含有する。Ｔｉ含有率との和が９．０質量％以下
の範囲でＷ、Ｍｏ、Ｚｒ、Ｔａ、Ｎｂ、Ｖのいずれか１
種または２種以上を０．１〜４．０質量％含有してもよ
い。Ｔｉ：１．５〜３．０質量％含有の合金ではＷ、Ｍ
ｏ、Ｚｒ、Ｔａ、Ｎｂ、Ｖは合計６．０質量％まで含有
してもよい。いずれもＲＥＭを０．０１質量％以上１．
０％以下含有することができる。肉盛後６００〜８００
℃で時効処理して使用するのが好ましい。
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温で使用される
耐摩耗部品の摩耗面に肉盛溶接するための肉盛用合金粉
末に関する。
耐摩耗部品の摩耗面に肉盛溶接するための肉盛用合金粉
末に関する。
【０００２】
【従来の技術】従来、部品の耐熱・耐摩耗性を向上する
方法として、肉盛用合金を肉盛溶接することによって要
部に耐熱・耐摩耗性に富む肉盛金属層を形成することが
行われている。肉盛金属層の耐摩耗性を向上するには肉
盛金属の硬さを高めることが有効である。ところで、高
温で使用される多くの部品は、運転サイクルにより、あ
るいは休転等により室温あるいは室温に近い温度まで冷
却されることがある。耐摩耗性を増強するため部品に肉
盛加工を施した場合、室温における肉盛金属の延性が低
いと、前記のような冷却時に熱応力により肉盛金属に割
れが発生し、肉盛金属が剥離したり部品が破損するなど
の不都合が生じることがある。そのため、耐熱・耐摩耗
用肉盛金属には室温附近の低い温度でも適度な延性が必
要となる。
方法として、肉盛用合金を肉盛溶接することによって要
部に耐熱・耐摩耗性に富む肉盛金属層を形成することが
行われている。肉盛金属層の耐摩耗性を向上するには肉
盛金属の硬さを高めることが有効である。ところで、高
温で使用される多くの部品は、運転サイクルにより、あ
るいは休転等により室温あるいは室温に近い温度まで冷
却されることがある。耐摩耗性を増強するため部品に肉
盛加工を施した場合、室温における肉盛金属の延性が低
いと、前記のような冷却時に熱応力により肉盛金属に割
れが発生し、肉盛金属が剥離したり部品が破損するなど
の不都合が生じることがある。そのため、耐熱・耐摩耗
用肉盛金属には室温附近の低い温度でも適度な延性が必
要となる。
【０００３】耐熱・耐摩耗用途に対する肉盛用合金とし
て、しばしばＣｏ−Ｃｒ−Ｗ−Ｃ系合金が用いられる。
Ｃｏ−Ｃｒ−Ｗ−Ｃ系合金において、高い耐摩耗効果を
あげるためには、Ｃ、Ｗの含有量を増加して炭化物の析
出量を増加せしめ肉盛金属の高温強度を上昇させればよ
い。しかしながら、前記合金においてＣ、Ｗ等の炭化物
形成元素の含有量を過剰に増大すれば、肉盛金属の硬さ
は増大するものの、延性、特に室温での延性が低下して
しまうので、前記炭化物形成元素の含有量には自ずと限
界があった。
て、しばしばＣｏ−Ｃｒ−Ｗ−Ｃ系合金が用いられる。
Ｃｏ−Ｃｒ−Ｗ−Ｃ系合金において、高い耐摩耗効果を
あげるためには、Ｃ、Ｗの含有量を増加して炭化物の析
出量を増加せしめ肉盛金属の高温強度を上昇させればよ
い。しかしながら、前記合金においてＣ、Ｗ等の炭化物
形成元素の含有量を過剰に増大すれば、肉盛金属の硬さ
は増大するものの、延性、特に室温での延性が低下して
しまうので、前記炭化物形成元素の含有量には自ずと限
界があった。
【０００４】他方、高温強度が高い合金としてＡｌ，Ｔ
ｉを含有するＮｉ基合金が知られている。該合金を高温
耐摩耗部品の肉盛用合金として使用することが考えられ
る。該合金では、時効処理によって微細なγ′相（Ｎｉ
3Ａｌ）を析出させ、高温強度を向上するので、Ａｌ含
有量を多くしてγ′相の析出量を増加することにより高
温強度を高めることができる。
ｉを含有するＮｉ基合金が知られている。該合金を高温
耐摩耗部品の肉盛用合金として使用することが考えられ
る。該合金では、時効処理によって微細なγ′相（Ｎｉ
3Ａｌ）を析出させ、高温強度を向上するので、Ａｌ含
有量を多くしてγ′相の析出量を増加することにより高
温強度を高めることができる。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来のＡｌ，Ｔｉを含有するＮｉ基合金におい
て、Ａｌ含有量を多くし過ぎると析出するγ′が粗大化
し、延性の低下を招く結果となり、耐熱・耐摩耗用肉盛
金属として十分な高温強度と延性とを兼ね備える肉盛金
属は得られていないのが現状である。
ような従来のＡｌ，Ｔｉを含有するＮｉ基合金におい
て、Ａｌ含有量を多くし過ぎると析出するγ′が粗大化
し、延性の低下を招く結果となり、耐熱・耐摩耗用肉盛
金属として十分な高温強度と延性とを兼ね備える肉盛金
属は得られていないのが現状である。
【０００６】本発明は、上記の現状に鑑みてなされたも
ので、その目的とするところは、高温強度が高く、かつ
室温での延性に優れた耐熱・耐摩耗用肉盛金属が選られ
る肉盛用合金粉末を提供することにある。
ので、その目的とするところは、高温強度が高く、かつ
室温での延性に優れた耐熱・耐摩耗用肉盛金属が選られ
る肉盛用合金粉末を提供することにある。
【０００７】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の肉盛用合金粉末は、 （１）合金元素の含有率が、質量％で、Ｃ ：０．１０
％以上１．００％以下、Ｓｉ：２．０％以下、Ｃｒ：１
５．０％以上２５．０％以下、Ａｌ：１．０％以上４．
０％以下、Ｔｉ：３．０％以上９．０％以下、Ｆｅ：
３．０％以下であり、残余実質的にＮｉからなることを
特徴とする。
に、本発明の肉盛用合金粉末は、 （１）合金元素の含有率が、質量％で、Ｃ ：０．１０
％以上１．００％以下、Ｓｉ：２．０％以下、Ｃｒ：１
５．０％以上２５．０％以下、Ａｌ：１．０％以上４．
０％以下、Ｔｉ：３．０％以上９．０％以下、Ｆｅ：
３．０％以下であり、残余実質的にＮｉからなることを
特徴とする。
【０００８】（２）（１）項記載の合金成分に加えて、
強炭化物形成元素Ｗ、Ｍｏ、Ｚｒ、Ｔａ、Ｎｂ、Ｖのい
ずれか１種または２種以上をそれぞれ０．１〜４．０質
量％含有し、かつ、前記強炭化物形成元素の含有率とＴ
ｉ含有率との和が９．０質量％以下であることを特徴と
する。
強炭化物形成元素Ｗ、Ｍｏ、Ｚｒ、Ｔａ、Ｎｂ、Ｖのい
ずれか１種または２種以上をそれぞれ０．１〜４．０質
量％含有し、かつ、前記強炭化物形成元素の含有率とＴ
ｉ含有率との和が９．０質量％以下であることを特徴と
する。
【０００９】（３）合金元素の含有率が、質量％で、Ｃ
：０．１０％以上１．００％以下、Ｓｉ：２．０％以
下、Ｃｒ：１５．０％以上２５．０％以下、Ａｌ：１．
０％以上４．０％以下、Ｔｉ：１．５％以上３．０％未
満、Ｆｅ：３．０％以下で、かつ、Ｗ、Ｍｏ、Ｚｒ、Ｔ
ａ、Ｎｂ、Ｖのいずれか１種または２種以上を、それぞ
れ０．１質量％以上４．０質量％以下、合計６．０質量
％以下含有し、残余実質的にＮｉからなることを特徴と
する。
：０．１０％以上１．００％以下、Ｓｉ：２．０％以
下、Ｃｒ：１５．０％以上２５．０％以下、Ａｌ：１．
０％以上４．０％以下、Ｔｉ：１．５％以上３．０％未
満、Ｆｅ：３．０％以下で、かつ、Ｗ、Ｍｏ、Ｚｒ、Ｔ
ａ、Ｎｂ、Ｖのいずれか１種または２種以上を、それぞ
れ０．１質量％以上４．０質量％以下、合計６．０質量
％以下含有し、残余実質的にＮｉからなることを特徴と
する。
【００１０】（４）上記（１）〜（３）のいずれか１項
記載の合金元素に加えて、ＲＥＭを０．０１質量％以上
１．０％以下含有することを特徴とする。 （５）上記（１）〜（４）のいずれか１項記載の肉盛用
合金粉末であって、肉盛後６００〜８００℃で時効処理
して使用することを特徴とする。
記載の合金元素に加えて、ＲＥＭを０．０１質量％以上
１．０％以下含有することを特徴とする。 （５）上記（１）〜（４）のいずれか１項記載の肉盛用
合金粉末であって、肉盛後６００〜８００℃で時効処理
して使用することを特徴とする。
【００１１】
【発明の実施の形態】本発明の肉盛用合金粉末は、Ｎｉ
を基とする合金であって、これにＡｌを添加してγ′相
の析出硬化を狙うとともに、Ｃおよび炭化物形成傾向の
強い元素を添加して炭化物を形成せしめ、該炭化物によ
る硬さの上昇と耐摩耗性の向上とを図ったものである。
本発明は、Ｎｉ基合金において、γ′相と炭化物とをバ
ランス良く析出させることにより室温での伸びを損なう
ことなく高い高温強度を確保することができるという知
見に基づいてなされたものである。本発明の肉盛用合金
粉末は、γ′相の析出を可能とし、長時間高温に曝され
てもγ′相の安定性を確保するためにＮｉ基合金とす
る。
を基とする合金であって、これにＡｌを添加してγ′相
の析出硬化を狙うとともに、Ｃおよび炭化物形成傾向の
強い元素を添加して炭化物を形成せしめ、該炭化物によ
る硬さの上昇と耐摩耗性の向上とを図ったものである。
本発明は、Ｎｉ基合金において、γ′相と炭化物とをバ
ランス良く析出させることにより室温での伸びを損なう
ことなく高い高温強度を確保することができるという知
見に基づいてなされたものである。本発明の肉盛用合金
粉末は、γ′相の析出を可能とし、長時間高温に曝され
てもγ′相の安定性を確保するためにＮｉ基合金とす
る。
【００１２】以下、本発明の肉盛用合金粉末の化学組成
を限定する理由について説明する。Ｃは、肉盛金属中に
おいて炭化物を形成することによって肉盛金属の強度を
高め、耐摩耗性を向上するために添加する。そのために
は肉盛用合金粉末中に０．１０質量％以上のＣを含有す
る必要がある。しかし、過剰にＣを含有すれば粗大炭化
物を形成し肉盛金属を脆化するのでＣ含有率の上限を
１．００質量％とする。Ｓｉは、肉盛金属の肉盛性を向
上するために添加する。しかし、過剰に添加すると肉盛
金属の延性を低下せしめるので肉盛用合金粉末中のＳｉ
含有率の上限を２．０質量％とする。
を限定する理由について説明する。Ｃは、肉盛金属中に
おいて炭化物を形成することによって肉盛金属の強度を
高め、耐摩耗性を向上するために添加する。そのために
は肉盛用合金粉末中に０．１０質量％以上のＣを含有す
る必要がある。しかし、過剰にＣを含有すれば粗大炭化
物を形成し肉盛金属を脆化するのでＣ含有率の上限を
１．００質量％とする。Ｓｉは、肉盛金属の肉盛性を向
上するために添加する。しかし、過剰に添加すると肉盛
金属の延性を低下せしめるので肉盛用合金粉末中のＳｉ
含有率の上限を２．０質量％とする。
【００１３】Ｃｒは、肉盛金属の高温における耐酸化性
を高めるために添加する。含有するＣｒの一部は、肉盛
金属中のＣと結合して炭化物を形成し、肉盛金属の高温
強度の向上に寄与する。これらの効果を得るために、肉
盛用合金粉末のＣｒ含有率の下限を１５．０質量％とす
る。Ｃｒ含有量が過剰になると形成される炭化物が粗大
化し肉盛金属の延性を低めるので、肉盛用合金粉末のＣ
ｒ含有率の上限は２５．０質量％とする。前記Ｃｒ添加
の効果を一層効果的にするためには、肉盛用合金粉末の
Ｃｒ含有率を１８．０〜２２．０質量％とすることが好
ましい。
を高めるために添加する。含有するＣｒの一部は、肉盛
金属中のＣと結合して炭化物を形成し、肉盛金属の高温
強度の向上に寄与する。これらの効果を得るために、肉
盛用合金粉末のＣｒ含有率の下限を１５．０質量％とす
る。Ｃｒ含有量が過剰になると形成される炭化物が粗大
化し肉盛金属の延性を低めるので、肉盛用合金粉末のＣ
ｒ含有率の上限は２５．０質量％とする。前記Ｃｒ添加
の効果を一層効果的にするためには、肉盛用合金粉末の
Ｃｒ含有率を１８．０〜２２．０質量％とすることが好
ましい。
【００１４】Ａｌは、生地Ｎｉ成分と結合してγ′相を
形成し、肉盛金属の強化、特に高温強度を向上するため
に添加する。そのために肉盛用合金粉末中のＡｌ含有率
の下限を１．０質量％とする。しかし、過剰にＡｌを含
有すれば、析出するγ′相が粗大化し強度向上の効果を
低減するので、肉盛用合金粉末中のＡｌ含有率の上限を
４．０質量％とする。
形成し、肉盛金属の強化、特に高温強度を向上するため
に添加する。そのために肉盛用合金粉末中のＡｌ含有率
の下限を１．０質量％とする。しかし、過剰にＡｌを含
有すれば、析出するγ′相が粗大化し強度向上の効果を
低減するので、肉盛用合金粉末中のＡｌ含有率の上限を
４．０質量％とする。
【００１５】Ｔｉは、γ′相の析出促進および炭化物の
形成による肉盛金属の強化のために添加する。Ｔｉは、
Ａｌを含むＮｉ基合金におけるγ′相の析出を促進する
元素である。また、Ｔｉの一部は含有するＣおよび不可
避的不純物として合金に含まれるＮと結合して炭窒化物
を形成する。本発明の肉盛用合金粉末においてγ′相の
析出促進による肉盛金属の強度向上の効果を得るために
は、肉盛用合金粉末中にＴｉを１．５質量％以上含有す
る必要がある。さらに、Ｔｉ炭化物を析出して肉盛金属
の高温強度を高めるためには、肉盛用合金粉末中にＴｉ
を３．０質量％以上含有する必要がある。しかし、９．
０質量％を超えて過剰にＴｉを含有すると炭化物の析出
量が過大となり、また、析出する炭化物が粗大化して肉
盛金属の延性を低下せしめる。それゆえ、Ｔｉのγ′析
出促進効果と炭化物形成効果との両者を併用する本発明
の第１および第２の実施態様（請求項１および請求項２
に対応）においては肉盛用合金粉末中のＴｉ含有率の下
限を３．０質量％とし、上限を９．０質量％とする。
形成による肉盛金属の強化のために添加する。Ｔｉは、
Ａｌを含むＮｉ基合金におけるγ′相の析出を促進する
元素である。また、Ｔｉの一部は含有するＣおよび不可
避的不純物として合金に含まれるＮと結合して炭窒化物
を形成する。本発明の肉盛用合金粉末においてγ′相の
析出促進による肉盛金属の強度向上の効果を得るために
は、肉盛用合金粉末中にＴｉを１．５質量％以上含有す
る必要がある。さらに、Ｔｉ炭化物を析出して肉盛金属
の高温強度を高めるためには、肉盛用合金粉末中にＴｉ
を３．０質量％以上含有する必要がある。しかし、９．
０質量％を超えて過剰にＴｉを含有すると炭化物の析出
量が過大となり、また、析出する炭化物が粗大化して肉
盛金属の延性を低下せしめる。それゆえ、Ｔｉのγ′析
出促進効果と炭化物形成効果との両者を併用する本発明
の第１および第２の実施態様（請求項１および請求項２
に対応）においては肉盛用合金粉末中のＴｉ含有率の下
限を３．０質量％とし、上限を９．０質量％とする。
【００１６】Ｔｉの添加によってγ′析出を促進し、炭
化物による強度向上は主に後述の炭化物形成元素による
本発明の第３の実施態様（請求項３に対応）において
は、肉盛用合金粉末のＴｉ含有率を１．５質量％以上
３．０質量％未満とする。
化物による強度向上は主に後述の炭化物形成元素による
本発明の第３の実施態様（請求項３に対応）において
は、肉盛用合金粉末のＴｉ含有率を１．５質量％以上
３．０質量％未満とする。
【００１７】Ｗ、Ｍｏ、Ｚｒ、Ｔａ、Ｎｂ、Ｖは、いず
れも炭化物形成傾向が大きい強炭化物形成元素である。
前記強炭化物形成元素は、肉盛金属中のＣと結合して炭
化物を形成し肉盛金属の高温硬さを高めるために、肉盛
用合金粉末に１種または２種以上添加する。前記強炭化
物形成元素による高温硬さの上昇効果を得るためには、
前記強炭化物形成元素は、肉盛用合金粉末中にそれぞれ
０．１質量％以上含有することが必要である。しかし、
過剰に含有すると炭化物生成量は飽和し、徒に合金コス
トを高めるだけでなく、延性の低下を招くので、含有率
の上限は、それぞれ４．０質量％とする。また、２種以
上複合して添加する場合には合わせて６．０質量％以下
とする。
れも炭化物形成傾向が大きい強炭化物形成元素である。
前記強炭化物形成元素は、肉盛金属中のＣと結合して炭
化物を形成し肉盛金属の高温硬さを高めるために、肉盛
用合金粉末に１種または２種以上添加する。前記強炭化
物形成元素による高温硬さの上昇効果を得るためには、
前記強炭化物形成元素は、肉盛用合金粉末中にそれぞれ
０．１質量％以上含有することが必要である。しかし、
過剰に含有すると炭化物生成量は飽和し、徒に合金コス
トを高めるだけでなく、延性の低下を招くので、含有率
の上限は、それぞれ４．０質量％とする。また、２種以
上複合して添加する場合には合わせて６．０質量％以下
とする。
【００１８】肉盛金属のＦｅ含有率が増すと生地のＮｉ
含有率が減少し、γ′相の析出を抑制するためＦｅ含有
率は少ないことが好ましい。しかし肉盛用合金粉末のＦ
ｅ含有率を低減することは合金コストの上昇をもたらす
ので、肉盛金属の強度の低下に対して実質的な影響を及
ぼさない値として肉盛用合金粉末のＦｅ含有率の上限を
３．０質量％とする。
含有率が減少し、γ′相の析出を抑制するためＦｅ含有
率は少ないことが好ましい。しかし肉盛用合金粉末のＦ
ｅ含有率を低減することは合金コストの上昇をもたらす
ので、肉盛金属の強度の低下に対して実質的な影響を及
ぼさない値として肉盛用合金粉末のＦｅ含有率の上限を
３．０質量％とする。
【００１９】ＲＥＭ（Rare Earth Metal：希土類金属）
は、肉盛金属の耐酸化性を向上するために添加すること
ができる。そのためには肉盛用合金粉末のＲＥＭ含有率
は０．０１質量％以上であることが必要である。しか
し、ＲＥＭを過剰に添加すると徒に合金コストを高める
だけでなく、肉盛金属の延性を低減するので、肉盛用合
金粉末のＲＥＭ含有率の上限を１．０質量％とする。
は、肉盛金属の耐酸化性を向上するために添加すること
ができる。そのためには肉盛用合金粉末のＲＥＭ含有率
は０．０１質量％以上であることが必要である。しか
し、ＲＥＭを過剰に添加すると徒に合金コストを高める
だけでなく、肉盛金属の延性を低減するので、肉盛用合
金粉末のＲＥＭ含有率の上限を１．０質量％とする。
【００２０】本発明の肉盛用合金は、熱間鍛造などの塑
性加工が困難なので、アトマイズ法、遠心噴霧法などの
金属粉末製造法によって製造された微粉末として供給さ
れる。本発明の肉盛用合金粉末は活性元素を多量に含む
ので、不活性雰囲気で肉盛溶接することが好ましい。ま
た、本発明の肉盛用合金粉末は、部品に肉盛溶接後なん
ら熱処理を施すことなくそのまま使用しても、該部品が
使用中に受ける熱影響によって時効硬化を生じ、次第に
強度を上昇して耐摩耗性を高める。肉盛部品の使用初期
から高い強度が必要な場合は、肉盛溶接後６００〜８０
０℃で加熱する時効処理を施して使用することが好まし
い。
性加工が困難なので、アトマイズ法、遠心噴霧法などの
金属粉末製造法によって製造された微粉末として供給さ
れる。本発明の肉盛用合金粉末は活性元素を多量に含む
ので、不活性雰囲気で肉盛溶接することが好ましい。ま
た、本発明の肉盛用合金粉末は、部品に肉盛溶接後なん
ら熱処理を施すことなくそのまま使用しても、該部品が
使用中に受ける熱影響によって時効硬化を生じ、次第に
強度を上昇して耐摩耗性を高める。肉盛部品の使用初期
から高い強度が必要な場合は、肉盛溶接後６００〜８０
０℃で加熱する時効処理を施して使用することが好まし
い。
【００２１】
【実施例】ガスアトマイズ法によって、表１に示す各化
学組成を有する粒度＃６０-〜＃３００+の合金粉末を製
造した。
学組成を有する粒度＃６０-〜＃３００+の合金粉末を製
造した。
【００２２】
【表１】
【００２３】プラズマトランスファーアークによる粉末
肉盛溶接法によって前記合金粉末を肉盛溶接し、肉盛金
属部分から試験片を切り出し、延性の評価をするために
常温における引張試験を、また、高温強度を評価するた
めに６００℃におけるビッカース硬さ試験を行った。ま
た、７００℃×４時間の時効処理を施した試験片につい
ても前記と同様な引張試験および硬さ試験を行った。引
張試験で得られた伸びおよび硬さ試験で得られた高温硬
さの値を表１に示す。
肉盛溶接法によって前記合金粉末を肉盛溶接し、肉盛金
属部分から試験片を切り出し、延性の評価をするために
常温における引張試験を、また、高温強度を評価するた
めに６００℃におけるビッカース硬さ試験を行った。ま
た、７００℃×４時間の時効処理を施した試験片につい
ても前記と同様な引張試験および硬さ試験を行った。引
張試験で得られた伸びおよび硬さ試験で得られた高温硬
さの値を表１に示す。
【００２４】表１によれば、比較例においては、伸びが
大きいもの（比較例１、２、７、８）では十分に高い高
温硬さが得られず、また、高温硬さが高いもの（比較例
３〜５、９、１０）では伸びが著しく小さい。これに対
して、本発明の実施例においては、時効処理なしの場合
でもＨＶ３００以上の高温硬さと６％を超える大きな伸
びとを示しており、時効処理を施した場合にはＨＶ３３
０を超える高温硬さと３％を超える伸びとを示してい
る。以上の結果から、本発明の肉盛用合金粉末を用いて
肉盛溶接して得られる肉盛金属は、高い高温強度と大き
な延性とを兼ね備えることが明らかである。
大きいもの（比較例１、２、７、８）では十分に高い高
温硬さが得られず、また、高温硬さが高いもの（比較例
３〜５、９、１０）では伸びが著しく小さい。これに対
して、本発明の実施例においては、時効処理なしの場合
でもＨＶ３００以上の高温硬さと６％を超える大きな伸
びとを示しており、時効処理を施した場合にはＨＶ３３
０を超える高温硬さと３％を超える伸びとを示してい
る。以上の結果から、本発明の肉盛用合金粉末を用いて
肉盛溶接して得られる肉盛金属は、高い高温強度と大き
な延性とを兼ね備えることが明らかである。
【００２５】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の肉盛用
合金粉末によれば、高温強度が高く、かつ、室温での延
性に優れた肉盛金属を得ることができる。これはＮｉ基
合金にγ′相と炭化物とをバランスよく析出するように
化学組成を調整するという本発明の効果によるものであ
る。本発明の肉盛用合金粉末を用いて肉盛溶接すること
によって、高温使用部品の耐摩耗肉盛部に発生する熱応
力等による割れの発生を防止することができ、部品の寿
命を延ばすという大きな経済効果が得られる。
合金粉末によれば、高温強度が高く、かつ、室温での延
性に優れた肉盛金属を得ることができる。これはＮｉ基
合金にγ′相と炭化物とをバランスよく析出するように
化学組成を調整するという本発明の効果によるものであ
る。本発明の肉盛用合金粉末を用いて肉盛溶接すること
によって、高温使用部品の耐摩耗肉盛部に発生する熱応
力等による割れの発生を防止することができ、部品の寿
命を延ばすという大きな経済効果が得られる。
Claims (5)
- 【請求項１】 合金元素の含有率が、質量％で、 Ｃ ：０．１０％以上１．００％以下、 Ｓｉ：２．０％以下、 Ｃｒ：１５．０％以上２５．０％以下、 Ａｌ：１．０％以上４．０％以下、 Ｔｉ：３．０％以上９．０％以下、 Ｆｅ：３．０％以下であり、残余実質的にＮｉからなる
ことを特徴とする肉盛用合金粉末。 - 【請求項２】 請求項１記載の合金成分に加えて、強炭
化物形成元素Ｗ、Ｍｏ、Ｚｒ、Ｔａ、Ｎｂ、Ｖのいずれ
か１種または２種以上をそれぞれ０．１〜４．０質量％
含有し、かつ、前記強炭化物形成元素の含有率とＴｉ含
有率との和が９．０質量％以下であることを特徴とする
請求項１記載の肉盛用合金粉末。 - 【請求項３】 合金元素の含有率が、質量％で、 Ｃ ：０．１０％以上１．００％以下、 Ｓｉ：２．０％以下、 Ｃｒ：１５．０％以上２５．０％以下、 Ａｌ：１．０％以上４．０％以下、 Ｔｉ：１．５％以上３．０％未満、 Ｆｅ：３．０％以下で、かつ、Ｗ、Ｍｏ、Ｚｒ、Ｔａ、
Ｎｂ、Ｖのいずれか１種または２種以上を、それぞれ
０．１質量％以上４．０質量％以下、合計６．０質量％
以下含有し、残余実質的にＮｉからなることを特徴とす
る肉盛用合金粉末。 - 【請求項４】 上記合金元素に加えて、ＲＥＭを０．０
１質量％以上１．０％以下含有することを特徴とする請
求項１〜３のいずれか一項記載の肉盛用合金粉末。 - 【請求項５】 肉盛後６００〜８００℃で時効処理して
使用することを特徴とする請求項１〜４のいずれか一項
記載の肉盛用合金粉末。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP10350448A JP2000176679A (ja) | 1998-12-09 | 1998-12-09 | 高延性肉盛用合金粉末 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP10350448A JP2000176679A (ja) | 1998-12-09 | 1998-12-09 | 高延性肉盛用合金粉末 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2000176679A true JP2000176679A (ja) | 2000-06-27 |
Family
ID=18410571
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP10350448A Pending JP2000176679A (ja) | 1998-12-09 | 1998-12-09 | 高延性肉盛用合金粉末 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2000176679A (ja) |
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| KR100432966B1 (ko) * | 2001-09-11 | 2004-05-28 | 재단법인 포항산업과학연구원 | 니켈합금 육성 용접층의 내마모성 향상을 위한 열처리 방법 |
| WO2007002017A1 (en) * | 2005-06-20 | 2007-01-04 | Praxair S.T. Technology, Inc. | Laser cladding on low heat resistant substrates |
-
1998
- 1998-12-09 JP JP10350448A patent/JP2000176679A/ja active Pending
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| KR100432966B1 (ko) * | 2001-09-11 | 2004-05-28 | 재단법인 포항산업과학연구원 | 니켈합금 육성 용접층의 내마모성 향상을 위한 열처리 방법 |
| WO2007002017A1 (en) * | 2005-06-20 | 2007-01-04 | Praxair S.T. Technology, Inc. | Laser cladding on low heat resistant substrates |
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