早生化形質転換植物 技術分野
本発明は、早生化形質転換植物、その作製方法及び植物の早生化方法に関する。 背景技術 明
従来より、 遺伝子の機能を解析するた田めの方法の 1つに、 T- DNA 内に組み込ま れた転写ェンハンサー配列を利用して、 植物遺伝子の転写を活性化した突然変異 体を作製し、 その転写活性化された遺伝子のクローニングをする、 ァクティべ一 シヨンタギング法が用いられている (非特許文献 1 )。 この方法を用いて、側根形 成抑制遺伝子が見出されている (特許文献 1 )。
しかし、 アクティベーションタギング法を網羅的な遺伝子機能の解析 (ゲノム に存在する遺伝子の機能をまとめて解析すること) に用いるには問題があった。 例えば、 シロイヌナズナのようなモデル植物では、 10Kbのゲノム領域の中に平均 2個以上の遗伝子が存在するが、 アクティベーションタギング法では、 タグ内の ァクチベータとしてェンハンサー配列が用いられており、 転写活性化可能なゲノ ム領域は揷入部位前後 5Kbにも及ぶため、 ェンハンサ一による遺伝子活性化の効 果が 1つの遺伝子に限定されず、 複数の遺伝子の転写が活性化され、 複合表現型 が生じていた (非特許文献 2 )。
この問題を避けるため、 本発明者らは、 「Fox hunting system (Full length cDNA over-expression gene Hunting system)」 と命名した手、feを開発した (特許又献 2 )。 Fox hunting systemとは、 強発現させる遺伝子ソースとして完全長 cDNAラ ィブラリ一を用い、 これを混合物のまま強発現型の T-DNAベクターを有するァグ ロバクテリゥムを介して植物に遺伝子導入し、 得られた Ί 種子を播種し、 表現型 のスク リーニングを行う方法である。 興味深い表現型が現れた場合、 その系統に 揷入されていた完全長 cDNAを PCR及ぴシーケンスによって調べ、原因遺伝子を同 定する。
Fox hunting systemの利点として、 例えば、 (i)完全長 cDNAライブラリ一は、 遺伝子が機能するときに必要な全アミノ酸情報を含むため、 導入する遺伝子が本 来有する全機能を発揮することができ、 従って通常の cDNAライブラリーに比べ、 機能発現の効率がはるかに高いこと、また全ての cDNA断片が本来の開始コドン及 び停止コドン情報を備えているため、 発現のためのタンパク質融合化などの必要 がなく、 タンパク質発現効率が高いこと、 (ii)何億クローンものライブラリーに 感染させても 1植物には 1〜2クローンしか導入されないので、形質転換植物体に は別々のクローンが導入され、 cDNAの単離と表現形質の確認は 2回程度で少なく てすむこと、 (ii i)従来の cDNAライブラリ一では、全ての mRNA分子がそのままの 量比で cDNA分子に置き換わるため、発現量の多い構造タンパク質遺伝子群や通常 は発現量の少ない情報伝達関連遺伝子群などの各 cDNA 存在比が発現量によって 大きく異なっているが、 Fox hunting systemのライブラリーでは、 遺伝子の発現 量にかかわらず全てのクローンが同一の割合で含まれる 「標準化」 されたライプ ラリーを使用でき、 ゲノムをタギングするときよりも高効率で別種遺伝子の機能 検定を行うことができること (但し、 シロイヌナズナゃイネなど標準化完全長 cDNAが整備されつつあるものはそれを利用してもよい。 また、構造タンパク質等 の発現量の多いタンパク質の機能を解析したい場合は、 標準化されていない通常 の完全長 cDNAライブラリ一を利用してもよい。)、 (iv)完全長 cDNAを含んだ植物 集団を一度全て揃えるという 「ライン化」 をすることなく、 ライプラリー内の全 ての遺伝子機能検索をひとまとめに行えるので、 簡単に自的の変異体を得ること ができ、 わずかな労力で特定の性質を付与する遺伝子 (本来その遺伝子が有して いる機能であるか否かを問わない) のスクリーニングを行うことができる、 など が挙げられる。
植物の早生化については、 例えば非特許文献 3、 4に以下のように報告されて いる。
少なくともモデル植物シロイヌナズナにおいては、 FTと呼ばれる遺伝子が葉に おいて活性化されると、その mRNAが師部を移動して茎頂に花芽を誘導する。その ため、この遺伝子を異所的に強発現させると花芽を早く誘導させることができる。 しかし、 その誘導のためには形質転換による遺伝子導入についで、 細胞內におけ
る遺伝子発現が必要なため、 組換体の作成が必要になるのと、 当該遺伝子を発現 させる時期、すなわち花成を誘導する時期をコントロールすることが困難である。
特許文献 1 特開 2002-010786号公報
特許文献 2 再公表 2003/018808号公報
非特許文献 1 Walden,Rら、 Plant Mol Biol, 1994, 26 (5): . 1521-8 非特許文献 2 Ichikawaら、 Plant J, 2003, 36 : p. 421 - 429
非特許文献 3 Heangら、 Science 2005, 309, ppl694-1696
非特許文献 4 Hanzawaら、 PNAS 2005, 102, pp7748 - 7753 発明の開示
本発明は、 植物早生化遺伝子を見出し、 その遺伝子を形質転換した植物を提供 することを目的とする。
本発明者らは、 前記 Fox hunting systemを用いて、 約 15, 000のシロイヌナズ ナの形質転換体系統を作製し、 その突然変異表現型系統を観察したところ、 早生 化を示す形態学的変異体を見出し、 その変異の原因となる遺伝子を単離すること に成功し、 本発明を完成するに至った。
即ち、 本発明は以下の発明を包含する。
〔1〕 (a)配列番号 2、 3 3、 3 5又は 3 7に示すアミノ酸配列を含むタンパク 質、
(b)配列番号 2、 3 3、 3 5又は 3 7に示すアミノ酸配列において 1若しくは数個 のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、 かつ植物体を 早生化させる活性を有するタンパク質、 又は
(c)配列番号 2、 3 3、 3 5又は 3 7に示すアミノ酸に対して 9 0 %以上の同一性 を有するアミノ酸配列を含み、 かつ植物体を早生化させる活性を有するタンパク 質
をコードする核酸を発現可能に含む、 早生化形質転換植物。
〔2〕 前記核酸が、
(d)配列番号 1、 3 2、 3 4又は 3 6に示す塩基配列を含む DNA、
(e)配列番号 1、 3 2、 3 4又は 3 6に示す塩基配列において 1若しくは数個のヌ
クレオチドが欠失、 置換もしくは付加された塩基配列を含む DNAであって、 かつ 植物体を早生化させる活性を有するタンパク質をコードする DNA、
(f)配列番号 1、 3 2、 3 4又は 3 6に示す塩基配列に対して 9 0 %以上の同一性 を有する塩基配列を含む DNAであって、 かつ植物体を早生化させる活性を有する タンパク質をコードする DNA、 又は
(g)配列番号 1、 3 2、 3 4又は 3 6に示す塩基配列を含む DNA と相補的な MA とストリンジェントな条件でハイブリダィズし、 かつ植物体を早生化させる活性 を有するタンパク質をコードする DNA
を含む、 〔1〕 に記載の形質転換植物。
〔3〕 前記植物が、 双子葉植物又は単子葉植物である、 〔1〕 に記載の形質転換 植物。
〔4〕 前記核酸が、植物ゲノムに組み込まれている、 〔1〕 に記載の形質転換植 物。
〔5〕 前記タンパク質が、 野生型と比べて植物体のサイズを増加させる活性を さらに有する、 〔1〕 に記載の形質転換植物。
〔6〕 〔1〕 〜 〔5〕 のいずれかに記載の形質転換植物由来の組織、 細胞又は 種子。
〔7〕 〔1〕 又は 〔2〕 に定義した核酸を植物の組織又は細胞に導入して植物 体を再生することを含む、 〔1〕 〜 〔5〕 のいずれかに記載の早生化形質転換植物 を作製する方法。
〔8〕 前記核酸が、 それを含む組換えベクターを用いて導入される、.〔7〕 に記 載の方法。
〔9〕 〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の形質転換植物において、 〔1〕又は〔2〕 に定義した核酸を過剰発現させて早生化を誘導することを含む、 植物の早生化方 法。
〔1 0〕 〔1〕 〜 〔5〕 のいずれかに記載の形質転換植物において、 〔1〕 又は
〔2〕 に定義した核酸を過剰発現させて、 野生型と比べて植物体のサイズの増加 を誘導することを含む、 植物のサイズ増加方法。
〔1 1〕 〔1〕 に定義したタンパク質を土壌または植物体に施用して早生化を
誘導することを含む、 植物の早生化方法。
〔1 2〕 〔1〕 に定義したタンパク質を土壌または植物体に施用して、 野生型 と比べて植物体のサイズの増加を誘導することを含む、 植物のサイズ増加方法。 本明細書中で使用する用語「核酸」 は、 DNAまたは RNAを指し、例えば遺伝子、 cDNA、 mRNA及びそれらの化学修飾体を含む。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願 2006-221061号の明細書 および Zまたは図面に記載される内容を包含する。 図面の簡単な説明
図 1 (a)は、完全長 cDNAを導入したバイナリーベクター構築物を示す。図 1 (b) は、増幅 cDNAの電気泳動像を示す。 図 1 (c)は、 RAFL cDNAのサイズ分布を示す。 図 2は、 シロイヌナズナでの腫瘍遺伝子の高発現表現型又は野生型の表現型を 示す。 図 2 (a)は、 同じ期間成長させた、 iaaM 高発現植物と野生型 (WT) 植物を 比較したものである。 図 2 (b)は、 iaaM 高発現植物の写真である。 図 2 (c) は、 tfflsl高発現植物の写真である。
図 3 (a)〜(d)は、 F03024系統の表現型を示す。 図 3 (e:)〜(f)は、 F01907系銃の 表現型を示す。 図 3 (g)は、 各系統の葉緑素量を示す。 図 3 (h)は、 各系銃の光合 成活性を示す。
図 4は、 RT- PCR で増幅した遺伝子の電気泳動像を示す。 図 4 (a)において、 19 及び 21は AtPDHlに特異的な PCRフラグメントである。 チューブリンは、 内部標 準遺伝子として使用した ]3 -チュープリン PCRフラグメントである。レーン 1及び
2:野生型 Columbia植物、レーン 3及び 4:薄緑色の表現型を示す T2世代の F03024 植物。 図 4 (b)において、 上のバンドは At3g55240に特異的な PCR断片、下のバン ドはローデイング調整に使用した AHA1 PCR 断片 (AHA1:シロイヌナズナ形質膜
H+- ATPase) を示す。 図 4 (c)において、 上のバンドは RT- PCRで増幅 (サイクル数
40) した At3g55240に特異な PCR断片 (p01907) であり、 下のバンドは RT- PCR で増幅 (サイクル数 28) で増幅したローデイング調整に使用した AHA1 (シロイヌ ナズナ形質膜 H+- ATPase) の PCR断片である。
図 5 (a)は、 F01907系統の相対的発現レベルを示す。 図 5 (b)は、 F01907系統の
相対的葉緑素量を示す。 図 5 (c)は、 F01907 系統のロゼット葉の数を示す。 図 5 (d)は、 F01907系統の表現型を示す。
図 6は AT3G55240タンパク質とその類縁 (関連) タンパク質のアラインメント を示す。 AT3G55240、 AT3G28990及び AT5G02580はシロイヌナズナのタンパク質で あり、 0S01G0837600 (旧名称: P0031D11. 2) はイネ ESTのタンパク質である。 図 7は、 AT3G55240タンパク質とその類縁(関連) タンパク質の系統樹を示す。 AT3G55240、 AT3G28990及び AT5G02580 はシロイヌナズナのタンパク質であり、 0S01G0837600 (旧名称: P0031D11. 2) はイネ ESTのタンパク質である。
図 8は、 F01907 系統等の葉肉細胞の電子顕微鏡像である。 パネル 1及び 2は、 野生型、 パネル 3及ぴ 4は、 Atlg70070 形質転換植物、 パネル 5及ぴ 6は、 At3g55240形質転換植物の葉肉細胞の電子顕微鏡像をそれぞれ示す。
図 9 (a)は、 GFPを発現するシロイヌナズナ培養細胞の蛍光顕微鏡像を示す。 図 9 (b)は、 キメラ N98— GFPタンパク質を発現するシロイヌナズナ培養細胞の蛍光 顕微鏡像を示す。 発明を実施するための最良の形態
1 . 植物早生化遺伝子の単離
植物早生化遺伝子は、 例えば、 シロイヌナズナを用いた Fox hunting system により取得できる。 しかし、 以下の手法はシロイヌナズナに限定されず、 他の植 物 (特に被子植物) にも適用可能である。
具体的には、 以下の手順で行うことができる。
( 1 )完全長 cDNA及び内部標準遺伝子を含む cDNA混合物の作製
完全長 cDNAとは、 ある遺伝子から転写された mRNAと同じ配列 (伹 L U→T ) を持つ DNA、 すなわち mRNAの完全なコピ—を意味し、 得られた cDNAよりも長い cDNAが存在する場合でも完全長 cDNAに含めることができる。
完全長 cDNAは、 当業者に公知の方法により、 目的の mRNAから調製することが できる。 例えば、 シロイヌナズナに由来する mRNA から、 Cap- trapper 法
(Carninci, P. ,ら、 Genomics, 1996. 37 (3): P. 327-36)、 Cap- finder法 (Zhao, Z. , ら、 J. Biotechnol. , 1999. 73 (1) : p. 35-41) 等の手法で調製することができる。
また、全ゲノム cDNAの配列決定がされている、独立行政法人理化学研究所(和光 巿、 日本) のシロイヌナズナ完全長 cDNAコレクションを用いてもよい。
完全長 cDNAをクローニングするためのベクターとしては、 例えば Sfilのよう な、 8塩基以上を認識し、 かつ挿入 DNAの方向を一方向に規定できる制限酵素部 位を、 cDNA挿入部位の両側に持つものを用いるのが好ましい。
当業者に公知の手法を利用して、 前記完全長 cDNAを担持する完全長 cDNAライ ブラリーを調製することができる。 ライブラリーを調製するためのベクターとし て、 例えば Lambda Zap II、 Lambda FLC - 1_B、 pTAS、 pBIGなどが挙げられる。 また、 後に表現型をスクリーニングするための内部標準として、 例えば細菌由 来の腫瘍遺伝子 (tmsl、 iaaM、 rolB、 tmr 等) を用いてもよい。 tmsl 及ぴ iaaM は、 それぞれ、 シユードモナス · シリ ンゲ (Pseudomonas syringae)、 ァグロバタ テリゥム ·チューメファシエンス (Agrobacterium tumefaciens)由来のトリプトフ アン 2-モノォキシゲナーゼをコ一ドする遺伝子であり、高発現するとオーキシン が多量に生産される。 rolBは、ァグロパクテリゥム ·リゾゲネシス (Agrobacterium rhyzogenesis) 由来のオーキシン感受性に関係する遺伝子である。 tmr は、 ァグ ロバクテリゥム · チューメファシエンス由来のサイ トカイニン生合成で働く遺伝 子である。 これらの腫瘍遺伝子は、 多くの植物の形態に劇的な影響を与えること 力 S知られて!/ヽる (Casanovaら、 Biotechnol Adv, 23, 2005, 3— 39; Romanoら, Plant Mol Biol, 27, 1995, 1071 - 83; Smart ら, Plant Cell, 3, 1991, 647—656)。 腫 瘍遺伝子は、 ライブラリー cDNAの均一性の指標として使用できるが、 シロイヌナ ズナに形質転換後は、 これらの腫瘍遺伝子は第二世代において突然変異系統から 排除される。 これらの腫瘍遺伝子は PCRで増幅できる。
( 2 )完全長 cDNAライブラリーの標準化
背景技術で述べたように、従来の cDNAライブラリ一では、遺伝子の発現量によ つて各 cDNAクローンの存在比が大きく異なる。そこで、遺伝子の発現量にかかわ らず全てのクローンが同一の割合で含まれるようにライブラリ一を作製する 「標 準化」 を行うことが好ましい。
完全長 cDNAを、 各クローンにっき等量ずつ混合すれば、 標準化完全長 cDNA混 合物を得ることができる。 これを行うには、 合成された完全長 cDNAの 5 ' 末端配
列と 3 ' 末端配列を決定 (シングルパスシーケンス) して、 重複の無い (末端部 における一部の領域の配列が共通しない)完全長 cDNAクローンを選別し、 これを データベース化しておく。 標準化された完全長 cDNAライブラリ一は、 それぞれ互いに異なる cDNAを選別 した上で等量ずつ混合したものであり、従来の cDNAライブラリーが有する分子種 の不均一性はなく、 全体的に均一である。 従って、 ゲノム遺伝子の多コピー遺伝 子群をも考慮すると、 ゲノムをタギングするときよりも公平に、 すなわち高効率 に、 別種遺伝子の機能検定を行うことができる。
シロイヌナズナでは全ゲノムの 50%以上に相当する標準化完全長 cDNAが現在 整備されており、本発明においては、 これらの整備された標準化完全長 cDNAを使 用することができる。
( 3 )発現ベクターへの完全長 cDNAのクローニング
得られた完全長 cDNA又は標準化完全長 cDNAを、 ァグロバクテリウム ·チュー メファシェンスによる植物形質転換のための T - DNA発現べクターにクローニング することができる。 T - DNA とは、 双子葉植物の腫瘍であるクラウンゴールの病原 細菌であるァグロパクテリゥムの病原性株に見出される Ti プラスミドが有する 特定領域であり、 この細菌が植物に感染すると、 T - DNA が植物細胞に転移し、 ゲ ノム DNA中に組み込まれる。
この T- DNAの内部には、 完全長 cDNAの発現を調節するための配列が含まれる。 発現調節配列としては、 植物細胞内で、 恒常的に若しくは条件的に発現を引き起 こすプロモーター配列と、 ターミネータ一が連結したカセットを組込むのが好ま しい。 好ましい恒常発現型プロモーター配列としては、 カリフラワーモザイクゥ ィルス (Cauliflower Mosaic Virus) の 35Sプロモーター配歹 lj (Sanders, P. R. ら、 Nucleic Acids Res, 1987. 15 (4) : p. 1543-58) が挙げられ、 誘導型プロモーター としてはダルココルチコィ ド誘導型プロモーター配列 (Aoyama,T. ら、 Plant J, 1997. 11 (3) : p. 605 - 12)、 エス トロゲン誘導型プロモーター配列 (Zuo, J ら、 Plant J, 2000. 24 (2) : p, 265-273) などが挙げられる。 本発明においては、 これ らのプロモーターを任意に組み合わせて(連結して)使用することも可能である。 プロモーターの組合せは、 恒常発現型又は誘導型同士でもよく、 両者を組合せた
ものでもよい。
また、 後の植物体選抜のために、 例えばハイグロマイシン耐性遺伝子を揷入し てもよい。
前述の完全長 cDNA又は標準化完全長 cDNAをそのプロモーター配列の下流にセ ンス方向、又はアンチセンス方向になるように、酵素反応により、例えば T4リガ ーゼを用いて挿入する。 これにより、 センス鎖を発現させた場合は、 当該 cDNA をコードする遺伝子の過剰発現がもたらす表現形質の変化を、 アンチセンス鎖を 発現させた場合は、当該 cDNAをコードする遺伝子の過少発現がもたらす表現形質 の変化を知ることができる。
( 4 )完全長 cDNAライブラリ一の植物への導入
次に、 前記完全長 cDNA又は標準化完全長 d)NA、 あるいは腫瘍遺伝子が挿入さ れた T -賺の集団 (Full-length cDNA over-expressor library ; FOX library) を常法によりァグロパクテリゥムに導入し、 ライブラリーを作製した後、 そのラ ィブラリ一中の cDNAを、 ァグロバタテリゥムによる感染を介して、植物 (例えば シロイヌナズナ) に導入 (形質転換) する。
植物へのァグロパクテリゥムの感染は、 デイツビング法、 フローラルディツビ ング法などを用いることができる。 デイツビング法の場合は、 植物体の束を、 ァ グロバタテリゥムが含まれる液体中に 30〜60秒浸漬する。フローラルデイツピン グ法の場合は、 直接植物宿主の花芽を浸漬し、 鉢をトレイに移し、 覆いをして一 晚湿度を保つ。 翌日覆いを取り、 植物をそのまま生育させて種子を収穫する。
( 5 ) 表現形質によるスクリーニング
ァグロバタテリゥムの FOXライブラリーを用いてシロイヌナズナなどの植物を 形質転換した形質転換植物(T0世代)から得られた種子を、 例えばハイグロマイシ ンを含む培地に播種する。 発芽約 1週間以内に形質転換植物を選択することがで きるので、 ハイグロマイシン耐性苗を選択するために更に培養する必要はなレ、。 選択された植物(Ί 世代)は土壌に移植し、 種子を回収する。
( 6 ) 表現形質の再確認及び変異形質の原因となる遺伝子の同定
興味のある形質転換植物 (例えば、 他の形質転換植物と比較して植物体の伸長 が早いもの、 開花が早いもの等、 早生に関係すると思われる形質を有する植物)
からゲノム DNAを抽出し、 この DNAから、 T - DNA中に含まれるプロモーター配列 とターミネータ一配列の近傍の塩基配列情報をもとにプライマーを設計し、 これ を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR) を行い、 これらの転写制御領域に挟まれた cDNAを単離する。 この cDNAを、 再ぴ前記と同様のプロモーター配列とターミネ 一ター配列を持った T- DNAに挿入し、 これを、 正常植物に再導入して、 表現形質 の再確認を行う。 そして、 cDNAの配列決定を行うことにより、 変異形質の原因と なる遺伝子を同定することができる。
2 . 単離同定された早生化遺伝子
前記手法により単離同定された植物早生化遺伝子は、 シロイヌナズナの At3g55240 (系統名: F01907)である。 また、本発明において、早生化遺伝子には、 At3g55240 と同等の植物体を早生化させる活性を有するタンパク質をコードする、 シロイヌナズナの遺伝子 At3g28990、 At5g02580、 およびイネ E S Tの 0s01g0837600 (旧名称: P0031D11. 2)も含まれる。 さらに、 これらの遺伝子により コードされるタンパク質は、 野生型と比べて植物体のサイズを増加させる活性を 有する。
ここで、 本発明において 「植物体を早生化させる活性」 とは、 早生化遺伝子を 発現させたときの植物体を、野生型よりも早く成長させる活性を意味する。また、 「植物体を早生化させる活性を有する」 とは、 前記活性が、 配列番号 2に示すァ ミノ酸配列を有するタンパク質が有する活性と実質的に同等であることをいう。 このような早生化活性 (又は早生化能力) を有する植物を、 本明細書では早生化 植物とレヽう。
• また、 本発明において 「野生型と比べて植物体のサイズを増加させる活性」 と は、 対応する野生型植物と比べて、 背丈などの植物体のサイズを大きくする活性 を意味する。 また、 「野生型と比べて植物体のサイズを増加させる活性を有する」 とは、 前記活性が、 配列番号 2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質が有する 活性と実質的に同等であることをいう。
At3g55240 の塩基配列を配列番号 1、 アミノ酸配列を配列番号 2に示す。
At3g28990 の塩基配列を配列番号 3 2、 ァミノ酸配列を配列番号 3 3に示す。
At5g02580 の塩基配列を配列番号 3 4、 アミノ酸配列を配列番号 3 5に示す。
0s01g0837600 (旧名称: P0031D11. 2)の塩基配列を配列番号 3 6、 アミノ酸配列を 配列番号 3 7に示す。
前記早生化遺伝子は、 配列番号 2、 3 3、 3 5又は 3 7に示すアミノ酸配列に おいて 1若しくは数個のアミノ酸に欠失、 置換もしくは付加されたアミノ酸配列 を含み、 かつ植物体を早生化させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子 でもよい。 ここで 「数個」 とは、 約 1 0、 9、 8、 7、 6、 5、 4、 3または 2 の整数をいう。 例えば、 配列番号 2、 3 3、 3 5又は 3 7に示すアミノ酸配列の :!〜 1 0個、 1〜8個、 好ましくは 1〜5個のアミノ酸が欠失、 付加あるいは置 換してもよレ、。
また、 前記アミノ酸配列に保存的アミノ酸置換が含まれてもよい。 このような 置換は、 例えば、 構造的又は電気的性質の類似するアミノ酸間で起こる。 そのよ うなアミノ酸グループは、 (1 ) 酸性アミノ酸:ァスパラギン酸、 グルタミン酸; ( 2 )塩基性ァミノ酸: リジン、アルギニン、 ヒスチジン;( 3 )非極性ァミノ酸: ァラニン、 バリン、 ロイシン、 イソロイシン、 プロリン、 フエニルァラエン、 メ チォニン、 トリプトファン;(4 )非荷電極性アミノ酸:グリシン、ァスパラギン、 グルタミン、 システィン、 セリン、 トレオニン、 チロシン ;及ぴ (5 ) 芳香族ァ ミノ酸:フエ-ルァラニン、 チロシントリプトファンを含む。
あるいは前記早生化遺伝子は、 配列番号 2、 3 3、 3 5又は 3 7に示すアミノ 酸配列に対して 7 0 %以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、 かつ植物体を 早生化させる活性を有するタンパク質をコードする遺伝子でもよい。 同一性は、 7 0 %以上、 好ましくは 8 0 %以上、 8 5 %以上、 より好ましくは 9 0 %以上、 最も好ましくは 9 5 %以上である。 ここで 「%同一性」 とは、 整列させた 2つの アミノ酸配列において、 全アミノ酸数に対する同一アミノ酸数のパーセンテージ をいう。 %同一性は、 例えば B L A S T、 F A S T Aなどのホモロジ一検索プロ グラムを用いて決定され得る。 ホモロジ一検索においてァラインメントはギヤッ プを導入してあるいはギャップを導入しないで行うことができる。 また、 配列の データべ—スとして、 例ぇば0 6 11 8 & 11 ]5、 EMB Lなどを利用することがで 含る。
前記早生化遺伝子は、 配列番号 1、 3 2、 3 4又は 3 6に示す塩基配列を含む
DNAでもよい。
また前記早生化遺伝子は、 配列番号 1、 3 2、 34又は 36に示す塩基配列に おいて 1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、 置換もしくは付加された塩基配列 を含む DNAであって、 かつ植物体を早生化させる活性を有するタンパク質をコー ドする DNAでもよい。 ここで 「数個」 とは、 約 1 0、 9、 8、 7、 6、 5、 4、 3または 2の整数をいう。
あるいは、 前記早生化遺伝子は、 配列番号 1、 32、 34又は 36に示す塩基 配列に対して 70%以上、 好ましくは 80%以上、 8 5%以上、 より好ましくは 90 %以上、 最も好ましくは 9 5 %以上の同一性を有する塩基配列を含む DNAで あって、 かつ植物体を早生化させる活性を有するタンパク質をコードする DNAで もよレ、。 ここで「%同一性」 とは、整列させた 2つのヌクレオチド配列において、 全ヌクレオチド数に対する同一ヌクレオチド数のパーセンテージをいう。 %同一 1"生は、 例えば B LAST、 F AS T Aなどのホモロジ一検索プログラムを用いて 決定され得る。 ホモロジ一検索においてァラインメントはギヤップを導入してあ るいはギャップを導入しないで行うことができる。 また、 配列のデータベースと して、 例ぇば。6 118 & 11 ]£、 EMB Lなどを利用することができる。
さらにまた、 前記早生化遺伝子は、 配列番号 1、 32、 34又は 36に示す塩 基配列を含む DNAと相補的な DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズ し、 かつ植物体を早生化させる活性を有するタンパク質をコードする DNAでもよ い。 ここで、 ストリンジェントな条件とは、 いわゆる特異的なハイブリッドが形 成され、 非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。 例えば、 約 45°C、 5〜6XSSC (塩化ナトリゥムノクェン酸ナトリゥム)でのハイプリダイゼーション、 その後の約 50〜約 65°C、 0.:!〜 1XSSC、 0.1%SDSでの洗浄が挙げられ、 或いはそ のような条件として、 約 65〜約 70°C、 1XSSCでのハイブリダイゼーション、 そ の後の約 65〜約 70°C、 0.3XSSCでの洗浄、 を挙げることができる。
上記配列番号 2、 3 3、 35又は 3 7に示すアミノ酸配列において 1若しくは 数個のアミノ酸が欠失、 置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質 をコードする遺伝子、 上記配列番号 2、 33、 35又は 3 7に示すアミノ酸に対 して 90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする
遺伝子、 上記配列番号 1、 3 2、 3 4又は 3 6に示す塩基配列において 1若しく は数個のヌクレオチドが欠失、 置換もしくは付加された塩基配列を含む DNA、 前 記配列番号 1、 3 2、 3 4又は 3 6に示す塩基配列に対して 9 0 %以上の同一性 を有する塩基配列を含む DNA、 前記配列番号 1、 3 2、 3 4又は 3 6に示す塩基 配列を含む DNAと相捕的な DNAとス トリンジェントな条件でハイブリダイズする DNA は、 当該技術分野で公知の手法によって改変することによって作製すること ができる。 遺伝子に変異を導入するには、 Kunkel法又は Gapped duplex法等の公 知手法又はこれに準ずる方法により行うことができ、 例えば部位特異的突然変異 誘発法を利用した変異導入用キット (例えば Mutant- K (TaKaRa社製、京都、 日本) や Mutant - G (TaKaRa社製))などを用いて、あるいは、 TaKaRa社の LA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異が導入され得る。 また、 変異を導入し たプライマーを用いる PCR による部位特異的変異導入法を用いてもよい (F. M. Ausubelら, Short Protocols In Molecular Biology, 1995, third edition, John Wiliey&Sons, Inc. ) 0
上記早生化遺伝子の塩基配列が一旦確定されると、その後は化学合成によって、 又はクロー-ングされた cDNAを錶型とした PCRによって、あるいは該塩基配列を 有する DNA断片をプローブとしてハイブリダィズさせることによって、 早生化遺 伝子を得ることができる。
上記早生化遺伝子と相同性の高い遺伝子として、 例えば以下の NCBI (National center for biotechnology information) のァクセッションナンノヽ一で特定 れ る遺伝子が挙げられる。 このような遺伝子及びその改変体もまた、 本発明の早生 化形質転換植物を作製するために使用することができる。
ィネ: XM一 475377. 1
トウモロコシ: AY106962. 1 GI : 21210040
3 . 組換えベクター及び形質転換植物の作製
( 1 ) 組換えベクターの作製
本発明に用いる組換えベクターは、 前記早生化遺伝子を適当なベクターに揷入 することによって作製できる。 早生化遺伝子を植物細胞へ導入し、 発現させるた めのベクターとしては、 pBI系のベクター、 pUC系のベクター、 pTRA系のベクタ
一が好適に用いられる。 pBI系及ぴ pTRA系のベクターは、 ァグロパクテリゥムを 介して植物に目的遺伝子を導入することができる。 pBI 系のバイナリーベクター 又は中間ベクター系が好適に用いられ、 例えば、 ρΒΙ121、 ρΒΙ101、 ρΒΠ01· 2、 ρΒΠΟΙ. 3等が挙げられる。 pUC系のベクターは、 植物に遺伝子を直接導入するこ とができ、 例えば、 pUC18、 pUC19、 pUC9等が挙げられる。 また、 カリフラワーモ ザイクウィルス (CaMV)、 インゲンマメモザイクウィルス (BGMV)、 タパコモザィ クウィルス (TMV) 等の植物ウィルスベクターも用いることができる。
ベクターに早生化遺伝子を挿入するには、 まず、 精製された DNAを適当な制限 酵素で切断し、適当なベクター DNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイ トに揷入してベクターに連結する方法などが採用される。
前記早生化遺伝子は、 その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込 まれることが必要である。 そこで、 ベクターには、 プロモータ一、 早生化遺伝子 のほか、 所望によりターミネータ一、 ェンハンサー、 選択マ一カー、 スプライシ ングシグナル、 ポリ A付加シダナル、 5' -UTR配列などを連結することができる。
「プロモーター」 としては、 植物細胞において機能し、 植物の特定の組織内あ るいは特定の発育段階において発現を導くことのできる DNAであれば、 植物由来 のものでなくてもよい。 具体例と しては、 カリ フラワーモザイクウィルス (CaMV) 35Sプロモーター、 ノパリン合成酵素遺伝子のプロモーター (Pnos)、 トウ モロコシ由来ュビキチンプロモーター、 イネ由来のァクチンプロモーター、 タバ コ由来 PRタンパク質プロモーター等が挙げられる。
「ターミネータ一」 は、 前記プロモーターにより転写された遺伝子の転写を終 結できる配列であればよい。 具体例としては、 ノパリン合成酵素遺伝子のターミ ネーター (Tnos)、力リフラワーモザィクウィルスポリ Aターミネータ一等が挙げ られる。
「ェンハンサー」 は、 目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ、 例えば CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むェンハンサー領域が好適である。
「選択マーカー」 は、 例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、 アンピシリン耐性 遺伝子、 ネオマイシン耐性遺伝子、 ハイグロマイシン耐性遺伝子、 ビアラホス耐 性遺伝子等が挙げられる。
( 2 ) 早生化形質転換植物の作製
本発明の早生化形質転換植物は、 前記早生化遺伝子又はそれを含む組換えべク ターを、 目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることが できる。
本発明において 「形質転換植物」 は、 遺伝子操作により作製された形質転換植 物およびその後代を含む。 また、 後代には交雑種も含み、 それらは早生化能力を 保持するものである。
形質転換植物 (トランスジヱニック植物) は以下のようにして得ることができ る。
本発明における形質転換の対象は、植物組織 (例えば表皮、師部、柔組織、木部、 維管束等、 植物器官(例えば葉、 花弁、 茎、 根、 種子等)を含む)又は植物細胞であ る。
形質転換に用いられる植物としては、 双子葉植物、 単子葉植物、 例えばァブラ ナ科、 イネ科、 ナス科、 マメ科等に属する植物 (下記参照) が挙げられるが、 こ れらの植物に限定されるものではない。
アブラナ科:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana) , アブラナ、 キャベツ、 ハ クサイ (Brassica) など。
ナス科: タノくコ (Nicotiana tabacum) , ナス、 ジャガイモ (Solaneum)、 トマ ト
(Lvcopersicon)、 トゥカフシ (Caosicum) なと。
バラ科:パラ (Rosa)、 イチゴ (Fragaria)、 サクラ (Prunus)、 リンゴ (Malus) など。
キク科:キク (Chrysanthemum)、 ヒマヮリ (Hel ianthus) など。
ナデシコ科:カーネーション (Dianthus caryophyllus) など。
イネ科: トウモロコシ (Zea mays)ゝ イネ(Oryza sativa) , ォォムギ (Hordeum) コムギ (Triticum) など。
ラン科:カトレア (Cattleya)、 コチョウラン (Phalaenopsis) など。
ユリ科:チューリップ (Tul ipa) など。
マメ科: ダイズ (Glycine max)、 エンドゥ (Pisura)、 ソラマメ (Vicia)、 フジ (Wisteria) など。
前記早生化遺伝子又は組換えベクターを植物中に導入する方法としては、 ァグ ロバクテリゥム法、 PEG-リン酸カルシウム法、 エレクト口ポレーシヨン法、 リポ ソーム法、 パーティクルガン法、 マイクロインジェクション法等が挙げられる。 例えばァグロパクテリゥム法を用いる場合は、 プロトプラストを用いる場合と組 織片を用いる場合がある。 プロトプラストを用いる場合は、 Tiプラスミ ドをもつ ァグロパクテリゥムと共存培養する方法、 スフエロプラスト化したァグロバクテ リゥムと融合する方法(スフエロプラスト法)、組織片を用いる場合は、 リーフデ イスクにより対象植物の無菌培養葉片に感染させる方法 (リーフディスク法) や カルス (未分化培養細胞) に感染させる等により行うことができる。 また、 単子 葉植物のァグロパクテリゥム法による形質転換には、 ァセトシリンゴンが形質転 換率を高めるのに使用できる。
遺伝子が植物に組み込まれたか否かの確認は、 PCR法、 サザンハイブリダィゼ ーシヨン法、 ノーザンハイブリダィゼーション法等により行うことができる。 例 えば、 形質転換植物から DNAを調製し、 DNA特異的プライマーを設計して PCRを 行う。 PCR を行った後は、 増幅産物についてァガロースゲル電気泳動、 ポリアク リルアミ ドゲル電気泳動又はキヤピラリー電気泳動等を行い、 臭化工チジゥム、 SYBR Green液等により染色し、 そして増幅産物を 1本のバンドとして検出するこ とにより、 形質転換されたことを確認することができる。 また、 予め蛍光色素等 により標識したプライマーを用いて PCRを行い、 増幅産物を検出することもでき る。 さらに、 マイクロプレート等の固相に増幅産物を結合させ、 蛍光又は酵素反 応等により増幅産物を確認する方法でもよい。
形質転換の結果得られる腫瘍組織やシュート、 毛状根などは、 そのまま細胞培 養、 組織培養又は器官培養に用いることが可能であり、 また従来知られている植 物組織培養法を用い、適当な濃度の植物ホルモン(オーキシン、サイ トカイニン、 ジベレリン、 ァプシジン酸、 エチレン、 ブラシノライド等) の投与などにより植 物体に再生させることができる。 植物体の再生は、 一般的には、 適当な種類のォ ーキシンとサイ トカイニンを混ぜた培地の上で根を分化させてから、 サイトカイ ニンを多く含む培地に移植させシュートを分化させた後にホルモンを含まない土 壌に移植することによって行う。
このようにして At3g55240などの上記早生化遺伝子が導入された形質転換植物 は、 早生の表現型を示す。 また、 野生型と比べて植物体のサイズを増加させる表 現型を示す。 さらに、 At3g55240 の遺伝子が導入されたシロイヌナズナは、 薄緑 色の表現型も有する。
本明細書において早生とは、 生育期間、 つまり播種してから、 開花 ·熟成 '結 実するまでの期間の短いものをいう。
なお、本明細書における「表現型」 という用語は、「表現形質」 と同義で用いる。 これらは、 容易に観察または測定できる植物の形態学的特徴を意味する。
早生の表現形質は、 早く収穫できるため、 台風などの自然環境による被害にさ' らされる可能性が減るなどの利点がある。 また、 鑑賞用植物においても出荷まで の栽培時期を大きく短縮することができるので生育のためのコストを大幅に減少 させることができる。 また、 野生型と比べて植物体のサイズを増加させる表現形 質は、 バイオマスを増加させることが可能であり、 例えば産業資源として利用さ れる植物に有用な形質である。
本発明はまた、 上記のようにして作製された本発明の早生化形質転換植物由来 の組織、 細胞又は種子も包含する。 これらの組織、 細胞又は種子もまた、 本発明 の核酸又は早生化遺伝子を含み、 とりわけ種子はその遺伝子型及び形質を後代に 子孫伝達することができる。
4 . 早生化遺伝子によりコードされるタンパク質の生産
上記数種の早生化遺伝子を TargetP VI. 0と呼ばれるアルゴリズムで解析すると、 N末端部位に膜構造に結合するモチーフがあり、 輸送され、 後に切り出される可 能性のある配列が、 配列番号 2に示すアミノ酸配列の場合、 N末端から 3 4個目 のアミノ酸残基にあると予想された。 また、 配列番号 3 3、 3 5又は 3 7に示す アミノ酸配列においても同様のアミノ酸残基が存在する (図 6参照)。 このような 部分アミノ酸配列を有するタンパク質は、 植物を早生化する活性および/または 野生型と比べて植物体のサイズを増加させる活性を有すると考えられる。
従って、 配列番号 2に示すアミノ酸配列の場合、 活性部分と思われるアミノ酸 は、 9 5 (配列番号 2の全アミノ酸) 一 3 3 (N末端から 3 4個目で切断される)
= 6 2アミノ酸、すなわち 3 4位のアミノ酸残基〜 9 5位のアミノ酸残基であり、
少なくともこの配列を含むペプチドを合成しても活性があるだろう。 同様に、 配 列番号 3 3、 3 5及び 3 7に示すアミノ酸配列の場合、 配列番号 2の 3 4位〜 9 5位のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を少なくとも含むペプチドを合成し ても活性があると考えられる。
早生化遺伝子によりコードされるタンパク質は、 前記 1 . で単離した早生化遺 伝子をプラスミ ド DNA、ファージ DNA等の宿主中で複製可能な組換えベクターに 連結(挿入)し、 該ベクターを、 好ましくは大腸菌等の植物宿主以外の宿主に導入 して形質転換体を得、 該形質転換体を培養し、 その培養物から採取することによ り得ることができる。 ここで、 「培養物」 とは、 培養上清のほか、 培養細胞若しく は培養菌体又は細胞若しくは菌体の破碎物のいずれをも意味するものである。 前記プラスミ ド DNAとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミ ド(例えば pBR322、 pBR325、 pUC118、 pUC119、 pUC18、 pUC19、 pBluescript等)、 枯草菌由来のプラス ミ ド (例えば pUB110、 ΡΤΡ5 等)、 酵母由来のプラスミ ド (例えば YEpl3、 YCp50 等)などが挙げられ、 ファージ DNAとしては; Iファージ (Charon4A、 Charon21A、 EMBL3、 EMBL4、 ^ gtlO, ^ gtll, ΖΑΡ 等) が挙げられる。 さらに、 レトロウイ ルス又はワクシニアウィルスなどの動物ウィルス、 バキュロウィルスなどの昆虫 ウィルスベクターを用いることもできる。
植物宿主以外の宿主としては、 大腸菌(Escherichia coli) 等のエッシェリ ヒァ 属、バチルス ·ズプチリス (Bacillus subtilis)等のバチルス属、シユードモナス · プチダ(Pseudomonas putida)等のシユードモナス属、 リゾビゥム ' メ リロティ (Rhizobium meli loti)等のリゾビゥム属に属する細菌、 サッカロミセス ·セレビ ン ェ (Saccharomyces cerevisiae) 、 シ ゾ サ ッ カ ロ セ ス · : ; ン べ (Schizosaccharomyces pombe)等の酵母、 COS細胞、 CH0細胞等の動物細胞、 ある いは Sf9等の昆虫細胞などを用いることができる。
大腸菌、 枯草菌等の細菌を宿主とする場合は、 例えばエッシェリヒァ · コリ
(Escherichia coli) DH5 a s HB101、 DH10Bなどが挙げられ、 枯草菌としては、 例 えばバチルス ·ズブチリス (Bacillus subtilis)などが用いられるが、 これらに限 定されるものではない。 この場合、 プロモーターは、 大腸菌等の宿主中で発現で きるものであれば特に限定はされず、 例えば trpプロモーター、 lacプロモータ
一、 PLプロモーター、 PRプロモーターなどの、 大腸菌やファージに由来するプロ モーターを用いることができる。 前記組換えベクターは、 該細菌中で自律複製可 能であると同時に、上記プロモーター、 リポソーム結合配列、前記早生化遺伝子、 転写終結配列により構成されていることが好ましい。 また、 プロモーターを制御 する遺伝子が含まれていてもよい。 細菌への組換えベクターの導入方法は、 細菌 に DNAを導入する方法であれば特に限定されず、 例えばカルシウムイオンを用い る方法 (Cohen, S. N. et al. : Proc. Natl. Acad. Sci. , USA, 69 : 2110 (1972) )、 エレク トロポレーシヨン法等が挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、 例えばサッカロミセス · セレビシェ(Saccharomyce scerevisiae) , ピキア ·パス トリス(Pichea pastris)などが用いられる。 この場 合、 プロモーターは酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、 例えば gal lプロモーター、 gallOプロモーター、 ヒートショ ックタンパク質プロモータ 一、 MF a 1プロモーター、 PH05プロモーター、 PGKプロモーター、 GAPプロモータ 一、 ADHプロモーター、 A0X1プロモーター等を用いることができる。 酵母への組 換えベクターの導入方法は、酵母に DNAを導入する方法であれば特に限定されず、 例えばエレクト口ポレ シヨン法、 スフエロプラスト法、 酢酸リチウム法等が挙 げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、 サル細胞 COS - 7、 Vero、 チヤイエーズハムスタ 一卵巣細胞 (CH0細胞)、 マウス L細胞などが用いられる。 この場合、 プロモータ 一として SR aプロモーター、 SV40プロモーター、 LTRプロモーター、 CMVプロモ 一ター等が用いられ、 また、 ヒ トサイ トメガロウィルスの初期遺伝子プロモータ 一等を用いてもよい。 動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、 例えば エレク ト口ポレーシヨン法、 リン酸カルシウム法、 リポフエクシヨン法等が挙げ られる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、 Sf9細胞などが用いられる。 この場合、 プロモー ターとしてポリへドリンプロモーター、 P 1 0プロモーター、 ォートグラファ · 力リホル二力 · ポリへドロシス塩基性タンパクプロモーター、 バキュロウィルス 即時型初期遺伝子 1プロモーター、 バキュロウィルス 3 9 K遅延型初期遺伝子プ 口モーターが用いられる。 昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、 例
えばリン酸カルシゥム法、 リポフエクシヨン法、 エレク トロポレーション法など が挙げられる。
前記の形質転換体を培養する方法は、 宿主の培養に用いられる通常の方法に従 つて行われる。
例えば、 大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養す る培地は、 微生物が資化し得る炭素源、 窒素源、 無機塩類等を含有し、 形質転換 体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、 天然培地、 合成培地のいず れを用いてもよい。 炭素源としては、 グルコース、 フラクトース、 スクロース、 デンプン等の炭水化物、 酢酸、 プロピオン酸等の有機酸、 エタノール、 プロパノ ール等のアルコール類が挙げられる。 窒素源としては、 アンモニア、 塩化アンモ ユウム、 硫酸アンモニゥム、 酢酸アンモユウム、 リン酸アンモニゥム等の無機酸 若しくは有機酸のアンモ-ゥム塩又はその他の含窒素化合物のほか、 ペプトン、 肉エキス、 コーンスティープリカ一等が挙げられる。 無機物としては、 リン酸第 一カリウム、 リン酸第二カリウム、 リン酸マグネシウム、 硫酸マグネシウム、 塩 化ナトリウム、 硫酸第一鉄、 硫酸マンガン、 硫酸銅、 炭酸カルシウム等が挙げら れる。 培養は、 通常、 振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、 37°Cで行 う。 pHの調整は、 無機又は有機酸、 アルカリ溶液等を用いて行う。 培養中は必要 に応じてアンピシリンゃテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。 プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換し た微生物を培養する場合は、 必要に応じてインデューサ一を培地に添加してもよ い。 例えば、 イソプロピル- β - D-チォガラク トピラノシド(IPTG)で誘導可能なプ 口モーターを有する発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには IPTG等を培地に添加することができる。 また、 インドール酢酸(ΙΑΑ)で誘導可能 な trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するとき には IAA等を培地に添加することができる。
例えば、 動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、 一般に使用されている RPMI1640培地、 DMEM培地又はこれらの培地に牛胎児血清 等を添加した培地等が挙げられる。 培養は、 通常、 5%C02存在下、 37°Cで 1〜30 日行う。 培養中は必要に応じてカナマイシン、 ペニシリン等の抗生物質を培地に
添加してもよい。
培養後、 前記タンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、 超音波処 理、 凍結融解の繰り返し、 ホモジナイザー処理などを施して菌体又は細胞を破砕 することによりタンパク質を採取する。 また、 前記タンパク質が菌体外又は細胞 外に生産される場合には、 培養液をそのまま使用する力 遠心分離等により菌体 又は細胞を除去する。 その後、 タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化 学的方法、 例えば硫酸アンモニゥム沈殿、 ゲルクロマトグラフィー、 イオン交換 クロマトグラフィー、 ァフィ二ティークロマトグラフィ一等を単独で又は適宜組 み合わせて用いることにより、 前記培養物中からタンパク質を単離精製すること ができる。
上記遺伝子組換え技術を使用する以外に、 例えば小麦胚芽抽出液、 大腸菌抽出 液、 又はゥサギ網状赤血球抽出液中での無細胞タンパク質合成法を用いて本発明 のタンパク質又はその活性なぺプチドを合成することも可能である (特開平 10-80295号公報)。
5 . 植物の早生化/サイズ増加方法
上記 4 .のようにして作られるタンパク質又はその活性なぺプチドは、植物体ま たは土壌に施用 (振りかける、 または散布するなど) して植物を早生化およびノ または野生型と比べて植物体のサイズを増加し得る。 特に、 ペプチドのうち、 切 断配列以降の活性部分と思われる配列番号 2のアミノ酸配列中の 6 2アミノ酸は、 わずか 6 2個のアミノ酸からなる親水性のペプチドであるので、 容易に水に溶け ることが考えられる。 配列番号 3 3、 3 5及ぴ 3 7のアミノ酸配列中の対応する アミノ酸についても同様である。 したがって、 水に混ぜて茎頂に散布するか、 水 に溶かして土壌もしくは栽培用水溶液に加えることにより根から吸わせることが 効果的と考えられる。
また、 上記タンパク質及ぴペプチドのもう一つのメリットは、 このようなぺプ チド性活性物質は化学物質などとは違い簡単に環境によって分解されるので、 局 所的な散布などを行うことにより、環境にやさしい生理活性物質であるといえる。 上記タンパク質又はぺプチドを有効成分として含む植物早生化誘導剤または植 物サイズ増加誘導剤は、 上記タンパク質又はペプチドと、 農業分野で一般的に使
用される担体、 添加剤など、 その他植物の生育に有用な成分を組み合わせて製造 することができる。
上記誘導剤の剤形は、 固形製剤、例えばペレツト、粒剤、顆粒、粉剤、水和剤、 顆粒水和剤などでもよいし、 または液体製剤、 例えば液剤、 乳剤などでもよく、 特に限定されない。
上記タンパク質又はべプチドの含量は、 対象の植物を早生化および/またはサ ィズを増加させるのに有効な量であれば特に限定されないが、 固形製剤の場合、 例えば 2〜 6 0重量%、 液体製剤の場合、 散布濃度で例えば約 0 . 1〜 1 0 p p mになるように本発明の有効成分を含有させればよい。
担体は、 固形製剤の場合、 例えば、 カオリンクレー、 珪藻土、 ベントナイト、 ゼォライ ト、 珪酸カルシウム、 酸性白土、 活性白土、 ァタパルガスクレーなどの 鉱物質担体、 硫酸アンモニゥム、 塩酸アンモニゥムなどのアンモニゥム塩、 リン 酸二カリウムなどのリン酸塩、 炭酸ナトリウム、 炭酸水素ナトリウム、 炭酸カル シゥムなどの炭酸塩、 ブドウ糖、 果糖、 ショ糖、 乳糖、 デキストリン等の糖類、 尿素、 食塩、 硫酸ナトリウム、 常温で固体のポリエチレングリコール等の水溶性 担体が挙げられる。 液体製剤の場合、 例えば水、 リン酸緩衝液、 トリス緩衝液、 クェン酸緩衝液などが挙げられる。 担体の含量は特に限定されないが、 固形製剤 の場合、 例えば 5〜4 0重量%、 液体製剤の場合、 例えば 8 0〜9 9 %である。 また添加剤として、 分散剤、 増量剤、 結合剤、 滑助剤、 界面活性剤、 希釈剤な どを加えてもよい。
上記誘導剤は公知の方法で製造することができる。 例えば粉剤は、 上記タンパ ク質又はペプチド、 水、 必要に応じて分散剤及び担体などを含有する懸濁液を嘖 霧乾燥して製造できる。 また、 例えば液剤は、 上記タンパク質 Xはペプチドを水 又は緩衝液に溶解し、 添加剤等を適宜添加して製造できる。
本発明によれば、 上記形質転換植物において、 植物早生化遺伝子を過剰発現さ せて、 早生化および Zまたは野生型と比べて植物体のサイズ増加を誘導すること を含む、 植物の早生化およびノまたはサイズ増加方法もまた提供される。
早生化遺伝子を過剰発現させる方法は、例えば、成長期の植物に対し物質投与、 環境ス トレス付与などがある。
実施例
実施例 1
以下、 実施例により本発明を更に具体的に説明するが、 これらの実施例は本発 明を限定するものではない。
1 . 方法
( 1 ) 標準化完全長 cDNA及ぴマーカー遺伝子から構成される cDNA混合物の調製 シロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana Columbia株) 完全長 cDNAライブラリ 一を次の 2つのベクターを用いて構築した。 ライプラリー RAFL2〜 RAFL6
(RAFL : RIKEN Arabidopsis full-length cDNA clone) にはべクター Lambda Zap II (Stratagene, La Jolla, USA)を、ライブラリ一 RAFL7〜RAFL11にはベクター Lambda FLC-l-B (Stratagene, La Jolla, USA)を用いた。
これらのライブラリ一からのクローンをシングルパスシーケンスして (Seki ら, 2002, Plant J, 31, 279-92)、 重複しないクローンを選択し、 各クローンについ て平均最終濃度が 14ng/mlの約 15, OOOcDNAから成る完全長 cDNA混合物を調製し た。
これらのクローンの約 3分の 1は、ある重複した cDNAを含んでいることが RAFL clone sequencing project (Yamadaら, 2003, Science October 2003 : Vol. 302. no. 5646, pp. 842 - 846)からわかっていたので、 このクローン混合物は約 10, 000 の重複しない完全長 cDNAから成ることになる。
RAFL2及び RAFL3ライブラリー(全部で 1, 623クローンに対応) における Sfil クローニング部位に対する完全長 cDNAの向きは、 RAFLクローンの残りの Sfilク ローニング部位と反対向きであった。 表現型スクリーニングのための内部標準と するために、 オーキシン合成(tmsl, iaaM) (Comaiら, 1982, J Bacteriol, 149,
40-6; Klee ら, 1984, Proc Natl Acad Sci USA, 81, 1728-32)、 オーキシン感受 性 (rolB) (Furnerら, 1986, Nature, 319, 422- 427)、及ぴサイ トカイン合成(tmr)
(Lichtenstein ら, 1984, J Nol Appl Genet, 2, 354 - 62)に関連する 4つの細菌 遺伝子を PCRにて増幅し、 pBluescript -由来ベクターの Sfil部位にクロー-ング した。 各内部標準プラスミ ドを別々に完全長 cDNA混合物に 30 ng/mlの濃度で加 えた。 増幅に用いる内部標準遺伝子の DNA铸型および PCRプライマーは以下のと
おりである。
pT281 (tmsl) :
5, -AGAGGCCAAATCGGCCATGTCAGCTTCACCTCTCCTT-3, (配列番号 3 )
5, -AGAGGCCCTTATGGCCCTAATTTCTAGTGCGGTAGTTAT-3, (配列番号 4 )
pCP3 (iaaM) :
5' -AGAGGCCAAATCGGCCATGTATGACCATTTTAATTCACCC-3' (配列番号 5 )
5' -AGAGGCCCTTATGGCCCTAATAGCGATAGGAGGCGTTG-3 ' (配列番号 6 )
pLJ-1 (rolB) :
5, -TCCTCTAGAGGCCAAATCGGCCATGGATCCCAAATTGCTATTCCT-3 ' (配列番号 7 ) 5, -TGATCTAGAGGCCCTTATGGCCTTAGGCTTCTTTCTTCAGGTTTA-3 ' (配列番号 8 ) pT281 (tmr) :
5, - AGAGGCCAAATCGGCCATGGACCTGCATCTAATTTTCG - 3, (配列番号 9 )
5' -AGAGGCCCTTATGGCCCCTAATACATTCCGAACGGATGA-3' (配列番号 1 0 )
( 2 ) 標準化完全長 cDNAのァグロパクテリゥムライブラリーの調製
前記 (1 ) で調製した cDNA混合物を SfiI (Takara Bio)で消化し、 ァグロバタ テリゥムバイナリーベクター pBIG2113SFの Sfil部位に T4リガーゼ(New England BioLabs, Beverly, USA)を用いてクローニングした。 pBIG2113SF ベクターは pBIG2113N (Taji ら, 2002, Plant J, 29, 417-26)を由来とし、 完全長 cDNAが 35S プロモーターに対してセンス方向に揷入されるように 2 つの Sfil 部位を PBIG2113Nの. Xbal部位に揷入した。
図 1 (a)にバイナリ一ベクターの例を示す。 E1は CaMV 35Sプロモーターの 5, - 上流配列 (-419から - 90)、 P35Sは CaMV 35Sプロモーター(-90から- 1)、 Ωは TMV の 5, -上流配列、 N0S-Tは Tiプラスミ ドのノノ リン合成遺伝子のポリアデニル化 シグナル、 Hygはハイグロマイシン耐性遺伝子を示す。 矢印は、 cDNAを回収する のに使用される GS4プライマーと GS6プライマーの位置を示す。
ライゲーションは、バイナリーベクターに対して 6倍モル過剰量の pBluescript で組み立て、 そのライゲーシヨン産物で E. col i DH10B (Invitrogen)をエレクト 口ポレーシヨン法によって形質転換し、 コロニーを混合してプラスミ ドライブラ リーを単離した。
ァグロパクテリゥム GV3101を、プラスミ ドライブラリーでエレクトロポレーシ ョンによって形質転換し、 生じた細菌コロニーを混合してァグロパクテリゥムラ イブラリーを調製した。
( 3 ) 形質転換及び植物の生育
形質転換及ぴ植物の生育は、 既報(Ichikawaら, 2003, Plant J, 36, 421-429) に記載されている。
短い野生型シロイヌナズナ(Col- 0)及ぴ形質転換株を cultivation container system (Arasystem, Gent, Belgium)で長日条件 (16時間明期、 8時間喑期) 下で 22°Cにて生育させた。 野生型植物を、 ァグロパクテリゥムライブラリーを用いて フローラルデイツビング法(Clough ら, 1998, Plant J, 16, 735- 43)により形質 転換した。
ハイグロマイシン耐性 Ί 苗を 50 mg/1 ハイグロマイシンを含む基本寒天培地 (BAM)上で 7日間選択し、 土壌に移した(Nakazawaら, 2003, Biotechniques, 34, 28-30)。 目に見える表現型 (例えば、 成長率、 植物体の色、 開花期、 稔性の変化 等) をスコアし、 表現型(FT1P)を示す全ての植物を新しい Arasystemトレイに移 し、 更に観察した。
DNA分析のために、 ロゼット葉か花のいずれかを全 FT1P植物から採取した。
( 4 ) DNAゲルブロット分析及ぴハイグロマイシン耐性試験
サザンブロッテイングは、 既報(Meyerら, 1995, Mol Gen Genet, 249, 265-73) に従って実施した。 20系統を無作為に選んで、 T2植物を前記 (3 ) 形質転換及ぴ 植物の生育に記載の条件と同様にして、 3 週間土壌生育させた。 1系統につき 3 つの植物体から葉を採取し、 液体窒素内でホモジナイズした。
ヮノム DNA ¾r DNeasy plant mini kit (Qiagen, Tokyo, Japan)を用い、 指示書 に従って単離した。ハイグ口マイシン耐性遺伝子の部分を含む pBIG2113SFから増 幅した 0. 5 kb PCR 断片を DIG DNA Labeling Mix (F. Hoffmann-La Roche, Basel, Switzerland)を用いて標識した。
DNA铸型用 PCR プライマーとして以下のものを用いた。
HN: 5, -ATGAAAAAGCCTGAACTCACCG-3 ' (配列番号 1 1 )
HC : 5 ' -TCGAGAGCCTGCGCGACG-3 ' (配列番号 1 2 )
ハイブリダィゼーシヨンは、 溶液 (5 X SSC, 50 % ホルムアミ ド, 0· 1 °/。 Ν -ラウ ロイルサノレコシン, 0. 02 % SDS, 2 % ブロッキング試薬(F. Hoffmann-La Roche, Basel, Switzerland) ) を用いてプローブ濃度を 5 ng/ml、 44°Cにて行い、 第 2洗 浄を 0. 1XSSC, 0. 1 % SDSの溶液を用いて行う以外は、 指示書に従った。
化学発光は、 ハイプリダイゼーシヨン膜を DIG Nucleic Acid Detection Kit (F. Hoffmann-La Roche, Basel, Switzerland)にて処理した後、 LumiVisionPRO (Aisin) によって検出した。
( 5 ) FT1P植物からの完全長 cDNAの増幅とクローニング
ロゼット葉又は花の約 200mg (生体量) を採取した。
5つのセラミック粒 (CERAMICS YTZ ball, D : 2. 3 mm, Nikkato, Japan)及ぴ 300 μ 1の溶角军ノ ッファーを植物材料にカロえ、 Shake Master (Shake Master ver. 1. 0, Bio Medical Science, Tokyo, Japan)を用いてホモジナイズした。 ゲノム DNAを Wizard Magnetic 96 DNA Plant System (Promega, Tokyo, Japan)を用いて抽出し た。ワークステーションシスアム (Tecan genesis orkstationl50, Tecan, Tokyo, Japan)を導入して抽出キットに記載されている抽出プロトコールを実行した。
Gatewayベクターへのクローユングの際には cDNA PCRに以下のプライマーを用 いた。
B1GS7: 5, -GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTCTAGAGGCCCTTATGGCCG-3, (配列番 号 1 3 )
B2GS8: 5, -GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTTCGAGTTAATTAAATTAATCCCCC-3 ' (配 列番号 1 4 )
PBIG2113SF ベクターへのクローニングの際には以下のプライマーペアを用い た:
GS4 : 5, -ACATTCTACAACTACATCTAGAGG-3 ' (配列番号 1 5 )
GS6 : 5' -CGGCCGCCCCGGGGATC-3 ' (配列番号 1 6 )
短い断片に対する PCR条件は、 94°C30秒変性、 62°C30秒ァニーリング、 72°C120 秒伸長とした。長い断片に対する PCR条件は、 94°C30秒変性、 58°C30秒ァニーリ ング、 68°C180秒伸長とした。 両ケースとも、 反応前に DNAを 8分間 95°Cにて変 性した。
( 6 ) PCR断片の発現ベクターへのクローニング及び配列決定
Gatewayベクタ一 PCR断片をまず BP clonaseによつて指示書に従つて pDONR- 207 ベクターにクローニングし(Invitrogen, Carlsbad, USA)、 揷入した完全長 cDNA 断片を下記の attLlおよび attL2 プライマーを用いて配列を決定した。
attLl : 5 , -TCGCGTTAACGCTAGCATGGATCTC-3 ' (配列番号 1 7 )
attL2 : 5, -GTAACATCAGAGATTTTGAGACAC-3 ' (配列番号 1 8 )
PBIG2113SFへのクローユングのために、 動植物からの PCR断片を Sfilで消化 し、ベクターの Sfil部位にクローユングした。得られた構築物を、例えば F01907 系統の場合、 PF01907とした。 揷入した完全長 cDNA断片を GS6プライマーを用い て配列を決定した。
( 7 ) RT-PCR
F03024系統の Ί 植物 (Τ厂 F03024)、 F01907系統の Ί 植物 -?01907)、 6つの 独立した R01907系統及び野生型植物の種を土壌に播き、 F03024については約 6週間、 F01097と R01907については 4週間生育させた。
各系統から少なく とも 3つの異なる植物体のロゼット葉を採取し、 mRNA を Dynabeads mRNA DIRECT Kit (Dynal, Oslo, Norway) を用いて指示書に従い抽出 した。組織特異性試験のために、発芽後 5週齢の野生型コロンビア植物を採取し、 対応する組織から mRNAを同様にして単離した。 mRNAを RQIDnase (Promega, Tokyo, Japan)で 37°Cにて 1時間処理した。 cDNA を RT-PCR用の Superscript first-strand synthesis system for RT - PCR (Invitrogen, Carlsbad, USA) を用いて製造業者 の指示に従い合成した。
RT-PCR は、 野生型及ぴ個々の系統間の cDNAの割合を調節するためにまず以下 の j3 -チューブリン特異的プライマー (Takahashiら, 2001, Plant Physiol, 126,
731-41)、 またはシロイヌナズナ形質膜 H+- ATPase (AHA1)特異的プライマー
(Kinoshitaら, 2001, Nature, 414, 656— 60)にて行った。
TU1 : 5, -TTCATATCCAAGGCGGTCAATGTG-3 ' (配列番号 1 9 )
TU2 : 5, -CCATGCCTTCTCCTGTGTACCAA-3 ' (配列番号 2 0 )
AHA1 : 5 ' -TTCTTCTGGGTGAAGATGTCAGG-3 ' (配列番号 2 1 )
AHA3 : 5 ' -TGGTTTTAGGAGCAAGACCAGC-3 ' (配列番号 2 2 )
F03024 の 遺 伝 子 特 定 プ ラ イ マ ー は 、 3024- N 及 ぴ 3024- C : 5 ' -TCAAAGTCTTGCCACTACTAGTCG-3 ' (配列番号 3 1 ) である。
F01907の遺伝子特定プライマーは、 1907N: 5' - TGATAGAGAAATGTTTGATCTTCCAT- 3,, (配列番号 2 3 ) 及ぴ 1907C : 5' -TCTTGCTTGTTGGACCGATGCTAAG-3 ' (配列番号 2 4 ) である。
PCRは常に以下の条件: 94°C30秒変性、 60°C30秒ァエーリング、 及び 72°C 120 秒伸長にて実施した。
( 8 ) 定量的リアルタイム PCRによる遺伝子発現解析
一つの 7 R01907系統由来の T2 R01907植物の 1か月齢のロゼット葉から RNA を NucleoSpin RNA Plant kit (MACHEREY- NAGEL GmbH, Duren, Germany)を用いて 単离佳した。 cDNAを Superscript first-strand synthesis system (Invitrogen Corp., Carlsbad, USA)を用い、 その指示書に従い合成した。
リアルタイム PCR解析を MX3000P Multiplex Quantitive PCR System (Promega Corp. , Madison, USA)を用いて行った。
SYBR Green Realtime PCR Master Mix (T0Y0B0 Co. Ltd, Japan)を、 増幅断片 の検出に用いた。
参照 DNAの増幅プライマーとして、 ACT2: 5, -CTGGATCGGTGGTTCCATTC-3, (配 列番号 2 5 ) と 5 ' -CCTGGACCTGCCTCATCATAC-3 ' (配列番号 2 6 ) を用いた。
リアルタイム PCR のための遺伝子特異的プライマーとして、 RP- 1907- 2 : 5 ' -CATGCGTCAGGGATAAATCGT-3 , (配列番号 2 7 ) 及ぴ LP- 1907- 2 : 5 , -ACTGTGTGGAAGGAGCTGGA-3 ' (配列番号 2 8 ) を用いた。
( 9 ) GFP融合タンパク質の構築と蛍光顕微鏡観察
PF03024S クローンを用い、 以下のプライマーを用いて後述の AtPDHl (F03024 系統から回収された cDNA (Arabidopsis ^rokaryotic DEVH box helicase 1) ) の N末端の 98ァミノ酸配列に対応する DNA断片を増幅した。
attBl- 3024N: 5 ' -GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTATGAACACTCTTCCCGTCGTCT- 3, (配列番号 2 9 )
attB2-3024C2: 5, - GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCGTCATCGCTATTCCGAATTTCA - 3, (配列番号 3 0 )。
増幅した DNA断片を pDONR- 207 ベクターを介して Gateway 指示書(Invitrogen, Carlsbad, CA USA)に従い pGWB5 (Saitoら、 1999, Plant Cell Physiol, 40, 77-87) にクローニングした。
生じた構築物 pGWB3024N98 は合成緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子(Chiu ら、 1996, Curr Biol, 6, 325-30)の N末端と融合した 98アミノ酸からなる N末端の 領域を CaMV 35S 転写プロモーターの制御下で過剰発現することができる (キメ ラ N98— GFPタンパク質)。
GFP遺伝子のみを 35Sプロモーターによって発現するネガティブな対照構築物 として、 pSA701 (島根大学、 Dr. T. Nakagawaから供与) を用いた。
これらのプラスミ ドを、 Helios Gene-Gun system (Bio-Rad, Tokyo, Japan)を 用い、 標準的なプロトコールに従い、 シロイヌナズナ Col- 0葉のパーティクルボ ンパードメント法に用いた。
個々の葉を蛍光顕微鏡(BX 60, Olympus, Tokyo, Japan) にて観察した (GFP 蛍 光については U- MNIBA、葉緑素蛍光については U- MWIGフィルターをそれぞれ使用)。
( 1 0 ) 電子顕微鏡観察
F03024, F01907、 野生型の 4週齢植物のロゼット葉を 4。/。ダルタルアルデヒド にて固定し、 それを 20 mM 力コジル酸ナトリウム、 pH 7. 0で 20時間 4°Cにて緩 衝化し、 同緩衝液で 4時間 4°Cにて洗浄した。 次に、 それらを 2%四酸化ォスミゥ ムの 20 mM カコジル酸ナトリゥム緩衝液(pH 7. 0) 溶液で 20時間 4°Cにて後固定 した。固定した試料をアルコール系で脱水し、 Spurr レジン(Taab, Berkshire, UK) に包埋した。 超薄切片を ULTRACUT UCT ultramicrotome (Leica, Wie , Austria) 上でダイヤモンドナイフでカットし、 Formvar -被覆グリッドに移した。 それらを 4 %酢酸ゥラニルで 15分間、 クェン酸鉛溶液で室温にて 10分間二重染色した。 蒸留水で洗浄後、 試料を JEM- 1200 EX electron microscope (Jeol, Tokyo, Japan) を用い 80 kVにて観察した。
( 1 1 ) 葉緑素含量測定
葉緑素含量を二つの方法で測定した:
第 1法 (図 3 (g) ) は、 既幸艮 (Porraら, 1989, Biochimica et Biophysica Acta,
975, 384-394) に貢己載される色素の直接測定による。 短い葉では材料を 80 % ァ
セ トンにてホモジナイズした。 アセ トン溶液を分光光度計(Ultrospec 3000, Pharmacia Biotech, UK)を用い波長 663nm、 645nm、 720nmにて測定した。
第 2法は(図 5 (b) )、 2波長ハンディクロロフィルメーター(SPAD - 520 ; Minolta, Tokyo, Japan)を用いた葉面積 1ュニットあたりの葉緑素含量の相対値の測定に よる。
葉緑素測定後、 同材料を定量的リアルタイム PCRに用いた。
( 1 2 ) 葉緑素蛍光測定
PSIIの量子収量は次式:
[Pm' = (Fm, 一 Fs) /Fm' ] (Gent y-パラメーター)
(Fm' および Fs = 光照射葉における最大及び定常状態葉緑素蛍光) にて算出する ことができるので、 三週齢植物の葉の葉緑素蛍光をパルス振幅変調 (PAM)蛍光光 度訐(MINI- PAM, Walz, Effeltrich, Germany)を用いて室温にて測定した。 結果を 少なくとも 4つの異なる葉の測定の平均とした。
( 1 3; in si lico 分析
BLASTサーチを NCBI Blast プログラムを用いて実施した。
細胞内局在性を TargetP VI. 0 (Emanuelsson ら, 2000, J Mol Biol, 300,
1005-16) 及ぴ ChloroP 1. 1 (Emanuelsson ら, 1999, Protein Sci, 8, 978—84) を用いて予想した。
マルチプルアラインメントを clustalX (Thompsonら, 1997, Nucleic Acids Res, 25, 4876— 82)及ぴ GeneDoc (Nicholasら, 1997, EMBNEW. NEWS, 4, 14) によつ て実施した。
Neighbour-Joining系統樹を CLUSTALXおよび TREEVIEW (Page, 1996, Comput Appl Biosci, 12, 357-8) を使って構築した。
2 . 結果
( 1 ) 約 10, 000の標準化シロイヌナズナ.完全長 cDNAを含むァグロパクテリゥム 発現ライブラリーの構築
シロイヌナズナ完全長 cDNA ライプラリーを作製するのと同じモル比で約
10, 000の独立したシロイヌナズナ完全長 cDNAを混合した。 cDNAは理研のシロイ ヌナズナ完全長 cDNA コレクション由来であり、 各 cDNA は配列決定されている
(Seki ら、 2002, Plant J. , 31, 279 - 92)。 また、 内部標準として、 形態的表現 型及ぴ不稔を誘発することが知られている 4つの細菌の腫瘍遺伝子を混合した。 この内部標準は、 ライブラリーの cDNA発現量の指標として使用できるが、 シロイ ヌナズナに形質転換後は、腫瘍遺伝子は第 2世代で突然変異系統から排除される。 tmsl (Kleeら、 1984, Proc Natl Acad Sci U S A, 81, 1728 - 32)、 iaaM (Comai ら、 1982, J Bacteriol, 149, 40 - 6)、rolB (Furnerら、 1986, Nature, 319, 422-427) 及ぴ tmr (Lichtensteinら、 1984, J Mol Appl Genet, 2, 354- 62)を使用した。 これらの腫瘍遺伝子は多くの植物の形態に劇的影響を持つことが知られている。 これら 4つの腫瘍遺伝子を、個々の完全長 cDNAに対してモル比で約 2倍量を添加 すると、約 7, 500の cDNAクローン毎に 1つ、各腫瘍遺伝子が出現すると予測され る。
ァグロパクテリゥムライブラリー (F0X ァグロパクテリゥムライブラリ一) を 作製後、 T- DNA特異的プライマーを設計し、 ランダムに選択したァグロバタテリ ゥムコ口-一から単離した DNAで、 PCRを行った。 34のァグロバタテリゥムコ口 ニーから得られた PCR断片を増幅し、 電気泳動を行ったところ、 20コロニーが単 鎖 cDNA構築物を含み、 11コロニーが 2つの異なる cDNA構築物を含み、 1コ口- 一が 3つの異なる cDNA構築物を含み、 2コロニーが空のベクターを含んでいた(図 1 (b) )。 図 1 (b)のレーン 1, 2, 5, 6, 7, 9, 10, 13, 15, 17, 19及び 22で、複数のバンド が増幅されたことが示された (レーン Mは Lambda/Hindlllマーカー)。
また、 これらの 45の増幅された cDNA断片の平均サイズは 1. Kbであり、 0. 3Kb 〜3. 0Kbの範囲内であった。 45の cDNA断片を配列決定したところ、すべての cDNA が互いに独立していた(データは示さず)。
( 2 ) シロイヌナズナ F0X系統の作製
シロイヌナズナ F0X系統を作製するために、 F0Xァグロパクテリゥムライブラ リーを使用して、 シロイヌナズナ Columbia- 0 (Col- 0)生態型を形質転換した。 フ ローラルデイツビング法後、 T。植物から得られた種子を集め、 ハイグロマイシン 含有 BAMプレート上で選択した(Nakazawaら、 2003, Biotechniques, 34, 28-30)。 プレートにより発芽 1週間以内に形質転換植物が選択されるので、 ハイグロマイ シン耐性苗を選択するために更に培養をする必要がなレ、。 ハイグロマイシン耐性
T 苗を、土壌に移植し、 15, 000を超えるシロイヌナズナ稔性 FOX系統を作製した。 導入遺伝子の存在を確認するため、 24のランダムに選択された植物を、 プローブ としてハイグロマイシン遺伝子を用いたマーカー遺伝子の存在についてサザン法 で分析した。 全ての系統がハイグロマイシン耐性遺伝子を含んでおり、 シロイヌ ナズナ FOX系統に平均 2. 6の T - DNAが揷入されていた (データは示さず)。
( 3 ) シロイヌナズナ FOX系統の完全長 cDNAのサイズ分布及び配列の相違 完全長 cDNAが発現ベクターに組み込まれ、そのサイズ分布が平均 1. 4Kbで、 0. 3 〜3Kbの範囲内であったため、 このサイズ分布がシロイヌナズナ FOX系統に反映 されているかを調べた。
F0X系統で組み込まれた cDNAのサイズ分布とばらつきを調べるため、 T- DNA特 異的プライマーを使って、 ランダムに選択した FOX植物から単離したゲノム DNA で PCRを行った。 106の系銃でのサイズ分布は、 0. 3Kb〜4. 2Kbの範囲内で、 平均 1. 4Kbであった。 図 1 (c)に、 Lamdbaベクターにおいて 277のランダムに選択され た RAFL cDNA (白のバー) と比較した、 シロイヌナズナ F0X植物から増幅された 106の RAFL cDNA断片のサイズ分布を示す。 分布パターンの類似性をはっきりさ せるため、 Lambdaベクターから得られた値を 2で割り、 グラフにプロットした。
これらの系統から増幅された PCR断片の平均数は、 1植物当たり 1. 2であった。 また DNAゲルブロット分析を行ったところ、 1系統当たり平均 2. 6の T- DNAが揷 入されていた。 しかし、 F0X植物からは平均 1. 2の PCR断片しか回収されなかつ た。 この低い PCR断片回収率は、 集団内に空のベクターが存在することよって部 分的には説明できるが、主に、 T- DNAタンデムまたは逆位反復などの 2重の T-DNA の組み込みが生じたことによると考えられる (De Buck ら, 1999, Plant J, 20, 295-304; De Neveら, 1997, Plant J, 11, 15—29 ; Krizkovaら, 1998, Plant J, 16, 673—80)。
cDNAの分布の平均サイズと範囲は、 F0Xァグロパクテリゥムライプラリーで観 察されるものと非常に似ており、 また 277のランダムに選択されたシロイヌナズ ナ完全長 cDNAで観察されるものとも類似していた (図 1 (c) )。
また、 40の PCR断片を配列決定したところ、 これらは異なる完全長 cDNA由来 であり、内部標準として cDNA混合物に添加した細菌腫瘍遺伝子とも同一ではなか
-εε-
τ挲 urn
080990/.00Zdf/X3d 90蘭 OOZ OAV
OX植物に揷入された 40の RAFL cDNAの遺伝子注釈
系統 RAPLコ-ド Ρ値 MIPSコ-ド 注釈
F04822 06—69 - P 16 3. 00Ε-25 Atlg29390 未知のタンハ'タ質
F04838 ο 2. 50Ε-27 At5g02040 sa_e_20 未知のタン ク質
F04841 05-07ふ-L21 1. 30Ε-84 At2gl3360 fl4o4ァラニン ク*リオキシレードアミノトランスフェラ
- ir
F05137 ND 2. 80Ε-32 Atlg26800 T24P13 未知のタン /、°ク質
F05139 09-89-F04 6. 60E-102 Atlgl2900 F13K23 Γ'リセルァルテ 'ヒド 3—ホスフ トテ'ヒ
F05140 04 - 17- Ε22 4. 90Ε-65 At5g40370 mpo 12 ク、'ルタレにキシン様タン ク質
F05209 06-86-D10 1. 70Ε-68 At4g25950 EN_D_2 液胞型 H+-ATPaseサ^ユニット
G3 (VHA-G3)
F05212 ND 6. 90Ε- 67 Atlg03020 F1003 推定ク"ルタレドキシン
F05509 21-13-L10 5. 70Ε-74 Atlg29395 F15D2 未知のタンパク質
F05535 09-23-L13 1. 00Ε-72 At3g52990 mg_c_20 t'ル ン酸キナ-セ *様タ 、。タ質
F05625 06-76-Κ22 9. 00Ε-97 At5g51610 F9L11 色素体リホ'、;;-ムタ 、。ク質
(PRPL11)
F05632 04-12-J05 1. 30Ε-42 Atlg32990 K17S15 50s リホ、、ヌ-ムタンハ°タ質 L11 -様
F05701 09 - 07-M11 2. 70E-103 At4g40070 MY_D_45 未知のタン タ質
F05706 06-11-C05 2. 80Ε-99 At4g00895 T18A10 未知のタン タ質
F05735 05-14-011 1. 00Ε-24 At3g50260 po-c-22 推定タン タ質
F06540 08-12-G17 6. 60E-116 At5g60360 muf9 AALP タン ク質
F06549 09-13-A13 1. 0E-81 At2g44100 f6el3 GDP解離阻害物質
F06603 17-39-M11 1. 10E-64 At5gl2310 my_e_31 RING finger様タンハ'ク質
F06603 09-34-021 1. 80E-103 At3g09440 F3L24 熱ショックタンハ。タ質(At-hsc70- 3〉
F06603 ND 4. 50E-10 At5gl0380 wt_e 21 推 タンハ。ク ®
F06619 09-81-K15 8. 0Ε-82 Atlg29410 ホスホリ 5Γシルアントラニレ—トイ;/メラ—セ、'
F06636 06-10-F19 4. Ο0Ε-98 At2g41430 脱水誘導タン/、'ク質(EKD15)
F06650 09-36-Η22 4. 20Ε-70 At4g35860 EN D— 23 GTP 結合タンハ。ク質 GB2
F06827 ND 9 00Ε-25 At5g67190 21H1 TINY-様タン タ質
F06903 06-71-N13 3. 30Ε-55 At4g39090 MY_D— 43 乾燥誘導性システィンフ' Pテ付- セ RD19A前駆体
F06909 ND 6. 10E-20 Atlg03901 F21M11 未知のタンハ'タ質.
F06909 ND 7. 50E-14 At4g28660 SR-D-25 光化学系 Πフ° ティナ -セ、'
RD19A 前駆体
F06913 09-67-Ρ06 3. 70E-123 At½24430 WT„D_35 LG27/30-様遺伝子
F07008 09 - 47- Κ07 2. 60Ε-68 Atlg29850 TF-1ァホ。ト-シス関連タン ク質 19に類似 の F皿 8
F07049 04-14-104 9. 00Ε-76 At5g38430 MXI 10 リすロースヒ、'スホスフェートカル キシラーセ
small chain lb 前駆体
F07108 ND 1. 20Ε-29 At5g67500 K9I9 ホ ' - ン様タンハ'タ質
F07703 ND 2. 00Ε-37 Atlg70830 F15H11 未知のタン /、°ク質
F07801 04-09-024 2. 10E-76 At4g30270 WU_D_22 キシ Pク Ίレカンエント 1, - /3 -D- ク"ルカナ- if前駆体
F07805 ND 1. 40E-15 Atlg59740 F23H11 硝酸塩輸送体 NTL1, 推定
F07818 11-02-102 6. 10E 61 At4g25570 PO_D_20 未知 タンハ。ク質
F08101 09-19-E06 6. 40E-60 At2gl6070 f7hl 未知のタンハ'ク質
F08134 06-09-G16 1. 20E-74 At3gl5780 MSJ11 未知のタンノ、 'ク質
F08151 06-11-K21 1. 20E-80 At2g20880 f5hl4 AP2 メイン転写因子.
F08326 09-19-L12 3. 90E-114 At5gl8770 ch_e_41 推定タンハ 'ク質
F08509 04-20-L08 8. 20E-77 At5g66040 K2A18 老化閧連タンハ'ク質 sen l-様タン
'、'ク質; ケトコナ -ル耐性タン ク質様 系銃: 系統名、 RAFLコード: 对応する完全長 cDNAの RAFL番号、 ND : 決定されて いない。 「P値 J 、 「MIPS コード」 及ぴ 「注釈」 は、 Wl?S Arabicfopsis thaliana ゲノムデータベースの BLASTサーチによる。
(ht tp : //mips , gsf . de/ pro,j/thal/ db/ index, htmlj
( 4 ) シロイヌナズナ FOX系統の表現型のモニタリング
15, 547の 1\ FOX系統を作製する過程で、 表現型 (成長率、 植物の色、 開花期、 稔性等) をモニターし、 表現型が変化した 1, 487系統を集めた。
これらの見かけ上の形態的突然変異体系統と、 シロイヌナズナのァクチべーシ ョンタグ系統に現れた形態的突然変異体と比較したところ、 様々なカテゴリーで の突然変異体の出現頻度の高低はほとんど同じであつたが、 Fox 系統の方が全般 的に高い効率で変異が現れた(データは示さず)。 これは Fox系統の効率性を示し ており、 主に、 強力な CaMVプロモーターとノパリン合成 (N0S) ターミネータ一 の制御下で、 完全長 cDNAが適切に発現することによると考えられる。
T2世代の突然変異表現型の遺伝率を確認するため、 Ί\世代で現れた 117の薄緑 色の突然変異系統 (表 2 ) を生育し、 Τ2世代の突然変異の表現型を探した。
表 2
観察した植物の 表現型を示す植物の T2 表現型率 系統名
数 (0) 数 (P) (P/0 X 100)
F03430 17 17 100
F05420 17 17 100
F05S33 5 4 80
F06017 12 12 100
F06026 8 0 0
F06121 15 0 0
F06405 11 11 100
F06644 10 10 100
F07103 17 17 100
F07146 7 0 0
F08004 9 0 0
F08007 16 16 100
F08211 17 12 70
F08650 17 0 0
F08919 13 0 0
F09751 1 0 0
F09807 4 0 0
F10002 17 0 0
F10116 13 13 100
F10129 17 17 100
F10216 12 10 83
F10223 2 0 0
F10244 16 0 0
F10422 4 4 100
F10428 15 6 40
F10439 17 0 0
F10731 17 17 100
F11005 6 5 83
F11726 9 9 100
F12809 11 0 0
F12929 41 41 100
F13219 12 6 50
F13222 4 3 75
F13602 13 6 46
F13627 17 17 100
F14207 5 3 60
F14344 5 5 100
F14403 3 3 100
F14442 5 0 0 '
F14634 40 40 100
F14701 6 5 83
F14702 7 4 57
F14905 15 9 60
F15031 26 18 69
-Li_
080990/Z,00Zdf/X3d 90蘭 OOi OAV
93 F24737 17 0 0
94 F25132 17 17 100
95 F25145 26 26 100
96 F25344 17 4 23
97 F26427 17 0 0
98 F26516 17 10 58
99- F26615 17 0 0
100 F26746 17 0 0
101 F26918 17 15 88
102 F27141 17 5 29
103 F27225 17 7 41
104 F27718 32 17 53
105 F27904 17 0 0
106 F28030 16 8 50
107 F28407 1 0 0
108 F28409 17 6 35
109 F28503 17 0 0
110 F28621 15 5 33
111 F28909 29 28 96
112 F29309 17 0 0
113 F29340 7 7 100
1 14 F29739 39 39 100
115 F29743 17 3 17
1 16 F30406 9 2 22
1 17 F30503 8 8 100
これらの表現型をモニターするために、 各 20苗ずつ生育した。 20苗から優性 がはっきりと確立されるのは難しいにもかかわらず、 60系統が薄緑色の表現型を 示した (即ち、 表 2で T2表現型率が 5 0 %以上示した系銃の数が 60)。 また、 40 の形態的突然変異体についても調べ、 元の突然変異体の表現型を示す 7系統を見 出した。 これは Τ2世代の導入遺伝子の抑制によるものか、 T\F0X植物のうち誤つ て突然変異体と同定されたものと考えられる。 特に矮小化及び葉形の突然変異体 は選択プレートから移動した後、 環境ストレスにより生じたものと考えられる。 ( 5 ) 腫瘍遺伝子により生じる形態
内部標準として 4つの腫瘍遺伝子 tmsl、 iaaM、 rolB及び tmrを、 完全長 cDNA ライブラリーと混合した。 iaaM 及ぴ tmsl は、 それぞれ P. syringae 及び
A. tumefaciens由来のトリプトファン 2-モノォキシゲ^ "一ゼをコ一ドし、 これら
の遺伝子が高発現してオーキシン応答が増強される(Comaiら, 1982, J Bacteriol, 149, 40-6) 0 rolB は、 Agrobacterium rhyzogenesis 由来であり、 オーキシンに 対する感受性に関係している。 tmrは、 Agrobacterium tumefaciens由来の月重瘍遺 伝子であり、 サイ トカイニンの生合成に機能する。 各腫瘍遺伝子を、 完全長 cDNA と比較して 2倍のモル等量の割合で完全長 cDNAと混合した。
完全長 cDNAの発現量と分布をモニターするため、シロイヌナズナ F0X系統にお ける腫瘍遺伝子の出現を調べた。 まず、 腫瘍遺伝子によって生じた突然変異につ いて形質転換植物の形態をモニターした。 実際に形態的表現型を有していたのは 以下の 2つの遺伝子だけであった。 tmsl及び iaaMのいずれの場合でもォーキシ ン応答が増強されるので、 これらの遺伝子を含む植物では、 頂芽優性と矮性の表 現型が促進されていた (図 2 )。 これらの形態的な特徴は、他の形態的突然変異と 非常にはっきりと容易に区別される。 図 2 (a)は、 同じ期間成長させた、 iaaM高 発現植物と野生型 (WT) 植物を比較したものである。 図 2 (b)は、 iaaM高発現植 物の写真である。 図 2 (c) は、 tmsl高発現植物の写真である。
tmrの高発現は、 植物苗を致死させたが、 rolBの髙発現は、 はっきりとした表 現型を示さなかった。 15, 547のシロイヌナズナ F0X系統のうち、 13の tmrl及び iaaMの高発現突然変異体が存在した。 見かけ上のこれらの突然変異体は、 理論値 (15, 000のうち 4) と比較して高かった。 これは、 細菌培養における、 形質転換 されたァグロバタテリァの増殖の差に依存している可能性があると考えられる。 前記腫瘍遺伝子の利点の 1つは、 突然変異体は不稔なので、 rolB以外は、 次の世 代に持ち越されないことである。
( 6 ) 植物早生化遺伝子による突然変異体の特徴
T2世代で薄緑色の表現型を示した前記 59系統のうち、 2つの系統を代表として 選択した(F03024系統(成長の遅い系統)、 F01907系統(早生化遺伝子が高発現し ている早生化系統) )。 F03024植物体は薄緑色及び成長の遅い表現型を示し(図 3
(a)、 F03024系統の Ί 世代の表現型)、 薄緑色の表現型は、 自家受粉後 Τ2世代に おいて半優性であった (図 3 (b)、 一部薄緑色の表現型を示す T2世代の F03024系 統植物、図 3 (c)、左: Τ2世代の薄緑色の茎を示す F03024植物、右: Τ2世代の F03024 系統の野生型分離個体)。 また、 F01907 は薄緑色の突然変異体として単離され、
その表現型は T2世代において優性であった(図 3 (6)、1 世代の F01907の表現型)。 図 3 (g)にこれらの系統の葉緑素量の比較を示す (図 3 (g)において、 X軸 1 :野生 型植物、 2 : F01907系統の 1 植物、 3: F03024系統の ^植物、 Y軸:相対的葉緑 素量)。
T-DNAプライマーセットを用いたゲノム PCRにより、導入された完全長 cDNAを 回収した。 F03024及ぴ F01907植物体から、 それぞれ、 3. 0Kb及び 0. 8Kbの cDNA 断片を回収した。揷入された完全長 cDNA断片を増幅するためプライマーを設計し た。 回収した cDNA断片をァグロパクテリゥム Tiプラスミ ドベクターにもどして クローニングし、 再構築されたプラスミ ドを使って、 シロイヌナズナ (Col-0)植 物体を形質転換した。
土壌で成長させた後、 F03024から回収された cDNAを使って作製された 48の形 質転換植物のうち、 32が、 元の F03024植物体に見られた薄緑色で成長の遅い表 現型を示した (図 3 (d)、 左:形質転換していない野生型植物、 右:同じ期間成長 させた、 薄緑色の表現型を示す後述の AtPDHl 遺伝子で形質転換された野生型植 物)。 F03024 から回収された cDNA を配列決定し、 NCBI (National center for biotechnology information) のデータベースで調べたところ、 Atlg70070であり (理研 (理化学研究所) シロイヌナズナ完全長 cDNA番号 AF387007)、 DEVH box ヘリカーゼをコ一ドするものであった。 Atlg70070は F03024で高発現していた(図 4 (a) )。 DEVH boxヘリ力ーゼは DEAD及び DEAH box RNAヘリカーゼを含む遺伝子 ファミ リーのメンパーである。 F03024から回収された cDNAを AtPDHl (Arabidopsis £rokaryotic ;QEVH box iielicase 1)と命名した。 タノ コ DEAD boxヘリカーゼ (VDL) は葉緑体をターゲットとし、葉緑体発達を調節するという報告がある(Wang et al., 2000)。 AtPDHlは、 原核生物の DEAD boxヘリカーゼで構成される小クレードに属 する、 N末端領域に推定上の葉緑体ターゲットシグナルを有する。 グリーン蛍光 タンパク質 (GFP) に N末端の 98アミノ酸を融合することによりこのタンパク質 の細胞内局在を試験し、葉緑体に位置することがわかった(図 9 (a)、(b) )。 AtPDHl 髙発現植物体の薄緑色の葉の葉緑体構造と光合成活性を試験すると、 光合成活性 は有意に減少し (図 3 (h) )、 これは、 葉緑体の内膜構造の不十分な発達によるも のである (図 8 )。
F01907から回収された cDNAを含む 51の形質転換植物のうち、 47が、元の F01907 の表現型を再現し、 長日光条件下で薄緑色と早咲きの表現型を示した (図 3 (f)、 左:形質転換していない野生型植物、 右:同じ期間成長させた、 薄緑色で背の高 い表現型を示す T2世代の At3g55240形質転換植物)。 cDNAを配列決定し、 NCBIの データベースで調べたところ、 機能が知られていない At3g55240であった。
F01907植物体は、 薄緑色の表現型を示しただけでなく、 野生型植物体よりも速 い植物発育を示し、 かつ大きく成長した (図 3 (e)、 図 3 (f) )。 このような植物の 発育は、 弱い光条件下で成長した野生型の発育を想起させたので、 この表現型を PEL (£seudo-etiolation in light) とした。 PEL表現型は、 機能が未知である遺 伝子の At3g55240 の高発現によって生じる (図 4 (b)、 上のバンドは At3g55240 に特異的な PCR断片、 下のバンドはローディング調整に使用した AHA1 PCR断片
(AHA1 : シロイヌナズナ形質膜 H+- ATPase)、 レーン 1 :野生型コロンビア植物、 レーン 2— 7 :薄緑色の表現型を示した T2- R01907植物、 レーン 8 :薄緑色の表 現型を示した T2- F01907植物)。 F03024植物体とは対照的に、 これらの PEL植物 体は、正常な光合成活性及び正常な葉緑体構造を有する(図 3 (h)、 レーン 1一 4 :
Atlg70070の 4つの独立した形質転換植物、 レーン 5— 7 : At3g55240の 3つの独 立した形質転換植物、 Y軸:野生型に対して表される相対的光合成活性、 X軸:個々 の植物;図 8、 野生型 (1及ぴ 2 )、 Atlg70070 形質転換植物 (3及ぴ 4 ) 及ぴ
At3g55240 形質転換植物 (5及ぴ 6 ) の葉肉細胞の電子顕微鏡観察。 矢印は plastgrobuleの凝集を示す。 1、 3、 5のパーは、 l w mを示す。 2、 4、 6の バーは 200nmを示す。)。 At3g55240の遺伝子は小さいタンパク質 (95アミノ酸) をコードし、 比較的長い 3' - UTR (330bp)を有していた。 哺乳動物の遺伝子には存 在せず、 シロイヌナズナ由来で 2つ、 またイネ及びマメ由来でこの小さいタンパ ク質と相同性を示す遺伝子があるので、 これらはいずれも植物に特異的な遺伝子 であることがわかった。 図 6に、 AT3G55240 タンパク質とその類縁 (関連) タン パク質のアラインメントを示す。 AT3G55240、 AT3G28990及ぴ AT5G02580はシロイ ヌナズナのタンパク質であり、 0S01G0837600 (旧名称: P0031D11. 2) はイネ EST のタンパク質である。 図 6中の数は、 各タンパク質のアミノ酸の位置を示す。 図
7に AT3G55240 タンパク質とその類縁 (関連) タンパク質の系統樹を示す。
AT3G55240、 AT3G28990及ぴ AT5G02580 はシロイヌナズナのタンパク質であり、 0S01G0837600 (旧名称: P0031D11. 2) はイネ ESTのタンパク質である。 これらの 遺伝子を細胞内局在性予測プログラム TargetP VI. 0にかけると、遺伝子はすべて、 N末端の膜貫通領域及び近接した切断部位を有する分泌タンパク質に特有の特性 を示した。 しかしながら、 タンパク質の機能は報告されていない。 At3g55240 の ノックァゥト系統は、 公開されているリソースセンターでは見つからなかったの で、該遺伝子に対応する RNAi構築物を作製し、野生型シロイヌナズナ植物体に形 質転換した。 形質転換植物のほとんどは発育の非常に初期の段階で枯れ、 残づた 形質転換植物のうちどれにも標的化遺伝子の転写レベルの減少は見られなかった。 従って、 At3g55240遺伝子群のノックァゥト表現型は致死性と考えられる。
( 7 ) 導入遺伝子及び突然変異の表現型の発現レベル
FOX系統は、個々のシロイヌナズナ完全長 cDNAの異所性発現によって作製され ることから、 導入遺伝子の発現レベルと突然変異体の表現型との相関を調べた。 幾つかの再形質転換植物の At3g55240の発現レベルを調べた。 発現レベルは、 野生型と比較して、 1. 0E+3倍〜 1. 0E+8倍以上異なっていた (図 5 (a)、 リアルタ ィム PCRにより評価した At3g55240遺伝子の相対的発現レベルを示す)。これらの 突然変異体の葉緑体量及びとう立ちする時期(とう立ち前の葉の数)を調べた(図 5 (b) , 葉の相対的葉緑体量、 図 5 (c)、 とう立ち前のロゼット葉の数を示す)。 At3g55240 の発現レベルと、 葉緑体量及びとう立ちの時期との間で逆の相間が見 られた (図 5 (a)〜(; c) )。 図 5 (a)〜(c)において、 X軸の系統番号は、 T2世代の At3g55240 の再形質転換植物の番号であり、 1 9、 2 1及ぴ 2 2の系統番号の植 物はハイグロマイシン感受性を示す野生型分離個体である。図 5 (d)は、それぞれ の系統番号の T2植物体の写真である。
これらの結果から、 突然変異体の形態は導入遺伝子の影響であり、 表現型は導 入遺伝子の発現レベルに応じて変化することが示された。 興味深いことに、 この 遺伝子の転写は野生型植物体ではロゼット型の葉で選択的に発現された(図 4 (c)、 上のバンドは RT- PCRで増幅 (サイクル数 40) した At3g55240に特異な PCR断片
(p01907) であり、 下のパンドは RT- PCRで増幅 (サイクル数 28) したローディ ング調整に使用した AHA1 (シロイヌナズナ形質膜 H+- ATPase)の PCR断片である。
レーン 1 :葉、 レーン 2 :茎、 レーン 3 :根、 レーン 4 :花弁、 レーン 5 :種子)。 本明細書で引用した全ての刊行物、 特許および特許出願をそのまま参考として 本明細書にとり入れるものとする。 産業上の利用可能性
本発明により、 植物早生化遺伝子を各種植物に形質転換して植物を早生化する ことが可能となり、 これによつて作物等の収穫時期を早めることができる、 或い は、 この遺伝子産物の全体或いは一部をぺプチド合成などによって人工合成し、 土壌または植物体に水分とともに添加することによって花成を促すことができる、 などの利点が付与される。 また、 前記遺伝子による形質転換植物は、 野生型に比 ベ植物体のサイズが増加されるので、 例えば産業資源として利用される場合に有 用である。
本発明の早生化形質転換植物は、 農業 ·園芸分野等で応用できる。