JPH10306157A - 新規なポリアリール−アルキルカーボネートおよびその製造方法 - Google Patents

新規なポリアリール−アルキルカーボネートおよびその製造方法

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JPH10306157A
JPH10306157A JP11779297A JP11779297A JPH10306157A JP H10306157 A JPH10306157 A JP H10306157A JP 11779297 A JP11779297 A JP 11779297A JP 11779297 A JP11779297 A JP 11779297A JP H10306157 A JPH10306157 A JP H10306157A
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Japan
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polyaryl
reaction
carbonate
group
general formula
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JP11779297A
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English (en)
Inventor
Tatatomi Nishikubo
忠臣 西久保
Atsushi Kameyama
敦 亀山
Hidemasa Okamoto
秀正 岡本
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Ube Corp
Original Assignee
Ube Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、機械的強度、耐熱性、耐老化性、
反応性などに優れ、家庭用品、建築材料、自動車部品、
工具類、機械部品、電気器具、電気絶縁材料などの各種
成形品、ラミネート剤、コーティング剤、フィルム、シ
ート品、エポキシ樹脂の硬化剤などの用途分野に、ある
いは、機能性高分子の合成原料として有用な新規な定序
性ポリアリール−アルキルカーボネート、および、該ポ
リアリール−アルキルカーボネートをポリアリールカー
ボネートへのオキシラン類の挿入反応によって効率よく
製造する方法を提供する。 【解決手段】 本発明は、触媒として第四オニウム塩あ
るいはクラウンエーテル錯体の存在下に、反応溶媒中、
50〜250℃の温度で、ポリアリールカーボネートへ
オキシラン類を定量的かつ位置選択的に挿入反応させて
得られる定序性のポリアリール−アルキルカーボネート
およびその製造方法に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリアリールカー
ボネートへのオキシラン類の挿入反応により得られる新
規なポリアリール−アルキルカーボネートおよびその製
造方法に関する。さらに詳しくは、前記一般式(I)で
表わされる新規なポリアリール−アルキルカーボネー
ト、および、反応溶媒中50〜250℃の温度で、第四
オニウム塩あるいはクラウンエーテル錯体を触媒として
前記一般式(III)で示されるポリアリールカーボネート
へオキシラン類を、ポリアリールカーボネート1モルに
対し2〜10モルの割合で挿入反応せしめることからな
る前記の新規なポリアリール−アルキルカーボネートの
製造方法に関する。
【0002】前記一般式(I)で表わされる本発明の新
規なポリアリール−アルキルカーボネートは、靱性や耐
衝撃性などの機械的強度に優れるとともに、耐熱性、耐
老化性などに優れ、家庭用品、建築材料、自動車部品、
工具類、機械部品、電気器具、電気絶縁材料などの各種
成形品、ラミネート剤、コーティング剤、フィルム、シ
ート品などの用途分野に使用できる。また、エポキシ樹
脂の硬化剤としても有用である。さらに、このポリマー
は、高い反応性を有する定序性高分子であり、更なる化
学修飾が可能であることから、新しい機能性高分子の優
れた合成原料としての利用が大いに期待できる。
【0003】
【従来の技術】定序性高分子の合成は、高度に配列規制
された高分子の合成といった観点から、あるいは高分子
の材料特性の面から立体規則性、分子量の規制と並んで
高分子合成における重要な研究課題である。配列順序の
規制された定序性高分子の合成に関しては、これまでに
幾つかの報告がなされている。例えば、オキシラン化合
物やチイラン化合物と種々の活性エステル類との付加反
応が、触媒に第四オニウム塩やクラウンエーテル錯体を
用いることによって、温和な条件下で定量的かつ位置選
択的に進行し、対応するβ−付加体が得られることは公
知である(T.Iizawa,A.Goto and T.Nishikubo,Bull.Che
m.Japan,62,597(1989)など参照)。そこで、この反応
を、主鎖に活性な化学結合を有する高分子への低分子化
合物の挿入反応へと応用した例として、ポリアリールエ
ステルへのオキシラン化合物の挿入反応についての研究
例があり、これによれば、触媒に第四オニウム塩を用い
ることにより、高分子主鎖のアリールエステル結合に対
してオキシラン化合物が挿入し、新規の骨格を有するポ
リアルキルエステルが与えられることが報告されている
(T.Nishikubo,T.Shimokawa,T.Hirano,A.Shiina,J.Poly
m.Sci.Chem.,27,2519(1989)など参照)。
【0004】このような高分子への低分子化合物の挿入
反応の報告例としては、横澤らによるポリエーテルへの
ビス(トリメチルシリルエーテル)類の挿入反応(T.Yo
kozawa,M.Nishimori,S.Mizukami,T.Endo,Macromolecule
s,29,8017(1996)を参照)、Hoekerらによるポリカーボ
ネートへのε−カプロラクタムの挿入反応などによる交
互共重合体の合成(B.Wurm,H.Keul and H.Hoeker,Macro
molecules,25,2977(1992)を参照)、田中らによるポリ
シランへのキノンの挿入反応(M.Tanaka,H.Yamasita,Ch
em.Lett,1547(1992)を参照)、園田らによるポリカー
ボネートへの環状シロキサンの挿入反応(K.Yokota,T.K
akuchi,N.Fukui,T.Kuroda,Y.Morimoto,E.Hamaya,I.Mur
ase and R.Sonoda,Polym.J.,29,58(1997)を参照)など
がある。この方法によれば、高分子主鎖への低分子化合
物の挿入反応において、定量的かつ位置選択的に進行す
れば、新しい配列を有する定序性高分子の合成が可能に
なる。そして、使用する縮合系ポリマーや低分子化合物
を種々変えることにより様々な種類の定序性高分子を合
成することができることから、定序性高分子の合成法と
して極めて有用である。さらに、この方法は、機能性基
を有する環状化合物を用いることにより高分子の機能化
が容易に行えることから、機能性高分子の合成といった
観点からも非常に興味深いものであった。
【0005】一方、ポリカーボネートは、機械的強度や
耐熱性に優れていることから、現在エンジニアリングプ
ラスチックとして様々な分野で利用されている縮合系ポ
リマーであり、エポキシ樹脂の硬化剤として近年、注目
を集めている。エポキシ樹脂は、耐衝撃性に乏しく、比
較的脆い材料であるが、ポリカーボネートを硬化剤とし
て用いることにより、下記反応式(V)
【0006】
【化9】
【0007】の進行によって、硬化後のエポキシ樹脂の
強度の向上が期待されている(Y.Yu,J.P.Bell,J.Poly
m.Sci,A,26,247(1988)、M.S.Li,C.C.M.Ma,J.L.Chen,
M.S.Lu,F.C.Chang,Polymer,37,3899(1966)およびT.M.D
on,J.P.Bell,J.Polym.Sci.,A,34,2103(1966)など参
照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記反応式(V)に示
される硬化反応は、主鎖中のカーボネート結合へのエポ
キシ基の挿入反応を利用したものである。しかしなが
ら、この反応は、現在エポキシ樹脂の硬化反応を目的と
した研究・応用にしか用いられておらず、カーボネート
結合へのエポキシ基の挿入反応に着目した検討は行われ
ていないのが実情である。また、上記反応式(V)に示
されるような従来技術におけるエポキシ樹脂の硬化反応
では、アミンなどのルイス塩基を触媒として高温で行っ
ているために、開環反応による五員環カーボネートの生
成などの副反応が進行してしまうなどの問題があった
(M.S.Li,C.C.M.Ma,J.L.Chen,M.L.Lin,F.C.Chang,Macrom
olecules,29,499(1996)など参照)。本発明の目的
は、優れた機械的強度、耐熱性、耐老化性および反応性
などを示すことにより、新しい機能性高分子の優れた合
成原料としての利用が大いに期待できる新規なポリアリ
ール−アルキルカーボネートおよびその製造方法を提供
することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために、高分子主鎖への環状化合物の挿入
反応による新たな定序性高分子の合成を目的として、ポ
リアリールカーボネートへの種々のオキシラン類の挿入
反応について鋭意検討を重ねた結果、前記反応式(V)
に示されるようなポリカーボネートによるエポキシ樹脂
の硬化反応は、第四オニウム塩などの中性触媒を用いた
温和な条件下で行うことにより、副反応を抑制し定量的
かつ位置選択的に進行することが可能であり、したがっ
て、この反応をポリカーボネート主鎖中のアリールカー
ボネート結合へのオキシラン類の挿入反応に応用するこ
とにより、新規な定序性ポリアリール−アルキルカーボ
ネートが合成され得るとの知見を得、ポリアリールカー
ボネート1モル当たり2〜10モルのオキシラン類を使
用し、触媒として第四オニウム塩あるいはクラウンエー
テル錯体の存在下に、好ましくは非プロトン性非極性溶
媒中、50〜250℃の温度において、ポリアリールカ
ーボネートへのオキシラン類の挿入反応を行うことによ
って、新規なポリアリール−アルキルカーボネートが得
られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、請求項1に記載の第1の発明
は、一般式(I)
【化10】 (ただし、一般式(I)中、R1 およびR2 は、それぞ
れ、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
3 は、
【0011】
【化11】 および
【化12】 からなる群から選択される置換基(ここに、R4 はアリ
ル基、アクリロイル基、メタクリロイル基もしくは1〜
4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R5および
6 は、それぞれ、1〜4個の炭素原子を有するアルキ
ル基であり、cおよびdは、それぞれ、0〜5の整数で
ある)であり、aおよびbは、それぞれ、0〜4の整数
であり、かつnは、2以上の整数である。なお、R1
2 およびR4 〜R6 は互いに同一でも異なっていても
よい)、または、下記一般式(II)
【0012】
【化13】 (ただし、一般式(II)中、R1 、R2 、aおよびb
は、それぞれ、前記一般式(I)におけるR1 、R2
aおよびbと同じ意味を表わす)で表わされる新規なポ
リアリール−アルキルカーボネートを提供することで達
成できる。
【0013】請求項2に記載の第2の発明は、反応触媒
として第四オニウム塩あるいはクラウンエーテル錯体の
存在下に、下記一般式(III)
【0014】
【化14】 (式中、R1 およびR2 は、それぞれ、1〜4個の炭素
原子を有するアルキル基であって、互いに同一でも異な
っていてもよく、aおよびbは、それぞれ、0〜4の整
数であり、かつnは、2以上の整数である)で示される
ポリアリールカーボネートに対して、シクロヘキセンオ
キシドおよび下記一般式(IV)
【0015】
【化15】 (ただし、一般式(IV)中、R3 は、
【0016】
【化16】 および
【化17】 からなる群から選択される置換基であり、R4 はアリル
基、アクリロイル基、メタクリロイル基もしくは1〜4
個の炭素原子を有するアルキル基、そしてR5 およびR
6 は、それぞれ、1〜4個の炭素原子を有するアルキル
基であって、R4〜R6 は互いに同一でも異なっていて
もよく、cおよびdは、それぞれ、0〜5の整数であ
る)で示される化合物からなる群から選ばれる1種のオ
キシラン類を前記ポリアリールカーボネート1モル当た
り2〜10モルの割合で挿入反応せしめることを特徴と
する、上記第1の発明に係る新規なポリアリール−アル
キルカーボネートの製造方法を提供することで達成でき
る。
【0017】また、請求項3に記載の第3の発明は、反
応触媒がテトラn−ブチルアンモニウムクロライド、テ
トラn−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラn−ブ
チルアンモニウムアイオダイド、テトラn−ブチルアン
モニウムアセテート、テトラn−ブチルホスホニウムク
ロライド、テトラn−ブチルホスホニウムブロマイド、
テトラn−ブチルホスホニウムアイオダイド、テトラフ
ェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホ
ニウムブロマイドおよびテトラフェニルホスホニウムア
イオダイドからなる群から選ばれる1種または2種以上
の第四ホスホニウム塩であることを特徴とする、上記第
2の発明に係る新規なポリアリール−アルキルカーボネ
ートの製造方法を、そして、請求項4に記載の第4の発
明は、反応触媒が18−クラウン−6−エーテル/塩化
カリウム錯体、18−クラウン−6−エーテル/臭化カ
リウム錯体および18−クラウン−6−エーテル/ヨウ
化カリウム錯体からなる群から選ばれる1種または2種
以上のクラウンエーテル錯体であることを特徴とする、
上記第2の発明に係る新規なポリアリール−アルキルカ
ーボネートの製造方法を、それぞれ提供することで達成
できる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳しく説明す
る。本発明のポリアリール−アルキルカーボネートは、
後述する方法により、ポリアリールカーボネートへオキ
シラン類の1種を挿入反応せしめて得られる新規なポリ
マーである。すなわち、該ポリマーは、前記一般式
(I)(該式中、R1 およびR2 は、それぞれ、1〜4
個の炭素原子を有するアルキル基であり、R3 は、
【0019】
【化18】 および
【化19】
【0020】からなる群から選択される置換基(ここ
に、R4 はアリル基、アクリロイル基、メタクリロイル
基もしくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であ
り、R5およびR6 は、それぞれ、1〜4個の炭素原子
を有するアルキル基であり、cおよびdは、それぞれ、
0〜5の整数である)であり、aおよびbは、それぞ
れ、0〜4の整数であり、かつnは、2以上、好ましく
は2以上1000以下の整数である。なお、R1 、R2
およびR4 〜R6 は互いに同一でも異なっていてもよ
い)、または、前記一般式(II)(該式中、R1
2 、aおよびbは、それぞれ、前記一般式(I)にお
けるR1 、R2 、aおよびbと同じ意味を表わす)で表
わされる新規なポリアリール−アルキルカーボネートで
ある。
【0021】そして、前記一般式(I)において、
1 、R2 、R5 およびR6 は、具体的には、それぞ
れ、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピ
ル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基
およびtert−ブチル基からなる群から選ばれる炭素
原子数が1〜4の低級アルキル基である。また、R
4 は、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル
基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基お
よびtert−ブチル基からなる群から選ばれる置換基
である。本発明においては、前記一般式(I)におい
て、aおよびbが共に0であり、かつ、R3
【0022】
【化20】 で示される置換基(ここに、cは、0である)である下
記一般式(VI)
【0023】
【化21】 (ただし、一般式(VI)中、nは、2以上、好ましくは
2〜1000の整数である)で表わされるポリアリール
−アルキルカーボネートや、aおよびbが共に0であ
り、かつ、R3
【0024】
【化22】 で示される置換基(ここに、R4 は、n−ブチル基であ
る)である下記一般式(VII)
【0025】
【化23】 (ただし、一般式(VII)中、nは、2以上、好ましくは
2〜1000の整数である)で表わされるポリアリール
−アルキルカーボネートが好ましい。
【0026】また、本発明において得られる上記ポリア
リール−アルキルカーボネートは、数平均分子量(M
n)(GPC法(標準ポリスチレン換算)にて測定)が
1000以上、好ましくは5000〜300000であ
り、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)
が1.0〜10.0、好ましくは1.0〜5.0である
ことが望ましい。
【0027】次に、本発明のポリアリール−アルキルカ
ーボネートの製造方法について述べる。本発明の方法に
おいて、原料の一つとして用いられるポリアリールカー
ボネートは、前記一般式(III)(該式中、R1 およびR
2 は、それぞれ、1〜4個の炭素原子を有するアルキル
基であって、互いに同一でも異なっていてもよく、aお
よびbは、それぞれ、0〜4の整数であり、かつ、nは
2以上、好ましくは2〜1000の整数である)で表わ
される化合物である。そして、本発明において、ポリア
リールカーボネートは、例えば、2,2−ビス(4’−
オキシフェニル)プロパン(いわゆるビスフェノール
A)、あるいは4’−オキシフェニル基の少なくとも1
つの水素原子がメチル基、エチル基、n−プロピル基、
イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec
−ブチル基およびtert−ブチル基からなる群から選
ばれる炭素原子数1〜4の低級アルキル基で置換された
ビスフェノールA誘導体と、炭酸ジメチル、炭酸ジエチ
ルなどの炭酸ジアルキルまたは炭酸ジフェニルなどの炭
酸ジアリールとの重縮合反応によって得られるものであ
り、数平均分子量(Mn)(GPC法(標準ポリスチレ
ン換算)にて測定)が500以上、好ましくは2500
〜200000の市販のものが使用される。これらポリ
アリールカーボネートの中でも、前記一般式(III)にお
いてaおよびbが共に0である、すなわち、ビスフェノ
ールAから誘導されるポリアリールカーボネートが特に
好ましい。
【0028】本発明の方法におけるもう一方の出発原料
は、シクロヘキセンオキシドおよび前記一般式(IV)
(ただし、該式中、R3 は、
【0029】
【化24】 および
【化25】
【0030】からなる群から選択される置換基であり、
4 はアリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基も
しくは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、そして
5 およびR6 は、それぞれ、1〜4個の炭素原子を有
するアルキル基であって、R4〜R6 は互いに同一でも
異なっていてもよく、cおよびdは、それぞれ、0〜5
の整数である)で示される化合物からなる群から選ばれ
る一官能型のオキシラン類である。この場合、1〜4個
の炭素原子を有するアルキル基としては、メチル基、エ
チル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル
基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチ
ル基などを具体的に挙げることができる。本発明の方法
では、これらオキシラン類の中でも、シクロヘキセンオ
キシド、および前記一般式(IV)においてR3
【0031】
【化26】 で示される置換基の場合は、R4 がアリル基であるアリ
ルグリシジルエーテル、R4 がn−ブチル基であるn−
ブチルグリシジルエーテル、R4 がアクリロイル基であ
るグリシジルアクリレートおよびR4 がメタクリロイル
基であるグリシジルメタクリレート、R3
【0032】
【化27】 で示される置換基の場合は、R5 がメチル基かつcが1
であるクレジルグリシジルエーテル、cが0であるフェ
ニルグリシジルエーテル、そしてR3
【0033】
【化28】 で示される置換基の場合は、dが0であるスチレンオキ
シドが好ましく、n−ブチルグリシジルエーテルおよび
フェニルグリシジルエーテルが特に好ましい。なお、本
発明の方法では、上記オキシラン類の1種を単独で使用
するものであるが、2種以上を混合使用することもでき
る。また、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテ
ル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルな
ど二官能型のオキシラン類の使用も可能であるが、この
場合、ポリアリールカーボネートへの挿入反応に際して
架橋反応が進行するものと思われることから、特に、反
応温度および反応時間をコントロールして架橋反応を抑
制するなどの工夫が必要である。
【0034】本発明の方法においては、前記一般式(II
I)で示されるポリアリールカーボネートに対し、シクロ
ヘキセンオキシドおよび前記一般式(IV)で示される化
合物からなる群から選ばれる1種のオキシラン類を挿入
反応させることにより、前記一般式(I)で表わされる
ポリアリール−アルキルカーボネートが得られるが、こ
の挿入反応は1つのカーボネート結合種に対して2当量
のオキシランが段階的に反応する、従来に見られない挿
入反応の例である。したがって、シクロヘキセンオキシ
ドおよび前記一般式(IV)で示される化合物から選ばれ
るオキシラン類の使用量は、前記一般式(III)で示され
るポリアリールカーボネート1モル当たり2〜10モ
ル、好ましくは2〜5モルであることが望ましい。オキ
シラン類の使用量がポリアリールカーボネート1モル当
たり2モル未満である場合、ポリアリールカーボネート
へのオキシラン類の位置選択的な挿入反応が進行しなく
なり、高度に配列規制された定序性のポリアリール−ア
ルキルカーボネートが得られない。一方、オキシラン類
の使用量をポリアリールカーボネート1モル当たり10
モルより多くしても、ポリアリールカーボネート主鎖へ
のオキシランの挿入率がそれ以上向上することはなく、
使用したオキシラン類中に存在する水の量も増加するた
め、その分加水分解による生成したポリアリール−アル
キルカーボネートの分子量の減少も起こりやすくなるな
ど好ましくない。
【0035】シクロヘキセンオキシドおよび前記一般式
(IV)で示される化合物からなる群から選ばれるオキシ
ラン類の、前記一般式(III)で示されるポリアリールカ
ーボネートへの挿入反応は、反応溶媒中で行われること
が望ましい。本発明の反応溶媒は、前記ポリアリールカ
ーボネートおよび/または前記オキシラン類を溶解もし
くは膨潤する作用を有し、かつ、これらポリアリールカ
ーボネートおよびオキシラン類と反応性を有しないもの
が用いられ得る。このような反応溶媒としては、クロロ
ベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、テ
トラヒドロフラン、アニソールおよびジグライム(ジエ
チレングリコールジメチルエーテル)などのエーテル化
合物、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド
(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA
c)およびヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)
などのアミド化合物、ジメチルスルホキシド(DMS
O)、スルホラン、テトラメチル尿素、N−メチル−2
−ピロリドン(NMP)などの非極性もしくは極性の低
い溶媒から極性の高い溶媒まで種々の溶媒を挙げること
ができる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、ま
た、2種以上の混合物として使用してもよい。本発明の
方法では、上記の反応溶媒の中でもクロロベンゼン、o
−ジクロロベンゼン、アニソールのような非プロトン性
非極性溶媒の使用が好ましい。なお、上述したように、
DMSO、DMAc、DMF、HMPAおよびNMPな
どの非プロトン性極性溶媒も使用することはできるが、
これら極性溶媒中の水によるポリアリール−アルキルカ
ーボネートの加水分解や、これら極性溶媒が求核種とし
て働き、副反応を引き起こすことなどによるポリアリー
ル−アルキルカーボネートにおける挿入率の低下や分子
量の減少を招く恐れがある。さらに本発明の方法におい
ては、上記の反応溶媒と均一相を形成し、かつ、前記ポ
リアリールカーボネートやオキシラン類と反応性を有し
ない有機溶剤とこれら反応溶媒との混合物も使用するこ
とができる。該有機溶剤としては、n−ヘキサン、n−
オクタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエ
ン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチ
ルエチルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン
類、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化
脂肪族炭化水素類およびジオキサンなどが具体的に挙げ
られる。
【0036】反応溶媒の使用量は、前記ポリアリールカ
ーボネートおよび/または前記オキシラン類を溶解もし
くは膨潤するに足る量以上であればよく、使用される反
応溶媒の種類はもちろんのこと、前記ポリアリールカー
ボネートおよび前記オキシラン類の仕込み量、後述する
触媒の種類と使用量、反応温度、反応時間などの挿入反
応条件、さらには、該挿入反応に際して、前記ポリアリ
ールカーボネートおよび/または前記オキシラン類を反
応溶媒中に溶解するのか、それとも反応溶媒で膨潤する
のかにより異なるので、一概に規定することは困難であ
る。したがって、例えば、前記反応溶媒としてクロロベ
ンゼン、o−クロロベンゼン、アニソールなどの非プロ
トン性非極性溶媒を使用する場合、反応溶媒の使用量
は、前記ポリアリールカーボネートの0.01〜5倍量
(容量/重量比)、好ましくは0.1〜5倍量(容量/
重量比)であることが望ましい。該使用量が0.01倍
量未満では、前記ポリアリールカーボネートおよび/ま
たは前記オキシラン類の該反応溶媒への溶解が十分では
なく、反応が不均一系で進行するようになるので、定量
的かつ位置選択的な挿入反応が困難となり、定序性のポ
リアリール−アルキルカーボネートが得られなくなるな
ど好ましくない。一方、5倍量を越える上記非プロトン
性非極性溶媒を使用しても、反応溶媒中に含まれる水に
より引き起こされるポリアリール−アルキルカーボネー
トの加水分解の起こる割合が増加したり、オキシラン類
とポリアリールカーボネート主鎖中のカーボネート結合
とが接触する確率が低下したりして、得られるポリアリ
ール−アルキルカーボネートの分子量が減少するし、ま
た、後述するような方法での反応溶媒の反応系からの回
収に必要以上のエネルギーを消費するなど、採算上好ま
しくない。
【0037】本発明の方法において、前記ポリアリール
カーボネートへの前記オキシラン類の挿入反応は、高温
下でも無触媒では全く進行せず、また、トリエチルアミ
ンなどの第三級アミンや、テトラn−ブチルアンモニウ
ムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF6 )のよう
な求核性の低い対アニオンを有する第四オニウム塩も触
媒としての効果はない。すなわち、触媒として適度な求
核性を持つ対アニオンを有する第四オニウム塩あるいは
クラウンエーテル錯体の存在が不可欠である。該触媒
は、下記式(VIII)に示されるようにして行われる、前
記ポリアリールカーボネートへの前記オキシラン類の挿
入反応による前記一般式(I)で表わされる本発明のポ
リアリール−アルキルカーボネートの生成を促進する作
用を有するものである。
【0038】
【化29】 (式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、a、
b、c、dおよびnは、それぞれ、前記一般式(I)に
おけるR1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、a、b、
c、dおよびnと同じ意味を表わす。)
【0039】本発明の方法における触媒の第四オニウム
塩は、下記一般式(IX)
【0040】
【化30】
【0041】(式中、R7 〜R13は、互いに同一でも異
なっていてもよい水素原子、ヒドロキシアルキル基、ア
ルキル基、アリール基またはアルアルキル基を表わし、
これらがアルキル基もしくはアルアルキル基である場合
は、炭素原子数1〜30の直鎖状、分岐状または環状の
炭化水素基である。M1 は、窒素原子、リン原子、砒素
原子またはアンチモン原子を表わし、M2 は、酸素原
子、硫黄原子、セレン原子または錫原子を表わし、そし
てM3 は沃素原子を表わす。またXは、ハロゲン原子、
水酸基、アルコキシド、酢酸基、炭酸基、重炭酸基、リ
ン酸二水素基および重硫酸基からなる群より選ばれる1
価の陰イオンを表わす)で示される化合物である。
【0042】具体的には、前記一般式(IX)において、
1 が窒素原子である場合のアンモニウム化合物、M1
がリン原子である場合のホスホニウム化合物、M1 が砒
素原子である場合のアルソニウム化合物、M1 がアンチ
モン原子である場合のスチボニウム化合物、M2 が酸素
原子である場合のオキソニウム化合物、M2 が硫黄原子
である場合のスルホニウム化合物、M2 がセレン原子で
ある場合のセレノニウム化合物、M2 が錫原子である場
合のスタンノニウム化合物、そして、M3 が沃素原子で
ある場合のヨードニウム化合物などが挙げられる。そし
て、上記のアンモニウム化合物の具体例として、テトラ
n−ブチルアンモニウムクロライド(TBAC)、テト
ラn−ブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)およ
びテトラn−ブチルアンモニウムアイオダイド(TBA
I)などのテトラn−ブチルアンモニウムハライド(T
BAX)およびテトラn−ブチルアンモニウムアセテー
ト(TBAAc)などが挙げられる。また、上記のホス
ホニウム化合物の具体例としては、テトラn−ブチルホ
スホニウムクロライド(TBPC)、テトラn−ブチル
ホスホニウムブロマイド(TBPB)およびテトラn−
ブチルホスホニウムアイオダイド(TBPI)などのテ
トラn−ブチルホスホニウムハライド(TBPX)およ
びテトラフェニルホスホニウムクロライド(TPP
C)、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(TPP
B)およびテトラフェニルホスホニウムアイオダイド
(TPPI)などのテトラフェニルホスホニウムハライ
ド(TPPX)などが挙げられる。
【0043】本発明の方法では、上述した第四オニウム
塩触媒の中でも、TBPC、TBPBおよびTBPIな
どのTBPX、TPPC、TPPBおよびTPPIなど
のTPPX、TBAC、TBABおよひTBAIなどの
TBAX、およびTBAAcなどのホスホニウム化合物
やアンモニウム化合物の使用が好ましく、TBPC、T
PPC、TBACおよびTBAAcの使用が特に好まし
い。すなわち、対アニオンにCl- やOAc- を有する
第四オニウム塩を使用すると、高い挿入率と比較的高分
子量のポリマーが得られるが、対アニオンにBr-やI
- を有する第四オニウム塩を使用する場合、挿入率およ
びポリマーの分子量は減少していく傾向が見られる。こ
れは、触媒の対アニオンの求核性にこの挿入反応が大き
く依存していることを示し、適度な求核性を有するCl
- やOAc-が最も効果的であるからと考えられる。な
お、本発明の方法においては、触媒として上記第四オニ
ウム塩の中から選ばれる2種以上を混合して用いてもか
まわない。
【0044】一方、本発明の方法における触媒のクラウ
ンエーテル錯体としては、18−クラウン−6−エーテ
ル/塩化カリウム錯体、18−クラウン−6−エーテル
/臭化カリウム錯体および18−クラウン−6−エーテ
ル/ヨウ化カリウム錯体などを具体的に挙げることがで
きる。これらクラウンエーテル錯体の中でも、18−ク
ラウン−6−エーテル/塩化カリウム錯体の使用が好ま
しい。また、本発明の方法では、触媒として上記クラウ
ンエーテル錯体の中から選ばれる2種以上を混合して用
いてもかまわないし、さらに、前記第四オニウム塩と混
合使用してもかまわない。しかしながら、触媒としてク
ラウンエーテル錯体を使用した場合、高分子量のポリマ
ーが得られるが、この分子量の増大が前記オキシラン類
の挿入反応によるものではなく、得られたポリマーの加
水分解によって生じたポリマー末端のフェノール性水酸
基がポリマー主鎖のカーボネート結合とエステル交換反
応を引き起こすことによる場合がある。したがって、触
媒としては、このようなエステル交換反応の起こらない
前記第四オニウム塩の使用が好ましく、また、クラウン
エーテル錯体触媒を使用する場合は、後述する反応時間
をあまり長くしないなどの工夫が必要である。
【0045】前記挿入反応に必要とされる触媒としての
上述の第四オニウム塩あるいはクラウンエーテル錯体の
量は、前記ポリアリールカーボネートや前記オキシラン
類の仕込み量、反応溶媒の種類および使用量、反応温
度、反応圧力および反応時間などの挿入反応条件などに
よって異なり、一概に限定できないが、本発明の方法に
おける触媒の使用量は、前記オキシラン類に対して1〜
15モル%、好ましくは1〜10モル%、特に好ましく
は1〜5モル%であることが望ましい。触媒の使用量が
前記オキシラン類に対して15モル%より多いと、該触
媒中に含まれる水の量が増すため得られたポリアリール
−アルキルカーボネートの加水分解が起こりやすくなる
とともに、閉環反応などの副反応も加水分解と同時に進
行するようになるので、前記オキシラン類の前記ポリア
リールカーボネート主鎖への挿入率や、得られたポリア
リール−アルキルカーボネートの分子量が減少する。ま
た、触媒の使用量が前記オキシラン類に対して1モル%
より少ないと、前記ポリアリールカーボネートへの前記
オキシラン類の挿入反応が十分進行せず、高分子量の定
序性ポリアリール−アルキルカーボネートを高収率で得
ることができないので好ましくない。なお、これらの好
ましくない現象の発現を確実に防止するためには、触媒
の使用量は、上述の好ましい範囲、さらには特に好まし
い範囲内にすべきである。
【0046】本発明の製造方法における前記ポリアリー
ルカーボネートへの前記オキシラン類の挿入反応は、溶
液中にて均一系で進行させる必要がある。すなわち、前
記ポリアリールカーボネートおよび/または前記オキシ
ラン類を前記反応溶媒中に溶解した状態で、あるいは、
前記ポリアリールカーボネートおよび/または前記オキ
シラン類を前記反応溶媒で膨潤させた状態で前記挿入反
応を行う必要があり、そのためには、前記挿入反応の進
行中、前記反応溶媒を液体状態に維持すべきである。し
たがって、反応温度は、前記ポリアリールカーボネート
および/または前記オキシラン類が前記反応溶媒中に溶
解した状態、あるいは、前記反応溶媒で膨潤された状態
となるように、少なくとも50℃以上である必要があ
る。しかしながら、この場合、反応温度が250℃を越
えると、生成物であるポリアリール−アルキルカーボネ
ートの望ましくない熱分解反応を併発するようになるの
で、本発明の挿入反応における反応温度は、50〜25
0℃の範囲であることが好ましい。
【0047】本発明の製造方法における前記ポリアリー
ルカーボネートへの前記オキシラン類の挿入反応におい
て、反応圧力は特に制限されるものではなく、減圧、常
圧および加圧のいずれの場合においても実施可能であ
る。しかし、加圧の場合は、製造設備に耐圧性能が要求
されるし、また、減圧の場合には、減圧設備が必要にな
るなど、経済性の面からは常圧で実施するのが好まし
い。ただし、前述したように、前記挿入反応の進行中、
前記反応溶媒が液体状態を維持し得るような圧力条件が
保持されなければならないことは言うまでもない。した
がって、設定された反応温度によっては、前記挿入反応
を例えばオートクレーブ中などで加圧条件下に行う必要
が生じる場合がある。また、前記挿入反応は、高温であ
ればある程反応速度が速いので、得られるポリアリール
−アルキルカーボネートの収量や分子量を高める必要が
ある場合、反応温度は、前述の範囲内でできるだけ高温
にした方がよい。しかしながら、前記挿入反応の際の温
度が高すぎると、加水分解反応や閉環反応などの副反応
の発生により挿入反応が定量的かつ位置選択的に進行し
なくなり、得られるポリアルール−アルキルカーボネー
トの耐熱性や機械的性質などの品質に悪影響が生じた
り、使用するポリアリールカーボネート、オキシラン
類、反応溶媒などが熱的に不安定となったりする恐れが
ある。したがって、このような場合は、反応系を減圧に
して、前記反応温度を低めに維持することが好ましい。
【0048】本発明の製造方法における反応時間も、前
記ポリアリールカーボネートおよび前記オキシラン類の
仕込み量、前記反応溶媒の種類および使用量、前記触媒
の種類および使用量ならびに反応温度、反応圧力などの
前記挿入反応条件によって異なるが、1〜80時間程
度、好ましくは5〜50時間程度、さらに好ましくは1
0〜30時間程度が望ましい。本発明の挿入反応は、そ
の初期段階において、加水分解や副反応が起こりやす
く、得られるポリアリール−アルキルカーボネートの分
子量が減少する傾向が見られるが、反応時間が約1時間
より短いと、ちょうどその時間帯に該当するので好まし
くない。また、約80時間より長くしても、目的生成物
のポリアリール−アルキルカーボネートの収量および分
子量におけるそれ以上の向上が望めないばかりか、得ら
れたポリアリール−アルキルカーボネートが長時間の熱
履歴を受けて、熱劣化による品質の低下を招く恐れがあ
るので好ましくない。
【0049】本発明の方法における挿入反応は、攪拌機
による機械的攪拌などの適当な方法によって攪拌しなが
ら行うことが好ましい。また、本発明の方法における挿
入反応は、得られる定序性ポリアリール−アルキルカー
ボネートの望ましくない加水分解や酸化を防止するため
に、脱気された密閉装置内で行われるか、あるいは不活
性ガス雰囲気下に行われることが好ましい。不活性ガス
としては、窒素ガスの他、アルゴンガス、ヘリウムガス
などの希ガスが好適に使用され得る。
【0050】そして、本発明では、前記ポリアリールカ
ーボネートへの前記オキシラン類の挿入反応による前記
一般式(I)で表わされるポリアリール−アルキルカー
ボネートの製造方法は、特に限定されるものではなく、
常法に従って行えばよく、バッチ式または連続式のいず
れにおいても実施することができる。例えば、所定量の
前記ポリアリールカーボネートおよび/または前記オキ
シラン類を所定量の前記反応溶媒に溶解もしくは膨潤し
た後、適当な攪拌機および加熱装置を備えた反応装置に
供給し、さらに、触媒として所定量の前記第四オニウム
塩あるいはクラウンエーテル錯体を添加し、常圧、ある
いは、所定の減圧または加圧下に、攪拌しながら所定温
度に加熱し、所定時間反応を行えばよい。この場合、前
記オキシラン類は、所定量を一度に加えることなく、適
宜量に分割して加えることも可能である。また、触媒の
前記第四オニウム塩あるいはクラウンエーテル錯体も、
反応系に所要量を一度に添加してもよく、または、適当
な回数に分割して添加してもよい。したがって、使用さ
れる反応装置も特に制限されるものではなく、オートク
レーブ、バッチ反応釜、1槽式ないし多槽式の連続反応
装置および管状連続反応装置などが使用される。さら
に、本発明の方法では、前述したように、オキシラン原
料として二官能型のオキシラン類を使用した場合、前記
挿入反応時における架橋反応に基づく、分子鎖間架橋結
合の生成を防ぐために、前記挿入反応に際し、前述した
反応温度や反応時間などの範囲内での可及的に穏やかな
反応条件の選定などの配慮も必要である。
【0051】本発明の方法では、続いて、以上のように
して得られた反応溶液を沈澱溶媒中に加えて、適当な期
間(例えば、一昼夜程度)放置することにより、前記一
般式(I)で表わされるポリアリール−アルキルカーボ
ネートの沈澱物が得られる。前記沈澱溶媒としては、ポ
リアリール−アルキルカーボネートに対する貧溶媒であ
ればよく、例えば、水、メタノール、エタノール、n−
プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブ
チルアルコール、イソブチルアルコールおよびsec−
ブチルアルコールなどの1〜4個の炭素原子を有する常
温で液体のアルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピ
ルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテ
ル、ジイソブチルエーテル、メチルプロピルエーテル、
メチルイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、
メチルイソブチルエーテル、フェネトール、ジフェニル
エーテルおよびジオキサンなどのエーテル類、アセト
ン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチ
ルイソプロピルケトン、メチルブチルケトンおよびメチ
ルイソブチルケトンなどのケトン類、n−ヘキサンおよ
びn−オクタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、ト
ルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、ならび
にこれら有機溶剤の中から選ばれる2種以上の混合物な
どを挙げることができる。これらの中でもメタノール、
エタノール、ジエチルエーテル、ジイソブチルエーテ
ル、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブ
チルケトンが好ましく、メタノールおよびエタノールが
特に好ましい。
【0052】前記沈澱溶媒の使用量は、前記反応溶液の
量の1〜100倍量(容量比)が好ましい。該使用量が
1倍量より少ないと、前記反応溶液からのポリアリール
−アルキルカーボネートの沈澱が十分に行われず好まし
くない。また、該使用量が100倍量より多いと、前記
沈澱溶媒の更なる効果が期待できないのはもちろんのこ
と、前記沈澱溶媒として上述の有機溶剤を使用し、これ
を回収しようとする場合、該沈澱溶媒の回収に必要以上
のエネルギーを消費し、経済上好ましくないなどの問題
がある。
【0053】そこで、前記反応溶液の前記沈澱溶媒への
注入によって得られた沈澱物を含む反応混合物は、濾
過、遠心分離などの公知の方法により、固形物(沈澱
物)が分離される。なお、前記反応溶液の前記沈澱溶媒
中への注入に先立って、前記反応溶液を次に述べる良溶
媒で希釈してもよい。本発明の方法では、分離・回収さ
れた上記のポリアリール−アルキルカーボネートからな
る固形物を良溶媒に再び溶解させる。このような良溶媒
としては、前記ポリアリール−アルキルカーボネートか
らなる固形物を溶解する作用を有し、かつ、該固形物と
反応しない溶媒であればよく、ジクロロメタン、ジクロ
ロエタン、クロロホルム、トリクロロエタン、トリクロ
ロエチレン、四塩化炭素、テトラクロロエタンおよびテ
トラクロロエチレンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類
を好適な例として挙げることができる。また、前述した
ポリアリールカーボネートへのオキシラン類の挿入反応
に際して使用される反応溶媒と同種のものを使用しても
よく、具体的には、クロロベンゼン、o−ジクロロベン
ゼン、ニトロベンゼン、テトラヒドロフラン、アニソー
ルおよびジグライムなどのエーテル化合物、ホルムアミ
ド、DMF、DMAcおよびHMPAなどのアミド化合
物、DMSO、スルホラン、テトラメチル尿素およびN
MPなど、非極性もしくは極性の低い溶媒から極性の高
い溶媒まで種々の溶媒を使用することができる。これら
の溶媒は単独で用いてもよく、また、2種以上の混合物
として用いてもよい。そして本発明においては、上記の
良溶媒の中でもクロロホルム、四塩化炭素、DMSO、
DMAc、HMPAおよびNMPなどの使用が好まし
く、クロロホルムおよび四塩化炭素の使用が特に好まし
い。さらに、前記反応溶媒と同様、これらの良溶媒と均
一相を形成し、かつ前記ポリアリール−アルキルカーボ
ネートの固形物と反応性を有しないn−ヘキサン、n−
オクタンなどの脂肪族炭化水素類、アセトン、メチルエ
チルケトン、メチルプロピルケトンなどのケトン類およ
びジオキサンなどの有機溶剤とこれら良溶媒との混合物
を用いてもかまわない。
【0054】また、良溶媒の使用量も前記ポリアリール
−アルキルカーボネートの固形物を溶解するに足りる量
以上であればよく、該固形物の1〜60倍量(容量/重
量)であることが好ましい。良溶媒の使用量が1倍量未
満の場合は、該固形物の良溶媒への溶解が十分行われ
ず、その後の再沈精製による目的生成物の前記ポリアリ
ール−アルキルカーボネートの回収が不十分となるし、
良溶媒の使用量が60倍量を越えると、該良溶媒の回収
・再使用のために必要以上のエネルギーを消費するので
採算上好ましくない。
【0055】次に、目的生成物のポリアリール−アルキ
ルカーボネートを含む上記溶液(すなわち、ポリアリー
ル−アルキルカーボネートを溶解した良溶媒)を前述の
沈澱溶媒中に再び加えて、適当な期間(例えば、一昼夜
程度)放置することにより、この目的生成物を沈澱させ
た後、濾過、遠心分離などの公知の方法によって、固形
分(目的生成物の沈澱物)を分離・回収するのである。
この場合における沈澱溶媒の使用量は、前記挿入反応に
より得られた反応溶液の沈澱溶媒中への注入による前記
ポリアリール−アルキルカーボネートを含む固形物の分
離・回収の場合と同様、前述のポリアリール−アルキル
カーボネートを含む溶液の量の1〜100倍量(容量
比)であればよい。本発明の方法では、以上述べたよう
な、目的生成物のポリアリール−アルキルカーボネート
を含む固形物の良溶媒への溶解操作、該溶解液の前記沈
澱溶媒中への注入操作および得られた沈澱物の濾過や遠
心分離などによる分離・回収操作からなる、目的生成物
の一連の再沈精製操作を少なくとも1回以上、好ましく
は2〜3回繰り返すことによって、前記ポリアリール−
アルキルカーボネートを含む固形物から残留反応溶媒な
どの不純物を除去精製することが望ましい。なお、上述
の一連の再沈精製操作の繰り返しにおいては、前記ポリ
アリール−アルキルカーボネートの固形物の分離・回収
に際して得られる濾液からの前記良溶媒や沈澱溶媒(貧
溶媒)の回収・再使用を容易に行えるように、前記良溶
媒については、前記ポリアリールカーボネートへの前記
オキシラン類の挿入反応に際して使用した反応溶媒と同
種の溶媒を、また、前記沈澱溶媒については、前記挿入
反応によって得られた反応溶液からの前記ポリアリール
−アルキルカーボネートの固形物の分離・回収に使用し
た沈澱溶媒と同種の溶媒を、それぞれ、用いることが好
ましいが、これに限定されるものではなく、これら良溶
媒や沈澱溶媒は各回の再沈精製操作において異なってい
てもよい。また、濾液からの前記沈澱溶媒の回収・再使
用を考慮しなければ、経済的には、前記沈澱溶媒として
水を用いることが最も好ましいことは言うまでもない。
【0056】本発明の製造方法においては、以上のよう
にして得られた前記ポリアリール−アルキルカーボネー
トの固形物を最後に熱風乾燥、真空乾燥および凍結乾燥
などの公知の方法により100℃以下の温度で乾燥する
ことによって、前記一般式(I)で表わされる、目的生
成物のポリアリール−アルキルカーボネートが得られる
のである。
【0057】そして、前記反応溶液の前記沈澱溶媒への
注入によって得られた沈澱物を含む反応混合物からの濾
過、遠心分離などによる前記ポリアリール−アルキルカ
ーボネートを含む固形物の回収に際して、またその後の
一連の該固形物の再沈精製操作に際して得られた濾液に
は、未反応のオキシラン類、反応溶媒、触媒、沈澱物の
溶解溶媒(良溶媒)および沈澱溶媒(貧溶媒)などが含
まれており、これらは、必要に応じて回収後、蒸留、液
体クロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィ
ー、再結晶、選択的溶剤抽出、特開平5−125021
号公報や特開平6−157407号公報などに開示され
ている選択透過膜を利用した浸透気化法や蒸気透過法な
ど、公知の分離操作法を単独で用いるか、あるいは、適
当に組み合わせて用いることにより、前記各物質を単離
して再使用に供することも可能である。
【0058】
【実施例】次に、実施例および比較例を述べて本発明の
方法をさらに詳しく説明するが、本発明の方法は、これ
ら実施例および比較例によって何ら限定を受けるもので
はない。なお、以下の実施例および比較例において、原
料のポリアリールカーボネートおよび生成物のポリアリ
ール−アルキルカーボネートの特性は、下記の方法によ
って求めた。
【0059】(1)ポリアリール−アルキルカーボネー
トの元素分析 (株)パーキンエルマー社製240C型 CHNS/O
Analyserを用いて測定した。
【0060】(2)ポリアリールカーボネートおよびポ
リアリール−アルキルカーボネートの数平均分子量(M
n)および重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/
Mn) 下記条件下に、テトラヒドロフラン(THF)を溶出液
に用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(G
PC)により測定した。 測定器 :東ソー(株)製HLC−8020 カラム :TSKgelG1000H 標準物質:ポリスチレン 溶媒 :テトラヒドロフラン(THF)
【0061】(3)ポリアリールカーボネートおよびポ
リアリール−アルキルカーボネートの赤外線吸収スペク
トル(IR) 日本分光(株)製IR−700型フーリエ赤外分光光度
計を用いて、下記方法により測定した。 (フィルム法)60℃で10時間以上減圧乾燥して水分
を除いたポリアリールカーボネート試料およびポリアリ
ール−アルキルカーボネート試料を、それぞれ、約5重
量%濃度になるようにテトラヒドロフラン(常法に従っ
て脱水し、蒸留したもの)に溶解し、プラスチックシャ
ーレ上でゆるやかに乾燥させてフィルムを作製し測定し
た。
【0062】(4)ポリアリールカーボネートおよびポ
リアリール−アルキルカーボネートの核磁気共鳴スペク
トル( 1H−NMR) 日本電子(株)製JMN−α−500型(500MH
z)核磁気共鳴装置もしくは日本電子(株)製JMN−
FX−200型(200MHz)核磁気共鳴装置を使用
した。60℃で10時間以上減圧乾燥し水分を除いたポ
リアリールカーボネート試料およびポリアリール−アル
キルカーボネート試料50mgを、それぞれ、約0.5
mlのCDCl3 (Aldrich Chem. Co. (USA)製の
重水素化クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン
(TMS))に溶解して、 1H−NMRを測定した。
【0063】(5)ポリアリールカーボネートおよびポ
リアリール−アルキルカーボネートの核磁気共鳴スペク
トル(13C−NMR) 日本電子(株)製JMN−α−500型(125MH
z)核磁気共鳴装置もしくは日本電子(株)製JMN−
FX−200型(50MHz)核磁気共鳴装置を使用し
た。60℃で10時間以上減圧乾燥し水分を除いたポリ
アリールカーボネート試料およびポリアリール−アルキ
ルカーボネート試料50mgを、それぞれ、約0.5m
lのCDCl3 (Aldrich Chem. Co. (USA)製の重
水素化クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン
(TMS))に溶解して、13C−NMRを測定した。
【0064】(6)ポリアリールカーボネートへのオキ
シラン類の挿入率 前記第(4)項により求められたポリアリール−アルキ
ルカーボネートの 1H−NMRスペクトルにおけるポリ
アリールカーボネートに起因するメチルプロトンとオキ
シラン類に起因するメチンプロトンの積分比からオキシ
ラン類の挿入率を求めた。
【0065】また、以下の実施例および比較例において
使用した試薬および溶媒は、次に示すような前処理を行
ったものである。 (a)溶媒 アニソールは、市販品を硫酸マグネシウムで予備乾燥し
た後、ナトリウムを加えて蒸留精製した。また、N,N
−ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」と略記)、
クロロベンゼン、N−メチル−2−ピロリドン(以下
「NMP」と略記)およびN,N−ジメチルホルムアミ
ド(以下「DMF」と略記)は、それぞれ、市販品を水
素化カルシウムで予備乾燥後、水素化カルシウムの存在
下に減圧蒸留精製した。
【0066】(b)ポリアリールカーボネート 市販品(Aldrich Chem. Co. (USA)製、商品名:N
o.18,162−5、重量平均分子量(Mw):64
000(GPC法))を、良溶媒にクロロホルム、貧溶
媒にn−ヘキサンを用いて2回再沈精製した。
【0067】(c)オキシラン類 フェニルグリシジルエーテル(以下「PGE」と略
記)、n−ブチルグリシジルエーテル(以下「BGE」
と略記)、スチレンオキシド(以下「SO」と略記)お
よびシクロヘキセンオキシド(以下「CHO」と略記)
は、それぞれ、市販品に水素化カルシウムを加えて予備
乾燥した後、水素化カルシウムの存在下、減圧蒸留によ
り精製した。
【0068】(d)触媒 テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド(以下「TB
AB」と略記)は、市販品を脱水酢酸エチルで再結晶す
ることにより精製した。その他の第四オニウム塩および
18−クラウン−6−エーテル(18−C−6)は、そ
れぞれ、市販品をそのまま使用した。また、トリエチル
アミン(以下「TEA」と略記)は、市販品を水素化カ
ルシウムで乾燥後、蒸留精製した。
【0069】実施例1 ドライバック中(湿度<10%)でアンプル管に触媒と
してテトラn−ブチルホスホニウムクロライド(以下
「TBPC」と略記)0.012g(0.04ミリモ
ル、したがって、触媒濃度はPGEに対して2モル%)
を秤り取り、回転子を入れ60℃で5時間減圧乾燥し
た。その後、ドライバック中(湿度<10%)で、アン
プル管にポリアリールカーボネート(以下「PC」と略
記)0.254g(1ミリモル、数平均分子量(以下
「Mn」と略記)=29800、重量平均分子量と数平
均分子量の比(以下「Mw/Mn」と略記)=1.5
1)、PGE0.300g(2ミリモル)および反応溶
媒のクロロベンゼン1.25ml(したがって、PCの
溶媒に対する濃度(以下において「モノマー濃度」とい
う)は0.8mol/l)を秤り取った。続いて、アン
プル管に二方コックを接続し、密閉状態でドライバック
から取り出し、脱気封管を行った。その後、アンプル管
を100℃のオイルバスに浸漬して72時間PCへのP
GEの挿入反応を行った。反応終了後、反応混合物を約
3mlのクロロホルムで希釈し、これを100mlのメ
タノールに注ぎ、16時間静置してポリマーを沈澱させ
た。
【0070】そこで、このポリマー沈澱物を含むメタノ
ール溶液をグラスフィルターで濾別し、回収したポリマ
ーを、良溶媒としてクロロホルム、貧溶媒としてメタノ
ールを用い、再沈精製した(すなわち、回収したポリマ
ーを5mlのクロロホルムに溶解した後、再び100m
lのメタノールに注ぎ、ポリマーを沈澱させた)。そし
て、ポリマー沈澱物を含むメタノール溶液をグラスフィ
ルターで濾別し、得られたポリマーを室温にてデシケー
ター中で減圧乾燥したところ、白色のポリマーが0.5
4gの収量で得られた。したがって、表1に示すよう
に、得られたポリマーの収率は98%であり、また、M
n=16600、Mw/Mn=1.84であった。ま
た、元素分析の結果は次の通りであった。 元素分析(C34347 ) 計算値(%) C:73.63 H:6.18 実測値(%) C:73.57 H:6.35
【0071】さらに、このポリマーの化学構造を決定す
るため、および、PCへのPGEの挿入率を求めるた
め、原料のPCと比較して、赤外線吸収スペクトル(I
Rスペクトル)測定および核磁気共鳴スペクトル( 1
−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトル)測
定を行った。得られたポリマーのIRスペクトル、 1
−NMRスペクトルおよび13C−NMRスペクトルを、
それぞれ、原料PCのそれらと比較して、図1、図2お
よび図3に示す。なお、IR測定、 1H−NMR測定お
よび13C−NMR測定の結果(スペクトルデータ)は、
それぞれ、以下の通りであった。 IR(Film,cm-1):1749(νC=O,ca
rbonate),1599,1497(νC=C,a
romatic),1272,1079(νC−O−
C,ether),1235,1182(νO−C−
O,carbonate)。1 H−NMR(200MHz,CDCl3 ,TMS)δ
(ppm):1.41〜1.75(bs,6H,
a ),4.05〜4.40(bs,8.0H,
b ),5.20〜5.50(m,2.0H,Hc ),
6.60〜7.40(m,18.0H,aromati
c H)。13 C−NMR(125MHz,CDCl3 ,TMS)δ
(ppm):30.99(C1 ),41.69
(C2 ),65.84(C3 ),74.66(C4 ),
114.01,114.62,121.31,127.
76,129.46,143.76,156.07,1
58.23(aromatic C),154.16
(C5 )。 また、 1H−NMR測定結果から求められたPCへのP
GEの挿入率は100%であった。このことから、PC
の1つのカーボネート結合に対して2分子のPGEが定
量的に挿入したことが判明した。そして、上記 1H−N
MRおよび13C−NMRのスペクトルデータより、PG
Eのβ−β開裂が選択的に進行していることが判明し、
これに加えて上記元素分析およびIR測定の結果から、
得られた白色のポリマーは、下記一般式(X)で表わさ
れる、配列の整った定序性ポリアリール−アルキルカー
ボネートであることが判った。
【0072】
【化31】
【0073】しかしながら、挿入反応後のポリアリール
−アルキルカーボネートの分子量(Mn=16600)
が挿入反応前のPCの分子量(Mn=29800)に比
べて減少しており、これは、加水分解や閉環反応などの
副反応によるポリマー主鎖の切断が起こったためと考え
られる。
【0074】実施例2 反応時間を72時間に変えて24時間にしたこと以外
は、実施例1と全く同様の操作を行い、0.55gの白
色ポリマーを得た。該ポリマーの収率、MnおよびMw
/Mnは、それぞれ、表1に示すように、98%、13
900および1.84であった。また、得られたポリマ
ーの 1H−NMRスペクトルデータから求められた挿入
率は95%であった。さらに、得られたポリマーについ
てIR測定、 1H−NMR測定および13C−NMR測定
を行った結果から、得られた白色のポリマーは、前記一
般式(X)で表わされる定序性ポリアリール−アルキル
カーボネートであることが判った。
【0075】実施例3〜5 反応溶媒のクロロベンゼンの量を1.25ml(モノマ
ー濃度:0.8mol/l)に代えて、実施例3の場合
は5ml(モノマー濃度:0.2mol/l)、実施例
4の場合は2.5ml(モノマー濃度:0.4mol/
l)、そして実施例5の場合は1.67ml(モノマー
濃度:0.6mol/l)にしたこと以外は、実施例2
と全く同様の操作を行った。得られた白色のポリマーの
Mn、および 1H−NMRスペクトルデータから求めら
れた挿入率は、それぞれ、表1に示す通りであった。ま
た、実施例3〜5において、得られたポリマーについて
IR測定、 1H−NMR測定および13C−NMR測定を
行った結果から、得られた白色のポリマーは、それぞ
れ、前記一般式(X)で表わされる定序性ポリアリール
−アルキルカーボネートであることが判った。そして上
記実施例2〜5の結果から、触媒としてTBPCを用い
たPCへのPGEの挿入反応においては、モノマー濃度
が高くなる(すなわち、反応溶媒の量が減少する)に従
って、得られるポリマーの分子量および挿入率が増大し
ていく傾向があることが判った。
【0076】実施例6 PGE0.300g(2ミリモル)に代えて、BGE
0.260g(2ミリモル)を使用したこと以外は、実
施例1と全く同様にして、PCへのBGEの挿入反応を
行った。得られたポリマーは、収量が0.49g(収
率:95%)であり、Mn=11400、Mw/Mn=
1.53であった。また、得られたポリマーのIR測
定、 1H−NMR測定および13C−NMR測定の結果
(スペクトルデータ)は、それぞれ、以下の通りであっ
た。
【0077】
【化32】
【0078】IR(Film,cm-1):1747(ν
C=O,carbonate),1608,1510
(νC=C,aromatic),1268,1075
(νC−O−C,ether),1239,1182
(νO−C−O,carbonate)。1 H−NMR(200MHz,CDCl3 ,TMS)δ
(ppm):0.70〜1.00(m,6.1H,
g ),1.10〜1.75(m,14.0H,Ha
f ),3.30〜3.60(m,3.9H,Hc ),
3.60〜3.80(m,4.0H,Hd ),4.05
〜4.30(bs,4.0H,Hb ),5.10〜5.
25(m,2.0H,Hc ),6.60〜7.40
(m,8.0H,aromatic H)。 さらに 1H−NMR測定結果から求められたPCへのB
GEの挿入率は100%であった。このことから、PG
Eの場合と同様、PCへのBGEの挿入反応は定量的に
進行することが判明した。また、上記 1H−NMRおよ
13C−NMRのスペクトルデータより、PGEの場合
と同様、BGEのβ−β開裂が選択的に進行しているこ
とも明らかとなった。
【0079】実施例7 PGE0.300g(2ミリモル)に代えて、SO0.
240g(2ミリモル)を使用したこと以外は、実施例
1と全く同様の操作を行い、PCへのSOの挿入反応を
行った。得られたポリマーは、収量が0.46g(収
率:93%)であり、Mn=6100、Mw/Mn=
1.51であった。また、得られたポリマーのIR測
定、 1H−NMR測定および13C−NMR測定の結果
(スペクトルデータ)は、それぞれ、以下の通りであっ
た。
【0080】
【化33】
【0081】IR(Film,cm-1):1751(ν
C=O,carbonate),1606,1508
(νC=C,aromatic),1263,1079
(νC−O−C,ether),1234,1182
(νO−C−O,carbonate)。1 H−NMR(200MHz,CDCl3 ,TMS)δ
(ppm):1.41〜1.75(bs,6.0H,H
a ),3.95〜4.50(m,3.7H,Hb),
5.20〜6.10(m,1.8H,Hc ),6.60
〜7.70(m,17.3H,aromatic
H)。 さらに、 1H−NMR測定結果から、PCへのSOの挿
入率が90%であり、SOのβ:α開裂の比がβ:α=
8:2で進行していることが確認された。これは、SO
がPGEやBGEと異なりα位の炭素が安定なカチオン
を形成しやすいためと考えられる。
【0082】実施例8 PGE0.300g(2ミリモル)に代えて、CHO
0.196g(2ミリモル)を使用したこと以外は、実
施例1と全く同様の操作を行い、PCへのCHOの挿入
反応を行った。得られたポリマーは、収量が0.16g
(収率:36%)であり、Mn=3400、Mw/Mn
=1.42であった。また、得られたポリマーのIR測
定、 1H−NMR測定および13C−NMR測定の結果
(スペクトルデータ)は、それぞれ、以下の通りであっ
た。
【0083】
【化34】
【0084】IR(Film,cm-1):1768(ν
C=O,carbonate),1606,1505
(νC=C,aromatic),1081(νC−O
−C,ether),1230,1194(νO−C−
O,carbonate)。1 H−NMR(200MHz,CDCl3 ,TMS)δ
(ppm):1.20〜2.00(bs,8.1H,H
a ,Hb ),4.20〜4.40(m,0.3H,
c ),4.80〜5.10(m,0.4H,Hd ),
6.60〜7.40(m,8.0H,aromatic
H)。 さらに 1H−NMR測定結果から求められたPCへのC
HOの挿入率は20%であった。CHOの挿入率がPG
E、BGEおよびSOの場合と比べて低い理由は、CH
Oはオキシラン環の背面にシクロヘキサン環が存在する
ため、オキシラン環への第四オニウム塩の配位がしにく
く、反応があまり進行しなかったためと考えられる。
【0085】
【表1】
【0086】実施例9〜11 触媒としてのTBPCの使用量を0.012g(0.0
4ミリモル、触媒濃度:PGEに対して2モル%)に変
えて、実施例9の場合は0.024g(0.08ミリモ
ル、触媒濃度:PGEに対して4モル%)、実施例10
の場合は0.035g(0.12ミリモル、触媒濃度:
PGEに対して6モル%)、そして実施例11の場合は
0.059g(0.20ミリモル、触媒濃度:PGEに
対して10モル%)にしたこと以外は、実施例1と全く
同様の操作を行った。得られた白色のポリマーのMn、
および 1H−NMRスペクトルデータから求められた挿
入率は、それぞれ、表2に示す通りであった。また、実
施例9〜11において、得られたポリマーについてIR
測定、 1H−NMR測定および13C−NMR測定を行っ
た結果から、得られた白色のポリマーは、それぞれ、前
記一般式(X)で表わされる定序性ポリアリール−アル
キルカーボネートであることが判った。そして、実施例
9〜11の結果および前述の実施例1の結果から、触媒
量の増加に伴って、ポリマーへのPGEの挿入率および
ポリマーの分子量が減少していっていることが判る。こ
れは、触媒量の増加に伴い、TBPC中に含まれる水の
量も増すため、得られたポリマーの加水分解が起こりや
すくなるとともに、閉環反応などの副反応も加水分解と
同時に進行しているものと考えられる。
【0087】実施例12 触媒として、TBPC0.012g(0.04ミリモ
ル、触媒濃度:PGEに対して2モル%)に代えて、テ
トラn−ブチルアンモニウムクロライド(以下「TBA
C」と略記)0.011g(0.04ミリモル、触媒濃
度:PGEに対して2モル%)を用いたこと以外は、実
施例2と全く同様の操作を行い、0.53g(収率:9
6%)の白色ポリマーを得た。このポリマーのMnおよ
びMw/Mnは、それぞれ、表2に示すように、105
00および1.67であった。また、得られたポリマー
1H−NMRスペクトルデータから求められた挿入率
は95%であった。さらに、得られたポリマーについて
IR測定、 1H−NMR測定および13C−NMR測定を
行った結果から、得られた白色のポリマーは、前記一般
式(X)で表わされる定序性ポリアリール−アルキルカ
ーボネートであることが判った。
【0088】実施例13〜16 触媒として、TBPC0.012g(0.04ミリモ
ル、触媒濃度:PGEに対して2モル%)に代えて、実
施例13の場合はテトラn−ブチルアンモニウムアセテ
ート(以下「TBAAc」と略記)0.012g(0.
04ミリモル、触媒濃度:PGEに対して2モル%)
を、実施例14の場合はTBAB0.014g(0.0
4ミリモル、触媒濃度:PGEに対して2モル%)を、
実施例15の場合はテトラn−ブチルアンモニウムアイ
オダイド(以下「TBAI」と略記)0.015g
(0.04ミリモル、触媒濃度:PGEに対して2モル
%)を、そして実施例16の場合はテトラn−ブチルホ
スホニウムブロマイド(以下「TBPB」と略記)0.
014g(0.04ミリモル、触媒濃度:PGEに対し
て2モル%)を使用したこと以外は、実施例2と全く同
様にしてPCへのPGEの挿入反応を行った。得られた
白色のポリマーの収量、MnおよびMw/Mn、ならび
1H−NMRスペクトルデータから求められた挿入率
は、それぞれ、表2に示す通りであった。また、実施例
13〜16において、得られたポリマーについてIR測
定、 1H−NMR測定および13C−NMR測定を行った
結果から、得られた白色のポリマーは、それぞれ、前記
一般式(X)で表わされる定序性ポリアリール−アルキ
ルカーボネートであることが判った。さらに、実施例1
2〜16の結果および前述の実施例2の結果から、触媒
としてTBPC、TBACおよびTBAAcを使用した
場合、高い挿入率と比較的高分子量のポリマーが得られ
るが、TBAB、TBPBおよびTBAIを使用した場
合は、TBAB,TBPB>TBAIの順に挿入率およ
び分子量が減少していくことが判った。これは、挿入反
応が触媒の対アニオンの求核性に大きく依存しているこ
とによるものと考えられる。
【0089】
【表2】
【0090】実施例17〜19 触媒として、TBPC0.012g(0.04ミリモ
ル、触媒濃度:PGEに対して2モル%)に代えて、実
施例17の場合は18−クラウン−6−エーテル/塩化
カリウム錯体(以下「18−C−6/KCl錯体」と略
記)0.014g〔0.04ミリモル(18−C−6:
KCl=0.011g:0.003g)、触媒濃度:P
GEに対して2モル%〕を、実施例18の場合は18−
クラウン−6−エーテル/臭化カリウム錯体(以下「1
8−C−6/KBr錯体」と略記)0.016g〔0.
04ミリモル(18−C−6:KBr=0.011g:
0.005g)、触媒濃度:PGEに対して2モル%〕
を、そして実施例19の場合は18−クラウン−6−エ
ーテル/ヨウ化カリウム錯体(以下「18−C−6/K
I錯体」と略記)0.018g〔0.04ミリモル(1
8−C−6:KI=0.011g:0.007g)、触
媒濃度:PGEに対して2モル%〕を使用したこと以外
は、実施例2と全く同様にしてPCへのPGEの挿入反
応を行った。得られた白色のポリマーの収量、Mnおよ
びMw/Mn、ならびに 1H−NMRスペクトルデータ
から求められた挿入率は、それぞれ、表3に示す通りで
あった。また、実施例17〜19において、得られたポ
リマーについてIR測定、 1H−NMR測定および13
−NMR測定を行った結果から、得られた白色のポリマ
ーは、それぞれ、前記一般式(X)で表わされる定序性
ポリアリール−アルキルカーボネートであることが判っ
た。
【0091】比較例1 触媒としてのTBPCの添加量を0.012g(0.0
4ミリモル、触媒濃度:PGEに対して2モル%)に変
えて0gにしたこと、すなわち、触媒を全く添加しなか
ったこと以外は、実施例2と全く同様の操作を行った。
得られたポリマーの 1H−NMRスペクトルデータから
求められた挿入率は、表3に示す如く、0%であり、目
的生成物のポリアリール−アルキルカーボネートが全く
得られなかったことが確認された。
【0092】比較例2 触媒として、TBPC0.012g(0.04ミリモ
ル、触媒濃度:PGEに対して2モル%)に代えて、T
EA0.004g(0.04ミリモル、触媒濃度:PG
Eに対して2モル%)を使用したこと以外は、実施例2
と全く同様の操作を行った。得られたポリマーの 1H−
NMRスペクトルデータから求められた挿入率は、表3
に示す如く、0%であり、目的生成物のポリアリール−
アルキルカーボネートが全く得られなかったことが確認
された。これは、挿入反応が触媒の対アニオンの求核性
に大きく依存しているのに対し、TEAが求核性の低い
対アニオンを有する触媒であることによるものと考えら
れる。
【0093】比較例3 触媒として、TBPC0.012g(0.04ミリモ
ル、触媒濃度:PGEに対して2モル%)に代えて、テ
トラn−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェー
ト(以下「TBAPF6 」と略記)0.016g(0.
04ミリモル、触媒濃度:PGEに対して2モル%)を
用いたこと以外は、実施例2と全く同様の操作を行っ
た。得られたポリマーの 1H−NMRスペクトルデータ
から求められた挿入率は、表3に示す如く、0%であ
り、目的生成物のポリアリール−アルキルカーボネート
が全く得られなかったことが確認された。これは、挿入
反応が触媒の対アニオンの求核性に大きく依存している
のに対し、TBAPF6 が求核性の低い対アニオンを有
する第四オニウム塩触媒であることによるものと考えら
れる。
【0094】
【表3】
【0095】実施例20〜24 反応溶媒のクロロベンゼンの量を1.25ml(モノマ
ー濃度:0.8ml/l)に代えて、実施例20の場合
は5ml(モノマー濃度:0.2ml/l)、実施例2
1の場合は2.5ml(モノマー濃度:0.4ml/
l)、実施例22の場合は2ml(モノマー濃度:0.
5ml/l)、実施例23の場合は1.67ml(モノ
マー濃度:0.6ml/l)、そして実施例24の場合
は1.43ml(モノマー濃度:0.7ml/l)にし
たこと以外は、実施例17と全く同様の操作を行った。
得られた白色のポリマーの収量、MnおよびMw/M
n、ならびに 1H−NMRスペクトルデータから求めら
れた挿入率は、それぞれ、表4に示す通りであった。ま
た、実施例20〜24において、得られたポリマーにつ
いてIR測定、 1H−NMR測定および13C−NMR測
定を行った結果から、得られた白色のポリマーは、それ
ぞれ、前記一般式(X)で表わされる定序性ポリアリー
ル−アルキルカーボネートであることが判った。実施例
20〜24の結果から、触媒として18−C−6/KC
l錯体を用いたPCへのPGEの挿入反応においては、
触媒としてTBPCを用いた場合(前記実施例2〜5の
場合)と同様、モノマー濃度が高くなる(すなわち、反
応溶媒の量が減少する)につれて、得られるポリマーの
分子量および挿入率は増大していく傾向にあるが、モノ
マー濃度が0.7mol/lのとき、挿入率が最大の1
00%に達することが判った。
【0096】実施例25および26 反応時間を24時間に変えて、実施例25の場合は12
時間、実施例26の場合は72時間にしたこと以外は、
実施例17と全く同様にして、PCへのPGEの挿入反
応を行った。得られた白色のポリマーの収量、Mnおよ
びMw/Mn、ならびに 1H−NMRスペクトルデータ
から求められた挿入率は、それぞれ、表4に示す通りで
あった。また、実施例25および26において、得られ
たポリマーについてIR測定、 1H−NMR測定および
13C−NMR測定を行った結果から、得られた白色のポ
リマーは、それぞれ、前記一般式(X)で表わされる定
序性ポリアリール−アルキルカーボネートであることが
判った。実施例25および26の結果、ならびに前述の
実施例17の結果から、反応時間を延ばすにつれて、得
られるポリマーの分子量および挿入率は増大する傾向が
見られるが、分子量分布もしだいに幅広くなることが判
明した。また、72時間後の反応溶液は非常に粘性の高
いものであった。
【0097】
【表4】
【0098】実施例27 反応溶媒をクロロベンゼン1.25ml(モノマー濃
度:0.8mol/l)に代えて、アニソール1.25
ml(モノマー濃度:0.8mol/l)にしたこと以
外は、実施例2と全く同様の操作を行い、0.54g
(収率:98%)の白色ポリマーを得た。このポリマー
のMnおよびMw/Mnは、それぞれ、表5に示すよう
に、12100および1.80であった。また、得られ
たポリマーの 1H−NMRスペクトルデータから求めら
れた挿入率は93%であった。さらに、得られたポリマ
ーについてIR測定、 1H−NMR測定および13C−N
MR測定を行った結果から、得られた白色のポリマー
は、それぞれ、前記一般式(X)で表わされる定序性ポ
リアリール−アルキルカーボネートであることが判っ
た。
【0099】実施例28〜30 実施例28、29および30において、反応溶媒をクロ
ロベンゼン1.25ml(モノマー濃度:0.8mol
/l)に代えて、それぞれ、DMAc1.25ml(モ
ノマー濃度:0.8mol/l)、DMF1.25ml
(モノマー濃度:0.8mol/l)およびNMP1.
25ml(モノマー濃度:0.8mol/l)にしたこ
と以外は、実施例2と全く同様の操作を行った。得られ
た白色のポリマーの収量、MnおよびMw/Mn、なら
びに 1H−NMRスペクトルデータから求められた挿入
率は、それぞれ、表5に示す通りであった。また、実施
例28〜30において、得られたポリマーについてIR
測定、 1H−NMR測定および13C−NMR測定を行っ
た結果から、得られた白色のポリマーは、それぞれ、前
記一般式(X)で表わされる定序性ポリアリール−アル
キルカーボネートであることが判った。実施例27〜3
0の結果および前述の実施例2の結果から、クロロベン
ゼンやアニソールのような非プロトン性非極性溶媒を用
いた場合、得られるポリマーの分子量および挿入率は比
較的高いものとなるが、その他の非プロトン性極性溶媒
を用いると、得られるポリマーの分子量および挿入率は
低いものとなることが判った。これは、極性溶媒中の水
による得られたポリマーの加水分解や、極性溶媒が求核
種として働き、求核性の高い対アニオンを有する触媒を
用いた場合と同様な副反応を引き起こし、挿入率の低下
や分子量の減少を招いたものと考えられる。
【0100】実施例31〜34 反応時間を72時間に変えて、6時間(実施例31の場
合)、12時間(実施例32の場合)、18時間(実施
例33の場合)および48時間(実施例34の場合)に
したこと以外は、実施例1と全く同様にしてPCへのP
GEの挿入反応を行った。得られた白色のポリマーのM
n、および 1H−NMRスペクトルデータから求められ
た挿入率は、それぞれ、表5に示す通りであった。ま
た、実施例31〜34において、得られたポリマーにつ
いてIR測定、 1H−NMR測定および13C−NMR測
定を行った結果から、得られた白色のポリマーは、それ
ぞれ、前記一般式(X)で表わされる定序性ポリアリー
ル−アルキルカーボネートであることが判った。実施例
31〜34の結果、ならびに前述の実施例1および2の
結果から、得られるポリマーの分子量および挿入率は反
応時間の増加とともに増加していくが、分子量が反応初
期においてMn=5000まで減少しており、反応初期
段階において得られたポリマーの加水分解や副反応が起
こりやすくなっていることが示唆された。
【0101】
【表5】
【0102】実施例35 PGEの使用量を0.300g(2ミリモル)に変えて
0.361g(2.4ミリモル)にしたこと以外は、実
施例2と全く同様にしてPCへのPGEの挿入反応を行
った。得られた白色のポリマーは、収量が0.55g
(収率:99%)であり、Mn=13800、Mw/M
n=1.69であった。また、得られたポリマーの 1
−NMRスペクトルデータから求められた挿入率は10
0%であった。さらに、得られたポリマーについてIR
測定、 1H−NMR測定および13C−NMR測定を行っ
た結果から、得られた白色のポリマーは、前記一般式
(X)で表わされる定序性ポリアリール−アルキルカー
ボネートであることが判った。
【0103】実施例36および37 PGEの使用量を0.300g(2ミリモル)に変え
て、実施例36の場合は0.421g(2.8ミリモ
ル)、実施例37の場合は0.481g(3.2ミリモ
ル)にしたこと以外は、実施例2と全く同様にしてPC
へのPGEの挿入反応を行った。得られた白色のポリマ
ーのMn、および 1H−NMRスペクトルデータから求
められた挿入率は、それぞれ、表6に示す通りであっ
た。また、実施例36および37において、得られたポ
リマーについてIR測定、 1H−NMR測定および13
−NMR測定を行った結果から、得られた白色のポリマ
ーは、それぞれ、前記一般式(X)で表わされる定序性
ポリアリール−アルキルカーボネートであることが判っ
た。実施例35〜37の結果および前述の実施例1の結
果から、過剰にPGEを用いることにより、2当量を用
いた場合よりも短時間で挿入率が100%に達すること
が判った。また、PGEを過剰に用いても挿入率は10
0%を越えず、既に2分子のPGEが挿入したポリアリ
ール−アルキルカーボネートには挿入反応が全く起こら
ないことが明らかとなった。しかしながら、分子量は、
PGEを過剰に用いるほど減少する傾向が見られ、これ
は、PGEの量が増加すれば、PGE中に存在する水の
量も増加するため、その分加水分解による分子量の減少
も起こりやすくなっているものと考えられる。
【0104】
【表6】
【0105】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、優
れた機械的強度、耐熱性、耐老化性および反応性などを
有する新規な定序性ポリアリール−アルキルカーボネー
トが得られる。また、本発明の方法によれば、ポリアリ
ールカーボネートへのオキシラン類の挿入反応を、第四
オニウム塩触媒あるいはクラウンエーテル錯体触媒の存
在下に温和な条件で、副反応を抑制しながら定量的かつ
位置選択的に行うことができ、よって、上記ポリアリー
ル−アルキルカーボネートを効率よく製造することがで
きる。したがって、本発明の新規なポリアリール−アル
キルカーボネートは、上述の特性を利用して家庭用品、
建築材料、自動車部品、工具類、機械部品、電気器具、
電気絶縁材料などの各種成形品、ラミネート剤、コーテ
ィング剤、フィルム、シート品、エポキシ樹脂の硬化剤
などの用途分野に使用することができ、特に、該ポリマ
ーの高い反応性を利用することによって、新しい機能性
高分子の優れた合成原料としての用途が大いに期待され
得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたポリアリール−アルキルカ
ーボネートのIRスペクトルと原料のポリアリールカー
ボネートのIRスペクトルを比較して示した図である。
【図2】実施例1で得られたポリアリール−アルキルカ
ーボネートの 1H−NMRスペクトルと原料のポリアリ
ールカーボネートの 1H−NMRスペクトルを比較して
示した図である。
【図3】実施例1で得られたポリアリール−アルキルカ
ーボネートの13C−NMRスペクトルと原料のポリアリ
ールカーボネートの13C−NMRスペクトルを比較して
示した図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I) 【化1】 (ただし、一般式(I)中、R1 およびR2 は、それぞ
    れ、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
    3 は、 【化2】 および 【化3】 からなる群から選択される置換基(ここに、R4 はアリ
    ル基、アクリロイル基、メタクリロイル基もしくは1〜
    4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R5および
    6 は、それぞれ、1〜4個の炭素原子を有するアルキ
    ル基であり、cおよびdは、それぞれ、0〜5の整数で
    ある)であり、aおよびbは、それぞれ、0〜4の整数
    であり、かつnは、2以上の整数である。なお、R1
    2 およびR4 〜R6 は互いに同一でも異なっていても
    よい)、または、下記一般式(II) 【化4】 (ただし、一般式(II)中、R1 、R2 、aおよびb
    は、それぞれ、前記一般式(I)におけるR1 、R2
    aおよびbと同じ意味を表わす)で表わされる新規なポ
    リアリール−アルキルカーボネート。
  2. 【請求項2】 反応触媒として第四オニウム塩あるいは
    クラウンエーテル錯体の存在下に、下記一般式(III) 【化5】 (式中、R1 およびR2 は、それぞれ、1〜4個の炭素
    原子を有するアルキル基であって、互いに同一でも異な
    っていてもよく、aおよびbは、それぞれ、0〜4の整
    数であり、かつnは、2以上の整数である)で示される
    ポリアリールカーボネートに対して、シクロヘキセンオ
    キシドおよび下記一般式(IV) 【化6】 (ただし、一般式(IV)中、R3 は、 【化7】 および 【化8】 からなる群から選択される置換基であり、R4 はアリル
    基、アクリロイル基、メタクリロイル基もしくは1〜4
    個の炭素原子を有するアルキル基、そしてR5 およびR
    6 は、それぞれ、1〜4個の炭素原子を有するアルキル
    基であって、R4〜R6 は互いに同一でも異なっていて
    もよく、cおよびdは、それぞれ、0〜5の整数であ
    る)で示される化合物からなる群から選ばれる1種のオ
    キシラン類を前記ポリアリールカーボネート1モル当た
    り2〜10モルの割合で挿入反応せしめることを特徴と
    する、請求項1に記載の新規なポリアリール−アルキル
    カーボネートの製造方法。
  3. 【請求項3】 反応触媒がテトラn−ブチルアンモニウ
    ムクロライド、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイ
    ド、テトラn−ブチルアンモニウムアイオダイド、テト
    ラn−ブチルアンモニウムアセテート、テトラn−ブチ
    ルホスホニウムクロライド、テトラn−ブチルホスホニ
    ウムブロマイド、テトラn−ブチルホスホニウムアイオ
    ダイド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テト
    ラフェニルホスホニウムブロマイドおよびテトラフェニ
    ルホスホニウムアイオダイドからなる群から選ばれる1
    種または2種以上の第四ホスホニウム塩であることを特
    徴とする、請求項2に記載の新規なポリアリール−アル
    キルカーボネートの製造方法。
  4. 【請求項4】 反応触媒が18−クラウン−6−エーテ
    ル/塩化カリウム錯体、18−クラウン−6−エーテル
    /臭化カリウム錯体および18−クラウン−6−エーテ
    ル/ヨウ化カリウム錯体からなる群から選ばれる1種ま
    たは2種以上のクラウンエーテル錯体であることを特徴
    とする、請求項2に記載の新規なポリアリール−アルキ
    ルカーボネートの製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013060553A (ja) * 2011-09-14 2013-04-04 Sekisui Chem Co Ltd エピスルフィド樹脂材料及び多層基板
TWI821053B (zh) * 2022-11-29 2023-11-01 上緯創新育成股份有限公司 含碳酸酯之寡聚物、其製備方法及固化物

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