JP2000084057A - 消臭性ネット及びそれを備えた空調機器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 消臭速度が速く、しかも、空気が流動する環
境でも消臭効果が有効で、除去した臭気分子の再放出が
無くかつ低コストで、空調装置等に応用が可能な消臭性
フィルタを提供すること。 【解決手段】 多孔質性ナイロン繊維に遷移金属キレー
ト触媒（フタロシアニン）を染色させて形成したナイロ
ンネットを枠に固着した消臭性ネット５と、アパタイト
と活性炭を複合化した抗菌脱臭ハニカムフィルタ３を例
えば、エアコン室内機内に配置する。臭気が吸着した消
臭性ネットは水洗いすることにより、消臭効果を再生す
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、室内の臭気を無臭
化する消臭性ネット及びそれを備えた例えば、エアコン
室内機と空気清浄機等の空調機器に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般家庭における集塵や脱臭などの要望
は年々強くなってきている。気密性の高い家屋では、特
に臭いがこもりやすく、タバコ臭、汗による臭い、乳児
の臭い等を取り除きたい要望が強まっている。これに対
応するため、エアコンや空気清浄機を中心に脱臭・消臭
機能が取り入れられている。消臭方式は、活性炭吸着、
レドックス触媒酸化、光触媒酸化、オゾン酸化によるも
のが採用されている。触媒作用はレドックス触媒作用が
中心であり、金属酸化物や貴金属、有機金属キレート化
合物が用いられる。吸着作用は臭気分子を吸着すること
により室内から除くもので、臭気分子と錯体を形成する
極めて多くの臭気吸着剤が開発されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】タバコの臭気には、ア
セトアルデヒド、アンモニア、低級アミン、炭化水素、
硫化水素等が含まれている。通常良く用いられる活性炭
は、無極性吸着剤として極めて優れた吸着性を有する材
質で、殆ど全てのガスに対して高い吸着性を有してい
る。しかしながら、例外的に、硫黄化合物、アルデヒド
類に対する 吸着性が低い。他方、タバコの臭気には、
アセトアルデヒド、アンモニア、低級アミン、炭化水
素、硫化水素等が含まれており、特に、活性炭の弱点で
あるアセトアルデヒドの比率が高い。したがって、通常
の活性炭だけで、これらの臭気を除去することは困難と
なる。そのため、活性炭では充分に除去できない硫化水
素やアンモニア、アセトアルデヒドの除去が大きな課題
となっている。また、空気循環用の送風ファンの音を小
さくしたり、送風ファンに負荷がかからないようにする
ために、著しく圧損失が低い消臭フィルタが求められて
いる。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、触媒作用によ
り臭気成分を分解する遷移金属キレート化合物を組み合
わせて用いるものである（この遷移金属キレート化合物
を用いた酸化触媒法は、これらの問題を解決する手段と
して検討されてきたものであって、例えば、戸嶋直樹著
「工業材料」10月号45頁(1991)、白井江芳著「工業材
料」10月号58頁(1991)に記載されている）。

【０００５】請求項１の発明は、化学繊維に遷移金属キ
レート触媒を染色させた消臭性ネットであって、脱臭後
に吸着した臭気ガスを水洗いにより脱離させて消臭機能
を再生させることを特徴とする消臭性ネットである。

【０００６】請求項２の発明は、請求項１に記載された
消臭性ネットにおいて、前記化学繊維は、多孔質性ナイ
ロン繊維であって、遷移金属キレート触媒を染色させた
後に、熱処理を施して繊維内部に強固に付着させたもの
であり、水洗いにより脱色しないものであることを特徴
とする消臭性ネットである。

【０００７】請求項３の発明は、請求項２に記載された
消臭性ネットにおいて、前記熱処理の温度が８０℃から
１５０℃の範囲であることを特徴とする消臭性ネットで
ある。

【０００８】請求項４の発明は、請求項２又は３に記載
された消臭性ネットにおいて、前記遷移金属キレート触
媒が金属フタロシアニン化合物であることを特徴とする
消臭性ネットである。

【０００９】請求項５の発明は、請求項１に記載された
消臭性ネットと、抗菌効果と吸着作用を有するアパタイ
トと活性炭からなる複合ハニカムフィルタを備えた空調
機器である。

【００１０】請求項６の発明は、請求項５に記載された
空調機器が、例えば、エアコン室内機、空気清浄機であ
ることを特徴とする空調機器である。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明は、空気取り込み口と熱交
換器の間に設置したフィルタは、ポリプロピレン等の射
出成型製外枠に化学吸着または触媒作用による消臭機能
を有するナイロンネットを熱圧着もしくは超音波接着に
より固定して作製した消臭性ネットと、外枠に設けたポ
ケットに抗菌効果のあるアパタイトハニカムフィルタを
装着させた構造である。抗菌効果のあるアパタイトハニ
カムフィルタには、アパタイトを含有させた不織布シー
トと活性炭を含有させた不織布シートから構成されてい
る。これらのシートをコルゲート加工した波形板と仕切
板を交互に重ね合せ、その重ね合わせた部分を接着剤で
接着して積層体を作製する。シートに付着させたアパタ
イトには、ウイルスを不活化（活動を抑制する）し繁殖
力を抑える作用がある。活性炭をシートに含有させるに
は、活性炭微粒子をシートの中へすき込むか、または微
粒子をインクのような形態として表面に塗布する。遷移
金属キレート化合物の中でも、オクタカルボン酸鉄フタ
ロシアニンが有効である。オクタカルボン酸鉄フタロシ
アニンは酸素と水の存在下で硫化水素やメルカプタンを
分解する。従って、活性炭は水分に弱く、湿度が高くな
ると脱臭効果が低下するのに対し、オクタカルボン酸鉄
フタロシアニンは、水分がある環境、即ち湿度の高いと
ころでは優れた消臭効果を発揮する。また、鉄フタロシ
アニン誘導体のカルボニル基にアンモニア等の窒素系ガ
スが化学吸着するため、窒素系ガスを効果的に除去する
ことができる。

【００１２】また、長期問に渡って消臭性ネットを使用
すると、吸着作用による消臭であるため、アンモニア等
の窒素系ガスに対する消臭性能が低下するが、消臭性ネ
ットを水洗いすることにより、化学吸着した窒素系ガス
を脱離させて、消臭性能を再生することができる。さら
に、繰り返し水洗いすることにより、ネットの消臭効果
を長期間に渡って持続することができる。

【００１３】以下、実施例について本発明をさらに詳し
く説明するが、本発明はこれにより何等限定されるもの
ではない。水酸化カリウムを溶かしたアルカリ水溶液
に、消臭性触媒であるオクタカルボニル鉄フタロシアニ
ンを加えて溶かした。溶液を６０℃の温度に保ち、この
溶液中に多孔質性ナイロンネットを浸漬して充分膨潤た
させた後、濡れた状態で１００℃で１０分間送風しなが
ら乾燥した。なお、本実施例では乾燥温度を１００℃で
行なったが、乾燥温度は８０℃から１５０℃の範囲であ
れば、オクタカルボニル鉄フタロシアニンは繊維内部に
強固に固着する。送風乾燥させた後、ネットを希塩酸溶
液に浸漬して中和させた。十分に水洗した後に再度乾燥
して、鉄フタロシアニンを染色させたナイロンネットを
作製した。このナイロンネットをポリプロピレン製枠に
熱圧着法により固着させて消臭性ネットを得た。

【００１４】活性炭を含有させたポリエステル不織布を
ダンボール加工機によりコルゲート加工して波状シート
を作製した。この波状シートと未加工のアパタイト含有
不織布からなる平板状シートを交互に重ねて接着し、ダ
ンボール構造とした。外枠には厚めのポリエステル不織
布を用いて補強した。シートの接着には、ポリアミド系
接着剤を用いた。この構造体を厚さ５ｍｍにスライスし
てハニカムフィルタを作製した。このときのセル１ヶの
開口部面積は０.３ｃｍ²とした。この消臭性ネット２枚
とアパタイト活性炭複合ハニカムフィルタ(サイズ:１５
ｃｍ×６ｃｍ)２枚を装着したエアコン室内機を１ｍ³ア
クリル製ボックス内にセットした。評価用ボックス内を
温度２５℃、湿度６０％とし、一般的な家屋の雰囲気に
調整した。ボックス内で煙草（マイルドセブン）５本を
機械喫煙させ、室内機により風景３ｍ^３／分で内部循環
し脱臭させた。

【００１５】その前後のガス濃度をアンモニア、アセト
アルデヒド、酢酸用のガス検知管で測定し、トータル除
去率を算出した。このときの３０分後のトータル除去率
は６８％であった。それに対し、従来品であるポリプロ
ピレン製防塵ネットのみを装着した場合には２３％であ
った。

【００１６】図１は本発明の消臭性ネットと、抗菌効果
と吸着作用を有するアパタイトと活性炭からなる複合ハ
ニカムフィルタを備えた空調機器を示す。図中１は送付
ファン、２はフィン、３は抗菌脱臭ハニカムフィルタ、
４は空気吸入口、５は消臭性ネット、６は熱交換器であ
る。送付ファン１により、空気吸入口４から吸入された
空気は、消臭性ネット５及び抗菌脱臭ハニカムフィルタ
３により脱臭及び除菌が施され、熱交換器６で熱交換さ
れて空調機器から排気されるようになっている。これに
より、脱臭と共にインフルエンザや雑菌の吸着除去と不
活化を高めることができる。

【００１７】

【発明の効果】本発明によれば、枠にフタロシアニン染
色ナイロンネットを固着した消臭性ネットとアパタイト
活性炭複合ハニカムフィルタを配置したことにより、塵
挨や臭気を空気中から取り除くことができるので、部屋
の空気が清浄化されてより快適で健康的な居住空間をつ
くりだすことができる。また、臭気ガスが吸着した消臭
性ネットを水洗いすることにより、消臭効果を再生する
ことができ、繰り返し水洗いすることにより消臭効果を
長期問に渡って維持できる。また、アパタイトの抗菌作
用により、インフルエンザや雑菌の吸着除去と不活化を
高め、健康的環境も実現できる。

【図面の簡単な説明】

【図1】本発明の消臭性ネットを備えた空調機器の１実
施例を示す。

【符号の説明】

１…送付ファン、２…フィン、３…抗菌脱臭ハニカムフ
ィルタ、４…空気吸入口、５…消臭性ネット、６…熱交
換器。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 和辻 徹 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 (72)発明者 野島 秀雄 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 Ｆターム(参考） 3L053 BD03 4C080 AA05 BB02 BB05 CC02 CC04 CC08 CC12 HH05 JJ05 KK08 LL10 MM05 NN28 QQ01 QQ03 QQ11 QQ17

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 化学繊維に遷移金属キレート触媒を染色
   させた消臭性ネットであって、脱臭後に吸着した臭気ガ
   スを水洗いにより脱離させて消臭機能が再生可能である
   ことを特徴とする消臭性ネット。
2. 【請求項２】 請求項１に記載された消臭性ネットにお
   いて、前記化学繊維は、多孔質性ナイロン繊維であっ
   て、遷移金属キレート触媒を染色させた後に、熱処理を
   施して繊維内部に強固に付着させたものであり、水洗い
   により脱色しないものであることを特徴とする消臭性ネ
   ット。
3. 【請求項３】 請求項２に記載された消臭性ネットにお
   いて、前記熱処理の温度が８０℃から１５０℃の範囲で
   あることを特徴とする消臭性ネット。
4. 【請求項４】 請求項２又は３に記載された消臭性ネッ
   トにおいて、前記遷移金属キレート触媒が金属フタロシ
   アニン化合物であることを特徴とする消臭性ネット。
5. 【請求項５】 請求項１に記載された消臭性ネットと、
   抗菌効果と吸着作用を有するアパタイトと活性炭からな
   る複合ハニカムフィルタを備えた空調機器。
6. 【請求項６】 請求項５に記載された空調機器が、例え
   ば、エアコン室内機、空気清浄機であることを特徴とす
   る空調機器。