JP2000061667A - ガラスのレーザ加工方法及びガラス成形品 - Google Patents

ガラスのレーザ加工方法及びガラス成形品

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JP2000061667A
JP2000061667A JP10247720A JP24772098A JP2000061667A JP 2000061667 A JP2000061667 A JP 2000061667A JP 10247720 A JP10247720 A JP 10247720A JP 24772098 A JP24772098 A JP 24772098A JP 2000061667 A JP2000061667 A JP 2000061667A
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yag laser
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Junichi Ikeno
順一 池野
Kazunari Umetsu
一成 梅津
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Seiko Epson Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 YAGレーザでガラスに微細な深穴をクラッ
クフリーで直接加工する。 【解決手段】 YAGレーザ吸収率の高い成分を含有す
るガラスからなる被加工物に向けてパルス発振YAGレ
ーザを照射する。YAGレーザの照射エネルギは、使用
するガラスに含まれる高YAGレーザ吸収率成分に応じ
て所定の閾値以上に設定する。レーザ光の焦点位置は、
被加工物の表面と裏面との中間付近に、より好適には表
面・裏面の中間位置より下方に設定し、照射エネルギを
特定の位置に集中することなくその厚さ方向に均一に分
散させ、表裏両面から貫通穴を成長させる。 【効果】 加工工程及び作業の簡単化、加工時間の短縮
及び加工コストの低減化が図られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザ光を用いて
ガラスなどの透明材料に微細な穴、特に貫通穴を形成す
ることができるレーザ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ガラスなどの透明材料に微細
な穴あけ加工を行うために、回転砥石、ドリル、超音波
などを用いた加工方法又は砥粒を噴射するマイクロブラ
スト法などの機械的加工方法や、溶液を用いるウェット
エッチングなどの化学的方法が一般に採用されている。
また最近は、電子ビームやイオンビーム、レーザ光を照
射するエネルギビーム加工が行われている。
【0003】レーザ加工では、一般に紫外光であるエキ
シマレーザやCO2 レーザなどの気体レーザが使用され
ている。更に、ジャイアントパルスと呼ばれる高ピーク
出力のレーザを用いると、可視光や近赤外光による加工
が可能であるとの研究報告がある。他方、比較的安価で
操作性が良く、取扱いも簡単なために幅広い用途に利用
されているYAGレーザは、一般にガラス材料に対する
吸収率が低いので加工できないとされている。
【0004】YAGレーザに関する池野順一らの論文
「溶液を用いた石英ガラスのYAGレーザ加工」(精密
工学会誌 55/2/1989、第93〜98頁)によれば、金属イオ
ン含有溶液を厚さ1.5mmの透明石英ガラス板の表面に
滴下し、又はその裏面に接触させてパルス発振YAGレ
ーザを照射すると、該溶液がレーザ光を吸収して高熱を
発生し、石英ガラスを溶融させて貫通穴を形成できるこ
とが報告されている。また同論文には、不純物を含む一
般ガラスの場合、その表面にマジックインキを塗布する
だけで、上述した溶液なしで同様に貫通穴をレーザ加工
可能なことが記載されている。
【0005】ところが、池野らの別の報告(「結晶化ガ
ラスのYAGレーザ加工」、1997年度精密工学会秋季大
会学術講演会論文集、第232頁)によれば、結晶化ガラ
スの表面に焦点を合わせてレーザ光を照射した場合、ガ
ラス内部に溶融部が形成されるため、その出力が閾値を
超えた途端にクラックが発生してガラスが破壊される。
そこで、ガラス表面に顔料を塗布し、これにパルス発振
YAGレーザ光を照射して該表面に溶融部を形成し、外
部に飛散除去することにより、このクラック発生の問題
を解消して、厚さ4mmの結晶化ガラス板に貫通穴を形成
している。
【0006】この加工メカニズムについて、同じく池野
順一の論文「YAGレーザを用いたガラスの3次元穴あ
け加工」(レーザ学会研究会報告、No.RTM-98-4、社
団法人レーザ学会、1998年1月30日発行、第23〜27頁)
によれば、加工穴に加工変質層が観察されることから、
顔料がYAGレーザを吸収してガラスが溶融することに
より加工変質層が形成され、この加工変質層が次のレー
ザ光を吸収して加工が進行すると分析している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の加工方法には次のような問題がある。先ず、マ
イクロブラスト法などの機械的加工方法では、加工穴の
微細化に限度があり、かつ加工穴の開口周辺にチッピン
グ即ち微小な欠けが生じ易いなど、品質上の問題を生じ
る虞がある。また、ウェットエッチングは、被加工物の
材質により使用可能なエッチング液が制限される場合が
あり、また微細な深穴を加工することが困難で、加工速
度が遅いなどの不都合がある。同様に、電子ビームやイ
オンビームなどの加工装置は一般に高額であり、かつ加
工速度が非常に遅い。
【0008】レーザ加工の場合、エキシマレーザは装置
が高額でランニングコストが高く、かつ装置のメンテナ
ンス性が悪いなどの問題がある。CO2 レーザは、熱的
加工を行ないかつ出力が大きいために、加工部周辺の広
範囲に亘って熱歪みによるクラックを発生させ易く品質
を損なう虞があり、また波長が長いために集光性が低
く、微細加工には不向きである。ジャイアントパルスレ
ーザも同様に装置が高額で、しかもピーク出力が高過ぎ
るために光学系にダメージを与える虞がある。
【0009】また、上記池野らの論文に記載されるYA
Gレーザ加工は、被加工物の表面に溶液を接触させた
り、顔料などを塗布する必要があるため、加工工程及び
作業が複雑かつ面倒で時間及び手間を要し、生産性の低
下、コストの上昇を招く虞がある。
【0010】そこで、本発明の目的は、上述した従来技
術の問題点を解消することにあり、比較的安価で取扱い
が簡単なYAGレーザを使用して、加工工程及び作業の
簡単化、加工時間の短縮及び加工コストの低減化を図る
ことができ、その表面に溶液や顔料などを塗布すること
なく、ガラスに微細で深い穴をクラックフリーで直接加
工できるレーザ加工方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本願発明者は、ガラスに
パルス発振YAGレーザを照射した場合、その照射エネ
ルギがある閾値を超えると、前記溶液・顔料を使用しな
くても、ガラスに貫通穴を直接形成できることを見い出
した。
【0012】そこで、本発明によれば、ガラスからなる
被加工物に向けてパルス発振YAGレーザを照射する過
程からなり、前記ガラスがYAGレーザ吸収率の高い成
分を含有し、かつ前記YAGレーザの照射エネルギを所
定の閾値以上に設定することを特徴とするガラスのレー
ザ加工方法が提供される。
【0013】被加工物のガラスに含まれるYAGレーザ
吸収率の高い成分が、その閾値を超えた照射エネルギを
吸収して高熱を発生し、周囲の材料を溶融させることに
より、比較的揮発し易い成分が先に蒸発して溶融部分の
組成が変化し、この加工変質層にレーザ光が吸収されて
加工が進行し、貫通穴が形成される。更に、パルス発振
YAGレーザでは、レーザ光照射中に溶融物が除去され
るため熱歪みが残らず、その結果硬質脆性材料であるガ
ラスに対してもクラックを生じ難い。
【0014】このようなガラスとしては、レーザ照射に
より上述した加工変質層が形成されるガラスを用いるこ
とができ、特に不純物を含むガラスが好適である。具体
的には、一般に市販されているソーダ石灰ガラス、硬質
ガラス(石英ガラスを除く)、クリスタルガラスなどが
含まれる。これらガラス材料に含まれるアルミナなどの
成分はYAGレーザを吸収し易く、レーザ照射により穴
あけ加工に必要な高熱を発生するので、上述した従来技
術のレーザ加工のようにガラス表面に溶液や顔料を用い
る必要がない。
【0015】パルス発振YAGレーザの照射エネルギの
閾値は、該レーザのパルス出力により決定され、このパ
ルス出力はパルス幅とピーク出力とにより調整すること
ができる。具体的な閾値は、被加工物のガラスの組成、
それに含まれる高YAGレーザ吸収率成分の種類及び量
(割合)によって異なる。
【0016】また、YAGレーザの焦点位置は、前記被
加工物の表面と裏面との中間付近に設定すると、照射エ
ネルギが特定の位置に集中することなくその厚さ方向に
分散し、表裏両面から貫通穴が成長するので好ましく、
特に表面・裏面の中間位置より下方に設定すると、照射
エネルギがより均一に分散するので、穴径をより均一に
かつクラックの発生を抑制して良質な穴あけ加工を行う
ことができ、好都合である。
【0017】更に、例えば集光前のビーム径、集光レン
ズの焦点距離などを調整して、被加工物の表面及び裏面
の双方が溶融するように、前記YAGレーザの照射条件
を設定すると、表裏両面から加工穴が成長して、被加工
物をより効率良く、加工部分以外の部分に悪影響を実質
的に与えることなく又は最小限にして、穴あけ加工を行
うことができるので好都合である。
【0018】或る実施例によれば、最初に、第1の閾値
以上の照射エネルギで第1のYAGレーザを照射するこ
とにより、ガラスに前記加工変質層を形成し、次に、前
記第1の閾値より大きい第2の閾値以上の照射エネルギ
で第2のYAGレーザを照射することにより、前記加工
変質層を溶融除去する。第1のYAGレーザは、貫通穴
を加工するものではなく、加工変質層を効率よく形成で
きれば良いから、集光性の良し悪しは問題とならない。
これに対し、第2のYAGレーザは、最終的に貫通穴を
加工するものであるから、加工変質層に吸収され易い波
長で集光性の良いレーザ光を用いることが好ましい。
【0019】また、本発明によれば、上述したガラスの
レーザ加工方法により加工されたガラス成形品が提供さ
れる。
【0020】
【実施例】本発明のレーザ加工方法を用いて、硬質ガラ
スの一種で「パイレックス」(商標)の商品名で市販さ
れているホウケイ酸ガラスの薄板(厚さ1mm)に微細穴
あけ加工を行った。先ず、レーザの照射エネルギの変化
に対する加工穴の状態を実験した。
【0021】パルス発振YAGレーザを次の加工条件で
使用した。 レーザ波長 : 1064nm 広がり角 : 5mrad エキスパンダ: ×3 集光レンズ : f50mm 最小ビーム径: φ0.25mm 集光角度 : 9.2deg 照射パルス数: 1 レーザ光のパルス幅は500μs、750μs、100
0μsの3段階で、ピーク出力は3.70kW、5.4
4kW、7.70kW、10.08kWの4段階でそれ
ぞれ変更し、これらの組合せで照射エネルギのパワー出
力を次表のように決定した。レーザ光の焦点位置は、前
記ガラス薄板の表面と裏面との中間位置に固定した。
【0022】
【表1】
【0023】(パルス幅500μsの場合)この結果、
パルス幅500μsでは、ピーク出力10.08kW
(パルス出力5.04J/パルス)において、図1
(A)に示すように、ガラス薄板1の裏面2から表面3
に向けて円柱状の穴4が板厚の約3分の1程度の深さま
で成長したが、加工穴4の底部から表面に向けて大きな
クラック5が発生し、表面3は全く加工されなかった。
しかし、加工穴4の周囲及びその底部から表面に達しな
い位置まで、加工変質層6の形成が認められた。加工変
質層6は、上述したように、ガラスの揮発し易い成分が
先に蒸発してその組成が変化した部分で、屈折率が変化
しているため、光学顕微鏡で容易に確認することができ
た。
【0024】ピーク出力7.70kW(パルス出力3.
85J/パルス)では、図1(B)に示すように、ガラ
ス薄板裏面2に僅かな円形穴4が形成され、その底部か
ら表面3側にクラック5が生じただけであった。円形穴
4の周囲及びその底部から表面に向けて加工変質層6が
同様に形成された。これより小さいピーク出力即ち照射
エネルギでは、前記ガラス薄板は表面及び裏面共に加工
されなかった。但し、ピーク出力5.44kW(パルス
出力2.72J/パルス)では、図1(C)に示すよう
に、ガラス薄板裏面2側に小さな加工変質層6の形成が
認められた。
【0025】(パルス幅750μsの場合)パルス幅7
50μsでは、いずれの場合も貫通穴は加工されなかっ
た。ピーク出力10.08kW(パルス出力7.56J
/パルス)において、図2(A)に示すように、ガラス
薄板1の裏面2から円柱状の穴4が板厚の半分を超える
深さまで成長したが、加工穴4底部から表面3に至る大
きなクラック5が発生し、ガラス薄板裏面の加工穴開口
周辺にもクラックが認められた。加工穴4の周囲及びそ
の底部から表面に達する加工変質層6の形成が認められ
た。
【0026】ピーク出力7.70kW(パルス出力5.
78J/パルス)では、図2(B)に示すように、上述
した図1(A)のパルス幅500μs、ピーク出力1
0.08kW(パルス出力5.04J/パルス)の場合
と同様に、ガラス薄板裏面2から板厚約3分の1程度の
深さまで円柱状の穴4が形成され、かつ該穴の底部から
表面3に至る大きなクラック5が発生した。この場合に
も、加工穴4の周囲及びその底部から表面に達する加工
変質層6が同様に形成された。
【0027】ピーク出力5.44kW(パルス出力4.
08J/パルス)では、図2(C)に示すように、上述
した図1(B)のパルス幅500μs、ピーク出力7.
70kW(パルス出力3.85J/パルス)の場合と同
程度に、僅かな円形穴4及びクラック5と、表面3まで
達しない加工変質層6とがガラス薄板裏面2側に形成さ
れた。ピーク出力3.70kW(パルス出力2.78J
/パルス)では、図2(D)に示すように、ガラス薄板
1は表面及び裏面共に加工されなかったが、裏面側に僅
かな加工変質層6の形成が確認された。
【0028】(パルス幅1000μsの場合)パルス幅
1000μsの場合には、ピーク出力10.08kW
(パルス出力10.08J/パルス)において、図3
(A)に示すように、貫通穴4が形成された。また、貫
通穴4の周囲には加工変質層6が形成されていた。しか
し、それより低いピーク出力では、貫通穴は形成できな
かった。
【0029】7.70kWにおいて、図3(B)に示す
ように、上述した図2(A)のパルス幅750μs、ピ
ーク出力10.08kW(パルス出力7.56J/パル
ス)の場合と略同程度に、円柱状の加工穴4及びガラス
薄板表面3に至るクラック5が形成された。また、加工
穴4の周囲及びその底部から表面に達する加工変質層6
が同様に形成された。
【0030】ピーク出力5.44kW及び3.70kW
(パルス出力5.44J/パルス及び3.70J/パル
ス)では、それぞれ図3(C)及び(D)に示すよう
に、上述した図1(A)及び(B)のパルス幅500μ
s、ピーク出力10.08kW及び7.70kW(パル
ス出力5.04J/パルス及び3.85J/パルス)の
場合と略同程度の加工穴4、クラック5及び加工変質層
6が形成された。
【0031】上記結果から判断して、単にピーク出力
(又はピーク出力密度)ではなく、これとパルス幅を組
み合わせて得られる照射エネルギの大小により、加工の
可否及び加工穴の成長が異なり、或る閾値(本実施例で
は、パルス出力10.08J/パルス)を超えると貫通
穴を形成できることが確認された。
【0032】次に、同じくパルス発振YAGレーザを使
用し、パルス幅1000μs、ピーク出力10.08k
Wでパルス出力を10.08J/パルスで一定にして、
レーザ光の焦点位置を変えながら厚さ1mmのパイレック
スガラス薄板に微細穴あけ加工を行った。その他のレー
ザ加工条件は次の通りである。 レーザ波長 : 1064nm 広がり角 : 5mrad エキスパンダ: なし 集光レンズ : f50mm 最小ビーム径: φ0.25mm 集光角度 : 9.2deg
【0033】図4(A)及び図4(B)に示すように、
レーザ光7の焦点位置は、集光レンズ8の位置をずらす
ことにより、ガラス薄板1を板厚方向に表面近傍の位置
aから裏面近傍の位置bまで均等に10分割し、表面近
傍位置aを基準位置としてその変位量xを1から10ま
で設定した。その結果、前記基準位置から変位量x=2
までの範囲では、裏面側から円柱状の穴が板厚半分を超
える深さまで成長したが、該穴の底部から表面に至るク
ラックが生じただけで、貫通しなかった。
【0034】変位量x=3〜9までの範囲において、貫
通穴を形成できた。特に、前記ガラス薄板表面と裏面と
の中間位置を超えた変位量x=7及び8の位置では、図
5に示すように、略穴径均一でクラックのない略円柱状
の加工穴4を形成できた。その他の位置では、貫通穴の
穴径が不均一で、ガラス内部や穴の開口周辺にクラック
の発生が認められた。
【0035】変位量x=10の前記ガラス薄板裏面近傍
位置では、表面から円錐状の深穴が裏面近くまで成長し
たが、裏面は丸い凹みが形成されただけで貫通しなかっ
た。また、裏面の前記凹み付近に大きなクラックが発生
した。
【0036】この結果から判断して、照射されるレーザ
光エネルギがガラス薄板の板厚方向に均一に分散するよ
うに、焦点位置をガラス薄板表面と裏面との中間付近に
設定すると、クラックを発生させるようなガラス板内部
における急激な温度上昇が回避され、加工穴が表面及び
裏面双方から成長して貫通するので好ましい。特に、レ
ーザ光の焦点を前記中間位置より下方に合わせると、ク
ラックフリーで略穴径同一の貫通穴が形成されるので好
都合である。
【0037】本実施例では、レーザ光のビーム径を6mm
に設定したが、ビーム径を12mmに拡大したところ、同
じ焦点位置でもクラックが発生し、このクラックから溶
融物が噴出した。これは、ガラス表面では、ビームが太
くなっているために、レーザ光のエネルギ密度が低く、
ガラスが軟化し難くなっているのに対して、ガラス内部
の焦点位置では、エネルギ密度が高いので、ガラスが溶
融する。このため、ガラス内部の溶融物が外部にスムー
ズに溶出できず、応力が発生するためと考えられる。
【0038】また、変位量x=3〜9で形成された各貫
通穴の開口周辺には、溶融物が飛散して付着したり***
した状態が観察された。これは、本実施例においてレー
ザ照射により生じた溶融物の温度が比較的低いことを示
している。この溶融物は、ガラス薄板1両面を適当な研
磨剤で研磨加工することにより、容易に除去することが
できた。
【0039】図5の加工穴4の開口周辺には溶融部9が
***したが、この溶融部の組成を分析したところ、図6
に示すような結果が得られた。即ち、YAGレーザ光を
吸収し易いアルミナを構成するAl成分の組成比が、平
均値で元の母材の約2.3%から約4.4%に2倍近く
増加し、YAGレーザ光を吸収しないSiが、平均値で
約93.1%から約94.7%に増加し、かつAlより
融点が低く蒸発し易いNaが、平均値で元の約4.5%
から約0.8%に大幅に減少している。
【0040】これは、前記溶融部において、使用したガ
ラス材料に含まれるアルミナがレーザ光の照射エネルギ
を吸収して高熱を発生し、それにより融点の低いNaが
先に蒸発し、材料自体の組成が変化して加工変質部が形
成されたことを示している。この組成変化により、前記
加工変質部は母材よりアルミナ含有率が増加してレーザ
吸収率が高くなっているので、他の部分より加工速度が
早くなって穴の成長が促進されるという、上述した加工
メカニズムを証明している。
【0041】このようにパイレックスガラスを使用した
本実施例では、所定の閾値以上のパルス出力即ちエネル
ギのレーザ光を照射することにより、該ガラス材料に含
まれるアルミナがレーザ光を吸収して高熱を発生し、周
囲の材料を溶融させてNaなどの揮発し易い成分を先に
蒸発させ、組成を変化させて加工変質層を形成し、この
加工変質層がレーザ光を吸収して貫通穴を加工できるこ
とが明らかになった。しかも、パルス発振YAGレーザ
では、レーザ光照射中に溶融物が除去されるため熱歪み
が残らず、その結果硬質脆性材料であるガラスに対して
もクラックフリーで品質の良い穴あけ加工を実現でき
た。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、上述したようにパルス
発振YAGレーザを使用して、市販の一般ガラスなどで
あっても、その中に含まれる高レーザ光吸収率成分を利
用して高熱を発生させることにより、ガラスにクラック
フリーで微細な穴あけ加工を直接行うことができるの
で、加工工程及び作業が簡単になり、加工時間の短縮及
び加工コストの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(C)図は、パルス幅500μsでピ
ーク出力をそれぞれ10.08kW、7.70kW、
5.44kWとしてパルス発振YAGレーザを照射した
場合の加工状態を示す断面図である。
【図2】(A)〜(D)図は、パルス幅750μsでピ
ーク出力をそれぞれ10.08kW、7.70kW、
5.44kW、3.70kWとしてパルス発振YAGレ
ーザを照射した場合の加工状態を示す断面図である。
【図3】(A)〜(D)図は、パルス幅1000μsで
ピーク出力をそれぞれ10.08kW、7.70kW、
5.44kW、3.70kWとしてパルス発振YAGレ
ーザを照射した場合の加工状態を示す断面図である。
【図4】(A)、(B)図は、それぞれレーザ光の焦点
位置をガラス薄板の表面近傍の位置、及び裏面近傍の位
置に合わせた様子を示す図である。
【図5】パルス幅1000μs、ピーク出力10.08
kWでレーザ光の焦点位置を変位量x=8としてパルス
発振YAGレーザを照射した場合の加工穴を示す断面図
である。
【図6】溶融部の組成変化を示す線図である。
【符号の説明】
1 ガラス薄板 2 裏面 3 表面 4 加工穴 5 クラック 6 加工変質層 7 レーザ光 8 集光レンズ 9 溶融部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01S 3/00 H01S 3/00 B (72)発明者 梅津 一成 長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコ ーエプソン株式会社内 Fターム(参考) 3C060 AA08 CF16 4E068 AF01 CA02 CA03 CA11 CF01 DB13 5F072 AB01 JJ09 JJ12 RR01 SS06 YY06

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラスからなる被加工物に向けてパルス
    発振YAGレーザを照射する過程からなり、前記ガラス
    がYAGレーザ吸収率の高い成分を含有し、かつ前記Y
    AGレーザの照射エネルギを所定の閾値以上に設定する
    ことを特徴とするガラスのレーザ加工方法。
  2. 【請求項2】 前記ガラスが不純物を含むことを特徴と
    する請求項1記載のガラスのレーザ加工方法。
  3. 【請求項3】 前記照射エネルギの閾値を前記YAGレ
    ーザのパルス出力により決定することを特徴とする請求
    項1又は2に記載のガラスのレーザ加工方法。
  4. 【請求項4】 前記YAGレーザのパルス出力をパルス
    幅とピーク出力とにより調整することを特徴とする請求
    項3に記載のガラスのレーザ加工方法。
  5. 【請求項5】 前記YAGレーザの焦点位置を前記被加
    工物の表面と裏面との中間付近に設定することを特徴と
    する請求項1乃至4のいずれかに記載のガラスのレーザ
    加工方法。
  6. 【請求項6】 前記YAGレーザの焦点位置を前記被加
    工物の表面と裏面との中間位置より下方に設定すること
    を特徴とする請求項5に記載のガラスのレーザ加工方
    法。
  7. 【請求項7】 前記被加工物の表面及び裏面双方が溶融
    するように、前記YAGレーザの照射条件を設定するこ
    とを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のガラ
    スのレーザ加工方法。
  8. 【請求項8】 第1の閾値以上の照射エネルギで前記Y
    AGレーザを照射することにより、前記ガラスに加工変
    質層を形成した後、前記第1の閾値より大きい第2の閾
    値以上の照射エネルギで前記YAGレーザを照射するこ
    とにより、前記加工変質層を溶融除去することを特徴と
    する請求項1乃至7のいずれかに記載のガラスのレーザ
    加工方法。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至8のいずれかに記載のガラ
    スのレーザ加工方法により加工されたことを特徴とする
    ガラス成形品。
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