JPH10182488A - 抗il−8抗体を有効成分として含有する敗血症治療剤 - Google Patents

抗il−8抗体を有効成分として含有する敗血症治療剤

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JPH10182488A
JPH10182488A JP23142297A JP23142297A JPH10182488A JP H10182488 A JPH10182488 A JP H10182488A JP 23142297 A JP23142297 A JP 23142297A JP 23142297 A JP23142297 A JP 23142297A JP H10182488 A JPH10182488 A JP H10182488A
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chain
therapeutic agent
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JP23142297A
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Masaki Kitajima
政樹 北島
Takeshi Wakabayashi
剛 若林
Tsunaharu Matsushima
綱治 松島
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Chugai Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Chugai Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 新規な敗血症治療剤の提供。 【解決手段】 抗IL-8抗体を有効成分として含有する敗
血症の治療剤を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は抗インターロイキン
-8(IL-8)抗体を有効成分として含有する敗血症および
敗血症性ショック治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】IL-8は、C-X-C ケモカインサブファミリ
ーに属する蛋白質であり、以前は単球由来好中球遊走因
子(monocyte-derived neutrophil chemotactic facto
r)、好中球活性化蛋白−1(neutrophil attractant/a
ctivation protein-1)、好中球活性化因子(neutrophi
l activating factor)等と呼称されていた。
【0003】IL-8は、好中球の活性化・遊走を誘導する
因子であり、IL- 1βやTNF-α等の炎症性サイトカイン
(Koch, A. E. et al., J. Investig. Med. (1995) 43,
28-38;Larsen, C. G. et al., Immunology (1989) 6
8, 31-36 )やPMA 、LPS 等のマイトゲン(Yoshimura,
T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1987) 8
4, 9233-9237)、さらにはカドミウム等の重金属(Hori
guchi, H. et al., Lymphokine Cytokine Res. (1993)
12, 421-428 )等の刺激によって様々な細胞から産生さ
れる。また、低酸素状態に置かれたヒト臍帯静脈内皮細
胞がIL-8を発現することも知られている(Karakurum,
M. et al., J. Clin. Invest. (1994) 93,1564-1570
)。
【0004】IL-8がその生物活性を発現するには、IL-8
がIL-8レセプターに結合して、IL-8レセプターを発現し
ている細胞を刺激する必要がある。IL-8が結合して細胞
内にシグナルを伝達するIL-8レセプターは既にクローニ
ングされ、そのアミノ酸配列も明らかにされている。ヒ
トIL-8レセプターには、IL-8レセプターA (IL-8レセプ
ターα,IL-8レセプター2あるいはCXCR1)と呼称され
るレセプターと、IL-8レセプターB (IL-8レセプター
β,IL-8レセプター1あるいはCXCR2)と呼称されるレ
セプターが存在する(Murphy, P. M. and Tiffany, H.
L., Science (1991) 253, 1280-1283 ;Holmes, W. E.
et al., Science (1991) 253, 1278-1280)。
【0005】両者は共に細胞膜を7回貫通する構造をし
ていることが想定されており、両者共に細胞質内ドメイ
ンでGTP 結合蛋白に会合し(Horuk, R., Trends Pharma
col.Sci. (1994) 15, 159-165)、細胞内にIL-8のシグ
ナルを伝達している。従って、IL-8とIL-8レセプターと
の結合を阻害することにより、IL-8の生物活性を阻害す
ることが可能になる。
【0006】1991年、米国集中治療医学会(Society of
Critical Care Medicine) と米国胸部疾患医学会(Ameri
can College of Chest Physicians)の合同でコンセンサ
スカンファレンスが開催され、全身性炎症反応症候群(S
ystemic Inflammatory Response Syndrome : SIRS)とい
う疾患概念が提唱された。すなわち、外傷、熱傷、重症
膵炎、感染などの侵襲に対する生体反応で、下記の診断
4 項目のうち、いずれか2つ以上の臨床所見を有する病
態に診断される(Bone, R. C. et al., Chest(1992) 10
1, 1644-1655)。
【0007】(1)体温が38℃より高い、または36℃未
満 (2)心拍数が90回/ 分より多い (3)呼吸数が20回/ 分より多い、またはPaCO2 (動脈
血二酸化炭素分圧)が32torr未満 (4)白血球数が12000/μl より多い、または 4000/μ
l 未満、あるいは未熟白血球が10% より多い
【0008】敗血症とは、上記SIRSの診断4項目のう
ち、いずれか2つ以上の臨床所見を有し、かつ、感染が
原因である疾患である。感染の原因となる病原体の証明
はあってもよいし、なくてもよい。外傷、熱傷、重症膵
炎は、直接的原因が感染でないことにより敗血症と区別
される。また、敗血症性ショックとは、敗血症におい
て、十分な循環体液量は維持されているにもかかわら
ず、低血圧などの灌流異常を伴う疾患である。敗血症が
進行すれば数時間のうちに敗血症性ショックとなり、全
末梢血管抵抗の低下、心筋収縮力の低下、末梢循環不
全、血圧低下などを呈する。
【0009】敗血症患者の血清あるいは血漿中には、サ
イトカイン類としてIL-1β, IL-6,IL-8, TNF-αなどの
炎症性サイトカイン(Thijs, L. G. and Hack, C. E., I
ntensive Care Med. (1995) 21 Suppl 2, 258-263,) 、
さらにはIL-8に加えMCP-1, MCP-2, MIP-1αなどのケモ
カインの産生が上昇していることが報告されている(Bos
sink, A. W. et al., Blood (1995) 86, 3841-3847:Fu
jishima, S. et al.,Intensive Care Med. (1996) 22,
1169-1175) 。
【0010】また、これらのサイトカイン類以外に、エ
イコサノイドとして、ロイコトリエンB4、トロンボキサ
ンB2、プロスタグランジンが正常値よりも高く、また、
補体系も活性化されていることが報告されている(Takak
uwa, T. et al., Res Commun. Chem. Pathol. Pharmaco
l. (1994) 84, 291-300)。以上のように、敗血症の攻撃
因子としては多種の因子が関与し、複雑に関連して敗血
症の病態を決定していると想定されている。従って、抗
IL-8抗体が敗血症ならびに敗血症性ショックに対して治
療効果を有することは何ら知られていなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】現在、敗血症に対して
は体内の感染巣の存在を検索し、外科的な排膿・切除
や、抗生物質療法が行われている。また敗血症性ショッ
クに対しては昇圧剤やステロイドが用いられている(図
説病態内科講座 [第17巻] 感染症、メディカルビュー
社、96-97 頁)。しかしながら、現在なお、敗血症の患
者の全体の死亡率は25-90%に上っている(メルクマニュ
アル日本語版第1 版、メディカルビュー社、73頁)。こ
のことは、これら治療法および治療剤の有効性に限界が
あることを示している。従って、有効な治療薬の開発が
要望されていた。
【0012】本発明の目的は、かかる疾患のための新し
い治療剤を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる治
療剤を提供すべく鋭意研究を重ねた結果、抗IL-8抗体に
より、所期の目的が達成されることを見出し、本発明を
完成するに至った。すなわち、本発明は、抗IL-8抗体を
有効成分として含有する、敗血症治療剤を提供する。本
発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分として含有する、敗
血症性ショック治療剤を提供する。
【0014】本発明はまた、抗IL-8モノクローナル抗体
を有効成分として含有する、敗血症または敗血症性ショ
ック治療剤を提供する。本発明はまた、哺乳類のIL-8に
対する抗体を有効成分として含有する、敗血症または敗
血症性ショック治療剤を提供する。本発明はまた、ヒト
IL-8に対する抗体を有効成分として含有する、敗血症ま
たは敗血症性ショック治療剤を提供する。
【0015】本発明はまた、WS-4抗体を有効成分として
含有する、敗血症または敗血症性ショック治療剤を提供
する。本発明はまた、ヒト抗体定常領域を有する抗IL-8
抗体を有効成分として含有する、敗血症または敗血症性
ショック治療剤を提供する。本発明はまた、ヒト型化ま
たはキメラ化された抗IL-8抗体を有効成分として含有す
る、敗血症または敗血症性ショック治療剤を提供する。
【0016】本発明はまた、ヒト型化WS-4抗体を有効成
分として含有する、敗血症または敗血症性ショック治療
剤を提供する。本発明はまた、抗IL-8抗体を有効成分と
して含有する、敗血症性ショックにおける動脈血圧低下
改善剤を提供する。本発明はさらに、抗IL-8抗体を有効
成分として含有する、敗血症性ショックにおける呼吸数
増加軽減剤を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
1. 抗IL-8抗体 本発明で使用される抗IL-8抗体は、敗血症および敗血症
性ショックの治療効果を有するものであれば、その由
来、種類(モノクローナル、ポリクローナル)および形
状を問わない。
【0018】本発明で使用される抗IL-8抗体は、公知の
手段を用いてポリクローナルまたはモノクローナル抗体
として得ることができる。本発明で使用される抗IL-8抗
体として、特に哺乳動物由来のモノクローナル抗体が好
ましい。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、
ハイブリドーマに産生される抗体、および、抗体遺伝子
を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生される組
換え型抗体がある。本発明で使用される抗IL-8抗体はIL
-8と結合することにより、好中球等に発現されているIL
-8レセプターへの結合を阻害してIL-8のシグナル伝達を
遮断し、IL-8の生物学的活性を阻害する抗体である。
【0019】このような抗体としては、WS-4抗体(Ko,
Y. et al., J. Immunol. Methods (1992) 149, 227-23
5)やDM/C7 抗体(Mulligan, M. S. et al., J. Immuno
l. (1993) 150, 5585-5595)、Pep-1 抗体およびPep-3
抗体(国際特許出願公開番号WO92/04372 )または6G4.
2.5 抗体およびA5.12.14抗体(国際特許出願公開番号WO
95/23865 ;Boylan, A.M. et al., J. Clin. Invest.
(1992) 89, 1257-1267)等が挙げられる。これらのうち
で、特に好ましい抗体としてWS-4抗体が挙げられる。
【0020】なお、WS-4抗体産生ハイブリドーマ細胞株
は、Mouse hybridoma WS-4として、工業技術院生命工学
工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)
に、1996年4 月17日に、FERM BP-5507としてブダペスト
条約に基づき国際寄託されている。
【0021】2. ハイブリドーマに産生される抗体 モノクローナル抗体は、基本的には公知技術を使用し、
以下のようにしてハイブリドーマを作製して得ることが
できる。すなわち、IL-8を感作抗原として使用して、こ
れを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫
細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合さ
せ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな
抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製で
きる。
【0022】具体的には、モノクローナル抗体を作製す
るには次のようにすればよい。
【0023】例えば、抗体取得の感作抗原として使用さ
れるIL-8は、ヒトIL-8については、Matsushima, K. et
al., J. Exp. Med. (1988) 167, 1883-1893 に、ウサギ
IL-8についてはHarada, A. et al., Int. Immunol. (19
93) 5, 681-690に、イヌIL-8についてはIshikawa, J. e
t al., Gene (1993) 131, 305-306 に、ヒツジIL-8につ
いてはSeow, H.F. et al., Immunol. Cell Biol. (199
4) 72, 398-405 に、サルIL-8についてはVillinger, F.
et al., J. Immunol. (1995) 155, 3946-3954に、モル
モットIL-8については Yoshimura, T. and Johnson,
D. G., J. Immunol . (1993) 151, 6225-6236に、ブタI
L-8についてはGoodman, R.B. et al., Biochemistry (1
992) 31, 10483-10490 に開示された、それぞれのIL-8
遺伝子/アミノ酸配列を用いることによって得られる。
【0024】ヒトIL-8は、種々の細胞で産生され、N 末
端において異なるプロセシングを受けることが報告され
ている(Leonard, E. J. et al., Am. J. Respir. Cel
l. Mol. Biol. (1990) 2, 479-486)。これまでに、7
9、77、72、71、70および69のアミノ酸残基数を有する
ヒトIL-8が知られているが、本発明で使用される抗IL-8
抗体取得のための抗原として使用され得る限りそのアミ
ノ酸残基数を問わない。
【0025】IL-8の遺伝子配列を公知の発現ベクター系
に挿入して適当な宿主細胞を形質転換させた後、その宿
主細胞中または、培養上清中から目的のIL-8蛋白質を公
知の方法で精製し、この精製IL-8蛋白質を感作抗原とし
て用いればよい。
【0026】感作抗原で免疫される哺乳動物としては、
特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親
細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般
的にはげっ歯目、ウサギ目、霊長目の動物が使用され
る。げっ歯目の動物としては、例えば、マウス、ラッ
ト、ハムスター等が使用される。ウサギ目の動物として
は、例えば、ウサギが使用される。霊長目の動物として
は、例えば、サルが使用される。サルとしては、例えば
狭鼻下目のサル(旧世界ザル)、より詳しくは、カニク
イザル、アカゲザル、マントヒヒ、チンパンジー等が使
用される。
【0027】感作抗原を動物に免疫するには、公知の方
法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、
感作抗原を哺乳動物の腹腔内または、皮下に注射するこ
とにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS (Phos
phate-Buffered Saline )や生理食塩水等で適当量に希
釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例
えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化
後、哺乳動物に4-21日毎に数回投与するのが好ましい。
また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することがで
きる。
【0028】このように免疫し、血清中に所望の抗体レ
ベルが上昇するのを常法により確認した後に、哺乳動物
からリンパ節細胞または脾細胞等の免疫細胞が取り出さ
れ、細胞融合に付されるが、好ましい免疫細胞として
は、特に脾細胞が挙げられる。
【0029】前記免疫細胞と融合される他方の親細胞と
しての哺乳動物のミエローマ細胞としては、既に公知の
種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(Kearney,
J.F. et al., J. Immnol. (1979) 123, 1548-1550
)、P3x63Ag8U.1 (Yelton, D.E. et al., Current To
pics in Microbiology and Immunology (1978) 81, 1-
7)、NS-1(Kohler, G. and Milstein, C., Eur. J. Im
munol. (1976) 6, 511-519 )、MPC-11(Margulies, D.
H. et al., Cell (1976) 8, 405-415 )、SP2/0(Shul
man, M. et al., Nature (1978) 276, 269-270)、FO
(de St. Groth, S.F. and Scheidegger, D., J. Immun
ol. Methods (1980) 35, 1-21)、S194(Trowbridge,
I. S., J. Exp. Med. (1978) 148, 313-323 )、R210
(Galfre, G.etal., Nature (1979) 277, 131-133)等
が好適に使用される。
【0030】前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合
は基本的には公知の方法、例えば、ミルステインらの方
法(Galfre, G. and Milstein, C., Methods Enzymol.
(1981) 73, 3-46 )等に準じて行うことができる。より
具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の
存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤
としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG )、セ
ンダイウィルス(HVJ )等が使用され、更に所望により
融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助
剤を添加使用することもできる。
【0031】免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合
は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1-10倍
とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液とし
ては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRP
MI1640培養液、MEM 培養液、その他、この種の細胞培養
に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、
牛胎児血清(FCS )等の血清補液を併用することもでき
る。
【0032】細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細
胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃
程度に加温したPEG 溶液、例えば、平均分子量1000-600
0 程度のPEG 溶液を通常、30-60%(w/v )の濃度で添加
し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブ
リドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次
添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことに
よりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等
を除去できる。
【0033】当該ハイブリドーマは、通常の選択培養
液、例えば、HAT 培養液(ヒポキサンチン、アミノプテ
リンおよびチミジンを含む培養液)で培養することによ
り選択される。当該HAT 培養液での培養は、目的とする
ハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するの
に十分な時間、通常数日〜数週間継続する。ついで、通
常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハ
イブリドーマのスクリーニングおよびクローニングが行
われる。
【0034】また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上
記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をin vitro
でIL-8に感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久***能
を有するミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、IL-8
への結合活性を有する所望のヒト抗体を産生するハイブ
リドーマを得ることもできる(特公平1-59878 参照)。
さらに、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトラン
スジェニック動物に抗原となるIL-8を免疫して抗IL-8抗
体産生細胞を取得し、これをミエローマ細胞と融合させ
たハイブリドーマを用いてIL-8に対するヒト抗体を取得
してもよい(国際特許出願公開番号WO 92/03918 、WO 9
3/12227 、WO 94/02602 、WO 94/25585、WO 96/33735
およびWO 96/34096 参照)。
【0035】このようにして作製されるモノクローナル
抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継
代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期
保存することが可能である。当該ハイブリドーマからモ
ノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマ
を通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得
る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある
哺乳動物に移植して増殖させ、その腹水として得る方法
などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得る
のに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産
に適している。
【0036】ハイブリドーマを用いて抗体を産生する以
外に、抗体を産生する感作リンパ球等の免疫細胞を癌遺
伝子(oncogene)により不死化させた細胞を用いてもよ
い。
【0037】3. 組換え型抗体 モノクローナル抗体はまた、遺伝子組換え技術を用いて
産生させた組換え型抗体として得ることができる。例え
ば、組換え型抗体は、抗体遺伝子をハイブリドーマまた
は抗体を産生する感作リンパ球等の免疫細胞からクロー
ニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に
導入し産生させる。本発明には、この組換え型抗体を用
いることができる(例えば、Borrebaeck, C. A. K. and
Larrick, J. W., THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIE
S, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PU
BLISHERS LTD. 1990 参照)。
【0038】具体的には、抗IL-8抗体を産生するハイブ
リドーマから、抗IL-8抗体の可変領域(V 領域)をコー
ドするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例
えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. et al.,
Biochemistry (1979) 18, 5294-5299 )、AGPC法(Chom
czynski, P. and Sacchi, N., Anal. Biochem. (1987)
162, 156-159)等により全RNA を調製し、mRNA Purific
ation Kit (Pharmacia )等を使用して全RNA からmRNA
を精製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit
(Pharmacia )を用いることによりmRNAを直接調製する
こともできる。
【0039】得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体
V 領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse
Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生
化学工業)等を用いて行うこともできる。また、cDNAの
合成および増幅を行うには5'-Ampli FINDER RACE Kit
(Clontech)およびポリメラーゼ連鎖反応(polymerase
chain reaction ;PCR )を用いた5'-RACE 法(Frohma
n, M. A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (19
88) 85, 8998-9002 ;Belyavsky, A. et al.,Nucleic A
cids Res. (1989) 17, 2919-2932 )を使用することが
できる。
【0040】得られたPCR 産物から目的とするDNA 断片
を精製し、ベクターDNA と連結する。さらに、これより
組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入してコロニー
を選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とす
るDNA の塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌ
クレオチドチェインターミネーション法により確認す
る。
【0041】目的とする抗IL-8抗体のV 領域をコードす
るDNA が得られれば、これを所望の抗体定常領域(C 領
域)をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターへ
組み込む。または、抗体V 領域をコードするDNA を、抗
体C 領域のDNA を既に含む発現ベクターに組み込んでも
よい。抗体C 領域としては、V 領域と同じ動物種由来の
抗体C 領域を用いてもよいし、V 領域と異なる動物種由
来の抗体C 領域を用いてもよい。
【0042】本発明で使用される抗IL-8抗体を製造する
には、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサ
ー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベク
ターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細
胞を形質転換し、抗体を発現させる。抗体遺伝子の発現
は、抗体の重鎖(H 鎖)または軽鎖(L 鎖)をコードす
るDNA を別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同
時形質転換させてもよいし、あるいはH 鎖およびL 鎖を
コードするDNA を単一の発現ベクターに組み込んで、宿
主細胞を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号
WO 94/11523 参照)。
【0043】4. 改変抗体 本発明で使用される組換え型抗体は、ヒトに対する異種
抗原性を低下させること等を目的として遺伝子工学的手
法を用いて作製した改変抗体を使用することができる。
改変抗体はヒト抗体C 領域を有し、例えば、キメラ(Ch
imeric)抗体、ヒト型化(Humanized )抗体を使用でき
る。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造する
ことができる。
【0044】キメラ抗体は、前記のようにして得た、ヒ
ト抗体以外の抗体V 領域をコードするDNA をヒト抗体C
領域をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターに
組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる
(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開
番号WO96/02576参照)。この既知の方法を用いて、本発
明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
【0045】なお、キメラWS-4抗体のL 鎖またはH 鎖を
含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia co
li DH5α(HEF-chWS4L-gκ)およびEscherichia coli J
M109(HEF-chWS4H-gγ1 )として、工業技術院生命工学
工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)
に、1994年7 月12日に、各々FERM BP-4739およびFERM B
P-4740としてブダペスト条約に基づき国際寄託されてい
る。
【0046】ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト
抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗
体の相補性決定領域(complementarity determining re
gion;CDR )をヒト抗体のCDR へ移植したものであり、
その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特
許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO96
/02576 参照)。
【0047】具体的には、マウス抗体のCDR とヒト抗体
のフレームワーク領域(frameworkregion;FR)を連結
するように設計したDNA 配列を、末端部で互いにオーバ
ーラップする部分を有する数本のオリゴヌクレオチドに
分割して合成し、PCR 法により一本に統合したDNA に合
成する。得られたDNA をヒト抗体C 領域をコードするDN
A と連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを
宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許
出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 96/
02576 参照)。
【0048】CDR を介して連結されるヒト抗体のFRは、
CDR が良好な抗原結合部位を形成するものが選択され
る。必要に応じ、ヒト型化抗体のCDR が適切な抗原結合
部位を形成するように抗体V 領域のFRのアミノ酸を置換
してもよい(Sato, K. et al.,Cancer Res. (1993) 53,
851-856 )。本発明に使用されるヒト型化抗体の好ま
しい具体例としては、ヒト型化WS-4抗体が挙げられる
(国際特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。ヒト型化
WS-4抗体は、マウス由来のWS-4抗体のCDR を、L 鎖につ
いてはヒト抗体REI のFRと、H 鎖についてはヒト抗体VD
H26 のFR1-3 およびヒト抗体4B4 のFR4 と連結し、抗原
結合活性を有するようにFRのアミノ酸残基を一部置換し
たものである。
【0049】なお、ヒト型化WS-4抗体のL 鎖またはH 鎖
を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia
coli DH5α(HEF-RVLa-gκ)およびEscherichia coli J
M109(HEF-RVHg-gγ1 )として、工業技術院生命工学工
業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、
1994年7 月12日に、各々FERM BP-4738およびFERM BP-47
41としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている。
【0050】本発明で使用される抗IL-8抗体を製造する
には、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサ
ー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベク
ターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細
胞を形質転換し、抗体を発現させる。
【0051】抗体遺伝子の発現は、抗体の重鎖(H 鎖)
または軽鎖(L 鎖)をコードするDNA を別々に発現ベク
ターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよい
し、あるいはH 鎖およびL 鎖をコードするDNA を単一の
発現ベクターに組み込んで、宿主細胞を形質転換させて
もよい(国際特許出願公開番号WO 94/11523 参照)。キ
メラ抗体はヒト以外の哺乳動物抗体由来のV 領域とヒト
抗体由来のC 領域からなり、ヒト型化抗体はヒト以外の
哺乳動物抗体由来のCDR とヒト抗体由来のFRおよびC 領
域からなり、ヒト以外の哺乳動物に由来するアミノ酸配
列が最小限度に減少しているため、ヒト体内における抗
原性が低下し、本発明の治療剤の有効成分として有用で
ある。
【0052】使用されるヒト抗体C 領域としては、例え
ば、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4を使用することが
できる。また、抗体またはその産生の安定性を改善する
ために、ヒト抗体C 領域を修飾してもよい。例えば、抗
体のサブクラスをIgG4に選択する場合、IgG4のヒンジ領
域の一部のアミノ酸配列Cys-Pro-Ser-Cys-Pro をIgG1の
ヒンジ領域のアミノ酸配列Cys-Pro-Pro-Cys-Pro に変換
する事により、IgG4の構造的不安定性を解消できる(An
gal, S. et al., Mol. Immunol. (1993) 30, 105-10
8)。
【0053】5. 抗体断片および抗体修飾物 本発明で使用される抗体は、IL-8に結合し、IL-8の活性
を阻害するかぎり、抗体断片や抗体修飾物であってよ
い。例えば、抗体断片としては、Fab 、F(ab')2、Fvま
たはH 鎖とL 鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシン
グルチェインFv(scFv)が挙げられる。
【0054】具体的には、抗体を酵素、例えば、パパイ
ン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させるか、また
は、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これ
を発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現さ
せる(例えば、Co, M.S. et al., J. Immunol. (1994)
152, 2968-2976;Better, M. and Horwitz, A. H., Met
hods Enzymol. (1989) 178, 476-496 ;Pluckthun, A.
and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497-5
15;Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121,652-66
3;Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986)
121, 663-669 ;Bird, R. E. and Walker, B. W., Tren
ds Biotechnol. (1991) 9, 132-137 参照)。
【0055】scFvは、抗体のH 鎖V 領域とL 鎖V 領域を
連結することにより得られる。このscFvにおいて、H 鎖
V 領域とL 鎖V 領域はリンカー、好ましくは、ペプチド
リンカーを介して連結される(Huston, J. S. et al.,
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879-588
3)。scFvにおけるH 鎖V 領域およびL 鎖V 領域は、上
記抗体として記載されたもののいずれの由来であっても
よい。V 領域を連結するペプチドリンカーとしては、例
えばアミノ酸12-19 残基からなる任意の一本鎖ペプチド
が用いられる。
【0056】scFvをコードするDNA は、前記抗体のH 鎖
または、H 鎖V 領域をコードするDNA 、およびL 鎖また
は、L 鎖V 領域をコードするDNA を鋳型とし、それらの
配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA 部分
を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR 法に
より増幅し、次いで、さらにペプチドリンカー部分をコ
ードするDNA およびその両端を各々H 鎖、L 鎖と連結さ
れるように規定するプライマー対を組み合せて増幅する
ことにより得られる。
【0057】また、一旦scFvをコードするDNA が作製さ
れれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現
ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得る
ことができ、また、その宿主を用いて常法に従って、sc
Fvを得ることができる。
【0058】これら抗体断片は、前記と同様にしてその
遺伝子を取得し発現させ、宿主により産生させることが
できる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれら
の抗体断片も包含される。抗体修飾物として、ポリエチ
レングリコール(PEG )等の各種分子と結合した抗IL-8
抗体を使用することもできる。本願特許請求の範囲でい
う「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。この
ような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な
修飾を施すことによって得ることができる。これらの方
法はこの分野において既に確立されている。
【0059】6. 組換え型抗体、改変抗体、または抗体
断片の発現および産生 前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により
発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、
常用される有用なプロモーター/エンハンサー、発現さ
せる抗体遺伝子、その3'側下流にポリA シグナルを機能
的に結合させたDNA を含む発現ベクターにて発現させる
ことができる。例えばプロモーター/エンハンサーとし
ては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エ
ンハンサー(human cytomegalovirus immediate early
promoter/enhancer )を挙げることができる。
【0060】また、その他に本発明で使用される抗体発
現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レ
トロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、
シミアンウィルス40(SV 40 )等のウィルスプロモータ
ー/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1
α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エ
ンハンサーを用いればよい。
【0061】例えば、SV 40 プロモーター/エンハンサ
ーを使用する場合、Mulligan, R. C. らの方法(Nature
(1979) 277, 108-114)、また、HEF1αプロモーター/
エンハンサーを使用する場合、Mizushima, S. らの方法
(Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)に従えば容易
に実施することができる。
【0062】大腸菌の場合、常用される有用なプロモー
ター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体
遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。
例えばプロモーターとしては、lacZプロモーター、araB
プロモーターを挙げることができる。lacZプロモーター
を使用する場合、Ward, E. S. らの方法(Nature (198
9) 341, 544-546;FASEB J. (1992) 6 , 2422-2427 )
に、またaraBプロモーターを使用する場合、Better, M.
らの方法(Science (1988) 240, 1041-1043 )に従えば
よい。
【0063】抗体分泌のためのシグナル配列としては、
大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル
配列(Lei, S. P. et al., J. Bacteriol. (1987) 169,
4379-4383)を使用すればよい。ペリプラズムに産生さ
れた抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して
(refold)使用する(例えば、国際特許出願公開番号WO
96/30394 参照)。
【0064】複製起源としては、SV 40 、ポリオーマウ
ィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BP
V )等の由来の複製起源を用いることができ、さらに、
宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクター
は選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェ
ラーゼ(APH )遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝
子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランス
フェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素
(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
【0065】本発明で使用される抗体の製造のために、
任意の産生系を使用することができ、抗体製造のための
産生系は、in vitroおよびin vivo の産生系がある。in
vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や
原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
【0066】真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物
細胞、真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞として
は、(1)哺乳類細胞、例えば、CHO 、COS 、ミエロー
マ、BHK (baby hamster kidney )、HeLa、Vero、
(2)両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細
胞、あるいは(3)昆虫細胞、例えば、sf9 、sf21、Tn
5が知られている。植物細胞としては、例えば、ニコテ
ィアナ(Nicotiana )属、詳しくは、ニコティアナ タ
バカム(Nicotiana tabacum )由来の細胞が知られてお
り、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、
(1)酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces
)属、詳しくは、サッカロミセス セレビジエ(Sacch
aromyces cerevisiae)、あるいは(2)糸状菌、例え
ば、アスペルギルス(Aspergillus )属、詳しくは、ア
スペルギルス ニガー(Aspergillus niger )が知られ
ている。
【0067】原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用い
る産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(Escheric
hia coli)、枯草菌が知られている。これらの細胞に、
目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転
換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得
られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、哺乳
類細胞用の培養液として、DMEM、MEM 、RPMI1640、IMDM
等を使用することができる。その際、牛胎児血清(FCS
)等の血清補液を併用することもできるし、無血清培
養してもよい。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物
の腹腔等へ移植することにより、in vivo にて抗体を産
生してもよい。
【0068】in vivo の産生系としては、動物を使用す
る産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。動物を
使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系があ
る。
【0069】哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツ
ジ、マウス、ウシを用いることができる(Glaser, V.,
SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993 )。ま
た、哺乳類を用いる場合、トランスジェニック動物を用
いることができる。例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼイ
ンのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードす
る遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。
抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA 断片をヤ
ギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受
容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたは
その子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。トラン
スジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁
量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニ
ックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/
Technology (1994) 12, 699-702 )。
【0070】また、昆虫としては、カイコを用いること
ができる。カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿
入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイ
コの体液より所望の抗体を得る(Maeda, S. et al., Na
ture (1985) 315, 592-594)。さらに、植物を使用する
場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用
いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例
えばpMON 530に挿入し、このベクターをアグロバクテリ
ウム チューメファシエンス(Agrobacteriumtumefacie
ns )のようなバクテリアに導入する。このバクテリア
をタバコ、例えばニコティアナ タバカム(Nicotiana
tabacum )に感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を
得る(Ma, J. K. et al., Eur.J. Immunol. (1994) 24,
131-138)。
【0071】これらの動物または植物に上記のように抗
体遺伝子を導入し、動物または植物の体内で抗体を産生
させ、回収する。上述のようにin vitroまたはin vivo
の産生系にて抗体を産生する場合、抗体H 鎖またはL 鎖
をコードするDNA を別々に発現ベクターに組み込んで宿
主を同時形質転換させてもよい。あるいはH 鎖およびL
鎖をコードするDNA を単一の発現ベクターに組み込ん
で、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番
号WO94/11523 参照)。
【0072】7. 抗体の分離、精製 前記のように発現、産生された抗体は、細胞内外、宿主
から分離し均一にまで精製することができる。本発明で
使用される抗体の分離、精製は通常のタンパク質で使用
されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定
されるものではない。例えば、アフィニティークロマト
グラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルタ
ー、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれ
ば、抗体を分離、精製することができる(Antibodies:
A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Col
d Spring Harbor Laboratory, 1988)。アフィニティー
クロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテイ
ンA カラム、プロテインG カラムが挙げられる。
【0073】例えば、プロテインA カラムを用いたカラ
ムとして、Hyper D 、POROS 、Sepharose F.F.(Pharma
cia )等が挙げられる。アフィニティークロマトグラフ
ィー以外のクロマトグラフィーとしては、例えば、イオ
ン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィ
ー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマト
グラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein P
urification and Characterization: A Laboratory Cou
rse Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spri
ng Harbor Laboratory Press, 1996)。更に、これらの
クロマトグラフィーはHPLC, FPLC等の液相クロマトグラ
フィーを用いて行うことができる。
【0074】8. 抗体の濃度測定 上記で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定または酵
素結合免疫吸着検定法(enzyme-linked immunosorbent
assay ;ELISA )等により行うことができる。すなわ
ち、吸光度の測定による場合には、得られた抗体をPBS
で適当に希釈した後、280 nmの吸光度を測定し、種およ
びサブクラスにより吸光係数は異なるが、ヒト抗体の場
合1 mg/ml を1.4 ODとして算出する。また、ELISA によ
る場合は以下のように測定することができる。すなわ
ち、0.1M重炭酸緩衝液(pH9.6 )で1μg/mlに希釈した
ヤギ抗ヒトIgG 抗体100 μl を96穴プレート(Nunc)に
加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固相化
する。
【0075】ブロッキングの後、適宜希釈した本発明で
使用される抗体または抗体を含むサンプル、あるいは濃
度標準品として既知の濃度のヒトIgG100μl を添加し、
室温にて1時間インキュベーションする。洗浄後、5000
倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG 抗
体100 μl を加え、室温にて1時間インキュベートす
る。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、
MICROPLATE READER Model 3550(Bio-Rad )を用いて40
5nm での吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を濃度標準
ヒトIgG の吸光度より算出する。
【0076】また、抗体の濃度測定には、BIAcore(Phar
macia)を使用することができる。
【0077】9. 抗体の活性の確認 本発明で使用される抗体の抗原結合活性(Antibodies:
A Laboratory Manual.Ed Harlow and David Lane, Cold
Spring Harbor Laboratory, 1988)、リガンドレセプ
ター結合阻害活性(Harada, A. et al., Int. Immunol.
(1993) 5, 681-690)の測定には公知の手段を使用する
ことができる。
【0078】本発明で使用される抗IL-8抗体の抗原結合
活性を測定する方法として、ELISA、 EIA(酵素免疫測
定法)、 RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法を
用いることができる。
【0079】例えば、ELISA を用いる場合、IL-8に対す
るポリクローナル抗体を固相化した96穴プレートにIL-8
を添加し、次いで目的の抗IL-8抗体を含む試料、例え
ば、抗IL-8抗体産生細胞の培養上清や精製抗体を加え
る。アルカリフォスファターゼ等の酵素で標識した、目
的の抗IL-8抗体を認識する二次抗体を添加し、プレート
をインキュベーション、洗浄した後、p-ニトロフェニル
燐酸などの酵素基質を加えて吸光度を測定することで抗
原結合活性を評価することができる。また、抗体の抗原
結合活性の測定には、BIAcore(Pharmacia)を使用するこ
とができる。
【0080】本発明で使用される抗IL-8抗体のリガンド
レセプター結合阻害活性を測定する方法としては、通常
のCell ELISA、あるいは、リガンドレセプター結合アッ
セイを用いることができる。
【0081】例えば、Cell ELISA法の場合、IL-8レセプ
ターを発現する血液細胞あるいは癌細胞、例えば、好中
球を96穴プレートで培養して接着させ、パラホルムアル
デヒドなどで固定化する。あるいは、IL-8レセプターを
発現する細胞の膜分画を調製して固相化した96穴プレー
トを作製する。これに、目的の抗IL-8抗体を含む試料、
例えば、抗IL-8抗体産生細胞の培養上清や精製抗体と、
放射性同位元素、例えば、125I等で標識したIL-8を添加
し、プレートをインキュベーション、洗浄した後、放射
活性を測定することでIL-8レセプターに結合したIL-8量
を測定でき、抗IL-8抗体のリガンドレセプター結合阻害
活性を評価することができる。
【0082】例えば、細胞上のIL-8レセプターに対する
IL-8の結合阻害アッセイには、IL-8レセプターを発現す
る血液細胞あるいは癌細胞、例えば好中球を遠心分離等
の手段で分離した後、細胞懸濁液として調製する。放射
性同位元素、例えば、125I等で標識したIL-8の溶液、あ
るいは非標識のIL-8と標識IL-8の混合溶液と、濃度調製
した抗IL-8抗体を含む溶液を細胞懸濁液に添加する。一
定時間の後、細胞を分離し、細胞上に結合した標識IL-8
の放射活性を測定すればよい。
【0083】また、本発明で使用される抗IL-8抗体の好
中球遊走(ケモタキシス;chemotaxis)に対する阻害能
を測定する方法として、公知の通常知られている方法、
例えば、Grob, P.M. らの方法(J. Biol. Chem. (199
0) 265, 8311-8316)を用いることができる。
【0084】具体的には、市販されているケモタキシス
チャンバーを用い、抗IL-8抗体を培養液、例えば、RPMI
1640、DMEM、MEM 、IMDM等で希釈した後、IL-8を加え、
これをフィルターで仕切られたチャンバー下層に分注す
る。次いで、調製した細胞懸濁液、例えば好中球懸濁液
をチャンバー上層に添加し、一定時間放置する。遊走す
る細胞はチャンバーに装着されたフィルター下面に付着
するので、その細胞の数を染色液あるいは蛍光抗体等を
用いた方法で測定すればよい。また、顕微鏡下での肉眼
による判定や計測器を用いた自動測定も可能である。
【0085】10. 投与方法および製剤 本発明の抗IL-8抗体を有効成分として含有する治療剤
は、非経口的に、例えば、点滴等の静脈内注射、筋肉内
注射、腹腔内注射、皮下注射等により全身あるいは局部
的に投与することができる。また、患者の年齢、症状に
より適宜投与方法を選択することができる。
【0086】本発明の抗IL-8抗体を有効成分として含有
する治療剤は、病気に既に悩まされる患者に、病気の症
状を治癒するか、あるいは少なくとも部分的に阻止する
ために十分な量で投与される。例えば、有効投与量は、
一回につき体重1kg あたり0.01mgから1000mgの範囲で選
ばれる。あるいは、患者あたり5-2000mg/body の投与量
を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗IL-8抗
体を含有する治療剤はこれらの投与量に制限されるもの
ではない。
【0087】また、投与時期としては、敗血症または敗
血症性ショックが生じてから投与してもよいし、あるい
は、敗血症または敗血症性ショックの発症が予測される
時に投与してもよい。また、投与期間は患者の年齢、症
状により適宜選択することができる。本発明の抗IL-8抗
体を有効成分として含有する治療剤は、常法にしたがっ
て製剤化することができ(Remington's Pharmaceutical
Science, latest edition,Mark Publishing Company,
Easton, 米国)、医薬的に許容される担体や添加物を
共に含むものであってもよい。
【0088】このような担体および医薬添加物の例とし
て、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポ
リビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキ
シビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリ
ウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウ
ム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナ
トリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロ
ース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒
天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリ
ン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ス
テアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミ
ン(HSA )、マンニトール、ソルビトール、ラクトー
ス、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げら
れる。
【0089】実際の添加物は、本発明治療剤の剤型に応
じて上記の中から適宜あるいは組み合わせて選ばれる
が、もちろんこれらに限定するものではない。例えば、
注射用剤として使用する場合、精製された抗IL-8抗体を
溶剤、例えば、生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等に
溶解し、それに、吸着防止剤、例えば、Tween 80、Twee
n 20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを
使用することができる。または、使用前に溶解再構成す
るために凍結乾燥したものであってもよく、凍結乾燥の
ための賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ
糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
【0090】敗血症とは、前記SIRSの診断4項目のう
ち、いずれか2つ以上の臨床所見を有し、かつ、感染が
原因である疾患である。感染の原因となる病原体の証明
はあってもよいし、なくてもよい。外傷、熱傷、重症膵
炎は、直接的原因が感染でないことにより敗血症と区別
される。また、敗血症性ショックとは、敗血症におい
て、十分な循環体液量は維持されているにもかかわら
ず、低血圧などの灌流異常を伴うものである。敗血症が
進行すれば数時間のうちに敗血症性ショックとなり、全
末梢血管抵抗の低下、心筋収縮力の低下、末梢循環不
全、血圧低下などを呈する。
【0091】後述の実施例に示したように、本発明の抗
IL-8抗体を有効成分として含有する治療剤は、上記疾患
の実験系として知られているウサギに対するエンドトキ
シン投与時において動脈血圧低下、呼吸数増加及び体温
変化を抑制し、またエンドトキシン投与ウサギの生存率
を向上させた。したがって、本発明の抗IL-8抗体を有効
成分として含有する治療剤は敗血症や敗血症性ショック
の治療剤として有用である。また、本発明の抗IL-8抗体
を有効成分として含有する治療剤は、敗血症性ショック
における動脈血圧低下の改善や敗血症性ショックにおけ
る呼吸数増加の軽減に有用である。
【0092】
【実施例】以下、実施例および参考例により本発明を具
体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。参考例1 . ヒトIL-8に対するモノクローナル抗体産生ハ
イブリドーマの作製 ヒトIL-8を常法によりBALB/cマウスに免疫し、免疫が成
立したマウスより脾細胞を採取した。ポリエチレングリ
コールを使用する常法によりこの脾細胞をマウス骨髄腫
細胞P3X63Ag8.653と融合させ、ヒトIL-8に対するマウス
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製し
た。ヒトIL-8に対する結合活性を指標としてスクリーニ
ングを行った結果、ハイブリドーマ細胞株WS-4を得た。
また、ハイブリドーマWS-4が産生する抗体は、ヒトIL-8
の好中球への結合を阻害し中和活性を有していた。(K
o, Y. et al., J. Immunol. Methods (1992) 149, 227
-235 )。
【0093】ハイブリドーマWS-4が産生する抗体のH 鎖
およびL 鎖のアイソタイプを、マウスモノクローナル抗
体アイソタイピングキットを用いて調べた。その結果、
ハイブリドーマWS-4が産生する抗体は、マウスκ型L 鎖
およびマウスγ1型H 鎖を有することが明らかになっ
た。なお、ハイブリドーマ細胞株WS-4は、Mouse hybrid
oma WS-4として、工業技術院生命工学工業技術研究所
(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成8 年4月1
7日に、FERM BP-5507としてブダペスト条約に基づき国
際寄託された。
【0094】参考例2. ヒトIL-8に対するヒト型化抗体
の作製 ヒト型化WS-4抗体を国際特許出願公開番号WO 96/02576
に記載の方法により作製した。参考例1で作製されたハ
イブリドーマWS-4から、常法により全RNA を調製し、こ
れより一本鎖cDNAを合成した。PCR 法により、マウスWS
-4抗体のH 鎖ならびにL 鎖のV 領域をコードするDNA を
増幅した。PCR 法に使用したプライマーは、Jones, S.
T. and Bendig, M. M., Bio/Technology (1991) 9, 88-
89に記載されているプライマーを用いた。PCR 法で増幅
したDNA 断片を精製し、マウスWS-4抗体L 鎖V 領域をコ
ードする遺伝子を含むDNA 断片およびマウスWS-4抗体H
鎖V 領域をコードする遺伝子を含むDNA 断片を単離し
た。これらのDNA 断片を各々プラスミドpUC 系クローニ
ングベクターに連結し、大腸菌コンピテント細胞に導入
して大腸菌形質転換体を得た。
【0095】この形質転換体を常法により培養し、得ら
れた菌体から上記DNA 断片を含むプラスミドを精製し
た。プラスミド中のV 領域をコードするDNA の塩基配列
を常法に従って決定し、そのアミノ酸配列から各々のV
領域のCDR を特定した。キメラWS-4抗体を発現するベク
ターを作製するため、マウスWS-4抗体のL 鎖およびH 鎖
のV 領域をコードするcDNAを、予めヒトC 領域をコード
するDNA を連結してあるHEF ベクターにそれぞれ別に挿
入した。
【0096】ヒト型化WS-4抗体を作製するために、CDR
移植法による遺伝子工学的手法を用いてマウスWS-4抗体
のV 領域CDR をヒト抗体へ移植した。適切な抗原結合部
位を形成させるため、CDR を移植した抗体のV 領域のFR
のアミノ酸を一部置換する為のDNA 配列の置換をおこな
った。
【0097】このようにして作製したヒト型化WS-4抗体
のL 鎖およびH 鎖のV 領域を、抗体として哺乳類細胞で
発現させるために、各々をコードするDNA をHEF ベクタ
ーに別々に挿入し、ヒト型化WS-4抗体のL 鎖またはH 鎖
を発現するベクターを作製した。これら二つの発現ベク
ターをCOS 細胞に同時に挿入することにより、ヒト型化
WS-4抗体を産生する細胞株を樹立した。この細胞株を培
養して得られたヒト型化WS-4抗体のIL-8への結合能およ
びIL-8中和能を、各々ELISA およびIL-8/ 好中球結合阻
害試験にて調べた。その結果、ヒト型化WS-4抗体は、マ
ウスWS-4抗体と同程度に、ヒトIL-8に結合してIL-8の好
中球への結合を阻害することが判明した。
【0098】なお、ヒト型化WS-4抗体のL 鎖およびH 鎖
を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia
coli DH5α(HEF-RVLa-gκ)およびEscherichia coli J
M109(HEF-RVHg-gγ1 )として、工業技術院生命工学工
業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、
1994年7 月12日に、各々FERM BP-4738およびFERM BP-47
41としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。
【0099】実施例1.ニュージーランド白色種ウサギ
(雌、1 群n=5 、体重2.8 〜 3.2kg)に、0.5mg/kg体重
のジアゼパム及び35mg/kg 体重のペントバルビタールを
筋肉内投与し、前麻酔した。30分間静置後、耳介静脈に
24G テルモカテーテルを挿入し、この静脈カテーテルよ
り5mg/kg体重のケタミンを投与し麻酔した。次いで、耳
介動脈に22G テルモカテーテルを挿入した。
【0100】以降麻酔終了時まで以下の処置を施した。
(i) 静脈カテーテルより、ケタミンを1 時間に20mg/kg
体重の割合で追加注入した。(ii)静脈カテーテルより、
生理食塩水を1 時間に5ml/kg体重の割合で注入した。(i
ii) 動脈カテーテルを用い動脈血圧を連続的に測定し
た。(iv)動脈カテーテルより定期的に採血を行った。
(v) カテーテルが詰まらないように、動脈カテーテルよ
り、2.5IU/mlのヘパリンを1 時間に1ml/kg体重の割合で
注入した。(vi)定期的に呼吸数、直腸体温を測定した。
【0101】カテーテル挿入終了後45分間静置し、ベー
スラインの動脈血圧、呼吸数、直腸体温を測定した。そ
の後直ちに、ヒトIL-8に対するマウスWS-4抗体を3mg/kg
体重、あるいは対照抗体としてマウスP3.6.2.8.1抗体を
3mg/kg体重、あるいは生理食塩水を1.8ml/kg体重、静脈
カテーテルより投与した。その5 分後より20分間かけ
て、0.5mg/kg体重のリポポリサッカライド(LPS, Esche
richia coli O127:B8 、シグマ社製)あるいは2ml/kg体
重の生理食塩水を静脈カテーテルより投与した。
【0102】なお実験群は、抗IL-8抗体投与群、対照抗
体投与群、LPS 群及び正常群の4 群に分けた。抗IL-8抗
体投与群は、0 分にマウスWS-4抗体を投与し、5 〜25分
にLPS を投与した。対照抗体投与群は、0 分にマウスP
3.6.2.8.1抗体を投与し、5 〜25分にLPS を投与した。L
PS 群は、0 分に生理食塩水のみを投与し、5 〜25分にL
PS を投与した。正常群は、0 分及び5 〜25分の両方に
生理食塩水のみを投与した。
【0103】LPS 投与4 時間後に麻酔及び各パラメータ
ー測定を終了し、各々実験前と同じケージに戻した。そ
の後、7 日後まで生存率の評価を行った。動脈血圧、呼
吸数及び直腸体温の経時的変化をそれぞれ図1、2及び
3に示す。また、生存率の経時的変化を図4に示す。
【0104】(1)動脈血圧 LPS を投与した各群(抗IL-8抗体投与群、対照抗体投与
群及びLPS 群)では、正常群に比し有意(p<0.05)に動
脈血圧が低下し、LPS の投与により動脈血圧が低下する
ショック症状が示された。しかしながら、抗IL-8抗体投
与群では、対照抗体群及びLPS 群に比べると、有意(p<
0.05)に動脈血圧低下が軽減された。また、対照抗体投
与群とLPS 群との間では動脈血圧に有意な差は認められ
なかった(図1参照)。これらのことから抗IL-8抗体が
敗血症および敗血症性ショックの症状の一つである血圧
低下を軽減することが示された。
【0105】(2)呼吸数 LPS を投与した各群(抗IL-8抗体投与群、対照抗体投与
群及びLPS 群)では、正常群に比し有意(p<0.05)に呼
吸数が増加し(但し、165 分時点での対照抗体投与群を
除く)、SIRSの診断項目の一つである呼吸数の増加を示
した。しかしながら、抗IL-8抗体投与群では、対照抗体
投与群及びLPS 群に比し呼吸数増加が軽減される傾向に
あり、特に45分〜90分においてはLPS 群に比べ有意(p<
0.05)な呼吸数増加の軽減が認められた。また、対照抗
体投与群とLPS 群との間では呼吸数に有意な差は認めら
れなかった(図2参照)。これらのことから抗IL-8抗体
が敗血症および敗血症性ショックの症状の一つである呼
吸数増加を軽減することが示された。
【0106】(3)直腸体温 LPS を投与した各群(抗IL-8抗体投与群、対照抗体投与
群及びLPS 群)では、統計学的有意差は認められないも
のの、正常群に比し直腸体温が低下する傾向にあった。
その際、抗IL-8抗体投与群では、対照抗体投与群及びLP
S 群に比し体温低下が軽減される傾向にあった(図3参
照)。このことから抗IL-8抗体が敗血症および敗血症性
ショックの診断項目の一つである体温変化を軽減するこ
とが示唆された。
【0107】(4)生存率 LPS 群では48時間までに5 例全てが死亡、対照抗体投与
群では7 日後の時点で5 例中2 例が生存したのに対し、
抗IL-8抗体投与群では7 日後の時点で5 例中4例が生存
した(図4参照)。このことから抗IL-8抗体がLPS 投与
による致死を救済することが示された。なお、LPS 無投
与の正常群は全例が生存した。
【0108】以上、(1)〜(4)に示したとおり、抗
IL-8抗体は、敗血症性ショックを含む敗血症の症状であ
る血圧低下、呼吸数増加及び体温変化を軽減した。さら
に、エンドトキシン投与による致死を救済した。
【0109】抗IL-8抗体は、細菌毒素を原因とする血圧
低下、呼吸数増加及び体温変化を軽減し、また細菌毒素
による致死を救済する。この事実は抗IL-8抗体が敗血症
や敗血症性ショックの治療剤、また、動脈血圧低下の改
善剤、呼吸数増加の軽減剤として有用であることを示
す。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、0 分に抗体あるいは生理食塩水を投与
し、さらに 5分〜25分にLPS あるいは生理食塩水を投与
した際の、0 〜240 分における動脈血圧の経時的変化を
示す図である。a の線で示した期間、抗IL-8抗体投与
群、対照抗体投与群及びLPS 群のそれぞれは、正常群に
比し有意(p<0.05)に動脈血圧が低下した。b の線で示し
た期間、抗IL-8抗体投与群は、LPS 群に比し有意(p<0.0
5)に動脈血圧の低下が軽減した。c の線で示した期間、
抗IL-8抗体投与群は、対照抗体投与群に比し有意(p<0.0
5)に動脈血圧の低下が軽減した。
【図2】図2は、0 分に抗体あるいは生理食塩水を投与
し、さらに 5分〜25分にLPS あるいは生理食塩水を投与
した際の、0 〜240 分における呼吸数の経時的変化を示
す図である。d の線で示した期間、抗IL-8抗体投与群、
対照抗体投与群及びLPS群のそれぞれは、正常群に比し
有意(p<0.05)に呼吸数が増加した(但し、165 分時点で
の対照抗体投与群を除く)。e の線で示した期間、抗IL
-8抗体投与群は、LPS 群に比し有意(p<0.05)に呼吸数増
加が軽減した。
【図3】図3は、0 分に抗体あるいは生理食塩水を投与
し、さらに 5分〜25分にLPS あるいは生理食塩水を投与
した際の、0 〜240 分における直腸体温の経時的変化を
示す図である。
【図4】図4は、7 日後までの生存率の経時的変化を示
す図である。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 抗IL-8抗体を有効成分として含有する敗
    血症治療剤。
  2. 【請求項2】 敗血症が敗血症性ショックであることを
    特徴とする、請求項1に記載の治療剤。
  3. 【請求項3】 抗IL-8抗体がモノクローナル抗体である
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の治療剤。
  4. 【請求項4】 抗IL-8抗体が哺乳類のIL-8に対する抗体
    であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか
    1項に記載の治療剤。
  5. 【請求項5】 抗IL-8抗体がヒトIL-8に対する抗体であ
    ることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項
    に記載の治療剤。
  6. 【請求項6】 抗IL-8抗体がWS-4抗体であることを特徴
    とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の治療
    剤。
  7. 【請求項7】 抗IL-8抗体がヒト抗体定常領域を有する
    ことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に
    記載の治療剤。
  8. 【請求項8】 抗IL-8抗体がヒト型化またはキメラ化さ
    れた抗体であることを特徴とする、請求項1ないし7の
    いずれか1項に記載の治療剤。
  9. 【請求項9】 抗IL-8抗体がヒト型化WS-4抗体であるこ
    とを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記
    載の治療剤。
  10. 【請求項10】 抗IL-8抗体を有効成分として含有す
    る、敗血症性ショックにおける動脈血圧低下改善剤。
  11. 【請求項11】 抗IL-8抗体を有効成分として含有す
    る、敗血症性ショックにおける呼吸数増加軽減剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011256118A (ja) * 2010-06-07 2011-12-22 Kao Corp Il−8及びgm−csf発現抑制剤

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