JPH119960A - ダイオキシン類の放出防止材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 焼却炉排ガス中のダイオキシン濃度を低減す
る。集塵設備におけるダイオキシンの生成を防止する。 【解決手段】 アミン化合物を担持した活性炭を含むダ
イオキシン類の放出防止材。 【効果】 排ガス中のダイオキシンは活性炭の吸着作用
により活性炭に吸着され、アミン化合物と反応して分解
される。ダイオキシン前躯体も、活性炭に吸着される
が、アミン化合物によりダイオキシン生成反応が阻害さ
れ、新たなダイオキシンの生成が防止される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、焼却炉の排ガスな
どに伴って大気中に放出されるダイオキシン類の量を低
減するためのダイオキシン類の放出防止材に関する。

【０００２】

【従来の技術】ごみ焼却炉等の焼却炉においては、燃焼
中に、フェノール、ベンゼン、アセチレン等の有機化合
物、クロロフェノール、クロロベンゼン等の塩素化芳香
族化合物や塩素化アルキル化合物等のダイオキシン前駆
体が発生する。これらのダイオキシン前駆体は、飛灰が
共存するとその触媒作用で例えば次式に示すような反応
によりダイオキシンとなり、排ガス中に存在するように
なる（本発明ではダイオキシンとダイオキシン前駆体と
をあわせて「ダイオキシン類」と称する場合がある）。

【０００３】

【化１】

【０００４】なお、このダイオキシン生成反応は、４０
０℃以上の高温下では起こり難く、２００〜４００℃付
近に温度が低下したところで起こる。

【０００５】即ち、Karasek (Science 237:754,1987)、
Stieglitz (Chemosphere 18: 1219,1989)、 Hutzinger
(Chemosphere 14:581、 1985)らの研究によれば、焼却炉
におけるダイオキシンの生成は、主に排ガス中に含まれ
るダイオキシン前駆体が飛灰の触媒作用によってダイオ
キシンに変換されることによるものであり、この反応の
最適温度は３００℃付近である。そして、クロロフェノ
ールやクロロベンゼン等のダイオキシン前駆体が、飛灰
粒子のダイオキシン生成触媒活性部位に吸着され、か
つ、２００〜４００℃の温度条件下に晒されると、飛灰
の触媒作用でダイオキシン前駆体が反応してダイオキシ
ンが生成する。

【０００６】従来、排ガス中に含まれるこれらのダイオ
キシンを除去する方法として、ごみ焼却炉の排ガス処理
工程において、集塵器手前、スプレーアブソーバー手
前、スクラバー手前等で粉状活性炭を注入してダイオキ
シンを吸着する方法("Organohalogen Compounds" 27:17
7-182(1996))が提案されている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】通常の活性炭は、排ガ
ス中のダイオキシン類を概ね効果的に吸着除去するが、
ダイオキシン類を吸着した活性炭が飛灰と共に集塵装置
で捕集されるため、集塵灰中のダイオキシン濃度が増加
し、別途活性炭処分法を必要とする。

【０００８】さらに、活性炭は、飛灰と同様に、クロロ
ベンゼン、クロロフェノール等のダイオキシン前躯体か
らダイオキシンを生成させる触媒活性を有している。こ
のため、バグフィルタや電気集塵機等の集塵設備内の温
度が２００℃以上では、ダイオキシン前駆体を吸着した
活性炭から触媒反応によって多量のダイオキシンが生成
していた。さらに、共存する飛灰の触媒反応によっても
ダイオキシンが発生していた。

【０００９】本発明は上記従来の問題点を解決し、大気
中に放出されるガス中のダイオキシン濃度を低減するこ
とができるダイオキシン類の放出防止材を提供すること
を目的とする。また、本発明は、集塵設備内におけるダ
イオキシンの生成を防止することができるダイオキシン
類の放出防止材を提供することを目的とする。

【００１０】さらに、本発明は集塵設備から排出された
活性炭を別途処理する必要がないダイオキシン類の放出
防止材を提供することを目的とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明のダイオキシン類
の放出防止材は、アミン化合物を担持した活性炭（以下
「アミン担持活性炭」と称する場合がある。）を含むこ
とを特徴とする。

【００１２】本発明のダイオキシン類の放出防止材を焼
却炉等の排ガスに注入すると、排ガス中のダイオキシン
は該放出防止材のアミン担持活性炭に吸着し、アミン化
合物と反応して分解する。また、ダイオキシンと共にダ
イオキシン前駆体も活性炭に吸着されるが、活性炭に担
持されているアミン化合物はダイオキシン生成反応を抑
制する作用を有するため、新たなダイオキシンの生成が
抑制される。

【００１３】なお、排ガスに添加されたアミン担持活性
炭は集塵設備で集塵されるが、集塵設備内のガス温度を
２００℃以上、好ましくは２２０℃以上とすると、アミ
ン担持活性炭に吸着されたダイオキシンとアミン化合物
との反応（分解反応）が促進される。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を詳細
に説明する。

【００１５】本発明において、活性炭としては、その取
り扱い性及び吸着効率等の面から粒径数ｍｍ〜２０μｍ
程度のものを用いるのが好ましい。

【００１６】アミン化合物としては、トリメチルアミン
等のアルキルアミン、トリエタノールアミン、モノエタ
ノールアミン等のアルカノールアミン等の１種又は２種
以上を用いることができ、特にアルカノールアミンがダ
イオキシン分解反応性が高いため好適である。

【００１７】これらのアミン化合物の好ましい担持量
は、活性炭に対して０．１〜１０重量％、特に好ましく
は１〜７重量％である。

【００１８】アミン化合物を活性炭に担持させるには、
アミン化合物を水又はメタノール、エタノール等の有機
溶媒に溶解させた溶液に活性炭を浸漬し、アミン化合物
溶液を含浸させた後加熱又は減圧下で溶媒を蒸発させれ
ば良い。この場合、アミン化合物溶液の濃度は、活性炭
への担持量によって適宜決定され、上述の如く活性炭に
対して０．１〜１０重量％程度アミン化合物を担持する
には、０．１〜１０重量％程度の濃度のアミン化合物溶
液を用いるのが好ましい。

【００１９】このアミン担持活性炭は排ガスの流れに粒
状又は粉状の形態で添加されるのが好ましい。焼却設備
の場合であれば、例えば焼却炉から集塵機へ向う排ガス
煙道において該アミン担持活性炭が添加されるのが好ま
しい。この煙道におけるアミン担持活性炭の添加箇所
は、集塵機の手前であれば良く、特に制限はないが、排
ガスとアミン担持活性炭との接触時間を長くとるために
は、なるべく上流側で添加するのが好ましい。ただし、
活性炭の燃焼を防止するために排ガス温度５００℃以下
のガスに対して本発明の放出防止材を添加するのが好ま
しい。

【００２０】焼却炉排ガスの場合、アミン担持活性炭の
注入量は、排ガス１Ｎｍ³ に対して１０〜５００ｍｇ程
度、より好ましくは５０〜１５０ｍｇである。

【００２１】なお、本発明のダイオキシン類放出防止材
の添加箇所は１箇所に限られず、複数箇所であっても良
い。

【００２２】排ガスは、放出防止材が添加された後、電
気集塵機やバグフィルタ等の集塵設備で集塵処理され
る。この時、集塵機の温度が２００℃以上であれば、従
来法では活性炭や飛灰の触媒作用によってダイオキシン
が大量に発生したが、本法では活性炭に吸着捕集された
ダイオキシン又はその前駆体の分解反応が起こると共
に、活性炭に担持されたアミン化合物の一部が揮発し、
周辺に存在する飛灰に作用して、飛灰によるダイオキシ
ン生成反応も抑制する。

【００２３】次に、図１を参照して通常の排ガス処理工
程における放出防止材を添加する例について説明する。

【００２４】図１に示す処理装置は、焼却炉本体１、電
気集塵機２及びスクラバー３で主に構成され、焼却炉本
体１で投入物４が燃焼し、排ガス５が煙道７を経て集塵
工程に送られる。焼却炉本体１からはボトムアッシュ６
が排出される。電気集塵機２からは捕集された飛灰８が
排出される。排ガスは更にスクラバー３を経て煙突９か
ら大気へ排出される。

【００２５】本発明の放出防止材は、例えば、図のＢ点
〜Ｅ点の間のいずれか１箇所又は複数箇所で添加され
る。

【００２６】本発明の放出防止材は、電気集塵機に限ら
ずバグフィルタなどの各種の集塵設備が設置されている
燃焼設備においても添加することができる。なお、この
集塵設備内の温度を２００℃以上とくに２２０℃以上と
すると、アミン担持活性炭に吸着されたダイオキシンを
活性炭に担持されているアミン化合物との反応で分解す
ることができる。

【００２７】本発明のダイオキシン類の放出防止材は、
各種都市ごみ焼却炉の他、産業廃棄物焼却炉、医療廃棄
物焼却炉、焼却灰溶融炉、ＲＤＦ炉からの各種排ガス等
に適用することができる。また、ストーカ炉、ロータリ
ーキルン、流動床炉等の炉の種類や連続炉、準連続炉、
バッチ炉など炉の型式にも係わりなく各種の炉からの排
ガスの処理に適用可能である。

【００２８】

【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明の
効果を示す。

【００２９】実施例１ ストーカ炉、廃熱ボイラ及びバグフィルタからなる実験
用焼却炉において都市ごみを焼却させ、その排ガスにア
ミン担持活性炭を、排ガス１Ｎｍ³ に対し１００ｍｇの
割合で、バグフィルタ手前の排ガス温度約３００℃程度
の地点に注入し、下記測定方法でダイオキシン濃度の測
定を行った。廃棄物焼却量は１５０ｔ／２４ｈｒ、排ガ
ス流量は約４０，０００Ｎｍ³ ／ｈｒ、バグフィルタに
流入する排ガス中の煤塵濃度は２．０ｇ／Ｎｍ³ であ
り、バグフィルタ内の平均ガス温度は２２０℃であっ
た。バグフィルタでは４時間に１回の間隔でフィルタに
捕集した集塵灰を払い落とした。

【００３０】なお、用いたアミン担持活性炭は、ピート
を原料とする平均粒径２０μｍの活性炭と５重量％トリ
エタノールアミン水溶液を重量比１：１で混合し十分に
撹拌した後、加熱して水分を除去して調製した。このア
ミン担持活性炭のトリエタノールアミン担持量は５重量
％であった。

【００３１】ダイオキシン濃度の測定方法 （財）廃棄物研究財団の「ダイオキシン類分析マニュア
ル」に準拠して試料採取及び分析を行った。なお、ダイ
オキシン分析用の試料は、バグフィルタ出口排ガス、集
塵灰の２点とした。

【００３２】結果を表１に示す。なお、表１にはアミン
担持活性炭を添加しなかった場合のダイオキシン濃度を
ブランクとして示す。

【００３３】比較例１ トリエタノールアミンを担持していない活性炭を注入し
たこと以外は実施例１と同様に行ってダイオキシン濃度
を測定し、結果を表１に示した。

【００３４】実施例２ 実施例１において、アミン担持活性炭として、５重量％
モノエタノールアミン担持活性炭を用いたこと以外は同
様に行って、ダイオキシン濃度を測定し、結果を表１に
示した。

【００３５】実施例３ 実施例１において、アミン担持活性炭として、５重量％
トリメチルアミン担持活性炭を用いたこと以外は同様に
行って、ダイオキシン濃度を測定し、結果を表１に示し
た。

【００３６】

【表１】

【００３７】表１より、アミン担持活性炭によれば、排
ガス中のダイオキシン濃度及び集塵灰中のダイオキシン
濃度を共に低減できることがわかる。

【００３８】

【発明の効果】以上詳述した通り、本発明のダイオキシ
ン類の放出防止材によれば、排ガス中のダイオキシンを
効率的に吸着除去して排ガス中のダイオキシン濃度を低
減すると共に、煙道および集塵設備でのダイオキシンの
生成防止および分解反応により、集塵灰中のダイオキシ
ン濃度をも低減することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態を説明する排ガス処理工程
の模式的断面図である。

【符号の説明】

１ 焼却炉本体 ２ 電気集塵機 ３ スクラバー ４ 投入物 ５ 排ガス ６ ボトムアッシュ ７ 煙道 ８ 飛灰 ９ 煙突

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【手続補正書】

【提出日】平成９年７月７日

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１５

【補正方法】変更

【補正内容】

【００１５】本発明において、活性炭としては、その取
り扱い性及び吸着効率等の面から粒径数ｍｍ〜１０μｍ
程度のものを用いるのが好ましい。

フロントページの続き (72)発明者 藤原 昇 東京都新宿区西新宿３丁目４番７号 栗田 工業株式会社内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アミン化合物を担持した活性炭を含むこ
   とを特徴とするダイオキシン類の放出防止材。