明 細 書
ノくノレーン力テーテノレ 技術分野
[0001] 本発明は生体管腔の拡張操作を目的とする手術に使用されるバルーンカテーテル に関するものである。
背景技術
[0002] 経皮的血管形成術は血管内腔の狭窄部や閉塞部などを拡張治療し、冠動脈や末 梢血管などの血流の回復または改善を目的として広く用いられている手法である。経 皮的血管形成術に使用されるバルーンカテーテルは、シャフトの先端部に内圧調節 により膨張 ·収縮自在のバルーンを接合してなるものであり、該シャフトの内部にはガ イドワイヤが揷通される内腔 (ガイドワイヤルーメン)と、バルーン内圧調整用の圧力 流体を供給するルーメン (インフレーションルーメン)とがシャフトの長軸方向に沿って 設けられて!/、る構造が一般的である。
[0003] このようなバルーンカテーテルを用いた経皮的冠動脈形成術 (PTCA)の一般的な 術例は以下のとおりである。まず、ガイドカテーテルを大腿動脈、上腕動脈、橈骨動 脈等の穿刺部位力、ら揷通し大動脈を経由させて冠状動脈の入口にその先端を配置 する。次に前記ガイドワイヤルーメンに揷通したガイドワイヤを冠状動脈の狭窄部位 を越えて前進させ、このガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテルを揷入してバル一 ンを狭窄部に一致させる。次いで、インデフレーター等のデバイスを用いてインフレ ーシヨンルーメンを経由して圧力流体をバルーンに供給し、バルーンを膨張させるこ とで当該狭窄部を拡張治療する。当該狭窄部を拡張治療した後は、バルーンを減圧 収縮させて体外へ抜去することで PTCAを終了する。
[0004] 上述したカテーテルは遠位側シャフトと近位側シャフトが接合され、近位側シャフト の近位端にカテーテル保持用のアダプタ一部材が接続された構造であり、ガイドワイ ャルーメンの長さにより大きく 2つに分類される。以下では遠位側シャフトの遠位側に バルーンが接続され、バルーンの内圧調節用の圧力流体をインフレーションルーメン に供給するポートをアダプタ一部材に備えたバルーンカテーテルを例に説明する。
[0005] 1つは、図 1に示すようにガイドワイヤルーメンがカテーテルの全長にわたって設け られ、アダプタ一部材にガイドワイヤルーメンの近位端側開口部およびインフレーショ ンルーメンの開口部が設けられ、同時に軸方向の柔軟性を制御するためのストレイン リリーフがアダプタ一部材に設けられ、バルーンの最遠位端部またはバルーンの最 遠位端部よりも遠位端側にガイドワイヤルーメンの遠位端側開口部が設けられて!/、る オーバー.ザ'ワイヤ型(OTW型)である。もう 1つは、図 2に示すようにガイドワイヤル 一メンがバルーンカテーテルの遠位側にのみ存在し、ガイドワイヤルーメンの近位端 側開口部が遠位側シャフトの途中に設けられて!/、る高速交換型 (RX型)である。
[0006] OTW型はバルーンカテーテルの全長にわたってガイドワイヤルーメンが存在する ため、ガイドワイヤを通過させるのが困難な病変に対してしばしば用いられる力 ガイ ドワイヤを病変部に留置したままバルーンカテーテルを抜去する作業が煩雑である 問題がある。すなわち、 OTW型ではガイドワイヤを病変部に留置したままバルーン力 テーテルを抜去するためには、交換用延長ワイヤの取り付け等の特殊なデバイスや 操作が必要になる。
[0007] 一方、 RX型ではガイドワイヤルーメンがバルーンカテーテルの遠位側にのみ存在 するため、ガイドワイヤを病変部に留置したままバルーンカテーテルの抜去、交換、 再揷入が容易に実施可能であり、操作性が非常に良好であるば力、りか術時間も短縮 でき、使用するデバイスの数量を軽減することが可能である。
[0008] また、カテーテルの構造はガイドワイヤルーメンが存在する部分のシャフト構造によ つても大きく 2つに分類される。 1つは図 4に断面形状を示すように、内側シャフトと該 内側シャフトを同軸状に取り囲むように外側シャフトが配設され、内側シャフトの内腔 力、ら形成されるガイドワイヤルーメンおよび内側シャフトと外側シャフトの間に環状に 形成されたインフレーションルーメンを有するコアキシャル型(co-axial型)である。もう 1つはガイドワイヤルーメンとインフレーションルーメンが平行に並んだバイアキシャル 型(bi-axial型)の構造である。
[0009] OTW型のカテーテルの場合、全長にわたってコアキシャル型あるいはバイアキシ ャル型の構造となるのが一般的である。一方、 RX型のカテーテルの場合は、ガイドヮ ィャルーメンが存在する部分の遠位側シャフトがコアキシャル型あるいはバイアキシ
ャル型の構造を取り得る。
[0010] このようなカテーテルの操作性をさらに向上させるために種々の技術が開示されて いる。
[0011] 特許文献 1では、長尺状又はフィルム状の柔軟な樹脂製基材の表面に、基材より 硬質なイオン蒸着膜を形成したバルーンカテーテル及びバルーンが開示されている
[0012] 本先行技術によると、上述したバルーンカテーテル及びバルーンにイオン蒸着膜を 形成することで曲げには柔軟に変形する一方、表面に平行な方向には剛性が増し、 カテーテルが圧縮を受けた場合であっても、座屈などが発生しに《なる。しかし、ィ オン蒸着膜で形成することによって膜に簡単に亀裂が入り、血管内へイオン蒸着した 物質が飛散しやすくなり、飛散によって生体へ悪影響を及ぼす可能性があること、ィ オン蒸着する際のエネルギー照射によってバルーン部が硬くなるため、バルーンが 拡張されて再び、同じ又は他の狭窄部に再揷入(リクロス)する際の通過性が損なわ れるという点で決してカテーテルとしての挿入操作性が高いとは言えなかった。
[0013] 特許文献 2では、カテーテルの先端部付近において、ガイドワイヤを揷通させる内 側シャフトと外側シャフトとからなる 2重管構造を備えるバルーンカテーテルにおいて 、前記外側シャフトの少なくとも先端部に、外側シャフトの内径よりも小さぐ内側シャ フトの外径よりも大きな内径を有するガイドチューブを配設されるバルーンカテーテル が開示されている。
[0014] 本先行技術によると、上述したガイドチューブを配設することにより、バルーン拡張 後の内側シャフトの弛みを防止させてリラップ性を向上させ、外側シャフトとバルーン との接合部分の剛性の不連続を緩和して折れを防止し、血管内への前進性と狭窄 部の通過性を高め、アコーディオン現象を防止して押圧性を向上させることが可能と なる。し力、し、内側シャフトの一部にガイドチューブを配設することにより、ガイドチュー ブを配設した境界部で剛性が不連続に変化する点や、配設による外径の増大によつ てバルーンのラッピング寸法が大きくなる点で改善の余地がある。
[0015] 特許文献 3では、ガイドワイヤ用内腔を形成する第 1の管部材、第 1の管部材と同一 方向に延び、かつ、第 1の管部材の外周面に結合されている外面を有し、膨張用内
腔を形成する第 2の管部材、バルーン、第 1及び第 2の管部材の少なくとも一つの柔 軟性を変更させる手段を備えた OTW型カテーテルが開示されている。
[0016] 本先行技術によると、上述したバイアキシャル型のシャフトを備えたカテーテルを構 成する場合、第 1及び第 2の管部材並びに柔軟性を制御する部材を含むカテーテル の構成部材を個々に選択することでカテーテルの性能特性の選択が可能となり、良 好な性能特性の維持が可能となる。また、製造方法が容易なため、コストを低く抑え ること力 Sできる。しかし、第 1及び第 2の管部材の接合に接着剤やスリーブ部材を用い るため、接合部の大径化および柔軟性の低下につながり、屈曲した血管への揷入操 作生は高いとは言えなかった。
[0017] 特許文献 4では、内側管状部材、外側管状部材、拡張バルーン力 なる細長状力 テーテルであって、内側管状部材と外側管状部材の間に第 2内腔を形成し、前記拡 張バルーンは第 2内腔と連通しており、内側管状部材と外側管状部材の接着長手部 を有すると同時に、該接着長手部は少なくとも外側管状部材の内周面の 30%を占め 、かつ内側管状部材の外面に接着された内周面を有するカテーテルが開示されて いる。
[0018] 本先行技術によると、外側管状部材の長手部を内側管状部材の外面に接着させる ことによって、カテーテル本体の外径をこの領域内では少なくとも一方向断面形状を 減少させることができ、小径化が実現される。さらに内側管状部材と外側管状部材の 接着部が互いに支持し合うので、カテーテルの押圧性が改善される。しかし、接着長 手部では内側管状部材と外側管状部材が接着されるため柔軟性が低下し、該接着 長手部が屈曲した血管を通過する場合の操作性は良好ではなかった。また、該接着 長手部が屈曲した状態においては該接着長手部に含まれる第 2内腔が変形しやすく 、拡張バルーンの拡張'収縮応答性が低いことが問題だった。
[0019] 特許文献 5では、バルーンを備えた細長!/、カテーテルであって、前記カテーテルの シャフトは内部管と該内部管を囲む外部管から形成されており、それらの間に膨張内 腔を形成すると同時に、前記内部管は前記シャフトの近位端部の遠位方向にある箇 所で、前記外部管に取り付けられている同軸状のバルーン膨張カテーテルが開示さ れている。
[0020] 同軸状の管から形成されたシャフトを有するカテーテルと管の遠位端部に取り付け られたバルーンにおいて、増加された抵抗が示された場合に、管が入れ子式に嵌ま り合う傾向がある。入れ子式に嵌まり合うことによりバルーンがアコーディオン状に変 形し、バルーンが狭窄部を通過することが困難になる。本先行技術によれば、外部管 の遠位端部を内部管に固定することによりカテーテルの押圧性が増大する。また、管 が入れ子式に嵌まり合うことが防止されるため、バルーンの軸方向の長さは維持され る。これにより、バルーンがアコーディオン状に変形することが抑制され、狭窄部に対 するバルーンの通過性は保たれる。しかし、本先行技術においても、外部管と内部 管が取り付けられた位置において柔軟性が低下し、該位置が屈曲した血管を通過す る場合の操作性は良好ではなかった。また、該位置が屈曲した状態においては該位 置に含まれる膨張内腔が変形しやすぐバルーンの拡張 ·収縮応答性が低いことが 問題だった。
特許文献 1:特開平 9 111021号公報
特許文献 2 : W099/ 17831号公報
特許文献 3:特開平 7— 132147号公報
特許文献 4:特開平 5 137793号公報
特許文献 5:特開平 3— 51059号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0021] そこで、以上の問題に鑑み本発明が解決しょうとするところは複数のチューブ状部 材とそれに接続されたアダプタ一部材と狭窄血管を拡張するためのバルーンから構 成されたバルーンカテーテルにおいて、コーティング組成物などの飛散もなぐノ ル ーンの柔軟性を保ち、バルーンのラッピング寸法の増大をさせずに、カテーテル近位 側に加えた力をカテーテル遠位側あるいは遠位端に効率よく伝達することが可能な 押圧性を備え、バルーンや内側シャフトのアコーディオン現象を抑制することにより、 狭窄部に対する通過性を高め、同時にバルーンの拡張 ·収縮応答性を損なわない力 テーテルを実現することである。
課題を解決するための手段
[0022] 複数のチューブ状部材とそれに接続されたアダプタ一部材と狭窄血管を拡張する ためのバルーンから構成されたバルーンカテーテルにおいて、ノ^レーン表面同士を 張り合わせたときの剥離強度が 0. 06N以上、且つ、バルーン軸方向の弾性率が 10 ON/mm2以上であるバルーンカテーテルを発明するに至った。
[0023] ここで、上記特性を有するバルーンカテーテルとしては、バルーンの外側表面には 樹脂組成物がコーティングされたものが好ましぐカテーテルの血管内での通過性が 良くなるという点から前記樹脂コーティングが湿潤時に潤滑性を有する親水性樹脂で あることがさらに好ましい。親水性樹脂については、 2層コート構造であり、アンダーコ ート層がポリウレタン樹脂、トップコート層が親水性樹脂から形成されることが好ましい
[0024] また、前記バルーンの外側表面が、デュロメーター硬度で 55D以下のポリアミドエラ ストマー樹脂組成物で形成されていても良ぐ前記バルーンが複層構造の樹脂組成 物で形成されていることがさらに好ましい。
[0025] さらに、前記バルーンのバルーン折畳みが解除される圧力が 0· 6atmG以上である ことが好ましい。
発明の効果
[0026] 本発明により、複数のチューブ状部材とそれに接続されたアダプタ一部材と狭窄血 管を拡張するためのバルーンから構成されたバルーンカテーテルにおいて、コーティ ング組成物などの飛散もなぐバルーンの柔軟性を保ち、ノ^レーンのラッピング寸法 の増大をさせずに、カテーテル近位側に加えた力をカテーテル遠位側あるいは遠位 端に効率よく伝達することが可能な押圧性を備え、バルーンや内側シャフトのアコ一 ディオン現象を抑制することにより狭窄部に対する通過性を高め、同時にバルーンの 拡張 ·収縮応答性を損なわないカテーテルが実現できる。
図面の簡単な説明
[0027] [図 1]一般的なバルーンカテーテルのうち、オーバ一 .ザ'ワイヤ型(OTW型)の概略 斜視図である。
[図 2]—般的なバルーンカテーテルのうち、高速交換型 (RX型)の概略斜視図である
[図 3]—般的な RX型バルーンカテーテルでガイドワイヤルーメン部分がコアキシャノレ 構造の縦断面を示す一部概略側面図である。
[図 4]図 3の A— A'断面図である。
[図 5]—般的なバルーンカテーテルにおいて、バルーンがアコーディオン状に変形し た場合の縦断面を示す一部概略側面図である。
園 6]本発明に係るバルーンの軸方向の弾性率におけるサンプルを示す概略模式図 である。
[図 7]本発明に係る剥離試験にお!ヽて、熱処理する時点での剥離試験用サンプルを 示す概略模式図である。
[図 8]本発明に係る剥離試験にお!/、て、剥離評価する時点でのサンプルを示す概略 模式図である。
[図 9]本発明に係るカテーテルの評価系を示す模式図である。
園 10]本発明に係るバルーン折畳みが解除される圧力の試験において、バルーン折 畳みが解除される圧力を評価する時点での加圧条件を示す模式図である。
符号の説明
1 ガイドワイヤルーメン
1A ガイドワイヤルーメン遠位側開口部
1 B ガイドワイヤルーメン近位側開口部
2 インフレーションルーメン
2A インフレーションルーメン開口部
3 ノヽブ
4 ストレインリリーフ
5 バノレーン
5A 直管部
5B 遠位側テーパー部
5C 近位側テーパー部
5D 遠位側接合部
5E 近位側接合部
6 遠位側シャフト
7 近位側シャフト
8 内側シャフト
9 外側シャフト
10 X線不透過マーカー
11 剥離試験用プレート
11A バルーン固定プレート
11B ノ ノレーン挟みプレート
12 粘着部材
13 剥離試験用バルーンサンプル
13A 固定側バルーン
13B 剥離側バルーン
14 バルーン直管部の円柱状フィルム
15 バルーン軸方向の弾性率試験用フィルム
16 模擬狭窄部
17 模擬血管
18 スライドテーブル
19 ガイドワイヤ
20 カテーテル保持部
21 フォースゲージ
22 穴
23 カテーテル
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明に係るバルーンカテーテルの実施形態を図に基づいて詳細に説明 する。
本発明に係るカテーテルは、それぞれ近位端部と遠位端部とを有する近位側シャフ トと遠位側シャフトを有しており、前記近位側シャフトの遠位端と前記遠位側シャフト の近位端が接合されるとともに前記近位側シャフトの近位端には該カテーテル保持
用のアダプタ一部材が接合されており、少なくとも前記遠位側シャフトの一部は内側 シャフトと該内側シャフトを同軸状に取り囲む外側シャフトとから形成されており、前記 内側シャフトは前記外側シャフトを越えて遠位側に伸長しており、前記内側シャフトの 内腔はガイドワイヤルーメンを形成しているコアキシャル型であれば良ぐそれ以上の 構造は特に制限されない。つまり、図 1に示す OTW型でも良ぐ図 2に示す RX型で も良い。また、それ以外の構造でも構わない。
[0030] 図 3に示すようなコアキシャル型である典型的な RX型バルーンカテーテルの場合、 コアキシャル型部分の断面は図 4に示すような構造である。図 3に示すような力テーテ ルを目的とする治療部位に配置するために近位側シャフトの近位端に設けられたァ ダプター部材にカを加え、カテーテルを押し進める必要がある。治療部位までの屈 曲度が高い場合や治療部位の狭窄度が高い場合などはカテーテルを容易に押し進 めることができないため、より大きな力を加えることになる。このような場合、遠位側シ ャフトの少なくとも一部を構成する内側シャフトと外側シャフトが入れ子式に嵌まり合 い、その結果として図 5に模式的に示すようにバルーン部分がアコーディオン状に変 形し得る。こうした変形によりバルーン部分の外径が増大し、より治療部位への配置 が困難になる。
[0031] 一般的にバルーンカテーテルのバルーン部分は、体外からカテーテルを揷入し、 治療部位まで進入させ配置する際、その良好な操作性を得るために、内側シャフトに バルーンを巻き付けラッピングし、可能な限りプロファイルを小さくしている。本発明に 係るカテーテルは、カテーテルに一定以上の押込力が付与された場合にも、ラッピン グされたバルーンの材料固有の強度と、内側シャフトに巻き付けたときにバルーン表 面同士が接触している接触面の貼り付き効果により、そのラッピング形態が保持され やすくなり、バルーン部分がアコーディオン状に変形しに《なる。その実施手段とし て張り付き効果はバルーン同士を貼り合わせたときの剥離強度が 0. 06N以上であり 、且つ、バルーン固有の強度としてはバルーン軸方向の弾性率が 100N/mm2以上 であることを特徴としている。その結果、同時にアダプタ一部材に加えた力を効果的 にカテーテル先端に伝達することが可能となり、治療部位への配置操作性が向上す
[0032] 本発明においてバルーン軸方向の弾性率とは、バルーン直管部の長手方向の弾 性率を言う。図 6. aに示すように直管部の両端をカットして、図 6. bに示すような円柱 状のフィルムとし、さらに円柱状フィルムを図 6. bの点線でカットし、図 6. cの示すと おり一枚のフィルム状として引張試験機で弾性率を測定する。
[0033] 本発明において剥離強度とは、図 7に示すように、バルーンを展開してフィルム状と して、 3. 8mm X 5. Ommのバルーン試験片を 2枚作製し、 2枚のバルーン試験片の 外側表面同士を貼り合わせ、図 8のように貼り合わせた一方のバルーンを引張試験 機で試験片に対して垂直方向に引っ張った際に得られる最大強度を言う。
[0034] 剥離強度の測定は、片側のバルーン試験片を試験プレートに粘着部材などで動か ないように固定し、他方のバルーン試験片を張り合わせ、さらに両側を試験プレート でバルーン試験片を挟み、固定した状態で、 55°Cの温度下で 1時間熱処理して得ら れたサンプルを用いて測定する。
[0035] この剥離強度は 0. 06N以上、且つ、バルーン軸方向の弾性率が 100N/mm2以 上であれば本発明の効果を発揮するが、この剥離強度が過度に大きいとラッピングさ れたバルーンを治療部位で拡張しラッピングが解ける際に、バルーンがダメージを受 ける可能性があるため、これを抑制する点から剥離強度は 1. OON以下であることが 好ましぐさらにはコーティングされた親水性樹脂が剥がれない点で 0. 75N以下であ ることが好ましい。バルーン軸方向の弾性率は、拡張したバルーン部が病変部へリク ロスできるような柔軟性も併せ持つ必要がある点から 250N/mm2以下であることが 好ましい。
[0036] バルーンは治療で使用される治療部位や使用目的によって様々な剥離強度およ びバルーン軸方向の弾性率のバルーン材料を使用することがあるため、本効果を発 揮するためにはバルーン材料の外表面上に樹脂組成物がコーティングされているこ とが好ましい。また、血管内でカテーテルを操作する際のカテーテルと血管壁との摩 擦抵抗を小さくすることで進入操作性が良くなることから、湿潤時に潤滑性を有する 親水性樹脂をコーティングすることが好ましレ、。また親水性コーティングの耐久性の 点から、親水性樹脂が 2層コート構造でアンダーコート層がウレタン系樹脂、トップコ ート層が親水性樹脂から形成されることがさらに好ましい。
[0037] さらには芳香族ジイソシァネート、脂肪族ジイソシァネート、および脂環族ジイソシァ ネートの少なくとも 1種 40〜80重量%と少なくとも 3官能のポリオール 20〜60重量% とから構成されるウレタン系高分子層を有し、該ウレタン系高分子層の外層に、ポリア ルキレングリコールおよび/またはモノメトキシポリアルキレングリコールからなる親水 性高分子層を有する表面コーティングが好まし!/、。
[0038] ウレタン系樹脂層におけるジイソシァネート成分の含有量は 40重量%以上 80重量 %以下であるが、好ましくは 45重量%以上 75重量%以下、より好ましくは 50重量% 以上 70重量%以下である。イソシァネート含量がこの範囲より小さ!/、と基材ゃ親水性 高分子層との接着力が低下したり、ウレタン樹脂の硬化速度が小さくなり加熱処理を 必要として基材の力学的特性に影響を及ぼしたり、硬化速度調整のため一般に用い られるァミン類、錫化合物類等の触媒を添加する必要が生じ、生体に使用する場合 の安全性の観点から好ましくな!/、。またイソシァネート含量がこの範囲より大きレ、とゥ レタン樹脂が脆くなり好ましくない。
[0039] これらのイソシァネート化合物とくみあわせてポリウレタン系高分子層形成に用いら れるのは少なくとも 3官能以上のポリオールである。ポリオールが 2官能以下であると ポリウレタン系高分子層の接着力が低下し好ましくない。またポリオールが水溶性の 場合、狭窄部を通過するカテーテルのごとき医療器具においてはポリウレタン系高分 子層の膨潤による体積の増加も通過性に対する障害となる可能性があり好ましくない
〇
[0040] ポリウレタン系高分子層を構成する少なくとも 3官能以上のポリオールとしてはポリ エステル系ポリオール、ポリ(ォキシプロピレンエーテル)ポリオール、ポリ(ォキシェチ レン-プロピレンエーテル)ポリオール等のポリエーテルポリオール、アクリルポリオ一 ルなど高分子ポリオールの分岐誘導体、ひまし油およびその誘導体、グリセリン、トリ メチロールプロパン、トリメチロールェタン、 1 , 2, 6—へキサントリオ一ノレ、ペンタエリ スリトーノレ、 ソノレビトーノレ、マンニトール等が例示される。
[0041] このバルーン外表面の樹脂コーティングは、親水性樹脂コーティングに限定される ものではなぐ治療部位や使用目的によってバルーン拡張中に治療部位力 バル一 ンが滑るスリツビングと呼ばれる現象の抑制を意図するのであれば、疎水性樹脂をコ
一ティングしても良ぐこれ以外のコーティングも何ら本願に限定されるものではない
〇
[0042] バルーン外表面に樹脂コーティングしない場合においては、バルーン外表面がデ ュロメーター硬度で 55D以下のポリアミドエラストマ一樹脂組成物で形成されることが 好ましぐアコーディオン防止効果をさらに発揮したい場合にはデュロメーター硬度で 40D以下のポリアミドエラストマ一樹脂組成物を使用することがさらに好ましい。これ はポリアミドエラストマ一の場合、 55D以下になるとエラストマ一のソフトセグメントが増 カロ、貝占り付き性が向上し、結果として剥離強度が大きくなるためである。求められるバ ルーンの耐圧強度やコンプライアンス性能など、バルーン諸性能が前記外側ポリアミ ドエラストマー樹脂のデュロメーター硬度の範囲内で満足できない場合は、バルーン を複層構造で形成することが好ましレ、。外側層と複層構造を形成する内側層はバル ーンの外層とその内側層の境界で剥離などのリスクが小さくなるという点で同じポリア ミドエラストマー樹脂で形成されることがさらに好ましい。前記手段のカテーテル構造 およびバルーンの形態は本発明の効果を制限するものではない。すなわち、前記手 段の構造はコアキシャル型でもよぐバイアキシャル型でも良ぐバルーンも複層構造 は 2層構造でも 3層以上の構造でも良!/、。また外側層と複層構造を形成する内側層 の樹脂材料もポリアミドエラストマ一以外の樹脂組成物で形成されても良い。
[0043] バルーンの製造方法としてはデイツビング成形、ブロー成形等があり、使用用途に 応じて適当な方法を選択することができる。心臓の冠状動脈の狭窄部を拡張治療す るバルーンカテーテルの場合は、十分な耐圧強度を得るためにブロー成形が好まし い。ブロー成形によるバルーンの製造方法の一例を以下に示す。まず、押出成形等 により任意寸法のチューブ状パリソンを成形する。このチューブ状パリソンを当該バル ーン形状に一致する型を有する金型内に配置し、二軸延伸工程により軸方向と径方 向に延伸することにより、前記金型と同一形状のバルーンを成形する。尚、二軸延伸 工程は加熱条件下で行われても良いし、複数回行われても良い。また、軸方向の延 伸は径方向の延伸と同時に若しくはその前後に行われても良い。さらに、バルーンの 形状や寸法を安定させるために、アニーリング処理を実施しても良い。
[0044] 一般にバルーンは直管部とその遠位側及び近位側に接合部を有し、直管部と接合
部の間にテーパー部を有している。本発明において、バルーンの寸法はバルーン力 テーテルの使用用途により決定されるが、拡張されたときの直管部の外径が 1. 00m m力、ら 35. 00mm、好まし < (ま 1. 25mm力、ら 30. 00mmであり、直管咅 ^の長さ力 5. 0 Omm力、ら 150. 00mm,好まし < (ま 5. 00mm力、ら 120. 00mmである。
[0045] バルーンからバルーンカテーテルへの加工方法については、接着剤による接着、 融着可能な材質の組み合わせである場合は融着等の方法が使用可能である。接着 剤を使用する場合、接着剤の組成及び化学構造、硬化形式は限定されない。つまり 、組成及び化学構造の点からは、ウレタン型、シリコーン型、エポキシ型、シァノアクリ レート型等の接着剤が好適に使用され、硬化形式の点からは、 2液混合型、 UV硬化 型、吸水硬化型、加熱硬化型等の接着剤が好適に使用される。接着剤を使用する 場合、接続部位の剛性が、該接続部位の前後で不連続に変化しない程度の硬化後 の硬度を有する接着剤を使用することが好ましぐ接続部位の材質、寸法、剛性等を 考慮して接着剤を選択することが可能である。また、該接続部位の細径化を実現す るために接続部を加熱処理しても良ぐポリオレフイン等の難接着性の材質の場合は 、接続部位を酸素ガス等でプラズマ処理し接着性を向上させた上で接着しても良レ、
〇
[0046] 融着により接続する場合には必要なルーメンを確保するために、任意寸法'形状の 芯材を揷入しても良い。この場合、加工終了後に芯材を除去することを考慮すると芯 材の外表面にはポリテトラフルォロエチレン等のフッ素系樹脂やポリパラキシリレン、 ポリモノクロ口パラキシリレン等をコーティングしておき、芯材を除去しやすくしておくこ とが好ましい。使用する前記芯材の寸法や断面形状等は本発明の効果を何ら制限 するものではなぐ加工時の作業性や必要とされるルーメンの断面積等を考慮して決 定され得る。
[0047] 前記遠位側シャフト、すなわち内側シャフトや外側シャフトを構成する材料は特に 限定されない。内側シャフトを構成する材料として、ポリオレフイン、ポリオレフインエラ ストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマ一、ポリアミド、ポリアミドエラストマ一、 ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ一などが使用可能である力 内側シャフトの内腔 がガイドワイヤルーメンを形成するため、ガイドワイヤの摺動性を考慮するとポリェチ
レン、中でも高密度ポリエチレンであることが好ましい。また、内側シャフトの少なくとも 一部を多層構造として、最内層を高密度ポリエチレン、最外層をバルーンや外側シャ フトと溶融可能な材料から構成することがさらに好ましい。また、ガイドワイヤの摺動性 を高めるために内側シャフトの内腔にポリジメチルシロキサン等のコーティングを施し てもよい。
[0048] 外側シャフトを構成する材料も特に制限を受けな!/、。つまり、ポリオレフイン、ポリオ レフインエラストマ一、ポリエステル、ポリエステルエラストマ一、ポリアミド、ポリアミドエ ラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ一などが使用可能である。
[0049] 同様に近位側シャフトを構成する材料も特に制限を受けな!/、が、近位側シャフトの 材質は遠位側シャフトとほぼ同等またはより高い剛性であることが好ましい。さらに、 加工性、生体への安全性等からステンレス鋼等の金属、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポ リエ一テルエーテルケトン等の高剛性樹脂材料であることが好ましい。また、力テーテ ルの長さ方向の剛性を連続的に分布させるために、近位側シャフトの遠位側に螺旋 状の切り込みや溝、スリット等を形成することで、近位側シャフトの遠位側の剛性を近 位側シャフトの近位側と比較して低下させてもよい。
[0050] アダプタ一部材を構成する材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン 、ポリサノレホン、ポリアリレート、スチレン ブタジエンコポリマー、ポリオレフイン等の 樹脂が好適に使用できる。
[0051] 本発明のバルーンカテーテルにおいて、ガイドワイヤに沿って体外力もカテーテル を押し進めていく際の操作性を向上させること、カテーテルに加えた力を効率良く遠 位端に伝達すること、カテーテルのキンク(折れ)を防止することなどを目的として、力 テーテル内にコアワイヤを設けても良い。コアワイヤはカテーテルのどの部分に配置 されても良いが、ガイドワイヤに沿ってカテーテルを揷入する場合の操作性を保った めにガイドワイヤルーメン以外のルーメンに配置されることが好まし!/、。カテーテルの 長さ方向の剛性の分布を連続的にするため、該コアワイヤの外径の一部が先端方向 に行くほど小さくなるテーパー形状としてもよい。該コアワイヤは金属であれば材料種 は特に制限を受けない。カテーテルを構成する材料、カテーテルの使用目的等を考 慮して決定することができるカ、加工性あるいは生体への安全性からステンレス合金
、コバルト クロム合金、ニッケル チタン合金であることが好ましい。また、コアワイ ャの加工方法も特に制限を受けず、センタレス研磨などの方法が好適に使用される
〇
[0052] 本発明に係るカテーテルを用いた治療中に該カテーテルの特定部位の視認性を 向上させ、該カテーテルの位置決めを容易に行うために X線不透過マーカーを設け ても良い。 X線不透過マーカーは X線不透過性を有する材料であれば良ぐ金属や 樹脂等の材料の種類は問われない。また、設ける位置、個数等も問われず、カテー テルの使用目的に応じて設定することが可能である。
[0053] 本発明のバルーンカテーテルにおいては、バルーン折畳みが解除される圧力が 0 . 6atmG以上であることが好ましい。このバルーン折畳みが解除される圧力とは 37 °C水温中で該バルーン部を 30秒間放置した後、アダプタ一部材からバルーン内に 水圧を附加したときに、内側シャフトに巻き付けられたバルーン部のラッピングが解け る圧力を言う。バルーン折畳みが解除される圧力が 0. 6atmG以上であれば本発明 の効果を好適に発揮しうる力、バルーン折畳みが解除される圧力が過度に大きいとラ ッビングされたバルーンを治療部位で拡張しラッピングが解ける際に、バルーンがダ メージを受ける可能性があるため、これを抑制する点からバルーン折畳みが解除され る圧力は 2. OatmG以下であることが好ましぐさらにはコーティングされた親水性樹 脂が剥れな!/、点で 1 · 6atmG以下であることが好まし!/、。
実施例
[0054] 以下に本発明に係る具体的な実施例及び比較例について詳説するが、本発明は 以下の例に限定されるものではない。
[0055] (実施例 1)
デュロメーター硬度で 70Dのポリアミドエラストマ一(商品名: PEBAX7033SA01: アルケマ社製)を用いて押出成形法により内外径が略円形状のチューブ状ノ リソン( 外径: 0. 44mm,内径: 0. 20mm)を作製した。次いで、このパリソンを、バルーン成 形金型を用いて二軸延伸ブロー成形を行い、直管部の外径が 1. 50mm,直管部の 長さが 100mmのバルーンを作製した。ノ^レーンカテーテルの内側シャフト用チュー ブとして高密度ポリエチレン (HY540、 日本ポリケム株式会社)を用いて押出成形に
よりチューブ(外径: 0. 56mm,内径: 0. 42mm)を、外側シャフト用チューブとして ポリアミドエラストマ一(商品名: PEBAX7233A01:アルケマ社製)を用いて外径: 0 . 88mm,内径: 0. 71mmのチューブを押出成形法により作製した。これらと射出成 形でポリカーボネート(Makloron2658、 Bayer社)を用いて得られたアダプタ一部 材を用い、コアキシャル構造の OTW型のバルーンカテーテルを作製した。
[0056] 次いで、バルーンカテーテルを 4, 4-ジフエニルメタンジイソシァネート 5g、平均分 子量 1000のポリプロピレングリコール 5gをテトラヒドロフラン 40gに溶解した溶液にデ イツビングして 50°Cで 10分間乾燥してアンダーコート層を形成した。ついで平均分子 量 20000のポリエチレングリコール 10gをエタノール 40gに溶解した溶液にディツビ ングし 50°Cで 15分間乾燥して親水性トップコ一ト層を生成し、潤滑性コーティングを 有するバルーンカテーテルを得た。
[0057] このカテーテルを図 7に示す試験サンプルを作製し、 55°Cで 1時間熱処理、引張試 験機を用いて図 8のようにバルーンを試験サンプルに対して垂直方向(図 8の矢印方 向)に 5mm/minの引張条件で剥離試験を実施した。バルーンの軸方向の弾性率 につ!/、ても図 6に示す試験サンプルを作製し、弓 I張試験機で 50mm/minの弓 |張条 件で測定した。その結果、剥離強度及びバルーンの軸方向の弾性率は、剥離強度 が 0. 17N、バルーンの軸方向の弾性率が 104N/mm2であった。
[0058] 別途、得られたバルーンカテーテルのバルーン部を内側シャフトに巻き付けラッピ ングし、ラッピングが解けないようバルーン外側にバルーン保護管を揷入させ、ェチ レンオキサイドガス(EOG)滅菌を行うことでバルーン折畳みが解除される圧力測定 用のサンプルを得た。この試験サンプルは事前にインフレーションルーメンをエアー 力も水に置換させておき、 37°C水温中にて 30秒放置後、水中内のサンプルをァダ プタ一部材からリークテスターで加圧させ、バルーン折畳みが解除される圧力を測定 した。このとき加圧は図 10のような加圧条件プログラムで実施した。即ち、初期圧力を 0. 2atmGとし、 0. latmG/secの昇圧速度で 0. latmGずつ昇圧させ、昇圧後の 圧力下での保持時間を 3秒として加圧した。図 10では加圧パターンを示す目的で、 便宜的に 0. 5atmGまでしか示していないが、バルーン折畳みが解除されるまで、昇 圧及び保持を継続することは言うまでもない。その結果、バルーン折畳みが解除され
る圧力は 1 · 6atmGであった。
[0059] (実施例 2)
実施例 1と同サイズ、同形状の部材を用いて、直管部の外径が 1. 50mm,直管部 の長さ力 OOmmのバルーンバルーンカテーテルを作製した。
[0060] 次いで、バルーンカテーテルを 4, 4-ジフエニルメタンジイソシァネート 15g、平均分 子量 1000のポリプロピレングリコール 15gをテトラヒドロフラン 40gに溶解した溶液に デイツビングして 50°Cで 10分間乾燥してアンダーコート層を形成した。ついで平均分 子量 20000のポリエチレングリコール 30gをエタノール 40gに溶解した溶液にデイツ ビングし 50°Cで 15分間乾燥して親水性トップコ一ト層を生成し、潤滑性コーティング を有するバルーンカテーテルを得た。このカテーテルの剥離強度及びバルーンの軸 方向の弾性率、バルーン折畳みが解除される圧力を実施例 1と同じ方法で測定した ところ、剥離強度が 0. 72N、バルーンの軸方向の弾性率が 115N/mm2、バルーン 折畳みが解除される圧力が 1. 4atmGであった。
[0061] (実施例 3)
デュロメーター硬度で 72Dのポリエステルエラストマ一(商品名:ノヽイトレル 7277 : 東レデュポン社製)のチューブ状パリソン(外径: 0· 46mm,内径: 0. 22mm)を用い て直管部が 1. 50mm,直管部の長さが 100mmのバルーンを作製した。それ以外は 実施例 1と同様な方法で潤滑性コーティングを有するバルーンカテーテルを作製した 。このカテーテルの剥離強度及びバルーンの軸方向の弾性率、バルーン折畳みが 解除される圧力を実施例 1と同じ方法で測定したところ、剥離強度が 0. 16N、バル 一ンの軸方向の弾性率が 121N/mm2、バルーン折畳みが解除される圧力が 1. 2a tmGであった。
[0062] (実施例 4)
外側層がデュロメーター硬度で 55Dのポリアミドエラストマ一(商品名: PEBAX553 3SA01:アルケマ社製)、内側層がデュロメーター硬度で 70Dのポリアミドエラストマ 一(商品名: PEBAX7033SA01:アルケマ社製)のチューブ状パリソン(外径: 0· 48 mm,内径: 0. 20mm)を用いて直管部が 1. 50mm,直管部の長さが 100mmの 2 層バルーンを作製し、実施例 1および実施例 2と同様な方法でコアキシャル構造の O
TW型のバルーンカテーテルを作製した。親水性樹脂などの樹脂コーティングは実 施しなかった。このカテーテルの剥離強度及びバルーンの軸方向の弾性率、バル一 ン折畳みが解除される圧力を実施例 1と同じ方法で測定したところ、剥離強度が 0. 0 6N、バルーンの軸方向の弾性率が 112N/mm2、バルーン折畳みが解除される圧 力が 0· 6atmGであった。
[0063] (比較例 1)
実施例 1と同サイズ、同形状の部材を用いて、直管部の外径が 1. 50mm,直管部 の長さが 100mmのバルーンおよびバルーンカテーテルを作製した。親水性樹脂な どの樹脂コーティングは実施しな力、つた。このカテーテルの剥離強度及びバルーン の軸方向の弾性率、バルーン折畳みが解除される圧力を実施例 1と同じ方法で測定 したところ、剥離強度が 0. 01N、バルーンの軸方向の弾性率が 110N/mm2、ノ ル ーン折畳みが解除される圧力が 0· 2atmGであった。
[0064] (比較例 2)
デュロメーター硬度で 70Dのポリアミドエラストマ一(商品名: PEBAX7033SA01: アルケマ社製)を用いて押出成形法により内外径が略円形状のチューブ状ノ リソン( 外径: 0. 33mm,内径: 0. 20mm)を作製した。次いで、このパリソンを、バルーン成 形金型を用いて二軸延伸ブロー成形を行い、直管部の外径が 1. 50mm,直管部の 長さが 100mmのバルーンを作製した。それ以外は実施例 1と同様な方法で潤滑性 コーティングを有するバルーンカテーテルを作製した。このカテーテルの剥離強度及 びバルーンの軸方向の弾性率、バルーン折畳みが解除される圧力を実施例 1と同じ 方法で測定したところ、剥離強度が 0. 16N、バルーンの軸方向の弾性率が 84N/ mm2、バルーン折畳みが解除される圧力が 1 · 2atmGであった。
[0065] (比較例 3)
実施例 3と同サイズ、同形状の部材を用いて、直管部の外径が 1. 50mm,直管部 の長さが 100mmのバルーンカテーテルを作製した。親水性樹脂などの樹脂コーティ ングは実施しなかった。このカテーテルの剥離強度及びバルーンの軸方向の弾性率 、バルーン折畳みが解除される圧力を実施例 1と同じ方法で測定したところ、剥離強 度が 0. 01N、バルーンの軸方向の弾性率が 1 19N/mm2、バルーン折畳みが解除
される圧力が 0· 2atmGであった。
[0066] (比較例 4)
デュロメーター硬度で 90Aのポリウレタンエラストマ一(商品名: Tecoflex : Therme dies. Inc製)を用いて押出成形法により内外径が略円形状のチューブ状ノ リソン (外 径: 0. 60mm,内径: 0. 20mm)を作製した。次いで、このパリソンを、バルーン成形 金型を用いて二軸延伸ブロー成形を行い、直管部の外径が 2. 50mm,直管部の長 さが 15mmのバルーンを作製した。それ以外は実施例 2と同様な方法で潤滑性コー ティングを有するバルーンカテーテルを作製した。このカテーテルの剥離強度及びバ ルーンの軸方向の弾性率、バルーン折畳みが解除される圧力を実施例 1と同じ方法 で測定したところ、剥離強度が 1. 01N、バルーンの軸方向の弾性率が 2. lN/mm 2、バルーン折畳みが解除される圧力が 2· OatmGであった。
[0067] (カテーテルの評価)
実施例 1から 4および比較例 1から 4の全てのカテーテルにおいて、バルーン内部 に負圧下で内側シャフトに巻き付け、バルーン保護用の管を被せて EOG滅菌したも のを評価サンプルとし、以下の評価をおこなった。
[0068] 図 9に示すように、スライドテーブルに固定された内径 3mm、外径 5mmのポリェチ レン製模擬血管内にカテーテルを配置し、カテーテル保持部においてカテーテルと フォースゲージを接続した。カテーテルの遠位端はステンレス製の模擬狭窄部から 2 mmの位置とした。カテーテルのガイドワイヤルーメンにはあらかじめ 0· 014インチの ガイドワイヤを揷入しておき、カテーテルの遠位端よりも遠位側に位置するガイドワイ ャは模擬狭窄部に設けた直径 0. 45mmの穴の中に配置した。また、ガイドワイヤ遠 位端の位置はカテーテル遠位端よりも 50mm遠位側とした。 1. ONの荷重が生じるま でスライドテーブルを 0. 5mm/secの速度で移動させた。
実施例 1から 4のカテーテルでは 1. ONの荷重を生じさせてもアコーディオン状のバ ルーンの変形は認められなかった。
[0069] 比較例 1のカテーテルでは 0. 34N、比較例 2では 0. 85N、比較例 3では 0. 79N、 比較例 4では 0. 19Nの荷重が生じた時点でバルーンがアコーディオン状に変形し、 それ以上の荷重を伝達することができなかった。
また、実施例 1から 4のカテーテルにおいては、バルーンの柔軟性の低下、ラッピン グ寸法の増大、バルーンの拡張 ·収縮応答性の悪化やバルーンのコーティングの飛 散などの不具合について、比較例 1から 4と比較して良好であった。