JP2000123345A - 磁気記録媒体及び磁気ディスク装置 - Google Patents

磁気記録媒体及び磁気ディスク装置

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JP2000123345A
JP2000123345A JP10298665A JP29866598A JP2000123345A JP 2000123345 A JP2000123345 A JP 2000123345A JP 10298665 A JP10298665 A JP 10298665A JP 29866598 A JP29866598 A JP 29866598A JP 2000123345 A JP2000123345 A JP 2000123345A
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Kenji Sato
賢治 佐藤
Yuki Yoshida
祐樹 吉田
Tomoaki Okuyama
智明 奥山
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Fujitsu Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 20Gb/in2 を超える超高記録密度が可能
であるとともに、長期間にわたって記録情報を安定に保
持し、低温環境下でも良好なオーバーライト特性を有
し、信頼性の高い情報記録を行うことが可能な磁気記録
媒体を提供すること。 【解決手段】 非磁性の基板上に磁性記録層を設けてな
る磁気記録媒体において、前記磁性記録層が強磁性の材
料から形成されており、かつ前記磁性記録層に隣接して
反強磁性の材料からなる反強磁性の下地層がさらに設け
られているように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気記録媒体に関
し、さらに詳しく述べると、高い保磁力Hcにより高密
度記録を可能とするとともに、20Gb/in2 を超える
超高記録密度において記録情報の熱的不安定性を抑制す
ることで、長期間にわたって記録情報の消失を防止し、
信頼性の高い情報記録を行うことが可能な、面内記録方
式に基づく磁気記録媒体に関する。本発明はまた、この
ような磁気記録媒体を使用した、情報の記録及び再生を
行うための磁気ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】情報処理技術の発達に伴い、コンピュー
タの外部記憶装置に用いられる磁気ディスク装置に対し
て高記録密度化の要求が高まっている。また、この高記
録密度化の要求に応えるため、ハードディスクの面記録
密度は、1992年以降の磁気抵抗効果型ヘッド、すな
わち、MRヘッド(磁気ディスク装置の再生ヘッド部に
おいて、従来の巻線型のインダクティブ薄膜磁気ヘッド
に代えて、磁界の強さに応じて電気抵抗が変化する磁気
抵抗素子を使用したもの)の実用化に伴い、年率60%
程度の著しい伸びを示している。また、このMRヘッド
の進歩形であるところの、異方性磁気抵抗効果を利用し
たAMRヘッド、巨大磁気抵抗効果を利用したGMRヘ
ッド、そしてその実用タイプであるスピンバルブ型GM
Rヘッドなどが実用化されている。また、2001年に
は10〜20Gb/in2 もの超高記録密度の実用化が達
成されるとの見通しもある。
【0003】従来の技術では、上記のような面記録密度
の増大に対処するため、トラック密度と線記録密度の増
大を図ることが行われている。特に、線記録密度の向上
を図るためには磁気記録媒体の薄膜化が必要であり、す
でに実用化された、1Gb/in2 程度の記録密度を有す
るMRヘッド用の媒体を例にとると、その磁性記録層の
膜厚は25nm程度に薄くなっており、これから求められ
るtBr値、すなわち、磁性記録層の膜厚tと残留磁化
密度Brの積は、100Gμm 程度である。このこと
は、数年前の、0.1Gb/in2 程度の記録密度を有す
るインダクティブヘッド用の媒体の場合、その磁性記録
層の膜厚が70nm程度と厚く、tBr値も500Gμm
程度と大きいこととは対照的である。したがって、今後
数年のうちに実用化されるであろう20Gb/in2 記録
を実現するためには、磁性記録層の膜厚を15nm程度に
薄くし、また、tBr値も50Gμm 程度まで低くする
必要があると考えられている(例えば、田上及び奥村、
第5回垂直磁気記録シンポジウム会議資料集、PMRS
96、1996年、59〜63頁を参照されたい)。こ
こで、20Gb/in2 記録を実現するような媒体では磁
性記録層の膜厚が非常に薄くなるので、粒子の磁化が熱
エネルギーによって揺動され、記録情報が不安定にある
ことが危惧される。
【0004】また、ハードディスク用の磁気記録媒体に
おいて、その磁性記録層は、通常、非磁性の基板、例え
ばガラス基板やアルミニウム基板の上に、非磁性の下地
層(クロムなどの立方晶からなる)を介して、CoCr
系の合金層から構成されている。また、合金層は、一般
的に、直径30nm以下の微細な柱状粒子からなってお
り、それらの粒子のひとつひとつが磁化の最小単位とな
っている。現在、磁性粒子の微細化と、磁性記録層の薄
膜化によって、磁性粒子の体積はこれまで以上に減少傾
向にある。ここで発生する問題は、磁性粒子を小さくす
ると、磁気的なエネルギーに対して熱エネルギーの割合
が大きくなり、保磁力が低下するという問題である(例
えば、A.E.Berkowitz及びE.Knell
er,“Magnetism and Metallu
rgy,Vol.1,1969年,Academic
Press,1369頁を参照されたい)。
【0005】磁気記録媒体において、保磁力は、情報を
安定に保持するために必要である。実際、熱エネルギー
の影響で保磁力が低下した媒体では、記録された磁化状
態が時間の経過とともに消失するという問題が発生して
いる(例えば、Pu−Ling Lu及びStanle
y H.Charap,IEEE Transacti
ons on Magnetics(Trans−Ma
g.),Vol.30(1994年),4230−42
32頁を参照されたい)。おおよそ10Gb/in2 を超
える記録密度では、上述の熱揺らぎの影響で、面内方式
では磁気記録が著しく難しくなることが予測される。実
際に報告された例を参照すると、Y.Hosoeらは、
IEEE Trans−Mag.,Vol.33,N
o.5(1997年),3028−3033頁におい
て、tBr値が50Gμm 程度の媒体において、100
時間程度の観察時間の間に、記録された情報が2%も減
少したことを報告している。
【0006】上記したような問題に加えて、近年のMR
ヘッド、AMRヘッド、GMRヘッド、スピンバルブ型
GMRヘッドなど(以下、総称して「MRヘッド等」と
記す)用に特に設計された低ノイズ化された磁気記録媒
体では、個々の磁性粒子の磁気的な結合力が弱くなるた
めに、保磁力の温度変化が大きくなる傾向にある。この
場合、特にハードディスクを低温環境下で扱う場合に、
室温で扱う場合に比較して保磁力が増大し、オーバーラ
イト特性の確保が難しくなるという問題がある。
【0007】以上を総合するに、従来の技術では、20
Gb/in2 を超える高記録密度では記録情報が熱によっ
て不安定になり、長期にわたって信頼性の高い情報記録
を行うことが難しくなる。加えて、MRヘッド等用の低
ノイズ媒体では、保磁力の温度変化が大きく、低温動作
環境でのオーバーライト特性が確保しにくいという問題
がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前項において説明した
ように、高密度記録を面内記録方式で実現するために
は、媒体の薄膜化と磁性粒子間の磁気的な相互作用の抑
制による低ノイズ化が必須である。反面、このような媒
体では、記録情報の熱的不安定性や低温環境下でのオー
バーライト不良が生じ、高密度記録を困難にしている。
【0009】本発明の目的は、したがって、20Gb/
in2 を超える超高記録密度が可能であるとともに、長期
間にわたって記録情報を安定に保持し、低温環境下でも
良好なオーバーライト特性を有し、信頼性の高い情報記
録を行うことが可能な磁気記録媒体を提供することにあ
る。本発明のもう1つの目的は、上記したような本発明
による磁気記録媒体を使用した磁気ディスク装置を提供
することにある。
【0010】本発明の上記した目的及びその他の目的
は、以下の詳細な説明から容易に理解することができる
であろう。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、その1つの面
において、非磁性の基板上に磁性記録層を設けてなる磁
気記録媒体であって、前記磁性記録層が強磁性の材料か
ら形成されており、かつ前記磁性記録層に隣接して反強
磁性の材料からなる反強磁性の下地層がさらに設けられ
ていることを特徴とする磁気記録媒体にある。
【0012】また、本発明は、そのもう1つの面におい
て、磁気記録媒体において情報の記録を行うための記録
ヘッド部及び情報の再生を行うための再生ヘッド部を備
えた磁気ディスク装置であって、前記磁気記録媒体が、
非磁性の基板上に磁性記録層を設けてなる磁気記録媒体
であって、前記磁性記録層が強磁性の材料から形成され
ており、かつ前記磁性記録層に隣接して反強磁性の材料
からなる反強磁性の下地層がさらに設けられているよう
な磁気記録媒体であり、そして前記再生ヘッド部が磁気
抵抗効果型ヘッドを備えていることを特徴とする磁気デ
ィスク装置にある。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明による磁気記録媒体は、基
本的に、非磁性の基板上に磁性記録層を設けてなるとと
もに、その磁性記録層が強磁性の材料から形成されてお
り、かつその磁性記録層に隣接して、反強磁性の材料か
らなる反強磁性の下地層がさらに設けられてなるもので
ある。特に、強磁性の磁性記録層と反強磁性の下地層と
を相隣るように配置することによって、両者の間に交換
結合力を働かせ、強磁性の磁性記録層の磁化を熱に対し
て安定化するという作用効果を得ている。実際、本発明
の磁気記録媒体において、0〜65℃の温度範囲におけ
る保磁力の温度変化は、1℃について5000ppm 以下
である。本発明の磁気記録媒体は、上記した基本構成を
満足させ、かつ本発明の作用効果に悪影響を及ぼさない
限り、追加の層の使用を含めたいろいろな層構成を有す
ることができる。
【0014】好ましい1態様に従うと、本発明の磁気記
録媒体は、非磁性の基板の上に反強磁性の下地層が設け
られており、かつその反強磁性の下地層の直上に強磁性
の磁性記録層が設けられているように構成される。ま
た、反強磁性の下地層が体心立方構造の結晶粒子からな
り、そして強磁性の磁性記録層が六方構造の結晶粒子か
らなりかつ1軸結晶磁気異方性を有していることが好ま
しい。
【0015】さらに、別の好ましい態様に従うと、反強
磁性の下地層と非磁性の基板との間に、立方構造の結晶
粒子からなる非磁性の下地層がさらに介在せしめられた
ように構成される。なお、本願明細書では、このような
場合の2つの下地層を明確に区別するため、反強磁性の
下地層を「第1の下地層」と呼び、非磁性の下地層を
「第2の下地層」と呼ぶこともある。
【0016】本発明の磁気記録媒体において、その基体
として用いられる非磁性の基板は、本発明の効果に悪影
響を及ぼさない限り、この技術分野において常用のいろ
いろな基板であることができる。本発明の実施において
適当な基板は、好ましくはディスク形状の基板であり、
以下に列挙するものに限定されるわけではないけれど
も、NiPメッキ付きのアルミニウム基板、シリコン基
板、ガラス基板(結晶化ガラス基板などを含む)、カー
ボン基板などを包含する。また、必要に応じて、SiO
2 基板、Al2 3 基板、MgO基板などの耐熱性のあ
る非磁性の基板を使用してもよい。さらに、表面酸化に
より形成されたSiO2 表面酸化膜を有するSi基板を
使用してもよい。
【0017】ガラス基板は、この技術分野において常用
のガラス基板のなかから、適当なものを選択して使用す
ることができる。適当なガラス基板としては、以下に列
挙するものに限定されるわけではないけれども、例え
ば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、
無アルカリガラス、結晶化ガラスなどを挙げることがで
きる。これらのガラス基板は、必要に応じて、その表面
に無方向性の凹凸を有していてもよい。
【0018】本発明の実施において、非磁性の基板は、
その表面を清浄に処理した後で有利に使用することがで
きる。例えばガラス基板表面の清浄化は、常用の技法に
従って行うことができ、例えば、超純水、アルカリ洗浄
剤、中性洗剤等を使用した脱脂工程やイオン交換水を使
用した洗浄工程などを組み合わせて使用することができ
る。また、このような清浄化工程に追加して、必要に応
じて、基板表面の活性化処理などを施してもよい。
【0019】さらに、基板の表面にテクスチャ処理を施
して、円周方向に形成された浅い筋状の突起部及び溝部
(凹凸)を付与してもよい。基板表面の凹凸は、平均表
面粗さRaで表した場合、1.5nm以下であるのが好ま
しい。基板表面のテクスチャ処理は、好ましくは、磁気
記録媒体の製造において一般的に用いられている技法に
従って機械的に行うことができる。適当な機械的テクス
チャ処理として、例えば、砥石研磨テープ、遊離砥粒な
どの研磨手段で基板の表面を研磨することを挙げること
ができる。基板の表面に機械的テクスチャ処理を施して
凹凸を形成することにより、S/N比を向上させ、なお
かつヘッド走行性を改善するという効果を得ることがで
きる。
【0020】また、本発明の磁気記録媒体において用い
られる強磁性の磁性記録層は、この技術分野において一
般的に行われているように、コバルトを主成分とする合
金、例えばCo−Ni系合金、Co−Cr系合金などか
ら形成することができ、Co−Cr系合金から構成する
のが特に好ましい。また、磁性記録層は、このような2
成分系合金から形成することに加えて、その他の元素、
例えば白金、タンタル、ニオブ、タングステン、カーボ
ンなどを任意に追加して調製した三元系合金、四元系合
金あるいは五元系合金から形成することが好ましく、む
しろこのような多元合金から形成したほうが特性的に有
利である。本発明者らの知見によると、磁性記録層は、
Co−Cr系合金からなっていて、17at%以上の濃
度でCrを含有することが好ましい。
【0021】磁性記録層は、通常、単層で用いられる。
しかし、もしもそのほうが特性面で有利であるならば、
2層もしくはそれ以上の多層構造で用いてもよい。多層
構造の場合、特性の改善等を目的として、磁性記録層の
中間に非磁性の膜が介在せしめられていてもよい。さら
に具体的に説明すると、本発明の磁気記録媒体において
用いられる磁性記録層は、好ましくは、円周方向を磁化
容易方向とし、かつコバルトを主成分として含有し、ク
ロム及び白金を含み、さらにタンタル又はタンタル及び
ニオブを組み合わせて有する四元系合金あるいは五元系
合金から形成することができる。ここで、主成分として
のコバルトに組み合わせて用いられるクロム及び白金の
量は、好ましくは、 クロム 17〜21at%、及び 白金 4〜10at%、 である。
【0022】さらに具体的に説明すると、この磁性記録
層の、コバルト、クロム、白金及びタンタルの4元素か
ら構成される四元系合金は、好ましくは、次式により表
される組成範囲: Cobal.−Cr17-21 −Pt4-10−Tax (上式中、bal.はバランス量を意味し、そしてxは1〜
5at%である)にある。
【0023】また、コバルト、クロム、白金、タンタル
及びニオブの5元素から構成される五元系合金は、好ま
しくは、次式により表される組成範囲: Cobal.−Cr17-21 −Pt4-10−Tax −Nby (上式中、bal.はバランス量を意味し、そしてx+yは
1〜5at%である)にある。このような五元系合金に
おいて、タンタル及びニオブの添加量は、好ましくは、
同等であるかもしくはほぼ同等である。
【0024】本発明の磁気記録媒体において、かかる磁
性記録層は、いかなる組成を有するかにかかわりなく、
特にそれが四元系合金であるかあるいは五元系合金であ
るかにかかわりなく、20〜130Gμm のtBr(磁
性記録層の膜厚tと残留磁化密度Brの積)を有してい
ることが好ましい。本発明の磁性記録層は、従来の磁性
記録層に比較して薄く構成したことにより、特にMRヘ
ッドをはじめとした各種の磁気抵抗効果型ヘッド用とし
て最適である。
【0025】非磁性の基板上で、反強磁性の下地層に隣
接して設けられる磁性記録層は、上記したように、Co
CrPtTaなどの四元系合金から、あるいはCoCr
PtTaNbなどの五元系合金から構成されるものが好
ましい。かかる磁性記録層は、好ましくは、スパッタ法
により、特定の成膜条件下で有利に形成することができ
る。特に、保磁力を高めるため、DC負バイアスの印加
下にスパッタ法を実施するのが好ましい。スパッタ法と
しては、例えばDCマグネトロンスパッタ法などを使用
することができる。適当な成膜条件として、例えば、約
100〜350℃の成膜温度、約1〜10mTorrの
Arガス圧力、そして約80〜400VのDC負バイア
スを挙げることができる。ここで、約300℃を上回る
成膜温度は、本来非磁性であるべき基板において磁性を
発現する可能性があるので、アルミニウム基板ではその
使用を避けることが望ましい。また、必要に応じて、ス
パッタ法に代えて、他の成膜法、例えば蒸着法、イオン
ビームスパッタ法等を使用してもよい。磁性記録層の形
成の好ましい1例を示すと、スパッタ法で、DC負バイ
アスの印加下に、150〜350℃の成膜温度で、上記
の元素群から有利に形成することができる。
【0026】さらに、強磁性の磁性記録層に隣接して配
置されるべき反強磁性の下地層(第1の下地層)は、特
に、クロムを主成分として含有しかつマンガン、ルテニ
ウム及びレニウムからなる群から選ばれた少なくとも1
種の元素が添加された合金の結晶粒子からなることが好
ましい。また、このような反強磁性の下地層の合金にお
いて、クロムに対して添加されるマンガン、ルテニウム
及びレニウムの量は、所望とする結果などのファクタに
応じて広く変更することができるというものの、通常、
マンガンの濃度が5〜80at%、ルテニウムの濃度が
2〜10at%及びレニウムの濃度が4〜12at%と
なるように添加するのが好ましい。
【0027】また、反強磁性の下地層は、上記したよう
な組成に構成することに加えて、クロムを主成分として
含有しかつマンガン、ルテニウム及びレニウムからなる
群から選ばれた少なくとも1種の元素が添加された合金
で、さらに、それに添加されたモリブデン及びタングス
テンの少なくとも1種を含む結晶粒子からなるように構
成することも好ましい。さらに、反強磁性の下地層は、
上記したような2つの典型的な組成において、追加の元
素としてさらに、白金、ルテニウム、ロジウムなどを含
有していてもよい。
【0028】本発明の磁気記録媒体において、反強磁性
の下地層はそのネール温度が100℃以上であることが
好ましい。また、面内配向に関してみた場合、反強磁性
の下地層の(100)結晶面の面内配向性が(111)
面及び(110)面のそれに比較して顕著であることが
好ましい。一方、非磁性の基板と反強磁性の下地層(第
1の下地層)との間で中間層として用いられるべき非磁
性の下地層(第2の下地層)は、好ましくは、クロムを
主成分とするものであり、その単独からなる薄膜であっ
てもよく、あるいはクロムを主成分とする合金からなる
薄膜であってもよい。非磁性の下地層をクロムと他の金
属との合金から構成することが好適である。適当な合金
としては、例えば、CrW、CrV、CrTi、CrM
oなどがあり、特にCrMo及びCrWが好ましい。必
要に応じて、Crに対してMo及びWの両者を添加して
もよい。
【0029】反強磁性の下地層及び非磁性の下地層は、
それぞれ、例えばDCマグネトロンスパッタ法などのス
パッタ法により、常用の成膜条件により形成することが
好ましい。また、アルミニウム基板などを使用する時に
は、特に、保磁力を高めるため、DC負バイアスの印加
下にスパッタ法を実施するのが好ましい。適当な成膜条
件として、例えば、約100〜300℃の成膜温度、約
1〜10mTorrのArガス圧力、そして約100〜
300VのDC負バイアスを挙げることができる。ま
た、必要に応じて、スパッタ法に代えて、他の成膜法、
例えば蒸着法、イオンビームスパッタ法等を使用しても
よい。それぞれの下地層の膜厚は、S/N比の向上等の
所望とする効果に応じて広く変更することができるとい
うものの、通常、5〜60nmの範囲であるのが好まし
い。下地層の膜厚が5nmを下回ると、磁気特性が十分に
発現しないおそれがあり、また、反対に60nmを上回る
と、ノイズが増大する傾向がある。
【0030】また、本発明の磁気記録媒体は、必要に応
じてかつ、好ましくは、その最上層として、上記した磁
性記録層の上方に、この技術分野において屡々採用され
ているように、保護膜を有することができる。適当な保
護膜としては、例えば、カーボンの単独もしくばその化
合物からなる層、例えばC層、WC層、SiC層、B 4
C層、水素含有C層など、あるいは特により高い硬度を
有するという点で最近注目されているダイヤモンドライ
クカーボン(DLC)の層を挙げることができるでき
る。特に、本発明の実施に当たっては、カーボンあるい
はDLCからなる保護膜を有利に使用することができ
る。このような保護膜は、常法に従って、例えば、スパ
ッタ法、蒸着法などによって形成することができる。か
かる保護膜の膜厚は、種々のファクタに応じて広い範囲
で変更することができるというものの、好ましくは、約
5〜15nmである。
【0031】また、上記したような保護膜に代えて、例
えば、下記の公開特許公報に開示されるようなアモルフ
ァス水素化カーボン膜(a−C:H膜)あるいはそれに
類する保護膜を使用してもよい。例えば、特開平5−8
1660号公報には、スパッタ法により形成されたアモ
ルファス水素化カーボン膜からなる保護膜が開示されて
いる。また、特開平6−349054号公報には、CS
S耐久性の改良と薄膜化のため、スパッタ法による水素
含有カーボン保護膜を、水素含有率の低い下層のカーボ
ン膜と水素含有率の高い上層のカーボン膜との少なくと
も2層膜構造とすることが開示されている。さらに、最
近、スパッタa−C:H膜に代わるべきものとして、プ
ラズマCVD法により形成したアモルファス水素化カー
ボン膜(PCVDa−C:H膜)も開示されている。例
えば、特開平7−73454号公報には、プラズマCV
D法において、反応性ガスとしてCH4 ガス、CF4
どを使用することを特徴とするカーボン保護膜製造方法
が開示されている。
【0032】本発明の磁気記録媒体は、上記したような
必須の層及び任意に使用可能な層に加えて、この技術分
野において常用の追加の層を有していたり、さもなけれ
ば、含まれる層に任意の化学処理等が施されていてもよ
い。例えば、上記した保護膜の上に、フルオロカーボン
樹脂系の潤滑層が形成されていたり、さもなければ、同
様な処理が施されていてもよい。
【0033】さらに詳細に説明すると、本発明の磁気記
録媒体の好ましい1実施形態は、図1に断面で示す通り
である。図示の形態において、磁気記録媒体10は、非
磁性の基板1と、その上に反強磁性の下地層(第1の下
地層)3を介して設けられた強磁性の磁性記録層4とか
らなる。反強磁性の下地層3は強磁性の磁性記録層4に
隣接して設けられており、特にこの実施形態では下地層
3の直上に磁性記録層4が配置されている。下地層3と
磁性記録層4をこのように配置することにより、両者の
界面に作用する交換結合力によって媒体10の熱的な安
定性を確保することができる。
【0034】本発明の磁気記録媒体10は、磁気ディス
ク装置(図示せず)の一員として用いられるものであ
り、磁気ディスク装置の運転時、浮上しているヘッド
(特にMRヘッド等)7が媒体10に接触してその損傷
を惹起するのを防止するため、磁性記録層4の表面に、
最上層としての保護膜5が設けられている。保護膜5
は、前記したように、カーボンやダイヤモンドライクカ
ーボンからなるのが好ましい。
【0035】本発明の磁気記録媒体10において、反強
磁性の下地層3と磁性記録層4とが上記したように隣接
して配置されていることが重要であり、もしもそのほう
が作用効果の面で有効であるならば、図示の態様とは反
対の側に、すなわち、磁性記録層4の基板1とは反対の
側に、その磁性記録層4に隣接して下地層3が配置され
ていてもよい。しかし、一般的には、情報の書き込みと
読み出しを行うヘッド7に付属のライト・リード素子6
と磁性記録層4とが近接しているほうが高分解能を得や
すいので、反強磁性の下地層3を磁性記録層4の下側に
配置するのが望ましい。
【0036】本発明の磁気記録媒体において、反強磁性
の下地層と強磁性の磁性記録層とが隣接して配置されて
いることが重要であることは前記した。これは、特に、
次のような理由による。面内記録方式の磁気記録媒体に
おいて高記録密度特性を得るためには、その磁性記録層
を高い結晶磁気異方性を有する材料から形成し、保磁力
を高める必要がある。したがって、磁性記録層形成性材
料としては、特に、六方晶の、1軸結晶磁気異方性を有
している材料を用いることができる。さらには、反強磁
性の下地層を形成する材料として、体心立方構造の反強
磁性の材料、特に1軸結晶磁気異方性の磁化容易軸が面
内配向するような整合面をもった立方結晶構造を有する
反強磁性の材料を用いることで保磁力を高めることがで
きる。このことを具体的に説明したものが図2の模式図
である。
【0037】図2の模式図において、反強磁性の下地層
3の結晶構造が体心立方構造であり、その直上の磁性記
録層の結晶構造が六方晶の単位セル4aからなり、1軸
結晶磁気異方性を有している場合、下地層3の(10
0)面が面内配向しているときには、その(110)面
は(100)面に垂直に配向する。さらには、下地層3
の(110)面に磁性記録層4の六方晶の(002)面
の周期がほぼ一致する場合、立方晶と六方晶の界面での
ヘテロエピタキシャル成長が進むため、六方晶の磁化容
易軸であるC軸の面内配向が行われ、面内の保磁力が増
大する。さらに加えて、立方晶の(110)面の間隔と
六方晶の(100)面の間隔がほぼ一致する場合もヘテ
ロエピタキシャル成長が進むため、上記と同じようなC
軸の面内配向が促進され、保磁力のさらなる増大が引き
起こされる。参考のために記載すると、下記の第1表
は、スパッタ法により作製した立方晶の反強磁性材料
(CrMn40)(重量%)の薄膜と、同じくスパッタ法
により作製した六方晶の強磁性材料(CoCr19Pt5
Ta2 Nb2 )(重量%)の薄膜の格子面間隔をまとめ
たものである。
【0038】 第1表 スパッタ材料 格子面間隔(Å) 立方晶(CrMn40),(110面) 2.0527 六方晶(CoCr19Pt5 Ta2 Nb2 ), (002面) 2.0921 さらに、図3は、下記の実施例で得た、アルミニウム
(Al)基板上に成膜した反強磁性の下地層(Cr60
40,at%)のX線回折プロファイルを示したグラフ
である。グラフ中、Alで示される2つの強い回折線
は、それぞれ、Al基板に由来する回折線である。Cr
60Mn40からの回折線としては、(200)面からの回
析線と(110)面からの弱い回折線が認められる。
(100)面からの回折線は消滅則により認められない
が、図示の(200)面の回折線が(100)面からの
回折線であると見なしてよい。(110)面からの回折
強度と(200)面からのそれを比較した場合、前者の
ほうが小レベルである。ここで、パウダー状の試料によ
る回折強度比はJCPDS(Joint Comitte on Powder
Diffraction Standard)のデータベースによると、同じ
結晶構造を有するCrの場合、(110)面からの回折
強度を100とすると、(200)面からの回折強度は
16であり、非常に小さいものである。ところが、図3
に示した結果では、(200)面からの回折強度が(1
10)面からの回折強度を上回っていることがわかる。
この結果から、非磁性の基板上に形成したCrMn薄膜
は、図2に示したように、その薄膜の(100)面が面
内配向していると判断できる。さらに、上記第1表に記
載の、立方晶のCrMnの面間隔と、六方晶のCoCr
PtTaNbの格子面間隔とを比較すると、立方晶の
(110)面の間隔と六方晶の(002)面の間隔がほ
ぼ等しいことがわかる。また、六方晶の(100)面の
間隔も立方晶の(110)面の間隔に近く、この場合の
ミスフィット率は8.1%である。
【0039】下記の第2表は、CrMnにMoを添加し
て作製した立方晶の反強磁性材料Cr60Mn20Mo
20(at%)の(110)面と(100)面の間隔と、
CrMnにWを添加して作製した立方晶の反強磁性材料
Cr6020Mn20(at%)の(110)面と(10
0)面の間隔を示したものである。 第2表 反強磁性材料 (110)面と(100)面の間隔(Å) Cr60Mn20Mo20 2.0761 Cr6020Mn20 2.0877 上記第2表に記載のデータから理解されるように、立方
晶のCrMn下地層に対してMoやWを添加すること
で、格子面間隔の拡張を図ることができる。したがっ
て、下地層として立方晶のCrMn合金をそのまま使用
した場合、六方晶の(100)面の間隔と立方晶の(1
10)面の間隔のミスフィット率は前記したように8%
であったが、CrMn下地層に対してMoを添加したC
60Mn20Mo20の場合にはそのミスフィット率が7.
0%に減少し、また、CrMn下地層に対してWを添加
したCr6020Mn20の場合にはそのミスフィット率が
6.5%に減少し、加えて、六方晶の(100)面と立
方晶の(110)面の整合によりさらに、面内配向を改
善することができる。また、反強磁性のCrMn合金に
MoやWを添加した系では六方晶の(002)面間隔と
立方晶の(110)面間隔が極めて近くなり、CrMn
合金薄膜の下地層よりも六方晶のC軸の面内配向性が促
進され、保磁力を増大できる。
【0040】すでに説明したように、媒体として高い保
磁力を得るためには、反強磁性の下地層(第1の下地
層)とその上の強磁性の磁性記録層との間で良好なヘテ
ロエピタキシャル成長が行われている必要がある。しか
し、反強磁性の下地層が代表的な反強磁性材料であるC
rMn合金からなるような場合、それに含まれるMnが
酸化を被りやすいので、磁性記録層のヘテロエピタキシ
ャル成長のベース層として良好な結晶性が保てなくなる
おそれがある。このようなおそれをなくするため、本発
明の実施に当たっては、図4に示すように、非磁性の基
板1と反強磁性の下地層3との間に非磁性の下地層(第
2の下地層)2を挿入することが好ましい。図示の磁気
記録媒体10は、反強磁性の下地層3に組み合わせで非
磁性の下地層2を使用した違いを除いて図1の磁気記録
媒体10に同じであり、しかし、反強磁性の下地層3の
さらなる下地として、同様の立方晶なる結晶構造を有す
る別の層2をもってくることによって、反強磁性層の結
晶性を改善し、ひいては、反強磁性層と磁性記録層との
間のヘテロエピタキシャル成長の促進の結果として保磁
力の改善を図ることができる。ここで、非磁性の下地層
2としては立方晶のCr薄膜が適しているが、しかし、
前記したように、反強磁性の下地層3が、例えばCrM
oMn、CrWMnなど、格子定数の拡張のためにMo
やWを添加したものである場合には、格子定数を整合さ
せるため、非磁性の下地層に対してもほぼ同濃度でMo
やWを添加することが好ましい。非磁性の下地層の組成
をこのように調整することによって、非磁性の下地層2
と反強磁性の下地層3との間のヘテロエピタキシャル成
長も改善できるという効果がある。本発明の磁気記録媒
体で反強磁性の下地層を形成するに当たっては、Crに
対して、Mn、Ru、Reのうち1種類以上を添加する
ことで、反強磁性材料のネール温度(反強磁性材料が反
強磁性から非磁性、すなわち、常磁性へ移行する磁気転
移温度)を向上させることができる。これを説明するた
めに、磁性体ハンドブック(1975年、朝倉書店刊)
に記載のデータから求めた、いろいろな反強磁性の下地
層のネール温度を示す図5を参照する。図5のグラフで
は、Crに対する添加元素としてMn、Ru、Reの3
種類を選択して、それらの元素の濃度(at%)の変化
に伴うネール温度の変化がプロットされている。選ばれ
た反強磁性材料に関して、そのネール温度が高ければ高
いほど、反強磁性が安定であり、下地層形成材料として
好適である。ここで、Crは300°K程度のネール温
度を有するけれども、この温度はほぼ室温に同じである
ので、磁化の安定化に寄与することができない。しかし
ながら、図5に示したように、Crに対してRuやRe
を添加した場合には、その添加量が数at%の少量であ
っても、ネール温度を約200°Kもしくはそれ以上も
向上させることができる。CrRu合金の場合、400
°K以上のネール温度を維持するのにはRuの添加量を
2〜10at%に選べばよい。CrRe合金の場合に
は、同じく400°K以上のネール温度を維持するのに
はReの添加量を4〜12at%に選べばよい。一方、
CrMn合金の場合には、Mnの添加量の増加とともに
ネール温度が上昇し、20at%の添加量に達した時点
でネール温度は飽和し、800°Kという高い値を示
す。したがって、400°K以上のネール温度を確保し
たい場合には、その所望とするネール温度に応じて、M
nの添加量を5at%以上の任意の量を選べばよい。な
お、Mnの添加量の上限は、通常、スパッタ法によって
安定に立方晶構造(bcc)が形成されるところの、8
0at%の近傍である。
【0041】さらに、本発明者らは、反強磁性の下地層
を構成するCrMn合金に対して白金(Pt)を添加す
ることで、磁性記録層とCrMnPt下地層の交換結合
力が増大し、熱安定性がさらに改善されるということを
見い出した。この交換結合力の増大の要因としては、C
rMn格子中に固溶したPt元素が内部磁界によって分
極したことが考察されるが、現在の段階では、詳細な機
構まで解明されるに至っていない。同様なメカニズム
は、CrMnに対してRuあるいはRhを添加した場合
にも発生する。実際、CrMn下地層に対してPtある
いはRu、Rhを添加することで、顕著な熱緩和現象の
抑制効果を確認することができた。
【0042】上記したように、CrMn下地層に対して
PtあるいはRu、Rhを添加することで、熱緩和現象
を顕著に抑制できるという効果がある。しかしながら、
本発明者らの研究の過程で、非磁性の基板の上にCrM
nを主成分として含有しかつPtあるいはRu、Rhを
添加した下地層を直接的に形成したものでは、形成され
た下地層の(100)面配向性がCr単独からなる下地
層に比較して若干弱くなっているということが判明し
た。下地層の(100)面配向性が弱い場合には、その
上にCoCr系合金からなる磁性記録層を形成した場合
に、C軸の面内配向性が顕著でなく、記録に十分な保磁
力が確保できない。本発明者らは、この不都合を解消す
るために鋭意研究の結果、そのようなCrMn系の下地
層と非磁性の基板との間に、Cr又はCr系合金(例え
ばCrMo)などの体心立方構造を有する追加の下地層
を設けることで、CrMn系の下地層の(100)面配
向を顕著に促進させることができるということを見い出
した。このような2層構造の下地層を形成した後にCo
Cr系合金からなる磁性記録層を形成した場合には、驚
くべきことに、磁性記録層の保磁力を格段に増大させる
ことができる。
【0043】本発明は、以上に詳細に説明した磁気記録
媒体に加えて、本発明の磁気記録媒体を使用した磁気デ
ィスク装置にある。本発明の磁気ディスク装置におい
て、その構造は特に限定されないというものの、基本的
に、磁気記録媒体において情報の記録を行うための記録
ヘッド部及び情報の再生を行うための再生ヘッド部を備
えている装置を包含する。特に、再生ヘッド部は、以下
に説明するように、磁界の強さに応じて電気抵抗が変化
する磁気抵抗素子を使用した磁気抵抗効果型ヘッド、す
なわち、MRヘッド等を備えていることが好ましい。
【0044】本発明の磁気ディスク装置において、好ま
しくは、磁気抵抗効果素子及び該磁気抵抗効果素子にセ
ンス電流を供給する導体層を有し、磁気記録媒体からの
情報の読み出しを行う磁気抵抗効果型の再生ヘッド部
と、薄膜で形成された一対の磁極を有し、磁気記録媒体
への情報の記録を行う誘導型の記録ヘッド部とが積層さ
れてなる複合型の磁気ヘッドを使用することができる。
磁気抵抗効果型の再生ヘッドは、この技術分野において
公知のいろいろな構造を有することができ、そして、好
ましくは、異方性磁気抵抗効果を利用したAMRヘッド
又は巨大磁気抵抗効果を利用したGMRヘッド(スピン
バルブ型GMRヘッド等を含む)を包含する。再生ヘッ
ド部の導体層は、いろいろな構成を有することができる
けれども、好ましくは、 1.導体層の膜厚に関して、磁気抵抗効果素子の近傍部
分を比較的に薄く形成し、その他の部分を厚く形成した
もの、 2.導体層の膜厚及び幅員に関して、磁気抵抗効果素子
の近傍部分のそれを比較的に薄くかつ細く形成し、その
他の部分を厚くかつ幅広に形成したもの、を包含する。
導体層の膜厚及び必要に応じて幅員を上記のように調整
することは、いろいろな手法に従って行うことができる
ものの、特に、導体層の多層化によって膜厚の増加を図
ることによりこれを達成することが推奨される。
【0045】特に上記したような構成の磁気ディスク装
置を使用すると、従来の複合型の磁気ヘッドに比較し
て、記録ヘッド部の磁極の湾曲を小さくするとともに導
体層の抵抗を下げ、オフトラックが小さい範囲であれ
ば、精確にかつ高感度で情報を読み出すことができる。
本発明の磁気ディスク装置は、好ましくは、その記録ヘ
ッド部及び再生ヘッド部を図6及び図7に示すような積
層構造とすることができる。図6は、本発明の磁気ディ
スク装置の原理図で、また、図7は、図6の線分B−B
にそった断面図である。
【0046】図6及び図7において、参照番号11は磁
気記録媒体への情報の記録を行う誘導型の記録ヘッド
部、12は情報の読み出しを行う磁気抵抗効果型の再生
ヘッド部である。記録ヘッド部11は、NiFe等から
なる下部磁極(上部シールド層)13と、一定間隔をも
って下部磁極13と対向したNiFe等からなる上部磁
極14と、これらの磁極13及び14を励磁し、記録ギ
ャップ部分にて、磁気記録媒体に情報の記録を行わせる
コイル15等から構成される。
【0047】再生ヘッド部12は、好ましくはAMRヘ
ッドやGMRヘッド等でもって構成されるものであり、
その磁気抵抗効果素子部12A上には、磁気抵抗効果素
子部12Aにセンス電流を供給するための一対の導体層
16が記録トラック幅に相応する間隔をもって設けられ
ている。ここで、導体層16の膜厚は、磁気抵抗効果素
子部12Aの近傍部分16Aが薄く形成され、他の部分
16Bは厚く形成されている。
【0048】図6及び図7の構成では、導体層16の膜
厚が、磁気抵抗効果素子部12Aの近傍部分16Aで薄
くなっているため、下部磁極(上部シールド層)13等
の湾曲が小さくなっている。このため、磁気記録媒体に
対向する記録ギャップの形状もあまり湾曲せず、情報の
記録時における磁気ヘッドのトラック上の位置と読み出
し時における磁気ヘッドのトラック上の位置に多少ずれ
があっても、磁気ディスク装置は正確に情報を読み出す
ことができ、オフトラック量が小さいにもかかわらず読
み出しの誤差が生じるという事態を避けることができ
る。
【0049】一方、導体層16の膜厚が、磁気抵抗効果
素子部12Aの近傍以外の部分16Bでは厚く形成され
ているため、導体層16の抵抗を全体として小さくする
こともでき、その結果、磁気抵抗素子部12Aの抵抗変
化を高感度で検出することが可能になり、S/N比が向
上し、また、導体層16での発熱も避けることができ、
発熱に起因したノイズの発生も防げる。
【0050】上記したような磁気抵抗効果型の磁気ヘッ
ドは、その多数個を薄膜技術を用いてセラミック製ヘッ
ド基板上に形成した後、ヘッド基板をヘッド毎に切り出
し、所定の形状に加工することによって製造することが
できる。さらに、本発明による磁気ディスク装置の好ま
しい1実施形態は、図8及び図9に示す通りである。な
お、図8は磁気ディスク装置の平面図(カバーを除いた
状態)、図9は図8の線分A−Aにそった断面図であ
る。
【0051】これらの図において、参照番号50はベー
スプレート51上に設けられたスピンドルモータ52に
よって回転駆動される磁気記録媒体としての複数枚(図
示の例では3枚)の磁気ディスクである。参照番号53
はベースプレート51上に回転可能に設けられたアクチ
ュエータである。このアクチュエータ53の一方の回転
端部には、磁気ディスク50の記録面方向に延出する複
数のヘッドアーム54が形成されている。このヘッドア
ーム54の回転端部には、スプリングアーム55が取り
付けられ、更に、このスプリングアーム55のフレクシ
ャー部に前述のスライダ40が図示しない絶縁膜を介し
て傾動可能に取り付けられている。一方、アクチュエー
タ53の他方の回転端部には、コイル57が設けられて
いる。
【0052】ベースプレート51上には、マグネット及
びヨークで構成された磁気回路58が設けられ、この磁
気回路58の磁気ギャップ内に、上記コイル57が配置
されている。そして、磁気回路58とコイル57とでム
ービングコイル型のリニアモータ(VCM:ボイスコイ
ルモータ)が構成されている。そして、これらベースプ
レート51の上部はカバー59で覆われている。
【0053】次に、上記構成の磁気ディスク装置の作動
を説明する。磁気ディスク50が停止している時には、
スライダ40は磁気ディスク50の退避ゾーンに接触し
停止している。次に、磁気ディスク50がスピンドルモ
ータ52によって、高速で回転駆動されると、この磁気
ディスク50の回転による発生する空気流によって、ス
ライダ40は微小間隔をもってディスク面から浮上す
る。この状態でコイル57に電流を流すと、コイル57
には推力が発生し、アクチュエータ53が回転する。こ
れにより、ヘッド(スライダ40)を磁気ディスク50
の所望のトラック上に移動させ、データのリード/ライ
トを行なうことができる。
【0054】この磁気ディスク装置では、磁気ヘッドの
導体層として、磁気抵抗効果素子部の近傍部分を薄く形
成し他の部分を厚く形成したものを用いているため、記
録ヘッド部の磁極の湾曲を小さくすると共に導体層の抵
抗を下げ、オフトラックが小さい範囲であれば正確にか
つ高感度に情報を読み出すことができる。
【0055】
【実施例】以下、本発明をその典型的な実施例を参照し
て説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって限
定されるものではないことを理解されたい。例1 磁気記録媒体(磁気ディスク)の作製 下記の層構成を有する磁気ディスクを作製した。
【0056】 ───────────────────────────────── カーボン(DLC)保護膜 8nm ───────────────────────────────── Co72Cr19Pt5 Ta2 Nb2 磁性記録層 10〜30nm ───────────────────────────────── CrMn10下地層(第1の下地層) 25nm ───────────────────────────────── TEX付きNiP/Al基板 ───────────────────────────────── よく洗浄された表面に機械的テクスチャ処理が施されて
いるNiPメッキ付きのアルミニウムディスク基板(T
EX付きNiP/Al基板)の上に、DCマグネトロン
スパッタ装置により、反強磁性材料で体心立方構造を有
するCrMn10(at%)下地層(第1の下地層とし
て)をスパッタ成膜した。最初に、成膜工程に入る前の
操作として、スパッタ室内を3×10-7Torr以下に
排気し、基板温度を280℃に高め、Arガスを導入し
てスパッタ室内を5mTorrに保持し、−200Vの
バイアスを印加しながら、Cr90−Mn10(at
%)ターゲットをスパッタした。膜厚25nmのCrMn
10下地層が得られた。
【0057】次いで、同じDCマグネトロンスパッタ装
置を使用して、同様なスパッタ条件下、CoCrPtT
aNb磁性記録層をスパッタ成膜した。CoCrPtT
aNb膜の組成式はCo72Cr19Pt5 Ta2 Nb2
あり、CoCrターゲットにPt、Ta、Nbチップを
配置した複合ターゲットを用いることによって目的とす
る組成を得た。なお、本例では、磁性記録層の特性のt
Br依存性を評価するため、tBrが30〜100Gμ
m(膜厚10〜30nmに相当)となるように成膜条件を
変更した。最後に、ダイヤモンドライクカーボン(DL
C)の保護膜を同じDCマグネトロンスパッタ装置を使
用して膜厚8nmでスパッタ成膜した。上記のような層構
成の本発明の磁気ディスク(以下、「磁気ディスク1」
と呼ぶ)が得られた。
【0058】上記と同様にして、CrMn10下地層に
代えてCrMn40下地層を使用した相違点を除いて、
磁気ディスク1と同様な層構成の本発明の磁気ディスク
(以下、「磁気ディスク2」と呼ぶ)を作製した。さら
に続けて、比較に供するため、CrMn10下地層に代
えて常磁性のCrMo10(at%)下地層を使用しか
つ磁性記録層の膜厚をそのtBrが50〜170Gμm
となるように成膜条件を変更した相違点を除いて、磁気
ディスク1と同様な層構成の比較用の磁気ディスク(以
下、「磁気ディスクA」と呼ぶ)を作製した。例2 磁気ディスクの評価 前記例1において作製した磁気ディスク1及び2ならび
に比較用磁気ディスクAについて、下記の項目に関して
特性の評価を行った。なお、組成分析にはEDX、磁気
測定にはVSMを用いた。また、残留磁化の経時変化に
はSQUIDを用いた。 (1)媒体の孤立波S/Nの、CrMn下地層の膜厚
(tBr)依存性 磁気ディスク1において、CrMn下地層のいろいろな
tBrにおける孤立波S/Nを測定したところ、添付の
図10にプロットするような結果が得られた。ここで、
S/Nの測定は、リード幅1μmでの孤立波出力と記録
密度160kFCIにおける媒体ノイズの実効値に基づ
いて実施した。すなわち、 S/N=20 log(Srms /Nrms ) である。
【0059】比較のため、磁気ディスクAについても同
様な手法に従い孤立波S/Nを測定したところ、同じく
図10にプロットするような結果が得られた。図10に
記載の結果から、本発明による磁気ディスクのようにC
rMn下地層をCoCrPtTaNb磁性記録層に隣接
して配置した場合には、同じ磁性記録層を有していても
下地層が異なる磁気ディスクA(CrMo下地層)に比
較して、孤立波S/Nに関して顕著な効果を得ることが
でき、特に120Gμm以下の領域で高い孤立波S/N
が得られるということが分かる。 (2)媒体の保磁力Hcの、CrMn下地層の膜厚(t
Br)依存性 磁気ディスク1及び2において、CrMn下地層のいろ
いろなtBrにおける保磁力Hcを測定したところ、添
付の図11にプロットするような結果が得られた。ま
た、比較のため、磁気ディスクAについても同様な手法
に従い保磁力Hcを測定したところ、同じく図11にプ
ロットするような結果が得られた。
【0060】図11に記載の結果から、本発明による磁
気ディスクのようにCrMn10下地層又はCrMn4
0下地層をCoCrPtTaNb磁性記録層に隣接して
配置した場合には、同じ磁性記録層を有していても下地
層が異なる磁気ディスクA(CrMo下地層)に比較し
て、保磁力Hcに関して顕著な効果を得ることができ、
特に磁性記録層が薄い領域で保磁力Hcの低下が少ない
ことが分かる。すなわち、tBr=30Gμmの場合の
保磁力Hcについて見ると、CrMo下地層を備えた磁
気ディスクAでは高々900Oe程度の低保磁力しか得
られないのに反して、CrMn10下地層を備えた磁気
ディスク1では約1500Oeの高い保磁力を、CrM
n40下地層を備えた磁気ディスク2では約1800O
eの高い保磁力を、それぞれ得ることができ、換言する
と、低いtBr領域において、高分解能記録を行うのに
十分な保磁力を得ることができる。低いtBr領域で高
い保磁力が発生するということは、反強磁性の下地層と
その上の磁性記録層との間に交換結合力が働いているた
めであり、よって、媒体磁化の熱に対する耐性の向上、
熱安定化を図ることができる。 (3)媒体の磁気緩和T10の、CrMn下地層の膜厚
(tBr)依存性 磁気ディスク1において、CrMn下地層のいろいろな
tBrにおける磁気緩和T10を測定したところ、添付
の図12にプロットするような結果が得られた。ここ
で、「磁気緩和T10」とは、磁気記録媒体において、
磁気飽和1秒後の残留磁化が10%緩和するのに要する
年数を意味する。
【0061】比較のため、磁気ディスクAについても同
様な手法に従い磁気緩和T10を測定したところ、同じ
く図12にプロットするような結果が得られた。図12
に記載の結果から、本発明による磁気ディスクのように
CrMn下地層をCoCrPtTaNb磁性記録層に隣
接して配置した場合には、同じ磁性記録層を有していて
も下地層が異なる磁気ディスクA(CrMo下地層)に
比較して、残留磁化の経時的な低下が膜厚全体を通じて
顕著に少なく、より安定であることが分かる。残留磁化
の安定化効果が大きいことは、一例としてtBr=40
Gμmで比較することができる。磁気飽和1秒後の残留
磁化が10%緩和するのに要する年数が、CrMo下地
層を備えた磁気ディスクAではおよそ10-4年(50
分)であったのが、本発明の磁気ディスク1のようにC
rMo下地層をCrMn10下地層に変更することを通
じて、100年まで延長することができ、熱安定性を大
幅に改善することができた。例3 磁気ディスクの作製及び評価 前記例1に記載の手法に従って、下記の層構成を有する
磁気ディスク3を作製した。なお、本例では、TEX付
きNiP/Al基板とCrMn10下地層との中間に、
第2の下地層として作用させるため、立方構造を有する
Cr下地層を膜厚25nmで成膜した。
【0062】 ───────────────────────────────── カーボン(DLC)保護膜 8nm ───────────────────────────────── Co72Cr19Pt5 Ta2 Nb2 磁性記録層 10〜30nm ───────────────────────────────── CrMn10下地層(第1の下地層) 25nm ───────────────────────────────── Cr下地層(第2の下地層) 25nm ───────────────────────────────── TEX付きNiP/Al基板 ───────────────────────────────── この磁気ディスク3において、tBr=80Gμmにお
ける保磁力Hcを測定したところ、保磁力が300Oe
程度向上し、立方構造を有するCr下地層の介在は媒体
S/Nの向上に大きく寄与し得るということが分かっ
た。例4 磁気ディスクの作製及び評価 前記例1に記載の手法に従って、CrMn10下地層の
代わりに他の下地層を設けた違いを除いて磁気ディスク
1と同様な層構成を有する磁気ディスク4及び5を作製
した。磁気ディスク4で使用した下地層は膜厚25nm
(tBr=80Gμm)でスパッタ成膜したCrRe4
(at%)下地層、そして磁気ディスク5で使用した下
地層は膜厚25nm(tBr=80Gμm)でスパッタ成
膜したCrRu10(at%)下地層である。それぞれ
の磁気ディスクと前記例1で作製した比較用の磁気ディ
スクAのtBr=80Gμmにおける保磁力Hc及び磁
気緩和T10を前記例2に記載のようにして測定したと
ころ、次のような結果が得られた。
【0063】 磁気ディスクの種類 下地層 保磁力Hc T10 磁気ディスクA CrMn10 2300Oe 1020年 磁気ディスク4 CrRe4 2100Oe 1023 磁気ディスク5 CrRu10 2150Oe 1022 上記の結果から理解されるように、下地層としてCrM
n10に代えてCrRe4又はCrRu10を採用した
場合にも、磁気緩和T10を有意に改善することができ
る。例5 磁気ディスクの作製及び評価 前記例1に記載の手法に従って、CrMn10下地層の
代わりに他の下地層を設けた違いを除いて磁気ディスク
1と同様な層構成を有する磁気ディスク6及び7を作製
した。磁気ディスク6で使用した下地層は膜厚25nm
(tBr=80Gμm)でスパッタ成膜したCrMn1
0Mo10(at%)下地層、そして磁気ディスク7で
使用した下地層は膜厚25nm(tBr=80Gμm)で
スパッタ成膜したCrMn40Mo10(at%)下地
層である。それぞれの磁気ディスクのtBr=80Gμ
mにおける保磁力Hcを前記例2に記載のようにして測
定したところ、Mo添加のCrMn下地層の作用によ
り、保磁力Hcがおよそ10%増大し、S/N及び磁気
緩和の抑制に効果があることが確認できた。
【0064】これに関連して、CrMn下地層、CrM
o下地層、CrMn10Mo10下地層及びCrMn4
0Mo10下地層のそれぞれについて、格子定数の変化
を異なるMo濃度及びMn濃度に関して測定したとこ
ろ、図13にプロットするような結果が得られた。得ら
れた結果から、CrMn10Mo10下地層を備える媒
体とCrMn40Mo10下地層を備える媒体の場合、
(110)面の間隔が1.08%拡張されたということ
が分かった。その結果、CoCrPtTaNb磁性記録
層の(002)面との格子の不整合性が2%から1%に
軽減されたため、上記のような保磁力の改善がなされた
ものであることが明らかとなった。例6 磁気ディスクの作製及び評価 前記例1に記載の手法に従って、下記の層構成を有する
磁気ディスク8を作製した。なお、本例では、第1の下
地層として、CrMn10(at%)に代えてCrMn
40(at%)を使用し、かつTEX付きNiP/Al
基板とCrMn40下地層との中間に、第2の下地層と
して作用させるため、立方構造を有するCrMo10
(at%)下地層を膜厚25nmで成膜した。
【0065】 ───────────────────────────────── カーボン(DLC)保護膜 8nm ───────────────────────────────── Co72Cr19Pt5 Ta2 Nb2 磁性記録層 25nm ───────────────────────────────── CrMn40下地層(第1の下地層) 25nm ───────────────────────────────── CrMo10下地層(第2の下地層) 25nm ───────────────────────────────── TEX付きNiP/Al基板 ───────────────────────────────── この磁気ディスク8において、tBr=80Gμmにお
ける保磁力Hcを測定したところ、CrMo10下地層
(第2の下地層)がない場合に比較して、保磁力が15
%程度向上し、媒体S/Nの向上がもたらされたという
ことが判明した。例7 磁気ディスクの作製及び評価 前記例1に記載の手法に従って、下記の層構成を有する
磁気ディスク9を作製した。なお、本例では、第1の下
地層として、CrMn10(at%)に代えてCrMn
10Pt10(at%)を使用し、かつTEX付きNi
P/Al基板とCrMn40下地層との中間に、第2の
下地層として作用させるため、立方構造を有するCrM
o10(at%)下地層を膜厚25nmで成膜した。
【0066】 ───────────────────────────────── カーボン(DLC)保護膜 8nm ───────────────────────────────── Co72Cr19Pt5 Ta2 Nb2 磁性記録層 25nm ───────────────────────────────── CrMn10Pt10下地層(第1の下地層) 25nm ───────────────────────────────── CrMo10下地層(第2の下地層) 25nm ───────────────────────────────── TEX付きNiP/Al基板 ───────────────────────────────── 得られた磁気ディスク9と前記例1で作製した磁気ディ
スク2及び比較用の磁気ディスクAについて、異なる逆
向き磁場における磁気緩和T10の変化を前記例2に記
載のようにして測定したところ、図14にプロットする
ような結果が得られた。図示の結果から、第1の下地層
としてCrMn40を用いた場合にも熱緩和の抑制効果
を発揮できるけれども、第1の下地層としてCrMn1
0Pt10を用いかつ第2の下地層としてCrMo10
を用いた場合には、より一層の熱緩和の抑制効果が得ら
れるということが分かる。特に、CrMnPt下地層を
用いた場合、反磁界を作用させた場合でも顕著な熱緩和
抑制効果が得られるということで注目に値する。
【0067】下記の表は、それぞれの媒体について、保
磁力(Oe)及びtBr(Gμm)を示したものであ
る。 磁気ディスクの種類 第1の下地層 保磁力Hc tBr 磁気ディスクA CrMn10 2486Oe 77Gμm 磁気ディスク2 CrMn40 2144Oe 75Gμm 磁気ディスク9 CrMnPt 2417Oe 77Gμm 例8 磁気ディスクの評価 前記例1において作製した磁気ディスク2において、T
EX付きNiP/Al基板上に成膜した反強磁性のCr
Mn40下地層の結晶構造をX線回折により調べたとこ
ろ、図3にプロットするような結果が得られた。図示の
X線回折プロファイルから、高角側に(002)面から
の回折ピークが認められ、反強磁性の下地層の(10
0)結晶面の面内配向性が(111)面ならびに(11
0)面の面内配向性に比べて顕著であることが確認でき
た。例9 磁気ディスクの評価 前記例1で作製した磁気ディスク2及び比較用の磁気デ
ィスクAについて、−25℃から100℃までの異なる
温度における保磁力Hcを測定し、その測定値から保磁
力の温度係数を求めたところ、次表に示すような結果が
得られた。
【0068】 磁気ディスクの種類 保磁力Hc tBr Hc温度係数 磁気ディスクA 2486Oe 77Gμm 7000rpm 磁気ディスク2 2144Oe 75Gμm 4500rpm 上記の表に記載の結果から、反強磁性の下地層を採用す
ることにより、保磁力の温度係数を制御することがで
き、また、これにより、低温度動作領域でのオーバーラ
イト特性を改善できるということが分かる。例10 磁気ディスクの評価 前記例1〜例7で作製した磁気ディスク1〜9のそれぞ
れについて、磁気ディスク装置に実装した場合の特性に
関して評価した。 (1)CSS耐久性 それぞれの媒体の耐久性を評価するため、CSS耐久性
を測定した。その結果、いずれの媒体も15000回以
上の優れた耐久性を有していることが確認された。な
お、優れた耐久性は、基板表面に施された機械的テクス
チャ処理(平均表面粗さRa=0.8〜1.5nm)や最
上層において形成されたDLC保護膜(膜厚8nm)に由
来するところが大きいと理解される。 (2)装置S/N特性及び面記録密度 それぞれの媒体のtBr値は20〜130Gμmであ
る。磁気ディスク装置においてシールドギャップが0.
25μmのMRヘッドを使用する場合には、220kB
PIなる線記録密度(実効リードコア幅:1.4μm)
において、装置S/N特性を最良にするためには媒体の
tBr値が110Gμmであることが必要であり、ま
た、この時の面記録密度は1.5Gb/in2 であること
が確認された。
【0069】また、磁気ディスク装置においてシールド
ギャップが0.18μmのスピンバルブ型GMRヘッド
を使用する場合には、280kBPIなる線記録密度
(実効リードコア幅:1.0μm)において、装置S/
N特性を最良にするためには媒体のtBr値が70Gμ
mであることが必要であり、また、この時の面記録密度
は3Gb/in2 であることが確認された。 (3)吸着性及び分解能 それぞれの媒体では、NiP/Al基板の表面に機械的
テクスチャ処理を施して、ほぼヘッド走行方向にそって
溝筋を入れ、これによって、周方向への磁気異方性を付
与している。
【0070】ここで、tBr値が110Gμmである媒
体において、その配向比(周方向と径方向の保磁力の
比)は1.2であった。1.5Gb/in2 記録用の媒体
において、20nmのグランドハイトを確保するために、
基板表面の平均表面粗さRaを1.4nmに調整したとこ
ろ、媒体の静止時に発生する吸着性(スティクション)
の改善と、周方向への磁気異方性付与による分解能の向
上を同時に達成することができた。
【0071】また、tBr値が75Gμmである媒体に
おいて、その配向比(周方向と径方向の保磁力の比)は
1.2であった。3Gb/in2 記録用の媒体において、
20nmのグランドハイトを確保するために、基板表面の
平均表面粗さRaを1.0nmに調整したところ、媒体の
静止時に発生する吸着性(スティクション)の改善と、
周方向への磁気異方性付与による分解能の向上を同時に
達成することができた。
【0072】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれ
ば、媒体の薄膜化と磁性粒子間の磁気的な相互作用の抑
制による低ノイズ化とを通じて高密度記録を面内記録方
式で実現することができる。また、その際、従来の媒体
では回避することが不可能であった問題点、すなわち、
記録情報の熱的不安定性や低温環境下でのオーバーライ
ト不良を防止することができる。したがって、本発明に
よれば、20Gb/in2 を超える超高記録密度が可能で
あるとともに、長期間にわたって記録情報を安定に保持
し、低温環境下でも良好なオーバーライト特性を有し、
信頼性の高い情報記録を行うことが可能な磁気記録媒体
を提供するができる。さらに、本発明によれば、このよ
うな優れた磁気記録媒体を使用した従来装置に比較して
高密度記録が可能な磁気ディスク装置を提供することも
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による磁気記録媒体の好ましい1実施形
態を示す断面図である。
【図2】本発明の磁気記録媒体における反強磁性の下地
層とその上の磁性記録層の結晶構造を示す模式図であ
る。
【図3】本発明の磁気記録媒体における反強磁性の下地
層のX線回折プロファイルを示したグラフである。
【図4】本発明による磁気記録媒体のもう1つの好まし
い実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の磁気記録媒体におけるいろいろな反強
磁性の下地層のネール温度を示したグラフである。
【図6】本発明による磁気ディスク装置の原理を示す断
面図である。
【図7】図6の磁気ディスク装置の線分B−Bにそった
断面図である。
【図8】本発明による磁気ディスク装置の好ましい1実
施形態を示す平面図である。
【図9】図8の磁気ディスク装置の線分A−Aにそった
断面図である。
【図10】本発明の磁気記録媒体における孤立波媒体S
/NのtBr依存性を示したグラフである。
【図11】本発明の磁気記録媒体における保磁力Hcの
tBr依存性を示したグラフである。
【図12】本発明の磁気記録媒体における磁気緩和T1
0(磁気飽和1秒後の残留磁化が10%緩和するのに要
する年数)のtBr依存性を示したグラフである。
【図13】本発明の磁気記録媒体におけるいろいろな反
強磁性の下地層の格子定数を示したグラフである。
【図14】本発明の磁気記録媒体における磁気緩和T1
0(磁気飽和1秒後の残留磁化が10%緩和するのに要
する年数)の逆向き磁場依存性を示したグラフである。
【符号の説明】
1…非磁性の基板 2…非磁性の下地層 3…反強磁性の下地層 4…磁性記録層 5…保護膜 6…ライト・リード素子 7…MRヘッド 10…磁気記録媒体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 奥山 智明 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1番 1号 富士通株式会社内 Fターム(参考) 5D006 AA02 BB02 BB07 CA01 CA04 CA05 DA03 EA03 FA00 5E049 AA04 AA09 AC00 AC05 BA06 BA12 DB02 DB12

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性の基板上に磁性記録層を設けてな
    る磁気記録媒体において、 前記磁性記録層が強磁性の材料から形成されており、か
    つ前記磁性記録層に隣接して反強磁性の材料からなる反
    強磁性の下地層がさらに設けられていることを特徴とす
    る磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記非磁性の基板の上に前記反強磁性の
    下地層が設けられており、かつ前記反強磁性の下地層の
    直上に前記磁性記録層が設けられていることを特徴とす
    る請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記反強磁性の下地層が体心立方構造の
    結晶粒子からなり、そして前記磁性記録層が六方構造の
    結晶粒子からなりかつ1軸結晶磁気異方性を有している
    ことを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 前記反強磁性の下地層が、クロムを主成
    分として含有しかつマンガン、ルテニウム及びレニウム
    からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素が添加さ
    れた合金の結晶粒子からなることを特徴とする請求項3
    に記載の磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】 前記反強磁性の下地層の合金において、
    クロムに対して添加されるマンガン、ルテニウム及びレ
    ニウムの量が、それぞれ、5〜80at%、2〜10a
    t%及び4〜12at%であることを特徴とする請求項
    4に記載の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 前記反強磁性の下地層が、クロムを主成
    分として含有しかつマンガン、ルテニウム及びレニウム
    からなる群から選ばれた少なくとも1種の元素が添加さ
    れた合金で、さらに、それに添加されたモリブデン及び
    タングステンの少なくとも1種を含む結晶粒子からなる
    ことを特徴とする請求項3に記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 前記反強磁性の下地層の合金において、
    さらに白金が含まれることを特徴とする請求項4〜6の
    いずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】 前記反強磁性の下地層が100℃以上の
    ネール温度を有していることを特徴とする請求項1〜7
    のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】 前記非磁性の基板上と前記非磁性の基板
    との間に、立方構造の結晶粒子からなる非磁性の下地層
    がさらに介在せしめられていることを特徴とする請求項
    3に記載の磁気記録媒体。
  10. 【請求項10】 前記非磁性の下地層が、クロムを主成
    分として含有する合金で、それに添加されたモリブデン
    及びタングステンの少なくとも1種を含む結晶粒子から
    なることを特徴とする請求項9に記載の磁気記録媒体。
  11. 【請求項11】 前記磁性記録層が20〜130Gμm
    のtBr(磁性記録層の膜厚tと残留磁化密度Brの
    積)を有していることを特徴とする請求項1〜10のい
    ずれか1項に記載の磁気記録媒体。
  12. 【請求項12】 前記磁性記録層の上に、カーボン又は
    ダイヤモンドライクカーボンを主体とする保護膜をさら
    に有していることを特徴とする請求項1〜11のいずれ
    か1項に記載の磁気記録媒体。
  13. 【請求項13】 磁気記録媒体において情報の記録を行
    うための記録ヘッド部及び情報の再生を行うための再生
    ヘッド部を備えた磁気ディスク装置であって、前記磁気
    記録媒体が請求項1〜12のいずれか1項に記載の磁気
    記録媒体であり、そして前記再生ヘッド部が磁気抵抗効
    果型ヘッドを備えていることを特徴とする磁気ディスク
    装置。
  14. 【請求項14】 前記磁気抵抗効果型ヘッドが、MRヘ
    ッド、AMRヘッド、GMRヘッド又はスピンバルブ型
    GMRヘッドであることを特徴とする請求項13に記載
    の磁気ディスク装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7247395B2 (en) 2001-12-14 2007-07-24 Fuji Electric Device Technology Co., Ltd. Magnetic recording medium exhibiting low noise and high coercive force
USRE41282E1 (en) 2001-08-31 2010-04-27 Fuji Electric Device Technology Co., Ltd. Perpendicular magnetic recording medium and a method of manufacturing the same
US8252152B2 (en) 2001-12-07 2012-08-28 Fuji Electric Co., Ltd. Perpendicular magnetic recording medium and method of manufacturing the same and product thereof

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