JPH11138822A - 液体噴射記録ヘッドの製造方法および該製造方法により製造された液体噴射記録ヘッド - Google Patents

液体噴射記録ヘッドの製造方法および該製造方法により製造された液体噴射記録ヘッド

Info

Publication number
JPH11138822A
JPH11138822A JP10257512A JP25751298A JPH11138822A JP H11138822 A JPH11138822 A JP H11138822A JP 10257512 A JP10257512 A JP 10257512A JP 25751298 A JP25751298 A JP 25751298A JP H11138822 A JPH11138822 A JP H11138822A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
discharge port
recording head
jet recording
liquid
resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP10257512A
Other languages
English (en)
Inventor
Toshinori Hasegawa
利則 長谷川
Masaki Inaba
正樹 稲葉
Shin Ishimatsu
伸 石松
Yoshinori Ito
美紀 伊東
Akira Goto
顕 後藤
Masaaki Furukawa
雅朗 古川
Akio Saito
昭男 斎藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP10257512A priority Critical patent/JPH11138822A/ja
Publication of JPH11138822A publication Critical patent/JPH11138822A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Laser Beam Processing (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 樹脂ブランクにエキシマレーザ光の照射によ
り吐出口の加工を行なう際に、ブランク表面へ付着する
副生成物による樹脂表面の親水化を特別な工程を設ける
ことなく抑制し、製品製造のスループットを高め、印字
品位を向上させることができる液体噴射記録ヘッドの製
造方法を提供する。 【解決手段】 液体噴射記録ヘッドを構成する天板の吐
出口プレート21にレーザ光Lを照射して吐出口である
穴を一括アブレーション加工する際に、加工部に近接し
て配置したノズル25から、フッ素原子を構造中に持つ
ガス状分子26を加工部に吹き付けながら加工する。ガ
ス状分子26は、レーザ光の照射により、反応性の高い
フッ素原子を発生させ、この反応性の高いフッ素原子に
よって、レーザ光Lの照射により発生する副生成物24
を化学的に表面修飾処理し、副生成物表面のフッ素化を
図り、副生成物の付着による親水化を抑制する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、 レーザ光の照射に
よる溝加工や穴加工等によって樹脂製天板を作製する液
体噴射記録ヘッドの製造方法および該製造方法により製
造された液体噴射記録ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】インク等の記録液を微細な吐出口(オリ
フィス)から飛翔液滴として吐出させて記録紙等の被記
録媒体に記録、印刷を行なう液体噴射記録装置等に使用
される液体噴射記録ヘッドは、複数の吐出エネルギー発
生素子(例えば、電気熱変換素子)とそのリード電極を
有する素子基板(ヒータボード)を有し、この素子基板
上に液流路(ノズル)や共通液室を形成する樹脂製のノ
ズル層(液流路形成層)を積層したうえで、記録液の供
給管を備えたガラス製の天板を重ねたものが一般的であ
ったが、最近では、ガラス製の天板を省略し、液流路溝
および共通液室に加えて記録液の供給管等を一体的に設
けた樹脂製の天板を射出成形等によって一体成形し、次
いで吐出口を加工形成した後に、この天板を弾性部材に
よって素子基板に押圧して一体化した液体噴射記録ヘッ
ドが開発されている。このような液体噴射記録ヘッド
は、組立て部品点数が大幅に低減され、かつ組立て工程
もきわめて簡略化されるために、液体噴射記録装置の低
コスト化に大きく貢献するものとして期待されている。
【0003】このように形成された樹脂製天板を用いた
液体噴射記録ヘッドの主要部を図7に図示する。樹脂製
天板の一部を破断して示す液体噴射記録ヘッドEoは、
吐出エネルギー発生素子とじての複数の電気熱変換素子
101aを有する素子基板101と、各電気熱変換素子
101a上に位置する流路溝102fとこれに連通する
共通液室102cを備えた樹脂製天板102を有し、樹
脂製天板102には、各流路溝102fに連通する吐出
口(オリフィス)102gを有する吐出口プレート10
2bと、共通液室102cに開口する液供給口102e
を有する筒状突出部102dが一体的に設けられてい
る。
【0004】流路溝102fおよび共通液室102cに
加えて吐出口プレート102bと筒状突出部102dを
有する樹脂製天板102を射出成形等によって一体的に
形成し、次いで吐出口102gを加工形成した後、各流
路溝102fが素子基板101の電気熱変換素子101
a上にそれぞれ位置するように樹脂製天板102を位置
決めしたうえで、図示しない弾性部材によって天板10
2を素子基板101に押圧して、一体的に結合させてい
る。なお、素子基板101は、各電気熱変換素子101
aに電気信号を発生する駆動回路を搭載した配線基板1
03とともにベースプレート104上にビス止め等の公
知の方法で固着される。
【0005】また、流路溝102fを設ける前の本体部
分102aと吐出口102gを設ける前の吐出口プレー
ト102bからなるブランク(粗成形品)を射出成形等
によって一体成形したうえで、エキシマレーザ光を用い
て本体部分102aに各流路溝102fを溝加工し、そ
して同様にエキシマレーザ光を用いて吐出口プレート1
02bに各吐出口102gを穴あけ加工することによっ
て、樹脂製天板102を作製する方法も開発されてい
る。
【0006】このように、射出成形とレーザ加工とを組
み合わせることによって、天板の成形用型内に流路溝成
形用の部材を必要とせず成形用型の製作および加工を簡
略化することができ、さらにレーザ加工は短時間での加
工が可能でありかつ加工精度が高いことから、樹脂製天
板を安価に製造することができるため、液体噴射記録ヘ
ッドの低コスト化を一層促進できる。
【0007】そして、射出成形によって作製された樹脂
製の天板ブランクにレーザ光を照射して溝加工や穴加工
を施すためのレーザ加工装置としては、エキシマレーザ
加工が適しており、そのレーザ加工装置は、一般的に、
エキシマレーザ光を発するレーザ光源としてのエキシマ
レーザ発振器と、流路溝や吐出口の開口パターンを有す
るマスクと、エキシマレーザ光によってマスクの開口パ
ターンを天板ブランクに投影する光学系を備えている。
【0008】ところで、このような手法を用いて、吐出
口である穴の加工形成を行なう場合、レーザ加工時に発
生する副生成物が、天板の加工表面に付着する。これに
より、副生成物が付着した部位の表面エネルギーが高く
なり、記録液に対する濡れ性が高くなり、すなわち、そ
の表面が親水性となる。
【0009】液体噴射記録ヘッドにおける記録液の吐出
口においては、記録液の噴射効率を高めるために、液体
と樹脂との強いインタラクトを避けるように撥水性とな
っていることが望ましい。特に、吐出口プレートの吐出
口(オリフィス)の周囲が親水性となることは、記録液
の吐出がスムーズに行なわれなくなるために、記録紙等
の被記録媒体に記録、印刷する際、画像にずれが生じ、
あるいは記録液が吐出不能となるなど、製品機能上致命
的な問題となる。そのため、樹脂表面に撥水性をもつ樹
脂を塗布し、光または熱処理によって塗布した樹脂を硬
化させ、樹脂表面に撥水層を形成している。また、樹脂
材料によっては、熱処理によってその材料を溶解してい
る溶媒あるいは分散させている分散媒を蒸発させること
によって、撥水層を形成している。
【0010】そのため、レーザ加工時に発生する副生成
物による樹脂表面エネルギーの上昇すなわち親水化を防
止することが重要であり、副生成物による樹脂表面エネ
ルギーの上昇すなわち親水化を避けるために、特開平4
―279356号公報に記載されているように、エキシ
マレーザ光の照射により樹脂ブランクに溝または穴の加
工形成を施した後に、加熱処理、超音波洗浄、超音波水
流による洗浄、または高圧水流による洗浄等を行ない、
あるいは粘着テープを貼りそして剥がすことを繰り返す
手法などにより、吐出口(オリフィス)の周囲に付着し
た副生成物を除去する方法が知られている。
【0011】さらに、特開平4−279355号公報に
記載されているように、樹脂表面に予めレジスト等をコ
ーティングしておき、エキシマレーザ光の照射により樹
脂ブランクに溝または穴の形成を施した後に、現像液に
より副生成物ごとレジストを洗浄除去することにより、
副生成物を除去する方法も知られている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来の技術において、レーザ光の照射により樹脂ブラ
ンクに液体吐出口である穴の加工形成を施した後に副生
成物を除去する方法において、加熱処理を施す手法で
は、120℃1時間という高温でかつ長時間の処理が必
要であり、また、超音波や超音波水流による洗浄を行な
う場合には、処理の後に樹脂ブランクを乾燥させる工程
が必要となり、洗浄粘着テープを用いて樹脂ブランクの
表面に付着した副生成物を除去する場合も、副生成物除
去専用の工程を設ける必要が生じる。また、レジストを
予め塗布しておきレーザ加工の後に現像しレジストごと
副生成物を除去する手法においても、レジストの現像お
よび洗浄の工程が必要となる。
【0013】このように、従来の副生成物を除去ずる手
法では、処理を施すために特別の工程が必要となり、そ
のため製品の製造にコストがかかることや、さらに処理
に長時間必要となることなど作業能率が上がらないため
に、製品製造のスループットが著しく低下するという未
解決の課題があった。
【0014】そこで、本発明は、上記のような従来技術
の有する未解決な課題に鑑みてなされたものであって、
樹脂ブランクにエキシマレーザ光の照射により液体吐出
口となる穴の加工を行なう際に、副生成物がブランク表
面へ付着することにより樹脂の表面エネルギーが上昇す
るという従来の未解決の課題を特別な工程を設けること
なく解消し、製品製造のスループットを向上させること
ができる液体噴射記録ヘッドの製造方法および該製造方
法により製造された液体噴射記録ヘッドを提供すること
を目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法は、コヒー
レントなレーザ光を光源とし、 マスクを使用し、 該マス
クの像を光学系を用いて吐出口プレートに投影し、 前記
吐出口プレートに液体を吐出する吐出口となる穴を一括
アブレーション加工する液体噴射記録ヘッドの製造方法
において、 前記吐出口プレートの液体吐出側の面に撥水
層を形成する工程と、 前記吐出口プレートの撥水層形成
面側をフッ素原子を含む雰囲気にした状態で、 前記吐出
口プレートの前記撥水層形成面の裏面側から前記レーザ
光を照射して前記アブレーション加工をすることによ
り、 前記吐出口を形成するとともに前記レーザ光によっ
て励起されたフッ素含有物質を前記撥水層形成面に付着
する工程とを有することを特徴とする。
【0016】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法
は、前記フッ素原子を含む雰囲気は、ッ素原子を構造中
に持つガス状分子を前記吐出口プレートに吹き付けるこ
とで形成されるものを包含する。
【0017】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法
は、前記フッ素原子を含む雰囲気は、ッ素原子を構造中
に持つ樹脂を前記吐出口プレートの前記撥水層形成面に
近接して配置し、 前記吐出口となる穴を介して前記レー
ザ光が前記フッ素原子を構造中に持つ樹脂に照射される
ことで形成されるものを包含する。
【0018】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法
は、前記フッ素原子を含む雰囲気は、ッ素原子を構造中
に持つポリマーを溶媒とした溶液を含んだ吸収部材を前
記吐出口プレートの前記撥水層形成面に近接して配置
し、 前記吐出口となる穴を介して前記レーザ光が前記吸
収部材中のポリマーに照射されることで形成されるもの
を包含する。
【0019】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法に
おいては、加工対象に吹き付けるガスとしてテトラフル
オロメタンが好適である。
【0020】また、本発明の液体噴射記録ヘッドの製造
方法においては、加工対象にきわめて近い場所に設置す
る樹脂としてポリテトラフルオロエチレンが好適であ
る。
【0021】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法に
おいては、レーザ光として紫外光レーザ、特にエキシマ
レーザが適している。
【0022】
【作用】コヒーレントなレーザ光を光源とし、マスクを
使用し、該マスクの像を光学系を用いて吐出口プレート
に投影し、吐出口プレートに液体の吐出口となる穴を一
括アブレーション加工する液体噴射ヘッドの製造方法に
おいて、加工対象にレーザ光を照射しアブレ−ション加
工するときフッ素原子を含む雰囲気にした状態で行なう
ことで、発生する副生成物に対して化学的な表面修飾処
理を行ないながら加工して、副生成物の付着によるブラ
ンクの表面エネルギーが上昇することを抑制してブラン
ク表面が親水化することを防ぎ、すなわち、レーザ光に
よる加工と同時に副生成物の化学的な表面修飾を行なう
ことができ、副生成物除去のための新たな別工程を設け
る必要がなく、製品製造のスループットを向上させ、製
造コストの低減、さらに撥水性をより向上させ、印字品
位の向上を図ることができる。
【0023】フッ素原子を構造中に持つガス状分子、例
えばテトラフルオロメタン、をレーザ加工部へ吹き付け
ることにより、あるいはフッ素原子を構造中に持つ樹
脂、例えばポリテトラフルオロエチレン、またはフッ素
原子を構造中に持つポリマーが溶媒として入っている溶
液を含んだ吸収部材を加工部に極めて近い場所に設置す
ることにより、加工に用いるレーザ光の照射により、そ
れぞれ反応性の高いフッ素原子を発生させ、このフッ素
原子により、レーザ光の照射により発生する副生成物を
化学的に表面修飾し、副生成物表面のフッ素化を図るこ
とができ、このようにブランクに付着し表面エネルギー
を上昇させる副生成物を化学的に表面修飾し、フッ素化
することにより、吐出口プレート表面は安定した撥水性
を示し、副生成物の付着による局部的な親水性が発現す
る現象を抑えることができる。
【0024】また、紫外光レーザ、特にエキシマレーザ
光を用いて、吐出口を一括アブレーション加工すること
により、エキシマレーザのもつ優れた加工特性により、
飛翔液滴の吐出方向が安定しまた印字品位も良好な液体
噴射記録ヘッドを作製することができ、さらに、エキシ
マレーザ光の高いエネルギーによりフッ素原子を持った
物質から反応性の高いフッ素原子を発生させることが可
能となる。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
いで説明する。
【0026】(実施例1)図1は、本発明の液体噴射記
録ヘツドの製造方法を適用する液体噴射記録ヘッドの天
板の斜視図であって、(a)は射出成形等により樹脂成
形された天板ブランクの斜視図であり、(b)は複数の
流路溝および複数の吐出口が加工形成された天板の斜視
図である。
【0027】天板ブランク2oは、図1の(a)に示す
ように、共通液室2cとこの共通液室2cに連通した液
供給口2eを有する筒状突出部(図示しない)を備えた
本体部分2aと吐出口プレート2bとからなり、公知の
射出成形等により一体成形された樹脂製の粗成形品であ
り、この天板ブランク2oの流路溝加工面Aに対してレ
ーザ光の照射により複数の流路溝2fを加工形成する。
このように形成された流路溝2fは、図1の(b)に示
すように、共通液室2cに連通して形成される。その後
に、レーザ光の照射による穴加工を行ない、図1の
(b)に示すように、流路溝2fのそれぞれに対応する
位置に複数の吐出口2gを吐出口プレート2bに加工形
成する。このように加工形成された樹脂製天板2を、表
面に複数の電気熱変換素子を有する素子基板に位置合わ
せして接合して、液体噴射記録ヘッドを構成する。
【0028】そして、このような溝加工および穴加工に
用いるレーザ加工装置は、図2に図示するように、レー
ザ光Lを発生する光源となるレーザ発振器10と、その
発振器10から照射されるレーザ光Lの発振電圧および
発振周波数を変更させるコントローラ11と、溝加工用
および/または穴加工用の開口パターンを有するマスク
12と、レーザ光Lの光軸方向前後(X軸)にそしてY
軸およびZ軸方向にマスク12を移動させる移動駆動装
置13とこれを制御するコントローラ14と、マスク1
2の開口パターンを被加工物Wである天板2の加工部位
に投影するための投影光学系15と、レーザ光Lの光軸
の回りに投影光学系15を回転させる回転駆動装置16
とこれを制御するコントローラ17を備えている。被加
工物Wである天板2はコントローラ19によって制御さ
れる移動ステージ18によってレーザ光Lの光軸(X
軸)に垂直な平面(YZ平面)内で位置決めされる。マ
スク12の移動駆動装置13は、ステッピングモータあ
るいはサーボモータ等のモータを用いた駆動機構を有し
ており、コントローラ14により、マスク12を溝加工
用や穴加工用の開口パターンの配列方向(Y軸)に、ま
たはレーザ光Lの光軸を中心とする回転方向にミクロン
単位の精度で移動調整することができる。また、マスク
12の移動についてもある―定速度で連続移動、あるい
はある間隔をもって間欠的に移動させることが選択でき
る。
【0029】また、コンピュータ等を用いることで、レ
ーザ発振器10および各移動装置13、16、18を制
御するためのコントローラ11、14、17、19を―
つにまとめて制御することもできる。
【0030】マスク12を通過した液流路溝形成用また
は吐出口形成用のレーザ光Lは、被加工物Wである天板
を瞬時にアブレーション加工する。このとき、所望する
加工寸法および加工ピッチの溝や穴を得るために、そし
て吐出口を大きくするために、さらに加工時間を短縮す
るために、単位時間当たり高いエネルギー密度のレーザ
光を照射する必要がある。例えば、単位時間当たり1 J
/cm2 のレーザ光エネルギー密度で、レーザ発振周波
数を200Hzとして加工した場合、数秒間のレーザ光
の照射で大きな面積を有する吐出口の加工が完了する。
【0031】このようなレーザ加工装置を用いてレーザ
光を樹脂製の天板ブランクに対して照射することにより
吐出口加工を行なうとき、副生成物が発生する。
【0032】図3は、天板ブランクの吐出口プレートに
吐出口をレーザ加工する態様を拡大して図示する概略図
であり、Lはマスクの開口パターンを通過したレーザ光
であり、21は天板の吐出口プレートであり、液体吐出
面側にはレーザ加工前に撥水層22を形成する。撥水剤
としてサイトップ(商品名、旭ガラス(株)製)を用
い、吐出口プレート21にサイトップを塗布した後、1
20℃で1時間熱処理し、撥水層22を形成した。23
はレーザ加工によって形成される吐出口であり、24は
吐出口23のレーザ加工により生成し吐出口近傍に付着
した副生成物である。
【0033】本発明においては、吐出口プレート21の
撥水層22を形成していない面からマスクを通過したレ
ーザ光Lを入射させて、レーザ光の照射によるアブレー
ション加工し、吐出口23を形成する。そして、このレ
ーザ加工に伴なって発生する吐出口プレート21の撥水
層22を形成した面に付着する副生成物24に対して化
学的な表面修飾処理を施して、副生成物の付着による天
板ブランクの表面エネルギーの上昇を抑制し、ブランク
表面が親水化することを防ぐことを特徴とするものであ
る。これにより、レーザ光による加工と同時に副生成物
の化学的な表面修飾を行なうことができ、副生成物除去
のための新たな別工程を設ける必要がなく、製品製造の
スループットを向上させ、製造コストの低減を図ること
ができる。
【0034】次に、本実施例のフッ素原子雰囲気を形成
する構成を図4に基づいて説明する。なお、図4におい
て、図3と同様の部材や要素には同一の符号を付して説
明は省略する。この実施例においては、図2に示すレー
ザ加工装置によってブランクを加工する際に、加工部へ
フッ素原子を構造中に持つガス状分子26を吹き付け、
フッ素原子雰囲気を形成するものである。そこで、フッ
素原子を構造中に持つガス状分子26を加工部へ吹き付
けるためのノズル25を加工部近傍に配設し、レーザ光
Lの照射により吐出口を加工する際に、ノズル25から
加工部ヘフッ素原子を構造中に持つガス状分子26を吹
き付ける。すると、加工に用いるレーザ光Lの一部はガ
ス状分子26を照射し、そのレーザ光Lのエネルギーに
よりガス状分子26から反応性の高いフッ素原子を発生
させ、この反応性の高いフッ素原子によって、レーザ光
Lの照射により発生する副生成物24を化学的に表面修
飾し、副生成物表面のフッ素化を図ることができる。こ
のようにブランクに付着し表面エネルギーを上昇させる
副生成物を化学的に表面修飾し、副生成物表面のフッ素
化を図ることにより、吐出口プレート表面は、副生成物
の付着による局部的な親水性が発現する現象を抑えるこ
とができるとともに従来よりも撥水性をより向上させる
ことができる。
【0035】なお、フッ素原子を構造中に持つガス状分
子として、例えば、テトラフルオロメタン(分子式CF
4 )を用いることができる。すなわち、吐出口をレーザ
加工する際に、テトラフルオロメタンをノズル25から
加工部へ吹き付けることにより、テトラフルオロメタン
にレーザ光Lの一部が照射して、そのレーザ光Lのエネ
ルギーによりテトラフルオロメタンから反応性の高いフ
ッ素原子が発生する。この反応性の高いフッ素原子によ
って、副生成物24を化学的に表面修飾し、副生成物表
面のフッ素化を図ることができる。テトラフルオロメタ
ンは、常温常圧において気体で空気中で安定したガスで
あり、取扱いが容易であるために、液体噴射記録ヘッド
の製造工程への導入も行ないやすい。
【0036】なお、レーザ光Lの照射は、副生成物表面
のフッ素化を十分に行うために、吐出口となる穴が貫通
した後、引き続きレーザ光の照射を行うことが望まし
く、好適には、吐出口を形成するために必要な時間と同
程度、照射し続けるものとする。
【0037】また、各吐出口で均一にフッ素化処理が行
われるようガス状分子の吹き付けは、レーザ光の照射方
向と対向する側から行うことが好ましい。
【0038】なお、常温常圧で十分なフッ素化の効果が
得られるようにするためには、吐出口面にガス吹き付け
用チャンバーを密着させた状態でガスの吹き付けを行な
うことが好ましい。
【0039】このように加工形成された天板を用いて液
体噴射記録ヘッドを作製し、この液体噴射記録ヘッドを
プリンタに装着して吐出液滴の観察ならびに記録紙への
記録を行ったところ、吐出口加工時に発生する副生成物
に化学的な表面処理を施さない液体噴射記録ヘッドに比
して、飛翔液滴の吐出方向が安定し、また印字について
も良好な結果が得られた。
【0040】(実施例2)図5は、本発明の第2の実施
例に基づいて加工される天板の吐出口プレートの加工態
様を図示する概略図であり、この実施例においては、図
2に示すレーザ加工装置によってブランクを加工する際
に、フッ素原子を構造中に持つ樹脂をブランクの加工部
に極めて近い場所に設置して、加工に用いるレーザ光L
を樹脂に照射することで、副生成物に化学的な表面修飾
処理を施すものである。
【0041】図5において、先の実施例と同様の部材や
要素には同一の符号を付して説明は省略する。27はフ
ッ素原子を構造中に持つ樹脂であり、ブランクの加工部
に極めて近い場所に設置する。先の実施例と同様に吐出
口プレート21に撥水層22を形成してあり、撥水層2
2を形成していない面からレーザ光Lを入射させて吐出
口の加工をする。そこで、レーザ光Lの照射により吐出
口を加工する際に、加工に用いるレーザ光Lの一部は、
加工部に極めて近い場所に設置してあるフッ素原子を構
造中に持つ樹脂27を照射し、樹脂27から反応性の高
いフッ素原子を発生させる。この反応性の高いフッ素原
子によって、レーザ光Lの照射により発生する副生成物
24を化学的に表面修飾し、副生成物表面のフッ素化を
図ることができ、このようにブランク表面に付着して表
面エネルギーを上昇させる副生成物を化学的に表面修飾
し、すなわちフッ素化することにより、吐出口プレート
表面は安定した撥水性を示し、副生成物の付着による局
部的な親水性が発現する現象を抑えることができる。
【0042】さらに、フッ素原子を構造中に持つ樹脂2
7に対してレーザ光Lを照射することで、レーザ光Lの
エネルギーにより樹脂の一部を副生成物の表面に再重合
させることができ、これにより、副生成物をさらに化学
的に表面修飾し、副生成物表面のフッ素化を図ることが
できる。
【0043】なお、フッ素原子を構造中に持つ樹脂とし
て、例えば、ポリテトラフルオロエチレンを用いること
ができる。すなわち、吐出口をレーザ加工する際に、ボ
リテトラフルオロエチレンをブランクの加工部に極めて
近い場所に設置する。ポリテトラフルオロエチレンにレ
ーザ光Lの一部が照射することにより、反応性の高いフ
ッ素原子が発生する。この反応性の高いフッ素原子によ
って、副生成物を化学的に表面修飾し、副生成物表面の
フッ素化を図ることができ、また、ポリテトラフルオロ
エチレンを副生成物表面上に再重合させて副生成物表面
のフッ素化を図ることができる。そして、ポリテトラフ
ルオロエチレンは、常温常圧において固体でシート状に
加工することができ、取扱いおよび入手が容易であるた
めに、液体噴射記録ヘッドの製造工程への導入も行ない
やすい。
【0044】なお、本実施例においては、常温常圧で十
分なフッ素化の効果を得られるように、フッ素原子を構
造中に持つ樹脂は吐出口面から1 mm以下の距離の位置
に設けられることが望ましい。
【0045】このように加工形成された天板を用いて液
体噴射記録ヘッドを作製し、この液体噴射記録ヘッドを
プリンタに装着して吐出液滴の観察ならびに記録紙への
記録を行なったところ、吐出口加工時に発生する副生成
物に化学的な表面修飾処理を施さない液体噴射記録ヘッ
ドに比して、飛翔液滴の吐出方向が安定し、また印字に
ついても良好な結果が得られた。
【0046】(実施例3)図6は、本発明の第3の実施
例に基づいて加工される天板の吐出口プレートの加工態
様を図示する概略図であり、この実施例においては、図
2に示すレーザ加工装置によってブランクを加工する際
に、フッ素原子を構造中に持つポリマーが溶媒として入
っている溶液を含んだスポンジ等の吸収部材をブランク
の加工部に極めて近い場所に設置して、吸収部材に対し
て加工に用いるレーザ光を照射させることで、レーザ加
工の副生成物に化学的な表面修飾処理を施すものであ
る。
【0047】図6において、先の実施例と同様の部材や
要素には同一の符号を付して説明は省略する。28はフ
ッ素原子を構造中に持つポリマーが溶媒として入ってい
る溶液を含んだ吸収部材であり、ブランクの加工部に極
めて近い場所に設置する。先の実施例と同様に吐出口プ
レート21に撥水層22を形成してあり、撥水層22を
形成していない面からレーザ光Lを入射させて吐出口の
加工をする。そこで、レーザ光Lの照射により吐出口を
加工する際に、加工に用いるレーザ光Lの一部は、加工
部に極めて近い場所に設置してある吸収部材28を照射
し、吸収部材28に含まれているフッ素原子を構造中に
持つ溶液から反応性の高いフッ素原子を発生させる。こ
の反応性の高いフッ素原子によって、レーザ光Lの照射
により発生する副生成物を化学的に表面修飾し、副生成
物表面のフッ素化を図ることができ、このようにブラン
クに付着して表面エネルギーを上昇させる副生成物を化
学的に表面修飾し、フッ素化することにより、吐出口プ
レート表面は安定した撥水性を示し、副生成物の付着に
よる局部的な親水性が発現する現象を抑えることができ
る。
【0048】さらに、吸収部材28に含まれている溶液
中のフッ素原子を構造中に持つポリマーを副生成物の表
面に再重合させることができ、これにより、副生成物を
さらに化学的に表面修飾し、副生成物表面のフッ素化を
図ることができる。
【0049】本実施例においても、以上のように加工形
成された天板を用いて液体噴射記録ヘッドを作製し、こ
の液体噴射記録ヘッドをプリンタに装着して吐出液滴の
観察ならびに記録紙への記録を行なったとごろ、吐出口
加工時に発生する副生成物に化学的な表面修飾処理を施
さない液体噴射記録ヘッドに比して、飛翔液滴の吐出方
向が安定し、また印字についても良好な結果が得られ
た。
【0050】本実施例においては、ガス状分子の吹き付
けとフッ素原子を構造中に持つ樹脂、もしくはフッ素原
子を構造中に持つポリマーを溶媒とした溶媒を含んだ吸
収部材とを併用してもよく、この場合、ガスと樹脂もし
くはガスと液体の相乗効果により、ブランクに付着して
表面エネルギーを上昇させる副生成物を化学的に表面修
飾し、すなわちフッ素化することにより、吐出口プレー
ト表面は安定した撥水性を示し、副生成物の付着による
局部的な親水性が発現する現象を抑えることができる。
【0051】このような形態においても、以上のように
加工形成された天板を用いて液体噴射記録ヘッドを作製
し、この液体噴射記録ヘッドをプリンタに装着して吐出
液滴の観察ならびに記録紙への記録を行なったところ、
吐出口加工時に発生する副生成物に化学的な表面修飾処
理を施さない液体噴射記録ヘッドに比して、飛翔液滴の
吐出方向が安定し、また印字についても良好な結果が得
られた。
【0052】(実施例4)本実施例では、 吐出口プレー
トの撥水層形成面側をフッ素樹脂雰囲気にするためにフ
ッ素原子を構造中に持つガス状分子を吹き付ける構成は
実施例1と同様であるが、 さらにレーザ光に対して反応
しやすい中間反応物質を吐出口プレートの撥水層形成面
の加工部に極めて近い場所に配置させた状態でアブレー
ション加工を行なう。 この構成により、 フッ素含有物質
をより効率的に撥水層形成面に付着させるものである。
【0053】すなわち、 通常、フッ素原子を構造中に持
つガス状分子(フッ素含有物質Cxy :x、yはy=
4xを満たす整数)はレーザ光の吸収率が少ないことが
多く、 そのためレーザ光によって活性化されたフッ素含
有物質Cxy の励起寿命はそれほど長くは期待できな
い。 したがって、 十分な量のフッ素樹脂の付着を行うた
めにはレーザ光の照射時間を長く採る等の方法が必要で
ある。
【0054】これに対して、 本実施例の構成では、 中間
反応物質Mを配置した状態でガスを吹き付けながらレー
ザ光を照射する。 すると、 照射したレーザ光の一部は直
接フッ素含有物質Cxy を活性化し活性種CF,CF
2 ,CF3 を生成し、 これらが吐出口プレート表面と反
応し、 表面の撥水化を図る。
【0055】それと同時に、 レーザ光は中間反応物質M
にも照射され、 これにより活性化された物質M*がフッ
素含有物質Cxy と衝突し、 活性種CF,CF2 ,C
3を生成させる。 ここで、 中間反応物質Mはレーザ光
を吸収しやすく活性化寿命が長い物質であるため、 フッ
素含有物質Cxy と衝突する確率が非常に高くなって
いる。 このようにして形成された活性種CF,CF2
CF3 も先ほどと同様に吐出口プレート表面と反応す
る。 なお、 フッ素含有物質Cxy と衝突した活性化し
た物質M*はエネルギーを失い、 基底状態のMに戻る。
【0056】上記反応をまとめると、 となる。
【0057】本実施例の構成によれば、 前述したよう
に、 フッ素含有物質をより効率的に撥水層形成面に付着
させることができる。
【0058】なお、本発明においては、図2に示したレ
ーザ加工装置により吐出口を一括アブレーション加工す
るコヒーレントなレーザ光源として、エキシマレーザを
用いて加工した。そこで、エキシマレーザ光について説
明すると、このエキシマレーザは、紫外光を発振可能な
レーザであり、高強度で単色性が良く、指向性があり、
短パルス発振でき、レンズで集光することでエネルギー
密度を非常に大きくすることができるなどの利点を有し
ている。
【0059】エキシマレーザ発振器は、希ガスとハロゲ
ンの混合気体を放電励起することで、短パルス(15〜
35ns)の紫外光を発振できる装置であり、Kr−F
レーザ、Xe−Clレーザ、Ar−Fレーザがよく用い
られている。これらの発振エネルギーは数百mJ/パル
スで、パルス繰り返し周波数は30〜1000Hzであ
る。
【0060】このエキシマレーザ光のような高輝度の短
パルス紫外光をポリマー樹脂表面に照射すると、照射部
が瞬時にプラズマ発光と衝撃音を伴なって分解飛散する
Ablative Photodecomposition(APD )過程が生じ、こ
の過程によってポリマー樹脂の加工が可能となる。
【0061】このようなエキンマレーザによる加工精度
と他のレーザによる加工精度とを比較した場合、例え
ば、ポリイミドフィルムにエキシマレーザと他のYAG
レーザおよびCO2 レーザを照射すると、ポリイミドの
光を吸収する波長がUV領域であるため、KrFレーザ
によってきれいな穴を開けることができるけれども、U
V領域にないYAGレーザでは穴が開くものの穴のエッ
ジ面が荒れ、赤外線であるCO2 レーザでは穴の周囲に
クレータを生じてしまう。
【0062】そこで、本発明においては、エキシマレー
ザ光であるKrFレーザを用いて、吐出口を一括アブレ
ーション加工することにより、エキシマレーザのもつ優
れた加工特性により、飛翔液滴の吐出方向が安定しまた
印字品位も良好な液体噴射記録ヘッドを作製することが
できた。
【0063】また、本発明は、特に液体噴射記録方式の
中で熱エネルギーを利用して飛翔液滴を形成し、記録を
行なう、いわゆるインクジェット記録方式の記録ヘッ
ド、記録装置において、優れた効果をもたらすものであ
る。
【0064】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第4723129号明細書、同第4740
796号明細書に開示されており、本発明はこれらの基
本的な原理を用いて行なうものが好ましい。この記録方
式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のい
ずれにも適用可能である。
【0065】この記録方式を簡単に説明すると、記録液
(インク)が保持されているシートや液流路に対応して
配置されている吐出エネルギー発生素子である電気熱変
換体に駆動回路より吐出信号を供給する、つまり、記録
情報に対応して記録液(インク)に核沸騰現象を越え、
膜沸騰現象を生じるような急速な温度上昇を与えるため
の少なくとも―つの駆動信号を印加することによって、
熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜
沸騰を生じさせる。このように記録液(インク)から電
気熱変換体に付与する駆動信号に一対一に対応した気泡
を形成できるため、特にオンデマンド型の記録法には有
効である。この気泡の成長、収縮により吐出口を介して
記録液(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を
形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適
切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優
れた記録液(インク)の吐出が達成でき、より好まし
い。
【0066】このパルス形状の駆動信号としては、米国
特許第4463359号明細書、同第4345262号
明細書に記載されているようなものが適している。な
お、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許
第4313124号明細書に記載されている条件を採用
すると、さらに優れた記録を行なうことができる。
【0067】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細
書に開示されているような吐出口、液流路、電気熱変換
体を組み合わせた構成(直線状液流路又は直角液流路)
の他に、米国特許第4558333号明細書、米国特許
第4459600号明細書に開示されているように、熱
作用部が屈曲する領域に配置された構成を持つものにも
本発明は有効である。
【0068】加えて、複数の電気熱変換体に対して、共
通するスリットを電気熱変換体の吐出口とする構成を開
示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギー
の圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開
示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成
を有するものにおいても本発明は有効である。
【0069】さらに、本発明が有効に利用される記録ヘ
ッドとしては、記録装置が記録可能である被記録媒体の
最大幅に対応した長さのフルラインタイプの記録ヘッド
がある。このフルラインヘッドは、上述した明細書に開
示されているような記録ヘッドを複数組み合わせること
によってフルライン構成にしたものや、一体的に形成さ
れた一個のフルライン記録ヘッドであってもよい。
【0070】加えて、装置本体に装着されることで、装
置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給
が可能になる交換自在のチップタイプの記録へッド、あ
るいは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッ
ジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効で
ある。
【0071】また、記録ヘッドに対する回復手段や予備
的な補助手段を付加することは、記録装置を一層安定に
することができるので好ましいものである。これらを具
体的に挙げれば、記録ヘッドに対しての、キャッピング
手段、クリーニング手段、加圧または吸引手段、電気熱
変換体あるいはこれとは別の加熱素子、あるいはこれら
の組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を
行なう予備吐出モード手段を付加することも安定した記
録を行なうために有効である。
【0072】さらに、記録装置の記録モードとしては黒
色等の主流色のみを記録するモードだけではなく、記録
ヘッドを一体的に構成したものか、複数個の組み合わせ
で構成したものかのいずれでもよいが、異なる色の複色
カラーまたは、混色によるフルカラーの少なくとも一つ
を備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0073】以上の説明においては、インクを液体とし
て説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクで
あって、室温で軟化もしくは液体となるもの、あるい
は、インクジェットにおいて一般的に行なわれている温
度調整の温度範囲である30℃以上70℃以下の温度範
囲で軟化もしくは液体となるものでもよい。すなわち、
使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであれば
よい。加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をイン
クの固形状態から液体状態への態変化のエネルギーとし
て使用せしめることで防止するか、または、インクの蒸
発防止を目的として放置状態で固化するインクを用いる
かして、いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じ
た付与によってインクが液化してインク液状として吐出
するものや記録媒体に到達する時点ではすでに固化し始
めるもの等のような、熱エネルギーによって初めて液化
する性質のインクの使用も可能である。このような場合
インクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開
昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質
シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持
された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形
態としてもよい。上述した各インクに対して最も有効な
ものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0074】さらに加えて、インクジェット記録装置の
形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出
力端末として用いられるものの他、リーダ等と組み合わ
せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミ
リ装置の形態を採るものであってもよい。
【0075】
【発明の効果】本発明は、上述したように構成されてい
るので、レーザ光を用いて穴加工によって樹脂製天板等
の液体吐出口を形成する工程において、レーザ加工と同
時に発生する副生成物をリアルタイムで化学的に表面修
飾することが可能となり、副生成物の付着により天板加
工部の表面エネルギーが上昇し、液体噴射記録ヘッドの
印字特性が悪くなるという従来の課題を解決することが
でき、良好な印字特性を示す液体噴射記録ヘッドの製造
に貢献できる。
【0076】さらに、天板に付着する副生成物を除去す
るための特別な工程を設ける必要がないため、液体噴射
記録ヘッドの製造において、製品のスループットが著し
く低下し、加工コストが高いという従来の課題を解決す
ることができ、製品のスループットがよく、かつ低コス
トで液体噴射記録ヘッドを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図l】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法を適用
する液体噴射記録ヘッドの天板の斜視図であって、
(a)は射出成形等により一体成形された天板ブランク
の斜視図、(b)は流路溝および吐出口が加工形成され
た天板の斜視図である。
【図2】本発明の液体噴射記録ヘッドの製造方法に適用
するレーザ加工装置の構成を示す概略的な構成図であ
る。
【図3】本発明の第1の実施例を説明するために天板の
吐出口プレートの加工態様を図示する概略図である。
【図4】本発明の第1 の実施例に基づいて加工される天
板の吐出口プレートの加工態様を図示する概略図であ
る。
【図5】本発明の第2の実施例に基づいて加工される天
板の吐出口プレートの加工態様を図示する概略図であ
る。
【図6】本発明の第3の実施例に基づいて加工される天
板の吐出口プレートの加工態様を図示する概略図であ
る。
【図7】液体噴射記録ヘッドの基本的態様を樹脂製天板
の一部を破断して示す模式的な斜視図である。
【符号の説明】
101 素子基板 101a 電気熱変換素子 2、102 (樹脂製)天板 2a、102a 本体部分 2b、102b 吐出口プレート 2c、102c 共通液室 2f 、102f 流路溝 2g、102g 吐出口 10 レーザ発振器 12 マスク 15 投影光学系 18 移動ステージ 21 吐出口プレート 22 撥水層 23 吐出口 24 副生成物 25 ノズル 26 ガス状分子 27 樹脂 28 吸収部材 L レーザ光
フロントページの続き (72)発明者 伊東 美紀 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 後藤 顕 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 古川 雅朗 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 斎藤 昭男 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コヒーレントなレーザ光を光源とし、 マ
    スクを使用し、 該マスクの像を光学系を用いて吐出口プ
    レートに投影し、 前記吐出口プレートに液体を吐出する
    吐出口となる穴を一括アブレーション加工する液体噴射
    記録ヘッドの製造方法において、前記吐出口プレートの
    液体吐出側の面に撥水層を形成する工程と、前記吐出口
    プレートの撥水層形成面側をフッ素原子を含む雰囲気に
    した状態で、 前記吐出口プレートの前記撥水層形成面の
    裏面側から前記レーザ光を照射して前記アブレーション
    加工をすることにより、 前記吐出口を形成するとともに
    前記レーザ光によって励起されたフッ素含有物質を前記
    撥水層形成面に付着する工程と、を有することを特徴と
    する液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  2. 【請求項2】 前記フッ素原子を含む雰囲気は、 フッ素
    原子を構造中に持つガス状分子を前記吐出口プレートに
    吹き付けることで形成されることを特徴とする請求項1
    に記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記フッ素原子を含む雰囲気は、 フッ素
    原子を構造中に持つ樹脂を前記吐出口プレートの前記撥
    水層形成面に近接して配置し、 前記吐出口となる穴を介
    して前記レーザ光が前記フッ素原子を構造中に持つ樹脂
    に照射されることで形成されることを特徴とする請求項
    1に記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記フッ素原子を含む雰囲気は、 フッ素
    原子を構造中に持つポリマーを溶媒とした溶液を含んだ
    吸収部材を前記吐出口プレートの前記撥水層形成面に近
    接して配置し、 前記吐出口となる穴を介して前記レーザ
    光が前記吸収部材中のポリマーに照射されることで形成
    されることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射記録
    ヘッドの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記コヒーレントなレーザー光の光源が
    紫外光レーザであることを特徴とする請求項1に記載の
    液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記紫外光レーザはエキシマレーザであ
    ることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射記録ヘッ
    ドの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記ガス状分子はテトラフルオロメタン
    であることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射記録
    ヘッドの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記フッ素原子を構造中に持つ樹脂はポ
    リテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求
    項3に記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記撥水層形成面と前記フッ素原子を構
    造中に持つ樹脂との距離が1mm以下となっていること
    を特徴とする請求項3に記載の液体噴射記録ヘッドの製
    造方法。
  10. 【請求項10】 前記撥水層形成面と前記フッ素原子を
    構造中に持つポリマーを溶媒とした溶液を含んだ吸収部
    材との距離が1 mm以下となっていることを特徴とする
    請求項4に記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  11. 【請求項11】 前記ガス状分子の吹き付けはレーザ光
    の照射方向と対向する側から行なわれることを特徴とす
    る請求項2に記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  12. 【請求項12】 前記ガス状分子の吹き付けは前記撥水
    層形成面にガス吹き付け用のチヤンバーを密着させた状
    態で行なわれることを特徴とする請求項11に記載の液
    体噴射記録ヘッドの製造方法。
  13. 【請求項13】 前記レーザ光の照射は、 レーザ光に対
    して反応しやすい物質を前記吐出口プレートの前記撥水
    層形成面に近接して配置した状態で行なわれ、 前記レー
    ザ光に対して反応しやすい物質は、吐出口を介する前記
    レーザ光の照射により、活性化され、 該活性化された物
    質が前記ガス状分子に衝突することでフッ素含有物質を
    活性状態で前記撥水層形成面に付着させることを特徴と
    する請求項2に記載の液体噴射記録ヘッドの製造方法。
  14. 【請求項14】 請求項1ないし13のいずれか1項に
    記載の製造方法により製造された液体噴射記録ヘッド。
JP10257512A 1997-08-27 1998-08-27 液体噴射記録ヘッドの製造方法および該製造方法により製造された液体噴射記録ヘッド Pending JPH11138822A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP10257512A JPH11138822A (ja) 1997-08-27 1998-08-27 液体噴射記録ヘッドの製造方法および該製造方法により製造された液体噴射記録ヘッド

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP24606297 1997-08-27
JP9-246062 1997-08-27
JP10257512A JPH11138822A (ja) 1997-08-27 1998-08-27 液体噴射記録ヘッドの製造方法および該製造方法により製造された液体噴射記録ヘッド

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11138822A true JPH11138822A (ja) 1999-05-25

Family

ID=26537553

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP10257512A Pending JPH11138822A (ja) 1997-08-27 1998-08-27 液体噴射記録ヘッドの製造方法および該製造方法により製造された液体噴射記録ヘッド

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11138822A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006264147A (ja) * 2005-03-24 2006-10-05 Brother Ind Ltd インクジェットヘッドの製造方法及びインクジェットヘッド
US7262896B2 (en) 2004-09-21 2007-08-28 Samsung Electronics, Co., Ltd. Polygonal mirror unit, light scanning unit, and image forming apparatus employing the same
JP2016501723A (ja) * 2012-10-23 2016-01-21 イムラ アメリカ インコーポレイテッド 超疎水性表面を作成するパルスレーザ加工方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7262896B2 (en) 2004-09-21 2007-08-28 Samsung Electronics, Co., Ltd. Polygonal mirror unit, light scanning unit, and image forming apparatus employing the same
JP2006264147A (ja) * 2005-03-24 2006-10-05 Brother Ind Ltd インクジェットヘッドの製造方法及びインクジェットヘッド
JP2016501723A (ja) * 2012-10-23 2016-01-21 イムラ アメリカ インコーポレイテッド 超疎水性表面を作成するパルスレーザ加工方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100508193B1 (ko) 잉크젯프린터노즐판
EP1625939A2 (en) Forming features in printhead components
JPH01108056A (ja) インクジェットプリンタ用ノズル
JP2000168090A (ja) レ―ザ―により開始されるインクジェット印字方法及び装置
JP3032021B2 (ja) インクジェット記録装置
JPH07108683A (ja) ノズルプレート製造方法
JP2001071168A (ja) レーザ加工方法、該レーザ加工方法を用いたインクジェット記録ヘッドの製造方法、該製造方法で製造されたインクジェット記録ヘッド
JP3095795B2 (ja) インクジェット記録ヘッドおよび該ヘッドの製造方法
JP3127570B2 (ja) インクジェットヘッドの製造方法
JPH11138822A (ja) 液体噴射記録ヘッドの製造方法および該製造方法により製造された液体噴射記録ヘッド
JPH07304177A (ja) インク噴射装置のノズルプレート
EP0900660B1 (en) A method for manufacturing liquid jet recording heads and a head manufactured by such method of manufacture
JPH11188882A (ja) 液体噴射記録ヘッドおよびその製造方法
JP2001158099A (ja) インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置
JPH11334074A (ja) インクジェット記録装置及び記録装置
KR100374274B1 (ko) 잉크 제트 기록 헤드 제조 방법, 이러한 방법에 의해제조된 잉크 제트 기록 헤드 및 레이저 가공 방법
US6668454B2 (en) Method for manufacturing a liquid-discharging recording head
JP3086146B2 (ja) インクジェット記録ヘッドおよびその製造方法、レーザ加工装置ならびにインクジェット記録装置
JP3571953B2 (ja) インクジェット記録ヘッド、その製造方法およびインクジェット記録装置
JP3285041B2 (ja) インクジェットヘッドの製造方法
JP2001287368A (ja) インクジェットヘッド加工装置およびインクジェットヘッド加工方法
JP2764418B2 (ja) インクジェット記録ヘッドの製造方法および該方法によって製造されたインクジェット記録ヘッド
JPH106514A (ja) インクジェット記録ヘッドの製造方法、該方法による記録ヘッド、及び該ヘッドを具備するインクジェット記録装置
JP3231195B2 (ja) インクジェット記録ヘッドの製造方法
JPH09234874A (ja) インクジェット記録ヘッドの製造方法、該方法により製造されるインクジェット記録ヘッド及び該記録ヘッドを具備した記録装置