WO2006061926A1

WO2006061926A1 - 量子コンピュータを含むコンピュータシステムのためのプログラム開発支援装置、プログラム開発支援用プログラム、及びシミュレーション装置

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Publication number: WO2006061926A1
Application number: PCT/JP2005/015181
Authority: WO
Inventors: Shigeru Yamashita
Original assignee: National University Corporation NARA Institute of Science and Technology
Priority date: 2004-12-09
Filing date: 2005-08-22
Publication date: 2006-06-15
Also published as: EP1840739A4; US20070294070A1; JPWO2006061926A1; EP1840739A1; JP4867009B2

Abstract

　Ｃ++言語で記述されたソースコードの中から領域検出部１２はデータベース検索処理を実行する領域を検出し、処理時間推算部１３は該領域における従来型の論理演算による処理時間とグローバー検索アルゴリズムに基づく量子計算による処理時間とをそれぞれ推算する。判断部１４により後者が前者よりも短いと判断されると、置換処理部１５はグローバー検索アルゴリズムに相当するＣ++言語で記述されたプログラムに置換する。これにより、量子コンピュータで計算することが適当な部分を入れ替えたソースコードが完成する。このようにして、本発明によれば量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設したコンピュータシステムにおける両コンピュータの協調的動作をシミュレートするためのプログラム開発を容易にすることができる。

Description

明細書

量子コンピュータを含むコンピュータシステムのためのプログラム開発支援装置、プログラム開発支援用プログラム、及びシミュレーション装置

技術分野

[0001] 本発明は、量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設したコンピュータシステムを動作させるためのプログラムの開発を支援するプログラム開発支援装置と、そうしたコンピュータシステムにおける量子コンピュータと従来型コンピュータとの協調的動作を従来型コンピュータを用いてシミュレーションするためのプログラムの開発を支援するプログラム開発支援装置及びシミュレーション装置に関する。背景技術

[0002] 量子コンピュータは現在のコンピュータ (本明細書中では従来型コンピュータと呼ぶ )とは全く異なる原理で動作するものであり、例えば原子、イオン、電子、光子等の物質の量子状態の遷移を利用したコンピュータである。量子コンピュータは、例えば因数分解などの問題に関して従来型コンピュータよりも遙かに高速な計算が可能であることが論理的に実証されていることから、世界中の多くの組織や機関で研究 ·開発が鋭意進められている。現在、量子コンピュータについては主に 2つの方向力研究が行われている。その 1つは、量子コンピュータの演算を実行するための基本素子である量子論理ゲートつまりハードウェアの開発であり、他の 1つは、量子論理ゲートの実現を想定した上で、その量子論理ゲートを利用して動作する量子コンピュータの量子計算用のアルゴリズムつまりソフトウェアに関する研究である。

[0003] 量子アルゴリズムの研究として最もよく知られているのは、ショァ (Shor)による整数の因数分解と離散対数問題に対する多項式時間アルゴリズム (非特許文献 1参照)、及び、未整理なデータベースに対する検索を目的としたグロ一バー (Grover)のデータベース検索アルゴリズムである（非特許文献 2参照)。例えば N個の元の探索問題について、従来型コンピュータにおけるデータベース検索方法では最大 O (N)ステップの処理が必要であるのに対し、上記グロ一バーのデータベース検索アルゴリズムによれば最大 0 ( N)ステップで解くことができることが知られている。このように量子コンピュータでは、従来型コンピュータでは膨大な時間を要する問題に対し、格段に短い時間で以て解を得ることができる。

[0004] 上述したように量子コンピュータにおける量子計算の原理は従来型コンピュータの計算原理とは全く異なるため、量子アルゴリズムに基づくプログラムを記述してその動作を現在入手可能な従来型コンピュータで検証することはかなり困難な作業である。もちろん、量子アルゴリズムを記述するための高位のレベルのプログラミング言語もこれまで数多く提案されている。し力しながら、こうした特殊なプログラミング言語は取り扱いにくぐ量子計算に熟知している者でないと記述を行うことが困難である。

[0005] また、量子コンピュータは従来型コンピュータと比較してその高速性が注目されているが、全ての演算処理において従来型コンピュータに勝るわけではなぐ実際には例えば平易な四則演算など従来型コンピュータでも十分に高速で行えるような問題に対しては同等か或、は従来型コンピュータよりも劣る場合もあると考えられる。さらにまた、量子コンピュータが実用化されてもその価格は従来型コンピュータよりも遙かに高価になる可能性が高いため、コストパフォーマンスを考えた場合、様々な問題を全て量子コンピュータ上で実行するのはあまり有効ではなぐ従来型コンピュータと量子コンピュータとを併設して各コンピュータにそれぞれ適した (換言すれば、各コンビュータが得意とするところの）問題を振り分けて実行させることが有用であると考えられる。このような従来型コンピュータと量子コンピュータとを併設したコンピュータシステムでは両コンピュータを協調的に動作させる必要があるため、従来型コンピュータで使用されて、る既存のプログラミング言語で全てのプログラムを記述できることが望ましい。し力しながら、現状では、こうした必要性は認識されておらず、そうしたことを考慮したプログラムやアルゴリズムの開発環境は存在しな、。

[0006] また、現在のところ量子コンピュータ自体は実現されていないが、従来型コンビユータを用いて量子計算のシミュレーションを行うことは盛んに研究されており、そうしたシミュレータ用プログラムも入手可能である。しかしながら、上述したような従来型コンビユータと量子コンピュータとを併設したコンピュータシステムでの協調的動作をシミュレーシヨンで検証したい場合には、例えば、量子計算シミュレータ用に作成したプログラムを従来型コンピュータで実行させて演算結果を取得し、その結果を組み込んだ別のプログラムを作成してこれをまた従来型コンピュータで実行させるといった面倒で煩雑な作業が必要であり、非常に効率が悪い。こうしたことから、量子コンピュータが実現される前の段階にぉ、て、量子計算を含む様々なアルゴリズムの検証を効率良く行うためのツールが切望されて、る。

[0007] 非特許文献 1：ピ一'ダブル ·ショァ (P. W.Shor)、「アルゴリズムス ·フォ一'クォンタム ·コンピュテーシヨン：ディスクリート'ロガリズムス 'アンド'ファクタリング (Algorithms fo Qua ntum computation: Discrete Logarithms and Factoring)」、ブロン ~~ァイング ' 35ス' ン-ュアル ·シンポジウム ·オン ·ファンデーションズ 'ォブ 'コンピュータ ·サイエンスの oc. Annual j5th Symposium on Foundations of Computer Science入 1994、 p. 124 - 134

非特許文献 2：エル ·ケ一'グローバー (L.K.Grover)、「ァ ·ファースト ·クォンタム'メカ- 力ノレ'フォ ~~ ·ν ~~タへ' ~~ス'サ ~~チ (A fast quantum mechanical for database searcn 」、プロシーデイング ·アン二ユアノレ ·エーシーエム ·シンポジウム ·オン ·セオリ ~ ·ォブ 'コンヒュ ¹ ~~ァイング (Proc. Annual ACM Symposium on Theory ofし omputing)、 1996 、 p. 212- 219

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0008] 本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その第 1の目的とするところは、従来型コンピュータと量子コンピュータとを併設したコンピュータシステムにおける両コンピュータの協調的動作を従来型コンピュータを用いてシミュレーションしょうとする際に、量子計算や量子コンピュータに未熟な者でも既存の高位レベルのプロダラミング言語の知識さえあればシミュレーション用プログラムを容易に作成して効率的なシミュレーシヨン作業を行うことができるプログラム開発支援装置を提供するとともに、そうしたコンピュータシステムの処理動作のシミュレーションを容易に行うことができるシミュレーシヨン装置を提供することにある。

[0009] また、本発明の第 2の目的とするところは、従来型コンピュータと量子コンピュータとを併設したコンピュータシステムで所定の処理動作を実行させるためのプログラムを作成するに際し、量子計算や量子コンピュータに未熟な者でも既存の高位レベルのプログラミング言語の知識さえあれば量子計算を含むプログラムを容易に作成 ·記述することができるプログラム開発支援装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0010] 上述したように、量子コンピュータはその高速性が注目されて、るが全ての演算処理について従来型コンピュータよりも格段に高速であるわけではない。そこで、本願発明者は、従来型コンピュータと量子コンピュータとが併設されたコンピュータシステムの有効な利用方法として、量子計算に向く可能性が高いことが予めわ力つている特定の処理のみを量子コンピュータに担当させ、その特定の処理以外の一般的な処理については従来型コンピュータに担当させるという負荷の分配処理を行うことに想到した。

[0011] 具体的には、既に従来型コンピュータによる処理よりも高速での処理が可能となり得ることが確認されており、且つ応用範囲が広いグロ一バーの検索アルゴリズム (なお、ここではグロ一バーの検索アルゴリズムを基本として改良が加えられた検索アルゴリズムも含む）を適用することが可能であるデータベース検索の処理に着目し、従来型コンピュータ用の高位のプログラミング言語、典型的には C++言語で記述されたソースコードの中にそうしたデータベース検索処理が存在した場合に、その部分のみをグロ一バーの検索アルゴリズムをシミュレーションするためのプログラム又は該検索アルゴリズムに対応したプログラムに置換することにより、既存の高位のレベルのプログラミング言語の知識のみでのプログラムの作成を可能とした。

[0012] 即ち、上記第 1の目的を達成するために成された第 1発明は、量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設したコンピュータシステムにおける両コンピュータの協調的動作を、従来型コンピュータを用いてシミュレーションするためのプログラムの開発を支援するプログラム開発支援装置であって、

a)従来型コンピュータに対応した既存の高位のレベルのプログラミング言語で記述されたソースコードを入力するための入力手段と、

b)該入力手段により入力されたソースコードの中で、その記述内容に基づいて、従来型コンピュータによる演算処理よりも量子コンピュータによる量子計算に適した処理部分を選択的に抽出する抽出手段と、 c)該抽出手段により抽出された処理部分を、該部分に対応した量子コンピュータによる量子計算動作をシミュレートするための前記プログラミング言語で記述されたプログラムに置換する置換処理を行う置換手段と、

を備えことを特徴としている。

[0013] また上記第 1の目的を達成するために成された第 2発明は、量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設したコンピュータシステムにおける両コンピュータの協調的動作を従来型コンピュータを用いてシミュレーションするプログラムを、従来型コンビユータにより作成するためのプログラム開発支援用プログラムであって、

従来型コンピュータに対応した既存の高位のレベルのプログラミング言語で記述されたソースコードが入力されたとき、該ソースコードの中で、その記述内容に基づいて、従来型コンピュータによる演算処理よりも量子コンピュータによる量子計算に適した処理部分を選択的に抽出し、

その抽出された処理部分を、該部分に対応した量子コンピュータによる量子計算動作をシミュレートするための前記プログラミング言語で記述されたプログラムに置換する置換処理をコンピュータに行わせることを特徴としている。

[0014] 第 1及び第 2発明において、プログラミング言語としては既存の各種のものを使用することができるが、具体的な一態様として例えば C++言語とすることができる。

発明の効果

[0015] 第 1発明に係るプログラム開発支援装置及び第 2発明に係るプログラム開発支援用プログラムによれば、コンピュータシステムで実行した、処理内容を例えば C++言語などにより記述しさえすれば、抽出手段は、入力されたソースコードの中でその記述内容に基づいて従来型コンピュータによる演算処理よりも量子コンピュータによる量子計算に適した処理部分を選択的に抽出し、置換手段は、その処理部分に対応した量子計算をシミュレートするためのプログラムに自動的に置換する。したがって、プログラム作成に際して量子計算や量子アルゴリズムに関する知識が乏しい者であつても、両コンピュータの協調的動作をシミュレートするためのプログラムを容易に記述 '作成することができる。それによつて、従来型コンピュータと量子コンピュータとの協調的動作の検証が容易且つ効率的に行え、そのためのアルゴリズムの新規開発も促進される。

[0016] また第 1及び第 2発明においては、量子計算に適した処理部分を選択的に抽出する際に、入力されたソースコードの中で、その記述内容に基づいてデータベース検索に相当する処理部分を検出し、その検出された処理部分について従来型コンビユータで処理を実行した場合の所要時間と量子コンピュータで処理を実行した場合の所要時間とをそれぞれ推算し、その後者が前者よりも短いと判断した場合に、前記検出された処理部分が量子コンピュータによる量子計算に適した処理部分であると判断することが好ましい。

[0017] またその場合、前記置換手段は、前記抽出された処理部分を、量子計算用のグロ一バーの検索アルゴリズムを従来型コンピュータ上でシミュレートするプログラムに置換するちのとすることがでさる。

[0018] 一般に量子計算であるグロ一バーの検索アルゴリズムによるデータベース検索は従来型コンピュータによるデータベース検索アルゴリズムよりも高速であるが、例えば検索対象の母数が少ない場合には両者の速度がほぼ同等力従来型コンピュータによるデータベース検索アルゴリズムのほうが高速となる場合があり得る。これに対し上記構成によれば、入力されたソースコードの中でグロ一バーの検索アルゴリズムにより置換し得る処理部分が存在した場合でも、無条件に置換を実行するのではなぐ予め両者の処理時間をそれぞれ推算し、両者の処理時間を比較することで量子計算に置き換えることが有効か否かを決めている。したがって、これによれば量子コンビユータをより有効に利用する状態の下でのシミュレーションを行うことができる。

[0019] また、第 1発明に係るプログラム開発支援装置はそれ単独で使用される以外に、量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設したコンピュータシステムにおける両コンピュータの協調的動作を従来型コンピュータを用いてシミュレーションするためのシミュレーシヨン装置の一部として利用することができる。即ち、こうしたシミュレーション装置は、第 1発明に係るプログラム開発支援装置の前記置換手段により置換処理が成されたソースコードをコンパイルするコンパイラと、そのコンパイルされた機械語に従った処理動作を実行するコンピュータとをさらに備えるものである。

[0020] このシミュレーション装置によれば、例えば C++言語などの既存の高位のレベルのプログラミング言語により記述したソースコードを入力しさえすれば、量子コンピュータによる量子計算に向いた部分についてはその量子計算をシミュレートするプログラムに自動的に変換が成され、従来型コンピュータと量子コンピュータとの協調的動作がシミュレートされる。したがって、こうした動作の検証が非常に容易に且つ効率的に行え、量子アルゴリズムの新規開発や改良などに有用である。

[0021] 第 1及び第 2発明に係るプログラム開発支援装置及びプログラム開発支援用プログラムは、量子コンピュータによる量子計算、量子アルゴリズムを従来型コンピュータの上でシミュレートするものであるが、第 3発明に係るプログラム開発支援装置及び第 4 発明に係るプログラム開発支援用プログラムは、量子コンピュータが実現されたときにその量子コンピュータと従来型コンピュータを併設したコンピュータシステムを実際に動作させるためのプログラムを作成 '開発するためのツールである。したがって、上記第 1及び第 2発明では、抽出された処理部分を該部分に対応した量子計算をシミュレートするためのプログラムに置換していたのに対し、その部分に対応した量子ァルゴリズムを実行するプログラムに置換するように処理を変更すればよ、。

[0022] 即ち、上記第 2の目的を達成するために成された第 3発明は、量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設したコンピュータシステムにおいて所定の処理を実行させるためのプログラムの開発を支援するプログラム開発支援装置であって、

b)該入力手段により入力されたソースコードの中で、その記述内容に基づいて、従来型コンピュータによる演算処理よりも量子コンピュータによる量子計算に適した処理部分を抽出する抽出手段と、

c)該抽出手段により抽出された処理部分を、該部分に対応した量子アルゴリズムを実行するプログラムに置換する置換手段と、

を備えることを特徴として、る。

[0023] また上記第 2の目的を達成するために成された第 4発明は、量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設したコンピュータシステムにおいて所定の処理動作を実行させるためのプログラムを、従来型コンピュータにより作成するためのプログラム開発支援用プログラムであって、

その抽出された処理部分を、該部分に対応した量子アルゴリズムを実行するプログラムに置換する処理をコンピュータに行わせることを特徴としている。

[0024] この第 3発明に係るプログラム開発支援装置及び第 4発明に係るプログラム開発支援用プログラムによれば、従来型コンピュータと量子コンピュータとを併設したコンビユータシステムを効率良く動作させるためのプログラムを作成 ·開発するに際し、量子コンピュータや量子計算についての知識が乏しい者でもそうした作業に携わることができ、効率良くプログラムを開発することができる。

図面の簡単な説明

[0025] [図 1]量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設した将来のコンピュータシステムの一例を示す概念図。

[図 2]本発明の一実施例によるプログラム開発支援装置のブロック構成図。

[図 3]本実施例のプログラム開発支援装置の動作を説明するフローチャート。

[図 4]本実施例のプログラム開発支援装置に入力される C++言語により記述されたソースコードの簡単な一例を示す図。

[図 5]図 4に示すソースコードが入力されたときの出力のソースコードを示す図。

発明を実施するための最良の形態

[0026] 以下、本発明に係るプログラム開発支援装置の一実施例について図面を参照して説明する。

[0027] 図 1は量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設した将来のコンピュータシステムの一例を示す概念図である。図 1において、従来型コンピュータ 2は既存の、「0」、「1」の二値のいずれかを表現するビットを基本とする演算処理を実行するコンビュータであるのに対し、量子コンピュータ 3は「0」と「 1」とを或る確率で以て重ね合わせて保持することが可能な量子ビット (キュービットと!/、う）を基本とする演算処理を実行するコンピュータである。従来型コンピュータ 2には入力部 4や表示部 5が接続されており、入力部 4を介して作業者がコンピュータシステム 1に対する指示を与え、表示部 5を介してコンピュータシステム 1における演算処理の実行結果などを確認することができる。従来型コンピュータ 2と量子コンピュータ 3とは互いに接続されており、基本的には両者はそれぞれが独立して動作可能であるものの、互いに協調的に動作することによって一つの処理を実行し得る。

[0028] 本実施例のプログラム開発支援装置は、図 1に示すようなコンピュータシステム 1において両コンピュータ 2、 3の協調的動作を、現在入手可能な (つまり従来型の）コンピュータを用いてシミュレーションするためのプログラムの作成'開発を支援するためのものである。本実施例のプログラム開発支援装置は第 1発明の一形態であるが、実際には第 2発明に係るプログラムを既存の（つまり従来型)のコンピュータ上で実行することにより具現化することができる。図 2は本実施例のプログラム開発支援装置の機能ブロックを示す構成図、図 3は本実施例のプログラム開発支援装置の処理動作を説明する概略フローチャートである。

[0029] このプログラム開発支援装置は、既存の高位レベルのプログラム言語、具体的にはここでは C++言語、で所定の処理プログラムを記述したソースコードが入力される入力部 10と、入力されたソースコードに対して後述する処理を実行して必要に応じてそのソースコードの一部を変換するプログラム変換処理部 11と、変換処理後のプロダラムが出力される出力部 18と、プログラム変換処理部 11と関連付けられた量子技術データベース 16及び量子アルゴリズムライブラリ 17とを備える。

[0030] プログラム変換処理部 11は、後述する処理ステップに対応した機能ブロックとして、ソースコードの記述内容に従ってその中の特定の領域を検出する領域検出部 12、その検出された特定領域について量子技術データベース 16に保存されている情報を利用して量子コンピュータ 3による量子計算を行った場合の処理時間と通常の従来型コンピュータ 2による演算処理を行った場合の処理時間とを推算する処理時間推算部 13、両コンピュータ 2、 3に対する処理時間を比較してその特定領域のソースコード (プログラム）の置換が必要か否かを判断する判断部 14、量子アルゴリズムライブラリ 17に格納されているデータを利用して置換が必要な領域のプログラムを入れ替える置換処理部 15を含む。

[0031] 図 4はこの装置による処理対象である、 C++言語により記述されたソースコードの簡単な一例である。このようなソースコード 20が入力部 10より入力されると、プログラム変換処理部 11にあって領域検出部 12はそのソースコード 20の記述に沿ってデータベース検索を実行するプログラム領域を探し出す。 C++言語では図 4中に符号 21で示すプログラム領域、つまり if文で記述される部分がこれに相当するから、未処理の if 文が存在するか否かを判定する（ステップ Sl)。入力されたソースコード中の全ての if 文が処理済み (但し実際に変換がなされている力否かは問わない）である場合には、そのまま処理を終了する。

[0032] 未処理の if文が存在した場合には、領域検出部 12はその if文を抽出して処理時間推算部 13に渡す。処理時間推算部 13及び判断部 14は、該当する if文を置換すベきであるか否か、つまり量子計算を適用するのに適当である力否かを判定する (ステップ S2)。具体的には、処理時間推算部 13は従来型コンピュータでその if文の処理、つまりデータベース検索処理を実行した場合の所要時間を推算する。図 4の例ではプログラム領域 21においては最大 10000回の if文の判定を繰り返し実行することになり、また if文の 1回当たりの所要時間は CPUの演算速度など力予め概算値を決めておくことができるから、両者の積で以て処理時間を容易に推算することができる。

[0033] 他方、処理時間推算部 13は該当 if文に相当するグロ一バーの検索アルゴリズムの処理を行った場合の所要時間も推算する。具体的には、図 4に示したプログラム領域 21は量子コンピュータでは図 5 (a)に示すソースコード 30ではプログラム領域 31に相当する。即ち、 [Quantum Search]と記述されているサブルーチンプログラムに変換され得る。そのサブルーチンプログラム [Quantum Search]の処理動作の詳細は、図 5 ( b)に示すライブラリ 32の中に C++言語で記述されている。グロ一バーの検索アルゴリズムの場合、最大検索繰り返し回数は従来の場合を Nとすると Nとなることが知られているから、この場合には最大 100回の繰り返し演算で済む。但し、この場合、 1回の演算処理の所要時間は従来の場合と同じとは限らない。何故なら、従来の論理演算では例えば四則が組み合わさった演算が 1ステップで実行できることが保証されているが、量子状態の操作の場合にはそうではないからである。そこで、 1つの方法として、これまでの研究で知られている量子回路設計手法を導入し、実際に if文で示される演算処理に対応する量子回路を作成した上で何ステップ掛カる力を見積もることができる。

[0034] この実施例の場合、 1回のデータベース検索は 1ステップの演算で十分であるから、プログラム領域 21に対する従来型コンピュータによる処理時間の推算値よりも量子計算による処理時間の推算値が小さくなる。判断部 14は両者の処理時間の推算値を比較、量子計算による処理時間の推算値が小さい場合には該当 if文を置換すべきであると判断し (ステップ S 2で Yes)、対応するデータベース検索のプログラム、ここでは上記 [Quantum Search]と!、う名称の C++言語で記述されたサブルーチンプログラムに置換する（ステップ S3)。その結果、ソースコード中ではプログラム領域 21に代えてプログラム領域 31のコードが挿入される。

[0035] さらに処理はステップ S3から S1へと戻り、未処理の if文が存在するか否かを判定する。図 4の例では、プログラム領域 22にも if文が存在するから、上記と同様にして処理時間の推算値の判定を実行する。この場合、データベース検索の対象の母数が 100 と少ないため、量子計算の処理時間の推算値が従来型コンピュータによる処理時間の推算値よりも長いものとする。この場合には、ステップ S 2で置換すべきでないと判定され、上述したような置換処理は実行されずにステップ S1に戻ることになる。

[0036] そして、入力されたソースコード中で全ての if文に対する処理が終了したと判定されると、ステップ S1で Noとなりプログラム変換処理を終了する。これにより、図 4に示すような入力に対しては図 5に示すように出力が出力部 18より得られることになる。即ち、出力として得られるソースコードは、量子計算に適した部分、具体的には量子コンピュータを利用すれば従来型コンピュータよりも短時間で処理が済む部分についてのみ、量子コンピュータで行う動作を従来型コンピュータでシミュレートするようなプログラムに入れ替えられる。そこで、このプログラムを従来の一般のコンピュータに導入して実行させることにより、図 1に示したような従来型コンピュータ 2と量子コンピュータ 3とを併設したコンピュータシステム 1における両コンピュータ 2、 3の協調的動作のシミュレーシヨン検証を既存のコンピュータ (従来型コンピュータ)で実行することができる。

[0037] 図 2に示す構成のプログラム開発支援装置において上記のようなプログラムの変換が可能であるから、この装置に C++言語のコンパイラ及びコンピュータを組み合わせることにより、上記コンピュータシステム 1における両コンピュータ 2、 3の協調的動作を一般の既存のコンピュータ上でシミュレーション可能なシミュレーション装置を得ることができる。

[0038] なお、上記実施例では入力されたソースコード中にデータベース検索領域があつて且つその検索処理の実行所要時間が量子計算を用いた場合に短くなることが想定される場合には自動的にその領域を量子計算によるデータベース検索に置き換えるようにして、たが、予め取り決めた指示文等をソースコード中に挿入することによつて、ソースコード中の一部の領域を強制的に量子計算を用いて実行するようにプログラムの置換を実行させたり、逆に本来は量子計算を用いて実行するほうが適切なプログラムを強制的に従来型コンピュータでの演算処理で実行させたりするようにしてもよい。

[0039] 上記実施例はシミュレーション用のプログラムの作成や開発を支援する装置であつて、量子コンピュータのハードウェアが完成する前であっても、そうした量子コンビュータのハードウェアの実現を想定した上での量子アルゴリズムの開発に利用することができる。また、量子コンピュータのハードウェアが実現された場合には、簡単な変更によって、量子コンピュータと従来型コンピュータを併設したコンピュータシステムを動作させるプログラムの作成 ·開発用ツールとして使用することができる。

[0040] 即ち、上記実施例では、量子アルゴリズムライブラリ 17にグロ一バーの検索アルゴリズムを従来型コンピュータの論理回路で仮想的に実行するつまりシミュレートするための C++言語で記述されたサブルーチンプログラムが格納されて、たが、これに代えて、グロ一バーの検索アルゴリズムに対応して量子コンピュータのキュービットを制御するためのプログラムを格納しておくことにより、量子コンピュータの量子計算に向いたデータベース検索処理のみを量子コンピュータに振り分けるようなプログラムを容易に作成することができる。

[0041] また、上記実施例では全ての処理機能をコンピュータで実現させるようにしているが、一部の機能又は全部を専用に設計した論理回路で構成するようにしてもょ、。また、上記実施例は一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変形や修正を行つても、本願特許請求の範囲に包含されることも明らかである。

Claims

請求の範囲

[1] 量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設したコンピュータシステムにおける両コンピュータの協調的動作を従来型コンピュータを用いてシミュレーションするためのプログラムの開発を支援するプログラム開発支援装置であって、

b)該入力手段により入力されたソースコードの中で、その記述内容に基づいて、従来型コンピュータによる演算処理よりも量子コンピュータによる量子計算に適した処理部分を選択的に抽出する抽出手段と、

c)該抽出手段により抽出された処理部分を、該部分に対応した量子コンピュータによる量子計算動作をシミュレートするための前記プログラミング言語で記述されたプログラムに置換する置換処理を行う置換手段と、

を備えることを特徴とするプログラム開発支援装置。

[2] 前記プログラミング言語は C++言語であることを特徴とする請求項 1に記載のプログラム開発支援装置。

[3] 前記抽出手段は、量子計算に適した処理部分を選択的に抽出する際に、入力されたソースコードの中で、その記述内容に基づ!/、てデータベース検索に相当する処理部分を検出し、その検出された処理部分について従来型コンピュータで処理を実行した場合の所要時間と量子コンピュータで処理を実行した場合の所要時間とをそれぞれ推算し、その後者が前者よりも短いと判断した場合に、前記検出された処理部分が量子コンピュータによる量子計算に適した処理部分であると判断することを特徴とする請求項 1又は 2に記載のプログラム開発支援装置。

[4] 前記置換手段は、前記抽出手段により抽出された処理部分を、量子計算用のグロ一バーの検索アルゴリズムを従来型コンピュータ上でシミュレートするプログラムに置換することを特徴とする請求項 3に記載のプログラム開発支援装置。

[5] 請求項 1〜4のいずれかに記載のプログラム開発支援装置を含み、前記置換手段により置換処理がなされたソースコードをコンパイルするコンパイラと、そのコンパイルされた機械語に従った処理動作を実行するコンピュータとをさらに備えることを特徴とする、量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設したコンピュータシステムにおける両コンピュータの協調的動作を従来型コンピュータを用いてシミュレーションするためのシミュレーション装置。

[6] 量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設したコンピュータシステムにおける両コンピュータの協調的動作を従来型コンピュータを用いてシミュレーションするプログラムを、従来型コンピュータにより作成するためのプログラム開発支援用プログラムであって、

従来型コンピュータに対応した既存の高位のレベルのプログラミング言語で記述されたソースコードが入力されたとき、該ソースコードの中で、その記述内容に基づいて、従来型コンピュータによる演算処理よりも量子コンピュータによる量子計算に適した処理部分を選択的に抽出し、その抽出された処理部分を、該部分に対応した量子コンピュータによる量子計算動作をシミュレートするための前記プログラミング言語で記述されたプログラムに置換する置換処理を、コンピュータに行わせることを特徴とするプログラム開発支援用プログラム。

[7] 前記プログラミング言語は C++言語であることを特徴とする請求項 6に記載のプログラム開発支援用プログラム。

[8] 量子計算に適した処理部分を選択的に抽出する際に、入力されたソースコードの中で、その記述内容に基づいてデータベース検索に相当する処理部分を検出し、その検出された処理部分について従来型コンピュータで処理を実行した場合の所要時間と量子コンピュータで処理を実行した場合の所要時間とをそれぞれ推算し、その後者が前者よりも短いと判断した場合に、前記検出された処理部分が量子コンピュータによる量子計算に適した処理部分であると判断することを特徴とする、請求項 6又は 7 に記載のプログラム開発支援用プログラム。

[9] 前記置換処理は、前記抽出された処理部分を、量子計算用のグロ一バーの検索ァルゴリズムを従来型コンピュータ上でシミュレートするプログラムに置換するものであることを特徴とする請求項 8に記載のプログラム開発支援用プログラム。

[10] 量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設したコンピュータシステムにおいて所定の処理動作を実行させるためのプログラムの開発を支援するプログラム開発支援装置であって、

c)該抽出手段により抽出された処理部分を、該部分に対応した量子アルゴリズムを実行するプログラムに置換する置換処理を行う置換手段と、

を備えることを特徴とするプログラム開発支援装置。

[11] 前記プログラミング言語は C++言語であることを特徴とする請求項 10に記載のプログラム開発支援装置。

[12] 前記抽出手段は、量子計算に適した処理部分を選択的に抽出する際に、入力されたソースコードの中で、その記述内容に基づ!/、てデータベース検索に相当する処理部分を検出し、その検出された処理部分について従来型コンピュータで処理を実行した場合の所要時間と量子コンピュータで処理を実行した場合の所要時間とをそれぞれ推算し、その後者が前者よりも短いと判断した場合に、前記検出された処理部分が量子コンピュータによる量子計算に適した処理部分であると判断することを特徴とする請求項 10又は 11に記載のプログラム開発支援装置。

[13] 前記置換手段は、前記抽出手段により抽出された処理部分を、量子計算用のグロ一バーの検索アルゴリズムを記述したプログラムに置換することを特徴とする請求項

12に記載のプログラム開発支援装置。

[14] 量子コンピュータと従来型コンピュータとを併設したコンピュータシステムにおいて所定の処理動作を実行させるためのプログラムを、従来型コンピュータにより作成するためのプログラム開発支援用プログラムであって、

従来型コンピュータに対応した既存の高位のレベルのプログラミング言語で記述されたソースコードが入力されたとき、該ソースコードの中で、その記述内容に基づいて、従来型コンピュータによる演算処理よりも量子コンピュータによる量子計算に適した処理部分を選択的に抽出し、その抽出された処理部分を、該部分に対応した量子アルゴリズムを実行するプログラムに置換する置換処理を、コンピュータに行わせることを特徴とするプログラム開発支援用プログラム。

[15] 前記プログラミング言語は C++言語であることを特徴とする請求項 14に記載のプログラム開発支援用プログラム。

[16] 量子計算に適した処理部分を選択的に抽出する際に、入力されたソースコードの中で、その記述内容に基づいてデータベース検索に相当する処理部分を検出し、その検出された処理部分について従来型コンピュータで処理を実行した場合の所要時間と量子コンピュータで処理を実行した場合の所要時間とをそれぞれ推算し、その後者が前者よりも短いと判断した場合に、前記検出された処理部分が量子コンピュータによる量子計算に適した処理部分であると判断することを特徴とする請求項 14又は 1 5に記載のプログラム開発支援用プログラム。

[17] 前記置換処理は、前記抽出された処理部分を、量子計算用のグロ一バーの検索ァルゴリズムを記述したプログラムに置換するものであることを特徴とする請求項 16に記載のプログラム開発支援用プログラム。